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50 JUL. 2016 Hail Mary Magazine 51 JUL. 2016 Hail Mary Magazine JEFFERY&WEST』は1987年に英国で創業したシューズブランド。 右がパ イソン、左がオイルドレザーの通称チェルシーブーツ。 鮎川氏がこのブーツを 認めた理由はセンターにシームがある点。このこだわりがロックのスピリットその ものだ His Footgear 「おれたちの青春時代には、ロックを志す若者がみんな憧 れたブーツちゅうものがあったんです。それがチェルシー ブーツ。サイドゴアのことだけど、おれたちは当時からチェ ルシーって呼んでましたね。このブーツが輝いて見えたの は、1960年代に現れたビートルズ、ローリング・ストーン ズ、キンクス、スペンサー・デイヴィスといったイギリス 出身のロックバンドの連中が、みんな履いとったからです。 夢のようなブーツに見えました。彼らが履いとるブーツが 欲しいというのも、ロックに足を踏み込んだ時からの目標 でもあったわけです。シーナ&ロケッツをスタートしてか ら、渋谷の靴屋でシーナと一緒に一足オーダーしたのがは じまり。自分にとってのアイコンになって、『おれたちはロッ クやってるぜ』ってメッセージを放つものとして履きつづ けています。JEFFERY&WESTのサイドゴアは(シーナ &ロケッツ)結成25周年のアルバムを作る時に、スタイリ ストの人が持ってきて、それが気に入って履くようになり ました。今履いているパイソンのブーツもそうです。ほん もののチェルシーブーツは、センターにシームラインが入っ ているんですよね。これがないとだめ。ビートル ズやストーンズのメンバーのブーツにもちゃんと 入っとる。JEFFERY&WESTは作りもいいので ガンガン履ける。今は4足を履きまわしています。 なにしろズボッと簡単に脱ぎ履きできて便利やし、服装も 選ばない。ステージでもよく履いています。特別な思いの こもったブーツやから、これを履くと気合いも一段と入る。 洒落心で履いとるんじゃなく、ブーツそのものがロックな んです」 Profile 鮎川 1948年生まれ、福岡県久留米市出身。ロッ クバンド「シーナ&ロケッツ」のリーダーを務め、 日本を代表するギタリストに。 長身でスリムな ルックスも、ソリッドでブルージーなギタープレ イも健在ライブも意欲的にこなす。20166 9日にはサンハウス・菊(柴山俊之)のニュー アルバム『ROCKN ROLL MUSE』をプ ロデュース、全国ツアーも開催する SESSION 「毎年、ホワイトバックスやダーティーバックスといった バックスキンの靴をシューズクローゼットから出してくる 時期は決まっています。それは、ウール素材のウェアをク ローゼットに仕舞うときです。私にとってバックスキンの 靴は、春が来たことを体感するためのギアなんです。 バックスキンの靴は綺麗に保つのは至難の技。いくつか の靴磨き道具を買ってきたけど、最近は洗濯機で丸洗いす るようにしているんですよ。スニーカーみたいにね。そう すると靴の汚れが落ちている。ギアとしての靴は、このぐ らいの乱暴な方法で付き合うこともいいのかもしれないと、 勝手に決めています。 良い靴は世代を語るものです。良い靴は時を経 てもっと良くなるものだというのをいってきたの は、私の世代が初めてではないはずです。良い靴 を持って、それを履かなければいけないということは、一 人前の男としてすべきことをもうひとつ成し遂げたことな のです。 コンテンポラリーアーティストとして、私が手に入れよ うと思った靴は色、形、素材すべてが見本なんです。そし て、時間をかけて経年変化を楽しむ歴史の見本なんです。 それは私が自分自身で築く歴史の見本。このダーティー バックスも、自分自身の歴史です。そうだ、バックスキン の靴といわれて頭に思い浮かぶ男は、デビッド・ホックニー です。英国生まれの彼は、明るいLAに移り住んでからア クリル素材で描いたプールの作品群が有名ですよね。彼の アートは陽気さがいっぱいだから。そういう靴なんですね、 バックスキンの靴は」 ロンドンで10年ほど前に買ったラルフローレンのダーティーバックス。ホワイトバッ クスもラルフ ローレン。15年前にパリで買ったという。 売り手はロシア語を 話すかつてプロとして活躍したバレダンサーだったとか His Footgear Profile セルゲイ・スヴィアチェンコ 1952年生まれ,、ウクライナのハルキウ出身。1990 年よりデンマークのヴィボー在住。 建築家を経て、 コンテンポラリーアーティストに転 向。Modern Classicism (現代古典主義)を現代的に再解釈し たヴィジュアルアートを発表。ファッションをアートと して落とし込んだプロジェクトとして、Close Up & Privateブログからアイデアを得た同名の雑誌を発信。 写真の題名は『SECRETLY』、デンマークの森林 を違う国に持っていくというアイデア FOOTGEAR BIBLE あの知的不良の靴が見たい GATE A 07 /06 Mr. Sergei Sviatchenko 05/06 Mr. Makoto Ayukawa Artist Musician written by Masaki Takahashi / photographed by Makoto Kujiraoka サイドゴアはロックやね “Chelsea boot is my body.” interview & text by: Aya Komboo / photographed by: Kurt Nielsen バックスキンの靴との交際法 BUCKSKIN SHOE HAS COME!

Kw $M ÆUh ú w SESSION 07 Artist 05 Musiciannellorusso.com/cuap/dwn/free-10.pdf · 2016. 11. 20. · « lo e±loÝ¿· ´ Lm wq`o dVmn ZoM b{+&''&3:8&45w± Å° x¢³ Æ Íé¿À£A

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  • 50JUL. 2016 Hail Mary Magazine51 JUL. 2016 Hail Mary Magazine

    『JEFFERY&WEST』は1987年に英国で創業したシューズブランド。右がパイソン、左がオイルドレザーの通称チェルシーブーツ。鮎川氏がこのブーツを認めた理由はセンターにシームがある点。このこだわりがロックのスピリットそのものだ

    【His Footgear】

    「おれたちの青春時代には、ロックを志す若者がみんな憧れたブーツちゅうものがあったんです。それがチェルシーブーツ。サイドゴアのことだけど、おれたちは当時からチェルシーって呼んでましたね。このブーツが輝いて見えたのは、1960年代に現れたビートルズ、ローリング・ストーンズ、キンクス、スペンサー・デイヴィスといったイギリス出身のロックバンドの連中が、みんな履いとったからです。夢のようなブーツに見えました。彼らが履いとるブーツが欲しいというのも、ロックに足を踏み込んだ時からの目標でもあったわけです。シーナ&ロケッツをスタートしてから、渋谷の靴屋でシーナと一緒に一足オーダーしたのがはじまり。自分にとってのアイコンになって、『おれたちはロックやってるぜ』ってメッセージを放つものとして履きつづけています。JEFFERY&WESTのサイドゴアは(シーナ&ロケッツ)結成25周年のアルバムを作る時に、スタイリストの人が持ってきて、それが気に入って履くようになりました。今履いているパイソンのブーツもそうです。ほんもののチェルシーブーツは、センターにシームラインが入っているんですよね。これがないとだめ。ビートルズやストーンズのメンバーのブーツにもちゃんと入っとる。JEFFERY&WESTは作りもいいのでガンガン履ける。今は4足を履きまわしています。なにしろズボッと簡単に脱ぎ履きできて便利やし、服装も選ばない。ステージでもよく履いています。特別な思いのこもったブーツやから、これを履くと気合いも一段と入る。洒落心で履いとるんじゃなく、ブーツそのものがロックなんです」

    Profile 鮎川 誠1948年生まれ、福岡県久留米市出身。ロックバンド「シーナ&ロケッツ」のリーダーを務め、日本を代表するギタリストに。長身でスリムなルックスも、ソリッドでブルージーなギタープレイも健在ライブも意欲的にこなす。2016年6月9日にはサンハウス・菊(柴山俊之)のニューアルバム『ROCK’N ROLL MUSE』をプロデュース、全国ツアーも開催する

    SESSION

    「毎年、ホワイトバックスやダーティーバックスといったバックスキンの靴をシューズクローゼットから出してくる時期は決まっています。それは、ウール素材のウェアをクローゼットに仕舞うときです。私にとってバックスキンの靴は、春が来たことを体感するためのギアなんです。 バックスキンの靴は綺麗に保つのは至難の技。いくつかの靴磨き道具を買ってきたけど、最近は洗濯機で丸洗いするようにしているんですよ。スニーカーみたいにね。そうすると靴の汚れが落ちている。ギアとしての靴は、このぐらいの乱暴な方法で付き合うこともいいのかもしれないと、

    勝手に決めています。 良い靴は世代を語るものです。良い靴は時を経てもっと良くなるものだというのをいってきたのは、私の世代が初めてではないはずです。良い靴

    を持って、それを履かなければいけないということは、一人前の男としてすべきことをもうひとつ成し遂げたことなのです。 コンテンポラリーアーティストとして、私が手に入れようと思った靴は色、形、素材すべてが見本なんです。そして、時間をかけて経年変化を楽しむ歴史の見本なんです。それは私が自分自身で築く歴史の見本。このダーティーバックスも、自分自身の歴史です。そうだ、バックスキンの靴といわれて頭に思い浮かぶ男は、デビッド・ホックニーです。英国生まれの彼は、明るいLAに移り住んでからアクリル素材で描いたプールの作品群が有名ですよね。彼のアートは陽気さがいっぱいだから。そういう靴なんですね、バックスキンの靴は」

    ロンドンで10年ほど前に買ったラルフ ローレンのダーティーバックス。ホワイトバックスもラルフ ローレン。15年前にパリで買ったという。売り手はロシア語を話すかつてプロとして活躍したバレダンサーだったとか

    【His Footgear】

    Profile セルゲイ・スヴィアチェンコ1952年生まれ,、ウクライナのハルキウ出身。1990年よりデンマークのヴィボー在住。建築家を経て、コンテンポラリーアーティストに転向。Modern Classicism (現代古典主義)を現代的に再解釈したヴィジュアルアートを発表。ファッションをアートとして落とし込んだプロジェクトとして、Close Up & Privateブログからアイデアを得た同名の雑誌を発信。写真の題名は『SECRETLY』、デンマークの森林を違う国に持っていくというアイデア

    FOOTGEAR BIBLEあの知的不良の靴が見たい

    GATE A

    07/06Mr. Sergei Sviatchenko

    05/06Mr. Makoto Ayukawa

    Artist Musician

    written by Masaki Takahashi / photographed by Makoto Kujiraoka

    サイドゴアはロックやね“Chelsea boot is my body.”

    interview & text by: Aya Komboo / photographed by: Kurt Nielsen

    バックスキンの靴との交際法BUCKSKIN SHOE HAS COME!