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© 2011
Osaka Gas Co., Ltd.
調理や火の生活文化の継承
~火育(ひいく)による次世代教育~
山下満智子
概 要
1.
火離れ、調理離れの現状・子どもと火の映像紹介・食環境の変化にみる火離れ、調理離れ
2.
現状への懸念:火・調理はヒト(人類)固有のもの、急速な火・調理離れをこのままにしていいのだろうか。
・最新脳科学による調理や火の研究・ヒト(人類)の進化と火や調理・まとめ
3.
実践活動・「火の教育」による次世代教育モデルの検討・大阪ガスの次世代教育
火育(ひいく)プログラムご紹介
火離れの現状
子どもと火
火離れは、子どもだけの問題ではなかった。
1.
東日本大震災後の計画停電、節電でガスコンロ
炊飯について、多くの問い合わせをいただいた。
2.
新聞の生活面には、計画停電や節電対策とし て、家電製品が使えない時の調理の特集が組ま
れた。(読売新聞 朝刊 3月16日、産経新聞 夕刊 3月31日他多数)
3.
ホームページには、
節電時の調理、ガスコンロ 炊飯に多くのアクセスがあった。
炊飯や調理が、家電に依存していることが顕在化した。
家事労働軽減の歴史を振り返ってみる。
火仕事
薪・炭
ガス・電気
薪・炭・煙・灰の手配・処理から解放点火・火加減・消火技術も不要
水仕事
井戸と水がめ
水道 、
蛇口からお湯がでる
水くみ労働から解放ふんだんに使える洗い物が楽に良く落ちる
照明
太陽の自然光や灯明
ガス灯、電灯
活動・労働時間の自由度拡大
飛躍的に便利になる一方で、 火の始末、水の始末という生活技術が失われた。
昔は、こうしてご飯を炊いた。
火はすぐそばにあるものだった。
スイッチポン! 自動炊飯器で炊くようになって、早や半世紀
火が見えなくなりはじめた!
電気自動炊飯器 1955年発売*写真は、東芝ホームページより
ガス自動炊飯器 1958年発売
1950年
電気トースター1955年
電気炊飯器、電気フライパン
1957年
電気グリル1959年
電気オーブン
1962年
オーブントースター1966年
家庭用電子レンジ
1974年
電磁調理器、ホットプレート
さらに続々と便利な電気調理器が…
やがて、火離れだけでなく、調理離れも始まる。
1970年
すかいらーく1号店1970年
ケンタッキーフライドチキン大阪万博出店、名古屋に1号店
1970年
小僧寿司1号店1971年
マクドナルド1号店
1974年
デニーズ1号店1976年
ほっかほっか亭1号店
1970年代前半、ファミリーレストランが上陸、
やがて家庭のダイニングの役割を担うまでに成長した。
調理離れも始まる
7419
17408
29144
3827442643 44391
0
10000
20000
30000
40000
50000
1985 1990 1995 2000 2005 2008 年
店舗
コンビニ急成長:加速する調理離れ
やはり1970年代に登場したコンビニは、急成長、
家庭の台所・冷蔵庫の役割を代行するようになる。
10932 12643 12488 11498 11410
7183 8280 8358 84148791
49767334 7963 8128
8011
50904 4962945035 40659 39351
0%
20%
40%
60%
80%
100%
1986 1995 2000 2005 2010 (年)
食料支出からも、調理離れは、一目瞭然
食材・調味料
調理済食品
飲料・菓子
外食
食料支出合計
世帯人数
世帯主年齢
77886円
3.42人
51.0歳
73844円
3.24人
52.7歳
68699円
3.17人
54.9歳
67563円
3.09人
56.3歳
73995円
3.69人
47.7歳
食の外部化率42.2%、34歳以下単身者男性では、70%以上
食の外部化率=(外食産業市場規模+料理品小売業)/
(家計の食料・飲料・煙草支出-煙草販売額)+外食産業市場規模
中食 7.4%4.7%3.5%
1.9%
2.
現状への懸念、仮説
火・調理はヒト(人類)固有のもの、急速な火・調理離 れをこのままにしていいのだろうか。
●
現代は、さまざまな家族、社会の問題を抱えている。 火離れ、調理離れも、その要因・遠因の一つとなっ
ているのではないか。●
さらに顕在化していない人類の存在そのものに関わ
るような大きな問題引き起こす可能性があるのでは ないか。
脳や進化に注目して調査川島隆太教授と共同研究へ
最新脳科学による研究事例を発見!
・・2000年代、音読や単純計算で、 ヒトの前頭前野の広い範囲で血
流量の増加(活性化)が認めら れ、記憶などの脳機能が改善
するという実践的研究成果が報 告された。
東北大学加齢医学研究所川島隆太
教授
・1990年代、脳計測機器の開発 が進み、1996年近赤外線計測 装置(日立)により動態・無浸襲 での脳計測が可能になった。
親子クッキング中の脳活動を計測
ホットケーキを盛り付ける被験者親子
1.
親子クッキングは、子どもの脳に
どんな影響を与えるだろうか
2. 普段調理をしている大人も調理で脳が活性化するだろうか?
炒め物を盛り付ける被験者の計測
3. 火は、脳にどんな影響を与えるだろうか。
•• マッチをするマッチをする•• 火のある七輪を見る火のある七輪を見る•• 七輪で火をおこす七輪で火をおこす•• 七輪でサンマを焼く七輪でサンマを焼く•• 火のあるかまどを見る火のあるかまどを見る•• ガスコンロの火を見るガスコンロの火を見る•• ガスコンロを点火ガスコンロを点火など14項目を実施など14項目を実施
近赤外線計測装置による脳活動の計測脳活動が活発になると、脳にブドウ糖と酸素を供給する
ため脳の活性化した部分で血流量が増加する。近赤外線計測装置では、頭皮から20ミリほどの血流量
の増減をほぼリアルタイムで計測する。
近赤外線計測装置プローブの装着
後方は光ファイバー
東北大学加齢医学研究所
川島隆太
教授
前頭前野が何を行っているか?
思考創造
記憶学習
自発性・身辺自立
行動・情動の制御
やる気注意
東北大学
川島隆太教授作成
コミュニケーション
「ガスコンロでホットケーキを焼く」、「果物、生クリームで盛り 付ける」のいずれのプロセスにおいても、左右の大脳半球の 前頭連合野が活性化した。
安静時 ガスコンロでホットケーキを焼く
果物、生クリームで
盛り付ける
※赤色のところは、活性化している部分※脳活動が活発になるとブドウ糖と酸素を供給するため活性化部分で血
流量が増加する。
1.
親子クッキングで、子どもの脳の左右の大脳 半球の前頭連合野の活性化が確認できた。
「夕食のメニューを考える」「野菜を切る」「ガスコンロで炒める」「盛り付ける」の4つのいずれのプロセスにおいても、左右の大脳半球の前頭連合野が活性化した。
安静時 夕食のメニューを考える
野菜を切る ガスコンロで炒める 盛り付ける
※赤色のところは、活性化している部分
2. 普段調理をしている大人でも、左右の大脳 半球の前頭連合野の活性化が確認できた。
調理による脳の活性化:生活介入により実証!
●シニア男性による3ヶ月の実証実験
於クッキングスクール千里
59~81才(平均年齢68.7才)のシニア男性21人に3ヶ月の調理の生活介入を行った。↓脳機能検査得点が、有意に向上。いわば脳が若返った!と言える結果が得られた。
●親子クッキングによる3ヶ月の実証実験
於クッキングスクール淀屋橋
親子30組
62名を二組(被験者と対照群)に分け、3ヶ月の調理の生活介入を行った。
↓親子クッキングに取り組んだ親子は、脳機能検査得点が、有意に向上。
協力:㈱アプリーティセサモ
3.
火は、脳にどんな影響を与えるだろうか。
利き手グーパー 大人がマッチをするのを見る マッチをする
ガスコンロを見る ガスコンロの火を見る ガスコンロ点火
火の無い七輪を見る 火のある七輪を見る サンマを裏返す
焼けるのを見る
七輪で火をおこす 火のある七輪にサンマ
を乗せる、焼けるのを
見る
火の無いかまどを見る 火のあるかまどを見る かまどを火吹き竹で
吹くのを見る
3.「火を扱う行為」で、子どもも大人も脳活性化を確認
利き手グーパー 大人がマッチをするのを見る ガスコンロの火を見る
ガスコンロを点火する
火のある七輪を見る
七輪で火をおこす
かまどを火吹き竹で
吹くのを見る
マッチをする
© 2010 Osaka Gas Co., Ltd.
2010年3月、 ハーバード大ランガム博士による料理説と出会う
料理説:「火を獲得し、料理をしたことがヒトに進化を
もたらした」
Dr.リチャード・ランガム
Catching Fire How cooking made us human
火の賜物
ヒトは、料理で進化した
1.
料理が、ヒトに他の動物にない「脳の拡大」という生物学的な大きな
変化をもたらした。
2.
家族という社会単位が生まれた。
3.
「その場で食べるのではなく料理をするために持ち帰る」必要から、
他の動物にないヒト特有の食事の仕方ができた。
4.
香りや味など料理の魅力が、他の動物に見られない食べ物を囲む
社会性や協調性、非暴力的な性質を育んだ。
ヒトとして、家族や共食には、意味があった。
まとめ
●
調理や火が重要なことは、改めて言う必要もないことと認識されてきた。
●
しかし便利な生活を追求する中で、これら重要な生活文化の継承がおろそかにされ、状況は大きく変化している。
●
最新脳科学面から、調理や火を扱うことの重要性をあらためて検証することができた。
ヒト(人類)、あるいは社会の持続可能性のためにも、これら調理や火の生活文化を次世代に継承すべきものとして、その重要性を再認識する必要があるのではないだろうか。
実践活動に向けて
大阪ガスには、環境教育、食育活動で、既に次世代教育の実績があり、また調理と脳の活性化研究について、地区での講演活動を広く展開していました。
火の教育においても私たちが今できることがあるのではないかと考え、食関連メンバーに助けをもとめ、
「火の教育:新たな次世代教育モデル」についての検討を開始しました。
火の教育モデルの検討
●火に親しみ火を学ぶ体験を通じて、豊かな心を育み、 生きる力を高めることを火育(ひいく)と名づけました。
●
シンボルとして、火育(ひいく)
デザイン登録を行う。
●
マッチ、七輪、ガスコンロ・・
+
古代の発火法
●ランガム先生とCEL前所長インタビュー実現
火おこし体験プログラム
火おこし体験プログラム
ハンドピース
(タモ)
押さえコマ
(樫)
ヒキリ棒
(竹)
縦筋は滑り止めの溝 ヒキリ杵
(空木)
ヒキリ板
(杉)
ヒキヒモ 発火用麻綿
ヒキリ臼(黒い所は使用済み)ヒキリギネを当てて摩擦させる
古代火おこし道具の名称
(
)内は材質
テフロン板
『火育(ひいく)』実践活動の3つのプログラム
小学校への
出張授業
小学校への
出張授業
火にまつわるお話
の読み聞かせ
火にまつわるお話
の読み聞かせ
火おこし体験
プログラム
火おこし体験
プログラム
2011年6月
『火育』
の本格的な取り組みを開始
火おこし体験プログラム『火育』の具体的な取り組み
マッチ、古代発火法、ガスコンロ等による火おこしの体験機会を提供するプログラム。子ども会やキャンプ等へ出張し、グループ会社の大阪ガスビジネスクリエイト運営のもと、火のプロである社員OBが安全な火の使い方や火おこしを指導しています。
小学校への出張授業『火育』の具体的な取り組み
小学校6年の理科単元
「ものが燃えるとき」
に対応したカリキュラムを開発。大阪ガス社員が近畿地区の小学校に出向き出張授業を展開。
授業タイトル
「ガスコンロのしくみ、燃焼のふしぎ」
◆
ガスコンロの仕組みを紹介し、燃焼に必要な条件について学ぶ。
◆
ガスコンロ,ブンゼンバーナー,マッチ,ろうそくの燃焼の観察と食材を使った燃焼実験から、燃焼の違いを学ぶ。
◆
様々な炎(燃えること)が、生活のあらゆる場面で、適切に利用されていることを学ぶ。
火にまつわるお話の読み聞かせ『火育』の具体的な取り組み
「たのしい」「おいしい」「いやし」など
“火”
を軸に展開
されるショートストーリーをNPO法人
プラス・アーツ様と共同で制作。
読み物として広く公開する共に、各種団体向けに読み聞かせを実施。
NPO法人
プラス・アーツ
様
「教育」「まちづくり」「防災」「環境」「福祉」「国際協力」といった分野の様々な課題を解消し、社会を再活性化することを目的に活動している特定非営利活動法人。
大阪ガスは、子どもたちが「火を使い、理解すること」の
推進に取り組みます。
火を使うことは、人類史における最大の出来事のひとつです。
人類の発展に、大きな革命ともいえる変化をもたらした火の利用が、
現代生活の中で急速に失われ、
火を扱ったことのない子どもが、増えています。
大阪ガスは、安全な火のおこし方や扱い方、火を使った調理など、
子どもたちが、「火に親しみ、火を学ぶ」体験を通じて、
豊かな心を育み、生きる力を高めることを
「火育(ひいく)」と名づけ、
体験型プログラムや学習プログラムとして展開し、
「火を使い、理解すること」の推進に取り組みます。
炎(火)とともに歩んできた大阪ガスだからできる、
「おいしさ」、「あかるさ」、「暖かさ」・・・
さまざまな炎の恵みを次の世代へ、これが私たちの使命です。
�調理や火の生活文化の継承�~火育(ひいく)による次世代教育~概 要スライド番号 3スライド番号 4スライド番号 5昔は、こうしてご飯を炊いた。スイッチポン!�自動炊飯器で炊くようになって、早や半世紀スライド番号 8調理離れも始まるコンビニ急成長:加速する調理離れスライド番号 11食の外部化率42.2%、34歳以下単身者男性では、70%以上2. 現状への懸念、仮説最新脳科学による研究事例を発見!スライド番号 15 スライド番号 17スライド番号 18前頭前野が何を行っているか?スライド番号 20スライド番号 21 調理による脳の活性化:生活介入により実証!スライド番号 23スライド番号 242010年3月、�ハーバード大ランガム博士による料理説と出会うまとめ実践活動に向けてスライド番号 28スライド番号 29スライド番号 30スライド番号 31スライド番号 32スライド番号 33スライド番号 34