31
ISSN 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田 孝史 プリンシパルコンサルタント 藤本

No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

  • Upload
    vanlien

  • View
    220

  • Download
    6

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

ISSN 1346-9029

研究レポート

No.453 January 2018

サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示

上席主任研究員 生田 孝史

プリンシパルコンサルタント 藤本 健

Page 2: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示

上席主任研究員 生田孝史

プリンシパルコンサルタント 藤本 健

【要旨】

広範かつ複雑化するリスクや非予見性の高いクライシスへの対応による業績向上と、

ESG(環境、社会、ガバナンス)投資や SDGs(持続可能な開発目標)などの社会課題へ

の対応による企業価値向上を両立するための取り組みが企業に求められている。ビジネス

環境の急激な変化(ショック)に適応するためのレジリエントな企業活動と、社会や環境

の緩やかな変化(ストレス)に適応するためのサステナブルな企業活動の整合性を確保す

ることが必要である。特に大企業の場合、組織の統合を目指すよりも、リスク視点の共通

化、すなわち、「将来予見の情報・文脈の共有」を起点とした取り組みが現実的であり、共

通化したリスク視点に基づき、事業部門と CSR 部門がそれぞれリスクアセスメントを行

い、個別に検討した事業戦略と CSR 戦略の整合性を確保するためのレビューを行う取り

組みが重要となる。実際に組織内のプロセスに実装する場合、ISO31000(リスクマネジ

メント)と ISO26000(社会的責任)の両ガイダンスの統合的な活用が有効であろう。

企業に対して非財務情報開示を要請する動きは、ESG 投資の拡大、証券取引所による要

請、政府による義務付けなどの形でグローバルに強まっており、ガイドラインなどの整備

も進んでいる。最近では、グローバル大手企業だけでなく、新興国などの大手企業でも非

財務情報を開示する傾向が強まっている。強制力のある施策が導入されていない日本でも、

大手企業を中心に非財務報告が活発に行われ、統合報告を実施する企業が急増している。

2017年のフォーブスグローバル 2000にランクインした日本企業 225社の公開情報を調べ

たところ、製造業の 98%が非財務報告を実施しているのに対して、非財務報告を実施して

いる非製造業は 60%に過ぎなかったが、非製造業の上位企業は 91%が非財務報告を実施し、

特に統合報告の取り組みが製造業より進んでいる。また、非財務報告及び統合報告の実施

企業は財務パフォーマンスが高い傾向が見られた。非財務情報開示を企業価値の向上につ

なげるために、コミュニケーションツールとしていかに活用するかが問われることになり、

パフォーマンス評価が不可欠となる。

キーワード:リスク視点、ISO31000、ISO26000、非財務報告、統合報告

Page 3: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

【目次】

1 はじめに .......................................................................................................................... 1

2 サステナブルでレジリエントな企業経営 ...................................................................... 3

2.1 サステナブルでレジリエントな企業活動とは ........................................................... 3

2.2 ケーススタディ ........................................................................................................... 5

2.3 サステナブルでレジリエントな企業活動の実現に向けて ........................................ 7

3 非財務情報開示のあり方 ............................................................................................... 11

3.1 非財務情報開示の要請 .............................................................................................. 12

3.2 非財務報告に関するグローバルな企業動向 ............................................................ 14

3.3 日本企業の非財務報告の取り組み ........................................................................... 16

3.4 レポーティング・コミュニケーション戦略の検討に向けて ................................... 22

4 おわりに ........................................................................................................................ 24

参考文献 ............................................................................................................................... 26

Page 4: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

1

1 はじめに

企業活動を取り巻くリスクは広範かつ複雑となっており、そしてリスクが顕在化した結

果であるクライシスの非予見性も高まっている。様々な分野で「レジリエンス」というキ

ーワードが使われる場面が増えており、我々が直面する環境が複雑かつ変化の激しいもの

であり、「組織としての適応力」が求められる時代になっていることを示唆している。近年、

自然災害やサイバー攻撃など、想定外のマネジメント力が企業に求められている。予防と

してのリスクマネジメントの取り組みは、従来通り必要不可欠な活動だが、これに加えて

クライシスマネジメントとして、平時よりリスク発現を想定した有事への備えを組織的か

つ継続的に取り組むことも重要なテーマである。言い換えると、リスクマネジメントとク

ライシスマネジメントの取り組みによって、自らの脆弱性(Vulnerability)を認識したう

えで、環境変化を捉えて適応する力(Adaptive Capacity)を実践できる状態にあり、か

つその状態に経営者として説明責任(Accountability)を果たせる企業こそが、「レジリエ

ントな企業」と言える。すなわち、企業活動におけるレジリエンスとは、自社活動を取り

巻くグローバルな問題、社会・環境問題、技術動向などを幅広く俯瞰した上で将来を予見

し、適応していく力を組織として身に着けていくことと考えられる。

企業活動におけるレジリエンスを高める議論の盛り上がりと並行して、企業の長期的な

成長には ESG(環境、社会、ガバナンス)の観点が必要という考え方が世界的に浸透して

いる。特に機関投資家の間で、投資の意思決定の際に従来の財務情報に加えて、企業の ESG

情報も考慮に入れる「ESG 投資」が急速に拡大している1。ESG への関心が低い企業は、

長期的にリスクを抱えた企業と見なされるため、経営者にとっては、レジリエンス向上の

取り組みに加えて、ESG 対応を経営へ組み込むための持続可能な経営(サステナブルマネ

ジメント)が喫緊の課題といえる。

サステナブルマネジメントの最近の動向として、「マテリアリティ分析」の取り組みが

盛んである。マテリアリティとは「重要課題」のことであり、自社と社会(ステークホル

ダー)の両方の視点から、企業が最優先で取り組むべきマテリアリティ(重要課題)を特

定するものである2。最近では、社会課題の重要度の検討にあたっては、グローバルな共通

言語とみなされている国連持続可能な開発目標(SDGs)3を参照する企業が増えている。

マテリアリティの特定は、経営課題と社会課題を統合し、本業を通じた社会課題解決のた

めの取り組みにつながるものであり、例えば、中長期的な事業戦略の検討などに有用であ

る。

1 ESG 投資の拡大については 3.1.1 に後述。

2 マテリアリティ分析については、ISO26000(社会的責任にかんする手引き:2.3.2 に後述)や情報開示

のガイドラインであるGRIスタンダードや国際統合報告フレームワーク(3.1.4に後述)、さらには SDG

コンパス(SDGを考慮した企業経営のためのガイドライン)などに考え方や手法が記されている。

3 2016年 1 月開始された 2030 年までに国際社会が達成すべき 17 目標 169 ターゲット。企業戦略への

SDGs の活用のあり方については生田(2017)にて言及。

Page 5: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

2

企業にとって、リスク・クライシスマネジメントの成果は、企業のレジリエンスを高め

るだけでなく、その多くは社会課題の解決(サステナビリティ向上)に資することとなり、

企業価値の向上につながることが期待される。急激な変化(ショック)、緩やかな変化(ス

トレス)のいずれに対しても、危機対応力、社会課題対応力をもって業績向上と企業価値

向上を両立する取り組み、すなわち、サステナブルでレジリエントな企業活動が求められ

ている。

このような問題意識から、本研究は、レジリエンスとサステナビリティを高める企業活

動のあり方を提示することを目的として、企業を取り巻くリスク・クライシスの潮流を把

握したうえで、サステナブルでレジリエントな企業経営(内部管理)とステークホルダー

へのレポーティング・コミュニケーション、製品・サービス提供を通じた社会課題解決型

ビジネス開発のあり方を検討するとともに、長期的な企業価値向上を実現するためのパフ

ォーマンス評価についてそれぞれ検討を進めているところである(図表 1 参照)。このう

ち、本レポートでは、サステナブルでレジリエントな企業経営のあり方とレポーティング・

コミュニケーションのあり方について検討したものをとりまとめている4。次章以下、レジ

リエントな企業活動とサステナブルな企業活動の融合の考え方と具体的な取り組みの方向

について述べるとともに(2 章)、非財務情報を中心とした企業情報の開示の現状と課題に

ついて述べたうえで(3 章)、内部管理と情報開示の切り口からサステナブルでレジリエン

トな企業活動を進めるための方策について言及したい(4 章)5。

図表 1 研究の枠組みと本レポートの対象範囲

(出所)富士通総研作成

4 企業を取り巻くリスク・クライシスの潮流とサステナブルでレジリエントな企業経営の基本的な考え方

については、富士通総研経済研究所レジリエント社会研究チーム(2018)にて述べている。

5 本レポートは、1 章を生田・藤本、2 章を藤本、3 章と 4 章を生田が担当した。

Page 6: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

3

2 サステナブルでレジリエントな企業経営

2.1 サステナブルでレジリエントな企業活動とは

サステナビリティを高める取り組みとレジリエンスを高める取り組みは、自社を取り巻

くビジネス環境の現在と未来を予見しながら自社にとっての優先順位付けを行う点では同

じ取り組みである。ただし、図表 2 に示したように、レジリエントな企業活動はどちらか

というとビジネス環境の急激な変化(ショック)へ適応することで、短期的な業績向上を

目標とした取り組みであるのに対して、サステナブルな企業活動は社会や環境の緩やかな

変化(ストレス)に適応することで、中長期的な企業価値向上を目標とした取り組みであ

るため、担当部門や管掌役員(体制)が分かれており、基本的には異なる個別の取り組み

(プロセス)として進められている。しかしながら、レジリエントな企業を「将来を予見

する力を有し、さらに予見した将来への適応力も有する企業」と定義した場合、レジリエ

ントな企業に必要な組織能力はサステナブルな企業活動にも有用であるはずである。

図表 2 サステナブルでレジリエントな企業活動

(出所)富士通総研作成

Page 7: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

4

このような実態を踏まえた上で、サステナブルな視点とレジリエントな視点の融合の考

え方について図表 3 のような仮説が考えられる。すなわち、レジリエントな企業活動とサ

ステナブルな企業活動の整合性を確保するためにリスク視点を共通化するべきという考え

方である。そのために、まずは、将来を予見するための「情報と文脈」を、レジリエント

な企業活動とサステナブルな企業活動の間で共通化することが、価値観共有の近道となる

だろう。

このような価値観共有のための取り組みは、企業規模等によって難易度が異なることが

考えられる。中小企業の場合、リスク部門と CSR 部門が同一組織のケースが多いため、

対応が比較的容易かもしれない。大企業の場合、組織が細分化され、それぞれのミッショ

ンを縦割り(サイロ)で取り組んでいることが多く、組織間の調整に時間と労力を要する

可能性がある。さらに、投資家向けコミュニケーションについて見れば、大企業・中小企

業とも IR 部門が別途担っているケースが多い。それぞれの管掌役員についても然りであ

る。

サステナブルかつレジリエントな企業活動を実現するためには、組織の統合を目指すよ

りも、各組織のベースラインとなるリスク視点の共通化、つまり「将来予見の情報・文脈

の共有」を起点とした取り組みを行うことが肝要である。この将来予見の情報・文脈の共

有を行っている海外企業の事例について、次節で考察したい。

図表 3 サステナブルな視点とレジリエントな視点の融合の考え方

(出所)富士通総研作成

Page 8: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

5

2.2 ケーススタディ

2.2.1 ロイヤル・ダッチ・シェル:「New Lens Scenarios」

ロイヤル・ダッチ・シェルが 1973 年にシナリオ・プランニング6により、未来を予見し、

想定外をシミュレートすることで、オイルショックの難局を乗り切ったのは有名な話であ

る。この時以来、同社内ではシナリオ・プランニングが定着している。最近では、2013

年に 5年ぶりとなる新たなシナリオ「New Lens Scenarios」を発表している。「New Lens

Scenarios」は、2060 年をターゲットとし、社会・経済・政治・テクノロジーが未来に向

かって変化していく様子を「マウンテンズ」と「オーシャンズ」と名付けられた 2 つのシ

ナリオとして描き、エネルギー問題と環境問題が今後どう展開されるかについて示してい

る。「マウンテンズ」の世界は、既存権力の固定化により現状維持が続き、経済は活力が削

がれ、社会の流動性が抑制される世界を描き、「オーシャンズ」では既存権力が広く委譲さ

れ、経済活動は改革の大波に乗って高まるが、政治が不安定化し、市場原理に委ねられる

世界を描いている(図表 4参照)。

図表 4 ロイヤル・ダッチ・シェルの「New Lens Scenarios」

6 第 2 次世界大戦中にアメリカ軍が軍事戦略の策定を目的に研究された「起こり得る未来展開を予測する

ストーリー」を組み立てていく思考実験に端を発している

Page 9: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

6

(出所)Shell International BV

この文書に関しては、同社がこのシナリオをどのように分析し、経営の方向性を示すか

が重要となるが、前節における「将来予見の情報・文脈の共有」に資するツールの好事例

であるといえる。このシナリオで描かれている情報・文脈を共有することで、各部門がリ

スク視点を共通化することが可能となる。

2.2.2 マークス&スペンサーの統合報告書

マークス&スペンサーは、アニュアルレポートを国際統合報告評議会(IIRC)のガイド

ライン7に基づき作成、公表している。その中で財務目標、非財務目標、戦略目標に向けて、

6つの資本(財務、製品と流通チャネル、知的資本、人的資本、社会的資本、自然資本)

と6段階のビジネスプロセス(戦略・計画、開発・設計、調達・購買、ブランド・販売、

顧客ニーズを聞く、ロイヤリティ向上)における行動を明示している(図表 5 参照)。

7 3.1.4 に後述

Page 10: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

7

図表 5 マークス&スペンサーの統合報告書

(出所)Marks and Spencer plc

ここで重要な点は、共通の価値創造プロセスの枠組みに基づいて、財務目標、非財務目

標、戦略目標がそれぞれ語られていることである。これらの背景となる将来予見の情報・

文脈、いわゆるシナリオの詳細は明らかではないが、各部門間でリスク視点の共通化が一

定程度されていると考えられる。このように、短期的視点と中長期的視点を共通の枠組み

で情報開示しているマークス&スペンサーの取り組みも、リスク視点の共通化の好事例と

して活用できるであろう。

2.3 サステナブルでレジリエントな企業活動の実現に向けて

2.3.1 リスク視点の共通化を起点にした取り組み

2.1 に述べたとおり、サステナブルでレジリエントな企業活動を実現するためには、組

織の統合を目指すよりも各部門の活動のベースラインとなるリスク視点の共通化、つまり

「将来予見の情報・文脈の共有」を起点とした取り組みを行うことが現実的である。具体

的には、図表 6 のような 3 段階のステップによる取り組みとして整理される。

Page 11: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

8

図表 6 リスク視点の共通化を起点にした取り組み

(出所)富士通総研作成

Step1 は、自組織が置かれているビジネス環境と社会的責任を同じ背景・文脈で理解す

る工程である。例えば、「気候変動」に係る環境影響や法規制の問題は、ビジネス機会とし

て捉える側面と社会的責任として捉える側面が考えられる。しかし、多くの企業において、

ビジネスは事業部門、社会的責任は CSR 部門の分掌として取り組むこととなるため、ビ

ジネス環境認識や将来予見としてのシナリオ作成(一般的に「外部環境分析」と呼ばれる

作業)を別々に行い、同じ組織であっても異なるシナリオが作成される状況に陥りやすい。

言い換えると、背景・文脈について異なった理解と、それらに基づく異なった将来予見を

持つことになる。したがって、組織にとっての主要課題について、例えば、特定地域にお

いて規制が強化されるのか現状維持なのか、さらには関連する新規市場が形成されるのか

否かなど、事業部門と CSR 部門のリスク視点を共通化するために、背景・文脈理解のプ

ロセス、さらには予見プロセスを統合すべきである。ロイヤル・ダッチ・シェルの例で紹

介したように組織としての共通シナリオの作成を行うことが望ましい。

次の Step2 は、Step1 で共通化したリスク視点に基づき、事業部門と CSR 部門がそれ

ぞれのミッション遂行における事業リスクと CSR リスクをアセスメントしたうえで、事

業戦略と CSR戦略を個別に検討する工程となる。

最後の Step3 は、個別に検討した事業戦略と CSR 戦略に関して、整合性の確保という

視点でレビューする工程である。この工程は、1 章でも触れたとおり、近年サステナブル

マネジメントで取り入れられている「マテリアリティ分析」において、ビジネス活動にお

けるステークホルダーにとっての重要性とビジネス活動による社会や環境への影響の重要

性の整合性を確保する作業と同じ取り組みである。

2.3.2 ISO31000と ISO26000 の企業活動への統合的実装について

前項で整理したような 3段階のステップによる取り組みを実際に組織内のプロセスで実

装する場合、国際標準化機構(ISO)が発行しているリスクマネジメントのガイダンス

ISO31000(リスクマネジメント-原則及び指針)とサステナブル経営のガイダンス

Page 12: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

9

ISO26000(社会的責任に関する手引き)の活用が有効であろう。具体的には、図表 7 に

示したとおり、リスク視点の共通化のために、ISO31000 における「組織の状況の確定(5.3

項)」と ISO26000 における「組織の特性と社会的責任の関係(7.2 項)」のプロセスを統

合することが考えられる。

ISO31000「組織の状況の確定(5.3 項)」と ISO26000「組織の特性と社会的責任の関

係(7.2項)」の要求事項を比較すると図表 8 のとおりとなる。両社のそれぞれが、いわゆ

るレジリエントな視点とサステナブルな視点の要件である。これらを共通のリスク視点と

して整理することが、自組織が置かれている「ビジネス環境」と「社会的責任」に関して

同じ背景・文脈を作成する作業となり、自組織の事業課題と社会課題の統合につながる。

Step2 の個別のアセスメントでは、リスクアセスメントに基づく事業戦略の検討と取り組

むべき中核課題の優先順位付けに基づく CSR 戦略の検討を ISO31000 と ISO26000 のそ

れぞれの要件に準拠する形で実施することになる。そして、Step3 のレビューにおいて、

事業戦略と CSR 戦略の整合性を評価するために、ビジネスに係るステークホルダーと社

会や環境に係るステークホルダーの双方にとって矛盾しない優先順位付け、つまり事業課

題と社会課題の統合を、マテリアリティ分析などの手法を用いて実施することで、戦略の

実行もしくは戦略の見直しにつなげることができる。

図表 7 ISO31000 と ISO26000 の統合的実装

(出所)ISO31000 と ISO26000を基に富士通総研作成

Page 13: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

10

図表 8 ISO31000 と ISO26000 における視点の比較

(出所)ISO31000 と ISO26000を基に富士通総研作成

以上、述べてきたとおり、リスク視点の共通化を起点としたサステナブルでレジリエン

トな企業活動の実現とは、組織環境としての価値観や文化を部門横断的に共有する取り組

みでもある。企業規模や組織体制、現時点での組織環境の状況によって、組織への実装方

法は異なってくるであろう。多くの場合、経営会議など経営戦略を討議するトップマネジ

メントの場より実践をスタートし、トップマネジメントでの理解が進んだ後に各部門で取

り組みを進める方法が効果的である。また、前述のマークス&スペンサーの事例や次章で

言及する企業情報開示の潮流である統合報告への取り組みを契機として、サステナブルで

レジリエントな企業活動の実践に着手するアプローチも現実的であろう。

Page 14: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

11

3 非財務情報開示のあり方

近年、企業に対して財務情報以外の情報開示を要請する動きが強まっている。KPMG、

Global Reporting Initiative (GRI)、国連環境計画などのレポート “Carrots & Sticks”

2016 年版によれば、非財務情報を意味する持続可能性報告について 400 近くの施策が世

界全体で導入されており、その数は過去 3 年間で 2倍以上に急増したという8。非財務情報

と言えば、企業活動による環境・社会問題への影響や貢献、さらにはガバナンスに関する

情報が代表的であり、CSR(ESG)報告や統合報告などの形で情報開示されることが多い。

図表 9に示すように、従来、企業の非財務情報を求めるステークホルダーと言えば、行政

や地域社会、NGO・NPO、消費者、取引先、従業員が主体であったが、2000年初頭から

米国を中心に続発した企業不祥事や、2008年のリーマンショックを経て、企業のリスクや

機会を評価するには財務情報だけでは不十分との考えが普及したことで、政府や金融当局、

株式市場などが企業に非財務情報の開示を強制あるいは自発的に促す動きが拡大している。

以下では、非財務情報開示の要請に関する具体的な動向と、企業の取り組みの状況につい

て述べることとする。

図表 9 企業の非財務情報開示を巡る状況

(出所)富士通総研作成

8 https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/pdf/2016/05/carrots-and-sticks-may-2016.pdf

Page 15: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

12

3.1 非財務情報開示の要請

3.1.1 ESG投資の拡大

環境、社会、ガバナンスの取り組みを重視・選別する ESG 投資に対応した情報開示へ

の関心が高まっている。2006年に、国際的なイニシアチブとして国連責任投資原則(PRI)

が発足し、機関投資家が ESG の課題を投資の意思決定や所有慣習に組み込み、受益者の

ために長期的な投資成果を向上させることを提唱した。PRI に署名する金融機関数が年々

増えており、2017 年 4 月末時点の署名金融機関数は 1,714、運用資産額は 68 兆ドルであ

る(図表 10 参照)9。

日本では、130 兆円の運用規模を持つ年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、2015

年 9 月に PRI に署名して以来、ESG 投資に対応するための非財務情報開示への関心が急

速に高まった。GPIF では、2017年 7月に日本株を対象とした 3 種の ESG 指数を選定し、

国内株全体の 3%程度にあたる 1 兆円規模で運用を開始した10。今後、GPIF では ESG 投

資の拡大を図るとのことから、国内大手企業を中心に ESG 関連の情報開示の取り組みが

進むだろう。

図表 10 PRI 署名機関数と運用資産額の推移

(出所)UNPRI 資料を基に富士通総研作成

9 2018年 1 月 18 日現在、署名金融機関数は 1905 まで増加している(https://www.unpri.org)

10 http://www.gpif.go.jp/operation/pdf/esg_selection.pdf

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1600

1800

0

10

20

30

40

50

60

70

80

Apr-06 Apr-07 Apr-08 Apr-09 Apr-10 Apr-11 Apr-12 Apr-13 Apr-14 Apr-15 Apr-16 Apr-17

運用資産額 署名機関数

Page 16: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

13

3.1.2 証券取引所による要請

海外の証券取引所では、上場条件に非財務情報開示を義務付ける例が増えている。欧米

で始まったこの動きは、最近では、香港や上海、シンガポール、クアラルンプール、サン

パウロ、ヨハネスブルクなど新興国の証券取引所にも広がっている。上場企業の ESG 情

報の透明性と持続可能な投資の普及のために、国連が 2009 年に立ち上げた持続可能な証

券取引所(SSE)イニシアチブには、2018 年 1 月 9 日現在、62 か国 68 証券取引所が参

加している11。このうち 30 の証券取引所では、上場企業向けの ESG報告ガイダンスを策

定している12。日本国内では、上場規則上の義務にあたらないコーポレートガバナンスコ

ードがある程度で、非財務情報開示は上場条件になっていないが、2017 年 12 月 6 日に日

本取引所グループが SSE イニシアチブに参加したこともあり13、今後、情報開示の要請に

対する具体的な動きが出る可能性がある。

3.1.3 政府による義務付け

前述の“Carrots & Sticks”2016年版によれば、383 の非財務情報関連の施策のうち、

政府による規制は 150 に及ぶ。特に EU では、2003 年の EU 会計法現代化指令により、

上場企業は財務情報に加えて、環境問題及び従業員問題を含む非財務の重要業績評価指標

(KPI)の開示が求められるようになり、EU 各国で法制化が行われた。さらに、EU で

2017年 1月から適用された非財務情報開示指令では、域内の従業員 500人以上の企業は、

17年 1月 1日を含む会計年度に非財務情報を開示することが義務付けられた。対象企業は

6,000 社を超える。日本企業の現地法人も、従業員 500 人以上かつ域内で株式上場してい

れば対象となる。日本国内では、会計報告に準じるレベルでの非財務情報開示の義務付け

はない。

3.1.4 ガイドライン等の整備

グローバル企業の間では、非財務情報の開示要請に関する各地の動向を把握するニーズ

が高まっている。持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)は、2017 年 9 月に

60か国超、1,600以上の非財務情報開示に関する情報の多言語対応オンラインプラットフ

ォーム “The Reporting Exchange”を開始した。

非財務情報のガイドラインと言えば、国際 NGO の Global Reporting Initiative(GRI)

14が策定しているガイドラインが、90 か国以上で数千社の企業に参照されており、事実上

の国際標準となっている。2016年 10 月に新たに公開された「GRI スタンダード」が 2018

11 http://www.sseinitiative.org/

12 SSEイニシアチブによれば、2017 年 12 月末現在、イニシアチブ非会員を含めて 34 の取引所がガイ

ダンスを策定しているとのこと(http://www.sseinitiative.org/esg-guidance/)

13 http://www.jpx.co.jp/corporate/news-releases/0070/20171206-01.html

14 https://www.globalreporting.org/

Page 17: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

14

年 7 月から適用開始されるため、多くの企業がその対応に追われている15。GRI スタンダ

ードは、モジュール化によって内容の随時更新を可能としたことが大きな特徴であるが16、

他の国際的な枠組みとの連携が進められていることも注目される。例えば、2013 年に統合

報告のガイドライン「国際統合報告フレームワーク」を策定した国際統合報告評議会(IIRC)

17と協同して、統合報告における GRIスタンダードの活用について、検討を行っている18。

非財務情報開示のガイドラインの標準化・共通化が進行しているといえよう。

2030 年を目標年とする国連持続可能な開発目標(SDGs)を考慮した非財務情報開示に

ついても、ガイドライン等の整備が進んでいる。例えば、IIRC では、2017年 9 月に、統

合報告フレームワークの価値創造プロセスを活用した SDGs達成への貢献とコミュニケー

ションのあり方に関するレポートを公開した19。GRI でも、国連グローバル・コンパクト

とともに、企業の SDGs 関連情報開示における GRIスタンダードの活用を検討しており、

2017年 9月にSDGs各ターゲットの企業情報開示に関するレポート20を発行したのに続い

て、2018 年に、企業の SDG 報告のためのハンドブックの発行を予定している21。

一方、国内では、2017 年 5 月に経済産業省が、企業と投資家の間の情報開示・対話の

ための指針として「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報と

無形資産投資-」を公開した22。この指針には、ESGに対する認識や、ESG・グローバル

な社会課題(SDGs等)の戦略への組み込みが明記されている。

3.2 非財務報告に関するグローバルな企業動向

非財務報告の取り組みは、グローバル大手企業を中心に進められてきたが、近年は先進

国だけでなく新興国などでも大手企業の非財務報告の取り組みが進んでいる。KPMG の調

15 現行の第 4 版ガイドライン(G4)は 2018 年 6 月末で効力が失われる。同年 7 月以降公開される非財

務報告は、GRI スタンダードを参照しなければ、GRI のガイドラインに準拠していることを宣言でき

なくなる。

16 GRI ガイドラインは、2000 年の初版から 1~2 冊のまとまったガイドライン文書として改版を重ねて

きたが、GRI スタンダードはモジュール化され、36 の分冊から構成されているため、全体の改版はな

く、必要に応じて分冊ごとに改訂されるため、情勢変化への迅速な対応が容易となる。

17 https://integratedreporting.org

18

https://www.globalreporting.org/information/news-and-press-center/Pages/GRI-works-with-IIRC-a

nd-leading-companies-to-eliminate-reporting-confusion.aspx

19 “The Sustainable Development Goals, integrated thinking and the integrated report”

(http://integratedreporting.org/wp-content/uploads/2017/09/SDGs_integratedthinking_and_integra

tedreport.pdf)

20 “Business Reporting on the SDGs: An Analysis of the Goals and Targets”

(https://www.globalreporting.org/resourcelibrary/GRI_UNGC_Business-Reporting-on-SDGs_Analy

sis-of-Goals-and-Targets.pdf)

21 “Business Reporting on the SDGs: A Practical Guide to Defining Priorities and Reporting” として

公開予定(https://www.globalreporting.org/information/SDGs/Pages/Reporting-on-the-SDGs.aspx)

22 http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170529003/20170529003.html

Page 18: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

15

査(2017)23によれば、Fortune Global 500 の上位 250社(G250)の 93%が企業責任(CR)

報告24を行っており、2011 年以降高い比率のまま安定しているが、49 か国を対象とした

各国上位 100 社合計 4,900社(N100 グループ)について見ると、2017 年の CR報告企業

の比率は 75%と G250 より低いものの相当高い値であり、2011 年調査の 64%と比べて上

昇している。国別でみると、イギリス、日本などの先進国だけでなく、インド、マレーシ

ア、南アフリカ、メキシコなどでも大手企業による CR報告の比率が 90%を超えている(図

表 11参照)。財務報告書に非財務情報を記載する傾向も強まっており、KPMG調査では、

G250 の 78%が年次財務報告に CR情報を含めており、2011 年調査の 44%から急増してい

る25。

図表 11 国別の上位 100 社の CR 報告比率ランキング(2017)

国名 CR報告比率

(上位 100社中)

非財務報告の要請

政府 証券取引所

規制 自主的 規制 自主的

イギリス 99%

日本 99%

インド 99%

マレーシア 97%

フランス 94%

デンマーク 94%

南アフリカ 92%

アメリカ 92%

メキシコ 90%

ノルウェー 89%

(出所)KPMG(2017)を基に富士通総研作成

(注)非財務報告の要請内の は、何らかの要請があることを示す

23 “The KPMG Survey of Corporate Responsibility Reporting 2017”

(https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/xx/pdf/2017/10/kpmg-survey-of-corporate-responsibilit

y-reporting-2017.pdf)

24 KPMGのレポートで用いられている「CR(Corporate Responsibility:企業責任)報告」の表記に準

じたもので、本報告書における「CSR報告」とほぼ同義である。

25 N100 グループ(2017 年調査)では 60%が年次財務報告に CR情報を含めている。2011 年調査データ

は不明だが、2015 年調査の比率 56%より増加している(同年調査の G250 の比率は 65%)。

Page 19: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

16

さらに、統合報告書を作成する企業も徐々に増加している。WBCSD が会員企業を対象

とした 2017年調査によれば、22%の企業が統合報告を行っており26、2016 年調査の 13%

から大きく増加している。また、前述の KPMG 調査でも G250、N100グループとも比率

はまだ 14%と低いが徐々に増加している。

3.3 日本企業の非財務報告の取り組み

3.3.1 国内企業の現状

日本国内でも、従来から CSR 報告等のかたちで非財務情報の開示への取り組みが普及

している。図表 12 は、東洋経済新報社「CSR 企業総覧 2018【ESG編】」(2017)に掲載

された国内主要企業 1,413 社における ESG 情報(CSR 報告等をイメージ)の開示状況に

ついて整理したものである。ESG情報を開示している企業が 674社(全体の 48%)、開示

予定・検討中の企業が 90 社(同 6%)であり、合わせて全体の 5 割を超える企業が ESG

情報を開示(予定)・検討中である。前年データと比較してわずかに比率が高くなっている

27。また、製造業(農林水産業、鉱業、建設業を含む)と非製造業を比較すると、製造業

の方が非製造業と比べて ESG 情報開示の取り組みが大きく進んでいる28。

図表 12 日本企業の ESG情報開示状況

(出所)東洋経済新報社「CSR 企業総覧 2018【ESG 編】」(2017)を基に富士通総研作成

(注)カッコ内の数値(比率)は、%以下の小数点四捨五入のために合計が 100 になると

は限らない。

26 http://www.wbcsd.org/Projects/Reporting/Reporting-matters/Resources/Reporting-Matters-2017

27 前年データ(「CSR企業総覧 2017【ESG編】」:対象企業 1,408 社)では、ESG情報開示企業が 656

社(47%)、開示予定・検討中の企業が 74 社(5%)。

28 脚注 25 と同様に、製造業、非製造業ともに、前年(製造業:開示 412 社(56%)、予定・検討中 29

社(4%)、非製造業:開示 244 社(36%)、予定・検討中 45 社(7%))と比べて増加している。

Page 20: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

17

近年、財務情報と非財務情報を合わせた統合報告を実施する企業の数が急速に増えてい

る。企業価値レポーティング・ラボの調べによれば、2013 年末時点で統合報告を実施して

いた企業は 100社に満たなかったが、2017年 11 月現在では 336社が統合報告を発行して

いる(図表 13 参照)29。前述の「CSR 企業総覧 2018」掲載 1,413社においても、260社

(全体の 18%)が統合報告を実施し、130 社(全体の 9%)が統合報告を予定・検討して

いる(図表 14参照)30。前述の ESG 情報開示と比べれば実施・検討企業の比率は低いも

のの、対象企業の 1/4を超える企業が、ESG情報と財務情報との統合という新たな取り組

みを実施・検討するということは、関心を持つ企業が少なくないといえよう。また、製造

業と非製造業を比較すると、ESG情報開示の場合と同様に、製造業の方が統合報告への取

り組みが進んでいる。

図表 13 統合報告発行企業数の推移

(出所)企業価値レポーティング・ラボ

29 「国内自己表明型統合レポート発行企業リスト 2017 年版(速報版)(2017 年 12 月 14 日更新)」

(http://cvrl-net.com)

30 前年データ(脚注 25 と同じ)では、統合報告実施企業が 234 社(17%)、予定・検討中の企業が 118

社(8%)であり、前年より増加している。

Page 21: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

18

図表 14 日本企業の統合報告実施状況

(出所)東洋経済新報社「CSR企業総覧 2018」(2017)を基に富士通総研作成

(注)カッコ内の数値(比率)は、%以下の小数点四捨五入のために合計が 100 になると

は限らない。

3.3.2 国内大手企業の取り組み状況

図表 15は、国内大手企業の取り組み状況を精査するために、2017 年のフォーブスグロ

ーバル 2000にランクインした日本企業 225 社について31、ウェブなどでの公開情報(2017

年 12 月末現在)を基に非財務情報の報告状況を調べたものである。対象企業の 78%にあ

たる 176 社が非財務報告を実施している32。

報告の種類でみると、CSR 報告を行っている企業が 114社(52%)と最も多いが、統合

報告を行っている企業も 102 社(45%)あった。環境報告を行っている企業は 23 社(10

社)にとどまっているが、CSR報告や統合報告の一部に環境分野の報告が含まれるケース

が多い。複数種の報告書を公開している企業は 57 社(25%)であり、その中では統合報

告と CSR報告の 2種類を公開している企業が 37社(16%)と最も多く、統合報告、CSR

報告、環境報告の 3 種類すべてを作成している企業も 6社(3%)あった。報告形態を一種

類に限定している企業としては、CSR 報告が 64 社と最も多く、全体の 28%を占めた。

CSR報告を行っている企業全体の 56%が CSR報告のみを公開していることになっており、

統合報告実施企業のうち統合報告のみに限定している企業の比率 51%に比べてやや高い

値となっている。

31 https://www.forbes.com/global2000/list/#country:Japan

32 年次報告を行っている企業を「実施している」と判断した。自社ホームページにて、CSRや環境に関

する考え方や取り組み情報などを非定期に発信している企業は「実施していない」とみなした。

Page 22: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

19

図表 15 フォーブスグローバル 2000 日本企業の非財務報告の状況

(2017 年 12 月末現在)

(出所)“Forbes Global 2000” (2017)と各社公開情報を基に富士通総研調べ

図表 16は、これら日本企業 225社の非財務報告の状況を、ランクの上位・下位を製造

業・非製造業の違いに分けてそれぞれ比較したものである。ランク別に見ると、上位企業

(1000位以内)104 社の 95%にあたる 99 社が非財務報告を行っているのに対して、下位

企業(1001位~2000位)121 社のうち非財務報告を行っている企業は 64%(77 社)にと

どまっている。また、製造業 108社と非製造業 117社を比較すると、製造業のほとんど(98%)

が非財務報告を行っているのに対して、非製造業で非財務報告を行っている企業の比率は

60%であった。業種とランクの組み合わせで見た場合、製造業では、ランクの上位と下位

で非財務報告企業の比率が変わらないが、非製造業では上位企業の 91%が非財務報告を行

っているのに対して、下位企業の非財務報告の比率が 39%と大きく低下している。

図表 17 は、ランク別・業種別に非財務報告の内容を詳しく見たものである。製造業の

場合、上位と下位の両グループとも、CSR報告を公開する企業が 7割弱で最も多く、統合

報告を公開する企業が 5 割超、環境報告を公開する企業が 2割未満というように、比較的

類似した状況であった。非製造業では、上位グループでは、統合報告を公開する企業が最

も多く、67%というように製造業より高い比率を示したが、CSR 報告を公開する企業は

52%にとどまった。一方、非製造業の下位グループの非財務報告は全般的に低調で、特に

Page 23: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

20

統合報告を公開する企業が 17%と極端に少なく、CSR 報告公開企業の比率 25%を下回る

というように、非製造業の上位グループと大きく異なる傾向を示した。

図表 16 フォーブスグローバル 2000 日本企業のランク別・業種別の非財務報告の状況

(2017 年 12 月末現在)

全体 フォーブスグローバル 2000 ランク

1位~1000位 1001位~2000位

全体 78% (176社/225社)

95% (99社/104社)

64% (77社/121社)

業種

製造業 98% (106社/108社)

98% (57社/58社)

98% (49社/50社)

非製造業 60% (70社/117社)

91% (42社/46社)

39% (28社/71社)

(出所)“Forbes Global 2000” (2017)と各社公開情報を基に富士通総研調べ

(注)カッコ内は、左が非財務報告企業数、右が対象企業数

図表 17 フォーブスグローバル 2000 日本企業のランク別・業種別の非財務報告の内容

(2017 年 12 月末現在)

(出所)“Forbes Global 2000” (2017)と各社公開情報を基に富士通総研調べ

Page 24: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

21

3.3.3 財務パフォーマンスとの関連

図表 18 は、前述のフォーブスグローバル 2000 日本企業において、非財務報告を行っ

ている企業と非財務報告を行っていない企業について、2012年 12月末時点の株価を 1 と

した場合の 2017 年 12 月末までの株価の平均値を示したものである。比較のために同期間

の日経平均とフォーブスグローバル 2000 日本企業全体の推移も合わせて示した。そもそ

もフォーブスグローバル 2000 にランクインした日本企業の株価は、当該 5 年間で 2.26倍

に増加しており、日経平均(同 2.19倍)より少し高いパフォーマンスを示している。非財

務報告を実施している企業と実施していない企業を比べると、非財務報告を実施している

企業の平均株価が 5 年間で 2.39 倍になったのに対して、非財務報告を実施していない企

業では同期間で 1.74倍と顕著な差が表れている。因果関係の説明は困難であるが、非財務

報告を実施している企業は、財務パフォーマンスが高い傾向にあるということができる。

図表 18 フォーブスグローバル 2000 日本企業の非財務報告の有無と株価の推移

(出所)“Forbes Global 2000” (2017)と SPEEDA を基に富士通総研作成

(注)2012 年 12 月末の株価を 1 とした場合の株価の平均値を示したもの(5 年間の株価

データがとれない企業は除いている)

Page 25: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

22

図表 19 フォーブスグローバル 2000 日本企業の株価年変化率平均の比較

(出所)“Forbes Global 2000” (2017)と SPEEDA を基に富士通総研作成

非財務報告と同様に、統合報告を実施している企業にも財務パフォーマンスが高い傾向

が見られている。図表 19 は、非財務報告の実施企業と未実施企業、統合報告の実施企業

と未実施企業のそれぞれのグループについて、過去 5 年間、過去 3年間、過去 1年間の株

価の年変化率の平均値を比較したものである33。非財務報告については、これらの 3 つの

期間のいずれにおいても、実施企業グループの平均値が未実施企業グループの平均値を大

きく上回っており、それぞれ 95%信頼区間において有意の差が得られた。統合報告につい

ても、同様に 3つの期間いずれにおいても、実施企業グループの平均値が未実施企業グル

ープの平均値を上回っており、非財務報告実施の有無を比較したケースよりも平均値の差

は小さいが、95%信頼区間において全て有意の差が得られている。

3.4 レポーティング・コミュニケーション戦略の検討に向けて

以上、述べてきたように、非財務情報開示の要請はグローバルに進行しており、日本国

内でも強制力のある施策は導入されていないものの、ESG投資の進行とともに、大手企業

を中心に非財務報告が活発に行われるようになり、近年は、統合報告を実施する企業が急

増している。

33(企業の合併などによって)株価データがとれる企業数は対象期間によって異なる。過去 5 年間のデー

タが取れる企業数は 213 社(非財務報告:実施 170 社+未実施 43 社、統合報告:実施 99 社+未実施

114 社)。過去 3 年間のデータが取れる企業数は 220 社(非財務報告:実施 173 社+未実施 47 社、統

合報告:実施 100 社+未実施 120 社)。過去 1 年間のデータが取れる企業数は 225 社(非財務報告:実

施 176 社+未実施 49 社、統合報告:実施 102 社+未実施 123 社)。

Page 26: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

23

統合報告については、まだまだ試行的な部分もあり、見てきたように統合報告への集約

を図る企業もあれば、環境報告や CSR 報告を個別に作成・公開している企業もある。統

合報告への集約については、社内リソースの合理化というメリットがある一方で、そもそ

も投資家偏重になりかねないため、目的と社内リソースを勘案したレポーティング・コミ

ュニケーション戦略を検討する必要があるだろう。工場・事業所における環境影響等の情

報開示に端を発した環境報告の長い歴史を持つ製造業の場合、CSR報告に着手し、さらに

統合報告という流れで検討を行う企業が少なくない。統合報告に集約して、詳細な ESG

情報をホームページ等での開示に切り替えるか、個々に報告書を作成し続けるかは、企業

によって判断が分かれているようだ。非製造業の場合は、製造業に比べると環境報告・CSR

報告の取り組みが進んでいない傾向があるため、大手企業を中心に、年次報告書に非財務

情報を付加して統合報告にする、あるいは CSR 報告を統合報告に集約する企業が多いよ

うだ。

非財務情報を開示している企業や統合報告を実施している企業は、企業価値(財務パフ

ォーマンス)が高いことが示された。非財務報告や統合報告を行っているから財務パフォ

ーマンスが高いのか、あるいは財務パフォーマンスが高いから非財務報告や統合報告を行

っている(余裕がある)のか、という因果関係は不明である。しかし、投資家からすれば、

非財務報告や統合報告を行っている企業を選択しやすいという状況であり、企業にとって

資金調達面のメリットが見いだせよう。さらに、財務情報にとどまらない企業の広範な取

り組みを開示し、かつ財務パフォーマンスが高い企業であるということになれば、従業員

のモチベーション向上にもつながり、優秀な人材の離職を低減するとともに、外部からの

人材獲得にも寄与するなどのメリットも考え得る。

非財務情報開示さらには統合報告に取り組む企業が増え、これらの取り組みと財務パフ

ォーマンスとの相関があることを踏まえると、今後は、非財務情報開示(あるいは統合報

告)について、ステークホルダーからの要請にいかに対応するかという視点だけではなく、

企業価値の向上につなげるためのコミュニケーションツールとしていかに活用するかとい

う視点が重要になってくるであろう。つまり、レポーティング・コミュニケーション戦略

の一環として、非財務情報開示の活用を検討することが望まれている。また、非財務情報

開示の取り組みは大手企業を中心としたものであるが、情報開示の対象範囲がバリューチ

ェーンに及ぶことを考えれば、バリューチェーン上にある中小企業にも影響を及ぼす。中

小企業自身が非財務情報を一般公開しない場合でも、バリューチェーン全体の非財務情報

の開示を行おうとする取引先の要請(あるいは調達条件)に対応して、非財務情報を取引

先に報告することが求められるケースが増えるだろう。

Page 27: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

24

4 おわりに

本レポートでは、サステナブルでレジリエントな企業活動を、危機対応力と社会課題対

応力をもって業績向上と企業価値向上を両立する取り組みとして位置づけ、企業経営(内

部管理)と情報開示の切り口から、現状とあるべき姿について述べてきた。内部管理につ

いては、ショック(急激なビジネス環境の変化)に適応するためのレジリエントな企業活

動と、ストレス(社会や環境の緩やかな変化)に適応するためのサステナブルな企業活動

の整合性を確保するために、それぞれのリスク視点の共通化、つまり「将来予見の情報・

文脈の共有」を起点とした取り組みを行うべきであるとした。特に組織がサイロ化してい

る大企業においては、まず、自組織が置かれているビジネス環境と社会的責任を同じ背景・

文脈で理解するリスク視点の共通化(Step 1)を行い、事業部門と CSR 部門がそれぞれの

ミッション遂行におけるリスクアセスメントを踏まえて個別に戦略を検討したうえで

(Step 2)、事業戦略と CSR戦略の整合性を確保するためのレビューを行う(Step 3)こ

とが重要であることを指摘した。

ISO31000(リスクマネジメント)と ISO26000(社会的責任)の両ガイダンスの統合的

な活用については、より詳細な検討が必要である。2.3.2に紹介したとおり、ISO31000と

ISO26000 のフレームワークには、共通点が多い。サステナブルでレジリエントな企業活

動を実現するマネジメントシステム構築のためには、少なくとも ISO31000 と ISO26000

に対応したそれぞれの社内取り組みに関する情報共有が極めて重要であり、可能であれば

両者を統合したようなマネジメントシステムの構築も考えうる。とはいえ、現時点で、具

体的な取り組みを行っている事例が見つかっておらず、仮説にとどまっているため、今後、

具体的事例の発掘あるいは試行的取り組みを行うことで、効果を検証し、課題を抽出する

ことなどが必要と考えられる。

情報開示については、非財務報告を要請するグローバルな動きの強まりに対応して、グ

ローバル大手企業だけではなく、新興国などの大手企業においても非財務報告の取り組み

が進んでいる。日本国内でも ESG 投資の進行に触発されるかたちで、大手企業を中心に

非財務報告が活発に行われ、統合報告を実施する企業も急増しているが、試行錯誤の域を

出ていない企業が少なくない。今回調査対象とした 2017年のフォーブスグローバル 2000

にランクインした日本企業においては、統合報告を含めた非財務情報開示の取り組みと企

業価値(財務パフォーマンス)に相関があることが示されたことから、単なるステークホ

ルダーからの要請への対応にとどまらない企業価値創出のためのコミュニケーション戦略

の検討が必要であることを指摘した。

サステナブルでレジリエントな企業活動を推進するためのレポーティング・コミュニケ

ーション戦略の実施に向けては、まず、業種・ステークホルダー・企業規模に応じた情報

開示戦略を検討したうえで、コミュニケーションを通じた企業のレジリエンス向上を検証

することが重要である。そのためには、クライシス対応と中長期的なリスク対応の双方の

Page 28: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

25

視点から、サステナビリティ情報とリスク情報の整合を図りながら、 ISO31000 と

ISO26000 に対応したマネジメントシステムを構築しながら、情報開示・コミュニケーシ

ョンのあり方を検討することが重要であり、さらには、ステークホルダーとの相互理解に

基づくエンゲージメント・協働34への展開が期待される。これらの取り組みを進めるため

には、企業活動のパフォーマンス評価が不可欠であろう。そのためには、プロジェクトや

製品・サービスなど個々の事業レベルのパフォーマンスと企業レベルでのパフォーマンス

のそれぞれについて、例えば、SDGs 等の視点を踏まえた非財務指標を含む評価を試行し

ながら、ステークホルダーとの円滑なコミュニケーションを図り、長期的な企業価値の向

上を実現するための取り組みを検討することが望まれよう。非財務分野を含むパフォーマ

ンス評価のあり方、および社会課題解決型のビジネス開発のあり方などについては、次の

研究課題としたい。

企業の社会性、すなわち、企業活動に伴う環境・社会・経済に対するネガティブな影響

とポジティブな影響の両面について、ステークホルダーの関心は高まるばかりである。一

方、短期的及び中長期的視点から自社のリスクやクライシスのマネジメントに取り組むこ

とで企業価値の向上を図るとともに、本業を通じた社会課題解決への貢献によって持続的

に企業競争力を維持・向上させるための取り組みに着手する企業も増えている。現在起き

ている事象は、個別に検討・実施されている様々な取り組みを、統合的な視点で捉えよう

とする動きである。言い換えれば、財務パフォーマンスと非財務パフォーマンス、さらに

は短期的視点による事業活動と中長期的視点による事業活動を、それぞれ関連付けながら

統合的に把握・管理し、ステークホルダーとの相互理解を深めていくための取り組みであ

り、そのための試行錯誤が続いている。本レポートが、サステナブルでレジリエントな活

動を目指す企業の戦略策定、ならびに政府、国際機関、投資家などによる企業との協働及

び支援方策を検討する際の一助となれば幸いである。

34 ISO26000 の第 5 章では、ステークホルダーエンゲージメントの重要性が強調されている。ステーク

ホルダーの意見を把握し、自らの決定や行動に反映させるための目的を持った対話や、ステークホルダ

ーを巻き込んだ取り組みなどを意味する。

Page 29: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

26

参考文献

生田孝史 2017 「SDGs時代の企業戦略」富士通総研『研究レポート』No.437

経済産業省 2017 「価値協創のための統合的開示・対話ガイダンス-ESG・非財務情報

と無形資産投資-」

http://www.meti.go.jp/press/2017/05/20170529003/20170529003.html

東洋経済新報社 2017 「CSR企業総覧 2018【ESG編】」

富士通総研経済研究所レジリエント社会研究チーム 2018 「クライシス対応とレジリエン

トな社会形成」富士通総研『研究アウトルック』

Forbes 2017, “2017 Forbes Global 2000”,

https://www.forbes.com/global2000/list

IIRC 2017, “The Sustainable Development Goals, integrated thinking and the

integrated report”,

http://integratedreporting.org/wp-content/uploads/2017/09/SDGs_integratedthinki

ng_and_integratedreport.pdf

KPMG, GRI, UNEP, and Centre for Corporate Governance in Africa 2016, “Carrots &

Sticks: Global trends in sustainability reporting regulation and policy, 2016

edition”,

https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/pdf/2016/05/carrots-and-sticks-may-20

16.pdf

KPMG 2017, “The road ahead: The KPMG Survey of Corporate Responsibility

Reporting 2017”,

https://assets.kpmg.com/content/dam/kpmg/xx/pdf/2017/10/kpmg-survey-of-corpor

ate-responsibility-reporting-2017.pdf

Marks and Spencer plc 2017, “ANNUAL REPORT & FINANCIAL STATEMENTS

2017”

Shell International BV 2013, 「ニューレンズシナリオ 移行期にある世界への新たな

展望」

WBCSD 2017, “Reporting Matters: Striking a balance between disclosure and

engagement”,

http://www.wbcsd.org/Projects/Reporting/Reporting-matters/Resources/Reporting-

Matters-2017

Page 30: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

研究レポート一覧

No.453 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 生田 孝史藤本 健

(2018年1月)

No.452 シビックテックに関する研究 -ITで強化された市民と行政との関係性について-

榎並 利博 (2018年1月)

No.451 移住者呼び込みの方策 -自治体による人材の選抜- 米山 秀隆 (2018年1月)

No.450 木質バイオマスエネルギーの地産地消における 課題と展望 -遠野地域の取り組みを通じて-

渡邉 優子(2017年12月)

No.449 観光を活用した地域産業活性化 :成功要因と将来の可能性

大平 剛史(2017年12月)

No.448 結びつくことの予期せざる罠 -ネットは世論を分断するのか?-

田中 辰雄浜屋 敏

(2017年10月)

No.447 地域における消費、投資活性化の方策 -地域通貨と新たなファンディング手法の活用-

米山 秀隆 (2017年8月)

No.446 日本における市民参加型共創に関する研究 -Living Labの取り組みから-

西尾 好司 (2017年7月)

No.445 ソーシャル・イノベーションの可能性と課題 -子育て分野の日中韓の事例研究に基づいて-

趙 瑋琳 (2017年7月)

No.444 縮小まちづくりの戦略 -コンパクトシティ・プラス・ネットワークの先進事例 米山 秀隆 (2017年6月)

No.443 ICTによる火災避難の最適化 -地域・市民による自律分散協調システム-

上田 遼 (2017年5月)

No.442 気候変動対策分野における新興国市場進出への企業支援 -インドにおける蓄電ビジネスを例に-

加藤 望 (2017年5月)

No.441 シニアの社会参加としての子育て支援 -地域のシニアを子育て戦略として迎えるための一考察 森田麻記子 (2017年5月)

No.440 産業高度化を狙う「中国製造2025」を読む 金 堅敏 (2017年5月)

No.439 エビデンスに基づくインフラ整備政策の実現に向けて ~教育用コンピュータの整備をモデルケースとした考察~

蛯子 准吏 (2017年4月)

No.438 人口減少下の地域の持続性 -エリアマネジメントによる再生-

米山 秀隆 (2017年4月)

No.437 SDGs時代の企業戦略 生田 孝史 (2017年3月)

No.436 電子政府から見た土地所有者不明問題 -法的課題の解決とマイナンバー-

榎並 利博 (2017年1月)

No.435 森林減少抑制による気候変動対策 -企業による取り組みの意義-

加藤 望(2016年12月)

No.434 ICTによる津波避難の最適化 -社会安全の共創に関する試論-

上田 遼(2016年11月)

No.433 所有者不明の土地が提起する問題 -除却費用の事前徴収と利用権管理の必要性-

米山 秀隆(2016年10月)

No.432 ネット時代における中国の消費拡大の可能性について 金 堅敏 (2016年7月)No.431 包括的富指標の日本国内での応用(一) 人的資本の計測とその示唆 楊 珏 (2016年6月)

No.430 ユーザー・市民参加型共創活動としてのLiving Labの現状と課題

西尾 好司 (2016年5月)

No.429 限界マンション問題とマンション供給の新たな道 米山 秀隆 (2016年4月)

http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/report/research/

研究レポートは上記URLからも検索できます

Page 31: No.453 January 2018 - Fujitsu Global 1346-9029 研究レポート No.453 January 2018 サステナブルでレジリエントな企業経営と情報開示 上席主任研究員 生田

富士通総研 経済研究所

〒105-0022 東京都港区海岸 1 丁目 16 番 1 号(ニューピア竹芝サウスタワー) TEL.03-5401-8392 FAX.03-5401-8438

URL http://www.fujitsu.com/jp/group/fri/