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丹野義彦 東京大学総合文化研究科 公認心理師で今後望まれること 日本心理学会シンポジウム 2017 短期的課題 1.国家試験の実施 2.事例問題の割合 中期的課題 1.カリキュラム見直し 2.保険診療報酬化長期的課題 1.専門資格制度2.博士課程の資格へ 3.業務独占資格化

No Slide Title - 日本心理学会 Slide Title Author Paul Salkovskis Created Date 10/13/2017 6:06:38 PM

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丹野義彦 東京大学総合文化研究科

公認心理師で今後望まれること

日本心理学会シンポジウム 2017

短期的課題 1.国家試験の実施 2.事例問題の割合

中期的課題 1.カリキュラム見直し 2.保険診療報酬化へ

長期的課題 1.専門資格制度を 2.博士課程の資格へ 3.業務独占資格化へ

厚生労働省ホームページ

回 年度

1 1999

2 2000

3 2001

4 2002

5 2003

10 2007

13 2010

14 2011

15 2013

16 2014

合格率%

89.1 73.2 63.1 62.3 64.2 60.4 58.3 62.6 56.9 58.3

精神保健福祉士の国家試験合格率

回 年度

1 1998

2 1999

3 2000

4 2001

5 2002

10 2007

13 2010

14 2011

15 2013

16 2014

合格率%

87.9 42.4 49.1 53.8 42.0 69.5 69.3 62.3 68.1 74.1

言語聴覚士の国家試験合格率

公認心理師もこうなるのか?

短期的課題 1.国家試験の実施

短期的課題 2.事例問題の割合 「試験問題のうち、ケース問題を可能な限り多く出題する」と規定。 医師の事例問題なら正解が決められる。 しかし、心理師の事例問題は、正解がひとつに定まらない。 これまでの臨床心理士資格試験の事例問題をみても、 誰もが納得できる事例問題を作るのは困難。 結局は国語力で解ける問題となり、技能の試験ではなくなる

対策 ⇒事例問題を作るときは、臨床心理学だけでなく、5領域関係者(とくに医療関係者)、基礎心理学者を交えて、慎重に検討すべき ⇒事例問題の割合は少なくするべき。 (試験後に不適切問題が発覚することは、国家試験として恥ずべきこと。これだけは避けるべき)

心理学概論 心理学概論

心理学研究法 心理学研究法

心理学統計法 心理統計法

心理学基礎実験実習 心理学実験

卒業論文 なし 認知・知覚心理学 知覚・認知心理学 学習・言語心理学 学習・言語心理学 感情・人格心理学 感情・人格心理学

認知神経科学 神経・生理心理学

神経心理学 比較心理学 なし 社会・集団心理学 社会・集団・家族心理学 発達心理学 発達心理学 障害児(者)心理学 障害児(者)心理学 臨床心理学 心理学的支援法 心理検査法 心理アセスメント

医療心理学 健康・医療心理学 福祉心理学 福祉心理学 教育心理学 教育・学校心理学 司法・矯正心理学 司法・犯罪心理学

産業・組織心理学 産業・組織心理学 臨床医学 人体の構造と機能及び疾病 精神医学 精神疾患とその治療

教育学 なし なし 関係行政論 公認心理師概論 公認心理師の職責 心理アセスメント実習

心理演習 心理面接実習

心理実践実習 心理実習

学術会議提案 公認心理師法 卒業研究を必修化すべき。

心理学の本質的な学習は卒業研究で身につく。

生物学的心理学を強化すべき。

生物・心理・社会の統合モデルは国際標準

(例:国際バカロレア)

学術会議提案は「三団体案」を統合・整理・追加したもの

中期的課題 1.カリキュラム見直し

実習 臨床心理学

実践心理学

大学院

公認心理師 臨床心理士

大学

科学者・実践家モデル(準)

科学者

実践家

基礎心理学

中期的課題 1.カリキュラム見直し

心理師の活動の保険診療報酬化 ①心理検査 ②精神療法(心理療法) ③認知療法・認知行動療法

中期的課題 2.保険診療報酬化へ

心理検査 「臨床心理・神経心理検査は、医師が自ら、又は医師の指示により他の従事者が自施設において検査及び結果処理を行い、かつ、その結果に基づき医師が自ら結果を分析した場合にのみ算定する。」

公認心理師の国資格によって診療報酬化が期待できる

精神療法 「精神保健指定医が30分以上入院精神療法を行った場合」 「精神科を担当する医師の指示の下、保健師、看護師、作業療法士又は精神保健福祉士が、支援を行った場合」

アルコール健康障害対策基本法 心神喪失者等医療観察法

認知療法・認知行動療法 精神保健指定医による場合 500点 精神保健指定医と看護師が共同して行う場合 350点

心理師が入っていないので保険きかず

中期的課題 2.保険診療報酬化へ

認知療法・認知行動療法(1日につき) 精神保健指定医による場合 500点 精神保健指定医と看護師が共同して行う場合 350点

例)認知行動療法の診療報酬化

理由.心理師は国資格ではないので認定しにくいから ⇒公認心理師法により診療報酬が可能に

今は心理師が実施しても報酬がない

中期的課題 2.保険診療報酬化へ

心理師がおこなう認知療法には大きな効果がある

長期課題 3.保険診療報酬化へ

心理師による認知療法のメタ分析(欧米)

丹野・奥村・上野・高野・星野・飯島・小林・林・磯村 「心理師が実施するうつ病への認知行動療法は効果があるか」 認知療法研究, 2011.

抑うつ症状の自己評定尺度

効果サイズ(Cohenのd) 平均 d=0.57

日本でも認知療法は効果がある

佐藤寛・丹野義彦「日本における心理士によるうつ病に対する認知行動療法の系統的レビュー」行動療法研究, 2012.

長期課題 3.保険診療報酬化の実現

日本における認知療法のエビデンス

日本でも認知療法の効果研究のほとんどは心理師が汗を流した

佐藤寛・丹野義彦「日本における心理士によるうつ病に対する認知行動療法の系統的レビュー」行動療法研究, 2012.

長期課題 3.保険診療報酬化の実現

日本における認知療法の効果研究14本

なのに保険制度では心理師だけはずされている ⇒国資格ができたので保険点数化を!!

NICEガイドラインでは「うつ病と不安障害には認知行動療法が効果あり」 ⇒しかし、セラピストが足りないために、認知行動療法を受けられない。 ⇒認知行動療法のできるセラピストを増やしたい。 3年で3600人増、そのために363億円必要。 ⇒イギリス政府を動かし、2007年にIAPT施行

エビデンスの重要性

IAPT:Improving Access to Psychological

Therapies 心理療法アクセス改善政策

うつ病や不安の経済的損失は年3兆円。 これが国民の幸福度を下げている。

エビデンスの重要性

2008年

2009年

2010年

2011年

2012年

サービスに来た人数

4万人

18万人

38万人

53万人

60万人

治療を受けた人数

1万人

9万人

25万人

33万人

38万人

うち回復した人の割合

38%

39%

44%

46%

『心理療法がひらく未来: エビデンスにもとづく幸福改革』 レイヤード&クラーク著 丹野義彦監訳 ちとせプレス 2017 Layard & Clark

⇒政策論にはエビデンスが必要不可欠

IAPTの治療効果

指定試験機関

指定登録機関

医療専門心理士

福祉専門心理士

教育専門心理士

産業専門心理士

司法専門心理士

学会・団体

国資格 汎用資格

専門資格 (上位資格)

博士課程? +実務経験

長期的課題 1.専門資格制度を

公認心理師試験・資格

参考)医師免許

総合内科

専門医

外科専門医

小児科専門医

学会

専門医機構

精神科専門医

専門資格

厚生労働省

医師国家試験・医師免許 国資格 汎用資格

長期的課題 2.博士課程の資格へ

アメリカのサイコロジスト 日本の公認心理師

同じ点

①名称独占 ②領域汎用

(心理学の領域・実践場所・職務内容を特定せず)

③国家資格(州ごとの資格)

違う点

博士号の資格 科学者-実践家モデル

修士号の資格 準科学者-実践家モデル

基礎心理学重視の国家試験合格率約50%

基礎心理学が重視される試験か疑問

実習

実践心理学

修士

公認心理師

大学

科学者・実践家モデル 基礎心理学

実践心理学

基礎心理学

博士

大学

アメリカの サイコロジスト

大学では基礎心理学だけ

長期的課題 2.真の科学者-実践家モデルへ

科学者・実践家モデル(準)

中途半端

筆記試験(EPPP): 全米共通の国家試験 合格率約50%

筆記試験(EPPP)の出題内容 出題割合

1 行動の生物学的基盤 11%

基礎的心理学 50%

2 行動の認知的・情動的基盤 13%

3 行動の社会的・多文化的基盤 12%

4 成長と生涯発達 13%

5 査定(アセスメント)と診断 14% 実務 30%

6 治療・心理療法 16%

7 研究方法 6%

8 倫理・法律・職業問題 15%

アメリカの心理師(サイコロジスト)のライセンス

生物・心理・社会 統合モデル36%

出題内容は、実務は30%で、基礎的な心理学が50%を占める

長期的課題 2.真の科学者-実践家モデルへ

公認心理師=名称独占資格 医師・看護師=業務独占資格 参考)ドイツの心理療法士=業務独占

⇒公認心理師も業務独占化すべき

理由: ①公認心理師の業務の診療報酬化のため ②心理業務の質保証のため

長期的課題 3.業務独占資格化へ

まとめ:今後望まれること

短期的課題 1.国家試験の実施 2.事例問題の割合

中期的課題 1.カリキュラム見直し 2.保険診療報酬化へ

長期的課題 1.専門資格制度を 2.博士課程の資格へ 3.業務独占資格化へ