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1 ごあいさつ 社会保険病院グループにおける 院内医療メディエーションのさらなる展開 全国社会保険協会連合会(以下、全社連)には、52 の傘下病院からの事故・ 紛争報告制度があります。全社連ではその報告を通して、有害事象を経験した 患者さんやご家族の悲しみや苦悩はもちろん、当事者となった医療者が抱える 苦悩を感じていました。 それら双方が未来に向かっていく一助となることを期待し、平成 17 年度の医 療安全管理責任者研修会において、早稲田大学の和田仁孝教授(現 JAHM 専 務理事)へ講演依頼を行ったのが、全社連のメディエーター導入の第一歩でした。 その翌年から、看護師及び薬剤師を対象とした「医療安全管理者養成研修」 での講演及び演習を実施。平成 19 年度には考え方を広げることを目的として、 全職種を対象に「医療コンフリクト・マネジメント研修会」を開催し、今年度平成 21 年からは、全社連 の新規事業として「院内医療メディエーター養成講座」を開催するに至りました。 全社連は、平成 20 年 6 月、米国ハーバード大学の関連病院で使用されている、医療事故発生時の対応 指針に準拠した形で既存マニュアルを整備し「医療有害事象・対応指針~真実説明に基づく安全文化のた めに」を策定しました。 これは「医療は安全を目指さなければならない」「医療は、患者本位でなければならない」の二点を基 本方針に、1 初期行動、2 真実説明、3 謝罪、4 調停(メディエーション)、5 根本原因分析、6 補償、7 事 故報告という、七本の柱から構成されています。 「隠さない、逃げない、ごまかさない」姿勢で、過誤が明らかな場合はその責任を認め「責任承認謝罪」 を行い、過誤が不確定な場合でも“このような結果になってしまい残念です”という「共感表明」を速や かに行うといったことを示しており、院内医療メディエーターには、この指針運用の担い手としても期待 しています。 全社連では、スタッフすべてがメディエーターであるべきという趣旨から、平成 21 年度より「院内医 療メディエーター養成講座」の基礎編のみならず、継続編、応用編を開催することとしています。 また、有害事象を経験した医療者を支援するための「社会保険病院医療者支援ガイドライン(仮称)」 の作成や、病院から要請があった場合に医療安全管理指導を行う人材を養成する「医療安全指導者養成講 座」の開催も予定しております。 全社連の傘下病院である社会保険病院グループは、地域医療を支える中核病院として、地域住民が安心 して診療を受けられるよう、こうした医療安全活動にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。 日本医療メディエーター協会理事 伊藤雅治(全国社会保険協会連合会・理事長) 社団法人 日本医療メディエーター協会ニュースレター JAHM News Letter [ジャム・ニュースレター] 第 2 号(2009 年 5 月 1 日発行) Japan Association of Healthcare Mediators

JAHM News Letterjahm.org/_src/sc985/jahm_NL2.pdf · 3 が大切だと感じる。そうすれば、医療は変わってくる はず」と述べ、医療者を起点としたメディエーション

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ごあいさつ ─ 社会保険病院グループにおける院内医療メディエーションのさらなる展開

全国社会保険協会連合会(以下、全社連)には、52 の傘下病院からの事故・紛争報告制度があります。全社連ではその報告を通して、有害事象を経験した患者さんやご家族の悲しみや苦悩はもちろん、当事者となった医療者が抱える苦悩を感じていました。それら双方が未来に向かっていく一助となることを期待し、平成 17年度の医療安全管理責任者研修会において、早稲田大学の和田仁孝教授(現 JAHM専務理事)へ講演依頼を行ったのが、全社連のメディエーター導入の第一歩でした。その翌年から、看護師及び薬剤師を対象とした「医療安全管理者養成研修」

での講演及び演習を実施。平成 19 年度には考え方を広げることを目的として、全職種を対象に「医療コンフリクト・マネジメント研修会」を開催し、今年度平成 21 年からは、全社連の新規事業として「院内医療メディエーター養成講座」を開催するに至りました。全社連は、平成 20 年 6 月、米国ハーバード大学の関連病院で使用されている、医療事故発生時の対応

指針に準拠した形で既存マニュアルを整備し「医療有害事象・対応指針~真実説明に基づく安全文化のために」を策定しました。これは「医療は安全を目指さなければならない」「医療は、患者本位でなければならない」の二点を基

本方針に、1初期行動、2真実説明、3謝罪、4調停(メディエーション)、5根本原因分析、6補償、7事故報告という、七本の柱から構成されています。「隠さない、逃げない、ごまかさない」姿勢で、過誤が明らかな場合はその責任を認め「責任承認謝罪」を行い、過誤が不確定な場合でも“このような結果になってしまい残念です”という「共感表明」を速やかに行うといったことを示しており、院内医療メディエーターには、この指針運用の担い手としても期待しています。全社連では、スタッフすべてがメディエーターであるべきという趣旨から、平成 21 年度より「院内医

療メディエーター養成講座」の基礎編のみならず、継続編、応用編を開催することとしています。また、有害事象を経験した医療者を支援するための「社会保険病院医療者支援ガイドライン(仮称)」

の作成や、病院から要請があった場合に医療安全管理指導を行う人材を養成する「医療安全指導者養成講座」の開催も予定しております。全社連の傘下病院である社会保険病院グループは、地域医療を支える中核病院として、地域住民が安心

して診療を受けられるよう、こうした医療安全活動にも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

日本医療メディエーター協会理事伊藤雅治(全国社会保険協会連合会・理事長)

社団法人 日本医療メディエーター協会ニュースレター

JAHM News Letter[ジャム・ニュースレター]

第2号(2009年 5月1日発行)

Japan Association of Healthcare Mediators

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2009年3月、日本医療メディエーター協会は社団法人になりました。院内医療メディエーターに対する認知度も高まり、

病院団体、地域医師会等での導入が全国で進むなか、その認定機能の信頼性を高めるため、以前より当協会では法人化について検討し、準備を進めてまいりました。その結果、2009 年 3 月 31 日より、当協会は一般社

団法人となりました。今後は、信頼ある団体として社会的にも広く認知していただけるよう、いっそう努力してまいります。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。

第2回年次シンポジウム開催 ─患者・市民との連携がテーマに2009 年 3 月 22 日(日)、全国社会保険協会連合会

の研修センター(東京都品川区)において、当協会の第 2回年次シンポジウムが開催されました。

本会のテーマは「患者・市民と創るメディエーション」。2部構成をとり、医療メディエーションの幅広い広がりや可能性を考えるため、医療事故を経験された方々(第 1部)、患者と医療をつなぐ様々な活動をされている方々(第 2部)との対話を試みました。第 1 部は座談会「医療事故被害とメディエーション」。コーディネーターは中西淑美(当協会理事、山形大学医学部准教授)、ディスカッサントは志賀隆氏(北福島医療センター血液内科診療部長)。パネリストとして、医療事故を経験された 3名の方々をお迎えし、それぞれの思いを直接聴くことを通して、院内医療メディエーションの可能性について議論しました。第 1部後半のディスカッション終了時、パネリストたちのメディエーション普及を望む声を受けて、志賀氏は「メディエーションとは、テクニックではなく対話をつくる心の持ちよう。しかし、院内メディエーターはクレーム解消、紛争解決をする人だと、身内の医療者がまず誤解している現状がある。医療にメディエーションを根付かせるためには、まずは医療者から、メディエーションとは何かを理解し、その心を持つこと

座談会「医療事故被害とメディエーション」

会場内の様子

座談会「患者・市民によるメディエーションの可能性」

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が大切だと感じる。そうすれば、医療は変わってくるはず」と述べ、医療者を起点としたメディエーションの理解促進の必要性を訴えました。第 2部も座談会で、テーマは「患者・市民によるメ

ディエーションの可能性」。患者・市民と医療をつなぐ活動をされている市民の方々に、その活動内容を報告していただくとともに、メディエーションへの期待と課題について語っていただきました。コーディネーターは伊藤達朗氏(岩手県立千厩病院院長)、ディスカッサントは平井愛山氏(千葉県東金病院院長)。パネリストには、藤本晴枝氏(当協会理事、「地域医療を育てる会」理事長)、阿真京子氏(「知ろう ! 小児医療 守ろう ! 子ども達」の会代表)、福本順一氏(「ICD友の会」副会長)を迎えました。それぞれの活動の内容は違っても、医療機関内だけ

ではなく、市民に向けても医療メディエーションを普及させてほしいという思いは共通していました。またディスカッションでは、会場から「今後のいっそうの展開を期待したい」との声もあがり、今後の課題も得られる内容でした。本シンポジウムは、テーマが患者・市民との連携で

あったにもかかわらず、医師や看護師などの医療従事者の参加も少なくなく、終了後のアンケートでは、「院内医療メディエーターの役割への示唆を多く得ることができてよかった」という回答が多く見られました。なお、当協会では、今後も、患者・市民との連携を

さまざまなかたちで取り組んでいきます。その一例として、患者自身がメディエーション技法を用いて、日常診療やインフォームド・コンセントの場面で、患者─医療者の対話を促進するモデルの開発・普及を、患者会と当協会との協働プロジェクトとして実施していく予定です。

会員向けセミナー開催当協会では、会員限定のセミナーを提供しています。

● 2008 年 9月 27日(土)・28日(日)2 日間にわたって行われ、初日は以下の講演 2題を行いました。①高月清司氏(IMK 高月 株式会社)「医賠責制度の元凶と問題点」、②和田仁孝(当協会専務理事、早稲田大学法学学術院教授)「メディエーションの歴史と理論背景」。2日目は、医療事故体験者の声を聴かせていただいた後、中西淑美(当協会理事、山形大学医学部准教授)による事例展開演習を行いました。医療事故体験者の方には、事例展開演習にもご参加いただき、コメントをいただきました。

● 2009 年 1月 25日医療事故体験者の方にご参加いただき、その思いを聞かせていただきました。その後のディスカッションには、本協会理事の棚瀬孝雄先生(中央大学法科大学院教授)にもご参加いただきました。

●地方支部設立シンポジウム 沖縄・甲信越・九州・北海道・近畿に続き、下記の地方支部設立シンポジウムが予定されています。

・北陸支部設立シンポジウム 2009 年 6 月 27 日・四国支部設立シンポジウム 2009 年 10 月 12 日

〈日本医療メディエーター協会・地方支部一覧〉北海道支部 代表  大野猛三 

北海道大野病院理事長東北支部  代表  中西淑美

山形大学医学部准教授北関東支部 代表 長谷川剛 自治医科大学教授南関東支部 代表 藤井清孝 北里大学病院院長甲信越支部 代表 高木洋行 波田総合病院副院長

東海支部  代表  安藤哲朗 安城更生病院医療安全部長

北陸支部  代表  辻 哲朗   福井総合クリニック院長

近畿支部  代表 小牟田清 大阪警察病院副院長中国支部  代表  東 良平  

国立病院機構岡山医療センター統括診療部長

四国支部  代表 今川俊一郎 愛媛県医師会理事九州支部  代表  宮下光世  

国立病院機構長崎川棚医療センター院長

沖縄支部  代表 西銘圭蔵 沖縄協同病院院長

おしらせ

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日常の診察にこそ活かせるメディエーション

「知ろう ! 小児医療 守ろう ! 子ども達」の会代表 阿真京子

ひょんなことから生まれた和田仁孝先生、中西淑美先生との貴重なご縁をきっかけに、当会でのメディエーション講座が実現しました。ご多忙のなか、「是非 !」という私たちの願いを叶えてくださった両先生には、本当に感謝しています。当日は、小さな子どもを持つ会員のお母さんたちが 12 名参加しました。会員とはいえ、一般のお母さ

んのため、テーマは身近なもののほうが良いと考え、ワークショップのテーマは「夫と妻」となりました。メディエーションについて学ぶのは、もちろんみんな初めて。参加したお母さんたちにとっては、とて

も新鮮な内容だったようです。講座後、「双方の意見を中立的立場で聞くって難しい !」「メディエーションは、コミュニケーションにおいてとても大切なこと。ごく当たり前にできるようになりたいと思った」「今後、医療の世界でメディエーターが増加し、本当に納得のいく医療が受けられるように、その必要性を市民の私たちが広めていけたら……」「両者から自発的に解決策を出すことを目指していることがよくわかった。しかし、非常に難しいことだと実感した」「一般的にメディエーターが広まれば、日本が変わると思ったほど素敵な経験だった」といった感想が寄せられました。私自身、小児医療の現場にこそ、メディエーションの考え方が活かせるのではないかと常々思っていま

したが、実際に講座を受け、そのことを再認識しました。子どもの病気について知らず、知らないからこそ不安が強い「お母さん」、病気についてはプロだけれど、

現場の多忙さなどの理由から、病気などについて一から親に教えたり、説明したりすることが非常に難しい「医師」、この両者には大きな溝があると感じています。そんな現状のなかで、“子どもの病気を治す”という同じ目的の両者が寄り添うことができればどんなによいかと考え、私なりに行動を起こして生まれたのが同会です。小さい子を育てている親たちが子どもの病気について小児科医から直接学ぶ・知る機会となる講座を企画・実施したり、全国でそのような講座が広まるよう活動したりしています。会の発足当時、お母さん側からは、医師に対する不満の声が多く寄せられていました。しかし活動が進

むにつれ、「コミュニケーションをとろうと自らの態度を積極的に変えたら、先生の接し方も変わった」という声が聞かれるようになり、講師を引き受けてくださった医師からは「お母さんたちと医師は、子どもの病気に向き合うパートナーである」という言葉を聞くことができました。互いの意見や考えの違いを認めるには、まず「互いの真の思いを知ること」だとつくづく実感したのです。子どものことで受診した際、ちょっとした疑問や不安、そして不満を素直に言えないことは、やがて医

師と親の間での大きな溝の源になります。決して、お母さんたちも不満を言いたいわけではありませんし、医療者もそうだと思います。状況をよく考えたり、見直してみると、「(相手が)なぜそのように不満に思ったり、不安を感じたのかよくわからない」、それが実情なのではないでしょうか。そんなとき、互いに直接伝えられなくても、気持ちを受けとめてくれるメディエーターに気持ちを打ち明けられたら、どんなにいいでしょうか。互いの状況や思いは違うという当たり前の事実に気づかせることができる、それがメディエーターの役割だととらえています。そして、自然に相手の気持ちに気づけたとき、心からの「ありがとう」や「申し訳ない」といった言葉が出てくると思うのです。講座で学んだ「対話を紡いでいく人が真のメディエーターであり、異なることを認めることができるこ

と、自分の先入観を脇に置けることが、真のメディエーター。メディエーターは解決しない。解決するのは、両方の当事者」という言葉は重く、講座を一度受けた限りで、この考え方を身につけるには道は遠いと思いますが、きっとこの先に光があると感じています。医療者だけではなく、市民にこそメディエーションは必要です。今後、この考え方が広まり、当たり前の世の中になることを願っています。

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平成 20 年 10 月 5 日、長崎県大村市の国立病院機構 長崎医療センター地域医療研修センターで、日本医療メディエーター協会・九州支部の設立記念講演会を開催しました。平成 20 年 3 月 7 日の日本医療メディエーター協会

設立時、普及を目的に全国 11 の支部が設けられましたが、九州支部は 8月の沖縄支部、甲信越支部に続き、全国で 3番目の設立となりました。講演会の開催地は、支部長の地元、長崎としました。

アクセスの面で参加者数が心配されましたが、あいにくの雨にもかかわらず、福岡から鹿児島まで九州各県から約 150 名の参加があり、また地元新聞、TVの取材もあるなど、関心の高さが感じられました。さらに今回、かかりつけ医への普及を考え、四国支部の医師会での取り組みを紹介することにして案内したところ、長崎県医師会長はじめ、多数の医師会の方々にもご参加いただきました。講演会は支部長による設立までの経過報告の後、協

会専務理事の早稲田大学・和田仁孝教授に「医療メディエーター協会設立の意義」、大阪大学の中西淑美講師(現 山形大学医学部准教授)に「医療メディエーターの養成」、九州支部より大分大学病院医療安全管理部・岐部千鶴子副部長に「医療メディエーターの実践」、四国支部代表で愛媛県医師会常任理事の今川俊一郎先生に「医師会での取り組み」について話していただきました。当日のアンケートの結果、九州でのメディエーター

研修を望む声が多かったので、2009 年 4 月には、福岡で研修会を開催しました。また 6月には日本医療マネジメント学会でコンフリクト・マネジメントのシンポジウムを開催する予定(6月 12・13 日)ですので、ぜひ長崎へお越しください。講演会を通じ、国民の医療不信の高まりの中、医療現場での「医療メディエーション」へのニーズが非常に高いことを感じました。これを受けて九州支部の今後の活動として、定期的なメディエーター研修会の開催とともに、講演会や事例の検討会などを計画し、医療メディエーションの普及に努めていきたいと考えています。この活動を通じて、患者満足度の高い医療の提供と、医療の質改善、医療への信頼の回復に貢献できればと願っております。

救急の医療現場で求められる高度な医療技術には、リスクを伴う手技・手術が多くありますが、消極的になっては医療の進歩は後退することになります。そのような医療現場で避けることが出来ない医療事故が発生した場合、直ちに司法に判断を求めるのではなく、患者と医療者の間に入り、当事者同士が向き合って信頼関係が構築できることが求められています。そのために医療メディエーターを育成することは急務であると考えます。

平成 20 年 3 月 7 日に自治医科大学の高久史麿先生、早稲田大学教授の和田仁孝先生を中心に日本医療メディエーター協会が設立されるとともに、全国に支部が設けられ、活発な活動が開始されつつあります。そうした中で、近畿支部においても大阪府および大阪府医師会後援のもと、平成 21 年 2 月 15 日に大阪警察病院講堂にて、近畿支部設立記念講演会を開催しました。当日は近畿各地から医師・看護師・薬剤師・

近畿支部設立記念講演会 開催報告●小牟田 清(日本医療メディエーター協会・近畿支部代表、大阪警察病院・副院長)

地 方 部 会 だ よ り

設立記念講演会を開催して●九州支部 宮下光世 (日本医療メディエーター協会・九州支部代表、独立行政法人国立病院機構 長崎川棚医療センター・院長)

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平成 21 年 2 月 22 日午後 1時、前々日から続く暴風雪の中、札幌市中心街の大通公園を臨む北海道医師会館 8階会議室にて、北海道支部の設立総会が行われました。支部設立に奔走された八軒循環器病院・事務長であ

る長沢勝美様の司会の下、順調に議事は進行し、支部長に北海道大野病院・理事長の大野猛三先生を、事務局長には同院・医療安全管理室の横山清栄様を、さらに理事に他 4名を選出しました。また同年 7 月 19 日(日)・20 日(月・祝)に、早

稲田大学・和田仁孝先生と山形大学・中西淑美先生を講師に迎え、支部主催の基礎編講習会を開催することと決しました。

引き続き午後 2時より、設立記念シンポジウムとなりました。支部理事にご就任いただいた医療法人秀友会・理事長の藤原秀俊先生の司会で、最初に、北海道医師会長・長瀬清先生よりご挨拶を頂戴しました。その後、「医療メディエーションによる紛争解決の課題」と題して和田仁孝先生より、「医療過誤による息子の裁判闘争と、今医療者に思うこと」と題して佐々木孝子先生より、「医療メディエーションの小さな一歩」として函館中央病院・外科科長である平口悦郎先生より事例研究を、最後に「医療メディエーター養成のデザインとその教育が目指すもの」と題して中西淑美先生より、4人の講師の諸先生に御講演を頂きました。あいにくの悪天候にもかかわらず、最終的に参加者は 96 名に達し、盛会でありました。もう一人の講師に予定しておりました自治医科大学病院・医療安全部教授の長谷川剛先生には、暴風雪の影響で飛行機の到着が遅れに遅れたため、会場にご到着頂けたのはシンポジウム終了後と、甚だ申し訳ないこととなってしまいました。当日ご不便をお掛けしたご出席の皆様、また長谷川先生には、改めてお詫び申し上げます。なお、会場風景の写真は、北海道医療新聞社の特別のご好意により佐藤正樹記者からご提供いただきました。記して深謝いたします。

MSW・医療事務など多職種の方々 117 名の参加がありました。また、講師の先生方はご多忙にも関わらず講演を快くお引き受け頂き、遠方より駆けつけて下さいました。講演会の内容は、和田仁孝先生(早稲田大学法学学

術院教授)「医療メディエーションの理論と日本医療メディエーター協会設立の意義」、中西淑美先生(山形大学医学部准教授)「医療メディエーションの実際と医療メディエーターの育成」、今川俊一郎先生(愛媛県医師会理事)「医療メディエーターの実践─医師会での取り組み」、安藤哲朗先生(安城更正病院医療安全部長)「医師の立場からの医療メディエーション」の 4名の先生方による講演と、稲本俊先生(北野病院乳腺外科部長)を座長とした質疑応答が行なわれ、活発な議論がなされ、盛会のうちに終了致しました。また、近畿支部設立にあたり、北野病院の山岡義生

院長、市立豊中病院の島野高志院長に理事をお引き受け頂きました。

講演会の準備運営に関しては、今回運営委員になりました、稲本俊先生(北野病院乳腺外科部長)、佐久間泰司先生(大阪歯科大学病院准教授)、水摩明美様(市立豊中病院医療安全管理室長)、柴田康宏様(大阪府三島救急医療センター)、遊道桂子様(尼崎医療生協病院医療安全管理室長)、森裕子様(近畿健康管理センター)、志摩久美子(大阪警察病院医療安全管理副センター長)および今井秀一先生(野州病院)や共催関連方々と力を合わせて行いました。そのほか遠方よりのご参加、多数の方々の応援を頂きましたことを、この場をお借りし深謝いたします。終了後、参加者からは早期の支部研修会開催要望が強くあり、参加出来なかった施設からは資料請求を希望されることが多く、日本医療メディエーター協会および医療メディエーター育成に関しての関心の高さを伺うことが出来ました。今後、近畿支部役員一同、力を合わせて医療メディエーター協会の発展のため尽力する所存です。皆さまよろしくお願い致します。

北海道支部設立総会および設立記念シンポジウム●中村利仁(日本医療メディエーター協会北海道支部理事、北海道大学大学院医学研究科)

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●問い合せ先第 1 回日本医療メディエーター協会学術集会沖縄大会事務局沖縄県中頭郡北中城村安谷屋 1346 番ー 1医療法人アガペ会地域医療支援センター内真名井敦(マナイアツシ)[email protected]電話(098)935─3093/FAX(098)935─5855

日時:2009年 6月7日(日)午前9時開場、9時30分開始会場:浦添市産業振興センター・結の街http://yuinomachi.jp参加申し込み方法などの詳細は、下記の問い合わせ先か、医療法人アガペ会ウェブサイト内「トピックス」(http://www.agape-wakamatsu.or.jp/topics/detail.jsp?id=116)をご参照ください。

第 1回 日本医療メディエーター協会学術集会(沖縄大会)のお知らせ

医療の目、患者の目、そして第三の目、医療メディエーター

医療の前進のために相互理解の深化を

大会長/西銘圭蔵 (日本医療メディエーター協会沖縄支部代表、沖縄協同病院・院長)

2008 年 8 月 17 日に日本医療メディエーター協会沖縄県支部が発足し、6か月が経

過いたしました。すでに沖縄県内では、院内医療メディエーターが配置されて活動

を始めています。また、日本医療機能評価機構や日本医療メディエーター協会など

によるメディエーション研修には総計約 130 人が受講し、その技術を実践に活かし

て活躍しております。

その沖縄で、このたび、第一回学術集会を開催する運びとなりました。一般参加

も可能な基調講演・教育講演・シンポジウムのほか、協会会員のみが参加可能な医

療メディエーターの交流会も企画しております。これは沖縄県内の医療メディエー

ターの交流・研究の場として発案したもので、今回は全国からの参加者も募り開催

いたします。

皆様の積極的なご参加をお待ち申し上げます。

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社団法人 日本医療メディエーター協会役員名簿理事長 高久 史麿(自治医科大学学長)代表理事 和田 仁孝(早稲田大学法学学術院教授)理 事 安藤 哲朗(安城更生病院神経内科部長/医療安全部長)理 事 伊藤 雅治(全国社会保険協会連合会理事長)理 事 井部 俊子(聖路加看護大学学長)理 事 今川俊一郎(今川整形外科院長・愛媛県医師会理事)理 事 大野 猛三(北海道大野病院院長)理 事 河北 博文(河北総合病院理事長)理 事 齋藤 寿一(社会保険中央病院院長)理 事 佐々木孝子(佐々木歯科工業(株)監査役)理 事 高木 洋行(波田総合病院副院長)理 事 棚瀬 孝雄(中央大学法科大学院教授)理 事 土屋 了介(国立がんセンター中央病院院長)理 事 中西 成元(国家公務員共済連合会シミュレーション・ラボセンター所長)理 事 中西 淑美(山形大学医学部准教授)理 事 中村 芳彦(法政大学教授・弁護士)理 事 西銘 圭蔵(沖縄協同病院院長)理 事 橋本 廸生(横浜市立大学教授)理 事 長谷川 剛(自治医科大学教授)理 事 林 里都子(福井総合病院医療安全部長)理 事 藤井 清孝(北里大学病院院長)理 事 藤本 晴枝(地域医療を育てる会理事長)理 事 真名井 敦(医療法人アガペ会事務課長)理 事 宮下 光世(国立病院機構長崎川棚医療センター)理 事 山本 修三(日本病院会会長)監 事 渡邊 両治(全国社会保険協会連合会・事業部・専門指導職(医療安全対策担当))

認定会員数(2009 年 1月 19日現在)※研修受講者は延べ 2000 名を超えました。医療メディエーターB(Basic) 336 名医療メディエーターA(Advanced) 40名シニア・メディエーターS(senior) 16名

認定対象研修実施団体・機関【病院団体・医師会等(2日間基礎編プログラム以上)】全国社会保険協会連合会/国家公務員共済連合会シミュレーション・ラボセンター/国立病院機構(九州ブロック)/日本私立医科大学協会(関東ブロック)/愛媛県医師会/せとうちリスクマネジメントセミナー/静岡県病院協会/全日本民医連

【個別病院(2日間基礎編プログラム以上)/*は 2009 年より】北海道大学病院/北海道大野病院/坂総合病院/東京厚生年金病院/武蔵野赤十字病院/北里大学病院/湘南鎌倉病院*/東所沢病院*/宇都宮社会保険病院/相澤病院/諏訪中央病院/波田総合病院/富山市民病院/福井総合病院/大阪警察病院/岡山協立病院*/島根中央病院*/沖縄協同病院/ハートライフ病院

●編集後記今号のニュースレターでは、メディエーションの新たな展開と各地で立ち上がっている支部の報告をお伝えいたしました。3月に当協会は社団法人になり、今後はより多くの皆さまに一層信頼、期待されるよう努力してまいります。メディエーションマインドが、医療事故の紛争対応にとどまることなく、患者・市民との連携へと広がっていることはとても嬉しいことです。当協会の活動に理解を示してくださり、ご協力くださった患者さんとご家族、地域の皆さま、医療者の皆さまに心から感謝するとともに、この対話が本当のパートナーシップにつながっていくことを願います。皆さまからの、ご意見、ご投稿などをお待ちしています。(柴田)

編集責任者 柴田康宏(大阪府三島救急医療センター)編集員 藤本浩喜(シーニュ) 戸田由美子(東名厚木病院) 遠田光子(宇都宮社会保険病院)

発行元/問い合わせ先: 社団法人 日本医療メディエーター協会〒 169─8050 東京都新宿区西早稲田 1- 6- 1 早稲田大学 8号館 901メール : [email protected]ウェブサイト : http://jahm.org