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IEC 61850 を適用した 電力ネットワーク スマートグリッドを支える変電所自動化システム天雨 徹 編著田中 立二大谷 哲夫 共著

IEC 61850 を適用した - コロナ社...IEC 61850 を適用した 電力ネットワーク ―スマートグリッドを支える変電所自動化システム― 天雨 徹 【編著】

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Page 1: IEC 61850 を適用した - コロナ社...IEC 61850 を適用した 電力ネットワーク ―スマートグリッドを支える変電所自動化システム― 天雨 徹 【編著】

コ ロ ナ 社

IEC 61850を適用した電力ネットワーク

―スマートグリッドを支える変電所自動化システム―

天雨 徹 【編著】田中 立二・大谷 哲夫 【共著】

コロ

ナ社

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は じ め に i

は じ め に

 いまや電力供給システムは,産業や生活を支える最も重要な社会インフラと

なっている。その一方で近年の災害は,大規模停電をはじめ電力供給システム

に大きな被害をもたらし,そのレジリエンスの重要性を改めて認識させること

となった。今後の電力供給システムは「3E+S(energy security,economic

efficiency,environment,safety)」のバランスを保ちつつ,レジリエンス・安

定供給の重要性をより高めていく必要があろう。加えて,化石エネルギーから

再生可能エネルギーへのパラダイムシフトによる地球温暖化対策など,環境問

題への配慮も求められる。

 そうした中,政府は第 5期科学技術基本計画において,「サイバー空間(仮想

空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより,経

済発展と社会的課題の解決を両立する,人間中心の社会=Society 5.0」を目指

すべき未来社会の姿として提唱した。この社会が実現すれば,IoT(internet of

things),人工知能(AI)の活用により必要な情報が必要なときに提供されるこ

とで,先に述べたような課題の克服が可能となるだろう。電力供給システムに

おいても,情報通信技術を活用した「スマートグリッド(賢い電力網)」の構想

がますます注目を集めている。また,国内外でスマートメータなどのデジタル

形計量システムの導入が進むなど,電力供給システムはいまや大きな転換期に

あるといえる。

 このようなデジタライゼーションが進展する中で,新たな情報通信技術とし

ておもに変電所自動化システムに適用される IEC 61850が注目を浴びている。

国際標準である IEC 61850に準拠した変電所自動化システムは,保護リレーシ

ステムや変電所監視制御システム,給電・制御所システムと相互に連携して電

力系統を制御する電力供給システムにおける中核的な役割を担うものであり,

コロ

ナ社

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ii は じ め に

その適用が拡大している。しかしながら,これまで IEC 61850を本格的に取り

扱う書籍はほとんど存在しなかった。

 本書は,IEC 61850の解説と,変電所自動化システムの実態・課題・将来動

向などを体系的にまとめたものである。電力エネルギー分野の専門技術者だけ

でなく,電力工学を学ぶ学生にも理解しやすくまとめており,電力システム工

学などの参考書として積極的に活用していただきたい。本書が変電所自動化シ

ステム設計者のみならず,これら電力ネットワークについて関心をもっておら

れる方々にとって,少しでも役に立つものとなれば望外の喜びである。なお,

本書は電力ネットワークに関わっている技術者が分担して執筆した。そのおも

な分担は以下のとおりである。

 天雨 徹 :1,5章

 田中 立二:2,3章,付録

 大谷 哲夫:4,6,7章

 本書の完成にあたっては,浜松浩一氏,瀬戸好弘氏,坂 泰孝氏に多大な協

力をいただいた。厚く御礼申し上げる。

 また,コロナ社の方々には終始貴重な助言と励ましをいただいた。感謝の言

葉もない。

 2020年 4月

天雨 徹コロ

ナ社

Page 4: IEC 61850 を適用した - コロナ社...IEC 61850 を適用した 電力ネットワーク ―スマートグリッドを支える変電所自動化システム― 天雨 徹 【編著】

目 次 iii

目     次

1. 序     章

1.1 概     要 1

1.2  電力ネットワークと変電所保護制御システムに関する環境変化と課題

3

1.2.1 電力ネットワークを取り巻く環境の変化 3

1.2.2 変電所保護制御システムの現状 9

1.2.3 変電所保護制御システムにおける課題 11

1.3 本書の目的と内容 13

引用・参考文献 13

2. 変電所保護制御システム標準 IEC 61850①

― 概要と論理ノード

2.1 概     要 15

2.2 標 準 体 系 23

2.3 IEC 61850に基づいたシステム開発手順 29

2.4 論理ノードの構成 40

2.4.1 論理ノード(LN:logical node) 43

2.4.2 共通データクラス(CDC:common data class) 54

2.4.3 共通データクラスのデータ属性 60

引用・参考文献 64

コロ

ナ社

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iv 目 次

3. 変電所保護制御システム標準 IEC 61850②

― 通信サービスとセキュリティ

3.1 通信サービス IEC 61850-7-2 66

3.1.1 GenServerクラス 71

3.1.2 Associationモデル 72

3.1.3 GetDataValues/SetDataValues ―データ読出/書込 73

3.1.4 Report ―計測,イベント伝送 74

3.1.5 Log ―記録・検索 81

3.1.6 Control ―直接制御・選択制御 83

3.1.7 Setting ―設定・整定 88

3.1.8 File transfer ―ファイル転送 90

3.1.9 GOOSE ―高速高信頼イベント伝送 92

3.1.10 Sampled Value ―瞬時値伝送 95

3.1.11 時 刻 同 期 97

3.2 変電所構内および広域通信ネットワーク 99

3.2.1 プロセスバスの適用 IEC 61850-90-4 100

3.2.2 通信の冗長化構成(RSTP,PRP,HSR) IEC 61850-90-4 101

3.2.3 変電所間通信(送電線電流差動保護など) IEC 61850-90-1 104

3.2.4 給電・制御所-変電所間通信(テレコン) IEC 61850-90-2 105

3.2.5  シンクロフェーザ(系統観測,安定化システム) IEC 61850-90-5,

IEC 62361-102 106

3.3 セキュリティ IEC 62351 108

引用・参考文献 114

4. 保護制御ユニット(IED)とエンジニアリングツール

4.1 ハードウェア 116

4.1.1 CPU とメモリ 116

4.1.2 電     源 117

4.1.3 通信インタフェース 118

4.1.4 入 出 力 部 118

4.1.5 耐 環 境 性 能 119

コロ

ナ社

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目 次 v

4.2 IEDに実装される保護制御機能 121

4.3 ソフトウェア 124

4.3.1 保護制御プログラム 124

4.3.2 通信用ミドルウェア 127

4.3.3 オペレーティングシステム 127

4.4 エンジニアリングツール 128

4.4.1 システムコンフィグレータ 128

4.4.2 IEDコンフィグレータ 128

引用・参考文献 129

5. SCADA

5.1 SCADAと関連する装置 131

5.1.1 SCADAの構成形態 132

5.1.2 SCADAソフトウェアの機能 133

5.1.3 SCADAソフトウェアの構成 135

5.1.4 OPCについて 137

5.2 変電所 SCADA 138

5.2.1 系統監視機能 138

5.2.2 機器制御機能 139

5.2.3 切替スイッチ制御機能 140

5.2.4 計 測 機 能 141

5.2.5 状態表示機能 143

5.2.6 故障表示機能 144

引用・参考文献 145

6. IEC 61850適用保護制御システム構築の

ケーススタディ

6.1 適用対象の変電所および保護制御機能 146

6.1.1 変電所の主回路構成 146

6.1.2 保護制御機能 148

6.1.3 論理ノードの選定とその役割設定 150

コロ

ナ社

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vi 目 次

6.1.4 IED の 仕 様 155

6.2 システムの設計 156

6.3 システムのテストとメンテナンス 157

7. 電力ネットワークにおける保護制御システムの今後

7.1 汎用性の確保のためのアプローチ 159

7.1.1 BAPを使ったシステム構築 160

7.1.2 国内における機能仕様の活用 161

7.1.3 論理ノードの実装方法の改良 161

7.2 広  域  性 164

7.2.1 分散型電源などの監視制御 164

7.2.2 配電自動化システム 165

7.2.3 風力発電の監視制御 168

7.3 標準化範囲の拡大 170

7.3.1 エンジニアリングツールの標準化 170

7.3.2 標準化を充実させるための置換性の可能性 171

7.3.3 システム管理 173

7.4 電力会社,メーカの役割分担 174

7.5 デ ー タ 活 用 174

引用・参考文献 176

付     録

付表 1 IEC 61850-7-4 論理ノード一覧 177

付表 2 IEC 61850-7-3 共通データクラス 182

付表 3 IEC 61850-7-420 分散電源 論理ノード,共通データクラス 184

索     引 187

コロ

ナ社

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1.1 概       要 1

第 1章

序     章

 本章では,はじめに電力ネットワークを取り巻く環境の変化として,太陽光発電の大量導入,スマートグリッド,国際標準,電力ネットワークの現状と課題について述べる。

1.1 概     要

 地球環境との調和を維持しつつ,持続可能な社会を実現していくには,再生

可能エネルギーをはじめとするクリーンエネルギーの利用を促進する必要があ

る。そのためには,スマートメータなどの通信・制御機能を利活用した停電回

避や送電調整のほか,多様な電力契約の実現やコスト低減などを可能にしたス

マートグリッド(賢い電力ネットワーク)の実現が必要である。

 国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)におい

ても,次世代電力ネットワークに関する検討が進められている1)†。その中心に

位置するのが,各種エネルギーのスマート化を扱うシステム委員会(SyC

Smart Energy)であり,電気だけでなく,熱やガスも含んだ多様なエネルギー

システムレベルの標準化を扱っている。加えて,電力ネットワークにおける保

護制御システムなどの技術的な検討が,IECの技術委員会である IEC TC 57に

て進められている。

 わが国においては,変電所保護制御システム(海外における変電所自動化シ

† 肩付きの数字は,章末の引用・参考文献の番号を示す。

コロ

ナ社

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2 第 1章 序     章

ステム=SAS:substation automation system)が,公衆保安の確保と電力の安

定供給を支える中核的な役割を担ってきた。変電所保護制御システムは,変電

所構内に設置される監視制御盤や保護リレー盤から構成され,電力ネットワー

ク設備の状態監視や制御を行うとともに,故障および異常が発生した際,ただ

ちに当該設備を電力ネットワークから切り離すことにより,事故の波及を防止

し,公衆保安の確保と電力の安定供給を目的としたシステムである。

 一方,情報通信技術(ICT:information and communications technology)の

進展とともに,海外では IEC 61850に代表される国際標準に準拠したシステム

の利用が急速に拡大している。IEC 61850は,スマートグリッドの中核をなす

SASの国際標準であり,上述した IEC TC 57がその制定を担っている。他方,

国内においては,各電力会社で独自の仕様を策定し,それぞれ信頼性の高いシ

ステムを構築することで電力の安定供給を実現してきたが,近年では一部の電

力会社にて IEC 61850に準拠した保護制御ユニットである IEDが採用され始め

ている2)。

 IECが発行する国際標準は,基本的な技術規制や許認可の基準になるなど,

重要な存在となっている。国際標準に準拠した製品は汎用性があるために,コ

ストダウン,マルチベンダ化,グローバル化が加速され,海外において国際標

準が浸透していくことは確実であり,わが国としても適用を検討する必要があ

る。スマートグリッドの中核をなす SASや配電自動化システムに IEC 61850を

より普及拡大できれば,社会基盤の一つである電力ネットワークの維持・運用

の高度化に貢献することになり,ひいては豊かな社会の実現にも寄与すること

になる。

 本書では,このような背景の下で,現在の電力ネットワークに影響を与える

さまざまな課題を整理し,それらを解決する次世代電力ネットワークについて

解説し,その構成要素の一つとして機能する変電所保護制御システムにおい

て,IEC 61850の解説と保護制御システムへの適用例をとりあげ,多面的に解

説することを試みる。

コロ

ナ社

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1 . 2 電力ネットワークと変電所保護制御システムに関する環境変化と課題 3

1 . 2 電力ネットワークと変電所保護制御システムに

関する環境変化と課題

 本節では 1.2.1項において,電力ネットワークを取り巻く環境の変化として,

「太陽光発電の大量導入」,電力ネットワークの「スマートグリッドと国際標準

への取り組み」,「電力システム改革」そして「電力ネットワーク設備の高経年

化」の四つに焦点をあてる。また,1.2.2項では現状の電力ネットワークの監視

制御システムの概要,そして 1.2.3項では 1.2.1項の四つの環境変化に対する対

応と課題について述べる。

1.2.1 電力ネットワークを取り巻く環境の変化

〔1〕 太陽光発電の大量導入

 エネルギー白書 2019 3)によれば,再生可能エネルギーの一つである太陽光発

電に用いる太陽電池の国内出荷量は,政府の住宅用太陽光発電設備に対する補

助制度が一時打ち切られた 2005年をピークに伸び悩んでいたが,2009年に,

太陽光発電の余剰電力買取制度が開始されたことや,補助制度が再度導入され

地方自治体による独自の補助制度も合わせると設置費用が低減したことを受け

て,2009年度から大幅な増加基調に転じている。しかし,太陽光発電の買取価

格が引き下げられていることなどにより,2015年度以降の国内出荷量は減少傾

向にある(図 1.1参照)。

 再生可能エネルギー導入を促進するように,2013年には電気設備の技術基準

の解釈第 281条の改定が行われ,従来は配電用変電所における逆潮流に制約を

与えていたが,逆潮流検出装置などの保護装置を設置することを条件にその制

約が解除された。

〔2〕 スマートグリッドと国際標準への取り組み

 電力供給信頼度向上,地球環境問題への対応などの観点から,欧米を中心に

スマートグリッドに対する取り組みがさかんに行われている。これに伴い,エ

ネルギーに加え ICTについても巨大市場の誕生が予見され,大きなビジネス

コロ

ナ社

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4 第 1章 序     章

チャンスとして期待されている。

 スマートグリッドは広範な技術・事業を包含するシステムであり,それらが

相互に「つながる」ためのルールとしての標準作りはきわめて重要である。米

国においてはスマートグリッドに関する標準化ロードマップが米国国立標準技

術研究所(NIST:National Institute of Standards and Technology)により公表 4)

され,IECにおいても今後の対応の議論が鋭意進められている。NISTによるス

マートグリッドネットワークの概念図 5)を図 1.2に示す。

 このような中で,経済産業省が 2009年 8月に「次世代エネルギーシステムに

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1 000〔万kW〕

1月~3月10月~12月7月~9月4月~6月

2018〔年度〕20172016201520142013201220112010200920082007200620052004

図 1.1 太陽電池の国内出荷量の推移 3)

需要家(消費者)

温度制御

家電製品

需要家機器

需要家 EMS

需要家ネットワーク

スマートメータ

エネルギーサービス

インタフェース

電気自動車

分散型電源

分散型電源

配電

蓄電池

蓄電池

分散型電源

配電機器

配電WAN

送電

蓄電池

変電所保護制御装置

データ集配信装置

変電所構内 LAN

変電機器

送変電WAN

インターネット/Eビジネス

その他

アグリゲータ

HEMS/BEMS管理者

料金請求

顧客情報システム小売

事業者

サードパーティープロバイダ

料金請求

顧客情報システム

電力小売事業者

サービスプロバイダ運用

計量システム

メータ管理システム

設備資産管理

デマンレスポンス

配電系管理システム

配電事業者

広域監視システム

送電系管理システム

送電事業者

SCADA SCADA SCADA

イントラネット イントラネット イントラネット

エネルギー管理システム

広域機関

発電発電機

通信ルートゲートウェイ機能とシステム通信ネットワーク領域

発電制御システム

市場インタフェース

インターネット/Eビジネス

市場参加者

電力市場

アグリゲータ

電気卸/小売

市場

図 1.2 NISTによるスマートグリッドの情報ネットワークの概念図 5)

コロ

ナ社

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1 . 2 電力ネットワークと変電所保護制御システムに関する環境変化と課題 5

係る国際標準化に関する研究会」を発足させ,国際標準化にむけた「26の重要

アイテム」を特定するとともに,国際標準化への取り組みを含めた国際標準化

ロードマップが取りまとめられた 6)。同研究会では,今後スマートグリッドの

国際標準化を戦略的に推進するために,以下の四つの施策が示された。

 ① 重要アイテムの着実な国際標準化の推進

 ② 関連施策検討や技術開発と国際標準化活動などの一体的推進

 ③ 実施主体の設立の検討

 ④ 諸外国との連携

 そして,日本工業標準調査会のスマートグリッド国際標準化戦略分科会が

2012年 12月に国際標準化 26の重要アイテムを 20の重要アイテムに見直し,

担当国内審議団体などを明確にした。さらに 2016年 1月には,「スマートグ

リッド戦略専門委員会」(旧「スマートグリッド国際標準化戦略分科会」)での

検討により,20の重要アイテムから,表 1.1に示す「18の注力すべき領域」に

見直しが行われた 7)(図 1.3,表 1.1参照)。なお,本書では表 1.1に対して,IEC

61850関連の有無を付記した。

〔3〕 電力システム改革

 東日本大震災を発端として,経済産業省の電力システム改革専門委員会は,

2013年 2月に電力システム改革に関する報告書を取りまとめた8)。その後,電

力システムに関する改革方針が閣議決定された9)。その目的・骨子ならびにス

ケジュールを図に示す10)(図 1.4参照)。電力システム改革は 3段階に分けて実

施する予定となっており,すでに,第 2段階の電気の小売業への参入全面自由

化が2016年に実施されている。これにより,一般家庭においても電気事業者を

選べることになり,さまざまなプレーヤが参入して,価格面,サービス面での

競争環境が生まれた。

 第 3段階では 2020年 4月に送配電部門の法的分離を行い,発電・送配電・小

売の事業区分に応じた規制体系をライセンス制に移行した。

 電力システム改革の進展により,電気事業をめぐる環境は大幅に変化してい

くことが予想される。例えば,1本目の柱である広域系統運用の拡大では,電力

コロ

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索 引 187

【い】イーサネット 16一挙動制御 84

【う】運転継続機能 11

【え】遠方監視制御装置 9

【お】応動監視 84オブジェクト指向技術 162

【か】開閉極位相制御 38完全性 111

【き】機能制約 67機密保持 111給電・制御所 15給電・制御所システム 11共通データクラス 41協定世界時 98

【く】クライアント 27

【け】計器用変成器 146系統安定化システム 20, 107系統連系規程 165

【こ】国際電気標準会議 1

【さ】サーバ 27サービスアクセスポイント 71サンプリングレート 95

【し】時限順送方式 166時刻同期 19, 97システム交換記述 26システム構成記述 26システム構成記述言語 21システムコンフィグレータ 128システム仕様記述 26遮断器不動作対策保護 173受電切替 167状態遷移図 88冗長化構成 101, 106情報通信技術 2シンクロフェーザ 24, 106

【す】ステーションバス 25ステーションレベル 17スマートグリッド 1

【せ】制御ブロック 19整定値 88, 149設備保守・資産管理 174

選択制御 45

【そ】相互運用性 159送電用変電所 30

【た】耐環境性能 119タイムスタンプ 98タップ切換制御 149, 152単一接続ノード 102

【ち】中央装置 107潮流監視 167

【つ】通信インタフェース 17通信サービス 17

【て】データオブジェクト 41データ属性 41, 60デジタル署名 111電子化 CT・VT 100電流差動リレー 104

【と】特定通信サービスマッピング 19トリガオプション 19, 41

【に】二挙動制御 84二重接続ノード 102, 103

索     引

コロ

ナ社

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188 索 引

認 証 111

【は】配電・営業所 15配電自動化システム 165配電用変電所 30

【ひ】被試験装置 27

【ふ】プロセスバス 25プロセスレベル 17分散電源 22

分離配電系統 167

【へ】米国国立標準技術研究所 4ベイレベル 17変圧器保護 150変電所監視制御システム 9変電所自動化システム 1, 15変電所保護制御システム 1, 15

【ほ】保護制御ユニット 15, 116保護リレーシステム 9

補助接点 153

【み】ミドルウェア 127

【や】役割ごとのアクセス制御 112

【ろ】論理装置 40論理ノード 17論理ノードインスタンス 25

◇ ◇

【A】ACSI 17ACT 55ASG 59asset management 174Association 18, 66, 72authentication 111

【B】BAP 160BRCB 76buffered-report 75

【C】CDC 41, 69CID 26CIM 107COMTRADE 90confidentiality 111Control 18, 83Control Block 66COSEM object model 24CPOW 45CSWI 45

CT 38

【D】DA 69DANH 103DANP 102DataAttribute 71DataObject 66data set 19, 67, 74DCS 131DER 22DO 41, 69DPC 58

【E】ECT 100Ethernet 16EVT 100

【F】FC 67File transfer 18, 66, 90FRT 12

【G】GenServer 71Get 18GetDataValues 73GoCB 93GOOSE 18, 92GOOSE control block 93Grid Code 165

【H】HSR 101

【I】ICD 26ICT 2IEC 1IED 15, 116IEDインスタンス記述 26IEDコンフィグレータ 128IED実装機能記述 26IED設定記述 26IID 26integrity 111IP-TC 138

コロ

ナ社

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索 引 189

【L】LCB 81LLN0 43LN 69Log 18, 81logical node 17, 43, 66Logical device 66

【M】MCAA 72MMS 127MMTR 49MMXU 49MV 56

【N】NIST 4

【O】OPC 137OPCクライアント 133OPCサーバ 135

【P】PDC 107PDH 105PDIF 44PID 131PLC 125, 131PMU 107point-on-wave switching 38PRP 101PTP 98

PTRC 44

【R】RBAC 112RedBox 103Report 18, 74R-GOOSE 20, 107RSTP 101R-SV 20, 107

【S】Sampled Value 19, 95Sampled Value Control

Block(SVCB) 95SAN 102SAV 57SBO 45SCADA 131SCBR 45SCD 26SCL 21SCSM 19SDH 105SED 26Server 66ServiceAccessPoint 71Set 18SetDataValues 73Setting 18, 88SGCB 88SmpRate 95SNTP 67, 97SPS 54SSD 26

synchrophasor 24

【T】TC 9TCP/IP 16TCTR 52Time 67TLS 111TPAA 72Tracking 67TrgOp 41TrgOps 76TVTR 52

【U】UDP/IP 20unbuffered-report 75unintentional islanding 167UTC 98

【V】VPN 132VT 38V字型モデル 29

【W】WAMPAC 20, 107

【X】XCBR 45XML 21XMPP 24

コロ

ナ社

Page 16: IEC 61850 を適用した - コロナ社...IEC 61850 を適用した 電力ネットワーク ―スマートグリッドを支える変電所自動化システム― 天雨 徹 【編著】

IEC 61850を適用した電力ネットワーク―スマートグリッドを支える変電所自動化システム―The Electric Power Network Applying IEC 61850

ⒸToru Amau, Tatsuji Tanaka, Tetsuo Otani 2020

2020 年 6 月 18 日 初版第 1 刷発行 ★

ISBN 978-4-339-00932-3 C3054 Printed in Japan   (柏原)<出版者著作権管理機構 委託出版物>

本書の無断複製は著作権法上での例外を除き禁じられています。複製される場合は,そのつど事前に,出版者著作権管理機構(電話 03-5244-5088,FAX 03-5244-5089,e-mail: [email protected])の許諾を得てください。

本書のコピー,スキャン,デジタル化等の無断複製・転載は著作権法上での例外を除き禁じられています。購入者以外の第三者による本書の電子データ化及び電子書籍化は,いかなる場合も認めていません。落丁・乱丁はお取替えいたします。

編 著 者  天 雨   徹著  者  田 中 立 二

大 谷 哲 夫発 行 者  株式会社  コ ロ ナ 社

代 表 者  牛 来 真 也印 刷 所  美研プリンティング株式会社製 本 所  有限会社  愛千製本所112-0011 東京都文京区千石 4-46-10発 行 所 株式会社 コ ロ ナ 社

CORONA PUBLISHING CO., LTD.Tokyo Japan

振替00140-8-14844・電話(03)3941-3131(代)ホームページ https://www.coronasha.co.jp

検印省略

― 編著者・著者略歴 ―

天雨 徹(あまう とおる)現職:中部電力パワーグリッド株式会社。おもに変電所監視制御および保護リレーシステム関係の業務に従事。電気学会上級会員。博士(工学)。技術士(電気電子部門)。2015年 名古屋工業大学大学院工学研究科博士後期課程修了(情報工学専攻)2015年 名古屋工業大学客員准教授(併任)  現在に至る

田中 立二(たなか たつじ)現職:産業技術総合研究所客員研究員、早稲田大学招聘研究員、電力中央研究所客員研究員。電気学会上級会員。IEC TC57 WG10, 19 エキスパート。1971年 早稲田大学理工学部数学科卒業。同年東芝入社2017年 東芝を退職

大谷 哲夫(おおたに てつお)現職:一般財団法人 電力中央研究所システム技術研究所通信システム領域リーダー。電気学会上級会員。IEC TC 57 WG10, 17エキスパート。博士(工学)。技術士(情報工学部門)。2003 年 慶應義塾大学大学院理工学研究科後期博士課程修了(開放環境科学専攻)2012 年 名古屋工業大学客員准教授(併任)  現在に至る

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