45
ウロボロス 素粒子 極大の世界と 極小の世界は 密接に関連している (宇宙の最大の構造) グレートウォール 太陽系 10 10 m 10 15 m 10 5 m 原子核 原子 10 5 m 地球 太陽 10 10 m 10 15 m 銀河 10 20 m 10 25 m 自分の尾を噛んで環となったヘビ 始まりも終わりも無い完全なもの アメーバ 分子 授業のHPで 今後の授業の予定 授業で使ったスライドを 見ることができます。 参考書:物理学基礎2425今日の話 物質の階層構造 吉田担当の話 図:シェルドン・グラショウが考案 1 m

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ウロボロス

素粒子

極大の世界と極小の世界は

密接に関連している

(宇宙の最大の構造)グレートウォール

太陽系

10-10 m

10-15 m

10-5 m

原子核

原子

105 m

地球

太陽

1010 m

1015 m

銀河

1020 m

1025 m

自分の尾を噛んで環となったヘビ始まりも終わりも無い完全なもの

アメーバ

分子

授業のHPで今後の授業の予定

授業で使ったスライドを見ることができます。

参考書:物理学基礎24・25章

今日の話物質の階層構造

吉田担当の話

図:シェルドン・グラショウが考案1 m

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参考書③

本を1冊買ってみようと思う人はこの本がお勧め。

内容は素粒子と宇宙

後半の授業の内容の半分以上を含みます。

税込864円

(ひとし)

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高エネルギー加速器研究機構パンフより転載

物質の階層構造

10-15m:核子

10-14m:原子核

10-10m:原子

10-9m:分子

10-18m以下:素粒子

水の分子

酸素原子

酸素原子核

陽子

クォーク 電子

水素原子

中性子

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周期律表

ビッグバン(138億年前)直後から存在75% 25%

鉄まで:主に恒星の内部で合成(核融合)

鉄以上:赤色巨星、超新星、中性子星の合体

太陽系は約46億年前に誕生私達の体や地球を構成する原子は、それ以前の超新星等でまき散らされた原子

計99.99999999%20分後

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1054年に出現した超新星の現在の様子

中国の宋史天文志や藤原定家の明月記に記録がある。1か月ほどは昼間でも見えた。

現在の大きさは10光年程度

かに星雲(M1)

NASA ハッブル宇宙望遠鏡

新しく星ができたように見える実際は星の最後の大爆発

今も毎秒2000kmで広がりつづけている

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一家に一枚周期表より転載

現在の宇宙の元素の存在比ビッグバン直後に比べ水素が約4%減り、ヘリウム・その他の元素が増えた

(恒星の中の核融合等)

(重量%)

太陽の中心部H → He

(詳細は後で)

(地球を構成する元素等)

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地殻の元素の存在比 (重量%)⑦

問題:重量比で一番多い元素は?

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地殻の元素の存在比

一家に一枚周期表より転載

(重量%)

マントルより下部の外核・内核は、ほぼ鉄地球全体では鉄は約32%

例石英(水晶)

SiO2

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人体の元素の存在比

一家に一枚周期表より転載

微量および

超微量元素

Fe, F, Si, Zn, Se,Mn, Cu, Al など(0.7)

(重量%)

水H2O(人体の60~65%)重量%なので

水素の割合は低い

炭素(C)地殻中には0.08%しか含まれない

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18

6×1023

水分子1個の体積は cm3 ,平均すると原子1個あたりの体積は cm3

原子の大きさを計算してみよう

水(H2O)の場合

酸素の原子量: 水素の原子量: 水の分子量:

水 1 mol の質量は g, 1 mol は 個の分子

1 gの水の体積は cm3, 水 1 mol の体積は cm3

液体,固体は原子(分子)が密につまっていると考えてよい

原子を立方体と考え、1辺の長さを有効桁1桁で求めると cm = m

= 3×10-23

(2×10-8)3 = 8×10-24 (3×10-8)3 = 27×10-24

16 1 18

18 6×1023

1 18

10-23

2×10-8 2×10-10

原子の大きさ: 1~3×10-10 m

3×10-23

(計算は余白で)

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原子のイメージ

電子の雲(電子雲)

原子の中心にはプラスの電荷をもった原子核がある

そのまわりをマイナスの電荷をもった電子の雲がとりまいている。(雲:電子の存在する位置の分布)

電子の電荷は-e ( eは素電荷 : 1.6×10-19 C )

陽子の電荷は + e ,記号は p

中性子の電荷は 0 (中性),記号は n

電子は、それ以上構造のない素粒子と考えられている

陽子の数=原子番号,陽子の数で元素が決まる

例:陽子が1個は水素,陽子が92個はウラン

protonneutron

電子の存在確率が雲のように分布

原子核

原子核は 陽子 と 中性子 からできている。

陽子と中性子を総称して 核子 という

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(10-24 g) 電子を1 静止エネルギー陽子 1.6726 1836 938MeV

中性子 1.6749 1839 939MeV

電子 0.00091 1 511 keV

陽子,中性子,電子の質量

質量数

E = mc2

G ギガ 109

M メガ 106

k キロ 103

E : 静止エネルギー [J]

m: 質量 [kg]

c : 光速 3×108 [m/s]

来週詳しく勉強します

1

6.02×1023

= 1.66×10-24

・ 陽子と中性子の質量は ほぼ同じ

・陽子・中性子の質量は、電子の約 2000 倍(電子の質量は無視できる)

→ 原子の質量は(陽子数+中性子数)にほぼ比例

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eV (電子ボルト,エレクトロンボルト):エネルギーの単位

e×1 = e [J] = 1.602×10-19 [J] = 1 [eV]

J(ジュール)は、1個の粒子のエネルギーを表すには大きすぎる

V = 0 V = 1

e

1 eV

||電子を 1 V の電位差で加速した時に

電子が得る運動エネルギー

(W=QV)

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問題:電子の静止エネルギーを計算せよ。ジュール[J] と電子ボルト [eV] で有効桁3桁で答えよ。

電子の質量:9.109×10-31 kg

光速:2.998×108 m/s

1 eV = 1.602×10-19 J

mc2 = 9.109×10-31×( 2.998×108 )2 = 8.19×10-14 J

8.19×10-14

1.602×10-19= 5.11×105 eV = 511 keV

例:電子と陽電子が対消滅すると、エネルギーが 511 keVの2個の光子になる。何回か後の授業で詳しく説明する(PET)。

(keVの読み:キロ電子ボルト、キロエレクトロンボルト、ケブ)

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同位体(アイソトープ)陽子の数は同じだが、中性子の数が異なる原子(化学的性質はほぼ同じ)

H11

H21 H

31

水素 重水素 三重水素(安定) (安定) (不安定:崩壊する)

電子

陽子

中性子

放射性同位体(ラジオアイソトープ)

存在比99.985%

質量:1.0078 u

存在比0.015%

質量:2.0141 u 半減期12.3年

質量数

原子番号

12Cの質量 = 12 u

(統一原子質量単位)

b崩壊

水素の原子量=1.0078×0.99985+2.0141×0.00015

= 1.00795(周期律表参照)

別名:トリチウム

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陽子,中性子の大きさ示す事象① 中性子星

かに星雲の中には、中性子星(パルサー)が見つかっている。33 ms 周期で電磁波(可視光,電波,X線)を放射

中性子星の自転周期は 33 ms(ミリ秒)(1秒間に30回転)

問題:もし地球(半径:6400 km)が自転周期 33 ms で回転すると赤道における自転速度はいくらか

⇒中性子星の半径は、地球の半径の4分の1以下でなければならない。

2p×6400 km

0.033 s= 120万 km/s = 1.2×109 m/s(光速の4倍)

地球の大きさは、標準的な恒星である太陽(半径 70万km)の1/100。中性子星(パルサー)は小さな天体であることがわかる。

また、星が光速で自転すると大きな遠心力もはたらく。遠心力で星が分解しない→中性子星は重く、小さい天体

中性子の塊・大きな原子核

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中性子星(かにパルサー)

X線画像(チャンドラX線望遠鏡)

もとの星が収縮して中性子星になる際角運動量は保存する

↓高速回転

スケートのスピンと同じ

X線と可視光の合成画 ©NASA

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中性子星の半径と質量は様々な観測より,(例:連星中性子星合体の重力波の観測)

半径約 10 km ,質量は太陽程度とわかっている密度にすると、10億トン/cm3 (1015g/cm3)くらいである。中性子星は中性子が密に詰まっていると考えてよい。

中性子星の密度は水の密度の約1015倍水を1方向あたり(縦・横・高さ,x y z )

105分の1に圧縮すると、中性子星の密度になる。先ほど計算した原子の大きさが 2×10-10 m くらいなので水素や酸素の原子核の大きさは 2×10-15m くらいとなる。水素(質量数1)や酸素(質量数16)の原子核の大きさが

2×10-15 m なら陽子や中性子の大きさは、10-15 m くらい。

核子(陽子・中性子)の大きさ

2×10-15m

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力学復習問題

2

5

収縮の際、外部から力のモーメントは働かないので角運動量 Lは保存する。

慣性モーメント Iは半径が105分の1になるので_____になる

角運動量 Lは変化しないので、角速度 wは___________倍になる

(自転周期は__________________になる。)

収縮前の自転周期は28日 = 28×24×60×60 ≒ 2.4×106 s

収縮後の自転周期は________________________________

2.4×106 s

||

注:太陽は将来、中性子星にはならない。星全体が中性子星になるわけでもない。(コアのみ)

1010分の1

原理はスケートのスピンと同じ(中性子星の自転が速い理由)

1010

1010分の1

2.4×10-4 s ( 0.24 ms )

(密度 1.4 g/cm3)太陽は半径 7×105 km (地球の100倍強)の均一な球で自転周期を28日とする。太陽の半径が105分の1の 7 km まで収縮すると、自転周期はいくらになるか?

球の中心を通る軸の回りの慣性モーメントは、IG = MR2,角運動量は L = Iw

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原子核,陽子,中性子の大きさ示す事象②

陽子線や重粒子線(炭素原子核等)を用いたがん治療(粒子線治療)

(放射線はがんの原因になるが、がん細胞は放射線に弱い)

腫瘍陽子

陽子は原子核と衝突を起こすが原子が隙間なく詰まっている体の中を

ほとんどぶつかることなく腫瘍まで到達する↓

陽子にとって原子はスカスカ。上の事実は原子核の大きさが原子より

ずっと小さいことを示している。

加速器シンクロトロン

原子

原子核

陽子重粒子

腫瘍

イメージ

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周期律表の100種類近い原子(同位体を含めるとさらに多数)がたった3個の粒子(電子,陽子,中性子)の組み合わせで説明できた。

1950年頃から加速器(来週解説)で陽子や電子を高エネルギーに加速できるようになった。加速した陽子を静止した陽子や原子核に衝突させると

陽子や中性子の仲間(ハドロン)が100種以上見つかった。(陽子と中性子以外は短寿命)

これらのハドロンは、3種のクォークの組み合わせで説明できる。(これから説明する)

これで終わり(すべては理解できた)と思われたが・・・

1964年 ゲルマン,ツバイクがクォークを提唱

物質の階層構造

教訓:多くの種類があるものが基本粒子であるとは考えにくい↑それ以上分割できない粒子

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泡箱

1952年発明液体水素中の素粒子(荷電粒子)の飛跡に沿って泡ができる。それを写真撮影

B×⑳

bubble chamber

渦巻の軌跡はサイクロトロン運動(後で考察)

衝突

中性の粒子の崩壊

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クォーク

udd

陽子 中性子

uu d

u

d

アップクォーク 電荷:+ e

ダウンクォーク 電荷:- e

23

13

陽子の電荷: + e + e - e = + e

中性子の電荷: + e - e - e = 0

大きさは約 10-15 m

(原子の約10万分の1)

10-18 m 以下,点状?

23

23

23

13

13

13

(クォークの大きさ)

核子(陽子,中性子)は、基本粒子ではなく3つの クォーク から成る

メモ:中性子の磁気モーメントの話

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核子(陽子,中性子)の仲間バリオン(baryon):クォーク3個から成る粒子

陽子,中性子以外のバリオンを覚える必要はありません。(テストには出ません。)

中性子 陽子

udd uud

dds uds uus

dss uss

ddd udd uud uuu

sss

←クォークの提唱者ゲルマンが予言し実際に見つかったs : ストレンジクォーク 電荷:- e1

3

dss uss

シグマ ラムダ

グザイ

デルタ

オメガ

dds uds uus

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W-(sss)の発見

B W-(sss)

p(uud, 陽子)

寿命:約10-10秒

L0(uds)

X0(uss)

ストレンジクォークが1個づつ崩壊後で解説

ゲルマンが予言し見つかった粒子×

オメガ

グザイ

ラムダ

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小林・益川理論(1973)

クォークが3種( u, d, s )しか見つかっていない時に、CP対称性の破れという現象が、

6種類のクォークの存在を仮定することで自然に説明できることを発見授業では詳細には触れない。

小林誠 益川敏英

2008年ノーベル物理学賞

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6種のクォーク

電荷

+2/3 e

電荷

-1/3 e

第3世代 t

トップ

b

ボトム

第2世代 c

チャーム

s

ストレンジ

第1世代 u

アップ

d

ダウン

陽子・中性子の構成要素

質量大きい

質量小さい

短寿命で崩壊する

1994年にアメリカのフェルミ加速器研究所のテバトロンという加速器で発見される。

1個で陽子の200倍弱の質量(次回説明)

1977年に発見された質量は陽子の約5倍

1974年に発見された質量は陽子の2倍程度

1970 年、丹生潔(名古屋大)がX粒子(現チャーム)を発見。小林・益川理論(1973年)に影響(4つ目のクォークの存在を確信させた。)

なぜ周期律表のような繰り返し(世代)があるのかまだわかっていない。

二人とも当時名古屋大

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6種のレプトン(電子の仲間)レプトンも、クォークと同じく、点状の粒子で基本粒子だと考えられている。

電荷

-e

電荷

0

第3世代 t-

タウ粒子

nt

タウニュートリノ

第2世代 m-

ミュー粒子

nm

ミューニュートリノ

第1世代 e-

電子

ne

電子ニュートリノ

地上に降ってくる宇宙線はほとんどがミュー粒子質量は電子の

200倍自然放射線の約2割後日解説

質量は電子の10000倍

(陽子の5倍)

ニュートリノの質量はほぼ 0

太陽で発生した ne は、

皆さんの体を1秒間に数百兆個突き抜けている。

後日解説します。

2000年発見

同じく3世代ある。その意味は不明

短寿命

短寿命

2015年ノーベル物理学賞ニュートリノ振動(nm→nt)梶田隆章、後日解説

たかあき

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(2000年7月)

著者数52名

トップクォーク発見の論文:403名ヒッグス粒子の発見:2000~3000名(ATLAS,CMS) 素粒子実験は大規模

実験準備した人実験を行った人データ解析した人

丹羽公雄(名古屋大)らが発見

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反粒子

質量が等しく、電荷など正負の属性が逆の粒子

例1:電子(電荷-e)の反粒子は陽電子(電荷 + e )電子の反粒子は特別に陽電子という名前がある。

PET(後で解説)は陽電子と電子の対消滅で発生するガンマ線を利用

例2:陽子の反粒子は反陽子(電荷-e)普通は反・・・という。

反物質

反粒子からなる物質

例1:反水素原子(反陽子と陽電子からなる原子)1995年例2:反ヘリウム原子核(反陽子2個、反中性子2個)2011年

それ以上重い反物質は、まだ発見されていない。

electron positron

Positron Emission Tomography

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B W-(sss)

L0(uds)

X0(uss)

p(uud, 陽子)

電子・陽電子の対生成

E = mc2

軌跡の曲がり方から電荷と運動量がわかる

問題① 右の図で、もう一つ電子・陽電子の対生成を探せ。

問題② どちらが電子でどちらが陽電子か?

問題③ 電子と陽電子ではどちらの運動量が大きいか?

(陽電子)e+

e-

(電子)

×

g(光子)E = hn

電子・陽電子(粒子・反粒子)の対生成㉙

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電子・陽電子の対生成

W-(sss)

L0(uds)

X0(uss)

p(uud, 陽子)

g(光子)

電子・陽電子の対生成

E = mc2

軌跡の曲がり方から電荷と運動量がわかる

電子・陽電子の対生成

e-

(電子)

(陽電子)e+

運動量が小さいと曲がりやすい

(陽電子)e+

e-

(電子)

サイクロトロン運動

mv2

r= qvB

mv

qBr =

運動量mvの大きい方が半径も大きい(Bは一定)

(非相対論)

ローレンツ力向心力

電子・陽電子の対生成は、ガンマ線(光子)が、原子核付近の強い電場中で起こる。真空中では起こらない。

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6種の反クォーク(反粒子)質量はクォークと同じ、電荷はクォークの逆

電荷

-2/3 e

電荷

+1/3 e

第3世代 t

反トップ

b

反ボトム

第2世代 c

反チャーム

s

反ストレンジ

第1世代 u

反アップ

d

反ダウン

質量大きい

質量小さい

記号の上に (バー)をつける。

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電荷

+ e

電荷

0

第3世代 t+

反タウ粒子

nt

反タウニュートリノ

第2世代 m+

反ミュー粒子

nm

反ミューニュートリノ

第1世代 e+

陽電子

ne

反電子ニュートリノ

質量大きい

質量小さい

6種の反レプトン(反粒子)質量はレプトンと同じ、電荷はレプトンの逆(ニュートリノはどちらも 0 )

ニュートリノについてはそうなっていないかも

電子等には (バー)を使わず電荷の +で表す

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ハドロン

クォークからできている粒子にはメソンと、陽子や中性子の仲間のバリオンがある

q q

q q q q q q

例①:p+ (ud)

メソンとバリオンをあわせて ハドロン という

例①:陽子 (uud)

例②:反陽子(uud)

例②:p- (du)

meson

Baryon

hadron

反陽子の電荷は-e

この組み合わせでは、ハドロンは必ず、素電荷の整数倍になる。

(重粒子)

メソン (中間子):クォークと反クォークからできている。

バリオン (重粒子):クォーク3つ、または、反クォーク3つからできている。

(中間子)

読み方:パイプラス,パイマイナス

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メソン(中間子)を加えたすべての粒子

B W-(sss)

L0(uds)

X0(uss)

p(uud, 陽子)

e-

(電子)

(陽電子)e+

g(光子)

p- (du)

K- (su)

K+ (us)

K0 (ds)

p- (du)

× 核力で重要な役割(次頁)

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核力核子と核子の間に働く力

核力によって核子同士が結びついて原子核ができている。陽子の陽子の間に働く電磁気力による反発力より強い。核子の大きさ程度まで近づかないと働かない(短距離力)

m ミリ 10-3

mマイクロ10-6

n ナノ 10-9

p ピコ 10-12

f フェムト 10-15

重力と電磁気力は長距離力

陽子と中性子の距離 [fm] 東京大学理学部HPより転載

←湯川の中間子論の予言(青線)

実際の核力(赤点)

問題:重水素( H)の原子核は陽子と中性子からなるが、その距離はいくらか?左の図から読み取れ。

0.6~0.7 fm

( 0.6~0.7×10-15 m)

21

位置エネルギー(

MeV

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保存力と位置エネルギー (力学復習)位置エネルギー

U

[MeV

]

位置 x [fm]

保存力 F = -∂U

∂ x

保存力 Fの大きさは位置エネルギー Uの勾配に比例する。向きは、位置エネルギーの小さくなる方向

反発力引力

(核力)

核力も保存力

核力に位置エネルギーが定義できる

重なるくらい近づくと

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湯川の中間子論(1935)

湯川秀樹

湯川は2つの核子(陽子または中性子)が質量をもつ未知の粒子を交換することによって

核力が生じるのではないかと考えた。

時間 p → n + p+

見かけ上、エネルギー保存則を満たさない。(陽子・中性子:940 MeV , p:140 MeV)

p+は本来の静止エネルギーを持っていない。

(仮想粒子、バーチャル粒子)短時間なら不確定性原理より許される。

湯川は中間子を予言し、1947年に発見される。

1949年ノーベル物理学賞( 日本人初 )

時間

ud

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粒子交換による力(H2+の場合)

H p

p H

電子

水素分子イオンは、電子を交換することで引力が生じ、分子を形成していると

考えることもできる。

パイ中間子を交換することで生じる核力と基本的に同じしくみ。

電子を交換できなくなるほど離れると引力が働かなくなること(短距離力)も同じ

このしくみを理解するには量子力学が必要時間時間

参考書:ファインマン物理学V「量子力学」10章

H2+(水素分子イオン):水素分子 H2から電子を一つ取り去ったもの

陽子2個と電子1個からなる系

水素原子

水素原子

陽子

陽子

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粒子交換による力の量子力学的説明㊴

|1> p p

|2> p p

水素原子と陽子が離れていて電子を交換できないとき

どちらのエネルギーも等しい|1> も |2> もエネルギーの固有状態

(引力も斥力も働かない)

水素原子と陽子が近くにいて電子を交換できるとき

|1> も |2> もエネルギーの固有状態でない。互いの混合状態 |I> = (|1>-|2>) , |II> = (|1> + |2>)

がエネルギーの固有状態(時間がたってもそのまま)|I> のエネルギー EI と |II> のエネルギー EII のエネルギーの分離は電子を交換できる確率が大きくなる(近づくほど)大きくなる。

電子

電子

E

陽子間の距離

EI

EII

|I> は斥力

|II> は引力O

近づきすぎると陽子‐陽子が電気的に反発(注)簡単化のため正確でない部分がある。

F =-∂E

∂x

陽子

試験に出ない

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不確定性原理のイメージ位置と運動量は同時に決まらない

DxDp >

hはプランク定数 h = 6.626×10-34 J・s

時間とエネルギーは同時に決まらない

DtDE >

電磁波(光子)の場合E = hn = h p = = c

l

運動量の不確定さはないが位置の不確定さは無限大

赤線は前半の波動関数Y

波束

ある波長を中心に有限の波長の範囲での波の重ね合わせ位置と運動量の不確定さ有限

h

4p

h

4p

デルタ関数

位置の不確定さは0運動量の不確定無限大

hnc

h

l

様々な波長の波の

重ね合わせ

位置 位置位置

波長波長

波長l0 l0l0

0

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力学(物理学I)では㊶

x

例:時刻 t = 0 に質量 mのボールを原点から図のように初速度 vで投げた。

z

v

q

時刻 t = 0 のボールの x軸方向の位置と運動量は

x = 0

px = mv sinq

でボールの位置と運動量の不確定さは考えなかったが、実際にはそれらの積は

プランク定数 h程度の不確定さが存在する。ただ、プランク定数 hは6.626×10-34 J・s と

非常に小さいので力学で扱う巨視的な物体は、その位置や運動量の不確定さを無視して全く問題ない。

しかし、その質量が 9×10-31 kg しかない電子のような粒子は、プランク定数程度の不確定さは無視できず、量子力学的な取り扱いが必要となる。

DxDp > h

4p

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パイ中間子(p)の静止エネルギーの推定

DtDE = = ≒ 5.7×10-35 [J・s]

パイ中間子の静止エネルギー(エネルギーの不足分)

核力の到達距離 1 fm

を光速で進んだ時にかかる時間

h

4p

6.626×10-34

4p

中間子の名前の由来:陽子・中性子の940 MeV と電子 0.5 MeVの中間の質量を持つため

光速 c = 3×108 m/s

1×10-15 [m]

3×108 [m/s]

≒ 3.3×10-24 [s]

Dt =

核子の大きさ

p中間子の静止エネルギー:140 MeV

DE = = 5.7×10-35 [J・s]

3.3×10-24 [s]

≒ 1.7×10-11 [J] ≒1.1×108 [eV] = 110 [MeV]

5.7×10-35

Dt

問題:DEを求めよ。