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Kobe University Repository : Kernel
タイトルTit le 最近の眼科手術の進歩 (話題)(話題)
著者Author(s) 山中, 昭夫
掲載誌・巻号・ページCitat ion 神戸大学医学部神緑会学術誌,5:64-67
刊行日Issue date 1989-06
資源タイプResource Type Departmental Bullet in Paper / 紀要論文
版区分Resource Version publisher
権利Rights
DOI
URL http://www.lib.kobe-u.ac.jp/handle_kernel/81007109
Create Date: 2018-05-23
話 題
最近の眼科手術の進歩
神戸海星病院 眼科 山 中 昭 夫
1.は じめ に
最近の眼科の手術 は検査法の進歩 と相 まって、あら
ゆ る面で長足 の進歩 を遂げたため このユ0数年間で面目
を完全 に一新 した。
本稿 においてはこれらの うちで特筆に価す ると思わ
れ るものについて述べる。
ユ.新 しい白内障手術 と眼内 レンズ移植術
2.緑 内障手術
3.網 膜硝子体手術
4.光 とくにレーザー手術
5.角 膜手術
これらはすべ て顕微鏡下でおこなわれるようになって
ゆ き現在ではそれが当然のこととして受 け止め られて
いる。 これらについて筆者の経験 をもとにして述べて
みたい。
2.各 論
2-1.新 しい白内障手術 と眼内レンズ移植術
近代 的 白内障手術 はDawielが1745年 に嚢 外法 とし
て 行 い 始 め た の が 始 ま りで あ る。 一方1773年 に
Samuelが レンズ をcapselご と除去す る嚢 内水晶体摘
出術 をはじめた。その後 この嚢外法 と嚢内法 はおたが
いに各時代 によってそれぞれ優劣 を競い合ったが、昭
和30年 頃前 までは一時嚢外法が全勢 をきわめそのまま
嚢 内法が多 く行 われるようにな り、またそれに続いて
顕微鏡下手術 でこれが行われる ようになったためこの
手術 は完成度の高い ものと考え られたのである。
一 方1949年 にRid且eyが 嚢外手術 に併用 して試 みは
じめた眼内 レンズを移植する術式はときとして レンズ
が硝 子 体腔 内 に落下す る合併症 を予 防す るた めに
Barraqueら に よって種 々の形 の前房 レンズ が案 出さ
れて試用 されたが、これらのレンズは移植後数年たっ
て角膜障害が多発 したため一時はこの術式が大変危ぶ
まれた。
しか し、この危険視 された眼内 レンズ もユ958年に
Binkhvrst(ユ958),Epstein(1962)ら が始 めた虹彩支持
型眼内レンズによ りその合併症の発生率が大幅に減少
して約5%程 にまでなったため、漸 く実用的なもの と
して認め られるようになった。
我が国 において もRidleyやBarraque型 の レンズが
いちはや く用い られて同 じ様に充分な成功が得 られて
いなかったのであるが、1973年 に竹内がBinkhorst型
の レンズの移植にはじめて成功 して ことに刺激されて
漸 く多 くの眼内 レンズの移植手術が行 われるように
なって同 じような成績が得 られた。 しか し、これ等 の
眼 内レンズにおいては、国の内外 を問わず2%程 度 の
角膜障害か網膜剥離、CMEが それぞれ発 生す るこ と
が避けられなか った。
その後これ らの合併症の原因の解明と対策が進んだ
ため旧来 とは異 った新 しい形の白内障手術が行われる
ようになった。それは1975年 頃 より行われは じめた計
画的嚢外手術法や以前 よ り行われていた超音波乳化吸
引法が盛 んとなって、これに後房 レンズが移植 される
ようにな り、 さらにvisco・elasticmaterialと してメチ
ルセルローズやピアルロン酸ナ トリウムが併用される
ようになって、この白内障手術その もの、 さらにこの
上 に行 う眼内 レンズ移植 が容易 となりこれ らの術式 は
その時点でパターン化 されるまでとなった。
最近で は、単純 な後房 のciliarysu且cus固 定の10L
固定法から後房 レンズでinthebag固 定 を行 うことに
より確実で、合併症の少ない術式へ と変化 していった。
ここに眼内レンズに用い られる材質について筆者 はた
またま神戸大学工学部の工学科学科松本前教授、中前
教授その他多 くの機関の諸氏 と共にここ10年 来共同研
究 を続け世界的な レベルで交流 を行 って来た。又、昭
和60年 には兵庫県科学技術奨励賞 もいただ く栄誉 に浴
し、本年 も世界バイオマテ リアル学会京都(63年4月
末)に 眼科特別シ ンポ ジウム を中前教授 と共 にorga-
ntzeす るに到っていることを付記する。
これ らの結果か ら従来の眼内レンズに用い られる材
質 は種 々あ るなか に光学部はポ リメチールメタクリ
レー ト、PMMAで 支柱部 にはアイ ソタクチ ックポ リ
プロ ピレンPP(lsoPP)ポ リビリデ ンフルオライ ド
(PVDF)が 今の ところe一 安全 な もの と考 えられる
点を明 らかにした。 とくに 日本製のものが世界にさき
が け て分子 内架 橋 を したPMMAを 光学 部 に用 い
一64一
神緑会学術誌 第5巻1989年
PVDFを ル ー プ に 用 い た こ と は 生 体 内 劣 化 の 防 止 、
YAGレ ー ザ ー に 対 す る 安 全 面 か らみ て 特 筆 に値 す る
快 挙 で あ っ た と言 え る こ とが 確 認 され た 。
現 在 で は 、 生 体 適 合 性 が あ ら ゆ る面 か ら検 討 され は
じめ 従 来 の ハ ー ドな材 質 と か 、 そ の 後siliconeやpoly
HEMA製 の ソ フ トな 眼 内 レ ン ズ の 可 否 さ ら に は嚢 内
に 粘 弾 性 物 質 を再 注 入 す る事 の 可 否 そ の 方 法 な どが 論
ぜ られ 、 よ り安 全 で 成 功 率 の 高 い 手 術 が 検 討 さ れ.てい
る。
こ こ ま で に 述 べ て 来 た 中 で 現 在 、 一 応 我 々が 一 般 化
して い る 術 式 を述 べ れ ば 、 水 晶 体 は 原 則 と して 嚢 外 で
摘 出 す る 。 これ は 、 ケ ル マ ン の 乳 化 吸 引 法 また は計 画
的 嚢 外 摘 出法 を 行 い 、 ピア ル ロ ン酸 を前 房 に注 入 し、
前 房 を よ く形 成 して お き眼 内 レ ン ズ を嚢 内 に挿 入 固 定
す る。 あ と は ピ ア ル ロ ン酸 を 除 去 し、 瞳 孔 を収 縮 させ
創 を 閉 じる 。 手 術 用 ビ デ オ ケ ラ トメ ー タ ー を用 い て 創
の 縫 合 に よ る乱 視 発 生 を予 防controlす る 。
す で に 嚢 内 、 また は嚢 外 水 晶 体 摘 出手 術 が 行 っ て あ
る 無 水 晶 体 眼 に は 前 房 眼 内 レ ン ズ ま た は 後 房 眼 内 レ ン
ズ を そ れ ぞれ 挿 入 す る場 合 が あ る 。 前 者 は前 房 隅 角 で
支 持 固 定 さ れ 、 後 者 はciliarysulcus固 定 と な る が い
ず れ もuvealfixationと 言 う点 で は 同 じ意 味 に な る。
2-2.緑 内 障
緑 内 障 手 術 はLegrange(1906-7)がsclerecto-
iridectomyを 行 っ た の が 近 代 的 なreasonableな 緑 内 障
手 術 で あ っ た 。 そ の 後EIIiot(1909~32)が イ ン ドの
マ ドラ ス で こ れ を強 角 膜 ト レパ ン法 を初 め こ れ が 一 般
的 な 方 法 と な っ た 。 狭 隅 角 緑 内 障 に 対 す るGraefe
(1928--1970)の 虹 彩 切 除 は ま さ に 画 期 的 な も の で
あ っ た 。
1968年 にCairnsが 始 め たtrabeculotomyは 術 後 の 戻
水 のoveroutflowをcontrolす る こ とが で き る よ う に
な った た め 昭和40年 頃 よ り爆 発 的 に 用 い ら れ る よ うに
な った 。
1962年 にAllenが は じ め たtrabeculotomyはopen
angleglaucomaの 合 理 的 な 治 療 法 と して 受 け 入 れ られ
た 。
1963年 にBarcanの は じめ たgoniotomyはcongenital
g且aucamaの 原 因 治 療 法 と して 考 え られ て い る。
現 在 で は レ ー ザ ー イ リデ ク ト ミー一、 レー ザ ー トラベ
ク ロ プ ラ ス テ ィが ア ル ゴ ン レー ザ ー 、Q-switchYAG
レ ー ザ ー で 行 わ れ る よ う に な り、R-bl・ckerの 普 及
と と も に 観 血 的 手 術 の 頻 度 は こ こ数 年 格 段 に 減 少 し
た 。
2-3.網 膜 硝 子 体 手 術
網 膜 剥 離 は そ の 原 因 は 網 膜 裂 孔 で あ り、 こ れ を手 術
的 に 閉 鎖 す る こ と に よ っ て 治 療 し得 る こ と を実 証 した
のはスイスローザ ンヌのGonin(191$一 一一25)である。
この裂孔閉鎖治療法 は最初は化学的な腐食法が用 い
られたが1930年 に漸 く電気的なジアテル ミーの使用が
Weberに より初め られ、 これで古典 的な網膜剥離 の
治療方法はほぼ完成 された と言 って良い。
1965年 か ら1960年 代に入 ってSF6眼 内注 入法、強
膜外側 よりの冷凍法、種hの 方法で(強 膜のinfvlding、
強膜短縮、強膜のポ リビニール)そ の後シリコーンゴ
ム(ゴ ム状又はforam状)を 強膜外 にexoplantし た り、
強膜内にimplantし た りするetcで 強膜 を強制的 に内
方に陥入させ閉孔 を閉鎖す る(強 膜内陥術)。Mayer‐
Schmickertの 発案 になるXenon光 凝固 の応用等が一
挙に案出されたが、これが充分に使いこなせるまでに
は約10年 の期間が必要であった。
ここに重大な発想の転換 としての硝子体手術が登場
す る。1960年 代の前半に従来聖域 とされていた硝子体
を直接手術的に除去 して治療不能 と考 えられた外傷性
硝子体混濁がマイア ミ大学のKasmerに よって成功裏
に除去 されるこ とが証せ られぜここにopensky法 と
しての硝子体手術 法が生 まれた。実はこの発見 より先
立つ こと数年前 に日本の百々教授(広 島大学)が 同 じ
方法で同 じように開眼に成功 していたが、 これは日本
では残念なが ら評価 されずこれに続 く日本での発展は
得 られなかった。 ところで このopensky法 は硝子体
腔内の病理的組織 の除去 に角膜 をlirnbusで 大 きく切
開 して、大気圧下で除去手術 を行 うために角膜虹彩の
障害 も大 きくまた駆遂性 出血 の危険 も大であることは
避けられなかった。
この欠点 を取 り除 くために考案 されたのが 同 じく
Maiami大 学 で 当 時 共 に働 い て い た ドイ ッ 人 の
Machemerが 考案 したclosedのvitrectomyで ある。 こ
れについては共同研究者のParelと 開発 を行った結果
infusionを 行いなが らcuttingとsuctionとilumination
が同時 に小 さい創で可能な器械 を考案 して、ある一定
の圧力下で硝子体腔内の病理組織を除去する方法 をつ
くりだ した。この方法を発展 させるために彼 らは次 々
と新 しい機軸 をだ して、顕微鏡の改良、手術用の椅子、
手置 き台、眼底観察用の手術用コンタク トレンズ、眼
内で もう一つの創 を作成 してここか ら挿入 して他の操
作を同時 に行 うための種々の道具の考案等 を行 った。
そ れはinfusion付 きhookedgeed正e、 種々の摂子、眼
内で操作可能なAngledま たは水平型の手動式又は 自
動式 の鋏、眼 内マ グネ ッ ト、眼 内吸 引装 置、endo
diathermy、endophotocoagulator、endolasershで
あ り、 これを用いた術式 を考案 し、一度に少な くとも
4種 か ら5種 の手術が可能になった。これに従ってよ
り重症の疾患が治療可能 となっていった。我hも 特殊
一65一
な表面親水性手術用 レンズ、網膜固定用セラ ミック鋲、
手術用 の頭位変換可能な手術台の開発 を積極的に行い
この新戦線 の発展 の一部になった。
これに用いられた硝子体切除の器械 は多 くの機能が
一つ に まとめ られ ているので、fullfuncti。ntipと 呼
ばれ るが これは切開創が3.2mmの 大 きさの挿入孔を要
す るため これ を更 に小 さ くす る目的で ①infusion
②cuttingとSl1Ct10Tlの 孔 を通 して と ③照明系 を20
か ら19ゲ ージ針の大 きさの孔 を通 してい く方法が案出
された。 これ は従来の機能 を分割 した と言 う意味で
spritsystenlと 呼ばれている。
これに吸引が 自動 化 し、 さらにcomputer制 御 によ
り手術が行えるようになって きて、より安全な手術が
行 えるようにな りつつある。
これ等の方法で硝子体腔内の病 的組織の除去が可能
となったため、硝子体混濁、牽引性の網膜剥離、網膜
前面 または後面に発生する病的組織の除去等h、 従来
全 く治療不能 と考 えられていた疾患が治療可能 となっ
て いった。病気の種類 については、種々の血管疾患 、
網膜静脈血栓症 、糖尿病性網膜症、イールズ、テルソ
ン症候群、種々の裂孔原性網膜剥離、巨大裂孔、黄斑
裂孔 、増殖性硝子体網膜症、即 ち原因膜前面 または後 ・
面の増殖物 による牽引性剥離、外傷、眼内異物、感染、
その他があげ られる。
他方この硝子体腔内の病的組織の除去のみでなく、
内陥術等の従来の網膜剥離の術式 と併用 し、 また眼内
一超音波その他の方法で レンズを除去 した りさらに、
内部か らSF6Gasな どのinertな:・ やsiliconeoil(原
則 と して一時 的使用〉 による眼内tamponade法 を従
来の網膜剥離手術法 より再度復活 させて使用さらには
この網膜edgeを 固定するのにセラ ミックの鋲 を用 い
た りすることにより巨大裂孔の治療、網膜前後物の増
殖物 の除去 、治療のための網膜切開、網膜切除 を行 っ
たあ との網膜の固定等のより頑固な疾患 に対 して行 う
手術で よりよい成績が得 られるようになった。
術 中角膜混濁 にピアルロン酸 ナ トリウムの使用は有
用である。 ここにみ られるようにこの手術方法の発展
によって従来の白内障手術 とか網膜剥離手術 とかに細
分 されていた術式が一つの手術 に再編成 されあ らゆる
分野の組織、技術 が一つの手術法に収敏 してい き、ま
たこれが他の術式に影響 を与えて白内障手術の発展 を
みる ことで ここにclosedeyesurgeryと も言 うべ き一
つ のtechniqueが 確立 されていっているさまが観察 さ
れるであろう。
現在 は複雑な働 きが可能 なcomputerで よ り良 く制
御 された機器の 開発 と眼 内tamponade物 質の改良、
網膜固定法の改良が行 われつつあ り、この面の治療成
績 の 向 上 に 努 力 が 払 わ れ つ つ あ る と共 に この 方 法 の 標
準 化 と安 全 化 を は か りつ つ こ のtechnique普 及 に 努 力
が 払 わ れ て い る。
な お 、SF6、perfluorocarbon等 は そ れ 自体N2、02、
CO2等 を吸 収 して3倍 か ら5倍 にexpandす る体 質 が
あ る 。1980年 頃 よ りこ の性 質 を利 用 してmacularhole、
上 方 の 網 膜 裂 孔 の 治 療 に こ れ 等 を眼 内 に注 入 し、 裂 孔
をcryoな り レー ザ ー な りで 処 理 す る の み で 剥 離 を治
療 す る 、pneumoretin。pexyな る 方 法 が 試 み ら れ 、 良
い 網 膜 復 位 と共 に と くに 術 後 視 力 の か な り よ い結 果 が
得 ら れ る こ と が 判 り、 こ れ 等 の 疾 患 に 対 す る 朗 報 と
な っ て 来 た。
2-4.光 お よ び レー ザ ー
前 述 の 網 膜 剥 離 に 対 す るXenon光 凝 固 法 の 発 明 は
第 二 次 世 界 大 戦 後 の 眼 科2大 発 明 の 一 つ で あ るが 、 そ
の 後1965年 に は す で に ル ビ ー レー ザ ー の 治 療 が 行 わ
れ 、 そ の 後 ア ル ゴ ン、 ク リ プ トン か ら ダ イ レー ザ ー に
到 っ て は450nmの 短 波 長 よ り600nmの 長 波 長 ま で 自 由
に選 択 可 能 と な り、網 膜 の 各 部 の 色 素 の 分 布 に応 じ黄
斑 部 で はFuscinに 応 じたyellow波 長 を 、 周 辺 部 で は
よ り長 波 長 を 又 中 間 透 光 体 と くに 水 晶 体 にcataracta
の あ る 場 合 は ク リ プ トン な どの 長 波 長 の レー ザ ー を用
い て手 術 を行 う よ う に な りよ り よい 成 績 を あ げ 得 る よ
う に な っ た。
Endolaserは 未 処 理 の 血 管 疾 患 のvitrectamyの 成 績
向 上 に 有 用 で 、 又 網 膜 裂 孔 の 処 理 に 対 し術 後 視 力 の 向
上 に 有 用 な 働 き を し っ つ あ る 。 緑 内 障 に 対 し て は
openangleglucomaに 対 して 線 維 柱 帯 の 色 素 帯 下 部 を
Laserで 照 射 を行 い こ れ に よ る 線 維 柱 帯 の 癩 痕 形 成 に
よ り 眼 圧 を 下 降 させ る こ と が 行 わ れ て い る。Laser
trabeculoplasty[LTP1(1981)angleclousureglucomaに
対 して は ア ル ゴ ン ま た はYAGを 用 い てiridectomyが
行 わ れ 、非 観 血 的 な 治 療 法 が 主 役 を しめ る よ うに な っ
た こ と は す で に 述 べ た 。 ま たYAGLaserは 元 来 嚢 外
手 術 後 に 発 生 す るErschnigsPear1に よ る 二 次 白 内 障
の 切 開 に特 に 有 効 で あ る た め 急 速 に こ こ数 年 の 問 に使
用 され は じめ た もの で あ る が 、 こ れ は 二 次 白 内 障 に対
して は 非 観 血 的 に行 え る 患 者 に も術 者 に も負 担 の 少 な
い 実 に 有 用 な 術 式 で あ る 。
な お 、 こ れ は さ ら に 白 内 障 術 前 のcapsulotomyや
lens核 の 術 前 の 破 壊 が 試 み ら れ て い る 。 一 方Exima
Laserはcomputer化 が は か ら れ 後 述 の 角 膜 手 術 の 定
量 的 手 術 化 に 向 か って 応 用 され は じめ た。 今 後 の 発 展
が 注 目 され る 。
2-5.角 膜
従 来 角 膜 混 濁 に 関 して は 、 全 層 角 膜 移 植 と 表 層 角 膜
移 植 が 行 わ れ て い た。
・・
神緑会学術誌 第5巻1989年
一方、戦前 に佐藤が角膜の前面および後面か ら放射
状 に切開を入れ近視の矯正 を行 った術式が、術後角膜
内皮の障害のため水庖性 角膜症 を発生 したため、完全
に放棄 されていた ものが、最近になってロシア、アメ
リカで再度検討 され、表面からのみの切開で近視や乱
視の矯正が行い得ることが可能 とな り、日本で再度確
認が行われはじめた。
この術式 にcomputer化 されたEximaLaserが 用い
られようとしている。 また、あ らか じめ保存角膜 をレ
ンズ状にけづ りあげたもの を角膜 に半層移植す るエ ピ
ケラ トミレウシスの術式 も試み られ始めた。
重症の結膜疾患 を伴 う角膜疾患 に対する縁部形成術
の試み もある。このように角膜の分野は角膜移植術の
出現以来長 らく停滞を続けていた分野であるが、眼内
レンズによる水胞性 角膜炎の原因が角膜内皮障害にあ
ることが発見されたことや角膜表皮、角膜実質の細胞
学的な知見や生化学的な種々の基礎 的発見が増加・した
ことに刺激されて、次の発展への歩みを始めたところ
である。今後の発展が期待 され る。
3.お わ り に
古 典 的 な 白 内 障 、 緑 内 障 、 網 膜 剥 離 、 角 膜 の 手 術 的
治 療 が 最 近 顕 微 鏡 の 使 用 、 め ざ ま しいTechnologyの
発 展 に よ り大 き く変 わ っ て 行 っ た様 を述 べ た 。 こ れ が
さ ら に レ ー ザ ー やcomputerのbiotechnology,biornate-
rialのslewtechnologyの 発 達 、 ま た 細 胞 生 物 学 、 生 化
学 、免 疫 学 な どの 基 礎 医 学 の 発 展 に よ り眼 科 手 術 が さ
ら に 大 き く急 速 に発 達 して 行 くこ とが 予 想 され る 。 こ
の 意 味 か ら眼 科 の 手 術 は 若 いgenerationが こ の 面 で 大
い に 活 躍 す る 可 能 性 を 秘 め た 分 野 で あ り続 け る と思 わ
れ る 。
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