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Gram-negative Bacteria
Gram-positive Bacteria
Yeast and Fungi
Microbiological Experiments-1
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1 手指常在菌の検出と手洗いの効果
Chapter 1 実験 - 1
⿆ 手指常在菌について
" ウイルスの検出や培養は技術的な問題、設備などの問題により実施できない。
" 手指には表皮ブドウ球菌と黄色ブドウ球菌などの細菌、真菌類、その他のあらゆる微生物が付着している → 手はすべてのものに触れることができるため。
⿆ 手洗いの方法
" 親指の周囲、爪の周囲、指先などが手洗いミスの多い部位である。
" 実際の手洗いはその施設の方針に従い適切に行うこと。
⿆ 滅菌と消毒
" 滅菌は、対象物に存在するすべての微生物を殺してしまうこと。
" 消毒は、滅菌より条件がゆるく、細菌の芽胞などは死滅しない場合もある。
" 手指は消毒(滅菌できない)、器具類は滅菌が望ましいが、場合により使い分ける。
手洗いについて
*手洗いの方法は他領域の演習などで実施しているため省略します。
標準予防策について*Standard Precautions:「すべての
湿性生体物質は、何らかの感染性を
持っている可能性がある」、湿性生体物質:すべての血液、体液、粘膜、創傷のある皮膚(汗は除く)、米国疾病予防センター(CDC)のガイドラインを参考にしてください。
滅菌と消毒の定義*テキストなどにより、消毒の記述は若干異なり、有害な微生物を死滅させることが消毒であると記述されている場合もあります。
図 1
3手指常在菌の検出と手洗いの効果|
⿆ 除菌について
" 除菌とは単に微生物を取り除くという意味、微生物を殺すことではない。殺菌、消毒という用語の使用は「医薬品」、「医薬部外品」に限られる(薬事法)。
⿆ マンニット食塩寒天培地
" 寒天培地は市販のものを利用。好気条件となる。
" 高濃度の食塩(7.5%)を含むため、ほとんどの細菌は生育しない。食塩耐性である Staphylococcus属細菌が選択的に増殖する。
" 黄色ブドウ球菌はマンニトールを分解し、酸を生成するため黄色のコロニーを形成する(pH指示薬としてフェノールレッドを含んでいるため)。表皮ブドウ球菌はマンニトールを分解しないため白色でやや小さめのコロニーとなる。
" ただし、黄色ブドウ球菌の判定にはコラグラーゼテストを行うべきである。
⿆ 実験の目的
医療の現場では感染症の防止が重要である。手指に付着している細菌は院内感染や医療事故の原因となる。手指の常在細菌を調べるとともに、手洗いや消毒薬(ウェルパス)の効果を調べる。
⿆ 実験方法
手指常在菌の培養《1》
1. マンニット食塩寒天培地のプレートを裏返して中央に線を引き、「消毒前」、「消毒後」と記入する。また、名前と番号を記入する。各班で、「手洗いのみ」、「ウェルパスを用いた消毒」、あるいはその組み合わせなど分担を決める。消毒の方法は必ず記録しておくこと。
2. 右手で髪や服、鼻腔などを触った後、4 本の指をマンニット食塩寒天培地の「消毒前」の部分に軽く押しつける。フタの開閉は短時間で行う。
3. 手洗いを行いペーパータオルで手を拭き、もしくは、ウェルパスで両手の指先を消毒して、完全に乾燥後(この間、手でものに触れないこと)、プレートのフタを空け(右手で開けないこと)、同様にマンニット食塩寒天培地の「消毒後」の部分に軽く押しつける。
4. 37℃に設定した恒温器内で 12 ~ 24 時間程度培養する。プレートはフタを下にして培養する。
培地について
*細菌類の培地には炭素、窒素、硫黄を基本として、その他のビタミン
類やアミノ酸、有機物などを加える
必要があります。
液体培地と固体培地*液体培地では大量培養が可能(キロリットルなども)で、スケールアップが容易。ただし雑菌汚染の発見が
遅れる、通気が必要な場合にコストがかかるなどの欠点もあります。
コアグラーゼテスト
*被検菌の懸濁液にウサギプラズマ
(血漿)を 1滴垂らすと 5 ~ 20 秒以内に凝集します。(フィブリノーゲンに血液凝固因子が作用し、フィブリンへ、FactorXIIIa、Ca2+ 依存性)
薬事法の規定
*殺菌作用があっても医薬品でなければ殺菌という言葉が使えません。逆に除菌の定義はあいまいになっています。なお、法律は改正される可能性があります。
クリーンベンチ
*通常、無菌操作を行う場合はクリーンベンチ内で行う。今回は簡便な実験であるため実験室内で行う。病原菌や遺伝子組換え生物などは厳密な取り扱いルールがあり、設備や
実験内容について事前の申請が必要。なお、クリーンベンチとドラフトチャンバーは全く用途が異なるため注意。
○の位置に 4 本の指を軽く押しつける(親指以外の指)。(マーカーで○の印をつけないこと!)
消毒前消毒後 ※名前と番号を寒天培地の裏に書く(観察の邪魔にな
らないよう中央、あるいは端に)、フタに書かないこと!
マンニット食塩寒天培地図 2
4
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⿆ 手指の消毒薬
" エタノール、イソプロパノール:細胞膜の破壊とタンパク質の凝固
" グルコン酸クロルヘキシジン(ヒビテンなど):多くの製品あり
" 塩化ベンザルコニウム(ウエルパスなど、アルコールも含む):正に荷電しているので逆性石けんと呼ばれる。通常の石けんと混ぜると効果がなくなる。
" 以上の消毒薬は細菌の芽胞には効果がないが、基本は洗い流すことである。
⿆ 器具などの消毒
" 物品などの消毒にはヒトの体に悪影響を及ぼす強い薬品や物理的条件(高温、紫外線など)での滅菌、消毒を適用できる(使用後、残存していると問題あり)。
" オートクレーブ:高圧蒸気滅菌、2気圧、121℃、15 分~ 20 分
" 次亜塩素酸ナトリウム水溶液:消毒後、洗い流せない場合は水拭きなどをしておく→床の素材が劣化する、また刺激臭が強い(吸い込むと毒性あり)。
" 次亜塩素酸ナトリウム水溶液の希釈計算がすぐにできるようにしておくこと。
" 紫外線ランプでは、影の部分は殺菌されない、またランプが劣化してエネルギーが減少していることもある。プラスチック製品はダメージを受ける。
" グルタルアルデヒド(内視鏡の殺菌)などは危険であり限定された用途のみ。
⿆ 消毒の際の問題点
" 汚れたものは消毒できない、まず洗浄すること。その後に消毒薬を使用。
" 見た目で汚れていなければ手洗いよりも手指消毒剤(手荒れを防ぐため)。
" 容器への詰め替えは汚染を広げることになる。洗剤や液体石けんなどは汚染が激しいので注意。詰め替える場合は容器を洗浄、乾燥させること。
" エタノール製品も作成した場合は 1日で廃棄する。できるだけディスポーザブルの製品を利用する。
" 玄関などに設置してある手指消毒薬は管理に注意(期限切れ、直射日光など)。
" in vitroでの実験のみで殺菌、消毒作用があるとうたっている製品が多い。
⿆ なぜ手洗い後に細菌が検出されるのか
" 単純に手洗いの方法が間違っているか、不十分で、細菌類が手指に残っていた。
" 表面の細菌は除去されたが、手をこすることで皮膚の奥の細菌が湧出した。
" 手洗い後、目や鼻、頭髪、蛇口などに触っていないか。
" マニキュアは爪の表面が荒れるため細菌が付着しやすいと言われている。
" 同様に手荒れも付着した細菌が洗い流されにくい状態になる。
アルコールについて
*アルコールは炭素数が多いほど消毒力が強いものの、水に溶けにくくなり固体の状態となるため右記の物以外は使用されません(メタノールは毒性が高いため使用されない)。エタノールは 70 ~ 80%水溶液のほうが 100%のものよりも消毒力が高く、これは、一気にタンパク質を凝固させることを防ぐことで細菌内部への浸透性を上げる、蒸発時間を遅らせることで接触時間を長くするなどの理由からです。その他、各自で
調べてください。
危険な消毒薬について*水銀化合物やフェノール類など、現在はほとんど使用されない消毒薬が多くあります。エチレンオキシドガスやグルタルアルデヒドなど消毒、滅菌効果の高い化学薬品は人体にも危険です。これらの取り扱いを
避け、他の消毒方法を利用する施設が増えています。
ペーパータオル
*使い捨てのペーパータオルを用いて、水分を十分に拭き取ることが重要です。手に残った水分は細菌の増殖に利用されます。また、ハンカチ、タオルは雑菌が繁殖するため厳禁ですが、日常生活において使用する場合は全く問題ありません。
手袋について
*手指が汚染されている場合と手指の汚染を防ぐために使用する場合の
違いを理解すること。使用後の手袋はすぐに取り外す、目的外の場所を
触らないなどの注意が必要。また、ピンホールの存在に注意する。
5手指常在菌の検出と手洗いの効果|
⿆ 結果の観察
手指常在菌の確認と消毒効果の判定《2》
1. 消毒前後の部分に細菌のコロニーが出現しているかどうかを観察する。マンニット食塩寒天培地において、細菌コロニーおよびその周辺が黄色になっているものが、マンニット分解性の黄色ブドウ球菌である。マンニット非分解性のブドウ球菌も存在する。これらの観察とスケッチ(デジカメ、携帯での撮影可)を行う。結果、および考察を記述する(手洗い、またはウェルパスの使用を明記)。
図 3
細菌のコロニーについて*コロニーは集落という意味で、細菌のコロニーとは、目に見える菌のかたまりを指す言葉として用いられます。それぞれのコロニーは単一の
細菌が増殖した集落で同じ種類の細胞の集まりです。1 種類の細菌を純粋培養するためには単一コロニーから細菌を取り出て希釈後、さらにコロニーを形成させる作業を繰り返します。ただし、このように何度も繰り返して培養を行うと(継代培養)ある一定の割合で遺伝子が変異することがあります。