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「ここ - プリントに 一、はじめに 昭和五十六年三月に大学を卒業。以来へ 工業高等学校では六年、現在の勤務校で母校 県立観音寺第一高等学校では七年めの勤務にな 前任校での一年め、初めて長編小説の一部として ころ」を授業するにあたり、長い小説を興味を持って 通させるにはどうすればよいのかへ その方法がわからず 困っていた。国語科の主任の先生にご相談したところへプ リントによる課題学習で「こころ」を読み抜く方法を具体 的に教えてくださった。これまでに「こころ」 の授業は' 前任校で三回/,/*co t--O¥、現在の勤務校で四回( JX'-'・Co・*蝣*) の七回行っている。その間へ採 書が変わったり'採録部分が一部変更したりで'内容読解 プリントは'削ったりつけ加えたりの手直しをして現在に 至っている。 今回は'プリントによる個々の課題学習を中心とした「こ ころ」の授業の実際をまとめさせて ントによる学習方法をよりよいものに いか'またへプリント以外の別の方法で「 切ることはできないかという患いからである。 が抱えている問題点を明らかにLtより充実し の授業への契機としたいと思う。 二へ一年間に扱う小説及び小説関連教材 (昨年度の場合) 一学期 山月記 (中島敦) 二学期 (竹西寛子) こころ (夏目淑石) 三学期 (評論)小説とは何か (三島由紀夫) ilH 寒=i=& 「山月記」・「蘭」 (森鴎外)

「こころ」 の学習指導 · が抱えている問題点を明らかにLtより充実した「こころ」切ることはできないかという患いからである。 現在の授業いか'またへプリント以外の別の方法で「こころ」を読みントによる学習方法をよりよいものに高めることはできなころ」の授業の実際をまとめさせていただいた。File

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「こころ」 の学習指導

- プリントによる課題学習を中心に -

一、はじめに

昭和五十六年三月に大学を卒業。以来へ香川県立多度津

工業高等学校では六年、現在の勤務校で母校でもある香川

県立観音寺第一高等学校では七年めの勤務になる。

前任校での一年め、初めて長編小説の一部としての 「こ

ころ」を授業するにあたり、長い小説を興味を持って読み

通させるにはどうすればよいのかへ その方法がわからず

困っていた。国語科の主任の先生にご相談したところへプ

リントによる課題学習で「こころ」を読み抜く方法を具体

的に教えてくださった。これまでに「こころ」 の授業は'

前任校で三回/,/*co t--O¥、現在の勤務校で四回(s

JX'-'・Co・*蝣*) の七回行っている。その間へ採用教科

書が変わったり'採録部分が一部変更したりで'内容読解

プリントは'削ったりつけ加えたりの手直しをして現在に

至っている。

今回は'プリントによる個々の課題学習を中心とした「こ

藤 田 美 子

ころ」の授業の実際をまとめさせていただいた。このプリ

ントによる学習方法をよりよいものに高めることはできな

いか'またへプリント以外の別の方法で「こころ」を読み

切ることはできないかという患いからである。現在の授業

が抱えている問題点を明らかにLtより充実した「こころ」

の授業への契機としたいと思う。

二へ一年間に扱う小説及び小説関連教材

(昨年度の場合)

一学期 山月記  (中島敦)

二学期 蘭    (竹西寛子)

こころ  (夏目淑石)

三学期 (評論)小説とは何か

(三島由紀夫)

ilH

寒=i=&

「山月記」・「蘭」

(森鴎外)

小説の読み方を学ぶ。

「寒山拾得」

行間を読むことを学ぶ。

三へ 「こころ」の指導目標

- 長編小説を表現に即して'主体的に読み抜く。

2 人問についてへ人間の生き方についてへ自分の問題

として考える。

四も 「こころ」の指導の工夫

主体的に文章と関わらせ'表現に即した正確な読み取り

を自分の言葉で書き表すことができるようにさせるためにへ

プリントによる課題学習を中心とした指導を行う。

(プリント)

。感想・時・場所・登場人物とその関係・事件(

資料①)

。感想から(注-)           (資料②)

。内容読解 こころS-S^   (資料③~⑥)

こころ 〔まとめ〕      (資料⑦)

。手紙・日記・Kが自殺した原因・激石が書きたかっ

たこと  (資料⑧)

。「記憶して下さい。私はこんな風にして生きてきた

のです。」

。手紙・日記等から

(汽料⑨)

(資料⑩~⑫)

五'内容読解プリント作成上の留意点

(こころs - s^ 〔まとめ〕資料③~⑦)

- プリントの枚数は'四~五枚までとする。1興味・

意欲の持続

2 1枚めのプリントの問題数は、四・五間までとする。

二枚めからも八問ていどとする。1興味・意欲

3 本文を引用しての問いの際へ ページ・行数は示さず'

場面の番号(①~⑫) で示すこととする。1全体を

繰り返し読ませる。

4 幅の広い問いへ狭い問いへ 答え方を自分の表現であ

るいは抜き出してというように'問いにバリエー

ションを持たせ、通宝一枚の問題の中に入れる。1

読解力の差・意欲の差に対応

六へ 「こころ」の指導計画 (十四時間)

第一・二時 音読する。各自、感想・疑問を持って、そ

れを文章表現できる。

第三時 感想・疑問点を整理する。登場人物とその関係へ

あらすじをまとめられる。

118

第四時 舞台設定・登場人物とその関係・事件について

発表し、小説のアウトラインをつかむことができる。

第五時~第十二時 内容読解プリントによりながらへ小

説を表現に即して読み取りへその内容を自分の言葉

で適切に書き表すことができる。

第十三時 手紙・日記を書くことでt Kの自殺の原因・

主題について考えを深めることができる。

第十四時 主題について考え、人間についてへ人間の「こ

ころ」についてへ生き方について、自分の問題とし

て捉え直すことができる。

※第三時~第十二時の問に'クラスにより二へ三時間の

差が出ることがある。十一~十四時間ていどで終える。

七へ「こころ」の指導過程

3 2 1 時

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119

八、反省と今後の課題

(成果と考えられる点)

川「同じです。」「わかりません。」は許されず'自分が

主体的に文章と関わり'本気で取り組まなければなら

ない。

脚軌道に乗ってくると、×をつけられて腹を立てながら

もへ正解にたどりつこうと懸命に読みへ書く姿が見ら

れるようになる。そのような生徒は'充足感・達成感

を味わいへ学習後「しんどかったが印象に残る授業」

という言い方をする。

㈱一人ひとりの生徒の表現をていねいに'大切にみ.てい

くことができる。生徒への理解も深まる。

(例) こころ」* (資料⑥)

「滑る」は'私のどんな行動を表しているか。

○ ○ △ ×

Kをだまして

Kに黙って

Kの気持ちを知りながらKに黙って

Kを出し抜いて

(今後の課題)

川感想をどのように生かしてい-か。

1人ひとりの感想を授業の中で全体のものとして生

かしていぐことはできないか。単なる紹介に終わらず'

さらに考えを深めさせていくにはどうすればよいか。

㈱プリントに取り組む意欲をいかに喚起し、持続させる

mプリント学習の正否の鍵は'学習者の意欲にあると

いっても過言ではない。またへ この場合へ 「こころ」

という小説の魅力に負うところが極めて大きい。プリ

ントの形式・問題の質などプリントそのものに関してへ

個人指導と一斉指導の取り入れ方に関して工夫できな

 

 

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x

㈱プリントの進度の違いから起こる不都合をどのように

解消するか。

・時間のかけ方

全員が無理なく取り組める時間を確保するととも

にへ飽きさせず'だれさせず。

・継続への意欲

・個人への個別の助言・指導。

・それぞれの問いのポイントを明確にLへ一枚のプ

リントの中での問いの扱いの軽重を見定めておく

こと。

・口頭での質問を取り入れへ安易に'早-終えた友

人に頼るのを防ぐとともにへ不十分なところを補

う機会を作ること。

㈱個人指導と一斉指導との組み合わせへバランスをどの

ようにするべきか。

-120-

プリント学習を通して'一人ひとりの中での読みは

深まっていくのだが'個人のすぐれた読解・考え・表

現を全体のものとして広げていくことができないか。

㈲「こころ」の学習を終えて一斉授業の形にもどした時へ

互いにへ ふだんのリズムを取りもどすのに時間がかか

る。それが'何を意味するのか。

九、おわリに

夏の研究会で、これまでの「こころ」の授業をまとめ発

表する機会に恵まれた。その折へ現在の授業の改善点につ

いてへ具体的に'貴重なご指導・ご助言をいただくことが

できた。この秋へ 八回めの授業を実施するにあたりへ その

中の一つからでも取り入れてt よりダイナミックな授業を

めざしたいと思った。

今回改めたのは'次の点である。

‖「感想と実際の授業とをより効果的に結びつけ高めるた

めにへ感想のとり方を工夫するとよい。たとえばへ感想

とは別にへ疑問点・考えてみたいことを出させる。」

⑪一読後の感想を書-用紙とともにへ「疑問点・考えてみ

たいこと」を書くための五枚つづりの用紙を渡した。

一枚一枚に場面番号と自分の名前を書く欄を作ってお

きへ一枚に一項目書かせることとした。どんどん書き

進める子には'次の用紙を渡していった。

口「課題プリントの問題の構造化を図るとよい。またへ提

示した問題に、どの生徒から出された問題点かわかるよ

う名前を添えるとよい。」

⑪まず、Hで出てきた疑問点・考えてみたいことを項目

別にまとめる。次にへ昨年までの課題プリントの問題

と生徒から出てきたものとを比較検討し'適宜問題を

差し替えた。その際へ生徒から一番多-考えてみたい

こととして出てきた「Kの自殺の原因と決意の時期」へ

それに関連して「私の心理」に迫っていける問題であ

るかどうかを吟味しながら取捨選択した。「襖」・「黒」

の持つ意味についても'内容読解プリントの中に入れ

ることとした。そしてへ問題点として取り上げた生徒

の名前をプリントの中に明示した。

(授業の実際)

実際の授業において'これまでは'各自で課題プリン

トを進め添削という方法をとっていたが'今年は'_四

枚の内容読解プリントを'一枚につきほぼ二時間の

ペースで、全体で進めていくこととした.初めに全員

にプリントを配り、個々に考えさせる。ポイントとな

るい-つかの問いについてはへ全体で意見を出し合っ

てまとめへ脇を囲む問いについてはへ各人でまとめ添

削するという方法をとった。そうすることによってへ

問題を解-スピードをはじめとする生徒の個人差に幾

分対応できたように思う。一枚のプリントを構造化し

-121-

て作ることができなかったので、全体で取り上げることへ

ぎたへその取り上げていく順序によりへ構造化を意識させ

たいと患った。最後にまとめとして'五枚めのプリントで

「私・K・奥さん・お嬢さんの人物像」を整理し'「Kの自

殺とその決意の時期」を考えた。またへ「私は卑劣か。」、「お

嬢さんの気持ちは私とKのどちらにあったのか。」へ「淑石が

書きたかったこと」についての考えを発表させて授業を終

えた。所要時間数は'昨年までとほぼ同じである。

授業を終えた今思うことは'生徒が一番関心を持った「K

の自殺の原因と決意の時期」のところから切り込んで授業

を展開できなかったかtということである。内容を順を追っ

て少しずつ正確に読み進める授業と、感動を丸ごと味わわ

せる授業との問で揺れながらへ文学的文責においては'感

動を味わわせる授業こそめざすべき道ではないかとの思い

を強くしている。道のりは'まだまだ遠い。

(注-)

長編小説「こころ」(夏目淑石) の学習指導

I感想文を中心としたグループ学習-

(平野嘉久子先生)

(国語教育研究 第二十六号中

広島大学教育学部光糞会)を参考にさせていただい

た。

(香川県立観音寺第二ロ同等学校)

(資料①)

え rD氷 る

122

蝣("t-へ )且(  )t e名へ

 

 

▽印象

▽私(先生) について

・人柄・性格

その原因

その是非

・妻への告白

・もし自分が「私」の立場で

あったなら

・Kになぜ自分で言わなかっ

たのか

▽Kについて

・人柄・性格

その原因

その是非

・退書に書かなかったのは

・「私」のお嬢さんへの愛に

気づかなかったのか

・もし自分が「KLの立場で

あったなら

▽お城さんについて

・Kと私とどちらを愛してい

hs

(資料②)

感想から

・聞かされないほうがよかっ

たか

▽明治の精神について

殉死について

▽愛か友情か

▽人間について

▽表現の特色

E>淑石について

(資料③)

)〟

★何回も繰り返して読

むことで'今へ 心の

中にあるぼんやりと

したものを'言丑に

表現していこう。

★「こころ」の全文を

読んでみよう。

★「友情」(武者小路実

篤)と読み比べるの

もおもしろい。

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サ完ィ.・J上E.すく、上土.まいわく蝣>蝣サ・手ォ.ォ・  可51り1・ナ'pよる・◆丹41杓-い

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(資料④)'

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(資料⑤)

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(資料⑥)

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(資料⑦)

(資料⑧)

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(資料⑨)

記憶して下さい。私はこんな風にして生きてきたのです。

一年締ってもKを忘れる邪の出来なかった私の心は常に不安でした。私はこの不安を駆逐するた

めに需物に溺れようと力めました。私は猛烈な勢をJって勉放し始めたのです。そうしてその結果

を世の中に公けにする日の来るのを待ちました。けれども無理に目的を野teて'無理にその日的の

ヱ'

述せられる日を持つのは嘘ですから不愉快です。私はどうしても事物の蝣V?かに心を埋めていられな

-なりました。私は叉腕組をして世の中を眺めだしたのです。

こん_こち

妻はそれを今日に困らないから心に弛みが出るのだと観察していたようでした。妻の家にも親子

二人位は坐っていてどうかこうか暮して行ける財燕がある上に'私も職業を求めないで差支のない

境.qにいたのですから'そう思われるのも尤もですC私も幾分かスポイルされた気味がありまし・L<

叫-Jfiii^-t?ri'C;-'oT;-ijr^'十・ヽ   はなかっー・r¥jす.H、JにnLかIt.

当時の私は'他の頼みにt?らない事をつ-づ-感じたには相違ありませんが'他を悪く取るだけあっ

て'自分はまだ確な気がしていました。世間はどうあろうともこの己は立派な人間だという信念が

何処かにあったのです。それがKのために美都に破壊されてしまって'自分もあの叔父と同じ人間

 

J

4

だと恵誠した時へ私は急にふらふらしました。他に愛想を尺、かした私は'自分にも愛想を尽かして

動けなくなったのです。

酒は止めたけれどもへ何もする気にはt・1りませんO仕方がないから書物を読みます。然し読めば

読んだV?りで、打ち遭って置きます。私は妻から何の為に勉強するのかという質問を度々受けまし

たO私はただ苦笑していました。然し腹の底では'世の中で自分が点も信愛しているたった一人の

人間すらへ自分を理解していないのかと思うと、悲しかったのです。理解させる手段があるのに、

せl_iく

如解させる男気が出せないのだと思うと益悲しかったのです。私は寂巽でしたO何処からも切り

離されて世の中にたったl人住んでいるような気のした事も能くありました。

同時に私はKの死凶を掠り返し繰り返し考えたのです。その当座は頭がただ恋の一字で支配され

むし

ていた所為でもありましょうが'私の観察は寧ろ的単でしかも雨紋的でした。Kは正しく失恋のた

めに死んだものとすぐ極めてしまったのです。しかし段々落ち付いた気分で'同じ現象に向って見

ると'そう零易-は解決が着かないように思われて来ました。現実と刑憩の衝突' - それでも

まだ不充分でした。私は仕舞にKが私のようにたったl人で淋しくって仕方がなくなった結果へ急

・・-.I..t

に所決したのではなかろうかと疑かい出しましたOそうして又標としたのです。私もKの歩いた路

をt Kと同じように辿っているのだという予党が'折折風のように私の胸を桟過り始めたからです。

妻はある時へ男の心と女の心とはどうしてもぴたりと一つになれないものだろうかと云いました。

私はただ若い時ならなれるだろうと唆味な返事をして武きました。妻は自分の過去を振り返って眺

r

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めているようでしたが'やがて徽かな樹息を洩らしました。

私の胸にはその時分から時々恐ろしい影が閃めきました。初めはそれが偶然外から盤って来るの

ですp私はS<ろきました。私はぞっとしました。然ししばら-している中に'私の心がその物凄い

閃めきに応ずるようになりました。しまいには外から来ないでもへ自分の胸の底に生れた時から潜

んでいるものの如-に思われ出して来たのです。

126

私はただ人間の罪というものを探-感じたのです。その感じが私をKの基へ毎月行かせます。そ

の感じが私に妻の母の前護をさせます。そうしてその感じが妻に優しくして遜れと私に命じますO

私はその感じのためにへ知らt・1い路傍の人から鞭たれたいとまで思った事もあります。こうした段

酢を段々拝過して行-うちに'人に鞭たれるよりも'自分で自分を鞭つ可きだという気になります。

私は仕方がないからへ死んだ気で生きて行こうと決心しました。

私がそう決心してから今日まで何年にt・1るでしょう。私と妻とは元の通り仲好く幕して来ました。

私と姿とは映して不幸ではありません。幸福でした。然し私の斬っている一点へ私に取っては容易

i?'サ人こOI<v 正には芯蝣JZU-J二り・kJたらしいQPす..それ^蝣;-r蝣*/Leとに=して∫(i=に

図姻EEESH月E33

=h付してTr,い。Lはこ蝣^i*虹_二叶さて4たのでt>-i*めてn力にS蝣」!蝣蝣"!hr-. 'Jw'C-^上l

所に郊外を散歩した鴫も'私の災分に大した変りはなかったのです。私の後には何時でも思い影が

活っ付いていましたO私は妻のために'命を引きずって桝の巾を歩いていたようV*-Jのです。売方

?!ササしてNへ7もり蝣J~-1fJLu"rl月にiJっv-:まi:c---jこヘムも・r->蝣)蝣*ー・yL蝣i. '*:は、哩を叫

いたのではありません。全くォ蝣つ気でいたのです。秋が去って'冬が来て'その冬が尽きても、きっ

と全う積りでいたのです。

じほじの山上d-'HE^i上・蝣JJにS'iiiN-に〓する  です・sT-.ti.'rはl"t一-'Civi:とLt

知して下さい。私は妻には何にも知らせた-t・.いのですQ妻が己れの過去に対してもつ記憶を、な

るべく地目に保存して置いて通りたいのが私の唯一の希望なのですからへ私が死んだ後でも'妻が

生きている以上は'あなた限りに打ち明けられた私の秘密として'凡てを腹の中にしまってag:いて

下さい。

◎ 「襖」の果たしている紐割

◎ 「只」のイメージ

◎ Kはt L・tぜ‖殺したのだろう。

◎ この小説で'淑石が軒きたかったこと

@KK3

(資料⑩)

手  紙

○あなたは'そんなに芸任を感じることはなかったのに。K以上に苦しんだのはあ

なたの方なのに。Kの自殺によってもあなたの未来は'暗くなってしまった。確か

に'あなたはt Kの気持ちを知りながらへ自分だけぬけがけをしてしまったことは

ひどいと思う。でもへ人を好きになるのは自由だし'あなたの方が先にお娘さんの

ことを好きだったのだから。Kに告白されたとき、自分の気持ちをいえばよかった

ね。Kが友達でな-あかの他人ならどんなにかよかったのに。そしたらあなたも発

であったのにね。

私へ・・・

〇  Kへ

一系近くにいて'信軸していた人に虫切られた気持すごくわかります。でもあな

たも'袈糾ったことになると思います。何故'奥さんから'お娘さんの結婚を聞い

たとき私をせめなかった(挙らなかった)のですか。あなたは死という形で私に仕

返しをしたのですか?あまりにも早い死をえらぷよりも先に、自分の気持ちをもっ

とみればよかったのに。頭でごちゃごちゃ考えるからよけいにわからなくなるこ

とっていっぱいあると思います。それを言柔にすれば

O

K

あなたは最後まで鋭い自尊心を持っていたのですね。あなたの友人が'あなたの

お娘さんへの気持ちを知っていたうえで'お姐さんとの結婚を決めたことは'鋭い

自尊心を持っていたゆえにとても苦しかったことでしょうOあなたの友人も'自分

がとっていた行動や態度を悩んでいたようです。なぜへ退吾に1番気になることを

書かなかったんですか?そこがあなたのいい所かもしれませんがt I(m友人に聞か

なければいけなかったのではないでしょうか。死ぬよりも'あなたの友人と話して

ほしかったです。(::蝣つべきこと聞くべきことがたくさんあったのではないですか?

○  お姐さんへ

私'お城さんの気持ちが全然わかりません。あなたはいったい'どちらが好きだっ

たのですか。それともどちらとも好きじゃなかったのですか。あなたはKや私の気

持ちを知らなかったのですか。もしもしっていたのなら'どうして‖分の気持ちを

はっきりつたえなかったのですか。私は、Kが臼殺したのはあなたへのもうどうし

ょぅもない気持ちと親友に出切られた-やしさや悲しさからだと思うけど'あなた

が-j分の気持ちをもっとはっきりいっていれば'いや私がこんな形で∩殺すること

はなかったのではないかと思います。

127

(資料⑪)

日   記

○なぜあの人(先生)は'こんなに変わってしまったのでしょうか。

なぜに'ああも自分の殻に閉じこもってしまうのでしょうか-Oそ

れがすべて私に脱凶があるのなら、お話しになってくださればよい

のに。今日は'あの人は雑司ケ谷のあの人(K) のお菜にもうでな

さりました。あの人の心が私されにもひらかないことが私にとって

とてもつらいことなのに。あの人は何もお話になって下さらない-0

○昨晩Kが自殺した。どうしてこんなことになったのか。やはり原因

は私にあるのだろう。Kは私に助言を求めていたのに'私は自分の

ことしか考えていなかった。Kを裏切ってしまったのだ。Kを殺し

てしまったのだ。私の好きになった人がお娘さんでなかったら、い

やt Kの好きになった人がお娘さんでなかったら'こんなことには

ならなかったのに。今さら後悔しても仕方がないがへKを思うと心

苦しい。これから先へ私はどのように生きてゆけばいいのだろう。

○今日へ自分がどれほど愚かだったのか思い知らされた.この苦しい

想いをl人抱いている方が良かったのか。日的あれだけ咋放してい

たものをまさか自分が抱くとは。どうすればいいのか分からずに彼

に和談にのってもらおうとした・・・ああまさに伐は愚かだ。馬鹿な人

間だ。彼の言う通りなのだ。自ら慕穴を糾ったのだ。だがどうしよ

うもない。自分の進む、やるべき叫が分からないのだ。ただl つ分

かるのは、彼が言ってくれた「党悟」。そう党悟だけはある0ただ

それだけなのだ。

○彼は私に秘密でお娘さんとの結婚の話を決めていた。私は裏切られ

ていたのだo l番信頼している人に-。だが私は彼をまめたりはし

ない。いやへ できないというべきかもしれない。私は精進の道には

ずれた気持ちを持ってしまった。お娘さんを好きになりさえしなけ

れば、だれも苦しまなくてよかったはずだ。ああへ私はなんという

間違いをおかしてしまったのだろう。この罪の償いは、私の死をもっ

てわびるしかないのか。

(資料⑫)

◎ 襖の火たしている役割

Kと私とをきっぱりとわけるものへ襖を間めた状態にお

いてもも私はKのことを想像していることからも'あるよ

うでないようなものにも思われる。この後へ 二人の考えを

わけてしまうようなもの。

Kそのものという感じ。

襖を開けるようになることによってへ自分の心を打ちあ

けることになるからへ 二人の心のかべである。

一度自分の心を見せようとしたのにやめてしまったこと

を表すもの。

永久に分けられてしまった私とK。

fj>=3のイメー:.¥

不吉な語という感じとt Kの自殺で死ぬことから伏組と

思われる。また私の将来の行く手を妨げるものであり常に

私は思い不ii=なものにつきまとわれることになる。絶望感へ

行く手をはばむ蛇(Kの思い影)(思い光)

どうしようと必至にもがいても、けっしてこえることの

できない、‖分の力ではどうしようもないものになってし

まったの.又私の後悔も表しているような感じ(&.い影法

師のようなK)

◎ 性格(

臥)八方美人で、他人の前でいいかっこをしたがる。他人

に自分のことを誤解された-ないと思っている平凡な

弱い人間。1方において他人を思いやる心を持ってい

るが、最終的に自分の弱さのためにへ結果としてあら

われない。

(KV果断にとんだ性格で'自分で 〝こう″と思った郭に対

してまっすぐに進んで行く。

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退書に私の事をかかなかったことからも'最後まで孤

高で、美しく強くあろうとした。

(奥さん)ざっくばらんで'多少男っぽい。よく他のことが

見えている。

(お嬢さん)明るいが'ひかえめで誰からも好かれる性格。

昔の日本女性のあるべき姿といえる。

◎ この小説で書きたかったこと

私という人間を通して、ごくふつうの平凡な人間が持つ

心の弱さと、心の葛とう。

どのようにして'またどんな時に'人間は自分の弱さを

さらけ出し'罪を犯すことになるか。また人間として独り

で強いままで生きることの難かしさ。

◎ Kの自殺の原因

お嬢さんへの恋が完全に絶たれたことへ出し抜かれたつ

らさもあるけれどへ自殺によって私に'私がしたことの重

大さを知らせたかった。またへ Kはこのまま生きつづけれ

ば'今までの禁欲を常とする性格だけでなく今までの過去

の蓄積へ冷静さまでも失ってしまい'見苦しく弱い自分を

私にさらけ出すことが、Kには耐えられなかった。

◎ 私の自殺の原因

Kの死によって自分の罪の歪さを認識し'自分の人生に

おいて'どうしてもKという黒い影を背おっておりへ最後

までそれに勝つことができないだろうと感じたから。

(生徒Mのプリントより)

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