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第6回 静脈性浮腫の特徴と対策
Fluid Management Renaissance Vol.5 No.2 2015 69(161)
中村 真潮 村瀬病院副院長/肺塞栓・静脈血栓センター長三重大学大学院医学系研究科循環器・腎臓内科学客員教授
伊藤 正明 三重大学大学院医学系研究科循環器・腎臓内科学教授
浮腫とは,組織間隙に生理的な代償能力を超えて過剰な水分が貯留した状態と定義され,体表面から腫脹してみえる状態をさす1)。浮腫の発生には,静脈圧,蛋白質,透過性,麻痺,下垂が関与する。また,全身性浮腫は腎性浮腫,心性浮腫,肝性浮腫,内分泌性浮腫,栄養障害性浮腫,薬剤性浮腫,特発性浮腫に,また局所性浮腫は静脈性浮腫,リンパ性浮腫,炎症性浮腫,血管神経性浮腫などに分類される2)。 静脈還流障害による浮腫を静脈性浮腫といい,高齢者の浮腫の原因で最も多い。静脈性浮腫は深部静脈血栓に伴う急性のものと,慢性静脈不全により発生する慢性のものとに区別される。
静脈性浮腫の病態生理3)
深部静脈血栓では下肢の主幹静脈に血栓による急性の閉塞が起こり,末梢の静脈圧が上昇して静脈側毛細管の透過性が高まるために蛋白漏出
をきたし,その結果,細胞間液の静脈側毛細管への移動が妨げられる。初期には余剰の細胞間液はリンパ管によって還流されるが,やがてリンパ管による運搬では代償しえなくなり浮腫が発生する。 一方,慢性静脈不全では,主幹静脈の再管疎通や弁の障害で血液の逆流が起こり,末梢に強いうっ血を生じている。うっ血の結果,毛細管内圧とともに細胞間質圧も上昇し,リンパ循環も障害されて間質組織液の産生も増加し,さらに再吸収も障害されるので,まず間質に浮腫が起こる。やがて浮腫は固定化し,この状態が進行すると皮膚や皮下組織に硬結・肥大・線維化を起こして皮革様となり,軽微な外傷でも障害を受けやすくなる。同時に毛細血管の透過性が亢進するため,毛細管周囲組織への赤血球逸脱が生じ,皮膚と皮下組織にヘモジデリンが沈着する。このため皮膚炎を生ずるようになり,軽微な外傷によって潰瘍を形成する。
静脈性浮腫の臨床症状
片側性の浮腫では一般に深部静脈血栓や静脈不全,リンパ浮腫が原因の場合が多く,両側性の浮腫は心不全や腎障害などの全身性疾患に由来することが多い。深部静脈血栓の症状は血栓の位置により異なる。下腿に限局する静脈血栓では軽微な足の腫脹や腓腹部の張り,圧痛を認めるにすぎない。腸骨大腿静脈の急性閉塞では,下肢の腫脹や浮腫,疼痛が特徴である。浮腫は数時間以内にピークに達し,圧痕を呈しやすく緊満感のある浮腫が特徴である。発症早期から大腿部を中心に自発痛を訴え,足関節の足背で腓腹部の自発痛や把握痛を訴える。 慢性静脈不全の初期症状は下腿の浮腫で,夕刻に強くなり夜間臥床にて消失する。浮腫は主に下腿下部,特に踝の周囲に認められ,放置すると慢性の皮膚炎・湿疹・潰瘍へと進行する。下腿潰瘍は内踝部に好発するが,骨や腱までは達しない。また,
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