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生化学 90 巻第 4 号,p. 5432018東北大学大学院生命科学研究科 分子化学生物学専攻 応用生命分子解析分野 田中 良和 平成 29 4 月,東北大学大学院生命科学研究科の教授に 着任いたしました.幼年期と学生時代を過ごした思い出深 い仙台で,このような職に迎えていただいたことは大変に 光栄であると同時に日々その責任の重さを痛感していると ころです. 生命科学研究科は,東北大学におけるライフサイエンス 研究の中核的拠点として,平成 13 4 月に学部をもたない 独立研究科として設立されました.当研究室は「分子が生 体内で働く仕組みから生命制御の方法を解明する」ことを 目指す分子化学生物学専攻の中の「応用生命解析分野」と して,前任の村本光二先生の研究室を引き継ぐ形で研究活 動を開始しました.当分野では,複雑な生命現象も単純な 化学反応により成り立っているという考えにもとづき,X 線結晶構造解析や電子顕微鏡解析をはじめとした最先端の 分子解析手法を用いて構造学的側面から生体高分子化合物 の作用原理を理解することにより,複雑な生命活動を原子 レベルで理解することを目指しています.百聞は一見に如 かずという言葉の通り,生物の構造を目で直感的に見るこ とが出来る喜びを知って欲しいと願って,日々の研究指導 に取り組んでいます. 当研究室のある片平キャンパスは,仙台市の中心部にあ りながらも豊かな自然に囲まれており,学都仙台に世界中 から集まって来た優秀な学生たちはもちろん,魯迅の像を 見学にくる観光客や散歩をする親子連れなどでいつも賑 わっています.先日はタヌキも見かけました.大変ありが たいことに,農学部との兼任もさせていただいており,平 29 年に新設されたばかりの青葉山キャンパスでも授業 や学生実験を担当しています. 現在,教職員,院生,学部生合わせて 20 人のメンバー で,日々試行錯誤しながら研究に励んでいます.国際化に も力を入れており,アフリカから 2 名の留学生を受け入れ ている他,研究を通してドイツやウクライナとの交流があ ります.先日は,修士課程の学生 2 名とリヴィウ(ウクラ イナ)の Ivan Franko National University of Lviv 10 日間の 研修に行ってきました.一流の研究を行うだけでなく,国 際社会でも物怖じせずに自分の意見を主張できるような骨 太な研究者を育成することも目指し,研究室を運営してい きたいと思っています. 写真 1 研究室のある生命科学プロジェクト研究棟の外観 写真 2 Ivan Franko National University of Lviv での研修(左から 3 番目が著者) 北から 南から 北から 南から

北から 東北大学大学院生命科学研究科 南から 分子 …...写真1 研究室のある生命科学プロジェクト研究棟の外観 写真2 Ivan Franko National

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Page 1: 北から 東北大学大学院生命科学研究科 南から 分子 …...写真1 研究室のある生命科学プロジェクト研究棟の外観 写真2 Ivan Franko National

生化学 第 90巻第 4号,p. 543(2018)

東北大学大学院生命科学研究科 分子化学生物学専攻 応用生命分子解析分野

田中 良和

平成29年4月,東北大学大学院生命科学研究科の教授に着任いたしました.幼年期と学生時代を過ごした思い出深い仙台で,このような職に迎えていただいたことは大変に光栄であると同時に日々その責任の重さを痛感しているところです.生命科学研究科は,東北大学におけるライフサイエンス

研究の中核的拠点として,平成13年4月に学部をもたない独立研究科として設立されました.当研究室は「分子が生体内で働く仕組みから生命制御の方法を解明する」ことを目指す分子化学生物学専攻の中の「応用生命解析分野」として,前任の村本光二先生の研究室を引き継ぐ形で研究活動を開始しました.当分野では,複雑な生命現象も単純な化学反応により成り立っているという考えにもとづき,X線結晶構造解析や電子顕微鏡解析をはじめとした最先端の分子解析手法を用いて構造学的側面から生体高分子化合物の作用原理を理解することにより,複雑な生命活動を原子レベルで理解することを目指しています.百聞は一見に如かずという言葉の通り,生物の構造を目で直感的に見ることが出来る喜びを知って欲しいと願って,日々の研究指導に取り組んでいます.当研究室のある片平キャンパスは,仙台市の中心部にあ

りながらも豊かな自然に囲まれており,学都仙台に世界中から集まって来た優秀な学生たちはもちろん,魯迅の像を見学にくる観光客や散歩をする親子連れなどでいつも賑わっています.先日はタヌキも見かけました.大変ありがたいことに,農学部との兼任もさせていただいており,平成29年に新設されたばかりの青葉山キャンパスでも授業や学生実験を担当しています.現在,教職員,院生,学部生合わせて20人のメンバーで,日々試行錯誤しながら研究に励んでいます.国際化にも力を入れており,アフリカから2名の留学生を受け入れている他,研究を通してドイツやウクライナとの交流があります.先日は,修士課程の学生2名とリヴィウ(ウクラ

イナ)の Ivan Franko National University of Lvivに10日間の研修に行ってきました.一流の研究を行うだけでなく,国際社会でも物怖じせずに自分の意見を主張できるような骨太な研究者を育成することも目指し,研究室を運営していきたいと思っています.

写真1 研究室のある生命科学プロジェクト研究棟の外観

写真2 Ivan Franko National University of Lvivでの研修(左から3番目が著者)

北から南から北から南から