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ITにより低コストに人工林材から内装材を製造する生産・加 工システムの開発(研究紹介) 誌名 誌名 研究紹介 巻/号 巻/号 2014 掲載ページ 掲載ページ p. 141-142 発行年月 発行年月 2014年5月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

ITにより低コストに人工林材から内装材を製造する生産・加 工システムの開発… · 形成、木材自給率の向上ならびに建築物の木造化の推進を図ることを目指しました。

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Page 1: ITにより低コストに人工林材から内装材を製造する生産・加 工システムの開発… · 形成、木材自給率の向上ならびに建築物の木造化の推進を図ることを目指しました。

ITにより低コストに人工林材から内装材を製造する生産・加工システムの開発(研究紹介)

誌名誌名 研究紹介

巻/号巻/号 2014

掲載ページ掲載ページ p. 141-142

発行年月発行年月 2014年5月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: ITにより低コストに人工林材から内装材を製造する生産・加 工システムの開発… · 形成、木材自給率の向上ならびに建築物の木造化の推進を図ることを目指しました。

研究のゴール

開発した技術・成果が普及することによる国民生活への貢献

開発した技術・成果の普及・実用化の状況

農林水産業・食品産業科学技術研究推進事業(実用技術開発ステージ)/研究紹介2014

ITにより低コストに人工林材から内装材を製造する生産・加工システムの開発

〔研究タイプ〕 現場ニーズ対応型 〔研究期間〕 平成23年~25年(3年間)

23062 分 野 適応地域

林業-木材利用

研究の背景・課題 1

ゴール到達のためのブレークスルーとなった技術・成果 3

○暮らしに豊かさをもたらす木質内装材は住宅資材として大きな市場を持ちますが、その原料は輸入材に頼っています。輸入材は世界的な木材需給の変動に大きく影響されるため、国産材の活用を推進して自給率の向上を図るとともに、そのための森林資源の充実を図る必要があります。

○そこで本研究は、板面性状や意匠性等を指標に、節や欠点を活かす技術や、ITを導入した高速で低コストな生産・加工システムを開発して、人工林材から内装材を効率的に供給し、良質な資源の形成、木材自給率の向上ならびに建築物の木造化の推進を図ることを目指しました。

○内装用材として、高品質な人工林材の安定的な生産、流通技術を開発します。 ○ITを活用した次世代の内装材の加工システムを開発し、産業の活性を図ります。 ○木材の特徴を活かした意匠性の高い内装材の加工技術を開発します。

〔研究グループ〕 (地独)北海道立総合研究機構、(独)森林総合研究所 DIC株式会社、北海道 〔総括研究者〕 (地独)北海道立総合研究機構林産試験場 斎藤 直人

①森林施業や森林害虫が内装材用途に及ぼす影響を明らかにしました。 ②現状の原木規格および流通形態から造材・選別の基準とその改善点を提示しました。 ③シラカンバの反りや割れが生じやすい等の特徴を克服し、魅力的な内装材を開発しました。 ④カラマツ、トドマツの節やシラカンバのピスフレックに対する印象を、使用が想定される場所を考慮しながらまとめました。

⑤人工林材の性状を把握し、生産性、波及効果や環境影響評価をまとめるなどして、人工林材を活用 することの有効性を明らかにしました。

⑥節の脱落防止処理剤を開発するとともに、節の認識・制御技術を用いた処理装置を試作しました。

5 ○良質な生活空間の獲得: 人工林材を用いた良質な内装材は、スマートな生活空間を提供します。住宅や公共施設において木材に触れることで、健康で安全・安心な暮らしをもたらします。

○新産業の創造、雇用の増大: 地域に豊富に存在する森林資源を用いた新産業、先端産業が創造されることにより、雇用と所得、新たな需要を創出することになります。

○環境の維持: 森林資源の循環利用は、地球環境、国民の生活環境を良好にするとともに、林業の再生を推進することになります。

全国

○開発した評価技術を基に、意匠性に優れた居住空間を提供するための共同研究を開始することとなりました。

○節脱落防止技術を特許出願し、その実用化と導入に向けた検討を開始しました。 ○人工林材を内装材として活用するため、JASの品等規格に提案を行いました。 ○節に対する好ましさの心理評価やミドルユーザーへの聞き取り調査の結果を冊子にまとめ、配布しました。

○得られた生産技術、加工技術はメーカー等に広く提案し、今後の製品化を検討しています。 ○ジャパンホームショーをはじめとして、一般来場者も多い展示会に出展し、広く普及を図りました。

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タイミングベルトコンベヤ

撮像カメラ

照明装置

タイミングベルトコンベヤ

送材ローラ

送材方向

スプレーガン

照明装置節認識・脱落防止剤塗布機構

研究機関 北海道立総合研究機構 林産試験場、林業試験場 工業試験場 森林総合研究所 DIC(株) 北海道

⑥節を補う加工技術

0 102030405001020304050

0 20 40 60 80 97

基準

面か

らの

距離

(mm

)

ITにより低コストに人工林材から内装材を製造する生産・加工システムの開発

①害虫被害を減らす防除技術

ハエのピスフレック密度は 地上高が低いほど、ガのピスフレック密度は地上高が高いほど増加していました。

木質内装材は、原料を輸入材に頼っています。一方、人工林材はこれまで欠点として扱われてきた節や害虫被害が多いため、品質や歩留まりの低下を招いています。本事業では、国産人工林材を使った床材、壁材の需要拡大を目的として、内装材の品質と意匠性の向上を図るための取組みを行いました。

1

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60%

回答

割合

場所

やや好き

好き

人工林材を内装材として利用することは、環境優位性、地域経済への波及効果が期待されます。さらに、 ①良質な生活空間の獲得 ②新産業の創造、雇用の増大 ③環境の維持 ④美しい国土の次世代継承 等に貢献するものとなります。今後、研究成果の普及を図っていきますので、お問い合わせ下さい。

シラカンバの繊維方向を平行に積層したLVL はそりが見られました。しかし、中芯にクロスを入れたり、積層数を増加することで、変形を低減できました。

お問い合わせ先 北海道立総合研究機構 林産試験場 (担当: 斎藤直人) 0166-75-4233 http://www.fpri.hro.or.jp/

広葉樹材の内装材利用

③変色や穴等を補う技術

②新たな広葉樹資源とする技術

シラカンバは材質的な特徴も多いものの、今後の資源利用に有望な樹種であることがわかりました。

針葉樹材の内装材利用 ④節の印象をとらえる技術

①節を減らす生産技術

○の数字は前頁のブレークスルーとなった技術・成果に該当

シラカンバ人工林

シラカンバの床と壁 (試作品)

立木公売1 物件当たりの見込み幹材積

カンバ類の立木公売1件あたりの幹材積は地域で異なり、適材の多い胸高直径22 ~ 32cmに差が認められました。

そりの発生状況

⑤節を活かす生産技術

認識技術、制御技術をシステム化して節脱落防止装置を開発しました。100枚/時間(60m/分)の速度で処理することができました。

節認識装置

処理装置

硬化装置

仕上げ加工品

ジャパンホームショー出展

心理(主観)評価を用いて人工林材の内装材としての適性を明らかにするとともに、評価技術を提案しました。 通常の枝打ちや無処理と比較して、強度の枝打ちも成長量に

影響はありませんでした。また、強度枝打ちの直後に後生枝が増加しましたが、数年後には無処理と同程度に減少しました。

枝打ち施業の履歴が明らかな林分と枝打ちを行っていない林分のカラマツについて3 次元データによる原木内部の解析を行いました。可視化は、研究や成果普及に有用な手段となりました。

ピスフレック(PF)の発生部位

原木の3D化

使用場所による好ましさの評価の違い

枝打ちの後生枝への影響

節の面積率を調整した壁材

普及展開

成果集

アンケート調査集

表面の平滑化を施して床材の台板や壁の下地材を開発しました。

節の量を変化させて、見た目の好ましさを評価したところ、場所によっては節が多くても「好ましい」と感じる評価者が半数程度いました。

無節

(無処理:枝打ち無し)

1.6%節

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