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ステロイド薬
多臓器不全
不動化高血糖
筋弛緩薬
ICU-AWAcquired Weakness
今、求められるICU-AWに対する栄養療法
[監修]井上 茂亮 先生 東海大学医学部付属八王子病院救命救急医学 准教授
*PostIntensiveCareSyndrome **CriticalIllnessPolyneuropathy ***CriticalIllnessMyopathy
ステロイド薬
多臓器不全
不動化高血糖
筋弛緩薬
ICU-AW(ICU-Acquired Weakness)について我が国におけるICU救命率は高い水準を保っていますが、ICU退室後の長期予後は良好とはいえません。その 一因がICU-AWをはじめとした集中治療後症候群(PICS*)です。ICU-AWはICU入室後に発症する急性の左右対称性の四肢筋力低下を呈する症候群で1)、CIP**やCIM***による びまん性筋力低下症候群の総称です。ICU-AWは2010年の米国集中治療医学会(SCCM)により提唱された概念で、CIPでは年単位で運動機能の 後遺症が残る症例が報告されるなど、予後だけでなく生活の質にも影響をもたらすことがわかってきました。ICU-AWを予防するため、ICU入室早期から適切なリハビリテーションや栄養療法を行うことが求められています。
ICU重症患者のおよそ2人に1人がICU-AWを発症しているといわれています2)
ICU-AWの関連因子ICU-AWは多臓器不全や不動化、高血糖、ステロイド薬や筋弛緩薬の投与、絶食や腫瘍による栄養状態の悪化など多くの因子が関連します(図1)3)。
栄養療法で特に重視すべき因子
[高 血 糖]�重症患者ではインスリン抵抗性が亢進し、筋肉へ取り込まれるブドウ糖が減少して血中のブドウ糖が過剰になります。
[ステロイド薬]�筋たんぱく分解やインスリン抵抗性の亢進、糖新生の増加により高血糖が惹起されます。
[たんぱく質]�重症患者ではたんぱく質分解が亢進する一方、たんぱく質合成能は低下します。
[エネルギー]�低栄養による飢餓や腫瘍により筋肉が分解・消費されます。
[図1]ICU-AWの関連因子と栄養学的対策
多臓器不全 不動化 高血糖
ICU-AW
選択的ミオシン消失
たんぱく質分解扌たんぱく質合成➡
筋肉の消費筋萎縮進行(細い繊維型)
筋膜興奮性↓Ⅱ型筋繊維萎縮
筋弛緩薬
敗血症廃用絶食腫瘍臓器不全
ステロイド薬
IL-1IL-6
C3aC5a
IL-10TGF-β
IFN-γ
TNF-α
重症患者では血糖変動を抑えつつ
十分なエネルギー・たんぱくを補給できる栄養療法が重要
ICU重症患者のおよそ2人に1人がICU-AWを発症しているといわれています2)
ガイドラインにおける重症患者の目標血糖値
重症患者の46%にICU-AW2)
日本版重症患者の栄養療法ガイドラインでは180mg/dL以下がグレード1Aとされており、低血糖リスク回避のために強化インスリン療法を行わないことが強く推奨されています4)。また、日本版 敗血症診療ガイドライン 2016では144〜180 mg/dLを弱く推奨5)、脳卒中治療ガイドライン 2015では140〜180mg/dLがグレードC1とされており6)、どのガイドラインにおいてもおおむね180mg/dL以下で血糖管理を行うことが推奨されています。高血糖は糖尿病の既往がない患者でも、薬物療法、代謝ストレスをはじめ、脳卒中急性期や循環器病など様々な医学的理由で起こり7)8)9)10)、血糖の日内変動が大きいほど予後が悪いことも明らかにされています11)。
血糖変動は重症患者にとって致死的となり得る12)
適切なエネルギー・たんぱくの補給
が必要
血糖コントロールが必要
栄養学的ICU-AW
対策
高血糖・低血糖リスクの低減血糖上昇 血糖降下
扌罹患率扌死亡率
(手術および重篤な疾患)
低血糖扌罹患率扌死亡率
扌筋肉異化作用
扌脂肪過多
ステロイド薬
多臓器不全
不動化高血糖
筋弛緩薬標準組成群
12.3%
糖質制限群
5.1% (Chi-square test)P≦0.0118
標準組成群
38.4%
糖質制限群
29.1%
(Chi-square test)P≦0.0269
15.1
13.0
(Wilcoxon Rank Sum test)
(日)11.0 12.0 13.0 14.0 15.0 16.0
糖質制限群
標準組成群
P=0.1843
9,200
6,700
(Wilcoxon Rank Sum test)
(USD)0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000
標準組成群
糖質制限群P≦0.0001
■お問い合わせ・資料請求先
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2017年9月作成GLU171005KYO
重症患者に対する糖質制限経腸栄養療法の可能性ICU-AWの予防には糖質を制限しつつ必要な栄養素やエネルギー量を確保 できる糖質制限栄養製品が有用である可能性があります。13)
糖質制限群は標準組成群に比べICU死亡率が有意に低かった。
糖質制限群は標準組成群に比べICU入室中のインスリン投与率が有意に低かった。
糖質制限群は標準組成群に比べICU入室期間が短い傾向であった。
糖質制限群は標準組成群に比べICU入室中の医療費が有意に低額であった。
ICU死亡率
結 果
ICU入室中のインスリン投与率
ICU入室期間
ICU入室中の医療費
調査方法:5年間(2009年〜2013年)のレトロスペクティブ研究調査対象:�国立台湾大学病院のICUにて5日以上経腸栄養剤単剤を投与した患者(糖質制限栄養製品投与群158例、
標準組成栄養製品投与群794例について入院記録臨床データと支払いデータを解析)評価項目:「ICU死亡率」、「ICU入室期間」、「ICU入室中のインスリン投与率」、「ICU入室中の医療費」選択基準:18歳以上、2型糖尿病除外基準:経腸栄養剤混合投与
The clinical and economic impact of the use of diabetes-specific enteral formula on ICU patients with type 2 diabetes
【文献】 1)KressJP,etal.NEnglJMed.2014;370:1626-1635. 2)StevensRD,etal.IntensiveCareMed.2007;33:1876-1891. 3)SchefoldJC,etal.JCachexiaSarcopeniaMuscle.2010;1:147-157. 4)日本集中治療医学会重症患者の栄養管理ガイドライン作成委員会.日本集中治療医学会雑誌.2016;23:185-281. 5)日本版敗血症診療ガイドライン2016作成特別委員会.日本集中治療医学会雑誌.2017;24Supplement2.S1-S232. 6)日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2015.協和企画 7)LunaB,etal.JAMA.2001;286:1945-1948.
18)DunganKM,etal.Lancet.2009;373:1798-1807.19)MelamedE.JNeurolSci.1976;29:267-275.10)CerielloA.EuroHeartJ.2005;26:328-331.11)KrinsleyJS.CritCareMed.2008;36:3008-3013.12)BarazzoniR,etal.ClinNutr.2017;36:355-363.13)HanYY,etal.ClinNutr.2016;S0261-5614(16)31267-5.
ステロイド薬
多臓器不全
不動化高血糖
筋弛緩薬
ICU-AWAcquired Weakness
文献13)より作図
文献13)より作図