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トピックス PFU Tech. Rev., 27, 1,pp.51-55 (10,2016) 51 アイデアをかたちに. 自主的な活動を支援するものづくり環境の立ち上げ PFU グループでは,社員一人ひとりが主役となって活躍できる組織風土を目指しています.本トピックスでは, アイデアを素早くかたちにしてものづくりを楽しむ活動と,その活動を支援するための環境の立ち上げについて紹介し ます. 1 まえがき PFU には,社員の自主的な活動を支援する仕組みが 複数あります.例えば,所属や組織を超えたグループま たは個人が,どのような内容のテーマでも企画提案して 取り組むチャンスを提供する Rising-V 活動などです. 2013 年頃,これまでの仕組みとは別に,もっと手軽 にアイデアをかたちにして楽しめる環境が社内にあって も良いのではないかとの声が上がりました.ちょうどそ の頃,国内家電量販店で低価格な 3D プリンタ 注1) の販 売が開始され,また,3Dプリンタやレーザーカッター 注2) などのデジタル工作機器を備えたオープンなファブス ペース 注3) が開設されるようになったこともあり,個人 のアイデアをかたちにできる環境が話題となっていまし た.このような世の中の流れもあり,社内に「ものづ くり環境」を立ち上げる,私たちの活動が 2013 年 11 月に始まりました. 2 新しいものづくり環境を構築する活動 の概要 2.1 狙い その頃,アイデアについての議論の多くは,ホワイト ボードやモニター上の 3D(3 次元)モデル,手づくり 注1) 3D データをもとに,樹脂などを積み重ねて立体物を造形する 機器. 注2) デジタルデータをもとに,レーザー光線で様々な素材を切断 する機器. 注3) 専用の工作機械に対する知識や操作経験のないような一般の 人が,デジタル工作機器を手軽に使用してものづくりできる場 所のこと. のモックアップ(模型)を使って行われていました.そ こから一歩踏み込んで議論し,アイデアを練り上げるに あたっては,以下のような想いを抱いていました. 1)アイデアを実際に触れる「かたち」にしたい 2)アイデアをすぐに「かたち」にしたい 3)アイデアが「かたち」になる楽しさを感じたい そこで,これらの想いを叶えるため,新しいものづく り環境の構築を目指しました. 2.2 スモールスタート まず,会社の一画にスペースを確保し,環境づくりか ら始めました.MAKERS 参1) で注目された「デスクトッ プ工房 四種の神器」と言われる 3D プリンタ,CNC 切削機 注4) ,レーザーカッター,3Dスキャナ 注5) の導入を 柱とし,活動開始から 4 か月後の 2014 年 3 月に環境 が完成しました. 初めのうちは,機器を使いこなすことができず失敗 もしました.しかし,次第にアイデアをかたちにするこ とができるようになり,踏み込んだ議論を行えるように なったのです.そこで議論されたアイデアが製品化にも 繋がるようになりました. こうして,数名から始まった活動は,会社からの後押 しを受け,2016 年には全社的なものづくり環境を開設 するまでに拡大しました. 注4) コンピュータの数値制御により,切削加工を自動で行う機器. 注5) 物体の形状を検知して 3D データとして取り込む機器. 高森正也 * Masaya Takamori 笠原雄毅 * Yuki Kasahara 楯岡将規 ** Masaki Tateoka * 先行技術開発統括部 先行技術開発部 ** PFU ヒューマンデザイン株式会社 教育センター

アイデアをかたちに. 自主的な活動を支援するものづくり環境の … · アイデアを素早くかたちにしてものづくりを楽しむ活動と,その活動を支援するための環境の立ち上げについて紹介し

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トピックス

PFU Tech. Rev., 27, 1,pp.51-55 (10,2016) 51

アイデアをかたちに.自主的な活動を支援するものづくり環境の立ち上げ

PFUグループでは,社員一人ひとりが主役となって活躍できる組織風土を目指しています.本トピックスでは,

アイデアを素早くかたちにしてものづくりを楽しむ活動と,その活動を支援するための環境の立ち上げについて紹介し

ます.

1 まえがきPFUには,社員の自主的な活動を支援する仕組みが

複数あります.例えば,所属や組織を超えたグループま

たは個人が,どのような内容のテーマでも企画提案して

取り組むチャンスを提供するRising-V活動などです.

2013年頃,これまでの仕組みとは別に,もっと手軽

にアイデアをかたちにして楽しめる環境が社内にあって

も良いのではないかとの声が上がりました.ちょうどそ

の頃,国内家電量販店で低価格な3Dプリンタ注1)の販

売が開始され,また,3Dプリンタやレーザーカッター注2)

などのデジタル工作機器を備えたオープンなファブス

ペース注3)が開設されるようになったこともあり,個人

のアイデアをかたちにできる環境が話題となっていまし

た.このような世の中の流れもあり,社内に「ものづ

くり環境」を立ち上げる,私たちの活動が2013年11

月に始まりました.

2 新しいものづくり環境を構築する活動の概要

2.1 狙いその頃,アイデアについての議論の多くは,ホワイト

ボードやモニター上の3D(3次元)モデル,手づくり

注1)3D データをもとに,樹脂などを積み重ねて立体物を造形する機器.

注2)デジタルデータをもとに,レーザー光線で様々な素材を切断する機器.

注3)専用の工作機械に対する知識や操作経験のないような一般の人が,デジタル工作機器を手軽に使用してものづくりできる場所のこと.

のモックアップ(模型)を使って行われていました.そ

こから一歩踏み込んで議論し,アイデアを練り上げるに

あたっては,以下のような想いを抱いていました.

1)アイデアを実際に触れる「かたち」にしたい

2)アイデアをすぐに「かたち」にしたい

3)アイデアが「かたち」になる楽しさを感じたい

そこで,これらの想いを叶えるため,新しいものづく

り環境の構築を目指しました.

2.2 スモールスタートまず,会社の一画にスペースを確保し,環境づくりか

ら始めました.MAKERS参1)で注目された「デスクトッ

プ工房 四種の神器」と言われる3Dプリンタ,CNC

切削機注4),レーザーカッター,3Dスキャナ注5)の導入を

柱とし,活動開始から4か月後の2014年3月に環境

が完成しました.

初めのうちは,機器を使いこなすことができず失敗

もしました.しかし,次第にアイデアをかたちにするこ

とができるようになり,踏み込んだ議論を行えるように

なったのです.そこで議論されたアイデアが製品化にも

繋がるようになりました.

こうして,数名から始まった活動は,会社からの後押

しを受け,2016年には全社的なものづくり環境を開設

するまでに拡大しました.

注4)コンピュータの数値制御により,切削加工を自動で行う機器.注5)物体の形状を検知して 3Dデータとして取り込む機器.

高森正也 *Masaya Takamori

笠原雄毅 *Yuki Kasahara

楯岡将規 **Masaki Tateoka

* 先行技術開発統括部 先行技術開発部** PFUヒューマンデザイン株式会社 教育センター

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アイデアをかたちに.自主的な活動を支援するものづくり環境の立ち上げ

PFU Tech. Rev., 27, 1, (10,2016)

3 活動の効果2.1節で挙げた狙いを実現した結果や効果を紹介し

ます.

3.1 触れる「かたち」にするアイデアの着想段階では議論が発散し,方向性が定ま

らないことが多くあります.しかし,そこに触れるもの

があることで議論の方向性が定まり,アイデアがより具

体化されるようになりました.この段階では,頭に浮か

んだイメージを触って確認したり,伝えたりすることが

重要なのです.

3.2 すぐに「かたち」にする図-1に示すとおり,従来,アイデアをかたちにするには,手づくりするプロセスか外部に依頼するプロセス

で行っていました.すぐにかたちを確認したい時は,厚

紙や発泡スチロールでモックアップを手づくりしていま

した.しかしこれでは,手づくりの精度が低いのか,ア

イデアが悪いのか判断に困ることがありました.モック

アップの製造を外部に依頼すると精度は高く綺麗に仕上

がりますが,費用は高く納期も長いため,何度も依頼す

ることはできません.

図-2に示す新しいプロセスでは,確認に必要な一定の精度を維持したかたちをすぐに作れるため,アイデア

を練り上げる図-3のサイクルを素早く回せるようになりました.

3.3「かたち」になる楽しみ当初は,思い通りのかたちを作れませんでした.それ

でも3Dプリンタで,何もないところから目の前にかた

ちができ上がっていくことに楽しみを覚えました.

「百聞は一見に如かず」と言いますが,かたちになっ

たアイデアはより強く印象に残るようになるため,ある

時,頭の中で他のアイデアと繋がり,新しいアイデアに

なるということも考えられます.

4 ものづくり環境を活用した事例4.1 Omoidori2016年6月に発表されたOmoidori(おもいど

り)注6)の開発にも,ものづくり環境が活躍しています.

この節ではOmoidoriがどのように今のかたちへと姿

を変えていったのかを紹介します.

(1)家族を繋ぐOmoidori

家庭では子供の成長に合わせてたくさんの写真を撮影

してアルバムに綴じます.アルバムは写真の保管庫のよ

うなもので,普段は見返されることもなく,忘れられた

存在であることに私たちはもどかしく感じていました.

写真が忘れられる一番の理由は「手元にない」ためだ

と考えました.それならば,いつも手元にあるスマート

フォンに写真を取り込めるようにしよう,との想いから

作られたのがOmoidoriです.Omoidoriをきっかけ

に,眠っていたアルバムを開いて,家族でおしゃべりを

楽しみながら写真を取り込みます.そのような家族を繋

ぐ製品を目指しました(図-4参照).注6)Omoidori は,アルバムに貼られた写真をテカりなくキレイ

にスキャンする全く新しい iPhone アルバムスキャナです.詳細は,「想い出をつなぐ iPhone アルバムスキャナ「Omoidori」開発」(本文 1~ 9頁)を参照してください.

◆図 -1 アイデアをかたちにする従来のプロセスの一例◆

◆図 -2 アイデアをかたちにする新しいプロセス◆

◆図 -3 アイデアを練り上げるサイクル◆

着想 確認ラフスケッチ かたち(手づくり)

モックアップを手づくりするプロセス

着想 確認ラフスケッチ 3Dモデル化 2D図面化 見積もり入手 費用処理 製造開始 納期管理 かたち

モックアップの製造を外部に依頼するプロセス

着想 確認ラフスケッチ 3Dモデル化 製造開始 かたち

立ち上げた環境を利用するプロセス

確認

判断

着想

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PFU Tech. Rev., 27, 1, (10,2016) 53

アイデアをかたちに.自主的な活動を支援するものづくり環境の立ち上げ

(2)技術の他に大切なこと

当初はスマートフォンのカメラで写真を撮影するだけ

で良いと楽観的に考えていましたが,実際に撮影した画

像を見て唖然としました.なぜなら,アルバムのフィル

ムに蛍光灯の白い光が写り込んでしまい,写真の内容が

見えなくなってしまうからです.このような画像ではと

ても思い出を振り返ることはできません.

そこで,外部照明を遮蔽する箱で写真を囲み,内部照

明で写真を照らすというアイデアを思いつき,スマート

フォンと組み合わせて使う遮蔽箱を作りました.さっそ

く社内でレビュー会を開いてみると,そこで聞こえてき

たのは「自分が使う気持ちにはなれない」との鈍い反応

でした.確かに,撮影した画像に蛍光灯の光の写り込み

はなくなりましたが,大きい箱が邪魔になり思い出を楽

しむ気持ちが削がれてしまっていたのです.

(3)アイデアをかたちにする難しさ

Omoidoriは机の上に置けるようコンパクトである

べき,と絶対に譲れない目標を立てました.そこからは

試行錯誤の繰り返しです.カメラの視野をミラーで折り

返すことで箱の大きさを削減できないかというアイデア

を思いついたら新しいモックアップを作り,今度は人が

見やすいようにスマートフォンの画面を手前に向けてみ

てはどうかと思いついたらまた次のモックアップを作り

ました.このように,モックアップを作り直すうちに,

手づくりでは実現できない複雑なかたちとなっていきま

した.モックアップの製造を外部に依頼する方法もあり

ますが,それでは製造に時間がかかりサイクルを素早く

回せません.

(4)新しいものづくり環境の活用

この状況から抜け出すために新しいものづくり環境に

目を付けました.3Dプリンタやレーザーカッターであ

れば自分の手で素早くかたちを作れると聞いて,実際に

試してみるとこの効果は期待以上でした.アイデアを紙

面ではなく実物を触って確かめられるようになり,良し

悪しの判断に迷いがなくなりました.モックアップを並

べてみると,ものづくり環境の導入後は説得力が一気に

増しています(図-5参照).これだけのものが手軽に作れるようになったことで「新しいものを次々と作りた

い」と試作開発の現場が活気づくようになりました.

4.2 ScanSnap(スキャンスナップ)iX100注7)

用マグネットホルダーPFUITFair注8)2014 で展示した ScanSnap

iX100(以降,iX100)用のマグネットホルダー

(図-6参照)も,ものづくり環境でかたちにしたアイデアの一つです.

(1)ラフスケッチをその場で共有

ものづくり環境では,かたちにする前段階としてラフ

スケッチ(紙)での議論を行います.しかし,1枚しか

ないラフスケッチでは,その場の全員でアイデアを共有

することができず,コピーしに行くことは手間でした.

そこで,ラフスケッチをスキャンしてプロジェクタで

共有することを考えましたが,机はラフスケッチで溢れ,

スキャナの設置場所がありません.その時ふと,壁一面

のホワイトボードが目に入りました.そこにはスペース

が十分にあったのです.

注7)パーソナルドキュメントスキャナ「ScanSnap シリーズ」は,ワンプッシュで「カンタン・スピーディー・コンパクト」に書類を電子化できるツールです.ScanSnap iX100 は,ScanSnap シリーズの中で最も小型で軽量な上にバッテリー搭載のワイヤレスモデルです.

注8)PFUITFair はセミナーや展示デモを通じて当社の新たな取組みや技術を紹介するイベントです.

◆図 -4 Omoidori の利用イメージ◆

手づくり 製品ものづくり環境導入後

◆図 -5 試作のかたちと製品のかたち◆

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アイデアをかたちに.自主的な活動を支援するものづくり環境の立ち上げ

PFU Tech. Rev., 27, 1, (10,2016)

(2)ホワイトボードへの設置

iX100はバッテリーと無線機能が内蔵されており,

どこでも使うことができます.そこで,スペースのある

ホワイトボードへ設置するためのホルダーの検討を開始

しました.

iX100は軽いため,磁石で支えられる目処がすぐに

立ちました.しかし,iX100に手を加えることなくホ

ルダーを取り付けるには工夫が必要でした.何度もかた

ちにして確認を行った結果,プラスチックの柔らかさに

よる変形を利用し,ホルダーを取り付けることに成功し,

ホワイトボードへの設置ができるようになりました.こ

れにより,議論中にすぐにラフスケッチをスキャンし,

簡単に共有できるようになりました.

(3)別の活動との繋がり

学校から配られるお知らせや町内の年間行事のスケ

ジュールが書かれた紙を,冷蔵庫に貼って管理している

家庭があります.しかし,貼られる紙が増えると重なり

合い,知りたい情報を見つけにくくなることがよくあり

ます.その困りごとを「スキャンしてタブレットで確認

できるようにする」ことで改善を目指す活動がありまし

た.

その活動では,場所をこれまでの冷蔵庫から変えない

ことが大切であると考えていましたが,どのように設置

するか悩んでいました.そんな時,ホワイトボードに設

置されていたiX100を目にしたことにより,悩みを解

決できたのです.そして,家庭でのスキャナ活用方法の

提案として「家族の掲示板」のコンセプトモデル展示に

繋がりました.

5 活動の拡がり5.1 スモールスタートから全社活動へPFUでは,前述のとおりRising-V活動など,社員

の取組みを会社が後押しする組織風土づくりを醸成して

きました.そのような組織風土の中,前章までのスモー

ルスタートの活動について,少しずつ社内で認識が拡が

り,興味を持つ社員が増えていきました.そして,全社

的なものづくり環境の設置を希望する声が増えました.

その結果,会社の後押しもあり,以下の目的を持った,

全社員が利用できるものづくり環境を新たに開設する運

びとなりました.

1)利用者が,自分の想像をかたちにでき,ものづく

りの楽しさを実感できるようにする.

2)Rising-V活動に留まらず,今まで以上に個人が

アイデアを出しやすい風土醸成のきっかけにする.

5.2 全社へ展開する工夫5.2.1 立ち上げ時の工夫全社の活動として展開するため,立ち上げ時には以下

の二つの工夫を行いました.

(1)有志インストラクターチームの結成

全社に展開し,風土を醸成するには「継続」すること

が必要です.そのためには,運営側も利用者も楽しく支

え合って運営していくことが重要となります.そこで,

全社レベルで人を巻き込んで活動することを目的に,開

発部門以外も含む多くの部門から,有志のインストラク

ター(ものづくり用の機器の使い方を教える役割の社員)

を募集し,インストラクターチームを結成しました.多

くの部門の社員が関わることで,運営方法や活用方法に

対して,様々な角度からの意見がでるようになりました.

また,普段の業務ではやり取りのない部門の社員同士で

協力することで,インストラクター間にも刺激が生まれ

ました.

(2)利用しやすい空間の演出

部屋のデザインはオフィスとは異なる雰囲気となるこ

とを重視し,図-7に示すとおり,ガラス張りのオープンな部屋としました.オープンな空間とすることで,人

が集まり意見を出し合いやすく,アイデアを創出しやす

い空間を演出しました.

◆図 -6 ITFair で展示したマグネットホルダー付きの iX100◆

iX100本体

マグネットホルダー

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PFU Tech. Rev., 27, 1, (10,2016) 55

アイデアをかたちに.自主的な活動を支援するものづくり環境の立ち上げ

5.2.2 運営の工夫とこれから実際の運営については,以下の二つの工夫を行ってい

ます.

(1)利用者からインストラクターへ

インストラクターから教わった利用者が,新たなイン

ストラクターとなれるような好循環(インストラクター

の輪が拡がる)を形成できるように,インストラクター

が操作のすべてを行わず,利用者自身が実際に触って覚

える参加型の運営としています.

(2)研修などでの活用

新入社員研修などの場でも活用することで,早い

段階からものづくりの楽しさを実感してもらい,より

活動の活性化を目指した運営も行っています.その他に

も社内イベントでの活用など,幅広く活動の活性化や社

員の自主的な活動の支援にも繋がるような運営も行って

います.

今後もインストラクター,利用者と共に運営し,社員

一人ひとりが主役となって活躍できる組織風土づくりの

醸成を図っていくとともに,この活動から新たなビジネ

スの種が生まれるきっかけづくりに繋がるよう運営して

いきます.

6 むすびこれまで述べてきたとおり,ものづくり環境での活動

から生まれたアイデアが新しい製品に繋がり,そしてそ

のような活動が全社に拡がりました.このことで,もの

づくりの楽しさを実感するとともに,ものを作りたいと

思うきっかけにも意識が向くようになりました.そこに

は,具体的に何かを良くしたいなどの想いがあります.

そのような想いを持つことが,ものづくりによる物の

提供で終わることなく,新しい価値の創造に繋がってい

くと感じています.

参考文献参1)クリス・アンダーソン:MAKERS―21 世紀の産業革命が始

まる,NHK出版,第 1版,東京,pp.106-110(2012)

◆図 -7 オープンな空間演出◆