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日本配電制御システム工業会技術資料 JSIA-T1015 電気設備の事故とその対策事例 Accident and Countemeasures case of equipment 2000 年(平成 12 年) 3 31 日 制定 2015 年(平成 27 年) 12 25 日 改正 一般社団法人日本配電制御システム工業会

JSIA- 術資料(T) JSIA-T 1015:2015 電気設備の事故とその対策事例 Accident and Countemeasures case of equipment 序文 電気使用の多様化に伴い,電気の安定供給は社会活動の中で必要不可欠なものとなっており,その供給

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日本配電制御システム工業会技術資料

JSIA-T1015

電気設備の事故とその対策事例

Accident and Countemeasures case of equipment

2000 年(平成 12 年) 3 月 31 日 制定 2015 年(平成 27 年) 12 月 25 日 改正

一般社団法人日本配電制御システム工業会

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目 次

ページ

序文 ··································································································································· 1

1 電気設備の信頼性 ············································································································· 1

2 機器の耐用年数 ················································································································ 1

3 設備更新時期の推定 ·········································································································· 2

3.1 配・分電盤類の点検ポイントと更新時期 ············································································· 2

4 長寿命化 ························································································································· 3

5 電気設備の事故原因と対策 ································································································· 5

5.1 設備不備 ······················································································································ 5

5.2 保守不備 ······················································································································ 7

5.3 自然現象 ······················································································································ 7

5.4 過失 ··························································································································· 12

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まえがき

この技術資料は,一般社団法人日本配電制御システム工業会 技術委員会が制定した日本配電制御システ

ム工業会技術資料である。これによって JSIA-T1015:2000 は改正され,この資料に置き換えられた。

この資料は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この資料の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。一般社団法人日本配電制御システム工業会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及

び実用新案権に関わる確認について,責任はもたない。

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技術資料(T) JSIA-T 1015:2015

電気設備の事故とその対策事例

Accident and Countemeasures case of equipment

序文

電気使用の多様化に伴い,電気の安定供給は社会活動の中で必要不可欠なものとなっており,その供給

源となる高圧受電設備・動力設備・電灯設備には高い信頼性が要求されている。中でも,高圧受電設備と

してキュービクル式受電設備はその利便性から広く使用され,全受電設備の大部分を占めるに至っている。

そのため事故が発生し,電力会社の高圧配電線を停電させる波及事故を起こした場合には他の需要家に

多大な迷惑を及ぼすなど,社会的,経済的に与える影響は大きい。

電気設備事故の原因として考えられる事項は設備の不備(製作不完全,施工不完全),保守の不備(保守

不完全,自然劣化),自然現象(風雨,氷雪,雷,地震,塵埃),過失(作業者,公衆),他物接触などがあ

る。

本技術資料は過去の具体的な事故事例をあげ,その事故が,どのような状況で,何が原因で起こったか,

そして事故防止対策はどのようにすべきかを示し,電気設備の安全性向上及び事故防止に役立てることを

目的としまとめたものである。電気設備の品質維持向上のため,役立てていただければ幸いである。

1 電気設備の信頼性

電気設備の信頼性の把握と耐用年数は,何れも中々結論の得れない問題である。だからといって,20~

30 年も使った電気設備の機器類をそのまま使用して,寿命を待つということは信頼性を保つことが困難と

なる。

寿命とか耐用年数は,設計・製作の段階で,環境を含めた設定条件にあったものを設定するが,全ての

使用条件に合うのは容易ではなく,使用段階では使う者の立場から,改めて耐用年数を把握する必要があ

る。

2 機器の耐用年数

一般的には機器等の寿命として捉えている。現実的な考え方としては「設備や機器の電気的性能や機械

的性能が低下し,使用上の信頼性や安全性が維持できなくなるまでの期間」を指している。この期間内に一

部の部品を補修または交換することにより,相当期間に亘り,実用上の支障ない性能を発揮し,安全上運

転が継続できるものと,その劣化または故障原因を更新することのできないものがある。

前者を修理可能な機器等とすれば,後者は修理不能な機器等とすることができる。修理可能な機器等で

も更新した方が経済的な場合があり,その決定は,使用時間の経過期間,設置環境,動作回数,磨耗,疲

労,狂いなどによる機構全体のガタが生ずる等により比較し,検討しなければならないものがある。

このように耐用年数は,各種の要因を検討することにより決定する必要がある。

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a) 法定耐用年数

資産の原価償却に用いるもので,(大蔵省令/財務省令)「原価償却資産の耐用年数に関する省令」

により平均的な資産耐用を定めたもので実際的ではない。より早い劣化を示すものと耐用の永くなる

もの等様々である。

電気機器の原価償却年数は 15 年,蓄電池等の寿命の短いものは 6 年となっている。

したがって,個々の部品等については,劣化状態によって取り替える必要がある。

3 設備更新時期の推定

機器等の劣化・磨耗等による寿命は,設備の置かれた周囲環境条件,保守の良否,使用の過酷さ等によ

り,大幅に異なる。しかしながら,次のような各種要因によって更新を考慮する必要がある。

更新時期の推定は客観的要件に左右されるので,総合的に評価し判断することが必要である。

(JSIA-T2001 配電盤の更新推奨時期判定の手引を参照)

1) 故障頻度が高くなり,停電による損失が考えられるようになり,経済的に維持することが困難とな

った時点。

2) 性能が低下し,使用していて安全性が保持できなくなったと推定される時点。

3) 性能劣化が認められ,かつ,維持管理費が増大して,これ以上使用すると無駄が多くなると推定さ

れる時点。

4) 交換部品の入手が困難となった時点(通常 10 年以上経過したものでは,問い合わせしてみる必要が

ある。)

5) 使用年数が重なり修理が技術的に不可能になった時点(20 年以上のものは大多数が対象になる。)

3.1 配・分電盤類の点検ポイントと更新時期

受電設備としての配・分電盤類は,当初いかに性能が優れたものでも,使用方法あるいは保守・保全及

び設備改修(リニューアル)が適切に実施されない限り,その性能を維持することは困難である。この設

備改修(リニューアル)工事は設備に対する考え方や周囲環境によって決まり,時期や規模内容はリニュ

ーアル対象によりまちまちである。

3.1.1 設置後のメンテナンスと点検ポイント

経年的な劣化により受電設備が事故になると,その影響は非常に大きく,復旧に長時間かかる恐れがあ

り,多大な損失が発生する。これらの防止策として,電気設備の経過年数を把握して,老朽機器の更新を

行う事は有効である。電気設備機能の維持を阻害する外的要因は,機械的・電気的な要因,周囲の環境条

件・人的要件などが考えられるが,盤類の機能維持については,次の事項に着目して実施するとよい。

a) 経年劣化

盤類の経年劣化には,外面的なものと,内面的なものがある。外面的な代表例は,環境条件による

塗装の劣化がある。放置すると発錆し, 悪の場合には箱体に穴が開き,そこから水滴または小動物

の侵入により短絡事故が発生する。

内面的なものには配線接続部の締付けの緩みなどによる発熱,絶縁物に粉塵,砂などが付着し,結

露また水滴などの付着による絶縁劣化,使用機器の経年的な劣化などがある。

電気導体回路に接触不良,接続不良などが発生すると,局部過熱が生じる。これらは赤外線サーモ

グラフィを用いて遮断器や断路器などの局所過熱を検出し診断する事ができる。

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b) 老朽化域にさしかかった電気設備の保守点検

リニューアルを行うきっかけは,多くの場合「故障」であるが,「故障」してからの対応ではその運

用に支障をきたす場合がある。設置後 10~20 年も経過すると経年劣化の兆候が予想される。

今後どうしていくか(検査・診断)は,劣化故障パターンに示される,図 1 劣化故障パターンの摩

耗故障期にさしかかった保守をどうするかを検討する。

一般に,電気機器の寿命は偶発故障の長さで左右され,この時期を延ばすためには,適切な保守が

必要となる。また,修理系の機器に対する修理やオーバーホールは,一定期間または一定動作回数毎

に分解点検を行い,劣化や摩耗の生じている部品を交換して,機能や性能を維持することを目的とし

ており,これらを行う事で寿命〔1〕を寿命〔2〕に延ばす事ができる。

ここで問題となる事は「許容故障率をいくらにとるか」である。図1の B 点をどこに取るかで,当

該機器が故障を起こした場合の二次災害の影響や,故障に伴う停電による影響は,設備毎に決めるべ

きものである。摩耗故障期に入る以前の余裕を持った時点 A で機器を更新すれば,故障率を 小限に

抑える事ができるが,費用対効果及び許容故障率の考え方を含めて総合的に判断する必要がある。

4 長寿命化

機器,部品は各々寿命が異なり,統一することは難しい。この事から長寿命化処置の実施に当たっては,

表 1 に示すような多方面から検討を加え総合的に判断する。

表 1-長寿命化処置の検討項目

機能的要素

信頼性 システムとしての信頼性は, 新の要求に対して基準を満たしているか 安全性 システムとしての安全性は, 新の要求に対して基準を満たしているか

保守性 改善の必要はないか 機能性 機能の向上は必要ないか

環境性 環境条件の変化に対応できているか

事象的要素

波及性 他機器への波及影響はないか 経済性 維持管理費が過大でないか

互換性 代替・補修が可能か

図 1-劣化故障パターン

故障率

寿命〔1〕

寿命〔2〕

A B

初期 故障期

偶 発 故 障 摩 耗 故 障

使用年数

修理 更新

許容故障率

A:更新推奨時期

B:許容故障率

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この事から,配・分電盤類では,盤を構成する部位で万が一故障が発生した時の影響度が大きいものか

ら長寿命化策を検討する。一般的な盤で影響度の高い部位は次の 4 点があげられる。これら重要な部位の

長寿命化が均等にできれば,盤としての長寿命化を図る事ができる。

1) 主回路導体の絶縁

2) 遮断器の性能

3) 計器用変成器の性能

4) 保護・計測機器の動作

5) 更新計画

電気設備は各種の要件によって信頼性・耐用年数ともに異なった態様を示すが,設置環境,製造者,事

後保全か予防保全等の要件を勘案して予め更新計画を立てて置く方法を選択すべきであると考える。

保安管理の使命として大事な「予防保全」を効率良く行い「事故」を未然に防止することが重要である。

保守点検・診断を実施するにあたって,“定期点検周期” “更新推奨時期”の代表例を次に示す。

表 2-定期点検周期と更新推奨時期

No 機 器 名 称 定 期 点 検 周 期 更新推奨時期

注 1 更 新 説 明

普 通 精 密 備 考

1 高圧配電盤 0.5~1 年 2~5 年 15 年 注 5

2 高圧断路器(DS) 3 年 6 年※ ※注 2 20 年 操作回数(手動)01000 回

操作回数(電動)10000 回 注 6

3 高圧気中開閉器(LBS) 1 年 2 年 15 年 注 6

4 高圧限流ヒューズ(PF) 0.5~1 年 ― 10 年 屋内用 15 年 屋外用 10 年 注 6

5 避雷器(LA) 0.5~1 年 ― 15 年 注 6

6 真空遮断器(VCB) 3 年 6 年※ ※又は規定開閉回数 20 年 又は規定開閉回数

7 高圧進相コンデンサ(SC) 1 年 ― 15 年

8 直列リアクトル(SRX) 1 年 ― 15 年

9 油入変圧器(T) 1 年 6 年※ ※注 2 20 年 注 6

10 乾式モールド変圧器(T) 1 年 6 年※ ※注 2 20 年 注 6

11 指示計器 1 年 6 年※ ※注 2 (15 年)

12 保護継電器 1 年 ― 15 年

13 モールド形計器用変成器(VT,CT) 1 年 6 年※ ※注 2 15 年 注 6

14 高圧電磁接触器 0.5~2 年 1 回/点検

3~5 回※

※又は規定開閉回数 15 年

又は規定開閉回数 注 6

15 低圧配電盤 0.5~1 年 2~5 年 20 年

16 気中遮断器(ACB) (1 年) ― 又は規定開閉回数 (15 年) 又は規定開閉回数

17 配線用遮断器(MCCB) 0.5~2 年 ― 設置環境による 15 年 又は規定開閉回数 注 7

18 漏電遮断器(ELCB) 1 ヶ月~3 年 ― 設置環境による 注 9 15 年 又は規定開閉回数 注 7

19 低圧電磁接触器・開閉器(MC) 0.5~2 年 ― 10 年 注 7

20 汎用インバータ・サーボドライブユニット

(INV,SV) 0.5~1 年 ― 注 3

使用環境により

大きく変わる

一般にアルミ電解コンデンサは“アレニ

ウスの法則”が適用される 注 3

21 汎用プログラマブルコントローラ(PLC) 0.5~1 年 ― 注 4 使用環境により

大きく変わる

一般にアルミ電解コンデンサは“アレニ

ウスの法則”が適用される 注 4

注 01 この項に掲げる,更新推奨時期は,機能や性能に対するメーカの保証値でなく,通常の保守・点検を行って使用した場合に機器構成材の老朽化など

により,新品と交換した方が経済性を含め一般的に有利と考えられる時期です。なお,近年では環境保護(ISO‐14000)などの社会的要求により,

前倒しされるケースが増えています。

注 02 電気学会技術報告(第 537 号'95 年 4 月)

注 03 汎用インバータ定期点検のおすすめ(H13 年 10 月:JEMA)

注 04 汎用プログラマブルコントローラ定期点検のおすすめ(H8 年 7 月:JEMA)

注 05 長期使用受電設備の信頼性の考察(H11 年 1 月:JEMA)

注 06 汎用高圧機器の更新推奨時期に関する調査(H 元年 9 月:JEMA)

注 07 低圧機器の更新推奨時期に関する調査(H14 年 3 月:JEMA)

注 8 非常電源として設置されている場合は,消防法が適用されます。

注 9 注記以外の年数は,日本電機工業会技術資料(JEM-TR )に基づいています。

注 10 定期点検周期,更新推奨時期の( )内は当委員会推奨値です。

注 11 機器の略称は,JEM 1115('97)を参考にしています。

表 2 は,高低圧電気機器保守点検のおすすめ:(一社)日本電機工業会を引用したものである。

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保守点検作業は一般に次のように分類される。

表 3-保守点検作業の分類

分 類 内 容 機器の状態 周 期 巡 視 点 検 日常巡視によって外部から点検する。 運 転 1 回/日~1 回/月

初 回 点 検 初期故障の早期発見及び環境,初期条件の相違による点検周期,

内容の目安を定めるために行う。点検内容は普通点検に準じて行

う。 停 止 据付後 1 年以内

普通点検 機器の性能確認,維持を目的として行うもので,細部の分解は行

わず,主として外部から点検する。 停 止 1 回/0.5 年~3 年

精密点検 (細 密)

機器の機能の確認,回復を目的として行うもので,必要に応じて

部分的な分解点検手入れ,部分交換を行う。 停 止 1 回/2 年~6 年

臨 時 点 検 巡視点検・定期点検によって異常が発見された場合又は事故が発

生した場合で,詳細な点検が必要になった場合に行う。 停 止 随 時

機能診断 各機器の運転状態を,目視などの五感ならびに過去の点検記録,

保守履歴をベースに老巧度の評価を行う。 運 転 随 時

環境診断 設置環境要因によるトラブルを予測し早期改善により装置の長期

安定稼動と長寿命化を図る。 運転及び 停 止

随 時

オーバーホール 点検のあと必要に応じて全体の分解点検手入れ,部品交換を行う 停 止 随 時 備考 1 保守点検の周期は,上記に掲げた周期を目安として,機器の環境条件,運転条件,設備の重要度,経過年数,法定周期な

どによって,設備ごとに定めてください。 備考 2 保守点検,診断及びオーバーホールは,メーカーサービスに委託することをお勧めします。

表 3 は,高低圧電気機器保守点検のおすすめ:(一社)日本電機工業会を引用したものである。

キュービクルの保守面においては,扉の開閉確認と施錠の確認,台風・風雪等,異常気象の前には換気

などに目張りをするなどの応急処置や日常点検,年次点検・清掃を励行することにより事故を防ぐことが

できる。

5 電気設備の事故原因と対策

屋外に設置された電気設備等は,気象条件や環境によりキュービクル外被内に湿気や雨水の侵入,周囲

環境変化による結露,強風により扉が開くなどの原因から絶縁物が絶縁低下して事故を起こすこともある。

特に,海岸近くの塩害による影響,市街地における排気ガスや焼却設備による排煙ガスの影響,ビル風

やビル影などの周囲環境による影響が顕著に現れる。

受変電設備では,主遮断装置である真空遮断器(VCB),高圧交流負荷開閉器(LBS)の絶縁劣化から波

及事故へつながる例も見られる。

これらの高圧機器は屋内機器として設計されたものであり,屋外用キュービクルに使用する場合は使用

環境や構造について留意する。

5.1 設備不備

a) 雨水への対策

設置場所において,チャンネルベースの吸気口から侵入した雨水が排水できず,ベース内に溜まり,

盤内湿度が高くなり,結露発生等で絶縁劣化を生じさせる。対策として排水口を追加するなど,設置

環境の改善を図る事で機器機能へ影響を及ぼす要因を改善できる。(図 2)

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b) 風雨対策

設置場所においては,ビルの屋上などキュービクルをさえぎる建物がなく,直接キュービクルに吹

き上げ風があたったり,ビル風があたる場所に設置された場合に,上部換気口や継ぎ目から水滴が侵

入する例も見られる。

対策としては,換気口に雨返しを追加する,扉パッキンを追加するなどの方法がある。

屋外用キュービクルの施工方法においては,げた基礎である場合が多くなり,げた基礎の空洞や変

台の下などキュービクルの底部から吹き上げ風があたり,ここから水滴や湿気が入り絶縁低下に至る

例も見られる。対策としては,施工面においてはげた基礎の周囲を塞ぐ,キュービクルの下部に水が

たまらないように勾配をつけるなどの提案をする。

また,キュービクルの構造に関しては底面換気口を塞ぎ,扉に換気口を設けることや,盤内にスペ

ースヒータを設置するなどの方法がある。

c) 小動物対策

電気設備内にヘビ・ネズミなどの小動物が侵入し,負荷開閉器・

真空遮断器・変圧器・コンデンサなどの露出充電部に接触すると,

短絡事故が発生する。充電部の隠蔽や小動物の侵入経路をなくす

対策を次に示す。

1) 電線・ケーブルの引込口や引出口などをパテで塞ぐ。

2) 通気孔・換気孔には,直径 10 mm 未満(JIS C 4620)のパンチ

ングメタルや金網を設ける。(写真 1)

3) DS や LBS の相間に絶縁バリアを,またコンデンサ等の充電露出部には絶縁キャップを取付ける。

図 2-雨水対策例

図 3-雨水侵入防止対策例

写真 1-基礎通気口へ金網を取付け

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4) 日常点検で小動物の通路となるような侵入口がないか確認し対処する。

d) 振動対策

保護継電器の誤動作,遮断器機構部の故障,充電接続部ねじ類のゆるみにより発熱,溶断の恐れが

ある。電気設備全体に防振対策を施すことは容易ではなく,機器に影響を与えるような振動の激しい

場所に設置することは絶対に避けるべきである。

5.2 保守不備

a) キュービクルの経年劣化対策

キュービクルの経年劣化には,外面的なものと,内面的のものがあげられる。

1) 外面的

塗装の劣化がある。塗装は年月とともに変色し,艶が無くなり塗装面が白く紛化し手で触れる程

度で塗装が落ちるようになる。そのまま放置すると発錆し, 悪の場合には箱体に穴があき,そこ

から水滴または小動物の侵入により短絡事故が発生する。特に錆が出易いところは,キュービクル

の下部,または通気孔の部分であるが,目につかない屋根も注意が必要である。対策として一定時

期に再塗装をし,錆の発生を防止するか,または錆の出にくい構造にし,通気孔(パンチング)な

どは SUS を使用するとよい。

2) 内面的

配線,絶縁物,使用機器などがある。

① 盤内に使用している絶縁電線は接続部の締付けの緩みなどによる発熱のために劣化する場合

もある。また製作時の無理な曲げ加工によりその場所が早く劣化することもある。

② 高圧絶縁電線を支持する絶縁物に粉じん,砂などが付着すると,それら付着部分へ結露又は

水滴などが付き,絶縁劣化による事故が起こる。また,三相一体形の絶縁物を使用している機器

はトラッキング(炭化導電路)の発生による事故が起きやすい。

③ 使用機器の劣化の中で目にみえない物としてヒューズの劣化がある。ヒューズの場合は目安

がないので,定期的に取替えるのがよい。対策として,保守点検と同時に清掃作業を計画的に実

施することにより,波及事故を未然に防ぐことができる。

注記 トラッキング(炭化導電路)現象とは:絶縁物表面に付着した,塵埃と水分により表面

絶縁抵抗が低下し,部分放電/熱の発生と相まって,絶縁物表面に炭化導電路が生成さ

れ,徐々に進行する。これを長期間放置すると,機器の相間短絡事故や地絡事故に発展

する場合が多い。

b) 特別清掃

絶縁物表面に塵埃,排気ガスなどの汚損物の付着,あるいはトラッキング発生による,機器の絶縁

劣化を防ぐために,清掃用アルコール水溶液,碍子清掃剤や特殊洗浄剤等を使用し,絶縁物の表面に

こびりついた汚れを落とし,絶縁物の表面清掃を行う事で,絶縁性能を回復させる事ができる。

5.3 自然現象

a) 結露対策

空気中には一定量の水蒸気が含まれており,外気が急激に低下すると,分電盤や配電盤などの本体

が冷やされるため,飽和水蒸気量が変動し,空気中の水分が水滴となって盤に付着することがある。

また,盤の換気口から高湿度の空気が流入するなど,盤の内部で結露が発生する可能性は多々ある。

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電気設備に結露が生じると,電気機器の絶縁低下を引き起こし,絶縁不良による地絡などの事故に

つながる。

盤内に発熱機器がある場合,盤内温度が上昇していれば,結露の発生は比較的少なく安全である。

例えば,配電盤の場合は盤内部に変圧器など,熱源となる設備が収容されており,運転状況にもよる

が表面温度が 40℃~70℃程度の場合は,結露対策の必要性は低い。

盤内の温度を確保できない場合,盤の下部にスペースヒータを設け,飽和水蒸気量が低下しないよ

うに管理を行う。スペースヒータの容量は,盤の容積 1m3毎に 20 W~40 W 程度とすれば,結露抑制

効果を高められる。

外気湿度 100 %の環境で,盤内結露を防止するには,湿度を 85 %まで低下させなければならない。

この場合,盤内温度を外気より 5℃以上高くすることで,結露防止を高められる。

また,換気口を設けて空気を流通させ,結露を防止する方法や,盤表面に断熱材を敷きこみ,温度

差を緩和する方法なども考えられる。

b) 風雪への対策

雪の多い地域では,屋根の庇やチャンネルベースの通気口,扉の隙間等から粉雪が箱内に入り込み

(写真 2),機器の絶縁劣化や場合によっては地絡・短絡事故に至る事がある。降雪期間限定で次のよ

うな対策を施し雪害に対応する事も必要である。

1) 冬の間は電気主任技術者確認の上,

通気口を塞ぎ密閉状態とする。

2) 防雪構造物の内部に設置する。

c) 雷対策

電気設備における雷が原因の波及

事故は,近くの落雷による誘導雷や

配電線路に発生した誘導雷の伝播に

より発生する過電圧サージが,受電

設備内の機器や配線の絶縁破壊を起

こし,地絡や短絡事故を引き起こす

ものである。被害箇所は全ての機器

に及ぶが,主なものは第一柱開閉

器・引込ケーブル・計器用変圧器・

負荷開閉器などが挙げられる。

雷害対策は,根本的には絶縁設計の改良や絶縁強化が理想であるが,経済的・技術的にも限界があ

り,一般的には避雷器の設置・接地抵抗(サージインピーダンス)の低減などにより雷電圧の低減を

図る対策が採られている。 もよく行われる避雷器設置の効果は,避雷器からの距離が短いほど,避

雷器の接地抵抗が小さいほど大きい。従って,保護する機器からできる限り近くに避雷器は設置し,

接地抵抗はできる限り小さくすることが重要である。

また,配電線路からの雷サージを引込口で吸収し受電設備全体を保護できることから,高圧引込口

の第 1 号柱開閉器に避雷器を設置することが望まれる。雷の多発する地域においては,特に避雷器の

設置が必要である。

d) 地震対策

地震による受電設備の被害は,総じて盤及び変圧器の移動,転倒に起因するものがほとんどである。

写真 2-雪害例 図 3-扉部の防雪例

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JSIA-T1015:2015

内容的には,キュービクル本体の転倒により機器に被害が及んだもの,機器の転倒により配線に張力

がかかり盤やフレームパイプの崩壊,または短絡事故に及んだものなど,互いに競合しあって被害が

拡大していったものが多い。転倒,移動の要因については基礎施工の不備,機器の据付け方法(耐震

ストッパ,振れ止め,可とう性など)に問題があったものが大半である。

1) 盤の据付け及び機器取付け

阪神大震災,東日本大震災では,(一財)日本建築センター発行の「建築設備耐震設計・施工指針」

に基づき設計・施工されていたものは,盤の転倒,移動がなかった。また,電気設備の外被自体は,

溶接フレーム又は枠組フレームに補強が入っている構造体となっており,大震災の事例及び工業会

が実施した耐震試験の結果を見ても,歪みも小さく構造は問題ないと考えられる。

盤内機器の取り付けは,機器メーカの仕様に基づき設置するが,機器据付け部分の強度検討,機

器の揺れを少なくするための工夫も重要である。耐震に対する注意事項を次に示す。

① アンカーボルト穴は丸穴とし,U 穴(切り欠き)とはしない。

② 重量機器は底部に取付け,その取付け部(アングル等)は,箱体にしっかりと固定(溶接な

ど)する。また,重量機器の揺れで箱体底部が煽られないよう,近傍がアンカーボルトで固定さ

れるとより安全である。

③ 機器への配線は可とう性及び余長を見込む。

④ 絶縁距離を十分とるため,配線方法・支持方法を考慮する。離隔距離が十分に確保できない

場合は,絶縁物により隔壁を設ける。

⑤ 変圧器など防振材を介して設置される機器については,移動・転倒防止用耐震ストッパーを

設ける。

e) 高温,多湿,排気ガス等の対策

1) 常時湿度が高い場所

水分により経年劣化が促進され,金属部分の錆,腐食が増長される。また,結露発生により塵埃

が水分を含むことによる絶縁劣化が懸念される。このような場所は特に設置を避けなせればならな

い場所であるが,避けられない場合は箱体を密閉し盤内に空調機を設置するなどの対策を行う。

2) 高温にさらされる場所

絶縁材料の劣化促進が起こり易く,また電子部品を内蔵している保護継電器等では,誤動作や故

障の恐れがある。盤内温度が上昇しないように換気扇等を設け換気効率高める対策を行う。

写真 3-変圧器の揺れ(変位量)対策例

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JSIA-T1015:2015

3) 塩害,腐食性ガス,排気ガスの発生する場所

海岸付近,化学工場,交通量の多い道路の近くに設置されている場合に金属部分の腐食が促進さ

れる。特に海岸付近に設置される場合には絶縁物に塩分が付着することにより絶縁低下を招く恐れ

がある。塩分の付着に関しては,定期的な清掃を行うことにより対処出来るが,ガスに関してはそ

の雰囲気から遮蔽するしか方法がないので,箱体を密閉するなどの対策を行う。

f) 水害対策

津波などによる自然災害から,箱体への浸水を防ぐために

は,その高さを想定し,より高所に電気設備を設置すれば盤

内部への浸水は防止できる。(写真 4)

1) 浸水後の復電対応

設備の一時的使用は製造者の保証範囲外であり,使用に

よるトラブルはすべて使用者側責任となるが,ここでは浸

水した機器の再利用可否判別,また,早期に設備更新を実

施することを前提にした,緊急非常処置としての対応例を

述べる。

2) 浸水した設備を再利用するにあたっての留意事項(点検,検査)

電気設備については,外観の状況,清掃後の絶縁抵抗の回復状態,絶縁耐力試験の結果を基に,

再利用の可否について判断する。ただし,高圧真空遮断器は,構造的にも海水を含んだ汚泥を取り

除くことは難しく,事故が発生した場合不動作が懸念されるため,再利用はせず交換をする必要が

ある。同様に,低圧の配線用遮断器や電磁接触器も海水を含んだ汚泥を取り除くことは難しく,再

利用はせず交換をする必要がある。

盤標準協議会資料より引用

写真 4-架台設置例

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表 4- 一時的利用対策その 1 断路器

DS 真空遮断器

VCB 負荷開閉器

LBS 電力ヒューズ

PF 高圧変成器

VT・CT

使用 可否

否 否 否 否 否

理由

海水及び汚損物

の付着,残留に

より異常加熱,

絶縁破壊,接触

不良,動作障害

を生じる恐れが

ある。

①海水により機構部

分に錆が発生し,動

作に支障をきたす可

能性がある。 ②電装部分が水没し

ており,内部でショ

ート・接触不良を起

こす可能性がある。

③絶縁物や真空バル

ブに海水が付着し絶

縁不良となる。

①海水により機構

部分に錆が発生し,

動作に支障をきた

す可能性がある。 ②電装部分が水没

しており,内部でシ

ョート・接触不良を

起こす可能性があ

る。 ③絶縁物に泥水が

付着し絶縁不良と

なる。

海水のヒュー

ズリンク内へ

の侵入や筒部

の強度低下に

より,通電性能

及び遮断性能

が低下する恐

れがある。

①海水が鉄心及びモ

ールドと導体の境界

面から内部へ侵入す

る可能性がある。 ②製品表面に水分が

残った状態で電圧を

印加した場合,トラ

ッキング現象を引き

起こし,発熱・焼損

に至る可能性があ

る。

一時的

利用 対策

操作機構部や電

装部品などの健

全性が確保でき

ないため,一時

的利用はできな

い。

操作機構部や電装部

品などの健全性が確

保できないため,一

時的利用はできな

い。

操作機構部や電装

部品などの健全性

が確保できないた

め,一時的利用はで

きない。

機構部や部品

などの健全性

が確保できな

いため,一時的

利用はできな

い。

製品の健全性が現地

では確認できないた

め,製造工場で確認

試験が必要である。

表 4- 一時的利用対策その 2 油入変圧器

TR モールド変圧器

TR 配線用遮断器

MCCB 漏電遮断器

ELCB 電磁開閉器

MC

使用 可否

否 否 否 否 否

理由

カバー又はタン

ク側面には内部

圧力変動で動作

する,自動復帰

形の放圧弁が付

属しており,完

全水没状態では

タンク内部に水

が浸入する可能

性がある。 水が浸入した状

態で電圧を印加

した場合,内部

短絡を起こす可

能性がある。

モールド変圧器の低

圧コイルは,完全な

密封状態ではないの

でコイル内部に水が

浸入する可能性があ

る。水が浸入した状

態で電圧を印加した

場合,内部短絡を起

こす可能性がある。

また,鉄心積層内部

に水が浸入している

ため,錆の発生があ

る。

①海水が充電部に

付着するとトラッ

キング現象を引き

起こし,微小な電流

が流れ続け, 終的

には発熱・焼損に至

る可能性がある。 ②内部を開け,完全

に海水を除去する

ことが構造上でき

ない。

MCCB と同一

な理由に加え,

ELCB は電子

部品を搭載し

ており,内部で

ショート・接触

不良を起こす

可能性がある。

①海水が充電部に付

着するとトラッキン

グ現象を引き起こ

し,微小な電流が流

れ続け, 終的には

発熱・焼損に至る可

能性がある。 ②内部を開け,完全

に海水を除去するこ

とが構造上できな

い。

一時的

利用 対策

コイル内部の健

全性が現地では

確認できないた

め,製造工場で

の使用可否判断

を含め,分解・

確認試験が必要

である。

海水を洗い流しても

コイル内部の健全性

が現地では確認でき

ないため,一時利用

の場合,製造工場で

の使用可否判断を含

め,分解・確認試験・

部品取替えが必要で

ある。

一時的利用はでき

ない。 一時的利用は

できない。 一時的利用はできな

い。

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表 4- 一時的利用対策その 3 低圧変流器

CT 保護継電器 指示計器 電線

端子台 TB

使用 可否

否 否 否 否 否

理由

海水が鉄心及

びモールドと

導体の境界面

から内部へ侵

入する可能性

がある。

内部を開け,完

全に海水を除

去することが

構造上できな

い。

内部を開け,完

全に海水を除

去することが

構造上できな

い。

電線の導体構造は細い軟銅線

を,所要本数より合わせてい

る。端部から水が浸入した場

合,毛細管現象により電線長手

方向に奥深く浸入することが

知られている。一旦,浸入した

水は圧力又は熱を加えても除

去できない。

海水が付着すると

金属部分の腐食や,

プラスチック部分

劣化に伴う絶縁性

能の低下が懸念さ

れる。

一時的

利用 対策

製品の健全性

が現地では確

認できないた

め,製造工場で

確認試験が必

要である。

一時的利用は

できない。 一時的利用は

できない。 絶縁体の絶縁抵抗を測定して

も導体内部の浸水の有無は判

断できないため,取替えが必要

である。

海水を洗浄して再

利用した場合,端子

台焼損事故を起こ

す危険があり,取替

えが必要である。

注記 1 「一時的利用対策」は製造者の保証範囲外のため,トラブル等は全て使用者の責任となる。

注記 2 水害状況,機器の製造年度等により対応が変わるので,機器製造者への問合せが前提である。

3) 洗浄方法

一般的な洗浄,清掃方法は,ウエスによる乾拭きや,アルコールと水を混合した洗浄水を吹き付

けたあと拭き取りを行うが,汚泥を含んだ海水が付着,浸透した場合,清掃は容易ではない。

緊急やむを得ない場合は,高圧洗浄機を用い,洗い流したあと乾燥させ乾拭きにより水分を取り

除くのも一方法である。

5.4 過失

5.4.1 作業・施工不備

電気設備の製作は,多くの充電部の接続作業や電線の圧着作業があり,これらの作業が正しく行われな

い場合,直接事故につながり,事故発生の原因となっている。

a) 充電部の接続作業における不具合

1) 充電部を接続するねじの締付け不良

ねじの締付け不良には締付けトルクの不適性と単純な締付け忘れがあり,事故の発生事例は殆ど

の場合,締付けトルクの不適性ではなく単純な締付け忘れであることが多い。

2) 圧着不良

圧着端子の圧着不足または圧着過多。

3) 圧着端子の破断

圧着端子を過度に折り曲げたことによる破断。

b) 事故発生の人為的発生要因

1) 知識不足

正しい作業方法や工具の使用方法を知らない。

2) 経験不足

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作業方法や工具の使用方法に慣れていない。

3) 不注意

うっかりミス(無意識な行動)や規則違反(意識的な行動)によるもの。

c) 締付け忘れの対策例

1) ねじの締付けは 重要作業と考え,所定の技能,知識を持った者だけが作業を行うことが出来る資

格認定制度を導入する。

2) 締付確認のチェック作業は,作業者本人の他に別の専任者がチェック作業を行うことでチェック作

業を二重にする。

3) 作業中断により,作業の進行状況が再開時に不明確とならないように,作業完了部位に表示をし作

業を終了する。

4) 製品に表示する検査証の他に締付け確認証を設け,作業者及びチェック者の検印を押すことで作業

の重要性と責任を明確にする。

5) 作業のマンネリ化を防止するため,適当な期間で人員の交代を行う。

d) 教育訓練

人為的ミス発生要因の背後には,『設備や工具が作業員の能力,特性に不適合』『作業方法や手順,

環境,作業時間のあり方が不適当』『管理,監督方法の不備』等の要因があり目先の一時的な対策では

容易に解決出来るものではない。

人間はエラーを起こし易いものといった認識の基に,人間の特性とは長時間注意力を維持すること

は不可能であること,決められたことに対して反発や自己中心の行動が必ず存在することを念頭に置

き,各々の作業現場の風土に合い調和の取れたシステムを構築することが重要である。

参考文献

(一社)日本配電制御システム工業会

キュービクル式高圧受電設備の事故とその対策事例

配電盤の更新推奨時期判定の手引き

配電盤使用状況実態調査報告書

高圧受電設備もリフォームが必要(パンフレット)

(一社)日本電機工業会

配電盤・制御盤の保守点検指針

汎用高圧機器の更新推奨時期に関する調査報告書

キュービクル式高圧受電設備を安全にお使いいただくために(パンフレット)

あなたの受変電設備は大丈夫ですか(パンフレット)

関東東北産業保安監督部東北支部 電力安全課

電気事故事例集:平成 22 年 4 月

電気保安協会全国連絡会

電気主任技術者だから発見できた 電気事故防止事例集

盤標準化協議会 キュービクル技術部会

キュービクル式高圧受電設備 被災時における対応事例:平成 24 年 7 月制定

キュービクル式高圧受電設備 トラブル・対応事例:平成 22 年 4 月制定

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事例一覧

分類 項番 事例

1 設備不備

1.1 製作不備

1.1-1 キュービクル屋根部からの雨漏り

1.1-2 インバータ一次側漏電遮断器(ELCB)の不要動作 1.1-3 電線被覆の損傷による相間短絡 1.1-4 PV 用接続箱の焼損 1.1-5 締付け忘れによる変圧器二次側ブスバー焼損

1.2 施工不備

1.2-1 低圧配線用遮断器からの異臭

1.2-2 高圧ケーブル端末部分の異常

1.2-3 配線用遮断器(MCCB)の端子部の過熱

2 保守不備

2.1 点検不備 2.1-1 キュービクル内へつる草の侵入

2.1-2 ハンドル上下棒脱落による停電

2.2 自然劣化

2.2-1 計器用変圧器(VT)の亀裂

2.2-2 高圧負荷開閉器(LBS)からの異音

2.2-3 動力盤からの異臭

2.2-4 高圧負荷開閉器(LBS)の過熱

2.2-5 低圧コンデンサの破裂

3 自然現象

3.1 風雨・水害

3.1-1 高圧碍子のリーク痕

3.1-2 高圧真空遮断器の漏電(リーク)

3.1-3 津波によるキュービクル損壊

3.1-4 津波による浸水その 1

3.1-5 津波による浸水その 2

3.1-6 高圧機器の絶縁劣化

3.1-7 雨水侵入による真空遮断器(VCB)の短絡焼損

3.1-8 扉衝撃により高圧真空遮断器(VCB)が遮断

3.2 氷雪 3.2-1 キュービクル内への雪の侵入その 1

3.2-2 キュービクル内への雪の侵入その 2

3.3 雷 3.3-1 雷撃で高圧計器用変圧器が焼損短絡

3.4 地震

3.4-1 地震による変圧器二次接続部の破損

3.4-2 地震による変圧器の移動,傾き

3.4-3 地震による変圧器一次側の高圧負荷開閉器(LBS)端子部が断線

3.4-4 地震による変圧器固定部の破損その 1

3.4-5 地震による変圧器固定部の破損その 2

3.4-6 地震による変圧器高圧端子部の断線

3.4-7 地震による変圧器高圧端子部の断線・焼損

3.4-8 地震による箱体への接触地絡

3.5 塵埃・ガス

3.5-1 真空遮断器(VCB)からの異音

3.5-2 零相変流器(ZCT)からの異音

3.5-3 高圧真空遮断器(VCB)の絶縁性能の低下

3.5-4 引出し式高圧遮真空断器(VCB)接触子の接触不良

3.5-5 真空電磁接触器の焼損

4 過失

4.1 作業者 4.1-1 点検時における負傷事故・焼損その 1

4.1.2 点検時における負傷事故・焼損その 2

5 その他

5.1 小動物の侵入(蛇による波及事故)

5.2 制御盤機器部品の更新

5.3 溶融亜鉛めっきへの塗装剥離

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JSIA-T1015:2015

分 類 1.設備不備 1.1 製作不備 事例番号 1.1-1

事 例 キュービクル屋根部からの雨漏り

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

キュービクル上部より雫が落ちてきて雨漏りを発見した。

原 因

吊り下げボルトのパッキン経年劣化による隙間の発生と思われる。

対 策

天候,環境の変化に伴う点検ポイントを見直し,事故要因の早期発見と改修促進をする。

チェック

ポイント

目視点検により,キャビネットの錆,塗装の剥離,水滴跡,結露等の有無を確認する。

今 後 の

対 応

・定期的なパッキン取替え,シール処理等。 ・全溶接による取付けを行う事で,パッキンは不要とする。 ・設置経過年数によっては,設備の更新を行う。

写真他資料

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分 類 1.設備不備 1.1 製作不備 事例番号 1.1-2

事 例 インバータ一次側漏電遮断器(ELCB)の不要動作

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 制御盤

状 況

三相 415 V 電源の制御盤内に設置される,インバータ一次側漏電遮断器【ELCB(感度電

流 30~ 100 mA)】が,4 台同時に漏電トリップした。 トリップ動作時,4 回路ともインバータ一次側までは電圧が印加されていたが,二次側は

電磁開閉器(MC)が開で負荷停止状態だった。

原 因

ELCB 二次とインバータ一次の間に,ノイズ低減フィルタ(対地間 C)が設置されていた

が,インバータ更新時にインバータ内部にノイズ低減フィルタが内蔵されている機種を

使用した為,インバータ外部と内部にノイズフィルタが 2 重に設置された状態となり,

対地静電容量が増加した。この状態で,他負荷の地絡故障により,電路の対地電圧が変

化し,漏れ電流が増加し,ELCB が不要動作した。 なお,インバータ更新を実施していない回路の ELCB はトリップしていない。

対 策

ノイズフィルタの適切な設置をおこなう。

チェック

ポイント

近年,ノイズフィルタ内臓インバータが増えてきているので,機器更新時は既存設備と

の相違に注意する。

今 後 の

対 応

機器の機能を理解したうえで機器選定,回路構成を設計する。

写真他資料

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分 類 1.設備不備 1.1 製作不備 事例番号 1.1-3

事 例 電線被覆の損傷による相間短絡

設置場所 屋外 屋内 太陽光発電 機種 PV 用集電箱

状 況

太陽光発電設備の集電箱内の N 相(-)と P 相(+)の接触部分で,被覆損傷により相

間短絡が発生した。

原 因

盤内の温度上昇により,電線被覆が劣化したことによるものと想定される。

対 策

・耐熱性の高い電線に交換する。 ・異極間は接触させない。

チェック

ポイント

・目視,触手点検で損傷や変形を確認する。 ・通電状態の温度を測定する。

今 後 の

対 応

・盤内温度が電線,機器の使用範囲内となるよう環境を改善する。 ・耐熱性の高い電線を用いる。 ・温度補正にあった太さとする。 ・電線の異極接触部を取除く。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 1.設備不備 1.1 製作不備 事例番号 1.1-4

事 例 PV 用接続箱の焼損

設置場所 屋外 屋内 太陽光発電 機種 PV 用接続箱

状 況

太陽光発電設備の接続箱が焼損した。

原 因

断路端子の焼損により過電流が流れ,電線が過熱し被覆が損傷したため,相間短絡を発

生しアークが発生し焼損したものと想定する。

対 策

・再製作し取り換える。 ・断路端子の接触状態が判定できるようにする。 ・通電状態で操作しない。

チェック

ポイント

・目視,触手点検で損傷や変形を確認する。 ・通電時の温度を測定する。 ・断路端子可動部の接触状態を確認する。

今 後 の

対 応

・遮断能力を付加する。 ・盤内温度が機器の使用範囲内となるよう環境を改善する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 1.設備不備 1.1 製作不備 事例番号 1.1-5

事 例 締付け忘れによる変圧器二次側ブスバー焼損

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

変圧器二次側のブスバー接続部が焼損しており,接続ボルトが損傷し脱落していた。

原 因

変圧器二次側回路の改造作業を行ったとき,ブスバー接続ボルトの締付けが不完全で,

ブスバー接続部が密着しておらず発熱した。

対 策

・焼損ブスバーを取替える。

チェック

ポイント

・目視点検で接続部の変色,ゆるみが無いことを確認する。 ・接続部の温度を測定する。

今 後 の

対 応

・現場改造時のチェックリストを作成し,作業者,検査者の 2 重チェックを行う。 ・締付を確認し,チェックマークを入れる。 ・サーモラベルで温度監視を行う。

写真他資料

焼損箇所部と同一例

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分 類 1.設備不備 1.2 施工不備 事例番号 1.2-1

事 例 低圧配線用遮断器からの異臭

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

点検しようと扉を開けた瞬間に異臭を感じたため,調査したところ三相 400V 回路の低圧

配線用遮断器(MCCB)端子部(S・T 相)が変色・変質していることを確認した。放射

温度計で測定すると R 相:60 ℃,S 相:80 ℃,T 相 200 ℃であった。

原 因

点検ではナットは軽く回り,スプリングワッシャはつぶれ,端子やボルトナットには砂

や泥と思われるものが付着していた。 何度か移設をした設備なので,おそらく撤去や移動時に振動でナットが緩んだことと,

端子部に汚れが付着したものと推測した。

対 策

・スプリングワッシャを修正し,端子を締めなおす。 ・サーモラベルで温度監視を行うようにした。

チェック

ポイント

目視点検で異臭,変色,締付部のゆるみ,,被覆破損,汚れが無いか確認する。

今 後 の

対 応

・作業の後は通電前に締付け確認,汚れの付着具合を確認する。 ・締付けを確認し,チェックマークを入れる。 ・移設作業の手順を作成し,管理を確実にする。 ・作業者へ電気取扱教育を実施する。 ・機器の耐用年数を確認し,更新を行う。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 1.設備不備 1.2 施工不備 事例番号 1.2-2

事 例 高圧ケーブル端末部分の異常

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

高圧ケーブルと高圧配線接続部で,一相だけ膨らみと変色を発見した。テーピングを外

し確認したところ,接続部分及び高圧ケーブル端末上部に焼損の痕が見られた。

原 因

施工時の締め付け不足等による接触不良が原因と想定される。

対 策

他の電源相を確認し,問題の有無に関らず端末処理をやり直した。

チェック

ポイント

目視点検で接続箇所の膨らみや変形がないか,加熱変色していないか確認する。

今 後 の

対 応

・導電部接続ねじ類の締め付けトルク管理を適正かつ確実に実施する。 ・停電による点検実施時,目視点検が困難な箇所の詳細点検を行う。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 1.設備不備 1.2 施工不備 事例番号 1.2-3

事 例 配線用遮断器(MCCB)の端子部の過熱

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 開閉器盤

状 況

電灯主幹開閉器の一次側端子部が過熱している可能性があったので,サーモラベルを貼

付した結果,R 相に 100℃の過熱を確認した。

原 因

配線端子部の圧着不良が原因と思われる。

対 策

端子部と,配線をやり直した。

チェック

ポイント

目視点検で主回路端子ケーブル接続部に加熱,変色等がないか確認する。

今 後 の

対 応

・電線,ケーブル類の端末圧着処理は,適合端子サイズや適切な工具を用い実施する。

・圧着作業の教育訓練を確実にする。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 2.保守不備 2.1 点検不備 事例番号 2.1-1

事 例 キュービクル内へつる草の侵入

設置場所 屋外 屋内 工場 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

内部目視点検のため扉を開放したところ側面扉の下からつる草が侵入していた。

原 因

周囲につる草が生えていたため,除草をしていたが,春先から夏場にかけて,2 か月の間

にキュービクル隙間から侵入したものと想定される。

対 策

・定期的に巡視点検を行い,異物侵入の痕跡有無を確認し,異物を除去する。 ・異物侵入の危険性の認められる開口部は,閉塞処理する。

チェック

ポイント

目視点検でキュービクル内に小動物,雑草等の異物侵入痕跡がないか確認する。

今 後 の

対 応

つる草などの生育季節は,特に注意し除草を行う。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 2.保守不備 2.1 点検不備 事例番号 2.1-2

事 例 ハンドル上下棒脱落による停電

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

ハンドルのロット棒(上下棒)が脱落し,変圧器の低圧母線に接触,瞬時停電となった。

原 因

長期間の使用で留め金具が緩みのため外れ,ロット棒(上下棒)が脱落した。脱落の際,

印加状態の母線銅帯相間に接触し,停電を引き起こしたと推定する。

対 策

ハンドル本体及びロット棒(上下棒)を取替え,上棒はガイドから外れないように脱落

防止処理を施した。

チェック

ポイント

目視点検で変形,腐食,固定抜け止めピン等の脱落の有無を確認する。

今 後 の

対 応

点検時にドアロック装置の部品変形,損傷や緩みの有無を確認する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 2.保守不備 2.2 自然劣化 事例番号 2.2-1

事 例 計器用変圧器(VT)の亀裂

設置場所 屋外 屋内 工場 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

受電盤の受電電圧計指針が各相間でアンバランス値を指した。計器用変圧器に異常があ

ると推測し,計器用変圧器本体を目視にて確認したところ,R-S 相の計器用変圧器本体

モールド部分の樹脂が溶けていていることを発見した。 当該計器用変圧器を取り外して確認したところ,本体にひび割れがあり,保護ヒューズ

が溶断していた。

原 因

計器用変圧器が製造から 20 年経過しており,絶縁不良による地絡などで焼損し,モール

ドがひび割れしたものと推定される。

対 策

計器用変圧器を新しいものと取り換えた。

チェック

ポイント

・目視点検で端子部,絶縁物にトラッキング,加熱変色の有無を確認する。 ・計器用変成器の二次側に接続されている電流計,電圧計の指示値に異常がないか確認

する。

今 後 の

対 応

・製造年を確認し,耐用年数(更新推奨時期)を超えているものは取替える。 ・定期的な清掃により,汚れを取り除く。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 2.保守不備 2.2 自然劣化 事例番号 2.2-2

事 例 高圧負荷開閉器(LBS)からの異音

設置場所 屋外 屋内 工場 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

キュービクル内機器を目視点検したところ,主遮断器用高圧開閉器(LBS)にてリーク

(碍子などの絶縁物沿面に水や埃が付着すると,絶縁強度が保てなくなり,大地に電気

が逃げていく時に発生する音)しているのを発見した。

原 因

経年劣化による絶縁不良と思われる。

対 策

耐用年数を超過し絶縁不良のため,新しい機器に取替えを行った。

チェック

ポイント

・目視点検により,絶縁物の汚損,加熱変色および主回路端子部および刃と受けの汚損,

錆はないか確認する。 ・器具から異音,異臭,異常加熱等がないか確認する。

今 後 の

対 応

・製造年を確認し,耐用年数(更新推奨時期)を超えているものは取替える。 ・定期的な清掃により,汚れを取り除く。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 2.保守不備 2.2 自然劣化 事例番号 2.2-3

事 例 動力盤からの異臭

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 動力盤

状 況

動力盤点検のため,扉を開いた時,異臭があった。確認した結果,冷凍機送り動力用の

外線ケーブルが,焼損しているのを発見した。

原 因

ケーブルは,接続箇所ではない部分で焼損しており,原因は不明であるが,経年劣化に

より,過熱・焼損に至ったものと想定されるが,施工時に不具合があった可能性も考え

られる。

対 策

焼損ケーブルの改修を依頼した。

チェック

ポイント

・目視点検で,絶縁被覆の劣化,異臭の有無を確認する。 ・触手により,ケーブルの温度を確認する。

今 後 の

対 応

・点検時の絶縁抵抗試験で早期発見に努める。(管理者) ・適正な容量をもった電線であるか確認する。(管理者) ・放熱が容易であるように配線工事をしてもらう。(施工会社)

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 2.保守不備 2.2 自然劣化 事例番号 2.2-4

事 例 高圧負荷開閉器(LBS)の過熱

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

高圧負荷開閉器の外観点検を放射温度計で実施したところ,R 相(14 ℃),S 相(93 ℃),

T 相(14 ℃)と S 相のみ,異常に高い値が測定された。

原 因

経年劣化による刃型接続箇所の接触不良と想定される。

対 策

刃型接続箇所の接触不良のため,新しい機器に取替えを行った。

チェック

ポイント

目視点検で,使用年数,通電接触部の変質・変形及び消弧室の変形の有無を確認する。

今 後 の

対 応

・点検時に接点グリースの乾燥や埃の付着・変形が無いか確認する。 ・製造年を確認し,耐用年数(更新推奨時期)を超えているものは取替える。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 2.保守不備 2.2 自然劣化 事例番号 2.2-5

事 例 低圧コンデンサの破裂

設置場所 屋外 屋内 工場 機種 手元操作盤

状 況

給気ファンを運転中,コンデンサが破裂した。

原 因

経年劣化による破裂と想定される。

対 策

保安装置付のコンデンサとする。

チェック

ポイント

目視点検で,使用年数,変形・変色が無いか確認する。

今 後 の

対 応

製造年を確認し,耐用年数(更新推奨時期 10 年)を超えているものは取替える。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.1 風雨,水害 事例番号 3.1-1

事 例 高圧碍子のリーク痕

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

定期点検において,高圧母線支持用エポキシ碍子のリーク痕を発見した。 梅雨時期でキュービクル内外が多湿状態であったため,急激な絶縁劣化があったものと

思われる。

原 因

周囲は湿気が多くて風通しも悪く,変圧器も軽負荷の時間が長いので,キュービクル内

が結露しやすい環境にあった。

対 策

清掃を実施する。必要に応じてスペースヒータの設置を考慮する。

チェック

ポイント

目視点検により,絶縁物の汚損,加熱変色はないか確認する。

今 後 の

対 応

・点検時の絶縁抵抗試験で早期発見に努める。 ・定期的な清掃により,汚れを取り除く。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.1 風雨,水害 事例番号 3.1-2

事 例 高圧真空遮断器の漏電(リーク)

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

受電盤付近より異音が発生していることに気付き点検を行ったところ,受電用高圧真空

遮断器(VCB)から漏電(リーク)が発生していることを発見した。

原 因

湿気等,結露により異音がしたものと思われる。

対 策

・清掃用アルコールで汚れを除去する。 ・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

チェック

ポイント

目視点検で端子部,絶縁物にトラッキング,加熱変色の有無を確認する。

今 後 の

対 応

・定期的な清掃により,汚れを取り除く。 ・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.1 風雨,水害 事例番号 3.1-3

事 例 津波によるキュービクル損壊

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の津波により,キュービクルが損壊した。

原 因

津波による損壊。

対 策

・損壊キュービクルの撤去。 ・再製作。

チェック

ポイント

地震発生のつど,津波の有無,高さをチェックする。

今 後 の

対 応

安全な設置場所の確保。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.1 風雨,水害 事例番号 3.1-4

事 例 津波による浸水その 1

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の津波により,キュービクルに浸水し,機器が水没した。

原 因

津波による浸水でキュービクル内部が汚水に浸かる。

対 策

・損壊状況の把握。 ・現地改修の是非判定。 ・再製作。

チェック

ポイント

地震発生のつど,津波の有無,高さをチェックする。

今 後 の

対 応

高所設置,防水バリア設置等。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.1 風雨,水害 事例番号 3.1-5

事 例 津波による浸水その 2

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の津波により,キュービクルに浸水し,機器が水没した。

原 因

津波による浸水でキュービクル内部が汚水に浸かる。

対 策

・損壊状況の把握。 ・現地改修の是非判定。 ・再製作。

チェック

ポイント

地震発生のつど,津波の有無,高さをチェックする。

今 後 の

対 応

高所設置,防水バリア設置等。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.1 風雨,水害 事例番号 3.1-6

事 例 高圧機器の絶縁劣化

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

下駄基礎上に設置された屋外キュービクル内の高圧真空遮断器・高圧電磁接触器の絶縁

が劣化している。

原 因

下駄基礎の空間からキュービクル底板通気口を経由し,盤内に風雨が侵入し,塵埃の蓄

積も有り,高圧機器の絶縁抵抗が低下した。また,下駄基礎内部に水たまりが出来てお

り,高湿度状況が継続していた。

対 策

下駄基礎の隙間より風雨が侵入しないよう覆いを設ける。

チェック

ポイント

・点検時に浸水の跡の有無を確認する。 ・目視点検で端子部,絶縁物の汚れ,トラッキング,変色の有無等を確認する。

今 後 の

対 応

・清掃用アルコールで汚れを除去する。 ・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.1 風雨,水害 事例番号 3.1-7

事 例 雨水侵入による真空遮断器(VCB)の短絡焼損

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

キュービクルより発煙し,電気の供給を停止した。高圧真空遮断器(VCB)の損傷が著

しく,電源側端子のセパレータが溶けて電源側配線の被覆が熱により溶融していた。

原 因

キュービクル前面屋根庇部換気口より雨水が吹き込み,屋根裏面を流れ VCB 電源端子部

に雨水が落下した。端子部に付着していた塵埃が水分を含み,相間が絶縁破壊をおこし

損傷したと推定する。

対 策

庇部へ雨返しの対策をもうける。

チェック

ポイント

・点検時,目視により水滴痕の有無を確認する。 ・台風等の通過後は,臨時点検を行う。

今 後 の

対 応

庇部の通気口は,防噴流対策用の雨返し構造を採用する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.1 風雨,水害 事例番号 3.1-8

事 例 扉衝撃により高圧真空遮断器(VCB)が遮断

設置場所 屋外 屋内 倉庫 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

通常巡回点検中に受電盤の扉を閉めたとき,高圧真空遮断器(VCB)が遮断した。

原 因

通常巡回点検時に受電盤の扉を閉めたとき,強風による扉閉鎖時の加速衝撃により盤内

の中扉に取り付けてある誘導形不足電圧継電器(UVR)の接点が閉となり,高圧真空遮

断器(VCB)が遮断した。

対 策

静止形不足電圧継電器(UVR)に交換した。

チェック

ポイント

扉部等,外圧による影響のある場所に設置されている計器の固定状態を,目視,触手な

どで確認する。

今 後 の

対 応

・可動接点のある継電器類は,振動・衝撃の影響が無い場所へ取り付ける。 ・やむを得ず振動の影響を受ける場所に設ける場合は,衝撃防止対策を施す。 ・比較的耐振動性の大きい静止形を採用する。

写真他資料

誘導形 静止形

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.2 氷雪 事例番号 3.2-1

事 例 キュービクル内への雪の侵入その 1

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

キュービクル内へ雪が侵入し,積雪している。

原 因

風雪により,キュービクルの扉下隙間(通気口)より雪が侵入した。

対 策

除雪し,絶縁耐力測定の後,通電を行った。

チェック

ポイント

積雪地域(千葉県某所)の構造ではないため,気象情報に注意する。

今 後 の

対 応

・風雪時は,臨時の点検を実施する。 ・降雪時期に合わせ目張り等の風雪対策を施す。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.2 氷雪 事例番号 3.2-2

事 例 キュービクル内への雪の侵入その 2

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

キュービクル内へ雪が侵入し,積雪している。

原 因

キュービクル上下の通気孔からの風雪により,通気口より雪が侵入した。

対 策

除雪し,絶縁耐力測定の後,通電を行った。

チェック

ポイント

・積雪地域の構造ではないため,気象情報に注意する。 ・風雪時は,臨時の点検を実施する。

今 後 の

対 応

・降雪時期に合わせ目張り等の風雪対策を施す。 ・積雪地域の場合は,設置場所に応じた防雪構造とする。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.3 雷 事例番号 3.3-1

事 例 雷撃で高圧計器用変圧器が焼損短絡

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

電力会社の変電所の保護継電器(DGR)が動作し遮断器が開放,その後,再閉路不可,

再再閉路動作で 4 区間以降が停電となった。関係部署へ連絡,関係者の現地到着により

調査の結果,キュービクル内に設置されている計器用変圧器(VT)が 1 台,雷撃により

焼損していることが判明した。この計器用変圧器(VT)は区分開閉器用保護装置の電源

を供給していたことから,区分開閉器が不動作となった。

原 因

配電線路への雷撃。 区分開閉器用保護装置の電源が喪失した。 避雷器が未設置であった。

対 策

・PAS 側又はキュービクル内へ避雷器を設置する。 ・新しい VT と交換する。

チェック

ポイント

・目視点検により,落雷痕の有無を確認する。 ・落雷の時期は臨時点検を行う。

今 後 の

対 応

・避雷器設置の有無を確認し,対応する。

写真他資料

事故品と同等仕様の VT VT の損傷状況

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.4 地震 事例番号 3.4-1

事 例 地震による変圧器二次接続部の破損

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の地震により,変圧器の二次側端子及び可とう導体が変形,変圧器二次端

子碍子部が破損した。

原 因

地震の揺れに連動する形で変圧器も揺れ,可とう導体部では揺れ幅をカバーできず,変

圧器の二次端子部が張力により破損したと想定する。

対 策

・変圧器変位量に対して,余長を持たせた配線とする。 ・新しい変圧器に交換する。

チェック

ポイント

・変圧器の高低圧側共に十分な揺れ対策がとられているか,余長は十分か。 ・固定は十分か。

今 後 の

対 応

・変圧器変位量に対して,余長を持たせた設計を行う。 ・変位量抑制対策(触れ止め)の取付けを考慮する。 ・二次側は可とう電線を使用する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.4 地震 事例番号 3.4-2

事 例 地震による変圧器の移動,傾き

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の地震により,変圧器固定部が破損し,変圧器が移動したため導電部が損

壊した。

原 因

地震による揺れに,変圧器を固定している取付け部が強度的に不足のため,破損したと

想定する。

対 策

破損機材の取替え及び取付け部の補修を行った。

チェック

ポイント

・目視点検で,固定部分のゆるみ,外れの確認をする。 ・変圧器固定架台の確認をする。

今 後 の

対 応

変圧器の固定は耐震計算技術資料で既定の固定方法で確実に取付ける。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.4 地震 事例番号 3.4-3

事 例 地震による変圧器一次側の高圧負荷開閉器(LBS)端子部が断線

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の地震により変圧器が揺れ,一次側の高圧負荷開閉器(LBS)端子部が断

線し焼損した。

原 因

変圧器の揺れに対して,変圧器と高圧負荷開閉器(LBS)間の余長不足により,LBS 端

子部が断線により焼損したと想定する。

対 策

・変圧器変位量に対して,余長を持たせた配線とする。 ・新しい高圧負荷開閉器(LBS)に交換する。

チェック

ポイント

・変圧器に十分な揺れ対策がとられているか,余長は十分か。 ・端子部へのストレスは無いか。

今 後 の

対 応

・変圧器変位量に対して,余長を持たせた設計を行う。 ・変位量抑制対策(触れ止め)の取付けを考慮する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.4 地震 事例番号 3.4-4

事 例 地震による変圧器固定部の破損その 1

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の地震により,防振ゴム付き変圧器が異常な揺れを引き起こした。

原 因

防振ゴム付き変圧器の耐振ストッパの機能不足及び耐震ストッパの未調整により,変圧

器が移動し,破損したと想定する。

対 策

・トランス固定部の補修,防振ゴムの取替えを行う。 ・耐震ストッパの調整。

チェック

ポイント

目視点検で,耐震ストッパの調整を確認する。

今 後 の

対 応

・変圧器の耐震ストッパはメーカ推奨に合わせ調整を行う。 ・変位量抑制対策(触れ止め)の取付けを考慮する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.4 地震 事例番号 3.4-5

事 例 地震による変圧器固定部の破損その 2

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の地震の衝撃によりトランス基台固定ボルトが破損し,トランス架台が筐

体下部から移動し落下した。

原 因

変圧器取付け架台を固定するボルト部分の強度不足により固定部が損傷し,変圧器が移

動した。

対 策

変圧器取付け架台の構造変更を行う。

チェック

ポイント

目視により,固定部分のゆるみ,はずれを確認する。。

今 後 の

対 応

・必要な強度を持つ固定方法(溶接構造)とする。 ・ボルト部分の中空止は禁止する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.4 地震 事例番号 3.4-6

事 例 地震による変圧器高圧端子部の断線その 1

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の地震により,変圧器の一次側端子部が断線,銅帯端子が破損した。

原 因

変圧器の揺れにより,一次側圧着端子部の破損及び端子部が破損した。

対 策

・変圧器変位量に対して,余長を持たせた配線とする。 ・変圧器端子を取替える。

チェック

ポイント

・変圧器に十分な揺れ対策がとられているか,余長は十分か。 ・端子部へのストレスは無いか。

今 後 の

対 応

・変圧器変位量に対して,余長を持たせた設計を行う。 ・変位量抑制対策(触れ止め)の取付けを考慮する。 ・変圧器端子構造を強固にする。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.4 地震 事例番号 3.4-7

事 例 地震による変圧器高圧端子部の断線・焼損

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の地震により,モールド変圧器の一次側端子部が断線,変圧器の鉄心に接

触し焼損した。

原 因

変圧器の揺れにより,一次側圧着端子部で電線が断線し,活線が変圧器鉄心及びコイル

絶縁部に接触し焼損した。

対 策

・変圧器変位量に対して,余長を持たせた配線とする。 ・変圧器を取替える。

チェック

ポイント

・変圧器に十分な揺れ対策がとられているか,余長は十分か。 ・端子部へのストレスは無いか。

今 後 の

対 応

・変圧器変位量に対して,余長を持たせた設計を行う。 ・変位量抑制対策(触れ止め)の取付けを考慮する。 ・変圧器端子構造を強固にする。

写真他資料

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分 類 3.自然現象 3.4 地震 事例番号 3.4-8

事 例 地震による箱体への接触地絡

設置場所 屋外 屋内 ビル 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

東日本大震災の地震により,変圧器の二次側端子部とキュービクル外被間で地絡が発生

した。

原 因

変圧器と外被の空間が,変圧器の揺れに対して十分でないため,モールド変圧器の二次

端子部とキュービクル外被間で地絡が発生した。

対 策

・変位量抑制対策(触れ止め)の取付けを考慮する。 ・トランス端子部周辺に絶縁体を取付ける。

チェック

ポイント

・変圧器に十分な揺れ対策がとられているか。 ・端子部の絶縁空間は確保されているか。

今 後 の

対 応

・変位量抑制対策(触れ止め)の取付けを考慮する。 ・トランス充電部分で,地絡の可能性のある部分は絶縁処理を施す。

写真他資料

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分 類 3.自然現象 3.5 粉塵,ガス 事例番号 3.5-1

事 例 真空遮断器(VCB)からの異音

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

受電盤付近で,かすかな「チリチリ」という異音があり,異音発生源の特定調査を実施

した。調査の結果,受電盤に設置されている真空遮断器が異音の発生源であることが判

明した。点検の結果,真空遮断器本体の端子付近で絶縁劣化しトラッキングが発生して

いた。

原 因

経年劣化により絶縁低下したものと推定される。

対 策

・清掃用アルコールで汚れを除去する。 ・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

チェック

ポイント

目視点検で端子部,絶縁物にトラッキング,加熱変色の有無を確認する。

今 後 の

対 応

・定期的な清掃により,汚れを取り除く。 ・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

写真他資料

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分 類 3.自然現象 3.5 粉塵,ガス 事例番号 3.5-2

事 例 零相変流器(ZCT)からの異音

設置場所 屋外 屋内 電気室 機種 電気室

状 況

受電室 ZCT 付近よりリーク音(碍子などの絶縁物沿面に水や埃が付着すると,絶縁強度

が保てなくなり,大地に電気が逃げていく時に発生する音)が発生していることを発見

した。確認したところ,ZCT の電線貫通部に取付けたセパレータに白い粉状の物質が発

生していた。点検した結果,絶縁劣化により放電し,電線被覆が炭化していることが判

明した。

原 因

経年劣化により,相間リークが発生したものと推測される。

対 策

・ZCT を交換する。

チェック

ポイント

・目視点検で電線のセパレータの損傷,汚損を確認する。 ・電線の損傷,汚損を確認する。

今 後 の

対 応

・定期的な清掃により,汚れを取り除く。 ・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

写真他資料

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分 類 3.自然現象 3.5 粉塵,ガス 事例番号 3.5-3

事 例 高圧真空遮断器(VCB)の絶縁性能の低下

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

設備の絶縁抵抗値が 1 メグオームと著しく低下していたため,点検を行ったところ,高

圧真空遮断器(VCB)のトラッキングを発見した。

原 因

設備の前方に焼却炉が有り,その灰がキュービクル上部の通気口より侵入し,高圧真空

遮断器(VCB)に付着したことによりトラッキングを起こしたと想定される。

対 策

・清掃用アルコールで汚れを除去する。 ・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

チェック

ポイント

目視点検で端子部,絶縁物にトラッキング,加熱変色の有無を確認する。

今 後 の

対 応

・定期的な清掃により,汚れを取り除く。 ・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.5 粉塵,ガス 事例番号 3.5-4

事 例 引出し式高圧遮真空断器(VCB)接触子の接触不良

設置場所 屋外 屋内 温泉地 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

高圧真空遮断器(VCB)固定枠側端子の変色を確認したため,高圧真空遮断器(VCB)を引き出して点検を行ったところ,固定枠側端子だけでなく,接触子側の変色も確認し

た。

原 因

温泉ガス等,硫化水素による影響で,高圧真空遮断器(VCB)に接触不良が発生したと

想定される。

対 策

盤設置環境を,硫化水素ガス雰囲気とならないように整備する。

チェック

ポイント

・目視点検で端子部,硫化変色の有無を確認する。 ・異常ガスの侵入の有無(異臭)を確認する。

今 後 の

対 応

・ガスの影響を受けにくい設置場所とする。 ・点検周期を短縮し,異常の早期発見に努める。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 3.自然現象 3.5 粉塵,ガス 事例番号 3.5-5

事 例 真空電磁接触器の焼損

設置場所 屋外 屋内 機種 電気室

状 況

高圧進相コンデンサ用真空電磁接触が焼損した。電磁接触器は自動力率制御装置により,

自動開閉動作をしている。

原 因

電気室に隣接して設置されるプール機械室より腐食性ガス(塩素)が侵入し,電磁接触

器の真空バルブが腐蝕し真空度が低下したことにより,電流遮断時にアークが発生・継

続し,その後相間短絡に至り電磁接触器が焼損した。

対 策

・盤の標準使用状態となるように,電気室への腐食性ガスの侵入を防ぐ。 ・定期点検周期を短縮して(機器極間の耐電圧試験)実施する。

チェック

ポイント

異常ガスの侵入の有無(異臭)を確認する。

今 後 の

対 応

・ガスの影響を受けにくい設置場所とする。 ・点検周期を短縮し,異常の早期発見に努める。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 4.過失 4.1 作業者 事例番号 4.1-1

事 例 点検時における負傷事故・焼損その 1

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

電気技術者が月次点検中,誤って体のバランスを崩し,高圧充電部に接触し R-S 相間短

絡と同時にアークが発生し,火傷を負うとともにケーブルが焼損した。

原 因

キュービクル基礎部に足場スペースがなく,十分な安全確認が行われていなかった。

対 策

・事前準備,養生を十分に行う。 ・充電部へ保護カバーを取り付ける。

チェック

ポイント

・足場確保の確認 ・周辺充電部の確認

今 後 の

対 応

・保安教育の実施 ・警告表示をし,注意喚起をする。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 4.過失 4.1 作業者 事例番号 4.1-2

事 例 点検時における負傷事故・焼損その 2

設置場所 屋外 屋内 機種 分電盤

状 況

負荷設備撤去作業において,不要電線の未処理があったため,撤去作業を行った。作業

準備として上位の遮断器を開放したが,誤って他の回路を開放し,該当回路は活線のま

まであった。作業前確認のため,分電盤の扉を開け銅帯間の電圧確認のため,テスタの

プローブを当て検電の際,誤って線間に接触し短絡により焼損及び感電負傷した。

原 因

電気主任技術者に無断で工事を行った。 検電を検電器ではなく,テスタで行った。

対 策

検電はテスタではなく検電器で行う。 線間距離の広い所での検電を行う。

チェック

ポイント

・事前に回路を把握しておく。

今 後 の

対 応

・保安教育の実施

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 5.その他 事例番号 5-1

事 例 小動物の侵入(蛇による波及事故)

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

高圧受電盤上部の腐食による穴を発見,雨水等の侵入による停電事故防止のため,補修

するよう指導していた。 通常通り受電し,特段の異常は認められなかったが,電気事業者の過電流継電器(OCR)が動作し,波及事故により全線停電となった。

原 因

高圧受電盤上部の腐食による穴から蛇が侵入し,交流負荷開閉器(LBS)の電源側端子

から負荷側端子にかけて蛇が絡まり,短絡事故が発生した。

対 策

・交流負荷開閉器(LBS)を取り換える。 ・速やかに腐食部の補修を行う。

チェック

ポイント

目視点検により,キャビネットの損傷,変形等を確認する。

今 後 の

対 応

不良個所は,速やかな補修指示を行う。

写真他資料

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JSIA-T1015:2015

分 類 5.その他 事例番号 5-2

事 例 制御盤機器部品の更新

設置場所 屋外 屋内 機種 動力制御盤

状 況

使用機器に全体的な経年劣化がみられる。

原 因

機器更新時期に関し検討を行われていなかった為。

対 策

機器部品の更新を行った。

チェック

ポイント

・経過年数・・・更新推奨時期を超えていないか。 ・定期点検の励行

今 後 の

対 応

・更新推奨時期を超過している場合には,機器を交換する。

写真他資料

更新

更新前 更新後

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JSIA-T1015:2015

分 類 5.その他 事例番号 5-3

事 例 溶融亜鉛めっきへの塗装剥離

設置場所 屋外 屋内 機種 キュービクル式高圧受電設備

状 況

納入後 3 年ほど経過した盤ベースの塗装が剥離した。 ベースは溶融亜鉛メッキをし,その上に塗装(ウレタン)している。

原 因

素材との密着性の不備

対 策

素材が溶融亜鉛めっきであり,めっき性能は低下するがめっき面を研磨し,密着性を高

める。又は塗装は除去する。

チェック

ポイント

目視点検により,塗装剥離の有無を確認する。

今 後 の

対 応

溶融亜鉛めっきへの塗装は密着性が低く,塗装は行わない。 剥離した事例の少ない塗装銘柄の組合せで塗装仕様を決定する。

写真他資料

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白 紙

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この資料作成に関与された委員の氏名は次のとおりである。(敬称略,順不同)

平成 27 年 12 月 25 日 発行

発行所 一般社団法人日本配電制御システム工業会

〒105-0012 東京都港区芝大門 2 丁目 10-2(黒田ビル)

電 話 03-3436-5510

FAX 03-3436-0738

技 術 委 員 会

委員長 戸村 雅義 (遠 藤 電 機) 委 員 山田 博 (中 立 電 機) 委 員 小嶋 祥司 (中 立 電 機) 委 員 原田 礼蔵 (宇 賀 神 電 機) 委 員 管野 誠逸 (北海道古川電気工業 ) 委 員 奥田 真澄 (勝亦電機製作所) 委 員 福田 利明 (山形電機製作所) 委 員 中川 巧 (白川電機製作所) 委 員 山岡 勝 (奥 井 電 機) 委 員 光亦 輝久 (名 興 電 機) 事務局 木賊 勝信

委 員 片山 雄司 (四 変 テ ッ ク) 事務局 河原木 豊 委 員 大嶋 賢司 (計 測 電 機) 事務局 芦澤 友雄

第 一 技 術 専 門 委 員 会

主 査 山田 博 (中 立 電 機) 委 員 寺門 繁 (国 分 電 機) 委 員 光亦 輝久 (名 興 電 機) 委 員 矢沢 武 (富士電機機器制御) 委 員 河田 雅隆 (広沢電機工業) 委 員 小酒 成昭 (別 川 製 作 所) 委 員 宮地 晃弘 (三葉電機工業) 事務局 木賊 勝信 委 員 加藤 健二 (因幡電機製作所) 事務局 芦澤 友雄

技 術 部 会

委 員 長 別川 稔 ( 別 川 製 作 所 )