8
1 GeneChip ® miRNA 2.0 Array はじめに 1993 年に発見されて以来、低分子ノンコーディング RNA microRNAscaRNAsnoRNA)は、複雑な生命体の発生と 生理機能の基礎をなす調節回路の主要構成要素として舞台に登 場するようになりました。その結果、異なるパターンで発現さ れる遺伝子の生物学的背景を理解するためには、メッセンジャー RNAmRNA)の発現に関する研究を miRNA 解析で補完する ことがますます重要になってきています。これらの主要な機能 性遺伝子産物は、全タンパク質コード遺伝子の約 30%を制御し ていると推定されています。 このような低分子のノンコーディング RNA は、以下のような 範囲も含め、細胞の発生機構と生理学的機構を非常に広範にわ たってカバーしています。 タンパク質翻訳阻害 リボソーム RNA プロセシング 選択的スプライシング mRNA 分解 低分子ノンコーディング RNA 検出用の発現マイクロアレイ のニーズに応じて、アフィメトリクスでは 2009 年に第一世代 miRNA アレイを発売しました。これは、miRBase version 11snoBAse および Ensembl の利用可能なバージョンに基 づくものでした。2011 年には、アフィメトリクスは miRBase version 15 および snoBAse Ensembl の更新された情報に 基づく新しいバージョンのアレイを発売しました。新しいバー ジョンのマイクロアレイも、第一世代のアレイと同様に、単一 のアレイ上にすべての種の miRNA、ヒト、マウス、ラットの pre-miRNA およびヒトの snoRNAscaRNA を搭載しています。 GeneChip ® miRNA 2.0 Array の独自の特長は、ヒト、マウ ス、ラットのサンプル中に存在する miRNA 前駆体を同定する プローブセットを搭載している点です。 このテクニカルノートは、GeneChip miRNA 2.0 Array 次の性能を示すことを目的としたものです。 感度 特異性 ダイナミックレンジ 再現性 GeneChip ® miRNA Array とのシグナルおよび倍率変化の相関 qPCR との倍率変化の相関 P.3 より、miRNA 前駆体プローブセットの設計について説明 し、miRNA 前駆体プローブセットのデータ解釈のためのガイダ ンスを示します。 試験方法 サンプルのばらつきを最小限に抑え、アレイの性能に関する 本試験の結果をクリアにするため、サンプルは市販のトータ RNA を使用しました。すべてのサンプルは、Genisphere ® FlashTag ® Biotin HSR RNA Labeling Kit for Affymetrix ® GeneChip ® miRNA Array を用い、メーカー推奨のプロトコ ルに従って調製しました。推奨プロトコルは次の URL から ご利用いただけます。http://www.genisphere.com/ pdf/ FlashTag-Biotin-HSR-for-Affymetrix-Feb2011.pdf 市販のトータル RNA サンプルに関する情報と各アッセイでの 使用量を表 1 に示します。 1:使用したトータル RNA サンプル 第一世代 GeneChip miRNA Array qPCR の相関、および アレイの再現性を実証する試験は、1 標識反応当たり 200ng のヒト脳および肺の RNA を用いて行いました。感度、特異性、 およびダイナミックレンジの試験は、16 種類の合成 miRNA 転写産物を、濃度を変えてそれぞれヒト肝臓のトータル RNA 100ng に添加したものを用いて行いました(表 2)。データ解 析は、Affymetrix ® miRNA QC Tool SoftwaremiRNA およ miRNA2.0 に対応)を用い、図 1 に示すように Genisphere FlashTag Labeling Kit のプロトコルに記載の解析ワークフロー に従って行いました。 RNA Supplier Part no. Lot no. Amount per replicate Human brain Ambion ® AM7962 10060081 200 ng Human lung Ambion AM7968 1007007 200 ng Human liver Ambion AM7960 1006005 100 ng 1miRNA および miRNA2.0 での推奨解析ワークフロー

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1

GeneChip® miRNA 2.0 Array

はじめに1993年に発見されて以来、低分子ノンコーディング RNA

(microRNA、scaRNA、snoRNA)は、複雑な生命体の発生と生理機能の基礎をなす調節回路の主要構成要素として舞台に登場するようになりました。その結果、異なるパターンで発現される遺伝子の生物学的背景を理解するためには、メッセンジャーRNA(mRNA)の発現に関する研究をmiRNA解析で補完することがますます重要になってきています。これらの主要な機能性遺伝子産物は、全タンパク質コード遺伝子の約 30%を制御していると推定されています。

このような低分子のノンコーディング RNAは、以下のような範囲も含め、細胞の発生機構と生理学的機構を非常に広範にわたってカバーしています。■ タンパク質翻訳阻害■ リボソーム RNAプロセシング■ 選択的スプライシング■ mRNA分解

低分子ノンコーディング RNA検出用の発現マイクロアレイのニーズに応じて、アフィメトリクスでは 2009年に第一世代のmiRNAアレイを発売しました。これは、miRBase version 11、snoBAseおよび Ensemblの利用可能なバージョンに基づくものでした。2011年には、アフィメトリクスはmiRBase version 15および snoBAseと Ensemblの更新された情報に基づく新しいバージョンのアレイを発売しました。新しいバージョンのマイクロアレイも、第一世代のアレイと同様に、単一のアレイ上にすべての種のmiRNA、ヒト、マウス、ラットのpre-miRNAおよびヒトの snoRNA、scaRNAを搭載しています。

GeneChip® miRNA 2.0 Array の独自の特長は、ヒト、マウス、ラットのサンプル中に存在するmiRNA前駆体を同定するプローブセットを搭載している点です。

このテクニカルノートは、GeneChip miRNA 2.0 Array の次の性能を示すことを目的としたものです。■ 感度■ 特異性■ ダイナミックレンジ■ 再現性■ GeneChip® miRNA Arrayとのシグナルおよび倍率変化の相関■ qPCRとの倍率変化の相関

P.3より、miRNA前駆体プローブセットの設計について説明し、miRNA前駆体プローブセットのデータ解釈のためのガイダンスを示します。

試験方法サンプルのばらつきを最小限に抑え、アレイの性能に関する本試験の結果をクリアにするため、サンプルは市販のトータル RNAを使用しました。すべてのサンプルは、Genisphere® FlashTag® Biotin HSR RNA Labeling Kit for Affymetrix® GeneChip® miRNA Arrayを用い、メーカー推奨のプロトコルに従って調製しました。推奨プロトコルは次の URLからご利用いただけます。http://www.genisphere.com/ pdf/FlashTag-Biotin-HSR-for-Affymetrix-Feb2011.pdf市販のトータル RNAサンプルに関する情報と各アッセイでの使用量を表 1に示します。

表 1:使用したトータル RNAサンプル

第一世代 GeneChip miRNA Arrayと qPCRの相関、およびアレイの再現性を実証する試験は、1標識反応当たり 200ngのヒト脳および肺の RNAを用いて行いました。感度、特異性、およびダイナミックレンジの試験は、16種類の合成miRNA転写産物を、濃度を変えてそれぞれヒト肝臓のトータル RNA 100ngに添加したものを用いて行いました(表 2)。データ解析は、Affymetrix® miRNA QC Tool Software(miRNAおよびmiRNA2.0に対応)を用い、図 1に示すように Genisphere FlashTag Labeling Kitのプロトコルに記載の解析ワークフローに従って行いました。

RNA Supplier Part no. Lot no.Amount per replicate

Human brain Ambion® AM7962 10060081 200 ng

Human lung Ambion AM7968 1007007 200 ng

Human liver Ambion AM7960 1006005 100 ng

図 1:miRNAおよびmiRNA2.0での推奨解析ワークフロー

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GeneChip® miRNA 2.0 Arrayの再現性の試験は、ヒト脳および肺のトータル RNAそれぞれ 12サンプルを Genisphere® FlashTag® Labeling Kitのプロトコルに従って標識したサンプルを用いて行いました。サンプルのばらつきを最小限に抑えるために、各組織について 12のレプリケートを作成して標識反応を行い、合わせてプールしました。その後、プールしたサンプルを GeneChip miRNA 2.0 Arrayにハイブリダイズさせました(図 2)。

感度、特異性、ダイナミックレンジGeneChip miRNA 2.0 Arrayは、ヒト肝臓のトータル RNA

100ng中に添加した 0.1アトモルのmiRNAという低濃度の転写産物を有意に検出することが示されました(表 2)。16種類の合成miRNAを添加していないアレイにおいて、偽陽性率が低く、真陰性率は高いことから、トータル RNA量が少ないアレイにおいても特異性が高いことが実証されています。また、この試験では、3 桁以上のシグナル直線性を示すシグナル対存在量の用量-反応曲線(図 3)を有する幅広いダイナミックレンジが実証されました。

表 2:感度

ヒト肝臓のトータル RNA 100ng に 0.1~ 10,000アトモルの 16 種類の合成miRNA転写産物をそれぞれ添加しました。4つのレプリケートを作成してサンプルを標識し、GeneChip miRNA 2.0 Arrayにハイブリダイズさせました。それぞれの存在量レベルで検出された合成miRNA転写産物の平均パーセンテージを示しています。*スパイク(あるいは合成転写物)添加なしのサンプルについては、偽陽性(FP)および真陰性(TN)の割合を示しています。

GeneChip miRNA 2.0 Arrayの再現性GeneChip miRNA 2.0 Arrayでは、アフィメトリクスのす

べての発現アレイと同様に、高レベルの再現性が得られます。ロット間、ロット内における極めて高いシグナル相関およびロット内における極めて高い倍率変化の相関を示す試験結果が得られています(表 3)。図 4はシグナルと倍率変化のプロットで、アレイ上の各種のプローブ(miRNA、snoRNA、scaRNA)におけるロット内およびロット間の高い相関が示されています。

表 3:GeneChip miRNA 2.0 Arrayのシグナルおよび倍率変化の相関

シグナルと倍率変化の相関は検出されたヒトプローブセットから計算したものです。3ロットにまたがる 12のリプリケートの p値の中央値が 0.06未満の場合に、そのプローブを「検出した」と定義しています。ピアソンの積率相関係数の中央値は、製造ロット内のシグナル相関に関する全レプリケートの対比較から算出したものです。ロット間のシグナルのピアソンの積率相関係数は、シグナル中央値のロット間比較から算出したものです。倍率変化のピアソンの積率相関係数は、ロット間の倍率変化の中央値から算出したものです。

GeneChip® miRNA 2.0 Arrayと qRT-PCRの相関ヒト脳および肺のサンプルを GeneChip miRNA 2.0 Arrayにハイブリダイズして検出された発現差異と、 Ambion社が出した qRT-PCRデータ(Ambion社テクニカルノート 14(2)、2007年 5月、「FirstChoice® Human Brain Reference RNAにおけるmiRNA発現」)からの脳および肺のデータの倍率変化を比較しました。

196種類の共通する転写産物についてデータ解析を行ったところ、相関係数は 0.85を示しました。2つの試験で使用したヒト脳および肺のトータル RNAは同じロットではないことに注意してください。これらの試験間の変化の大きさは、ロット間の

Brain total RNA

Lot 1 Lot 2 Lot 3

Lung total RNA

Lot 1 Lot 2 Lot 3

Liver total RNA

Replicate 1 of 4

Pool samples

Pool samples

Label samplesLabel samples

8 spike concentrations

Label samples

図 2:サンプル標識およびアレイハイブリダイゼーションのスキーム

No. AmolPercent dectected

No. AmolPercent dectected

1 0.0*6% FP 94% TN

4 10 100%

2 0.1 38% 5 100 100%

3 0.5 81% 7 5,000 100%

4 1.0 94% 8 10,000 100%

GeneChip miRNA 2.0

Median signal Fold changeBrain (971) Lung (869) Brain vs. lung (971)

Lot 1 0.99 0.99 -

Lot 2 0.99 0.99 -

Lot 3 0.99 0.99 -

Lot 1 vs. lot 2 0.99 0.99 0.98

Lot 1 vs. lot 3 0.99 0.99 0.98

Lot 2 vs. lot 3 0.98 0.98 0.97

図 3:ダイナミックレンジ。ヒト肝臓のトータルRNA 100ngに、0~ 100アトモルの 16種類の合成miRNAをそれぞれ添加した場合の存在量に対するシグナル中央値のプロット。

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3

miRNA転写産物の存在量のわずかなばらつきにより、わずかに異なる場合がありますが、ヒト脳および肺において測定されたmiRNAの変化の傾向は一致すると考えられます。アレイ間および qRT-PCRと GeneChip® miRNA 2.0 Arrayの結果で高い一致が観察されたことから、結果の生物学的な精度に関する信頼性レベルは高いものとなります。

GeneChip miRNA 2.0 Array:倍率変化は、肺における Log2スケールの平均シグナル強度と、脳における Log2スケールの平均シグナル強度の差をとることにより決定しました。

qRT-PCR:Ct値は、Ambion社テクニカルノート 14(2)、2007年 5月、「FirstChoice® Human Brain Reference RNAにおけるmiRNA発現」からダウンロードしたものです。倍率変化は、脳の Ct値と肺の Ct値の差をとることにより決定しました。共通の 196種類のmiRNAに対して、脳/肺の倍率変化をプロットしました。

miRNA前駆体プローブセットを搭載した初めてのmiRNAマイクロアレイ

GeneChip miRNA 2.0 Arrayの優れた新しい特徴は、ヒト、マウス、ラットのmiRNA前駆体を検出するためのプローブセットです。miRBaseで用いられる標準的なmiRNAの ID番号に接頭辞と接尾辞を追加することで、データ解析と解釈を容易にしました。ヒトmiRNA前駆体 hsa-mir-124-1と、この前駆体から生じる 2つの成熟型miRNA(hsa-miR-124および hsa-miR-124*)を検出するプローブセットのリストを表 4に示しました。

表 4:GeneChip miRNA 2.0 Arrayプローブセットの命名法

_stは「センス鎖ターゲット」の意味です。

プローブセット名の先頭に「hp」と記した場合、ヘアピン型前駆体であることを示します(例えば、hp-hsa-mir-124-2_st)。通常、アレイ上には各miRNA前駆体に対して複数のプローブセットと、そのmiRNA前駆体に由来する成熟型miRNAに特異的なプローブセットが固定されています。また、同じ配列を有する成熟型miRNAを生成する複数のmiRNA前駆体が異なる遺伝子座に存在することもあります。例えば、miRBase v15には、hsa-mir-124および hsa-mir-124*を生成する 3つの異なるmiRNA前駆体の配列が存在します。この 3つのmiRNA前駆体は、 hsa-mir-124-1、hsa-mir-124-2、hsa-mir-124-3です。GeneChip miRNA 2.0 Arrayで使用するプローブセットの接尾辞の命名法は、発現アレイで使われるものと同じで、結果の解釈にも適用できます(表 5)。

表 5:プローブセットの接尾辞の命名法

図 4:ヒト脳サンプルでのプローブセットのシグナル相関

脳で検出されたヒトプローブセットのシグナル相関のプロット(A.ロット内、B. ロット間)。C. ロット間の倍率変化の比較(脳および肺)。青:miRNA、黄色:CD box、赤:HAca box、緑:snoRNA、黒:scaRNA、赤紫:ステムループ型miRNA前駆体。

図 5:GeneChip miRNA 2.0と qRT-PCRの相関

Probe set miRBase ID Prefix Suffix Affymetrix probe ID

Mature hsa-mir-124 - _st hsa-miR-124_st

Mature hsa-mir-124* - _s_st hsa-miR-124_s_st

Precursor hsa-mir-124-1 hp_ _st hp-hsa-mir-124-1_st

Precursor hsa-mir-124-1 hp_ _s_st hp-hsa-mir-124-1_s_st

Precursor hsa-mir-124-1 hp_ _x_st hp-hsa-mir-124-1_x_st

Precursor hsa-mir-124-2 hp_ _st hp-hsa-mir-124-2_st

Precursor hsa-mir-124-2 hp_ _s_st hp-hsa-mir-124-2_s_st

Precursor hsa-mir-124-2 hp_ _x_st hp-hsa-mir-124-2_x_st

Precursor hsa-mir-124-3 hp_ _s_st hp-hsa-mir-124-3_s_st

Precursor hsa-mir-124-3 hp_ _x_st hp-hsa-mir-124-3_x_st

Suffix Description

_stAll probes in the probe set are complementary to one known transcript.

_s_stAll probes in the probe set are complementary to transcripts from different genes.

_x_stSome probes in the probe set are complementary or similar to transcripts from different genes.

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プローブのカバー率が高く、miRNA前駆体ごとに複数のプローブセットがあるのは、異なるmiRNA間の配列相同性が高いためです。miRNA間の配列相同性のため、ある転写産物に対してのみ相補的なプローブを設計することはできません。

別の遺伝子由来の転写産物に相補的または類似した配列を検出する上でのこの問題を克服するため、そのようなプローブをプローブセットとしてグループ化し、単一の発現値を与えるようにしました。GeneChip® miRNA 2.0 Arrayには、911種類

のmiRNA前駆体の配列を検出するために設計された 1,121種類のプローブセットが搭載されています。

例として、miRNAである hsa-mir-124-2は、図 6に示したように前駆体はヘアピン構造をとります。黄色(および赤)で示した部分配列は、このmiRNA前駆体由来の 2つの成熟型miRNA(それぞれ hsa-miR-124*および hsa-miR-124)の位置を示すものです。

この図は、5つの各プローブセットにおけるすべての相補的なプローブのアライメントを図示したものです。

Accession: MI0000443

ID: hsa-mir-124-2

Symbol: HGNC:MIR124_1

Description: Homo sapiens miR-124-1 stem-loop

Information on has-mir-124-2 taken from miRBase (www.miRBase.org).

図 6:miRNA hsa-124-2の前駆体の構造

図 7:miRNA前駆体(hsa-mir-124-1、hsa-mir-124-2、hsa-mir-124-3)を検出するためのプローブのアライメント。

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加えて、完全長miRNA前駆体(pre-miRNA)を識別するために、これら 2つの成熟型miRNA間の領域をカバーするプローブ、成熟型miRNAの 3'および 5'末端に隣接するプローブセット、miRNA前駆体の全長をカバーするプローブセットが設計されています。図 7は、ヒト成熟型miRNA-mir-124と前駆体hsa-mir-124-2に対する 5つのプローブセット、およびこの前駆体の配列に対する全プローブセットのプローブのアライメントを示したものです。前駆体(hsa-mir-124-2)の配列に対してミスマッチ塩基を有するプローブは赤で表示しています。

hsa-miR-124_stの 9つのプローブとhsa-miR-124- star_stプローブセットのプローブは、成熟型および 3つすべての未成熟型(premature)miRNA配列と100%相補的です。hp_hsa-mir-124-1_s_stプローブセットには、成熟型miRNA配列の隣接配列に対するプローブが含まれます。また、hsa-mir-124-1および hsa-mir-124-2の両方に 100%相補的です。hsa-mir-124-2がサンプル中に存在する場合、強いシグナルで正の検出コール(detection call)が得られます。

前駆体プローブセット hp_hsa-mir-124-1_stは、ステムループ配列のヘアピン構造の中央部分に設計されており、hsa-mir-124-2 の配列とは多数のミスマッチが含まれます。hsa-mir-124-2がサンプル中に存在する(hsa-mir-124-1は存在しない)場合、プローブは 1種類の転写産物と相補的であることから、シグナルは弱く正の検出コールは得られません。

前駆体プローブセット hp_hsa-mir-124-1_x_stは、他の遺伝子由来の別の既知の転写産物にも相補的または類似していることから、シグナルは弱くなると考えられます。hsa-mir-124-1が存在する場合、このプローブセットのシグナルは強くなります。

hp_hsa-mir-124-3_s_stプローブセット は、hsa-mir-124-2および hsa-mir-124-3の両方に 100%相補的です。いずれかの前駆体が存在する場合、強いシグナルで正の検出コールが得られると考えられます。しかし、hp_hsa-mir-124-3_x_stには、多数のミスマッチが含まれており、他の遺伝子の転写産物とも類似しているため、サンプル中に hsa-mir-124-2が存在する場合、弱いシグナルでおそらく正の検出コールが得られると考えられます。

サンプル中のmiRNA前駆体の検出におけるmiRNA前駆体プローブセットの有用性を示すため、Genisphere社は多数の合成miRNA前駆体を用いて spike-in実験を行いました。これらの実験の 1つは、2ngの hsa-mir-124-2 を 25ngの肝臓のトータル RNAに添加していくものです。図 7は、hsa-miR-124、hsa-miR-124*、hsa-mir-124-1、hsa-mir-124-2、hsa-mir-124-3プローブセットの log2スケールのシグナル強度と検出コールを示したものです。

hsa-mir-124-2 の例では、miRNA 前駆体が存在する場合、2つの成熟型miRNAプローブセットおよび 3つの hsa-miR-124前駆体プローブセットにおいてバックグラウンドを上回るシグナルと有意な p値(< 0.06)が観測されると考えられます。

サンプル中に前駆体は存在せず、両方の成熟型miRNAが存在する場合には、両方の成熟型miRNAプローブセット、hp_hsa-mir-124-1_stプローブセット以外の前駆体プローブセット、つまり hp_hsa-mir-124-1_s_st および hp_hsa-mir-124-1_x_stにおいてバックグラウンドを上回るシグナルおよび有意な p値(< 0.06)が観測されると考えられます。これは、図 7に示すように、hp_hsa-mir-124-1_stプローブセット(赤)が 2つの成熟型miRNA配列のいずれともほとんど重複しないためです。miRNA前駆体がサンプル中に存在する場合、3つのmiRNA前駆体プローブセットがすべて検出されるはずです。

この例を脳のトータル RNAサンプルで得られたデータに適用しました(図 8)。得られたデータは、前駆体ではなく、2つの成熟型miRNAが存在することを示しています。

hp_hsa-mir-124-1_s_stプローブセット(紫)のシグナルに最も近いのは hsa-miR-124_st(灰色)で、これは 9つ中 7つのプローブが hsa-miR-124配列と重複することから当然であると言えます。hp_hsa-mir-124-1_x_stプローブセット(緑)は、比較的弱いシグナルが観測されました。11のプローブのうち 5つのみがこの成熟型miRNA配列と大きな重複を有します。2つの成熟型miRNAプローブセットとこの成熟型miRNAに重複する 2つのmiRNA前駆体プローブセットで「真」の検出コールが得られました。成熟型miRNAとの重複がほとんどない hp_hsa-mir-124-1_stプローブセット(赤)では、「偽」の検出コールが得られました。

この例では、miRNA前駆体 hsa-mir-124-2が存在する場合、3つの前駆体プローブセットすべて、および 2つの成熟型miRNAプローブセットにおいて、バックグラウンドを上回るシ

図 8:プローブセットの配列と成熟型miRNAの重複

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グナルおよび有意な p値(< 0.06)が得られると考えられます。pre-miRNA前駆体の配列と完全な重複を有するプローブセット(hp_hsa-mir-124-1_x_st)で弱いシグナル、ヘアピン部分をカバーするプローブセット(hp-has-mir-124-1-st)で負の検出コールが観測されたということは、本サンプル中にmiRNA前駆体が存在しないことを示す強力な証拠となります。

GeneChip® miRNA 2.0 ArrayとGeneChip® miRNA Arrayの結果の比較ヒト脳および肺のトータル RNAサンプルを用いて、miRNA

およびとmiRNA 2.0 Arrayの比較を行いました。まず、プローブ配列が同一のアレイデザインとなっているヒトmiRNAのプローブセットについて、シグナルおよび倍率変化の相関を評価しました。いずれのアレイも、共通の 842種類のヒトmiRNAプローブセットが設計されています。次に、共通の 1,669種類の non-controlプローブセットからなる両アレイデザイン上のすべてのヒト転写産物を検出することでこれらのプローブセットの評価を行いました。snoRNAおよび scaRNAについては、同じ転写産物を検出するものの、両アレイのプローブ配列は必ずしも同一ではありません。相関の計算には、検出されたプローブセットのみを用いました。

表 6および図 9は、両アレイ間で高い一致が観察されることを示しています。また、倍率変化の相関として計測した発現差異も、両アレイ間で高い相関(R≧ 0.95)を示していることから、miRNA ArrayおよびmiRNA 2.0 Arrayで、ほぼ同一の生物学的結果が期待できると言えます。

表 6:GeneChip® miRNA 2.0 ArrayおよびmiRNA Arrayにおけるシグナルおよび倍率変化の比較

レプリケートのターゲット調製を行い、これをプールし、サンプルごとに 4つのアレイにハイブリダイズさせました。プールされた同一のターゲットを、miRNA 2.0 Array およびmiRNA Arrayの両方にハイブリダイズさせました。ピアソンの積率相関係数は、miRNA 2.0 Array上で検出された配列一致のプローブセットのシグナル中央値、またはmiRNA Arrayと比較した倍率変化から算出したものです。4つのレプリケートの p値との中央値が 0.06未満の場合に、そのプローブセットを「検出した」と定義しています。配列が一致するプローブセットの次の 2つのサブセットを使用しました。ヒトmiRNA(プローブ配列がmiRNA ArrayおよびmiRNA 2.0 Arrayの両方で同一であるヒトmiRNAプローブセット)、および全ヒトmiRNA(miRNAプローブセットおよび sno/sca RNAプローブセット。sno/sca RNAプローブセットについては同じ転写産物に対するものであっても必ずしもプローブ配列が同一であるとは限りません)。本試験では、miRNA Arraysは 1つの製造ロット、miRNA 2.0 Arrayは 3つの製造ロットを用いました。

Median signal comparison (N=4)

miRNA 2.0 Array mfg. lot

No. probe sets used (human miRNA)

R (human miRNA)

No. probe sets used (all human)

R (all human)

Brain 1 360 0.99 631 0.97

Brain 2 360 0.99 631 0.97

Brain 3 360 0.99 631 0.97

Lung 1 306 0.99 555 0.97

Lung 2 306 0.99 555 0.97

Lung 3 306 0.99 555 0.97

Median fold change comparison

Brain vs. lung 1 360 0.97 631 0.95

Brain vs. lung 2 360 0.96 631 0.95

Brain vs. lung 3 360 0.97 631 0.95

図 9:GeneChip miRNA 2.0 ArrayおよびmiRNA Arrayのシグナルと倍率変化の散布図

ピアソンの積率相関係数は、miRNA 2.0 Array上で検出された配列一致のプローブセットのシグナル中央値、またはmiRNA Arrayと比較した倍率変化から算出したものです。4つのレプリケート p値の中央値が 0.06未満の場合に、そのプローブセットを「検出した」と定義しています。A. 脳におけるmiRNAシグナル相関:検出されたヒトmiRNAプローブセットのRMAシグナル中央値の相関。B. 脳および肺におけるmiRNAの倍率変化の相関:検出されたヒトmiRNAプローブセットの倍率変化の中央値の相関。C. シグナル相関、ヒト RNAプローブセット、脳:検出されたmiRNAおよび sno/sca RNAプローブセット。D. 脳および肺における倍率変化の相関、ヒト RNAプローブセット:検出されたmiRNAおよび sno/sca RNAプローブセット。X軸:miRNA 2.0 Array。Y軸:miRNA Array。青:miRNA、黄色:CD box、赤:HAca box、緑:snoRNA、黒:scaRNA。

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結論GeneChip® miRNA 2.0 Arrayは、miRBase v15に基づいて設計されています。本アレイは、このバージョンに収録されている全 131種の生物のmiRNAの検出を実現します。本アレイには、成熟型miRNAに加えて、ヒト、マウス、ラットのmiRNA前駆体、さらにヒト snoRNAおよび scaRNAに対応するプローブセットが搭載されています。2つのアレイ製品は、共通のプローブセットでの非常に高い相関が観測されていることから、前製品であるmiRNA Arrayからの移行は容易であると考えられます。miRNA 2.0 Arrayの結果は、優れた再現性、感度、特異性を実証するものです。

PublicationsKozomara A., Griffiths-Jones S. MiRBase: integrating microRNA annotation and deep-sequencing data. Nucleic Acids Research 39 (Database issue):D152-7 (2011).

Griffiths-Jones S., et al. miRBase: tools for microRNA genomics. Nucleic Acids Research 36 (Database issue):D154-8 (2008).

Griffiths-Jones S., et al. miRBase: microRNA sequences, targets and gene nomenclature. Nucleic Acids Research 34 (Database issue):D140-4 (2006).

Griffiths-Jones S. The microRNA registry. Nucleic Acids Research 32 (Database issue):D109-11 (2004).

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