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ISSN 1346-9029 研究レポート No.427 January 2016 ソーシャル・イノベーションの 仕組みづくりと企業の役割への模索 -先行文献・資料のレビューを中心に- 上級研究員 趙 瑋琳 駒沢大学文学部社会学科教授 李 妍焱

No.427 January 2016 - FujitsuISSN 1346-9029 研究レポート No.427 January 2016 ソーシャル・イノベーションの 仕組みづくりと企業の役割への模索 -先行文献・資料のレビューを中心に-

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ISSN 1346-9029

研究レポート

No.427 January 2016

ソーシャル・イノベーションの

仕組みづくりと企業の役割への模索

-先行文献・資料のレビューを中心に-

上級研究員 趙 瑋琳

駒沢大学文学部社会学科教授 李 妍焱

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ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりと企業の役割への模索

―先行文献・資料のレビューを中心に―

上級研究員 趙 瑋琳 駒澤大学文学部社会学科教授 李妍焱

[email protected] [email protected]

【要旨】

本研究はソーシャル・イノベーションの概念を明確にした上で、企業がソーシャル・イノ

ベーションの主役となるためにどのような役割を果たしていくべきか、どのような課題が

あるのかを示し、企業によるソーシャル・イノベーションの仕組みづくりの方向性を示唆す

るものである。

まず、先行研究に基づいて、ソーシャル・イノベーションの定義をレビューし、ソーシ

ャル・イノベーションの到達点として「納得のできる生活世界の構築」を提起する。そし

てソーシャル・イノベーションのプロセスの議論から、それを「自動的に」生み出す理想的

な仕組みとは何かを論じる。その仕組みづくりのヒントを探るために、日本で実施されて

きたソーシャル・イノベーションに関する調査報告書のサーベイを行う。サーベイの結果

から、ソーシャル・イノベーションの成功要因を整理し、企業がソーシャル・イノベーシ

ョンの仕組みづくりの主役になる必要性を主張したい。

企業を主役に据えたソーシャル・イノベーションの仕組みについて、既存調査研究による

成果と問題点を示した上で、特に企業の生存状態(企業内に活力があるかどうか)の観点

から、「企業理念の浸透とそれに基づく戦略」と、企業の生存環境(企業の理念と努力を正

当に評価する社会環境)の観点から、「多様な協働関係を可能にする社会環境」が重要だと

強調する。とりわけ「協働関係」を可能にするプラットフォームを企業が主導して創るこ

とを提案し、今後の課題としたい。

キーワード:ソーシャル・イノベーション、仕組みづくり、企業の役割

※本研究は共同研究者李妍焱が研究代表を務める科学研究費補助金基盤研究 C(課題番号 23530683)の研

究成果の一部でもある。

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目 次

1. はじめに ............................................................................................................................ 1

1.1 研究背景と目的 ........................................................................................................... 1

1.2 本研究レポートの構成................................................................................................. 1

2. ソーシャル・イノベーション概念の検討 ......................................................................... 1

2.1 ソーシャル・イノベーションの定義 ........................................................................... 2

2.2 ソーシャル・イノベーションの到達点 ....................................................................... 2

2.3 ソーシャル・イノベーションのプロセス ................................................................... 4

2.4「自動的」にソーシャル・イノベーションを生み出す仕組みを目指して .................. 5

3. ソーシャル・イノベーションに関する各種調査報告のサーベイ .................................... 7

3.1 既存調査報告書一覧 .................................................................................................... 7

3.2 既存調査が示したソーシャル・イノベーション成功要因 ........................................ 10

3.3 ソーシャル・イノベーションカンパニー ................................................................... 13

3.4 ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりの課題 ............................................... 15

4. 企業が果たしうる役割の検討 - 提言の試み ................................................................ 16

参考文献 ............................................................................................................................... 19

付録資料 ............................................................................................................................... 20

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1. はじめに

1.1 研究背景と目的

近年、ソーシャル・イノベーションに関する議論が増加しており、国内外でソーシャル・

イノベーションの機運が高まりつつある。ソーシャル・イノベーションの重要性は認識さ

れているが、その定義や概念は定まっておらず、曖昧なままである。また、ソーシャル・

イノベーションの議論の多くは社会的企業1もしくは社会起業家2の役割を強調している。同

時に、新興国におけるソーシャル・イノベーションの動向と社会起業家に注目が集まって

おり、社会起業家の増加がもたらす影響および社会的イノベーション勢力の形成の可能性

が期待されている。しかし、広範な意味を持つソーシャル・イノベーションは、果たして

個別の起業家ないし特定のタイプの企業(社会的企業)が活性化すれば、達成できるもの

なのだろうか。ソーシャル・イノベーションに向かう社会的土壌とエコシステムが必要な

のではないか。本研究はこのような疑問から始まった。

昨今、多くの営利企業もソーシャル・イノベーションのコンセプトを重要視するように

なった。企業を取り巻く環境の変化を踏まえ、企業には顧客とともに社会の課題を解決し

ていき、より良い未来を作っていく意識が高まっている。ソーシャル・イノベーションを

引き起こすために、様々なプレイヤーの協働が必要であり、人材育成や支援制度を含め、

協働を成功させる仕組みづくりが不可欠と考えられる。企業が重要なプレイヤーとして、

社会課題解決の担い手として、果たすべき役割が問われている。

本研究レポートは、ソーシャル・イノベーションに関する先行研究および主要な調査報

告書を考察し、ソーシャル・イノベーションのコンセプトを解析したうえで、ソーシャル・

イノベーションの仕組みづくりにおける課題を明らかにし、企業の役割を模索したい。

1.2 本研究レポートの構成

まず、先行研究に基づきながらソーシャル・イノベーションの定義をレビューし、ソー

シャル・イノベーションの到達点、プロセス、および到達点へと導く仕組みについて議論

する。次に、日本で実施されてきたソーシャル・イノベーションに関する調査報告書をサ

ーベイし、そこからソーシャル・イノベーションを可能にする仕組みについて抽出し整理

する。さらに、企業がソーシャル・イノベーションの仕組みづくりの主体となる場合の問

題点やソーシャル・イノベーションの仕組みづくりにおける協働の実現の課題を指摘する。

最後に、企業が果たしうる役割について提案を試み、次の研究課題を示す。

2. ソーシャル・イノベーション概念の検討

ソーシャル・イノベーションはいかにすれば達成されるのか。この問題を検討するため

1 NESsTの定義によれば、社会的企業は a business that is created to address or solve a critical problem

in a financially sustainable way (収益の持続性を持ちながら、社会課題の解決を目的とする事業体で

ある)。http://www.nesst.org/ 2 通常、社会的企業、ビジネスを起こす人が社会起業家と呼ばれている。

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2

には、「何のためにイノベーションが必要か」、すなわち、目指すべきソーシャル・イノベ

ーションの到達点を明確化しなければならない。その上で、ソーシャル・イノベーション

を生み出す仕組みとはなにかを探っていく必要がある。

2.1 ソーシャル・イノベーションの定義

ソーシャル・イノベーションを一言で定義することは難しく、いまだに合意されたコン

セプトはない。文脈によって解釈も異なるが、以下の図表 1 で示しているとおりに、大き

く二つの考えがある。

図表 1. 先行研究によるソーシャル・イノベーションの考え

社会改良と

社会変革的

性質

・ソーシャル・イノベーションは社会変革を目的とする一種の集合的な社

会行動(collective social action)である(Giovany、2014)

・ソーシャル・イノベーションは生活の質を高める変革である(to improve

either the quality or the quantity of life)(Eduardo、2008)

・ソーシャル・イノベーションは、共通善の創出に基づくものである(based

on the creation of a greater common good)(Howaldt、2010)

現代社会は、技術イノベーションよりも社会変革のほうが早い社会であり

(Phillips、2011)、上記は、ソーシャル・イノベーションの「社会改良と

社会変革的性質」を強調した定義である。

具体的なア

イデア、組

織、働き方と

して

・個人およびコミュニティの福祉のために、雇用、消費や社会参加などを

通じて、解決案を提供することがソーシャル・イノベーションである

(OECD3、2011)

・既存の方法より社会的ニーズを効率的に満たせる新しいアイデア、組織

あるいは働き方である(Financing Social Impact、2012)

・ソーシャル・イノベーションは新しいソリューション(製品、サービス、

モデル、マッケート、プロセスなど)であり、社会的ニーズを満たすと

同時に、キャパシティの向上や資源の有効活用につながる(The Young

Foundation、2012)

これらの研究では、ソーシャル・イノベーションはニーズを満たし、ソリ

ューションを提供し、特定のキャパシティを向上させる具体的なアイデア、

組織、働き方を指す。

(出所)先行研究をもとに筆者らが作成

2.2 ソーシャル・イノベーションの到達点

このように、ソーシャル・イノベーションは抽象的な社会変革を意味すると同時に、具

3 Organization for Economic Co-operation and Development、経済協力開発機構の略で、本部はフラン

スのパリにある。

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体的な形を有する。渡辺(2009)は「社会的ニーズ・課題への新規の解決策を創造し、実

行するプロセス」としてソーシャル・イノベーションを定義した上で、「新しいアイデアの

実現があり、社会にインパクトを与える」ことを強調している。この定義に従えば、ソー

シャル・イノベーションは「創造と実行のプロセス(過程)」であり、その到達点は「社会

的ニーズ・課題の解決」にある。

しかし、何を目指して社会的ニーズ・課題を解決するのか、どんな「社会的インパクト」

が望ましいのか、必ずしも明示されていない。それに対して服部・武藤・渋澤(2010)は、

「これまでのような個々の問題に対する個別的な対応ではなく、思想や価値観のレベルま

でさかのぼって社会のあり方を変革し、新たな価値を生み出すソーシャル・イノベーショ

ンが必要だ」と主張する。藤澤(2010)も、ソーシャル・イノベーションは「単なる技術

革新を超えて、より広く捉える必要がある」と述べ、その社会性もしくは社会的側面の重

要性を示している。「問題の個別性を普遍的課題に展開する」という点において、通常のイ

ノベーション的発想とは決定的に異なる。「通常のイノベーション的発想、特に技術的な面

を強調するイノベーションにおいては、対象となる事象はより特定化、微細化したもので

あり、こうした点を技術的に乗り越えることによって、『間接的に』社会に大きな影響を与

える。ソーシャル・イノベーションにおいては、対象をいかに一般的かつ普遍的な社会的

課題にするかという点が重要であり、かつその影響もより『直接的』である」(藤澤、2010)。

これらの議論では、ソーシャル・イノベーションの到達点は「一般的・普遍的な社会的課

題に対して、思想や価値観レベルにおける新たな価値を創出し、社会に直接影響を与える

こと」にある。

では、「思想や価値観レベルにおける新たな価値」とは何を意味するのだろうか。廣田

(2004)の議論が示唆的である。廣田(2004)はドラッカーやマイルズ、フリーマンやノ

ーマンによる先行研究を踏まえつつ、ソーシャル・イノベーションの本質を 2 点に整理し

ている。一つは「多くの関係者にメリットを与えるような形で、ヒト、モノ、カネ、情報

の流れを再編成すること」、もう一つは「人々が直面する問題、故障、トラブルを何とか無

くしたいという『生活世界』における実感に根ざした強烈な問題意識をもとに作り出され

たもの」である。一つ目はその後も多くの議論に出てくるが、二つ目こそがソーシャル・

イノベーションを生み出す根源であり、具体的には「生活実感の観点から納得のいくシス

テムに仕上げていく作業」を指す。ここで登場する「生活世界」や「生活実感の観点」は、

まさに「新たな価値」を生み出す基本的な方向性だと言える。

ユルゲン・ハーバーマス4に由来する「生活世界」という言葉は、自らの目的達成や利益

を狙う「戦略的行為」ではなく、他者と共有し、了解し合う「コミュニケーション的行為」

によって構成される世界を意味する。ハーバーマスは、既存の行政や市場の制度と仕組み

による「生活世界」への行き過ぎた浸食と支配、すなわち「生活世界の植民地化」を問題

4 1929 年ドイツ生まれの哲学者で、公共性論や、コミュニケーション論の第一人者である。著作は『公共

性の構造転換』、『コミュニケーション的行為の理論』、『遅ればせの革命』、『近代-未完のプロジェクト』

『事実性と妥協性』など多数ある。

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視し、政府と市場から独立した「市民的公共性」によって生活世界の復権を目指すべきと

主張している。市民的公共性は、立場の異なる人や組織が、公共的な問題(従来公共の問

題とされなかったことの発掘・提示も含めて)に対して、オープンな態度で討論し、解決

法を探るための実践を行う活動・空間・場として捉えることができる。

ソーシャル・イノベーションとは、市民的公共性の活性化を通して、「生活世界の復権」、

すなわち「人々が生活実感の観点から納得できる世界の構築」を到達点としていると理解

できる。

2.3 ソーシャル・イノベーションのプロセス

むろん、社会性の側面のみでは、ソーシャル・イノベーションの過程、「納得のいく生活

世界」に仕上げていく作業が頓挫してしまう恐れがある。その後たびたび引用される谷本

(2009)による「社会性、事業性、革新性」の議論にあるように、社会性(社会的価値へ

の追求)と事業性(ビジネスとしての収益性)の両立が不可欠である。「社会性と事業性は

容易に結びつくわけではない。そこにはイノベーションが存在する。社会的課題の解決に

資する新しい社会的商品・サービスやそれを提供するための仕組みを開発すること、そし

てその活動が社会に広がることを通して新しい社会的価値を創出すること」と、谷本はイ

ノベーションによって社会性と事業性の両立を主張する。ソーシャル・イノベーションの

プロセスを谷本(2006)は図表 2のようにまとめている。

図表 2.ソーシャル・イノベーションのプロセス

(出所)『ソーシャル・エンタープライズ-社会的企業の台頭』(谷本、2006)

プロセスの前半は「新しい商品やサービスおよびそれを供給する仕組みの創出」を意味

し、後半は「新しい社会的価値の創出」を意味する。この図は、到達点に至るまでのソー

シャル・イノベーションの実行過程を示している。ソーシャル・イノベーションの過程に

関する先行研究の分析は多く行われているが、大きく三つの傾向が見られている。

(1)組織・リーダーに着目した議論(社会起業家に関する各種考察を含む)

野中・勝見(2010)による『イノベーションの知恵』は、イノベーションの本質を人

と組織の観点から捉え、リーダーの能力を「実践知」として描き出そうとする書物であり、

アントレプ

レナーが

社会的課

題を認知

ステーク

ホルダー

との協働

関係

社会的事

業 の 開

発・供給

市場・社

会からの

支持

社会関係

や制度の

変化

社会的価

値の広が

・ 新しい社会的商品・サービスの開発

・ 社会的課題に取り組むユニークな仕組みの開発

新しい社会的価値の提案

ステークホルダーからの支持

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組織とリーダーの視点からソーシャル・イノベーションを論じた代表作の一つだといえる。

その結論では「場をマネジメントする力」を強調し、個人の行動を規定するのが「組織」

ではなく「場」であり、自己組織化する場を作るには、メンバーの「身体性の共有」が重

要だと主張する。リーダー個人の実践知が、日々の場づくりを通して組織の「集合実践知」

として醸成されると、弾力的で創造的で、しなやかな組織ができあがる。

(2)地域に着目した議論(ソーシャル・キャピタルに関連づけた考察を含む)

地域に着目した議論は数多く挙げられる。松行康夫・彬子・輝昌(2012)はソーシャル・

イノベーションを「地域公共圏に存在する社会的課題を理性的に認識し、その解決を目的

としたソーシャル・ビジネスを創出することで、新しい公共におけるライフスタイルを作

り出す理念と方法」として位置づけ、まちづくりにおける行政と NPO(非営利団体)との連携

や、新しい地域の保健福祉方式の創出、組織間連携による地域医療、地域産業クラスター、

環境経営と都市経営、商店街の再生戦略、インターンシップと大学の起業家育成など、多

くの事例を通して「地域公共圏」を成立させるソーシャル・イノベーションの可能性を示

している。

(3)関係性と相互作用に着目した議論(ステークホルダーや協働に関する考察を含む)

関係性に着目する議論として、たとえば古村・大室ほか(2011)は、ソーシャル・イノ

ベーションの前半過程を「創出プロセス」、後半過程を「普及プロセス」と位置づけた上で、

事例のケーススタディを通して、イノベーションは一人の起業家によって完成されるので

はなく、組織外のプレイヤー、ステークホルダーとの相互作用が不可欠だと主張している。

プロセスに関する分析においては上記の図表 2 がしばしば引用される。しかし、この図

には二つの課題がある。一つは、起業家がいなければソーシャル・イノベーションがそも

そも始まらないこと、もう一つは、プロセスの前半と後半、すなわち創出と普及との間を

どのようにつなげるかである。ソーシャル・イノベーションの到達点に向けて実践してい

くためには、この二つの課題を解決していかなければならない。それが、ソーシャル・イ

ノベーションを可能にする仕組みに求められることだといえる。

2.4「自動的」にソーシャル・イノベーションを生み出す仕組みを目指して

まず「仕組み」の含意を明確にしたい。仕組みとは「メカニズム」であり、その最大の

特徴は、一定のインプットを入れれば、一定のアウトプットがある程度保障されることで

ある。すなわち、偶発性や、特定の人物、出会いに頼らないものが仕組みだと考えられる。

ソーシャル・イノベーションの理想状態は、「納得できる生活世界」という到達点に向け

て、すべての実践プロセスが活発に、再生可能な状態で繰り返され、らせん状の上昇を実

現していくことである。理想状態を生み出す仕組みとは、社会性と事業性の確立を同時に

可能にするものでなければならない。また、特別なプロジェクトを実施しなくても、社会

的価値を追求する多様なタイプの社会起業家が、既存組織の内外で自然に生まれる土壌が

必要である。すなわち、社会起業家が新しいアイデアを事業化していくことができる環境

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である。同時に、新しい社会価値を体現した商品やサービスに対して識別と評価の能力を

持つ市場と消費者の存在が不可欠である。これらが実現したときに、ソーシャル・イノベ

ーションを生み出す仕組みができていると思われる。

前述の谷本によるソーシャル・イノベーション過程論の難点に関連づけて言えば、それ

らの難点を克服するように支える仕組みとなる。社会起業家がいなければ始まらないなら

ば、「社会起業家の自動的育成」の仕組みが必要であり、商品・サービスの開発がその後の

普及のプロセスにつながりにくいならば、それをつなげていく仕組みが必要であり、市場

と社会的支持があっても、制度の変革、そして社会的価値の成立に至らないならば、成立

に至るように推進していく仕組みが必要である。本レポートで考えるソーシャル・イノベ

ーションを生み出す理想的な仕組みとは、以下の通りである。

では、このような仕組みづくりにおいては、企業はどんな役割を果たせるのだろうか。

従来、しばしば「資金」や「設備や場所」、「専門性を有する人材」、「技術」などの直接的

な提供が多く求められてきた。期待のプレッシャーに直面する企業は、どの対象に対して、

どの程度の資金を投資し、どれぐらいの人員とエネルギーを割けばいいのか、企業活動の

中にそれをどう位置づけるべきか、常に迷いながら判断を迫られてきた。既存の企業はあ

くまでも社会起業家に対して資源を提供する者であり、支援者であり、ソーシャル・イノ

ベーションを担う主たる当事者、主役としての位置づけは薄かった。

営利企業のなか、近年は本業をソーシャル・イノベーションに結びつけていくビジネス

モデルの開発を急ぐ企業が増えている。しかし、特定の技術やプロジェクトによってビジ

ネスモデルを模索しようとしても、何らかの事業や製品は生まれるかもしれないが、それ

を「社会的価値」の創造につなげるのはきわめて困難な状況である。それらの事業や製品

には必ず「短期の収支バランス」の圧力がかかるが、「社会的価値」の創造には多様なステ

ークホルダーとの協力関係を必要とし、長いスパーンと非経済的な指標を以て考えなけれ

ばならないからである。

だが、上記で述べたようなソーシャル・イノベーションを自動的に生み出す仕組みの成

立には、資金と人材を豊かに擁し、自由で柔軟な投資ができる企業が主役として関わる必

要がある。そのために何をどうすればいいのか、手がかりを求めて、既存の調査研究報告

書を対象にサーベイを行った。

① 意識啓発に頼らずとも自動的に社会的起業家を生み出し、

② 社会的起業家とそのステークホルダーとの関係性(ネットワーキング)を促進し、

③ 多種多様な協働の契機と場を提供し、

④ 市場における継続性と社会における影響力の拡大をサポートし続け、

⑤ 社会的起業家の事業による新しい社会的価値を顕在化させ、浸透させていく仕組み。

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3. ソーシャル・イノベーションに関する各種調査報告のサーベイ

3.1 既存調査報告書一覧

2008 年頃から、中央省庁から地方自治体に至るまで、ソーシャル・イノベーションに関

連する調査研究の報告書が多く公表されている。以下は代表的なものを年次順にリストア

ップしてみた5。

(1) 社会イノベーション研究/社会起業家 WG 報告書-社会的企業・社会起業家に関する調査

研究(2008)

・主旨:イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究

(内閣府経済社会総合研究所)

・主なポイント:欧米の議論動向と社会起業家に関する教育プログラム、ノベーション

と社会起業家との関連、ビジネス起業家と社会起業家との違いを中心に説明し、社会

イノベーションのダイナミックな成長のあり方を議論する。社会的起業家とメディア

などで紹介されている日本の事例を 60 件抽出・事業分野別に整理したうえで、障害者

雇用のイノベーションを事例に、ケーススタディを行う。一つの政策ツールとして、

英国の Community Interest Company に関する考察もある。

(2) 社会イノベーション研究会ソーシャル・キャピタル WG 報告書(2009)

・主旨:イノベーション政策及び政策分析手法に関する国際共同研究

(内閣府経済社会総合研究所)

・主なポイント: ソーシャル・ファイナンス、発展途上国の貧困層向けビジネス、企業

内の人事評価と賃金、大学発ベンチャー、クラスター政策などのトピックを取り上げ、

ソーシャル・キャピタルの蓄積が、社会イノベーションの活性化を通じて、地域や組

織の発展や再生を促すかどうか検討している。

(3) 平成 21 年度地域経済産業活性化対策調査(2010)

・主旨:発表元は経済産業省

・主なポイント:海外の制度の検討、日本国内の制度の考察と提案

(4) ソーシャル・ビジネス推進研究会報告書平成22年度-地域新成長産業創出促進事業(2011)

・主旨:発表元は経済産業省

・主なポイント:主なポイント:ソーシャル・ビジネスとは、様々な社会的課題(高齢

化問題、環境問題、子育て・教育問題など)を市場として捉え、その解決を目的とす

る事業。「社会性」「事業性」「革新性」の三つを要件とする。推進の結果として、経済

の活性化や新しい雇用の創出に寄与する効果が期待される。資金調達・人材育成・事

業展開支援、普及と啓発といった環境整備について考察している。

(5) 米国 ソーシャル・イノベーション関係組織に対する訪問調査報告(2011)

・主旨:一般財団法人 CSOネットワーク(出資:アジア・ファンデーション)

・主なポイント:米国西海岸のベイエリア財団企業社会起業家 NPO 等を訪問した記録。

5 ここでリストアップした調査研究報告書については、文末の参考文献に記入しないことにする。

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8

ソーシャル・イノベーションとは、「社会問題に対する革新的な解決法」であり、アン

トゥルプルナーは「社会的価値を作り出し維持するとおもに新しい機会を追求し、変

革を続ける人」と説明する。

(6) ソーシャル・ビジネス調査(2011)

・主旨:独立行政法人中小企業基盤整備機構 経営支援情報センター

(出資:中小企業基盤整備機構)

・主なポイント:社会問題解決と組織存続の両立を可能にする収益構造を兼ね備えた、

革新的な事業のことを「ソーシャル・ビジネス」と呼ぶ。日本の社会起業家の特徴と

誕生の背景、問題意識と「隠れた起業家教育の契機」の相互作用、社会起業家の起業

過程から読み解く「新しい公共」とスモールビジネスを分析する。

(7) 「中小企業・NPO 等のソーシャル・ビジネスへの取組みに関する調査」 報告書(2011)

・主旨:財団法人 地球産業文化研究所(平成 22年度 財団法人 JKA 補助事業)

・主なポイント:ソーシャル・ビジネスが目指す「社会課題の解決」は、一事業者だけ

で成し遂げられるものではない。ソーシャル・ビジネスの事業者の活動に市民が参加

することで、社会課題の解決に向けた社会変革の輪が広がっていくことも大きな成果

であり、取り組みの成功要因と課題を分析する。日本国内 16事例の考察がある 。

(8) 市民協働によるソーシャル・ビジネス展開を通じた産業振興可能性調査(2012)

・主旨:公益財団法人 ちゅうごく産業創造センター

・主なポイント:全国におけるソーシャル・ビジネスの現状、中国地域の現状、中国地

域の事例調査、成功要因の抽出を行う。ソーシャル・ビジネスを成功させるには、強

い使命感を持ったリーダーの存在、スキルや人脈等を最大限に活用、事業拡大に伴う

雇用者の確保、複数の事業によるビジネス展開、提供する商品・サービスへの誇り、

行政との協働による商品・サービスの創出、利益をミッション達成のために活用・還

元、民間企業との連携による不足する経営資源の補完などが挙げられる。

(9) ソーシャル・イノベーションカンパニー調査報告書~

新しい価値を創造する企業とは~(2012)

・主旨:経営支援情報センター(出資:日本財団)

・主なポイント:ソーシャル・イノベーションカンパニーの定義:①従来は、政府、自

治体などが行ってきた社会課題をビジネスの手法で解決している企業、②短期的な収

益を越えた長期的視点から取り組みを行っている企業、③NGO/NPO との連携によって

社会課題を解決する人材育成を行っている企業。9社の事例をベースに、共通項を抽出

し、普及に向けた課題を指摘する。

(10) 産学共創ソーシャル・イノベーションの深化に向けて(2014)

・主旨:中小機構調査研究報告書

・主なポイント:最先端の科学技術を駆使して、世界市場に新たな製品やサービスを提

供することだけが、産学共創ソーシャル・イノベーションではない。これまでに蓄積

Page 12: No.427 January 2016 - FujitsuISSN 1346-9029 研究レポート No.427 January 2016 ソーシャル・イノベーションの 仕組みづくりと企業の役割への模索 -先行文献・資料のレビューを中心に-

9

された成果を十二分に活用し、地域での豊かな社会を実現することも、産学共創ソー

シャル・イノベーションである。

(11) 平成 25年度 産業技術調査事業(2014)

・主旨:持続可能な発展のためのイノベーションに関する調査(経済産業省)

・主なポイント: イノベーションは、①利用者にとって新規性があり、②従来よりも効

果的・効率的に改善されており、③企業にとって新たな市場開拓や自身の成長に繋が

るだけでなく、④社会に大きな変化をもたらす、という要素を兼ね備えている。ソー

シャル・イノベーションはこの 4 要素に加えて、持続可能性の追求も重要な要素であ

る。アカデミアの役割を強調し、グローバル・イノベーションをもたらす知識と技術

の促進を主張。

(12) ソーシャル・ビジネスの経営実態~

「社会的問題と事業との関わりに関するアンケート」から~(2014)

・主旨:日本政策金融公庫総合研究所

・主なポイント:平成 26年 6月に政府が発表した「骨太の方針」で、その育成が謳われ

ているように、社会的問題を解決する担い手としてソーシャル・ビジネスが注目され

ている。しかし、ソーシャル・ビジネスを定義することが難しいこともあり、その経

営状況や成果は必ずしも明らかになってはいない。この調査報告では、ソーシャル・

ビジネスの実態を探り、支援策を検討する参考とするために「社会的問題と事業との

関わりに関するアンケート」を実施している。

以上が「ソーシャル・イノベーション」と「ソーシャル・ビジネス」をキーワードとし

て検索を行い、2015 年までに日本で主に実施されてきた関連調査の報告書である。調査の

傾向から、以下の三つの類型に整理できる。

図表 3. 調査報告書の分類

類型 調査報告書番号

海外の事例や制度の調査、海外との比較検討 (2)(3)、(5)、(11)

事例の紹介もしくはアンケートによる実態調査

(成功要因の抽出も含む)

(1)、(6)、(7)、(8)、(9)、(12)

仕組みづくりに関する分析や提言 (4)、(10)

(出所)先行研究をもとに筆者らが作成

このように、従来の調査報告書の特徴として、実態調査もしくは事例調査が圧倒的に多

いことが挙げられる。直接仕組みづくりに関する調査報告書は 4 番の「ソーシャル・ビジ

ネス推進研究会報告書-平成 22年度地域新成長産業創出促進事業(2011)」と、10番の「産

学共創ソーシャル・イノベーションの深化に向けて(2014)」がある。4 番はソーシャル・

ビジネスを推進するための環境整備との視点から、国と自治体がそれぞれどのような取り

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組みができるのかを検討している。10 番は主に「技術革新をどう生み出すか」との視点か

ら産官学協働に特化した提言である。

すなわち、従来の調査報告書からソーシャル・イノベーションを生み出す仕組みについ

て何らかのヒントを見いだすためには、個別の事例調査における指摘をつなぎ合わせてい

く必要がある。その中から得られたヒントを以下で示していく。

3.2 既存調査が示したソーシャル・イノベーション成功要因

まず、4番の報告書「ソーシャル・ビジネス推進研究会報告書-平成 22 年度地域新成長産

業創出促進事業(2011)」で得られた知見をまとめる。この報告書では事業収入を主たる財

源とするソーシャル・ビジネスを「対価収入積極獲得型」と呼び、行政からの収入を主た

る財源とするタイプを「非営利資源積極活用型」と位置づけた上で、それぞれに合う推進

策が必要だと指摘し、とくに企業とどう連携するかが課題だと強調する。ソーシャル・ビ

ジネス事業者の成長に向けた環境整備として、「資金調達」「人材育成」「事業展開支援」「普

及・啓発」という四つの視点から現状と方向性を指摘している。

「資金調達」については、資金の出し手受け手とのミスマッチの問題を指摘し、成長段

階や事業モデルに応じた資金ニーズを検討し、それに合う資金調達の方法を選ばなければ

ならない。「人材育成」については、すでに多くの施策や取り組みはあるものの、効果を上

げるためには「戦略に基づいた人材育成が重要」である。雇用対策として育成する場合は、

サポートが継続できるように「支援者のエコシステム」を構築することが重要であり、長

期的な人材育成のためには、大学における教育課程の充実化のみならず、大学入学前およ

び退職定年後の人材を起業家として育成するための育成環境が必要である。育成するター

ゲットを「ソーシャル・アントレプレナー」「ソーシャル・プロデューサー」「ソーシャル・

ビジネスの知識を持つ専門家」「サポーター」に分類し、地域の課題を明確に共有したうえ

で、地域における多様な機関が協働できるようにコーディネーターを置き、主婦など社会

的に活躍する場がなかった人材層を掘り起こす工夫も必要である。「事業展開支援」として

は、従来の中小企業支援策の活用が求められており、そのためには中間支援機関(NPO支援

機関等)や商工団体、経営アドバイザー等が自身の機能を充実させ、効果的に連携してい

くことが重要である。「普及・啓発」については、「市民」「関係者と専門家」「海外」とい

うように、対象と主体を明確にした「戦略的な」発信が求められる。

上記の四つの視点から方向性を示した上で、この報告書はさらに、ソーシャル・ビジネ

ス事業者と企業との協働促進、ソーシャル・ビジネス市場の成長に向けた提言を行ってい

る。企業はソーシャル・ビジネス事業者の重要性を認識しつつも、連携が全く不十分であ

ると指摘し、両者をマッチングする中間支援の機能の強化、連携と協働に関する評価基準

の明確化、行政機関が両者をコーディネートすることが効果的と説明している。

この調査報告による提言のキーワードは、「戦略性」と「中間支援」だと言える。資金調

達と人材育成、普及と啓発は特に「戦略的に実施する」ことが強調され、事業展開支援に

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ついては、「中間支援」の重要性が強調されている。ただ、ここでも既存企業は新しくソー

シャル・ビジネスを起こす「起業家」の支援者、資源提供者として位置づけられている。

次に、実態調査や事例紹介の調査報告書に散らばっている仕組みづくりのアイデアを拾

い出していく。

『ソーシャル・ビジネスの経営実態-「社会的問題と事業との関わりに関するアンケー

ト」から(2014)』(上記報告書(12))は、2014年 8月に行った非上場企業 5,000社、企業

組合、一般社団法人、NPO法人合計 5,000社、合わせて 1万社を対象に実施したアンケート

調査結果を示している。それによれば、「社会的問題を解決するソーシャル・ビジネスのミ

ッションについて成果が上がっているかどうか」の調査結果を見ると、目標を達成してい

る組織の割合は 47.3%と半数に届いていない。目標を達成している組織を見ると、「活動内

容を外部に周知し、他の法人と連携して取り組みを進めている」割合が多いことが分かる。

また、ソーシャル・ビジネスを行っていく上での課題として最も多く挙げられたのは人材

の確保(従業員の確保)であり、これは「自助努力」では解決が困難だと指摘している。「協

働」と「人材」の重要性が調査結果によって浮き彫りになった。

『市民協働によるソーシャル・ビジネス展開を通じた産業振興可能性調査(2012)』(上

記報告書(8))は、ソーシャル・ビジネスを行っていると思われる事業体 2,351 社を対象

とした 2010年の全国調査の結果、2011年に実施した中国地域内の事業者を主たる対象とす

る調査の結果(中国地域 940社)、及び同年に実施した中国地域の市町村、商工会議所、商

工会を対象とした調査の結果に基づいて分析している。事業ミッション達成のために重要

な点として、「多様な人材の確保・活用」が最も挙げられている。また、「質の高い商品・

サービスの提供」、「行政等による支援の活用」、「連携・協力先との信頼関係」、「円滑な資

金調達」、「地域社会とのつながり」、「積極的な情報発信・PR」なども挙げられている。今

後ソーシャル・ビジネスを推進していくうえで必要な支援施策や制度として、「普及・啓発

活動」、「創業資金支援」の割合が高くなっており、「運転資金支援」、「協働・連携支援」も

挙げられている。この報告書では「人材」「協働」以外に、「資金」「商品とサービスの質」

「地域社会とのつながり」「情報発信と宣伝」「普及・啓発」も提起されている。

ソーシャル・ビジネスの実態調査に基づく調査報告は、ソーシャル・ビジネスを起こす

起業家の存在が前提となっている。図表 2 で分析したように、社会起業家がいないとソー

シャル・イノベーションが始まらないとするならば、どうすれば多様な起業家が自然に、

容易に誕生するようになるのか考えなければならない。その仕組みづくりのヒントとして、

既存の調査報告では、「動機と機会のバランス」が提起されている。当事者として強烈な実

態経験に基づく「強い動機」と、「収益の見込み」となる「機会」の両方が起業行為を左右

する(『社会イノベーション研究/社会起業家 WG 報告書-社会的企業・社会起業家に関する

調査研究(2008)』、上記報告書(1))。

一方、強烈な実態経験がなく、漠然とした「弱い問題意識」は起業につながらないのだ

ろうか。『ソーシャル・ビジネス調査(2011)』は、「隠れた起業家教育の契機」の存在を指

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摘し、弱い問題意識でもこのような契機に出会えれば、「強い問題意識」に変遷していく。

「隠れた起業家教育の契機」とは、「個々人の問題意識によって、本来別個に存在する出来

事が動機づけや資源獲得といった擬似的な起業家教育の機能を果たす事態をさす」ことで

ある。例えば、「先輩や同級生に起業家、もしくは起業を志す仲間の存在」、「通っていた大

学や、関わった中間支援組織の活動が起業家育成に積極的であること」などがある。この

ような自然に収益事業化に対する意識を高め、手法を学びやすい環境があれば、起業家は

「問題意識の具体化や技術、資源の獲得」を行うことができる。しかし、このような「契

機」は、制度や確固とした組織基盤を持たないため持続性が脆弱であり、正規の教育課程

への起業家教育の導入や、ソーシャル・ビジネス部門における資金調達先の拡充、現場の

ニーズの調査、販路開拓や専門家派遣など、制度的な起業家支援が必要である。

新しい商品やサービスの開発に成功した段階から、いかに規模を拡大させ、社会的価値

を実現していくのか、図表 2 にある創出段階から普及段階への飛躍をどう実現するかにつ

いて、『社会イノベーション研究/社会起業家 WG 報告書-社会的企業・社会起業家に関する

調査研究(2008)』では、「それをサポートする政府財政」の提案が見られる。それは、「社

会起業家がリスクを引き受けるためのリソースを提供するが、リスクに対する責任は引き

受けない」ルールが必要である。

『中小企業・NPO等のソーシャル・ビジネスへの取組みに関する調査(2011)』によると、

共通の成功要因、①リーダーの理念と熱意、②強みのある分野への特化、③商品、サービ

スの高い品質、④ビジネスモデルの構築、⑤強い広報力、⑥他者との協働、の六つがある。

既存の調査研究による整理と発見には類似性があり、その整理と発見を以下の図表 4 に

まとめることができる。

図表 4. 既存の調査研究による発見と指摘

項目 成功要因 そのための仕組み

人 リーダー、理念を共有する多様な

人材、質の良い従業員

全方位の人材育成

(制度的・非制度的両方含む)

財 資金・その他物的資源の調達 事業展開段階のニーズに応えられる

多様な調達ツール

知 強みの特化、高い品質 産官学協働

協働 地域、行政、他の企業など多様で

重層的な協働、ビジネスモデル

コーディネーター設置、経営アドバイザ

ー、行政機関の仲介

宣伝 強い広報力 企業のプロボノ

啓発普及 社会全体の認知と理解・支持 行政とメディアの努力

(出所)既存の調査研究報告書をもとに筆者らが作成

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既存の調査報告から抽出できたアイデアはいずれも重要だが、ばらばらの羅列にとどま

っていると言わざるを得ない。これらの成功要因を体系的に強化し、実現させていくのは

誰なのか。どんな方法で成功要因をつなげられるのだろうか。戦略を打ち出す主体、行動

する主体が明確ではない議論では、「重要だ」と指摘して終わりになってしまう。

実際、たとえば、人材育成の現状を見ると、セミナーやインターンシップが中心となっ

ており、かつ個別の団体がそれぞれ何らかの形で資金を取ってきて実施している。協働支

援の現状を見ると、コーディネート機能が期待される各地の NPO サポートセンター(特に

民設民営)は自活のために余力がなく、行政機関は担当者次第で持続が難しい。既存の企

業は、ソーシャル・イノベーションを生み出す主役ではなく、ほとんどサポーターとして

位置づけられている。ソーシャル・イノベーションを生み出すエコシステムという視点か

ら考えれば、これらのアイデアをどう関連づけ、体系化していけるのかが問われる。

3.3 ソーシャル・イノベーションカンパニー

『ソーシャル・イノベーションカンパニー調査報告書-新しい価値を創造する企業とは

(2012)』は、企業をソーシャル・イノベーションの主役として位置づけた数少ない調査報

告である。そこで定義された「ソーシャル・イノベーションカンパニー」とは、① 政府、

自治体などが行ってきた社会課題をビジネスの手法で解決している企業、② 短期的な収益

を越えた長期的視点から取り組みを行っている企業、③ NGO/NPO との連携によって社会課

題を解決する人材育成を行っている企業、であり、この定義は、調査事例の分析によって

抽出されたものである。この調査報告に取り上げられたのは、味の素による「ガーナ栄養

改善プロジェクト」6、サラヤがウガンダで行う「100万人の手洗いプロジェクト」7、GE ヘ

ルスケア・ジャパンが青森の過疎地域で行う「ヘルスプロモーションカーモデル実証プロ

ジェクト」、ヤマトホールディングスが岩手被災地で行う「まごころ宅急便」8、伊藤忠商事

がインドで実施する「プレオーガニックコットンプログラム」9、中越パルプ工業が工場所

在地の鹿児島県で行う「竹紙・里山物語プロジェクト」10、山梨日立建機の「地雷除去活動」、

エイチ・アイ・エスの「ボランティア・スタディツアー」およびパナソニックの「新興国

NGO プロボノ」11の 9 件の事例である。プロジェクトのタイトルからも分かるように、事業

のフィールドは発展途上国や被災地、過疎地域など、特にニーズが顕著に、明白に現れや

すい地域だと言える。中には規模が小さく、「普及のプロセス」に至ったとは言いがたい事

例もあるが、9件の事例から抽出された「ソーシャル・イノベーションカンパニーの共通事

項」は、図表 5にまとめることができる。

6 http://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/ghana/ 7 http://tearai.jp/ 8 http://www.yamato-hd.co.jp/news/h26/h26_32_01news.html 9 http://www.preorganic.com/ 10 http://www.chuetsu-pulp.co.jp/sustainability/activity/satoyama 11http://www.panasonic.com/jp/corporate/sustainability/citizenship/environment/pivot.html

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図表 5. ソーシャル・イノベーションカンパニーの共通事項

事項 ポイント

社会課題の

取り組みへ

のきっかけ

・企業理念の浸透:社員が自然と行動や実践に移っているのは社会性が盛り込

まれた企業理念があり、それらが自然と染みつくような企業風土があるため

・現場のインサイト:企業理念が浸透した中で、従業員は現地現場で社会課題

に直面する際に、自社の事業で何か解決できないだろうかと考え、企画・事

業の立ち上げにつながっていく

・未来を変える“パッション”を持つ“人”:どのように実現させていくのか

のカギを握るのは、やはり情熱や熱意を持つ“人”の存在

・企業で培われてきた資産:自社が長年培ってきた経験やノウハウ、ネットワ

ークをいかに効率的かつ効果的に利用していくのかが一つのポイント

事業の具体

化・拡がり

・戦略性・収益性:短期収益よりも、長期的な視点と財務諸表の数字に現れな

い企業価値の向上を目指す戦略で進めていく。同時に収益性を確保できる事

業モデルの開発や、本業に良いフィードバックが得られるなどの戦略性が不

可欠

・課題解決に向けたリソースの使い方:現地の困っている人の気持ちが分かる

まで現地の人の声を聞く

・課題解決に向けたリソースの使い方:「オープン・イノベーション戦略」-戦

略的に他社の技術・アイデアをより良い方向性で生かす

・NPO/NGO と事業実現に向けた連携:社会課題の解決をミッションとし現地の

課題をよりよく知る NPO/NGO と連携

・外部と事業実現に向けた積極的な連携・協業:上記以外の外部組織とも積極

的に連携

・戦略的情報発信:積極的に情報配信、賞や国際機関に認められることも重要

・事業の継続性:収益の見込みの確立

社会への影

響・社会的価

値の創出

・社会から“共感”を得る:戦略的な情報発信と、政府機関や国際機関等から

の財務面の支援を積極的に活用するなど社会的評価を得ていくことは、通常

のビジネスではできない新しい拡がりにつながり、事業の実現を加速させる。

社会からの“共感”は自社のブランディングを向上させる

・社会価値の創出:「継続」すれば、社会価値の創出につながるが、課題が三つ:

ア)社会的に良い商品でその取り組みの背景自体の理解は進んでも、商品の価

格が高いと「購買する」アクションにまでなかなか結びつかない

イ)PR の仕方ひとつでも社会貢献的な言い方であると、利益を重視している株

主に理解されるかどうかは難しい

ウ)国連で評価される等の国際的評価自体の理解が日本ではまだ進んでいない

(出所)『ソーシャル・イノベーションカンパニー調査報告書』をもとに筆者らが作成

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このようにソーシャル・イノベーションの主役として活動する企業の場合、以下の 3点の

共通した特徴を有する。

1.「創出プロセス」を見ると、まず「起業家の誕生」の段階では、社会性を強調した企

業理念の浸透、その理念で社会問題を発見する企業風土、企業の資源を活用できる情

熱的な「人」の存在が鍵を握る。企業理念の浸透や情熱的な人の存在は、その企業の

「生存状態」が良い(すなわち、企業に創造力と活力がある)ことを意味する。

2.次に、「社会問題を解決するための具体的な商品やサービス、事業の開発」の段階で

は、現地(対象者)の声をとことん聞き、長期的視点に基づく収益の戦略を立て、他

社、NPO/NGOなど必要とされる他組織と積極的に連携し、効果的な情報配信を行うこと

が求められる。

3.「普及プロセス」を見ると、政府機関や国際機関の評価を得ることによって「共感」

を広げ、事業を継続させることが何よりも重要になることが分かる。事業開発の成功、

特に共感の獲得、普及過程の成功を左右するのは、企業の「生存環境」にほかならな

い。協働関係を作りやすいかどうか、社会性の観点から企業を評価する機運が高まる

かどうか、そのような企業の生存環境の改善が、企業によるソーシャル・イノベーショ

ンにとって不可欠な前提条件となる。

報告書では、社会の共感、株主の理解は容易には得られず、国際機関による評価も日本

ではさほど評価されない現状を指摘している。これらの課題を克服していくには、企業が

自らの「生存状態」を良くしていき、「生存環境」の改善に主体的に乗り出していかなけれ

ばならない。

3.4 ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりの課題

ソーシャル・イノベーションを実現する主役は「社会起業家」とされ、企業は従来、サ

ポーターとして位置づけられてきた。社会起業家の協力者として、共同開発という形でソ

ーシャル・イノべ-ションの事業モデルを作る場合、以下の 3点が問題として提起できる。

(1)各自の役割の明確化

一連の調査報告書において、「協働」はソーシャル・イノベーションを生み出す仕組みと

して不可欠な要素として掲げられている。しかし、異なる「性格」を持つ企業、NPO 法人、

行政、起業家個人など多様なプレイヤーによる協働事業の進行は決して容易ではない。協

働事業をスムーズに進行させるためには、各プレイヤーが明確な役割を果たすことが求め

られる。とりわけ、企業は事業資金の提供者として、一見主導権を握っているように見え

るが、企業は資金の有効活用に責任を強く感じるあまり、資金の使い方に神経質になりが

ちである。また、企業にとっては、協働における資金支援に関しては、収益性重視とまで

は言えないが、何らかの形で本業の一環として、収益性の見込める事業にしたい狙いがあ

ると思われる。このような考え自体は問題ではないが、収益性の評価が従来どおりの基準

で行われる場合、協働事業の足かせになる可能性が高くて、企業の動きが鈍化してしまい、

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十分な役割を果たせなくなる。

(2)限られる資源の有効活用

社会起業家は起業の段階で様々な課題を抱えている。例えば、資金面の困難、人材不足、

新しい分野の開拓などが挙げられる。とくに、資金面の不足によって、人材の確保ができ

ないことが活動の普及拡大に大きな打撃を与えている。協力する企業も経営資源が限られ

ているため、投入するリソースをなるべく活かす意向が強い。多様なプレイヤーがいると

いっても、それぞれが持つ資源が限られているため、現状をよく認識し、限られた資源の

有効活用が強く求められる。

(3)協働事業の成果の維持

企業、NPO 法人、行政など、多様なプレイヤーが持つ資源を投入しているため、それぞれ

が事業の成果を守る意欲も強いと思われる。協働事業の成果の帰属と継続させる方法を明

確にしておかなければ、成果争いに陥ってしまう恐れも考えられる。協働事業の進行に問

題が生じた場合、問題解決に向けて、各プレイヤーの間に温度差が生じる可能性がある。

協働には相互信頼関係や緊密な連携が不可欠であり、信頼関係の構築は時間とエネルギー

を要する。信頼関係構築の方法とコストが、協働にとって大きな課題だと言える。

多くの企業は、NPO法人や社会起業家との協働を CSR(企業の社会的責任 )の一環として、

本業に直結するアピール活動を軸に捉える傾向がいまだに根強い。すなわち、企業がソー

シャル・イノベーションを実現するための協働事業を、どのように「自らの事業」として

位置づけて取り組むのか、まだ明確ではないように思われる。前述のように、「ソーシャル・

イノベーションを生み出す理想的な仕組み」について、本研究では以下の五つの側面を強

調している。①社会的起業家が誕生しやすい、②社会的起業家とそのステークホルダーと

の関係性(ネットワーキング)ができやすい、③多種多様な協働の契機と場がある、④事

業性の確保と社会における影響力の拡大がサポートされる、⑤新しい社会的価値が見えや

すい、浸透させていく方法がある。このような状態の達成が望まれる。

このような状態を達成していく上で、企業はどのように主導権を握る「主役」となりう

るのか、提言を試みたい。

4. 企業が果たしうる役割の検討 - 提言の試み

『ソーシャル・イノベーションカンパニー調査報告書』において、西田治子氏が「ソー

シャル・イノベーションと企業の関係性」というタイトルで、日本企業がいまなぜ苦境に陥

っているのかについて、以下のように書いている。

私は、長年の経済成長に支えられて、大企業となり、安定した組織の中で、その昔

経営の根幹にあった起業家精神や、企業の発展を社会環境の向上と結びつけて考える

経営理念がいつのまにか希薄になったことも一因であろうと考える。政府が脆弱だっ

た第二次大戦後の日本では、焼け跡からの復興に当たっては、企業が率先して革新を

もたらし、その企業の発展が社会経済の成長を促し、国民の生活向上に寄与すること

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ができるのだという信念にも近い確信が、経営者の中にあったと思われる。その後、

経済が発展し、ある程度社会が成熟した現在、このような社会と企業との明確な関係

図式は失われており、企業経営は、社会という迂遠な存在よりも、株主という、より

直接的な関係性に注意を払う方向になっている。そして、社会課題の解決は、株主価

値の最大化とは相容れないと考えられている。

しかし、時代が混沌さを増し、「納得のできる生活世界」を求めるためには、企業が再び

社会を牽引し、社会づくりの主役として行動することが期待されている。経済社会の成長

のみならず、企業には社会に革新をもたらす「勢力」を主導できる力があると思われる。

企業自身が主役として動かなければ、企業の「生存環境」の改善も望めない。社会課題

の解決に役立つビジネスを考えることが、今後の企業経営にとって重要な課題の一つとな

る。企業がソーシャル・イノベーションにおいてイニシアティブを取るためには、長期的な

視点に基づき、ビジョンと戦略を明確にする必要がある。

社会起業家は決して「企業の外」の存在ではない。企業内外において誕生可能である。

どうすれば企業内外において起業家が誕生しやすくなるのか。起業家によって新しい商品

やサービスなどの事業が開発された場合、どうすれば市場と社会の共感が得られやすくな

るのか。上記の調査報告書のサーベイから多くの成功要因と課題が析出されているが、企

業が主役を担う場合、「企業理念の浸透」と「全方位の協働関係の構築」が特に成否を分け

ると考えられる。いずれも容易なことではないが、特に協働関係の構築については、成功

事例でも必ずしもうまくいっているとは限らない。「協働関係」を構築し継続させるには、

企業側に確固たる戦略が求められるからである。

大室(2009)はソーシャル・イノベーションが注目されるようになった社会的背景とし

て、企業側、政府側および非営利組織側の変化を指摘している。企業側では、80 年代後半

から積極的な CSRが求められるようになり、2000年以降はソーシャル・ビジネスが台頭し、

社会的弱者や開発途上国への積極的な貢献、そして社会的課題の解決に貢献する企業の社

会的事業という二つのタイプのソーシャル・ビジネスが注目された。現在は特に企業の社

会的事業の文脈で、ソーシャル・イノベーションが語られている。政府側の変化として、

公共管理論、ニューパブリックマネジメント論からパブリック・ガバナンス論への流れが

あり、パブリック・ガバナンス論の延長に、行政と NPO や他の組織による協治が可能とな

るような、新しい「結びつき」がソーシャル・イノベーションとして語られている。市民

組織側の変化として、NPOの登場、事業化、社会的企業の登場が挙げられ、それらが企業や

行政のイノベーション領域につながっていく。すなわち、ソーシャル・イノベーションは、

この三つの領域の変化が展開し交わるところで起こる。したがって、ソーシャル・イノベ

ーションを生み出す仕組みとは、三者を交わる方向に促すものでなければならない。企業

の戦略づくりは、このような方向性を明確に打ち出す必要がある。

政府と企業、市民の三者が交わるような領域が出現するための社会環境の整備が不可欠

である。政府と企業に対して、市民組織側が独自の存在感と存在意味を示す形で交わって

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いけるかどうか、これがソーシャル・イノベーションの実現にとって鍵となる。市民組織

の「独自の存在感と存在意味」を顕在化させ、対等な勢力として支えていくことが必要で

ある。財政赤字に喘ぎ、長期的な視点を失いがちな政府にその環境整備を期待して待って

いては、ソーシャル・イノベーションを生み出す仕組みづくりは進まない。企業が主導して

進めていく必要がある。

企業が社会的課題を解決し、イノベーションを起こすようなビジネスモデルを構築する

ためには、社会的ニーズを把握し、各地域、領域で人脈を構築し、「社会の知恵」を取り入

れていかなければならない。そのためには、市民を単なる消費者として見るという考えか

ら脱出し、市民組織をパートナーとして育て上げる必要がある。市民組織側を育て上げる

プロセスは、同時に企業が多様な他者と協働する発想、行動様式、スキルを学び、企業内

外で「つなげる」ことに長ける人材を育成するプロセスにもなる。

ソーシャル・イノベーションカンパニーとは、「納得のできる生活世界」に向けた自らの

生存環境を明確に定義でき、それを改善していくための明確なビジョンを企業理念に盛り

込み、社内社外に浸透させている企業である。意欲と熱意のある社内、社外の人材が具体

的なプロジェクトを立ち上げる際にサポート体制ができる企業であり、協働関係が可能に

なるプラットフォームを主導し、協働関係の成功に寄与する各種要因と社会的影響力を意

識的に高めようとする企業でもある。そんな企業のことを、「ソーシャル・イノベーション

カンパニー」と呼ぶべきだと考える。特定の一つの技術によって、何らかのプロジェクト

によってソーシャル・イノベーションカンパニーになれるわけではない。むしろそのよう

なプロジェクトが容易に生み出されるようなメカニズムを創ることができるのが、ソーシ

ャル・イノベーションカンパニーである。

そのためには、企業の「生存状態」に関して、企業理念に基づく戦略と人材、そして企

業の「生存環境」に関して、市民組織を対等な勢力に育て上げるような協働関係のための

プラットフォームという二点を特に強調したい。企業理念については、企業が長年取り組

んできた問題であるため、すでに多くの蓄積があると思われる。しかし、協働関係のため

の環境作り、具体的なプラットフォーム作りは、企業にとっては新しい課題である。とく

に、ここで期待しているプラットフォームは、従来のプロジェクトベースの連携(特定の

組織や個人との個別の協働事業)ではない。起業行動を自然に触発し、多種多様な協働の

契機と場を提供し、失敗を恐れず、市場における継続性と社会における影響力の拡大をサ

ポートし続け、新しい社会的価値の提唱につながるプラットフォームである。

今後の研究課題として、ソーシャルエコシステムの形成メカニズムの探究、国別の比較

研究やケーススタディを踏まえながら、そのようなプラットフォーム作りの方法論を模索

していきたい。また、日本国内にはすでに行政主導のソーシャル・イノベーションクラスタ

ーやソーシャル・イノベーションセンターの取り組みのような事例が見られるが、企業が主

役としてこのようなプロットフォームを主導する場合、どのような形があり得るのか、そ

れがどのように企業の「本業」と結びつくことができるのか、引き続き注目したい。

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19

参考文献

[1] 土肥将敦(2005)「社会志向型企業のネットワーク化と社会的価値形成・普及プロセ

ス : ソーシャル・イノベーション・クラスターによる新しい秩序形成」『社会・経済

システム (第 26 号)』、pp. 135-142

[2] 土肥将敦(2010)「ソーシャル・ビジネスの構造とビジネスモデルの普及過程」『社会・

経済システム (第 31号)』、pp.37-44

[3] Social Innovation Europe (2012), Financing Social Impact – Funding social

innovation in Europe – mapping the way forward.

[4] P. Eduardo and V. Simon (2008) “Social innovation: Buzz word or enduring term?”

University of Wollongong, Economics Working Paper Series

[5] 藤澤由和(2010)「ソーシャル・イノベーション概念とその可能性に関する検討」『経営

と情報: 静岡県立大学・経営情報学部学報(第 22巻第 2号)』、pp.31-44

[6] C.S. Giovany (2014) “Social innovation: moving the field forward. A conceptual

framework,” Technological Forecasting and Social Change Vol. 82, pp. 42-51

[7] 服部篤子・武藤清・渋澤健ほか(2010)『ソーシャル・イノベーション-営利と非営利

を超えて』、日本経済評論社

[8] 廣田俊郎(2004)「ソーシャル・イノベーションと企業システム革新の相互作用的生成」

『社会・経済システム (第 25号)』pp.133-138

[9] J. Howaldt and M. Schwarz (2010) “Social innovation: Concepts, research fields

and international trends” Studies for innovation in a Modern Working Environment-International Monitoring

[10]古村公久・大室悦賀ほか(2011)「社会的企業とステークホルダーによるソーシャル・

イノベーションの創出 : NPO法人スペースふうのリユース食器事業を事例として」『社

会・経済システム (第 32号)』、pp.117-132

[11] 松行康夫・松行彬子・松行輝昌(2012)『ソーシャル・イノベーション-地域公共圏の

ガバナンス』丸善出版

[12] 西田治子(2012)「ソーシャル・イノベーションと企業の関係性」『ソーシャル・イノ ベ

ーションカンパニー調査報告書:新しい価値を創造する企業とは』、pp.14-15

[13] 野中郁次郎・勝見明(2010)『イノベーションの智慧』、日経BP社

[14] OECD report (2011), Fostering Innovation to address social change,

http://www.oecd.org/dev/pgd/

[15] 大室悦賀(2009)「ソーシャル・イノベーションの理論的系譜」『京都マネジメントレ

ビュー(第 15号)』、pp. 13-40

[16] F. Phillips (2011) “The state of technological and social change: Impressions,”

Technological Forecasting & Social Change No. 6, pp. 1072-1078

[17] The Young Foundation,

http://youngfoundation.org/wp-content/uploads/2012/12/TEPSIE.D1.1.Report.Def

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20

[18] 谷本寛治(2006)『ソーシャル・エンタープライズ-社会的企業の台頭』中央経済社

[19] 谷本寛治(2009)「ソーシャル・ビジネスとソーシャル・イノベーション」『一橋ビジ

ネスレビュー(2009 SUM)』、pp.26-41

[20] 谷本寛治ほか(2013)『ソーシャル・イノベーションの創出と普及』、エヌティティ出

[21] 渡辺孝(2009)「ソーシャル・イノベーションとは何か」『一橋ビジネスレビュー(2009

SUM)』、pp.14-25

付録資料

付録資料 1 ソーシャル・イノベーションに関する日本語書籍一覧(発表年順)

著者 タイトル 発表元 発表年

塚本一郎

山岸秀雄

ソーシャル・エンタープライズ 社会貢献を

ビジネスにする

丸善出版 2008

Ilkka Taipale (著)、山田眞知子(訳)

フィンランドを世界一に導いた 100 の社会改革―フィンランドのソーシャル・イノベーション

公人の友社 2008

東出顕子(訳) 誰が世界を変えるのか ソーシャル・イノベ

ーションはここから始まる

英治出版 2008

塚本一郎

関 正雄

社会貢献によるビジネス・イノベーション:

「CSR」を超えて

丸善出版 2012

服部篤子 未来をつくる企業内イノベーターたち

企業の中から社会を変えるソーシャル・イ

ントラプレナーの仕事術

近代セールス社 2012

野村恭彦 フューチャーセンターをつくろう 対話を

イノベーションにつなげる仕組み

プレジデント社 2012

藤井敦史ほか 闘う社会的企業 勁草書房 2013

野中郁次郎

ほか

実践ソーシャル・イノベーション - 知を価

値に変えたコミュニティ・企業・NPO

千倉書房 2014

西村仁志 ソーシャル・イノベーションが拓く世界:

身近な社会問題解決のためのトピックス 30

法律文化社 2014

前野隆司ほか システム×デザイン思考で世界を変える

慶應 SDM「イノベーションのつくり方」

日経 BP社 2014

岸真清ほか ソーシャル・ビジネスのイノベーション 同文館出版 2014

小田理一郎ほ

か (訳)

社会変革のシナリオ・プランニング――対

立を乗り越え、ともに難題を解決する

英治出版 2014

小池洋次 ソーシャル・イノベーション: 思いとアイ

デアの力

関西学院大学

出版会

2015

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付録資料 2 ソーシャル・イノベーションに関する日本語論文一覧(発表年順)

著者 タイトル 発表元 発表年

大室悦賀 事業型 NPO の存在意義:ソーシャル・イノベー

ションの主体として

社会・経済システ

ム学会

2003

大室悦賀 ソーシャル・イノベーションの機能と役割 社会・経済システ

ム学会

2004

大室悦賀 ソーシャル・イノベーション : 機能・構造・

マネジメント

財団法人政策科学

研究所『21 世紀フ

ァーラム』

2007

大室悦賀 組織ポートフォリオとソーシャル・イノベーシ

ョンの関係

『京都マネジメン

トレビュー』

2008

大室悦賀

「ソーシャル・イノベーションの動態プロセス

に関する定性的研究

日本経営学会 2009

渡辺孝、

露木真也

社会起業家と社会イノベーション―議論の国際

的系譜と日本の課題―

ESRI Discussion

Paper Series

No.215

2009

大平修司 制度と非営利組織:ソーシャル・イノベーショ

ンの制度化プロセスの解明

千葉商大論 2010

服部篤子 「ソーシャル・イノベーション」を担う社会起

業家の役割

商工ジャ-ナル 2010

井上英之 新しい公共におけるソーシャル・ビジネス--ソ

ーシャル・イノベーションと政府の役割

月刊自治フォーラ

2010

藤澤由和 ソーシャル・イノベーション概念とその可能性

に関する検討

『経営と情報』 2010

奥村昭博 ソーシャル・ビジネスの成功条件 『経営と情報』 2010

趙 雪蓮 ソーシャル・イノベーションとソーシャル・エ

ンタープライズ : CSR の拡充に向けての伏線

大阪産業大学経営

論集

2011

江川良裕 社会的企業におけるビジネスモデルとイノベー

ション

熊本大学文学部論

2011

水野 清 社会企業家のネットワーク構築によるソーシャ

ル・イノベーション・プロセス : 長野県大町市

の"菜の花エコプロジェクト"を事例として

農業普及研究 2012

矢部拓也 ソーシャル・イノベーションとしての地方のま

ちづくりとコモンズ : 地方都市の地域再生の

課題と現状・北九州市小倉地区、富山市、愛媛

県伊予市双海町を事例として

徳島大学社会科学

研究

2012

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畑 正夫 阪神・淡路大震災の被災地の NPO の空間的立地

行動分析 被災地におけるソーシャル・イノベー

ションの普及を促進する中間支援機能の検討

国際公共経済研究 2012

田代洋久 持続性ある地域づくりの高度化に向けた新しい

アプローチ : 地域ソーシャル・イノベーション

の形成

地域開発 2012

大室悦賀 ビジネスを利用した社会的課題の解決における

ステークホルダーの参加動機と行動変容-NPO法

人北海道グリーンファンドを事例とした-

京都産業大学論集

社会科学系

2012

大室悦賀 ソーシャル・イノベーションの普及と社会的責

任投資

『日本経営学会

誌』

2013

土肥将敦 東日本大震災を契機としたソーシャル・イノベ

ーションの実現のプロセス : ヤマトグループ

における「宅急便 1個につき 10円寄付活動」に

おける正統性要因

『社会・経済シス

テム学会誌』

2013

桃井謙祐 ソーシャル・イノベーションの普及プロセスと

それを育むエコシステム等をめぐる考察

長崎大学経済学会

『経営と経済』

2013

石垣一司 ソーシャル・イノベーション : 社会問題の解決

を目指した社会システムのデザインとビジネス

創造の試み

雑誌 Fujitsu、特集

「イノベーション

デザイン」

2013

中原秀登 ソーシャル・イノベーションに向けた産学連携

の試論

千葉大学経済学会

『経済研究』

2013

田中廣滋 ソーシャル・イノベーションにおける企業の社

会的責任と社会的企業の役割

商学論纂、岸真清

教授古稀記念論文

2014

原 勲 北海道ソーシャル・イノベーション研究会に関

する研究報告

北翔大学北方圏学

術情報センター年

2014

井手英策

ほか

特集 座談会 ソーシャル・イノベーションの最

前線

生活経済政策 2015

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付録資料 3 ソーシャル・イノベーションに関する英語書籍一覧(発表年順)

著者 タイトル 発表元 発表年

Timo

J.Hamalainen、

Risto Heiskala

Social Innovations, Institutional

Change and Economic Performance:

Making Sense of Structrual Adjustment

Processes in Industrial Sectors,

Regions and Societies

Edward Elgar

Publishing

2007

Stephen Goldsmith The Power of Social Innovation: How

Civic Entrepreneurs Ignite Community

Networks for Good

Jossey-Bass 2010

Laura Michelini Social Innovation and New Business

Models - Creating shared value in

low-income markets

Springer 2012

Alex Nicholls 、

Ale Murdock

Social Innovation: Blurring

Boundaries to Reconfigure Markets

Palgrave

Macmillan

2012

Thomas Osburg 、

Rene Schmidpeter

Social innovation Solutions for a

sustainable future

Springer 2012

Frank Moulaert ほ

The International Handbook on Social

Innovation: Collective Action, Social

Learning and Transdisciplinary

Research

Edward Elgar Pub 2014

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研究レポート一覧

No.427 ソーシャル・イノベーションの仕組みづくりと企業の 役割への模索-先行文献・資料のレビューを中心に-

趙 瑋琳李 妍焱

(2016年1月)

No.426 製造業の将来 -何が語られているのか?-

西尾 好司 (2015年6月)

No.425 ハードウエアとソフトウエアが融合する世界の展望 -新たな産業革命に関する考察-

湯川 抗 (2015年5月)

No.424 これからのシニア女性の社会的つながり -地域との関わり方に関する一考察-

倉重佳代子 (2015年3月)

No.423 Debt and Growth Crises in Ageing Societies: Japan and Italy Martin Schulz (2015年4月)

No.422 グローバル市場開拓におけるインクルーシブビジネスの活用-ICT企業のインクルーシブビジネスモデルの構築-

生田 孝史大屋 智浩加藤 望

(2015年4月)

No.421 大都市における空き家問題 -木密、賃貸住宅、分譲マンションを中心として-

米山 秀隆 (2015年4月)

No.420 中国のネットビジネス革新と課題 金 堅敏 (2015年3月)

No.419 立法爆発とオープンガバメントに関する研究 -法令文書における「オープンコーディング」の提案-

榎並 利博 (2015年3月)

No.418 太平洋クロマグロ漁獲制限と漁業の持続可能性 -壱岐市のケース-

濱崎 博加藤 望生田 孝史

(2014年11月)

No.417 アジア地域経済統合における2つの潮流と台湾参加の可能性

金 堅敏 (2014年6月)

No.416 空き家対策の最新事例と残された課題 米山 秀隆 (2014年5月)

No.415 中国の大気汚染に関する考察 -これまでの取り組みを中心に-

趙 瑋琳 (2014年5月)

No.414 創造性モデルに関する研究試論 榎並 利博 (2014年4月)

No.413 地域エネルギー事業としてのバイオガス利用に向けて 加藤 望 (2014年2月)

No.412 中国のアジア経済統合戦略:FTA、RCEP、TPP 金 堅敏(2013年11月)

No.411 我が国におけるベンチャー企業のM&A増加に向けた提言-のれん代非償却化の重大なインパクト-

湯川 抗木村 直人

(2013年11月)

No.410 中国における産業クラスターの発展に関する考察 趙 瑋琳(2013年10月)

No.409 木質バイオマスエネルギー利用の現状と課題 -FITを中心とした日独比較分析-

梶山 恵司(2013年10月)

No.408 3.11後のデマンド・レスポンスの研究 ~日本は電力の需給ひっ迫をいかにして克服したか?~

高橋 洋 (2013年7月)

No.407 ビジョンの変遷に見るICTの将来像 Innovation and

Technology Insight Team(2013年6月)

No.406 インドの消費者・小売業の特徴と日本企業の可能性 長島 直樹 (2013年4月)

No.405 日本における再生可能エネルギーの可能性と課題 -エネルギー技術モデル(JMRT)を用いた定量的評価-

濱崎 博 (2013年4月)

No.404 System Analysis of Japanese Renewable Energy Hiroshi Hamasaki

Amit Kanudia(2013年4月)

No.403 自治体の空き家対策と海外における対応事例 米山 秀隆 (2013年4月)

http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/report/research/

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URL http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/