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- 35 - (6)言語障害 【障害の程度と学びの場】 用 語 等

(6)言語障害 言語障害とは、発音が不明瞭であったり、話し言 … · 診断が分かれていたが、近年は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラ

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(6)言語障害

【障害の程度と学びの場】

用 語 等 解 説 等器質的又は機能的な構音障害

口蓋裂、その他の鼻咽腔閉鎖機能不全、構音器官のまひ等の器質的原因並びに乳幼児期における構音学習の偏り等の機能的原因により構音の障害をきたしているような状態

発語における流暢性の障害

発語の流暢性に障害があることにより、本人が社会生活に不都合をきたしたり、不適応を感じたりしている状態

言語機能の基礎的事項の発達に関する障害

話す、聞く等の言語機能の基礎的事項に発達の遅れや偏りがあるような状態

「からす」を「タラス」、「さかな」を「チャカナ」と発音したり、吃音があったり、単語だけで話したり、言葉がつながりにくかったりするなど、話し方に障害がある子どもは、小・中・義務教育学校の特別支援学級や通級による指導で教育を受けることができます。言語障害は、直接、社会的なハンディキャップに結び付きやすく、二次的な障害の情緒

面や行動面の課題にも発展する可能性があります。そのため、言語障害のある子どもを心理的に支えることは、言語障害教育における重要な役割であるといえます。

言語障害とは、発音が不明瞭であったり、話し言葉のリズムがスムーズでなかったりするため、話し言葉によるコミュニケーションが円滑に進まない状況であること、また、そのため子どもが引け目に感じるなど社会生活上不都合な状態をいいます。

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【判断にあたっての留意事項】○障害のある児童生徒に対する教育の経験がある教員等による観察・検査、専門医の診断結果等に基づき、教育学、医学、心理学等の観点から総合的かつ慎重に判断する。

○その際、通級による指導の特質(通常の学級に在籍し、週1~8時間、特別な指導を受けることができる。)に鑑み、個々の子どもについて、通常の学級での適応性、通級による指導に要する適正な時間等を十分に考慮する必要がある。

○障害による学習上・生活上の困難を改善・克服するための特別な指導をかなりの時間必要とする者や心理的な安定を図る指導を継続的に行う必要がある者は、特別支援学級のきめ細かな指導を受ける方が効果的な場合もある。

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(7)自閉症・情緒障害

【障害の程度と学習の場】

用 語 等 解 説 等自閉症又はそれに類するもの(①:自閉症)

自閉症の主な特徴として、人への反応やかかわりの乏しさなど、社会的関係の形成に特有の困難さが見られること、言葉の発達に遅れや課題があること、興味や関心が狭く特定の事物にこだわることのほか、刺激への過敏性や幼児期に見られる多動性などが挙げられるが、「それに類するもの」とは、基本的には、それらの状態に類似する障害をいいます。※以前は、アスペルガー症候群(知的発達に遅れがなく、言語の発達の遅れが目立たない自閉症)、高機能自閉症(知的発達に遅れがない自閉症)など診断が分かれていたが、近年は「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害」としてまとめた形で診断されるようになっている。

他人との意思疎通が困難(①:自閉症)

一般にその年齢段階に標準的に求められる言語等による意思の交換が困難であるということ。相手からの言葉の意味を理解したり、それに応じた意思を伝達したりすることができないか、又は可能であるが、他人との会話を開始し、受け答えをしながら継続する能力に明らかな困難がある状態

自閉症(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)は、他人との社会的関係の形成の困難さ、言葉の発達の遅れ、興味や関心が狭く特定の事物へこだわる等の特徴が見られます。情緒障害とは、状況に合わない感情・気分が持続し、不適切な行動等が引き起こさ

れ、それらを自分の意思ではコントロールできないことが継続し、学校生活や社会生活に適応できなくなっている状態をいいます。

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用 語 等 解 説 等対人関係の形成が困難(①:自閉症)

他人から名前を呼ばれたことに気づいて振り向く、他人からの働きかけに応じて遊ぶ、自分や他人の役割を理解し協同的に活動する、他人の考えや気持ちを理解し友人関係や信頼関係を形成することなどが、一般的にその年齢段階に求められるに至っていない状態

主として心理的な要因による(②:情緒障害)

「心理的な要因」とは、情緒を不安定にし、その状態が続くような影響を与える原因のこと。また、「主として」とは、発達障害など他の要因によるものではなく、心理的な要因によるものを中心とするという意味

社会生活への適応が困難(②:情緒障害)

他人と関わりをもちながら生活する、自分から他者に働きかける、集団に適応して活動する、友達関係をつくり協力して活動する、きまりを守って行動することなどが、一般にその年齢段階に求められる程度に至っていない状態

自閉症のある子どもに対しては、基本的には、自閉症やそれに類するものによる社会生活の困難を改善・克服することを目的に行います。そのため、円滑に集団に適応することができるようにするために、個々の子どもによって指導目標や指導内容・方法の重点が異なることに留意し、多様な状態に応じた指導を行うことが重要です。また、情緒障害のある子どもに対しては、状態の現れ方は様々ですが、子どもの困難さ

を理解した上で適切な時期に成長を促すための適切な対応が重要となってきます。例えば、選択性かん黙への対応の際、周囲の人が、その子の「話さないこと」だけに着

目しすぎて、なんとか話させようという働きかけが多くなり、このような働きかけが逆に緊張と萎縮を生じさせてしまうことがあり、対人恐怖などの二次的な不適応を引き起こす場合もあります。また、その子を「話をしない子」と見なしてしまい、周囲の子にもそういう印象を与え

てしまい、その状態を強化させてしまう場合もあります。この場合、意図的に話をしないのではなく、場面によって話ができない状態であるとい

う視点で、当該場面で話すことへの緊張や不安を緩和させるための手立てを考えるなど適切な対応が重要となります。また、必要に応じて医療機関と連携した対応等を求められることもあります。

【判断にあたっての留意事項】○障害のある児童生徒に対する教育の経験がある教員等による観察・検査、専門医の診断結果等に基づき、教育学、医学、心理学等の観点から総合的かつ慎重に判断する。

○知的障害や肢体不自由など他の障害との重複がある子については、子どもの教育的支援の必要度等を考慮し、当該障害種別の特別支援学校や特別支援学級における教育を受けることについて検討し、総合的かつ慎重に判断する必要がある。

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(8)学習障害・注意欠陥多動性障害

【障害の程度と学びの場】

用 語 等 解 説 等学習障害(①) 基本的に、全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、

書く、計算する又は推論する能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態。その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や環境的な要因が直接的な原因となるものではない。

注意欠陥多動性障害(②)

年齢あるいは発達に不釣り合いな注意力、又は衝動性・多動性を特徴とする障害であり、不注意、衝動性、多動性を示す状態が継続し、かつ社会的な活動や学校生活を営む上で著しい困難を示す程度の状態。原因としては、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定されている。

学習障害のある子どもは、特定の一部の能力の習得と使用のみに困難を示すものであるため、「単に学習が遅れているだけ」あるいは「本人の努力不足によるもの」とみなされ、障害の存在が見逃されてしまいがちです。

学習障害(限局性学習症/限局性学習障害)とは、学習に必要な基礎的な能力(聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する)のうち、一つないし複数の特定の能力について、なかなか習得できなかったり、うまく発揮することができなかったりすることによって学習上、様々な困難に直面している状態です。注意欠陥多動性障害(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)とは、おおよそ、身の回りの特定の事物に意識を集中させる脳の働き(注意力)に様々な課題があり、または、衝動的で落ち着きのない行動により、生活上、様々な困難に直面している状態です。

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注意欠陥多動性障害がある子どもは、「故意に活動や課題に取り組むことを怠けている」あるいは「自分勝手な行動をしている」等とみなされ、障害の存在が見逃されがちです。

学習障害、注意欠陥多動性障害のどちらについても、保護者や学校教育関係者が障害の特性に応じた適切な指導や支援が必要であることを十分に認識し、低学年のうちから適切な対応をとることが重要です。

【学習障害により困難を示す領域】○聞く能力………他人の話を正しく聞き取って理解すること○話す能力………伝えたいことを、相手に伝わるように的確に話すこと○読む能力………文章を正確に読み理解すること○書く能力………文字を正確に書くこと、筋道立てて文章を作成すること○計算する能力…暗算や筆算で計算すること、数の概念を理解すること○推論する能力…事実をもとに結果を予測したり、結果から原因を推し量ったりする

こと

【学習障害の状態把握についての留意点】○全般的な知的発達の遅れがないこと※学年が上がるにつれ、学習障害による国語、算数(数学)の基礎的能力の困難が原因となって、全般的な学習の遅れにつながっている可能性があることに留意する。

○国語、算数(数学)等の基礎的能力に著しいアンバランスがあること※英語については音韻が複雑である上、不規則な表記が多く、日本語に比べ識字などの基礎的能力に著しいアンバランスを生じやすいとの指摘もあるので留意する。

【判断にあたっての留意事項】○学習障害及び注意欠陥多動性障害のある子どものうち、通常の学級における適切な支援や指導方法の工夫のみでは、その状態の改善・克服が困難であり、一部特別な指導が必要であると判断される場合に通級による指導の対象となる。判断にあたっては、学校または地域における支援体制の活用を図り、学校に設置されている校内支援委員会等による判断や意見に加え、専門家等の意見を参考にすることが重要である。

【注意欠陥多動性障害の具体的な状態例】○不注意………様々な事物に注意が移るため気が散りやすく、注意を集中させることが

困難であったり、必要な事柄を忘れやすかったりする。

○衝動性………話を最後まで聞いて答えることや順番を守ることが困難であったり、他人の行動をさえぎったりしてしまう。

○多動性………じっとしていることができず、落ち着いて学習や活動に取り組むことが困難であったり、過度に手足を動かしたり、話し続けたりする。

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1 校内支援委員会等の活用と継続的な教育相談 特別支援教育は、将来の自立や社会参加に向けて、個々の子どもの教育的ニーズに応じ

て適切な指導と必要な支援を行うことを理念とするものであり、子どもの障害の状態の変化等に応じて適切に教育を行うためには、就学時のみならず就学後も引き続き教育相談を行う必要があります。各学校においては、子どもの教育的ニーズ等の変化に継続的かつ適切に対応するため、

個別の教育支援計画の作成・活用を推進し、同計画を定期的に見直し、支援内容・方法等の改善を図ることが重要です。そのためにも校内支援委員会等を定期的に開催し、一定期間の指導や支援の状況及び子

どもの変容や状態の確認、今後の支援内容等について検討し、保護者等との面談を実施して、本人や保護者と合意形成を図っていくことが必要です。なお、継続的に教育相談を行うことが、保護者によっては精神的あるいは生活上の負担

と受け止められる場合もあるため、実施時期や回数、場所、参加者などを工夫することや、学校と家庭とが子どもの成長を支える両輪となるために必要という認識が共有されるようにするなどの配慮を行う必要があります。

2 「学びの場」の柔軟な見直し 就学時に決定した「学びの場」は、小学校段階6年間、中学校段階3年間ずっと同じと

いうものではありません。前述した校内支援委員会等での個別の教育支援計画を中心に据えた協議や保護者との継

続的な教育相談の中で、子どもの発達の程度や適応の状況、学習環境の変化等から「学びの場」や教育課程をより子どもの教育的ニーズに適切に対応するものに変更したほうがよいと考えられる場合、柔軟に変更することが可能です。子どもの状況にあわせて、就学先の変更(小・中・義務教育学校から特別支援学校への

転学、又は特別支援学校から小・中・義務教育学校への転学)や特別支援学級への入級、又は特別支援学級からの退級等が可能であることを関係者は十分理解しておき、必要に応じて本人・保護者へ情報を提供することが重要です。小・中・義務教育学校から特別支援学校への転学等、就学先の変更については、学校か

ら教育委員会へ必要な資料を提出し、教育委員会の判断によって認められます。市町教育委員会は、学校に対して就学先変更に係る手続きの流れ等、十分な情報提供を

行うことが必要です。

第4章 就学後の教育相談・支援

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3 就学先変更手続き 就学後の「学びの場」の見直しの際も、基本的に就学前の教育相談や就学先の判断と同

様に、本人・保護者の意向を確認しながら時間をかけて丁寧に進め、必要に応じて学校見学や体験入学等を行います。手続きの詳細、必要書類の様式については、県教育委員会が作成している「障害のある

子どもの就学・転学手続」及び同様式集を確認してください。

(1)特別支援学校から小・中・義務教育学校への就学先変更特別支援学校から小・中・義務教育学校へ就学先を変更する場合は、子どもの障害等の

状態によって以下の 2通りが考えられます。

①の場合、市町教育委員会は、速やかに就学する学校と入学期日を指定して、保護者と就学先の小・中・義務教育学校に通知します。②の場合、市町教育委員会は、本人の状態や地域の支援体制の状況等を踏まえ、本人・保護者と面談を行ったり、教育支援委員会等で専門家の意見を聞いたりして、総合的に判断します。結果的に「引き続き、特別支援学校へ就学することが適当である」という判断になる場合もあります。その際は、本人・保護者の同意を得て、引き続き特別支援学校へ就学することになります。

(2)小・中・義務教育学校から特別支援学校への就学先変更小・中・義務教育学校から特別支援学校への就学先の変更は、子どもの障害等の状態に

よって以下の 2通りが考えられます。

①②の場合とも、当該学校の校長は市町教育委員会に対して速やかに通知します。市町教育委員会は、これを踏まえ再度就学先の検討を行います。

①治療や学習等により障害が改善し、視覚障害者等でなくなった場合(学校教育法施行令第 22条の 3の表の項目に該当しなくなった場合)

②本人の障害の状態に変容はないが、支援の内容や地域の支援体制等の変化により、小・中・義務教育学校への就学が適当であると考えられる場合(認定特別支援学校就学者でなくなった場合)

①小・中・義務教育学校に在籍している子どもが、新たに視覚障害者等(学校教育法施行令第 22条の 3の表の項目に該当)になり、小・中・義務教育学校への就学が適当でなくなったと思料する場合

②視覚障害者等で小・中・義務教育学校に就学した子どものうち、本人の障害の状態や地域の支援体制等の変化により、小・中・義務教育学校への就学が適当でなくなったと思料する場合