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N a t i o n a l I n s t i t u t i o n F o r Y o u t h E d u c a t i o n R e s e a r c h C e n t e r F o r Y o u t h E d u c a t i o n 稿 稿 調 ISSN 2432-8766

National Institution For Youth Education Research Center ......National Institution For Youth Education Research Center For Youth Education ・特集 成長の土台としての子供の遊び

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National Institution For Youth Education

Research Center For Youth Education

・特集

成長の土台としての子供の遊び

~大人の向き合い方と環境の整え方~

・投稿原稿

・調査研究報告

国立青少年教育振興機構 青少年教育研究センター

ISSN 2432-8766

第8号

青少年教育研究センター紀要

特集 成長の土台としての子供の遊び

国立青少年教育振興機構

第8号

センター長あいさつ

国立青少年教育振興機構

青少年教育研究センター長

村 上 徹 也

青少年教育研究センター紀要第8号ができあがりました。

今回の特集は「成長の土台としての子供の遊び~大人の向き合い方と環境の整え方~」

です。

平成 30 年に改訂(改定)された「幼稚園教育要領」「保育所保育指針」及び「幼保連携

型認定こども園 教育・保育要領」では、保育内容の5領域(健康、人間関係、環境、言葉、

表現)のねらいと、内容の具体的な姿である「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の

10 項目が示され、幼児の遊びの重要性が明記されました。さらに小学校1・2学年におい

ては、「生活科」(自分たちの遊びや生活をよりよくする)や「体育」(様々な運動遊びを通

して心身をはぐくむ)において特に遊びが重視されています。

しかし、子供の自由な発想や主体性を基礎とした遊びに対し、保護者や教育関係者など

の大人がどう向き合い、遊びに適した環境をどのように整えるかについて考えた知見は多

くありません。

そこで今回、子供の遊びに対する大人の向き合い方や環境づくりについて、座談会形式

で議論しました。

当座談会では、東京学芸大学副学長の松田恵示先生、東京おもちゃ美術館の多田千尋館

長、東京学芸大学教授で当機構理事の吉田伊津美先生にご登壇いただきました。はじめに

ミニレクチャーとして、松田先生より文化的な視点からの遊びについて、多田館長より遊

びにおける文化と獲得について、吉田先生より幼児教育における運動遊びについてお話を

いただいた後、自由に意見交換を行っていただきました。それぞれの専門的知見から活発

な議論が交わされ、大変有意義な座談会となりました。

投稿原稿には 12 本の投稿があり、9本を受理しました。査読者の丁寧な査読を経て7

本が採択されました。「論文」が4本、「報告」が3本です。青少年教育に関する幅広いテ

ーマの原稿が掲載されていますので、ぜひご一読ください。これからも多くの方々の投稿

をお待ちしております。

本紀要が青少年教育にかかわる研究者、指導者、行政関係者等のますますのご活躍の一

助となることができましたら幸甚です。

国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター紀要 第8号

目 次

センター長あいさつ

Ⅰ 特集 成長の土台としての子供の遊び ~大人の向き合い方と環境の整え方~

【第 一 部】ミニレクチャー 「成長の土台としての子供の遊び」

1.遊びを文化的な視点でとらえる(松田恵示) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3

2.子供が遊ぶことによって獲得するもの(多田千尋) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

3.たくさん体を動かして遊べるようにするためには何が必要か(吉田伊津美) ・・・・・ 8

【第 二 部】座談会 「子供の遊びへの大人の向き合い方と環境の整え方」

1.遊びにおける子供の「自己決定」を大切にすること ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14

2.遊びの環境を整える必要性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17

3.現代だからこそ問われる外遊びの意義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20

4.遊びの多面性 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22

5.子供の遊びを見守る姿勢の大切さ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25

Ⅱ 投稿原稿

【論 文】自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

- シャイネス感情に着目して - ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 32

川畑 和也・福満 博隆

【論 文】国立青少年教育施設でボランティア活動を行う

高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

42

杉本 守

【論 文】自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

- 「森の探検隊」活動に着目して - ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

52

淀澤 真帆・福島 真吾・江田 里英・中坪 史典

【論 文】フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響・・・・・・・・・・・・・・ 62

比内 晃介

【報 告】小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 72

小森 亜紀・宗像佳代・佐藤久美子・高橋江利子

【報 告】異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

- 国立沖縄青少年交流の家における「那覇市少年自然体験の船」の活動を

行った子ども(団員と班長)と指導者の感想文の分析 - ・・・・・・・・・・・・・・

82

菊地 智裕

【報 告】若者の政治参加を高める社会教育からの提案

- 子どもの頃の体験に着目して - ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

92

上野 修司

Ⅲ 調査研究報告

1.高校生の留学に関する意識調査 - 日本・米国・中国・韓国の比較 - ・・・・・・・・・・・・・・ 104

2.子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 113

3.大学生のボランティア活動に関する調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 117

4.小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 123

Ⅳ 国立青少年教育振興機構施設一覧・配置図 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 134

Ⅴ 青少年教育研究センター紀要第8号募集要項・執筆要領 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 138

Ⅵ これまでに発行した報告書等一覧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146

Ⅶ 青少年教育研究センターについて ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 150

Ⅷ 青少年教育研究センター紀要第8号編集委員会委員一覧・編集後記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 152

Ⅰ 特集 成長の土台としての子供の遊び

~大人の向き合い方と環境の整え方~

【第一部】 ミニレクチャー「成長の土台としての子供の遊び」

1.遊びを文化的な視点でとらえる(松田恵示)

今回のテーマである「子供の遊び」について、

私は文化的な視点から、そもそも遊びとは何か、

についてお話させていただければと思います。

まず、特に教育の中でありがちなのですが、

子供と遊びについて考える場合、「遊びは何の

ためになるのか」「何の役に立つのか」あるい

は「なぜ子供たちは遊ぶのか」といった、「遊

ぶこと」そのものではなく、大人自身が関心の

ある文脈に遊びを引き寄せて考えてしまいがち

です。

そこで、本日はせっかくの機会ですから、で

きるだけ「遊び」とはどのようなものかを考え

てみたいと思っております。

(1)「間」、「動き」、「安心感」で構成される「遊び」

「遊びとは何か」という問いは、古くはオランダのヨハン・ホイジンガが「ホモ・ルー

デンス」という本の中で論じていますし、日本では、後にも御紹介します美学者の西村清

和先生が「遊びの現象学」という本の中で非常に詳しく論じられております。

そこで、まず、日常の中で「遊び」という言葉の使われ方を考えてみますと、意外なと

ころに「遊び」という言葉があります。例えば歯車がかみ合っている部分に意図的に作ら

れたすき間を「遊び」と表現する場合があり、これは自動車のブレーキペダルやハンドル

の「遊び」でも言われます。また、服の着こなしなどで「遊びを入れる」という表現もあ

ります。ただ、学生にこういう話をしても、「どんな遊び道具なんですか」みたいな反応

があって、「いや違う、ここでいう遊びは「余白」のような意味合いだよ」と説明しなけ

ればならない時もあります。このあたりの点について先ほど御紹介しました西村先生の「遊

びの現象学」の理論からお話しして

みたいと思います。

図1のイラストは、自動車の運転

においてブレーキペダルを踏む時の

図です。先ほどブレーキペダルの「遊

び」のことを言いましたが、ブレー

キペダルは、踏んでからブレーキが

実際にかかりだすまで「踏みしろ」

があります(図1の両矢印間)。こ

の踏みしろという「遊び」が適切か

どうかは車検などの際には調整した

りします。この「遊び」があまりな

いと急ブレーキばかりになりますし、

逆に「遊び」が大き過ぎるとノーブ

松田 恵示 氏

図1 余白としての遊び

<シンポジウム日時・場所等>

日 時 令和元年 10 月 22 日(火) 17:30~18:45

場 所 国立オリンピック記念青少年総合センター2F「カフェフレンズ」

構 成 第一部 ミニレクチャー「成長の土台としての子供の遊び」

第二部 座談会「子供の遊びへの大人の向き合い方と環境の整え方」

登壇者 松田 恵示 東京学芸大学副学長

多田 千尋 東京おもちゃ美術館館長

吉田 伊津美 東京学芸大学教授

司 会 鈴木 みゆき 国立青少年教育振興機構理事長

聴講者 青少年教育研究センター職員をはじめとする国立青少年教育振興機構職員

【オープニング】シンポジウムの趣旨

0.はじめに

○村上1) 本日はお忙しい中、奇跡的にも大変貴重な方々に御同席してくださることが実

現いたし、大変ありがたく思っております。本日は「遊び」というキーワードでお話を伺

いますので、聞くほうも楽しみにしておりますし、先生方もぜひ楽しみながら御議論を進

めてくださればと思います。よろしくお願いいたします。

○鈴木 私共、国立青少年教育振興機構では、“体験活動を通じた青少年の自立”を目指

すために様々な活動を展開しています。その中で、子供の遊びというのは青少年期の体験

活動に接続する基礎的な部分ではないかと考えていますが、では、その子供の遊びがいか

に重要なのか、そしてそういう遊びに大人がど

う向き合うべきなのかというところに関して、

あまり議論が深まっていない部分があります。

そこで、本日は、まず子供の遊びの意義につい

て、それぞれの先生方の専門的な知見からミニ

レクチャーをしていただき、その後、それぞれ

の方の専門領域がクロスオーバーしながら御議

論することによって、子供の遊びに適する環境

づくりや、大人の適切な向き合い方について考

えていければと思います。そして、この紀要の

特集を手にとって読んでくださる方に少しでも

届くことを願っております。

1)青少年教育研究センター長

特集 成長の土台としての子供の遊び

~大人の向き合い方と環境の整え方~

鈴木 みゆき (司会)

2 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

【第一部】 ミニレクチャー「成長の土台としての子供の遊び」

1.遊びを文化的な視点でとらえる(松田恵示)

今回のテーマである「子供の遊び」について、

私は文化的な視点から、そもそも遊びとは何か、

についてお話させていただければと思います。

まず、特に教育の中でありがちなのですが、

子供と遊びについて考える場合、「遊びは何の

ためになるのか」「何の役に立つのか」あるい

は「なぜ子供たちは遊ぶのか」といった、「遊

ぶこと」そのものではなく、大人自身が関心の

ある文脈に遊びを引き寄せて考えてしまいがち

です。

そこで、本日はせっかくの機会ですから、で

きるだけ「遊び」とはどのようなものかを考え

てみたいと思っております。

(1)「間」、「動き」、「安心感」で構成される「遊び」

「遊びとは何か」という問いは、古くはオランダのヨハン・ホイジンガが「ホモ・ルー

デンス」という本の中で論じていますし、日本では、後にも御紹介します美学者の西村清

和先生が「遊びの現象学」という本の中で非常に詳しく論じられております。

そこで、まず、日常の中で「遊び」という言葉の使われ方を考えてみますと、意外なと

ころに「遊び」という言葉があります。例えば歯車がかみ合っている部分に意図的に作ら

れたすき間を「遊び」と表現する場合があり、これは自動車のブレーキペダルやハンドル

の「遊び」でも言われます。また、服の着こなしなどで「遊びを入れる」という表現もあ

ります。ただ、学生にこういう話をしても、「どんな遊び道具なんですか」みたいな反応

があって、「いや違う、ここでいう遊びは「余白」のような意味合いだよ」と説明しなけ

ればならない時もあります。このあたりの点について先ほど御紹介しました西村先生の「遊

びの現象学」の理論からお話しして

みたいと思います。

図1のイラストは、自動車の運転

においてブレーキペダルを踏む時の

図です。先ほどブレーキペダルの「遊

び」のことを言いましたが、ブレー

キペダルは、踏んでからブレーキが

実際にかかりだすまで「踏みしろ」

があります(図1の両矢印間)。こ

の踏みしろという「遊び」が適切か

どうかは車検などの際には調整した

りします。この「遊び」があまりな

いと急ブレーキばかりになりますし、

逆に「遊び」が大き過ぎるとノーブ

松田 恵示 氏

図1 余白としての遊び

3Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

し、逆に負けてもどうということはありません。だからこそ一生懸命になって勝とうとす

る思いが出てきます。日常生活は失敗してはまずい場所ですが、遊びなら問題ありません。

そこで、もう一回もう一回という反復的な動きが出始めて“失敗O.K.”という感覚が生じ

るという特徴もあると思います。

また遊びは「間」や「動き」を好むだけでなく、そもそもおもしろいものですから、遊

びの中で受け入れなければならない規則のようなものは非常に主体的に受け入れる側面が

あります。例えばかくれんぼを考えてみます。かくれんぼでは「目をあけちゃだめよ」と

言われますが、目をあけてどこに隠れたかを見ることをやらないのは、自分がそうするこ

とで遊びがおもしろくなることを自覚し、そのルールを主体的に受け入れているからです。

そういう体験が、日常生活に戻った際にも規則は自分で守ろうという形である程度関連し

ていくことはおそらくあるのではないでしょうか。

いずれにしても「間」、「動き」、「安心感」という3条件が整ったときに初めて遊び

は成立しているのだと思います。そういう視点で考えると、例えば積み木をしたことや、

サッカーをすることだけで遊びが生じているのではなく、3つの条件が遊んでいる側に成

立していなければ、それは遊びにはなっていません。遊ぶことを支援する側からすれば、

遊んでいる当事者にこの3つの関係が成立しているかどうかがポイントになっているのだ

と思います。

(2)遊びとは「他者」と創り出すもの

ここまでお話してきましたような、遊びの3条件は実は他者の存在が前提となっていま

す。「間」があるというのは、自分と相手がいて、そこに「間」が生まれますし、あるい

はそもそも“これが遊びなのだ”というのは他者とともにその文脈を確認できないと成立

しません。だから“ひとり遊び”という言い方がありますが、あれは実際に自分が1人し

かそこにいないという物理的なことを指しているだけで、例えば物や環境があり、様々な

見えない他者が存在していて、その他者との関係の中で成立している遊びなのです。

そうすると遊ぶことは他者理解や他者体験でもあり、他者と1つの世界を織りなしてい

ることにもなります。

ここでいう他者とは一般に言われる“自分ではない人”という意味ではなく、“自分が

理解できないもの”を指します。つ

まり自分以外の補集合の部分であり、

自分のことだけならば安心できます

が、自分以外のあらゆるものは、ま

さに“以外”としてしか分からない

関係のことです。他者とは、そうい

う分からないもの、思いどおりにな

らないものでありますが、そうであ

るがゆえに、そういうものと出会い、

関わるからこそ、「動き」や「間」

が生まれ、おもしろさが広がるので

す。また、そういう体験は他者を理

解するために想像したり、自立的に

動いたり、何事かに挑戦したり、あ

るいはルールを守ろうとする等の

図3 遊びの概念図

レーキになります。ほどほどというところが難しいところだと思うのです。

では、この踏みしろの部分をなぜ「遊び」というのかを考えると、まずは「すき間」そ

のものを指していることが分かります。例えば「計画に遊びを持たせる」という際もいわ

ゆる分刻みの計画ではなく、多少ゆとりがある場合を指します。西村先生はこのような内

容を「遊隙(ゆうげき)」という言葉で表現しています。一方、ブレーキペダルを繰り返

し踏んで離すというような反復的な動作によって、どれくらいブレーキペダルの遊びがあ

るかを探るような場合もあります。そのような動きには「遊動」という言葉を用いており、

この「遊動」は同時に、“同調するような動き”を指してもいます。

そういうふうに考えると、遊びはなるほどと思うところがあります。旅行は我々現代人

にとってすごく遊びの要素を含んだ行動ですが、例えば自宅から北海道へ行き、遊んで帰

ってきて、また次の休みには今度は青森へ遊びに行く、という形で、自宅と観光地を行っ

たり来たりという動きがあるからこそ遊びを満喫する旅行となります。北海道に行ってそ

のままだったら、これはもう移住です。遊びに行ったとは言いません。

ただ、ここでもう一つ大切なのは、西村先生も指摘されていますし、私自身も「遊び」

を観察して思うところですが、「遊び」の中にある「間」と「動き」そのものは不安定な

状況であるという点です。「これがすごくおもしろい遊びだ!」と思えるのは、そもそも

その動きが「遊び」なのだという了解が前提にあってこそ成立します。日常生活における

何らかの行為は、一般的には自分(主体)がある意図を持って行動することや、相手(客

体)と何らかのコミュニケーションをとりながら行動をする、といった場合がほとんどで

す。しかし「無我夢中」という言葉からも分かるように、思いっきり遊んでいるときは、

我をなくしてしまっているような、主体/客体の関係を超えた独特のあり方があります。

だからこそ非日常(日常ではない)であるという意識がすごく広がります。このあたりを

西村先生は「遊戯関係」とおっしゃるのですけれども、私なりに言うと「遊び」なのだと

いう安心感みたいなものがポイントになっているのではないでしょうか。

図2で描かれているブランコの遊

びを例にとれば、ブランコは止まっ

たまま座っていてもおもしろくはあ

りません。振って前後の動きができ

るからこそブランコの遊びはおもし

ろいのです。しかし、もし「10回振

ったら2回はねじが外れて落ちま

す」というブランコだったら、怖く

てなかなか遊べません。やはり“何

回振っても落ちないよ”という安心

感があって初めて「遊び」になりま

す。

このような「間」、「動き」、「安

心感」という3要素が重なり合って

生じている構造のようなものが「遊び」の祖型になっています。こういう遊びの場面で一

番の特徴は、“ここでは失敗してもO.K.なんだ”という感覚です。

例えば「間」と「動き」というのは、実際に体を動かすだけではなく、ゲームによる遊

びが良い例ですが、心の中で勝つか負けるか、心の「間」が「動き」だし、どきどきはら

はらするということもあります。でも、この場合、勝ったところでどうということはない

図2 遊戯関係

4 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

し、逆に負けてもどうということはありません。だからこそ一生懸命になって勝とうとす

る思いが出てきます。日常生活は失敗してはまずい場所ですが、遊びなら問題ありません。

そこで、もう一回もう一回という反復的な動きが出始めて“失敗O.K.”という感覚が生じ

るという特徴もあると思います。

また遊びは「間」や「動き」を好むだけでなく、そもそもおもしろいものですから、遊

びの中で受け入れなければならない規則のようなものは非常に主体的に受け入れる側面が

あります。例えばかくれんぼを考えてみます。かくれんぼでは「目をあけちゃだめよ」と

言われますが、目をあけてどこに隠れたかを見ることをやらないのは、自分がそうするこ

とで遊びがおもしろくなることを自覚し、そのルールを主体的に受け入れているからです。

そういう体験が、日常生活に戻った際にも規則は自分で守ろうという形である程度関連し

ていくことはおそらくあるのではないでしょうか。

いずれにしても「間」、「動き」、「安心感」という3条件が整ったときに初めて遊び

は成立しているのだと思います。そういう視点で考えると、例えば積み木をしたことや、

サッカーをすることだけで遊びが生じているのではなく、3つの条件が遊んでいる側に成

立していなければ、それは遊びにはなっていません。遊ぶことを支援する側からすれば、

遊んでいる当事者にこの3つの関係が成立しているかどうかがポイントになっているのだ

と思います。

(2)遊びとは「他者」と創り出すもの

ここまでお話してきましたような、遊びの3条件は実は他者の存在が前提となっていま

す。「間」があるというのは、自分と相手がいて、そこに「間」が生まれますし、あるい

はそもそも“これが遊びなのだ”というのは他者とともにその文脈を確認できないと成立

しません。だから“ひとり遊び”という言い方がありますが、あれは実際に自分が1人し

かそこにいないという物理的なことを指しているだけで、例えば物や環境があり、様々な

見えない他者が存在していて、その他者との関係の中で成立している遊びなのです。

そうすると遊ぶことは他者理解や他者体験でもあり、他者と1つの世界を織りなしてい

ることにもなります。

ここでいう他者とは一般に言われる“自分ではない人”という意味ではなく、“自分が

理解できないもの”を指します。つ

まり自分以外の補集合の部分であり、

自分のことだけならば安心できます

が、自分以外のあらゆるものは、ま

さに“以外”としてしか分からない

関係のことです。他者とは、そうい

う分からないもの、思いどおりにな

らないものでありますが、そうであ

るがゆえに、そういうものと出会い、

関わるからこそ、「動き」や「間」

が生まれ、おもしろさが広がるので

す。また、そういう体験は他者を理

解するために想像したり、自立的に

動いたり、何事かに挑戦したり、あ

るいはルールを守ろうとする等の

図3 遊びの概念図

5Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

そうすると「遊び」という言葉を大人が用いる場合、とるに足らない活動のように捉え

られる側面があります。子供の頃にはたくさん遊んでいた場合でも、何か「遊び」という

言葉を軽んじ、例えば会社の上司が部下に対して「君、仕事を遊びだと思ってもらっちゃ

困るよ」とか、「遊び半分にやっていただろう」とか、「遊び」という言葉を使うと決し

て褒め言葉にならないのです。

同時に、「おもちゃ」という言葉を使っても決して褒め言葉にならない。何かとるに足

らないもの、壊れ物、まやかし物のような捉え方をされることがあります。なぜこの日本

においては遊びとかおもちゃという言葉が軽んじられることになってしまうのだろうか、

ということについてとても興味を持ちました。

というのも、人は遊びを遊

び半分には行いません。「一

心不乱」に、「無我夢中」で、

遊びに「全力投球」します。

仕事が第一で、遊びが二の次

というみたいな捉え方ではな

くて、むしろ「遊び」のほう

が重要なのではないか、とい

うことを真剣に考えるように

なりました。

ですから、こういうレクチ

ャーや座談会の中で遊びの大

事さを訴えることの大切さを

実感しています。

(2)人間を知る機会としての「遊び」

続いて、2つの獲得の問題に移ります。私は、「遊び」の本質や意義そのものを考察す

るのではなく、常に子供が遊んでいる姿を観察したうえで考えを巡らしています。また、

遊ぶ目的や、何かの役に立つ遊び、というものを考える必要性もあまり感じていません。

ただ、子供が遊びのなかで行っていることや遊んでいる姿をじっと見ていると、2つのも

のを獲得しているのではないかと考えられるのです。その2つとは一体何かというと、1

つが人間研究です。子供は遊びを通じて実はいろいろな人間研究をしているのではないか

なということです。あともう一つは、遊びを通じて子供はエネルギーの研究をしているの

かなと感じることがあるのです。人間研究とエネルギーの研究と言葉だけ唐突に言うとわ

かりづらいので補足します。

松田先生が先ほど遊びにおける他者との問題をおっしゃっていましたが、遊びを通じて、

遊びの世界だからこそ、子供は他者のことについていろいろと子供なりに研究しているの

ではないか。言い換えれば相手の様子を探っている、相手との空気感を読み取っている、

ということです。

例えば、子供が他者との遊びの中で“こんなことを言っちゃうと○○ちゃんは悲しそう

な顔になっちゃうんだよね”とか、“こういうことをしてあげるとなぜかママはいつも褒

めてくれる”とか、自分以外の他者を観察し、様々な投げかけをすると、他者がどういう

反応や受けとめ方をしてくれるかということを、子供たちは遊びを通して朝から晩まで365

日、研究しているのです。特に小学校の低学年の子供たちと日々接していると、彼らは、

おもちゃ美術館には多様なおもちゃが

展示され、実際にあそぶことができる。

様々なことが主体的に生じることにもなります。

ここまで見てきましたように、遊ぶということは、個人の心の動きというよりは、他者

と創っている世界、出来事だと言えます。

そうしますと子供の遊びに関わる大人は決して遊びの外側にいるのではなく、遊びの世

界の住人としてつくり出していく関係になるのではないかと思っているのです。

これまで、遊びは“出来事としての遊び”として捉えられ、子供の遊びも、遊びに親や

友だちという他者やモノ・環境が加わるという図をイメージしがちです。しかし遊ぶこと

には1つの世界しか広がっていなくて、遊びとは、子供、親、友だち、モノ、環境が遊び

のルールの中で絡まり合って成立する1つの出来事ではないでしょうか。

このような観点から具体的に様々な遊びやその課題について考えていけたらいいなとい

うのが、私が思っていることです。

2.子供が遊ぶことによって獲得するもの(多田千尋)

東京おもちゃ美術館の運営などを35年ほどや

っていますと、遊びの問題、また、それに付随

するおもちゃの問題はとても身近な問題として

日々捉えています。そこで、本日はお話を2点

に絞りたいと思います。1つ目は遊びにおける

文化の問題、もう一つは遊びにおける2つの獲

得の問題です。文化と獲得というところに焦点

を当てたいと思っています。

(1)遊ぶことは否定的な行為ではない

文化の問題について考え始めたのは、23~24

歳の頃にモスクワに2年間ほど行った時のこと

です。ロシアは人形劇がとても盛んで、モスク

ワの人形劇場ではチケットが取れないほどの盛

況ぶりでした。また、いろいろな幼稚園、保育園を視察していく中で、保育者の方とお話

しした際に知り得たのですが、ロシア語ではおもちゃのことを「イグルーシカ(игру

шка)」というのです。「イグルーシカ」の「イグルー(игру)」は、英語に訳す

と「プレイ(play)」なのです。ですから「遊ぶもの」というのが単純に「おもちゃ」と

いうことではなく、ロシアにおける「イグルーシカ」と日本の「おもちゃ」はかなり差が

あるのではないかと感じたことがありました。

また、日本の「おもちゃ」には比喩表現として否定的な表現がなされる時があります。

例えば、子供に懐かれる以上に、自分自身が“(子供の)おもちゃのようにされてしまっ

た”といったような表現です。しかし、ロシア人の保育者に聞いたところ、「おもちゃに

された」という表現は「大切にされた」「私は手厚くケアされた」という意味合いで用い

られると言われたときは、正直愕然としました。そうなのか、「おもちゃ」と「イグルー

シカ」という言葉はほぼイコールだと私は思っていたけれども、ここにはかなりの落差が

あるのではないかなと感じて、「おもちゃ」、ひいては「遊び」という言葉の意味するも

のが日本社会の中でどういう位置づけになっているのかということを帰国してから調べて

みたくなったのです。

多田 千尋 氏

6 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

そうすると「遊び」という言葉を大人が用いる場合、とるに足らない活動のように捉え

られる側面があります。子供の頃にはたくさん遊んでいた場合でも、何か「遊び」という

言葉を軽んじ、例えば会社の上司が部下に対して「君、仕事を遊びだと思ってもらっちゃ

困るよ」とか、「遊び半分にやっていただろう」とか、「遊び」という言葉を使うと決し

て褒め言葉にならないのです。

同時に、「おもちゃ」という言葉を使っても決して褒め言葉にならない。何かとるに足

らないもの、壊れ物、まやかし物のような捉え方をされることがあります。なぜこの日本

においては遊びとかおもちゃという言葉が軽んじられることになってしまうのだろうか、

ということについてとても興味を持ちました。

というのも、人は遊びを遊

び半分には行いません。「一

心不乱」に、「無我夢中」で、

遊びに「全力投球」します。

仕事が第一で、遊びが二の次

というみたいな捉え方ではな

くて、むしろ「遊び」のほう

が重要なのではないか、とい

うことを真剣に考えるように

なりました。

ですから、こういうレクチ

ャーや座談会の中で遊びの大

事さを訴えることの大切さを

実感しています。

(2)人間を知る機会としての「遊び」

続いて、2つの獲得の問題に移ります。私は、「遊び」の本質や意義そのものを考察す

るのではなく、常に子供が遊んでいる姿を観察したうえで考えを巡らしています。また、

遊ぶ目的や、何かの役に立つ遊び、というものを考える必要性もあまり感じていません。

ただ、子供が遊びのなかで行っていることや遊んでいる姿をじっと見ていると、2つのも

のを獲得しているのではないかと考えられるのです。その2つとは一体何かというと、1

つが人間研究です。子供は遊びを通じて実はいろいろな人間研究をしているのではないか

なということです。あともう一つは、遊びを通じて子供はエネルギーの研究をしているの

かなと感じることがあるのです。人間研究とエネルギーの研究と言葉だけ唐突に言うとわ

かりづらいので補足します。

松田先生が先ほど遊びにおける他者との問題をおっしゃっていましたが、遊びを通じて、

遊びの世界だからこそ、子供は他者のことについていろいろと子供なりに研究しているの

ではないか。言い換えれば相手の様子を探っている、相手との空気感を読み取っている、

ということです。

例えば、子供が他者との遊びの中で“こんなことを言っちゃうと○○ちゃんは悲しそう

な顔になっちゃうんだよね”とか、“こういうことをしてあげるとなぜかママはいつも褒

めてくれる”とか、自分以外の他者を観察し、様々な投げかけをすると、他者がどういう

反応や受けとめ方をしてくれるかということを、子供たちは遊びを通して朝から晩まで365

日、研究しているのです。特に小学校の低学年の子供たちと日々接していると、彼らは、

おもちゃ美術館には多様なおもちゃが

展示され、実際にあそぶことができる。

7Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

の捉え方をしていかないと、遊びの意義、とるに足らないものではないのだよ、なぜ幼児

教育は遊びでなければいけないのか、ということの説明をしていくことができないと思い

ます。

ただ、遊びの捉え方は実は非常に難しくて、先ほども松田先生がお話しくださったのは

社会学的な立場からのお話でしたが、ここでは保育・教育に役立つ指導理念及び指導実践

両方の立場から説明し得る遊びの捉え方、そして心理学的な遊びの捉え方を説明させてい

ただきたいと思います。遊びを心理学で説明するとどうなるかというと、内発的に動機づ

けられた状態を遊びと捉えます。これに対して外発的な動機づけがありますけれども、外

発的な動機づけというのは行動の外に報酬があるのに対して、内発的な動機づけというの

は行動そのものに報酬が内在しているような考え方です。内在している報酬というのは何

かというと、自己決定と有能さの認知です。ですから自己決定と有能さの認知を追求する

ために内発的に動機づけられた状態を遊びと捉えるということです。外発的な動機づけは

行動を手段として捉えているのに対して、遊びは行動そのものに内在している自己決定と

有能さの認知を追求するために内発的に動機づけられた状態として行っているので、その

行動は自己目的的に行っていることになります。

このように遊びを捉えた場合、先ほど申し上げた指導理念の立場からいうと、遊びが教

育、保育においてなぜ重要なのかということの説明がつきます。

指導理念から考えると、幼児教育における遊びは、自己決定的に行動すること、つまり

自分らしく行動することであり、自分らしさを育んで、個性を育てて自立した人間を育て

ることにつながります。あるいは有能さを追求することにより個人が潜在的に持って生ま

れてくるさまざまな可能性を実現させて、自己の能力を向上させることでもあります。ま

た、遊びにおいて子供それぞれが持つ行動特性は、自分が今、持っている全力を発揮する

ような行動に出る場合や、自分の能力をさらに高めようという挑戦的な行動に出ることが

ある、というようなことが言われています。遊びから生じるこういった行動傾向は教育の

目指す姿であって、没頭して遊ぶことが必要であることの1つの説明になります。

② 指導実践の立場から

では、もう一つの指導実践の立場から考えてみます。遊びを指導すると言われたときに、

保育者においても物を与えて、活動を与えてというような状況があります。先ほども松田

先生が何らかの行為をしていたとしてもそれは遊びとは言い切れないというお話がありま

したが、例えば、縄を与えて縄による活動をやらせておけば縄遊びなのかとか、ボールを

使っていればボール遊びなのかというとそうではなくて、繰り返しになりますが、遊びを

自己決定と有能さの認知を追求するために内発的に動機づけられた状態と捉えるとするな

らば、遊びを指導する際には子供の心の動き、いわば動機を見抜く目が必要になってきま

す。

ただ、心の動きを理解するのが容易ではないわけです。そういったときに今、お話しし

たような形で遊びを捉えると、行動における子供の自己決定こそが遊び要素ということに

なってきます。つまり大人が“これをやれ”“あれをやれ”と与えてやらせるのではあり

ません。運動の場面では、“ここはこうやってああやって”“ここはこう持って”や、“こ

ういうやり方をして”とかいう指示が先行してしまうことがありますが、決してそうでは

なくて、何を行うかとか、どうやるかということを子供が主体的に決めていくことこそが

遊びの要素なのです。つまりそういう要素を高めていくことが、子供が遊びとしてかかわ

っていくことに他ならないのではないでしょうか。

ものすごい人間研究をしているのではないか、と思っています。その研究を遊びの中で日々

行い、幼児から学童、青年期に入っていく中で、第三者との距離感のとり方とか、人間づ

き合いのいろいろな機微ですとか、いろいろなものをきっと獲得しているのではないでし

ょうか。

(3)エネルギーを発散する機会を獲得できる「遊び」

2つ目はエネルギー研究。多分どんなにすぐれた学習塾であろうが、どんなにすぐれた

ドリルであろうが、遊びのエネルギーの発散には太刀打ちできないのではないかと私は思

っています。無我夢中で遊ぶ時の子供が放つエネルギーは恐らく他にかえがたいものであ

って、だからこそ子供の頃は一生懸命遊び続けなければいけないのではないでしょうか。

遊びを通して全身を使って全力投球し、完全燃焼するということを、皮膚感覚で知ってお

いたほうがいいのではないのかなと。高校生とか大学生、もっと言えば社会人になってか

らどんな専門書を読んでも、どんなシンポジウムに行っても、エネルギーの完全燃焼なん

ていうことは多分学べないのではないか。実感としてつかみ取ることができないのではな

いか。子供のときに子供時代だからこそやっていなければいけないものとして、遊びによ

って出されるエネルギーを感じ取り、「学ぶこと」という意味での研究はとても大事では

ないかと感じることがあります。

繰り返しになりますが、遊びの目的や、遊びで得られるもの、というような論議の俎上

には乗せたくはありません。ただ、子供は遊びを通じて、自分が偉大なる、魅力的な大人

になるための2大研究事業に取り組んでいる。人間の機微を探るための人間研究、そして

遊びによる完全燃焼を、身をもって知るためのエネルギー研究ということです。また後ほ

ど、遊び、もう一つのおもちゃについてもう少し議論を深めながら進めていければなと思

います。

3.たくさん体を動かして遊べるようにするためには何が必要か(吉田伊津美)

(1)没頭して遊ぶことはなぜ必要か

① 指導理念の立場から

たった今、多田先生が遊びは何の役に立つか

などを考える必要はないのだと話してください

ました。私は運動遊びの視点ということで、特

に幼児教育の立場から4つの視点でお話をさせ

ていただきたいと思います。実は、幼児教育の

立場で考えると、幼児期は遊びを通しての総合

的な指導ということが言われています。一方で、

小学校の先生などからはよく、“幼稚園、保育

園はただ遊んでいるだけだよね”みたいな言い

方がなされます。これも先ほど多田先生がおっ

しゃっていたように、遊びは何かとるに足らな

いような、すごく低次なもののような言われ方

をしてしまうことが非常に多くあります。そういう意味で幼児教育において遊びをどうい

うふうに説明していくかを考えたときに、指導理念と指導実践の立場から説明できる遊び

吉田 伊津美 氏

8 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

の捉え方をしていかないと、遊びの意義、とるに足らないものではないのだよ、なぜ幼児

教育は遊びでなければいけないのか、ということの説明をしていくことができないと思い

ます。

ただ、遊びの捉え方は実は非常に難しくて、先ほども松田先生がお話しくださったのは

社会学的な立場からのお話でしたが、ここでは保育・教育に役立つ指導理念及び指導実践

両方の立場から説明し得る遊びの捉え方、そして心理学的な遊びの捉え方を説明させてい

ただきたいと思います。遊びを心理学で説明するとどうなるかというと、内発的に動機づ

けられた状態を遊びと捉えます。これに対して外発的な動機づけがありますけれども、外

発的な動機づけというのは行動の外に報酬があるのに対して、内発的な動機づけというの

は行動そのものに報酬が内在しているような考え方です。内在している報酬というのは何

かというと、自己決定と有能さの認知です。ですから自己決定と有能さの認知を追求する

ために内発的に動機づけられた状態を遊びと捉えるということです。外発的な動機づけは

行動を手段として捉えているのに対して、遊びは行動そのものに内在している自己決定と

有能さの認知を追求するために内発的に動機づけられた状態として行っているので、その

行動は自己目的的に行っていることになります。

このように遊びを捉えた場合、先ほど申し上げた指導理念の立場からいうと、遊びが教

育、保育においてなぜ重要なのかということの説明がつきます。

指導理念から考えると、幼児教育における遊びは、自己決定的に行動すること、つまり

自分らしく行動することであり、自分らしさを育んで、個性を育てて自立した人間を育て

ることにつながります。あるいは有能さを追求することにより個人が潜在的に持って生ま

れてくるさまざまな可能性を実現させて、自己の能力を向上させることでもあります。ま

た、遊びにおいて子供それぞれが持つ行動特性は、自分が今、持っている全力を発揮する

ような行動に出る場合や、自分の能力をさらに高めようという挑戦的な行動に出ることが

ある、というようなことが言われています。遊びから生じるこういった行動傾向は教育の

目指す姿であって、没頭して遊ぶことが必要であることの1つの説明になります。

② 指導実践の立場から

では、もう一つの指導実践の立場から考えてみます。遊びを指導すると言われたときに、

保育者においても物を与えて、活動を与えてというような状況があります。先ほども松田

先生が何らかの行為をしていたとしてもそれは遊びとは言い切れないというお話がありま

したが、例えば、縄を与えて縄による活動をやらせておけば縄遊びなのかとか、ボールを

使っていればボール遊びなのかというとそうではなくて、繰り返しになりますが、遊びを

自己決定と有能さの認知を追求するために内発的に動機づけられた状態と捉えるとするな

らば、遊びを指導する際には子供の心の動き、いわば動機を見抜く目が必要になってきま

す。

ただ、心の動きを理解するのが容易ではないわけです。そういったときに今、お話しし

たような形で遊びを捉えると、行動における子供の自己決定こそが遊び要素ということに

なってきます。つまり大人が“これをやれ”“あれをやれ”と与えてやらせるのではあり

ません。運動の場面では、“ここはこうやってああやって”“ここはこう持って”や、“こ

ういうやり方をして”とかいう指示が先行してしまうことがありますが、決してそうでは

なくて、何を行うかとか、どうやるかということを子供が主体的に決めていくことこそが

遊びの要素なのです。つまりそういう要素を高めていくことが、子供が遊びとしてかかわ

っていくことに他ならないのではないでしょうか。

9Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

(2)運動能力だけでなく心の育ちにも影響を与える子供の遊び

また、図6は運動能力の高いグループが一番右の棒グラフで、低いグループが一番左の

棒グラフですけれども、運動能力が高い子のほうが運動能力の低い子に比べて自信や、積

極性、粘り強さという行動傾向が高く、それに対して神経質な部分は低い子のほうが高い

という結果が示されて

います。

なぜ、こういう結果

になるのかを考えると、

やはり遊びとしての運

動が子供の心の育ちに

大きく関係していると

いうことが言えます。

特に幼児期は自己概念

と言われるものの中心

に運動有能感というも

のがあります。一般的

に言って肯定的な自己

概念を持っている人は

行動傾向がポジティブ

になるのに対し、否定

的な自己概念を持って

いる人は行動傾向がネガティブになる傾向があります。

では、自己概念の形成に運動遊びがどのように関係しているのかというと、運動遊びで

の達成経験とか他者からの肯定的な評価を受けると、“やった”とか“できた”という有

能感を形成する、すなわち肯定的な自己概念を形成します。そうすると行動傾向もポジテ

ィブになっていく。同時に運動する機会も増えていくようになります。運動発達というの

は、基本的に運動経験に依存していますから、体を多く動かす機会が保障されれば、運動

能力も向上していく。結果的にできることも増えていく。さらに、いろいろな方法を試し

ながら達成経験も積み重なり、周りから“よかったね”“すごかったね”というような肯

定的な評価を得ていきます。

それに対して、例えば運動遊びの失敗経験では、「遊び」であれば失敗経験であっても

自分のやり方の範囲なので、それほど強くは無力感を形成することはありません。しかし、

やらされた活動の中でできないことばかりやらされて、“だめだね”“できないね”とい

うことを繰り返すと無力感を形成してしまいます。否定的な自己概念を持った子は劣等感

も高く、消極的で、運動も嫌いになってしまう。そして運動する機会が減ってきて、当然

運動能力も低下してしまう。その結果、できないことばかりで、できないことをやらされ

てという負の循環になってしまうことになるわけです。

ですから運動能力を高めるために、ただ運動をさせればいいかというとそういうわけで

はなく、どういうふうにその子が運動に関わるかということのほうが大事なのです。まさ

に遊びとしての関わり、自己決定的に関わることによって有能感が形成され、肯定的な自

己概念の発達に大きく影響を及ぼすことになります。そのため、指導の際には一人一人の

子が有能感を持てるような配慮をしていくことが非常に重要であると言えます。運動能力

を高めようとするだけであれば、嫌々でも泣きながらでもさせればやらないよりは高まる

図6 運動能力高・中・低群別にみた園での行動傾向(杉原ら2010)

今、お話ししたような子供が自己決定する遊びを行うとどういう影響があるのかという

ことをあえて説明するために、運動遊び、体を使った遊びを例にとって説明します。今、

保育現場では、体操教室、サッカー教室、スイミングをはじめとする運動指導をしている

園がとても多くあります。

図4は、指導が多い

群、少ない群と全く指

導がないグループの運

動能力を比較したもの

です。黒の棒が、一番

運動能力が高いのです

が、どのグループが最

も運動能力が高いかと

いうと、全く指導がな

いグループでした。む

しろ指導をいっぱいや

っているグループのほ

うが、有意に運動能力

が低いことが明らかに

なっています。

一見すると矛盾しているように思われます。きちんと指導している方が運動能力は高い

と思われるかもしれません。しかし、おそらく実際には運動指導者のいる場面ではこうい

うことが多く見受けられます。子どもを集め、整列させ、説明をし、順番を待ってという

ように、一人一人の運動量は極めて少なく、運動指導の時間であってもほとんど動いてい

ないというような状況です。これに対し、運動能力の高い「指導をしていない」グループ

は、特定の運動の指導をしていないということであって、保育者によって子どもの興味に

基づく環境を構成し、子どもたちが思い思いに存分に体を動かすことが保障されていると

いうことです。

次に、図5では、遊

びを自己決定と捉え、

遊び志向が高いグルー

プ(高群)と、反対に

教師や指導者が中心に

なって、内容や方法を

決めているような遊び

志向が低いグループ

(低群)の運動能力を

比較しています。そう

すると高群の方が結果

的に運動能力は高いこ

とが明らかにされてい

ます。

図4 運動指導日数と運動能力(杉原ら2004)

図5 遊びとしての運動と幼児の運動能力(杉原ら2010)

10 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

(2)運動能力だけでなく心の育ちにも影響を与える子供の遊び

また、図6は運動能力の高いグループが一番右の棒グラフで、低いグループが一番左の

棒グラフですけれども、運動能力が高い子のほうが運動能力の低い子に比べて自信や、積

極性、粘り強さという行動傾向が高く、それに対して神経質な部分は低い子のほうが高い

という結果が示されて

います。

なぜ、こういう結果

になるのかを考えると、

やはり遊びとしての運

動が子供の心の育ちに

大きく関係していると

いうことが言えます。

特に幼児期は自己概念

と言われるものの中心

に運動有能感というも

のがあります。一般的

に言って肯定的な自己

概念を持っている人は

行動傾向がポジティブ

になるのに対し、否定

的な自己概念を持って

いる人は行動傾向がネガティブになる傾向があります。

では、自己概念の形成に運動遊びがどのように関係しているのかというと、運動遊びで

の達成経験とか他者からの肯定的な評価を受けると、“やった”とか“できた”という有

能感を形成する、すなわち肯定的な自己概念を形成します。そうすると行動傾向もポジテ

ィブになっていく。同時に運動する機会も増えていくようになります。運動発達というの

は、基本的に運動経験に依存していますから、体を多く動かす機会が保障されれば、運動

能力も向上していく。結果的にできることも増えていく。さらに、いろいろな方法を試し

ながら達成経験も積み重なり、周りから“よかったね”“すごかったね”というような肯

定的な評価を得ていきます。

それに対して、例えば運動遊びの失敗経験では、「遊び」であれば失敗経験であっても

自分のやり方の範囲なので、それほど強くは無力感を形成することはありません。しかし、

やらされた活動の中でできないことばかりやらされて、“だめだね”“できないね”とい

うことを繰り返すと無力感を形成してしまいます。否定的な自己概念を持った子は劣等感

も高く、消極的で、運動も嫌いになってしまう。そして運動する機会が減ってきて、当然

運動能力も低下してしまう。その結果、できないことばかりで、できないことをやらされ

てという負の循環になってしまうことになるわけです。

ですから運動能力を高めるために、ただ運動をさせればいいかというとそういうわけで

はなく、どういうふうにその子が運動に関わるかということのほうが大事なのです。まさ

に遊びとしての関わり、自己決定的に関わることによって有能感が形成され、肯定的な自

己概念の発達に大きく影響を及ぼすことになります。そのため、指導の際には一人一人の

子が有能感を持てるような配慮をしていくことが非常に重要であると言えます。運動能力

を高めようとするだけであれば、嫌々でも泣きながらでもさせればやらないよりは高まる

図6 運動能力高・中・低群別にみた園での行動傾向(杉原ら2010)

中群

11Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

ています。運動遊びの立場から考えると、遊び場や広い場所がなければ思い切り体を動か

せないし、遊具などの物がなければそこに関わったりできません。例えば、「高さ」がな

ければよじ登ったり、飛び降りたりという動きも出てきません。さらに、そういった物的

な環境に加えて大人の理解、言い換えるなら心理社会的な環境が必要かと思います。泥ん

こを嫌う親は絶対子供を泥んこにはさせないし、けがをしてはいけないとなると、絶対け

がのリスクがあるような活動はさせない、というようなことになってしまうので、大人の

理解が必要かなと思います。

これまで子供たちの3つの間(時間・空間・仲間の3間)の喪失ということが言われて

きましたが、近年ではこれに「手間」と「お茶の間」を加えて5つの間(5間)が大切だ

という考えも見られます2)。大人がいかに手間をかけて、かつ家庭においてそういった場

の保障、機会の保障をしていく必要があるのではないかということです。先ほどスポーツ

庁の報告もありましたけれども、そういったことをできるだけ早い時期から習慣づくりを

していくためにやはり大人が考えていかなければいけないのではないかと思います。

2)「平成25年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」内の取組事例集の中において、愛媛県教育委員会の

取組として紹介されている。詳しい内容は以下のアドレスに掲載されている。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/12/24/1342639_2.pdf

かもしれません。しかし、心の発達の側面で言えば全く貢献をしていなく、“やらされて

いる状態”が続けば、自分から主体的にやることも全くないことになります。

また、ベネッセの調査では、協調性、頑張る力、好奇心、自己主張、自己統制など、“学

びに向かう力”は、幼児期に遊び込んだ経験を多くしている方が高いことが明らかにされ

ています(ベネッセ総合教育研究所「園での経験と幼児の成長に関する調査」2016)。

図7はスポーツ庁の

調査(全国体力・運動能

力、運動習慣等調査

(H30))です。横軸が幼

児期の外遊びの実施状

況で、縦軸が新体力テ

ストの得点です。これ

をみると、小学校5年

生(10歳)の男の子と

女の子では、幼児期に

たくさん外遊びをして

いる子の方が小学校5

年生時の体力が高いと

いう結果が報告されて

います。体力得点の高

い児童は幼児期にたく

さん外遊びをしていて、

(ここでは示していないのですが)児童期の運動実施頻度も高くなっている。つまり幼児

期の運動遊び経験は児童期の運動遊びの習慣にも影響していると同時に、児童期の体力に

も影響を及ぼしていることが言えるかと思います。

(3)成績志向ではなく遊び志向を重視した活動が大切

子供の遊びに対して大人が向き合うために注意すべきこととしては、やはり遊び志向を

重視した関わりをすることではないかと思います。極端に言えば、結果を重視する成績志

向という立場と、過程を重視する、プロセスを重視するという遊び志向という関わりがあ

ります。この2つの立場は全く違いますが、運動遊びというと“できた、できない”が分

かりやすいので、ややもすると何かが“できる”“できない”、“上手”“下手”とか、

“早い”“遅い”といったところが強調されがちです。しかし、前節までで申しましたよ

うに及ぼす影響は全く逆になってくるので、過程を重視した運動遊びを尊重していくこと

が必要ではないかと思います。

子供は日常的な場において、例えば一本橋があったらそこを渡ってしまうというような

ことを自然にやっていくわけです。何かやらせなくても、そういった普段からやりたくな

る環境を考えていくことで、子供が主体的に体を動かすようになっていくのではないでし

ょうか。

(4)遊べる環境を整えるために

最後に、思い切り遊べる環境の整え方についてお話しします。よく言われるスポーツや

外遊びに不可欠な要素として、「3間(時間・空間・仲間)」の減少ということが言われ

図7 幼児期の外遊びと10歳時点の新体力テストの関係

12 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

ています。運動遊びの立場から考えると、遊び場や広い場所がなければ思い切り体を動か

せないし、遊具などの物がなければそこに関わったりできません。例えば、「高さ」がな

ければよじ登ったり、飛び降りたりという動きも出てきません。さらに、そういった物的

な環境に加えて大人の理解、言い換えるなら心理社会的な環境が必要かと思います。泥ん

こを嫌う親は絶対子供を泥んこにはさせないし、けがをしてはいけないとなると、絶対け

がのリスクがあるような活動はさせない、というようなことになってしまうので、大人の

理解が必要かなと思います。

これまで子供たちの3つの間(時間・空間・仲間の3間)の喪失ということが言われて

きましたが、近年ではこれに「手間」と「お茶の間」を加えて5つの間(5間)が大切だ

という考えも見られます2)。大人がいかに手間をかけて、かつ家庭においてそういった場

の保障、機会の保障をしていく必要があるのではないかということです。先ほどスポーツ

庁の報告もありましたけれども、そういったことをできるだけ早い時期から習慣づくりを

していくためにやはり大人が考えていかなければいけないのではないかと思います。

2)「平成25年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」内の取組事例集の中において、愛媛県教育委員会の

取組として紹介されている。詳しい内容は以下のアドレスに掲載されている。

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldfile/2013/12/24/1342639_2.pdf

13Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

(2)子供自身が決めた遊びを見守ること

○鈴木 だからこそ揺れたりもするということですね。まさにここで3人のお話がつなが

ってくるのではないでしょうか。4文字熟語で表すと「自己決定」。わくわくどきどきで、

安定と不安定との間で揺れ動きながらも挑戦すること、というのはまさにエネルギーが必

要であるし、恐らくそれは「継続性」にもつながりますね。子供たちを見ていると、何日

も何日も同じ遊びをずっと続けていくという継続する力もすごくあって、それがまさにエ

ネルギーが続いているなというのをすごく感じます。

「遊び込む」という言い方を幼児教育ではよくしますけれども、先ほど吉田先生がおっ

しゃった「5間」と、松田先生のおっしゃる「間」もあるし、遊びに対していろいろキー

ワードが出てきました。

そこで改めて、子供の遊びに大人はどう関わっていくかを話し合いたいと思います。3

人の先生方がそれぞれおっしゃっていたように、どうしても大人が導いてしまうというか、

“こうさせよう”“こっち向いてこれをやって”“こうすればいいのよ”みたいな転ばぬ

先の杖を出してしまい、いろいろしてしまう「わな」があると思うのですが、ではそれが

望ましい関わり方ではないのなら、今度はどうやって関わったらいいかというところを、

松田先生から教えていただいていいですか。

○松田 かつてフランスのロジェ・カイヨワという批

評家が遊びに関する研究書を書き、その補論で、「一

般に遊びは、肉体、性格、知性にとって、あらかじめ

定められた目的のない教育として現れる。この見地か

らすれば、遊びが、現実から遠ければ遠いほど、教育

的価値は大になる。秘訣を教えず、能力を発達させる

ことになるからである。」(ロジェ・カイヨワ『遊び

と人間』p.244)と言っています。遊びでは、何かを身

につけるために何かをするということはありません。

子供が指人形で遊んでいる時に巧緻性を身につけよう

という目的でやっていることはありませんが、結果と

していろいろなものが身につくことはすごくあります。

だから遊び込めば込むほど豊かな結果があるのですが、

この関係を理解するのが大人の側としてはすごく難し

いのです。また、大人も一緒に遊ぶことが大事ですが、

そこまでいかなくとも、子供の遊びに余裕をもって見

る、まさに“遊ばせる”という感覚が大事なのではな

いでしょうか。いい意味で子供を“転がす”という感

覚がどこかで必要なのかなと思ったりします。

○吉田 今、松田先生がおっしゃったことは非常に重要だと思っています。大人が子供に

“やっちゃだめなんだよ”と言ったり、周りがそういう雰囲気を醸し出すと、子供は思い

切り何かに取り組もうという態度に結びつきません。楽しい雰囲気があると、そこに子供

は引きつけられてくるので、そういう雰囲気つくりが大切です。

おそらく、子供が遊びを体験した先に何か獲得するものが必ずあるはずです。教育者と

してはそういったことも見通した上で関わっていく必要があると思いますが、親御さんや

周囲の大人はそういうところまで見通すことはなかなか難しいので、やはり“一緒になっ

て楽しむ”とか、子供の行為を肯定的に受けとめるということが必要なのかなと思います。

R.カイヨワ【著】 清水幾太郎、霧

生和夫【訳】『遊びと人間』岩波

書店(1970)

第二部 座談会「子供の遊びへの大人の向き合い方と環境の整え方」

1.遊びにおける子供の「自己決定」を大切にすること

(1)遊びには“アニマシオン”が必要である

○鈴木 それぞれの御発表を聞いて補足や、御質問がありますでしょうか。

○松田 多田先生がお話の中で、人間研究とエネルギー研究という話がありました。僕は

すごくおもしろく聞いており、特にエネルギー研究において遊びほど“いわば原動力が湧

くようなものはない”という内容をおっしゃっていましたが、そのことと“おもしろいと

感じる気持ち”の関係、言い換えるなら“楽しいこと”と“おもしろいこと”の関係をも

う少し聞かせていただけますか。

○多田 遊びのエネルギー研究を考える場合は、聞い

たことがある人もいると思うのですが「アニマシオン」

の概念を出すと分かりやすのではないでしょうか。「ア

ニマシオン」は早稲田大学名誉教授の増山均先生がス

ペイン留学によって得た言葉です。かつて、私が先生

に「先生、アニマシオンってどういう意味ですか」と

言ったら、先生は「いい訳語がないんだよ、でも強い

て言うならば、“わくわく、どきどき”かな」と言っ

たことがありました。

遊びに“一心不乱になる”“全力投球する”という

状態のエネルギーと、“わくわくどきどき”する、と

いうことは割合とイコールに近いものではないか、と

いう感じが私はしました。一生懸命遊ぶことは、エネ

ルギーそのものであり、何か大きな楽しさや、心を揺

さぶられるものが同時に発生するのではないかと。遊

びの中には小さな楽しさもあれば些細な楽しさもある

と思いますが、そういうようなものをもうちょっと飛

び越えた、何か心が揺さぶられるところにたどり着け

るのではないのかなと思います。

また、子供の頃にこのような体験があると、その後の学習意欲の土台にもつながるので

は、と考えることもあります。経済協力開発機構(OECD)が加盟国で実施した国際学力調

査では、日本の子供たちは、数学や科学に関するリテラシーはトップクラスなのに、学習

意欲や関心は低い水準にあるという話を聞いて、この問題はエネルギー研究とかアニマシ

オンの問題と随分と関係しているのではないかなとも思います。子供の時に楽しさが伴う

アニマシオンがあり、エネルギーの発散について身をもって知ることが相伴った生活を送

ると、もしかすると異なる結果になったのではないでしょうか。

○松田 吉田先生が話された自己決定の話とのつながりで今のお話はすごく関心を持っ

て聞いていて、結局わくわくどきどき、ある種はらはらも含めて、そういうことは安心で

きるとか安定するということの反対側の感じですよね。一方で、自己決定するときは安心

する方向にも自己決定するときがあるし、どきどきを狙うほうにも自己決定したりするで

はないですか。そのあたりで遊びによってエネルギーがあふれるといったときに、どんな

遊びなのかとか、どういう周囲の関わりが必要なのか、ということを考えるときにとても

ポイントになることだなと思って伺っていました。ありがとうございます。

増山均【著】 早稲田大学増山研究

室【編】『アニマシオンと日本の子

育て・教育・文化』本の泉社(2018)

14 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

(2)子供自身が決めた遊びを見守ること

○鈴木 だからこそ揺れたりもするということですね。まさにここで3人のお話がつなが

ってくるのではないでしょうか。4文字熟語で表すと「自己決定」。わくわくどきどきで、

安定と不安定との間で揺れ動きながらも挑戦すること、というのはまさにエネルギーが必

要であるし、恐らくそれは「継続性」にもつながりますね。子供たちを見ていると、何日

も何日も同じ遊びをずっと続けていくという継続する力もすごくあって、それがまさにエ

ネルギーが続いているなというのをすごく感じます。

「遊び込む」という言い方を幼児教育ではよくしますけれども、先ほど吉田先生がおっ

しゃった「5間」と、松田先生のおっしゃる「間」もあるし、遊びに対していろいろキー

ワードが出てきました。

そこで改めて、子供の遊びに大人はどう関わっていくかを話し合いたいと思います。3

人の先生方がそれぞれおっしゃっていたように、どうしても大人が導いてしまうというか、

“こうさせよう”“こっち向いてこれをやって”“こうすればいいのよ”みたいな転ばぬ

先の杖を出してしまい、いろいろしてしまう「わな」があると思うのですが、ではそれが

望ましい関わり方ではないのなら、今度はどうやって関わったらいいかというところを、

松田先生から教えていただいていいですか。

○松田 かつてフランスのロジェ・カイヨワという批

評家が遊びに関する研究書を書き、その補論で、「一

般に遊びは、肉体、性格、知性にとって、あらかじめ

定められた目的のない教育として現れる。この見地か

らすれば、遊びが、現実から遠ければ遠いほど、教育

的価値は大になる。秘訣を教えず、能力を発達させる

ことになるからである。」(ロジェ・カイヨワ『遊び

と人間』p.244)と言っています。遊びでは、何かを身

につけるために何かをするということはありません。

子供が指人形で遊んでいる時に巧緻性を身につけよう

という目的でやっていることはありませんが、結果と

していろいろなものが身につくことはすごくあります。

だから遊び込めば込むほど豊かな結果があるのですが、

この関係を理解するのが大人の側としてはすごく難し

いのです。また、大人も一緒に遊ぶことが大事ですが、

そこまでいかなくとも、子供の遊びに余裕をもって見

る、まさに“遊ばせる”という感覚が大事なのではな

いでしょうか。いい意味で子供を“転がす”という感

覚がどこかで必要なのかなと思ったりします。

○吉田 今、松田先生がおっしゃったことは非常に重要だと思っています。大人が子供に

“やっちゃだめなんだよ”と言ったり、周りがそういう雰囲気を醸し出すと、子供は思い

切り何かに取り組もうという態度に結びつきません。楽しい雰囲気があると、そこに子供

は引きつけられてくるので、そういう雰囲気つくりが大切です。

おそらく、子供が遊びを体験した先に何か獲得するものが必ずあるはずです。教育者と

してはそういったことも見通した上で関わっていく必要があると思いますが、親御さんや

周囲の大人はそういうところまで見通すことはなかなか難しいので、やはり“一緒になっ

て楽しむ”とか、子供の行為を肯定的に受けとめるということが必要なのかなと思います。

R.カイヨワ【著】 清水幾太郎、霧

生和夫【訳】『遊びと人間』岩波

書店(1970)

15Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

注視というそうです。この関係性は“一足飛びの世代”

ではつくりやすく、親子関係はそこがなかなか近過ぎ

るのですかね。共感ではなくて、むしろ伝えるだとか、

支えるとか、ある種の“下心”が出てしまうのかもし

れません。

○多田 だからおもちゃ美術館で手づくりおもちゃ

講座や教室をやるときに、親を背後にいさせるのは危

険なのです。“ああだこうだ”“真っすぐ切りなさい”

とか口を出すわけです。そこで、そういう場合には、

スタッフたちは、親も横に座らせて同じアクティビテ

ィを行うようにさせます。そうすると自分がアクティ

ビティに必死で、子供のことなんか構っていられなく

なくなります。このような場面を観察していると、子

供がふっと横目に親を見てうれしそうな表情を浮かべ

ます。“親も僕と同じことをやっている”“お母さん

も結構不器用なんだ”とか、それがすごくうれしそう

なのです。だから同じ土俵に乗せることが子供の遊び

にとってはとても幸せな環境なのではないかと感じる

ことがあります。

○鈴木 そういう形で一緒に楽しむことがすごくいいのですね。

2.遊びの環境を整える必要性

(1)「直の体験」がないと様々なものに関われなくなる

〇鈴木 先ほどの吉田先生のお話だと、指導者側が子

供の自発的決定を尊重し、その育ちをどう見ていくか、

ということをおっしゃっていましたが、それと同時に

主体性が発揮できる環境や場をどのように整えていく

かも大切だと思うのです。

さっき「5間」の話もありましたけれども、これは

現在、都会だからなくなっているという話ではありま

せん。当機構の施設は、海の目の前や山の中腹に建っ

ていますが、そのような環境の地域で育っていても、

例えば、海の近くの地域で育っても海に入ることはし

ないし、海で泳ぐ経験がない。恐らく沖縄もそのよう

な状況ではないでしょうか。浜辺はバーベキューをす

る場所として認識されている。

当機構の若手職員のグループによって、「S.E.Aプ

ロジェクト」という事業を実施した際、海辺の地域で

育っている子でも海が“向かい合う対象”になってい

て、事業の中で海に入って遊ぶことによって、初めて

海の中にいる私の絵が描けるという状況です。山間部

の地域で育っているから森の中で豊かに遊んでいるか

北山修『共視論 母子像の心理学』

講談社選書メチエ(2005)

国立青少年教育振興機構では、海の

体験活動に関する取り組みを推進

している

(3)求められる多世代型の“寄り添いのホスピタリティ”

○鈴木 多田先生が運営なさっている東京おもちゃ美術館では、多世代の関わりをすごく

なさっており、それによって生涯を通して、それこそ“揺りかごから墓場直前まで”遊べ

るのですよね。

○多田 “一足飛び世代”というのに僕はすごく関心

があります。親子よりも祖父母と孫の方がよい関係に

なれるのではないかと私は思うのです。この前、沖縄

に行っていたのですけれども、沖縄に「ファーカンダ」

という言葉があって、祖父母と孫をワンセットで捉え

るときの呼称です。例えば兄と弟だったら兄弟とか、

姉と妹だったら姉妹、夫と妻だったら夫婦があります

けれども、祖父母と孫のワンセットは、私は調べたの

ですけれども、北海道から鹿児島までないのです。唯

一沖縄だけにある。それを調べたときに、「ファーカ

ンダ」の「ファー」は葉っぱ、「カンダ」は「つた」

とか「つる」という意味なのです。沖縄の祖父母と孫

の関係はまさに葉っぱとつたのように切っても切れな

い関係だという、場合によっては親子の関係に並ぶか

親子の関係を超えるくらいの結びつきであるというこ

とを表しています。私はよく講演会の後にアンケート

で遊びの思い出をとることがあるのですけれども、沖

縄の方たちは父親とか母親との思い出話はほとんどな

くて、みんな祖父母なのです。

そのような多世代交流や世代間交流と言われるようなことを、現在、東京おもちゃ美術

館や全国の姉妹おもちゃ美術館で実験中です。具体的には、当館にはおもちゃ学芸員とい

うボランティアの方々が360名ほどいます。平均年齢がおおよそ55歳前後で、女性がおよそ

8割、男性がおよそ2割です。この方々の子供たちとの距離感がとてもいいのです。私か

ら見ると“寄り添いのホスピタリティ”というのでしょうか、余計なことはせず、何か寄

り添っている。子供が困り果てている時にちょっと手を差し伸べるだけ。母親はいろいろ

子供に言いたがるのを「お母さん、ちょっと」と遮ってあげるくらいです。寄り添うこと

を職員はできないけれども、未就学児との関係は祖父母世代に近いボランティアの方たち

は上手だなと思います。

○鈴木 “寄り添いのホスピタリティ”はとても素敵ですね。親だとどうしても向かい合

って一緒に遊ぶ時、膝に乗せて絵本を読む時にも教育的な目的が含まれていたり、手指遊

びも手先指先の巧緻性を高めるために知育玩具を用いたりしてしまいがちだけれども、そ

ういう下心がない。

○多田 いわゆる“一足飛び世代”ですかね。親と子、祖父母と孫、は何か距離感が違う

のでしょうかね。

○松田 「ちびまる子ちゃん」を見ていてもそうですものね。おじいちゃんやおばあちゃ

んとまる子の関係は今、おっしゃっていた感じがあって、本当に距離感が適度です。

これは、心理学者で音楽家でもあり「あの素晴らしい愛をもう一度」という歌の作詞を

された北山修先生が著作『共視論』の中でおっしゃっていたのですが、横並びに親子で同

じものを見ている、これは親子だけではなく日本の浮世絵に多い構図で、心理学だと共同

多田千尋『遊びが育てる世代間交流』

黎明書房(2002)

16 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

注視というそうです。この関係性は“一足飛びの世代”

ではつくりやすく、親子関係はそこがなかなか近過ぎ

るのですかね。共感ではなくて、むしろ伝えるだとか、

支えるとか、ある種の“下心”が出てしまうのかもし

れません。

○多田 だからおもちゃ美術館で手づくりおもちゃ

講座や教室をやるときに、親を背後にいさせるのは危

険なのです。“ああだこうだ”“真っすぐ切りなさい”

とか口を出すわけです。そこで、そういう場合には、

スタッフたちは、親も横に座らせて同じアクティビテ

ィを行うようにさせます。そうすると自分がアクティ

ビティに必死で、子供のことなんか構っていられなく

なくなります。このような場面を観察していると、子

供がふっと横目に親を見てうれしそうな表情を浮かべ

ます。“親も僕と同じことをやっている”“お母さん

も結構不器用なんだ”とか、それがすごくうれしそう

なのです。だから同じ土俵に乗せることが子供の遊び

にとってはとても幸せな環境なのではないかと感じる

ことがあります。

○鈴木 そういう形で一緒に楽しむことがすごくいいのですね。

2.遊びの環境を整える必要性

(1)「直の体験」がないと様々なものに関われなくなる

〇鈴木 先ほどの吉田先生のお話だと、指導者側が子

供の自発的決定を尊重し、その育ちをどう見ていくか、

ということをおっしゃっていましたが、それと同時に

主体性が発揮できる環境や場をどのように整えていく

かも大切だと思うのです。

さっき「5間」の話もありましたけれども、これは

現在、都会だからなくなっているという話ではありま

せん。当機構の施設は、海の目の前や山の中腹に建っ

ていますが、そのような環境の地域で育っていても、

例えば、海の近くの地域で育っても海に入ることはし

ないし、海で泳ぐ経験がない。恐らく沖縄もそのよう

な状況ではないでしょうか。浜辺はバーベキューをす

る場所として認識されている。

当機構の若手職員のグループによって、「S.E.Aプ

ロジェクト」という事業を実施した際、海辺の地域で

育っている子でも海が“向かい合う対象”になってい

て、事業の中で海に入って遊ぶことによって、初めて

海の中にいる私の絵が描けるという状況です。山間部

の地域で育っているから森の中で豊かに遊んでいるか

北山修『共視論 母子像の心理学』

講談社選書メチエ(2005)

国立青少年教育振興機構では、海の

体験活動に関する取り組みを推進

している

17Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

降ってきます。それは何かというと、世間という“間”、いわゆるコミュニティーですよ

ね。コミュニティーをつくれたときにおもちゃ美術館は1つの到達点に来たと思えるので、

「コミュニティーをつくるために3つの間で皆さん頑張ってください」と話していたので

す。最近は手間、お茶の間という話しもでているのですね。

○鈴木 当機構の施設も非常に近いものがあります。自然という非日常的な空間で、きっ

かけづくりがあり、それを日常生活の中で生かしてくれればいいという思いがあり、そこ

に関しては近いものがあるなと思うのです。そのためにも主体性を発揮できる遊びの環境

を遊びの専門家とともにつくっていきたいと考えています。

(2)思いっきり遊べる環境づくりのために

〇鈴木 では、子供たちが生き生きと遊ぶための環境づくりに対する御意見をいただきた

いと思います。

○松田 先ほど泥だんごの「ごっこ遊び」の話をしま

したが、泥だんごを見て「何だ、泥じゃん」と感じる

のでもなく、本当に「おいしそう」と思ってもダメな

のです。「ごっこ遊び」は、そのものを否定するので

も、肯定するのでもない複眼的な思考が求められる典

型的な事例で、オールオアナッシング的な判断ではな

く、矛盾する内容が常に了解される必要があるのです。

言い換えれば、真面目な時でもどこかに笑いがあるの

だということに感度が高くないと、このような遊びは

広がりを持ちません。

しかし、現在の子供は、すごく情報が環境的に入り

やすいので、オールオアナッシング的な判断が多くな

っています。そういう意味では今の社会自体が“余白”

や“そうだけれどもそうではない”という感覚や判断

を許容しない社会になっている傾向があり、それは、

自分以外の他者の存在や、他者の視点を理解したりす

る複眼的思考が成り立つ感度が低くなっていることと

パラレルに動いているような気がします。

ですから大人もこの際、子供との遊びの中で自分自

身も複眼的な感覚を遊びの中で取り戻し、モード(様式)として“コドモード(“子供の

様式”といった感覚)”みたいなものを大人の中でも取り戻せるようなところまで遊びの

問題が考えられたらよいのではないかと考える場合が結構あります。

○多田 なかなか難しい問題ではあります。けれども、もはや“今の子供は”みたいな嘆

きをいつまでも言い続けても何の発展もありません。大人自身がもうちょっと当事者意識

を持って子供の遊びの心配をすることが必要なのではないでしょうか。ついこの間、おも

ちゃ美術館にて「子どもの権利条約採択30周年記念フォーラム」3)を開いたのですが、そ

こで話題になったのが、レクリエーション、遊び、芸術文化、そして余暇の権利が子供た

ちに保障されていると記された31条が、子供の権利条約の研究者から見ると“忘れられた

条文”と言われているらしいのです。とるに足らない条文に思われているところが逆にと

3)子どもの権利条約とは、子どもの基本的人権を国際的に保障することを目的に、1989年の国連総会において採

択され、日本は1994年に批准した。

松田恵示『交叉する身体と遊び あ

いまいさの文化社会学』世界思想社

(2001)

と言われると、車でいつも移動していたりする。だから逆に私たちは子供たちに自然環境

に直に触れる機会を意図的に創出していかなければいけないのだろうかという思いがあり

ます。

○吉田 直に体験した活動や環境にはその後も関われますが、それがないと、そこに関わ

っていけないと思うのです。人は、生まれたときにある自分の周りのものは、本当に初め

てのものばかりです。そのようなものを多分、興味津々に何でもアクセスしていくと思う

のですけれども、その際に保育者や保護者の「だめだめだめ」が入ってきてしまうとそう

いうものになかなか関われなくなります。そして、どんどんそういうものが、ものとして

はあるけれども、実際に有機的な“もの”として存在していないことになります。ここは

周りの大人の役割かなと思うのですけれども、様々な“もの”に関われる、手が届く存在

としての“もの”をつくってあげないといけないのではないでしょうか。

さっきの松田先生の三角の話がありましたが、ものを含めて同じ文脈の中に存在すると

いうことで初めて子供もその場で遊べることになっていくので、ものはあるけれども三角

の外にあっては意味をなさないのではないかと思います。

○松田 そうですね。例えば砂場で“ごっこ遊び”をしているときに、泥だんごをつくっ

て「はい、きょうのおやつよ」とやっても「何、泥だんごじゃん」と言われたら全然やり

とりが進まない遊びになります。一方で、そこで「うわあ、おいしそう」とかいう話がで

きるのは、やはり“ごっこ遊び”というある種の“こと”に巻き込まれているから、泥だ

んごが全然違う意味を持つのです。そして、このようにしてこれを遊ぶのだということが

分かっていく感じだと思います。

ものを“こと”にするということには、やはり誰かの手助けが必要で、吉田先生がおっ

しゃったとおりだなと思います。それが例えば友達であったり、ちょっと上の先輩であっ

たり、あるいは時には親とか祖父母という形でいるのでしょう。ただ、“ごっこ遊び”な

どに必要となる、子供が、環境と人がセットで何かシンボリックなものを理解していくと

いう場面がなかなか整いにくい現状はあります。そういう側面では、おもちゃ美術館に行

けばそのような状況がいたるところに広がっていますから、いい場所だと思います。

○鈴木 そうですね、そろばんの玉のプールとか、本当に大人も飛び込んでみたい環境が

ある。

○多田 ただ、来てくださることはとてもうれしいですけれども、毎日のようにおもちゃ

美術館に来たとしたら、私はその子がとても心配になるわけですよね。ですから、おもち

ゃ美術館に来てくださることは“きっかけづくり”です。おもちゃ美術館の重要なミッシ

ョンの1つとしてファミリーコミュニケーションがあります。おもちゃ美術館に来たら、

ふだんちっとも笑わなかった家族がゲラゲラ笑って、帰りには子供がパパに向かって「パ

パ、きょう来て本当によかったね」とか言いながら家族団らんで帰っていくような姿をつ

くる、ということです。要するにファミリーコミュニケーションが損なわれてしまったら

もう終わりだ、だから、まずここを重要視しようではないかと。だからパパもぼーっとど

こかのベンチに座らせているのではなくて、とにかく“(子供の)手を引っ張れ”という

ことをスタッフやボランティアの方たちと語ることが多いのです。

また、おもちゃ美術館では、3つの間を大切にします。楽しい時間をどう作り上げるか、

時間という“間”を大切にする。そしてデザインのクオリティを高め、空間という“間”

に気を使う。そして最後は仲間という“間”です。もし孤立無援の子供がいたとしたら、

そのときはスタッフやボランティアにあなたたちの出番ですよと言っています。そしてこ

の3つの間が豊かになると、実はおもちゃ美術館に天から4つ目の間がプレゼントとして

18 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

降ってきます。それは何かというと、世間という“間”、いわゆるコミュニティーですよ

ね。コミュニティーをつくれたときにおもちゃ美術館は1つの到達点に来たと思えるので、

「コミュニティーをつくるために3つの間で皆さん頑張ってください」と話していたので

す。最近は手間、お茶の間という話しもでているのですね。

○鈴木 当機構の施設も非常に近いものがあります。自然という非日常的な空間で、きっ

かけづくりがあり、それを日常生活の中で生かしてくれればいいという思いがあり、そこ

に関しては近いものがあるなと思うのです。そのためにも主体性を発揮できる遊びの環境

を遊びの専門家とともにつくっていきたいと考えています。

(2)思いっきり遊べる環境づくりのために

〇鈴木 では、子供たちが生き生きと遊ぶための環境づくりに対する御意見をいただきた

いと思います。

○松田 先ほど泥だんごの「ごっこ遊び」の話をしま

したが、泥だんごを見て「何だ、泥じゃん」と感じる

のでもなく、本当に「おいしそう」と思ってもダメな

のです。「ごっこ遊び」は、そのものを否定するので

も、肯定するのでもない複眼的な思考が求められる典

型的な事例で、オールオアナッシング的な判断ではな

く、矛盾する内容が常に了解される必要があるのです。

言い換えれば、真面目な時でもどこかに笑いがあるの

だということに感度が高くないと、このような遊びは

広がりを持ちません。

しかし、現在の子供は、すごく情報が環境的に入り

やすいので、オールオアナッシング的な判断が多くな

っています。そういう意味では今の社会自体が“余白”

や“そうだけれどもそうではない”という感覚や判断

を許容しない社会になっている傾向があり、それは、

自分以外の他者の存在や、他者の視点を理解したりす

る複眼的思考が成り立つ感度が低くなっていることと

パラレルに動いているような気がします。

ですから大人もこの際、子供との遊びの中で自分自

身も複眼的な感覚を遊びの中で取り戻し、モード(様式)として“コドモード(“子供の

様式”といった感覚)”みたいなものを大人の中でも取り戻せるようなところまで遊びの

問題が考えられたらよいのではないかと考える場合が結構あります。

○多田 なかなか難しい問題ではあります。けれども、もはや“今の子供は”みたいな嘆

きをいつまでも言い続けても何の発展もありません。大人自身がもうちょっと当事者意識

を持って子供の遊びの心配をすることが必要なのではないでしょうか。ついこの間、おも

ちゃ美術館にて「子どもの権利条約採択30周年記念フォーラム」3)を開いたのですが、そ

こで話題になったのが、レクリエーション、遊び、芸術文化、そして余暇の権利が子供た

ちに保障されていると記された31条が、子供の権利条約の研究者から見ると“忘れられた

条文”と言われているらしいのです。とるに足らない条文に思われているところが逆にと

3)子どもの権利条約とは、子どもの基本的人権を国際的に保障することを目的に、1989年の国連総会において採

択され、日本は1994年に批准した。

松田恵示『交叉する身体と遊び あ

いまいさの文化社会学』世界思想社

(2001)

19Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

で見て、久々にまた遊びの危機というか、何とかしなければいけないのだなと。私は特に

インドアの世界をつくっていますので、インドアプラスアウトドアももっと果敢にチャレ

ンジしなければだめだなと改めて感じました。

○吉田 スポーツ庁の調査で、小学生を対象にして聞いているので、幼児期にどうだった

かということを本人に聞いているということです。

○多田 ということは、週に6日はインドアということですか。

○吉田 恐らくそうでしょう。

○松田 ここで気を付けなければいけないのは、子供が外で遊べていないことについて、

“今の子供たちはこうだ”みたいに、幼児も含めて子供に責任があるようなニュアンスで

言ってしまう場合があることです。

近所にある公園とか空き地は危険な場所のようにみられていますし、子供をほったらか

しにしても安心な場を確保しようとすればするほど、インドアになってしまうという、非

常に矛盾したことが起こっているのではないかと思うのです。

そして、私はインドアの遊びであるゲームをすること自体は割とポジティブにみていま

す。もちろん、外に出ていろいろな人と関わって遊んでほしい思いもありますが、現在の

子供はその中でかろうじて遊んでいる、遊びをうまく手繰り寄せている気がするのです。

ですから、そのようなインドアの遊びで子供が支えられている部分も見てあげないといけ

ないのではないでしょうか。

○鈴木 インドアスポーツ競技は結構アウトドア派で体を鍛えている人が強かったりす

るという事例のようにバランスの感覚が大事なのではと思います。確かに松田先生がおっ

しゃるように、今、インドアの遊びが本当に息抜きだったり、余暇だったりという子供も

たくさんいるのだと思います。

(2)外遊びの楽しさをどう伝えるか

〇鈴木 幼児期の場合、あまりアグレッシブな外遊びというわけにはいきません。しかし、

そのような中、外遊びの楽しさをどう伝えたらいいのでしょうか。

○吉田 以前、ある小学

校のPTA主催の会合に呼

ばれて、1年生から6年

生までのお母さんが集ま

り、1年生から順番に子

供に関する悩みを一言ず

つお話しされる場面があ

ったのです。すると1・

2年生のお母さんは、「放

課後、帰ってきてから外

に遊びに行きたがるのだ

けれども、私たちは家の

ことをやらなくてはいけ

なくて、なかなか外に遊

びに連れていけない」と

いうことを話されていたのです。ところが、3年生以上のお母さんは「外に遊びに行け行

けと言うのだけれども、なかなか外に遊びに行かない、公園に行ったと思ったら、うちの

子供の遊びを待つ姿勢が大事(東京おもちゃ美術館での光景)

ても心配で、これをもっと際立たせる必要があるのではないかということです。

私は30数年前から『おもちゃコンサルタント養成講座』を実施しています。おもちゃコ

ンサルタントは、今、全国におよそ6,000人いて、それと先ほど申した『おもちゃ学芸員』

が3年後には全国でおよそ2,000人になるのですが、この方たちがおもちゃ美術館という1

つのプラットフォームを通じて子供と接します。普通のまちの“おばちゃん”や“おじち

ゃん”が、おもちゃ美術館で子供と接することによって、子供の遊びの諸問題に向き合っ

てくれる、言い換えれば、子供の遊びを他人事で考えるのではなく自分事として捉えられ

るのです。“大人も育つ”というのでしょうか、そうやって当事者意識を持たせて、まず

は先ほどの“3つの間”くらいは地域の大人は子供のためにつくり出してあげましょうよ、

ということをおもちゃ美術館の外側の問題として大いに期待しています。

○吉田 運動遊びの立場からいえば、親が“自分は運

動が得意ではない”からうちの子も得意ではないと考

えがちです。しかし運動発達は厳密にいえば遺伝の部

分も多少はあるものの、やはり環境や体験によるとこ

ろの方が大きいのです。だから親が例え運動神経が悪

くとも子供はすごく運動が得意という場合はたくさん

あるわけです。変な固定観念を持って決めつけて、子

供の活動を制限しないような見方が必要です。先ほど

松田先生もおっしゃっていましたけれども、“こうあ

るべきだ”みたいな考えの中で排他的になるのではな

く、特に幼児期は子供なりの、子供が考えた形でのや

り方でいろいろなことに関われるように周りが十分に

保障してあげることこそが大事だと思います。

○鈴木 多田先生がおっしゃったのは余暇の必要性

ということではないかと思います。子供たちが余りに

も忙し過ぎる。“ぼーっとする”時間の中でも脳は活

性化して動いているのに、私たちはどうしても何かを

していないと価値がないもので、遊びは“おまけ”み

たいなイメージで捉えられてしまいます。しかし、遊

びこそその後の人生の土台であることをもう一回認識しないといけないのではないでしょ

うか。

3.現代だからこそ問われる外遊びの意義

(1)外遊びをしないのは子供の責任ではない

○多田 吉田先生がお示ししたグラフで驚いたのは、幼児期の外遊びが週に1日と棒グラ

フで示されている事でした。外遊びが週に1日という子が確実にいるのだなということで

すよね。

これはもう相当前に私が東北で講演したときに、あるすごくユニークな母親の方が「立

てば漫画、座ればファミコン、歩く姿は塾通い」と僕に教えてくれたのです。「お母さん、

天才ですね、すごいですね」とか言って話をしたのですけれども、それは立っている姿、

座っている姿、歩いている姿、いずれもひとりぼっちで、他者とつながっていないという

のです。そのとき私は初めて遊びの危機を感じました。この週に1回というのを棒グラフ

吉田伊津美・砂上史子・松嵜洋子

【編著】『乳幼児教育保育シリーズ

保育内容 健康』光生館(2018)

20 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

で見て、久々にまた遊びの危機というか、何とかしなければいけないのだなと。私は特に

インドアの世界をつくっていますので、インドアプラスアウトドアももっと果敢にチャレ

ンジしなければだめだなと改めて感じました。

○吉田 スポーツ庁の調査で、小学生を対象にして聞いているので、幼児期にどうだった

かということを本人に聞いているということです。

○多田 ということは、週に6日はインドアということですか。

○吉田 恐らくそうでしょう。

○松田 ここで気を付けなければいけないのは、子供が外で遊べていないことについて、

“今の子供たちはこうだ”みたいに、幼児も含めて子供に責任があるようなニュアンスで

言ってしまう場合があることです。

近所にある公園とか空き地は危険な場所のようにみられていますし、子供をほったらか

しにしても安心な場を確保しようとすればするほど、インドアになってしまうという、非

常に矛盾したことが起こっているのではないかと思うのです。

そして、私はインドアの遊びであるゲームをすること自体は割とポジティブにみていま

す。もちろん、外に出ていろいろな人と関わって遊んでほしい思いもありますが、現在の

子供はその中でかろうじて遊んでいる、遊びをうまく手繰り寄せている気がするのです。

ですから、そのようなインドアの遊びで子供が支えられている部分も見てあげないといけ

ないのではないでしょうか。

○鈴木 インドアスポーツ競技は結構アウトドア派で体を鍛えている人が強かったりす

るという事例のようにバランスの感覚が大事なのではと思います。確かに松田先生がおっ

しゃるように、今、インドアの遊びが本当に息抜きだったり、余暇だったりという子供も

たくさんいるのだと思います。

(2)外遊びの楽しさをどう伝えるか

〇鈴木 幼児期の場合、あまりアグレッシブな外遊びというわけにはいきません。しかし、

そのような中、外遊びの楽しさをどう伝えたらいいのでしょうか。

○吉田 以前、ある小学

校のPTA主催の会合に呼

ばれて、1年生から6年

生までのお母さんが集ま

り、1年生から順番に子

供に関する悩みを一言ず

つお話しされる場面があ

ったのです。すると1・

2年生のお母さんは、「放

課後、帰ってきてから外

に遊びに行きたがるのだ

けれども、私たちは家の

ことをやらなくてはいけ

なくて、なかなか外に遊

びに連れていけない」と

いうことを話されていたのです。ところが、3年生以上のお母さんは「外に遊びに行け行

けと言うのだけれども、なかなか外に遊びに行かない、公園に行ったと思ったら、うちの

子供の遊びを待つ姿勢が大事(東京おもちゃ美術館での光景)

21Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

○松田 大学に所属する研究者は、世の中の動きよりも自分の研究や実験に没頭している

人が多いのです。彼らの活動は、それこそ「遊び」に近いものですが、だからこそ、確率

は低いのですが新しい技術やモノを生み出す可能性もあるのです。

○鈴木 ノーベル賞を受賞した研究の多くがそのようなプロセスを経ていますよね。他に

も考古学者が、古墳の構造や中にあるものを知りたくて、刷毛で一生懸命、発掘していま

すしね。大学の教員はまさにそういった意味での「遊び」の達人というか、興味・関心が

あることを自発的にやっていますよね。

○多田 私の周りですご

く楽しそうな大学の先生は

きっと子供のときに思い切

り遊んでいたのではないか

なと。ひたすら虫が好きだ

ったとか、そういう人が大

学での研究が遊びになると

いうか、楽しめるというか

もしれません。僕は幼少時

代と大人になっての大学の

研究時代はきっとつながっ

ているのではないかなとい

う感じがするのです。

○松田 確かに私は小学

校のとき大きな敷地の中の

一軒家の社宅に住んでいま

した。帰宅して誰もいない

場合には、空想遊びをしないと時間がもたないのです。竹に新聞紙の旗を立てて、いろい

ろなことを1人でやっていましたね。多田先生もそうでしょう。

○多田 僕はめちゃくちゃ遊んでいましたね。今の子供たちは遊びの栄養失調だと思いま

す。極端に言えば、子供時代を子供として生きていないのではないかなということをすご

く感じます。その辺はどうですか、吉田先生。

○吉田 外が真っ暗になるまで遅くまで遊んで、疲れ果てて帰って、食べてすぐ寝るとい

う毎日だったのです。だから遅寝の感覚がわからないんです。もう眠くなってしまうから。

○多田 まさにエネルギーが完全燃焼していたのですね。夕御飯とかを食べるとき船をこ

ぐというのがよくありますよね。そういう毎日だったのですかね。

○吉田 それに近いです。食べたらもうそのまま横になってしまうような。そういう意味

では先生がさっきおっしゃっていたように、動くことがすごく好きだったので現在、運動

関係の研究を自分は選択しているのかなと思ったりしもします。

○松田 それに仕事は遊び半分の方が上手くいく場合がありますけれども、遊びは遊び半

分ではなくて全力なのです。

○多田 遊びには全身全霊をつぎ込むことができるのです。

○鈴木 ぜひそういう世界をつくっていきたいと思います。“ぼーっ”としたり、“わく

わくどきどき”時には“はらはら”だったりという、いろいろなところを揺れ動きながら、

先ほど挙がっていた5つの間を大切にしたいですね。

「大人/子供」、「遊び/学び」といった二項対立的な見方では

なく、シームレスな関係性があることに留意(東京おもちゃ美術

館での光景)

子は公園でゲームをやっているんですよ」と話されたのです。

ということは、子供はすごく外で遊びたいという欲求があるのに、そういう時期にそれ

を親がその欲求を押さえてしまっているから結局そういう習慣がついていないのです。家

で遊ぶ習慣がついて、いざ子供たちだけで外に遊びに行ける年代になったときに、遊ぶ経

験をしていないのでゲームになってしまうということがあるのではないのでしょうか。

もちろん親の事情もあるのですが、外遊びをしたがる時期に子供がどのように過ごすか

がその後にもつながる重要なことであると、そのとき感じました。

○鈴木 先ほど松田先生がおっしゃった子供の問題ではなくて大人の問題がそこにはあ

るということですね。

○多田 子供の頃、近所に幼友達が2人ほどいました。この2人が、例えば土日に2人と

も家族旅行か何かでいなくなると、私は土日が地獄なわけですよ。「おれ、何して楽しめ

ばいいんだ」という感じです。この退屈な時間を何とか改善しなければいけないといって

駄菓子屋へ行ったりして、仲間を求めても誰もいない、今度は何とか公園に行っても誰も

いない、そこで、学校の校庭に行ったら、あいつは余り遊び仲間じゃないけど、きょうは

あいつで我慢しとくかとかいって、必死で“群れ”を求めていたのです。

何かつながり合うことに対してものすごく貪欲になるというのですか、要するに退屈な

時間もそこそこあって、その退屈な時間を解消しようというエネルギーも働く。

ところが、もしかすると今の子供は1人になっても1人で遊べる“すべ”がいっぱいあ

りますから、退屈な時間を解消する方向にベクトルが向かないのではないか。だから子供

は、もっともっと退屈な時間が必要なのではないかと思っているのです。

○松田 確かにそうですね。例えばスケジュール表に遊びがあるというのはどういうこと

かというと、真っ白なスケジュール表が一番いいわけです。でも、今の子供は行事がいっ

ぱい入っていて、「退屈」ということがない。そういう退屈さの中から何かが生まれてく

るということが大事だし、「待つ」「そのままにしておく」ことは、ある種の“根性”が

要りますが必要ですね。そういうものがなくなっているところは確かにあるなと思います。

でも、そもそもあがいてもほっといても結局どうせ100年しか生きられないし、とか、そ

んなところまで達観するような話し合いもたまには出てきてもいいのかもしれませんね。

4.遊びの多面性

(1)「遊ぶこと」は「学ぶこと」

〇松田 一方で、「遊ぶこと」と「学ぶこと」はシームレスな(垣根がない)関係である

ともいえます。例えばゲームをやるのは、リスクをどう考えるのかということを含みます

が、やり続けてどんどん奥へ入っていって、ICTに関するテクノロジーを習得するまで突っ

込んでいくみたいなこともあるのではないでしょうか。そういう子供の主体的な動きがど

の場面にも実は広がり得るのだという感じはあるべきだと思います。

その際に、リスクとかハザードを周りがどう考え、対応するのか、というのは常に難し

い問題です。とはいえ、それを考えてしまうと、公園でもどんどん遊具がなくなりますか

ら、責任をとる/とらない、という方向に話が進まなければいいのにと思うのですけれど

もね。

○鈴木 松田先生の今、おっしゃってくださった「遊ぶこと」と「学ぶこと」のシームレ

ス関係というのはとても大事ですよね。吉田先生の御専門である幼児期の運動遊びもまさ

にシームレスですよね。この関係は、大人でも大事ではないかと私は思っているのです。

22 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

○松田 大学に所属する研究者は、世の中の動きよりも自分の研究や実験に没頭している

人が多いのです。彼らの活動は、それこそ「遊び」に近いものですが、だからこそ、確率

は低いのですが新しい技術やモノを生み出す可能性もあるのです。

○鈴木 ノーベル賞を受賞した研究の多くがそのようなプロセスを経ていますよね。他に

も考古学者が、古墳の構造や中にあるものを知りたくて、刷毛で一生懸命、発掘していま

すしね。大学の教員はまさにそういった意味での「遊び」の達人というか、興味・関心が

あることを自発的にやっていますよね。

○多田 私の周りですご

く楽しそうな大学の先生は

きっと子供のときに思い切

り遊んでいたのではないか

なと。ひたすら虫が好きだ

ったとか、そういう人が大

学での研究が遊びになると

いうか、楽しめるというか

もしれません。僕は幼少時

代と大人になっての大学の

研究時代はきっとつながっ

ているのではないかなとい

う感じがするのです。

○松田 確かに私は小学

校のとき大きな敷地の中の

一軒家の社宅に住んでいま

した。帰宅して誰もいない

場合には、空想遊びをしないと時間がもたないのです。竹に新聞紙の旗を立てて、いろい

ろなことを1人でやっていましたね。多田先生もそうでしょう。

○多田 僕はめちゃくちゃ遊んでいましたね。今の子供たちは遊びの栄養失調だと思いま

す。極端に言えば、子供時代を子供として生きていないのではないかなということをすご

く感じます。その辺はどうですか、吉田先生。

○吉田 外が真っ暗になるまで遅くまで遊んで、疲れ果てて帰って、食べてすぐ寝るとい

う毎日だったのです。だから遅寝の感覚がわからないんです。もう眠くなってしまうから。

○多田 まさにエネルギーが完全燃焼していたのですね。夕御飯とかを食べるとき船をこ

ぐというのがよくありますよね。そういう毎日だったのですかね。

○吉田 それに近いです。食べたらもうそのまま横になってしまうような。そういう意味

では先生がさっきおっしゃっていたように、動くことがすごく好きだったので現在、運動

関係の研究を自分は選択しているのかなと思ったりしもします。

○松田 それに仕事は遊び半分の方が上手くいく場合がありますけれども、遊びは遊び半

分ではなくて全力なのです。

○多田 遊びには全身全霊をつぎ込むことができるのです。

○鈴木 ぜひそういう世界をつくっていきたいと思います。“ぼーっ”としたり、“わく

わくどきどき”時には“はらはら”だったりという、いろいろなところを揺れ動きながら、

先ほど挙がっていた5つの間を大切にしたいですね。

「大人/子供」、「遊び/学び」といった二項対立的な見方では

なく、シームレスな関係性があることに留意(東京おもちゃ美術

館での光景)

23Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

はそういった評価の仕方やされ方を学習していってしまいます。そうなると、与えられた

課題ができたら褒められる、それができないと褒められないとなってきてしまい、友達の

いい姿を認めようという姿勢も育っていかなくなってしまう恐れがあります。

5.子供の遊びを見守る姿勢の大切さ

(1)遊びを「教える」のではなく、自由に遊んでいることを見守る

○村上 先生のお話を聞い

ていて非常に感じたのは、大

学で教えているときに、よく

スポーツ推薦等で入学してき

た学生たちが私のゼミに出席

することがありました。彼ら

を見ていて、スポーツ競技で

それなりの結果を残したから

入学できたと思うのですが、

意外と自己肯定感が低いので

す。どうやら、できた記憶よ

りできなかった記憶のほうが

多く、トーナメントだったら、

勝った記憶があるのはごく一

部で、敗退した経験のほうが多いのです。そういう環境の中でスポーツを行っていると自

己肯定感が育っていないことに大学で教え始めて気がつきました。やはりスポーツや運動

との向き合い方が結果重視になり、プロセスが重視されないと、なかなか厳しいなと思い

出しながら伺っておりました。

○吉田 多分ですが、スポーツ推薦で入学できるまでの水準に到達するのに、指導者など

に与えられた課題をこなしてきた人と、自分ができることを達成し、次のできることを目

標に定めて実行するというプロセスを繰り返してきた人の違いだと思います。

○村上 英語などの外国語の習得にもつながるものではないかと思います。学校で教わっ

た英語は理屈を教わり、頭で考えてしまう癖がつきます。だから耳で聞いて口に出すとい

う自然な動きが出てこない。運動もそうなのだろうなと。小さいときから指導による大人

の関与が強いと、頭で考えてから体を動かすというパターンになり、かえって運動能力が

発達しないのではないのでしょうか。だから遊びは結果としての「学び」なのですよね。

遊びは学びの宝庫でしょうけれども、学ぶための装置ではないというお話を本当に納得し

ながら聞いていました。

○菱川4) 昨年度まで私は高知県にある「国立室戸青少年自然の家」におり、施設内に子

供の遊び空間をつくることに注力してきました。そこで遊び場をつくる際に、どうしても

安全(対策)と「子供にこう遊んでほしい」という考えにとらわれてしまい、遊び場をつ

くり込んでしまうのです。その遊び場は安全だし、大人にとって満足かもしれませんが、

先ほどのお話ではないですが“間”がなくなってしまうのです。むしろ“間”のところに

指導者がやらなければならないところがあるかもしれないと思います。

4)国立青少年教育振興機構職員

熱心に聞き入る機構職員

(2)遊びをポジティブに捉えられない日本の文化

〇鈴木 遊びが大切なのはここまでの議論でみてきた通りなのですが、個人的にどうして

日本の文化は遊びがポジティブではなく割とネガティブに捉えられるのだろうかと思って

しまいます。睡眠についてもそうなのです。「三年寝太郎」というと怠け者のように捉え

られてしまいます。日本人は真面目なのか、かたいのか…。

○多田 日本人の睡眠時間は、世界的にみても非常に少なく、通勤電車の中で寝ているの

は日本人だとかいろいろなことを言われますよね。また、遊びに関して言えば、欧米諸国

に行って感じるのは、芸術も遊びの領域に加えている欧米諸国と、日本の場合、遊びと芸

術をきっちり分けていることを感じます。

○鈴木 欧米では日常生活の延長上に芸術があるということですね。

○多田 はい。音楽や絵画に夢中になって“わくわくどきどきする”というのは遊びのカ

テゴリーに入る側面もあるのです。日本だと、“絵画は遊びではない”、“遊び半分でピ

アノを弾くな”など、叱られてしまう可能性があります。しかし、3歳児が砂場で遊んで

いる場合でも、カーネギーホールでピアニストが演奏してもプレイ(play)という単語を

使います。このプレイという言葉が指し示す範囲が広いのです。日本でプロのピアニスト

の演奏を「遊び」という言葉で表現してしまうと批判を受けてしまいます。「遊び」とい

う言葉が低レベルで狭い範囲の言葉として定着しており、本当は英語のプレイのような領

域まで適用してもよい言葉なのではないかと思うのです。

○鈴木 日本では、スポーツの領域もそうですよね。“競技を楽しむ”という意味で「遊

び」という言葉は使われていませんものね。

(3)子供が「やりたい遊び」や子供が求める「他者からの評価」は多様である

○松田 先ほど吉田先生が「運動遊びでの達成経験とか他者からの肯定的な評価を受ける

と、“やった”とか“できた”という有能感を形成する、すなわち肯定的な自己概念を形

成します」とおっしゃっていました。遊びの場合、達成経験などの“自分がやりたいこと

をやってできた”が前面に出るのが一般的だとは思うのですが、この「他者から評価」と

いう側面も重要かもしれません。

以前、小学校の体育の授業を見学していて、開脚前転をグループごとにやっている中で、

すごく苦手なある子がその日初めてできた場面に遭遇しました。グループ全員が喜んで、

せっかくだからと授業の最後では、そのグループだけ、みんなの前で開脚前転を見せるこ

とになりました。その時もその子ができて拍手喝采だったのです。その場面でその子をみ

ると、すごくにこにこしていました。この場面では、開脚前転ができるようになりたいと

思って練習を経て、できたという達成への喜びよりも、みんなに手をたたいてもらって、

やっと苦手だったものからそういうものではないという形で周りに認めてもらえたという

喜びが伝わってきたのです。何かをやることは“自分にとって意味がある”と、“他者が

評価してくれるから自分を肯定できる”というところは紙一重なのだと思います。この二

つの側面は、人生に向き合うこと(オーナーシップ)にも通じるのではないでしょうか。

○吉田 大事なのはこの二つの側面どちらも一律ではないということです。みんな同じ開

脚前転だったら、それができなければ評価されないわけです。そうではなくて、開脚前転

でも、でんぐり返しでも、横転がりでもいい、転がり方はいろいろあって、自分のやりた

いことや自分なりのやり方で、できたことを認めていく形が大事なのです。課題を自己決

定していくということも含め、それぞれのやり方を認めていくというふうにしていく必要

があります。そうしないと、ある課題に対して“できた/できない”の評価のみだと子供

24 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

はそういった評価の仕方やされ方を学習していってしまいます。そうなると、与えられた

課題ができたら褒められる、それができないと褒められないとなってきてしまい、友達の

いい姿を認めようという姿勢も育っていかなくなってしまう恐れがあります。

5.子供の遊びを見守る姿勢の大切さ

(1)遊びを「教える」のではなく、自由に遊んでいることを見守る

○村上 先生のお話を聞い

ていて非常に感じたのは、大

学で教えているときに、よく

スポーツ推薦等で入学してき

た学生たちが私のゼミに出席

することがありました。彼ら

を見ていて、スポーツ競技で

それなりの結果を残したから

入学できたと思うのですが、

意外と自己肯定感が低いので

す。どうやら、できた記憶よ

りできなかった記憶のほうが

多く、トーナメントだったら、

勝った記憶があるのはごく一

部で、敗退した経験のほうが多いのです。そういう環境の中でスポーツを行っていると自

己肯定感が育っていないことに大学で教え始めて気がつきました。やはりスポーツや運動

との向き合い方が結果重視になり、プロセスが重視されないと、なかなか厳しいなと思い

出しながら伺っておりました。

○吉田 多分ですが、スポーツ推薦で入学できるまでの水準に到達するのに、指導者など

に与えられた課題をこなしてきた人と、自分ができることを達成し、次のできることを目

標に定めて実行するというプロセスを繰り返してきた人の違いだと思います。

○村上 英語などの外国語の習得にもつながるものではないかと思います。学校で教わっ

た英語は理屈を教わり、頭で考えてしまう癖がつきます。だから耳で聞いて口に出すとい

う自然な動きが出てこない。運動もそうなのだろうなと。小さいときから指導による大人

の関与が強いと、頭で考えてから体を動かすというパターンになり、かえって運動能力が

発達しないのではないのでしょうか。だから遊びは結果としての「学び」なのですよね。

遊びは学びの宝庫でしょうけれども、学ぶための装置ではないというお話を本当に納得し

ながら聞いていました。

○菱川4) 昨年度まで私は高知県にある「国立室戸青少年自然の家」におり、施設内に子

供の遊び空間をつくることに注力してきました。そこで遊び場をつくる際に、どうしても

安全(対策)と「子供にこう遊んでほしい」という考えにとらわれてしまい、遊び場をつ

くり込んでしまうのです。その遊び場は安全だし、大人にとって満足かもしれませんが、

先ほどのお話ではないですが“間”がなくなってしまうのです。むしろ“間”のところに

指導者がやらなければならないところがあるかもしれないと思います。

4)国立青少年教育振興機構職員

熱心に聞き入る機構職員

25Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

(2)今の遊びは、将来の上手な遊びにつながる

○池田6) 私は研究対象の専門が青年期なので、ちょっと連想になってしまうのですが、

青年期(大学生や中学・高校生)になると、遊び方が上手くなっていくように思っていて

も、今の大学生を見ているとあまり上手く遊べていないのです。スケジュール帳の話が出

ていましたけれども、スケジュールが何もないと友達と遊ばずに、不安感からバイトをと

りあえず入れるといった事例を多く見受けます。子供が発達していく中で幼児期からの遊

びが青年期へとつながる部分があるのではないでしょうか。

あともう一つは、遊びの反復性についてです。周りから見てそんなにおもしろいのかな

ということも子供は、やり続けられたりするものです。その反復による遊びが、どうして

必要なのか、大事なのかといった点をお聞きしたいのです。

○松田 大学生があまり遊ばなくなっているというのは私もすごく感じています。遊ぼう

という精神がないのかもしれません。そういうときに先ほど子供とボランティアの話があ

りましたけれども、大学生が子供の遊びのエネルギーにもう一回触れてもらうことで、彼

ら自身の遊びのエネルギーが少しでも湧き上がる必要があるかなと思ったこともあります。

反復性のほうは、例えば“いないいないばあ”でも本当に嫌になるほど繰り返しさせら

れます。同じように跳び箱でも跳んだら同じところをずっと跳んだり、あれは反復するこ

とで“間”を確認している、先ほどのブレーキを踏んだり離したりという動作と一緒だと

思うのです。自然に飽きてしまい、飽きたら次の動作へ行く。ここはやはり待ってあげる

というか、余白がないと、見ていたら同じように見えるのですが、すごく大事な動作では

ないでしょうか。

○多田 最近いろいろな企

業がおもちゃ美術館にいろい

ろな目的を持ってやってくる

のですけれども、その人たち

にパワーポイントを使って何

か論じるなんていうことは一

切意味がなくて、遊びで解放

させてあげたほうがよほどい

いなとはよく感じます。学生

たちのいろいろな人間関係や

つながりの乏しさは、遊べる

力とすごく直結しているような気はします。ですから大いにキャンパスから出て、いろい

ろなところに行っていろいろな人間に会うということを1つの方法論としてできないかな

と、外側から大学を見ていてよく感じることです。

もう一つの反復の問題は、私は常々、特にゼロ歳から6歳を見ていると、繰り返しを楽し

む天才だと感じています。そのことを最も鮮明に感じている人たちは絵本作家ではないか

と僕は思っているのです。ロングセラーの絵本はほとんど反復ですよね。「おおきなかぶ」

にしても「てぶくろ」にしてもみんなそうです。せっかく繰り返しを楽しむ天才であるの

ですから、ママやパパのほうが「きょうは違う絵本を持っていらっしゃい」などと余計な

ことを言う必要はありません。繰り返しを楽しめない私たち大人が凡人なのですから、子

供が読みたいと言った本を読めばいいのではないか。ずっと2週間ぶっ続けで「おおきな

かぶ」を読み続けてもいいのではないかと私は思うのですけれどもね。

6)青少年教育研究センター客員研究員

○松田 「いい加減」ということが大事なのですよね。「加減がいい」という言葉、料理

のときもさじ加減とかポジティブにいいますね。だから「いい加減」はそれこそ遊びと一

緒でポジティブな言葉だと考えたほうがいいと思っています。遊び場をつくられるときも

ある程度「いい加減」な部分が残っていることが大事なのでしょう。世間的には中々、理

解を得にくい部分もありますが。

○多田 それならば「よい加減」と言いかえてしまえばいいのではないかとも思います。

○鈴木 これまで青少年教育施設の職員は、どちらかというと「指導する」という視点が

強く、これからは、今回集まっていただいた先生方のように子供が主体的に動き出すとこ

ろを待つ心構えが必要だと思います。「子供に身につけさせたい36の動き」というのがあ

りますが、この動きを指導し、させようとするのではなく、遊びの中で自然と身につくよ

うに周りの環境を整えることが大事なのだということです。

○吉田 あまりつくり込んだ環境はおもしろくないのです。自由度のある環境でないと発

展もなく、全ての子が楽しめるかというとそうでもなくなってしまいます。多田先生もお

っしゃっていましたが、遊び場はきっかけづくりではないでしょうか。遊びがきっかけと

なり、何かに発展していくような場であることがすごく大事なのではないかなと思います。

○水澤5) よく子供たちが何か汚いものを触って(もしくは触ったと仮定して)、誰かに

その汚いものを移そうとする「えんがちょ」遊びがあります。子供の遊びの裏文化といい

ますか、大人が関わらないところで子供たちの遊びが成立することがあります。今回の座

談会のテーマは大人がどう関わるかという前提のお話なのですけれども、いたずらなどの

子供の世界だけで成り立つ遊びが、大人が見えないところだからこそ、すごく子供が生き

生きとし、子供だけの世界の中で遊びに没頭し、子供同士が接するというところもあると

思っています。子供たちが、大人が関わらない場面で遊んでいることをどのように大人で

ある私たちは捉えていったらいいのか、というのは自分の中でのテーマなのです。

これは青少年教育施設の職

員としての立場でも同様です。

青少年教育施設の職員は、子

供たちと関わり、その中で指

導や見守りを含めた支援をし

ていくことが職務ですが、「遊

び」の場合、これまでのお話

を聞いていると教育とは異な

る要素があるような気がしま

す。大人は子供の遊びに対し、

どういう距離感を持ったらい

いのでしょうか。

○松田 子供が秘密を持つというのは大事だと思います。例えば「きょう何して遊んだの」

と言ったら「ひ・み・つ」と言うのです。あれは「何して遊んだの」と言ってあげる役割

は大事で、さらに、それを暴かなくてもいいのです。子供に「ひ・み・つ」と言わせるこ

とのつくり込みが大事なのです。子供は傷つきやすい存在だし、社会的に見たらまだまだ

自我がない中で、秘密を持つというのは自分の体験をあえて隠すことで自分を認めてもら

っている部分もあるのではないでしょうか。だから遊びは秘密のにおいがするときもあり、

そういうものを温かく見守ってあげる役割が大人にはあるのではないかなと思います。

5)青少年教育研究センター企画室長

26 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

(2)今の遊びは、将来の上手な遊びにつながる

○池田6) 私は研究対象の専門が青年期なので、ちょっと連想になってしまうのですが、

青年期(大学生や中学・高校生)になると、遊び方が上手くなっていくように思っていて

も、今の大学生を見ているとあまり上手く遊べていないのです。スケジュール帳の話が出

ていましたけれども、スケジュールが何もないと友達と遊ばずに、不安感からバイトをと

りあえず入れるといった事例を多く見受けます。子供が発達していく中で幼児期からの遊

びが青年期へとつながる部分があるのではないでしょうか。

あともう一つは、遊びの反復性についてです。周りから見てそんなにおもしろいのかな

ということも子供は、やり続けられたりするものです。その反復による遊びが、どうして

必要なのか、大事なのかといった点をお聞きしたいのです。

○松田 大学生があまり遊ばなくなっているというのは私もすごく感じています。遊ぼう

という精神がないのかもしれません。そういうときに先ほど子供とボランティアの話があ

りましたけれども、大学生が子供の遊びのエネルギーにもう一回触れてもらうことで、彼

ら自身の遊びのエネルギーが少しでも湧き上がる必要があるかなと思ったこともあります。

反復性のほうは、例えば“いないいないばあ”でも本当に嫌になるほど繰り返しさせら

れます。同じように跳び箱でも跳んだら同じところをずっと跳んだり、あれは反復するこ

とで“間”を確認している、先ほどのブレーキを踏んだり離したりという動作と一緒だと

思うのです。自然に飽きてしまい、飽きたら次の動作へ行く。ここはやはり待ってあげる

というか、余白がないと、見ていたら同じように見えるのですが、すごく大事な動作では

ないでしょうか。

○多田 最近いろいろな企

業がおもちゃ美術館にいろい

ろな目的を持ってやってくる

のですけれども、その人たち

にパワーポイントを使って何

か論じるなんていうことは一

切意味がなくて、遊びで解放

させてあげたほうがよほどい

いなとはよく感じます。学生

たちのいろいろな人間関係や

つながりの乏しさは、遊べる

力とすごく直結しているような気はします。ですから大いにキャンパスから出て、いろい

ろなところに行っていろいろな人間に会うということを1つの方法論としてできないかな

と、外側から大学を見ていてよく感じることです。

もう一つの反復の問題は、私は常々、特にゼロ歳から6歳を見ていると、繰り返しを楽し

む天才だと感じています。そのことを最も鮮明に感じている人たちは絵本作家ではないか

と僕は思っているのです。ロングセラーの絵本はほとんど反復ですよね。「おおきなかぶ」

にしても「てぶくろ」にしてもみんなそうです。せっかく繰り返しを楽しむ天才であるの

ですから、ママやパパのほうが「きょうは違う絵本を持っていらっしゃい」などと余計な

ことを言う必要はありません。繰り返しを楽しめない私たち大人が凡人なのですから、子

供が読みたいと言った本を読めばいいのではないか。ずっと2週間ぶっ続けで「おおきな

かぶ」を読み続けてもいいのではないかと私は思うのですけれどもね。

6)青少年教育研究センター客員研究員

27Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

【用いられた図等の引用元】

・ 図4、図5及び図6

杉原隆・河邉貴子【編著】(2014)『幼児期における運動発達と運動遊びの指導 遊

びの中で子どもは育つ』,杉原隆「第1部第4章 幼児期の発達的特徴に応じた運

動指導の在り方」pp.52-59, ミネルヴァ書房

・ 図7

スポーツ庁「平成30年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1411922.htm

・ 愛媛県教育委員会の「5間」の説明について

スポーツ庁「平成25年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果 取組事例集」

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldf

ile/2013/12/24/1342639_2.pdf

【紹介した文献】

・ Johan Huizinga(1938)“Homo Ludens Essai sur la function sociale du jeu”

Random House(ヨハン・ホイジンガ/高橋英夫(訳)『ホモ・ルーデンス』(1973)

中公文庫)

・ Roger Caillois(1958)”Les Jeux et les Hommes” Gallimard(ロジェ・カイヨ

ワ/清水幾太郎・霧生和夫(訳)『遊びと人間』(1970)岩波書店)

・ 北山修(2005)『共視論 母子像の心理学』講談社選書メチエ

・ 多田千尋(2002)『遊びが育てる世代間交流 子どもとお年寄りをつなぐ』黎明書房

・ 西村清和(1989)『遊びの現象学』勁草書房

・ 増山均【著】 早稲田大学増山研究室【編】(2018)『アニマシオンと日本の子育

て・教育・文化』本の泉社

・ 松田恵示(2001)『交叉する身体と遊び あいまいさの文化社会学』世界思想社

・ 吉田伊津美・砂上史子・松嵜洋子【編著】(2018)『乳幼児教育保育シリーズ 保

育内容 健康』光生館

○吉田 私は大学で保育者の養成をしているのですが、遊びを知らない学生が結構いて、

現場の保育者研修でも「遊びを知ろう」という内容も実際にあります。先ほど多田先生が

子供時代に仲のいいお友達がいないときに貪欲に遊び相手を探したことをおっしゃってい

ましたが、それは遊べる人だからそういうことができたと思うのです。遊んだ経験のない

人は多分そういう発想もできないと思います。

ある校長先生が、高学年になって自己決定できない子供がすごく多いとおっしゃってい

ました。何かを考えてみようと言うと、「先生はどう思うの」と返す子がいるそうです。

だから幼児期から自己決定するような機会がなくて、与えられた課題はこなしてきたけれ

ども、自分で考えて何かに取り組むような経験をしてきていない、つまり遊び込む経験を

していないことがそういう子供になっているのではないかと思うのです。遊ぶということ

はその後のそういった物事に対する姿勢にも大きく関係しているのではないでしょうか。

あと繰り返しということについては、試しながら何度も繰り返しているというのがある

のではないかなと思います。何か結果を求めているのではなくて、やる行為の中で自分な

りの試行があるのではないか。結果としてそれが周りから見たら「何を繰り返してやって

いるの?」みたいに見えるのでしょう。私は小学生のときに友達と石をやたら磨いていて、

別に磨くための石でも何でもないのだけれども、そこにある石を友達と話をしながら一生

懸命磨いていたのです。石を光らせようとかいうことでもなく磨いていたのですけれども、

最終的にはそこのお母さんに「そんな磨いても意味ないでしょう」と言われて終わってし

まったのですけれども、磨くということ、そして磨きながら友達とかかわるというのがす

ごく楽しかったのです。けれども、大人から見たら何の意味もなく、価値を持たないもの

かもしれませんが、かかわっている子にとっては何らかの意味を持っている行為だと思う

ので、繰り返しは結局そういうことなのかなと思います。

〇鈴木 保育者や保護者はどうしても安全・安心や“育てる”ことに目がいきがちです。

幼児期や児童期の子供が遊びの中で「自己決定」できるまで、大人が見守る姿勢を保ち続

けることがいかに大切かを教えていただいた座談会でした。本日はお集まりいただきまし

て本当にありがとうございました。

28 Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

【用いられた図等の引用元】

・ 図4、図5及び図6

杉原隆・河邉貴子【編著】(2014)『幼児期における運動発達と運動遊びの指導 遊

びの中で子どもは育つ』,杉原隆「第1部第4章 幼児期の発達的特徴に応じた運

動指導の在り方」pp.52-59, ミネルヴァ書房

・ 図7

スポーツ庁「平成30年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果」

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1411922.htm

・ 愛媛県教育委員会の「5間」の説明について

スポーツ庁「平成25年度 全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果 取組事例集」

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/sports/detail/__icsFiles/afieldf

ile/2013/12/24/1342639_2.pdf

【紹介した文献】

・ Johan Huizinga(1938)“Homo Ludens Essai sur la function sociale du jeu”

Random House(ヨハン・ホイジンガ/高橋英夫(訳)『ホモ・ルーデンス』(1973)

中公文庫)

・ Roger Caillois(1958)”Les Jeux et les Hommes” Gallimard(ロジェ・カイヨ

ワ/清水幾太郎・霧生和夫(訳)『遊びと人間』(1970)岩波書店)

・ 北山修(2005)『共視論 母子像の心理学』講談社選書メチエ

・ 多田千尋(2002)『遊びが育てる世代間交流 子どもとお年寄りをつなぐ』黎明書房

・ 西村清和(1989)『遊びの現象学』勁草書房

・ 増山均【著】 早稲田大学増山研究室【編】(2018)『アニマシオンと日本の子育

て・教育・文化』本の泉社

・ 松田恵示(2001)『交叉する身体と遊び あいまいさの文化社会学』世界思想社

・ 吉田伊津美・砂上史子・松嵜洋子【編著】(2018)『乳幼児教育保育シリーズ 保

育内容 健康』光生館

29Ⅰ 特集「成長の土台としての子供の遊び」

Ⅱ 投 稿 原 稿

Ⅱ 投 稿 原 稿

【論文】

自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

-シャイネス感情に着目して-

The effect of nature experience activities on acquisition of social skills

-Focusing on shyness emotions-

川畑 和也 KAWABATA Kazuya

神村学園専修学校

福満 博隆 FUKUMITSU Hirotaka

鹿児島大学

要旨

本研究は、良好な人間関係を構築することが期待されている自然体験活動が、大学生の

社会的スキルやシャイネス感情に及ぼす効果と、それらの関係性を検証することを目的と

した。2泊3日の自然体験活動実習に参加した 69 名を対象に、実習前後と終了2ヶ月後に

「社会的スキル」と「シャイネス感情」の調査を行なった。分析の結果、自然体験活動前

後で社会的スキルは向上、シャイネス感情は低下し、それらの多くは2ヶ月後においても

維持されていた。さらに、実習を通してシャイネス感情を低下させた者は、他者との直接

的な関わりに必要な高度なスキルと初歩的なスキルを 2 ヶ月後の生活において向上させた。

以上の結果から、自然体験活動は、大学生の社会的スキルの獲得やシャイネス感情の低

下を促し、自然体験活動におけるシャイネス感情の低下が社会的スキルの獲得に影響する

といった自然体験活動の有効性の一側面が見出された。

キーワード

自然体験活動、大学キャンプ実習、シャイネス感情、社会的スキル、青少年

Ⅰ.緒言

内閣府は、子ども・若者白書の中で若年無業者やフリーターの割合が増加していること

を報告している1)。また、同白書の中では、現在のひきこもり人口が 69.6 万人であること

や、若年無業の状態にある者の約5割がひきこもりの経験を持ち、その約8割が対人関係

に不安を感じていることを指摘している1)。ひきこもりとなったきっかけは、「職場に馴染

めなかった」や「不登校」、「人間関係がうまくいかなかった」など、他者との人間関係の

構築に起因するものが多く、安井ら(2010)は、その原因に関して対人恐怖を指摘しており、

近年では軽度の対人恐怖症を持った若者が増加していることを述べている2)。

対人恐怖とは、対人場面で緊張を恐れる心理状態が中心となる症状3)であるが、Leary

(1986)は、青年期に多く見られる、精神症状にまでは至らない対人恐怖の傾向を「シャ

イネス」と呼び、対人的な評価に直面したり、あるいはそれを予期したりすることから生

32 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

じる、対人不安および行動の抑制によって特徴づけられる情動的、行動的症候群と定義し

た4)。シャイネス感情に関しては、相川(1991)によって、特定の社会的状況を超えて個

人内に存在し、対人不安という情動状態と対人抑制という行動的特徴を持つ症候群と定義

され、恥ずかしがり、内気、引っ込み思案などの意味を全て含む上位概念としても捉えて

いる5)。

これら対人関係をより良いものにしていくための方法の一つとして、社会的スキルの獲

得を挙げることができる。社会的スキルとは、菊池(1998)によって対人関係を円滑に運

ぶために役立つスキルと定義されたものであるが6)、松島ら(2000)は、青年は成人に比

べて社会的スキルの獲得が十分ではなく、その中でも、シャイな者は社会的スキルが欠如

していると述べている7)。さらに、シャイネス感情の高い者は,低い者よりも社会的スキ

ルが低いことが言われ8)、若者がよりよい対人関係を構築していくには、社会的スキルの

獲得やシャイネス感情の低下を促す必要が考えられる。

キャンプなどを含む自然体験活動は、一般的に小グループでの生活や活動が主体であり、

仲間とよく相談し協力・共感するといった態度や行動が求められるため、青少年の自主性

や協調性,社会性の育成に大いに役立つものである9)。このことからも、自然体験活動が

社会性の獲得や、シャイネス感情の低下への有効性は伺える。さらに先行研究において、

兄井(2010)は4泊5日の大学キャンプ実習においてキャンプ直前よりもキャンプ直後及

びキャンプ2ヶ月後において社会的スキルが有意に向上することを 10)、また、平野(1997)

はキャンプにおける生活体験は、実際的な交流体験活動を通して、若者により良い人間関

係のあり方を学ぶ機会を提供していると述べている 11)。

しかし、自然体験活動が社会的スキルの変容のみならず、シャイネス感情に及ぼす影響

やその関連性に関する研究は見られず、それらを明らかにすることは、良好な人間関係を

構築することが期待される自然体験活動の有効性を示す上でも有意義であると考えられる。

そこで本研究は、K大学共通教育教養科目「自然体験活動入門講座」のキャンプ実習に参

加した大学生のシャイネス感情と社会的スキルの変容を調査し、自然体験活動が大学生の

シャイネス感情と社会的スキルに及ぼす影響及び、社会的スキル獲得にシャイネス感情が

及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。

Ⅱ.対象及び方法

1.対象キャンプ実習

平成 29 年8月 31 日(木)〜9月2日(土)、平成 30 年8月 28 日(火)〜30 日(木)の2泊3

日の日程で行われた、平成 29 年度、平成 30 年度 K 大学共通教育科目「自然体験活動入門

講座」を対象キャンプ実習とする。尚、実施プログラムは、平成 29、30 年度共に同様のも

のである。

本キャンプ実習は K 大学農学部高隈演習林に隣接し、垂水市とK大学が提携している垂

水市大野 ESD 自然学校(旧大野小学校跡)をベースキャンプにして、2泊3日の日程で行

われた。学習目標として、人間と自然の関わりについて考える機会となる、自分と他人と

の関わりについて考える機会となる、自分自身について考える機会となる、生活技術や野

外活動技術を学ぶ機会となる、の4点を挙げている。高隈の森の自然を利用した自然体験

活動を通して、自然との触れ合いを深め、仲間と協力して成し遂げる喜びを体験し、自分

33Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

の可能性について見つめ直す場としている。

班編成に関しては、できるだけ学部学科が異なるように調整し、1班9人の男女混合4

班編成とした。それぞれの班に、班長、副班長、食事係、薪係、装備係の役割を設けた。

実習内容は、1日目にアイスブレイクや冒険的要素を含む課題を解決していく協力ゲー

ムを行い、テント設営や野外炊事、ナイトプログラムを行った。2日目は午前中に野外炊

事やネイチャーゲーム、本実習のメインプログラムとして、午後からは沢登りとキャンプ

ファイヤーを実施した。3日目は竹林から学生自らが竹を切り出し、昼食の流しそうめん

に使用する、レール、器、箸作りを行う竹細工体験を実施した。昼食後の振り返りの時間

ではスタッフが作成した3日間を振り返るスライドショーの上映を行い、グループと個人

でのふりかえりの時間を設けた。毎晩班ごとのミーティングの時間を設定し、その日の出

来事や翌日への抱負などをグループ内で共有させた。また、食事に関しては7食中5食野

外炊事を行い、宿泊に関しては2日間とも野外でのテント泊であった。

2泊3日の活動において、両年度の講義が同様に行われるように配慮し、指導・運営に

関してはK大学共通教育センター教員、自然学校職員、1年次に本実習を受講し、3年次

に子どもキャンプの企画、運営にも関わった経験のある3年生と4年生の学生がスタッフ

として運営に携わった。また生活班の活動において、学生スタッフを2名ずつ各班に配置

した。

2.調査対象者

調査対象者は、本実習に参加した学生 69 名(男子:38 名、女子:31 名)とした。平成

29 年度の参加者は、35 名(1年生 34 名うち男子 16 名、女子 18 名、2年生1名うち男子

1名)であり、平成 30 年の参加者は 34 名(1年生 32 名うち男子 20 名、女子 12 名、2年

生2名うち男子2名)であったが、質問紙に未記入箇所や重複解答がある2名は除いた(回

収率:97.1%)。

3.検査内容

(1) 個人プロフィール

対象者の個人プロフィールとして、受講年度、学籍番号、性別の記載を求めた。

(2)社会的スキル

対象者の社会的スキルに関する項目は、菊池(1988)によって作成された、若者の社会

的スキルを測定する尺度である Kikuchi's Scale of Social Skills 18 items(以下、Kiss18)

を用いた 6)。尺度は全 18 項目からなり、5件法(1:全く当てはまらない〜5:全く当ては

まる)で回答させ、その合計を社会的スキル得点とした。また、尺度は6つの下位因子から

なり、それぞれ「初歩的なスキル(3項目):会話を始めたり、質問したり、自己紹介した

りするなど」、「高度なスキル(3項目):人に助けを求めたり、指示を与えたり謝ったりす

るなど」、「感情処理のスキル(3項目):自分の感情に気づき、その感情を表現したり、恐

れを処理するなど」、「攻撃的に代わるスキル3項目):他人を助けたり、和解したり、自分

をコントロールするなど」、「ストレスを処理するスキル(3項目):難しい会話に応じたり、

失敗を処理したり、非難を処理したりするなど」、「計画的なスキル(3項目):目標を設定

34 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

したり、自分の能力を知ったり、決定を下すなど」である。社会的スキルの合計得点の範

囲は 18〜90 点であり、それぞれの下位因子は3〜15 点の範囲で、得点が高いほど各スキ

ルが高いことを示す。

(3)シャイネス感情

対象者のシャイネス感情に関する項目は、相川(1991)によって作成された、特性シャ

イネス尺度(Trait Shyness Scale)を用いた 12)。尺度は 16 項目からなり、5件法(1:

全く当てはまらない〜5:全く当てはまる)で回答させ、その合計得点をシャイネス感情得

点とした。シャイネス感情の合計得点の範囲は 16 点〜80 点であり、得点が高いほど特性

としてのシャイネス感情の傾向が強く、点数が低いとその傾向は弱いことを示す。

(4)検査の手続き

対象者に対し、実習前の事前オリエンテーション時(Pre)と実習最終日閉講式時(Post1)、

さらに実習終了2ヶ月後に行われた事後オリエンテーション時(Post2)にて実施し、回答

に不備が出ないよう直接配布した上で一斉に回答させた。また、質問紙への記載は無記名

とし、今回の研究で得られたデータは本研究以外では使用しないこと、個人を特定するこ

とはないことを説明し、同意を得られた参加者を対象とした。

(5)統計処理

対象者に対して行なった社会的スキル、シャイネス感情のそれぞれのデータに関して、

3つの時期で一元配置分散分析を行った。また、社会的スキルの変容に関して、シャイネ

ス感情の影響を明らかにするために、シャイネス感情の変化量から2つの群に分け、それ

ぞれの群と調査時期の二元配置分散分析を行った。それぞれの分析におけるその後の検定

には、Scheffe による多重比較を用いた。なお、統計処理については、シミック社製 HALBAU

(High quality Analysis Libraries for Business and Academic Users)7を使用し、

全ての統計的検定において5%未満を有意水準、10%未満を有意傾向とした。

Ⅲ.結果

1.社会的スキルの変容

対象者全体(n=67)の3つの調査時期における社会的スキルの平均得点と標準偏差を示

す(表1)。自然体験活動の効果を明らかにするために、それぞれの時期における一元配置

分散分析を行なった。その結果、実習後は実習前と比較し、初歩的なスキルを除く全ての

項目において、平均得点の有意な向上が認められた(社会的スキル:F(2,132)=9.09,p<.0

01、初歩的なスキル:F(2,132)=3.55,p<.05、高度なスキル:F(2,132)=5.11,p<.01、感情

処理のスキル:F(2,132)=13.16,p<.001、攻撃に代わるスキル:F(2,132)=5.04,p<.01、ス

トレス処理のスキル:F(2,132)=5.54,p<.01、計画のスキル:F(2,132)=3.93,p<.05)。実習

終了2ヶ月後は、実習後と比較すると平均得点に有意な差は認められなかったが、実習前

と比較し全ての項目において、平均得点の向上が見られたことから、自然体験活動が社会

的スキルの向上に有効であり、2ヶ月後もその効果が維持されたと捉えることができる。

35Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

表1 社会的スキルの変容

2.シャイネス感情の変容

対象者全体(n=67)の3つの調査時期におけるシャイネス感情の平均得点と標準偏差を

示す(表2)。社会的スキルと同様に、それぞれの時期における一元配置分散分析を行なっ

た。その結果、実習後は実習前と比較し、有意な低下が認められた(F(2,132)=3.20,p<.05)。

実習終了2ヶ月後は、実習後と比較すると平均得点に有意な差は認められなかったが、実

習前と比較して平均得点の有意な低下が見られたことから、自然体験活動がシャイネス感

情の低下に有効であり、2ヶ月後もその効果が維持されたと捉えることができる。

表2 シャイネス感情の変容

3.シャイネス感情の変化量からみた社会的スキルの変容

シャイネス感情の変化量の低下群と非低下群の社会的スキルの変容を比較するために、

自然体験活動の Pre、Post1 における、シャイネス感情の変化量の分布から(図1)、シャ

イネス感情をより低下させた群(低下群:n=21)とあまり低下させなかった(非低下群:

n=23)の2群に分け、群と調査時期の二元配置分散分析を行なった(表3)。

その結果、社会的スキルにおいては、交互作用は認められなかった。時期の主効果に有

意な変容が見られ(F(2,126)=5.39,p<.01)、多重比較では実習前より実習直後に有意に得

点が高くなる傾向があり、さらに実習前より実習終了2ヶ月後において有意に向上するこ

とが示された。

下位因子においても同様の分析を行ったところ(表3)、高度なスキルにおいてのみ交互

作用が有意であり(F(2,126)=3.08,p<.05)(図2)、初歩的なスキルにおいて有意傾向が認

められた(F(2,126)= 2.98,p<.10)(図3)。時期、群を要因とした単純主効果の検定を行っ

たところ、高度なスキル、初歩的なスキルの両スキルにおいて、低下群では実習前より実

習終了2ヶ月後で有意に高い得点を示した。非低下群には有意な差は見られなかった。ま

36 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

た、キャンプ前において、それぞれの得点は低下群が非低下群よりも有意に低かった。

感情処理のスキルにおいては、交互作用は認められなかった。時期の主効果が見られ

(F(2,126)= 7.12,p<.05)、多重比較では、実習前より実習終了直後、実習終了2か月後の

得点が有意に高かった。また、群の主効果では、非低下群が低下群より有意に高かった

(F(1,126)= 4.06,p<.05)。攻撃に代わるスキルにおいても、交互作用は認められなかった。

時期の主効果が見られ(F(2,126)= 3.33,p<.05)、多重比較では、実習前より2か月後の得

点が有意に高くなる傾向が示された。ストレス処理のスキルにおいては、交互作用、主効

果共に認められず、計画のスキルにおいても同様な結果となった。

図1 シャイネス感情の変化量分布

表3 シャイネス感情の変化量から見た社会的スキルの比較

37Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

図2 シャイネス感情の低下群と 図3 シャイネス感情の低下群と

非低下群の高度なスキルの変化 非低下群の初歩的なスキルの変化

Ⅳ.考察

1.対象者全体の社会的スキルとシャイネス感情の変容

対象者全体の社会的スキルの変容は、実習前後において有意な向上が見られ、さらに下

位因子に関しても、初歩的なスキルを除く全ての項目で有意な向上が見られた。実習終了

2ヶ月後には、実習終了後に獲得した社会的スキルを維持させている結果となった。つま

り、自然体験活動は他者とのコミュニケーションを円滑に行うスキルである社会的スキル

の獲得に影響を与えることが推察され、その効果はその後の生活においても維持されるこ

とが示された。

西田ら(2002)は、組織キャンプにおいて、実施後に積極的に他者に関わろうとする技

術が向上したことを明らかにし 13)、高山(2009)は、組織キャンプ体験後の自由記述の分

析から、他者関係やコミュニケションなど社会的スキルの向上を確認することができたこ

とを報告している 14)。さらに市河ら(2013)は、キャンプ場面において対人関係能力や問

題解決能力に関する能力の向上を明らかにしており 15)、今回の結果はこれらを支持するも

のであった。

以上のことからも、対象者は冒険教育的要素や生活体験的要素を含んだ2泊3日の実習

において、一人では克服できない課題に取り組み、積極的に他者と会話する場面が多く、

さらに常に身近に他者が居るといった共同生活が、必然的に他者とのコミュニケーション

図るきっかけとなり、それらの経験が実習後に社会的スキルを向上させ、そのスキルの獲

得がその後の生活においても維持した要因と考える。

また、対象者のシャイネス感情の変容は、実習前後において有意な低下が見られ、その

効果は実習終了2ヶ月後まで維持されていた。つまり、自然体験活動は「シャイネス感情」

の低下に影響し、さらにその効果は継続することが示唆された。

実習における班構成は、出来るだけ他学部他学科のメンバーで構成されるように配慮し

ており、事前のガイダンス時に初対面の班員と仲間づくりの時間を設け、積極的に他者と

関われる環境づくりを行っている。さらに、1日目のプログラムの中でアイスブレイクを

行い、学生同士だけでなく、教員やスタッフなどとも関係を築き、緊張をほぐし、関わり

やすい環境を作る時間を設けていることが影響し、シャイネス感情は実習を通して低下し

たと考えられる。また学生における大学内での友人関係は、同学部同学科の特定の友人と

過ごす時間が多いが、実習参加によって他学部他学科に交友関係が広がったことで、多く

38 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

の人と関わるきっかけとなり、その後の生活においてもシャイネス感情の低下が維持され

たものと考えられる。

以上のことからも、対象者のシャイネス感情は実習初期段階における、恥ずかしさや内

気などを取り除く働きかけや2泊3日の共同生活の中で低下し、その経験をその後の生活

に生かすことでその低下は維持されたと考えられる。

2.シャイネス感情の変容による社会的スキルの比較

実習前後におけるシャイネス感情の変化量から低下群と非低下群に分け、社会的スキル

の変容を比較した。その結果、高度なスキルにおいて交互作用が有意であり、初歩的なス

キルにおいて交互作用に有意傾向が認められた。両スキルにおいて実習前は、低下群の方

が低い得点を示しているが、実習後及び実習終了2ヶ月後で得点を伸ばし、どちらも実習

前と実習終了2か月後で有意に得点を向上させる結果となった。つまり、自然体験活動に

おけるシャイネス感情の低下が社会的スキルの獲得を促し、特に他者との直接的な関わり

に必要な高度なスキルと初歩的なスキルに影響したと言える。

鈴木ら(2012)による大学生のシャイネス感情に関する研究において、恥ずかしくない

方が、緊張しないで人と話せ、人との関係で自信があることや、さらに楽しい気持ちがシ

ャイネス感情を低下させることを明らかにしている 16)。また、松島(1990)らは、シャイ

ネス感情と社会的スキルには、有意な負の相関が認められたことが報告されており 17)、今

回シャイネス感情をより低下させた者において社会的スキルのうち高度なスキルと初歩的

なスキルが向上していたことは、これらのことを裏付ける結果となった。

また今回、特に高度なスキルと初歩的なスキルが、実習終了2ヶ月後に向上していた。

「初めは恥ずかしくてあまり話せなかったが、活動を通して自分の意見を言ったり、困っ

ている人がいた時は自然と自分から言葉や行動に出たりと、自分でも驚きだった。」、「協力

がなければどれも達成できないものばかりだったので、いかに仲間との協力が大事か良く

分かりました。」など積極的に行動することの重要性や、他者との協力の重要性を学んだこ

とが、初歩的なスキルや高度なスキルと関連していると報告されている 18)。今回の参加者

においても、自然体験活動の中で恥ずかしさを低下させ、積極的に他者との関わることで、

自分自身の可能性に気付き、実習終了後の生活においても積極的に他者との関わりを持て

たことが影響していると考えられる。

高度なスキルと初歩的なスキル以外は交互作用が見られなかったため、シャイネス感情

の低下群が非低下群より社会的スキル、感情処理のスキル、攻撃に代わるスキル、ストレ

ス処理のスキル、計画のスキルを向上させたとは言えない。しかし今回の実習は、2泊3

日の短い期間で行われたことや、自然体験活動入門講座としての位置付けであったことも、

その効果にばらつきが生じたものと考えられる。自然体験活動は、一人では解決できない

課題への挑戦や他者との共同生活体験を通し、他者と意見を交わす場面や他者と触れ合う

ことで、良好な人間関係を構築することが期待できる。さらなるデータや事例の積み重ね、

その関係性を検討していく必要があるだろう。

39Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

5.結語

自然体験活動が大学生のシャイネス感情と社会的スキルに及ぼす影響及び、社会的スキ

ル獲得にシャイネス感情が及ぼす影響について明らかにすることであった。2泊3日のK

大学共通教育「自然体験活動入門講座」のキャンプ実習を受講した 69 名に対して、社会的

スキルとシャイネス感情に関する尺度を用いて調査を行なった。その結果、自然体験活動

を通して、対象者の社会的スキルは向上し、シャイネス感情は低下した。また、シャイネ

ス感情の変化量による社会的スキルの変容には違いがあり、実習を通してシャイネス感情

をより低下させた者はそうでない者と比較し、特に高度なスキルや初歩的なスキルといっ

た社会的スキルをより獲得していることが示唆された。つまり、自然体験活動は、大学生

の社会的スキルの獲得やシャイネス感情の低下を促し、自然体験活動における社会的スキ

ルの獲得には、シャイネス感情を低下させることがより効果的であるということが示され、

自然体験活動の有効性の一側面が見出された。

近年、対人関係の希薄化、社会性の欠如などが影響し、人間関係に起因する社会問題が

挙げられる。そのような中で、不特定多数の他者との良好なコミュニケーションを図り、

生活を共にし、青少年の成長を促す自然体験活動の重要性を再確認すると共に、今後の自

然体験活動が提供される上でプログラムの構成を再考していく必要がある。

今回の研究においては、自然体験活動を通した社会的スキルとシャイネス感情の変容か

ら検討を行ったが、冒険教育的要素、環境教育的要素、生活体験的要素など様々な要素を

含む自然体験活動において、その変容にどのようなプログラムが影響したのかは未知であ

る。今後、これらを明らかにするためにも、多岐にわたる自然体験活動で調査を行い、検

討を重ねる必要がある。

引用・参考文献

1) 内閣府『平成 27 年版子供・若者白書』日経印刷、2015、pp.38-40.

2) 安井梨恵・米山直樹「シャイネスに対する認知行動療法的アプローチに関する考察『関

西学院大学人文論究』60-1、2010、pp.133-144.

3) 鍋田恭孝「対人恐怖・醜形恐怖―「他者を恐れ・自らを嫌悪する病い」の心理と病理」

金剛出版、1997

4) Leary, M.R. 「Affective and behavioral components of shyness : Impli

cations for theory, measurement, and research.」『Perspectives on resea

rch and treatment.』Plenum Press、1986

5) 相川充「特性シャイネス尺度の作成および信頼性と妥当性の検討に関する研究」『宮崎

大学心理学研究』62-3、1991、pp.149-155.

6) 菊池章夫「Social Skill 尺度の作成」『東北心理学研究』38、1988、pp.67-68.

7) 松島るみ・塩見邦雄「シャイネスと社会的スキルの関連が自己開示に及ぼす影響」『教

育実践学研究』2-1、2000、pp.11-19.

8) 徳永沙智・稲畑陽子「シャイネスと被受容感・被拒絶感が社会的スキルに及ぼす影響」

『徳島大学人間科学研究』21、2013、pp.23-34.

9)文部科学省「青少年の野外教育の充実について」、http://www.mext.go.jp/b_menu/sh

ingi/chousa/sports/003/toushin/960701.htm、2019 年6月8日アクセス

40 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

10) 兄井彰「大学キャンプ実習が参加者の社会的スキルに及ぼす影響:KiSS-18 による検

討」『日本体育学会一般研究発表抄録』、2010、pp.112.

11) 平野吉直「野外教育の今日的意義」『青少年問題』、44-8、1997、pp.4-9.

12) 相川充「特性シャイネス尺度の作成および信頼性と妥当性の検討に関する研究」『心理

学研究』62-3、pp.149-155

13) 西田順一・橋本公雄・徳永幹雄・柳敏晴「組織キャンプ体験による児童の社会的スキ

ル向上効果」、『野外教育研究』8-2、2002、pp.45-57.

14) 高山昌子「大学生の組織キャンプの効果に関する一考察」『太成学院大学紀要』11、

2009、pp.85-95.

15) 市河勉・三宅孝昭・新戸信之「キャンプ経験が保育専攻学生社会的スキルに及ぼす影

響について」『松山東雲短期大学研究論集』43、2013、pp.55-61.

16) 鈴木由美・箭本佳己「大学生の対人関係ゲームとシャイネスとの関連」『都留文科大学

研究紀要』76、2012、pp.67-76.

17) 松島るみ「シャイネスが自己開示に及ぼす影響-社会的スキルを媒介として-」『日本教

育心理学学会総会発表集』41、1990、pp.357.

18) 川畑和也・福満博隆「共通教育科目としての「自然体験活動」の効果に関する一考察 :

自由記述レポートによる質的検討」『鹿児島大学総合教育機構紀要』2、2019、pp.67-

77.

41Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動が社会的スキルの獲得に及ぼす効果

さらに、平成 25 年の中央教育審議会「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」3)で

はボランティア活動を職場体験やインターンシップと同様の社会体験活動として位置づけ、高等

学校の学習指導要領ではボランティアに関わる体験活動を行うことになっている。

これらを総合すると、ボランティア活動は、今後の社会の変化を受けてより多くの人々のライ

フワークとして定着していく側面とともに、学校教育の中に組み込まれていることや、生涯学習

の一環として捉えられていることから、教育活動としての側面も有し、その教育的意義や教育効

果は一定の評価を得ていることがわかる。

ボランティアと生涯学習の関連性について、平成4年7月の生涯学習審議会答申「今後の社会

の動向に対応した生涯学習の振興方策について」4)では、「第一はボランティア活動そのものが自

己啓発、自己実現につながる生涯学習となるという視点、第二はボランティア活動を行うために

必要な知識・技術を習得するための学習として生涯学習があり、学習の成果を生かし、深める実

践として生涯学習があるという視点、第三は人々の生涯学習を支援するボランティア活動によっ

て、生涯学習の振興が一層図られるという視点」の3点を指摘している。

独立行政法人国立青少年教育振興機構5)(以下、「青少年機構」と表記)でも、平成 28 年に定

められた独立行政法人国立青少年教育振興機構が達成すべき業務運営に関する目標(中期目標)及

び独立行政法人国立青少年教育振興機構の中期計画(以下、「第 3期中期計画・中期目標」と表記)

で青少年のボランティア活動を「青少年の自立や健全育成、社会参加を促進する上で重要な役割

を果たす」とし、「法人ボランティア」制度を設け、高校生以上を対象として全施設でのボランテ

ィア養成を行っている6)7)。

一方、平成4年7月の生涯学習審議会答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策

について」では、ボランティア活動の支援・推進に向けての課題として、行政とかかわりを持っ

てボランティア活動が行われる場合、行政として行うべきこととボランティアが行う活動とが明

確にされず、その活動を行政の補助的なものとみなす認識があることを指摘し、ボランティア活

動を求めるニーズとボランティアの意欲が効果的に結び付くよう、活動をする側と受ける側の実

態を把握すべきとしている。

青少年機構で活動するボランティアの参加動機に関する研究は杉本(2018)のみであり、ボラン

ティア自主研修に参加した大学生を対象に調査を行った結果、ボランティア活動への参加動機は

「交流」、「成長」、「活動自体を楽しむ」、「企画」の4つの傾向があると報告している8)。また、中

野(1991)は青少年機構発足以前の国立少年自然の家で活動するボランティア対象に活動への参

加動機を調査し、大学生ボランティアは、社会のためと言うよりも、 自分自身のために活動して

いると報告している9)。

青少年機構以外のボランティア活動への参加動機については、数多くの研究が行われている。

現在は参加動機が複数の次元で構成されているとする複数動機アプローチが主流となっており、

桜井(2002)は先行研究におけるボランティア参加動機の概念次元を整理し、「利他心」、「自己成

長」、「社会適応」、「技術習得・発揮」、「防衛」、「レクレーション」、「利得・損失計算」、「規範的参

加」、「理念の実現」、「テーマや対象への共感」の 10の類型に収まり、日本では海外で提唱されて

いるモデルを超える次元があると報告している 10)。伊藤(2011)は 1993年から 2008年までの日

本でのボランティア活動の動機に関する研究について、利他的動機と利己的動機の2つの枠組み

で捉え、10の項目によって整理した。さらに、災害ボランティアや障害者スポーツ大会のボラン

ティアなど、ボランティア対象に対応した固有の動機と考えられるものは、先の 10の項目に含め

【論文】

国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の

参加動機に関する研究

A study of the motives for participation in volunteer activities of high

school, junior college and university students at national youth education

facilities

杉本 守 SUGIMOTO Mamoru

国立磐梯青少年交流の家

要旨

平成4年の生涯学習審議会答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策につ

いて」では、行政がボランティア活動をする者の実態を把握する必要性を指摘しているが、

国立青少年教育施設でボランティア活動を行う者の実態に関する報告はほぼ存在しない。

よって本研究では、ボランティア活動への参加動機について、参加動機構造モデルに焦

点を当て調査を行った。個人的属性による比較も行い、その差異について検討することで、

ボランティア活動に参加する者の参加動機に関する実態について考察した。

その結果、参加動機が8つの因子によって構成されていることを明らかにした。また、

個人的属性による比較も行い、性別、所属学校、活動への参加経験によって参加動機の傾

向に差異があることも明らかにした。

キーワード

ボランティア、参加動機、参加動機構造モデル、国立青少年教育振興機構

Ⅰ.研究の背景と目的

平成 30 年6月に閣議決定された第3期教育振興基本計画1)では、2030 年頃に予想されている

技術革新やグローバル化、人口構造の変化等を踏まえ、教育政策の重点事項として、第2期教育

振興基本計画2)で掲げられた生涯学習社会の構築を目指すという理念を引き継いでいる。また、

人生 100 年時代の到来により、定年退職後にボランティアなどで地域や社会の課題解決のために

活動することなどがより一般的になることや、若年層での学びに加えて、生涯にわたって自ら学

習し、自己の能力を高め、働くことや、地域や社会の課題解決のための活動につなげていくこと

の必要性が一層高まっているとしている。

また、学校教育法 31 条でも、「小学校においては、(略)教育指導を行うに当たり、児童の体験

的な学習活動、特にボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動その他の体験活動の

充実に努めるものとする。この場合において、社会教育関係団体その他の関係団体及び関係機関

との連携に十分配慮しなければならない。(中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校にも

準用)」となっており、各学校において、発達の段階を踏まえ、教育課程に計画的・効果的に体験

活動を組み込むことにより、今後、より一層体験活動を充実していくことが必要とされている。

42 Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

さらに、平成 25 年の中央教育審議会「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」3)で

はボランティア活動を職場体験やインターンシップと同様の社会体験活動として位置づけ、高等

学校の学習指導要領ではボランティアに関わる体験活動を行うことになっている。

これらを総合すると、ボランティア活動は、今後の社会の変化を受けてより多くの人々のライ

フワークとして定着していく側面とともに、学校教育の中に組み込まれていることや、生涯学習

の一環として捉えられていることから、教育活動としての側面も有し、その教育的意義や教育効

果は一定の評価を得ていることがわかる。

ボランティアと生涯学習の関連性について、平成4年7月の生涯学習審議会答申「今後の社会

の動向に対応した生涯学習の振興方策について」4)では、「第一はボランティア活動そのものが自

己啓発、自己実現につながる生涯学習となるという視点、第二はボランティア活動を行うために

必要な知識・技術を習得するための学習として生涯学習があり、学習の成果を生かし、深める実

践として生涯学習があるという視点、第三は人々の生涯学習を支援するボランティア活動によっ

て、生涯学習の振興が一層図られるという視点」の3点を指摘している。

独立行政法人国立青少年教育振興機構5)(以下、「青少年機構」と表記)でも、平成 28 年に定

められた独立行政法人国立青少年教育振興機構が達成すべき業務運営に関する目標(中期目標)及

び独立行政法人国立青少年教育振興機構の中期計画(以下、「第 3期中期計画・中期目標」と表記)

で青少年のボランティア活動を「青少年の自立や健全育成、社会参加を促進する上で重要な役割

を果たす」とし、「法人ボランティア」制度を設け、高校生以上を対象として全施設でのボランテ

ィア養成を行っている6)7)。

一方、平成4年7月の生涯学習審議会答申「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策

について」では、ボランティア活動の支援・推進に向けての課題として、行政とかかわりを持っ

てボランティア活動が行われる場合、行政として行うべきこととボランティアが行う活動とが明

確にされず、その活動を行政の補助的なものとみなす認識があることを指摘し、ボランティア活

動を求めるニーズとボランティアの意欲が効果的に結び付くよう、活動をする側と受ける側の実

態を把握すべきとしている。

青少年機構で活動するボランティアの参加動機に関する研究は杉本(2018)のみであり、ボラン

ティア自主研修に参加した大学生を対象に調査を行った結果、ボランティア活動への参加動機は

「交流」、「成長」、「活動自体を楽しむ」、「企画」の4つの傾向があると報告している8)。また、中

野(1991)は青少年機構発足以前の国立少年自然の家で活動するボランティア対象に活動への参

加動機を調査し、大学生ボランティアは、社会のためと言うよりも、 自分自身のために活動して

いると報告している9)。

青少年機構以外のボランティア活動への参加動機については、数多くの研究が行われている。

現在は参加動機が複数の次元で構成されているとする複数動機アプローチが主流となっており、

桜井(2002)は先行研究におけるボランティア参加動機の概念次元を整理し、「利他心」、「自己成

長」、「社会適応」、「技術習得・発揮」、「防衛」、「レクレーション」、「利得・損失計算」、「規範的参

加」、「理念の実現」、「テーマや対象への共感」の 10の類型に収まり、日本では海外で提唱されて

いるモデルを超える次元があると報告している 10)。伊藤(2011)は 1993年から 2008年までの日

本でのボランティア活動の動機に関する研究について、利他的動機と利己的動機の2つの枠組み

で捉え、10の項目によって整理した。さらに、災害ボランティアや障害者スポーツ大会のボラン

ティアなど、ボランティア対象に対応した固有の動機と考えられるものは、先の 10の項目に含め

43Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

所属学科、活動回数を尋ね、無記名とした。

Ⅲ.結果

1.参加動機構造について

各項目について、得点の平均±SD を目安にフロア効果を判定したところ、2項目でフロア効果が見

られたため、分析対象から削除した。なお、天井効果が見られる項目については、ボランティア参加動

機の中心的なものであると考え、削除しないこととした。因子分析(最尤法、オブリミン回転)を行っ

た結果、表2のような因子負荷量を得た。それぞれの因子の分析は以下の通りである。

第1因子は「自分は恵まれているので、社会に恩返しがしたかったから」、「社会的使命として自分が

やらなければいけないと思ったから」、「地域や社会をよりよくしたかったから」、「社会の不公平を正

し、公平を実現するため」など、社会に対する貢献意欲を示す項目が多く見られたため、「社会貢献」

因子と名付けた。

第2因子は「年齢の違う人たちと一緒に活動できると思ったから」、「いろいろな人と知り合いにな

り、良き友人を作るため」という人とのかかわりに関する項目で占められているため、「交流」因子と

名付けた。

第3因子は「会社や学校がボランティア活動をすることを期待するから」、「青少年教育施設に関わ

れば、社会的に評価されると思ったから」という他律的な項目と、「就職に役立たせる経験をしたかっ

たから」というキャリア形成の一助とする内発的な項目で構成されているため、「社会適応」因子と名

表2 オブリミン回転後の因子行列

1 2 3 4 5 6 7 8

自分は恵まれているので、社会に対して恩返しをしたかったから。 0.806 -0.016 0.046 -0.173 -0.026 0.144 -0.032 0.081 2.93

社会的使命として自分がやらなければいけないと思ったから。 0.586 -0.035 0.302 0.144 -0.118 -0.071 0.161 -0.123 3.00

青少年教育施設の目的や理想に共鳴(同感)したから。 0.47 -0.099 -0.025 0.437 -0.006 0.149 0.214 0.004 3.34

地域や社会をよりよくしたかったから。 0.452 0.049 -0.034 0.216 0.297 -0.066 0.022 -0.004 3.66

困っている人を助けることで、自分も明るく楽観的になれるから。 0.44 0.045 0.096 0.236 0.137 0.125 0.054 0.077 3.44

以前に同じような活動をしたことがあり、その経験や能力を活かしたいから。 0.411 0.251 -0.113 0.019 0.038 0.321 0.258 -0.033 3.05

社会の不公平を正し、公平を実現するため。 0.401 0.272 0.196 -0.119 -0.123 0.12 0.336 0.143 2.86

年齢の違う人たちと一緒に活動できると思ったから。 0.018 0.814 0.047 0.043 0.119 0.017 -0.031 0.01 3.98

いろいろな人と知り合いになり、良き友人を作るため。 -0.009 0.742 0.136 0.022 0.126 0.064 -0.041 -0.1 3.82

会社や学校がボランティア活動をすることを期待するから。 0.103 0.16 0.806 -0.201 0.014 0.037 0.051 0.044 2.89

青少年教育施設に関われば、社会的に評価されると思ったから。 -0.014 0.035 0.718 0.135 -0.178 0.07 -0.006 0.136 2.75

就職に役立たせる経験をしたかったから。 0.012 -0.157 0.583 0.473 0.114 0.052 -0.072 0.006 3.68

自分を試せるやりがいのある活動をしたかったから。 -0.097 0.344 -0.047 0.649 -0.017 -0.079 0.132 0.233 3.95

自分の視野を広げたかったから。 0.036 0.341 0.034 0.529 0.166 -0.058 -0.214 0.05 4.37

人のためになることをすると、気持ちがよいから。 0.237 -0.068 0.08 0.46 0.267 -0.012 -0.169 0.086 4.05

社会人になるために必要な力が身に付くと思ったから。 0.141 0.033 0.15 0.401 0.289 0.128 -0.15 0.239 4.12

子どもとかかわってみたいから。 0.016 0.249 -0.055 -0.022 0.724 0.09 -0.237 -0.072 4.16

企画活動をしてみたかったから。 -0.021 -0.039 0.047 -0.108 0.706 -0.138 0.306 0.31 3.50

体験活動に興味・関心があったから。 -0.048 0.229 -0.097 0.235 0.638 0.06 0.084 -0.043 4.15

何かをしようと思ったが、やることが他になかったから。 -0.088 -0.183 0.16 -0.03 0.039 0.614 0.004 0.093 2.46

教育組織に関わる知人の影響があったから。 0.162 0.176 -0.033 0.032 0.021 0.612 0.14 -0.013 2.83

自分の日常生活の中で気分転換ができるから。 0.139 0.27 0.024 -0.041 -0.019 0.543 0.084 0.218 3.06

身近な人が青少年教育施設の世話を受けたから。 0.06 -0.053 0.225 -0.052 0.029 0.404 0.284 -0.055 2.39

自分が以前、参加者と同じ境遇だったから。 0.223 -0.127 -0.107 -0.021 0.026 0.139 0.674 0.007 2.37

家庭がボランティア活動をすることを大切にしてきたから。 -0.112 -0.036 0.198 0.072 0.009 0.282 0.614 -0.084 2.22

近隣の多くの人たちが、ボランティア活動をし、助け合っているから。 0.117 0.081 0.378 0.024 0.195 -0.071 0.444 -0.064 2.87

自分が必要とされているという気持ちを味わいたかったから。 0.013 -0.086 0.06 -0.02 -0.01 0.052 -0.034 0.94 3.20

自己実現のために役に立つと思ったから。 -0.052 0.193 -0.045 0.381 0.076 -0.021 -0.003 0.477 3.79

累積寄与率 0.076 0.147 0.214 0.281 0.347 0.405 0.461 0.511

Alpha .93 .76 .97 .88 .97 .92 .94 .97

項目因子

平均点

ずに整理している。しかし、ボランティアの参加動機について、項目によって利他的か利己的か

を明確に線引きすることは難しいとしているとともに、ボランティア活動を行う個人は、いずれ

かの動機のみによって行動しているわけではなく、複数の動機を同時に持ち得ると述べている 11)。

このように、先行研究では対象活動分野や調査対象者によってその因子数や内容に様々な捉え

方が存在している。このことから、青少年機構で活動するボランティアにもそれ固有の参加動機

を構成する因子や構造があると考えられる。

よって、本研究では、青少年機構で活動する高校生・短期大学生・大学生のボランティア活動

への参加動機を明らかにし、その妥当性を検討するとともに、ボランティア活動への参加動機の

実態について考察することを目的とする。

Ⅱ.方法

1.対象

平成 30年度に国立磐梯青少年交流の家でボランティア活動を行っ

た高校生・短期大学生・大学生延べ 148 名を対象に調査を行い、回

答のあった 115 名のうち、回答に不備のない 109 名を分析対象とし

た。

詳細は表1のとおりである。男女の内訳は、男性が 24名、女性が

85 名であった。平均年齢は 18.60 歳(SD=1.66)であり、高校生が

23 名、短期大学性が 30名、大学生が 56名であった。また、ボラン

ティア活動に初めて参加した者が 27 名、過去に青少年機構でのボラ

ンティア活動経験があるものが 82名であった。活動経験があるもの

の活動回数の内訳としては、1〜5回が 41名、6〜10回が7名、11

〜15回が4名、16〜20回が 13名、21 回以上が3名、不明が 14名で

あった。

国立磐梯青少年交流の家は主催する教育事業の運営補助及び参加

者への活動支援や生活指導のために、ボランティアを募集していた。

募集の方法は、教育事業の約1ヶ月前に法人ボランティアの所属す

る各大学のボランティアセンターへ教育事業の概要、対象、担当職

員、募集定員の情報を提供し、希望者を募る形であった。ボランティア活動の具体的な内容とし

ては、事業運営に必要な準備、片付けの補助や活動中の安全管理の補助や支援、子供の生活指導

などであった。

2.質問紙

谷田(2002)が用いた Cnaan&Goldberg-Glen(1991)の作成した尺度を日本の状況に合うよう

に意訳し、1項目を除いた 27 項目に独自の5項目を加えた 32 項目からなる質問紙の項目1~27

について、本調査に合うように質問項目の内容を修正した 12)13)。また、項目 28~32 は福祉ボラ

ンティアの調査に関する予備調査をもとに作成された項目のため削除した。さらに、杉本(2018)

を踏まえた6項目を付加し、計 33項目からなる質問紙を作成した。

各項目は1から5までの5段階での回答を求め、得点が高いほどボランティア活動参加の際に

強く自身の動機として認知していたことを表している。属性については性別、年齢、所属学部、

表1 対象者の属性

属性 n %性別  男 24 22.0%  女 85 78.0%所属  高等学校 23 21.1%  短期大学 30 27.5%  大学 56 51.4%年齢  15歳 3 2.8%  16歳 15 13.8%  17歳 5 4.6%  18歳 26 23.9%  19歳 28 25.7%  20歳 16 14.7%  21歳 13 11.9%  22歳 3 2.8%活動回数  初参加 27 24.8%  1~5回 41 37.6%  6~10回 7 6.4%  11~15回 4 3.7%  16~20回 13 11.9%  21回以上 3 2.8%  不明 14 12.8%

44 Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

所属学科、活動回数を尋ね、無記名とした。

Ⅲ.結果

1.参加動機構造について

各項目について、得点の平均±SD を目安にフロア効果を判定したところ、2項目でフロア効果が見

られたため、分析対象から削除した。なお、天井効果が見られる項目については、ボランティア参加動

機の中心的なものであると考え、削除しないこととした。因子分析(最尤法、オブリミン回転)を行っ

た結果、表2のような因子負荷量を得た。それぞれの因子の分析は以下の通りである。

第1因子は「自分は恵まれているので、社会に恩返しがしたかったから」、「社会的使命として自分が

やらなければいけないと思ったから」、「地域や社会をよりよくしたかったから」、「社会の不公平を正

し、公平を実現するため」など、社会に対する貢献意欲を示す項目が多く見られたため、「社会貢献」

因子と名付けた。

第2因子は「年齢の違う人たちと一緒に活動できると思ったから」、「いろいろな人と知り合いにな

り、良き友人を作るため」という人とのかかわりに関する項目で占められているため、「交流」因子と

名付けた。

第3因子は「会社や学校がボランティア活動をすることを期待するから」、「青少年教育施設に関わ

れば、社会的に評価されると思ったから」という他律的な項目と、「就職に役立たせる経験をしたかっ

たから」というキャリア形成の一助とする内発的な項目で構成されているため、「社会適応」因子と名

表2 オブリミン回転後の因子行列

1 2 3 4 5 6 7 8

自分は恵まれているので、社会に対して恩返しをしたかったから。 0.806 -0.016 0.046 -0.173 -0.026 0.144 -0.032 0.081 2.93

社会的使命として自分がやらなければいけないと思ったから。 0.586 -0.035 0.302 0.144 -0.118 -0.071 0.161 -0.123 3.00

青少年教育施設の目的や理想に共鳴(同感)したから。 0.47 -0.099 -0.025 0.437 -0.006 0.149 0.214 0.004 3.34

地域や社会をよりよくしたかったから。 0.452 0.049 -0.034 0.216 0.297 -0.066 0.022 -0.004 3.66

困っている人を助けることで、自分も明るく楽観的になれるから。 0.44 0.045 0.096 0.236 0.137 0.125 0.054 0.077 3.44

以前に同じような活動をしたことがあり、その経験や能力を活かしたいから。 0.411 0.251 -0.113 0.019 0.038 0.321 0.258 -0.033 3.05

社会の不公平を正し、公平を実現するため。 0.401 0.272 0.196 -0.119 -0.123 0.12 0.336 0.143 2.86

年齢の違う人たちと一緒に活動できると思ったから。 0.018 0.814 0.047 0.043 0.119 0.017 -0.031 0.01 3.98

いろいろな人と知り合いになり、良き友人を作るため。 -0.009 0.742 0.136 0.022 0.126 0.064 -0.041 -0.1 3.82

会社や学校がボランティア活動をすることを期待するから。 0.103 0.16 0.806 -0.201 0.014 0.037 0.051 0.044 2.89

青少年教育施設に関われば、社会的に評価されると思ったから。 -0.014 0.035 0.718 0.135 -0.178 0.07 -0.006 0.136 2.75

就職に役立たせる経験をしたかったから。 0.012 -0.157 0.583 0.473 0.114 0.052 -0.072 0.006 3.68

自分を試せるやりがいのある活動をしたかったから。 -0.097 0.344 -0.047 0.649 -0.017 -0.079 0.132 0.233 3.95

自分の視野を広げたかったから。 0.036 0.341 0.034 0.529 0.166 -0.058 -0.214 0.05 4.37

人のためになることをすると、気持ちがよいから。 0.237 -0.068 0.08 0.46 0.267 -0.012 -0.169 0.086 4.05

社会人になるために必要な力が身に付くと思ったから。 0.141 0.033 0.15 0.401 0.289 0.128 -0.15 0.239 4.12

子どもとかかわってみたいから。 0.016 0.249 -0.055 -0.022 0.724 0.09 -0.237 -0.072 4.16

企画活動をしてみたかったから。 -0.021 -0.039 0.047 -0.108 0.706 -0.138 0.306 0.31 3.50

体験活動に興味・関心があったから。 -0.048 0.229 -0.097 0.235 0.638 0.06 0.084 -0.043 4.15

何かをしようと思ったが、やることが他になかったから。 -0.088 -0.183 0.16 -0.03 0.039 0.614 0.004 0.093 2.46

教育組織に関わる知人の影響があったから。 0.162 0.176 -0.033 0.032 0.021 0.612 0.14 -0.013 2.83

自分の日常生活の中で気分転換ができるから。 0.139 0.27 0.024 -0.041 -0.019 0.543 0.084 0.218 3.06

身近な人が青少年教育施設の世話を受けたから。 0.06 -0.053 0.225 -0.052 0.029 0.404 0.284 -0.055 2.39

自分が以前、参加者と同じ境遇だったから。 0.223 -0.127 -0.107 -0.021 0.026 0.139 0.674 0.007 2.37

家庭がボランティア活動をすることを大切にしてきたから。 -0.112 -0.036 0.198 0.072 0.009 0.282 0.614 -0.084 2.22

近隣の多くの人たちが、ボランティア活動をし、助け合っているから。 0.117 0.081 0.378 0.024 0.195 -0.071 0.444 -0.064 2.87

自分が必要とされているという気持ちを味わいたかったから。 0.013 -0.086 0.06 -0.02 -0.01 0.052 -0.034 0.94 3.20

自己実現のために役に立つと思ったから。 -0.052 0.193 -0.045 0.381 0.076 -0.021 -0.003 0.477 3.79

累積寄与率 0.076 0.147 0.214 0.281 0.347 0.405 0.461 0.511

Alpha .93 .76 .97 .88 .97 .92 .94 .97

項目因子

平均点

45Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

「社会適応」動機では、高校生、短期大学生が大学生より有意に強く、高校生と短期大学生

の間には統計的な差異は認められなかった(高校生−大学生:t=3.91, p<.05、短期大学生−大

学生:t=2.26, p<.05)。

「余暇活動の一環」動機では、高校生が短期大学生、大学生より有意に強く(高校生−短期大

学生:t=5.49, p<.05、高校生−大学生:t=3.84, p<.05)、大学生が短期大学生より有意に強か

った(大学生−短期大学生:t=-2.48,p<.05)。

「身近な環境の影響」動機については、高校生が大学生より有意に高く(高校生−大学生:

t=3.78, p<.05)、高校生と短期大学生、短期大学生と大学生の間では、統計的な差異は見られ

なかった。

(3)活動への参加経験による比較

活動への参加経験の有無による差異について検討するため、t 検定を行った。初参加の群が

より「社会適応」、「自己成長」、「自己充足」動機が強いという差異が統計的に見られた(社会

適応:t=-4.77,p<.05、自己成長:t=-2.61,p<.05、自己充足:t=2.27,p<.05)。その他の動機

因子についての差異は見られなかった。

表5 所属による参加動機因子得点の比較(多重比較検定)

項目 高校生ー短期大学生 短期大学生-大学生 高校生-大学生社会貢献 >* <* >*

交流 >* <* n.s.社会適応 n.s. >* >*自己成長 n.s. n.s. n.s.

青少年教育や体験活動への関心 n.s. n.s. n.s.余暇活動の一環 >* <* >*

身近な環境の影響 n.s. n.s. >*自己充足 n.s. n.s. n.s.

*:p<.05

表3 性別による参加動機因子得点の比較

M SD M SD t値 p値社会貢献 3.23 1.07 3.17 1.16 0.59 n.s.

交流 3.71 1.15 3.95 1.13 -1.31 n.s.社会適応 2.67 1.23 3.23 1.27 -3.36 *自己成長 4.22 0.70 4.09 1.07 1.36 n.s.

青少年教育や体験活動への関心 4.03 1.06 3.91 1.10 0.83 n.s.余暇活動の一環 2.79 1.20 2.65 1.19 1.00 n.s.

身近な環境の影響 2.24 1.04 2.56 1.19 -2.23 *自己充足 3.54 1.09 3.48 1.09 0.33 n.s.

*:p<.05

項目男 女 T-test

表4 所属による参加動機因子得点の比較

M SD M SD M SD f値 p値社会貢献 3.53 1.03 2.81 1.28 3.24 1.05 17.77 *

交流 4.11 0.95 3.52 1.31 4.02 1.07 4.13 *社会適応 3.52 1.20 3.26 1.43 2.86 1.17 8.39 *自己成長 4.20 1.01 3.94 1.23 4.19 0.84 2.03 n.s.

青少年教育や体験活動への関心 4.12 1.04 3.76 1.27 3.96 0.99 1.93 n.s.余暇活動の一環 3.21 1.15 2.33 1.14 2.66 1.16 15.13 *

身近な環境の影響 2.90 1.15 2.54 1.25 2.29 1.08 7.33 *自己充足 3.72 0.86 3.48 1.21 3.41 1.10 1.78 n.s.

*:p<.05

項目高校生 短期大学生 大学生 F-test

付けた。

第4因子は「自分を試せるやりがいのある活動をしたかったから」、「自分の視野を広げたかったか

ら」、「社会人になるために必要な力が身に付くと思ったから」という自己の成長に関する項目がほと

んどを占めていたため、「自己成長」因子と名付けた。

第5因子は「子どもとかかわってみたいから」、「企画活動をしてみたかったから」、「体験活動に興

味・関心があったから」という青少年機構のボランティア活動の内容に関する項目で占められている

ため、「青少年教育や体験活動への関心」因子と名付けた。

第6因子は「何かをしようと思ったが、やることが他になかったから」、「自分の日常生活の中で気分

転換ができるから」という無目的に映る項目が中心となり、「教育組織に関わる知人の影響」によって

活動に参加していると解釈し、「余暇活動の一環」因子と名付けた。

第7因子は「自分が以前、参加者と同じ境遇だったから」、「家庭がボランティア活動をすることを大

切にしてきたから」という生育環境に影響される項目で構成されているため、「身近な環境の影響」因

子と名付けた。

第8因子は「自分が必要とされているという気持ちを味わいたかったから」という承認欲求と解釈

できる項目と、「自己実現のために役に立つと思ったから」という項目で構成されており、ともにその

目的は自己に向いているため「自己充足」因子と名付けた。

クロンバックのα係数は第1因子=.93、第2因子=.76、第3因子=.97、第4因子=.88、

第5因子=.97、第6因子=.92、第7因子=.94、第8因子=.97 であった。

2.個人的属性による比較

因子分析によって抽出された各参加動機因子に含まれる質問項目の平均得点を使って、

個人的属性による参加動機構造の差異を t 検定、F 検定(一元配置分散分析)、多重比較検

定によって分析した。この分析に独立変数として用いた項目は、性別、活動経験、所属で

ある。

(1)性差による比較

男女による差異について検討するため、t 検定を行った。女性がより「社会適応」動機と「身

近な環境の影響」動機が強いという差異が統計的に見られた(社会適応:t=-3.66,p<.05、身近

な環境の影響:t=-2.33,p<.05)。その他の動機因子についての差異は見られなかった。

(2)所属による比較

所属による差異については、高校生、短期大学生、大学生に分けて F 検定(一要因分散

分析)を行った。検定の結果、「社会貢献」、「交流」、「社会適応」、「余暇活動の一環」、「身

近な環境の影響」動機において、統計的に有意な差異が見られた。

差異が見られた5つの参加動機因子についてさらに詳しく検討するため、多重比較検定

を行った。

多重比較検定の結果、「社会貢献」動機については、高校生が短期大学生及び大学生より

有意に強く(高校生−短期大学生:t=5.95, p<.05、高校生−大学生:t=2.99, p<.05)、大学

生は短期大学生より有意に強かった(t=-4.11, p<.05)。

「交流」動機については、高校生、大学生が短期大学生よりも有意に強く、高校生と大

学生の間には統計的な差異は認められなかった(高校生−短期大学生:t=2.7, p<.05、大学

生−短期大学生:t=-2.54, p<.05)。

46 Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

「社会適応」動機では、高校生、短期大学生が大学生より有意に強く、高校生と短期大学生

の間には統計的な差異は認められなかった(高校生−大学生:t=3.91, p<.05、短期大学生−大

学生:t=2.26, p<.05)。

「余暇活動の一環」動機では、高校生が短期大学生、大学生より有意に強く(高校生−短期大

学生:t=5.49, p<.05、高校生−大学生:t=3.84, p<.05)、大学生が短期大学生より有意に強か

った(大学生−短期大学生:t=-2.48,p<.05)。

「身近な環境の影響」動機については、高校生が大学生より有意に高く(高校生−大学生:

t=3.78, p<.05)、高校生と短期大学生、短期大学生と大学生の間では、統計的な差異は見られ

なかった。

(3)活動への参加経験による比較

活動への参加経験の有無による差異について検討するため、t 検定を行った。初参加の群が

より「社会適応」、「自己成長」、「自己充足」動機が強いという差異が統計的に見られた(社会

適応:t=-4.77,p<.05、自己成長:t=-2.61,p<.05、自己充足:t=2.27,p<.05)。その他の動機

因子についての差異は見られなかった。

表5 所属による参加動機因子得点の比較(多重比較検定)

項目 高校生ー短期大学生 短期大学生-大学生 高校生-大学生社会貢献 >* <* >*

交流 >* <* n.s.社会適応 n.s. >* >*自己成長 n.s. n.s. n.s.

青少年教育や体験活動への関心 n.s. n.s. n.s.余暇活動の一環 >* <* >*

身近な環境の影響 n.s. n.s. >*自己充足 n.s. n.s. n.s.

*:p<.05

表3 性別による参加動機因子得点の比較

M SD M SD t値 p値社会貢献 3.23 1.07 3.17 1.16 0.59 n.s.

交流 3.71 1.15 3.95 1.13 -1.31 n.s.社会適応 2.67 1.23 3.23 1.27 -3.36 *自己成長 4.22 0.70 4.09 1.07 1.36 n.s.

青少年教育や体験活動への関心 4.03 1.06 3.91 1.10 0.83 n.s.余暇活動の一環 2.79 1.20 2.65 1.19 1.00 n.s.

身近な環境の影響 2.24 1.04 2.56 1.19 -2.23 *自己充足 3.54 1.09 3.48 1.09 0.33 n.s.

*:p<.05

項目男 女 T-test

表4 所属による参加動機因子得点の比較

M SD M SD M SD f値 p値社会貢献 3.53 1.03 2.81 1.28 3.24 1.05 17.77 *

交流 4.11 0.95 3.52 1.31 4.02 1.07 4.13 *社会適応 3.52 1.20 3.26 1.43 2.86 1.17 8.39 *自己成長 4.20 1.01 3.94 1.23 4.19 0.84 2.03 n.s.

青少年教育や体験活動への関心 4.12 1.04 3.76 1.27 3.96 0.99 1.93 n.s.余暇活動の一環 3.21 1.15 2.33 1.14 2.66 1.16 15.13 *

身近な環境の影響 2.90 1.15 2.54 1.25 2.29 1.08 7.33 *自己充足 3.72 0.86 3.48 1.21 3.41 1.10 1.78 n.s.

*:p<.05

項目高校生 短期大学生 大学生 F-test

47Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

表していると考えられる。

短期大学生が「社会適応」動機が強い点に関しては、学生生活が2年間であり、1年時

の後半からは就職活動が始まるなど、就職や社会に出ることを強く意識している結果であ

ると考えられる。この結果に関しては、谷田(2001)とも一致する。

大学生が「交流」動機が強い点に関しては、青少年機構のボランティア制度によるもの

であると推測できる。青少年機構は全国 28 施設で共通のカリキュラムを用いてボランテ

ィアの育成を行っており、年に数回程度全施設のボランティアの代表が集まり研修を実施

している。そのため、施設の枠組みを越えたボランティア同士の交流が図られている。ま

た、各施設でも複数の高等学校や大学が施設にボランティアを送り出しており、すべての

教育事業で異なる所属のメンバーで教育事業の運営が行われている。このような青少年機

構のボランティア制度の仕組みが、大学生が「交流」動機が強い背景にあると考えられる。

活動への参加経験による比較において、初参加のほうが「自己成長」、「自己充足」動機

といった利己的動機が強い点に関しては、桜井(2002)とは一致していた。しかし、大橋

(2003)は阪神・淡路大震災の際にボランティア活動に従事した大学生を対象に調査を行

い、ボランティア活動に参加した第一の理由として利他的動機を挙げる者が多かったと報

告している 14)。また、谷田(2001)も、ボランティアの開始時の動機と継続の動機を同じ

項目で調査し、因子分析した結果、開始の動機では「利他心」動機が第2因子に、継続の

動機では第4因子に抽出され、「利他心」動機が継続においては相対的に弱い動機であると

報告するなど、本研究や桜井(2002)とは相反した結果となる。

伊藤(2011)は、Oda(1991)の最初に他者志向的であった動機が活動を継続する中で自

己志向的に変化するといった報告 15)や、倉掛・大谷(2004)の「<自分のため>ボランテ

ィア観」に転換するかどうかがボランティア活動を継続する要因となっているという報告

16)を受け、ボランティアの参加動機は開始時と継続時に変化する可能性は示唆されている

が、その過程についての研究結果は一貫していないとしている。

国立青少年教育施設で初めてボランティア活動に参加する者は、全員が自発的に活動に

参加しているのではなく、大学の必修科目の一環として活動を行っている者も存在する。

そのため、本研究の結果は「子供たちのために」といった利他的動機ではなく、「どうせや

るなら自分のためになるようにしよう」といった利己的動機を強く有したものが多いこと

によるものではないかと推察される。よって、活動を重ねる中で参加動機が変化していっ

た可能性よりも、初参加の者がより強く利己的な動機を有していた結果であると考える。

さらに、初参加のほうが「社会適応」動機が強い点に関しては、先ほど述べたとおり、

授業の影響が強いと考えられる。国立青少年教育施設で初めてボランティア活動を行う者

は、他の分野よりも外発的な動機付けが強く、他律的な側面を有していると考えられる。

Ⅴ.結論

本研究は、国立青少年教育施設で活動する高校生・短期大学生・大学生ボランティアの活

動への参加動機について、参加動機構造に焦点を当てて調査、分析を行ったものである。

第一には、参加動機構造がどのような次元によって構成されているかを検討するため、

参加動機項目を因子分析した。第二には、得られた参加動機構造モデルの妥当性を検討す

るために、個人的属性による参加動機構造の差異について t 検定や F 検定(一元配置分散

Ⅳ.考察

国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機

構造は、8因子から構成されていた。

因子数については、Cnaan&Goldberg-Gken(1991)の作成した尺度をもとに作成した質

問紙で調査を行った谷田(2001)や桜井(2002)がそれぞれ6因子、7因子の参加動機構

造を示しており、大きな差異はない。さらに、8因子解を確認したことで、先行研究の示

すとおり、複数動機アプローチについても支持する結果となった。また、クロンバックの

α係数についても、第2因子の値がやや小さいものの、全体的に内的整合性は高い。累積

寄与率は.511 であり、全分散の5割を説明している。以上のことから、本研究で示された

参加動機構造の信頼性は高いと考えられる。

因子の内容については、概ね桜井(2002)や伊藤(2011)で示されている 10 の分類の中

で説明できるものであった。しかし、「余暇活動の一環」動機に関しては、先行研究の類型

の中で説明をするのに適したものがなかった。国立青少年教育施設でのボランティア活動

は、自然体験活動の指導補助や、子供たちの生活指導といった内容を行うことが多い。参

加する者にとっても非日常の体験となっており、レクリエーションという側面も有してい

る。

個人的属性による比較では、性別、所属、活動への参加経験によって、参加動機の傾向

には差異があった。

性別による比較において、女性が「社会適応」動機が強いという結果に関しては、桜井

(2002)や谷田(2001)と同様の結果となっている。また、「身近な環境の影響」動機に関

しても、因子を構成する項目は、家庭の価値観や身近にいる人々の行動に影響を受け、同

化していくようなものによって占められているため、「社会適応」動機と類似した因子であ

ると言える。よって、性差による差異に関しては、信頼性の高い結果であると考える。

所属による比較において、高校生が「社会貢献」「余暇活動の一環」動機が強いという結

果については、部活動等で休日も予定が埋まってしまっているような者ではなく、比較的

時間に余裕がある者が活動を行っているという前提が考えられる。そのため、休日の予定

を埋めるような感覚が、「余暇活動の一環」動機が強い点から推察される。しかしながら、

その余暇を家で過ごしたり、友達と遊ぶことに費やしたりするのではなく、青少年教育施

設でボランティア活動を行うという選択をしていることが、「社会貢献」動機が強くことが

表6 活動への参加経験による参加動機因子得点の比較

M SD M SD t値 p値社会貢献 3.21 1.14 3.23 1.14 -0.24 n.s.

交流 3.85 1.16 3.91 1.14 -0.35 n.s.社会適応 3.64 1.12 2.93 1.28 4.77 *自己成長 4.30 0.69 4.06 1.08 2.61 *

青少年教育や体験活動への関心 3.78 1.06 3.99 1.10 -1.53 n.s.余暇活動の一環 2.82 1.21 2.64 1.19 1.40 n.s.

身近な環境の影響 2.64 1.10 2.44 1.19 1.44 n.s.自己充足 3.78 1.04 3.40 1.09 2.27 *

*:p<.05

項目継続 T-test初参加

48 Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

表していると考えられる。

短期大学生が「社会適応」動機が強い点に関しては、学生生活が2年間であり、1年時

の後半からは就職活動が始まるなど、就職や社会に出ることを強く意識している結果であ

ると考えられる。この結果に関しては、谷田(2001)とも一致する。

大学生が「交流」動機が強い点に関しては、青少年機構のボランティア制度によるもの

であると推測できる。青少年機構は全国 28 施設で共通のカリキュラムを用いてボランテ

ィアの育成を行っており、年に数回程度全施設のボランティアの代表が集まり研修を実施

している。そのため、施設の枠組みを越えたボランティア同士の交流が図られている。ま

た、各施設でも複数の高等学校や大学が施設にボランティアを送り出しており、すべての

教育事業で異なる所属のメンバーで教育事業の運営が行われている。このような青少年機

構のボランティア制度の仕組みが、大学生が「交流」動機が強い背景にあると考えられる。

活動への参加経験による比較において、初参加のほうが「自己成長」、「自己充足」動機

といった利己的動機が強い点に関しては、桜井(2002)とは一致していた。しかし、大橋

(2003)は阪神・淡路大震災の際にボランティア活動に従事した大学生を対象に調査を行

い、ボランティア活動に参加した第一の理由として利他的動機を挙げる者が多かったと報

告している 14)。また、谷田(2001)も、ボランティアの開始時の動機と継続の動機を同じ

項目で調査し、因子分析した結果、開始の動機では「利他心」動機が第2因子に、継続の

動機では第4因子に抽出され、「利他心」動機が継続においては相対的に弱い動機であると

報告するなど、本研究や桜井(2002)とは相反した結果となる。

伊藤(2011)は、Oda(1991)の最初に他者志向的であった動機が活動を継続する中で自

己志向的に変化するといった報告 15)や、倉掛・大谷(2004)の「<自分のため>ボランテ

ィア観」に転換するかどうかがボランティア活動を継続する要因となっているという報告

16)を受け、ボランティアの参加動機は開始時と継続時に変化する可能性は示唆されている

が、その過程についての研究結果は一貫していないとしている。

国立青少年教育施設で初めてボランティア活動に参加する者は、全員が自発的に活動に

参加しているのではなく、大学の必修科目の一環として活動を行っている者も存在する。

そのため、本研究の結果は「子供たちのために」といった利他的動機ではなく、「どうせや

るなら自分のためになるようにしよう」といった利己的動機を強く有したものが多いこと

によるものではないかと推察される。よって、活動を重ねる中で参加動機が変化していっ

た可能性よりも、初参加の者がより強く利己的な動機を有していた結果であると考える。

さらに、初参加のほうが「社会適応」動機が強い点に関しては、先ほど述べたとおり、

授業の影響が強いと考えられる。国立青少年教育施設で初めてボランティア活動を行う者

は、他の分野よりも外発的な動機付けが強く、他律的な側面を有していると考えられる。

Ⅴ.結論

本研究は、国立青少年教育施設で活動する高校生・短期大学生・大学生ボランティアの活

動への参加動機について、参加動機構造に焦点を当てて調査、分析を行ったものである。

第一には、参加動機構造がどのような次元によって構成されているかを検討するため、

参加動機項目を因子分析した。第二には、得られた参加動機構造モデルの妥当性を検討す

るために、個人的属性による参加動機構造の差異について t 検定や F 検定(一元配置分散

49Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

2)「第2期教育振興基本計画」文部科学省、http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/de

tail/__icsFiles/afieldfile/2013/06/14/1336379_02_1.pdf、2019 年7月2日参照

3)文部科学省「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」、2013

4)「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」文部科学省、http://ww

w.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19920803001/t19920803001.html、2019年7月2日

参照

5)平成 18 年4月に国立オリンピック記念青少年総合センター、国立青年の家、国立青少

年自然の家の青少年教育3法人が統合して発足した独立行政法人。青少年教育のナシ

ョナルセンターとして、青少年に対し教育的な観点から体験活動等の機会や場を提供す

るとともに、青少年教育指導者の養成及び資質向上、青少年教育に関する調査及び研究、

青少年教育団体が行う活動に対する助成などを行い、我が国の青少年教育の振興及び青

少年の健全育成を図ることを目指している。

6)「独立行政法人国立青少年教育振興機構が達成すべき業務運営に関する目標(中期目

標)」 文部科学省、http://www.niye.go.jp/files/items/129/File/290321chuukimok

uhyou. pdf、2019 年7月2日参照

7)「独立行政法人国立青少年教育振興機構の中期計画」文部科学省、http://www.niye.g

o.jp/files/items/129/File/290329chuukikeikaku.pdf、2019 年7月2日参照

8)杉本守「国立青少年教育施設における大学生ボランティアの活動への参加動機について

-平成 29 年度ボランティア自主研修の参加者調査結果から-」『青少年教育研究センタ

ー紀要』第7号、2019、pp.72-81.

9)中野友博・飯田稔「国立少年自然の家における大学生ボランティアに関する研究」、『筑

波大学運動学研究』第7号、1991、pp.69-75.

10)桜井政成「複数動機アプローチによるボランティア参加動機構造の分析-京都市域のボ

ランティアを対象とした調査より-」『ノンプロフィット・レビュー』第2号(2)、2002、

pp.111-122.

11)伊藤忠弘「ボランティア活動の動機の検討」『学習院大学研究年報』第 58 号、2011、

pp.35-55.

12)谷田勇人「福祉ボランティア活動をする大学生の動機の分析」『社会福祉学』第 41 号

(2)、2001、pp.83-93.

13)Cnaan,R.A.&Goldberg-Glen,R.S.“Measuring motivation to volunteer in human

services”Journal of Applied Behavioral Science 27th、1991、pp.269-284.

14)大橋健一・北風公基・佐々木正道・宗正誼・宮崎和夫 「阪神・淡路大震災における大

学生のボランティア活動に関する意識と実態」佐々木正道[編]『大学生とボランティ

アに関する証的研究』、ミネルヴァ書房、2003

15)Oda,N“Motives of volunteer works:Self-and other-oriented motives”Tohoku

Psycologia Folia 50th、1991、pp.55-61.

16)倉掛比呂美・大谷直史「大学生にとってのボランティア活動の意味」『鳥取大学教育地

域科学部紀要教育・人文科学』第5号 2004、pp.209−227.

分析)、多重比較検定を用いて分析した。

上記の分析で得られた結果をもとに、その参加動機構造モデルの妥当性や国立青少年教

育施設でボランティア活動を行う者の参加動機の実態について考察した。

本研究では以下の結論が得られた。

1) 8種類のボランティア参加動機因子を抽出した。それぞれ、「社会貢献」因子、「交

流」因子、「社会適応」因子、「自己成長」因子、「青少年教育や体験活動への関心」

因子、「余暇活動の一環」因子、「身近な環境の影響」因子、「自己充足」因子と名付

けた。特に、「余暇活動の一環」因子は先行研究の類型で説明できるものがなく、国

立青少年教育施設で活動するボランティアの参加動機の特徴であることが明らかに

なった。

2) ボランティアの個人的属性によって、参加動機の傾向には差異があることが明ら

かになった。特に、性差による差異は先行研究と同様の傾向を示し、所属による差

異については、時間的制約が多いとされる短期大学生が高校生や大学生と比較し「社

会適応」動機が強いことが明らかになった。

3) 国立青少年教育施設でボランティア活動を行う者は、女性のほうが「社会適応」、

「身近な環境の影響」動機が強い。また、高校生は「社会貢献」、「余暇活動の一環」

動機が強く、短期大学生は「社会適応」動機、大学生は「交流」動機が強い。さら

に、初参加の者のほうが「社会適応」、「自己成長」、「自己充足」動機が強いことが

明らかになった。

Ⅵ.本研究の課題

本研究では、国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学

生の参加動機の実態が明らかとなった。しかし、初参加の者と活動を継続している者を比

較した際に、ボランティア活動を継続して行っている者の参加動機に関する詳細は明らか

となっていない。

先述のとおり、青少年機構のボランティアは大学の授業の一環で活動を始める者が多く、

その参加動機は他律的な側面があると考えられる。活動経験のあるボランティアは初参加

のボランティアよりも「社会適応」動機が有意に低く、「社会貢献」、「交流」、「青少年教育

や体験活動への関心」動機が高い傾向にある。

国立青少年教育施設で活動するボランティアの活動への参加動機については、活動を継

続する中で動機が変容していくのか、本研究でも第一因子、第二因子となった「社会貢献」、

「交流」動機が継続の要因になっていくのかなど、さらなる検討が必要である。

付記

本研究の一部は、筆者が「日本野外教育学会第 22 回大会」で報告したものである。

引用文献・参考文献・注

1)「第3期教育振興基本計画」文部科学省、http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/de

tail/__icsFiles/afieldfile/2018/06/18/1406127_002.pdf、2019 年7月2日参照

50 Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

2)「第2期教育振興基本計画」文部科学省、http://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/de

tail/__icsFiles/afieldfile/2013/06/14/1336379_02_1.pdf、2019 年7月2日参照

3)文部科学省「今後の青少年の体験活動の推進について(答申)」、2013

4)「今後の社会の動向に対応した生涯学習の振興方策について」文部科学省、http://ww

w.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t19920803001/t19920803001.html、2019年7月2日

参照

5)平成 18 年4月に国立オリンピック記念青少年総合センター、国立青年の家、国立青少

年自然の家の青少年教育3法人が統合して発足した独立行政法人。青少年教育のナシ

ョナルセンターとして、青少年に対し教育的な観点から体験活動等の機会や場を提供す

るとともに、青少年教育指導者の養成及び資質向上、青少年教育に関する調査及び研究、

青少年教育団体が行う活動に対する助成などを行い、我が国の青少年教育の振興及び青

少年の健全育成を図ることを目指している。

6)「独立行政法人国立青少年教育振興機構が達成すべき業務運営に関する目標(中期目

標)」 文部科学省、http://www.niye.go.jp/files/items/129/File/290321chuukimok

uhyou. pdf、2019 年7月2日参照

7)「独立行政法人国立青少年教育振興機構の中期計画」文部科学省、http://www.niye.g

o.jp/files/items/129/File/290329chuukikeikaku.pdf、2019 年7月2日参照

8)杉本守「国立青少年教育施設における大学生ボランティアの活動への参加動機について

-平成 29 年度ボランティア自主研修の参加者調査結果から-」『青少年教育研究センタ

ー紀要』第7号、2019、pp.72-81.

9)中野友博・飯田稔「国立少年自然の家における大学生ボランティアに関する研究」、『筑

波大学運動学研究』第7号、1991、pp.69-75.

10)桜井政成「複数動機アプローチによるボランティア参加動機構造の分析-京都市域のボ

ランティアを対象とした調査より-」『ノンプロフィット・レビュー』第2号(2)、2002、

pp.111-122.

11)伊藤忠弘「ボランティア活動の動機の検討」『学習院大学研究年報』第 58 号、2011、

pp.35-55.

12)谷田勇人「福祉ボランティア活動をする大学生の動機の分析」『社会福祉学』第 41 号

(2)、2001、pp.83-93.

13)Cnaan,R.A.&Goldberg-Glen,R.S.“Measuring motivation to volunteer in human

services”Journal of Applied Behavioral Science 27th、1991、pp.269-284.

14)大橋健一・北風公基・佐々木正道・宗正誼・宮崎和夫 「阪神・淡路大震災における大

学生のボランティア活動に関する意識と実態」佐々木正道[編]『大学生とボランティ

アに関する証的研究』、ミネルヴァ書房、2003

15)Oda,N“Motives of volunteer works:Self-and other-oriented motives”Tohoku

Psycologia Folia 50th、1991、pp.55-61.

16)倉掛比呂美・大谷直史「大学生にとってのボランティア活動の意味」『鳥取大学教育地

域科学部紀要教育・人文科学』第5号 2004、pp.209−227.

51Ⅱ 投稿原稿/国立青少年教育施設でボランティア活動を行う高校生・短期大学生・大学生の参加動機に関する研究

入を促進しており、実践報告も蓄積されてきた7)。こうした活動は、学校内にとどまらず、

国立青少年教育振興機構は、全国の国立青少年教育施設における自然体験活動等の機会の

提供や8)9)、「体験の風をおこそう」運動の普及などに取り組んでいる 10)。

2.先行研究の検討

学校が主体となる自然体験活動は、主に小学5年生を対象に長期宿泊体験活動が実施さ

れるなど、学年ごとに行われることが多い 11)。幼稚園等の保育施設においても園のカリキ

ュラムに取り込んで園庭での遊びの充実や地域の森や水辺での遊びが展開される 12)。この

ような体験を通して、子どもたちには自然の尊さや不思議さに気付くことや自然を大切に

する気持ちが育まれる 13)。学校外、例えば青少年教育関係施設が行う事業に関しては、平

成 28 年度の調査では、実施した事業のうち 78.5%が自然体験活動であり、最も多く実施

されている。対象者に関しては、93.5%が小中学生を対象としたものであり、就学前の子

どもを対象とした活動が 49.2%、保護者を対象としたものが 37.9%であることからも分

かるように、小中学生を対象としたものが大半を占めることは明らかである 14)。平成 22

年度の調査と比較すると、就学前の子どもや保護者を対象とした活動が増加しているが 15)、

保護者のみを対象とした活動が実施されているというよりも、親子で参加するスタイルが

とられていると推測できる。よって、就学前の子どものみを対象とした活動は比較的少な

いと指摘できる。実際、近年の地域での自然体験活動に関する報告では、子どもと保護者

の両方を対象とした、親子で参加するものが散見される 16)17)18)。こうした事業では、対

象が幼児から小学生と幅広い異年齢の構成もみられるが、親子参加型であったり 19)、低学

年までは保護者同伴が求められる 20)ように、参加した子どもが畑で収穫した野菜を食べ

て感動したり、草花を集めてそれぞれが作品を作ったりするなど、自然に対する気づきや

発見をすることが求められ、参加者である子ども同士のかかわりあいは検討されていない。

文部科学省によれば、体験活動の実施においては、学校段階間に連続して取り組むこと

や、幼少期から継続して行うことによって「社会を生き抜く力」として必要な仲間とのコ

ミュニケーション能力や主体性、協調性、創造力などが育まれると指摘され 21)、幼児と小

学校低学年の子どもを対象とした体験活動は求められるが、報告は少ない。小学校低学年

までは、動植物とかかわることや、思考力や創造力を培うために遊びが重要であると考え

られており 22)、学校段階の枠組みで捉えて体験活動を実施するだけでなく、上述の指摘の

ように幼児から児童へと移行する時期において共に活動することも必要だと言える。伊原

ら 23)は、保育施設の年長児(5歳児)・小学1年生・小学2年生を対象としたキャンプ(び

わこ・ちびっこキャンプ)への参加者と非参加者(参加者の友だち)への質問紙調査から、

キャンプへの参加が、自然への興味・関心や子どもの積極性などに効果があることを明ら

かにしている。この研究に限らず、自然体験活動を対象とした研究では、参加者個人の学

びや、自然体験活動の教育的効果を検証したものなどが蓄積されてきた 24)25)26)。これら

の活動の中では、参加者個人にとどまらず子ども同士がかかわりあうことによる学びもあ

ると考えられるが、この点は明らかにされておらず、課題として挙げられる。

子ども同士のかかわりあいに関しては、幼稚園等の保育施設を対象とした研究は蓄積さ

れてきた。たとえば、幼稚園に入園直後の子ども間における言葉かけや物を渡すなどの働

きかけと、働きかけられた子どもがどのように対応するかが検討された 27)。また、幼稚園

【論文】

自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

―「森の探検隊」活動に着目して―

Interaction with 5-year-old children and 2nd grade of elementary school

children on nature experiences

: Focusing on activity of “Forest Expedition”

淀澤 真帆 YODOZAWA Maho

広島大学大学院

福島 真吾 FUKUSHIMA Shingo

スポーツメディア株式会社

江田 理英 EDA Rie

スポーツメディア株式会社

中坪 史典 NAKATSUBO Fuminori

広島大学

要旨

幼少期の自然体験の減少を背景に、自然体験活動が盛んになり研究も蓄積されてきた。

本研究では、5歳児と小学2年生を対象とした自然体験活動を行っている「森の探検隊」

活動に焦点を当て、幼児期と児童期の子どもを対象とした自然体験活動において子どもた

ちがどのようにかかわりあうようになるのか、その一端を明らかにした。この活動は、企

業のCSR活動の一環であり、2歳差の特徴をもつ子どもたちが年3回に渡って活動する。

事例を収集し分析した結果、初対面で一方向的だったかかわりが、自然物などへの気づき

を共有しあう中でかかわりあい、認めあうようになっていったと明らかになった。本研究

により、幼児期と児童期にまたぐ参加者による自然を介したかかわりあいから、5歳児と

小学2年生それぞれにとっての学びも示唆された。

キーワード

自然体験活動、幼児、小学生、かかわりあい

Ⅰ.問題と目的

1.問題背景

近年、幼少期の自然体験の減少を背景として、学校や社会教育団体による自然体験活動

の機会の拡充や、その教育的効果に関する研究が盛んになっている1)2)3)4)。自然体験

活動とは、「体験を通じて何らかの学習が行われることを目的として、体験する者に対して

意図的・計画的に提供される体験」を意味する「体験活動」の中でも自然に関するもので

ある5)。具体的にはキャンプやハイキング、星空観察や動植物の観察など、自然とかかわ

る活動である6)。文部科学省では、小学校での自然体験活動を含む長期宿泊体験活動の導

52 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

入を促進しており、実践報告も蓄積されてきた7)。こうした活動は、学校内にとどまらず、

国立青少年教育振興機構は、全国の国立青少年教育施設における自然体験活動等の機会の

提供や8)9)、「体験の風をおこそう」運動の普及などに取り組んでいる 10)。

2.先行研究の検討

学校が主体となる自然体験活動は、主に小学5年生を対象に長期宿泊体験活動が実施さ

れるなど、学年ごとに行われることが多い 11)。幼稚園等の保育施設においても園のカリキ

ュラムに取り込んで園庭での遊びの充実や地域の森や水辺での遊びが展開される 12)。この

ような体験を通して、子どもたちには自然の尊さや不思議さに気付くことや自然を大切に

する気持ちが育まれる 13)。学校外、例えば青少年教育関係施設が行う事業に関しては、平

成 28 年度の調査では、実施した事業のうち 78.5%が自然体験活動であり、最も多く実施

されている。対象者に関しては、93.5%が小中学生を対象としたものであり、就学前の子

どもを対象とした活動が 49.2%、保護者を対象としたものが 37.9%であることからも分

かるように、小中学生を対象としたものが大半を占めることは明らかである 14)。平成 22

年度の調査と比較すると、就学前の子どもや保護者を対象とした活動が増加しているが 15)、

保護者のみを対象とした活動が実施されているというよりも、親子で参加するスタイルが

とられていると推測できる。よって、就学前の子どものみを対象とした活動は比較的少な

いと指摘できる。実際、近年の地域での自然体験活動に関する報告では、子どもと保護者

の両方を対象とした、親子で参加するものが散見される 16)17)18)。こうした事業では、対

象が幼児から小学生と幅広い異年齢の構成もみられるが、親子参加型であったり 19)、低学

年までは保護者同伴が求められる 20)ように、参加した子どもが畑で収穫した野菜を食べ

て感動したり、草花を集めてそれぞれが作品を作ったりするなど、自然に対する気づきや

発見をすることが求められ、参加者である子ども同士のかかわりあいは検討されていない。

文部科学省によれば、体験活動の実施においては、学校段階間に連続して取り組むこと

や、幼少期から継続して行うことによって「社会を生き抜く力」として必要な仲間とのコ

ミュニケーション能力や主体性、協調性、創造力などが育まれると指摘され 21)、幼児と小

学校低学年の子どもを対象とした体験活動は求められるが、報告は少ない。小学校低学年

までは、動植物とかかわることや、思考力や創造力を培うために遊びが重要であると考え

られており 22)、学校段階の枠組みで捉えて体験活動を実施するだけでなく、上述の指摘の

ように幼児から児童へと移行する時期において共に活動することも必要だと言える。伊原

ら 23)は、保育施設の年長児(5歳児)・小学1年生・小学2年生を対象としたキャンプ(び

わこ・ちびっこキャンプ)への参加者と非参加者(参加者の友だち)への質問紙調査から、

キャンプへの参加が、自然への興味・関心や子どもの積極性などに効果があることを明ら

かにしている。この研究に限らず、自然体験活動を対象とした研究では、参加者個人の学

びや、自然体験活動の教育的効果を検証したものなどが蓄積されてきた 24)25)26)。これら

の活動の中では、参加者個人にとどまらず子ども同士がかかわりあうことによる学びもあ

ると考えられるが、この点は明らかにされておらず、課題として挙げられる。

子ども同士のかかわりあいに関しては、幼稚園等の保育施設を対象とした研究は蓄積さ

れてきた。たとえば、幼稚園に入園直後の子ども間における言葉かけや物を渡すなどの働

きかけと、働きかけられた子どもがどのように対応するかが検討された 27)。また、幼稚園

53Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

2.データ収集手続き

データ収集は、201X 年度と 201X+1 年度の活動を対象に行った。夏、秋、冬の年3回の

活動はいずれも日曜日に実施された。スタッフは、活動スタッフとカメラ係がいるが、活

動スタッフは主にグループに付き添い、カメラ係は事業の記録のためにグループに所属せ

ず撮影した。

データ収集の方法は、各グループに付き添ったスタッフによる参加者についての記録、

デジタルカメラ、ビデオカメラで行った。ビデオカメラの映像は 201X 年には 332 分、201X

+1 年には計 222 分収集された。

3.データ分析手続き

データ分析手続きは次の手順で行った。第一に、各グループについたスタッフによる参

加者に関する記録や写真から、参加者らによる他者への発話とそれに対応する発話や行動

がみられる場面を抽出し、テクスト化して事例を作成した。第二に、カメラ係によって撮

影された映像データから、作成した事例を捉えているものがある場合、事例に詳細を加筆

した。第三に、各グループ内において特に学年差のある参加者らの事例を抽出し、考察し

た。なお、参加者である子どもの保護者に対し、研究協力に関する承諾を紙面にて得てい

る。加えて、事例中の子どもの名前は全て仮名である。

その結果、子どもたちのかかわりあいについて、201X 年度の活動からは 16 事例、201X

+1 年度の活動からは 11 事例が収集された。1事例は、子どもたちによる発話の開始から

話題の終了や転換、または場所の移動など場面が転換するまでのまとまりである。

Ⅲ.結果と考察

1.5歳児と小2生はどのようにかかわりあうようになったか

事例を検討した結果、子どもたちの一方向的なかかわりから、双方向的なかかわりあい

へと変容する過程が見られた。かかわりの変容を構造化すると、子どもたちが3つのステ

ージに渡っていると明らかになった(図1)。次のステージへの移行については、子どもた

ちのかかわりの変容にもとづいている。お互いのかかわりがすれ違っている段階をステー

ジⅠ(図中①②)、5歳児の何かへの発見をきっかけにお互いのかかわりがかみ合い始め、

かかわりあうようになっていった段階をステージⅡ(図中③④⑤⑥)、かかわりあいながら

5歳児と小2生がお互いのしていることに興味を持ちあうステージⅢ(図中⑦)、というよ

うに、一方通行的なかかわりからかかわりあっていくまでの行動が変容するタイミングで

ステージの移行を判断した。

3回の活動を通して認めあう段階になる場合もあれば、2回目の活動で到達することも

あった。このステージはⅠからⅢへと進行する。図1中の①②などの番号は、かかわりの

変容において観察された行動の順番である。示した事例内の下線の番号は、図1と対応し

ている。

の自由遊び場面における子どもの仲間との相互作用のきっかけが明らかにされた 28)。こう

した検討がなされてきたが、これらは毎日共に過ごすメンバー内でのかかわりあいであり、

園外での非日常的な自然体験活動の人間関係においては異なるかかわりあいがあると推測

される。

3.研究目的

以上を踏まえ、本研究の目的は、幼児期と児童期の子どもによる構成の自然体験活動に

おいて子どもたちが実際どのようにかかわりあうようになるのかを明らかにすることとす

る。具体的には、5歳児と小学2年生向けの自然体験活動を行っている「森の探検隊」活

動を事例の対象として設定し、検討する。先行研究では、自然体験活動の子どもにとって

の重要性や意義が中心に議論されてきたが、本研究では自然体験活動に参加する普段共に

過ごす関係ではない子どもたちのかかわりあいを描き出し、子どもたちの関係も踏まえた

自然体験活動の意義について示唆が与えられると期待される。

Ⅱ.対象と方法

1.対象

(1)「森の探検隊」活動

本研究では、スポーツ施設や老人・身体障害者等の介護施設の運営を行うある中小企業

が取り組むCSR29)の 1 つである「森の探検隊」活動を対象とする。これは、保育施設(幼

稚園・保育所・認定こども園)の年長児である5歳児と、小学校2年生を対象とした自然

体験活動である。

活動の運営は、上記の企業のうち、Y県内に事業所を置くスイミングクラブが行ってい

る。活動の参加者は、スイミングクラブに通う子どもではなく、地域の保育施設や小学校

に在籍する子どもである。年3回、8月下旬、9月下旬、11 月下旬にY県内の山間部に位

置するZ町にて日帰りの自然体験活動に取り

組む。

(2)プログラム概要

参加者は保育施設に通う5歳児(年長児)

と小学校2年生(以下小2生)のバディ2

組4名で1グループを構成し、全4グルー

プ 16 名が定員である。1グループにつきス

タッフ2名が付く。大まかなスケジュール

は表1の通りである。

夏、秋、冬にわたり、季節を探すことが

テーマとなっている。夏野菜の収穫や稲刈

りなどの体験活動、季節による生き物や自然物を探す自然散策、そしてこれらの体験をも

とに集めてきた自然物と毛糸やビーズなど用意された素材を組み合わせて創作表現活動を

行う。

表1「森の探検隊」活動 1 日の流れ

時間帯 内容

9:00参加者集合・開校式2台のバスに乗り出発

10:30Z町交流館到着→各季節の活動(表2参照)

12:30Z町交流館にて昼食(地域で収穫した食材を生かした料理)

13:00 グループごとに創作表現活動開始(表2参照)14:00 創作の発表と質問タイム14:45 Z町交流館を出発16:00 バス到着/閉校式/解散

54 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

2.データ収集手続き

データ収集は、201X 年度と 201X+1 年度の活動を対象に行った。夏、秋、冬の年3回の

活動はいずれも日曜日に実施された。スタッフは、活動スタッフとカメラ係がいるが、活

動スタッフは主にグループに付き添い、カメラ係は事業の記録のためにグループに所属せ

ず撮影した。

データ収集の方法は、各グループに付き添ったスタッフによる参加者についての記録、

デジタルカメラ、ビデオカメラで行った。ビデオカメラの映像は 201X 年には 332 分、201X

+1 年には計 222 分収集された。

3.データ分析手続き

データ分析手続きは次の手順で行った。第一に、各グループについたスタッフによる参

加者に関する記録や写真から、参加者らによる他者への発話とそれに対応する発話や行動

がみられる場面を抽出し、テクスト化して事例を作成した。第二に、カメラ係によって撮

影された映像データから、作成した事例を捉えているものがある場合、事例に詳細を加筆

した。第三に、各グループ内において特に学年差のある参加者らの事例を抽出し、考察し

た。なお、参加者である子どもの保護者に対し、研究協力に関する承諾を紙面にて得てい

る。加えて、事例中の子どもの名前は全て仮名である。

その結果、子どもたちのかかわりあいについて、201X 年度の活動からは 16 事例、201X

+1 年度の活動からは 11 事例が収集された。1事例は、子どもたちによる発話の開始から

話題の終了や転換、または場所の移動など場面が転換するまでのまとまりである。

Ⅲ.結果と考察

1.5歳児と小2生はどのようにかかわりあうようになったか

事例を検討した結果、子どもたちの一方向的なかかわりから、双方向的なかかわりあい

へと変容する過程が見られた。かかわりの変容を構造化すると、子どもたちが3つのステ

ージに渡っていると明らかになった(図1)。次のステージへの移行については、子どもた

ちのかかわりの変容にもとづいている。お互いのかかわりがすれ違っている段階をステー

ジⅠ(図中①②)、5歳児の何かへの発見をきっかけにお互いのかかわりがかみ合い始め、

かかわりあうようになっていった段階をステージⅡ(図中③④⑤⑥)、かかわりあいながら

5歳児と小2生がお互いのしていることに興味を持ちあうステージⅢ(図中⑦)、というよ

うに、一方通行的なかかわりからかかわりあっていくまでの行動が変容するタイミングで

ステージの移行を判断した。

3回の活動を通して認めあう段階になる場合もあれば、2回目の活動で到達することも

あった。このステージはⅠからⅢへと進行する。図1中の①②などの番号は、かかわりの

変容において観察された行動の順番である。示した事例内の下線の番号は、図1と対応し

ている。

55Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

るスイミングスクールに通っているわけではなくほとんどが初対面である。こうした不安

を抱える環境において小2生は5歳児に「大人のように」リードしようとするが、5歳児

はそれに応えることはなく自分の発見や興味のある方へと動く様子であった。

(2)ステージⅡ:きっかけをつくる5歳児と発展させる小 2 生

ステージⅡは 201X 年度から4事例、201X+1 年度から3事例が抽出された。「秋をさが

そう」の自然散策では、5歳児が先に発見したり、疑問を投げかけたりする姿が見られた。

一度「①リードする」がうまくいかなかったものの、これがきっかけとなり、小2生は積

極的ではないが5歳児にかかわり始めた。

図1中ステージⅡには、「⑤好奇心の触発」と「⑥発展」を両方向の矢印で「連鎖」が

起きると示した。複数回やりとりが行われることや、⑤と⑥の順序が入れ替わる様子が見

られた。

事例Ⅱ-1では、小2生のユキが、5歳児のアミに見た目と触った感触は必ずしも一致し

ないことを気付かされている様子であった。それを踏まえ、ただ「チクチク」する植物を

探すだけでなく「きれいな」を加えた発見を共有し、さらに5歳児もそれに興味をもつよ

うに、発見が連鎖していく様子が描かれた。事例Ⅱ-2では、順序が逆転する場合もあった。

小2生が米を取り出すだけでなく、5歳児に米を食べさせてあげるという「⑥発展」的な

行動によって、5歳児が「ほんまに甘い!」と「⑤好奇心の触発」される様子が描かれた。

(3)ステージⅢ:積極的に認めあう5歳児と小2生

ステージⅢは、201X 年度から7事例、201X+1 年度から3事例が抽出された。5歳児と

小2生が次第に積極的にかかわりあうようになっていった。小2生が主導していくような

場面は、ステージⅠの「①リードする」に対して5歳児は「②自己主張する」と応えなか

ったが、この段階では積極的に応答するようになっていった。

【事例Ⅱ-2】201X+1 年9月 活動2回目:自然散策

5歳児のコウキは、田んぼで稲穂を観察している時に、農家のおじさんに稲穂をもら

った。コウキは③穂の中のお米を自分で取り出そうとしていたが、なかなかうまくいか

なかった。そこで④小2生バディのナナが中のお米を取りはじめた。コウキはナナが稲

穂をむしってお米を取り出すまでじっと見て待っていた。⑥ナナはお米を取り出すと、

コウキに食べさせてあげた。⑤コウキは「ナナが言った通り、ほんまに甘い!本物のご

飯の味がする!」と驚いていた。

【事例Ⅱ-1】201X 年9月 活動2回目:自然散策

1グループでは自然散策で「フワフワ」と「チクチク」を探すこととなった。5歳児

のケイタとアミは躊躇なく様々なものを触って感触を言い合う。一方小2生のユキは、

なかなか触ろうとしなかった。③5歳児のアミがフワフワしている草花を触って「チク

チクしてる」と言い始めたとき、④小2生のユキがようやく触った。

その後、⑤ユキは紫色の野アザミを見つけて「きれい」とつぶやいた。実際触ってみる

と、「フワフワしてると思ったけどチクチクもしてる」と言った。⑤それを見た5歳児の

アミはどうしてもそれが欲しくなったようで⑥自分の背丈よりも高いところある野アザ

ミをスタッフに抱えられながら採った。

図1 5歳児と小2生のかかわりあう過程

(1)ステージⅠ:リードしようとする小2生に対して自己主張する5歳児

ステージⅠは 201X年度から5事例、201X+1年度から5事例が抽出された。この段階は、

活動初回「夏をさがそう」にて多く見られた。初対面の子どもたちが関係を構築する中で

も初めはつまずく姿が明らかになった。

ステージⅠの段階では、事例Ⅰ-①②③のどれにおいても参加者同士の関係がスムーズ

にいかない様子が描かれた。提示した3つの事例において小2生はグループでの活動にお

いて5歳児をリードしようとする姿(事例Ⅰ-1・2・3中下線部①)や、スタッフによる

指示を守ろうとする姿が見られたが、5歳児は小2生にリードされればされるほど離れて

いった。

子どもたちは複数の小学校や保育施設から本事業に参加しており、また、事業を運営す

【事例Ⅰ-3】201X+1 年8月 活動1回目:自然散策

5歳児のコウキは、自然散策中に、棚田の間を走る水路にサワガニを見つけたが、①

小2生バディのナナから「逃がしてあげて」と言われた。しかし、②コウキはサワガニ

を逃がそうとしなかった。

【事例Ⅰ-1】201X 年8月 活動1回目:自然散策

活動初日の自然散策の際、①小2生のリュウが小川の水を手で触り、「冷たくてきもち

いいよ!」と声を上げると、同じグループのメンバーが次々にリュウと同じようの小川

に手を入れ始めた。リュウは5歳児のケイタに「さわってみて」と声を掛けたものの②

5歳児のケイタは触ろうとせず、その場を離れて行った。ケイタが自ら発見したものを

スタッフに伝えたりしているうちに、次第にグループ全体から遅れ、スタッフとともに

別行動になった。

ステージ 5歳児 小2生

②自己主張 ①リードする

 ③きっかけづくり ⑤好奇心の触発

  ④受動的なかかわり  ⑥発展

Ⅰ〈リードする小2生に対して自己主張する5歳児〉

Ⅱ〈きっかけを作る5歳児と発展させる小2生〉

Ⅲ〈互いに認めあう5歳児と小2生〉

⑦認めあう

連鎖

【事例Ⅰ-2】201X+1 年8月 活動1回目:Z町到着時

活動の拠点となるZ町の集落へは、電灯など明かりのないトンネルを通り抜けて到着す

る。トンネルは、自動車1台が通ることが可能な幅で、3mほどの高さである。トンネ

ル手前でバスを降り、グループ内のバディ(5歳児と小2生)で手をつないでトンネル

を歩くプログラムである。

5歳児のコウキは、トンネルを抜ける際に、初めはバディである小2生のナナと手を

つないでいた。①ナナはスタッフに言われた通りに手をつないでいたが、②5歳児のコ

ウキがトンネル内で声が響くことに興味を示し、バディの手を離して一人で歩き始めた。

56 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

るスイミングスクールに通っているわけではなくほとんどが初対面である。こうした不安

を抱える環境において小2生は5歳児に「大人のように」リードしようとするが、5歳児

はそれに応えることはなく自分の発見や興味のある方へと動く様子であった。

(2)ステージⅡ:きっかけをつくる5歳児と発展させる小 2 生

ステージⅡは 201X 年度から4事例、201X+1 年度から3事例が抽出された。「秋をさが

そう」の自然散策では、5歳児が先に発見したり、疑問を投げかけたりする姿が見られた。

一度「①リードする」がうまくいかなかったものの、これがきっかけとなり、小2生は積

極的ではないが5歳児にかかわり始めた。

図1中ステージⅡには、「⑤好奇心の触発」と「⑥発展」を両方向の矢印で「連鎖」が

起きると示した。複数回やりとりが行われることや、⑤と⑥の順序が入れ替わる様子が見

られた。

事例Ⅱ-1では、小2生のユキが、5歳児のアミに見た目と触った感触は必ずしも一致し

ないことを気付かされている様子であった。それを踏まえ、ただ「チクチク」する植物を

探すだけでなく「きれいな」を加えた発見を共有し、さらに5歳児もそれに興味をもつよ

うに、発見が連鎖していく様子が描かれた。事例Ⅱ-2では、順序が逆転する場合もあった。

小2生が米を取り出すだけでなく、5歳児に米を食べさせてあげるという「⑥発展」的な

行動によって、5歳児が「ほんまに甘い!」と「⑤好奇心の触発」される様子が描かれた。

(3)ステージⅢ:積極的に認めあう5歳児と小2生

ステージⅢは、201X 年度から7事例、201X+1 年度から3事例が抽出された。5歳児と

小2生が次第に積極的にかかわりあうようになっていった。小2生が主導していくような

場面は、ステージⅠの「①リードする」に対して5歳児は「②自己主張する」と応えなか

ったが、この段階では積極的に応答するようになっていった。

【事例Ⅱ-2】201X+1 年9月 活動2回目:自然散策

5歳児のコウキは、田んぼで稲穂を観察している時に、農家のおじさんに稲穂をもら

った。コウキは③穂の中のお米を自分で取り出そうとしていたが、なかなかうまくいか

なかった。そこで④小2生バディのナナが中のお米を取りはじめた。コウキはナナが稲

穂をむしってお米を取り出すまでじっと見て待っていた。⑥ナナはお米を取り出すと、

コウキに食べさせてあげた。⑤コウキは「ナナが言った通り、ほんまに甘い!本物のご

飯の味がする!」と驚いていた。

【事例Ⅱ-1】201X 年9月 活動2回目:自然散策

1グループでは自然散策で「フワフワ」と「チクチク」を探すこととなった。5歳児

のケイタとアミは躊躇なく様々なものを触って感触を言い合う。一方小2生のユキは、

なかなか触ろうとしなかった。③5歳児のアミがフワフワしている草花を触って「チク

チクしてる」と言い始めたとき、④小2生のユキがようやく触った。

その後、⑤ユキは紫色の野アザミを見つけて「きれい」とつぶやいた。実際触ってみる

と、「フワフワしてると思ったけどチクチクもしてる」と言った。⑤それを見た5歳児の

アミはどうしてもそれが欲しくなったようで⑥自分の背丈よりも高いところある野アザ

ミをスタッフに抱えられながら採った。

57Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

本研究では5歳児と小2生という2歳差の特徴を持つ参加者による活動を検討した。幼

小連携の文脈で、5歳児が小学1年生と交流する実践はよく見られるが、あえて「2歳差」

のプログラムであったことで、子ども同士のかかわりあいが促された。かかわりがすれ違

うステージⅠから、互いが認めあうステージⅢへと変容していったのは、かかわることが

少しだけ難しい対象であったためであると考察できる。

具体的に、小2生は1回目の活動の際には自分たちのかかわりが5歳児に対してうまく

いかないことを体験した。その後、事例Ⅱ-1③④のように自然物を実際に触ってみる5歳

児の姿をきっかけに、自らも新たな発見を得て、かかわりあいが促進された。一方、5歳

児は保育施設では年長児であるため、各施設ではお兄さん・お姉さんのような存在である。

普段の生活とは異なる「森の探検隊」活動において、初めはグループの小2生に自分の思

いと異なる方向にリードされる体験や、自分の発見に対して小2生は積極的にかかわって

くるわけではないように、お互いのかかわりがすれ違っていた。しかし、5歳児の思いや

発見をきっかけに小2生が別の何かを発見し、さらに5歳児が憧れを持って小2生とかか

わるように(事例Ⅱ-1⑤⑥)、互いの気づきを共有しやすく相乗的に認めあっていく様子

が見られた。このように、5歳児と小2生はお互いにかかわりの難しさと乗り越えやすさ

を兼ねた存在であったと考えられる。

Ⅳ.総括

本研究により、幼児期と児童期における子どもたちの自然体験活動におけるかかわりあ

いの一端が明らかになった。以下、本研究の成果及び限界を述べる。

まず成果として、先行研究で効果があると明らかにされてきた自然体験活動による「積

極性」や「コミュニケーション能力の向上」が、どのように育まれたのかという実態が明

らかになったと言える。ステージⅠでは、子どもたちはかかわりのすれ違いを体験し、次

第に発見を共有していくことでかかわりあい、認めあうようになっていった。このように、

先行研究では十分に検討されてこなかった参加者同士のかかわりあいについて知見が得ら

れたことは、本研究の成果として挙げられる。

次に、民間企業による自然体験活動の特徴が実際の事例から明らかになった点である。

今回研究対象とした「森の探検隊」活動のような学外での自然体験活動において、子ども

たちは毎日共に生活している小学校や保育施設とは違い、年齢や所属の異なるメンバーと

活動する。活動初日、子どもたちは保護者と離れて初対面の参加者らと過ごさなければな

らず不安であると予測されるが、次第にかかわりあうようになっていった。この過程にお

いて、スタッフを介して子どもたちの関係が築かれ、かかわりあうようになったと考察さ

れる。「森の探検隊」活動のスタッフの多くはスイミングスクールのインストラクターであ

る。スイミングスクールにおいても、異なる学校や保育施設から子どもたちが集まって共

に活動するため、インストラクターとして初対面同士の子どもたちを安心させ、子ども同

士がかかわりあうことを促す働きかけが求められる。こうした普段の業務での方法を活か

し、子どもたちの関係性の土台を作るための働きかけを行っていたと考えられるが、この

点については今後、スタッフによる子どもたちへのかかわりを検討する必要がある。

最後に本研究の限界を述べる。本研究で明らかにしたかかわりあいは、植物や生き物な

どを媒介するからこそ促される部分もあったが、ステージの枠組みで検討したことで、自

事例Ⅲ-1は、活動3回目の「冬をさがそう」である。木の実の発見、それを触って名

前を付けるまでが見られた。ステージⅡまでを踏まえ、関係性が徐々に構築されてきた5

歳児と小2生が、木の実を介してお互いの考えを認めあい、意見を交わして気づきを共有

していた。

事例Ⅲ-2では、ステージⅡから連続する事例として取り上げた。ここでは「⑥発展」が

なく、ステージⅠの②自己主張が含まれている。図1で示したかかわり方の変容のステー

ジ通りには進んでいないものの、ここでは小2生がリードしようとしているわけではなく、

「⑦認めあう」ようになっていったと考えられる。

2.5歳児と小2生のかかわりあいを支えたもの

本研究で明らかになった5歳児と小2生がかかわりあい、認めあうようになっていった

過程について2点考察する。

(1)同じ場所での季節の変化

同じ場所を3つの季節に渡って探検することによる気づきやすさがあり、かかわりが変

容して互いを認めあうことにつながったと考える。子どもたちは毎回の自然散策の際に前

にも行った水路を探したり、田んぼの変化に気づいたりしていた。暑さや寒さ、空気感や

風景の色合いなども、普段の生活圏である市街地よりもより豊かに気付きやすい環境で発

見が促されたと考えられる。

ステージⅠⅡⅢは、初回の夏の活動で認めあうようにはならずとも、2回、及び3回を

通して認めあうようになっていった。これは、同じ場所での活動による安心感や活動への

取り組みやすさ、継続して同じメンバーが参加する活動であるため、3回しか会っていな

いにもかかわらず、互いを認めあうようになったと言える。

(2)かかわりあいの難しさと易しさをもつ「2歳差」

【事例Ⅲ-1】201X 年 11 月 活動3回目:自然散策

⑦散策の途中で5歳児のタケルが見つけた木の実をグループのみんなで観察して触っ

たり、振ったりしていた。「名前をつけよう」ということになり、梅みたいな柿という

ことで、タケルが『うめがき』と命名した。その後、それぞれの実の色の違い、重さの

違い、固さの違いなど話し合い、色が赤黒っぽくなるにつれて軽く固くなることを気づ

き合っていた。

【事例Ⅲ-2】201X+1 年 11 月 活動3回目:自然散策

5歳児のコウキはまたサワガニを見つけた。③コウキはサワガニを川の中に放し、

川の中で活動するサワガニの様子を観察しはじめた。④グループのメンバーは川の中

で活動するサワガニに興味をもって観察していた。しばらくして⑤サワガニを捕まえ

ようとすると②コウキが「だめよ」と手で払いのけて、あくまで川の中のサワガニを

観察するように伝えていた。小2生ら他のメンバーは⑦5歳児のコウキの考え出した

観察手法のルール通りに観察し、しばらくの間サワガニの様子を話しあっていた。し

だいにサワガニを流れの速いところや、深さのあるところなど、いろんな場所におい

てその様子を共に観察していた。

58 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

本研究では5歳児と小2生という2歳差の特徴を持つ参加者による活動を検討した。幼

小連携の文脈で、5歳児が小学1年生と交流する実践はよく見られるが、あえて「2歳差」

のプログラムであったことで、子ども同士のかかわりあいが促された。かかわりがすれ違

うステージⅠから、互いが認めあうステージⅢへと変容していったのは、かかわることが

少しだけ難しい対象であったためであると考察できる。

具体的に、小2生は1回目の活動の際には自分たちのかかわりが5歳児に対してうまく

いかないことを体験した。その後、事例Ⅱ-1③④のように自然物を実際に触ってみる5歳

児の姿をきっかけに、自らも新たな発見を得て、かかわりあいが促進された。一方、5歳

児は保育施設では年長児であるため、各施設ではお兄さん・お姉さんのような存在である。

普段の生活とは異なる「森の探検隊」活動において、初めはグループの小2生に自分の思

いと異なる方向にリードされる体験や、自分の発見に対して小2生は積極的にかかわって

くるわけではないように、お互いのかかわりがすれ違っていた。しかし、5歳児の思いや

発見をきっかけに小2生が別の何かを発見し、さらに5歳児が憧れを持って小2生とかか

わるように(事例Ⅱ-1⑤⑥)、互いの気づきを共有しやすく相乗的に認めあっていく様子

が見られた。このように、5歳児と小2生はお互いにかかわりの難しさと乗り越えやすさ

を兼ねた存在であったと考えられる。

Ⅳ.総括

本研究により、幼児期と児童期における子どもたちの自然体験活動におけるかかわりあ

いの一端が明らかになった。以下、本研究の成果及び限界を述べる。

まず成果として、先行研究で効果があると明らかにされてきた自然体験活動による「積

極性」や「コミュニケーション能力の向上」が、どのように育まれたのかという実態が明

らかになったと言える。ステージⅠでは、子どもたちはかかわりのすれ違いを体験し、次

第に発見を共有していくことでかかわりあい、認めあうようになっていった。このように、

先行研究では十分に検討されてこなかった参加者同士のかかわりあいについて知見が得ら

れたことは、本研究の成果として挙げられる。

次に、民間企業による自然体験活動の特徴が実際の事例から明らかになった点である。

今回研究対象とした「森の探検隊」活動のような学外での自然体験活動において、子ども

たちは毎日共に生活している小学校や保育施設とは違い、年齢や所属の異なるメンバーと

活動する。活動初日、子どもたちは保護者と離れて初対面の参加者らと過ごさなければな

らず不安であると予測されるが、次第にかかわりあうようになっていった。この過程にお

いて、スタッフを介して子どもたちの関係が築かれ、かかわりあうようになったと考察さ

れる。「森の探検隊」活動のスタッフの多くはスイミングスクールのインストラクターであ

る。スイミングスクールにおいても、異なる学校や保育施設から子どもたちが集まって共

に活動するため、インストラクターとして初対面同士の子どもたちを安心させ、子ども同

士がかかわりあうことを促す働きかけが求められる。こうした普段の業務での方法を活か

し、子どもたちの関係性の土台を作るための働きかけを行っていたと考えられるが、この

点については今後、スタッフによる子どもたちへのかかわりを検討する必要がある。

最後に本研究の限界を述べる。本研究で明らかにしたかかわりあいは、植物や生き物な

どを媒介するからこそ促される部分もあったが、ステージの枠組みで検討したことで、自

59Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

市みなくち子どもの森自然館における「いきものさがしの日」の試み―」『環境教育』

第 23 巻1号、2013、pp.83-90.

18)森太郎・與倉弘子・久保加織・石川俊之・森田実・石橋克也・内藤京子・須川美弥子・

小松文郎「大学・地域・家庭が連携した子どもへの自然体験活動」『滋賀大学教育学部

附属教育実践総合センター紀要』第 25 巻、2017、pp.107-112.

19)前掲 17)

20)前掲 18)

21)前掲2)

22)前掲1)p.11.

23)伊原久美子・中野友博・飯田稔「幼児・低学年児童における継続型組織キャンプの効

果に関する研究」『野外教育研究』第 16 巻1号、2013、pp.31-44.

24) 前掲2)

25)磨密樹生・畦浩二「幼稚園と小学校における自然体験活動の分析―科学的な見方・考

え方の育成の観点に基づいて―」『大阪教育大学紀要』第 66 巻、2018、pp.19-34.

26)前掲4)

27)中澤潤「新入園児の友人形成:初期相互作用行動、社会認知能力と人気」『保育学研究』

1992 年版、1992、pp.98-106.

28)松井愛奈・無藤隆・門山睦「幼児の仲間との相互作用のきっかけ:幼稚園における自

由遊び場面の検討」『発達心理学研究』第 12 巻3号、2001、pp.195-205.

29)“corporate social responsibility”で企業の社会的責任の略

然についての気づきだけでなく、異年齢のコミュニケーションなど自然に留まらない学び

があったとも考えられた。本研究では自然体験活動のみを対象としたため、この枠組みが

他の体験活動の検討の際に有用であるかの検討までは及ばなかったが、今後他の種類の体

験活動においてもステージの枠組みを用いて子どもたちのかかわりあいを検討することに

よって、幼児から小学校低学年の子どもの体験活動がより充実したものになることが期待

される。

謝辞

本研究にご協力いただきました「森の探検隊」参加者の子どもたち並びに保護者の皆様

に心よりお礼を申し上げます。

付記

本研究の成果の一部は、日本保育学会第 71 回大会にて発表した。

引用文献・注

1)文部科学省中央教育審議会『今後の青少年の体験活動の推進について(答申)』2013、

pp.2-4.

2)文部科学省『平成 28 年度文部科学白書』2017、日経印刷、pp.30-56.

3)遠藤知里「幼児を対象とした自然体験活動の動向」『常葉学園短期大学紀要』第 39 号、

2008、pp.91-101.

4)中川保敬・草野柊・井福裕俊・小澤雄二・齋藤和也・坂本将基「自然体験活動が子ど

もに与える有効性について:社会教育施設で行われる継続した体験活動を通して」『熊

本大学教育実践研究』第 36 巻、2019、pp.191-195.

5)前掲1)pp.5-6.

6)前掲1)p.5.

7)前掲2)

8)前掲1)pp.14-15.

9)庄子佳吾・松川仁紀「主体性・社会性をはぐくむ幼児キャンプの実践報告―「大自然

に“い~っぽ”~冬~」の実践を通して―」『独立行政法人国立青少年教育振興機構青

少年教育研究センター紀要』第2号、2013、pp.106-100.

10)前掲2)p.45.

11)前掲2)

12)神田浩行「第4章 自然と遊ぼう」井上美智子・無藤隆・神田浩行[編]『むすんでみ

よう子どもと自然-保育現場での環境教育実践ガイド』北大路書房、2010、pp.41-72.

13)文部科学省『幼稚園教育要領解説』フレーベル館、2018、pp.66-67、p.209.

14)国立青少年教育振興機構「青少年教育関係施設基礎調査(平成 28 年度調査)」『青少年

教育研究センター紀要』第7号、2019、pp.88-93.

15)前掲 14)

16)前掲2)p.45.

17)岩西紗江子・岩西哲「幼児を含む家族を対象とした自然体験プログラムの実践―甲賀

60 Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

市みなくち子どもの森自然館における「いきものさがしの日」の試み―」『環境教育』

第 23 巻1号、2013、pp.83-90.

18)森太郎・與倉弘子・久保加織・石川俊之・森田実・石橋克也・内藤京子・須川美弥子・

小松文郎「大学・地域・家庭が連携した子どもへの自然体験活動」『滋賀大学教育学部

附属教育実践総合センター紀要』第 25 巻、2017、pp.107-112.

19)前掲 17)

20)前掲 18)

21)前掲2)

22)前掲1)p.11.

23)伊原久美子・中野友博・飯田稔「幼児・低学年児童における継続型組織キャンプの効

果に関する研究」『野外教育研究』第 16 巻1号、2013、pp.31-44.

24) 前掲2)

25)磨密樹生・畦浩二「幼稚園と小学校における自然体験活動の分析―科学的な見方・考

え方の育成の観点に基づいて―」『大阪教育大学紀要』第 66 巻、2018、pp.19-34.

26)前掲4)

27)中澤潤「新入園児の友人形成:初期相互作用行動、社会認知能力と人気」『保育学研究』

1992 年版、1992、pp.98-106.

28)松井愛奈・無藤隆・門山睦「幼児の仲間との相互作用のきっかけ:幼稚園における自

由遊び場面の検討」『発達心理学研究』第 12 巻3号、2001、pp.195-205.

29)“corporate social responsibility”で企業の社会的責任の略

61Ⅱ 投稿原稿/自然体験活動における5歳児と小学2年生のかかわりあい

【論文】

フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

The interlinguistic and intercultural society’s influence

on the language use of French youth

比内 晃介 HINAI Kosuke

筑波大学大学院

要旨

近年日本における外国人住民の人口が増加傾向にあり、近い将来には日本社会の中で、

在日外国人の言語や文化が混在する「異言語・異文化社会」が形成されることが予想され

ている。本論文では、そうした異言語・異文化社会の中で生きる青少年のための教育にお

いて、ペルソナとスタイルという概念から、青少年が持つ言語とアイデンティティの関係

を捉え直すことの重要性について論じる。

具体的には、1960 年代以降からの移民の流入により日本よりも早期に異言語・異文化社

会が構築されたフランスにおける中学校での事例をもとに、多様な言語や文化が入り混じ

る環境の中で青少年の話者が言語を通したスタイルとペルソナの実践によって、国や民族

といった社会的枠組みを越えた、多面的でかつ個別化されたアイデンティティを構築して

いることを明らかにする。

キーワード

異言語・異文化社会、言語、アイデンティティ、スタイル、ペルソナ

I. はじめに

2019 年7月 10 日に総務省が発表した統計資料1)によれば、2019 年1月1日の時点で日

本における外国人住民は、前年より 17 万人近く増加し、260 万人を超えている。また 2018

年に公布された「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が

翌年4月1日から施行され、外国人の在留資格に「特定技能」が追加されたこと2)に伴い、

今後、特に外国人労働者やその家族をはじめとする外国人住民がさらに増加することが予

想される。「グローバル化」という言葉が新聞やメディアで飛び交うようになって久しいが、

事実、上記のようなグローバリゼーションによる変化が近年の日本社会の中でも現れ、そ

の影響に対する対策が議論されるようになってきた。その一つの例として、日本に局所的

に存在する在日外国人コミュニティでの教育体制が挙げられる。例えば、1990 年以降在日

ブラジル人人口が増加したことで、今日在日ブラジル人の一大集住地が形成されている群

馬県の太田・大泉区では、定住するブラジル人の子どものための就学・就園について、地

方自治体レベルでの取り組みが行われている3)。しかし、現状としてはこうした取り組み

にも関わらず、在日ブラジル人の児童・生徒の教育には、学業不振やいじめ問題、そして

不就学者の高い割合4)など、深刻な問題が依然として顕著に見られる。

62 Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

本論文では、上記のような現代の日本に形成されつつある「異言語・異文化社会」での

青少年教育に取り組む上で、青少年の言語とアイデンティティの関係性に目を向けること

の必要性について論じる。既に言語教育といった分野の中では、在日外国人の子どもによ

る日本語習得と教育との関係性について研究が行われてきた。また在日一世・二世の言語

使用が、彼らが持つ日本人または外国人としてのアイデンティティにどのように関わって

いるのかについて考察する研究5)も存在する。本論文では、筆者の専門とする社会言語学

に加え、社会心理学の観点に立ち、青少年の言語とアイデンティティの関係性を「ペルソ

ナ persona」と「スタイル style」という二つのキーワードから捉え直すアプローチを導入

する。そして、青少年が、日本人や外国人といった社会的枠組みを越えながら、複数のス

タイルとペルソナを文脈に応じて柔軟に使い分ける能力を持つことを明らかにしたい。そ

のために、1960 年代以降から既に移民の流入によって異言語・異文化社会が早期から構築

されているフランスにて比内6)が実施した調査の結果を紹介し、今後日本を待ち受けるグ

ローバリゼーションの渦中で青少年教育に求められる課題を言語とアイデンティティの側

面から再考することを目指す。

II.言語とアイデンティティ

既述したように、本論文では主に社会心理学と社会言語学の概念を導入しながら、言語

とアイデンティティの関係を捉え、異言語・異文化社会での青少年教育について論じてい

く。そのために、次節ではまず先行研究をもとに、在日外国人コミュニティにおける青少

年教育を考察する上で、言語とアイデンティティの関係性に目を向けることの重要性と留

意点について説明する。

1. 在日外国人コミュニティにおける言語とアイデンティティの関係性

重松5)は在日ブラジル人コミュニティが存在する地域(岐阜県美濃加茂市と愛知県知立

市)に住む在日ブラジル人の高校生と大学生を対象に、言語使用とアイデンティティにつ

いてのアンケートとインタビューによる調査を実施している。この調査では、在日ブラジ

ル人コミュニティ内で、日本語とポルトガル語の混用がその言語規範を共有するグループ

のメンバーとしての仲間意識を表し、「ひとつの表現手段として意図的に使用されている

例7)」が観察されている。つまり、当該コミュニティにおいて、言語混用が自己のアイデ

ンティティの拠り所を示す手段となっている。このように、在日外国人コミュニティの若

者による言語使用と話者のアイデンティティの間には明らかな結びつきが存在する。また

後述するように、在日外国人であるか日本人であるかに関わらず、青年期の若者、とりわ

け青少年にとって自己のアイデンティティの探求は重要な課題になる。そのため、在日外

国人コミュニティにおける青少年教育を考察する際には、青少年のアイデンティティと彼

らの使用する言語が密接に結びついていることに目を向けることが肝要になる。

しかし同時に、在日外国人の青少年が持つ言語とアイデンティティの関係を〈日本語=

日本人〉、〈外国語=外国人〉という過度に単純化した方式で捉えることは避けるべきであ

る。なぜなら、日本人や在日外国人の枠組みとそれに付随するステレオタイプの中に、彼

らのアイデンティティを短絡的に押し込めることにつながるからである。そのため、まず

Ⅱ.2.節では、「ペルソナ」という心理学の用語を導入し、複数の社会的人格の形成という

63Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

側面からアイデンティティの多面性を捉え直すことを提案する。また、Ⅱ.3.節では社会

言語学的な「スタイル」という概念を通じて、話者が持つペルソナやアイデンティティと

言語の間に存在する柔軟でかつ創造的な結びつきについて論じたい。

2. ペルソナ“Persona”

発達心理学者のエリクソンによる研究8)をはじめ、青年期の若者のアイデンティティの

確立や形成過程については今日までに多くの研究がなされてきた。とりわけエリクソンの

理論によれば、青年期を迎えた若者にとって、様々な自分の姿を統合することによって自

己のアイデンティティを確立していくことが中心的な課題となる。そのため、青少年教育

について考察する際には、アイデンティティについて触れることは避けられない。しかし、

本論文ではこのアイデンティティを再度別の側面から捉え直すために、「ペルソナ persona

9)」という概念を援用したい。この「ペルソナ」は、元は「演劇において使用される仮面」

を意味するラテン語であり、心理学の分野では社会的に適応した人格を構成するために必

要な心的機能 10)を指すものとして使用されている。例えば、ある既婚男性は家にいるとき

は妻を持つ「夫」としてのペルソナをつけ、また家の外の職場では一人の「会社員」とし

てのペルソナをつけるといった具合に、人は複数のペルソナを社会における役割として保

持し、社会的な文脈に合わせて使い分けている。クロガー11)によれば、アイデンティティ

が「異なる場所にいても、異なる社会的状況におかれても、自分は同じ人間であるという

感覚 12)」を伴うものであるが、一方でペルソナはこのように複数性を持つものである。と

ころで、本論文でキーワードとして挙げてきた言語は、このペルソナを顕在化させる手段

の一つである。具体的には、日本語の待遇表現といった言語形式や言語使用がある特定の

イメージと結びつくことで、話者はそのペルソナに自己を結びつけることができる。前述

の例で説明すると、ある既婚男性は「夫」、「会社員」といった身分や地位に「一致してい

ると解釈される」言葉遣いをすることで、社会的に適応した人格を表現することができる。

以上のことを踏まえ、筆者は、このペルソナという概念を通して、在日外国人の青少年

が持つアイデンティティを多面的に捉えることが重要であると考える。つまり、彼らが自

己のアイデンティティを〈日本人 vs 外国人>という単純な二項対立の中で位置づけている

のではなく、複数のペルソナを保持しながら、言語使用を通して、多面的なアイデンティ

ティを「柔軟にかつ自由に」構築していると解釈するべきである。では、言語がどのよう

に複数のペルソナの顕在化を可能にしているのか。次節では、言語が個々の話者が持つ多

数のペルソナに結びつくという複雑な過程を理論的に説明するために、社会言語学的用語

の「スタイル style」という概念を導入し、Ⅱ.1.節で触れた在日外国人コミュニティの

若者に見られる言語混用を捉え直すことを試みる。

3. 言語学におけるスタイル“Style”

キースリング 13)は、一つの定義として「スタイル」を「特定のペルソナを生む、多数の

言語的(非言語的)・社会的実践の組み合わせの産物である 14)(筆者日本語訳)」と解釈し

ている。この定義は、Ⅱ.2.節で言語がペルソナの顕在化を可能にしていると述べたこと

とほぼ一致している。それだけでなく、スタイルが発話そのものや聞き手に対する話し手

の具体的な「態度」を表現すること 13)、さらに言語的(非言語的)または社会的実践の組

64 Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

み合わせを指すことから、このスタイルという概念の導入によって、言語構造の外にある

多様な社会的要素を考慮しながら、言語とペルソナの複雑なつながりを捉えることが可能

になる。またスタイルとペルソナは相互的にかつ創造的に影響し合う。つまり、話者は、

ある特定のペルソナを表現するためにそのペルソナに適したスタイルを実践するだけでな

く、反対に特定の文脈で実践されたスタイルを通して、より個人化されたペルソナを創造

することもできる。

このスタイルの概念を在日外国人コミュニティの若者による言語混用に当てはめてみ

る。まず日本語と外国語の接触によって生まれた言語混用は、話者のスタイルの一部とし

て実践される。しかし、このスタイルの実践が話者の持つ日本人または在日外国人として

のアイデンティティに直結するのではない。なぜなら、スタイルは複数の要素で構成され

るものであり、また個々の話者の具体的な心的態度と親和性を持つため、国や民族といっ

た固定的な枠組みのみで規定できるものではないからである。むしろ、このスタイルの実

践から想起される複数のペルソナ(日本人/在日外国人に結びつくイメージなど)を多様

な文脈(家庭/学校/友人との会話など)の中で自由に表現することで、多面的でかつ個

別化されたアイデンティティを創造していると考えるべきである。

以上の議論から、在日外国人の若者は、社会的文脈に応じてスタイルとペルソナを柔軟

に変化させることで、在日外国人または日本人という枠組みを越えながら個別化したアイ

デンティティを構築していると筆者は考える。次のⅢ.節ではその実例を紹介する。

III.事例紹介

Ⅱ.節まで、異言語・異文化社会における青少年教育の在り方を論じる上で、青少年の言

語とアイデンティティの関係性をペルソナとスタイルという二つの概念から考察し直すこ

との意義について論じた。本節では、この理論的枠組みをもとに、実際の異言語・異文化

社会に生きる青少年がどのように言語を通して、多面的でかつ個別的なアイデンティティ

を創造しているのかについて、筆者が実際にフランスの中学校 15)で収集したデータを紹

介しながら、考察する。

1. 調査地と調査方法

本論文で紹介するデータは、筆者が 2019 年2月

と3月の2ヶ月間、フランス南東部に位置するグ

ルノーブル都市圏 16)(図1の斜線部分)で実施し

た調査を通して収集したものである。調査は、フラ

ンスの都市圏に住む中学生の言語使用について現

地での詳細な記述と観察を行うことを目的とし、

当該都市圏内の A 中学校と B 中学校に通う生徒を

対象に行われた。A 中学校はグルノーブルに隣接す

る サ ン = マ ル タ ン = デ ー ル ( Saint-Martin-

d’Hères)という自治体に、B 中学校はグルノーブ

ル都市圏の中心から離れたヴィフ(Vif)という自

治体に位置している(図2)。また表1が示す各校

図1: イゼール県とグルノーブル都市圏

( web サイト www.statistiques-locales.insee.fr17)をもとに比内6)が作成)

65Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

の全生徒数、調査対象生徒数、保護者の職業分類に関する情報から、両校の規模は類似し

ているものの、保護者の社会階層に顕著な違いがあることがわかる。

表1:調査を実施した中学校に関する情報6)

A 中学校 B 中学校 全生徒数 410 人 552 人 調査対象生徒数 76 人 117 人 保護者の職業及び

社会職業分類(%) 低所得労働者、非就業者:58.0

高級管理職、教育職:7.3 低所得労働者、非就業者:23.7

高級管理職、教育職:31.2

調査地であるグルノーブル都市圏は、フランス

における移民集住地域の一つである旧ローヌ=ア

ルプ地域圏 18)に位置し、内部には、移民が居住す

る傾向が強い「郊外 Banlieue」と呼ばれる「地理

的な郊外の中でも、低家賃の公営団地集中地区」

19)が複数存在している。そのため、移民の言語や

文化の流入が著しいこの都市圏では、若年層の言

語使用に移民言語からの借用語といった言語接触

の影響が多数観察される。したがって、グルノー

ブル都市圏の中学生による言語使用を事例として

取り上げることは、異言語・異文化社会における

青少年教育の在り方を考察するという本論文の目

的と一致していると言える。

また調査では、当該都市圏の中学生に観察され

る語彙や表現とその具体的な使用についての質問

紙調査とグループインタビュー(録音・録画あり)

を実施している 20)。本論文では、特に A 中学校の

女子生徒のグループと B 中学校の男子生徒のグル

ープを対象に行ったインタビュー21)のデータを紹

介する。また、女子生徒のグループに関しては、被調査者である女子中学生 A、B、C、D 全

員が家庭でアラビア語を使用する二言語併用者であったが、一方で男子生徒のグループで

は、参加者である男子中学生 A、B、C、D が皆フランス語のみを母語としていた6)。

2. 三つの同義語の使用

本節では、グルノーブル都市圏の中学生に特徴的な言語使用として、予備調査 23)で観察

された、フランス語の否定表現 rien(英語:nothing、日本語:「何も…ない」)に相当する

tchi、walou、ère/R という三つの語彙について紹介する。以下の表2で示した三つの語彙

は、フランス語の否定表現 rien とほぼ同じ意味を持ち、各例の下線部が示すように、rien

を各語彙で置き換えることができる。しかし一方で、この三つの語彙の由来はそれぞれ異

なっている。

図2: 調査を実施した中学校の位置6) © OpenStreetMap contributors, Direction générale des Finances publics22)

66 Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

表2:フランス語の否定表現 rien に相当する三つの語彙6)

tchi ・ロマ民族の諸言語からの借用語

例)Je comprends tchi.(je ne comprends rien.「何もわからない。」)24)

walou ・アラビア語マグレブ方言からの借用語

例)J’ai walou.(je n’ai rien.「何も持っていない。」)24)

ère/R ・フランス語 rien の頭文字 R からの派生語

例)Y a R !(il n’y a rien !「何もない!」)24)

まず、tchi はロマ民族の諸言語からの借用語だとされている。グルノーブル地方の若者

ことばには、以前からこの tchi のようなロマ民族の諸言語由来の語が多数観察されてい

る 25)。そして、こうしたロマ民族の諸言語からの借用語は、ロマ民族の諸言語を母語とす

る話者、または彼らと接触を持つ者かどうかに関わらず、当該地域の若者に広く使用され

ているという特徴がある。その証拠として、以下のインタビュー抜粋①の中で、女子中学

生 A(下線部)による発話が、tchi が「グルノーブル」という地域性を帯びた語彙である

ということを示している。

<インタビュー抜粋①6)26):A 中学校の女子生徒グループ>

女子中学生 A : tchi c’est grenoblois.

(tchi はグルノーブルっぽい。)

女子中学生 B : ouais. ouais j’crois que c’est ça.

(うん、うん、わたしはそうだと思う。)

[…]

女子中学生 A : j'sais pas, il y a plein de gens ils disent tchi c'est grenoblois.

(知らないけど、tchi はグルノーブルっぽいって言う人がたくさんいる。)

つまり、当該都市圏の中学生には、この tchi が外国語由来の語彙であるという認識はほ

とんどなく、むしろ地域方言のようなものとして捉えられていることがわかる。

続いて、walou はアラビア語マグレブ方言からの借用語だとされている。「マグレブ」と

は、北アフリカに位置するモロッコ、アルジェリア、チュニジアの総称を指し、この地域

からフランスに渡った移民の影響で、walou が当該都市圏の若者ことばとして定着したと

考えられる。また前述の tchi とは異なり、語彙の由来がアラビア語であるという認識が残

っており、walou を使用する話者はアラビア語母語話者に限定されやすい傾向にある。以

下のインタビュー抜粋②内の女子中学生 A(下線部)の発話からも同様のことがわかる。

<インタビュー抜粋②6)26):A 中学校の女子生徒グループ>

調査者: alors quelle expression vous utilisez sou- plus souvent ?

(それじゃあ、君たちはどの表現を最も頻繁に使う?)

女子中学生 C : ah moi les trois j'peux.

(あー、わたしは三つとも言える。)

67Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

女子中学生 A : moi, walou comme j'parle en arabe c'est arabe.

(わたしは walou、わたしはアラビア語を話すから、それはアラビア語。)

最後に、ère/R はフランス語の否定表現 rien の頭文字 R から派生した語彙だとされてい

る。表記法として、その R の発音を三つの文字で表記したもの、そして R とアルファベッ

ト一文字のみで表記したものが存在する。この ère/R は SMS(Short Message Service)な

どのインターネットコミュニケーションの中で生まれた語彙であると考えられている。初

期の SMS は字数制限が存在し、限られた文字数の中で rien を表現する必要があったため、

短縮形としての R が生まれ、やがてその発音に綴り字を適応させた ère が派生的に使用さ

れるようになったとされる。そのため、以下のインタビュー抜粋③における男子中学生た

ちの発話からわかるように、ère/R はメールといった媒体との親和性が高い。

<インタビュー抜粋③6)26):B 中学校の男子生徒グループ>

調査者 : alors, ère. quan- eh vous utilisez pas ère ?

(それじゃ、ère について。えっと君たちは ère を使わない?)

男子中学生 D : euh si pareil.

(えっと、いや同じだよ。)

男子中学生 C : si si y a ère c'est pareil que-

(いや、いや、« y a ère »、それは同じで)

男子中学生 B : plus en message.

(メッセージでより頻繁に)

男子中学生 A : ouais.

(うん)

ここまで、tchi、walou、ère/R の由来や使用の特徴ついて説明してきた。既述したよう

に、これら三つの語彙はフランス語の否定表現 rien と同じ意味を持つという点で同義語

である一方で、その由来はそれぞれロマ民族の諸言語、アラビア語マグレブ方言、インタ

ーネットコミュニケーションからと大きく異なっている。またこの三つの語彙には、移民

社会の影響(tchi、walou)だけでなく、高度情報社会による影響(ère/R)も現れており、

このことはグルノーブル都市圏に住む青少年の言語使用がいかに言語・文化接触の影響を

受けているのかを示している。以上を踏まえ、最後のⅢ.3.節では、当該都市圏の中学生

によるこの三つの語彙の使用が、どのようにスタイルとペルソナの実践に関わっているの

かについて考察を行いたい。

3. 多面的・個別的なアイデンティティの構築

Ⅲ.2.節の中で紹介した三つの同義語 tchi、walou、ère/R に関して、以下のインタビュ

ー抜粋④の中で女子中学生 A(下線部)が重要な発話をしている。

<インタビュー抜粋④6)26):A 中学校の女子生徒グループ>

女子中学生 A : attends chez moi j'dis walou. euh avec mes copines et tout, j'dis

68 Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

tchi. et en message j'dis ère.

(待って、家では walou って言う。えっと友達とかとは tchi って言う。そし

てメッセージでは ère って言う。)

女子中学生 C : voilà.

(その通り。)

ここでの女子中学生 A の発話によると、家庭でアラビア語を使用するバイリンガルであ

る彼女にとって、walou は家庭で、tchi は友達と話すときに、ère/R はメッセージを打つ

ときに使用するのが適しているとされている。つまり、一人の発話者が発話の場所や対話

者、会話のツールという社会的文脈を踏まえながら、この三つの語彙の明確に使い分けて

いることがわかる。

この三つの語彙の使用について、ペルソナとスタイルという概念をもとに再解釈すると、

この女子中学生 A は、社会的文脈に応じたペルソナを表現するために、三つの語彙を自身

のスタイルとして使い分けているということがわかる。例えば、彼女にとってアラビア語

マグレブ方言の walou を使用することは家庭でのペルソナを、tchi を使用することは仲間

集団の中でのペルソナを、そして ère/R を使用することはインターネットコミュニケーシ

ョン内でのペルソナを産出するスタイルの一部である。このように、今回のインタビュー

のデータから、当該都市圏に住む中学生が、各語彙によるスタイルの実践を通して、社会

的文脈に適した複数のペルソナを取り替える能力を持つことが示唆されている。このこと

は、異言語・異文化社会に生きる彼らの言語使用とアイデンティティの関係が、フランス

人や移民一世・二世といった社会的枠組みによって常に制限されるものではなく、複数の

スタイルとペルソナの組み合わせを通して柔軟に構築される、多面性と個別性を帯びたも

のであることを物語っている。

IV. まとめ

本論文では、異言語・異文化社会の青少年教育の在り方について、言語とアイデンティ

ティの関係性に注目する視点の重要性を主張するために、フランスのグルノーブル都市圏

で実施した調査の結果をもとに分析を行ってきた。その考察の中で、青少年が持つ言語と

アイデンティティの関係をペルソナとスタイルという概念から捉え直すことによって、青

少年の話者が社会的枠組みを越えた、多面的・個別的なアイデンティティを創造している

ことを提言することができた。筆者は、青少年の持つこうした能力に目を向けることが在

日外国人コミュニティの青少年教育において重要であると考える。なぜなら、青少年のア

イデンティティを既存の社会的枠組みの中だけで捉えることは、日本人または在日外国人

に対する偏見やステレオタイプを再生産し、人種差別やいじめ問題、不就学者の増加とい

った深刻な問題につながるからである。そのため、異言語・異文化社会の青少年教育で教

育者側に求められる役割とは、異言語・異文化が混合する彼らの言語活動を見捨てること

でも、矯正することでもなく、むしろ彼らが持つ社会的文脈に適した言語(使用)を選択

する潜在的能力を伸ばすための手立てを模索することではないだろうか。

今後の課題としては、まず今回扱ったグルノーブル都市圏の事例が、フランス社会とい

う歴史的・社会的背景が日本のそれと異なる環境で得られたものであり、日本の在日外国

69Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

人コミュニティの現状を論じる上でやや説得力に欠けていることが挙げられる。また本論

文内で考察するに至らなかった、話者(集団)の性別や社会階層の違いなど、彼らの言語

使用やアイデンティティに影響を与えうる社会的要因も今後精査していくべきだろう。

しかし、フランスの事例が示すような、異言語・異文化が混在する社会環境の中で青少

年の使用する言語がより複雑に変容するという状況が、将来の日本社会においても起こり

うる、もしくは既に起こり始めているのも事実である。また日本における昨今の外国人住

民の増加に見るように、日本社会のグローバル化の進行がもはや避けることができないの

も明らかである。だからこそ、今から異言語・異文化社会における青少年教育の在り方を

問う姿勢は必要になるだろう。そうした姿勢を築く端緒として、筆者は本論文を通して、

言語とアイデンティティの側面から青少年教育を見つめることの重要性を再度強調したい。

引用文献・参考文献・注

1) 総務省『住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(平成 31 年1月1日現在)』

http://www.soumu.go.jp/main_content/000633278.pdf、2019 年 10 月 25 日参照.

2) 法務省入国管理局『特定技能外国人受入れに関する運用要領(平成 31 年3月)』

http://www.moj.go.jp/content/001289242.pdf、2019 年7月 12 日参照.

3) 小内透『在日ブラジル人の教育と保育-群馬県太田・大泉区を事例として-』明石書

店、2003.

4) 児島明「在日ブラジル人青年の学び直し-通信教育受講生の生活史分析から-」『地域

学論集 鳥取大学地域学部紀要』、第 11 巻・第2号、2014, pp.57-88.

5) 重松由美「在日ブラジル人高校生・大学生の言語生活とアイデンティティ」『椙山女学

園大学教育学部紀要』第5号、2012、pp.59-68.

6) 比内晃介「仏国グルノーブル都市圏における若年層の言語使用に関する社会言語学的

研究」、修士論文、筑波大学大学院人文社会科学研究科、2019.

7) 前掲論文5)、p.65.

8) Erikson, E.H. Identity: Youth and crisis, New York: Norton, 1968.

9) 落合良行・伊藤裕子・齊藤誠一「第 15 章 自分を生きる」『青年の心理学』有斐閣、

1993、pp.247-262.

10)中島義明他[編]『心理学辞典』有斐閣、1999、p.784.

11)クロガー,J./榎本博明訳『アイデンティティの発達-青年期から成人期-』北大路書

房、2005.

12)同書 11)、p.7.

13)Kiesling, S.F. “Style as stance, stance as the explanation for patterns of

sociolinguistic variation”, In Stance sociolinguistic perspectives, A.Jaffe

(ed), Oxford University Press, 2009, pp.171-194.

14)同論文 13)、p.174. “[…]style is the product of the combination of a number

of linguistic (and nonlinguistic) social practices, yielding a particular

persona.”

15)フランスの中学校 collègeは、およそ 11歳から 15歳の生徒が通う四年制学校である。

16)グルノーブル都市圏は、フランス南東部に位置するオーヴェルニュ=ローヌ=アルプ

70 Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

地域圏・イゼール県の主要都市グルノーブルとその周辺の自治体の総称を指す。

17)Insee, Statistiques locales,www.statistiques-locales.insee.fr, 2019 年 12 月9

日参照.

18)井形和正・西山教行「第3章 移民」三浦信孝・西山教行[編]『現代フランス社会を

知るための 62 章』明石書店、2010、pp.30-35.

19)森千香子「第2章 郊外」三浦信孝・西山教行[編]『現代フランス社会を知るための

62 章』明石書店、2010、pp.25-29.

20)本調査では、被調査者の個人情報を収集する場合があったため、個人情報の保護と研

究倫理上の規定を遵守することに細心の注意を払った。まず調査を依頼した中学校の

校長に対しては、事前に研究目的と方法を十分に説明し、校内のみで調査を実施する

許可を得た。またグループインタビューでは未成年者を対象に録音と録画を実施する

ため、インタビューに参加する生徒全員の保護者に対しても事前に説明を行い、同意

書への署名を得る形式で承諾を得た。

21)グループインタビューへの参加者の選定は、個人情報の保護を希望する校長の指針に

従い、あえて生徒の家庭・文化背景や使用言語などで限定せず、生徒から有志をつの

る形式で行った。ただし、今後の研究で性差と言語使用の関係を考察することを想定

し、グループは原則として男女別に編成している。

22)OpenStreetMap,https://www.openstreetmap.org,2019 年 12 月9日参照.

23)予備調査では、まずグルノーブル都市圏に住む複数の話者を対象に事前インタビュー

を行い、当該都市圏の若者ことばとみなされる 50 以上の語彙・表現を収集した。続い

て、収集した語彙・表現をもとに作成した仮質問紙による調査を、A 中学校に所属す

る生徒 30 人を対象に実施した。

24)フランス語において否定文を作る際、一般的に ne…pas という否定副詞の対によって

動詞を挟む手法を取る。例えば manger「食べる」という動詞を使用した « Je mange. »

「私は食べる」という肯定文を否定文にする時は、 « Je ne mange pas. »「私は食べ

ない」とする。しかし、話し言葉では、しばしば前方の ne だけが脱落し、 « Je mange

pas. »と pas のみで否定表現を作ることがあり、この現象は若者に限らず広い世代の

話者のフランス語に観察される。

25)Buson, L., Moïse, C.& Trimaille,C. «Espaces périurbains autour de Grenoble.

Mise en discours, catégorisation, circulation de formes langagières », Les

Métropoles francophones européennes, Classiques Garnier, 2019, pp.57-74.

26)本論文に提示しているインタビュー抜粋①から④で使用されている記号の意味につ

いては、以下の通りである。

- =音の途切れを示す。

[…] =省略部分を示す。

() =()内に日本語訳を示す。

71Ⅱ 投稿原稿/フランス青少年の言語使用に見る異言語・異文化社会の影響

プレイバックシアターの特性を活かし、児童の主体的な振り返り、発言、対話や決断を促

すアクティブ・ラーニングの形式で行われる。この点からも、児童がいじめやいじめ防止

について、深い学びを得る機会を提供している。2004 年に授業を始めた当初は1校であ

ったが、2017 年度は 30 校、2018 年度は 38 校の小学校で実施され、2019 年度は 44 校の

小学校で実施予定である。本稿の目的は、プレイバックシアターを用いた「演劇によるい

じめ防止授業」の実践を紹介し、児童に対する効果測定の結果を報告することである。

Ⅱ.プレイバックシアターとは

プレイバックシアターは 1975 年にアメ

リカ合衆国の J.Fox により創出された独

創的な即興劇である4)。図1がプレイバッ

クシアターの舞台である。コンダクター

(進行役)は観客からテラー(語り手)に

なる人を募り、舞台上の椅子に招く。テラ

ーはコンダクターのインタビューを受け自

身の体験を語り、それをアクター(役者)

が打合せなく演じる。ミュージシャンは即

興で、劇の情感を表す音楽を演奏する。プ

レイバックシアターではテラーの体験談をストーリーと呼ぶ。ストーリーのインタビュ

ー、上演はともに5分前後と短い。一般的なプレイバックシアターの公演は 90 分程度で

あり、1つの公演は4つから5つ程度のストーリーと、その他の短い手法とで成り立つ。

プレイバックシアターには、「誰もが貴重なストーリーを持っている」という価値観が

ある5)。私たちの日常には、「雨が降ったから公園に出かけられなくて残念」というよう

な些細な出来事から、大きな成功や挫折、生命の誕生や病気、近親者の死にまつわること

など重大な出来事まで、沢山のストーリーがある。また、個人的な環境、社会的な立場な

どの影響で、日頃から他者に耳を傾けてもらえる人と、そうではない人がいることが現実

である。プレイバックシアターでは、どのような人のどのようなストーリーにも、そこか

ら学ぶべき英知があり、語られる価値があると考えられている。

Ⅲ. いじめ防止授業にプレイバックシアターを用いる意義

「誰もが貴重なストーリーを持っている」という価値観は、児童の主体的参加を促

す。テラーを募ると、活発に手を挙げる児童もいれば、最後まで手を挙げない児童もい

る。いじめに関する話を語るのは容易ではないが、手が挙がらない場合も一方的に指名は

しない。コンダクターは発言が難しい児童にも常に注意を向け、手を挙げる勇気が出せる

よう声かけする。児童自身が感じ、決断し、行動するという授業形式は、アクティブ・ラ

ーニングという観点からも深い体験的学びを提供する。

また、いじめに遭遇したときの痛みや辛さを他者に伝えることは難しいが、プレイバ

ックシアターを用いると学級全体で共有することができる。Fox はプレイバックシアター

を行うことでお互いにストーリーを通して学び、つながることができると述べており、こ

うした教育の方法は学校での教育とは異なることを指摘している6)。この授業では、児童

図1 プレイバックシアターの舞台

©劇団プレイバッカーズ

【報告】

小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

No More Bullying Project Using Playback Theatre

小森 亜紀 KOMORI Aki

劇団プレイバッカーズ

宗像 佳代 MUNAKATA Kayo

劇団プレイバッカーズ

佐藤久美子 SATO Kumiko

劇団プレイバッカーズ

高橋江利子 TAKAHASHI Eriko

劇団プレイバッカーズ

要旨

本稿の目的は、プレイバックシアターという即興劇の手法を用いた「演劇によるいじめ

防止授業」の実践を紹介し、その効果測定について報告することである。2017 年度に 30

校、2018 年度に 38 校の小学校で実施した。授業は、プレイバックシアターによるいじめ

に関する体験の共有、いじめを止める行動の練習により成り立っている。効果測定の結果

99%の児童が「いじめられている友だちの気持ちがわかった」、「友だちを助ける行動がわ

かった」、「この授業は役に立った」と回答し、97%の児童が「これから友だちを助けられ

そうだ」と答えた。この授業は児童の共感を促し、いじめを止める行動の可能化を促すと

考えられる。

キーワード

いじめ防止、プレイバックシアター、アクティブ・ラーニング、演劇、共感

Ⅰ.はじめに

劇団プレイバッカーズでは、プレイバックシアターという即興劇の手法を用い、全国の

小学校において「演劇によるいじめ防止授業」を展開している1)。2013 年に、いじめ防

止対策推進法が策定され、各学校が地域と共にいじめ防止やいじめ対策の取り組みを行う

ことが定められた2)。「演劇によるいじめ防止授業」は、児童の生活の中で起こる「いじ

め」や「いじめに近い体験」を学級で劇として共有し共感を促すとともに、それまで傍観

者であった児童がいじめを止める行動ができるよう支援することで、将来起こり得るいじ

めを防止しようという試みである。この授業は、いじめ防止対策推進法の基本的施策の

内、「道徳教育の充実」「早期発見のための措置」「啓発活動」に関連している。令和2年

度から全面実施となる平成 29・30 年改訂学習指導要領では児童の主体的・対話的で深い

学び、アクティブ・ラーニングの視点からの授業改善が求められている3)。「演劇による

いじめ防止授業」は、道徳もしくは総合的な学習の時間として実施されることが多いが、

72 Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

プレイバックシアターの特性を活かし、児童の主体的な振り返り、発言、対話や決断を促

すアクティブ・ラーニングの形式で行われる。この点からも、児童がいじめやいじめ防止

について、深い学びを得る機会を提供している。2004 年に授業を始めた当初は1校であ

ったが、2017 年度は 30 校、2018 年度は 38 校の小学校で実施され、2019 年度は 44 校の

小学校で実施予定である。本稿の目的は、プレイバックシアターを用いた「演劇によるい

じめ防止授業」の実践を紹介し、児童に対する効果測定の結果を報告することである。

Ⅱ.プレイバックシアターとは

プレイバックシアターは 1975 年にアメ

リカ合衆国の J.Fox により創出された独

創的な即興劇である4)。図1がプレイバッ

クシアターの舞台である。コンダクター

(進行役)は観客からテラー(語り手)に

なる人を募り、舞台上の椅子に招く。テラ

ーはコンダクターのインタビューを受け自

身の体験を語り、それをアクター(役者)

が打合せなく演じる。ミュージシャンは即

興で、劇の情感を表す音楽を演奏する。プ

レイバックシアターではテラーの体験談をストーリーと呼ぶ。ストーリーのインタビュ

ー、上演はともに5分前後と短い。一般的なプレイバックシアターの公演は 90 分程度で

あり、1つの公演は4つから5つ程度のストーリーと、その他の短い手法とで成り立つ。

プレイバックシアターには、「誰もが貴重なストーリーを持っている」という価値観が

ある5)。私たちの日常には、「雨が降ったから公園に出かけられなくて残念」というよう

な些細な出来事から、大きな成功や挫折、生命の誕生や病気、近親者の死にまつわること

など重大な出来事まで、沢山のストーリーがある。また、個人的な環境、社会的な立場な

どの影響で、日頃から他者に耳を傾けてもらえる人と、そうではない人がいることが現実

である。プレイバックシアターでは、どのような人のどのようなストーリーにも、そこか

ら学ぶべき英知があり、語られる価値があると考えられている。

Ⅲ. いじめ防止授業にプレイバックシアターを用いる意義

「誰もが貴重なストーリーを持っている」という価値観は、児童の主体的参加を促

す。テラーを募ると、活発に手を挙げる児童もいれば、最後まで手を挙げない児童もい

る。いじめに関する話を語るのは容易ではないが、手が挙がらない場合も一方的に指名は

しない。コンダクターは発言が難しい児童にも常に注意を向け、手を挙げる勇気が出せる

よう声かけする。児童自身が感じ、決断し、行動するという授業形式は、アクティブ・ラ

ーニングという観点からも深い体験的学びを提供する。

また、いじめに遭遇したときの痛みや辛さを他者に伝えることは難しいが、プレイバ

ックシアターを用いると学級全体で共有することができる。Fox はプレイバックシアター

を行うことでお互いにストーリーを通して学び、つながることができると述べており、こ

うした教育の方法は学校での教育とは異なることを指摘している6)。この授業では、児童

図1 プレイバックシアターの舞台

©劇団プレイバッカーズ

73Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

2.授業

授業は基本的にクラス単位で実施され

る。この授業はアクティブ・ラーニング

で、通常の観劇と異なり 50 人を超えるよ

うな大人数での実施では困難であったり、

効果が薄かったりすると考えられるためで

ある。1回の授業時間は2時限分の 90 分

であり、ひとクラスに対し1回~2回行

う。音楽室や多目的室などを使い、児童は

図4のように舞台に向かって椅子や床に座

る。

授業は3部構成で行われる。最初は体験

を思い出す時間、次にプレイバックシアターの上演による経験と気持ちの共有の時間、最

後がいじめを止める行動を練習する時間である。ひとつのクラスに対し2回の授業を実施

できる場合、プレイバックシアターの上演に時間を多く費やすことができ、多くの児童が

体験を語ることできる。以下に、授業の進行に沿って内容を示す。

(1) 体験を思い出す時間

体験を思い出す時間には、2つのプログラムがある。一つ目は体験を思い出すための

「ある」「ない」ゲーム、2つ目は小グループによる体験の言語化、である。

① 体験を思い出すための「ある」「ない」ゲーム(図5)

友人に嫌なことをされた体験、友人が嫌なことをされているのをみた体験は多くの児

童が有すると考えられる。事前アンケートには、多くの児童が嫌なことをされた体験を記

載する。それらは例えば、名前や体型についてのからかい、悪口、無視、暴力、仲間外

れ、物隠しなどである。しかし、それを授業の場で想起し言葉に表すことは、児童によっ

ては難しく時間を要する。限られた時間で、できるだけ多くの児童が体験を語ることを可

能にするため、授業では3つの質問を提示し想起を促す。質問1は「名前でからかわれた

ことがありますか?」、質問2は「見た目でからかわれたことがありますか?」、質問3は

「誰かが嫌なことをされているのを見たことがありますか?」である。劇団員が、質問が

書かれたパネルと、「ある」「ない」と書かれたパネルを提示する。児童は、質問に書かれ

た体験を有する場合は「ある」のパネルの方

へ、無ければ「ない」のパネルの方へ移動す

る。「ある」「ない」のどちらかを選択するこ

とにより、自身の体験を振り返り、思い出す

こととなる。

さらに講師が、からかわれた体験が「あ

る」と答えた児童に対し、「全然平気だった

人?」、「どちらかと言うと嫌で、できればや

めてほしいと思った人?」、「すごく嫌だった

人?」と問い挙手を促す。「嫌なことを言われ

て傷ついていても、顔では笑っていた」とい

図4 授業の様子

図5「ある」「ない」ゲーム

©劇団プレイバッカーズ

©劇団プレイバッカーズ

の生活の中での体験に焦点をあてストーリーを語り合うことで、児童が互いのストーリー

から学ぶことを促しており、それが学級内のつながりを深め、変容を生むと考えられる。

Ⅳ.プレイバックシアターによるいじめ防止授業の目的と構成

プレイバックシアターによるいじめ防止授業の目的は、児童がいじめはいけないことと

実感し、いじめの現場に遭遇したとき、傍観者として見ているのではなく、自分にできる

行動をしていじめを止めることができるようにすることである7)。この目的を達成するた

め、この授業は2段階のアプローチで構成される。第1段階はプレイバックシアターで児

童の体験を再現することにより感情・気持ちに訴える、ストーリーによる教育である。第

2 段階は、いじめの場面を見かけたときにいじめを止める方法を提案し、児童が劇の中で

その行動化を練習する段階である。

また、授業に先立ち事前準備とアンケート(図2)、授業終了後の事後アンケート(図

3)も実施している。下記に、授業の詳細を記す。

1.事前準備とアンケート

学校に対し、この授業の目的、当日の進行、会場準備や必要備品について、紙面、口

頭で説明する。児童に対しては担任を通して事前アンケートを依頼し、幼児のときから現

在に至るまでの過程でのいじめに関する体験を思い出し、記載してもらう。劇団員は授業

前に記載済みのアンケートを読み、児童の体験について確認する。また、インタビューに

答えることが困難であったり、劇中に発生する音に過敏であったりするなど、特別な配慮

が必要な児童がいるかを担任に確認し、団員と共有して対応の準備をする。

図2 事前アンケート

図3 事後アンケート

74 Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

2.授業

授業は基本的にクラス単位で実施され

る。この授業はアクティブ・ラーニング

で、通常の観劇と異なり 50 人を超えるよ

うな大人数での実施では困難であったり、

効果が薄かったりすると考えられるためで

ある。1回の授業時間は2時限分の 90 分

であり、ひとクラスに対し1回~2回行

う。音楽室や多目的室などを使い、児童は

図4のように舞台に向かって椅子や床に座

る。

授業は3部構成で行われる。最初は体験

を思い出す時間、次にプレイバックシアターの上演による経験と気持ちの共有の時間、最

後がいじめを止める行動を練習する時間である。ひとつのクラスに対し2回の授業を実施

できる場合、プレイバックシアターの上演に時間を多く費やすことができ、多くの児童が

体験を語ることできる。以下に、授業の進行に沿って内容を示す。

(1) 体験を思い出す時間

体験を思い出す時間には、2つのプログラムがある。一つ目は体験を思い出すための

「ある」「ない」ゲーム、2つ目は小グループによる体験の言語化、である。

① 体験を思い出すための「ある」「ない」ゲーム(図5)

友人に嫌なことをされた体験、友人が嫌なことをされているのをみた体験は多くの児

童が有すると考えられる。事前アンケートには、多くの児童が嫌なことをされた体験を記

載する。それらは例えば、名前や体型についてのからかい、悪口、無視、暴力、仲間外

れ、物隠しなどである。しかし、それを授業の場で想起し言葉に表すことは、児童によっ

ては難しく時間を要する。限られた時間で、できるだけ多くの児童が体験を語ることを可

能にするため、授業では3つの質問を提示し想起を促す。質問1は「名前でからかわれた

ことがありますか?」、質問2は「見た目でからかわれたことがありますか?」、質問3は

「誰かが嫌なことをされているのを見たことがありますか?」である。劇団員が、質問が

書かれたパネルと、「ある」「ない」と書かれたパネルを提示する。児童は、質問に書かれ

た体験を有する場合は「ある」のパネルの方

へ、無ければ「ない」のパネルの方へ移動す

る。「ある」「ない」のどちらかを選択するこ

とにより、自身の体験を振り返り、思い出す

こととなる。

さらに講師が、からかわれた体験が「あ

る」と答えた児童に対し、「全然平気だった

人?」、「どちらかと言うと嫌で、できればや

めてほしいと思った人?」、「すごく嫌だった

人?」と問い挙手を促す。「嫌なことを言われ

て傷ついていても、顔では笑っていた」とい

図4 授業の様子

図5「ある」「ない」ゲーム

©劇団プレイバッカーズ

©劇団プレイバッカーズ

75Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

表1 児童に対するインタビューの例

児童から募る話は、自分が嫌なことをされた被害者の体験、他の人が嫌なことをされ

ていたのを見た傍観者の体験が主である。語れそうな児童がいる場合には、自分が相手に

嫌なことをしてしまった加害者の体験を募ることもある。

授業で語られたストーリーの例を記す。

・「無理強いされて」

友だちに「あの子、かわい子ぶっていて、きもいよね」と言われた。どうしようかと

思ったけど、「うん」と言わないと、自分が悪口を言われて、いじめられるから「う

ん」と言ってしまった。でも心の中では、嫌だった。

・「仕方なく」

コンダクター:自分が嫌なことをされたお話ですか?

児童:はい。

コンダクター:あなたを演じる役者を選びましょう。

児童:(舞台上の役者をみながら)黄色い T シャツの人。

コンダクター:これは、どこで、どんな時間に起こることなのかな?

児童:教室の中。休み時間。

コンダクター:どんなことを言われたり、されたりしたのが嫌だったんですか?

児童:何度もチビって言われた。

コンダクター:では、それを言ってきた人を選びましょう。

児童:(役者を見ながら)赤い T シャツの人。

コンダクター:この人は、ふざけて言っていたのか、それとも、いじわるな気持ちがあ

って言っていたのか、どうだったと思いますか?

児童:ふざけている感じだった。

コンダクター:「チビ」って言われて、あなたはどうしていたのかな?相手の人に「や

めて」って言ったり、何かしたりしたのかな?

児童:最初は「やめて」って言ったけど、それでもやめてくれなかったから、あとは何

も言わなかった。

コンダクター:そうですか。それでどんな気持ちだったんですか?

児童:すごく嫌だった。

コンダクター:悲しい感じか、怒っている感じか、どっちかな?

児童:悲しい。

コンダクター:誰かそれを周りで見ていた人はいましたか?

児童:いた。

コンダクター:見ていた人は、どんな気持ちだったと思う?

児童:かわいそうだと思ってるけど、言っている人が強いから怖くて何も言えない。

コンダクター:そうですか。それで、あなたは悲しかったけど、我慢していたんだね。

児童:はい。

コンダクター:見てみましょう。

(劇が始まる)

う場合もあるように、人の気持ちはその人が語るまではわからないこともあるのを説明

し、この授業の目的のひとつが、他の人の心の中の景色をみて、互いに対する理解を深め

ることだと伝える。また、他の人が嫌なことをされているのを見たことが「ある」と答え

た児童に対しては、「助けたことがある人?」、「助けたいと思ったけれど、助けられなか

った人?」と聞いて挙手を促す。そして、この授業のもう一つの目的が、「友だちを見捨

てない」仲間をつくり、お互いに助け合えるようになることであることも伝える。

② グループによる体験の言語化(図6)

2つ目のプログラムでは、上記の3つの

質問に該当することも含めた嫌なことをさ

れた体験(被害者体験)、人が嫌なことをさ

れているのを見た体験(傍観者体験)、誰か

が嫌がることをしてしまった体験(加害者

体験)について、3~5人程度の小グルー

プで話をする。各グループに劇団員が入

り、聴き手となるとともに、何を話して良

いかわからない児童に対しては例を挙げた

り、話していない児童がいる場合には水を

向けたりするなどして支援する。小グループで体験を言語化することにより、「ある」「な

い」ゲームに引き続き想起を促すことができる。また、この後のプレイバックシアター上

演の時間では、児童の中の誰かが前に出てクラス全体の前で体験を語ることになるが、ま

ずは少人数の前で体験を語ることにより、その緊張や抵抗を軽くすることができる。

(2)プレイバックシアターで児童の体験を再現する時間

劇団員が舞台に立ち、児童は観客もしくはテラーとして参加する。最初の 10~15 分ほ

どは、ある瞬間の気持ちを数十秒で短く表現する動く彫刻という短い手法を用いて、「名

前をからかわれた体験」をはじめとする児童の気持ちを役者が声と動きで表現する。これ

は導入として、「体験を語り、それが再現される」というプレイバックシアターの概念に

ついて体験的に理解し語りやすくするよう促すとともに、短い手法を用いることできるだ

け沢山の児童の体験を聞き出すねらいがある。コンダクターは手を挙げた児童に対し「ど

んなふうにからかわれたか」という事象を聴き、その後「それでどんな気持ちになった

か」と質問する。被害者としての体験を聴いた場合、多くの児童は「いやだった」と答え

る。それに対しさらに「怒っているのに近い?悲しいのに近い?」などと、気持ちを明確

化できるよう支援する。

その後、ストーリーにより体験を共有する。ストーリーでは語る意志を示した児童を

舞台上のテラーの椅子に招き、隣に座ったコンダクターがインタビューをする。どんな体

験だったのかを語り、自分の役をはじめとする登場人物をどの役者が演じるかを児童が選

ぶ。最後にコンダクターが「見てみましょう」と言うと、役者たちが打ち合わせなく、即

興で劇を始める。インタビューの例を表1に示した。

図6 グループによる体験の言語化

©劇団プレイバッカーズ

76 Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

表1 児童に対するインタビューの例

児童から募る話は、自分が嫌なことをされた被害者の体験、他の人が嫌なことをされ

ていたのを見た傍観者の体験が主である。語れそうな児童がいる場合には、自分が相手に

嫌なことをしてしまった加害者の体験を募ることもある。

授業で語られたストーリーの例を記す。

・「無理強いされて」

友だちに「あの子、かわい子ぶっていて、きもいよね」と言われた。どうしようかと

思ったけど、「うん」と言わないと、自分が悪口を言われて、いじめられるから「う

ん」と言ってしまった。でも心の中では、嫌だった。

・「仕方なく」

コンダクター:自分が嫌なことをされたお話ですか?

児童:はい。

コンダクター:あなたを演じる役者を選びましょう。

児童:(舞台上の役者をみながら)黄色い T シャツの人。

コンダクター:これは、どこで、どんな時間に起こることなのかな?

児童:教室の中。休み時間。

コンダクター:どんなことを言われたり、されたりしたのが嫌だったんですか?

児童:何度もチビって言われた。

コンダクター:では、それを言ってきた人を選びましょう。

児童:(役者を見ながら)赤い T シャツの人。

コンダクター:この人は、ふざけて言っていたのか、それとも、いじわるな気持ちがあ

って言っていたのか、どうだったと思いますか?

児童:ふざけている感じだった。

コンダクター:「チビ」って言われて、あなたはどうしていたのかな?相手の人に「や

めて」って言ったり、何かしたりしたのかな?

児童:最初は「やめて」って言ったけど、それでもやめてくれなかったから、あとは何

も言わなかった。

コンダクター:そうですか。それでどんな気持ちだったんですか?

児童:すごく嫌だった。

コンダクター:悲しい感じか、怒っている感じか、どっちかな?

児童:悲しい。

コンダクター:誰かそれを周りで見ていた人はいましたか?

児童:いた。

コンダクター:見ていた人は、どんな気持ちだったと思う?

児童:かわいそうだと思ってるけど、言っている人が強いから怖くて何も言えない。

コンダクター:そうですか。それで、あなたは悲しかったけど、我慢していたんだね。

児童:はい。

コンダクター:見てみましょう。

(劇が始まる)

77Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

Ⅴ.児童に対する効果測定

1.目的

この効果測定の目的は、児童の主観的な体験を質問紙で調査することにより、授業実施

直後の児童への効果を検証することである。

2.調査期間

2018 年6月から 12 月

3.方法と対象

授業実施直後から当日下校前の間に、児童に対し行った事後アンケートの結果を分析し

た。アンケートの質問項目は4項目で、①いじめられている友だちの気持ちがわかった

か、②友だちを助ける方法がわかったか、③これから、いじめられている友だちを見たら

助けられるか、④この授業は役に立ったか、であった。また、自由記載欄も設けた。対象

はいじめ防止授業に参加した全児童 2582 人で、内訳は1年生2人、2年生 41 人、3年生

309 人、4年生 1129 人、5年生 845 人、6年生 256 人であった。

4.結果

アンケートの質問への回答結果を図9に示した。いじめられている友だちの気持ちが

わかったかについては、66%が「とてもわかった」、33%が「わかった」、と回答した。「わ

からなかった」と回答した児童は1%で、「全くわからなかった」児童はいなかった。友

だちを助ける方法がわかったかについては、62%が「とてもわかった」、37%が「わかっ

た」と回答した。わからなかったと回答した児童は1%で、「全くわからなかった」児童

はいなかった。これからいじめられている友だちを助けられるかについては、「大いに助

けられる」が 36%、「助けられる」が 61%と回答した。「助けられない」と回答した児童は

3%で、「全く助けられない」と回答した児童はいなかった。この授業は役に立ったかに

ついては「とても役に立った」が 72%、「役に立った」が 25%であった。「役に立たなかっ

た」と回答した児童は1%で「全く役に立たなかった」と回答した児童はいなかった。

自由記載欄への回答の一部を以下に示す。

・ぼくは、やられる方になったことは、ないけど、いじめをやる方になったことが数

回ある。だけど、やられている人の気もちをプレイバックシアターの方々がやって

くださって、なぜこんなことをやってしまったんだろうという気持ちになった。

・心の中とその心の声などがくわしくて、感動した。仲間外れや無視が、どれほどいや

なことなのか、よくわかった。

・いじめとは、どのようなことなのか、どのように起こるのか、ということをしっか

りと頭に入れることができた。私の友だちもいやな目にあってるいので、そういう

場合は、無視をせず、たすけていきたいと思った。

・ぼくは、いじめをやられる方になったことはないが、いじめのえんぎを見て、いじめ

られる人は、こんな気持ちになるんだ、やる方は、軽い気持ちやあそびでやってるこ

とがわかった。

保育園のころ、友だちに「あいつ、小さくて生意気だから、紙で作った剣でやっつけ

ようぜ」と誘われた。そんなことは嫌でしたくなかったけど、友だちをつつき、追い

かけまわした。追い掛け回された友だちは、「やめて」と言いながら逃げ回った。で

もその声は、先生には届かなかった。

・「助けてもらえない」

幼稚園のころ、友だちと遊んでいたら、クラスの悪大将のような子が、ハサミをもっ

て追いかけてきた。僕たちは、「やめろ」と言いながら、逃げ回った。先生に言いた

くても先生は、いなかった。いつも先生がいないときを見計らって、その子は、追い

かけてきた。そんなことが続いたある日、その子は、引っ越していなくなった。

・「やっぱり」

5年生のとき、私のことを「優等生ぶっている」と陰口を言っている子がいるよ、と

友だちが教えてくれ た。うすうす陰口を言われているなとは思っていたが、嫌な気

持ちになった。

(3)いじめを止める行動を練習する時間

最後に、いじめを見かけたときに「友だ

ちを見捨てない」行動が出来るようになる

ための4つの行動指針を提示し、それを子

供たちが劇中で練習する。4つの行動指針

は、①「やめなよ」といじめている人を止

める、②いじめの加害者に誘われても仲間

に入らない、③助けてくれる大人に起きて

いることを伝える、④いじめられている子

と仲良くする、という傍観者の行動を促す

ものである。①~④が記入されたパネルを劇

団員が持ち、児童の前に立つ。(図7)児童は

自身がやってみられそうなものを選ぶ。その

後、劇団員によって演じられるいじめの場面

の中に入り、自身が選んだいじめに対する新

しい行動方法を実際に練習してみる。(図8)

児童によっては、どう言葉にするかが分か

らない、恥ずかしさからふざけてしまう、さ

らに喧嘩になるような言い方をしてしまう、

など、適切に行動化できない場合がある。その場合は、声かけの例を挙げる、どのような

表情で伝えるかを提案するなど、講師がその児童に必要な支援を行う。

3.事後アンケート

授業で学習した内容についての振り返りとして児童が事後アンケートを記載する。質

問は「いじめられている友だちの気持ちがわかったか?」「友だちを助ける方法がわかっ

たか?」「いじめられている友だちがいたら助けられるか?」「この授業が役に立った

か?」という4つの質問について 4 件法で回答するものに加え、自由記載である。

図7 いじめを止める4つの行動指針

図8 いじめを止める行動の練習

©劇団プレイバッカーズ

©劇団プレイバッカーズ

78 Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

Ⅴ.児童に対する効果測定

1.目的

この効果測定の目的は、児童の主観的な体験を質問紙で調査することにより、授業実施

直後の児童への効果を検証することである。

2.調査期間

2018 年6月から 12 月

3.方法と対象

授業実施直後から当日下校前の間に、児童に対し行った事後アンケートの結果を分析し

た。アンケートの質問項目は4項目で、①いじめられている友だちの気持ちがわかった

か、②友だちを助ける方法がわかったか、③これから、いじめられている友だちを見たら

助けられるか、④この授業は役に立ったか、であった。また、自由記載欄も設けた。対象

はいじめ防止授業に参加した全児童 2582 人で、内訳は1年生2人、2年生 41 人、3年生

309 人、4年生 1129 人、5年生 845 人、6年生 256 人であった。

4.結果

アンケートの質問への回答結果を図9に示した。いじめられている友だちの気持ちが

わかったかについては、66%が「とてもわかった」、33%が「わかった」、と回答した。「わ

からなかった」と回答した児童は1%で、「全くわからなかった」児童はいなかった。友

だちを助ける方法がわかったかについては、62%が「とてもわかった」、37%が「わかっ

た」と回答した。わからなかったと回答した児童は1%で、「全くわからなかった」児童

はいなかった。これからいじめられている友だちを助けられるかについては、「大いに助

けられる」が 36%、「助けられる」が 61%と回答した。「助けられない」と回答した児童は

3%で、「全く助けられない」と回答した児童はいなかった。この授業は役に立ったかに

ついては「とても役に立った」が 72%、「役に立った」が 25%であった。「役に立たなかっ

た」と回答した児童は1%で「全く役に立たなかった」と回答した児童はいなかった。

自由記載欄への回答の一部を以下に示す。

・ぼくは、やられる方になったことは、ないけど、いじめをやる方になったことが数

回ある。だけど、やられている人の気もちをプレイバックシアターの方々がやって

くださって、なぜこんなことをやってしまったんだろうという気持ちになった。

・心の中とその心の声などがくわしくて、感動した。仲間外れや無視が、どれほどいや

なことなのか、よくわかった。

・いじめとは、どのようなことなのか、どのように起こるのか、ということをしっか

りと頭に入れることができた。私の友だちもいやな目にあってるいので、そういう

場合は、無視をせず、たすけていきたいと思った。

・ぼくは、いじめをやられる方になったことはないが、いじめのえんぎを見て、いじめ

られる人は、こんな気持ちになるんだ、やる方は、軽い気持ちやあそびでやってるこ

とがわかった。

79Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

と回答した。劇の場面で自分自身が動いて演じてみることで、実際の場面でも「やってみ

られそう」という見通しがつくと考えられる。また、学級全体でこの授業を共有すること

により、「いじめはいけないこと」「いじめを止めたいのは自分だけではない」ということ

が児童たちの共通理解となり、友人を助ける行動への障壁が減少すると考えられる。森田

はいじめの四層構造を提起し、抑止作用として傍観者や観衆のいじめに対する否定的な反

応が重要であると述べている9)。本授業で児童に提示する4つの行動はこの点からも有効

であり、その結果多くの児童が友だちを助けられそうだと感じたと考えられる。

今回、授業実践の中で可能な範囲で調査を行い、児童が授業を通して感じたことを集計

し報告した。授業前後での児童の変化を調査するなど、さらに正確な効果を検証すること

が今後の課題である。

Ⅶ.まとめ

劇団プレイバッカーズによる「演劇によるいじめ授業」について報告した。この授業は

プレイバックシアターでいじめの体験の共有をし、いじめを止める行動を児童が劇中で行

動化することを通して学ぶという特徴がある。2018 年度、児童 2582 人に対し、授業後に

行った調査では、99%の児童が「いじめられている友だちの気持ちがわかった」と回答し

た。また、「友だちを助ける行動がわかった」と答えた児童は 99%、「これから友だちを

助けられそうだ」と感じた児童は 97%であった。これは授業展開がいじめ抑止の理論に

合致していること、児童の実際のいじめに関する体験を劇として観るため、多くの児童が

共感しやすいことが影響していると考えられる。また、いじめを止める行動を児童自身が

選び、練習することにより、深い学びを得られると考えられる。

引用文献

1)劇団プレイバッカーズ 「教育 アクティブ・ラーニング いじめ防止授業 ~傍観

者にならないために~」、http://www.playback-az.com、2020 年1月 14 日参照.

2)文部科学省「いじめ防止対策推進法」、http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/

seitoshidou/1406848.htm、2020 年1月 14 日参照.

3)文部科学省「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)」、https://www.mext.go.jp/

content/1413522_001.pdf、2020 年1月 14 日参照.

4)宗像佳代『プレイバックシアター入門』、明石書店、2006、pp.20-30.

5)前掲4)、pp.40-46.

6)吉川ひろみ「作業的存在 ジョナサン・フォックス氏へのインタビュー」『作業科学

研究』第 1 号、2013、pp.28-32.

7)前掲1)

8)虫明元『学ぶ脳』、岩波書店、2018、pp.72-78.

9)森田洋司『いじめとは何か 教室の問題、社会の問題』、中公新書、2010、pp.128-

142.

図9 事後アンケート結果

Ⅵ.考察

「演劇によるいじめ防止授業」はプレイバックシアターによって児童の実際の体験を他

の児童の目の前で再現し、共有することが特徴である。授業後、99%の児童が「いじめら

れている友だちの気持ちがわかった」と答えている。感想として「仲間外れや無視が、ど

れほどいやなことなのか、よくわかった。」と児童が述べているように、プレイバックシ

アターはテラーとなった児童への共感を促すと考えられる。虫明は実社会において他者と

の協働で問題解決をする場面が多く、協働には共感が必要であることを述べている。ま

た、共感には感覚運動的共感、情動的共感、認知的共感という3つの種類があることに触

れている8)。インタビューのような会話からテラーのストーリーに共感を得るためには、

他者の視点で理解しようとする認知的共感が必要となるが、こうした視点は特に青年期以

降に発達する傾向があるという。このことから、語りや文字だけの情報では、多くの児童

の共感を促すことは困難であると想像できる。プレイバックシアターでは、言語的情報に

加えて劇でも児童の体験を共有する。語った人の気持ちを中心に劇が再現されるため、児

童はそれを観て情動的共感を得るため、他者の気持ちがわかりやすいのだと考えられる。

授業のもうひとつの特徴は、いじめを止める4つの行動方法を児童が劇中で行動化する

ことである。アンケート調査では、99%の児童が「友だちを助ける方法がわかった」と回

答した。また、未来について「これからいじめられているお友だちがいたら、助けられま

すか?」という質問に対し、97%の児童が「大いに助けられる」もしくは「助けられる」

80 Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

と回答した。劇の場面で自分自身が動いて演じてみることで、実際の場面でも「やってみ

られそう」という見通しがつくと考えられる。また、学級全体でこの授業を共有すること

により、「いじめはいけないこと」「いじめを止めたいのは自分だけではない」ということ

が児童たちの共通理解となり、友人を助ける行動への障壁が減少すると考えられる。森田

はいじめの四層構造を提起し、抑止作用として傍観者や観衆のいじめに対する否定的な反

応が重要であると述べている9)。本授業で児童に提示する4つの行動はこの点からも有効

であり、その結果多くの児童が友だちを助けられそうだと感じたと考えられる。

今回、授業実践の中で可能な範囲で調査を行い、児童が授業を通して感じたことを集計

し報告した。授業前後での児童の変化を調査するなど、さらに正確な効果を検証すること

が今後の課題である。

Ⅶ.まとめ

劇団プレイバッカーズによる「演劇によるいじめ授業」について報告した。この授業は

プレイバックシアターでいじめの体験の共有をし、いじめを止める行動を児童が劇中で行

動化することを通して学ぶという特徴がある。2018 年度、児童 2582 人に対し、授業後に

行った調査では、99%の児童が「いじめられている友だちの気持ちがわかった」と回答し

た。また、「友だちを助ける行動がわかった」と答えた児童は 99%、「これから友だちを

助けられそうだ」と感じた児童は 97%であった。これは授業展開がいじめ抑止の理論に

合致していること、児童の実際のいじめに関する体験を劇として観るため、多くの児童が

共感しやすいことが影響していると考えられる。また、いじめを止める行動を児童自身が

選び、練習することにより、深い学びを得られると考えられる。

引用文献

1)劇団プレイバッカーズ 「教育 アクティブ・ラーニング いじめ防止授業 ~傍観

者にならないために~」、http://www.playback-az.com、2020 年1月 14 日参照.

2)文部科学省「いじめ防止対策推進法」、http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/

seitoshidou/1406848.htm、2020 年1月 14 日参照.

3)文部科学省「小学校学習指導要領(平成 29 年告示)」、https://www.mext.go.jp/

content/1413522_001.pdf、2020 年1月 14 日参照.

4)宗像佳代『プレイバックシアター入門』、明石書店、2006、pp.20-30.

5)前掲4)、pp.40-46.

6)吉川ひろみ「作業的存在 ジョナサン・フォックス氏へのインタビュー」『作業科学

研究』第 1 号、2013、pp.28-32.

7)前掲1)

8)虫明元『学ぶ脳』、岩波書店、2018、pp.72-78.

9)森田洋司『いじめとは何か 教室の問題、社会の問題』、中公新書、2010、pp.128-

142.

81Ⅱ 投稿原稿/小学校における「演劇によるいじめ防止授業」の展開

図1. キャリア教育が必要となった背景と課題

した 5)。学習指導要領(平成 29 年告示)において、教育の目的 6)を達成するためには、

一人一人の児童生徒が、多様な人々と協働しなが

ら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切

り拓き、持続可能な社会の創り手となることがで

きるようにすることが求められている7)8)。

以上のことから、文部科学省は、これからの社

会の中で、「生きる力」を子どもに育むために、地

域などと連携しつつ、体験活動を実践していくこ

とが必要と考え、図1の「キャリア教育が必要と

なった背景と課題」9)を示し、「生きる力」を育成

する方法の1つとして、キャリア教育の推進をあ

げた。図1の背景として、「学校から社会への移行

をめぐる課題」と「子どもたちの生活・意識の変

容」があげられる。「学校から社会への移行をめぐ

る課題」としては、「①社会環境の変化」の人件費

節約のため正規職員の非正規職員への代替や、「②

若者自身の資質等をめぐる課題」の働くことの厳

しさや喜びを実感し、その意味を学んだり、成就

感や自己肯定感を得たりする経験が乏しくなり、

それが働くことや将来の職業に対する関心・意欲

の低下を招いていること等がある 10)。「子どもた

ちの生活・意識の変容」として、「①子どもたちの

成長・発達上の課題」の身体的には早熟傾向があ

るにもかかわらず精神的・社会的自立が遅れる傾

向にあること等や「②高学歴社会における進路の

未決定傾向」の将来の生き方・働き方について考

え、選択・決定することなく、進路意識や目的意

識が希薄なまま、とりあえず進学する者が増加し

ていること等がある 11)。

なお、平成 23 年に中央教育審議会は、分野や職

種にかかわらず、社会的・職業的自立に向けて必

要な基盤となる能力として、図2の基礎的・汎用

的能力をあげ、これらの能力の育成をキャリア教育の視点に取り込んでいくことを示した。

基礎的・汎用的能力は、「人間関係形成・社会形成力」「自己理解・自己管理能力」(以下、

本報告において、それぞれの能力を「人間関係形成能力」、「自己理解能力」、とする)「課

題対応能力」「キャリアプランニング能力」の4つの能力によって構成されている 12)。

【人間関係形成・社会形成能力】

多様な他者の考えや立場を理解し、相手の意見を聴い

て自分の考えを正確に伝えることができるとともに、自

分の置かれている状況を受け止め、役割を果たしつつ他

者と協力・協働して社会に参画し、今後の社会を積極的

に形成することができる力

【自己理解・自己管理能力】

社会との相互関係を保ちつつ、今後の自分自身の可能

性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動すると同

時に、自らの思考や感情を律しつつ、かつ、今後の成長

のために進んで学ぼうとする力

【課題対応能力】

仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な

計画を立ててその課題を処理し、解決することができる

【キャリアプランニング能力】

「働くこと」の意義を理解し、自らが果たすべき様々

な立場や役割との関連と踏まえて「働くこと」を位置付

け、多様な生き方に関する様々な情報を適切に取捨選

択・活用しながら、自ら主体的に判断してキャリアを形

成していく力

図2. 4つの基礎的・汎用的能力

【報告】

異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

~国立沖縄青少年交流の家における「那覇市少年自然体験の船」の活動を

行った子ども(団員と班長)と指導者の感想文の分析~

The reports of the developmental opportunity of career by the nature

experiences that the children of deferent ages.

~The analysis of written descriptions of student (member and leaders)’s

and the teacher’s impressions about the activities of the ship of the

nature experiences in Naha at National Okinawa youth friendship center

菊地 智裕 KIKUCHI Tomohiro

那覇市教育委員会

要旨

平成 14 年度より、「那覇市少年自然体験の船」は、那覇市の小中学校の教師が指導者と

なり、那覇市内の小中学生を引率して、渡嘉敷島にある国立沖縄青少年交流の家にて 2 泊

3 日の自然体験を行っている。本事業を通して、子ども(団員と班長)や指導者は、それ

ぞれの役割を全うしていく。本事業は、会ったことのない人々が船で宿泊地まで移動し、

そこで体験活動を行うという課題が設定されている。これらの体験活動を通して、基礎的・

汎用的能力の意識化が見られてくることから、本事業が子ども(団員と班長)と指導者のキ

ャリア発達の機会に有効な方法の1つと思われる。

キーワード

キャリア発達 自然体験 異学年交流 那覇市少年自然体験の船

Ⅰ.はじめに

1. 研究の背景

平成 8 年に中央教育審議会は、「生きる力」を定義し、これを育むにあたって、体験活

動は家庭や地域社会での活動を通じてなされることが本来自然の姿であり、効果的である

ことが示された1)。しかし、体験活動に関して、平成 26 年に内閣府は、学校以外の公的機

関や民間団体が行う自然体験活動への小学生の参加率はどの学年でもおおむね低下してい

ること、及び、1 年間にキャンプをした者の割合は 10 代でも 20 代でも低下していること

などから、近年、子どもの体験活動の場や機会の減少を指摘した 2)。平成 26 年に国立青少

年教育振興機構は、自然体験や生活体験、お手伝いといった体験が豊富な子供や、生活習

慣が身についている子どもほど、自己肯定感や道徳観・正義感が高くなる傾向があること

を示した 3)。また、平成 28 年に文部科学省は学校の場を生かして、地域・家庭と連携・

協働しつつ、体験活動の機会を確保していくことが課題と示した 4)。翌年には、これから

の予測が困難な社会の変化に対して「生きる力」を育んでいくことが重要であることも示

82 Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

図1. キャリア教育が必要となった背景と課題

した 5)。学習指導要領(平成 29 年告示)において、教育の目的 6)を達成するためには、

一人一人の児童生徒が、多様な人々と協働しなが

ら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切

り拓き、持続可能な社会の創り手となることがで

きるようにすることが求められている7)8)。

以上のことから、文部科学省は、これからの社

会の中で、「生きる力」を子どもに育むために、地

域などと連携しつつ、体験活動を実践していくこ

とが必要と考え、図1の「キャリア教育が必要と

なった背景と課題」9)を示し、「生きる力」を育成

する方法の1つとして、キャリア教育の推進をあ

げた。図1の背景として、「学校から社会への移行

をめぐる課題」と「子どもたちの生活・意識の変

容」があげられる。「学校から社会への移行をめぐ

る課題」としては、「①社会環境の変化」の人件費

節約のため正規職員の非正規職員への代替や、「②

若者自身の資質等をめぐる課題」の働くことの厳

しさや喜びを実感し、その意味を学んだり、成就

感や自己肯定感を得たりする経験が乏しくなり、

それが働くことや将来の職業に対する関心・意欲

の低下を招いていること等がある 10)。「子どもた

ちの生活・意識の変容」として、「①子どもたちの

成長・発達上の課題」の身体的には早熟傾向があ

るにもかかわらず精神的・社会的自立が遅れる傾

向にあること等や「②高学歴社会における進路の

未決定傾向」の将来の生き方・働き方について考

え、選択・決定することなく、進路意識や目的意

識が希薄なまま、とりあえず進学する者が増加し

ていること等がある 11)。

なお、平成 23 年に中央教育審議会は、分野や職

種にかかわらず、社会的・職業的自立に向けて必

要な基盤となる能力として、図2の基礎的・汎用

的能力をあげ、これらの能力の育成をキャリア教育の視点に取り込んでいくことを示した。

基礎的・汎用的能力は、「人間関係形成・社会形成力」「自己理解・自己管理能力」(以下、

本報告において、それぞれの能力を「人間関係形成能力」、「自己理解能力」、とする)「課

題対応能力」「キャリアプランニング能力」の4つの能力によって構成されている 12)。

【人間関係形成・社会形成能力】

多様な他者の考えや立場を理解し、相手の意見を聴い

て自分の考えを正確に伝えることができるとともに、自

分の置かれている状況を受け止め、役割を果たしつつ他

者と協力・協働して社会に参画し、今後の社会を積極的

に形成することができる力

【自己理解・自己管理能力】

社会との相互関係を保ちつつ、今後の自分自身の可能

性を含めた肯定的な理解に基づき主体的に行動すると同

時に、自らの思考や感情を律しつつ、かつ、今後の成長

のために進んで学ぼうとする力

【課題対応能力】

仕事をする上での様々な課題を発見・分析し、適切な

計画を立ててその課題を処理し、解決することができる

【キャリアプランニング能力】

「働くこと」の意義を理解し、自らが果たすべき様々

な立場や役割との関連と踏まえて「働くこと」を位置付

け、多様な生き方に関する様々な情報を適切に取捨選

択・活用しながら、自ら主体的に判断してキャリアを形

成していく力

図2. 4つの基礎的・汎用的能力

83Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

Ⅱ.方法

1. 対象

本報告においては、平成 30 年の第 17 回「那覇市少年自然体験の船」を対象とした。表

1に平成 30 年の予定活動内容、表 2 に構成人員及び班編成をそれぞれ示した。予定活動内

容は役職員会議、事前班長研修会、団員事前研修会、沖縄県渡嘉敷島にある国立沖縄青少

年交流の家を拠点にした2泊3日の研修であった。この活動を 15 人の役職員で引率し、80

人の那覇市内の小中学生の研修を行った。当日は、台風の影響もあり、1 日目の活動内容

を変更して行った。

2.感想文のとりまとめ

本事業の最後の研修で団員と班長は感想文を書いた。また、指導者も本事業終了後に感

想文を提出した。団員と班長、指導者の感想文には、事象や語彙の説明、感想、決意の文

が含まれていた。本事業がキャリア発達の機会になる可能性を知るために、事象や語彙の

説明については省き、中学校キャリア教育の手引きの『キャリア教育アンケートの一例』

の項目 15)に書かれている「基礎的・汎用的能力」の「各能力における要素」に従って、団

員と班長及び指導者の思いや考えが示されている箇所を、筆者が抽出・分類した。団員の

感想文から、自分の思いや考えを示した 382 個の内容を抽出・分類した。班長の感想文か

ら、団員の変容や周囲との関係などから生じた班長自身の思いや考えを示した 57 個の内容

を抽出・分類した。指導者の感想文からは、団員と班長に対応しながら生じた指導者自身

の思いや考えを示した 19 個の内容を抽出・分類した。

表 1. 第 17 回那覇市少年自然体験の船 予定活動内容 月 日(曜日) 活 動 内 容

役職員会議 6月 26 日(火) 団長あいさつ-事業概要説明-役職員の構成及び職務-役職員自己紹介

-役割分担について-団員心得について-今後の日程-その他

事前

班長研修会 7月7日(土)

開会のことば-内容説明-班長自己紹介-レクリエーション-班長会議

-その他-閉会のことば

団員

事前研修会 7 月 14 日(土)

開会のことば-内容説明-班長紹介-アクティビティ決め

-その他-閉会のことば

1 日目 8月2日(木)

那覇泊港(とまりん 2 階デッキ)集合(8:15)-結団式-フェリー乗船

-青少年交流の家(海洋研修所)移動-海洋研修-星空観察

宿泊:国立沖縄青少年交流の家(海洋研修所)

2 日目 8月3日(金)

朝の集い-海洋研修-青少年交流の家(本館)移動-レクリエーション

-キャンプファイヤー

宿泊:国立沖縄青少年交流の家(海洋研修所)

3 日目 8月4日(土) 朝の集い-平和学習-自然観察-感想文作成-お別れセレモニー-渡嘉敷港移動

-フェリー乗船-泊港着(17:10)-解団式(17:30)-那覇泊港解散

表 2. 第 17 回那覇市少年自然体験の船 構成人員と班編成

参加人数 95 名

ア. 団員 那覇市内在住の小学校5・6年生( 男 :32 人 、 女 :32 人 )64 人

イ. 班長 那覇市内在住の中学生2・3年生( 男 :8 人 、 女 :8 人 )16 人

ウ. 役職員(15 人)の役割と所属

・団長 (1 人) :市民会議

・副団長 (1 人) :那覇市教育委員会生涯学習課

・事務局長(1 人) :市民会議

・総務係 (2人) :市民会議(那覇市教育委員会生涯学習課)

・研修及び生活安全係(9人) :那覇市内小中学校教諭

・保健係(1 人) :那覇市内小学校養護教諭

班編成 16 班 各班 5人の団員:班長(中学生 1 人)・団員(小学生 4 人)

2.那覇市少年自然体験の船

昭和 56 年、那覇市内の青少年の健全育成活動に関する団体の連合組織である那覇市青

少年健全育成市民会議(以下、市民会議とする)が発足した 13)。市民会議主催の事業の1

つとして、平成 14 年から、「那覇市少年自然体験の船」(独立行政法人国立青少年教育振興

機構助成活動)が始まり、平成 30 年までに 17 回行ってきた(だたし、平成 26 年は台風に

より短縮、平成 27 年は台風により中止)。本事業の趣旨は、①次代を担う青少年の健全育

成②自然体験活動を通して視野を広げ、これからの未来を担うリーダーとしての資質を持

ち、地域社会に貢献する青少年の育成の推進である。本事業は、役職員が小学 5・6 年生(以

下、「団員」と示す)と中学 2・3 年生(以下、「班長」と示す)を引率し、自然体験の中で

自分の役割を全うしていく。

本事業のような地域と連携した、離島体験活動が推進されていくことが、団員と班長だ

けでなく、指導者(以下、役職員のうち、本事業の研修及び生活安全係として配属されて

いる小中学校教師のことを「指導者」と示す)のキャリア発達を促進する機会となり、団

員と班長がこれからの変化の激しい社会を生き抜いていく力を身に付けていくことを、推

進していくと考える。ドナルド・E・スーパー(Donald. E. Super、-1994)は、「キャリア

発達とは、職業的自己概念を発達させ、実現させていくプロセスである。キャリア発達の

プロセスは統合と妥協のプロセスであり、そのなかで、生まれもった適性、身体的特徴、

さまざまな役割を観察したり担ったりする機会、役割をこなした結果を上司や仲間がどの

程度承認しているかの自己認識との間の相互作用によって自己概念は作られる」と示して

いる 14)。本事業では、離島という学校や家などの普段の場とは異なる場所において、初め

て会う人と一緒に様々な活動を行っていかなければならない状況に置かれる。そのため、

自分の役割を全うしつつ、様々な活動を通して、仲間のことを知ったり、仲間のできてい

ないところをフォローしたり、班長を自分のロールモデルとしていったりという経験を繰

り返す。この結果、団員と班長の自己概念が作られ、団員と班長は自分のできることを知

り、自分らしい生き方を考えていくことで、キャリア発達を促されていくことが考えられ

る。指導者にとっては、団員(小学生)と班長(中学生)という校種の異なる対象に対応

していく中で、小学校の指導者にとっては、自分が普段対象としている児童の将来像を、

中学校の指導者にとっては、自分が普段対象としている生徒の過去の姿を見つめることに

なる。そのため、このような経験を通して、団員と班長の成長を感じ、指導者が今後どの

ように教育に携わっていくのかを考えることで、指導者の自己概念に影響を与え、キャリ

ア発達が促されていくことになると考えられる。

3.研究の目的

これからの社会の中で、「生きる力」を子どもに育む方法の1つとして、キャリア教育

の推進があげられており、地域と連携した自然体験などの活動を異年齢で行っていくこと

が重要である。そこで本研究では、異学年集団で離島にて自然体験活動を行う「那覇市少

年自然体験の船」に参加した子ども(団員と班長)及び指導者の感想文の分析を通して、

本事業の特徴を明確にし、それが子ども(団員と班長)及び指導者のキャリア発達の機会

に及ぼす影響を明らかにすることで、本事業の発信・普及につなげることとする。

84 Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

Ⅱ.方法

1. 対象

本報告においては、平成 30 年の第 17 回「那覇市少年自然体験の船」を対象とした。表

1に平成 30 年の予定活動内容、表 2 に構成人員及び班編成をそれぞれ示した。予定活動内

容は役職員会議、事前班長研修会、団員事前研修会、沖縄県渡嘉敷島にある国立沖縄青少

年交流の家を拠点にした2泊3日の研修であった。この活動を 15 人の役職員で引率し、80

人の那覇市内の小中学生の研修を行った。当日は、台風の影響もあり、1 日目の活動内容

を変更して行った。

2.感想文のとりまとめ

本事業の最後の研修で団員と班長は感想文を書いた。また、指導者も本事業終了後に感

想文を提出した。団員と班長、指導者の感想文には、事象や語彙の説明、感想、決意の文

が含まれていた。本事業がキャリア発達の機会になる可能性を知るために、事象や語彙の

説明については省き、中学校キャリア教育の手引きの『キャリア教育アンケートの一例』

の項目 15)に書かれている「基礎的・汎用的能力」の「各能力における要素」に従って、団

員と班長及び指導者の思いや考えが示されている箇所を、筆者が抽出・分類した。団員の

感想文から、自分の思いや考えを示した 382 個の内容を抽出・分類した。班長の感想文か

ら、団員の変容や周囲との関係などから生じた班長自身の思いや考えを示した 57 個の内容

を抽出・分類した。指導者の感想文からは、団員と班長に対応しながら生じた指導者自身

の思いや考えを示した 19 個の内容を抽出・分類した。

表 1. 第 17 回那覇市少年自然体験の船 予定活動内容 月 日(曜日) 活 動 内 容

役職員会議 6月 26 日(火) 団長あいさつ-事業概要説明-役職員の構成及び職務-役職員自己紹介

-役割分担について-団員心得について-今後の日程-その他

事前

班長研修会 7月7日(土)

開会のことば-内容説明-班長自己紹介-レクリエーション-班長会議

-その他-閉会のことば

団員

事前研修会 7 月 14 日(土)

開会のことば-内容説明-班長紹介-アクティビティ決め

-その他-閉会のことば

1 日目 8月2日(木)

那覇泊港(とまりん 2 階デッキ)集合(8:15)-結団式-フェリー乗船

-青少年交流の家(海洋研修所)移動-海洋研修-星空観察

宿泊:国立沖縄青少年交流の家(海洋研修所)

2 日目 8月3日(金)

朝の集い-海洋研修-青少年交流の家(本館)移動-レクリエーション

-キャンプファイヤー

宿泊:国立沖縄青少年交流の家(海洋研修所)

3 日目 8月4日(土) 朝の集い-平和学習-自然観察-感想文作成-お別れセレモニー-渡嘉敷港移動

-フェリー乗船-泊港着(17:10)-解団式(17:30)-那覇泊港解散

表 2. 第 17 回那覇市少年自然体験の船 構成人員と班編成

参加人数 95 名

ア. 団員 那覇市内在住の小学校5・6年生( 男 :32 人 、 女 :32 人 )64 人

イ. 班長 那覇市内在住の中学生2・3年生( 男 :8 人 、 女 :8 人 )16 人

ウ. 役職員(15 人)の役割と所属

・団長 (1 人) :市民会議

・副団長 (1 人) :那覇市教育委員会生涯学習課

・事務局長(1 人) :市民会議

・総務係 (2人) :市民会議(那覇市教育委員会生涯学習課)

・研修及び生活安全係(9人) :那覇市内小中学校教諭

・保健係(1 人) :那覇市内小学校養護教諭

班編成 16 班 各班 5人の団員:班長(中学生 1 人)・団員(小学生 4 人)

85Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

されていた。「忍耐力」としては、努力すること、我慢することを経験することが次につな

がることなどが示されていた。次に多かった能力として、キャリアプランニング能力が 107

個分類でき、この能力の要素のうち、「多様性の理解」が 95 個分類できた。この内容とし

ては、海のきれいさや船に乗ったときの波の高さ、魚の大きさなど自然のことを理解でき

たことが示されていた。人間関係形成能力の中では、「チームワーク」が 48 個と最も多く

分類できた。「チームワーク」としては、大型カヌー体験やレクなどチームで取り組んでで

きたことや楽しかったことなどが示されていた。課題対応能力の中では、「本質の理解」が

21 個と最も多く分類できた。「本質の理解」としては、戦争に関することや集団のルール

に関することなどが示されていた。

2. 班長の感想文の分類

表 4 に班長の感想文の抽出内容の分類を示した。該当文が多いため、文の数を示すとと

もに代表される文を1つ示した。班長の感想文から抽出した内容は、全ての基礎的・汎用

的能力に分類することができた。これらのうち、最も多かった能力として、人間関係形成

能力が 29 個分類できた。班長としての役割として、団員に声をかけ、班をまとめていく

ことがあげられる。そのため、班長は、班員の個性を理解したり、声をかけるなどのよう

に班をまとめたり、リーダーとしての姿勢について考えたりしていたことが示されていた。

次に多かった能力として、課題対応能力が 16 個分類できた。班長としては、団員を牽引

する中で、生じる課題がある。時間を守らなくてはいけないことやうまく班員をまとめら

れていないことなどの様々な自分自身の課題に気づいて対応してきていたことが示され

ていた。今回の経験を通して、前向きに考える自己理解能力や、今後の自分の生き方に生

かせていけるキャリアプランニング能力も用いていたことが示されていた。

3. 指導者の感想文の分類

表 5 に指導者の感想文の抽出内容の分類を示した。指導者の感想文は基礎的・汎用的能

力のうち、人間関係形成能力と自己理解能力、課題対応能力について抽出内容を分類でき

た。指導者は、班長を通して、団員の育成を図ることが役割である。直接、団員に指導す

る場面もあるが、班長

の育成も考え、班長に団員を育成させていく視点を身に付けさせていく。指導者の感想文

で最も多く抽出できた課題対応能力の「本質の理解」として、団員や班長が本事業を通し

ての変容に関する記述が見られた。小中学生の交流や自然体験といった小中学校とは異な

る場での団員や班長の成長を目の当たりにすることで、指導者は自分自身の教師としての

仕事に関することを考えていたことが示されていた。

Ⅳ.考察

平成 11 年の中央教育審議会答申において、キャリア教育の必要性を提唱し、キャリア

教育の実施に当たっては家庭・地域と連携し、体験的な学習を重視することが示された 16)。

渡辺は、「キャリア教育は初等中等教育関係者だけに関係することではない。地域社会、企

業など、人々のキャリアサービスに関わる多くの人の協力が必要である」としている 17)。

本事業「那覇市少年自然体験の船」は、那覇市青少年健全育成市民会議が主催となり、那

Ⅲ.結果

1. 団員の感想文の分類

表 3 に団員の感想文の抽出内容の分類を示した。該当文が多いため、文の数を示すとと

もに代表される文を1つ示した。団員の感想文から抽出した内容は全ての基礎的・汎用的

能力に分類することができた。最も多かった能力として、自己理解能力が 119 個分類でき、

この要素のうち、「前向きに考える力」が 62 個、「忍耐力」が 32 個分類できた。「前向きに

考える力」としては、自分ができたことや取り組んでみると楽しかったなど、予想してい

た不安な気持ちなども活動を通していくことで前向きな気持ちになっていたことなどが示

表 3. 団員の感想文の抽出内容の分類

基礎的・ 汎用的能力

各能力における要素(数) 感想文の抽出内容(例)

人間関係形成

能力 (95)

他者の個性を理解する力(6) 負けても勝ったチームをはく手してすごいと思い自分もやりま

した。なので、思いやりがより成長した

他者に働きかける力(16) 負けても勝ったチームをはく手してすごいと思い自分もやりました。なので、思いやりがより成長した

コミュニケーションスキル(11)

自然体験の船では知らない人と友達になって協力して、出し物を考えたり、いろいろな行事をして仲を深めていくことが大切だと

学びました

チームワーク(48) 皆で左右をこぐタイミングを合わせないと真っすぐには、進まないということがわかったのでやっぱり皆との協力が大切

リーダーシップ(14) 私も、班長みたいに、たくましく、やさしいリーダーになりたいと思いました

自己理解能力 (119)

自己の役割の理解(2) キャンプファイヤーの前はたくさん練習しました。そして、本番では、自分の役目をしっかり果たせたので、とてもうれしかった

前向きに考える力(62) 普段できない貴重な体験ができて、本当によかった

自己の動機付け(2) 見方のアタックが、相手の選手にノーバウンドであたる所をみるだけでも、こうふんしてしまう

忍耐力(32) 海洋体験の時はやくしたいという気持ちをグッとこらえてがま

んしたおかげであとからとっても楽しむことができました

ストレスマネジメント(13) 自分が苦手なことをこくふくできたのでよかった

主体的行動(8) キャンプファイヤーの練習をがんばりました

課題対応能力 (61)

本質の理解(21) グループや班と協力し、一人一人が練習や本番を一生けん命取り組むことで成功につながることを気づきました

原因の追究(3) おどりも、つけくわえたことでよりおもしろくなるようにした

課題発見(8) この研修で学んだことを学級やふだんの生活の中で、集合時間にゆとりをもって行動していくことなどにいかしていきたい

計画立案(1) おふろの順番を決めたり、グループの中で色々な計画を立てることで、集団生活の大切さに気づきました

実行力(12) 練習より本番の方が声がでたと思いました

評価・改善(16) 自分が今やっていることを止めて先生の話を聞くこともできるようになった

キャリアプラ

ンニング能力 (107)

多様性の理解(95) 海がとてもきれい

将来設計(5) 将来、子どもを連れて海水浴をして、泳ぎのやり方を教えたい

選択(1) 柔道は、危なかったのでしませんでした

行動・改善(6) このことを生かし、いろんなことにちょうせんし、自分の苦手な

ことをこくふくしていき、自分自身を成長させていきたい

86 Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

されていた。「忍耐力」としては、努力すること、我慢することを経験することが次につな

がることなどが示されていた。次に多かった能力として、キャリアプランニング能力が 107

個分類でき、この能力の要素のうち、「多様性の理解」が 95 個分類できた。この内容とし

ては、海のきれいさや船に乗ったときの波の高さ、魚の大きさなど自然のことを理解でき

たことが示されていた。人間関係形成能力の中では、「チームワーク」が 48 個と最も多く

分類できた。「チームワーク」としては、大型カヌー体験やレクなどチームで取り組んでで

きたことや楽しかったことなどが示されていた。課題対応能力の中では、「本質の理解」が

21 個と最も多く分類できた。「本質の理解」としては、戦争に関することや集団のルール

に関することなどが示されていた。

2. 班長の感想文の分類

表 4 に班長の感想文の抽出内容の分類を示した。該当文が多いため、文の数を示すとと

もに代表される文を1つ示した。班長の感想文から抽出した内容は、全ての基礎的・汎用

的能力に分類することができた。これらのうち、最も多かった能力として、人間関係形成

能力が 29 個分類できた。班長としての役割として、団員に声をかけ、班をまとめていく

ことがあげられる。そのため、班長は、班員の個性を理解したり、声をかけるなどのよう

に班をまとめたり、リーダーとしての姿勢について考えたりしていたことが示されていた。

次に多かった能力として、課題対応能力が 16 個分類できた。班長としては、団員を牽引

する中で、生じる課題がある。時間を守らなくてはいけないことやうまく班員をまとめら

れていないことなどの様々な自分自身の課題に気づいて対応してきていたことが示され

ていた。今回の経験を通して、前向きに考える自己理解能力や、今後の自分の生き方に生

かせていけるキャリアプランニング能力も用いていたことが示されていた。

3. 指導者の感想文の分類

表 5 に指導者の感想文の抽出内容の分類を示した。指導者の感想文は基礎的・汎用的能

力のうち、人間関係形成能力と自己理解能力、課題対応能力について抽出内容を分類でき

た。指導者は、班長を通して、団員の育成を図ることが役割である。直接、団員に指導す

る場面もあるが、班長

の育成も考え、班長に団員を育成させていく視点を身に付けさせていく。指導者の感想文

で最も多く抽出できた課題対応能力の「本質の理解」として、団員や班長が本事業を通し

ての変容に関する記述が見られた。小中学生の交流や自然体験といった小中学校とは異な

る場での団員や班長の成長を目の当たりにすることで、指導者は自分自身の教師としての

仕事に関することを考えていたことが示されていた。

Ⅳ.考察

平成 11 年の中央教育審議会答申において、キャリア教育の必要性を提唱し、キャリア

教育の実施に当たっては家庭・地域と連携し、体験的な学習を重視することが示された 16)。

渡辺は、「キャリア教育は初等中等教育関係者だけに関係することではない。地域社会、企

業など、人々のキャリアサービスに関わる多くの人の協力が必要である」としている 17)。

本事業「那覇市少年自然体験の船」は、那覇市青少年健全育成市民会議が主催となり、那

87Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

自己肯定感を含む自己理解能力や、仲間づくりの大切さを含む人間関係形成能力、様々

なことの本質を理解し、生じた課題に対応していく課題対応能力、自然の尊さや本事業の

経験を次に生かしていくキャリアプランニング能力に関して、団員が育んできたことを、

団員の感想文の抽出内容が示していた。当初、人間関係などに不安を感じている団員もい

た。しかし、指導者や班長に誘導されながら、主体的に体験活動に取り組んでいく中で、

年齢も育った地域も異なる仲間からの励ましや支援を受けて、2泊 3日を過ごしていった。

目の前の自然に驚き、仲間と協力していく経験により気づいたチームワークや班長に導か

れた成功体験などを、団員は味わっていた。

班長は、団員をまとめるというリーダーとしての役割を全うしていく中で、基礎的・汎

用的能力を育んできたことが、班長の感想文の抽出内容が示していた。当初、うまく団員

をまとめることができるのかなどの不安を抱いていた班長もいた。団員は中学生である班

長を頼りとし、それに応えようとする班長の試行錯誤が、本事業の中でも観察できた。こ

のような経験を通して、小学生である団員の良さや知らない人との関係づくりの方法、リ

ーダーとしての姿勢などの人間関係形成能力や、自己肯定感を含む自己理解能力、他の班

表 5. 指導者の感想文の抽出内容の分類

基礎的・ 汎用的能力

各能力における要素(数) 感想文の抽出内容

人間関係 形成能力

(4)

他者に働きかける力(1) 同じ釜の飯を食うといったことを通して、大人も子どもも成長、さらなる繋がりが形成されていく

チームワーク(3)

子どもから友情や協働することの大切さを学ぶことができた。

明るく、班で仲良く力を合わせて頑張っている姿はとても感動

しました。 学校も学年もばらばらの皆が、こんなに団結することができるんだなと驚いた

自己理解能力 (6)

自己の役割の理解(3)

大きく成長していく子ども達の姿を近くで見ることができる

半端な気持ちでは務まらない

子どもの話を受け入れる、子ども達の力を信じて待つ

前向きに考える力(1) 無限の可能性を秘めた子ども達と関わる「教師」という職業を

していることに改めて誇りを持つ

自己の動機付け(2)

この経験を無駄にせず、普段の職務に活かそう

今回の経験で得たことを、私も小学校の一教員として、子ども

に還元していければいいな

課題対応能力 (9)

本質の理解(8)

小学校・中学校の職員が混じることで、それぞれの視点で子供達を捉え、その対応の仕方を学べる

子ども達の中には自分の本来の姿や持っている力を普段の学校や生活の中で出しきれていない子がいる

学校を離れ、自分のことを知らない仲間達と出会い、ありのままの自分を表現できたり、新たな自分を見つけたりすることができる

たった 3 日間しか一緒にいない小学生・中学生が、最終日に涙を流し合う

自然体験や親元を離れて共同生活をすることは、子どもの大きな成長に繋がる

(中学生の)話し方や立ち振る舞いの成長スピードが速いこと

に驚かされっぱなし

一回りも二回りも大きく成長した子どもの姿に感動

渡嘉敷島の2日間は小学生、中学生ともに大きな成長

評価・改善(1) 参加する子ども含め、スタッフもいろいろなトラブルや体験を

通して成長する良い機会

覇市の学校職員と協力して、自然体験を通して、地域の小中学生を育む活動である。この

活動は、団員と班長だけでなく、指導者としての教師のキャリア発達が促進されていく機

会になると考えた。

表 4.班長の感想文の抽出内容の分類

基礎的・ 汎用的能力

各能力における要素(数) 感想文の抽出内容(例)

人間関係形成能力

(29)

他者の個性を理解する力(5) 小学生の明るさや素直さなどたくさんの良いところがあり、一人一人の個性を見つけ小学生と仲良くすることができま

した

他者に働きかける力(7) 初めて会う人に、自分からやさしく声をかけることで、自分も相手も緊張がほぐれて、仲良くなりやすいと学び、これから生きていく中で生かしていきたい

コミュニケーションスキル(3) 相手がおそかったりしても文句をいったりせずに言葉づかいに気をつけてやさしい言葉をつかい話すことの大切さがわかりました

チームワーク(7) 同じ部屋に泊まったもう一人の班長と一緒に頑張ろうと決めました。自分ともう一人の班長のタッグなら、絶対に班員をまとめられると思いました

リーダーシップ(7) 上の立場から高圧的に接するのではなく、親しみやすく同じ

目線で接することが大切

自己理解能力

(7)

自己の役割の理解(1) このような変化は、私がリーダーであることと、最上級生で

あることという責任感による

前向きに考える力(4) 今回の経験を通して、今後、社会に出てもいろいろな人とのつながりを持てるようなひとになれるよう頑張っていきた

自己の動機付け(1) 何事にもチャレンジする、未来を創っていく自分を再確認することができた

主体的行動(1)

小学生などとの交流がある時には、全て自分一人でやるので

はなく、一緒にやったり、アドバイスしたりとたくさんの工夫をして、自分でもこんな事が出来たんだと発見があるような交流にしていきたい

課題対応能力 (16)

本質の理解(2) 様々な人との関わりの中で、人との関わりだけでなく、集団の中で自分しなければならないことを考え行動することが

できるようになった

原因の追究(1) 他の班長がどのように班員と接しているのか観察することにした。そしてある一つのことに気が付いた。それは、小学生と同じ目線で接しているということだ

課題発見(7) 早目に行ってみると、ほとんどの班長がそろっていて、とても驚き、自分が普段すごしている早さは、世の中通用しない

と思い、この課題を直していきたいと思いました

実行力(2) 物事を臨機応変に対応する大切さ

評価・改善(4)

カヌーは二人の息を合わせないと思うようにすすみません。

始めはあまり進まなかったけど、かけ声をかけると、上手く前に進めるようになりました

キャリアプラ

ンニング能力 (5)

学ぶこと・働くことの意義や

役割の理解(1)

頼まれたり、自分からした仕事は、終わった後の達成感を生

み、また感謝されるため私は満足感を得ました

多様性の理解(1) この自然を維持することの大切さ、人と生き物が共存していくことの大切さなど、改めて感じることができました

将来設計(2) 次の行動や、その次に何をもっていけばよいのかなどを見通して行動することができるようになりました

行動・改善(1) 戦争の事をよく知り、その残酷さを次に伝えていかないといけない

88 Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

自己肯定感を含む自己理解能力や、仲間づくりの大切さを含む人間関係形成能力、様々

なことの本質を理解し、生じた課題に対応していく課題対応能力、自然の尊さや本事業の

経験を次に生かしていくキャリアプランニング能力に関して、団員が育んできたことを、

団員の感想文の抽出内容が示していた。当初、人間関係などに不安を感じている団員もい

た。しかし、指導者や班長に誘導されながら、主体的に体験活動に取り組んでいく中で、

年齢も育った地域も異なる仲間からの励ましや支援を受けて、2泊 3日を過ごしていった。

目の前の自然に驚き、仲間と協力していく経験により気づいたチームワークや班長に導か

れた成功体験などを、団員は味わっていた。

班長は、団員をまとめるというリーダーとしての役割を全うしていく中で、基礎的・汎

用的能力を育んできたことが、班長の感想文の抽出内容が示していた。当初、うまく団員

をまとめることができるのかなどの不安を抱いていた班長もいた。団員は中学生である班

長を頼りとし、それに応えようとする班長の試行錯誤が、本事業の中でも観察できた。こ

のような経験を通して、小学生である団員の良さや知らない人との関係づくりの方法、リ

ーダーとしての姿勢などの人間関係形成能力や、自己肯定感を含む自己理解能力、他の班

表 5. 指導者の感想文の抽出内容の分類

基礎的・ 汎用的能力

各能力における要素(数) 感想文の抽出内容

人間関係 形成能力

(4)

他者に働きかける力(1) 同じ釜の飯を食うといったことを通して、大人も子どもも成長、さらなる繋がりが形成されていく

チームワーク(3)

子どもから友情や協働することの大切さを学ぶことができた。

明るく、班で仲良く力を合わせて頑張っている姿はとても感動

しました。 学校も学年もばらばらの皆が、こんなに団結することができるんだなと驚いた

自己理解能力 (6)

自己の役割の理解(3)

大きく成長していく子ども達の姿を近くで見ることができる

半端な気持ちでは務まらない

子どもの話を受け入れる、子ども達の力を信じて待つ

前向きに考える力(1) 無限の可能性を秘めた子ども達と関わる「教師」という職業を

していることに改めて誇りを持つ

自己の動機付け(2)

この経験を無駄にせず、普段の職務に活かそう

今回の経験で得たことを、私も小学校の一教員として、子ども

に還元していければいいな

課題対応能力 (9)

本質の理解(8)

小学校・中学校の職員が混じることで、それぞれの視点で子供達を捉え、その対応の仕方を学べる

子ども達の中には自分の本来の姿や持っている力を普段の学校や生活の中で出しきれていない子がいる

学校を離れ、自分のことを知らない仲間達と出会い、ありのままの自分を表現できたり、新たな自分を見つけたりすることができる

たった 3 日間しか一緒にいない小学生・中学生が、最終日に涙を流し合う

自然体験や親元を離れて共同生活をすることは、子どもの大きな成長に繋がる

(中学生の)話し方や立ち振る舞いの成長スピードが速いこと

に驚かされっぱなし

一回りも二回りも大きく成長した子どもの姿に感動

渡嘉敷島の2日間は小学生、中学生ともに大きな成長

評価・改善(1) 参加する子ども含め、スタッフもいろいろなトラブルや体験を

通して成長する良い機会

89Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

引用文献・参考文献・註

1) 中央教育審議会 「第1部 今後における教育の在り方〔(3)今後の教育の基本的

方向(b)子供たちの生活体験・自然体験等の機会の増加〕」『21世紀を展望した

我が国の教育の在り方について(第一次答申)』

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/960701.htm 2019年7月

15日 閲覧

2) 内閣府 「第3章 生育環境 第2節 体験活動」『平成26年度版 子ども・若者白

書(全体版)』平成26年、pp.12-13

3) 国立青少年教育振興機構 「[結果の概要]」『青少年の体験活動などに関する実態

調査(平成26年度調査)』平成30年、pp.19

4) 文部科学省 「第1部 学習指導要領等改訂の基本的な方向性」『幼稚園、小学校、

中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策などに

ついて(答申)』 平成28年、pp.7

5) 文部科学省 『中学校学習指導要領解説 総則編』東洋館出版社 2017年、pp.3

6) 教育の目的とは、教育基本法 第1条によると、「人格の完成を目指し、平和で民

主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身共に健康な国民の育

成を期す」とある

7) 文部科学省 『小学校学習指導要領』東洋館出版 2017年、pp.15

8) 文部科学省 『中学校学習指導要領』東洋館出版 2017年、pp.17

9) 文部科学省 「第1章キャリア教育とは」『中学校キャリア教育の手引き』教育出

版 2011年、pp.9-10

10) 国立政策研究所 「第1章 今、なぜ、「職業観・勤労観」の育成が求められるの

か」『児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について(調査報告書)』 平

成14年、pp.5-8

11) 文部科学省 「第1章 キャリア教育が求められる背景」『キャリア教育の推進に

関する総合的調査研究協力者会議 報告書』 平成16年、pp.5-9

12) 中央教育審議会 「第1章 キャリア教育・職業教育の課題と基本的方向性」『今

後の学校教育におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)』 平成

23年、pp25

13) 那覇市青少年健全育成市民会議 「創立5周年 記念誌」平山印刷 1986年、pp.47

14) 渡辺三枝子 「第1章 ドナルド・スーパー」『新版 キャリアの心理学 キャリア

支援への発達的アプローチ』ナカニシヤ出版 2007年、pp.30

15) 文部科学省 「第2章 中学校におけるキャリア教育の推進のために」『中学校キャ

リア教育の手引き』教育出版 2011年、pp.65

16) 中央教育審議会 「第6章 学校教育と職業生活との接続」『初等中等教育と高等教

育との接続の改善について』(答申) 平成11年、pp.39

17) 渡辺三枝子、E. L. ハー 「終章 キャリアカウンセラーへの新たな挑戦」『キャリ

アカウンセリング入門 人と仕事の橋渡し』 ナカニシヤ出版 2001年、pp.162

18) 沖縄県 「第2章 子どもの貧困を取り巻く現状と課題」『沖縄県子どもの貧困対策

計画【改定計画】』 平成31年、pp.7-22

長や団員と共に課題を乗り越えていく課題対応能力や見通しを持った行動や経験を次に生

かしていくキャリアプランニング能力について、班長は考えるようになっていった。

このような団員と班長を引率した指導者も、団員と班長の経験を目の当たりにして、自

分のこれまでの教師としての経験を振り返り、基礎的・汎用的能力を育んできたことが、

指導者の感想文の抽出内容が示していた。学校も年齢もバラバラであっても団結すること

ができ、協働することの大切さなどの人間関係形成能力、教師としての姿勢や誇りなどの

自己理解能力、いろいろなトラブルや体験を通して団員と班長が成長するなどの課題対応

能力などについて、指導者は考えるようになっていった。このような団員、班長及び指導

者の関係は、図 3 のような関係があると考えられる。団員は、本事業を通して班長や指導

者に関わってもらっている中で、基礎的・汎用的

能力を育んでいった。班長は、団員を様々な活動

に引っ張りながらも、指導者の支援を受けていく

中で、基礎的・汎用的能力を育んでいった。指導

者は、このような団員と班長に対応していく中で、

基礎的・汎用的能力を育んでいった。

学校や年齢の異なる班長や団員が、学校種の異

なる指導者との関係をつくるということは、本事

業の良さの1つと考える。沖縄県内の現状は、①

高校進学率(96.4 %)、大学進学率(39.5 %)はい

ずれも全国 47 位となっている②進路未決定率と

離婚率も全国1位である③不良行為少年補導人員

も全国の約 2 倍になっているなどがある 18)。この

ため、沖縄の子どもにとって、身近に見本となるロールモデルが他都道府県と比べて少な

い可能性がある。本事業では、団員にとって、自分の近い将来のロールモデルである班長

と 2 泊 3 日を一緒に過ごしていくことで、自分のキャリアの理想を持ちやすくなるため、

団員にとってのキャリア発達の機会になったと考えられる。また、班長にとっては、自分

が対応した団員に慕われることでの自己肯定感を育むとともに、自分に課せられた責任を

全うしようと、仲間とともに団員に対応していくため、班長にとってのキャリア発達の機

会になったと考えられる。指導者にとっては、異なる校種の団員と班長に対応していく中

で、団員と班長のキャリア発達の過程を直近で経験できるため、自分自身のキャリアつい

て考える機会になったと考えられる。

これからの日本をつくっていくのは現在の子どもである。その子どもは、各自の地域で

育てられ、その地域の大人を将来のロールモデルとして捉えていく。学校と地域が連携し

て子どもを育んでいくことが、子ども自身の無数にある将来の選択の道をより明確なもの

にしていくと考える。団員にとって身近なロールモデルである班長とさらにその将来の姿

の指導者が、通常の生活とは異なる自然体験を一緒に行うことで、3 者のキャリア発達の

機会となる。このような本事業は、キャリア教育の一環として継続していくことを望む。

班長

指導者 団員

関わり 関わり

関わり

基礎的・汎用的能力

基礎的・汎用的能力

基礎的・汎用的能力

図3. 3者の対応と基礎的・汎用的能力の関係

90 Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

引用文献・参考文献・註

1) 中央教育審議会 「第1部 今後における教育の在り方〔(3)今後の教育の基本的

方向(b)子供たちの生活体験・自然体験等の機会の増加〕」『21世紀を展望した

我が国の教育の在り方について(第一次答申)』

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chuuou/toushin/960701.htm 2019年7月

15日 閲覧

2) 内閣府 「第3章 生育環境 第2節 体験活動」『平成26年度版 子ども・若者白

書(全体版)』平成26年、pp.12-13

3) 国立青少年教育振興機構 「[結果の概要]」『青少年の体験活動などに関する実態

調査(平成26年度調査)』平成30年、pp.19

4) 文部科学省 「第1部 学習指導要領等改訂の基本的な方向性」『幼稚園、小学校、

中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策などに

ついて(答申)』 平成28年、pp.7

5) 文部科学省 『中学校学習指導要領解説 総則編』東洋館出版社 2017年、pp.3

6) 教育の目的とは、教育基本法 第1条によると、「人格の完成を目指し、平和で民

主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身共に健康な国民の育

成を期す」とある

7) 文部科学省 『小学校学習指導要領』東洋館出版 2017年、pp.15

8) 文部科学省 『中学校学習指導要領』東洋館出版 2017年、pp.17

9) 文部科学省 「第1章キャリア教育とは」『中学校キャリア教育の手引き』教育出

版 2011年、pp.9-10

10) 国立政策研究所 「第1章 今、なぜ、「職業観・勤労観」の育成が求められるの

か」『児童生徒の職業観・勤労観を育む教育の推進について(調査報告書)』 平

成14年、pp.5-8

11) 文部科学省 「第1章 キャリア教育が求められる背景」『キャリア教育の推進に

関する総合的調査研究協力者会議 報告書』 平成16年、pp.5-9

12) 中央教育審議会 「第1章 キャリア教育・職業教育の課題と基本的方向性」『今

後の学校教育におけるキャリア教育・職業教育の在り方について(答申)』 平成

23年、pp25

13) 那覇市青少年健全育成市民会議 「創立5周年 記念誌」平山印刷 1986年、pp.47

14) 渡辺三枝子 「第1章 ドナルド・スーパー」『新版 キャリアの心理学 キャリア

支援への発達的アプローチ』ナカニシヤ出版 2007年、pp.30

15) 文部科学省 「第2章 中学校におけるキャリア教育の推進のために」『中学校キャ

リア教育の手引き』教育出版 2011年、pp.65

16) 中央教育審議会 「第6章 学校教育と職業生活との接続」『初等中等教育と高等教

育との接続の改善について』(答申) 平成11年、pp.39

17) 渡辺三枝子、E. L. ハー 「終章 キャリアカウンセラーへの新たな挑戦」『キャリ

アカウンセリング入門 人と仕事の橋渡し』 ナカニシヤ出版 2001年、pp.162

18) 沖縄県 「第2章 子どもの貧困を取り巻く現状と課題」『沖縄県子どもの貧困対策

計画【改定計画】』 平成31年、pp.7-22

91Ⅱ 投稿原稿/異学年集団で行う自然体験が及ぼすキャリア発達の機会に関する実践報告

3.地域社会の現状より

(1)選挙常時啓発活動4)の現状

学校で主権者教育が高まる一方、地域で選挙啓発を推進する組織の現状は大変深刻なも

のがある。筆者が居住する福岡県5)では、選挙常時啓発において「福岡方式」と呼ばれる

選挙管理委員会(以下、選管)・教育委員会(以下、教委)・明るい選挙推進協議会(以

下、明推協)の三者による連携事業が展開されてきた〔図1〕。

図1 福岡県における選挙常時啓発事業の推進体制6)

この連携下で誕生したのが、「まちの政治をみつめよう学級(政治学級)」7)である。

昭和 41 年に設置され、県内 300 学級ほどまで広まった。以来、各自治体の選管・教委・

明推協が一体となってこの指導・育成にあたってきたが、メンバーの高齢化、後継者や指

導者の不足、活動予算の縮減等の理由により、現在は 138 学級にまで半減した8)〔表1〕。

表1 福岡県内の政治学級と明推協の推移

(2)選挙管理委員会の現状

福岡県筑豊地区の 11 自治体9)は、財政状況の逼迫に伴う組織体制のスリム化や職員の

削減が行われており、選管の職員体制にも大きな影響を与えている。選管の多くは「総務

課(庶務係等)」内に設置され、専任職員はほとんどなく少人数で他業務と兼務している。

選挙“常時”啓発を推進する立場にありながら、“常日頃から”選挙関係の業務を十分に

行えていない矛盾を抱えている。

※福岡県選挙管理委員会

「平成 30 年度福岡県明るい選挙

推進事業事務提要」より抜粋

【報告】

若者の政治参加を高める社会教育からの提案

- 子どもの頃の体験に着目して -

The proposition from social education to make political participation

of young people increase.

- Focus on childhood experiences.-

上野 修司 UENO Shuji

国立夜須高原青少年自然の家

要旨

若者の選挙離れが続く中、政治参加を図る取組が喫緊の課題になっている。現在、学校

では「社会に開かれた教育課程」の下で主権者教育が推進されているが、その連携先とし

て期待される地域社会は十分な受け皿とはなり得ていない状況である。両者が連携・協働

し若者の政治参加へと繋げていくためにも、地域の選挙常時啓発活動を活性化させること

が急務である。活動の当事者が参加する研修会をとおして、子どもの活動や家庭教育を支

援する提案をした結果、子どもや若者への啓発に関する様々なアイデアが出された。また、

子どもの頃の体験と政治参加意識の関連性について、研修会後のアンケートや大学生への

意識調査を基に検証してみた。

キーワード

選挙常時啓発、政治参加意識、18 歳選挙権、投票の量と質、子どもの体験

Ⅰ.主題設定の理由

1.若者の選挙離れより

若年層の低投票率が続いている。直近の国政選挙でも、その傾向が確認できる(後掲表

3)。健全な社会発展のためにも、若者による政治参加の必要性がずっと以前から説かれ

てきたが1)、近年は「いずれの選挙においても他の世代に比べて低く、しかもその差が拡

大してきている。(中略)投票率が低いのは、他の世代に比べて、政治的関心、投票義務

感、政治的有効性感覚が低いからである」2)と、分析されている。

2.学校での主権者教育の高まりより

平成 28 年7月の参議院議員選挙から、選挙権年齢が 18 歳に引き下げられ実施された。

しかし、従前の学校教育は「政治や選挙の仕組みは教えても、選挙の意義や重要性を理解

させたり、社会や政治に対する判断力、国民主権を担う公民としての意欲や態度を身につ

けさせたりするのに十分なものにはなっていない」3)状況であった。かかる指摘の中で、

平成 29 年3月に改訂された新学習指導要領には主権者教育の充実や高等学校の新科目「公

共」が盛り込まれ、18 歳選挙権と相まって学校では俄かにその取組が熱を帯びてきた。

92 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

3.地域社会の現状より

(1)選挙常時啓発活動4)の現状

学校で主権者教育が高まる一方、地域で選挙啓発を推進する組織の現状は大変深刻なも

のがある。筆者が居住する福岡県5)では、選挙常時啓発において「福岡方式」と呼ばれる

選挙管理委員会(以下、選管)・教育委員会(以下、教委)・明るい選挙推進協議会(以

下、明推協)の三者による連携事業が展開されてきた〔図1〕。

図1 福岡県における選挙常時啓発事業の推進体制6)

この連携下で誕生したのが、「まちの政治をみつめよう学級(政治学級)」7)である。

昭和 41 年に設置され、県内 300 学級ほどまで広まった。以来、各自治体の選管・教委・

明推協が一体となってこの指導・育成にあたってきたが、メンバーの高齢化、後継者や指

導者の不足、活動予算の縮減等の理由により、現在は 138 学級にまで半減した8)〔表1〕。

表1 福岡県内の政治学級と明推協の推移

(2)選挙管理委員会の現状

福岡県筑豊地区の 11 自治体9)は、財政状況の逼迫に伴う組織体制のスリム化や職員の

削減が行われており、選管の職員体制にも大きな影響を与えている。選管の多くは「総務

課(庶務係等)」内に設置され、専任職員はほとんどなく少人数で他業務と兼務している。

選挙“常時”啓発を推進する立場にありながら、“常日頃から”選挙関係の業務を十分に

行えていない矛盾を抱えている。

※福岡県選挙管理委員会

「平成 30 年度福岡県明るい選挙

推進事業事務提要」より抜粋

93Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

表3 18 歳選挙権が行われて以降の投票率

(2)投票の量と質《着眼2》

根津 16)は、明るい選挙推進運動の展開方法として「形式的に、多くの人の投票参加を求

めること。実質的に、住民の政治意識の向上を図ること。」を挙げ、特に後者が基本であ

るとしている。いわゆる投票の「量と質」に通じる示唆である。両者は不可分の関係にあ

り、どちらか一方に比重差が生じても問題があるとされている。藤井 17)も主権者教育は

「模擬選挙を行うことだけではないし、投票率を上げることだけが目的ではない。主権者

として必要な知識に基づいた問題意識、考察力・判断力・行動力を養うもの」としている。

2.若者への選挙啓発の手がかり

これらの着眼を踏まえ、地域の若者に対する選挙啓発の手がかりを整理してみた〔表4〕。

そして、研修会では表4②の手がかりを採用した。18 歳年齢までに政治参加意識をいかに

高めさせ、19 歳以降になっても高い意識の下で投票されるかが鍵になると考えた。

初めて行われた 18 歳の投票率は、近年、全体の投票率が低下 18)している中でそれとほ

ぼ同じ率であったことを勘案すれば、やはり 18 歳投票率も“低投票率”であったのではな

いか。それだけに、18 歳までの学校教育段階における児童・生徒への働きかけがより重要

性を増してくる。

表4 選挙啓発の手がかり

Ⅳ 研究の実際

1.啓発に向けた2つの視点

(1)直接的に働きかける対象

総務省「18 歳選挙権に関する意識調査」19)によると、18~20 歳の若者が回答した「選

挙や政治に関心を持つためにすべきこと」の第1位は「模擬選挙体験」(23.1%)であっ

た。実際に投票した後の感想の第1位が「投票は簡単だった」(38.6%)ことから、若者

にとって投票が“敷居が高く難しそうな手続き”に映っていたかが窺える。事前の取組次

第(模擬体験等)で、投票への不安を払しょくし、投票行動へと繋げることができるので

はないかと研修会では指摘した。総務省・文部科学省が作成した高校生向け副読本『私た

ちが拓く日本の未来』でも、実践編として模擬選挙の方法等を例示している 20)。

(2)間接的に働きかける対象

各自治体の明推協委員は、地元の団体代表者等でほぼ構成されている(前掲表2)。こ

れは、福岡県社会教育行政が行う通学合宿推進事業 21)における実行委員会の構成員とも酷

(3)明るい選挙推進協議会 10)の現状

筑豊地区には8自治体で明推協が設置されている。委員の多くが地域団体から推薦を受

けた形での充て職になっており、幅広い意見が活動に生かされる仕組みになっている〔表

2〕。しかし、年数回程度の集まりでしかなく、政治学級と同じく活動の形骸化やマンネ

リ化が見られる 11)。

表2 明るい選挙推進協議会の構成事例

4.選挙管理委員会と学校の連携課題より

筑豊地区では、選管と学校との連携において優れて先進的な取組が行われている。初の

18 歳選挙権の実施となった参議院議員選挙(2016)では、福岡県内4大学・1高等学校の

計5校で期日前投票所が開設されたが、うち3校が筑豊地区であった。

しかしながら、この取組は 18 歳投票が初めて行われる国政選挙に際しての、言わば“臨

時”の実施であり“常時”ではない。選挙が近づいた時にだけ啓発活動や主権者教育が盛

り上がるのではなく、計画的・継続的な連携のあり方が求められている。

Ⅱ 研究の目的

今後、地域と学校の連携・協働が期待されている 12)ことを思えば、地域が行う選挙常時

啓発も学校が行う主権者教育も一体となって、体系的に整備されていくことが望ましい。

そのためにも、両者を俯瞰できる社会教育の立場から選挙常時啓発活動を活性化させるこ

とは大変意義深いと考える。

このような将来的展望を見据えつつ、選挙啓発推進者に新たな活動の可能性を見出して

もらい、意欲が高まることをとおして地域の現状を変えていく一歩としたい。そして、若

者の政治参加へと繋げていきたい。

Ⅲ 研究の方法

かかる地域の現状を踏まえ、選挙常時啓発推進者が一堂に会する筑豊地区の研修会 13)

(以下、研修会)をとおして、社会教育の立場から新たな活動へのヒントとなる視点を提

案した。具体的には、18 歳選挙権下で行われた投票率に焦点を当て、その実態から啓発す

べき対象を絞り込むことで、活動への更なる意欲を引き出そうと試みた。すなわち、啓発

推進者の特性(前掲表2)から、「子どもの体験」に係る各種データを例示することが、

新たな気づきとして地域に住む子どもや若者への活動実践を誘発していくと考えた。

1.研修会(参加者)の着眼点 14)

(1)18 歳と 19 歳以降の投票率の隔たり《着眼1》

研修会では、18 歳投票が初めて行われた参議院議員選挙(2016)と衆議院議員選挙(2017)

での若者(18 歳~29 歳)の投票率に着目した 15)。どちらも 18 歳は全体の投票率に近い結

果となったが、19 歳以降は落ち込んでいく傾向にあった〔表3〕。

94 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

表3 18 歳選挙権が行われて以降の投票率

(2)投票の量と質《着眼2》

根津 16)は、明るい選挙推進運動の展開方法として「形式的に、多くの人の投票参加を求

めること。実質的に、住民の政治意識の向上を図ること。」を挙げ、特に後者が基本であ

るとしている。いわゆる投票の「量と質」に通じる示唆である。両者は不可分の関係にあ

り、どちらか一方に比重差が生じても問題があるとされている。藤井 17)も主権者教育は

「模擬選挙を行うことだけではないし、投票率を上げることだけが目的ではない。主権者

として必要な知識に基づいた問題意識、考察力・判断力・行動力を養うもの」としている。

2.若者への選挙啓発の手がかり

これらの着眼を踏まえ、地域の若者に対する選挙啓発の手がかりを整理してみた〔表4〕。

そして、研修会では表4②の手がかりを採用した。18 歳年齢までに政治参加意識をいかに

高めさせ、19 歳以降になっても高い意識の下で投票されるかが鍵になると考えた。

初めて行われた 18 歳の投票率は、近年、全体の投票率が低下 18)している中でそれとほ

ぼ同じ率であったことを勘案すれば、やはり 18 歳投票率も“低投票率”であったのではな

いか。それだけに、18 歳までの学校教育段階における児童・生徒への働きかけがより重要

性を増してくる。

表4 選挙啓発の手がかり

Ⅳ 研究の実際

1.啓発に向けた2つの視点

(1)直接的に働きかける対象

総務省「18 歳選挙権に関する意識調査」19)によると、18~20 歳の若者が回答した「選

挙や政治に関心を持つためにすべきこと」の第1位は「模擬選挙体験」(23.1%)であっ

た。実際に投票した後の感想の第1位が「投票は簡単だった」(38.6%)ことから、若者

にとって投票が“敷居が高く難しそうな手続き”に映っていたかが窺える。事前の取組次

第(模擬体験等)で、投票への不安を払しょくし、投票行動へと繋げることができるので

はないかと研修会では指摘した。総務省・文部科学省が作成した高校生向け副読本『私た

ちが拓く日本の未来』でも、実践編として模擬選挙の方法等を例示している 20)。

(2)間接的に働きかける対象

各自治体の明推協委員は、地元の団体代表者等でほぼ構成されている(前掲表2)。こ

れは、福岡県社会教育行政が行う通学合宿推進事業 21)における実行委員会の構成員とも酷

95Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

考えを主張し説得する力」の2つが強調されている。そして、これらは「学校だけではな

く家庭や地域社会によって得られる」25)としている。やはりこの2つの力も、同じように

地域・家庭から得られている「体験の力」を基盤にして、より一層育まれていくものとな

るのではないだろうか。

(2)子どもの体験と政治・選挙への関心の関係性

機構による別の調査報告では、子どもの様々な体験が政治や選挙への関心にも影響を及

ぼしていることが明らかとなっている 26)〔図2〕。自然体験・生活体験が多い子ほど、政

治や選挙に関心があると回答している。やはり、子どもの様々な体験を地域の側からも支

援することによって、いわゆる投票の“質”にあたる部分が涵養され、18 歳以降の投票行

動として“量”にも大きく作用してくるのではないか、と参加者に投げかけた。

図2 子どもの体験と政治・選挙への関心の関係性

3.投票行動を促す要因に関する選挙啓発推進者の意識

これらの内容を押さえ、研修会では地域や学校における子どもの活動及び家庭教育への

支援を提案し、アンケート 27)を参加者に実施してみた〔表7〕。

研修会以前から「子どもの頃

の体験」や「家庭教育」が将来 表7 研修会のアンケート内容と回答結果(N=50)

の投票行動に関係しているかど

うかについて、考えたことがあ

るか尋ねてみた(表7②③)。

②子どもの頃の体験との関係

性については、「考えたことが

ある」者も「考えたことはなかっ

た」も者もほぼ半々であった。

一方、③家庭教育との関係性

については、「考えたことがあ

る」者の方が「なかった」者よ

りもおよそ倍近くいた。子ども

の将来の投票行動は、家庭教育

に因る部分もあると認識してい

似している〔表5〕。選挙啓発推進者は居住地域での行事や学校支援ボランティアとして、

子どもとの接点も多いのではないか 22)。

この視座に立てば、年に数回の会合しかなく形骸化が感じられる明推協において、日常

的に啓発が行える場面や対象が見出せそうである。すなわち、地域や学校での子どもの活

動支援である。折しも、学校は「社会に開かれた教育課程」に向けて積極的に社会参加を

していこうとしており、地域の側からも主権者教育等で連携・協力ができそうである。

表5 通学合宿実行委員会の構成事例

2.子どもの頃の体験とその後の影響

(1)「体験の力」獲得と政治参加意識の醸成

研修会では、独立行政法人国立青少年教育振興機構(以下、機構)が行った「子どもの

体験活動の実態に関する調査研究」報告書(2010)の資料データも引用した 23)〔表6〕。

報告書には「子どもの頃の体験は、その後の人生に影響する」という副題 24)も付いている。

子どもの頃の6つの「体験」(①友だちとの遊び、②地域活動、③家族行事、④動植物と

のかかわり、⑤自然体験、⑥家事手伝い)と7つの側面「意識・価値観」(①自尊感情、

②共生感、③意欲・関心、④規範意識、⑤職業意識、⑥人間関係能力、⑦文化的作法・教

養)との関連を明らかにし、その7つの側面を「体験の力」と定義付けている。

18 歳年齢に近い高校2年生が 表6 高校2年生が獲得している「体験の力」

獲得している「体験の力」の多

くは、中学校段階までに「地域」

「家庭」から得ていることが見

て取れる。このデータに依拠す

るならば、地域や家庭教育で子

どもの健全な成長を支援するこ

とによって、将来良識ある公民

としての資質を備えた、政治参

加意識を高く持つ大人になり得

ることになる。これはすなわち、

一票の価値を理解した投票行動

や政治参加のできる主権者へと

成長するものと期待できる。

また、前掲した高校生向け副

読本『私たちが拓く日本の未来』

には、第一章の3「有権者として身に付けるべき資質とは」で、政治に参加するために必

要な力として「課題を多面的・多角的に考え、自分なりの考えを作っていく力」「自分の

96 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

考えを主張し説得する力」の2つが強調されている。そして、これらは「学校だけではな

く家庭や地域社会によって得られる」25)としている。やはりこの2つの力も、同じように

地域・家庭から得られている「体験の力」を基盤にして、より一層育まれていくものとな

るのではないだろうか。

(2)子どもの体験と政治・選挙への関心の関係性

機構による別の調査報告では、子どもの様々な体験が政治や選挙への関心にも影響を及

ぼしていることが明らかとなっている 26)〔図2〕。自然体験・生活体験が多い子ほど、政

治や選挙に関心があると回答している。やはり、子どもの様々な体験を地域の側からも支

援することによって、いわゆる投票の“質”にあたる部分が涵養され、18 歳以降の投票行

動として“量”にも大きく作用してくるのではないか、と参加者に投げかけた。

図2 子どもの体験と政治・選挙への関心の関係性

3.投票行動を促す要因に関する選挙啓発推進者の意識

これらの内容を押さえ、研修会では地域や学校における子どもの活動及び家庭教育への

支援を提案し、アンケート 27)を参加者に実施してみた〔表7〕。

研修会以前から「子どもの頃

の体験」や「家庭教育」が将来 表7 研修会のアンケート内容と回答結果(N=50)

の投票行動に関係しているかど

うかについて、考えたことがあ

るか尋ねてみた(表7②③)。

②子どもの頃の体験との関係

性については、「考えたことが

ある」者も「考えたことはなかっ

た」も者もほぼ半々であった。

一方、③家庭教育との関係性

については、「考えたことがあ

る」者の方が「なかった」者よ

りもおよそ倍近くいた。子ども

の将来の投票行動は、家庭教育

に因る部分もあると認識してい

97Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

(2)若者(大学生)への実態調査による示唆

研修会とは別の調査として、子どもの頃の体験が投票行動にいかに結びついているのか、

比較的 18 歳年齢に近く、選挙(投票)を経験したであろう大学生にアンケートを実施して

みた 28)〔表 10〕。

表 10 大学生へのアンケート内容と回答結果(N=349/n=337)

表 10「①外遊びや自然の中での活動体験」は、学生本人の自覚に負う個人差は否めない

が、その自覚の度合いをフィルターにして「②投票の有無」「③今後も投票に行くか」を

分析してみた。①活動体験で「ア 多く経験した」「イ ある程度経験した」「ウ ふつ

うである」者について、「②投票の有無」は大きな差異が感じられないようであった(「エ

あまり経験していない」「オ ほとんどしていない」者についてはサンプル数が非常に少

ないことから、ここでは敢えて言及を控える)。しかしながら、「③今後も投票に行くか」

については、①活動体験の経験度によって「必ず行く」という強い意思表示に差が感じら

れた(表 10、点線囲み部)。経験が多い者ほど、「必ず行く」意思を持つ傾向が窺える。

これは、前掲表4の手がかり「18 歳年齢までに高い政治参加意識を醸成しておく」に十分

な視点として、有効になり得るのではないかと考える。

2.課題

研修会をとおして、実際に地域の子どもや家庭を意識した活動にどれだけ結びついたの

か、或いは学校と連携・協働が進んだのか、そしてその努力が若者の政治参加として成果

に現れていくのか、地道な追跡調査が必要である。とりわけ、前掲表9で出されたアイデ

ることが窺えた。しかしながら、②・③について以前から「考えたことがある」者も「な

かった」者も、研修会をきっかけにして「関係がある」もしくは「ある程度関係がある」

と考えるに至った(表8)。前者は自身の考えをより強くする機会になったようであり、

後者は新たな気づきに繋がったと思われる。

表8 子どもの頃の体験・家庭教育と「将来の投票行動」の関係性について

Ⅴ 成果と課題

1.成果

(1)研修会の成果

研修会後のアンケート(前掲表7)では、「④今後、地域での子どもの活動に関わる機

会があれば、協力したいか」との問いに対し、67.3%が「協力したい」と答えた。「現在、

協力している」16.3%を加えると、実に 83.6%になる。子どもの体験の重要性が理解され

たものと考えたい。とりわけ、子どもや学校に関わるボランティアをしていない者のうち

75.0%(21/28 名)が、今後は「協力したい」と回答していた。これから先、子ども達への

選挙啓発をも念頭に入れた“常時”活動として、地域と学校の連携が更に促進される期待

が高まる。

参加者の感想にも、「投票呼びかけの大切さを認識した。まずは身近な人(家族や地域)

に対して。」「(地域も学校も家庭も)全て繋がっていると感じた。」とあり、啓発の対

象となる不特定多数の“曖昧な”有権者から脱却し、具体的な対象者がイメージされたよ

うである。従前から行われているビラ配り等の街頭活動は、啓発すべき対象範囲が広く一

方通行的であったことから、活動そのものの手応えや成果が実感できていなかったのも、

形骸化や閉塞感を助長する一因になっていたのではないだろうか。

なお、参加者からは今後地域での選挙啓発について様々なアイデアが出されている〔表

9〕。新たな活動として地域が前進する可能性も出てきた。

表9 参加者の間で出された新たな啓発アイデア

98 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

(2)若者(大学生)への実態調査による示唆

研修会とは別の調査として、子どもの頃の体験が投票行動にいかに結びついているのか、

比較的 18 歳年齢に近く、選挙(投票)を経験したであろう大学生にアンケートを実施して

みた 28)〔表 10〕。

表 10 大学生へのアンケート内容と回答結果(N=349/n=337)

表 10「①外遊びや自然の中での活動体験」は、学生本人の自覚に負う個人差は否めない

が、その自覚の度合いをフィルターにして「②投票の有無」「③今後も投票に行くか」を

分析してみた。①活動体験で「ア 多く経験した」「イ ある程度経験した」「ウ ふつ

うである」者について、「②投票の有無」は大きな差異が感じられないようであった(「エ

あまり経験していない」「オ ほとんどしていない」者についてはサンプル数が非常に少

ないことから、ここでは敢えて言及を控える)。しかしながら、「③今後も投票に行くか」

については、①活動体験の経験度によって「必ず行く」という強い意思表示に差が感じら

れた(表 10、点線囲み部)。経験が多い者ほど、「必ず行く」意思を持つ傾向が窺える。

これは、前掲表4の手がかり「18 歳年齢までに高い政治参加意識を醸成しておく」に十分

な視点として、有効になり得るのではないかと考える。

2.課題

研修会をとおして、実際に地域の子どもや家庭を意識した活動にどれだけ結びついたの

か、或いは学校と連携・協働が進んだのか、そしてその努力が若者の政治参加として成果

に現れていくのか、地道な追跡調査が必要である。とりわけ、前掲表9で出されたアイデ

99Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

で多様な取組を行うこと」が必要であるとした。

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1372381.htm、2020 年1月 18 日参照

13)福岡県・市町村選管及び県教委連携主管事業である「筑豊地区明るい選挙推進事業担

当者研修会」参加者 49 名(2017 年7月 10 日)、「飯塚市・嘉麻市・桂川町明るい選挙

推進大会」参加者 36 名(同年 11 月 22 日)、「田川地区明るい選挙推進協議会研修会」

参加者 55 名(2018 年2月 23 日)で、筆者は講師を務めた。(この3研修会は、全て筑

豊地区内で毎年開催されている。)

14)同3研修会において、筆者(講師)は主催者側との間で研修内容を事前協議し、2つ

の着眼点を共有した。そして、これらを参加者にも示しながら展開することにした。

15)総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」https://www.soumu.go.jp/

senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/index.html、2020 年1月 18 日参照

※実際の研修会(当時)では、資料作成及び分析時間の関係から速報値を用いた。

16)根津菊次郎「はしがき」『“まちの政治をみつめよう学級”』福岡県選挙管理委員会

編、1969、p.2

17)藤井剛「主権者教育への疑問に答えます」 明推協情報誌『Voters』30 号、2016、

pp.52-61.

18)総務省、前掲データ 15)

19)総務省「18 歳投票権に関する意識調査(報告書)」2016、p.32 及び p.22

https://www.soumu.go.jp/main_content/000457171.pdf、2020 年1月 18 日参照

20)総務省・文部科学省『私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付

けるために』2015、pp.50-71.

21)通学合宿とは、一定の期間子どもが親元を離れ、地域の公民館などに集団で寝泊まり

をして学校へ通うことである。福岡県では各小学校区で実行委員会が組織され、地域の

大人が指導や見守りをしている。子どもの育成だけでなく、地域の絆づくりにも繫がる

取組として広く行われている。

22)後掲する研修会アンケートの回答結果(表7①)では、学校や子どもの地域活動にお

いてボランティア等で関わっている者が、50 名中 19 名いることが判明した。

23)独立行政法人国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」

報告書 2010、p.50(表 4-3-②)

24)同機構、「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書〔概要〕2010、

https://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/62/File/10taiken-gaiyou.pdf、

2020 年1月 18 日参照

25)総務省・文部科学省、前掲書 20)、p.7

26)独立行政法人国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告

書(平成 24 年度調査)2014、p.130(図 285)及び p.132(図 399)

27)13)の3つ研修会ではほぼ同じ内容の研修を組んだが、本アンケートを用いた調査は、

最後の「田川地区明るい選挙推進協議会研修会」のみで実施した。

28)2018 年6月、中村学園大学講師の橋本一雄氏に協力をいただき、同大学栄養科学部・

教育学部・流通科学部・短期大学部の学生 349 名に対してアンケートを実施した。

アがその後どういった形で実現に及んだのかも注視していきたい。

また、本研究は研修会でのアンケート結果を基に論考したが、サンプル数(アンケート

回収数)が少ないため、選挙啓発活動推進者の実態を正確に把握したとは言い難い。大学

生(若者)に対する調査結果も同様であり、更なる調査の蓄積によって研究の精度を高め

ていきたい。そして「体験の力」が、有権者として身に付けるべき資質・能力とどれくら

い関連が見出せるのか、或いは数ある体験の中でも何が政治参加に有効であるのかを深く

掘り下げて究明していく必要がある。

引用文献・参考文献・注

1)財団法人明るい選挙推進協会『青年層に対する啓発活動について』1988

2)総務省:常時啓発事業のあり方等研究会「常時啓発事業のあり方研究会(最終報告書)」

2011、p.2

https://www.soumu.go.jp/main_content/000141752.pdf、2020 年 1 月 18 日参照

3)総務省:常時啓発事業のあり方研究会、同報告書、p.3

4)総務省「選挙常時啓発事業推進要綱」(1978)には、「民主政治の健全な発展を期す

るには、国民一人ひとりが主権者としての自覚と豊かな政治意識、高い選挙道義を身に

つけることが必要であり、そのためには長期的展望に立った地道な啓発活動」とある。

5)筆者は、平成 25 年と 29 年に福岡県教育庁の出先機関(教育事務所)で、県内6地区

の1つ筑豊地区で選挙常時啓発を担当した。本研究は、その実践を基に展開している。

6)福岡県選挙管理委員会「平成 30 年度明るい選挙推進事業事務提要」2018、p.5

7)「まちの政治をみつめよう学級」設置要領では、「地域住民の身の回りの問題がいか

に深く『まちの政治』とかかわりあいをもち、それに包含されているかを認識し、政治

に対する正しい理解を深めるためにまちの政治について学習し話しあいを行う」ことを

とおして、学級生が地域社会のオピニオンリーダーへと成長することが期待された。

8)福岡県で毎年開催されている「政治学級活性化研究会」において、県内どの地区も活

動の衰退ぶりが報告されている。したがって、本研究のサンプルとして採り上げている

「筑豊地区」の状況は、福岡県全体の姿を映し出しているとも言える。

9)飯塚市、田川市、嘉麻市、桂川町、香春町、添田町、糸田町、川崎町、大任町、

福智町、赤村(計3市7町1村)。筆者はこの選管全てに聞き取りをした。

10)国民の政治常識を高め、政治倫理を確立する運動を行うための「選挙常時啓発事業」

及び金のかからないきれいな選挙を呼びかける「選挙をきれいにする国民運動」(明る

く行われる選挙)を推進するために都道府県や市町村に設置されている組織。

11)筑豊地区明推協の現状について、各事務局に聞き取りをした。委員の多くは 60 歳代~

80 歳代の高齢者であり、政治学級生と年齢層がほぼ同じである。なお、前掲報告書 2)に

も、全国的に活動の停滞が課題として報告されており、筑豊地区や福岡県にとどまらな

い現状になっている。

12)文部科学省「主権者教育の推進に関する検討チーム」中間まとめ(2016)では、主権

者教育の目的を「主権者として社会の中で自立し、他者と連携・協働しながら、社会を

生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一人として主体的に担うことができる

力を身に付けさせること」とし、「学校・家庭・地域が互いに連携・協働し、社会全体

100 Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

で多様な取組を行うこと」が必要であるとした。

https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/ikusei/1372381.htm、2020 年1月 18 日参照

13)福岡県・市町村選管及び県教委連携主管事業である「筑豊地区明るい選挙推進事業担

当者研修会」参加者 49 名(2017 年7月 10 日)、「飯塚市・嘉麻市・桂川町明るい選挙

推進大会」参加者 36 名(同年 11 月 22 日)、「田川地区明るい選挙推進協議会研修会」

参加者 55 名(2018 年2月 23 日)で、筆者は講師を務めた。(この3研修会は、全て筑

豊地区内で毎年開催されている。)

14)同3研修会において、筆者(講師)は主催者側との間で研修内容を事前協議し、2つ

の着眼点を共有した。そして、これらを参加者にも示しながら展開することにした。

15)総務省「国政選挙の年代別投票率の推移について」https://www.soumu.go.jp/

senkyo/senkyo_s/news/sonota/nendaibetu/index.html、2020 年1月 18 日参照

※実際の研修会(当時)では、資料作成及び分析時間の関係から速報値を用いた。

16)根津菊次郎「はしがき」『“まちの政治をみつめよう学級”』福岡県選挙管理委員会

編、1969、p.2

17)藤井剛「主権者教育への疑問に答えます」 明推協情報誌『Voters』30 号、2016、

pp.52-61.

18)総務省、前掲データ 15)

19)総務省「18 歳投票権に関する意識調査(報告書)」2016、p.32 及び p.22

https://www.soumu.go.jp/main_content/000457171.pdf、2020 年1月 18 日参照

20)総務省・文部科学省『私たちが拓く日本の未来 有権者として求められる力を身に付

けるために』2015、pp.50-71.

21)通学合宿とは、一定の期間子どもが親元を離れ、地域の公民館などに集団で寝泊まり

をして学校へ通うことである。福岡県では各小学校区で実行委員会が組織され、地域の

大人が指導や見守りをしている。子どもの育成だけでなく、地域の絆づくりにも繫がる

取組として広く行われている。

22)後掲する研修会アンケートの回答結果(表7①)では、学校や子どもの地域活動にお

いてボランティア等で関わっている者が、50 名中 19 名いることが判明した。

23)独立行政法人国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」

報告書 2010、p.50(表 4-3-②)

24)同機構、「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」報告書〔概要〕2010、

https://www.niye.go.jp/kanri/upload/editor/62/File/10taiken-gaiyou.pdf、

2020 年1月 18 日参照

25)総務省・文部科学省、前掲書 20)、p.7

26)独立行政法人国立青少年教育振興機構「青少年の体験活動等に関する実態調査」報告

書(平成 24 年度調査)2014、p.130(図 285)及び p.132(図 399)

27)13)の3つ研修会ではほぼ同じ内容の研修を組んだが、本アンケートを用いた調査は、

最後の「田川地区明るい選挙推進協議会研修会」のみで実施した。

28)2018 年6月、中村学園大学講師の橋本一雄氏に協力をいただき、同大学栄養科学部・

教育学部・流通科学部・短期大学部の学生 349 名に対してアンケートを実施した。

101Ⅱ 投稿原稿/若者の政治参加を高める社会教育からの提案

Ⅲ 調査研究報告

Ⅱ 投稿原稿/青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿査読者一覧

青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿査読者一覧(50 音順)

岩崎 久美子 放送大学教授

金藤 ふゆ子 文教大学教授

小林 孝雄 文教大学教授

島貫 織江 小田原短期大学助教

白木 賢信 常葉大学教授

坂口 緑 明治学院大学教授

坂本 昭裕 筑波大学教授

鈴木 美枝子 玉川大学教授

添田 晴雄 大阪市立大学教授

瀧 直也 信州大学講師

築山 泰典 福岡大学教授

坪井 龍太 大正大学准教授

梨本 雄太郎 宮城教育大学教授

西島 大祐 鎌倉女子大学短期大学部准教授

二宮 雅也 文教大学准教授

濱谷 弘志 北海道教育大学准教授

蓬田 高正 天理大学講師

渡邉 仁 筑波大学助教

※ 敬称略

102 Ⅱ 投稿原稿/青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿査読者一覧

Ⅲ 調査研究報告

2

2011 年:「高校生の生活と留学に関する調査」(財団法人日本青少年研究所)、以下同様 図 3 海外留学に興味あるか(「興味がある」「やや興味がある」と回答した割合)

図 4 外国へ留学したいか(「留学したいと思わない」と回答した割合)

2 留学したくない理由のトップは「日本のほうが暮らしやすいから」であり、留学した

い理由のトップは「いろいろなことを体験したいから」である。

43.9

56.8

57.6

76.3

52.2

63.1

58.1

74.3

49.7

65.9

59.0

69.6

63.0

75.9

60.2

80.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%

日本

米国

中国

韓国

2018年

2011年

日本

中国

韓国

52.944.8

49.9

26.9

47.238.8

42.9

22.8

58.3

45.3 47.8

36.443.9

31.225.3

10.1

0%

20%

40%

60%

男 女 男 女 男 女 男 女

日本 米国 中国 韓国

2018年 2011年

留学したくない理由について、日本の高校生は、「日本のほうが暮らしやすいから」

「外国で一人で生活する自信がないから」「言葉の壁があるから」「面倒だから」の順

に回答した割合が高い(図 5)。

一方、留学したい理由について、4か国とも、「いろいろなことを体験したいから」

と回答した割合が高い。そのほかに、日本の高校生は、「語学力を身につけたいから」

「視野を広げたいから」と回答した割合も高かった(図 6)。

米国

1

1 高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

<キーワード>

留学、外国への関心、自己特性 国立青少年教育振興機構は、平成 30 年に日本、米国、中国、韓国の4か国の高校生を対

象として、留学に関する意識調査を行った。調査は、質問紙を用いて学校で生徒に記入し

てもらう方法で、平成 30 年9月~11 月に、4か国が同時に実施した。有効回答者数は、

日本 1,967 名(17 地域)、米国 1,504 名(15 地域)、中国 2,937 名(6地域、各地域で都市

部と郊外から2校ずつ抽出)、韓国 1,232 名(15 地域)となっている。

Ⅰ 調査結果からみた日本の高校生の特徴

1 留学に対する関心が低い

日本の高校生が、海外留学に「興味がある」「やや興味がある」と回答した割合は5

割強で、4か国中最も低い(図 1)。また、「外国へ留学したいと思わない」と回答した

者の割合が5割弱で、4か国中最も高い(図 2)。

2011 年の調査結果と比べると、日本の高校生は、「海外留学に興味がある」と回答し

た割合が男女とも低くなっている(図 3)。一方で、「留学したいと思わない」と回答し

た男子の割合も低くなっている(図 4)。

図 1 海外留学に興味があるか

25.5

32.0

20.3

26.5

25.5

35.1

37.9

40.7

30.7

20.5

30.0

26.5

17.6

9.2

9.9

6.3

0% 20% 40% 60% 80% 100%

日本

米国

中国

韓国

興味がある やや興味がある

あまり興味がない 全く興味がない

「無回答」の割合を表記していない。以下同様)

図 2 もし可能なら、外国へ留学したいと思いますか

48.6

5.1

1.9

35.6

7.0

38.4

7.7

6.6

35.0

8.1

42.6

3.0

4.4

22.3

25.2

31.7

16.3

18.1

24.6

9.3

0% 10% 20% 30% 40% 50%

留学したいと思わない

高校在学中に留学したい

高校を卒業したら、すぐに

留学したい

大学在学中に、留学したい

大学卒業後、留学したい

日本

米国

中国

韓国

104 Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

2

2011 年:「高校生の生活と留学に関する調査」(財団法人日本青少年研究所)、以下同様 図 3 海外留学に興味あるか(「興味がある」「やや興味がある」と回答した割合)

図 4 外国へ留学したいか(「留学したいと思わない」と回答した割合)

2 留学したくない理由のトップは「日本のほうが暮らしやすいから」であり、留学した

い理由のトップは「いろいろなことを体験したいから」である。

43.9

56.8

57.6

76.3

52.2

63.1

58.1

74.3

49.7

65.9

59.0

69.6

63.0

75.9

60.2

80.8

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%

日本

米国

中国

韓国

2018年

2011年

日本

中国

韓国

52.944.8

49.9

26.9

47.238.8

42.9

22.8

58.3

45.3 47.8

36.443.9

31.225.3

10.1

0%

20%

40%

60%

男 女 男 女 男 女 男 女

日本 米国 中国 韓国

2018年 2011年

留学したくない理由について、日本の高校生は、「日本のほうが暮らしやすいから」

「外国で一人で生活する自信がないから」「言葉の壁があるから」「面倒だから」の順

に回答した割合が高い(図 5)。

一方、留学したい理由について、4か国とも、「いろいろなことを体験したいから」

と回答した割合が高い。そのほかに、日本の高校生は、「語学力を身につけたいから」

「視野を広げたいから」と回答した割合も高かった(図 6)。

米国

105Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

4

3 留学の目的は「語学の習得」が多い

図 7 留学の最も重要な目的

4 外国への関心が低い

図 8 外国への関心(「よくあてはまる」「まああてはまる」と回答した割合)

67.1

70.1

40.4

34.0

24.6

21.8

42.0

42.9

4.6

3.7

10.0

15.4

32.2

43.3

35.6

22.1

15.8

11.3

23.4

21.0

34.6

22.1

15.6

18.2

11.1

14.4

24.3

21.0

5.7

9.8

6.7

14.8

0% 50% 100%

2018年

2011年

2018年

2011年

2018年

2011年

2018年

2011年

日本

米国

中国

韓国

語学の習得 学位取得 専門技術や資格の取得 その他

日本

米国

中国

韓国

80.8

78.1

71.1

71.1

54.7

46.8

36.5

86.0

83.6

84.5

80.8

74.3

53.6

59.5

89.5

87.9

81.2

78.0

71.7

50.0

36.1

93.5

86.0

78.7

76.8

60.3

58.8

56.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

私は外国へ旅行したい

私は外国の文化や生活に興味がある

私は外国の人と友だちになりたい

私は外国の人と話をしてみたい

私は外国語が好きだ

私は外国の生活に憧れている

私は将来、外国で働いてみたい

日本

米国

中国

韓国

日本の高校生が、外国への関心についての7項目のうち、6項目の肯定率(「よくあ

てはまる」「まああてはまる」と回答した割合)は、4か国中最も低い(図 8)。

日本の高校生が最も重要な留学の目的とするのは、「語学の習得」であり、「学位の取

得」や専門分野の勉強を希望する割合が低い。7年前に比べて、「専門技術や資格の取

得」の割合がやや増えている(図 7)。

3

図 5 外国へ留学したいと思わない理由は何ですか

(複数回答)

54.0

48.1

46.1

31.2

30.5

24.3

24.1

17.7

13.3

9.5

9.0

2.1

5.0

54.8

39.9

53.0

13.5

25.1

34.7

33.4

20.1

58.9

5.9

27.0

15.3

6.8

45.5

29.4

36.8

28.2

42.0

34.7

37.2

23.6

55.3

12.0

18.8

12.7

3.2

16.4

45.4

56.2

29.2

29.0

27.7

42.8

12.6

22.6

9.0

1.8

1.0

4.6

母国のほうが暮らしやすい

から

外国で一人で生活する自

信がないから

言葉の壁があるから

面倒だから

治安が悪いから

経済的に難しいから

外国の生活になじめない

から

外国に魅力を感じないから

親元から離れたくないから

留学試験が難しいから

母国の教育のほうが私に

合うから

母国での就職に不利にな

るから

その他

日本(N=955)

米国(N=577)

中国(N=1250)

韓国(N=390)

図 6 外国へ留学したい理由(複数回答)

77.2

74.3

71.7

36.0

31.8

23.5

22.8

21.3

11.1

5.7

5.1

2.9

2.2

2.8

75.6

66.1

78.7

41.9

53.6

52.8

34.6

48.5

29.3

18.8

33.3

12.0

7.5

7.3

75.5

54.3

85.1

21.5

33.8

63.0

63.0

48.6

51.5

42.4

4.5

6.6

12.2

2.3

78.0

58.6

62.2

47.3

20.8

29.3

46.3

33.1

36.6

23.6

3.2

1.8

24.2

1.9

いろいろなことを体験したいから

語学力を身につけたいから

視野を広げたいから

外国で生活したいから

友だちを作りたいから

その国の進んだ知識を獲得した

いから

興味のある専門分野を学びたい

から

将来の就職が有利になるから

よりよい教育環境を求めたいから

外国で学位を取りたいから

親(保護者)や先生、知人が勧め

るから

多くの友だちが留学するから

国内の進学競争が激しいから

その他

日本(N=976)

米国(N=864)

中国(N=1614)

韓国(N=842)

106 Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

4

3 留学の目的は「語学の習得」が多い

図 7 留学の最も重要な目的

4 外国への関心が低い

図 8 外国への関心(「よくあてはまる」「まああてはまる」と回答した割合)

67.1

70.1

40.4

34.0

24.6

21.8

42.0

42.9

4.6

3.7

10.0

15.4

32.2

43.3

35.6

22.1

15.8

11.3

23.4

21.0

34.6

22.1

15.6

18.2

11.1

14.4

24.3

21.0

5.7

9.8

6.7

14.8

0% 50% 100%

2018年

2011年

2018年

2011年

2018年

2011年

2018年

2011年

日本

米国

中国

韓国

語学の習得 学位取得 専門技術や資格の取得 その他

日本

米国

中国

韓国

80.8

78.1

71.1

71.1

54.7

46.8

36.5

86.0

83.6

84.5

80.8

74.3

53.6

59.5

89.5

87.9

81.2

78.0

71.7

50.0

36.1

93.5

86.0

78.7

76.8

60.3

58.8

56.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

私は外国へ旅行したい

私は外国の文化や生活に興味がある

私は外国の人と友だちになりたい

私は外国の人と話をしてみたい

私は外国語が好きだ

私は外国の生活に憧れている

私は将来、外国で働いてみたい

日本

米国

中国

韓国

日本の高校生が、外国への関心についての7項目のうち、6項目の肯定率(「よくあ

てはまる」「まああてはまる」と回答した割合)は、4か国中最も低い(図 8)。

日本の高校生が最も重要な留学の目的とするのは、「語学の習得」であり、「学位の取

得」や専門分野の勉強を希望する割合が低い。7年前に比べて、「専門技術や資格の取

得」の割合がやや増えている(図 7)。

107Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

6

6 日・米・中・韓4か国とのかかわり

図 11 米・中・韓3か国の高校生の日本とのかかわり

図 12 日本の高校生の米・中・韓3か国とのかかわり

22.7

19.5

25.3

29.7

12.2

27.0

42.2

19.3

5.2

8.2

11.4

44.1

57.9

75.4

34.2

22.8

55.5

29.8

8.3

13.1

8.8

6.7

32.8

42.4

75.4

21.3

20.0

69.2

36.8

10.9

32.0

9.7

10.6

0% 20% 40% 60% 80%

日本のテレビ番組や新聞、雑誌、本を見る

日本の映画や音楽を見たり聞いたりする

日本の漫画やアニメを見る

日本のゲームをする

日本のウェブサイトを見る

日本の製品をもっている

日本のことが好き

親たちは、日本が好き

日本に行ったことがある

日本に親戚や自国の友人がいる

日本の友人や知り合いがいる

米国

中国

韓国

42.3

72.9

25.3

30.4

22.4

50.1

37.7

15.8

16.0

9.8

12.3

7.7

4.3

2.1

10.7

3.9

58.6

8.0

4.2

5.2

3.5

6.6

21.1

34.1

4.4

4.5

9.6

39.8

23.0

9.9

6.3

2.7

6.2

0% 20% 40% 60% 80%

その国のテレビ番組や新聞、雑誌、本を見る

その国の映画や音楽を見たり聞いたりする

その国の漫画やアニメを見る

その国のゲームをする

その国のウェブサイトを見る

その国の製品をもっている

その国のことが好き

親たちは、その国が好き

その国に行ったことがある

その国に親戚や自国の友人がいる

その国の友人や知り合いがいる

米国

中国

韓国

中国と韓国の高校生の 75%は、「日本の漫画やアニメを見る」と回答し、日本の高校

生の 73%は、「米国の映画や音楽を見たり聞いたりする」と回答している(図 11~12)。

5

5 日・米・中・韓4か国への関心

図 9 日本の高校生の米・中・韓3か国への関心

*2005 年:「高校生の学習意識と日常生活」(財団法人日本青少年研究所、以下同様)

図 10 米・中・韓3か国の高校生の日本への関心

40.2

38.5

34.9

11.2

14.3

14.8

21.6

19.1

13.6

46.8

44.0

40.7

31.4

32.9

28.8

36.0

35.4

32.0

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90%

2018年

2011年

2005年

2018年

2011年

2005年

2018年

2011年

2005年

米国

中国

韓国

とても関心がある まあ関心がある

米国

中国

韓国

28.4

27.0

24.2

27.9

25.2

22.2

23.7

18.2

28.9

30.5

37.1

28.8

39.8

31.1

34.1

41.7

48.8

43.2

0% 20% 40% 60% 80%

2018年

2011年

2005年

2018年

2011年

2005年

2018年

2011年

2005年

米国

中国

韓国

とても関心がある まあ関心がある

米国

中国

韓国

日本の高校生は、米国への関心が高く、中国や韓国への関心が低い。一方、日本に

関心があると回答した割合は、中国が最も高く、次いで韓国、米国の順となっている。

2005 年、2011 年の調査と比べて、日本の高校生は米国と韓国への関心が高くなり、

中国への関心がやや低くなっている。一方、中国の高校生は日本への関心が高くなっ

ている(図 9~10)。

108 Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

6

6 日・米・中・韓4か国とのかかわり

図 11 米・中・韓3か国の高校生の日本とのかかわり

図 12 日本の高校生の米・中・韓3か国とのかかわり

22.7

19.5

25.3

29.7

12.2

27.0

42.2

19.3

5.2

8.2

11.4

44.1

57.9

75.4

34.2

22.8

55.5

29.8

8.3

13.1

8.8

6.7

32.8

42.4

75.4

21.3

20.0

69.2

36.8

10.9

32.0

9.7

10.6

0% 20% 40% 60% 80%

日本のテレビ番組や新聞、雑誌、本を見る

日本の映画や音楽を見たり聞いたりする

日本の漫画やアニメを見る

日本のゲームをする

日本のウェブサイトを見る

日本の製品をもっている

日本のことが好き

親たちは、日本が好き

日本に行ったことがある

日本に親戚や自国の友人がいる

日本の友人や知り合いがいる

米国

中国

韓国

42.3

72.9

25.3

30.4

22.4

50.1

37.7

15.8

16.0

9.8

12.3

7.7

4.3

2.1

10.7

3.9

58.6

8.0

4.2

5.2

3.5

6.6

21.1

34.1

4.4

4.5

9.6

39.8

23.0

9.9

6.3

2.7

6.2

0% 20% 40% 60% 80%

その国のテレビ番組や新聞、雑誌、本を見る

その国の映画や音楽を見たり聞いたりする

その国の漫画やアニメを見る

その国のゲームをする

その国のウェブサイトを見る

その国の製品をもっている

その国のことが好き

親たちは、その国が好き

その国に行ったことがある

その国に親戚や自国の友人がいる

その国の友人や知り合いがいる

米国

中国

韓国

中国と韓国の高校生の 75%は、「日本の漫画やアニメを見る」と回答し、日本の高校

生の 73%は、「米国の映画や音楽を見たり聞いたりする」と回答している(図 11~12)。

109Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

7

7 日本人のイメージとして「礼儀正しい」「規則を守る」と回答した割合が高い

図 13 日本、米国、中国の高校生がもっている日本人のイメージ

8 自国への貢献意識が低い

52.5

47.9

47.7

47.3

46.9

43.5

28.1

27.3

22.7

21.7

39.9

38.6

32.9

18.2

56.6

53.6

32.4

12.5

15.6

29.7

39.6

24.7

56.7

26.6

73.2

77.8

69.4

46.3

16.1

33.6

33.2

59.0

5.0

0% 20% 40% 60% 80%

勤勉だ

創造性がある

親切

礼儀正しい

規則を守る

責任感が強い

ユーモアがある

正義感がある

愛国心が強い

集団主義

その国の人のことはよく知らない

米国

中国

日本

日本の高校生は、「国の発展は自分の発展につながっている」「私は国のために尽くし

たい」の肯定率が4か国中最も低い。一方で、「日本で暮らすことに満足している」「自

分の国が好きだ」の肯定率が9割以上と高い(図 14~図 17)。

日本人のイメージとして、米・中の高校生が回答した割合が高いのは「礼儀正しい」

「規則を守る」である。日本の高校生は、「礼儀正しい」「親切」「規則を守る」「集団

主義」「勤勉だ」の順に回答した割合が高い(図 13)。

図 15 私は国のために尽くしたい

9.8

52.5

68.7

15.8

37.6

34.2

26.7

43.1

日本

米国

中国

韓国

よくあてはまる まああてはまる

図 14 国の発展は自分の発展につながっている

9.9

13.8

46.9

18.8

39.7

38.6

42.4

53.7

日本

米国

中国

韓国

よくあてはまる まああてはまる

110 Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

8

9 自己肯定感が低く、将来に対する不安が強い

図 18 自己肯定感(「よくあてはまる」「まああてはまる」と回答した割合)

80.8

78.1

78.0

67.7

61.1

50.4

48.4

61.2

59.9

96.6

91.1

53.1

79.7

80.7

40.0

86.2

80.5

72.5

74.8

91.7

70.0

52.5

88.1

81.4

65.3

65.8

80.1

73.5

0% 20% 40% 60% 80% 100%

自分はダメな人間だと思うことがある

今の自分を変えたい

打ち込みたいことがある

得意なことをもっている

今の生活環境を変えたい

私は他の人々に劣らず価値のある人間である

今の自分が好きだ

日本

米国

中国

韓国

図 16 自分の国で暮らすことに満足している

56.9

57.3

68.8

24.5

36.0

30.8

25.8

44.4

日本

米国

中国

韓国

よくあてはまる まああてはまる

図 17 自分の国が好きだ

43.1

48.5

77.1

22.8

47.1

35.4

19.6

49.8

日本

米国

中国

韓国

よくあてはまる まああてはまる

日本の高校生は、「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」「今の自分が好き

だ」に対し、「よくあてはまる」「まああてはまる」と回答した割合がいずれも約5割に

とどまり、米・中・韓に比べて際立って低い。一方、「自分はダメな人間だと思うこと

がある」の肯定率が8割を超え、米・中・韓に比べて著しく高い(図 18)。

また、日本の高校生は、「自分の将来に不安を感じている」の肯定率が7割を超え、

4か国中最も高い。一方、「将来、働きたい職業分野で専門職として活躍したい」「将来

への希望を持っている」の肯定率がいずれも6割台にとどまり、米・中・韓より低い(図

19)。

111Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

2 子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究

<キーワード>

読書活動、自己理解力、批判的思考力、主体的行動力 1.背景

読書活動は人生を豊かにするといわれている。しかしながら、その実施割合は低い状態

であり、今後、特に子供の頃の読書活動を推進していく必要がある。また、近年はデジタ

ル情報化社会の進展に伴い、スマートフォンやタブレットなどスマートデバイスの保有率

が年々増加しており、読書環境そのものが大きく変化している。

2.目的

本調査は、子供の頃の読み聞かせや読書活動が、成人の読書活動や意識・非認知能力に

与える影響を検証するとともに、読書活動の経年比較(平成 25 年調査の結果との比較:N

= 5,258)や情報環境の変化との関連について明らかにすることを目的とした。

3.方法

(1)調査対象者

マイボイスコム株式会社のモニターである全国の 20~60 代の男性 2,500 名、女性 2,500

名、計 5,000 名(各年代で男性 500 名、女性 500 名)を対象に、2019(平成 31)年2月中

旬にインターネット調査を実施した(表1)。

表1.本調査の対象者

20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 合計

男性 500 500 500 500 500 2,500

女性 500 500 500 500 500 2,500

合計 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 5,000

(2)調査内容

調査内容は主に次の5点であった。

① デモグラフィックデータ

職業、学歴、年収、結婚の有無、子供の有無

② 子供の頃の読書活動

各年齢(小中高)期の読書量、読書経験(昔話や読み聞かせの経験など)、読書への関心

を高める取組、選書方法、読み方、こだわり・熱中度、読書ジャンルの変遷など

③ 現在の読書活動

読書好き、読書冊数、読書時間数、忘れられない本、読書の目的、メリットなど

④ 現在の資質・能力(意識・非認知能力)

本調査では、先行研究を踏まえ、自己理解力(「今の自分が好きだ」「自分には自分らし

9

図 19 将来に対する考え方(「よくあてはまる」「まああてはまる」と回答した割合)

10 留学希望の有無と自己特性

留学希望の有無と自己特性の関係をみるために、「留学したいと思わない」を留学希望

「無」とし、「高校在学中に留学したい」「高校を卒業したら、すぐに留学したい」「大学在

学中に、留学したい」「大学卒業後、留学したい」を留学希望「有」として、自己肯定感や

将来に対する考え方に関する項目をクロス集計した。 日本では、留学希望のある者のほうが、「私は他の人々に劣らず価値のある人間である」

「得意なことをもっている」「打ち込みたいことがある」「今の自分を変えたい」「今の生活

環境を変えたい」に対し、「よくあてはまる」「まああてはまる」と回答した割合が高い。

また、「将来、何になりたいかを決めている」「将来への希望を持っている」「将来、働きた

い職業分野で専門職として活躍したい」の肯定率も高い(表 1)。留学希望者が非希望者に

比べて、自分自身を肯定的に評価し、将来の目標をもっていることがわかる。

表 1 留学希望の有無と自己特性(「よくあてはまる」「まああてはまる」と回答した者の割合)

日本 米国 中国 韓国

自己特性 有 無 有 無 有 無 有 無

・私は他の人々に劣らず価値のある人

間である 56.8 43.6 81.5 79.0 91.9 91.9 84.1 71.5

・得意なことをもっている 70.7 64.3 91.4 90.3 74.7 69.3 67.9 59.8

・打ち込みたいことがある 79.8 75.8 97.7 95.5 83.0 77.5 84.5 74.9

・今の自分を変えたい 80.6 75.8 64.0 55.0 88.6 83.6 90.2 83.6

・今の生活環境を変えたい 65.9 56.2 54.8 49.9 77.7 71.6 68.5 60.0

・将来、何になりたいかを決めている 64.5 58.5 72.1 76.3 62.1 53.6 72.8 60.8

・将来への希望を持っている 71.4 57.6 92.1 90.5 89.7 87.3 77.2 66.6

・将来、働きたい職業分野で専門職とし

て活躍したい 69.4 60.8 96.9 94.4 74.9 63.6 94.1 85.7

(文責:青少年教育研究センター客員研究員 胡 霞)

74.6

65.3

64.6

61.5

58.2

95.6

91.2

73.6

44.5

69.8

88.4

58.3

71.6

91.4

73.8

69.0

0% 20% 40% 60% 80% 100%

自分の将来に不安を感じている

将来、働きたい職業分野で専門職として活躍したい

将来への希望を持っている

将来、何になりたいかを決めている

日本

米国

中国

韓国

留学希望の有無

112 Ⅲ 調査研究報告/高校生の留学に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較-

2 子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究

<キーワード>

読書活動、自己理解力、批判的思考力、主体的行動力 1.背景

読書活動は人生を豊かにするといわれている。しかしながら、その実施割合は低い状態

であり、今後、特に子供の頃の読書活動を推進していく必要がある。また、近年はデジタ

ル情報化社会の進展に伴い、スマートフォンやタブレットなどスマートデバイスの保有率

が年々増加しており、読書環境そのものが大きく変化している。

2.目的

本調査は、子供の頃の読み聞かせや読書活動が、成人の読書活動や意識・非認知能力に

与える影響を検証するとともに、読書活動の経年比較(平成 25 年調査の結果との比較:N

= 5,258)や情報環境の変化との関連について明らかにすることを目的とした。

3.方法

(1)調査対象者

マイボイスコム株式会社のモニターである全国の 20~60 代の男性 2,500 名、女性 2,500

名、計 5,000 名(各年代で男性 500 名、女性 500 名)を対象に、2019(平成 31)年2月中

旬にインターネット調査を実施した(表1)。

表1.本調査の対象者

20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 合計

男性 500 500 500 500 500 2,500

女性 500 500 500 500 500 2,500

合計 1,000 1,000 1,000 1,000 1,000 5,000

(2)調査内容

調査内容は主に次の5点であった。

① デモグラフィックデータ

職業、学歴、年収、結婚の有無、子供の有無

② 子供の頃の読書活動

各年齢(小中高)期の読書量、読書経験(昔話や読み聞かせの経験など)、読書への関心

を高める取組、選書方法、読み方、こだわり・熱中度、読書ジャンルの変遷など

③ 現在の読書活動

読書好き、読書冊数、読書時間数、忘れられない本、読書の目的、メリットなど

④ 現在の資質・能力(意識・非認知能力)

本調査では、先行研究を踏まえ、自己理解力(「今の自分が好きだ」「自分には自分らし

113Ⅲ 調査研究報告/子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究

図2.1ヶ月に読む電子書籍の量の経年比較

図3.携帯電話、スマートフォン、タブレットを利用した

1日あたりの読書時間の経年比較

(3)読書に使用するツールと意識・非認知能力との関連

読書の使用ツールを整理すると、5つの読み方[①紙媒体中心群:本(紙媒体)による

55.7%

79.4%

53.6%

76.0%

53.2%

73.5%

50.9%

65.9%

48.2%

57.4%

52.3%

70.4%

19.2%

14.3%

16.6%

15.2%

12.7%

14.1%

11.0%

13.2%

10.6%

12.8%

14.0%

13.9%

11.2%

3.7%9.8%

4.3%9.2%

5.3%

8.4%

7.5%

8.2%

7.8%

9.4%

5.7%

7.8%

1.6%

9.7%2.8%

10.7%4.1%

11.5%

6.7%

11.5%

9.0%

10.2%

4.8%

3.9%

0.7%6.7%

1.0%8.2%

1.5%

9.4%

3.4%

9.5%

6.7%

7.5%

2.7%

1.1%

0.2%

1.4%

0.2%2.9%

1.0%4.3%

1.5%5.5%

2.8%

3.0%

1.1%

1.1%

0.1%

2.2%

0.5%

3.1%

0.4%

4.5%

1.8%

6.5%

3.6%

3.5%

1.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

H30 60代

H25 60代

H30 50代

H25 50代

H30 40代

H25 40代

H30 30代

H25 30代

H30 20代

H25 20代

H30 全体

H25 全体

0分 0分-15分未満 15分-30分未満 30分-1時間未満

1時間-2時間未満 2時間-3時間未満 3時間以上

91.5%

95.9%

85.1%

94.3%

80.2%

92.9%

73.5%

88.0%

71.1%

86.9%

80.3%

91.6%

3.7%

2.8%

5.2%

3.8%

6.6%

4.0%

8.2%

7.9%

8.8%

7.0%

6.5%

5.1%

2.3%1.0%

4.5%

1.2%5.7%

2.2%

9.5%2.3%

9.8%3.2%

6.4%2.0%

1.1%

0.4%1.4%

0.2%

3.0%

0.4%3.0%

0.5%4.1%

1.4%2.5%

0.6%

1.4%

3.8%

0.5%4.5%

0.6%

5.8%

1.4%

6.2%

1.4%

4.3%

0.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

H30 60代

H25 60代

H30 50代

H25 50代

H30 40代

H25 40代

H30 30代

H25 30代

H30 20代

H25 20代

H30 全体

H25 全体

0冊 1冊 2~3冊 4~5冊 6冊以上

さがある」など自己肯定感を包含)、批判的思考力(「ものごとを順序立てて考えること

が得意だ」など客観的、多面的、論理的に考える力、自分あるいは他者の意見をまとめ

る力、コミュニケーション力を包含)、主体的行動力(「分からないことはそのままにし

ないで調べる」など何事にも進んで取り組む姿勢や意欲)という3つの概念を用いて、

読書活動との関連を検討した。

⑤ 現在の生活状況

生活満足度、自己啓発活動の有無、社会貢献意識、ボランティア活動

4.主な調査結果

(1)読書活動の経年比較 1か月に読む本(紙媒体)の量を経年比較すると、「0冊」と回答した人の割合は、年

代に関係なく、平成 25 年では 28.1%であったが、平成 30 年では 49.8%と増えていた。特

に、「0冊」と回答した割合が最も増えている年代は、20 代(27.2 から 52.3%)であり、

平成 30 年で「0冊」と回答した割合が最も多い年代は、30 代(54.4%)であった。

図1.1ヶ月に読む本(紙媒体)の量の経年比較

(2)読書環境の経年比較

1か月に読む電子書籍の量を経年比較すると、「1冊」以上と回答した割合は、平成 25

年では 8.5%であったが、平成 30 年では 19.7%と増えていた。携帯電話、スマートフォン、

タブレットを利用した1日あたりの読書時間を経年比較すると、年代に関係なく、15 分以

上と回答した割合が増えていた。

44.1%

23.3%

46.8%

27.4%

51.2%

30.7%

54.4%

32.2%

52.3%

27.2%

49.8%

28.1%

22.0%

26.4%

23.1%

27.7%

22.4%

26.8%

19.4%

29.8%

22.6%

32.4%

21.9%

28.6%

20.6%

29.0%

17.5%

24.9%

16.8%

24.3%

15.9%

22.5%

15.6%

23.5%

17.3%

24.8%

4.9%

11.2%

5.3%

9.9%

2.7%

9.8%

3.7%

7.8%

3.4%

8.5%

4.0%

9.4%

8.4%

10.2%

7.3%

10.2%

6.9%

8.4%

6.6%

7.7%

6.1%

8.4%

7.1%

9.0%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

H30 60代

H25 60代

H30 50代

H25 50代

H30 40代

H25 40代

H30 30代

H25 30代

H30 20代

H25 20代

H30 全体

H25 全体

0冊 1冊 2~3冊 4~5冊 6冊以上

114 Ⅲ 調査研究報告/子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究

図2.1ヶ月に読む電子書籍の量の経年比較

図3.携帯電話、スマートフォン、タブレットを利用した

1日あたりの読書時間の経年比較

(3)読書に使用するツールと意識・非認知能力との関連

読書の使用ツールを整理すると、5つの読み方[①紙媒体中心群:本(紙媒体)による

55.7%

79.4%

53.6%

76.0%

53.2%

73.5%

50.9%

65.9%

48.2%

57.4%

52.3%

70.4%

19.2%

14.3%

16.6%

15.2%

12.7%

14.1%

11.0%

13.2%

10.6%

12.8%

14.0%

13.9%

11.2%

3.7%9.8%

4.3%9.2%

5.3%

8.4%

7.5%

8.2%

7.8%

9.4%

5.7%

7.8%

1.6%

9.7%2.8%

10.7%4.1%

11.5%

6.7%

11.5%

9.0%

10.2%

4.8%

3.9%

0.7%6.7%

1.0%8.2%

1.5%

9.4%

3.4%

9.5%

6.7%

7.5%

2.7%

1.1%

0.2%

1.4%

0.2%2.9%

1.0%4.3%

1.5%5.5%

2.8%

3.0%

1.1%

1.1%

0.1%

2.2%

0.5%

3.1%

0.4%

4.5%

1.8%

6.5%

3.6%

3.5%

1.3%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

H30 60代

H25 60代

H30 50代

H25 50代

H30 40代

H25 40代

H30 30代

H25 30代

H30 20代

H25 20代

H30 全体

H25 全体

0分 0分-15分未満 15分-30分未満 30分-1時間未満

1時間-2時間未満 2時間-3時間未満 3時間以上

91.5%

95.9%

85.1%

94.3%

80.2%

92.9%

73.5%

88.0%

71.1%

86.9%

80.3%

91.6%

3.7%

2.8%

5.2%

3.8%

6.6%

4.0%

8.2%

7.9%

8.8%

7.0%

6.5%

5.1%

2.3%1.0%

4.5%

1.2%5.7%

2.2%

9.5%2.3%

9.8%3.2%

6.4%2.0%

1.1%

0.4%1.4%

0.2%

3.0%

0.4%3.0%

0.5%4.1%

1.4%2.5%

0.6%

1.4%

3.8%

0.5%4.5%

0.6%

5.8%

1.4%

6.2%

1.4%

4.3%

0.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%

H30 60代

H25 60代

H30 50代

H25 50代

H30 40代

H25 40代

H30 30代

H25 30代

H30 20代

H25 20代

H30 全体

H25 全体

0冊 1冊 2~3冊 4~5冊 6冊以上

115Ⅲ 調査研究報告/子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究

3 大学生のボランティア活動等に関する調査

<キーワード>

ボランティア活動、大学生、サービス・ラーニング 1.調査の概要

(1)調査の目的

国立青少年教育振興機構では、青少年の発達段階に応じた体験活動の充実方策を検討す

る上での基礎資料を得るため、4年制大学および短期大学の学生を対象に、ボランティア

活動に関する実施状況や意識等を把握し、その実情を明らかにすることを目的として、平

成 29 年度および平成 30 年度に大学生のボランティア活動等に関する調査を実施した。

(2)調査の内容

本調査では、大学生のボランティア活動(自主的に参加したものおよび大学の授業やゼ

ミの一環として参加したもの)の実施状況や活動に関する意識、子供の頃の体験、大学等

に求める取組等について調査した。

(3)調査の方法

本調査では、以下の2つのアンケート調査を実施した。2つのアンケートは、一部異な

るところがあるものの、概ね共通した内容となっている。

① 大学生のボランティア活動の実態に関する調査

調査対象:4年制大学および短期大学の学生

調査方法:web アンケート((株)クロス・マーケティング社に依頼)

調査期間:平成 31(2019)年3月上旬

回収数 :2,176 名

② 「学生ボランティアフォーラム」参加者への調査

調査対象:国立青少年教育振興機構が主催した「第6回学生ボランティアと支援者

が集う全国研究交流集会(学生ボランティアフォーラム)」(平成 30 年3

月2〜4日)の参加者

調査方法:質問紙調査

調査期間:平成 30(2018)年3月上旬

回収数 :462 名

本稿では、①の調査について、特に大学生のボランティア活動への参加状況および活動

に関する意識等の主な調査結果について報告する。

14.0213.48 13.1113.48

12.76 12.5512.9812.61 12.4113.51

13.06 12.8912.2611.89 11.58

0

7

9

11

13

15

自己理解力 批判的思考力 主体的行動力

紙媒体中心

スマートデバイス中心

パソコン中心

パソコン、スマートデバイス中心

読書時間低

読書時間が長く、それ以外のツールによる読書時間が短い、②スマートデバイス中心群:

携帯電話、スマートフォン、タブレット等スマートデバイスによる読書時間が長く、それ

以外のツールによる読書時間が短い、③パソコン中心群:パソコンによる読書時間が特に

長い、④パソコン・スマートデバイス中心群:パソコンとスマートデバイスによる読書時

間が長い、⑤読書時間低群:すべてのツールによる読書時間が短い]に分類された。 読み方と現在の意識・非認知能力との関係について分析した結果、読書の使用ツールに

関係なく読書をしている人は、読書をしていない傾向がある人に比べ、意識・非認知能力

が高かった。

図4.使用ツールによる意識・非認知能力の違い

5.まとめ

分析の結果、紙媒体による読書冊数および読書時間の減少がみられた一方、スマートフ

ォンなどのスマートデバイスを利用した読書時間の上昇がみられた。また、ツールに関係

なく読書をしている者の方が、そうでない者に比べ、意識・非認知能力が高かった。今後

の読書活動の推進を考える場合、引き続き紙媒体による読書活動の推進に力を注ぎつつ、

スマートデバイスの個人所有率の高さを踏まえ、すでに行われている様々な電子メディア

(パソコンを含む)を介した読書活動の推進が効果的であると考えられる。今後は、子供

の頃の読書活動の実態を把握しつつ、現在の読書活動への持ち越し効果や現在の意識・非

認知能力との関連を検証することに加え、実際の認知能力と読書活動との関連を検討し、

読書活動の効果を多面的に明らかにする必要がある。そして、得られた知見から、今後の

読書活動推進に向けた方策を検討していく。

(文責:青少年教育研究センター 研究員 遠藤 伸太郎)

116 Ⅲ 調査研究報告/子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究

3 大学生のボランティア活動等に関する調査

<キーワード>

ボランティア活動、大学生、サービス・ラーニング 1.調査の概要

(1)調査の目的

国立青少年教育振興機構では、青少年の発達段階に応じた体験活動の充実方策を検討す

る上での基礎資料を得るため、4年制大学および短期大学の学生を対象に、ボランティア

活動に関する実施状況や意識等を把握し、その実情を明らかにすることを目的として、平

成 29 年度および平成 30 年度に大学生のボランティア活動等に関する調査を実施した。

(2)調査の内容

本調査では、大学生のボランティア活動(自主的に参加したものおよび大学の授業やゼ

ミの一環として参加したもの)の実施状況や活動に関する意識、子供の頃の体験、大学等

に求める取組等について調査した。

(3)調査の方法

本調査では、以下の2つのアンケート調査を実施した。2つのアンケートは、一部異な

るところがあるものの、概ね共通した内容となっている。

① 大学生のボランティア活動の実態に関する調査

調査対象:4年制大学および短期大学の学生

調査方法:web アンケート((株)クロス・マーケティング社に依頼)

調査期間:平成 31(2019)年3月上旬

回収数 :2,176 名

② 「学生ボランティアフォーラム」参加者への調査

調査対象:国立青少年教育振興機構が主催した「第6回学生ボランティアと支援者

が集う全国研究交流集会(学生ボランティアフォーラム)」(平成 30 年3

月2〜4日)の参加者

調査方法:質問紙調査

調査期間:平成 30(2018)年3月上旬

回収数 :462 名

本稿では、①の調査について、特に大学生のボランティア活動への参加状況および活動

に関する意識等の主な調査結果について報告する。

117Ⅲ 調査研究報告/大学生のボランティア活動に関する調査

カ)専攻では「教育学・保育学系」、「社会福祉学系」、「体育科学・スポーツ科学・健康科

学系」で参加した割合が高い、キ)アルバイトの日数が多いほど、参加した割合が高い、

ク)入学前にボランティア活動をしているほど、参加した割合が高い、といった特徴が見

られる。

3.活動の内容・今後やってみたい活動

「自主的に参加」したことがある回答者(n=668)のみを対象に、活動の内容についてみ

ると、「小学生を対象とした活動」(31.1%)、「まちづくりのための活動」(20.8%)などの

割合が高くなっている[図2]。

図2 「自主的に参加」した活動の内容(複数回答・n=668)

「授業等で参加」したことがある回答者(n=314)のみを対象に、活動の内容についてみ

ると、「小学生を対象とした活動」(28.0%)、「高齢者を対象とした活動」(21.0%)、「まち

づくりのための活動」(20.7%)などの割合が高くなっている[図3]。

図3 「授業等で参加」した活動の内容(複数回答・n=314)

19.6%

31.1%

19.9%

10.8%

9.4%

12.9%

11.5%

14.5%

12.4%

20.8%

4.6%

14.5%

11.8%

8.7%

2.8%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%

(1)就学前の子どもを対象とした活動

(2)小学生を対象とした活動

(3)中学生・高校生を対象とした活動

(4)特定のニーズや課題を抱えた子どもを対象とした活動

(5)健康や医療サービスに関係した活動

(6)高齢者を対象とした活動

(7)障害者を対象とした活動

(8)スポーツに関係した活動

(9)文化・芸術・学術に関係した活動

(10)まちづくりのための活動

(11)安全な生活のための活動

(12)自然や環境を守るための活動

(13)災害に関係した活動

(14)国際協力に関係した活動

(15)その他

17.8%

28.0%

13.7%

9.9%

13.7%

21.0%

15.3%

13.1%

10.8%

20.7%

4.1%

13.1%

6.4%

4.5%

1.3%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%(1)就学前の子どもを対象とした活動

(2)小学生を対象とした活動

(3)中学生・高校生を対象とした活動

(4)特定のニーズや課題を抱えた子どもを対象とした活動

(5)健康や医療サービスに関係した活動

(6)高齢者を対象とした活動

(7)障害者を対象とした活動

(8)スポーツに関係した活動

(9)文化・芸術・学術に関係した活動

(10)まちづくりのための活動

(11)安全な生活のための活動

(12)自然や環境を守るための活動

(13)災害に関係した活動

(14)国際協力に関係した活動

(15)その他

2.ボランティア活動への参加状況

本調査では、「ボランティア活動・社会貢献活動」を、①「自主的に参加したもの」(サ

ークル等での活動も含む)だけでなく、②「大学の授業やゼミの一環で参加したもの」(単

位にかかわるもの)の双方を含むもの(ただし、「アルバイト」「インターン」「資格のため

の実習」は含まない)として捉えている(以下では、それぞれ必要に応じて、「自主的に参

加」および「授業等で参加」と表記する)。

大学入学後に、①・②のいずれかのボランティア活動・社会貢献活動に参加したことが

ある学生は全体の 37.5%であり、内訳は「自主的に参加」のみの割合が 23.1%、「授業等

で参加」のみの割合が 6.8%、両方に参加した学生が 7.6%となっている[図 1]。これら

を合わせると、全体では、①「自主的に参加したことがある」割合は合計で 30.7%(「自主

的に参加」のみ+両方)、②「授業等で参加したことがある」割合は合計で 14.4%(「授業

等で参加」のみ+両方)となる。

学年別にみると、参加したことがある割合は、学年が上がるごとに徐々に高くなるもの

の、明確な変化が見られるわけではない[図1]。

図1 ボランティア活動等の活動状況(n=2176)

回答者の属性別に「自主的に参加」(自主的のみ+両方)したことがある割合に注目す

ると、ア)公立大学の学生ほど参加した割合が高い、イ)専攻が「教育学・保育学系」「社

会福祉学系」「国際学系」「家政学系」の学生で、参加した割合が高い、ウ)卒業後の希望

進路の決まっている学生ほど、参加した割合が高い、エ)アルバイトの日数が多く、また

バイト代を生活費や授業料に使っている学生ほど、参加した割合が高い、オ)入学前にボ

ランティア活動をしているほど、活動している割合が高い、といった特徴が見られる。

回答者の属性別に「授業等で参加(授業のみ+両方)したことがある割合に注目すると、

21.0%

23.5%

24.5%

23.4%

23.1%

6.3%

6.9%

7.8%

6.6%

6.8%

5.3%

6.2%

8.4%

9.5%

7.6%

67.5%

63.4%

59.3%

60.4%

62.5%

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1年生(n=495)

2年生(n=481)

3年生(n=462)

4年生(n=738)

合計

「自主的に参加したもの」のみ

「授業やゼミ等の一環で参加したもの」のみ

「自主的に参加したもの」と「授業やゼミ等の一環で参加したもの」の両方

したことがない

したことがある(37.5%)

118 Ⅲ 調査研究報告/大学生のボランティア活動に関する調査

カ)専攻では「教育学・保育学系」、「社会福祉学系」、「体育科学・スポーツ科学・健康科

学系」で参加した割合が高い、キ)アルバイトの日数が多いほど、参加した割合が高い、

ク)入学前にボランティア活動をしているほど、参加した割合が高い、といった特徴が見

られる。

3.活動の内容・今後やってみたい活動

「自主的に参加」したことがある回答者(n=668)のみを対象に、活動の内容についてみ

ると、「小学生を対象とした活動」(31.1%)、「まちづくりのための活動」(20.8%)などの

割合が高くなっている[図2]。

図2 「自主的に参加」した活動の内容(複数回答・n=668)

「授業等で参加」したことがある回答者(n=314)のみを対象に、活動の内容についてみ

ると、「小学生を対象とした活動」(28.0%)、「高齢者を対象とした活動」(21.0%)、「まち

づくりのための活動」(20.7%)などの割合が高くなっている[図3]。

図3 「授業等で参加」した活動の内容(複数回答・n=314)

19.6%

31.1%

19.9%

10.8%

9.4%

12.9%

11.5%

14.5%

12.4%

20.8%

4.6%

14.5%

11.8%

8.7%

2.8%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%

(1)就学前の子どもを対象とした活動

(2)小学生を対象とした活動

(3)中学生・高校生を対象とした活動

(4)特定のニーズや課題を抱えた子どもを対象とした活動

(5)健康や医療サービスに関係した活動

(6)高齢者を対象とした活動

(7)障害者を対象とした活動

(8)スポーツに関係した活動

(9)文化・芸術・学術に関係した活動

(10)まちづくりのための活動

(11)安全な生活のための活動

(12)自然や環境を守るための活動

(13)災害に関係した活動

(14)国際協力に関係した活動

(15)その他

17.8%

28.0%

13.7%

9.9%

13.7%

21.0%

15.3%

13.1%

10.8%

20.7%

4.1%

13.1%

6.4%

4.5%

1.3%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%(1)就学前の子どもを対象とした活動

(2)小学生を対象とした活動

(3)中学生・高校生を対象とした活動

(4)特定のニーズや課題を抱えた子どもを対象とした活動

(5)健康や医療サービスに関係した活動

(6)高齢者を対象とした活動

(7)障害者を対象とした活動

(8)スポーツに関係した活動

(9)文化・芸術・学術に関係した活動

(10)まちづくりのための活動

(11)安全な生活のための活動

(12)自然や環境を守るための活動

(13)災害に関係した活動

(14)国際協力に関係した活動

(15)その他

119Ⅲ 調査研究報告/大学生のボランティア活動に関する調査

5.活動に参加した動機

「自主的に参加」か「授業等で参加」かを問わず、活動に参加したことがある回答者

(n=817)を対象に、参加した動機(複数回答)についてみると、「自分の成長につながる

と思ったから」(45.4%)の割合が最も高く、ついで「さまざまな人と関わりたかったから」

(28.5%)、「楽しそうだったから」(26.7%)「関心のある分野や社会問題の現場を見たか

ったから」(26.2%)などの割合が高くなっている[図6]。

図6 活動に参加した動機(複数回答・n=817)

6.活動に参加してよかったこと/よくなかったこと

「自主的に参加」か「授業等で参加」かを問わず、活動に参加したことがある回答者

(n=817)を対象に、参加してよかったこと(複数回答)についてみると、「楽しかった」(41.6%)、

「ものの見方、考え方が広がった」(40.5%)、「相手から感謝された」(38.9%)、「達成感や

満足感が得られた」(32.3%)の割合が高くなっている。[図7]。

図7 活動に参加してよかったこと(複数回答・n=817)

21.5%

20.1%

2.8%

9.5%

26.2%

26.7%

8.9%

28.5%

45.4%

24.0%

12.0%

9.7%

9.9%

25.8%

19.0%

14.0%

22.3%

3.7%

3.5%

1.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

(1)困っている人の手助けがしたかったから

(2)地域をよりよくしたいから

(3)社会の不正や矛盾を正したかったから

(4)社会問題の解決に関わりたかったから

(5)関心のある分野や社会問題の現場を見たかったから

(6)楽しそうだったから

(7)友人や知人を増やしたかったから

(8)さまざまな人と関わりたかったから

(9)自分の成長につながると思ったから

(10)活動分野に関する経験やスキルを得たかったから

(11)自分の知識や技術を生かしたかったから

(12)余った時間を有効活用したかったから

(13)達成感や満足感を得たかったから

(14)誰かの役に立ちたかったから

(15)自分のやりたいことや進路を考えるきっかけにしたかったから

(16)大学の成績や就職活動に有利だから

(17)所属する団体やサークル等の活動の一環だったから

(18)友人や家族からの誘いや薦めを断れなかったから

(19)なんとなく(特に理由はなかった)

(20)その他

9.5%21.9%

38.9%22.5%

41.6%23.7%

40.5%14.7%

32.3%20.8%

11.5%13.5%

7.6%24.1%

17.1%2.9%

9.3%5.4%

3.8%0.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

(1)社会問題の解決に関われた

(2)困っている人のために役立てた

(3)相手から感謝された

(4)関心のある分野や社会問題の現場を見られた

(5)楽しかった

(6)思いやりの心が深まった

(7)ものの見方、考え方が広がった

(8)自信がついた

(9)達成感や満足感が得られた

(10)活動分野に関する知識や技術が身についた

(11)学業に対する意欲が高まった

(12)自分の知識や技術を生かすことができた

(13)社会や政治に関する関心が高まった

(14)コミュニケーション能力が高まった

(15)友人や知人が増えた

(16)友人や家族からの期待に応えられた

(17)進路や就職先を考えるきっかけになった

(18)大学で評価された

(19)よかったと思うことはない

(20)その他

活動経験の有無を問わず、今後やってみたい活動としては、「まちづくりのための活動」

(31.3%)が最も割合が高く、ついで「芸術・文化・学術に関係した活動」(30.6%)、「小

学生を対象とした活動」(28.3%)、「自然や環境を守るための活動」(28.2%)等の割合が

高くなっている[図4]。

図4 今後やってみたい活動の内容(複数回答・n=2176)

4.活動した日数

活動の日数(準備等も含む全日数)についてみると、「自主的に参加」した活動および

「授業等で参加」した活動のいずれも「1〜2日程度」の割合が最も高くなっており、つ

いで「3〜10 日程度」の割合が高くなっている[図5]。

図5 活動日数

22.8%

28.3%

21.6%

14.6%

15.9%

12.2%

9.1%

23.4%

30.6%

31.3%

16.4%

28.2%

21.1%

16.3%

1.7%

0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35%

(1)就学前の子どもを対象とした活動

(2)小学生を対象とした活動

(3)中学生・高校生を対象とした活動

(4)特定のニーズや課題を抱えた子どもを対象とした活動

(5)健康や医療サービスに関係した活動

(6)高齢者を対象とした活動

(7)障害者を対象とした活動

(8)スポーツに関係した活動

(9)文化・芸術・学術に関係した活動

(10)まちづくりのための活動

(11)安全な生活のための活動

(12)自然や環境を守るための活動

(13)災害に関係した活動

(14)国際協力に関係した活動

(15)その他

36.8

43.6

30.2

34.4

13.8

16.2

10.8

3.8

8.4

1.9

0% 20% 40% 60% 80% 100%

自主的に参加

授業等で参加

活動日数 1~2日程度 活動日数 3~10日程度 活動日数 10~30日程度

活動日数 30~100日程度 活動日数 100日以上

120 Ⅲ 調査研究報告/大学生のボランティア活動に関する調査

5.活動に参加した動機

「自主的に参加」か「授業等で参加」かを問わず、活動に参加したことがある回答者

(n=817)を対象に、参加した動機(複数回答)についてみると、「自分の成長につながる

と思ったから」(45.4%)の割合が最も高く、ついで「さまざまな人と関わりたかったから」

(28.5%)、「楽しそうだったから」(26.7%)「関心のある分野や社会問題の現場を見たか

ったから」(26.2%)などの割合が高くなっている[図6]。

図6 活動に参加した動機(複数回答・n=817)

6.活動に参加してよかったこと/よくなかったこと

「自主的に参加」か「授業等で参加」かを問わず、活動に参加したことがある回答者

(n=817)を対象に、参加してよかったこと(複数回答)についてみると、「楽しかった」(41.6%)、

「ものの見方、考え方が広がった」(40.5%)、「相手から感謝された」(38.9%)、「達成感や

満足感が得られた」(32.3%)の割合が高くなっている。[図7]。

図7 活動に参加してよかったこと(複数回答・n=817)

21.5%

20.1%

2.8%

9.5%

26.2%

26.7%

8.9%

28.5%

45.4%

24.0%

12.0%

9.7%

9.9%

25.8%

19.0%

14.0%

22.3%

3.7%

3.5%

1.8%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

(1)困っている人の手助けがしたかったから

(2)地域をよりよくしたいから

(3)社会の不正や矛盾を正したかったから

(4)社会問題の解決に関わりたかったから

(5)関心のある分野や社会問題の現場を見たかったから

(6)楽しそうだったから

(7)友人や知人を増やしたかったから

(8)さまざまな人と関わりたかったから

(9)自分の成長につながると思ったから

(10)活動分野に関する経験やスキルを得たかったから

(11)自分の知識や技術を生かしたかったから

(12)余った時間を有効活用したかったから

(13)達成感や満足感を得たかったから

(14)誰かの役に立ちたかったから

(15)自分のやりたいことや進路を考えるきっかけにしたかったから

(16)大学の成績や就職活動に有利だから

(17)所属する団体やサークル等の活動の一環だったから

(18)友人や家族からの誘いや薦めを断れなかったから

(19)なんとなく(特に理由はなかった)

(20)その他

9.5%21.9%

38.9%22.5%

41.6%23.7%

40.5%14.7%

32.3%20.8%

11.5%13.5%

7.6%24.1%

17.1%2.9%

9.3%5.4%

3.8%0.9%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

(1)社会問題の解決に関われた

(2)困っている人のために役立てた

(3)相手から感謝された

(4)関心のある分野や社会問題の現場を見られた

(5)楽しかった

(6)思いやりの心が深まった

(7)ものの見方、考え方が広がった

(8)自信がついた

(9)達成感や満足感が得られた

(10)活動分野に関する知識や技術が身についた

(11)学業に対する意欲が高まった

(12)自分の知識や技術を生かすことができた

(13)社会や政治に関する関心が高まった

(14)コミュニケーション能力が高まった

(15)友人や知人が増えた

(16)友人や家族からの期待に応えられた

(17)進路や就職先を考えるきっかけになった

(18)大学で評価された

(19)よかったと思うことはない

(20)その他

121Ⅲ 調査研究報告/大学生のボランティア活動に関する調査

4 小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

<キーワード>

集団宿泊活動,修学旅行,集団宿泊的行事,体験活動,体験活動の推進 1.調査概要

(1)調査の目的

小学校及び中学校の集団宿泊活動の現状や課題等を把握するために全国的な調査を実

施し,集団宿泊活動を拡充する方策の立案に資する。

(2)調査対象校と抽出方法

全国の国公立小学校及び国公立中学校から層化抽出法(比例分配法)で,各 1,000 校を

抽出した。

(3)調査方法

調査対象校に調査票を郵送し,「平成 29 年度に実施した自然の中での集団宿泊活動」に

ついて,実施した学年の学年主任に回答を依頼した。

(4)回収数(回収率)

① 小学校:668 校(66.8%)

② 中学校:627 校(62.7%)

③ 全体:1,295 校(64.8%)

2.主な調査結果

(1)集団宿泊的行事の実施状況と実施日数

① 実施の有無

平成 29 年度に「集団宿泊活動を実施した」と回答した割合は,小学校が 98.2%,中学

校が 72.2%であった(図1-1)。

また,平成 29 年度に「修学旅行を実施した」と回答した割合は,小学校が 84.6%,中

学校が 91.2%であった(図1-2)。

図1-1 集団宿泊活動の実施状況(学校種別) 図1-2 修学旅行の実施状況(学校種別)

② 実施日数

集団宿泊活動の実施日数は,小学校,中学校ともに「1 泊 2 日」と回答した割合が最も

高く小学校が 59.6%,中学校が 53.6%であった(表1-1、図2-1)。次は,小学校,中

98.2

72.2

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=668)

中学校

(n=627)

実施した

%

84.6

91.2

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=668)

中学校

(n=627)

実施した

%

「自主的に参加」か「授業等で参加」かを問わず、活動に参加したことがある回答者を

対象(n=817)に、参加してよくなかったこと(複数回答)についてみると、「よくなかった

と思うことはない」を除くと「活動に時間が取られすぎた」(17.6%)の割合が最も高く、

ついで「継続的に活動ができなかった」(14.7%)、「経費(お金)がかかり過ぎた」(11.0%)

の割合が高くなっている[図8]。

図8 活動に参加してよくなかったこと(複数回答・n=817)

7.まとめ

青少年教育の領域において、大学生のボランティア活動は2つの意味で重要な意味を持

っているといえる。1つは、大学生にとっての体験活動としての側面であり、大学生にと

ってのさまざまな学習や成長の機会として、ボランティア活動の体験が重要な意味を持っ

ているということである。もう1つは、青少年教育施設・団体においては、伝統的に大学

生のボランティアが指導者として活躍してきており、ボランティアの大学生をどのように

支援するかが課題となってきた。青少年教育の領域においては、子供たちの成長と大学生

自身の成長がいわば循環しながら相互に関連しているのであり、大学生のボランティア活

動は、こうした循環を生み出す起点として位置づいてきたといえる。 一方で、大学生のボランティア活動の実態を把握するのは容易ではない。そもそも、大

学や教員を窓口にした調査では、ボランティアに関わっている学生が調査対象になりやす

く、学部や専門分野等の偏りも生じやすい。また、近年ではいわゆるサービス・ラーニン

グなど大学の教育活動の一環として社会貢献活動の機会が提供されることも増えてきてお

り、多様な実態の把握はますます困難になっている状況がある。 本調査では、こうした課題を踏まえ、①大学生を対象とした web アンケートで調査を行

うとともに、②大学の教育活動の一環として提供される社会貢献活動も含めた形で、大学

生の活動の実態の把握を試みた。質問紙調査の結果や、本稿で紹介した以外の項目の集計

結果、調査研究委員会の委員による考察等については報告書を参照されたい。 (文責:青少年教育研究センター副センター長 青山 鉄兵)

2.1%

4.7%

11.0%

17.6%

3.7%

3.3%

1.2%

5.4%

5.0%

4.0%

14.7%

3.2%

3.3%

47.6%

1.7%

0% 10% 20% 30% 40% 50%

(1)社会問題の解決に関われなかった

(2)活動が面白くなかった

(3)経費(お金)がかかり過ぎた

(4)活動に時間が取られすぎた

(5)活動中の人間関係がうまくいかなかった

(6)学業と両立できなかった

(7)親の理解が得られなかった

(8)与えられた役割・責任が大きすぎた

(9)与えられた役割・責任が小さすぎた

(10)自分が考えていた活動ではなかった

(11)継続的に活動ができなかった

(12)自分の成長につながらなかった

(13)将来の進路について迷いはじめた

(14)よくなかったと思うことはない

(15)その他

122 Ⅲ 調査研究報告/大学生のボランティア活動に関する調査

4 小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

<キーワード>

集団宿泊活動,修学旅行,集団宿泊的行事,体験活動,体験活動の推進 1.調査概要

(1)調査の目的

小学校及び中学校の集団宿泊活動の現状や課題等を把握するために全国的な調査を実

施し,集団宿泊活動を拡充する方策の立案に資する。

(2)調査対象校と抽出方法

全国の国公立小学校及び国公立中学校から層化抽出法(比例分配法)で,各 1,000 校を

抽出した。

(3)調査方法

調査対象校に調査票を郵送し,「平成 29 年度に実施した自然の中での集団宿泊活動」に

ついて,実施した学年の学年主任に回答を依頼した。

(4)回収数(回収率)

① 小学校:668 校(66.8%)

② 中学校:627 校(62.7%)

③ 全体:1,295 校(64.8%)

2.主な調査結果

(1)集団宿泊的行事の実施状況と実施日数

① 実施の有無

平成 29 年度に「集団宿泊活動を実施した」と回答した割合は,小学校が 98.2%,中学

校が 72.2%であった(図1-1)。

また,平成 29 年度に「修学旅行を実施した」と回答した割合は,小学校が 84.6%,中

学校が 91.2%であった(図1-2)。

図1-1 集団宿泊活動の実施状況(学校種別) 図1-2 修学旅行の実施状況(学校種別)

② 実施日数

集団宿泊活動の実施日数は,小学校,中学校ともに「1 泊 2 日」と回答した割合が最も

高く小学校が 59.6%,中学校が 53.6%であった(表1-1、図2-1)。次は,小学校,中

98.2

72.2

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=668)

中学校

(n=627)

実施した

%

84.6

91.2

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=668)

中学校

(n=627)

実施した

%

123Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

図3 平成 29 年告示学習指導要領が全面実施される年度の集団宿泊活動の実施予定(学校種別)

(3)集団宿泊活動の成果

「成果があった」と「やや成果があった」を合わせた割合で最も高い回答は,「学級や学

年への所属感や連帯感を深めること」で 97.9%であった(図4)。この他に,90%を超え

る項目は「よりよい人間関係を築くこと」が 97.5%,「楽しい思い出をつくること」と「必

要な係をつくり,役割を自覚しながら仕事を分担して,協力し合い実践できるようにする

こと」が 96.7%,「規律ある集団行動ができるようにすること」が 96.5%,「約束やルール,

時間を守るなど公衆道徳について理解し,行動の仕方を身に付けること」が 96.1%,「協

力して諸問題を解決し,よりよい学校生活を築くことができるようにすること」が 94.7%

と,人間関係や集団活動に関する項目の割合が高い。

一方,自然に関する項目の「生命の有限性や自然の大切さを,実感を伴って理解するこ

と」が 72.3%,「環境保全の意識を高めたり,態度を培ったりすること」が 64.6%であり,

人間関係や集団活動に関する項目と比べると低い。

また,「不登校あるいは不登校傾向の児童生徒が学級に適応すること」が 54.8%であり,

他の項目と比較して高いとはいえないものの半数の学校が成果を認めている。

87.6

2.2

4.5

3.0

0.0

0.4

0.9

0.9

0.4

62.4

22.0

7.8

3.0

2.2

0.8

0.0

1.6

0.2

0 20 40 60 80 100

平成29年度と同じように実施したい

実施しないこと、または、29年度よりも日数を減らして実施す

ることが決まっている

未定

平成29年度よりも日数を減らして実施したい

実施することは困難だろう

平成29年度よりも日数を増やして実施したい

平成29年度よりも日数を増やして実施することが決まっている

その他

不明

小学校(n=668) 中学校(n=627)

%

平成29年度と同じように実施したい

実施しないこと、または平成29年度よりも

日数を減らして実施することが決まっている

未定

平成29年度よりも日数を減らして実施したい

実施することは困難だろう

平成29年度よりも日数を増やして実施したい

平成29年度よりも日数を増やして実施することが決まってい

その他

不明

学校ともに「2 泊 3 日」で,小学校が 33.1%,中学校が 41.5%であり,「1 泊 2 日」と「2

泊 3 日」を合わせると小学校が 92.7%,中学校が 95.1%になる。文部科学省が小学校に推

奨している「一定期間(5 日間程度)」に合致する「4 泊以上」実施している小学校の割合

は約 4%と低い。

修学旅行の実施日数で最も割合の高い回答は,小学校が「1 泊 2 日」で 92.2%,中学校

が「2 泊 3 日」で 88.3%であった(表1-2、図2-2)。また,「3 泊以上」実施している

小学校は無かったが,中学校は 11.0%であった。

表1-1 集団宿泊活動の実施日数(学校種別)

図2-1 集団宿泊活動の実施日数(学校種別)

表1-2 修学旅行の実施日数(学校種別)

図2-2 修学旅行の実施日数(学校種別)

(2)平成 29 年告示学習指導要領が全面実施される年度の集団宿泊活動の実施予定

調査依頼時の予定という条件の下,「平成 29 年度と同じように実施したい」と回答した

割合は,小学校が 87.6%,中学校が 62.4%であった(図3)。

中学校は,「実施しないこと,または,平成 29 年度よりも日数を減らして実施すること

が決まっている」と回答した割合が 22.0%,「平成 29 年度よりも日数を減らして実施した

い」が 3.0%,「実施することは困難だろう」が 2.2%で合わせると 27.2%になり,現状よ

りも減少することが伺える。

(単位:%)

1泊 2泊 3泊 4泊 5泊 6泊以上 不明

小学校(n=656)

59.6 33.1 2.9 4.0 0.0 0.2 0.3

中学校(n=453)

53.6 41.5 4.0 0.4 0.2 0.0 0.2

59.6

53.6

33.1

41.52.9

4.0

4.0

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=656)

中学校

(n=453)

1泊2日 2泊3日 3泊4日4泊5日 5泊6日 6泊7日以上不明

%

(単位:%)

1泊 2泊 3泊 4泊 5泊 6泊以上 不明

小学校

(n=565)92.2 7.4 0.0 0.0 0.0 0.0 0.4

中学校

(n=572)0.2 88.3 10.3 0.5 0.2 0.0 0.5

92.2

0.2

7.4

88.3 10.3

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=565)

中学校

(n=572)

1泊2日 2泊3日 3泊4日4泊5日 5泊6日 6泊7日以上不明

%

124 Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

図3 平成 29 年告示学習指導要領が全面実施される年度の集団宿泊活動の実施予定(学校種別)

(3)集団宿泊活動の成果

「成果があった」と「やや成果があった」を合わせた割合で最も高い回答は,「学級や学

年への所属感や連帯感を深めること」で 97.9%であった(図4)。この他に,90%を超え

る項目は「よりよい人間関係を築くこと」が 97.5%,「楽しい思い出をつくること」と「必

要な係をつくり,役割を自覚しながら仕事を分担して,協力し合い実践できるようにする

こと」が 96.7%,「規律ある集団行動ができるようにすること」が 96.5%,「約束やルール,

時間を守るなど公衆道徳について理解し,行動の仕方を身に付けること」が 96.1%,「協

力して諸問題を解決し,よりよい学校生活を築くことができるようにすること」が 94.7%

と,人間関係や集団活動に関する項目の割合が高い。

一方,自然に関する項目の「生命の有限性や自然の大切さを,実感を伴って理解するこ

と」が 72.3%,「環境保全の意識を高めたり,態度を培ったりすること」が 64.6%であり,

人間関係や集団活動に関する項目と比べると低い。

また,「不登校あるいは不登校傾向の児童生徒が学級に適応すること」が 54.8%であり,

他の項目と比較して高いとはいえないものの半数の学校が成果を認めている。

87.6

2.2

4.5

3.0

0.0

0.4

0.9

0.9

0.4

62.4

22.0

7.8

3.0

2.2

0.8

0.0

1.6

0.2

0 20 40 60 80 100

平成29年度と同じように実施したい

実施しないこと、または、29年度よりも日数を減らして実施す

ることが決まっている

未定

平成29年度よりも日数を減らして実施したい

実施することは困難だろう

平成29年度よりも日数を増やして実施したい

平成29年度よりも日数を増やして実施することが決まっている

その他

不明

小学校(n=668) 中学校(n=627)

%

平成29年度と同じように実施したい

実施しないこと、または平成29年度よりも

日数を減らして実施することが決まっている

未定

平成29年度よりも日数を減らして実施したい

実施することは困難だろう

平成29年度よりも日数を増やして実施したい

平成29年度よりも日数を増やして実施することが決まってい

その他

不明

125Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

(4)集団宿泊的行事の教職員や学校への効果

「当てはまる」と「やや当てはまる」を合わせた割合で最も高い回答は,「普段の学校生

活では見られない児童生徒の一面を見ることができるなど,教員の児童生徒への理解が深

まる」で 99.7%,次いで「教員と児童生徒との信頼関係が構築できる」が 97.0%と児童生

徒に関する項目が上位であった(図5)。

また,担当になった教員に関する項目の「集団宿泊的行事の担当になった教員のマネジ

メント力(計画の立案や準備,手順通りに進めるといった力量)が高まる」が 93.8%,「集

団宿泊的行事の担当になった教員のコミュニケーション力(学校以外の関係者や他の教職

員と連絡・調整・合意するといった力量)が高まる」が 85.5%であり,集団宿泊的行事を

担当したことで教員自身の経営的能力が高まったことを 8 割以上の学校が認めている。

図5 集団宿泊的行事の教職員や学校への効果(n=1,295)

(5)集団宿泊活動を計画・実施する際の不安事項

「不安」と「やや不安」を合わせた割合で最も高い回答は,「児童生徒の身体的な不安(病

気,体調不良,アレルギー等)」で 94.0%,次いで「児童生徒の野外活動等における事故」

が 91.5%,「特別な配慮を要する児童生徒への対応(身体的な障害や精神的な障害)」が

85.3%であった(図6)。これら 3 項目は児童生徒に関する項目であり,「不安」と回答し

ている割合も,それぞれ 58.2%,51.4%,42.6%と他の項目に比べて高い。

一方,教職員に関する項目は,「十分な引率体制をとること」が 67.5%,「教職員の身体

的な健康」が 60.9%,「教職員の夜間における十分な指導体制をとること」が 55.7%,「教

職員の時間外勤務に対する手当」が 46.5%,「教職員の体験活動の指導力」が 39.3%とな

っており,児童生徒に関する項目と比べると低い傾向にある。

また,集団宿泊活動実施上の問題としてあげられることが多い「集団宿泊活動を実施す

ることによる授業時数の不足」は 48.9%であった。

「集団宿泊活動の効果があいまい」は 15.8%(「不安」と回答は 2.4%)で一番低く,「集

団宿泊活動の成果」として,多くの項目が高い割合になっている結果と一致している。

82.3

58.2

45.5

38.5

28.5

11.0

17.4

38.8

48.3

47.0

53.5

42.9

0.1

2.7

5.6

13.5

16.5

38.6

0.0

0.1

0.2

0.7

1.2

7.2

0.2

0.2

0.3

0.3

0.3

0.4

0 20 40 60 80 100

普段の学校生活では見られない児童生徒の一面を見ることができるな

ど、教員の児童生徒への理解が深まる

教員と児童生徒との信頼関係が構築できる

集団宿泊的行事の担当になった教員のマネジメント力(計画の立案や

準備、手順通りに進めるといった力量)が高まる

集団宿泊的行事の担当になった教員のコミュニケーション力(学校以

外の関係者や他の教職員と連絡・調整・合意するといった力量)が…

教職員の人間関係がよくなる

保護者や地域、関係団体との連携が促進される

当てはまる やや当てはまる あまり当てはまらない 当てはまらない 不明

%

普段の学校生活では見られない児童生徒の一面を見ることが

できるなど、教員の児童生徒への理解が深まる

教員と児童生徒との信頼関係が構築できる

保護者や地域、関係団体との連携が促進される

教職員の人間関係がよくなる

集団宿泊的行事の担当になった教員のコミュニケーション力

(学校以外の関係者や他の教職員と連絡・調整・合意する

といった力量)が高まる

集団宿泊的行事の担当になった教員のマネジメント力

(計画の立案や準備、手順通りに進めるといった力量)が高まる

図4 集団宿泊活動の成果(n=1,109)

76.3

65.0

75.7

62.3

57.6

57.1

49.1

45.2

33.1

38.2

26.9

29.8

24.1

15.6

15.4

14.6

23.2

16.1

16.0

9.3

7.9

8.1

6.6

21.6

32.5

21.0

34.4

38.9

39.0

45.6

43.5

55.5

49.9

58.8

44.9

48.2

49.6

49.2

47.9

34.0

40.1

38.8

31.0

30.7

14.4

9.3

0.2

0.8

1.4

1.4

1.5

1.9

3.08.7

9.3

8.8

11.1

19.7

22.7

28.9

28.0

28.6

27.4

28.7

26.1

38.8

39.6

18.4

21.3

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.1

0.1

0.4

0.3

0.8

1.0

3.2

2.6

3.5

4.96.3

12.9

12.4

13.8

18.0

18.8

53.7

57.3

1.9

1.7

2.0

1.9

2.0

2.0

2.2

2.3

1.9

2.3

2.3

2.3

2.4

2.4

2.4

2.6

2.5

2.8

5.4

2.9

3.0

5.4

5.6

0 20 40 60 80 100

学級や学年への所属感や連帯感を深めること

よりよい人間関係を築くこと

楽しい思い出をつくること

必要な係をつくり、役割を自覚しながら仕事を分担して、協力し合い

実践できるようにすること

規律ある集団行動ができるようにすること

約束やルール、時間を守るなど公衆道徳について理解し、行動の仕方

を身に付けること

協力して諸問題を解決し、よりよい学校生活を築くことができるよう

にすること

教師と児童生徒のふれあいを深めること

自分に自信を持ったり、自分が学級に役立っていると思ったりするな

ど、自己を肯定的にとらえるようにすること

早寝早起きや身の回りの整理整頓、挨拶などの基本的な生活習慣を身

に付けること

困難なことや思いどおりにならないことでも我慢できるようにするこ

見聞を広めること

生命の有限性や自然の大切さを、実感を伴って理解すること

自己の生き方を考えたり、見方や考え方を深めたりすること

環境保全の意識を高めたり、態度を培ったりすること

各教科等で得た知識を、実際の場面で活用できる力を高めること

地方の歴史や文化等の魅力について学び、理解を深めること

働くことの尊さや生産の喜びを感じること

不登校あるいは不登校傾向の児童生徒が学級に適応すること

ボランティア活動を行うなどの社会奉仕の精神を養うこと

災害等の非常時から身を守るための行動の仕方を身に付けたり、安全

への意識を高めたりすること

普段とは異なる農山漁村での生活を、体験を通して理解すること

農林漁業を、体験を通して理解すること

成果があった やや成果があった あまり成果はなかった 成果はなかった 不明

%

約束やルール、時間を守るなど公衆道徳について理解し、

行動の仕方を身に付けること

必要な係をつくり、役割を自覚しながら仕事を分担して、

協力し合い実践できるようにすること

楽しい思い出をつくること

自分に自信を持ったり、自分が学級に役立っていると

思ったりするなど、自己を肯定的にとらえるようにすること

早寝早起きや身の回りの整理整頓、挨拶などの

基本的な生活習慣を身に付けること

困難なことや思いどおりにならないことでも

我慢できるようにすること

生命の有限性や自然の大切さを、実感を伴って理解すること

自己の生き方を考えたり、見方や考え方を深めたりすること

環境保全の意識を高めたり、態度を培ったりすること

各教科等で得た知識を、実際の場面で活用できる力を高めること

不登校あるいは不登校傾向の児童生徒が学級に適応すること

働くことの尊さや生産の喜びを感じること

ボランティア活動を行うなどの社会奉仕の精神を養うこと

災害等の非常時から身を守るための行動の仕方を身に付けたり、

安全への意識を高めたりすること

農林漁業を、体験を通して理解すること

普段とは異なる農山漁村での生活を、体験を通して理解すること

よりよい人間関係を築くこと

学級や学年への所属感や連帯感を深めること

規律ある集団行動ができるようにすること

協力して諸問題を解決し、よりよい学校生活を築くことが

できるようにすること

教師と児童生徒のふれあいを深めること

見聞を広めること

地方の歴史や文化等の魅力について学び、理解を深めること

126 Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

(4)集団宿泊的行事の教職員や学校への効果

「当てはまる」と「やや当てはまる」を合わせた割合で最も高い回答は,「普段の学校生

活では見られない児童生徒の一面を見ることができるなど,教員の児童生徒への理解が深

まる」で 99.7%,次いで「教員と児童生徒との信頼関係が構築できる」が 97.0%と児童生

徒に関する項目が上位であった(図5)。

また,担当になった教員に関する項目の「集団宿泊的行事の担当になった教員のマネジ

メント力(計画の立案や準備,手順通りに進めるといった力量)が高まる」が 93.8%,「集

団宿泊的行事の担当になった教員のコミュニケーション力(学校以外の関係者や他の教職

員と連絡・調整・合意するといった力量)が高まる」が 85.5%であり,集団宿泊的行事を

担当したことで教員自身の経営的能力が高まったことを 8 割以上の学校が認めている。

図5 集団宿泊的行事の教職員や学校への効果(n=1,295)

(5)集団宿泊活動を計画・実施する際の不安事項

「不安」と「やや不安」を合わせた割合で最も高い回答は,「児童生徒の身体的な不安(病

気,体調不良,アレルギー等)」で 94.0%,次いで「児童生徒の野外活動等における事故」

が 91.5%,「特別な配慮を要する児童生徒への対応(身体的な障害や精神的な障害)」が

85.3%であった(図6)。これら 3 項目は児童生徒に関する項目であり,「不安」と回答し

ている割合も,それぞれ 58.2%,51.4%,42.6%と他の項目に比べて高い。

一方,教職員に関する項目は,「十分な引率体制をとること」が 67.5%,「教職員の身体

的な健康」が 60.9%,「教職員の夜間における十分な指導体制をとること」が 55.7%,「教

職員の時間外勤務に対する手当」が 46.5%,「教職員の体験活動の指導力」が 39.3%とな

っており,児童生徒に関する項目と比べると低い傾向にある。

また,集団宿泊活動実施上の問題としてあげられることが多い「集団宿泊活動を実施す

ることによる授業時数の不足」は 48.9%であった。

「集団宿泊活動の効果があいまい」は 15.8%(「不安」と回答は 2.4%)で一番低く,「集

団宿泊活動の成果」として,多くの項目が高い割合になっている結果と一致している。

82.3

58.2

45.5

38.5

28.5

11.0

17.4

38.8

48.3

47.0

53.5

42.9

0.1

2.7

5.6

13.5

16.5

38.6

0.0

0.1

0.2

0.7

1.2

7.2

0.2

0.2

0.3

0.3

0.3

0.4

0 20 40 60 80 100

普段の学校生活では見られない児童生徒の一面を見ることができるな

ど、教員の児童生徒への理解が深まる

教員と児童生徒との信頼関係が構築できる

集団宿泊的行事の担当になった教員のマネジメント力(計画の立案や

準備、手順通りに進めるといった力量)が高まる

集団宿泊的行事の担当になった教員のコミュニケーション力(学校以

外の関係者や他の教職員と連絡・調整・合意するといった力量)が…

教職員の人間関係がよくなる

保護者や地域、関係団体との連携が促進される

当てはまる やや当てはまる あまり当てはまらない 当てはまらない 不明

%

普段の学校生活では見られない児童生徒の一面を見ることが

できるなど、教員の児童生徒への理解が深まる

教員と児童生徒との信頼関係が構築できる

保護者や地域、関係団体との連携が促進される

教職員の人間関係がよくなる

集団宿泊的行事の担当になった教員のコミュニケーション力

(学校以外の関係者や他の教職員と連絡・調整・合意する

といった力量)が高まる

集団宿泊的行事の担当になった教員のマネジメント力

(計画の立案や準備、手順通りに進めるといった力量)が高まる

127Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

図7-1 教職員以外の引率者の人数(学校種別)

図7-2 教職員以外の指導者の人数(学校種別)

(7)集団宿泊的行事や体験活動を推進する体制

① 集団宿泊的行事に対する教育委員会等からの経費補助

「集団宿泊活動」で教育委員会等から経費的補助が「ある」と回答した割合は小学校が

35.5%,中学校が 27.6%であり,「修学旅行」は小学校が 9.7%,中学校が 14.2%であっ

た(図8-1、図8-2)。

経費的補助は,集団宿泊活動の方が修学旅行よりも実施されている割合が高い。

図8-1 集団宿泊活動の実施にかかる教育委員会

等からの経費補助(学校種別)

図8-2 修学旅行の実施にかかる教育委員会等

からの経費補助(学校種別)

② 体験活動を推進する学校体制の整備状況(複数回答)

体験活動の推進体制の回答の割合は高い順に,小学校,中学校ともに,ア「担当の教職

員を配置」(小学校 41.6%,中学校 47.8%),イ「学校の教職員で構成する「委員会・部会」

を設置」(小学校 21.1%,中学校 38.1%),ウ「学校行事の準備や運営に関する業務の一部

を外部に委託」(小学校 14.8%,中学校 15.9%),エ「保護者や地域の自治会,社会教育関

係団体等の関係者で構成する「体験活動委員会」を設置」(小学校 5.4%,中学校 3.7%)

であった(図9)。

アとイは学校内での取組,ウとエは学校外の団体等と関係した取組であり,学校内の取

組に比して,学校外の取組は低い。

③ 体験活動に関する施策等の認知状況

「よく知っている」と「知っている」と回答した合計の割合は高い順に,「現学習指導要

領(平成 20 年告示)で,小中学校の教育内容の主な改善点として「体験活動の充実」が提

示されていること」が 84.0%,「次期学習指導要領(平成 29 年告示)で,小中学校の教育

内容の主な改善点として「体験活動の充実」が提示されていること」が 83.4%,「小学校

は自然の中での集団宿泊活動,中学校は職場体験を重点的に推進することが望まれるとさ

17.5

13.52.6

0.9

1.8

1.1

6.4

6.0

71.6

78.6

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=656)

中学校

(n=453)

4人以上 3人 2人 1人 いなかった

%

11.7

14.83.0

2.9

5.8

3.1

5.3

4.9

74.1

74.4

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=656)

中学校

(n=453)

4人以上 3人 2人 1人 いなかった

%

35.5

27.6

64.5

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0 20 40 60 80 100

小学校

(n=656)

中学校

(n=453)

あり なし

%

9.7

14.2

90.3

85.8

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=565)

中学校

(n=572)

あり なし

%

図6 集団宿泊活動を実施する際に不安なこと(n=1,295)

(6)集団宿泊活動における教職員以外の引率者と指導者

教職員以外の引率者については,「いない」と回答した割合が小学校,中学校ともに最も

高く,小学校が 71.6%,中学校が 78.6%であった。また,「いる」と回答した学校の「引率

者数」で最も高い割合は小学校,中学校ともに「4 人以上」で,小学校が 17.5%,中学校が

13.5%であった(図7-1)。

教職員以外の指導者については,「いない」と回答した割合が小学校,中学校ともに最も

高く,小学校が 74.1%,中学校が 74.4%であった。また,「いる」と回答した学校の「指導

者数」で最も高い割合は小学校,中学校ともに「4 人以上」で,小学校が 11.7%,中学校が

14.8%であった(図7-2)。

58.2

51.4

42.6

28.0

24.9

22.7

18.6

20.8

12.4

18.1

12.6

12.5

15.1

19.2

5.7

3.2

2.4

35.8

40.1

42.7

45.1

46.6

44.8

45.4

40.1

45.5

37.6

42.8

40.8

33.8

27.3

33.6

18.8

13.4

5.3

7.6

12.8

23.0

26.3

26.0

29.8

32.7

36.2

36.2

38.3

39.4

39.6

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53.5

0.6

0.6

1.7

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6.0

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7.9

5.9

7.1

11.2

16.6

12.1

15.7

30.3

0.2

0.2

0.2

0.3

0.2

0.2

0.2

0.3

0.3

0.2

0.4

0.2

0.2

0.5

0.2

0.7

0.4

0 20 40 60 80 100

児童生徒の身体的な不安(病気、体調不良、アレルギー等)

児童生徒の野外活動等における事故

集団宿泊活動に関する事務的な業務に係る時間の確保

児童生徒の精神的な不安(人間関係やホームシック等)

十分な引率体制をとること

集団宿泊活動の事前指導の時間の確保

教職員の身体的な健康

保護者の経済的な負担

教職員の夜間における十分な指導体制をとること

児童生徒の生活面の指導

集団宿泊活動の事後指導の時間の確保

集団宿泊活動を実施することによる授業時数の不足

教職員の時間外勤務に対する手当

教職員の体験活動の指導力

保護者の理解を得ること

集団宿泊活動の教育効果があいまい

不安 やや不安 あまり不安ではない 不安ではない 不明

%

特別な配慮を要する児童生徒への対応

(身体的な障害や精神的な障害)

128 Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

図7-1 教職員以外の引率者の人数(学校種別)

図7-2 教職員以外の指導者の人数(学校種別)

(7)集団宿泊的行事や体験活動を推進する体制

① 集団宿泊的行事に対する教育委員会等からの経費補助

「集団宿泊活動」で教育委員会等から経費的補助が「ある」と回答した割合は小学校が

35.5%,中学校が 27.6%であり,「修学旅行」は小学校が 9.7%,中学校が 14.2%であっ

た(図8-1、図8-2)。

経費的補助は,集団宿泊活動の方が修学旅行よりも実施されている割合が高い。

図8-1 集団宿泊活動の実施にかかる教育委員会

等からの経費補助(学校種別)

図8-2 修学旅行の実施にかかる教育委員会等

からの経費補助(学校種別)

② 体験活動を推進する学校体制の整備状況(複数回答)

体験活動の推進体制の回答の割合は高い順に,小学校,中学校ともに,ア「担当の教職

員を配置」(小学校 41.6%,中学校 47.8%),イ「学校の教職員で構成する「委員会・部会」

を設置」(小学校 21.1%,中学校 38.1%),ウ「学校行事の準備や運営に関する業務の一部

を外部に委託」(小学校 14.8%,中学校 15.9%),エ「保護者や地域の自治会,社会教育関

係団体等の関係者で構成する「体験活動委員会」を設置」(小学校 5.4%,中学校 3.7%)

であった(図9)。

アとイは学校内での取組,ウとエは学校外の団体等と関係した取組であり,学校内の取

組に比して,学校外の取組は低い。

③ 体験活動に関する施策等の認知状況

「よく知っている」と「知っている」と回答した合計の割合は高い順に,「現学習指導要

領(平成 20 年告示)で,小中学校の教育内容の主な改善点として「体験活動の充実」が提

示されていること」が 84.0%,「次期学習指導要領(平成 29 年告示)で,小中学校の教育

内容の主な改善点として「体験活動の充実」が提示されていること」が 83.4%,「小学校

は自然の中での集団宿泊活動,中学校は職場体験を重点的に推進することが望まれるとさ

17.5

13.52.6

0.9

1.8

1.1

6.4

6.0

71.6

78.6

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=656)

中学校

(n=453)

4人以上 3人 2人 1人 いなかった

%

11.7

14.83.0

2.9

5.8

3.1

5.3

4.9

74.1

74.4

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=656)

中学校

(n=453)

4人以上 3人 2人 1人 いなかった

%

35.5

27.6

64.5

72.4

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=656)

中学校

(n=453)

あり なし

%

9.7

14.2

90.3

85.8

0 20 40 60 80 100

小学校

(n=565)

中学校

(n=572)

あり なし

%

129Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

理体制の整備」が 96%,「施設・設備の充実」が 95.7%,「利用に関して学校の要望を受け

容れるなどの柔軟な対応をとること」が 92.7%,「利用に関する手続きなどを簡略にする

こと」が 90.3%であり,全体的に高い傾向となっている(図 11)。

図 11 集団宿泊活動を実施する際に必要な施設等や教育委員会等からの支援(n=1,295)

70.7

71.6

71.1

50.0

52.2

52.8

39.1

36.9

36.3

46.3

43.9

36.8

25.6

38.3

25.6

39.3

38.1

18.8

24.2

26.4

14.0

13.7

12.3

16.6

17.8

15.9

11.4

6.7

25.6

24.4

24.6

42.7

38.1

31.5

44.5

45.9

45.7

33.7

35.7

42.3

50.2

37.0

47.1

32.7

33.5

50.6

45.0

33.1

43.7

41.9

42.5

37.6

24.4

25.2

25.3

28.1

5.7

7.6

11.2

13.1

14.3

14.8

15.1

14.9

15.9

20.0

19.1

22.3

20.3

21.6

25.9

25.4

30.2

35.1

38.0

37.7

34.2

35.3

35.9

46.4

45.9

3.9

2.7

2.4

2.74.6

4.7

4.5

3.65.2

4.0

6.9

6.3

4.2

4.8

9.5

6.7

6.0

7.0

10.5

21.1

21.8

16.0

18.5

0.4

0.3

0.5

0.5

0.5

0.5

0.6

0.5

0.5

0.4

0.8

0.5

0.5

0.5

0.9

0.7

0.5

0.5

0.6

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0.5

0.4

0.5

1.1

1.5

1.2

0.9

0.7

0 20 40 60 80 100

安全管理体制の整備

施設・設備の充実

利用に関して学校の要望を受け容れるなどの柔軟な対応をとること

利用に関する手続きなどを簡略にすること

教育委員会等による児童生徒の交通費や宿泊費等の経費補助

「利用の手引」や「体験活動プログラム集」などの資料の充実

ホームページなどの案内情報に関する資料の充実

施設等の職員の対応をよくすること(言葉遣いや親切な対応など)

集団宿泊活動の計画や指導の参考になる手引書のような資料の提供

教育委員会等によるバスの手配などの事務的な業務の代行や支援

教育委員会等による看護師等の手配や配置

集団宿泊活動の計画や指導の参考になる他校の実践事例集の提供

各教科等に体験活動を関連付け効果的に展開するプログラムの提供

教育委員会等による引率者や指導者の手配や配置

教職員を対象にした集団宿泊活動や体験活動に関する研修会の実施

保護者等に集団宿泊活動の効果などを知らせるための資料の提供

集団宿泊活動の効果を測定するための資料の提供

施設等による引率者や指導者の紹介や手配

施設等による農林漁業体験や農林漁家泊ができる場所の紹介や手配

地域の方々による児童生徒の引率や指導への協力

必要 どちらかというと必要どちらかというと必要ではない 必要ではない不明

%

特別な配慮を要する児童生徒(身体的な障害や精神的な障害)に

対する施設・設備の充実や対応

施設等の職員等による児童生徒への一般的な体験活動プログラム

(野外炊事やオリエンテーリングなど)の直接指導

教育委員会等による特別な配慮を要する児童生徒(身体的な障害や

精神的な障害)に対応するための要員の手配や配置

施設等の職員による計画の立案に際しての専門的な助言

(目的を整理することや、目的に応じたプログラムの紹介など)

施設等の職員等による児童生徒への専門的な体験活動プログラム

(協調性を育むことを目的としたグループ活動など)の直接指導

人間関係の形成や、自分や仲間の個性を理解し尊重する

資質・能力を高めるプログラムの提供

施設等の職員が学校に出向いて事前・事後指導に当たることや

保護者会等で説明すること

教育委員会等による農林漁業体験や農林漁家泊ができる

場所の紹介や手配

れていること」が 82.9%と,「学習指導要領」に示されている 3 項目が 8 割を超えている。

しかし,「よく知っている」と回答した割合は,各項目とも 3 割程度であった(図 10)。

また,「学習指導要領解説 特別活動編」で示されている「集団宿泊活動に教科の内容に

かかわる活動が含まれる場合,当該活動について教科の学習として位置付けられること」

が 62.4%,「体験活動の効果を高めるためには,一定期間(例えば,1 週間(5 日間程度))

実施することが望まれるとされていること」が 54.8%であり,学習指導要領に示されてい

る事項と比べると低い傾向にあり,「よく知っている」と回答した割合も 2 割に満たない。

図9体験活動を推進する体制の整備状況(学校種別)

図 10 体験図 10 体験活動等に関する施策等に対する回答者の認知(n=1,295)

活動等に関する施策等に対する回答者の認知(n=1,295)

図 10 体験活動等に関する施策等に対する回答者の認知(n=1,295)

(8)集団宿泊活動を計画・実施するに当たっての必要な支援事項

「必要」と「やや必要」と回答した合計の割合は高い順に,「特別な配慮を要する児童生

徒(身体的な障害や精神的な障害)に対する施設・設備の充実や対応」が 96.3%,「安全管

41.6

21.1

14.8

5.4

4.6

47.8

38.1

15.9

3.7

3.3

0 20 40 60 80 100

担当の教職員を配置

学校の教職員で構成する「委員会・部会」を設置

学校行事の準備や運営に関する業務の一部を、外部に委託

保護者や地域の自治会、社会教育関係団体等の関係者で構成する

「体験活動委員会」を設置

その他

小学校(n=656)

中学校(n=453)

%

担当の教職員を配置

学校の教職員で構成する「委員会・部会」を設置

学校行事の準備や運営に関する業務の一部を

外部に委託

その他

保護者や地域の自治会、社会教育関係団体等の

関係者で構成する「体験活動委員会」を設置

■小学校(n=668)

□中学校(n=627)

33.7

33.0

33.9

17.1

18.4

11.0

50.3

50.4

49.0

45.3

36.4

29.3

11.0

12.6

12.7

23.4

25.4

33.9

4.9

4.0

4.1

13.8

19.5

25.6

0.0

0.0

0.2

0.4

0.2

0.1

0 20 40 60 80 100

現学習指導要領(平成20年告示)で、小中学校の教育内容の主な改

善点として「体験活動の充実」が提示されていること

次期学習指導要領(平成29年告示)で、小中学校の教育内容の主な

改善点として「体験活動の充実」が提示されていること

小学校は自然の中での集団宿泊活動、中学校は職場体験を重点的に

推進することが望まれるとされていること

集団宿泊活動に教科の内容にかかわる活動が含まれる場合、当該活

動について教科の学習として位置付けられること

体験活動の効果を高めるためには、一定期間(例えば、1週間(5

日間程度))実施することが望まれるとされていること

農林漁業体験や農林漁家での民泊等を行うといった「子ども農山漁

村交流プロジェクト」が推進されていること

よく知っている 知っている 聞いたことがある 知らない 不明

%

現学習指導要領(平成20年告示)で、小中学校の教育内容の

主な改善点として「体験活動の充実」が提示されていること

次期学習指導要領(平成29年告示)で、小中学校の教育内容の

主な改善点として「体験活動の充実」が提示されていること

小学校は自然の中での集団宿泊活動、中学校は職場体験を

重点的に推進することが望まれるとされていること

集団宿泊活動に教科の内容にかかわる活動が含まれる場合、

当該活動について教科の学習として位置付けられること

農林漁業体験や農林漁家での民泊等を行うといった

「子ども農山漁村交流プロジェクト」が推進されていること

体験活動の効果を高めるためには、一定期間(例えば、

1週間(5日間程度))実施することが望まれるとされているこ

130 Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

理体制の整備」が 96%,「施設・設備の充実」が 95.7%,「利用に関して学校の要望を受け

容れるなどの柔軟な対応をとること」が 92.7%,「利用に関する手続きなどを簡略にする

こと」が 90.3%であり,全体的に高い傾向となっている(図 11)。

図 11 集団宿泊活動を実施する際に必要な施設等や教育委員会等からの支援(n=1,295)

70.7

71.6

71.1

50.0

52.2

52.8

39.1

36.9

36.3

46.3

43.9

36.8

25.6

38.3

25.6

39.3

38.1

18.8

24.2

26.4

14.0

13.7

12.3

16.6

17.8

15.9

11.4

6.7

25.6

24.4

24.6

42.7

38.1

31.5

44.5

45.9

45.7

33.7

35.7

42.3

50.2

37.0

47.1

32.7

33.5

50.6

45.0

33.1

43.7

41.9

42.5

37.6

24.4

25.2

25.3

28.1

5.7

7.6

11.2

13.1

14.3

14.8

15.1

14.9

15.9

20.0

19.1

22.3

20.3

21.6

25.9

25.4

30.2

35.1

38.0

37.7

34.2

35.3

35.9

46.4

45.9

3.9

2.7

2.4

2.74.6

4.7

4.5

3.65.2

4.0

6.9

6.3

4.2

4.8

9.5

6.7

6.0

7.0

10.5

21.1

21.8

16.0

18.5

0.4

0.3

0.5

0.5

0.5

0.5

0.6

0.5

0.5

0.4

0.8

0.5

0.5

0.5

0.9

0.7

0.5

0.5

0.6

0.8

0.5

0.4

0.5

1.1

1.5

1.2

0.9

0.7

0 20 40 60 80 100

安全管理体制の整備

施設・設備の充実

利用に関して学校の要望を受け容れるなどの柔軟な対応をとること

利用に関する手続きなどを簡略にすること

教育委員会等による児童生徒の交通費や宿泊費等の経費補助

「利用の手引」や「体験活動プログラム集」などの資料の充実

ホームページなどの案内情報に関する資料の充実

施設等の職員の対応をよくすること(言葉遣いや親切な対応など)

集団宿泊活動の計画や指導の参考になる手引書のような資料の提供

教育委員会等によるバスの手配などの事務的な業務の代行や支援

教育委員会等による看護師等の手配や配置

集団宿泊活動の計画や指導の参考になる他校の実践事例集の提供

各教科等に体験活動を関連付け効果的に展開するプログラムの提供

教育委員会等による引率者や指導者の手配や配置

教職員を対象にした集団宿泊活動や体験活動に関する研修会の実施

保護者等に集団宿泊活動の効果などを知らせるための資料の提供

集団宿泊活動の効果を測定するための資料の提供

施設等による引率者や指導者の紹介や手配

施設等による農林漁業体験や農林漁家泊ができる場所の紹介や手配

地域の方々による児童生徒の引率や指導への協力

必要 どちらかというと必要どちらかというと必要ではない 必要ではない不明

%

特別な配慮を要する児童生徒(身体的な障害や精神的な障害)に

対する施設・設備の充実や対応

施設等の職員等による児童生徒への一般的な体験活動プログラム

(野外炊事やオリエンテーリングなど)の直接指導

教育委員会等による特別な配慮を要する児童生徒(身体的な障害や

精神的な障害)に対応するための要員の手配や配置

施設等の職員による計画の立案に際しての専門的な助言

(目的を整理することや、目的に応じたプログラムの紹介など)

施設等の職員等による児童生徒への専門的な体験活動プログラム

(協調性を育むことを目的としたグループ活動など)の直接指導

人間関係の形成や、自分や仲間の個性を理解し尊重する

資質・能力を高めるプログラムの提供

施設等の職員が学校に出向いて事前・事後指導に当たることや

保護者会等で説明すること

教育委員会等による農林漁業体験や農林漁家泊ができる

場所の紹介や手配

131Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

Ⅳ 国立青少年教育振興機構

施設一覧・配置図

3.まとめ

(1)小学校の集団宿泊活動について

小学校の自然の中での集団宿泊活動の実施率は 98.2%であり,平成 20 年告示小学校学

習指導要領が示す「自然の中での集団宿泊活動に重点を置く」ことはほぼ達成されている。

一方,小学校学習指導要領解説特別活動編で示されている「一定期間(例えば 1 週間(5

日間)程度にわたって行うことが望まれる」については,1 泊と 2 泊を合わせると 92.7%

になり,進展していない。

(2)中学校の集団宿泊活動について

中学校の自然の中での集団宿泊活動の実施率は 72.2%であり,小学校よりも低い。平成

20 年告示中学校学習指導要領は「職場体験活動に重点を置く」としており,「自然の中で

の集団宿泊活動」については言及していない。

一方,修学旅行の実施率は 91.2%であり,小学校の修学旅行の実施率 84.6%,中学校の

集団宿泊活動の実施率 72.2%よりも高い。学習指導要領では,「集団宿泊的行事」を実施

することが必須となっていることからすると,ほぼ達成されている。

(3)集団宿泊活動の成果

集団宿泊活動の成果は,集団宿泊活動が学習指導要領上位置付けられる「特別活動」「学

校行事」「遠足/旅行・集団宿泊的行事」の目標や内容に示されている「人間関係」や「集

団活動」に関する項目の割合が高い。

一方,「自然の中での集団宿泊活動」ではあるが,「自然の大切さ」や「環境保全の態度」

といった「自然」に関する項目の割合は低い傾向になっている。

また,集団宿泊的行事は,教員の児童生徒に対する深い理解や信頼関係構築についても

高い成果をあげている。

(4)集団宿泊活動を計画・実施する際の不安事項と必要な支援

不安事項は,病気や野外活動中の事故といった「児童生徒の安全」に関する項目の割合

が高い。しかしながら,「安全管理」に関する事項である「教職員以外の引率者や指導者」

については「いない」と回答した学校が 7 割を超えている。

必要な支援事項は,不安事項を反映し,安全管理や施設・設備の充実に関する項目の割

合が高い。

(5)集団宿泊活動を推進する体制

「体験活動の充実」といった学習指導要領に示されていることの認知は高い傾向にある

が,「一定期間実施」といった学習指導要領の解説に示されていることの認知は低い傾向に

ある。

また,体験活動や集団宿泊活動を推進する校内の体制が整っている学校は半数程度であ

り,学校外の協力を得るような体制はさらに低い。

(文責:青少年教育研究センター 小林 真一)

132 Ⅲ 調査研究報告/小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査

Ⅳ 国立青少年教育振興機構

施設一覧・配置図

Ⅳ 国立青少年教育振興機構施設一覧・配置図

15 国立日高青少年自然の家 〒055-2315 北海道沙流郡日高町字富岡

TEL 01457-6-2311 FAX 01457-6-3934 URL https://hidaka.niye.go.jp

16 国立花山青少年自然の家 〒987-2593 宮城県栗原市花山字本沢沼山61-1

TEL 0228-56-2311 FAX 0228-56-2469 URL https://hanayama.niye.go.jp

17 国立那須甲子青少年自然の家 〒961-8071 福島県西白河郡西郷村大字真船字村火6-1

TEL 0248-36-2331 FAX 0248-36-2150 URL https://nasukashi.niye.go.jp

18 国立信州高遠青少年自然の家 〒396-0301 長野県伊那市高遠町藤沢6877-11

TEL 0265-96-2525 FAX 0265-96-2151 URL https://takato.niye.go.jp

19 国立妙高青少年自然の家 〒949-2235 新潟県妙高市大字関山6323-2

TEL 0255-82-4321 FAX 0255-82-4325 URL https://myoko.niye.go.jp

20 国立立山青少年自然の家 〒930-1407 富山県中新川郡立山町芦峅寺字前谷1

TEL 076-481-1321 FAX 076-481-1430 URL https://tateyama.niye.go.jp

21 国立若狭湾青少年自然の家 〒917-0198 福井県小浜市田烏区大浜

TEL 0770-54-3100 FAX 0770-54-3023 URL https://wakasawan.niye.go.jp

22 国立曽爾青少年自然の家 〒633-1202 奈良県宇陀郡曽爾村太良路1170

TEL 0745-96-2121 FAX 0745-96-2126 URL https://soni.niye.go.jp

23 国立吉備青少年自然の家 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川4393-82

TEL 0866-56-7231 FAX 0866-56-7235 URL https://kibi.niye.go.jp

24 国立山口徳地青少年自然の家 〒747-0342 山口県山口市徳地船路668

TEL 0835-56-0111 FAX 0835-56-0130 URL https://tokuji.niye.go.jp

25 国立室戸青少年自然の家 〒781-7108 高知県室戸市元乙1721

TEL 0887-23-2313 FAX 0887-23-2484 URL http://muroto.niye.go.jp

26 国立夜須高原青少年自然の家 〒838-0202 福岡県朝倉郡筑前町三箇山1103

TEL 0946-42-5811 FAX 0946-42-5880 URL https://yasu.niye.go.jp

27 国立諫早青少年自然の家 〒859-0307 長崎県諫早市白木峰町1109-1

TEL 0957-25-9111 FAX 0957-25-9115 URL https://isahaya.niye.go.jp

28 国立大隅青少年自然の家 〒891-2396 鹿児島県鹿屋市花里町赤崩

TEL 0994-46-2222 FAX 0994-46-2540 URL https://osumi.niye.go.jp/

Ⅳ 国立青少年教育振興機構施設一覧・配置図

国立青少年教育振興機構施設一覧

(令和2年3月1日現在)

1 国立オリンピック記念 青少年総合センター

〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3-1 TEL 03-3469-2525 FAX 03-3469-2277 URL https://nyc.niye.go.jp

2 国立大雪青少年交流の家 〒071-0235 北海道上川郡美瑛町字白金温泉

TEL 0166-94-3121 FAX 0166-94-3223 URL https://taisetsu.niye.go.jp

3 国立岩手山青少年交流の家 〒020-0601 岩手県滝沢市後292

TEL 019-688-4221 FAX 019-688-5047 URL https://iwate.niye.go.jp

4 国立磐梯青少年交流の家 〒969-3103 福島県耶麻郡猪苗代町字五輪原7136-1

TEL 0242-62-2530 FAX 0242-62-2532 URL https://bandai.niye.go.jp

5 国立赤城青少年交流の家 〒371-0101 群馬県前橋市富士見町赤城山27

TEL 027-289-7224 FAX 027-289-7226 URL https://akagi.niye.go.jp

6 国立能登青少年交流の家 〒925-8530 石川県羽咋市柴垣町14-5-6

TEL 0767-22-3121 FAX 0767-22-3125 URL https://noto.niye.go.jp

7 国立乗鞍青少年交流の家 〒506-0815 岐阜県高山市岩井町913-13

TEL 0577-31-1013 FAX 0577-31-1025 URL https://norikura.niye.go.jp

8 国立中央青少年交流の家 〒412-0006 静岡県御殿場市中畑2092-5

TEL 0550-89-2020 FAX 0550-89-2025 URL https://fujinosato.niye.go.jp

9 国立淡路青少年交流の家 〒656-0543 兵庫県南あわじ市阿万塩屋町757-39

TEL 0799-55-2695 FAX 0799-55-0463 URL https://awaji.niye.go.jp

10 国立三瓶青少年交流の家 〒694-0002 島根県大田市山口町山口1638-12

TEL 0854-86-0319 FAX 0854-86-0458 URL https://sanbe.niye.go.jp

11 国立江田島青少年交流の家 〒737-2126 広島県江田島市江田島町津久茂1-1-1

TEL 0823-42-0660 FAX 0823-42-0664 URL https://etajima.niye.go.jp

12 国立大洲青少年交流の家 〒795-0001 愛媛県大洲市北只1086

TEL 0893-24-5175 FAX 0893-24-2909 URL https://ozu.niye.go.jp

13 国立阿蘇青少年交流の家 〒869-2692 熊本県阿蘇市一の宮町宮地6029-1

TEL 0967-22-0811 FAX 0967-22-0814 URL https://aso.niye.go.jp

14 国立沖縄青少年交流の家 〒901-3595 沖縄県島尻郡渡嘉敷村字渡嘉敷2760

TEL 098-987-2306 FAX 098-987-2318 URL https://okinawa.niye.go.jp

134 Ⅳ 国立青少年教育振興機構施設一覧・配置図

Ⅳ 国立青少年教育振興機構施設一覧・配置図

15 国立日高青少年自然の家 〒055-2315 北海道沙流郡日高町字富岡

TEL 01457-6-2311 FAX 01457-6-3934 URL https://hidaka.niye.go.jp

16 国立花山青少年自然の家 〒987-2593 宮城県栗原市花山字本沢沼山61-1

TEL 0228-56-2311 FAX 0228-56-2469 URL https://hanayama.niye.go.jp

17 国立那須甲子青少年自然の家 〒961-8071 福島県西白河郡西郷村大字真船字村火6-1

TEL 0248-36-2331 FAX 0248-36-2150 URL https://nasukashi.niye.go.jp

18 国立信州高遠青少年自然の家 〒396-0301 長野県伊那市高遠町藤沢6877-11

TEL 0265-96-2525 FAX 0265-96-2151 URL https://takato.niye.go.jp

19 国立妙高青少年自然の家 〒949-2235 新潟県妙高市大字関山6323-2

TEL 0255-82-4321 FAX 0255-82-4325 URL https://myoko.niye.go.jp

20 国立立山青少年自然の家 〒930-1407 富山県中新川郡立山町芦峅寺字前谷1

TEL 076-481-1321 FAX 076-481-1430 URL https://tateyama.niye.go.jp

21 国立若狭湾青少年自然の家 〒917-0198 福井県小浜市田烏区大浜

TEL 0770-54-3100 FAX 0770-54-3023 URL https://wakasawan.niye.go.jp

22 国立曽爾青少年自然の家 〒633-1202 奈良県宇陀郡曽爾村太良路1170

TEL 0745-96-2121 FAX 0745-96-2126 URL https://soni.niye.go.jp

23 国立吉備青少年自然の家 〒716-1241 岡山県加賀郡吉備中央町吉川4393-82

TEL 0866-56-7231 FAX 0866-56-7235 URL https://kibi.niye.go.jp

24 国立山口徳地青少年自然の家 〒747-0342 山口県山口市徳地船路668

TEL 0835-56-0111 FAX 0835-56-0130 URL https://tokuji.niye.go.jp

25 国立室戸青少年自然の家 〒781-7108 高知県室戸市元乙1721

TEL 0887-23-2313 FAX 0887-23-2484 URL http://muroto.niye.go.jp

26 国立夜須高原青少年自然の家 〒838-0202 福岡県朝倉郡筑前町三箇山1103

TEL 0946-42-5811 FAX 0946-42-5880 URL https://yasu.niye.go.jp

27 国立諫早青少年自然の家 〒859-0307 長崎県諫早市白木峰町1109-1

TEL 0957-25-9111 FAX 0957-25-9115 URL https://isahaya.niye.go.jp

28 国立大隅青少年自然の家 〒891-2396 鹿児島県鹿屋市花里町赤崩

TEL 0994-46-2222 FAX 0994-46-2540 URL https://osumi.niye.go.jp/

135Ⅳ 国立青少年教育振興機構施設一覧・配置図

Ⅴ 青少年教育研究センター紀要

第8号投稿原稿募集要項・執筆要領

Ⅳ 国立青少年教育振興機構施設一覧・配置図

国立青少年教育振興機構施設配置図

136 Ⅳ 国立青少年教育振興機構施設一覧・配置図

Ⅴ 青少年教育研究センター紀要

第8号投稿原稿募集要項・執筆要領

1

独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿募集要項

平成31年4月11日

独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター紀要編集委員会

1.趣旨

独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター紀要(以後、「紀要」という。)は、広く青少年教育指導

者や研究者などの青少年教育関係者から青少年教育に関する理論や実践的な調査研究の成果を募り、その発表の場とし

ます。また、独立行政法人国立青少年教育振興機構の研究成果等を公表し、これらを、誌上を通して青少年教育施設、

青少年教育団体などの関係者等に提供することを通じて、今後の実践活動や研究活動などの充実に資することを目的と

します。この要項は、本紀要の投稿原稿の基準に必要な事項を定めたものです。

2.投稿原稿のテーマ及び内容

青少年教育に関する調査研究、又は報告。ただし、下記の内容を優先します。

(1) 青少年教育に関する課題解決のための実証的・先進的な取組

(2) 地域のニーズや課題を踏まえた効果的な実践活動の推進

(3) 青少年教育施設の事業運営や施設職員の役割に関する実践や取組

(4) 青少年の団体活動の意義やその成果

(5) 学校等における体験活動に関する実践や取組

(6) 地域における学校外(放課後活動、休日活動等)の教育活動

(7) 青少年教育に関する政策や答申等を踏まえた実践や取組

(8) 家庭教育における体験活動の推進に関する実践や取組

(9) 上記(1)~(8)以外の青少年教育に関する実践や取組

3.投稿資格

(1) 青少年教育施設・団体関係者

(2) 社会教育施設・団体関係者

(3) 青少年教育行政関係者・社会教育行政関係者

(4) 学校教育関係者

(5) 青少年教育研究者等

4.投稿原稿の区分

(1)投稿できる原稿は以下のとおりです。

① 論文

先行研究にもとづき研究課題が明確に設定され、新たな知見が論理的・実証的に提示されているもの、又は特定

の研究分野について、課題や展望が体系的に提示されているもの。

② 報告

特定の調査について、その目的・意義等が明確に示され、分析・解釈の結果が適切に提示されているもの、又は

特定の実践について、その目的・意義等が明確に示され、課題や展望が適切に提示されているもの。

(2)原稿の提出後に、投稿者が原稿の区分を変更することはできません。

(3)査読の過程で論文又は報告として掲載できないと判断された場合、独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教

育研究センター紀要編集委員会(以後、「編集委員会」という。)の判断により、論文として投稿されたものを研

究ノート、報告として投稿されたものを資料として、掲載を認める場合があります。研究ノートと資料の概要はそ

れぞれ以下のとおりです。

① 研究ノート

新たな知見が認められ、論文への発展が期待できるもの。

② 資料

有用性が認められ、報告への発展が期待できるもの。

138 Ⅴ 青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿募集要項・執筆要領

2

5.執筆

(1)原稿は「独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター紀要執筆要領」(以後、「執筆要領」とい

う。)に従い、原則として和文で記述してください。ただし、編集委員会が認めた場合はこの限りではありません。

(2)執筆は、マイクロソフト社オフィス(Office)のワード(Word)(以下「ワード」という)を用いてください。

6.遵守義務

投稿原稿(論文・報告ともに)は、以下の内容が全て満たされていることが条件です。

(1)未発表のものであり、他の雑誌等に投稿中でないもの。ただし、学会の大会等における口頭発表やその資料の内容

を充実させた論文、あるいは各種研究助成金の交付を受けた研究をまとめた論文等は投稿することができます。

(2)捏造、改竄、剽窃等の非倫理的な行為で執筆されていないこと。

(3)調査や事業等が社会的規範及び倫理的側面からみて、著しく逸脱した方法で実施されたものでないこと。

(4)個人情報保護等の観点から個人が特定されないよう十分に配慮したものであること。

7.採否の決定

原稿の採否は、査読を経て編集委員会によって決定します。投稿原稿の査読は原則として3回です。

8.投稿料及び掲載料

投稿料及び掲載料は徴収しません。

9.校正

原稿の校正は、初校のみ投稿者に依頼します。

10.著作権

(1)紀要に掲載された投稿原稿の著作権については、独立行政法人国立青少年教育振興機構(以後、「機構」という。)に

帰属します。また、投稿者自身が自分の投稿原稿を利用する場合には、機構の許諾を必要とはしません。

(2)紀要に掲載された投稿原稿は原則として、電子化し、機構のホームページ等において公開します。

11.原稿の提出

(1)提出方法

下記のEメールアドレスまで添付して送信してください。

(2)提出内容

投稿原稿本体及び添え状(詳細は執筆要領を参照)を、ワード及びPDFにてそれぞれ提出する。

(3)提出先Eメールアドレス

[email protected]

(4)提出期限

投稿原稿は募集要項及び執筆要領に従い作成し、2019年7月15日(月)までに提出してください(期

限厳守)。なお、提出された原稿が執筆要領から逸脱している場合は受理できませんので、執筆要領を熟読の

上、投稿原稿を作成してください。

12.その他

募集要項及び執筆要領は、当機構のホームページ( https://www.niye.go.jp/ )または青少年教育研究センターのペー

ジ( https://www.niye.go.jp/services/research/ )から閲覧及びダウンロードすることができます。また、当機構のホー

ムページ『調査研究報告書検索』で過去の紀要を閲覧することができますので、原稿作成の参考にしてください。

13.問い合わせ先

本件担当:独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター紀要編集委員会

事務局:研究センター企画室(03-6407-7741)

〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3-1 Eメール:[email protected]

139Ⅴ 青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿募集要項・執筆要領

独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター紀要投稿原稿執筆要領

平成30年5月28日

独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター紀要編集委員会

1.趣旨

本要領は、独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター(以後、「研究セン

ター」という。)が発行する、独立行政法人国立青少年教育振興機構青少年教育研究センター

紀要(以後、「紀要」という。)の投稿原稿の執筆に必要な事項を定める。

2.投稿原稿の構成

投稿原稿は、原則として添え状及び本体で構成されるものとする。添え状及び本体に記載する

項目は、表1のとおりとする。また、添え状と本体は別ファイルとすること。

表1 添え状及び本体に記載する項目

構成 項目 留意点

添え状

表題 和文、英文両方で記載する。

著者名 著者全員分の氏名を和文、英文両方で記載する。

所属機関名 著者全員分の主たる所属機関の名称を記載する。

原稿の種類 「論文」または「報告」のいずれかを選択し、記載する。

文字数 本文の文字数を記載する。

図表及び

写真の枚数図、表及び写真のそれぞれの枚数を記載する。

二重投稿

の有無

本稿が二重投稿でない旨を記載する。特に、類似内容の既報あるいは他誌へ

の投稿がある場合には、その原稿との相違点について記載する。

共著者

の役割

共著者による執筆の場合、全員が本稿の内容に責任を持つ旨を記載する。

また、各著者が本稿においてどのような貢献をしたのか具体的に記載する。

利害の衝突

の有無

本稿について利害の衝突の可能性がある場合には、その内容(コンサルタン

ト料、寄付料、株の所有、特許取得等)を記載する。

連絡先 連絡先となる著者の氏名、住所、電話番号、Eメールアドレスを記載する。

本体

原稿の種類 添え状と同様に記載する。

表題 添え状と同様に記載する。

要旨 本文の要旨を400字(10行)以内で記載する。

キーワード 本文の内容に関連するキーワードを3~5個(合計1行以内)記載する。

本文 図表、写真及び引用文献・参考文献・注は本文中に挿入する。

3.原稿の分量

原稿の分量は、添え状が1ページ、本体が図表、写真及び引用文献・参考文献・注を含めて10

ページ以内とする。

4.執筆の手段

執筆は、マイクロソフト社オフィス(Office)のパソコン用ソフトのワード(Word)を使用す

ること。

140 Ⅴ 青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿募集要項・執筆要領

5.本体の書式等

(1)書式(別紙「執筆例」を参照すること。)

① 原稿は、A4用紙を縦置きで使用し、特別の場合を除いて横書きとする。

② 用紙の余白は上下左右各25mmとし、1ページあたりの文字数は40字×40行(1,600字)と

する。

③ 文字・数字・記号のフォントはMS明朝とし、サイズは10.5ポイントとする。ただし、原稿

の種類と表題のサイズは12ポイントとする。

④ 文字・数字・記号は、アルファベット及び2桁以上の算用数字のみ半角とし、その他は全

角とする。

⑤ 本体は、1ページ目の最初の行に左寄せで原稿の種類を記載し、1行開けて和文、英文両

方の表題を中央寄せで記載する。また、表題とキーワードの間は、著者の人数×4行分を開

ける。

⑥ 図表及び写真を除き、本文中の見出しの番号は原則として、「Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ…」、「1、2、

3…」、「(1)、(2)、(3)…」の順に用い、「Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ…」及び「1、2、3…」の上1

行分を開ける。また、箇条書きの番号は、「①、②、③…」または「ⅰ、ⅱ、ⅲ…」を用い

る。

(2)図表

図表は、図と表を区別して「図1」「表1」の要領により算用数字で一連の番号を付けるとと

もに、図については下部、表については上部にそれぞれ見出し及び必要に応じて注釈を付ける。

(3)写真

写真の取り扱いは図に準じるが、白黒で写りの明瞭なものを使用すること。

(4)引用文献・参考文献・注

引用文献・参考文献・注は、本文中の該当箇所の右肩に「1)」、「2)」の要領により一連の番

号を付け、その番号順に本文の最後にまとめて記載する。その際、パソコン用ソフトの注を作

成する機能は使用しないこと。また、記載例は次のとおりとし、「拙稿」「拙著」等の投稿者が

特定される表現は使用しないこと。

① 論文の場合:著者名 論文名 誌名 巻号、発行年、掲載ページ

例)神園太郎「青少年の未来」『青少年研究』第8号、1995、pp.10-15.

例)Wellvalley, J.“Adolescent Girls and Outdoor Life”Journal of Youth Research

8th, 1999, pp.356-379.

② 単行本の場合:著者名 書名 出版社、発行年、掲載ページ

例)代々木花子『野外活動概論』青年書房、1992、pp.98-102.

③ 共著本の場合:執筆者名 タイトル 編者名 書名 出版社、発行年、掲載ページ

例)神園次郎「アメリカにおける野外活動」代々木花子[編]『世界の野外活動』神園出版、

2013、pp.95-120.

④ 翻訳書の場合:著者名/訳者名 書名 出版社、発行年、掲載ページ

例)ディーン,J./渋谷次郎訳『青少年とメディア』少年書院、1989、pp.75-76.

⑤ ホームページの場合:著者名 記事等のタイトル ホームページの作成者名、URL、参照日

例)渋谷次郎「青少年の現状」青少年教育普及協会、https://top.shibuya.go.jp/、2008年

7月7日参照.

6.その他

(1)執筆にあたっては、著作権・肖像権等に十分留意し、写真については本人の承諾済のものを

使用すること。

(2)掲載が認められた原稿について、編集の都合によりレイアウト等の変更が必要な場合は、研

究センターより投稿者へ連絡する。

141Ⅴ 青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿募集要項・執筆要領

(別紙)

執筆例

論文(または報告)

○○○○○表題(和文)○○○○○

○○○○○表題(英文)○○○○○

※著者の人数×4行分を開ける。

(掲載確定後の入稿時に、著者全員分の氏名と主たる所属機関を記載する)

要旨

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

キーワード

○○○○、○○○○、○○○○、○○○○、○○○○

Ⅰ.○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

1.○○○○○○○○○○○○○○○

(1)○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

(2)○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

2.○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

Ⅱ.○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

142 Ⅴ 青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿募集要項・執筆要領

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○1 )

表1 ○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○2 )

図1 ○○○○○○○○○○○○○○○

Ⅲ.○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

1.○○○○○○○○○○○○○○○

(1)○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

(2)○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

2.○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

引用文献・参考文献・注

1)○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

2)○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

143Ⅴ 青少年教育研究センター紀要第8号投稿原稿募集要項・執筆要領

Ⅵ これまでに発行した報告書等一覧

Ⅵ これまでに発行した報告書等一覧

Ⅵ これまでに発行した報告書等一覧

都市部の青少年に対する効果的な体験活動の提供に関する

モデル調査事業報告書 平成28年3月

平成27年度文部科学省委託事業

「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」報告書 平成28年3月

「青少年教育関係施設等基礎調査」(平成25年度調査)報告書 平成27年12月

高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較- 平成27年8月

「子供の生活力に関する実態調査」報告書 平成27年5月

アメリカ合衆国における政府主導の職員研修システムに関する

調査報告書 平成27年3月

平成26年度文部科学省委託事業

「青少年教育施設を活用したネット依存対策研究事業」報告書 平成27年3月

高校生の科学等に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較- 平成26年8月

自然体験・野外活動における指導者育成のコーチングに関する基礎的研究 平成26年3月

青少年の体験活動の意味と範囲の調査研究報告書 平成26年3月

青少年教育関連職員の研修事業に関する研究[中間報告書] 平成26年3月

学校教育における『集団宿泊活動』の手引き

-各教科等の関連を図る教育課程編成指導資料- 平成26年3月

「青少年の体験活動等に関する実態調査」(平成24年度調査)報告書 平成26年3月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【青少年調査ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【成人調査ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【地域・学校ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【教員調査ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【外国調査ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「諸外国の青少年教育施設等調査」報告書(平成24年度文部科学省委託事業) 平成25年3月

子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究報告書 平成25年2月

※ 今後の参考とさせていただきたいと思いますので、上記報告書を引用された場合には

青少年教育研究センターまでその旨ご連絡いただけましたら幸いです。

青少年教育研究センターが公表した報告書や紀要等はQRコードから閲覧できます。

https://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/

Ⅵ これまでに発行した報告書等一覧

これまでに発行した報告書等一覧

報告書タイトル 発行年月

子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究報告(速報版) 令和元年12月

高校生の留学に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較- 令和元年6月

小中学校の集団宿泊活動に関する全国調査 平成31年3月

「青少年教育関係施設基礎調査」(平成28年度調査)報告書 平成31年3月

「探求の対話(P4C)と体験活動の相乗効果に関する研究」報告書 平成31年2月

平成 30 年度文部科学省委託事業「青少年教育施設を活用したネット依存対

策推進事業」報告書 平成31年2月

「青少年の体験活動等に関する意識調査(平成28年度調査)」〔結果の概要〕 平成30年8月

インターネット社会の親子関係に関する意識調査

-日本・米国・中国・韓国の比較- 平成30年7月

都市部の青少年に対する効果的な体験活動の提供に関する

モデルプログラム開発事業(平成29年度)報告書 平成30年3月

高校生の心と体の健康に関する意識調査-日本・米国・中国・韓国の比較- 平成30年3月

「生きる力」の測定・分析ツールのバージョンアップについて 平成30年3月

「子供の四季を通したふだんの生活と施設利用に関する調査」報告書 平成30年3月

「子供の頃の体験がはぐくむ力とその成果に関する調査研究」報告書 平成30年3月

平成29年度文部科学省委託事業

「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」報告書 平成30年2月

長期自然体験活動を経験した青少年のその後の姿

~「御五神島・無人島体験事業」の追跡調査~報告書 平成30年2月

平成28年度文部科学省委託事業

「地域における青少年教育施設の在り方等に関する調査研究」報告書 平成30年1月

青少年教育史に関する調査研究

-1970年代以降の青少年教育施策に関するインタビュー記録- 平成29年3月

都市部の青少年に対する効果的な体験活動の提供に関する

モデルプログラム開発報告書 平成29年3月

高校生の勉強と生活に関する意識調査報告書

-日本・米国・中国・韓国の比較- 平成29年3月

平成28年度文部科学省委託事業

「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」報告書 平成29年3月

若者の結婚観・子育て観等に関する調査報告書 平成29年3月

子供の四季を通したふだんの生活と施設利用に関する調査[結果の概要] 平成28年7月

高校生の安全に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較- 平成28年6月

「青少年の体験活動等に関する実態調査(平成26年度調査)」[結果の概要] 平成28年5月

「ミクロネシア諸島自然体験交流事業」

日本人参加経験者に係る追跡調査報告書 平成28年4月

146 Ⅵ これまでに発行した報告書等一覧

Ⅵ これまでに発行した報告書等一覧

都市部の青少年に対する効果的な体験活動の提供に関する

モデル調査事業報告書 平成28年3月

平成27年度文部科学省委託事業

「青少年教育施設を活用したネット依存対策推進事業」報告書 平成28年3月

「青少年教育関係施設等基礎調査」(平成25年度調査)報告書 平成27年12月

高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較- 平成27年8月

「子供の生活力に関する実態調査」報告書 平成27年5月

アメリカ合衆国における政府主導の職員研修システムに関する

調査報告書 平成27年3月

平成26年度文部科学省委託事業

「青少年教育施設を活用したネット依存対策研究事業」報告書 平成27年3月

高校生の科学等に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較- 平成26年8月

自然体験・野外活動における指導者育成のコーチングに関する基礎的研究 平成26年3月

青少年の体験活動の意味と範囲の調査研究報告書 平成26年3月

青少年教育関連職員の研修事業に関する研究[中間報告書] 平成26年3月

学校教育における『集団宿泊活動』の手引き

-各教科等の関連を図る教育課程編成指導資料- 平成26年3月

「青少年の体験活動等に関する実態調査」(平成24年度調査)報告書 平成26年3月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【青少年調査ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【成人調査ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【地域・学校ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【教員調査ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「子どもの読書活動と人材育成に関する調査研究」

【外国調査ワーキンググループ】報告書 平成25年6月

「諸外国の青少年教育施設等調査」報告書(平成24年度文部科学省委託事業) 平成25年3月

子どもの読書活動の実態とその影響・効果に関する調査研究報告書 平成25年2月

※ 今後の参考とさせていただきたいと思いますので、上記報告書を引用された場合には

青少年教育研究センターまでその旨ご連絡いただけましたら幸いです。

青少年教育研究センターが公表した報告書や紀要等はQRコードから閲覧できます。

https://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/

147Ⅵ これまでに発行した報告書等一覧

Ⅶ 青少年教育研究センターについて

Ⅶ 青少年教育研究センターについて

Ⅷ 青少年教育研究センター紀要第8号

編集委員会委員一覧・編集後記

Ⅶ 青少年教育研究センターについて

1.青少年教育研究センターについて

青少年教育研究センターは、青少年教育に関する調査研究を実施し、その成果を広く提供・活

用することにより青少年教育の振興を図ることを目的としております。

そのために青少年の体験活動全般についての基礎的・専門的な調査研究を計画的かつ継続的に

実施し、その成果を報告書や紀要等の形にまとめ公表しております。また、ホームページにも報

告書や紀要等の内容は公開しております。

今後も日本全体の体験活動を底上げしていくための様々な調査研究を行っていく予定です。私

たち青少年教育研究センター職員一同、皆さまからの多様なご意見をお待ちしております。

2.青少年教育研究センター職員一覧(令和元年度)

センター長

村上 徹也 専門分野

主な研究テーマ

社会福祉学

ボランティア、福祉教育、サービスラーニング

副センター長

青山 鉄兵 専門分野

主な研究テーマ

社会教育学、青少年教育論

青少年教育におけるグループワーク論の展開

研究員

大嶋 尚史 専門分野

主な研究テーマ

子ども社会学、教育社会学

子どもをキーワードにした地域づくり

遠藤 伸太郎

専門分野

主な研究テーマ

スポーツ科学、応用健康科学

青少年における体験活動と品格、心身の健康の関連

客員研究員

青木 康太朗

専門分野

主な研究テーマ

青少年教育、野外教育、レクリエーション

体験活動を通じた青少年の育成や支援、

自然体験活動における指導者養成や安全管理

池田 幸恭

専門分野

主な研究テーマ

青年心理学

親に対する感謝の発達

胡 霞

専門分野

主な研究テーマ

学校教育

青少年の意識や行動

金 光明

事務局

水澤 豊子 青少年教育研究センター企画室長

樋口 拓 青少年教育研究センター企画室長補佐

小林 祥之 青少年教育研究センター企画室係員

大西 広海 青少年教育研究センター企画室係員

高木 貴代 青少年教育研究センター企画室事務補佐員

150 Ⅶ 青少年教育研究センターについて

Ⅷ 青少年教育研究センター紀要第8号

編集委員会委員一覧・編集後記

Ⅷ 青少年教育研究センター 紀要第8号編集委員会委員一覧・編集後記

青少年教育研究センター 紀要第8号編集委員会委員一覧

委員長

村上 徹也 青少年教育研究センター長、東京学校支援機構理事

委員

青山 鉄兵

大嶋 尚史

遠藤 伸太郎

池田 幸恭

青木 康太朗

青少年教育研究センター副センター長、文教大学准教授

青少年教育研究センター研究員

青少年教育研究センター研究員

青少年教育研究センター客員研究員、和洋女子大学准教授

青少年教育研究センター客員研究員、國學院大學准教授

事務局

水澤 豊子

樋口 拓

小林 祥之

大西 広海

青少年教育研究センター企画室長

青少年教育研究センター企画室長補佐

青少年教育研究センター企画室係員

青少年教育研究センター企画室係員

編集後記

今号の特集(座談会)は、子供の遊びへの、大人の向き合い方と環境の整え方がテーマでした。

このテーマは、子供の遊びに関わる大人であれば一度は考えたことのあるテーマではないでしょ

うか。今回の特集によって、より多くの方々に、遊びの重要性と、大人の役割への認識が広まれ

ばと思います。

また、今号は 12本(うち7本を採択)の投稿がありました。あらためて原稿を見てみると、非

常に幅広い分野から投稿いただいていることがわかります。民間、公的機関問わず、様々な主体

が日々実践している取組や研究が広く共有されることによって、青少年教育全体の充実に寄与で

きればと思います。

次号9号も、引き続きたくさんの投稿をお待ちしております。

今後とも青少年教育研究センター運営へのご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

(紀要第8号編集委員会)

152 Ⅷ 青少年教育研究センター紀要第8号編集委員会委員一覧・編集後記

※ 本紀要の全文(PDF版)は、国立青少年教育振興機構ホームページの

「調査研究報告書検索」からダウンロードできます。

https://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/

国立青少年教育振興機構 青少年教育研究センター紀要 第8号

令和2年3月発行 編集・発行 国立青少年教育振興機構 青少年教育研究センター

〒151-0052 東京都渋谷区代々木神園町3番1号

電話:03-6407-7741 FAX:03-6407-7619

Eメール:[email protected]

国立青少年教育振興機構

第8号

青少年教育研究センター紀要

特集 成長の土台としての子供の遊び

国立青少年教育振興機構

第8号