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Coronary Plaque Morphology Evaluated by Intravascular Ultrasound Junko Honye, M.D., Ph.D. Summary Intravascular ultrasound (IVUS) can visualize three-dimensional structure of the vessel wall, allowing IVUS to demonstrate quantitative analysis of lumen, vessel and plaque cross-sectional area or volume as well as morphological characteristics of plaque components such as calcification. Two different types of IVUS catheters are commercially available: a mechanical rotational type and a phased array type. Recently, several new algorithms have been developed for radio-frequency analysis of ultrasound signals such as IB-IVUS and Virtual Histology IVUS to evaluate tissue characterization of plaque. IVUS appears to have the potential to diagnose vulnerable plaque, and we have to utilize the information and data for secondary prevention. Division of Cardiology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine NICHIDOKU-IHO Vol. 53 No. 2 70-75 (2008) はじめに 虚血性心疾患の観血的診断法として、冠動脈造影 coronary angiographyCAG)が病変の重症度評価や治 療方針決定におけるスタンダードとして用いられてい る。しかし,CAGは血管内腔のシルエットを描出する lumenogramであり、血管壁における動脈硬化性病変自 体を評価することは不可能である。血管内エコー法 intravascular ultrasoundIVUS)は、先端に高周波超 音波探触子が付着したカテーテルを血管内腔に挿入して 血管壁の構築を直接観察する診断法であり、動脈硬化性 病変の定量的・形態的評価が可能である。1989年に臨床 応用されて以来、動脈硬化の進展・病態把握・冠動脈イ ンターベンション(percutaneous coronary interventionPCI)における補助診断として多用され、多くの情報を もたらしてきた。 IVUSカテーテルの種類(図1) IVUSカテーテルは探触子自体が回転する機械走査式 と、カテーテル自体は回転しない電子走査式の 2 種類が ある。機械走査式カテーテル(Boston Scientific社製・ Terumo社製・Volcano社製)では、カテーテル自体が900 1,800rpmで回転し、血管断面像が描出される。探触子 の発振周波数は3545MHzで、解像度に優れた画像が 得られるという利点がある半面、回転速度が不均一にな るために歪んだ画像(NURD: non-uniform rotational distortion)が描出されることがある。一方,電子走査式 Volcano社製)は、カテーテル先端部が64素子20MHz触子で構成されている。カテーテル自体は回転しないた めに回転ムラがなく、仮想組織性状評価(Virtual Histology TM )が可能である。カテーテル先端径は2.42.9Frと細小化されており、多くの症例で治療前の高度 2.冠動脈 2-2.血管内エコー法による冠動脈プラークの診断 本江 純子 日本大学医学部 内科学系循環器内科学分野 プラーク診断の現状-頸動脈プラークと冠動脈プラーク- 特集 70(236) 日獨医報 第53巻 第 2 号 236-241(2008)

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Coronary Plaque Morphology Evaluated by Intravascular Ultrasound

Junko Honye, M.D., Ph.D.

SummaryIntravascular ultrasound (IVUS) can visualize three-dimensional structure of

the vessel wall, allowing IVUS to demonstrate quantitative analysis of lumen, vessel and plaque cross-sectional area or volume as well as morphological characteristics of plaque components such as calcification. Two different types of IVUS catheters are commercially available: a mechanical rotational type and a phased array type. Recently, several new algorithms have been developed for radio-frequency analysis of ultrasound signals such as IB-IVUS and Virtual Histology IVUS to evaluate tissue characterization of plaque. IVUS appears to have the potential to diagnose vulnerable plaque, and we have to utilize the information and data for secondary prevention.

Division of Cardiology, Department of Medicine, Nihon University School of Medicine

NICHIDOKU-IHOVol. 53 No. 2 70-75 (2008)

はじめに

虚血性心疾患の観血的診断法として、冠動脈造影(coronary angiography:CAG)が病変の重症度評価や治療方針決定におけるスタンダードとして用いられている。しかし,CAGは血管内腔のシルエットを描出するlumenogramであり、血管壁における動脈硬化性病変自体を評価することは不可能である。血管内エコー法(intravascular ultrasound:IVUS)は、先端に高周波超音波探触子が付着したカテーテルを血管内腔に挿入して血管壁の構築を直接観察する診断法であり、動脈硬化性病変の定量的・形態的評価が可能である。1989年に臨床応用されて以来、動脈硬化の進展・病態把握・冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)における補助診断として多用され、多くの情報をもたらしてきた。

IVUSカテーテルの種類(図 1)

IVUSカテーテルは探触子自体が回転する機械走査式と、カテーテル自体は回転しない電子走査式の 2種類がある。機械走査式カテーテル(Boston Scientific社製・Terumo社製・Volcano社製)では、カテーテル自体が900

~1,800rpmで回転し、血管断面像が描出される。探触子の発振周波数は35~45MHzで、解像度に優れた画像が得られるという利点がある半面、回転速度が不均一になるために歪んだ画像(NURD: non-uniform rotational

distortion)が描出されることがある。一方,電子走査式(Volcano社製)は、カテーテル先端部が64素子20MHz探触子で構成されている。カテーテル自体は回転しないために回転ムラがなく、仮想組織性状評価(Virtual

HistologyTM)が可能である。カテーテル先端径は2.4~2.9Frと細小化されており、多くの症例で治療前の高度

2.冠動脈2-2.血管内エコー法による冠動脈プラークの診断

本江 純子

日本大学医学部 内科学系循環器内科学分野

プラーク診断の現状-頸動脈プラークと冠動脈プラーク-特 集

70(236) 日獨医報 第53巻 第 2号 236-241(2008)

狭窄を通過して責任病変部の観察が可能である。

IVUSによる動脈硬化性病変の評価

1.正常冠動脈と初期動脈硬化性病変IVUS上、正常冠動脈は輪状の層に囲まれた円腔状に描出される。カテーテルは画面中央にblack holeとして認められ、その外側の円腔内には赤血球からの反射エコーが認められる。さらにその外側に輪状の層として描出される血管壁が存在する。動脈硬化の初期段階として内膜が肥厚してくると、IVUS上血管壁は 3層構造として認識される(図 2)。最内層は組織学的には内膜および内弾性板に相当し、最外層には内膜よりさらにエコー輝

度の高い層が認められ、これが外膜と外弾性板に一致する。両者の間にエコー輝度が低く薄い層が観察され、これが中膜に相当する。Fitzgeraldらは、30MHzのIVUS

カテーテルを用いた場合、内膜肥厚が178μm以上の場合に 3層構造が認められるようになると報告している1)。また若年者ではこれが不明瞭であることから、3

層構造自体が初期の動脈硬化性病変であると考えられている。また、造影上は「正常」と判断される部位をIVUS

で観察すると、50%程度の動脈硬化性病変が存在すると報告されている2)。

2.動脈硬化性プラークの形態3)

Soft(echolucent)plaqueとfibrous plaque:脂肪成分を多く含む場合に低輝度エコーとして描出されることが多い。プラーク内に特にエコー輝度の低い領域が認められる場合には、壊死性の領域やプラーク内出血が原因であることが多い。Soft plaqueの多くは、膠原線維やelastinの含有量が少ない。Fibrous plaqueは、プラークのエコー輝度がsoft plaqueと石灰化の中間程度のプラークを指す。通常は、プラーク内の繊維性組織量が増加するほど、エコー輝度が上昇する。Dense fibrousな領域は後方エコーの減衰を伴い、石灰化との鑑別が困難なことがある。石灰化:IVUSは冠動脈造影に比し、石灰化の検出率に優れている。石灰化は、極めてエコー輝度が高い領域として描出され、音響陰影を伴う。プラーク内の石灰化

図 1 IVUSカテーテルの種類A 機械走査式         B 電子走査式カテーテルの先端部

内膜

外膜

ガイドワイヤーのアーチファクト

中膜

IVUSカテーテル

図 2 冠動脈の断面像

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が血管内腔に極めて近い領域に存在する浅在性superficial、プラークの深部で外膜に近い領域に存在する場合を深在性deepと定義する。また、石灰化が円周上0 °~90°未満を軽度、90°~180°を中等度、180°以上を高度石灰化と呼ぶ。この石灰化の程度と分布は、冠動脈インターベンションにおける治療手技選択に大きく影響する。

3.血管リモデリング(図 3)動脈硬化の進展過程において、当初は血管自体が外方に拡大することにより血管内腔を保持するが、動脈硬化が血管断面の40~50%以上に進行するに従い血管内腔を狭小化していく現象が認められており、代償性拡大と呼ばれている4)。この現象は動脈硬化に対する生体の防御反応と見なすこともでき、冠動脈造影上は健常と考えられる部位にもしばしば軽度の動脈硬化性プラークが観察される理由のひとつである。これに対し、責任病変部の

血管径が近位対照部よりむしろ狭小化している病変も存在 し、paradoxical arterial shrinkage5)ま た はnegative

remodelingといわれる。

4.計測についてプラークの分布:動脈硬化性プラークは、その局在により求心性プラーク(concentric plaque)と偏心性プラーク(eccentric plaque)とに分類される。プラークの断面像において、最も薄い部位の壁厚(A)および最も厚い部位の壁厚(B)からeccentricity index(EI = A/B)を求める3)。血管断面の定量的評価(図 4):血管内腔面積と全血管

面積からプラーク断面積を算出し、これが全血管面積に占める割合を面積狭窄率として求める。秒間0.5mmまたは1.0mmで自動プルバックを行うと、長軸方向の容積評価が可能となる。

IVUSの読影テクニック:コントラスト併用IVUS

IVUS施行時にコントラスト剤を併用すると、IVUSの診断精度を高めることができ、その後にIVUS画像を見直すことで読影力を養うこともできる。通常は、生理食塩水などのフラッシュ液を用いるネガティブコントラスト法(negative contrast)を用いる6)(図 5)。以下のように形態が複雑な病変の観察に併用すると良い。血栓は血管内腔に存在する塊状エコーとして描出され、血流による可動性をもつ多房性・層状構造を呈する

プラーク 血管内腔

全血管面積

血管内腔面積

プラーク断面積= 全血管面積-血管内腔面積

面積狭窄率=プラーク断面積全血管面積

Distal Proximal

図 3 代償性拡大

図 4 血管断面の計測法

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場合がある。急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の責任病変では、プラーク内に血球エコーによるmicro-channelを認めると血栓を強く疑う根拠となる。ネガティブコントラストにより、血栓とプラークとの境界に生食水が入り込んで鑑別が可能となる場合もある。プラーク破綻像は、プラーク内への亀裂・プラーク内での血球反射エコーの検出・および脂質成分の抜け殻である潰瘍形成像として検出される。ただし、急性期には責任病変部に血栓が残存していることも多く、破綻したプラークが血栓に埋もれているために明瞭に描出できないことがある。

Vulnerable plaqueの診断

近年、プラーク破綻を起こす可能性の高い不安定プラーク(unstable plaqueもしくはvulnerable plaque)の診断に注目が集まっている7)。Vulnerable plaqueの病理学的特徴は、①プラーク内に大きなlipid coreを有する、② 線維性被膜が薄い(65μm未満)、③ プラークの肩(shoulder)といわれる部位にマクロファージなど炎症細胞浸潤が認められることである。ACS症例において、責任病変の近傍や他枝の軽度病変を観察すると、vulnerable plaqueと考えられる所見が高頻度に認められる。その特徴として、①低輝度エコー主体のプラーク、② eccentric plaque、③プラーク内に薄い線維性被膜に被われた脂質コアを有する、④代償性拡大を伴うなどが挙げられる。また、ACS責任病変においては、高度の石灰化を認めないのにかかわらず後方エコーが減衰する

attenuated plaqueは、PCI治療後にslow flowが起こりやすいと考えられている。しかし、従来のgray scaleの画像では質的な診断には限界があるため、最近で高周波信号〔radio-frequency(RF)signal〕を種々のアルゴリズムで解析することにより、質的診断能力を高める新たな方法が提唱されている。

1.IB (integrated backscatter)-IVUS8)

観察時に記録された超音波信号を直接IVUS装置から出力し、高速フーリエ変換によってIB値が計算される。IB値はプラークの組織性状により有意に異なることが従来の研究で証明されており、これをカラーコードとして表示したものがIB-IVUSである(図 6)。この方法では、脂肪性分に富む部分が青・石灰化は赤・線維成分は緑と表示され、組織学的にも良い相関を示すといわれている。また、非責任病変において、IB-IVUS上vulnerable

plaqueと評価された場合、その後のフォローアップにおいてACSを発症するリスクが高かったと報告されている9)。

2.Virtual HistologyTM(図 7)Virtual HistologyTM(VH-IVUS) は、RF backscatter

signalのスペクトルを解析することにより、組織特性を定性的に評価してプラークの構成成分を表示する方法であ る10)。 現 在、Volcano社 のphased array式20MHzのIVUSカテーテルを用い、画像の構築が行われている。VH-IVUSでは、プラークの構成成分を① fibrous(緑色)、② fibro-lipidic(緑黄色)、③ necrotic core(赤色)、

IVUS post DCA

Baseline Negative contrast

Flap

図 5 ネガティブコントラストの症例生食水でフラッシュを行うと,血管表面に生じたフラップが明瞭に描出される.

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Gray-scale IVUS IB-IVUS

図 6 Gray-scale IVUSとIB-IVUSとの比較 A Gray-scale IVUS B IB-IVUS

Gray-scale IVUS VH-IVUS

図 7 Gray-scale IVUSとVH-IVUSとの比較 A Gray-scale IVUS B VH-IVUS

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④ calcium(白色)で表示され、組織標本と対比したところ正診率は80~90%であった。実際の冠動脈プラークは多彩な成分で構成されていることから、4種類に分類することには限界がある。さらに、血栓を解析するアルゴリズムがないため、血栓を含む病変の評価はできない。Necrotic coreがプラーク表層に存在するTCFA (thin-cap

fibroatheroma)はACSに多く認められると報告されているが11)、TCFAが将来的に心血管イベントを起こしうるか否かについては不明であり、現在欧米で前向き大規模試験(PROSPECT)が進行中である。以上のような方法を用い、vulnerable plaqueを診断することが可能である。また、OCT (optical coherence

tomography)や血管内視鏡を用いると、その精度は高まるであろう。こうしたプラークを認めた場合には、それを二次予防に生かすべきであることはいうまでもない。

【参考文献】1)Fitzgerald PJ, St Goar FG, Connolly AJ, et al: Intravascular

ultrasound imaging of coronary arteries. Is three layers the norm? Circulation 86: 154-158, 1992

2)Mintz GS, Painter JA, Pichard AD, et al: Atherosclerosis in angiographical ly “normal” coronary artery reference segments: an intravascular ultrasound study with clinical correlations. J Am Coll Cardiol 25: 1479-1485, 1995

3)Mintz GS, Nissen SE, Anderson WD, et al: American College of Cardiology Clinical Expert Consensus Document on Standards for Acquisition, Measurement and Reporting of Intravascular Ultrasound Studies (IVUS). A report of the American College of Cardiology Task Force on Clinical

Expert Consensus Documents. J Am Coll Cardiol 37: 1478-1492, 2001

4)Glagov S, Weisenberg E, Zarins CK, et al: Compensatory enlargement of human atherosclerotic coronary arteries. N Engl J Med 316: 1371-1375, 1987

5)Pasterkamp G, Wensing PJ, Post MJ, et al: Paradoxical arterial wall shrinkage may contribute to luminal narrowing of human atherosclerotic femoral arteries. Circulation 91: 1444-1449, 1995

6)Honye J, Saito S, Takayama T, et al: Clinical utility of negative contrast intravascular ultrasound to evaluate plaque morphology before and after coronary interventions. Am J Cardiol 83: 687-690, 1999

7)Davies MJ: Stability and instability: two faces of coronary atherosclerosis. The Paul Dudley White Lecture 1995. Circulation 94: 2013-2020, 1996

8)Kawasaki M, Takatsu H, Noda T, et al: In vivo quantitative tissue characterization of human coronary arterial plaques by use of integrated backscatter intravascular ultrasound and comparison with angioscopic findings. Circulation 105: 2487-2492, 2002

9)Sano K, Kawasaki M, Ishihara Y, et al: Assessment of vulnerable plaques causing acute coronary syndrome using integrated backscatter intravascular ultrasound. J Am Coll Cardiol 47: 734-741, 2006

10)Nair A, Kuban BD, Tuzcu EM, et al: Coronary plaque classification with intravascular ultrasound radiofrequency data analysis. Circulation 106: 2200-2206, 2002

11)Rodriguez-Granillo GA, García-García HM, McFadden EP, et al: In vivo intravascular ultrasound-derived thin-cap fibroatheroma detection using ultrasound radiofrequency data analysis. J Am Coll Cardiol 46: 2038-2042, 2005

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