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3.会議の様子 会議の内容は、軟弱地盤対策(Soft Soil Consolidation)、ジオシンセティック補強(Geosynthetic Reinforcement)、グラウト・化学安定処理・深層混 合 処 理 お よ び 汚 染 物 質 浄 化(Grouting, Chemical Stabilization, Deep Mixing and Contaminant Remediation)など、計10のセッションに分かれてお り、学術的な内容から実務に関するものまで幅広く報 告されておりました(写真-3)。 橋本は『Strength characteristics of cement- treated soil cured in low-temperature conditions(低 温養生条件におけるセメント改良土の強度発現)』と 『Ground Improvement & Ground Control に関する国際会議』に参加して 橋本 聖 1.はじめに 2012年10月30日から11月2日までオーストラリア連 邦のウォロンゴン市(Wollongong)において『Ground Improvement & Ground Control(地盤改良および地 盤制御)に関する国際会議』が開催され、寒地地盤チ ームから橋本が参加する機会を得ました。この会議に おいて研究成果を発表するとともに、地盤改良に関す る情報を得ましたのでその概要を報告します。 2.国際会議の概要 『Ground Improvement & Ground Control』は直訳 すれば『地盤改良と地盤制御』と訳されると思います が、会議の主旨としては、軟弱地盤技術(対策)に関す る国際会議という感じでした。この会議は前回2009年 に初めてシンガポールで開催されて、今回が2回目で す。オーストラリアでは最近、インフラ整備が盛んに 実施されているものの、軟弱地盤や脆い岩塊などに対 する対策が喫緊の課題となっているようです。世界各 国の軟弱地盤や岩盤の研究、調査、設計、施工に関す る技術者・研究者・メーカーがオーストラリアに関心 を寄せています。会議は世界30以上の国と地域から約 200編以上の論文が投稿されました。 会議はウォロンゴンにあるウォロンゴン大学 (University of Wollongong)の67番ビル(McKinnon Building)で開催されました(写真-1)。ウォロンゴ ンはシドニーから南方80km の海沿いに位置し、人口 30万人弱の閑静な街です。ウォロンゴン大学は敷地面 積820,000m 2 の広大なキャンパスを持ち、学生数の約 2割(6,000人)が海外70ヵ国からの留学生です。会議 は日本からの参加者が比較的多く、大学や公的研究機 関の研究者のほか企業・メーカーからの技術者も多数 参加している印象でした。また、地盤改良メーカーの ブースには世界各国の企業25社が参加していました 写真-2)。 写真-2 各国企業・メーカーのブース 写真-1 メイン会場(McKinnon Building) 報 告 56 寒地土木研究所月報 №719 2013年4月

『Ground Improvement & Ground Controlに関する国際会議 ...Improvement & Ground Control(地盤改良および地 盤制御)に関する国際会議』が開催され、寒地地盤チ

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3.会議の様子

  会 議 の 内 容 は、 軟 弱 地 盤 対 策(So f t S o i l Consolidation)、ジオシンセティック補強(Geosynthetic Reinforcement)、グラウト・化学安定処理・深層混合 処 理 お よ び 汚 染 物 質 浄 化(Grouting, Chemical Stabil ization, Deep Mixing and Contaminant Remediation)など、計10のセッションに分かれており、学術的な内容から実務に関するものまで幅広く報告されておりました(写真-3)。 橋本は『Strength characteristics of cement-treated soil cured in low-temperature conditions(低温養生条件におけるセメント改良土の強度発現)』と

『Ground Improvement & Ground Control に関する国際会議』に参加して

橋本 聖*

1.はじめに

 2012年10月30日から11月2日までオーストラリア連邦のウォロンゴン市(Wollongong)において『Ground Improvement & Ground Control(地盤改良および地盤制御)に関する国際会議』が開催され、寒地地盤チームから橋本が参加する機会を得ました。この会議において研究成果を発表するとともに、地盤改良に関する情報を得ましたのでその概要を報告します。

2.国際会議の概要

 『Ground Improvement & Ground Control』は直訳すれば『地盤改良と地盤制御』と訳されると思いますが、会議の主旨としては、軟弱地盤技術(対策)に関する国際会議という感じでした。この会議は前回2009年に初めてシンガポールで開催されて、今回が2回目です。オーストラリアでは最近、インフラ整備が盛んに実施されているものの、軟弱地盤や脆い岩塊などに対する対策が喫緊の課題となっているようです。世界各国の軟弱地盤や岩盤の研究、調査、設計、施工に関する技術者・研究者・メーカーがオーストラリアに関心を寄せています。会議は世界30以上の国と地域から約200編以上の論文が投稿されました。 会議はウォロンゴンにあるウォロンゴン大学

(University of Wollongong)の67番ビル(McKinnon Building)で開催されました(写真-1)。ウォロンゴンはシドニーから南方80km の海沿いに位置し、人口30万人弱の閑静な街です。ウォロンゴン大学は敷地面積820,000m2の広大なキャンパスを持ち、学生数の約2割(6,000人)が海外70 ヵ国からの留学生です。会議は日本からの参加者が比較的多く、大学や公的研究機関の研究者のほか企業・メーカーからの技術者も多数参加している印象でした。また、地盤改良メーカーのブースには世界各国の企業25社が参加していました

(写真-2)。

写真-2 各国企業・メーカーのブース 

写真-1 メイン会場(McKinnon Building)

報 告

56 寒地土木研究所月報 №719 2013年4月

橋本 聖*

HASHIMOTO Hijiri

寒地土木研究所寒地基礎研究グループ寒地地盤チーム研究員技術士(建設)

写真-4 橋本の発表の様子

写真-3 会議の様子

題して発表しました(写真-4)。地盤改良技術の報告の主流は、経済性を反映してでしょうか(?)真空圧密工法(他工法との併用を含む)であり、世界各国(オーストリア、タイ、ベトナムなど)で要素試験やフィールドでの試験施工に関連したものが報告されました。実務的な発表も多くあり、寒地地盤チームで開発された複合地盤杭基礎に類似する工法に関する研究が発表されていました。また、建設機械の違いが盛土材料の締固め特性に及ぼす影響については、軟弱地盤や不良土には地域性があるとはいえ、各国とも北海道と同じような課題を抱えているという印象を受けました。

4.おわりに

 ウォロンゴン大学は多くの留学生が在席していますが、会議をサポートした方々は東南アジア(マレーシア、ベトナムなど)からの留学生(他大学も含む)でした。あるマレーシア人留学生と話をしたところ、彼はマレーシアの Putra 大学の Bujang 教授(泥炭に関する著名な研究者)の教え子で寒地土木研究所の存在を知っていました。2007年にマレーシアで行われた国際会議に林主任研究員と橋本が参加したときに、この会議のサポートをしていたそうです。本会議において、私はこの学生を通じて地盤改良に関係する各国の人々と接することができ、寒地土木研究所を PR することができました。

寒地土木研究所月報 №719 2013年4月 57