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Copyright © 2013CareNet,Inc. All rights reserved. Copyright © 2013 CareNet,Inc. All rights reserved. CareNet Continuing Medical Education 2013.4 3 こんなに変わった! 関節リウマチ診療 Rheumatoid arthritis 監修 慶應義塾大学医学部リウマチ内科 教授 竹内 先生

こんなに変わった! 関節リウマチ診療 - CareNet.comCopyright © 2013 CareNet,Inc. All rights reserved. メトトレキサートの用法・用量 <関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン2011

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    CareNet Continuing Medical Education

    2013.4

    3

    こんなに変わった! 関節リウマチ診療 Rheumatoid arthritis

    監修 慶應義塾大学医学部リウマチ内科 教授

    竹内 勤 先生

  • 目次

    1 Copyright © 2013 CareNet,Inc. All rights reserved.

    1. 診療のパラダイムシフト

    2. 診断と活動性評価

    3. 治療の実際

    4. 非専門医の役割とは?

    ※本コンテンツは、関節リウマチ診療に非専門の先生方を対象に編集しております。

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    基本的な治療の考え方 診断後、速やかに抗リウマチ薬を開始することが重要

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    ■抗リウマチ薬の選択

    禁忌がなければ、メトトレキサートを選択

    合併症併存時や、低疾患活動性で予後不良因子がない場合はサラゾスルファピリジンやブシラミンなどを選択

    メトトレキサートが使用不可能な場合は、タクロリムスやメトトレキサート非併用で投与可能な生物学的製剤を投与

    生物学的製剤を 追加

    診断後、速やかに 抗リウマチ薬開始

    3ヵ月の間に適宜増量しても

    寛解が得られない場合

    金子祐子、竹内勤. 関節リウマチ. In:足立満ほか編.アレルギー・リウマチ膠原病診療最新ガイドライン. 総合医学社;2012. p.152-155.に基いて作成

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    【参考】わが国における抗リウマチ薬一覧

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    抗リウマチ薬(DMARDs). In:浦部晶夫ほか編.今日の治療薬(2013年版).南江堂;2013.p.294.より改変

    一般名 商品名 強さ 作用発現時間

    非生物学的製剤

    金チオリンゴ酸ナトリウム シオゾール ++ 計200mg(3ヵ月~)

    ペニシラミン メタルカプターゼ ++ 1~3ヵ月

    ロベンザリット カルフェニール ± 3~6ヵ月

    オーラノフィン リドーラ + 3~6ヵ月

    ブシラミン リマチル ++ 1~3ヵ月

    アクタリット オークル、モーバー + 3~6ヵ月

    サラゾスルファピリジン アザルフィジンEN ++ 2~4週

    イグラチモド ケアラム、コルベット ++ 2~3ヵ月

    ミゾリビン ブレディニン + 3~6ヵ月

    メトトレキサート リウマトレックス +++ 2~4週

    レフルノミド アラバ +++ 1~4週

    タクロリムス プログラフ ++ 2~4週

    トファシチニブ ゼルヤンツ(2013年3月承認) +++ 1~4週

    生物学的製剤

    インフリキシマブ レミケード +++ 1~4週

    エタネルセプト エンブレル +++ 1~4週

    アダリムマブ ヒュミラ +++ 1~4週

    ゴリムマブ シンポニー +++ 1~4週

    トシリズマブ アクテムラ +++ 1~4週

    アバタセプト オレンシア +++ 2~6週

    セルトリズマブ ペゴル シムジア +++ 1~4週

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    メトトレキサートが第1選択

    • 関節リウマチ治療におけるアンカードラッグ、治療の中心

    • 関節破壊の抑制効果、生命予

    後の改善効果を示す

    • 抗がん剤として承認されたが、低用量で関節リウマチへの有

    効性が確認され、日本では1999年に保険適応

    • 2011年に第1選択薬としての使用と16mg/週までの使用が認められた(それまでは

    8mg/週)

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    メトトレキサートの適応と禁忌・慎重投与 <関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン2011年版>

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    ■適応

    関節リウマチと診断されて予後不良と思われる患者では、リスク・ベネフィットバランスに鑑みて、MTXを第1選択薬として考慮する。

    他の低分子経口抗リウマチ薬(低分子DMARDs)の通常量を2~3ヵ月以上継続投与しても、治療目標に達しないRA患者には積極的にMTXの投与を考慮する。

    日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会編: 関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2011年版簡易版.

    http://www.ryumachi-jp.com/info/img/MTX2011kanni.pdf

    ■禁忌と慎重投与

    妊婦、本剤成分に対する過敏症、胸・腹水を認める患者や、重大な感染症や血液・リンパ系・肝・腎・呼吸器障害を有する患者は投与禁忌である。

    軽度の臓器障害を有する患者や、高齢者、低アルブミン血症を認める患者には、とくに慎重に経過観察しながら投与する。

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    メトトレキサートの用法・用量 <関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン2011年版>

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    ■用量

    MTX は原則、1週間あたり6mgで経口投与を開始する。開始時投与量は副作用危険因子や疾患活動性、予後不良因子を考慮して、適宜増減する。MTX治療開始後、4~8週間経過しても効果が不十分であれば増量する。忍容性に問題なければ、16mg/週まで漸増することにより、RA に対する有効性は用量依存的に向上する。

    ■用法

    1週間あたりのMTX 投与量を1回または2~4回に分割して、12時間間隔で1~2日間かけて経口投与する。1週間あたりの全量を1回投与することも可能であるが、8mg/週を超えて投与するときは、分割投与が望ましい。

    ■併用療法における基本薬として

    他の低分子DMARDs や生物学的製剤と併用して使用する際、MTX の用量は、MTX単剤治療の場合と同量使用できる。

    日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会編: 関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2011年版簡易版.

    http://www.ryumachi-jp.com/info/img/MTX2011kanni.pdf

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    メトトレキサート投与回数別スケジュール例

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    1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日

    朝 昼 夜

    a)週1回 服用の場合

    上記を繰り返す

    1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日

    朝 昼 夜

    b)週2回 服用の場合

    上記を繰り返す

    1日 2日 3日 4日 5日 6日 7日

    朝 昼 夜 朝 昼 夜

    c)週3回 服用の場合

    上記を繰り返す

    12時間

    12時間 12時間

    休 薬

    休 薬

    休 薬

    大橋弘幸. 用法・用量.In:小川法良ほか編.MTX使いこなし自由自在ー関節リウマチー.南山堂.2012.16-21.

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    メトトレキサートの重篤な副作用と危険因子 <関節リウマチ治療におけるMTX診療ガイドライン2011年版>

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    ■骨髄障害 腎機能障害、高齢、葉酸欠乏、多数薬剤の併用、低アルブミン血症

    ■間質性肺炎(MTX肺炎) ① 既存のリウマチ性肺障害、高齢、糖尿病、低アルブミン血症、過去の

    DMARDs 使用歴 ② 危険因子がない症例での発生も少なくない

    ■感染症 高齢、既存肺疾患、副腎皮質ステロイド使用、関節外症状、糖尿病、腎機能障害、骨髄障害、日和見感染症の既往、慢性感染症の合併

    ■肝障害(HBV再活性化を含む) 慢性ウイルス性肝炎、肝炎ウイルスキャリア、そのほかの慢性肝疾患、AST/ALT が正常の2倍を超える肝機能障害

    ■リンパ増殖性疾患 明らかな危険因子の報告はない

    日本リウマチ学会MTX診療ガイドライン策定小委員会編: 関節リウマチ治療におけるメトトレキサート(MTX)診療ガイドライン2011年版簡易版.

    http://www.ryumachi-jp.com/info/img/MTX2011kanni.pdf

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    メトトレキサート治療の問題点

    • メトトレキサートでもコント

    ロールできない患者が半数以上にのぼる

    • 関節破壊の進行は抑制できる

    が完全に阻止できないため、身体機能の低下が徐々に進行

    する

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    生物学的抗リウマチ薬(生物学的製剤)の登場

    • 関節リウマチの病態形成に直

    結する分子のみを抑制する

    • 著明な臨床症状改善、強力な

    関節破壊抑制が認められる

    • 生物学的製剤の導入により、

    「臨床的寛解」が現実的な治療目標になった

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    生物学的製剤の特長と問題点

    特長

    臨床症状を著明に改善、関節破壊を強力に抑制する

    速効性がある

    約80%の患者に有効

    メトトレキサート併用でより有効

    問題点

    ▲感染症のリスク(サイトカイン阻害のため)

    ▲薬剤費が高い(年間100~200万円)

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    生物学的製剤:TNF(腫瘍壊死因子)阻害薬 投与法、使用間隔、メトトレキサート併用条件などに違い

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    一般名 インフリキシマブ エタネルセプト アダリムマブ ゴリムマブ セルトリズマブ

    ペゴル

    商品名 レミケード エンブレル ヒュミラ シンポニー シムジア

    標的分子 TNFα TNFα/LTα TNFα TNFα TNFα

    構造 キメラ抗体 受容体製剤 ヒト型抗体 ヒト型抗体 ヒト化抗体

    用法 点滴静注 皮下注 皮下注 皮下注 皮下注

    投与間隔 4~8週毎 週1~2回 2週毎 4週毎 2週毎

    (安定後4週毎)

    MTX併用 必須 可 可 可 可

    自己注射 不可 可 可 不可 可

    発売年 2003年 2005年 2008年 2011年 2013年

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    TNF阻害薬の投与対象 <関節リウマチに対するTNF阻害薬使用ガイドライン(2012年改訂版)>

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    日本リウマチ学会 調査研究委員会 生物学的製剤使用ガイドライン策定小委員会 委員長 竹内勤: 関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害薬使用ガイドライン(2012年改訂版).

    http://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_TNF_120704.html

    1. 既存の抗リウマチ薬(DMARDs)註1)通常量を3ヵ月以上継続して使用してもコントロール不良のRA患者。

    コントロール不良の目安として以下の3項目を満たす者。

    • 圧痛関節数6関節以上 • 腫脹関節数6関節以上 • CRP 2.0mg/dL以上あるいはESR 28mm/hr以上

    これらの基準を満たさない患者においても、 • 画像検査における進行性の骨びらんを認める • DAS28-ESRが3.2(moderate disease activity)以上 のいずれかを認める場合も使用を考慮する。

    註1) インフリキシマブの場合には、既存の治療とはMTX6~16mg/週を指す。

    エタネルセプト、アダリムマブおよびゴリムマブの場合には、既存の治療とは本邦での推奨度Aの抗リウマチ薬である、MTX、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、レフルノミド、タクロリムスのいずれかを指す。

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    TNF阻害薬の投与対象(続き) <関節リウマチに対するTNF阻害薬使用ガイドライン(2012年改訂版)>

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    日本リウマチ学会 調査研究委員会 生物学的製剤使用ガイドライン策定小委員会 委員長 竹内勤: 関節リウマチ(RA)に対するTNF阻害薬使用ガイドライン(2012年改訂版).

    http://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_TNF_120704.html

    2. 既存の抗リウマチ薬による治療歴のない場合でも、罹病期間が6ヵ月未満の患者では、DAS28-ESRが5.1超(high disease activity)で、さらに予後不良因子(RF陽性、抗CCP抗体陽性または画像検査における骨びらんを認める)を有する場合には、MTXとの併用による使用を考慮する。

    3. さらに日和見感染症の危険性が低い患者として以下の3項目も満たすこ

    とが望ましい。

    • 末梢血白血球数4000/mm3以上 • 末梢血リンパ球数1000/mm3以上 • 血中β-Dグルカン陰性

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    一般名 トシリズマブ アバタセプト

    商品名 アクテムラ オレンシア

    標的分子 IL-6受容体 CD80/86

    構造 ヒト化抗体 CTLA4-Ig製剤

    用法 点滴静注 点滴静注

    投与間隔 4週毎 4週毎

    MTX併用 可 可

    自己注射 不可 不可

    発売年 2008年 2010年

    生物学的製剤:TNF阻害薬以外 インターロイキン(IL)-6、T細胞が標的

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    トシリズマブの投与対象 <関節リウマチに対するトシリズマブ使用ガイドライン(2012年改訂版)>

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    日本リウマチ学会 調査研究委員会 生物学的製剤使用ガイドライン策定小委員会 委員長 竹内勤: 関節リウマチ(RA)に対するトシリズマブ使用ガイドライン(2012年改訂版).

    http://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_TCZ_120704.html

    1. 既存の抗リウマチ薬(DMARDs)註1)通常量を3ヵ月以上継続して使用してもコントロール不良の関節リウマチ患者。 コントロール不良の目安として以下の 3項目を満たす者。 • 疼痛関節数6関節以上 • 腫脹関節数6関節以上 • CRP 2.0mg/dL 以上あるいは ESR 28mm/hr 以上 これらの基準を満たさない患者においても、 • 画像検査における進行性の骨びらんを認める • DAS28-ESR が 3.2(moderate activity)以上 のいずれかを認める場合も使用を考慮する。

    2. さらに、日和見感染に対する安全性を配慮して以下の 3項目も満たすことが望ましい。

    • 末梢血白血球 4000/mm3以上 • 末梢血リンパ球数 1000/mm3以上 • 血中β-Dグルカン陰性

    註1)既存の抗リウマチ薬とは、本邦での推奨度 Aの抗リウマチ薬であるメトトレキサート、サラゾスルファピリジン、ブシラミン、レフルノミド、タクロリムス、生物学的製剤のインフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ、アバタセプトのいずれかを指す。

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    生物学的製剤の投与禁忌

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    TNF阻害薬 トシリズマブ

    (アクテムラ) アバタセプト

    (オレンシア)

    重篤な感染症(敗血症など) × × ×

    活動性結核 × × ×

    本剤の成分に対し過敏症の 既往歴あり × × ×

    脱髄疾患(多発性硬化症など)およびその既往歴あり ×

    うっ血性心不全 ×

    ×:投与禁忌

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    NSAIDs、副腎皮質ステロイドについて

    • NSAIDsは、かつて関節リウマチ治療の中心であったが、

    対症療法に過ぎず、現在は抗

    リウマチ薬が効果を発揮して関節炎が鎮静化するまでの補

    助薬として使用

    • 副腎皮質ステロイドは、強力かつ速効性の抗炎症作用が得られるが、大量使用・長期投

    与に伴う副作用が問題となるため、できるだけ使用しない

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    副腎皮質ステロイド できるだけ使用を避ける

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    使用は以下のような場合に限られる

    関節外症状

    妊娠

    緊急にADL改善を要するなどの理由がある

    • 骨破壊抑制効果が明確でない

    • 骨・糖・脂質代謝異常や感染症併発の危険因子となる

    • 全身的副作用の懸念

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    関節リウマチにおける手術

    • 薬物治療の進歩により、関節

    破壊の進行を遅らせることが可能となったが、関節の疼痛

    や腫脹、破壊・変形が高度に

    進行した例には手術が必要となる。

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    手術のタイミング 早期に整形外科に紹介

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    1. 保存的治療の限界:3~6ヵ月持続する症状

    2. 日常生活動作の障害 上肢:洗顔、更衣、食事、整容 下肢:疼痛、変形によって外出が困難

    3. 関節の破壊 高度な可動域制限・変形、高度な骨欠損、骨・筋萎縮

    適切な手術のタイミングを逃してしまうと 手指の機能低下が避けられない。

    専門医への紹介はなるべく早いほうがよい

    橋詰謙三ほか. 関節リウマチ. In:足立満ほか編.アレルギー・リウマチ膠原病診療最新ガイドライン. 総合医学社;2012. p.156-161.に基いて作成

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    次回は

    非専門医の役割とは?

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