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Kobe University Repository : Kernel
タイトルTit le
商業施設における地震時の避難シミュレーションに関する研究(AStudy on evacuat ion simulat ion after earthquake in consumerfacilit ies)
著者Author(s) 北後, 明彦 / 原田, 曜輔 / 関沢, 愛 / 掛川, 秀史
掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学都市安全研究センター研究報告,13:43-48
刊行日Issue date 2009-03
資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文
版区分Resource Version publisher
権利Rights
DOI
JaLCDOI 10.24546/81001950
URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81001950
PDF issue: 2020-02-26
神戸大学都市安全研究センター研究報告,第13号,平成21年 3 月
― �� ―
商業施設における地震時の避難シミュレーションに関する研究
AStudyonEvacuationSimulationa冊erEanhquakeinConsumerFacilities
北後 明彦1)
AkihikoHOKUGO
原田 曜輔2)
YosukeHARADA
関沢 愛3)
AiSEKIZAWA
掛川 秀史4)
ShujiKAKEGAWA
概要 :現在では、耐震性の向上に伴い建築物の構造体としての安全性は向上している。しかし、東京 ・大阪 ・名古
屋といった都市部に限らず中高層建築物は多数存在してお り、それら中高層建築物の上層階においては地震時に大
きな床応答が生じやすいことから、長周期地震動による建築物内部での家具 ・什器類の移動や転倒等に対する対策
を考える必要がある。そこで本研究では、什器の移動や転倒、商品の散乱といった避難障害が、地震時の在館者の
避難行動に与える影響について、避難シミュレーションで再現することを目的として研究を行った。避難シミュレ
ーションの条件設定に当たっては、実際に地震被害にあった4件の商業施設-ヒアリング調査を行い、建物がゆれ
ている時の人々の様子、地震後の人々の様子、従業員の対応、建物内部の被害、避難行動についての情報を得た。
このヒアリング調査により得られた情報をもとにシミュレーション条件を設定し、地震避難シミュレーションを実
施し、什器の転倒や移動、商品の散乱といった建築物の内部被害が、避難経路の遮断や歩行速度低下につながると
想定して、避難完了時間や避難行動に与える影響を探った。その結果、什器や商品といった避難障害発生が歩行速
度の低下につながると想定した場合、売り内や通路で人がつまり、滞留が生じる現象を再現することができた。こ
のように地震発生後に皆が一斉に避難を開始した場合、-つの避難ロに集中してしまうような状態が発生する恐れ
があることについて可視化できたので、この避難シミュレーションを用いて、従業員などが適切な避難誘導を行い、
より安全かつスムーズに避難が完了できる避難経路-利用者を導くことの訓練に用いることが可能である。
キーワー ド:地震、家具転倒、避難障害、避難シミュレーション
1.はじめに
1.1 研究の背景
東京 ・大阪 ・名古屋といった都市部に限らず中高層建築物は多数存在しており、それら中高層建築物の上層階にお
いては地震時に大きな床応答が生じやすいことから、最近では長周期地震動による建築物内部での家具 ・什器類の移
動や転倒等といった建築物の内容物の挙動に関する研究が数多く行われている。
建築物の内容物の挙動に関する研究の対象はオフィスや住宅が多く、商業施設を対象とした研究は少ない。確かに
前者は延べ床面積に対する家具 ・什器類の占有率が高く、地震時には家具 ・什器類の転倒 ・移動による人的 ・物的被
害が大きくなると考えられるが、家具 ・什器類の配置されているエリアに存在する人の密度という観点から見れば、
商業施設も地震時にはオフィスや住宅と同様、危険な状態に陥ると考えられる。
地震時における建築物の内容物の挙動に関する研究は、当然、建築物の内部環境の変化という点にだけ重点を置い
ているのではなく、内部環境が変化することによる人的被害の発生といった建築物の内部被害と人との関係を見据え
ている。しかし、建築物の内部環境の変化と避難行動を結びつけた研究は見当たらない。一方で、地震火災の影響を
考慮した避難行動に関する研究が多く見られるのは、火災の発生が人命被害をもたらす可能性が大きいからであろう
が、家具や什器の転倒や移動といった建築物の内部環境の変化も避難経路の遮断 ・狭小化といった状況を生み出すと
考えられる。地震時における建築物の内容物の挙動に関する研究については人的被害のみならず、地震後の避難行動
を考慮した検討も必要と考えられる。
1.2 研究の目的 ・方法
既存施設を参考に、フロアプラン、地震前の什器の設置状況、地震後の什器の転倒 ・移動といった室内被害の様子
をコンピューター上で設定し、避難者を配置させ避難シミュレーション1)を行 うことで商業施設における地震時の避
難状況を把握することを目的とした。
― �� ―
2.避難シミュレーションによる避難状況の把握
2.1計算条件の設定
(1)空間モデル
既存の参考施設2)をもとに、図 1のようにフロアプランを設定した。
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図 1 フロアプラン
図 2 被害小
(歩行速度 0.8m/Sと仮定)
図 3 被害中
(歩行速度 0.6m/Sと仮定)
図4 被害大
(歩行速度 0.4m/Sと仮定)
図 5 被害特大
(歩行速度 0.2m/Sと仮定)
― �� ―
被害中 被害特大 被害小
被害小
図6 地震時の被害状況
(2)什器の配置
参考施設を訪れ、実地調査を行い什器の配置状況を確認 したO
(3)避難人数
参考施設での地震は、午前 11時頃に発生しており高密度の状況ではなかったが、明確な在館者数が得られなかっ
たので、ここでは、避難安全検証法に基づいた人数 (売 り場内0.5人/m2,通路 0.25人/m2) として、このフロアの
避莫軽者総数を630人としたO
(4)地震による被害状況
フロアプランを参考にした施設は過去に地震被害にあっており、その時の被害状況を撮影した写真を提供していた
だいた。よって、今回はその写真をもとに地震による什器の転倒 ・移動、商品の散乱といった地震による被害状況を
設定した。
(5)歩行速度
(4)で設定した被害状況を被害なし、被害小、被害中、被害大、被害特大に分類 し、それに応 じて歩行速度を設定。
被害なし(1.0m/S)、被害小(0.8m/S)、被害中(0.6m/S)、被害大(0.4m/S)、被害特大(0.2m/S)とした。現状では
避難障害と歩行速度の関係を示したデータが無いので、本研究では段階的に歩行速度を落とすことで避難障害の影響
を考慮した。
(6)避難経路
避難開始と同時に避難者は最寄りの避難出口を目指すと仮定した。
(7)避難完了条件及び避難出口番号
什器の配置や地震後の什器の転倒 ・移動、商品の散乱といった避難障害に焦点を当てて論を進めるため、避難者が
階段室及びバックヤー ド内-到達した時点で避難は完了したものとする。これは避難障害の他に避難完了時間に影響
を与える階段室における避難者の滞留を考慮しないためであるO図7に避難者が通過し、避難完了とみなす避難出口
の場所を示す。
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図7 避難出口番号
― �� ―
2.2 避難シミュレーションの結果
表 1に示す条件 1-3について、避難シミュレーションを実施し、什器設置の影響、地震被害の影響について考察
する。
表 1 条件別避難完了時間
条件 1 条件 2 条件 3
什器 無し 有り 有 り
被害 無し 無し 有り
(1)什器設置の影響什器を設置していない条件 1と什器を設置している条件2との間に13秒の避難完了時間の差が見られ
る。これは什器が設置されていることにより避難経路が制限され、条件 2(什器有、被害無)の避難出口⑨付近において滞留が発生したためである。
表 2 各出口を最後に利用した避難者の
出口通過時間(条件 1・2) (秒)
避難出口番号 Lや ② ③ ④ ⑤ ⑥ jヽ @ ⑨ ⑩ ⑪
条件 3什器有、匪宝冠 1811611511018539 2116321978 99
条件 2什器有、匪至璽 1711413 99 93 15 9 ll13228110
図8 条件2(什器有、被害無)
避難開始から40秒後の避難状況
(2)地震被害の影響
地震後の避難障害を考慮した条件 3と考慮していない条件 2との間に87秒の避難完了時間の差が見られる。これ
は地震後の避難障害を考慮し、被害のあった売 り場内の歩行速度を落としたことにより避難者の動きが鈍くなり、条
件 3(什器有、被害有)の避難出口⑨付近において滞留が発生したためである。
― �� ―
表3 各出口を最後に利用した避難者の
出口通過時間(条件2・3) (秒)
避難出口番号 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑱ ⑪
条件 3什器有、匪喜覇 1811611511018539 2116321978 99
条件 2什器有、匪 喜頭 17114 13 99 93 15 9 ll13228110
3.まとめ
本研究では避難障害が避難状況に与える影響について考察した。什器の設置を考慮した場合と什器の設置を考慮し
ない場合では避難経路が限定されるため什器の設置を考慮した場合の方が避難完了時間が遅くなる。また、地震後の
什器の転倒 ・移動、商品の散乱といった避難障害を考慮した場合には、避難完了時間が大幅に遅れる結果となった。
今回行った避難シミュレーションのフロアプランのように、地震後に避難障害の発生しやすい売 り場を横切 らなけれ
ば到達できない位置に避難階段が設置されている場合には、地震後の避難障害を考慮した避難計算を行わなければな
らいと考えられる。
また、本研究では什器の設置による地震避難時の滞留の発生を指摘したが、現在の商業施設においては催事場など
で高密に什器が配置されており、目常時から滞留が発生している。什器の設置状況に影響を与える店舗 レイアウトの
作成には経営的視点が重視されているが、地震が発生する可能性を考えれば、防災的な視点を持って店舗 レイアウト
を考える必要があると考えられる。
参考文献
1)KakegawaS.,NotakeH.,SekizawaA.,EbiharaM.:EvacuationandSmokeMovementInteractiveSimulation
Model,Proceedingsof7thAsia-OceaniaSymposiumonFireScienceandTechnology(2007.9)2)原田曜輔、北後明彦、関沢愛、掛川秀史 :地震時の什器の転倒を考慮 した建築物からの避難に関する研究、平
成 20年度 日本火災学会研究発表会概要集、pp.46-49(2008.5)
著者 :1)北後明彦,都市安全研究センター,教授 ;2)原田曜輔,神戸大学自然科学研究科 大学院生 ;3)関沢
餐,東京大学大学院工学系研究科,教授 ;4)掛川秀史,清水建設技術研究所,研究員
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AStudyonEvacuationSimulationinConsum erFacilitiesaRerEanhquake
AkihikoHOKUGO
YosukeHARADA
AiSEKIZAWA
ShujiKAKEGAWA
Abstract
Today,thestructuralsafet,yofbuildingshasbeenimprovedwith aresultinglmprOVementinquakeresistance.Thereare,however,manymid-to-high-risebuildings,notonlyinbigcitieslikeTokyo,OsakaorNagoya,anditisnecessarytothinkaboutmeasurestokeepfiⅩturesandfurnitureinsidefrommovingort,ipplngduringalong-periodgroundmotionasthehigherfloorsofthesebuildingsareexpectedtogeneratethefloorresponseduringanearthquake.Thisstudyattemptedtore-Createtheimpactofevacuationobstaclessuchasmovedortippedfurnitureandscatteredgoodsonpeople'Sevacuationbehaviorinabuildingatthetimeofanearthquakeinanevacuationsimulation.Theauthorsinterviewedrepresentativesoffourconsumerfacilitieswhichactuallysuffereddamagefromanearthquake,focusingonpeople■sbehaviorbothwhenthebuildingwasshakingandaftertheearthquake,thereactionofstaff,damageinsidethebuildingandevacuationbehavior.Weconduct,edanearthquakeevacuationsimulationofthetimerequiredtocomplet,eevacuat,ionandevacuationbehaviorwithsimulationconditionsbasedontheinformationobtainedthrough t,heinterviewsinordertoseektheimpactofdamageinsidethebuilding,assumingthetippedormovedfurnitureandscatteredgoodswouldpartiallyblockanevacuationrouteandthuscauseareductioninwalkingspeed.Asaresult,aphenomenont,hatpeoplearecrowdedintosalesspacesandpassagewayscausingatrafficjamwasre-createdontheassumptionthatevacuationobstaclessuchasfurnitureandgoodswouldslowdownwalkingspeed.Thepossibilitythatpeoplewouldconcentrateatanemergencyexitwhentheystartimmediateevacuationatthebeginningofanearthquakewasvisualized,Theevacuationsimulationtherefわrecouldbeusefulinadrillforstaffandotherstoadequatelyguidepeoplethroughevacuationroutestocompleteevacuationmoresafelyandsmoothly.
Keywords:earthquake,furnit,uretipplng,evacuationobstacles,evacuationsimulation