14
LT8312 1 8312f 詳細:www.linear-tech.co.jp/LT8312 標準的応用例 特長 概要 力率補正回路内蔵の 昇圧コントローラ LT ® 8312 は力率補正(PFC)型 の 昇 圧 コントロ ーラで す。 LT8312 ベースの設計では、入力電流をアクティブに調整する ことにより、 0.99 を超える力率を実現できるので、ほとんどの 高調波電流放出規制に適合できます。 LT8312 は幅広い種類のオフライン・アプリケーションに適して います。入力範囲は、主に外付け部品の選択に応じて拡大ま たは縮小することができます。最大 250Wの出力電力レベルで 95%より高い効率を達成できます。 アプリケーション n 外付け部品点数が最小限で済むPFC 昇圧 n V IN V OUT の制限要因は外付け部品のみ n アクティブな力率補正 n 高調波歪みが少ない n 過電圧保護 n エネルギー・スター規格準拠 (無負荷動作時の消費電力が 0.5W 未満) n 16 ピンMSOP パッケージ n 産業用機器 n 航空機 LLTLTCLTMLinear Technology およびLinear のロゴは、リニアテクノロジー社の登録商 標です。その他すべての商標の所有権は、それぞれの所有者に帰属します。 効率 90V TO 265V AC 0.1μF B1 GBU404 10μF 2.2μF 499k 499k 1M 95.3k 560μF ×2 V OUT 400V 0.5A 4.7pF 4.7μF 100k 221k 100k 100k 2k 1M 1M 9.53k 0.01Ω 8312 TA01a D3 D4 CMR5H-06 D2 20Ω 20Ω 4:1 V IN V IN_SENSE FB GATE EN/UVLO DCM LT8312 V C SENSE V REF OVP GND INTV CC POWER (W) 0 40 80 100 20 60 120 140 160 8312 G01 91 EFFICIENCY (%) 92 94 93 95 97 96 98 99 115VAC 230VAC 50Hz 汎用入力200W PFC 昇圧コンバータ

LT8312 - 力率補正回路内蔵の昇圧コントローラ · このピンは、内部起動回路と intvcc ldoに電流を供給します。このピンはコンデンサで ローカルにバイパスする必要があります。42vのシャント・レ

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LT8312

18312f

詳細: www.linear-tech.co.jp/LT8312

標準的応用例

特長 概要

力率補正回路内蔵の 昇圧コントローラ

LT®8312は力率補正(PFC)型の昇圧コントローラです。LT8312ベースの設計では、入力電流をアクティブに調整することにより、0.99を超える力率を実現できるので、ほとんどの高調波電流放出規制に適合できます。

LT8312は幅広い種類のオフライン・アプリケーションに適しています。入力範囲は、主に外付け部品の選択に応じて拡大または縮小することができます。最大250Wの出力電力レベルで95%より高い効率を達成できます。

アプリケーション

n 外付け部品点数が最小限で済むPFC昇圧n VINとVOUTの制限要因は外付け部品のみn アクティブな力率補正n 高調波歪みが少ないn 過電圧保護 n エネルギー・スター規格準拠

(無負荷動作時の消費電力が0.5W未満)n 16ピンMSOPパッケージ

n 産業用機器n 航空機

L、LT、LTC、LTM、Linear TechnologyおよびLinearのロゴは、リニアテクノロジー社の登録商標です。その他すべての商標の所有権は、それぞれの所有者に帰属します。

効率90V

TO 265VAC

0.1µF

B1GBU404

10µF

2.2µF

499k

499k

1M

95.3k

560µF×2

VOUT400V0.5A

4.7pF

4.7µF100k

221k

100k

100k2k

1M

1M

9.53k

0.01Ω

8312 TA01a

D3

D4CMR5H-06

D2 20Ω

20Ω

4:1•

VIN

VIN_SENSE FB

GATE

EN/UVLO

DCM

LT8312

VC

SENSEVREF

OVP GND

INTVCC

POWER (W)0 40 80 10020 60 120 140 160

8312 G01

91

EFFI

CIEN

CY (%

)

92

94

93

95

97

96

98

99

115VAC

230VAC 50Hz

汎用入力200W PFC昇圧コンバータ

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LT8312

28312f

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ピン配置絶対最大定格

EN/UVLO ............................................................................... 30VVIN ....................................................................................... 42VINTVCC .................................................................................. 18VFB ........................................................................................... 3VVC ........................................................................................... 5VVIN(SENSE) ............................................................................ 1mAOVP ......................................................................................... 4VSENSE .................................................................................. 0.4VDCM .................................................................................. ±3mA動作温度範囲(Note 2) ..................................... –40°C~125°C保存温度範囲.................................................... –65°C~150°C

(Note 1)

12345678

GNDGNDGNDVREFOVP

VCGNDGND

161514131211109

SENSEGATEINTVCCEN/UVLOVINDCMFB

TOP VIEW

MS PACKAGE16-LEAD PLASTIC MSOP

VIN_SENSE

θJA = 125°C/W

発注情報

無鉛仕上げ テープ・アンド・リール 製品マーキング* パッケージ 温度範囲LT8312EMS#PBF LT8312EMS#TRPBF 8312 16-Lead Plastic MSOP –40°C to 125°CLT8312IMS#PBF LT8312IMS#TRPBF 8312 16-Lead Plastic MSOP –40°C to 125°CLT8312HMS#PBF LT8312HMS#TRPBF 8312 16-Lead Plastic MSOP –40°C to 150°CLT8312MPMS#PBF LT8312MPMS#TRPBF 8312 16-Lead Plastic MSOP –55°C to 150°Cさらに広い動作温度範囲で規定されるデバイスについては、弊社または弊社代理店にお問い合わせください。*温度グレードは出荷時のコンテナのラベルで識別されます。 非標準の鉛ベース仕様の製品の詳細については、弊社または弊社代理店にお問い合わせください。無鉛仕上げの製品マーキングの詳細については、http://www.linear-tech.co.jp/leadfree/をご覧ください。 テープアンドリールの仕様の詳細については、http://www.linear-tech.co.jp/tapeandreel/をご覧ください。

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LT8312

38312f

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電気的特性l は全動作温度範囲での規格値を意味する。それ以外はTA = 25°Cでの値。

PARAMETER CONDITIONS MIN TYP MAX UNITS

Input Voltage Range 10 38 V

Quiescent Current VEN/UVLO = 0.2V Not Switching

45 60 70

70 µA µA

VIN Quiescent Current, INTVCC Overdriven VINTVCC = 11V 60 μA

VIN Shunt Regulator Voltage I = 1mA 40 V

VIN Shunt Regulator Current Limit 8 mA

INTVCC Quiescent Current VEN/UVLO = 0.2V VEN/UVLO = 1.5V, Not Switching

12.5 1.8

15.5 2.2

17.5 2.7

µA mA

EN/UVLO Pin Threshold EN/UVLO Pin Voltage Rising l 1.21 1.25 1.29 V

EN/UVLO Pin Hysteresis Current EN/UVLO = 1V 8 10 12 μA

VREF Voltage 0µA Load 200µA Load

l

l

1.97 1.95

2.0 1.98

2.03 2.03

V V

SENSE Current Limit Threshold 96 102 107 mV

Minimum SENSE Current Limit 3 mV

SENSE Input Bias Current Current Out of Pin 15 μA

Current Sense Blanking Time 90 130 170 ns

FB Voltage l 1.22 1.25 1.28 V

FB Voltage Line Regulation 10V < VIN < 35V 0.01 0.03 %/V

FB Pin Bias Current (Note 3), FB = 1.25V, OVP = 1.35V 100 600 nA

FB Error Amplifier Voltage Gain ΔVVC/ΔVFB 180 V/V

FB Error Amplifier Transconductance ΔI = 5µA 170 µmhos

FB Low Detection Voltage 0.1 V

DCM Current Turn-On Threshold Current Out of Pin 80 μA

Maximum Oscillator Frequency 400 kHz

リニア・レギュレータINTVCC Regulation Voltage 9.8 10 10.4 V

Dropout (VIN-INTVCC) IINTVCC = –10mA, VIN = 10V 500 900 mV

Current Limit INTVCC < 9.5V INTVCC > 9.5V

17 80

25 120

mA mA

ゲート・ドライバtr GATE Driver Output Rise Time CL = 3300pF 18 ns

tf GATE Driver Output Fall Time CL = 3300pF 18 ns

Gate Output Low (VOL) 0.01 V

GATE Output High (VOH) INTVCC – 50mV

V

Note 1:絶対最大定格に記載された値を超えるストレスはデバイスに回復不可能な損傷を与える可能性がある。長期にわたって絶対最大定格条件に曝すと、デバイスの信頼性と寿命に悪影響を与える恐れがある。Note 2:LT8312Eは、0°C~125°Cの接合部温度で規定性能に適合することが保証されている。–40°C~125°Cの動作接合部温度範囲での仕様は設計、特性評価および統計学的なプロセス・コントロールとの相関で確認されている。LT8312Iは–40°C~125°Cの動作接合部温度範囲で

規定性能に適合することが保証されている。LT8312Hは、–40°C~150°Cの動作接合部温度範囲で性能仕様に適合することが保証されている。LT8312MPは、–55°C~150°Cの動作接合部温度範囲で性能仕様に適合することが保証されている。接合部温度が高いと動作寿命は短くなる。接合部温度が125°Cを超えると、動作寿命が短くなる。Note 3:電流はFBピンから流れ出します。

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LT8312

48312f

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標準的性能特性

VREFと温度 VREFとVIN SENSEピンのしきい値電流と温度

INTVCCと温度 INTVCCとVIN

EN/UVLOのしきい値と温度 VINおよび IQと温度入力電圧のヒステリシス電流と 温度

VINシャント電圧と温度

TEMPERATURE (°C)–50 0 50 75–25 25 100 125 150

8312 G01

1.2

EN/U

VLO

(V)

1.22

1.26

1.24

1.28

1.3

RISING

FALLING

TEMPERATURE (°C)–50 0 50 75–25 25 100 125 150

8312 G02

10

10.5

EN/U

VLO

HYST

ERES

IS C

URRE

NT (µ

A)

11

11.5

12

TEMPERATURE (°C)–50 0 50 75–25 25 100 125 150

8312 G03

0

I Q (

µA)

20

10

30

40

60

50

100

90

80

70 VIN = 12V

VIN = 24V

TEMPERATURE (°C)–50

1.900

V REF

(V)

1.925

1.975

2.000

2.025

2.100

2.075

0 50 75

1.950

2.050

–25 25 100 125 150

8312 G04

VIN = 24V WITH NO LOAD

VIN = 24V WITH 200µA LOAD

VIN (V)10

1.95

V REF

(V)

1.96

1.98

1.99

2

2.01

2.05

2.03

2.04

1.97

2.02

15 2520 30 35 40

8312 G05

NO LOAD

200µA LOAD

TEMPERATURE (°C)–50

0

SENS

E CU

RREN

T LI

MIT

(mV)

20

60

80

100

120

0 50 75

40

–25 25 100 125 150

8312 G06

MAX ILIM

TEMPERATURE (°C)–50

9.5

INTV

CC (V

)

9.75

10.25

10.5

0 50 75

10

–25 25 100 125 150

8312 G07

25mA LOAD10mA LOADNO LOAD

VIN (V)5 15 25 3010 20 35 40

8312 G08

9

INTV

CC (

V)

9.2

9.4

9.6

9.8

10

10.2

TEMPERATURE (°C)–50 0 50 75–25 25 100 125 150

8312 G09

39

V IN

SHUN

T VO

LTAG

E (V

)

39.5

40

40.5

41

41.5

42ISHUNT = 1mA

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LT8312

58312f

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標準的性能特性

THDと出力電力 力率と出力電力最大 VIN シャント電流と温度

TEMPERATURE (°C)–50 0 50 75–25 25 100 125 150

8312 G10

5

SHUN

T CU

RREN

T (m

A)

6

7

8

9

10

POWER (W)0 40 80 10020 60 120 140 160

8312 G11

0

THD

10

30

20

40

50

60

115VAC

230VAC 50Hz

POWER (W)0 40 80 10020 60 120 140 160

8312 G12

0.60

POW

ER F

ACTO

R

0.65

0.75

0.70

0.80

0.95

0.90

0.85

1.00

115VAC

230VAC 50Hz

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LT8312

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ピン機能GND(ピン1、2、3、7、8):グランド。

VREF(ピン4):電圧リファレンス出力ピン。標準2Vです。このピンはOVPピンの抵抗分割器を駆動します。最大200µAの電流を供給することができます。

OVP(ピン5):過電圧保護。このピンはDC電圧を受け取り、電圧出力情報と比較します。出力電圧情報がOVPを超えると、デバイスは最小スイッチング周波数を8で割って約500Hzにします。これによって出力に接続されたデバイスを保護します。また、これにより、デバイスは無負荷時に非常に小さい消費電力で動作することによってエネルギー・スターの要件を満たすことができます。

VC(ピン6):内部エラーアンプの補償ピン。このピンからグランドに直列のRCを接続してスイッチング・レギュレータを補償します。100pFのコンデンサを並列に接続すると、ノイズの除去に効果があります。

FB(ピン9):電圧ループの帰還ピン。FBを使用して出力電圧を安定化します。

DCM(ピン10):不連続導通モードの検出ピン。このピンから3

次巻線にコンデンサと抵抗を直列に接続します。

VIN(ピン11):入力電圧。このピンは、内部起動回路とINTVCC LDOに電流を供給します。このピンはコンデンサでローカルにバイパスする必要があります。42Vのシャント・レギュレータがこのピンに内部で接続されています。

EN/UVLO(ピン12):イネーブル /低電圧ロックアウト。VINに接続された抵抗分割器をこのピンに接続して、LT8312がオンする最小入力電圧を設定します。1.25Vより低いと、内部回路のほとんどがディスエーブルされた状態でデバイスに60µAが流れ、EN/UVLOピンから10µAのヒステリシス電流が引き出されます。1.25Vより高いと、デバイスはイネーブルされてスイッチングを開始し、10µAのヒステリシス電流はオフします。

INTVCC(ピン13):内部負荷とゲート・ドライバの安定化電源。VINから給電され、10V(標準)に安定化されます。INTVCCピンは、近くに配置した4.7µFのコンデンサでバイパスする必要があります。

GATE(ピン14):NチャネルFETゲート・ドライバの出力。INTVCCとGNDの間でスイッチングします。シャットダウン状態の間はGNDにドライブされ、低電圧状態の間は“H”に保たれます。

SENSE(ピン15):制御ループの電流検出入力ピン。このピンは、NFETのソースのスイッチ電流検出抵抗RSENSEの正端子にケルビン接続します。電流検出抵抗の負端子はデバイスの近くでGNDプレーンに接続します。

VIN(SENSE)(ピン16):ライン電圧の検出ピン。このピンを使ってACライン電圧を検出し、力率補正を行います。このピンにはライン電圧と直列に抵抗を接続します。

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LT8312

78312f

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ブロック図

14

1.22V–

+A7

A4

M2

VIN

R10

R1

R5

R9

R11

R13

R14

R3

VOUT

R4

R6

8312 BD

DRIVERGATE

15SENSE

QS

S

R

MASTERLATCH

MULTIPLIER

CURRENTCOMPARATOR

OSCILLATOR

GND1, 2, 3, 7, 8

13INTVCC

M1

C5

C3 C2

C6

L1

VINR2

+A1

ONESHOT

V600MV

Q1

+–

+

START-UPINTERNAL REG

A3

A6

+A8

1.22V

VC

C46

FB9

VREFR84

OVP5

EN/UVLO

12

DCM

10

VIN(SENSE)

16 11

C1L2

D2

D1

A2

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LT8312

88312f

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動作LT8312は力率補正昇圧コントローラ・デバイスです。このデバイスは、電流モード制御やクリティカル導通モードを使用するアプリケーションで高い力率と低い高調波歪みを実現します。

オフライン電源にはアクティブな力率補正が必須なものになってきています。力率1は、供給される電流が入力電圧に比例する場合に得られます。LT8312は、スケール調整された入力電圧を使ってピーク電流制限を調整します。この手法により、0.97以上の力率が得られます。

システムの全体像を「ブロック図」に示します。外付け部品は昇圧トポロジーで構成されています。補助巻線は定常状態の動作時にデバイスに電力を供給します。VINピンはINTVCCピンに10Vを生成する内部LDOに電力を供給します。この制御回路は、エラーアンプ、乗算器、電流コンパレータおよびマスタ・ラッチで構成されています。これらについて以下のセクションで説明します。補助巻線にコンデンサを接続し、コンパレータを使って不連続導通モード(DCM)の検出を行います。このデバイスは1.9Aのゲート・ドライバを備えています。

LT8312はオフライン・アプリケーション向けに設計されています。EN/UVLOと抵抗分割器はヒステリシスを伴ったマイクロパワー起動を行うように構成されています。「ブロック図」の

R2は高い電源電圧に耐えるために使用されています。VIN が2.5Vを超えると、内部LDOが INTVCCピンに電流を供給し始めます。VINと INTVCCのコンデンサは R2からの電流によって充電されます。VINがターンオンしきい値を超え、INTVCC

が10Vでレギュレーション状態になると、デバイスはスイッチングを開始します。VINのヒステリシスはEN/UVLOの抵抗分割器によって設定されます。補助巻線の電圧がVIN電圧を上回ると、補助巻線がVINに電力を供給します。フォルト保護のために電圧シャント機能が備えられており、VINが40Vを超えると、8mAの電流をシンクすることができます。

標準的サイクルでは、ゲート・ドライバが外付けMOSFETをオンし、インダクタに電流が流れます。この電流は入力電圧に比例したレートで増加します。制御ループによって最大電流が決定され、その電流レベルに達すると電流コンパレータがスイッチをオフします。スイッチがオフすると、インダクタ電流が出力コンデンサに接続されたダイオードを介して流れ始めます。この電流は出力電圧と入力電圧の差に比例したレートで減少します。電流がゼロまで減少すると、出力ダイオードがオフし、寄生容量とインダクタにより、MOSFETのドレインの電圧が発振し始めます。補助巻線の両端の電圧はメイン・インダクタの両端の電圧と等しく、補助巻線にもリンギングが生じます。リンギングが生じると、DCMピンに接続されたコンデンサ

C1が、dv/dt検出器として機能するコンパレータA2をトリップします。dv/dt 検出器がリンギング波形が最小値に達するのを待ってから、スイッチがオンに戻ります。このスイッチング動作はゼロ・ボルト・スイッチングと同様で、スイッチがオンに戻る際のエネルギーの損失量を最小限に抑え、効率を5%程度改善します。このデバイスは連続導通モードと不連続導通モードの境界で動作するので、この動作モードは臨界導通モード(またはバウンダリ導通モード)と呼ばれています。

出力電圧は、FBピンに接続した抵抗分割器を使用して安定化されます。エラーアンプの出力はVCピンです。このノードには、制御ループを補償するためのコンデンサが必要です。

力率補正VIN(SENSE)ピンが抵抗を使って電源電圧に接続されている場合、電流制限は電源電圧に比例します。LT8312が高速制御ループで構成されている場合、VCピンはVIN(SENSE)の変化に対応します。乗算器を機能させる唯一の方法は、制御ループの周波数をVIN(SENSE)信号の基本周波数より1桁小さい値に設定することです。オフライン・アプリケーションの場合、電源電圧の基本周波数は120Hzなので、制御ループのユニティゲイン周波数を約12Hz以下に設定する必要があります。

起動LT8312はヒステリシスを伴った起動を使用し、高いオフライン電源電圧で動作します。電源電圧に抵抗を接続することにより、デバイスを高電圧から保護します。この抵抗はデバイスのVINピンに接続し、コンデンサでバイパスします。この抵抗がVINピンをEN/UVLOの抵抗分割器で設定されたターンオン電圧まで充電し、INTVCCピンがレギュレーション・ポイントになると、デバイスはスイッチングを開始します。定常状態では、抵抗はデバイスに電力を供給できませんが、コンデンサによってデバイスが起動し、補助巻線が抵抗とともにVINピンに電力を供給し始めます。VINピンには内部電圧クランプが備わっており、抵抗の電流によって VIN がこのピンの絶対最大定格電圧より高くなるのを防ぎます。内部クランプは40Vに設定されており、室温で8mA(標準)の電流を流すことができます。

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LT8312

98312f

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動作VINのターンオン電圧およびターンオフ電圧の設定3次巻線がデバイスに電力を供給するための時間を確保するため、VINのターンオン電圧とVINのターンオフ電圧の間に大きな電圧差があることが望まれます。EN/UVLOによって、これら2つの電圧が設定されます。このピンの電流シンクは、ピンの電圧が1.25Vより低いときは10µAで1.25Vより高いときは0µAです。VINピンは 図1に示すように抵抗分割器に接続します。

VINの上昇時のUVLOしきい値は次式のようになります。

VIN(UVLO,RISING) =1.25V • R1+R2

R2+10µA •R1

VINの下降時のUVLOしきい値は次式のようになります。

VIN(UVLO,FALLING) =1.25V • R1+R2

R2

出力電圧の設定出力電圧は出力コンデンサからFBピンへの抵抗分割器を使用して設定します。「ブロック図」に示されるように、抵抗R3およびR4が出力コンデンサからの抵抗分割器を構成しています。出力電圧の式は次のようになります。

VOUT = VBG • R3+R4

R5

VBG電圧は 「電気的特性」表のFB電圧に等しくなっています。

VIN(SENSE)の設定VIN(SENSE)抵抗により、電流制限を調整して力率補正を行う内部乗算器に流れる電流が設定されます。最大ライン電圧VMAXのとき、電流は360µAに設定されます。この条件では、抵抗値は(VMAX/360µA)に等しくなります。

クリティカル導通モードの動作クリティカル導通モードは可変周波数スイッチング手法であり、サイクルごとにインダクタ電流を必ずゼロに戻します。DCMピンは小容量のコンデンサと組み合わせて高速電流入力コンパレータを使用し、補助巻線の dv/dtを検出します。誤ってトリップしないように、スイッチがオフした後、200nsのブランキング時間が与えられます。検出器は、出力ダイオードがオフするときの3次巻線の電圧低下によってDCMピンに流れる80µAの電流を検出します。スイッチ電圧が引き続きVOUTに近く、スイッチ・ノードの寄生容量に蓄積されたすべてのエネルギーを消費する可能性があるので、これはスイッチをオンする最適な時点ではありません。出力ダイオードの電流がゼロに達すると不連続なリンギングが始まり、スイッチ・ノードの寄生容量のエネルギーが入力コンデンサに移動します。これは、スイッチ・ノードの寄生容量とメイン・インダクタで構成される2 次のネットワークです。この不連続なリンギングの間のスイッチ・ノードの最小電圧は2VIN-VOUTです。LT8312は、不連続

EN/UVLO

LT8312

VIN

GND

R2

8312 F01

R1

図1.低電圧ロックアウト(UVLO)

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LT8312

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動作なスイッチ波形の間、dv/dt検出器を使ってスイッチ波形の勾配が負から正になる時点を検出することにより、この時点でスイッチをオンに戻します。このスイッチング手法は効率を5%改善する可能性があります。

電流制限値が小さいとクリティカル導通モードの周波数が非常に高くなることがあります。LT8312の最大周波数クランプは400kHzです。自然なクリティカル導通モードの周波数が400kHzより高いときは、デバイスは不連続導通モードで動作します。

検出抵抗の選択外付けNチャネルMOSFETのソースとGNDの間の抵抗RSENSEは、電流制限しきい値を超えることなくアプリケーションをドライブする適正なスイッチ電流が得られるように選択します。

最小電流制限LT8312は、ピーク電流制限の約3%の最小電流制限を行います。これは入力電源のオフライン・クロスオーバー期間の高調波歪みを改善するのに役立ちます。

汎用入力LT8312は90VAC~265VACの一般的な入力電圧範囲で動作します。

ループ補償帰還ループは従来のgmエラーアンプです。PFCが正常に動作するため、ループのクロスオーバー周波数はライン周波数の2倍よりも大幅に低く設定されています。「標準的応用例」では、補償コンデンサは1µFです。

MOSFETとダイオードの選択LT8312は、強力な1.9Aゲート・ドライバを備えており、ほとんどの高電圧MOSFETを効率的にドライブすることができます。効率を最大にするには、QGが小さいMOSFETを推奨します。ほとんどのアプリケーションでは、MOSFETの温度上昇を制限するようにRDS(ON)を選択する必要があります。MOSFET

がオフ状態でダイオードに電流が流れている間、MOSFETのドレインはVOUTの電圧ストレスを受けます。

MOSFETスイッチがオンのときはダイオードが VOUT の電圧ストレスを受けます。ダイオードを流れる平均電流は負荷電流に等しくなります。

不連続モードの検出不連続モードの検出器は、AC結合を使って補助巻線のリンギングを検出します。ほとんどの設計に、30kの抵抗と直列接続した22pFのコンデンサを推奨します。

力率改善 /高調波成分LT8312は、内部乗算器を使ってメイン・パワースイッチのピーク電流をライン電圧に比例させることにより、力率を大きくして高調波成分を小さくします。ほとんどのアプリケーションでは、このデータシートの設計の計算式に従うことにより、0.97以上の力率が容易に達成できます。適切に設計することにより、LT8312のアプリケーションはほとんどの高調波の基準を容易に満たすことができます。

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LT8312

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標準的応用例汎用入力

150W

PFC昇圧コンバータ

C14

4.7µ

F

R26

10k

1%

R19

D61N

4148

W

R15

0.01

5Ω12

06

8312

TA0

2

R14

100Ω

Q1IP

A50R

190C

E

••

V IN

V IN_

SENS

EFB

GATE

EN/U

VLO

DCM

LT83

12

V C

SENS

E

V REF

OVP

GND

GND

GND

GND

GND

INTV

CC

INTV

CC

C5 680n

F

C3 100p

F

C8 4.7µ

F16

V

C9 100p

F50

V

R13

1M 1206

R16

1M 1206

R11

10Ω

1%

R12

9.53

k

R10

2kC1

510

0pF

C10

100µ

F45

0V

C7 27pF

C6 4.7n

F

C410

µF, 5

0V

D3CM

Z593

4B

D1BA

V20W

D2 BAV2

0WR9 47Ω

1206

D41N

4005

D5CM

R5H-

06

+R1

71M 12

06

J2

400V

/0.3

75A

+ –

1 2

R8 2.4M 1%

R3 301k

1%

R18

75k

R4 11.8

k1%R7 15

0k1% 12

06

R6 150k

1% 1206

R2 499k

1% 1206

R1 499k

1% 1206

R5 24.9

k1%

C13

1nF

C12

1µF

L430

0µH

B1 GBU4

04 32

C2 0.47

µF

4 ••

J1

C10.

22µF

Z1 12

F1 3.15

A

LN

90-2

65VA

C

L115

mH

4 1

3 2

L3 7608

0212

245

0µH

10:1

3 7

12 6

16 12 4 5 1 2 3

1110

6

9 14 15 13 8 7

+

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標準的応用例アビオニクス入力

60W

PFC昇圧コンバータ

C14

470n

F

R26

82.5

k1%

R19

D61N

4148

W

R15

0.04

Ω12

06

8312

TA0

3

R14

100Ω

Q1IP

A50R

190C

E

••

V IN

V IN_

SENS

EFB

GATE

EN/U

VLO

DCM

LT83

12

V C

SENS

E

V REF

OVP

GND

GND

GND

GND

GND

INTV

CC

INTV

CC

C5 27nF

C3 100p

F

C8 4.7µ

F16

V

C9 100p

F50

V

R13

1M 1206

R16

1M 1206

R11

10Ω

1%

R12

9.53

k

R10

2kC1

510

0pF

C10

47µF

450V

C7 27pF

C6 4.7n

F

D3CM

Z593

4B

D1BA

V20W

D2 BAV2

0WR9 47Ω

1206

D41N

4005

D5CM

R2U-

06

+R1

71M 12

06

J2

400V

/0.1

5A+ –

1 2

R8 2.4M 1%

R3 301k

1%

R18

75k

R4 11.8

k1%R7 10

0k1% 12

06

R6 100k

1% 1206

R2 499k

1% 1206

R1 499k

1% 1206

R5 24.9

k1%

C13

1nF

C12

220n

F

L4 1mH

B1 KBP2

04G

32

C12

100n

F

4 ••

J1

C1 47nF Z1 1

2

F1 2.5A

LN

97~1

34VA

C40

0Hz

L127

mH

4 1

3 2

L3 7608

0113

075

0µH

3 7

12 6

16 12 4 5 1 2 3

1110

6

9 14 15 13 8 7

C410

µF, 5

0V

+

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LT8312

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リニアテクノロジー・コーポレーションがここで提供する情報は正確かつ信頼できるものと考えておりますが、その使用に関する責務は 一切負いません。また、ここに記載された回路結線と既存特許とのいかなる関連についても一切関知いたしません。なお、日本語の資料は あくまでも参考資料です。訂正、変更、改版に追従していない場合があります。最終的な確認は必ず最新の英語版データシートでお願いいたします。

パッケージ最新のパッケージ図面については、http://www.linear-tech.co.jp/designtools/packaging/を参照してください。

MSOP (MS16) 0213 REV A

0.53 ±0.152(.021 ±.006)

SEATINGPLANE

0.18(.007)

1.10(.043)MAX

0.17 – 0.27(.007 – .011)

TYP

0.86(.034)REF

0.50(.0197)

BSC

16151413121110

1 2 3 4 5 6 7 8

9

注記:1. 寸法はミリメートル /(インチ)2. 図は実寸とは異なる3. 寸法にはモールドのバリ、突出部、またはゲートのバリを含まない モールドのバリ、突出部、またはゲートのバリは、各サイドで 0.152mm(0.006")を超えないこと4. 寸法には、リード間のバリまたは突出部を含まない リード間のバリまたは突出部は、各サイドで 0.152mm(0.006")を超えないこと5. リードの平坦度(整形後のリードの底面)は最大 0.102mm(0.004")であること

0.254(.010) 0° – 6° TYP

DETAIL “A”

DETAIL “A”

GAUGE PLANE

5.10(.201)MIN

3.20 – 3.45(.126 – .136)

0.889 ±0.127(.035 ±.005)

RECOMMENDED SOLDER PAD LAYOUT

0.305 ±0.038(.0120 ±.0015)

TYP

0.50(.0197)

BSC

4.039 ±0.102(.159 ±.004)

(NOTE 3)

0.1016 ±0.0508(.004 ±.002)

3.00 ±0.102(.118 ±.004)

(NOTE 4)

0.280 ±0.076(.011 ±.003)

REF

4.90 ±0.152(.193 ±.006)

MS Package16-Lead Plastic MSOP

(Reference LTC DWG # 05-08-1669 Rev A)

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LT8312

148312f

LINEAR TECHNOLOGY CORPORATION 2015

LT0115 • PRINTED IN JAPANリニアテクノロジー株式会社〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-6紀尾井町パークビル8F TEL 03-5226-7291 ● FAX 03-5226-0268 ● www.linear-tech.co.jp/LT8312

関連製品

標準的応用例

製品番号 説明 注釈LT3798 アクティブPFC機能を備えたオプトカプラ不要の

オフライン絶縁型フライバック・コントローラ外付け部品によってのみVINとVOUTを制限

LT3752/LT3752-1

ハウスキーピング・コントローラを内蔵したアクティブ・ クランプ同期整流式フォワード・コントローラ

入力電圧範囲LT3752:6.5V~100V、 LT3752-1:外付け部品によってのみ制限される

LT3753 アクティブ・クランプ同期整流式フォワード・コントローラ 入力電圧範囲8.5V~100V

LT8311 フォワード・コンバータ用オプトカプラ・ドライバ内蔵の 同期整流器コントローラ

1次側のLT3752/LT3752-1、LT3753、および LT8310コントローラでの使用に最適化

LT3748 100V絶縁型フライバック・コントローラ 5V ≤ VIN ≤ 100V、オプトカプラ不要のフライバック・コントローラ、 高電圧ピン間にスペースを設けたMSOP-16パッケージ

LTC®3765/LTC3766

オプトカプラ不要のアクティブ・クランプ・リセット付き 同期整流式フォワード・コントローラ・チップセット

直接磁束制限、2次側フォワード・コントローラのセルフスタートを サポート

LTC3723-1/LTC3723-2

同期整流式プッシュプルおよびフルブリッジ・コントローラ 内蔵MOSFETドライバにより高効率を達成、 同期整流のタイミングを調整可能

LTC3722/LTC3722-2

同期整流式フルブリッジ・コントローラ ゼロ電圧スイッチングの適応型またはマニュアルの遅延制御、 同期整流のタイミングを調整可能

90VTO 265V

AC

0.1µF10µF

2.2µF

499k

499k

1M

95.3k

560µF×2

VOUT400V0.5A

4.7pF

4.7µF100k

221k

100k

100k2k

1M

1M

9.53k

0.01Ω

8312 TA04

D3

D4

D2 20Ω

20Ω

4:1•

VIN

VIN_SENSE FB

GATE

EN/UVLO

DCM

LT8312

VC

SENSEVREF

OVP GND

INTVCC

汎用入力200W PFC昇圧コンバータ