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VOL.157 2018 INSTITUTE OF   MATION SYSTEMS KANSAI INSTITUTE OF   INFORMATION SYSTEMS 一般財団法人 関西情報センター KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS 特集:「平成29年度実施事業からの報告」

KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS KANSAI ... - KIIS · 性を再認識しました。将来の発生の可能性が高 い南海トラフによる大規模震災への対応の面で

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VOL.1572018

KANSAI INSTITUTE OF    INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF  

INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF   INFORMATION SYSTEMS

一般財団法人 関西情報センター

KANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMSKANSAI INSTITUTE OF INFORMATION SYSTEMS

DIC 71s*

特集:「平成29年度実施事業からの報告」

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定価¥5 0 0(送料込)(ただし、一般財団法人関西情報センター会員については、年間購読料は年間会費に含まれております。)

◇ごあいさつ 一般財団法人関西情報センター 会長 森下 俊三 …………1

◇平成29年度実施事業からの報告 ………………………………………………………………………………2

 □「e-Kansaiレポート2018

         ~新たなビジネス創出プラットフォームの実現に向けて~ 調査結果概要」 ……2

事業推進グループ マネジャー・首席研究員 石橋 裕基

 □「平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査」 ………………………… 11

事業推進グループ 研究員 長尾 卓範

 

 □「スマートインフラセンサ利用研究会」

            ~橋梁等の社会インフラ維持管理IoT活用推進の情報基盤づくり~ ……… 18

事業推進グループ マネジャー 澤田 雅彦

 □「KIISサイバーセキュリティ研究会 平成29年度活動報告」 ……………………………………… 24

事業推進グループ マネジャー・首席研究員 石橋 裕基

 □「地区防災計画と災害情報共有のあり方」 …………………………………………………………… 29

新事業開発グループ 主任研究員 坊農 豊彦

◇賛助会員企業のご紹介

  株式会社パスコ …………………………………………………………………………………………… 33

  あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 ……………………………………………………………… 36

  クモノスコーポレーション株式会社 …………………………………………………………………… 38

KIIS Vol. 157 目    次

本誌は、当財団のホームページでもご覧いただけます。http://www.kiis.or.jp/content/info/magazine.html

KIIS Vol.157 ISSN 0912-8727平成30年 7月発行人 田中 行男発行所 一般財団法人 関西情報センター    〒530-0001 大阪市北区梅田1丁目3番1-800号 大阪駅前第1ビル8F TEL. 06-6346-2441

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ご あ い さ つ一般財団法人関西情報センター

                                    会長 森下 俊三

 世界経済の情勢は昨年までの堅実な成長から

局面が変わり、貿易摩擦や世界的な政局の影響

を受け、やや不安定な様相を呈しており、今後

の予測が非常に難しい状況になっています。

 一方、関西地域では、1970年に開催された大

阪万博が55年の時節を経て、再び未来を展望す

る役割を担うイベントとして開催されるものと

期待されています。

 ICT の世界では、新たなイノベーションが期

待されている人工知能技術や IoT は、既に我々

の生活や産業の中で具体的な成果を生み出す実

用段階に入りつつあります。

 平成29年度に実施した「e-Kansai レポート」

では、前年度に引き続き、ビジネスにおける AI

や IoT、ビッグデータ等の利活用状況について

の調査を行いました。アンケートやヒアリング

の結果、今後社会的にイノベーションを生み出

していくためには、各企業が新ビジネス創出の

ために必要な組織・意思決定プロセス等の改革

に取り組むこと、企業間でのデータ連携基盤等、

社会的なビジネスプラットフォームが重要であ

ること等について報告しております。

 「スマートインフラ研究会」では、実際の橋梁

におけるセンサ利用の実証実験など新たな段階

を迎え、予防保全やメンテナンスの効率化等に

広く使える標準化したデータの収集・活用の基

盤作りにむけた活動を引き続き実施しておりま

す。

 また、「関西のサービス業の生産性・付加価値

向上に関する調査事業」では、関西のサービス

産業の生産性向上に注目して、IT 利活用の実態

調査と導入・利活用促進に向けた課題整理、普

及啓発、提言のとりまとめを行うとともに、生

産性向上に有効な IT ツール事例集の作成も行い

ました。

 さらに、インターネットやIoT機器上のセキュ

リティに対する脅威はますます拡大傾向にあり

ながら、中小企業においては人材不足を起因と

するリスク認識の不足とその対策の遅れが依然

として課題となっています。「サイバーセキュリ

ティ研究会」では引き続きセキュリティ人材の

育成と経営層への啓発活動を実施してまいりま

す。

 また、大阪北部地域における地震では、人口

が密集する都市部での地震対策の課題が改めて

浮き彫りにされました。当財団では従来から地

区防災計画の策定支援を実施しており、帰宅困

難者への対応など災害発生時の行動計画の必要

性を再認識しました。将来の発生の可能性が高

い南海トラフによる大規模震災への対応の面で

も、持続可能な社会の実現に対して ICT がどの

ように貢献できるのか、改めて考えさせられる

ことになりました。

 本号では、当財団が平成29年度に実施した代

表的な事業について賛助会員の皆様にご報告さ

せていただきます。皆様の事業・ビジネスの一

層の発展のご参考になれば幸いです。

 賛助会員企業、国や自治体などの関係機関に

おかれましては、当財団の事業活動に今後とも

引き続きご支援、ご協力を賜るようお願い申し

上げます。

1

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2

1.調査の趣旨

 IoT やビッグデータに加え、AI の利活用が普及す

ることで、企業・自治体のビジネスや業務は一変する

可能性がある。あらゆるモノやコトが「賢く」「便利に」

なることで起こりうる変化(ビジネスモデル、働き方

等)を見定めることは、今後企業がビジネスをより拡

大していく、あるいは自治体がより地域住民のための

業務を推進する上で極めて重要である。

 経済産業省産業構造審議会・新産業構造ビジョン中

間整理(2016.4.27)においては、これからデジタル

化がますます進展していく社会において、適切な組織

改革やビジネスモデル変革等対策をとらなかった場合

(現状放置シナリオ)、社会全体で735万人の雇用が減

少するとされている。中でも製造や調達など、IoT や

ロボット等の導入により大幅に効率化が進められる職

種においては、仮に先の適切な対策をとった場合(変

革シナリオ)においても297万人分の雇用が取って代

わられるとされている。特に関西地域は製造業の占め

る割合が高く、またその多くが中小企業であることを

考えると、大規模な IT 投資を前提とした業務の改革

をスムーズに実行することは難しいと言わざるをえな

い。また自治体においても、法令や制度に則った業務

の実施にあたっては AI や情報システムの利活用が有

効となる可能性も高い。

 これらの状況を踏まえ、e-Kansaiレポート調査では、

関西圏を中心とする企業・自治体を対象に、AI ・

IoT ・ロボティクスの利活用等今後の新たなデジタル

化の流れの中で、ビジネスや業務、組織体制、求めら

れる人材がどのように変わりつつあるのか、現状と課

題を明らかにする。とりわけ、政府が打ち出す「生産

性改革」や「データ主導社会」実現に向けた政策とも

軌を一にすることで、企業や自治体等における様々な

取り組みを進める上での参考となる資料とする。

 なお、平成29年度においては、企業に対するアン

事業推進グループ マネジャー・首席研究員 石橋 裕基

平成29年度実施事業からの報告

e-Kansai レポート2018~新たなビジネス創出プラットフォームの実現に向けて~

調査結果概要

 一般財団法人関西情報センターでは、平成20年度より、関西地域における情報化の動向を多角的に捉

え分析することで、関西の情報化の問題点や課題を明らかにし、その解決策を提案する調査研究事業

「e-Kansai レポート」を実施している。平成28年度からの 2 ヵ年は、「AI・IoT・ビッグデータがもたら

すビジネス変革」をテーマに企業や自治体等における利活用の実態を調査した。調査の 2 年度目となる

平成29年度は、企業に対するアンケート調査を行うと共に、前年度調査に引き続きAIやIoT、ビッグデー

タ等の利活用を推進している先進事例等についてヒアリングを行った。その結果、今後の AI・IoT・ビッ

グデータ社会における新たなビジネス創出に必要な考え方について取りまとめた。本稿ではその概要を

紹介する。

表1 2017年度 e-Kansai レポート委員会 委員

主査 神戸大学大学院 経営学研究科 教授 原田  勉

副主査 近畿大学 経営学部 准教授 布施 匡章

委員 一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC) 常務理事 坂下 哲也

神戸市 企画調整局 情報化推進部 ICT 創造担当 担当部長 松崎 太亮

株式会社日本総合研究所 関西経済研究センター長 石川 智久

住友電気工業株式会社 執行役員 奈良橋三郎

事務局 一般財団法人 関西情報センター 事業推進グループ

(順不同・敬称略)

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e-Kansaiレポート2018 調査結果概要

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ケート調査とともに、前年度調査に引き続き企業や有

識者へのヒアリング、文献調査等を実施した。これら

の調査結果をもとに、企業・自治体をメンバーとする

「e-Kansai レポート委員会」(主査:原田勉・神戸大

学大学院経営学研究科教授)において議論を行い、今

後の AI・IoT・ビッグデータ社会における新たなビジ

ネス創出に必要な考え方について調査報告書をとりま

とめた。

2.調査結果

(1) アンケート調査

 IT の進展はとどまるところを知らず、様々な技術

や取り組みが企業経営そのものに対し変革(イノベー

ション)を引き起こしつつある。特にビッグデータ分

析については、企業経営に大きなインパクトを与え、

大幅な業務の効率化や新事業・新産業の創出に寄与す

ると期待されている。既に欧米の IT 系企業や大企業

等を中心にビッグデータを利活用した新たなビジネス

創出の事例がメディア等で多数紹介されているが、中

堅・中小企業における際立った成功事例や、多様な業

種における取り組み等に関する情報は十分であるとは

言いがたい。またこういったデータ利活用に取り組む

にあたっての課題や障害に対する分析、対策の検討も

必要である。

 e-Kansai レポートでは、これら「データ利活用」に

着目し、関西地域の中堅・中小企業におけるデータ分

析の導入状況について実態を把握し、その効果要因を

分析することを目的にアンケートを実施した。

対象:近畿 2 府 5 県及び関東 1 都 3 県に本社を置く

従業員50名以上の企業5,300社※いずれも東

京商工リサーチ企業データベースから抽出

送付日:2018年 1 月

回収期間:2018年 1 月~ 2 月

回収数:378社(回収率 7.1%)

1) 企業におけるデータ利活用状況

 はじめに、企業が保有しているデータを何らかの形

で「利活用」し、ビジネス推進面での成果が得られて

いるかどうかを尋ねた。その結果、興味深いことに、

データ利活用を既に進めているところ、及びそれによ

りビジネス活性化などの成果が得られている企業の割

合は、2015年度に実施した同様のアンケート調査結

果と比べ低下している結果となった(図 1 )。これに

ついては、調査におけるサンプルの違いを考慮するた

め、2014年度・2015年度・2017年度全てで回答いた

だいた企業(118社)について、各企業が各年度調査

において回答した結果をトレースしてみた。これによ

ると、2014年度から2015年度にかけては回答が前向

き(より利活用を進める方向)に遷移したのに対し、

2015年度から2017年度にかけては明らかに後ろ向き

図1 企業におけるデータ利活用状況(2015年度~2017年度の比較)

9.3% 6.9%6.9% 27.0%27.0% 27.8%27.8% 15.1%15.1% 10.3%2.1%1.6%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

既にデータを分析するなど利活用し、ビジネスが活性化されるなど成果を得ている

既にデータ分析を始めているが、ビジネス面での成果はまだ得られていない

データの利活用を検討中あるいは予定している

今後、周囲の動向を見てから判断する

データを利活用したいが、課題が多く、現時点では取り組むことが難しい

自社において「AI・IoT・ビッグデータ利活用」は不要である

知らない(分からない)

その他

無回答

21.6% 18.8%18.8% 19.6%19.6% 15.1%15.1% 10.1%10.1% 8.4%3.4% 3.1%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

<2015年度調査> n=357

<2017年度調査> n=378

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e-Kansaiレポート2018 調査結果概要

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の回答に変化したということがわかる。

 しかし、実際には、企業におけるデータ利活用の程

度が後退したというわけではないと考えられる。ビッ

グデータ活用の考え方や事例がより一般的に知られる

ようになった結果、「データ利活用」に対する企業の

捉え方(意識)が変化したものではないだろうか。

 また、回答企業の規模別の分類では、大企業と中

堅・中小企業との間での意識の差が顕著であった。

2015年度の調査結果と比較すると、大企業における

データ利活用度合いよりも、中堅・中小企業における

利活用度合いの下がり方が急であることがわかった。

すなわち、データ利活用度合いが後退した要因は、主

に中堅・中小企業にあると考えられる。

 なお業種別では、製造業や流通業と比べてサービス

業の取組状況が先行している結果となった。

2) データ利活用の成果

 次に、データ利活用について取り組みを進めた(あ

るいは、進めつつある)結果として得られた成果につ

いて、当初の期待と比べてどの程度満足度が得られて

いるかを調査した。

 これについても企業規模による差が顕著であり、と

りわけ中小企業において全般的に満足度が低い結果と

なった(図 2 )。中でも「生産スピード向上」や「新製

品開発」、「在庫減」の各項目についてはスコアが特に

低レベルであった。こういった「満足度」については

期待の大きさを裏返した指標であることもできる。ビッ

グデータ利活用について多くの事例が紹介されるよう

になった昨今、簡単には成果が得られないという点で、

等に中小企業においては、データ利活用は「過度な期

待」を越えて「幻滅期」を迎えているという考え方も

できる(図 3 、テクノロジーのハイプ・サイクル)。

 AI・IoT などの導入にはそれなりの投資が必要とさ

れる。企業経営を行う以上、投資以上の収益が期待で

きなければ、その投資案件は許可されるべきではな

い。非営利の自治体においても、投資収益率を行政

サービスの対投資効果ととらえれば同様であろう。成

果に対する満足度の低さは、データ利活用における投

資収益率、対投資効果が十分に得られていないと感じ

られていることの証左であるかもしれない。

 なお、その他観察された特徴としては、企業の立地

(関東/関西)別において特に関東圏で「防災・

BCP」面での成果について満足度が低い結果となっ

ていること、また流通業において全般的に値が低く

なっていること等が挙げられる。

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%

経営戦略策定売上増大

生産スピード向上製品品質向上新製品開発在庫減

顧客満足度向上業務の見直し販売促進防災・BCP

異常検知・事故・不良品率低減働き方改革(残業の削減等)

その他

2.802.802.182.18

3.003.002.702.702.502.502.332.332.922.92

2.562.562.332.332.252.252.752.75

2.172.173.003.00

大企業

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%

経営戦略策定売上増大

生産スピード向上製品品質向上新製品開発

在庫減顧客満足度向上業務の見直し販売促進防災・BCP

異常検知・事故・不良品率低減働き方改革(残業の削減等)

その他

2.772.772.572.572.912.912.782.78

2.362.362.672.672.732.732.532.532.452.452.382.382.272.272.362.362.672.67

中堅企業

物足りない

期待通り

期待以上

中小企業 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%100%

経営戦略策定売上増大

生産スピード向上製品品質向上新製品開発在庫減

顧客満足度向上業務の見直し販売促進防災・BCP

異常検知・事故・不良品率低減働き方改革(残業の削減等)

その他

2.002.002.002.00

1.441.441.861.86

1.401.401.431.43

2.332.331.861.862.252.252.002.00

2.672.671.711.71

◆:各回答をポイント換算し、平均値をとったもの (期待以上:5、物足りない:1)

図2 データ利活用の成果(企業規模別)

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e-Kansaiレポート2018 調査結果概要

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3) 外部データの利活用等

 データ利活用型社会においては、企業や産業の枠

を越えて各種データを共有することでつながり、新

たなビジネスやサービスを生み出す「Connected

Industries」が重要であるとされている。他社・他団

体が持つデータを相互に利活用し、自社だけでは得ら

れなかった知見をデータ分析により見つけ出し、新た

な製品やサービスの開発に結びつけることが考えられ

る。本調査においては、まず自社ビジネス推進にあ

たって外部のどのようなデータを利用したいかを尋ね

た。その結果「同業他社が持つ業務関連データ」が最

も多い結果となった。

 実質的には、ライバル企業でもある同業他社が有す

る業務データを入手することは難しいと考えられる。

しかし業界として共有することで市場の活性化やユー

ザの利便性が増すような情報等については、一定の条

件のもとで共有することも産業振興の観点からは重要

である。そういった場合には、例えば個人情報の保護

や中立性の確保等も含めた、情報共有を下支えするプ

ラットフォーム機能が求められる。既にいくつかの取

り組みが試行的に立ち上がりつつあることから、ヒア

リング調査においてそういった事例を取り上げ、現状

と今後の展望等を整理することとする。

4) AI・IoT・ロボティクス等を用いた働き方改革に対

する意識

 AI や IoT、ロボット等を活用した働き方改革に関

する設問では、 2 割以上の企業が IT を活用した働き

方改革に既に取り組む一方、「現時点では取り組む予

定はない」という企業も 2 割近く存在した。具体的に

は、モバイル PC やタブレット端末等を用いたテレ

ワークの推進、勤怠管理システムの導入による定時退

社促進等の取り組みが挙げられた。

 また、今後 AI や IoT、ロボティクス等が働き方改

革に影響を与える可能性としては、全体の半数近い企

業が「劇的に生産性が向上し、働き方改革が実現され

る」と回答する一方、「職員の業務が取って代わられ、

雇用が保てなくなる」と回答した企業は 1 割程度で

あった。これについては企業規模別の回答の差が大き

く、特に大企業等では生産性の向上に大きな期待を寄

せている結果となった。

図3 テクノロジーのハイプ・サイクル(2017年)出所:ガートナー・ジャパン、2017年9月

IoT

ビッグデータ

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e-Kansaiレポート2018 調査結果概要

6

(2) ヒアリング調査

 前年度に引き続き、AI や IoT、ロボティクス等を

用いて特徴的な取り組みを行っている企業・団体等に

対するヒアリングを行った。データ連携や新たなビジ

ネス創出の可能性を探る意味で、自社単独での取り組

みもさることながら、他社との連携によるユニークな

ビジネスや、データそのもののやり取りを仲介・促進

する取り組み等についても取材した。今回のヒアリン

グ先及び取組概要、それに得られた意見は以下の通り

である。

1) 企業組織のあり方

・ IT を上手に活用する企業とそうでない企業の違い

は、きちんと目標や効果にフォーカスができてい

るかどうかだ。プロジェクトマネージャーの権限

が重要。必ずしもトップダウンである必要はなく、

正しく権限委譲ができていること。(ワークスアプ

リケーションズ)

・企業の情報システム部門は、うまくやれば最も戦

略的に立ち振る舞えるところだ。しかし多くの

No. 企業名等 概  要1 株式会社マナビス 飲食店向け仮想マーケット「キビタス」を運営。店舗が来店客をモバイル上のオンラインサービス

に誘導したり、オンライン会員を実店舗に誘導する O2O マーケティングを実現。2 バックテック

株式会社簡易かつ正確に腰痛の原因を診断できる「ポケットセラピスト」を運営。企業向けに B2B でサービスを提供し、健康経営を促す。

3 データ流通推進協議会

2017.11設立。政府 WG の検討を踏まえ、データ提供者が安心してスムーズにデータを提供でき、利用者が欲するデータを容易に判断して収集・活用できるための技術的・精度的環境を整備することを目的に各種議論・検討。

4 ワークスアプリケーションズ株式会社

人工知能型 ERP パッケージ「HUE」により、企業内に眠る膨大な業務のログを解析・学習。必要な情報を提案し、またあらゆる業務を先回りして完了させることで、人のオペレーションコストを劇的に低減できる。

5 株式会社三菱総合研究所

川崎市・掛川市で2016年に実施した実証実験成果をベースに、32自治体が参加する形で地方自治体における AI スタッフ総合案内サービスをさらに実証。チャットボットが市民からの問い合わせに応対し、適切な情報サイトへ案内する。

6 quatre(キャトル)株式会社

メーカーがマーケティングのために各種製品をサンプル提供する際、ホテルやフィットネスクラブ等施設の顧客属性をあらかじめ登録しておくことで、的確な商品を案内できる「aircatalog」を運営。施設側も顧客サービスの一環としてよりよい製品を紹介できる。

7 株式会社ウィファブリック

IT 化が遅れている衣料業界を対象に、膨大な在庫(デッドストック)の解消を目指した「SMASELL」を運営。 B2B の取引サイトを運営。在庫を処分したい企業と必要とする企業をつなぎ、中抜きによりコストを削減する。

8 サンプラスチックス株式会社

スマートファクトリー実現に向け、生産状況の可視化共有化システムを構築・運用。生産設備・体制拡充に伴う歩留まり悪化を防ぐため、製品の不良発生に対する異常発生個所を直ちに特定できる仕組みを構築。

9 ウフル株式会社 IoT でデジタルトランスフォーメーションを実現するため、コンサルティングからマーケティングまでワンストップで提供。企業間のデータ連携やビジネス連携により地域課題を解決する取り組みにも積極的に参画。様々な工程のすべての課題は「境目」にある。

10 サイボウズ株式会社 「働き方改革」の急先鋒。日本は人件費を絞りすぎた。新たに創造的な仕事を行うためには仕事一辺倒ではだめ。会社の財産以上のものを生み出すため、他のことをやる時間を(自分で)作り出す必要がある。

11 株式会社ランドログ IoT を用いて建設・土木生産プロセスの変革を加速させるオープンプラットフォーム(プロセス全体のデータ蓄積・共有が可能)。

12 パナソニック株式会社

IoT をビジネスとして展開しているケース多数。とりわけ新製品開発の段階でも、これからは大企業であっても1社単独での取り組みには限界がある。情報システム部門も守りから攻めへの転換が必要、そのためには経理部門や人事部門の快活も必要。

13 サインポスト株式会社

金融機関向けコンサルティングサービスから発展させ、自社開発 AI による無人レジサービスや文字読み取りサービスを展開中。

14 株式会社今野製作所 金属加工中小企業3社が「つながる町工場」プロジェクトを実施。徹底した業務分析とデザイン思考によるビジネスモデル検討の結果、提案力や設計力が競争力であるとし、それを下支えする顧客管理サービス部分を共通化・高度化した。

15 住友電気工業株式会社

モノづくり力強化のため、まず設備の稼働率など基本管理項目の「見える化」から着手。データが蓄積されたことから、品質向上の取り組みへと進化させた。最新の IT を活用し、企業業績を上げるという情報システム部門の基本的な役割は変わっていない。その中で、事業部からの実質的な相談件数は確実に増えている。

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e-Kansaiレポート2018 調査結果概要

7

 日本企業の場合、単に「システム運用部門」になっ

てしまっていることが多い。(サイボウズ)

・これからの情報システム部門は守りから攻めへ転

換すべき。ただしこういった業務の転換は、経理

と人事の改革がついてこないと難しい。「モノ経理」

から「コト経理」へ、「ポジション人事」から「タ

レント人事」へ。(パナソニック)

・ IT ベンチャー企業においては、経営者(創業者)

のアイデアを柔軟かつ迅速にビジネスモデル化す

るため、システム開発を自社内で実施する例が多

数。(バックテック、quatre、ウィファブリック等)

2) 働き手の不足と AI・IoT 利活用の重要性

・人口減少による働き手不足の影響により、行政サー

ビスの維持はすでに困難になってきている。いか

に行政サービスを維持するか、職員の生産性向上

が必須。そのためには AI や IoT など、使える技術

は総動員しなければならない。(三菱総研)

・土木・建設業界をはじめとして、人手不足はこれ

からより深刻になる。小規模事業者も生産性を高

める必要がある。データを軸としたビジネス・エ

コシステムが極めて重要だ。(ランドログ)

3) 新事業・新ビジネス創出

・ IT ベンチャーであっても、必ずしも創業者(経営

者)がもともと IT に詳しかったわけではない。解

決したい課題やビジネスアイデアを形にする上で、

IT 担当者としっかり組んでビジネスを設計。(バッ

クテック、quatre、ウィファブリック等)

・海外ベンチャー企業との提携を積極的に推進。 VB

が単独で技術だけを売り込んでも現場には採用さ

れない。豊富な業務知識を持って、その技術が活

用・転用できる場をいかに見出すことができるか

がポイント。(サインポスト)

* 「人が動いて『面倒くさい』と感じるところ」「現在

の仕事にフラストレーションを感じるか否か」に

IT 導入、データ活用の価値の源泉があると考え

 る。(quatre、サンプラスチックス)

・世の中のビジネスにおける課題は、あまねく「境目」

に存在している。プロセス間、企業間、産業間を

以下に IT やデータで接続するか。こういった考え

方を経営者が持てるかどうか。これからのビジネ

スマンは複数のスキルを持つ必要がある。(ウフル)

・各社の強み・弱みを洗い出すとともに、プロセス

分析により協調領域や個別課題・共通課題等を徹

底的に分析し、ビジネスモデルキャンバスによっ

て新たな顧客価値を見出すための取り組みを検討

した。(今野製作所)

4) 企業におけるビジネス創出をサポートする仕組み

・ビジネスプラットフォームはオープンな環境にす

べき。この「オープン」は「無料」という意味で

はない。ビジネスの循環によりプラットフォーム

自体が潤う仕組みが必要。(ウフル)

・企業間のデータを取引仲介する仕組みは、個人情

報保護法の改正などもあって今後徐々に整ってく

ると考えている。(データ流通推進協議会)

(3) 調査委員会での議論

 アンケート・ヒアリング調査と並行して、e-Kansai

レポート調査委員会の場等において委員からの意見聴

取を行った。特に「イノベーション創出プラット

フォーム」に関連し、各委員の取り組みや知見等に基

づき聞き取りを行った。

原田主査(神戸大学大学院)の意見

・企業や自治体が AI ・IoT 等に代表される情報化投

資の適用領域を検討する上で重要になるのは、①

投資収益率、②データ収集の頻度・量、③定型的

意思決定の程度、である。

・データの利活用による学習によっていかにして成

果につなげていくのかという学習アルゴリズムが

必ずしも明らかではない。 IoT や AI などの高度な

情報化投資に際しては、事前にどのような投資を

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e-Kansaiレポート2018 調査結果概要

8

 するのかについて、絶えず投資収益率を念頭にお

きながら領域、規模、タイミングを決定していく

必要がある。

・現時点では、AI が活用されるべき領域は、大量・

高頻度データがほぼ自動的に収集され、それに応

じて高頻度のアクションが求められるような事業

環境であると考えられる。

・機械学習を活用した意思決定は、目的や評価基準

が明確であり、統計的なパターン認識が加納な領

域で有効である。

・ AI の開発・活用に大規模な投資ができない企業に

とっては、意思決定の定形化の程度が高く、大量・

高頻度データが利用可能であるところから限定的

に始めることが望ましい

布施副主査(近畿大学)の意見

・アンケートデータを用いて企業の組織要因から分析

した結果、データ活用にはデータの共有体制と方針、

企業の枠を超えたデータ活用の考えとの相関が認め

られた。また、ITによる働き方改革の取り組みには、

データの共有体制と方針、データ活用の中心的な役

割との相関が認められた。さらに、データ活用の課

題としては、「データの所在が明らかでない」、「デー

タを取り扱う規定・方針がない」、「費用対効果の比

較ができない」、「データ品質・量の不足」、「個人情

報が厳格で活用できない」であった。

・現在の人口減少・少子高齢化による労働人口減少

社会では、AI をはじめとする IT システムが、業

務効率化を目的にビジネス領域に導入されている

が、新たな価値の創造については、IT とデータ活

用はもちろんのこと、サービスデザインといった新

たな商品開発・サービス設計の思想が必要となる。

・ AI や IoT はツールであって、顧客視点からのサー

ビス設計に必要に応じて用いるものである。これ

までの経験と勘による経営から、顧客視点の徹底、

新たなアイデア創出によるサービス設計への転換

を行い、データ活用による製品やサービスの高付

加価値化が進展することこそ、攻めの IT 投資の成

果を得ることができると考える。

松崎委員(神戸市)の意見

・神戸市では、市民と行政が協働して地域課題を解

決するサービスを創っていく取り組みを推進して

いる。目指すべきオープンガバメントの姿として、

「IoT 活用実証、データ活用環境整備」「IoT 人材

育成、スタートアップ育成」「地域課題解決、働き

方改革」を掲げている。地域でイノベーションが

生まれやすい環境として、全世界のスタートアップ

育成機関(ベンチャーキャピタル等)を積極的に誘

致し、神戸からの事業創出を戦略的に推進している。

・また、人材育成として、神戸データアカデミーな

ど市職員におけるデータ利活用リテラシー向上に

向けた活動も行っている。

・地域では Code for Kobe など地域の IT 技術者等に

よる課題解決コミュニティができてきている。こ

こにいろいろな企業や関連機関が相乗りし、実証

的な取り組みを進める素地ができている。

坂下委員(JIPDEC)の意見

・個人情報保護法の改正、官民データ活用推進基本

法の整備、センサー等の技術進展などによってデー

タ利用は活発になっている。例えばレセプト情報

の活用による医療・製薬関連企業等ビジネスの活

性化や、自治体の学力・学習状況調査データ等の

活用による地域学習力アップ政策への展開等が期

待されている。

・国でも、IoT の進展により流通量が爆発的に増え

ているデータについて、産業における競争力強化

や社会課題解決に向けた利活用を促進するための

仕組みを支援する政策がとられている。

石川委員(日本総合研究所)の意見

・関西では、京阪神各都市でオープンイノベーショ

ンのプラットフォームが作られつつある。アジア

への距離が近いということもあり、ビジネスチャ

ンスとして今後内需型の発展が見込まれるアジア

は大きな市場である。

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e-Kansaiレポート2018 調査結果概要

9

・ベンチャー・エコシステムとイノベーション・エ

コシステムは密接に関連する。

・大学の技術をうまく民間に移転する、国プロ技術

を民間に移転するなど企業の技術力を高めるとと

もに、各種のベンチャープラットフォームを有効

活用し、定常的に関西から新技術・新ビジネスが

生み出される素地を作り出すことが重要。

奈良橋委員(住友電気工業)の意見

・最新の IT を活用し、企業業績を上げるという情報

システム部門の基本的な役割は変わっていない。

その中で、事業部からの実質的な相談件数は確実

に増えている。

・ モノづくり力強化のため、まず設備の稼働率など

基本管理項目の「見える化」から着手。データが

蓄積されたことから、品質向上の取り組みへと進

化させた。

・ IoT でなければ解決できない課題が増え、かつ着

実に成果をあげてきたことで、ようやくビッグデー

タや IoT が市民権を得たるようになった。

3.結論・まとめ等「新たなビジネス創出プラットフォーム実現に向けた提言」

 アンケート・ヒアリング及び委員会での議論を経

て、今後の AI・IoT・ビッグデータ社会における企業

ビジネスや地域活性化の取り組みを推進する上で重要

なポイントを整理した。

(1) 顧客視点に立った、新たな価値の創出(サービ

スデザイン等)

 「人が動いて『面倒くさい』と感じるところ」や、「現

在の仕事にフラストレーションを感じるか否か」とい

うポイントにこそ IT 導入、データ活用の価値の源泉

がある。これをビジネスとして成立させるためには、

顧客やユーザの立場に寄り添って、課題を見出す

「サービスデザイン」の考え方がより重要となる。

 また世の中のビジネスにおける課題は、あまねく「境

目」に存在している。プロセス間、企業・組織間、産

業間を、ITやデータによりいかに接続するか。こういっ

た考え方を経営者が持てるかどうかがポイントとなる。

(2) データ利活用社会における企業組織のあり方

 組織的に、きちんと目標や効果にフォーカスができ

ているかどうかが重要である。すなわち正しく権限委

譲ができているかがポイントとなる。企業の情報シス

テム部門は、うまくやれば最も戦略的に立ち振る舞え

るところである。これからの情報システム部門は「守

り」から「攻め」へ転換すべきであろう。ただしこう

いった業務の転換は、現場や IT 部門だけの取り組み

ではうまくいかず、経理と人事の改革がついてこない

と難しいと考えられる。

 ただし、現時点では多くの企業において、データの

利活用による学習によっていかにして成果につなげて

いくのかという学習アルゴリズムが必ずしも明らかで

はない。 IoT や AI などの高度な情報化投資に際して

は、事前にどのような投資をするのかについて、絶え

ず投資収益率を念頭におきながら領域、規模、タイミ

ングを決定していく必要がある。

(3) 働き手の不足と AI・IoT 利活用の重要性、企業連

携(エコシステム)の重要性

 人口減少による働き手不足の影響により、行政サー

ビスを含め、様々なビジネスの維持は困難になる。過

疎地の自治体や建設・土木の現場等に限らず、これま

で人間が行ってきた作業や労働を AI・IoT・ロボット

等に置き換えていくことは、社会的な要請として必須

になる。使える技術は総動員しなければならない。

(4) イノベーションを生み出すプラットフォームの

重要性

 上記(1)~(3)は、各企業や個々の組織が取り組むべ

き課題である。一方で、こういった企業の取り組みを

進めやすくするための社会的・制度的な基盤づくり

や、これらの企業等により組織の枠を超えた連携をサ

ポートする仕組み等について、共通的なプラット

フォームの必要性が考えられる。さまざまな主体が参

画し、イノベーティブなビジネスや取り組みを生み出

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e-Kansaiレポート2018 調査結果概要

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していく機能を、地域で作り上げていく必要がある。

 各自治体等で具体的に取り組みが進むベンチャー支

援やビジネス創出サポートの活動などに関する情報を

適切に連携するとともに、ビジネス上のデータを取引

できる市場機能の整備など、関西地域からの新事業創

出を促す取り組みが重要である。個人情報保護法の改

正など、環境は整いつつある。

4.今後の調査の方向性

 現在、政府が提唱している「Society 5.0」とは、デー

タ活用等によって、新たな価値を創造することと、人

間がより人間らしく生活できるようになることを目指

すものである。今後の人口減少社会において、商品や

サービスの高付加価値化と働き方の見直しは、すべて

の企業における喫緊の課題である。 AI や IoT、ロボ

ティクスを活用し、ビジネスや暮らしに絶え間なくイ

ノベーションを生み出す必要がある。

 今回の調査で指摘したのは、そういったイノベー

ションを生み出すために「個々の企業や組織が取り組

むべきポイント」と、「社会基盤として必要となるも

の(こと)」である。

 前者については、まず各企業や組織が新たなサービ

スや事業を生み出すため、サービスデザイン等による

イノベーティブな発想を身につけることが重要であ

る。また新ビジネスの創出・実施に必要となる組織の

改革はもちろんのこと、投資対効果を的確に判断し意

思決定を行うことなども求められる。

 後者の社会的な共通基盤については、今回の調査で

指摘したデータ流通基盤の他に、安全・安心なビジネ

スを展開する上で重要となるセキュリティ基盤や決済

基盤などの取り組みが考えられるだろう。またこれら

技術的な取り組みだけでなく、各地で推進されている

ビジネス創出活動等の成果情報を共有したり、産学官

連携等で関わる人的なネットワークを共有したりする、

社会的な情報共有プラットフォームの方向性について

も指摘したい。これらの詳細な機能や具体的な取り組

みについて、今後の調査研究課題としたいと考える。

 もともと関西地域は、インスタントラーメンやカラ

オケ、自動改札機、家庭用ゲーム機など、世の中を変

えるイノベーティブなビジネスや製品が数多く生み出

されてきた地域である。関西のポテンシャルを活かし、

再度「イノベーション創出地域・Kansai」としての地

位を確立することが重要である。現在招致活動中であ

る2025年万国博覧会は、この動きをドライブさせる

重要なイベントになると期待される。

業務経歴

石橋 裕基(事業推進グループ マネジャー・首席研究員)

・ 電子自治体の構築に向けた課題についての調査研究(2002)

・ NIRA 型ベンチマーク・モデルを活用した政策評価システムおよび行政改善への提案に関する研究(2003~)

・ 滋賀県データセンター機能構築基本調査(2003)・ 自治体における電子申請システムに関する調査研究

(2003)・ 利用者の視点に立った電子自治体エージェントシステ

ム実現に向けた調査研究(2004)・ 共同利用型自治体版 CRM 実現に向けた研究会(2004)・ 地域再生計画認定制度等の事後評価に関する調査(2005)・ 近畿地域産業クラスター計画「関西フロントランナー

プロジェクト『ネオクラスター』」事業(2006~2008)・ 近畿地域イノベーション創出共同体形成事業(2008~

2009)・ 未来型情報家電分野における川上・川下ネットワーク

構築事業(2009)・ e-Kansai レポート(2010~)・ 次世代電子・エネルギー技術産業ナンバーワン戦略プ

ロジェクト(プロジェクト NEXT)(2010)・ 東大阪市内企業の環境ビジネス参入に向けた調査(2010)・ 情報家電系組込み産業振興ネットワーク活性化事業

(2011~2012)・ 関西新エネルギービジネス創出ネットワーク事業

(2011)・ 地域主権時代における現代版井戸端会議導入によるコ

ミュニティマネジメントの実証研究・研究会支援業務(2012~2014)

・ IT 融合ビジネスパートナーズ事業(2013~2014)・ 四国地域情報セキュリティ人材育成推進事業(2013)・ オープンデータ・ビッグデータ利用推進フォーラム

(2014~)・ IoT/IoE のビジネス環境とその発想を促す試行的ワー

クショップによる産業育成方策に関する調査(2014)・ KIIS サイバーセキュリティ研究会(2015~)・ IT 分野における先進的知財アイデア(新 IT 知財)応

用商品事業化促進調査(2015)・ ビッグデータの関西地域機械産業への活用方策に関す

る調査(2015)・ IT 分野における先進的知財アイデア(新 IT 知財)応

用商品事業化促進調査(2016)・ 関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調

査(2017)・ IoT 等導入による中堅・中小製造業の複数社間データ

連携支援スキーム構築に向けたモデル調査(2017)

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1.事業背景と概要

 我が国のサービス産業は、国内 GDP の約75% を占

めており、サービス産業の生産性向上は我が国経済の

持続的な発展にとって非常に重要な課題である。国に

おいても、「日本再興戦略2016」のなかで、サービス

産業の生産性向上を官民戦略プロジェクトの一つに位

置付けている。経済産業省においても、「効率の向上」

と「価値の向上」の観点から、「サービス等生産性向

上 IT 導入支援事業」など様々な施策を講じており、

サービス業の生産性向上に向け今後ますます各施策の

認知・活用促進を徹底していく意向である。一方、平

成28年度に近畿経済産業局が実施した「IoT 等を活用

した食関連サービス等における競争促進策に関する調

査」では、ITによる生産性向上を期待しつつも、導入・

活用の具体的方法がわからず導入を躊躇している実態

が明らかとなった。そのため、サービス業における

IT 利活用の実態を把握するとともに、地域の支援機

関・金融機関とも連携し、関西の事業所数の約 8 割を

占める中小・小規模サービス事業者への支援を強化し

ていく必要がある。そこで、本事業では上記支援施策

の活用状況やその効果、更にはサービス事業者の生産

性・付加価値向上に関する取組及び課題、支援機関及

び金融機関との連携状況等について、施策利用者等に

対するアンケート及びヒアリング調査による実態把握

及び検証を行った。また、既に新しい未来社会の可能

性を示すハイサービスを提供している先進事例につい

て、ヒアリング調査により特徴及び要因の分析を行っ

た。さらに、上記の調査を踏まえ、今後のサービス業

の生産性・付加価値向上に係る支援の在り方の検討を

行い、提言の取りまとめを行った。

2.事業実施概要

 本調査は 4 つの事業により構成される。(1)IT 導入

促進に係る課題の整理・分析、(2)新しい未来社会の

可能性を示すハイサービスのプレイアップ及び分析、

(3)生産性・付加価値向上のためのサービス関連施策

の周知と企業の現状把握・分析、(4)有識者による検

討会議の開催である。これらの事業を実施し、報告書

および事例集の作成を行った。図 1 は各事業の相関図

である。

 以下に、各事業の実施結果を記載する。

(1) IT 導入促進に係る課題の整理・分析

1)アンケート調査の実施

「サービス等生産性向上 IT 導入支援事業(平成28年

度補正予算)」の一次公募の管内(近畿)「採択事業者」

(主に IT を利活用するサービス事業者:1,336事業所

のうち、補助事業を実施していない事業者を除いた

1,260事業所)および「IT 導入支援事業者」(主に IT

ベンダー:約100事業所)に対するアンケート調査を

実施した。回収率は採択事業者:472者、回収率:

37.5%、IT支援事業者:40者、回収率:36.0%であった。

アンケート調査によって特徴的であった結果について

以下に記載する。

■採択事業者向けアンケート調査 (n=472)

 主に、IT 導入に関する生産性向上の効果や、導入

に至るきっかけ、導入をする際に支援を受ける機関や

導入にあたっての課題、求めている支援についての調

事業推進グループ 研究員 長尾 卓範

平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査

 当財団では、平成29年度近畿経済産業局委託事業として、「平成29年度関西のサービス業の生産性・

付加価値向上に関する調査」を実施した。本事業は中小・小規模サービス事業者の IT 導入の実態把握

を行うとともに、生産性向上に資する IT 導入・活用促進における課題の抽出等を行った。本稿では今

回の調査概要及び提言の概要について紹介する。

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平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査

12

査を行った。以下に、特徴的であった結果を抜粋して

掲載する。

・生産性向上に IT は有効な手段である。

IT導入支援事業で実現見込みのある効果(複数回答)

売上アップ

コストダウン

利益アップ

関連業務の従事時間削減

・IT 導入のきっかけとなるのは、「IT 企業からの売

り込み」が中心である。

IT導入のきっかけ(複数回答)

IT企業からの売り込み

他社での成功事例を参考

支援機関や金融機関からの紹介

セミナー・講演会に参加

社員からの提案

その他

わからない

・IT 導入の際には、士業専門家など、身近な支援機

関を頼る傾向にある。

IT導入時の相談・支援先(複数回答)

商工会議所/商工会

よろず支援拠点

ミラサポ登録専門家

中小機構

府県・市町村の相談窓口

税理士、中小企業診断士等 銀行

信用金庫

信用組合

ITコーディネーター

その他

・IT に関する人材不足、情報不足や費用対効果が不

明確であるという課題を抱えている

IT導入時の課題(複数回答)

IT活用能力の高い人材不足

費用対効果が不明確

IT活用のための現場体制整備

ITサービス内容の情報・知識不足

情報セキュリティ等のリスク対応への不安

設備投資等の初期投資資金不足

ランニングコスト等の資金不足

導入済のシステムとの連携が困難

信頼できるIT事業者が分からない

システム事業者の情報・知識不足

同じような製品が多すぎて選べない

相談先が分からない

求めるIT等サービスの提供が無い

法規制・許認可等への対応が困難その他

わからない

図1 各事業の目的と各事業の関連性

IT導入促進に係る課題の整理・分析サービス事業者、IT導入支援事業者、支援機関、金融機関へのアンケートやヒアリングを通して、サービス事業者のIT導入の実態と課題を抽出する。

新しい未来社会の可能性を示すハイサービス事業者のプレイアップ及び分析他社の生産性向上に役立つサービス事例の収集を行う。

有識者による検討会議各事業に対する意見および結果を踏まえた生産性向上に資する提言のとりまとめ。

生産性・付加価値向上のためのサービス関連施策の周知と企業の現状把握・分析IT導入による生産性向上の事例を周知するとともに、経済産業省、総務省が実施している生産性向上に資する支援施策の周知を行う。また、フォーラム参加者に対して、主にITを活用した生産性向上の取組等についてのアンケート調査を実施し、実態を把握する。

提言 事例集

事業に対する意見 結果のフィードバック

調査結果 提供すべき内容 事例

ヒアリング ヒアリング

アンケート

検討会議

フォーラム開催

アンケート

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平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査

13

■ IT 導入支援事業者向けアンケート調査(n=40)

・新規顧客開拓の方法は、既存顧客からの紹介が最

も多い。

・顧客からの要望はヒアリングや現場の見学で吸い

上げている。

・顧客ニーズの把握や課題解決に係る人材不足、提

案能力に不安を抱えている。

2)ヒアリング調査の実施

(1)1) のアンケート調査の回答者のなかから、具体

的に導入効果や課題、支援機関及び金融機関との連携

に関する回答があった採択事業者(10件)及び IT 導

入支援者( 3 社)を、さらに、IT 導入などサービス

事業者への支援に積極的な支援機関( 5 者)及び金融

機関( 3 者)をリストアップしヒアリングを実施した。

■「採択事業者」(10者)

 以下に、今回のヒアリングで聞かれた主な意見を掲

載する。

・補助金の有無にかかわらず、IT 導入の相談を持

ち掛けているところに補助金の情報が入り導入の

優先度を上げた。

・経営者自身もプライヤーとして現場に出ており、

施策や IT に関する情報収集をする時間が取れな

い。

・各種施策情報の入手先は、日常的に業務上の付き

合いがある税理士や中小企業診断士等の士業専門

家もしくは IT 企業。

・支援機関ごとで情報の格差が生じている。近場の

支援機関では情報を得ることが出来ず、遠方の支

援機関まで足を運んでいるという意見もあった。

・手探りで IT 導入を行っている状態。他社の導入

事例や IT 導入に関わる情報を求める。

■ IT 導入支援事業者ヒアリング( 3 者)

 中小・小規模事業者の IT 導入に対する課題等をヒ

アリング。以下は共通して得られた意見。

・中小・小規模サービス事業者の IT 利活用には、

経営者の意識が必要である。

■支援機関ヒアリング( 5 者)

 中小・小規模事業者を身近で支援する立場として、

中小・小規模事業者の IT 導入に関する考え方や支援

の実態、支援をする上での課題等についてヒアリング

を実施した。

・最近では経営と IT は密に関係するようになって

きており、支援機関としても IT 活用による顧客

の生産性向上を実現させたい。

・支援を行う上では、事例やツールの見える化が必

要。

■金融機関ヒアリング( 3 者)

・顧客から IT に関する相談を受けることが増えた

ため、積極的に支援している。

・金融機関自身は IT の専門家ではないため、ツー

ルや効果の事例の公開を求める。

(2) 未来社会の可能性を示すハイサービス企業のプ

レイアップ及び分析

1)ヒアリング調査の実施

 サービス産業の生産性向上に寄与しつつ提供して

いるサービス自身が付加価値の高い先進的な企業を

「ハイサービス企業」と定義し、ヒアリングを実施し

た。ヒアリングの結果は、「生産性向上に効く IT

サービス事例集」として取りまとめた。現在、近畿

経済産業局の WEB ページ(http://www.kansai.meti.

go.jp/3-2sashitsu/service/29fy/service_it/jirei.pdf)に

掲載されている。

(3) 生産性・付加価値向上のためのサービス関連施

策の周知と企業の現状把握・分析

 IT を活用した生産性向上に関する事例紹介および

経済産業省、総務省の支援施策を実施するための参加

者100名規模のフォーラムを開催した。

■開催概要

日時:平成30年 2 月 6 日(火)

   14:00~17:00

場所:AP 大阪駅前梅田一丁目 AP ホール 2

   (大阪市北区梅田1-12-12東京建物梅田ビル)

申込数:111名(キャンセル連絡者除)、参加者:103

名(関係者含)

・当日プログラム

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平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査

14

【基調講演】

「中小企業の生産性と IT 経営」

 明治大学 経営学部 教授 岡田 浩一

【取組事例紹介 1 】

「コミュニケーションツール導入による業務改革」

 ChatWork 株式会社 CMO 山口 勝幸

「コミュニケーションツールの導入による生産性向上

事例」

 株式会社ライフケア 代表取締役 一谷 勇一郎

【取組事例紹介 2 】

「本当に儲かるのか?成果を出すための取り組み方」

 color studio A+STYLE 代表 林 由恵

「IT導入補助金を活用した地域のIT導入支援のかたち」

 株式会社ブルーオーキッドコンサルティング

  代表取締役 渡辺 淳

  取締役 野村 陽子

【支援施策紹介】

「経済産業省の支援施策紹介」

 近畿経済産業局 吉田 優輝

「中小企業を対象とした総務省の施策事業の紹介」

 近畿総合通信局 雲林院 英士

(敬称略)

■参加者アンケートの実施

 フォーラム参加者に対して、フォーラム及びサービ

ス業の生産性向上に関する 2 種類のアンケートを来場

者に対して実施した。有効回答数は当日アンケート:

77件、後日アンケート:70件であった。

(4) 有識者検討会議

 サービス業の生産性・付加価値向上に係る支援施策

の在り方について検討を行った。

■検討委員会メンバー

<学識者>

伊藤 宗彦(神戸大学経済経営研究所教授)★座長

<業界団体・サービス事業者>

針谷 了(一般社団法人日本旅館協会会長、株式会

社湯元舘 代表取締役会長)

中井 貫二(一般社団法人大阪外食産業協会副会長

千房株式会社専務取締役)

<支援機関>

生田 勝(特定非営利活動法人 ITC 近畿会理事 兼

事業委員長)

小宅 誠司(公益財団法人関西生産性本部専務理

事・事務局長)

竹中 篤(一般財団法人関西情報センター理事・事

業推進グループマネジャー)

<金融機関>

高垣 壮(株式会社池田泉州銀行リレーション推進

部長)

福岡 亮(株式会社京都銀行公務・地域連携部 次

長 兼 地域活性化室次長)

 (順不同、敬称略)

表1 ハイサービスヒアリング企業一覧企業名 概要

ACALL 株式会社 「OMOTENASHI」エンジンにより、ビジネス来客対応プロセスを自動最適化する「ACALL」の提供。

シビラ株式会社 様々な分野で活用が期待されるブロックチェーン技術の研究開発。株式会社だんきち 時間、場所に関係なくプロスポーツ選手からスポーツレッスンが受けられるサービスの提

供。ChatWork 株式会社 ビジネスチャットツール「チャットワーク」の提供。株式会社ナスピア 細やかな学習ログ収集が可能な e ラーニングシステムの提供。株式会社農業総合研究所 農家と生活者を直接つなぐプラットフォームの構築。株式会社フェイスクリエイツ WEB スタンプラリーを無料で作成できるツールの提供。株式会社みちざね スクール運営業務に係る様々な効率化する仕組みの提供。株式会社ミライセルフ 個人の性格と社風を見える化し、採用や人材配置におけるミスマッチ解消を支援するサー

ビスの提供。株式会社リンクアンドシェア 食品流通において、買い手と売り手を直接つなぐプラットフォームの提供。

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平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査

15

■第 1 回有識者会議

 各機関における生産性向上の支援に関する取り組み

の紹介。

日 時:平成29年12月13日(水)

10:00~12:00

場 所:一般財団法人関西情報センター 第 1 会議室

参加者(15名)

■第 2 回有識者会議

 調査報告書の素案をもとに、今後の支援施策の在り

方に関する議論を行った。

日 時:平成30年 2 月16日(金)

10:00~12:00

場 所:一般財団法人関西情報センター 第 1 会議室

参加者(13名)

3.中小・小規模サービス事業者の IT 導入による生産性向上実現の課題と提言

(1) 中小・小規模サービス事業者の IT 導入促進にお

ける課題

 アンケート結果とそれに基づくヒアリング結果、有

識者検討会議の議論の結果、中小・小規模事業者等が

生産性向上を目指し IT 導入を図るための 4 つの課題

が浮かび上がってきた。これらについて以下に詳述する。

課題 1 .中小・小規模サービス事業者の IT に対す

る的確な知識・情報の不足

 中小・小規模サービス事業者の多くは経営者を含む

すべての人員が本業にリソースを割かれており、IT

導入の優先度が低く設定されており、IT 導入により

どういった効果が期待できるか、どういったツールが

有るかという情報を持ち合わせていない可能性があ

る。こういった事業者に対して、既に成果を上げてい

る事例等を踏まえながら、中小・小規模サービス事業

者の IT 導入の重要性を具体的に示し、IT 導入に対す

る意識を変えていくことが中小・小規模サービス事業

者の IT 導入促進には必要となる。また、IT 導入の重

要性を認識した中小・小規模サービス事業者が導入を

検討・判断し具体的な第一歩を踏み出すために必要な

情報も合わせて提供する必要がある。

課題 2 .中小・小規模事業者に対するより具体的な

改善指導、IT 導入指導の必要性

 中小・小規模サービス事業者が具体的に IT 導入や

活用をしていくと決めた後も、自社内で IT 導入を推

進する組織を立ち上げることや、IT に精通した専任

者を確保することが難しい。そのため、中小・小規模

サービス事業者が自社のみで効果的・効率的に IT を

導入することが困難である。また、経営者自身が日常

的な店舗運営業務や施術等に多くのリソースを割いて

おり、全体最適の視点で事業を俯瞰視できていない可

能性もある。こういった中小・小規模のサービス事業

者に対して、業務全体を俯瞰し、業務の全体最適を図

る中で必要に応じた IT 導入を指導できる人材を外部

から派遣する等の仕組みを提供することで、IT に関

する知識が不足しがちな中小・小規模サービス事業者

に対して適切な IT 導入を指導することが生産性向上

に効果的である。

課題 3 .IT 企業のサービス事業者に対する提案能力

の向上の必要性

 サービス業に含まれる業種は、非常に多岐に渡る。

当然各業界において、市場概況や商習慣、法規制、業

務プロセス等が大きく異なり、事業者が業務上抱えて

いる問題や課題も千差万別である。そのため、IT 企

業は、顧客とするサービス事業者の業務内容を十分に

理解した上で、サービス・製品の企画開発、最適なソ

リューションの選定・提案等を行っていくことが求め

られる。しかし、IT 導入支援事業者(IT 企業)向け

のアンケートの結果によると、多くの IT 企業では、

顧客ニーズを把握するために顧客へのヒアリングを積

極的に行っているという回答がほぼ全社から得られた

一方で、顧客が求める製品・サービスの企画・開発能

力に不安があると回答した企業が多く存在した。より

サービス事業者の実態に即した製品・サービスの提

案、企画開発能力を身につけるための土台として、IT

企業がサービス事業者の業務を、ヒアリング以上に理

解できる OJT 的な業務理解が求められる。

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平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査

16

課題 4 .中小・小規模サービス事業者と接点を持つ

機関の情報不足・情報格差

 今回の調査で、中小・小規模サービス事業者が IT

導入や支援施策等に関する相談を持ちかけるのは、税

理士、中小企業診断士等の士業専門家や金融機関等の

業務上日頃から付き合いのある機関や企業が中心と

なっていることがわかった。また、むしろそういった

業務上の関わりを持っており、信頼のおける機関や企

業、専門家からの提案がきっかけで IT 導入を考え始

めるケースも多数存在する。一方で、中小・小規模事

業者に対して様々なアドバイスを行っている支援機関

において、それぞれの所有するノウハウや情報量に格

差が生じていることもわかり、情報を持っていない機

関としか付き合いのない中小・小規模サービス事業者

は各種の情報を収集できない環境に置かれているとい

う実態が明らかになった。そこで、中小・小規模事業

者を支援する企業や機関に対する IT 導入に関するノ

ウハウや支援施策情報の提供を強化することで、情報

提供側の知識のレベルアップを図るとともに、各種の

支援施策等の情報が行き届く体制を強化していく必要

がある。

(2) 生産性向上に資するサービス業への IT 導入促進

策(案)

 (1)で述べた、 4 つの課題に対応するためには、IT

企業と中小企業・小規模事業者(ユーザー)間の情報

の非対称性を是正すること、すなわち、ユーザに寄り

添う支援機関も含めた IT 導入の情報を共有する場

(プラットフォーム)が必要となる。このプラット

フォームでは、生産性向上を実現するために IT は有

効な手段であるということを周知することで、サービ

ス事業者はもとより、サービス事業者を支援する機関

や企業に対しても IT を活用した生産性向上に取り組

む意識を醸成する。そのうえで、支援の対象となる事

業者の IT 導入に向けたより具体的な支援を実行して

いくことがプラットフォームには求められる。

(3) 地域プラットフォームの具体的機能

 上記の分析を踏まえ、地域におけるサービス事業者

の生産性向上を目指した地域プラットフォームの機能

を規定すると、以下のような機能が中小・小規模サー

ビス事業者のIT導入による生産性向上に必要であろう。

1)IT ツール・導入事例・支援施策の見える化

 中小企業が IT 導入を検討・判断するうえで、他社

の導入事例(具体的なツールや成果詳細)についての

情報を得ることは極めて重要である。こういった情報

を一元的に整理し、だれでも閲覧できるようにするこ

とが望ましい。 IT に関する情報に加え、各支援機関

がどのようなサポートを行ったか等の情報も盛り込む

ことができれば、中小・小規模サービス事業者にとっ

ても導入に向けた第一歩を踏み出しやすくなる。

2)支援機関を対象とした IT ツール・導入事例、施策

説明会の実施

 認定支援機関等を対象として、国や自治体等が推進

する各種施策や、生産性向上に大きな効果を上げてい

る具体的な IT ツール及び導入事例に関する情報提供

の場を設けることが望ましい。特に士業専門家は日常

的に中小・小規模サービス事業者の経営者と接する機

会の多い職種である。こういった専門家に各種支援施

策や IT に関する情報を提供することで、施策周知や

IT に関する情報が様々な事業者にいきわたるように

なる。

3)支援機関および業界団体と連携した IT 企業とサー

ビス事業者のマッチングイベント、セミナーの開催

 支援機関や金融機関においては、地域のサービス事

業者に加え、地域の IT 導入支援事業者を支援してい

ることも多い。そのため、支援している事業者同士の

マッチングを行い、IT 導入を促進していくことが望

ましい。こういった業務上日常的に付き合いのあり、

そういった支援機関・金融機関からの紹介という形で

あれば中小・小規模サービス事業者としても商談や導

入に対する心理的なハードルが下がると期待でき、導

入につながる可能性が高くなると考えられる。

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平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査

17

4)生産性向上を実現したサービス業の事例を一覧で

きる環境の提供

 今回の調査においても、先進的な活動やサービスを

提供している企業が多く発掘された。これらのサービ

スやツールの事例をわかりやすく提供していくこと

で、周囲の企業に対する刺激を与えるとともに、新し

いビジネスアイディアの創出につながる可能性も出て

くる。また、こういったサービスを利用することで、

サービス事業者の生産性がより向上する可能性もある。

5)支援機関と連携した生産性向上に向けた現場改善

専門家の派遣

 中小サービス事業者における IT 導入の可能性を見

極め、より具体的なアドバイスを行うため、サービス

業の生産性向上ノウハウを有する専門家や、製造業に

おいて生産・工程管理、また 5 S(整理、整頓、清掃、

清潔、しつけ)などを経験した専門家を事業者に派遣

する。加えて、専門家に対し定期的に IT 研修や施策

研修等を行うことで、専門家自身の知識やノウハウの

陳腐化を防ぐことも重要である。

6)サービス業の取り組み現場を理解するためのイン

ターンシップ事業

 先述したように、IT 企業等がサービス事業者に対

して効果的な IT 導入提案を行うためには、そのサー

ビス業の業態や現場の状況、ワークフロー等を熟知し

ておくことが重要である。例えばこれから対象とした

いサービス業界に対し、IT 企業からサービス事業者

に職員を派遣し、業務の現場を体験させるインターン

シップの取り組みなどが実現できれば、業務ノウハウ

を生かした適切なシステム開発につなげられることが

期待できる。また、異業種の現場に触れ、生産性向上

の取り組みを理解することで、自社の生産性向上につ

ながる可能性も出てくる。

業務経歴

長尾 卓範(事業推進グループ 研究員)

2017年 7 月入職・サイバーセキュリティ研究会担当(2017~)・ビジネスイノベーションセミナー担当(2017~)・関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関す

る調査 担当(2017.9~2018.2)・破壊的イノベーションがもたらすデジタル社会研

究会 担当 (2018.4~)

図2 中小・小規模事業者における IT 導入に向けた 4 つの課題と支援施策

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1.社会インフラ老朽化という社会課題と研究会の目的・構成

 橋梁等の社会インフラは、日本においては1960年

代を中心とする高度経済成長期に建設が急増してお

り、図 1 のように築後50年を超える老朽化が急速に進

展することになる。また、安全確保のため 5 年に 1 度

の近接目視点検が平成26年度より義務づけられた。少

子高齢化や財政悪化の状況から、予防保全による長寿

命化、点検・維持管理費用の削減、熟練者不足の支

援策が喫緊の問題となってきている。最近 IoT セン

サ ・ ロボット・AI や CIM(Construction Information

Management)が盛んに取組まれてきている。

 KIIS が本研究会を立ち上げた平成27年当初は、セ

ンサ利用がまだ疑問視されていたり、センサメーカー

の土木業界への関心が薄く、ニーズ・シーズが乖離し

ている状況であった。また、維持管理に関する各種情

報は現場での紙媒体での点検帳票や図面が多く、イン

フラ施設管理者毎に管理されているため、事業者間の

共同利用の必要性も意識が低い状態であった。 KIIS

は、IoT、AI の技術の急速な進展や、将来のインフラ

維持管理の情報基盤であるプラットフォームをイメー

ジし、特に多数の橋梁の維持管理の責任がありなが

ら、予算不足・熟練者不足に悩まされている自治体

(特に市町村)に役立つことを意識し、各種情報のデ

ジタル化による維持管理の適正化かつ効率化に資する

事業推進グループ マネジャー 澤田 雅彦

「スマートインフラセンサ利用研究会」~橋梁等の社会インフラ維持管理 IoT 活用推進の情報基盤づくり~

 高度成長期から50年余が経過し、橋梁やトンネルなどの土木インフラ構造物の経年劣化や事故、自然

災害が多発しており、その中で平成25年の政府による「インフラ長寿命化基本計画」が策定された。以

降、センサや IoT、ロボット等による点検効率化や予防保全での長寿命化を目指す研究や社会実装が活

発化してきている。KIIS は、マルチステークホルダによる研究会を平成27年度に立上げ、土木インフラ

構造物用センサ(以下スマートインフラセンサ)の各種情報・データの共同利用を可能にするIoTプラッ

トフォーム構築とそのために必要なセンサコード化・データモデル標準化提言を目的に活動してきた。

昨年度は、 3 つのワーキンググループ(以下 WG)活動を中心に、一般財団法人日本建設情報総合セン

ター(以下 JACIC)からの研究助成金を得て、WG1/ センサコードとデータモデル標準案の検討、

WG2/ 土木センサポータルの構築、WG3/ 新センサ技術・AI 活用した維持管理システムについて研究お

よび実証実験を推進した。本稿では。各 WG の活動内容と進捗状況を紹介する。

図1a 建設後50年以上を経過する橋梁の割合出展:国土交通省

18%

82%

平成25年

50年超 50年未満

43%57%

平成35年

50年超 50年未満

【道路種別橋梁数】

橋梁約73万橋

※道路局調べ(H27.12)

高速自動車国道約20,000橋(約3%) 直轄国道

約41,000橋(約6%)補助国道約34,000橋(約5%)

都道府県道約111,000橋(約15%)

市町村道約519,000橋(約72%)

市町村道約519,000橋(約72%)

図1b 道路種別橋梁数出展:国土交通省

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スマートインフラセンサ利用研究会

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エコサイクルの実現を目指すことにした。具体的には、

長寿命の構造物の長期的・継続的管理には、複数の事

業者でも管理できるよう共通したデータモデルと、そ

のためのセンサのコード化を検討する目的とし、平成

27年度から活動をはじめた。

 土木分野での ICT 活用を研究する土木情報学を専門

とし、CIM(Construction Information Management)

の研究と普及推進をしている大阪大学大学院工学研究

科教授矢吹座長のもとで、土木業界である設計コンサ

ル・施工・測量企業、センサメーカ、システムベンダ

をメンバに、国・自治体等の行政や高速道路管理企業

をオブザーバ 7 機関・団体、および関連活動機関とし

て(当時)土木情報学委員会センサ利用技術小委員会

をアドバイザに迎えた体制で研究会を平成27年度から

運営開始した。その後、趣旨に賛同し参加いただく企

業・研究機関の方が多くあり、当初の16団体 ・ 機関で

スタートしたが、平成29年度末で26団体・機関に大

幅に増加した。

 これにより、図 3 のようにスマートインフラ IoT

プラットフォームを中心に、社会インフラ維持管理の

エコサイクル(センサ開発・選定・設置・維持管理)

作りを目指す。喫緊の課題としては、点検( 5 年に 1

回の近接目視)支援ニーズの声が大きい。

2.研究会における WG の活動内容と進捗状況

 平成29年度は、 3 つの WG(図 4 )を中心に、具体

的な検討と実証実験を進めた。表 1 にWGの課題を示す。

表1 WG と課題WG1 課題1 データモデルの検討構築

課題2 センサ ID の検討課題3 データベースへの Web アプリ

WG2 課題1 土木学会との連携課題2 センサポータルの構築

WG3 課題1 シーズ紹介課題2 モニタリング実証実験

(1) WG1/ センサコードとデータモデル標準案検討

(目的 / ゴール)目視点検や維持管理業務の効率化を

進めるために、インフラ維持管理情報基盤を作り、近

い将来の点検・維持管理の姿を示す。

図2 スマートインフラセンサ利用研究会の目的と推進体制

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スマートインフラセンサ利用研究会

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(課題 1 と進捗状況)データモデルの検討構築

 大阪大学矢吹研究室にて、社会インフラ維持管理に

関する情報基盤として、図 3 の 4 つのデータベースを

図 5 に示す 6 つのテーブルで構成したデータモデル

を検討した。センサ ID 他で紐付けされ、リレーショ

ナルなモデルとなっている。

(課題 2 と進捗状況)センサ ID の検討(KIIS)

 センサコードは型名単位と設置個体単位が必要であ

り、型名単位の種別 ID は、図 6a に示すように JAN

コード(52bit13桁)をベースに、仕様案を検討した。

JAN コードの事業者 ID(28bit 7 桁)+アイテム ID

(20bit 5 桁)+ CD( 4 bit 1 桁)の先頭に、将来の

予備ビットとしてタイプ ID(12bit 3 桁)で合計

図3 センサのコード・データモデルによるプラットフォームとエコサイクル

図4 3つの WG 活動

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スマートインフラセンサ利用研究会

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64bit16桁としている。また、ucode(128bit32桁)の

クラス C への埋め込みも考えている。この種別 ID を

QR コードや IC タグにしてアクセスし、① sensor

portal table(図 5 )を参照しセンサ情報を表示できる

機能を検討する。

 設置個体単位の ID(設置 ID)は、図 6b のように、

センサの設置位置情報(緯度、経度、標高)による国

土地理院の場所情報コード(128bit、32桁)を取得し

て利用する案を検討している。これも、タグにして、

現場でアクセスし② sensor setting table(図 5 )を参

照し設置情報を表示できる機能を検討する。

(課題 3 と進捗状況)データベースに対する入力更新

検索・アプリの作成(大阪大学矢吹研究室)

 各テーブルへの最低限の入力更新検索機能を作成し

た。土木学会で検討した土木センサ情報や、自治体か

ら入手している点検情報・橋梁情報の入力しデータモ

デルの検証を行う予定である。

(2) WG2/ スマートインフラセンサポータル構築

(目的/ゴール)土木構造物へのセンサ利用を進める

ため、センサポータルの構築運用化を進め、センサ

の企画研究開発や設計利用に資する。

(メンバ)大阪大学矢吹研究室、KIIS、土木学会、

(課題 1 と進捗状況)土木学会との連携

 土木センサ利用技術の標準化を検討してきた土木学

会土木情報学委員会との連携協議を行った結果、アド

バイザとしての協力を得る形で、平成30年度よりアド

バイザリボードを実施する予定。

(課題 2 と進捗状況)センサポータルの構築

 センサ ID(種別)を付加したセンサポータルの作

成を進めている。土木学会が次世代センサ協議会と連

携選定した土木構造物用センサを対象にさらに本研究

会メンバ企業のセンサ関連製品を合わせてデータベー

スを準備中である。センサ ID を暫定で割り付け、図

5 の② sensor portal table に入力中である。

(3) WG3/a)新センサ技術、b)AI 活用点検・維持

管理システム

(目的/ゴール)土木構造物の点検・維持管理におけ

図6b センサコード(設置 ID)

図6a センサコード(種別 ID)

図5 データモデル

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スマートインフラセンサ利用研究会

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るセンサ活用のための新しい動きを探る。

(課題 1 と進捗状況)シーズ紹介

 新センサ技術や AI 活用のシーズを 4 事例紹介いた

だき、点検・維持管理ニーズからの議論を行った。

(課題 2 と進捗状況)モニタリング実証実験

「構造物診断のための IoT 最先端通信技術(LPWA*)

導入に向けた調査研究」 の実施。

 図 7 のとおり、一般財団法人日本建設情報総合セン

ター(以下、JACIC)からの研究助成金を受けて実施

している。橋梁にセンサを設置し、LPWA でモニタ

リングデータを収集し、クラウド上のサーバで IoT プ

ラットフォームに取り込む。 9 月から着手し、センサ

や LPWA 方式の選定およびフィールド橋梁の現地調

査(図 8 )を実施した。 5 月設置し、 6 月~ 9 月で

モニタリング実証実験を予定している。センサデバイ

ス・通信・フィールド提示や 3 D 計測・ 3 D モデリン

グなどについて、研究会のメンバを中心に協力をいた

だき実施している。

* LPWA(Low Power Wide Area)、IoT 用の低消費

電力動作、広範囲をカバーする通信規格とサービス

図7 研究概要

図8 フィールド候補調査

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スマートインフラセンサ利用研究会

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 平成29年度の研究会、WGの活動実績を表 2 に示す。

研究会は、毎回ゲストスピーカとメンバによる研究や

取組事例の紹介と、WG の活動状況の報告を行って議

論を行った。

3.今後の進め方

 今後、 3 つの WG 活動(図 4 )をより活性化して

具体的な成果が出るよう推進していく。

 まず、センサコードとデータモデル標準案検討で

は、WG1で標準案を作成し、維持管理情報やモニタ

リングデータを実際に入れて、整合性の検証と当初狙

うメリットが出るかの実証を進めていく。さらに、総

務省の「スマート IoT 推進フォーラム」の技術・標準

分科会インフラモニタリングタスクフォースに標準案

の提言を行えるよう進めていきたい。

 また、スマートインフラセンサポータル構築では土

木構造物用センサの情報モデルを入力し、Web 機能

を作成して運用レベルのポータルサイトの準備を進め

る。土木学会と連携したアドバイザリボードで、セン

サ利用標準化ガイドライン案準拠の検討も進め、か

つ、最新センサデータの入手更新や最新関連情報の入

手体制づくりを進めてセンサポータルサイトの運用開

始を目指していく。

 以上の維持管理プラットフォームはセンサモニタリ

ング実証実験(JACIC 研究助成テーマ)で得られる

実際の維持管理情報を入れることによって、課題を洗

い出し改良を加えてより実用性を向上したプロトタイ

プに仕上げていく予定である。

 将来的にインフラ維持管理でコストや人材面での効

率化適正化ニーズが高い地方自治体への維持管理プ

ラットフォームの提案を検討するとともに、センサ

コードの登録認証のプロセスや管理機能を有し、セン

サポータルの運用を行う「センサ ID センター」の設

立を目指す。

表2 平成29年度研究会、WG 活動の実績

業務経歴

澤田 雅彦(事業推進グループ 部長)

・平成26年 4 月に当財団にメーカーより出向。・スマートインフラセンサ利用研究会主担当(平成

26~)。社会インフラ構造物の長寿命化に資する予防保全や、点検効率化のためのセンサ活用・コード化についてステークホルダによる研究を行う。

・オープンデータ / ビッグデータ活用推進フォーラム主担当(平成26~)。平成27よりデも Kan(データでもうかる Kansai)研究会の立上運営と、データ共同利用のメリット実証の社会実験を企画。

・破壊的イノベーションによるデジタル社会研究会担当(平成28~)

・出向元企業においては、シミュレーション技術を活用した LSI 設計や組込み機器関連の設計技術開発に従事し、そのビジネス化・ベンチャー会社立上運営を行う。

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事業推進グループ マネジャー・首席研究員 石橋 裕基

KIIS サイバーセキュリティ研究会平成29年度活動報告

1.事業の趣旨

 サイバーセキュリティ分野において企業や団体が抱

える大きな不安は、具体的にどのような攻撃が行われ

ているか、またそれに対しどういった対策が取られて

いるかという最新情報が得られないことである。とり

わけ、首都圏以外の地域においては、最新の技術や事

例、政策等に関する情報が得にくい状況である。

 また一般に、企業におけるセキュリティ担当者は

「孤軍奮闘」していると言われる。攻撃者が次々と新

たな武器を生み出し、絶え間なく侵入を試みるのを水

際で防ぐ役割を担っている。その中で、何も事故が起

きなければ誰からも特に気にされず、逆に不幸にして

ひとたび事故等が発生した場合には、様々な対応に追

われる。このようなセキュリティ担当者が孤独な状態

に陥らないためには、企業や団体の枠を越えて担当者

同士が情報交換できる「コミュニティ」の存在が重要

 サイバーテロへの不安が高まる中、平成26年11月にサイバーセキュリティ基本法が成立し、重要イン

フラ企業や一般企業のサイバーセキュリティへの対策が規定された。その一方で、特に「標的型攻撃」

や「ランサムウェア」等による被害が昨今多発しており、多くの企業においてサイバーセキュリティが

喫緊かつ重要な課題であると認識されている。

 KIIS では平成27年度より「サイバーセキュリティ研究会」を実施している。参加メンバー企業等によ

る情報交換や事例研究を行うとともに、関係各機関とも連携し、最新のサイバーセキュリティ情報を共

有することで、地域全体のセキュリティレベルを向上させることを目的とするものである。本稿では研

究会の趣旨及び活動概要を報告するとともに、今年度以降の活動方針について説明する。

図1 KIIS サイバーセキュリティ研究会 事業概要

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KIISサイバーセキュリティ研究会

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である。

 こういった考え方のもと、平成29年度は、前年度に

引き続き、企業等への最新のセキュリティ情報の提

供、高度なセキュリティ研修、それに関係者コミュニ

ティの醸成のための各種取り組みを重点的に実施した。

 これらの取り組みを推進するため、本研究会座長と

しては引き続き 森井 昌克 教授(神戸大学)に就任い

ただくとともに、各団体・有識者等とのネットワーク

を駆使し事業を展開した。

<協力機関>(順不同)

・内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)

・(独)情報処理推進機構(IPA)セキュリティセ

ンター

・(一社)JPCERT コーディネーションセンター

・NTT セキュアプラットフォーム研究所

・(株)ラック 等

<共催団体>

・大阪商工会議所

・(一社)組込みシステム技術協会近畿支部

 研究会としては 8 社の有料会員(ゴールド会員)と

17社・団体の一般会員によりグループを形成した。ま

た各種団体とのコラボレーション企画を推進し、他団

体企業ネットワークへの普及も合わせて行った。

年会費:

168,000円(KIIS 賛助会員、提携団体会員の場合)

216,000円(その他企業の場合)

2.平成29年度研究会の枠組みと実施状況

 平成29年度事業の枠組み、及び各事業の実施状況は

以下の通りである。

(1) 無料セミナー及びメールマガジンの発行

 最新のセキュリティ技術、制度、ソリューション等

に関する情報を広く提供する、一般向けの普及啓発活

動である。また E メール等により、最新の技術情報

や制度情報、イベント情報等を定期・不定期に配信し

た。

 セミナーの実施にあたっては、関連する各団体と積

極的に連携し、共催セミナーの形をとることで普及啓

発範囲の拡大を図った。

サイバーセキュリティセミナー in 神戸

(セキュリティ・ミニキャンプ in 近畿2017(神戸))

(一般講座2017/6/30)

※兵庫県立大学大学院応用情報科学研究科、セキュリ

ティ・キャンプ実施協議会、独立行政法人情報処理

推進機構との共催事業

基調講演:株式会社ラック 代表取締役社長/セキュ

リティ・キャンプ実施協議会会長 西本 逸郎 氏

講演:兵庫県警察本部 生活安全部 サイバー犯罪防犯

センター長 南澤 英志 氏

講演:株式会社神戸デジタル・ラボ 取締役・セキュ

リティソリューション事業部長 三木 剛 氏

特別講演:EG セキュアソリューションズ株式会社 代

表取締役 徳丸 浩 氏

参加 121名

(専門講座2017/7/1)

オープニング:セキュリティ・キャンプ実施協議会事

務局 佳山 こうせつ 氏

ハンズオン講義:株式会社神戸デジタル・ラボ

田中 ザック 氏

ハンズオン講義:株式会社神戸デジタル・ラボ

松本 悦宜 氏

セキュリティ・キャンプ全国大会2015修了生

中村 綾花 氏

参加 19名

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KIISサイバーセキュリティ研究会

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サイバーセキュリティセミナー(2017/8/22)

テーマ:「制御& IoT セキュリティ」

講演:日本電信電話株式会社 NTT セキュアプラット

フォーム研究所 所長 大久保 一彦 氏

講演:株式会社ラック IT プロフェッショナル統括本

部 サイバー救急センター 武田 一城 氏

ディスカッション:神戸大学大学院工学研究科 教授

森井 昌克 氏

フリーディスカッション・交流会

参加 38名

セキュリティ連携セミナー(2017/10/2)

テーマ:「IoT によりつながる世界の製造・開発セキュ

リティ」

※組込みシステム産業振興機構との共催事業

講演:独立行政法人情報処理推進機構 ソフトウェア

高信頼化センター 調査役 宮原 真次 氏

講演:一般社団法人重要生活機器連携セキュリティ協

議会(CCDS)専務理事 伊藤 公祐 氏

講演:三菱電機株式会社 先端技術総合研究所 主席研

究員 神余 浩夫 氏

講演:株式会社 KDDI 総合研究所 研究マネージャ

竹森 敬祐 氏

ディスカッション:神戸大学大学院工学研究科 教授

森井 昌克 氏

フリーディスカッション・交流会

参加 78名

セキュリティ連携セミナー(2017/12/19)

テーマ:「海外ビジネス展開とサイバーセキュリティ

対策」

※一般社団法人 JPCERT コーディネーションセン

ターとの共催事業

講演:パナソニック株式会社 製品セキュリティセン

ター 主幹技師 林 永煕 氏

講演:一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)

北京事務所長 月舘 実 氏

講演:弁護士法人英知法律事務所 弁護士

岡村 久道 氏

ディスカッション:神戸大学大学院工学研究科 教授

森井 昌克 氏

フリーディスカッション・交流会

参加 79名

セキュリティ連携セミナー(2018/2/14)

テーマ:「中小企業がサイバーセキュリティの脅威か

ら身を守るために / SECURITY ACTION」

※独立行政法人情報処理推進機構、組込みシステム産

業振興機構、大阪商工会議所との共催事業

基調講演:神戸大学大学院工学研究科 教授

森井 昌克 氏

講演:経済産業省近畿経済産業局 地域経済部 次世代

産業・情報政策課 課長補佐 有馬 貴博 氏

講演:総務省近畿総合通信局 情報通信部 電気通信事

業課 課長 吉田 丈夫 氏

企業・団体等からのセキュリティソリューション等プ

レゼンテーション

講演:独立行政法人情報処理推進機構 セキュリティ

センター 磯島 裕樹 氏

交流会

参加 137名

メールマガジンの発行

 28通(2017/8~2018/3)

(2) セキュリティ最新情報解説サロン

 第一線のコンサルタント、ホワイトハッカー等セ

キュリティ専門家を招聘し、最新の技術動向や事故事

例等に関する解説、情報共有を行うサロン活動を実施

した。限られたメンバーが「この場限り」のルールの

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KIISサイバーセキュリティ研究会

27

もとで、講師からのコアな情報提供や会員同士の密な

意見交換等を行うものとして推進した。

第 5 回:2017年 7 月20日(木)17:00~20:00

テーマ:「情報爆発時代、今見直す企業の情報セキュ

リティ」

ゲスト:株式会社ベネッセインフォシェル 代表取締

役社長 丸山 司郎 氏

第 6 回:2017年 9 月12日(火)17:00~20:00

テーマ:「脆弱な IoT 機器の現状、その対策と国際標

準化」

ゲスト:国立研究開発法人情報通信研究機構 サイ

バーセキュリティ研究所 主幹研究員 中尾 康二 氏

第 7 回:2017年11月28日(火)17:00~20:00

テーマ:「そろそろセキュリティガバナンスを考えま

せんか?」

ゲスト:デロイトトーマツリスクサービス株式会社

代表取締役社長 丸山 満彦 氏

第 8 回:2018年 1 月12日(金)10:00~20:00

サロン特別編:最新サイバーセキュリティ施設見学会

(内容非公開)

第 9 回:2018年 3 月27日(火)17:00~20:00

テーマ:「セキュリティ人材育成とキャリアパス」

ゲスト:慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究

所 教授 砂原 秀樹 氏

(3) セキュリティ人材育成プログラム

 企業等におけるセキュリティ担当人材、およびマネ

ジメント人材の育成のため、各界の有名講師を招聘

し、必要な技術や制度等に関する研修講座を開講し

た。主に企業等でセキュリティ関連事業に従事する担

当者を対象とした「セキュリティ担当人材向けコー

表1 平成29年度人材育成プログラム カリキュラム(a)セキュリティ担当人材向け

回 タイトル スタイル 講師(敬称略)a-01 サイバーセキュリティ人材育成とスキル 講義 高山 俊介(IPA)、小熊 慶一郎((ISC)2)a-02 情報セキュリティの基本とリスクマネジメント 講義 富田 一成(株式会社ラック)a-03 情報セキュリティの基本とリスクマネジメント【演習】 講義+演習 長谷川 長一(株式会社ラック)a-04 ネットワークの基本とその他の対策 講義+演習 松本 悦宜(株式会社神戸デジタル・ラボ)a-05 脅威とぜい弱性 講義 長谷川 陽介(株式会社セキュアスカイ・テクノロジー)a-06 脅威とぜい弱性【演習】 講義+演習 マシス・ザッカリー(株式会社神戸デジタル・ラボ)a-07 法律や規制 講義 林 紘一郎(情報セキュリティ大学院大学)a-08 暗号と認証(1) 講義 森井 昌克(神戸大学大学院)a-09 暗号と認証(2) 講義 森井 昌克(神戸大学大学院)a-10 組織と運用 講義 嶋倉 文裕(NPO 日本ネットワークセキュリティ協会)

(b)セキュリティマネジメント人材向け回 タイトル スタイル 講師(敬称略)

b-01 サイバーセキュリティ人材育成とスキル 講義 高山 俊介(IPA)、小熊 慶一郎((ISC)2)b-02 情報セキュリティの基本とリスクマネジメント 講義 富田 一成(株式会社ラック)b-03 情報セキュリティの基本とリスクマネジメント【演習】 講義+演習 長谷川 長一(株式会社ラック)b-04 実事例に基づくサイバーセキュリティ対策分析 講義 三木 剛(神戸デジタル・ラボ)b-05 脅威とぜい弱性 講義 長谷川 陽介(株式会社セキュアスカイ・テクノロジー)b-06 サイバーセキュリティ技術概論 講義 森井 昌克(神戸大学大学院)b-07 法律や規制 講義 林 紘一郎(情報セキュリティ大学院大学)b-08 組織と運用 講義 嶋倉 文裕(NPO 日本ネットワークセキュリティ協会)b-09 組織と運用【演習】 講義+演習 長谷川 長一(ラック)b-10 CSIRT 構築・運用 講義+演習 洞田 慎一(一般社団法人JPCERTコーディネーションセンター)

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KIISサイバーセキュリティ研究会

28

ス」と、そういった部門を取りまとめる「マネジメン

ト人材向けコース」の 2 種類を設け、それぞれ10回の

講座を 1 セットとして講座を開講した。

 セキュリティ担当人材向けのコースでは、普段のセ

キュリティチェックやインシデント発生時の技術的対

応等を学ぶこととした。一部の講義では PC を用いた

ハンズオン演習を取り入れ、実際に Web サーバ脆弱

性診断の手順等を体験した。またマネジメント人材向

けコースでは監査や運用、組織マネジメント等につい

て学ぶものとし、グループディスカッション等の演習

を取り入れることで理解を深めた。

 なお、平成29年度は、各コースについて、7 月スター

ト分、11月スタート分の 2 クールを実施した。

3.平成30年度以降の展開

 平成29年度は前年度に比較し大幅に事業の幅を拡大

した。またセミナー等において関連各団体との共催フ

レームが機能しつつあり、関西地域におけるセキュリ

ティ情報発信機能について一定の地位を得たと考えて

いる。

 この結果を受け、平成30年度は、基本的な事業フレー

ムは踏襲した上でさらにネットワークを拡大した形で

活動を展開したい。例えば「人材育成プログラム」に

ついては、経済産業省等による講座認定の取得を目指

し、より受講しやすくする取り組みを進めるとともに、

大阪商工会議所等各種団体とも連携をさらに密にし、

様々な規模や業種の企業グループを対象とした情報提

供を行う。平成29年度に実施した「セキュリティ・ミ

ニキャンプ」についても、既に平成30年度事業として

各団体との連携のもと実施したところである。こういっ

た社会人だけでなく学生を含めた若手技術者への情報

発信も、普及啓発の対象を広める意味で積極的に行っ

ていきたい。

4.今後に向けて

 KIIS サイバーセキュリティ研究会立ち上げ後も、

サイバー攻撃による被害が後を絶たないどころか、ま

すます深刻化している。とりわけ昨今では、ダーク

ウェブと呼ばれるネットワークを通じ、若者が犯罪に

巻き込まれるケースも発生している。こういったダー

クウェブの世界では、企業の機密情報や重要ビジネス

情報なども裏取引されていると言われており、今後大

規模なビジネス被害が発生しないとも限らない状況で

ある。

  1 社での被害が甚大となる大手企業や重要インフラ

企業ばかりが課題を抱えているわけではない。それら

の企業と下請取引等を行っている地域の中小企業等

は、セキュリティ対策が大幅に遅れていることは想像

に難くない。規模が小さいからといって被害を受けな

いということには決してならず、大企業との取引の中

で「踏み台」となって結果的にサイバー攻撃の加害者

になってしまう恐れすらある。経済産業省「サイバー

セキュリティ経営ガイドライン ver.2.0」にも示され

ているように、もはやビジネスにおいてサイバーセ

キュリティはサプライチェーンを構成する全ての企業

にとって重要な経営課題となっている。

 昨年 4 月、経済産業省が独立行政法人情報処理推進

機構(IPA)内に立ち上げた「産業サイバーセキュリ

ティセンター」では、この 6 月に第 1 期の卒業生を世

に輩出する。こういった専門人材育成機関は今後も継

続的に活動するとはいえ、全国で叫ばれているセキュ

リティ人材の不足をすぐに解消できるものではない。

各地域で自発的にセキュリティ人材を確保し、育てて

いくことが重要であると考えられるが、そのためには

今後は産業界としても大学等教育機関との連携も重要

になるものと考えられる。

 KIIS ではサイバーセキュリティ研究会の活動を通

じ、関西圏の情報系・理工系大学とのネットワークを

強化し、産業界との連携を図っていきたいと考えてい

る。関西地域における企業・団体のセキュリティレベ

ル向上に向けて、人材育成をはじめとする様々な事業

を展開していく。

 引続き会員企業のみなさまのご参加、ご協力をいた

だきたい。

業務経歴

石橋 裕基(事業推進グループ マネジャー・首席研究員)

−前掲−

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新事業開発グループ 主任研究員 坊農 豊彦

地区防災計画と災害情報共有のあり方

1.地区防災計画とは

 阪神大震災や東日本大震災等の大規模災害では、行

政が全ての被災者を迅速に支援することが困難である

ことが明らかになった結果(「公助の限界」)、自助・

共助の重要性が強く認識されるようになった。

図1 阪神大震災における救助の主体と救助者数(推計:河田惠昭(1977)「大規模地震災害による人的被害の予測」

自然科学第16巻第1号参照。ただし、割合は内閣府追記)

消防、警察、

自衛隊

約8,000人

22.9%

近隣住民等

約27,000人

77.1%

公助

自助・共助

 国では平成25年に「災害対策基本法」を改正し、地

区居住者等が行う自発的な地域コミュニティレベルで

の防災活動に関する計画(地区防災計画)を新たに創

設した。地区防災計画の目的は、自助・共助を強化す

ることにより、われわれが住んでいるまちの災害予防

と災害時の行動計画を地区居住者等が自ら作成し、地

域の防災力を向上させることである。

 地区防災計画の特徴は、地区居住者で策定した防災

計画を市区町村に提案することが出き、市区町村は、

その防災計画が必要と判断した場合、地域防災計画1)

に規定できることになっているところにある。(図 2 )

図2 地区防災計画と地域防災計画の関係(出典:内閣府)

2.地区防災計画策定モデル事業の支援

 内閣府では、平成26年度~28年度、「地区防災計画

策定モデル事業」をスタートさせ、全国の模範となる

地区や組織の取り組みを後押した。

 当財団は、平成25年度に内閣府から「地区防災計画

ガイドライン(案)作成業務」を受託し、地区防災計画

制度の背景や基本的な考え方、計画の内容、計画の手

続き等について取りまとめた。また、平成26年度~平

成27年度は、「地区防災計画の全国展開に関する調査

業務」を内閣府から受託し、全国的に防災活動に積極

1) 地域防災計画は、災害対策基本法(第40条)に基づき、各地方自治体(都道府県や市区町村)の長が、それぞれの防災会議に諮り、防災のために処理すべき業務などを具体的に定めた計画である。

 地区防災計画とは、災害対策基本法に基づき、市町村内の一定の地区の居住者及び事業者が共同して

行う当該地区における自発的な防災活動に関する計画である。当財団では、平成25年度より

各地で策定されている地区防災計画を支援している。

 本稿では、当財団が支援している地区防災計画の事例について報告する。また、地区防災計画をより

有効に運用するためのツールとして災害情報共有に関するソリューションについて紹介する。

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地区防災計画と災害情報共有のあり方

30

的に取り組んでいる地区で地区防災計画の策定を希望

する地区を「モデル地区」として、地区防災計画策定

に向けた取組支援を行った(全国37地区)。さらに平

成27年度~平成28年度は市区町村の防災担当者を対

象とした「地区防災計画制度説明会」を全国16か所で

実施した。

図3 モデル地区一覧(出典:内閣府「防災情報のページ」HP)

各モデル地区の詳細は内閣府「防災情報のページ」を

参照のこと

(http://www.bousai.go.jp/kyoiku/chikubousai/)

3.地区防災計画の事例

 当財団は平成28年度に滋賀県草津市の山田学区まち

づくり協議会から「山田学区地区防災計画」策定業務

を当財団が受託し、関西大学社会安全学部・近藤誠司

准教授を専門家アドバイザーとして草津市山田学区の

地区防災計画策定を支援した。

 滋賀県草津市山田学区(小学校区)は人口約 8 千人、

15町内会により構成されている。滋賀県草津市は昭和

9 年の室戸台風以来、大きな自然災害がない地域であ

るが、琵琶湖西岸断層帯地震が発生すれば最大震度

6 強~ 7 の揺れに見舞われると想定されており、家屋

倒壊被害や液状化被害のおそれがある。そこで山田学

区では、「山田学区 地区防災計画策定委員会」を発

足させ、琵琶湖西岸断層帯地震が発生した際の地震初

動の災害予防と災害時の行動計画(救助体制)につい

て検討するためのワークショップ2) を開催( 6 回)し、

平成29年 1 月に「山田学区地区防災計画書」を作成し

た。

 「山田学区地区防災計画書」の特徴は、①「町内会

同士の連携体制の明示」、②「被害の大きい町内会に、

被害が軽微で済んだ近隣から救援隊を派遣する」とい

う、15町内会の連携共助体制を取り決めたことであ

る。(図 4 )

図4 山田学区の連携共助体制(出典:「2018年 草津市山田学区地区防災計画書」より)

地区防災計画ワークショップの様子(平成28年12月)

 山田学区まちづくり協議会では、平成29年度も引続

きワークショップを継続した。

 平成29年度の主な取り組みとして、平成28年度に

作成された「山田学区地区防災計画書」が実際に機能

するかを検証するため、実働訓練(被害情報の収集・

集約訓練)を実施した。この実働訓練の結果、地区居

2) ワークショップとは、与えられたテーマを元に参加者個々が考え、お互い協力し合いテーマを展開するスタイルの会議や共同作業。

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地区防災計画と災害情報共有のあり方

31

住者から学区全体として望ましい連携共助体制の拡

充、災害時に学区災害対策本部と各町内会の迅速な情

報共有方法を検討していきたいという声が挙がった。

 このように継続的な防災活動への取り組みへの意識

が地区居住者から示されたことは充分な成果であると

言えるだろう。

実働訓練の様子(平成29年11月)

 これまで地区防災計画策定支援を進めるうえでの課

題として、①「あくまで公助依存型で自助・共助の重

要性の認識が低い地域がある」、②「計画を推進する

人材(地区リーダ)がいない」、③「災害に対して、

どのように対処したらよいか、計画作成の知識やノウ

ハウがない」等が挙げられる。

 これらの課題を解決するために地区防災計画策定支

援機関の整備・充実が望まれる。(図 5 )

図5 地区防災計画支援の構成図(例)

4.災害情報共有の有用性

 地区防災計画策定においても、災害発生時から応

急・復旧対応時を中心に、被害情報、避難所への避難

誘導、安否確認等を行うための通信手段を確保してお

くことが重要になる。

 当財団では、災害発生時に電話回線や携帯電話回線

等の既存の通信手段が途絶した場合を想定した検討を

進めた。そして NICT(国立研究開発法人情報通信研

究機構)が開発したワイヤレスメッシュネットワー

ク3)を活用した情報共有のソリューションを検討した。

 本ソリューションは、ワイヤレスメッシュネット

ワークを用いて地域の災害対策本部と指定避難所間で

避難者、負傷者、各避難所での必要物資のやり取り等

に関する情報を共有できる仕組みである。

 平成28年、徳島県鳴門市にて本仕組みを用いて実証

実験を行い、地域防災におけるワイヤレスメッシュ

ネットワークの有効性を検証した。

 実証実験を実施した徳島県鳴門市は内閣府の平成27

年度モデル地区であり、企業(大塚製薬工場)及び地

区リーダー(里浦町自主防災会連合会、川東地区自主

防災会)が連携して地区防災計画を継続的に策定して

おり、災害時おける企業の BCP4) を始め、地区居住者

の安否確認情報等の共有化のための情報通信の重要性

に着目している地区である。

図6 鳴門市ワイヤレスメッシュネットワーク図(実証実験)

3) 商用通信回線網が途絶した場合でも通信可能で容易に構築できる分散型ネットワークシステム。

4) 災害などの緊急事態が発生したときに、企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画。

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地区防災計画と災害情報共有のあり方

32

 徳島県鳴門市の実証実験ではスマートフォンを用い

て、災害対策本部と各避難所の避難者、負傷者の情報、

物資配給情報について、災害対策本部と避難所間、避

難所間の情報共有を行った。さらに、海岸沿いにある

里浦小学校に Web カメラを設置し、海岸の状況(津

波情報)についてもリアルタイムに映像情報として災

害対策本部に送信することで、海岸の状況確認を行っ

た。

 本実証実験の結果、地域で通信手段が途絶えると情

報を共有する手段がなくなるため、いざという時に使

える通信網の重要性が認識できたとの評価を得た。一

方、課題として、ワイヤレスメッシュネットワーク上

で安定した通信を行えるようにするための帯域の確保

と、容易な操作で扱えるスマートフォンのアプリケー

ション開発を行う必要性が指摘された。

 当財団では、ICT を活用した地区防災計画の普及・

促進活動を推進することで、地域の防災力を向上させ

るために貢献する予定である。

参考文献・西澤 雅道、筒井 智士『地区防災計画制度入門―内閣府「地区防

災計画ガイドライン」の解説と Q&A―』2014年10月、NTT 出版・平成26年度版防災白書『共助による地域防災力の強化~地区防災

計画制度の施行を受けて~』2014年 6 月・近藤誠司『地区防災計画策定事業のポテンシャリティ - 滋賀県草

津市山田学区における実践事例から -』2017年度、関西大学・近藤誠司『地区防災計画策定作業を通した住民の意識変容 - 草津

市山田学区におけるアンケート調査から -』2017年、地区防災計画学会

業務経歴

坊農 豊彦(新事業開発グループ 主任研究員)・公共向け ASP 施設予約システム業務等(2006)・新成長産業分野 IT 経営モデル事業、情報デ−タ

ベース及び「e 相談所」サイト構築・運営業務(2010~2012)

・地域における自発的な防災活動に関するガイドライン案作成等の業務(2013)

・地区防災計画の全国展開に関する調査業務(2014~2016)

・草津市地区防災計画策定支援業務(2016~2017)・防災の標準化に関する調査・運営業務(2017)・自然災害時における中小企業の事業継続に関する

調査業務 (2017)

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地球をはかり、未来を創る~ 人と自然の共生にむけて ~

株式会社パスコ

賛助会員企業のご紹介

【空間情報産業のパスコ】

 パスコは、人工衛星、航空機、ドローン、車両、船

舶などを活用し、あらゆる視点から、地球上を計測す

る空間情報の取得(測量・計測)技術を保有していま

す。これらの技術と AI ・IoT 技術やユビキタス技術

のほか、ビッグデータやオープンデータとの融合を図

り、社会の課題解決に向けた提案を行っています。ま

た、世の中に散在する情報を一つに集約し、新たな情

報価値を引き出し、提供する、ソリューション開発に

も取り組んでいます。

【社会におけるパスコの役割】

 現代社会は、超高齢社会への突入、少子化、労働人

口の減少、社会インフラの老朽化、自然災害の激甚化、

環境汚染や環境破壊など、人類の未来を脅かす課題に

直面しています。このような状況下において、ICT・

AI・IoT・ロボティクスなど、最先端の技術を使った

自動化・効率化は急速に進化しており、さらに、ビッ

グデータは社会の動きを捉える重要な情報源になって

います。

 パスコは、これらの最新技術を、国土管理や企業経

営の基盤情報として重要度を増す空間情報に融合さ

せ、空間情報サービスの提供を通じて、人と自然が共

生する未来社会の構築に努めています。

【空間情報技術と研究開発】

 人工衛星やドローンの活用など、測量手段の多様化

に伴い、得られる測量成果の情報量が爆発的に増加し

ています。また、測量技術と情報処理技術の進歩に伴

い、空間情報の収集や活用は 2 次元(平面)から 3 次

元(立体)の時代に、そして、AI による解析処理の

実装を可能とする時代になりました。

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賛助会員企業のご紹介

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 パスコでは、あらゆる視点から空間情報の収集を行

い、地球規模からマイクロメートル(精密計測)レベ

ルの精度に対応し、社会の課題解決に向けたデータ活

用をご提案しています。

■人工衛星画像と AI 技術の融合

 ディープラーニング手法の一つ「畳み込みネット

ワーク(CNN)」は、脳の視覚野の構造における知見

を基に設計されており、画像認識分野で、人工衛星、

航空機、ドローンなどから得た地上の撮影画像の処理

に非常に高い親和性を発揮しています。

 パスコは、人工衛星画像を用いた CNN の応用技術

開発で AI を使い自動で情報を抽出し、膨大な時間や

高コストを要していた解析を短縮させることを可能に

しました。衛星画像からの「駐車車両の台数推定」や、

地上の変化を検知して都市開発の進捗を調べる「都市

変化解析」は、さまざまな施設の経済活動を広域でモ

ニタリングしたり、人口や世帯数も解析する国外の統

計未整備国での市場調査に役立てられています。

AI による駐車車両推定イメージ

■ AI 技術で道路のひび割れを検出

 これまで、目視判読による評価が主流であった路面

性状調査は、その効率化・省力化の実現が重要な課題

となっていました。パスコが保有する「道路現況計測

システム(Real)」では、搭載したラインセンサカメ

ラで路面データを撮影し、AI によって舗装のひび割

れやわだち掘れなどの存在を自動判読することで、点

検作業の効率化に生かしています。

■土木工事現場の生産性向上

 国土交通省が推進する「i-Construction」では、測

量・計測技術を使った 3 次元地形データの活用が推進

されています。

 広大な工事現場や、上空に障害物がある現場、海底

や河床など、工事環境がさまざまな土木工事現場で

は、工事進捗の管理を高精度化し、建設機械の自動化

や完成検査に至るまで、いかに効率良く、必要な精度

で 3 次元地形データを活用するかが大きなカギを握り

ます。パスコは、あらゆる視点から対象エリアを測

量・計測できる技術力を生かして、工事現場の環境に

最適な手法で 3 次元地形データの構築、活用を支援し

ています。

3次元モデルによる二時期の地形比較

■自動走行社会の実現に向けて

 自動運転支援を実現するために必要不可欠なのが、

道路の地図データを整備した高精度 3 次元地図データ

「ダイナミックマップ」です。パスコは、データ構築

に必要なキーテクノロジーとなる、「車両搭載型レー

ザー計測技術 MMS(モービル・マッピング・システ

ム)」を使用し、道路周辺の高精度な 3 次元座標点群

データから運転制御に必要な道路の区画線や中心線、

停止線などの情報を構築することで、ダイナミック

マップの実用化に大きく貢献しています。

 2017年 6 月に本格的に事業がスタートした「ダイAI によるひび割れ抽出

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賛助会員企業のご紹介

35

ナミックマップ基盤株式会社」にも資本参加し、全国

高速道路や自動車専用道路の地図データ整備を目指し

ています。

 また、ここで得られた道路周辺の高精度な 3 次元座

標点群データは、インフラ老朽化対策のための道路の

舗装点検・管理や大規模水害対策、道路計画、道路施

設管理(地下埋設物等含む)など、自動走行以外の活

用も検討しています。

■高精度測量技術

 0.1㎜精度の正確性が要求される、宇宙、航空、鉄道、

自動車、医療などのさまざまな分野、物理学の発展や

重粒子線がん治療の医療装置に必要な「粒子加速器」

では、粒子を光の速さまで加速させるため、連続する

機器を寸分の狂いもなく並べる測量技術が求められて

います。

 こうした現場で活躍しているのが、パスコの精密計

測技術です。より精密な機械加工が求められるロボッ

ト産業や製造業で、完成度の高い品質を確保するため

に非常に重要な役割を担っています。

■宇宙から地盤変動をミリ単位でモニタリング

 合成開口レーダー(SAR)衛星を活用して地表面

の変位測量を行っています。 SAR 衛星は、地球を周

回しながら、地上に向け自らマイクロ波を照射し、そ

の反射波を受信することによって対象物の観測を行う

ものです。衛星から地面や建物などの対象物を直接観

測するため、立ち入りが困難な場所の計測が可能な

上、時間や天候などにも左右されにくいという特長を

持っています。

 これらの SAR 衛星の優位性を生かして、観測点に

変位が生じた場合、SAR 衛星が受信する反射波に位

相差( 2 回の計測で得られる電波波形のずれ)が生じ

ることから、同値を解析することにより、変位量をミ

リ単位に算出することができます。

 このように、パスコが保有する技術は、地球規模か

らマイクロメートル(精密計測)レベルの精度に対応

し、社会の課題解決に向けた測量・計測成果のデータ

活用をご提案しています。

【人と自然の共生にむけて】

 ビッグデータやオープンデータの活用が進むなか、

データ流通社会の到来は明らかです。

 パスコは、AI・IoT・ロボティクス、ブロックチェー

ンなどの次世代ツールの導入による自動化・高度化を

図っていくとともに、未来の空間情報の活用価値を見

据え、保有する測量・計測技術で集めた情報と、時々

刻々と変化する社会の状況をリアルタイムに反映させ

る空間情報の仕組みの構築を目指しています。

 「地球をはかり、未来を創る ~人と自然の共生にむ

けて~」を経営ビジョンに掲げ、あらゆる「はかる」

を空間情報に融合させ、世の中にない新しいサービス

を生み出し、社会に還元していきます。

【会 社 名】 株式会社パスコ(セコムグループ)

【 創業年月 】 1953年10月

【代 表 者】 代表取締役社長 島村 秀樹

【資 本 金】 87億5,848万円

【連結売上高】 510億円

【 従業員数 】 連結:2,728人、単体:2,068人

【連結子会社】 19社(内8社、海外11社)

【 株式上場 】 東京証券取引所 市場第一部

(2018年6月30日現在)

〒153-0043 東京都目黒区東山 1 - 1 - 2

https://www.pasco.co.jp

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36

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

賛助会員企業のご紹介

はじめに

 平成30年(2018年)大阪府北部を震源とする地震

により被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げ

ます。

 当社では、被災発生直後より保険金を迅速にお支払

いするために必要な体制を構築するとともに、全社員

一丸となり、被災されたお客さまへの丁寧な対応に取

り組んでおります。これからも、被災地の 1 日も早い

復興のお役に立てるよう、お客さまを全力でサポート

してまいります。

「特色ある個性豊かな会社」の確立

 当社は MS & AD インシュアランスグループの中核

事業会社として、経営ビジョンの実現に向け、全社を

挙げて取り組んでおります。

 今年度は、2021年度までの 4 ヵ年を対象とする MS

& AD インシュアランスグループ中期経営計画「Vision

2021」に合わせ、当社においても中期経営計画「AD

Vision 2021」をスタートさせました。

 当社は、これまでに構築してきた基盤・取り組みを

発展させ、「先進性」「多様性」「地域密着」を追求す

ることで「特色ある個性豊かな会社」を確立し、企業

価値の向上と持続的成長を実現してまいります。

 具体的には、国内初の運転挙動反映型テレマティク

ス自動車保険の発売(2018年 4 月以降保険始期)を

契機に、安全・安心なクルマ社会の実現に一層貢献し

つつ、これまで築き上げてきたトヨタグループ、日本

生命グループとのパートナー関係を最大限活用し、具

体的な成果創出に向けスピード感をもって取り組んで

まいります。

オリジナリティを活かした地域社会への貢献活動

 地域社会への貢献活動については、当社の地方創生

推進に役立つ取り組みが全国各地でご好評いただき、

150を超える地方公共団体と連携協定を締結するとと

もに、当社の具体的な取り組みが「平成29年度地方創

生に資する金融機関等の『特徴的な取組事例』」に認

定され、内閣府特命担当大臣(地方創生担当)から表

彰を受けるなど多方面から高い評価を受けております。

 また、当社は障がい者スポーツ振興に力を入れてお

り、全国各地の障がい者アスリートの採用も積極的に

進めております。こうした取り組みが評価され、「東

京都スポーツ推進モデル企業」に 3 年連続で選定され

ています。

 今後も、当社の行動指針に掲げる「地域密着」をよ

り具体化していくために、地域社会や地域企業に貢献

する取り組みを継続してまいります。

 加えて、前中期経営計画から進めている 5 つの部門

横断プロジェクト(「テレマティクス」「ICT」「ニュー

リスク」「地方創生」「風土革新」)について、プロジェ

クト間の連携による相乗効果を発揮させ、環境変化に

迅速に対応できる態勢を構築してまいります。

 このような当社ならではの取り組みが、国連の持続

可能な開発目標である SDGs(Sustainable Development

Goals)を「道標(みちしるべ)」とした、さまざまな

社会的課題の解決に貢献できるよう推進してまいりま

す。

働き方改革の推進

 また、こうした取り組みは、社員一人ひとりが「や

りがい」と「誇り」を実感し、失敗を恐れずチャレン

ジし続け、持てる力と個性を最大限発揮することで実

現するものだと考えております。

 そのために、「働き方改革」を最重点テーマとし、ワー

クライフバランスの推進や社員の成長・能力発揮を支

える各種施策に取り組んでおり、2018年 5 月には(公

財)日本生産性本部とワークライフバランス推進会議

が主催する「第10回ワークライフバランス大賞」にお

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賛助会員企業のご紹介

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いて保険業界で初めて「大賞」を受賞しました。

 これまでも積極的に推進してきた女性活躍推進と、

社員一人ひとりの成長やチャレンジ精神を高めていく

人財育成に継続的に取り組み、社員とともに成長する

会社を目指してまいります。

「レジリエントでサステナブルな社会」の実現に向けて

 当社は、情熱を持って新たなチャレンジをし続け、

お客さま・地域社会へ貢献することのすべてが「レジ

リエントでサステナブルな社会」の実現につながると

認識し、これを果たしていくことでステークホルダー

の皆さまからのご期待にお応えしていきたいと考えて

おります。そのためにも、お客さま接点の行動規範で

ある「全力サポート宣言( 3 つの宣言「迅速」「優しい」

「頼れる」)を実践し、明るく元気な社員がお客さま

を全力でサポートする「特色ある個性豊かな会社」を

目指しております。

 引き続き、一層のご愛顧とご支援を賜りますようお

願い申し上げます。

・テレマティクス:自動車などの移動体と通信システムを組み合わせ、リアルタイムに情報サービスを提供すること。通信と情報科学の造語。

・ICT(アイ・シー・ティー):情報・通信に関する科学技術の総称で、情報通信技術と訳される。近年「IT」に代わる呼称として定着しつつある。

・レジリエント:変化する状況や予期せぬ出来事に対して、柔軟かつ上手に適応し、影響を低減し、迅速に回復する力があること。

・サステナブルな社会:地球環境、社会や人間に関わる課題を解決しながら、複数の世代にわたって、誰もが安心・安全に過ごすことのできる活力ある社会。

・人財:当社では「人材」を「人財」と表しています。

総資産(2017年3月31日現在) 3兆4,982億円

正味収入保険料(2017年3月31日現在) 1兆2,005億円

本社 東京都渋谷区恵比寿1-28-1

【会社概要】名称 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

設立 1918年6月30日

事業内容 損害保険事業

資本金 1,000億円

あいおいニッセイ同和損保のサステナビリティ

明るく元気な社員がお客さまを全力でサポートする「特色ある個性豊かな会社」を確立し、「企業価値の向上」と「持続的成長を実現」

お客さまのために 社会に向けて

「お客さま第一の業務運営」の実践 強固なコンプライアンス基盤

ステークホルダーの期待に応えつづけ、社会と共に発展する会社

●テレマティクスや ICT をはじめとした先進技術の活用や迅速・優しい・頼れるサービスにより全てのお客さまに安心・安全を提供

ビジネスパートナーとともに●柔軟かつ機動的な協業・連携により多様な産業とともに成長

●異業種連携やビジネスマッチングを活用化させ、イノベーションを追求

●地域と課題を共有し、本業を通じて社会にソリューションを提供

●多様なリスクの引受に加え、未然防止からアフターケアまでトータルに貢献

社員にとって●多様な社員が総活躍できる職場環境が充実●一人ひとりは、チャレンジ意欲が旺盛で社員としての誇りとやりがいを実感

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クモノスコーポレーション株式会社

ご挨拶

 1995 年、阪神淡路大震災の復興支援のため当社は

設立しました。設立当初は工事測量を専門としていま

したが、現在では建設コンサルタント会社として、工

事測量のみならず、構造物の形状を 3 D で多角的に取

得する 3 次元計測や、外壁診断、構造物点検、鉄道設

計、システム開発や器械販売・レンタル、そして海外

事業を手掛けています。

 このように業務が多岐にわたるようになったのは、

ある出来事がきっかけでした。それは、1999年に起

こった山陽新幹線トンネルコンクリート崩落事故や福

岡水害です。これらの災害を受け、これからは建造物

を新しく「造る」ための測量ではなく、既存の建物を

「守る」ための測量が重要だと考え、業務の主軸をイ

ンフラ構造物の維持管理に転換することを決意しまし

た。そして“測れないものを測る” をモットーに、常

識を覆す測量システムを発明してきました。

3 D レーザースキャナの導入

 「守る」ための測量を可能にするため、弊社がいち

早く導入したのが、 3 D レーザースキャナです。 3 D

レーザースキャナとは、器械本体から照射されたレー

ザーによって対象物の 3 次元位置座標を取得する器械

です。器械本体にあるボタンを 1 つ押すだけで、周囲

360度の位置座標を大量の点の集まり(点群データ)

として短時間で取得可能となりました。

 近年、本技術は、以下の現場で活用されています。

■プラントや船舶内部設備

 ありのままの形状を計測できるため、工場内のプラ

ントや船舶内部などの複雑な設備の計測に最適です。

点群データを基に配管のモデリングを行うことで、設

計や製図作成ツールである CAD 上のデータとして取

り扱うことが可能となり、複雑に入り組んだ配管の干

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図3 点群データの加工例

図2 計測した点群データ

図1 工場内プラントの計測風景

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賛助会員企業のご紹介

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渉や、溶接間距離の確保のチェックを容易に行うこと

ができるようになりました。また、設備の増設やレイ

アウト変更に伴う計画の策定にも利用されています。

■歴史的建造物・文化財

 2016年に発生した熊本震災時も、 3 D レーザース

キャナによる現況計測を実施しました。熊本城早期復

旧のため、 3 次元データから現状を確認し、そのデー

タを基に修復や復旧計画が検討されました。

 2017年、弊社は 3 D レーザースキャナの販売台数

がアジア No.1となりました。開発に携わった20年前

から現在に至るまで、様々な現場での実績・経験を積

み上げております。

独自の「測る」技術を発明

 弊社はユニークな計測システムを発明し、国内外問

わず幅広く展開しております。

■ひび割れ計測システム「KUMONOS」

 「あそこにあるひび割れは測れないのか?」

 約15年前、トンネル測量をしていた際にお客様に投

げかけられた一言です。この一言をきっかけに、離れ

た場所からひび割れの幅や形状を正確に記録できない

かと考え、発明したのが、社名にもなったひび割れ計

測システム「KUMONOS」です。

 従来のひび割れ計測方法は、高所作業車や足場を使

用し、直接ひび割れにクラックスケールを当てて計測

し、計測結果をスケッチするというアナログなもので

した。また、ひび割れのスケッチは、計測者によって

差が出る上、高所作業車等を使用するため、計測者に

とっては危険な作業でした。

 一方、弊社が開発した「KUMONOS」は測量器で

あるトータルステーションにクラックスケールを内蔵

しています。このクラックスケールを使用し、離れた

位置から安全にひび割れの幅、形状、そして長さを計

測します。測量器を使用しているため、計測したデー

タは全て位置座標を持っています。計測データは、専

用のソフトを介することで CAD に自動描画できるた

め、計測後にオフィスで作業する時間が大幅に短縮さ

れました。

図4 KUMONOS の構成

 現在は、橋梁や擁壁、トンネル、ダム、ビルなど幅

広いコンクリート構造物のひび割れ計測に活用されて

います。先述の 3 D レーザースキャナと組み合わせる

ことで、巨大なダムの壁面であっても、ひび割れがど

の位置に、どの程度あるのかを正確に把握することが

可能となります。

■新赤外線画像解析システム「THERMO DELTA」

 サーモデルタは、赤外線カメラで撮影することで、

ビルなどの外壁タイルの温度差を検出します。外壁タ

イルは、落ちる前に必ずタイルが少しずつ剥がれてき

ており、赤外線カメラで撮影すると、その部分は周囲

図5 落下危険度判定図

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の正常なタイルとは異なる温度として現れます。弊社

が提供する外壁診断では、温度異常箇所を検出し、外

壁タイルの落下事故防止に貢献しております。また、

先述の KUMONOS と併用することで、より正確で詳

細な落下危険度判定図を作成し、危険箇所の明確化及

び安全管理対策に役立てることが可能です。

■杭の中心座標計測するシステム「Baum Station」

 円柱構造物の中心を把握できる Baum Station は、

その名の通りバームクーヘンのような同心円の焦点鏡

を搭載した光波測量器です。通常、杭の計測時は、測

量器 2 台を同時に用い、 2 方向から計測を行います。

しかし、Baum Station を使用することで、作業員 1

人が 1 台の測量器を使うだけで、より精密な計測がリ

アルタイムで行えるようになりました。杭の位置を座

標を用いて数値管理することにより、杭施工時にズレ

が生じた場合も、早期に修正することが可能です。

Baum Station は、ICT(情報通信技術)施工に貢献し

ます。

最近の取り組み

 冒頭でご紹介した 3 D レーザースキャナは、一地点

に器械を据えて計測するタイプのものでしたが、弊社

は他にも多様な 3 次元計測器を保持しています。移動

しながら計測することで広範囲の 3 次元データを取得

可能にする移動型計測システムには、車載型のタイプ

と、バックパック型で車両が入れない場所も歩行しな

がら計測するタイプ等があり、計測対象や範囲に応じ

て使い分けをします。このバックパック型計測システ

ムを用いて、2015年に発生したネパール地震で大き

な地震被害を受けた現地の文化財を計測し、復興計画

にお役立ていただきました。

 また、スポーツビジネス分野にも業務の幅を広げて

います。スタジアムの維持管理に 3 次元計測や外壁診

断システムの導入を画策中で、今後は 3 次元データを

VR 技術にも活用予定です。

 他にも、水中3D スキャニングソナーも取り扱って

おり、水中の構造物や地形も 3 次元計測することが可

能です。弊社保有の計測技術は、地上や地下、水中ま

で、様々な場所を計測可能にします。

今後に向けて

 この度は、賛助会員に入会させていただき誠にあり

がとうございます。皆様から多様な情報を学ばせてい

ただき、また、少しでも有益な情報をご提供させてい

ただければと思っております。今後ともご指導、ご鞭

撻の程よろしくお願いいたします。

図6 スタジアム計測事例(点群データ)

[企業情報]会社名 クモノスコーポレーション株式会社

代表者 代表取締役社長 中庭 和秀

設 立 1995年3月

本 社 大阪府箕面市船場東2-1-15

資本金 3000万円

社員数 122名(2018年6月現在)

売上高 16億5000万円(2017年9月期)

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定価¥5 0 0(送料込)(ただし、一般財団法人関西情報センター会員については、年間購読料は年間会費に含まれております。)

◇ごあいさつ 一般財団法人関西情報センター 会長 森下 俊三 …………1

◇平成29年度実施事業からの報告 ………………………………………………………………………………2

 □「e-Kansaiレポート2018

         ~新たなビジネス創出プラットフォームの実現に向けて~ 調査結果概要」 ……2

事業推進グループ マネジャー・首席研究員 石橋 裕基

 □「平成29年度関西のサービス業の生産性・付加価値向上に関する調査」 ………………………… 11

事業推進グループ 研究員 長尾 卓範

 

 □「スマートインフラセンサ利用研究会」

            ~橋梁等の社会インフラ維持管理IoT活用推進の情報基盤づくり~ ……… 18

事業推進グループ マネジャー 澤田 雅彦

 □「KIISサイバーセキュリティ研究会 平成29年度活動報告」 ……………………………………… 24

事業推進グループ マネジャー・首席研究員 石橋 裕基

 □「地区防災計画と災害情報共有のあり方」 …………………………………………………………… 29

新事業開発グループ 主任研究員 坊農 豊彦

◇賛助会員企業のご紹介

  株式会社パスコ …………………………………………………………………………………………… 33

  あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 ……………………………………………………………… 36

  クモノスコーポレーション株式会社 …………………………………………………………………… 38

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本誌は、当財団のホームページでもご覧いただけます。http://www.kiis.or.jp/content/info/magazine.html

KIIS Vol.157 ISSN 0912-8727平成30年 7月発行人 田中 行男発行所 一般財団法人 関西情報センター    〒530-0001 大阪市北区梅田1丁目3番1-800号 大阪駅前第1ビル8F TEL. 06-6346-2441