8
同一周波数を用いた OFDM 信号と QAM 信号の多重伝送法 藤森 洋平 *1 ,湯田 泰明 *2 ,平松 勝彦 *3 ,本間 光一 *Multiplex Transmission Method of OFDM Signal and QAM Signal Using the Same Frequency Band ( received on March 112014 & accepted on July 82014 ) by Yohei FUJIMORI *1 Yasuaki YUDA *2 Katsuhiko HIRAMATSU *3 and Koichi HOMMA *4 Abstract This paper presents a method of multiplex transmission method of OFDM signal used for a 4G cellular phone and QAM signal using the same frequency band. At first, symbol rate and transmission band of the QAM transmission system are determined. In the QAM receiving part, QAM signal ingredient is extracted from the received signal, inter-symbol interference is removed and QAM signal is demodulated.. It was checked by the computer simulation that each signal can be sent without mutual interference and data of 1.44[Mbps] can be transmitted with no bits error using QAM signal. Keywords: OFDMWireless channel estimationBurst Noise, Multiplex transmission OFDM,無線チャネル推定,バースト雑音,多重伝送 1 4 世代携帯電話 ) 等に用いられる広帯域直交周波数分 割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing) 伝送信号に混入する雑音には受信器の入力端で生じる熱雑 音と外部から加わるバースト雑音があり何れの雑音も伝送 特性を劣化させる.そこで,熱雑音による無線回線推定特 性劣化の改善については WSSUS (Wide Sense Stationary Uncorrelated Scattering)モデルを用い周波数域で雑音を抑圧 する無線回線推定方法を提案しその推定性能の向上を図っ 2) .また,バースト雑音については,1 パケットの受信 信号内で伝送特性を改善しスループット特性の劣化を防ぐ 方法について述べた.この伝送特性改善のために無線回線 推定に参照信号逐次置き換え法やデータ伝送特性の改善に 内挿補間法等を考案し,1[μs]幅程度の如何なる振幅のバー スト雑音が混入しても回線推定歪と伝送誤りを完全に除去 できることを示した ) そこで本稿ではバースト雑音の替わりに 1[μs] 幅程度の QAM 信号を多重伝送し,OFDM 伝送と同一の周波数を用 いその伝送には影響を与えずに1[Mbps]程度の QAM 信号 を多重伝送できる事を示す.まず,多重する QAM 信号の シンボルレートと伝送帯域を決定する.次に多重された受 信信号から QAM 信号成分の抽出を行い,識別点のジッタ を考慮して符号間干渉を除去し,無線回線の歪を等化後 QAM 復調器でデータの復調を行う.以上の方法により本 稿では第 4 世代携帯電話で用いる OFDM 変調信号に同一周 波数で QAM 信号を多重伝送しても OFDM 伝送特性に悪影 響を与えること無しに 1.44[Mbps]QAM 多重伝送が可能 であることをシミュレーション評価結果と共に述べる. 2 OFDM 2.1 OFDM 伝送の無線伝搬環境 本研究で対象とする伝搬環境を Fig.1 に示す.基地局と移 動局間の伝搬経路は遅延時間差のあるマルチパス伝送路と なり,さらに 1[μs] 幅程度のバースト雑音が外部から混入す ることを想定する.この雑音は回線推定誤り特性とデータ伝 送誤り特性の劣化を引き起こす. T=1[μs] 回線推定誤り データ伝送誤り Fig.1 Frequency selective fading characteristic *1 情報通信学研究科・情報通信学専攻・修士課程 Graduate School of Information and Telecommunication Engineering, Course of Information and Telecommunication Engineering *2 パナソニック株式会社 AVC ネットワークス社 AVC 技術開発センター AVC Technology Development Center, AVC Networks Company, Panasonic Corporation *3 パナソニック株式会社 R&D本部 事業開発推進室, Business Development Promotion Office, R&D Division, Panasonic Corporation *4 情報通信学部・通信ネットワーク工学科・教授 School of Information and Telecommunication EngineeringDepartment of Communication and Network EngineeringProfessor 1 東海大学紀要情報通信学部 vol.7,No1,2014,pp.1-8 論文

同一周波数を用いた OFDM 信号と QAM 信号の多重 …...3 シンボルレートは30.72[Mbps]の整数分の一であり,一方受 信帯域幅(fb)は20[MHz] (搬送周波数を中心に±10[MHz])

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

同一周波数を用いた OFDM 信号と QAM 信号の多重伝送法 藤森 洋平*1,湯田 泰明*2,平松 勝彦*3,本間 光一*4

Multiplex Transmission Method of OFDM Signal and QAM Signal

Using the Same Frequency Band ( received on March 11,2014 & accepted on July 8,2014 )

by

Yohei FUJIMORI*1,Yasuaki YUDA*2,Katsuhiko HIRAMATSU*3 and Koichi HOMMA*4

Abstract

This paper presents a method of multiplex transmission method of OFDM signal used for a 4G cellular phone and QAM signal

using the same frequency band. At first, symbol rate and transmission band of the QAM transmission system are determined. In

the QAM receiving part, QAM signal ingredient is extracted from the received signal, inter-symbol interference is removed and

QAM signal is demodulated.. It was checked by the computer simulation that each signal can be sent without mutual interference

and data of 1.44[Mbps] can be transmitted with no bits error using QAM signal.

Keywords: OFDM, Wireless channel estimation,Burst Noise, Multiplex transmission キーワード:OFDM,無線チャネル推定,バースト雑音,多重伝送

1. 概要

第 4 世代携帯電話1)等に用いられる広帯域直交周波数分

割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)伝送信号に混入する雑音には受信器の入力端で生じる熱雑

音と外部から加わるバースト雑音があり何れの雑音も伝送

特性を劣化させる.そこで,熱雑音による無線回線推定特

性劣化の改善については WSSUS (Wide Sense Stationary Uncorrelated Scattering)モデルを用い周波数域で雑音を抑圧

する無線回線推定方法を提案しその推定性能の向上を図っ

た 2) .また,バースト雑音については,1 パケットの受信

信号内で伝送特性を改善しスループット特性の劣化を防ぐ

方法について述べた.この伝送特性改善のために無線回線

推定に参照信号逐次置き換え法やデータ伝送特性の改善に

内挿補間法等を考案し,1[μs]幅程度の如何なる振幅のバー

スト雑音が混入しても回線推定歪と伝送誤りを完全に除去

できることを示した3).

そこで本稿ではバースト雑音の替わりに 1[μs] 幅程度の

QAM 信号を多重伝送し,OFDM 伝送と同一の周波数を用

いその伝送には影響を与えずに1[Mbps]程度の QAM 信号

を多重伝送できる事を示す.まず,多重する QAM 信号の

シンボルレートと伝送帯域を決定する.次に多重された受 信信号から QAM 信号成分の抽出を行い,識別点のジッタ

を考慮して符号間干渉を除去し,無線回線の歪を等化後

QAM 復調器でデータの復調を行う.以上の方法により本

稿では第 4世代携帯電話で用いる OFDM変調信号に同一周

波数で QAM 信号を多重伝送しても OFDM 伝送特性に悪影

響を与えること無しに 1.44[Mbps]の QAM 多重伝送が可能

であることをシミュレーション評価結果と共に述べる.

2. 無線伝搬環境と OFDM 伝送システム 2.1 OFDM 伝送の無線伝搬環境

本研究で対象とする伝搬環境を Fig.1 に示す.基地局と移

動局間の伝搬経路は遅延時間差のあるマルチパス伝送路と

なり,さらに 1[μs] 幅程度のバースト雑音が外部から混入す

ることを想定する.この雑音は回線推定誤り特性とデータ伝

送誤り特性の劣化を引き起こす.

T=1[μs]

回線推定誤り

データ伝送誤り

Fig.1 Frequency selective fading characteristic

*1 情報通信学研究科・情報通信学専攻・修士課程 Graduate School of Information and Telecommunication

Engineering, Course of Information and Telecommunication Engineering

*2 パナソニック株式会社 AVC ネットワークス社

AVC 技術開発センター

AVC Technology Development Center, AVC Networks Company, Panasonic Corporation

*3 パナソニック株式会社 R&D本部 事業開発推進室,

Business Development Promotion Office, R&D Division, Panasonic Corporation

*4 情報通信学部・通信ネットワーク工学科・教授 School of Information and Telecommunication Engineering,

Department of Communication and Network Engineering, Professor

論文

- 1-

東海大学紀要情報通信学部vol.7,No1,2014,pp.1-8

論文

3

シンボルレートは 30.72[Mbps]の整数分の一であり,一方受

信帯域幅(fb)は 20[MHz] (搬送周波数を中心に±10[MHz])であるために,このままではナイキストの第 1 基準を満た

さず QAM 復調部の入力信号に符号間干渉が生じ伝送誤り

が生じる.そこでデジタルデータ伝送に伴う符号間干渉の

除去を行うために QAM のシンボルレートと受信帯域幅の

整合を取る必要がある. 先ず,QAM 伝送のシンボル信号と OFDM 伝送の標本化

信号(OFDM 信号を 2048 分割)が同期を取り,且つ QAM受信信号がナイキストの第 1 基準を満たすためには N を整

数とし受信帯域幅(fb)は次式(1)を満たす必要がある.

):(][1072.30 6整数NHz

Nfb

また受信帯域幅は次式(2)に示す様に 20[MHz]以下であ

る必要がある.

][1020 6 Hzfb

以上の(1)式と(2)式より(3)式が得られる.

):(][10201072.30 66

整数NHzN

上式(3)を満たす最小の N は 2 となる.このために QAM

信号のシンボルレートを OFDM伝送の標本化周波数の 2分の一,つまり OFDM 信号の標本化間隔の一個置きに QAM信号の各シンボルを配置すれば良いことが分かる.また,

この場合の伝送帯域は (1)式に N=2 を代入することによ

り fb=15.36[MHz]となる.この時の QAM 伝送帯域を Fig.6に示す.周波数配置は 2048 点の OFDM 変調信号の入力点

の配置とし,0 は直流成分以降右に 15[kHz]きざみで正の周

波数,2047 から左に 15[kHz]きざみで負の周波数を表す.

またそのインパルス応答を Fig.7 に示す.このインパルス

応答波形は 1 シンボル置きのシンボル間隔が零交差信号と

なり,この間隔で QAM 受信信号を配置するとデジタルデ

ータ伝送に伴う符号間干渉を除去できることが分かる.

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Fig.6 QAM signal transmission characteristic

1010 1015 1020 1025 1030 1035 1040-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Fig.7 Impulse response

3.2 送信部

(1)QAM 変調部 前節の結果と以下の 2 項を前提にして QAM 変調部の主

要諸元を決定する. ・QAM 変調信号幅を 1[μs]程度とする(OFDM 伝送特性

に影響を与えないため). ・QAM 伝送レートを 1[Mbps]以上確保する. まず 1[μs] 幅の QAM 変調信号に搭載できるシンボル数

K を次式 (4)で算出する.

):(1011036.151 6

6整数KK

上式(4)より K=17 となり,送信シンボル数を 17[symbol]

と定める. 次に前記の伝送ビットレート 1[Mbps]以上を満たすため

の QAM 変調の多値数 M を決定する.OFDM シンボル長が

66.7[μs]であるので,QAM 伝送のビットレート 1[Mbps]を満たす QAM 変調多値数 M は次式(5)を満たす必要がある.

):(107.66

log17101 626 多値数MM

上式(5)より M≧16 となる.17 シンボルには回線推定の

ためのシンボルも含む必要があるため余裕を見て多値数を

一段階上げ M=64 の 64QAM 変調を用いる事にする. (2)無線回線部

今回は室内環境で 64QAM 多重伝送を行う想定し,伝送

距離 10m 以内・移動速度は準静止とする.伝送距離が 10m以内の場合では伝搬遅延差がシンボル間隔 1/15.36[μs]より

十分短いので,無線伝搬路特性はレイリーフェージング特

性となりレイリー分布に従って振幅は変動はするが周波数

特性は平坦となり波形の歪は生じない.この無線回線のレ

イリーフェージングを Fig.8 に示す振幅が正規分布するガ

ウス雑音源と振幅が一様分布する信号源を用いる構成でシ

ミュレートする.ただし各信号は 1 スロット(slot)ごと独

立に生成する.

(3)

OFDM シンボル番号[m]

振幅

[V]

振幅

[V]

周波数

[MHz]

0 +7.68 +10 -10 -7.68 -0.015

[k] 0 512 667 1382 1537 2047

(1)

(2)

(4)

(5)

1008 1013 1018 0 5 10 15

2

2.2 OFDM 伝送システム

本稿では, 3GPP/LTE(4G 携帯電話システム)4)の OFDM伝送システムを対象にして以後の検討を進める.先ず,こ

の OFDM 伝送システムの基本構成を各部の信号名と共に

Fig.2 に示す.

:データ経路

:参照信号経路

)(H

無線回線

熱雑音

÷ 復調

)(ˆ H

送信側 受信側

OFDM変調

OFDM復調

無線回線推定

バースト雑音が重畳バースト雑音

0sc

51sc

rsds

abnrv sD̂

)(H

)(ˆ H0sc51sc

CZrsds

abnrv

Ds

sD̂

:送信データ

:参照データ

:零サブキャリア信号

:1-5サブキャリア信号

:参照信号

:データ信号

:バースト雑音

:受信信号

:回線特性

:回線推定特性

:受信データ

:QAM変調信号

QAM変調CZ

DsDq

Dq Fig.2 Structure of transmitter and receiver

また本システムの評価には 3GPP の規格を基にして定め

た以下の諸元を用いる 4). Table 1 Simulation Parameters of OFDM Transmission System

設定項目 設定値

搬送波周波数 3.5[GHz]

受信帯域 18[MHz]

サブキャリア間隔 15[kHz]

OFDMフレーム長 66.7[μs]

標本化間隔 32.6[ns]

二次変調方式 OFDM

一次変調方式 16QAM

サブキャリアデータ信号 1000[本],振幅:1[V]

参照信号 200[本],ZCシーケンス

無線回線特性 Vehicular A 120km/h

バースト雑音の時間 1[μs]

評価データ数 200スロット

参照信号に Zc(Zadoff-Chu)系列を送信データにランダム

データを印加した場合の参照信号(rs)とデータ信号(ds)の各

時間信号を模式的に Fig.3 に示す.l は l+6n(n=1,…,200)の 200本のサブキャリア番号を示す.基本周波数(15kHz)の 6 の

整数倍のサブキャリアに存在する参照信号はサブキャリア

番号( l )が零の部分に示すように 6 周期の信号となる.ここ

で 1OFDM シンボル間隔を 6 等分した各 RS スロット部分の

信号を#n(RS スロット番号)で表わす.

1#RSスロット番号

サブキャリア番号

n#2# 3# 4# 5#0#

12345

0

l

0sc 1sc 2sc 3sc 4sc 5sc

参照信号(零サブキャリア信号)

データ信号(1から5サブキャリア信号)

Fig.3 Time waveform of 1OFDM symbol

2.3 バースト雑音による特性劣化の改善

本伝送システムにバースト雑音が混入した場合,以下の

2 点の要因によりビット誤り率特性が著しく劣化する. (ⅰ)雑音が参照信号に混入し無線回線推定歪が発生 (ⅱ)雑音がデータ信号に混入し OFDM 復調信号に歪みが

発生 無線回線推定歪は参照信号逐次置き換え法でその歪を 10万分の1に低減でき,OFDM 復調信号の歪は上記回線推定特

性を用いかつ内挿補間法等の技術を導入し取り除き,1[μs]幅程度の如何なる振幅のバースト雑音が混入してもその

OFDM 伝送誤りを零に出来る事は既に示した3).この OFDM伝送システムの等化低域信号による構成を Fig.4 に示す.こ

の場合,送信側の搬送波と同一の信号が受信側において再生

できていると仮定している.

CZ

Ds一次変調

二次変調

無線回線

帯域制限

回線推定

IDFT

sD̂一次復調

rv

rs

二次復調

IP

n#

16QAM OFDMOFDM 16QAM

)(kH )(kH

位置検出

drv

送信側 受信側 Fig.4 Block diagram of OFDM transmission system

3. QAM 信号の多重伝送法

本章ではバースト雑音の代わりに QAM 信号を多重伝送

することを考える.前章に示した Fig.4 の構成を用いるこ

とによって,OFDM 伝送システムの伝送誤りを引き起こす

こと無しに,1[μs]幅の QAM 信号をバースト雑音の替わり

に多重伝送する事が出来る.以下に OFDM 伝送システムに

QAM 信号を多重伝送する場合のシステム構成を Fig.5 に示

す. 送信部は QAM 変調部と室内伝送を想定した無線回線部

から,受信部は QAM 信号抽出部と波形整形部と復調部か

ら成る.次章以下この順で各部の詳細について述べる.

)(kHCZ

Ds一次変調

二次変調

無線回線

帯域制限

回線推定

IDFT

)(kH

sD̂一次復調

msd̂

rv

rs

二次復調

QAM復調

16QAM OFDM OFDM 16QAM

IP

n#

位置検出

][10 MHz

mDsQAM変調

無線回線

信号抽出

波形整形

送信側 受信側

重畳伝送に伴う付加部分 OFDM伝送部分

共通部分

Fig.5 Block diagram of multiplex transmission system

3.1 QAM 伝送のシンボルレートと伝送帯域

システム構成の容易性と相互干渉の低減等の観点から多

重伝送する QAM 伝送のシンボル信号と OFDM 伝送のシン

ボル信号は同期を取るものとする.このため QAM 信号の

同一周波数を用いた OFDM信号と QAM信号の多重伝送法

- 2-

3

シンボルレートは 30.72[Mbps]の整数分の一であり,一方受

信帯域幅(fb)は 20[MHz] (搬送周波数を中心に±10[MHz])であるために,このままではナイキストの第 1 基準を満た

さず QAM 復調部の入力信号に符号間干渉が生じ伝送誤り

が生じる.そこでデジタルデータ伝送に伴う符号間干渉の

除去を行うために QAM のシンボルレートと受信帯域幅の

整合を取る必要がある. 先ず,QAM 伝送のシンボル信号と OFDM 伝送の標本化

信号(OFDM 信号を 2048 分割)が同期を取り,且つ QAM受信信号がナイキストの第 1 基準を満たすためには N を整

数とし受信帯域幅(fb)は次式(1)を満たす必要がある.

):(][1072.30 6整数NHz

Nfb

また受信帯域幅は次式(2)に示す様に 20[MHz]以下であ

る必要がある.

][1020 6 Hzfb

以上の(1)式と(2)式より(3)式が得られる.

):(][10201072.30 66

整数NHzN

上式(3)を満たす最小の N は 2 となる.このために QAM

信号のシンボルレートを OFDM伝送の標本化周波数の 2分の一,つまり OFDM 信号の標本化間隔の一個置きに QAM信号の各シンボルを配置すれば良いことが分かる.また,

この場合の伝送帯域は (1)式に N=2 を代入することによ

り fb=15.36[MHz]となる.この時の QAM 伝送帯域を Fig.6に示す.周波数配置は 2048 点の OFDM 変調信号の入力点

の配置とし,0 は直流成分以降右に 15[kHz]きざみで正の周

波数,2047 から左に 15[kHz]きざみで負の周波数を表す.

またそのインパルス応答を Fig.7 に示す.このインパルス

応答波形は 1 シンボル置きのシンボル間隔が零交差信号と

なり,この間隔で QAM 受信信号を配置するとデジタルデ

ータ伝送に伴う符号間干渉を除去できることが分かる.

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Fig.6 QAM signal transmission characteristic

1010 1015 1020 1025 1030 1035 1040-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Fig.7 Impulse response

3.2 送信部

(1)QAM 変調部 前節の結果と以下の 2 項を前提にして QAM 変調部の主

要諸元を決定する. ・QAM 変調信号幅を 1[μs]程度とする(OFDM 伝送特性

に影響を与えないため). ・QAM 伝送レートを 1[Mbps]以上確保する. まず 1[μs] 幅の QAM 変調信号に搭載できるシンボル数

K を次式 (4)で算出する.

):(1011036.151 6

6整数KK

上式(4)より K=17 となり,送信シンボル数を 17[symbol]

と定める. 次に前記の伝送ビットレート 1[Mbps]以上を満たすため

の QAM 変調の多値数 M を決定する.OFDM シンボル長が

66.7[μs]であるので,QAM 伝送のビットレート 1[Mbps]を満たす QAM 変調多値数 M は次式(5)を満たす必要がある.

):(107.66

log17101 626 多値数MM

上式(5)より M≧16 となる.17 シンボルには回線推定の

ためのシンボルも含む必要があるため余裕を見て多値数を

一段階上げ M=64 の 64QAM 変調を用いる事にする. (2)無線回線部

今回は室内環境で 64QAM 多重伝送を行う想定し,伝送

距離 10m 以内・移動速度は準静止とする.伝送距離が 10m以内の場合では伝搬遅延差がシンボル間隔 1/15.36[μs]より

十分短いので,無線伝搬路特性はレイリーフェージング特

性となりレイリー分布に従って振幅は変動はするが周波数

特性は平坦となり波形の歪は生じない.この無線回線のレ

イリーフェージングを Fig.8 に示す振幅が正規分布するガ

ウス雑音源と振幅が一様分布する信号源を用いる構成でシ

ミュレートする.ただし各信号は 1 スロット(slot)ごと独

立に生成する.

(3)

OFDM シンボル番号[m]

振幅

[V]

振幅

[V]

周波数

[MHz]

0 +7.68 +10 -10 -7.68 -0.015

[k] 0 512 667 1382 1537 2047

(1)

(2)

(4)

(5)

1008 1013 1018 0 5 10 15

藤森洋平・湯田泰明・平松勝彦・本間光一

- 3-

5

0 341 682 1023 1365 1706 20480

0.5

1

1.5

2

0 341 682 1023 1365 1706 20480

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

Fig.12 Waveform and distortion of estimated QAM signal

次にこの歪を除去するための改善法を以下に示す.

Fig.10 に示す QAM 信号の 1RS スロットを切りだす QAM信号検出部の前後の信号の周波数特性に過渡特性の収束性

の高い自乗余弦波特性とその逆特性を乗じる.この構成を

Fig.13に示す.またこの時に用いた自乗余弦波特性を Fig.14に示す.

1 6

][10)(cos 2

MHz

][9)(cos/1 2

MHz

n#

零サブキャリア信号抽出

(x6)

)( mod bmdsdsrsrv

アップ

サンプル(3x)

rs

ダウンサンプル(3x)

amq~OFDM受信信号

n#

帯域制限

][10 MHz 2048↓

6144

6144↓

2048

Fig.13 Block diagram of improved system

using squared sine wave characteristic

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Fig.14 Transfer characteristic of raised cosine

自乗余弦特性が乗じられた 6 周期の QAM 信号を Fig.15に示す.この様に 6 周期の重畳信号は 1RS スロット内に収

まり相互の漏れ込みなしに QAM 信号成分を切り出すこと

ができる.

0 1024 2048 3072 4096 5120 61440

0.05

0.1

0.15

0.2

1024 1280 1536 1792 20480

0.002

0.004

0.006

0.008

0.01

Fig.15 Waveform of QAM signal of zero subcarrier (Using raised cosine of transfer characteristic)

最後にこの信号の周波数特性を自乗余弦特性で除算して

再生された QAM 信号とその歪を Fig.16 に示す.

0 341 682 1023 1365 1706 20480

0.5

1

1.5

2

0 341 682 1024 1365 1706 20480

1

2

3

4

5x 10

-3

Fig.16 Waveform and distortion of estimated QAM signal (Using raised cosine of transfer characteristic)

OFDM シンボル番号[m]

OFDM シンボル番号[m]

[V]

OFDM シンボル番号[m]

OFDM シンボル番号[m]

振幅

[V]

OFDM シンボル番号[m]

振幅

[V]

振幅

[V]

振幅

[V]

[V] 振幅

[V]

周波数

[MHz]

0 +9 +10 -10 -9 -0.015

)10( 6

[k] 0 512 667 5478 5633 6143

amq~

6 周期の QAM 多重信号

amq~

4

二乗

二乗

2

jre

)( slotr

)( slot

:位相

:振幅

20

1,0 r回線特性(レイリーフェージング)

(レイリー分布)

(一様分布)

QAM伝送の無線回線

:slot フレーム番号

入力 出力

Fig.8 Block diagram of radio channel

(3)フレーム構成

QAM 伝送において受信側で無線回線の特性を推定しそ

の特性を等化する必要がある.この回線推定の為に送信フ

レームに参照信号を挿入する必要がある.無線回線は準静

止での動作という条件より 1[μs]幅のフレーム内で回線特

性の変動を無視できる.以上の考察より参照信号は 17 シン

ボルの送信信号の内 1 シンボルを参照信号に用いればよい.

また参照信号は移動による僅かな変動をも考慮しデータシ

ンボルの中央に配置する.以上の点を考慮して決定した

QAM 送信信号のフレーム構成を Fig.9 に示す.この信号を

OFDM の RS スロット番号#1 のスロットの中央に多重して

検討と評価を進める.

S1 S2 ・・・ S8 RSQ S9 ・・・ S15 S16

][1 s

::

Q

m

RSS データシンボル

参照信号

)16,,2,1( m

][36.15

1 s

Fig.9 Frame composition of the transmission signal

3.3 受信部

受信部は(1)QAM 多重信号抽出部(2)波形整形部

(3)QAM 復調部の 3 部分で構成する.以後上記の順で

各部について述べる. (1)QAM 多重信号(qam)の抽出 ここでは OFDM 受信信号に重畳した 1[μs]幅でバースト

状の QAM 信号成分を抽出する方法とその評価結果につい

て述べる.また QAM 信号の受信帯域幅は OFDM 伝送シス

テムの受信帯域幅である 20[MHz]とする.以下の 3 ステッ

プで,参照信号(rs)とデータ信号の 2 信号から成る OFDM信号とそれに多重された QAM 信号から成る受信信号から

QAM 信号成分を抽出する.なお,受信信号から参照信号

と QAM 信号を多重した RS スロット番号(#n)を求める

方法は既に述べてあり 3) 5),以下ではこれらを用いて抽出

を進める.

先ず OFDM 受信信号から参照信号を除去し,その信号の

零サブキャリア信号を抽出する.更にこの信号を正確な 6周期信号にするために,2048 点のサンプル点数を 6 の倍数

である 6144 点の信号に 3 倍アップサンプルし,その 6 周期

の信号から QAM 信号が存在する位置の 1RS スロット 2048点の信号を切り出し,最後に 2048 点の信号にダウンサンプ

ルする.この構成を Fig.10 に,3 倍にアップサンプルされ

た信号の波形を Fig.11 に示す.ただし抽出された QAM 信

号を と記す.

零サブキャリア信号抽出

(x6)

)( mod bmdsdsrsrv

アップ

サンプル(3x)

rs

ダウンサンプル(3x)

amq~OFDM受信信号

n#

帯域制限

][10 MHz 2048↓

6144

6144↓

2048

QAM信号抽出部

QAM信号切り出し Fig.10 Block diagram of QAM signal extraction system

0 1024 2048 3072 4096 5120 61440

0.1

0.2

0.3

0.4

dsm mod

b SC

0 3x

1280 1536 1792 20480

0.002

0.004

0.006

0.008

0.01

Fig.11 Waveform of QAM signal of zero subcarrier

この 6 周期信号から QAM 信号が存在する位置の 1RS ス

ロットを切りだし 3 倍のダウンサンプルした信号とその歪

を Fig.12 に示す.この図に示す様に QAM 信号は完全に再

生できず歪を伴ってしまう.これは Fig.11 から分かるよう

に QAM 信号が OFDM 伝送帯域の 20[MHz]で帯域制限され

るために過渡特性が生じ,その信号が 1RS スロット幅から

はみ出し相互に歪を与えるためである.

OFDM シンボル番号[m]

振幅

[V]

振幅

[V]

6 周期の QAM 多重信号

amq~

同一周波数を用いた OFDM信号と QAM信号の多重伝送法

- 4-

5

0 341 682 1023 1365 1706 20480

0.5

1

1.5

2

0 341 682 1023 1365 1706 20480

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

Fig.12 Waveform and distortion of estimated QAM signal

次にこの歪を除去するための改善法を以下に示す.

Fig.10 に示す QAM 信号の 1RS スロットを切りだす QAM信号検出部の前後の信号の周波数特性に過渡特性の収束性

の高い自乗余弦波特性とその逆特性を乗じる.この構成を

Fig.13に示す.またこの時に用いた自乗余弦波特性を Fig.14に示す.

1 6

][10)(cos 2

MHz

][9)(cos/1 2

MHz

n#

零サブキャリア信号抽出

(x6)

)( mod bmdsdsrsrv

アップ

サンプル(3x)

rs

ダウンサンプル(3x)

amq~OFDM受信信号

n#

帯域制限

][10 MHz 2048↓

6144

6144↓

2048

Fig.13 Block diagram of improved system

using squared sine wave characteristic

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

Fig.14 Transfer characteristic of raised cosine

自乗余弦特性が乗じられた 6 周期の QAM 信号を Fig.15に示す.この様に 6 周期の重畳信号は 1RS スロット内に収

まり相互の漏れ込みなしに QAM 信号成分を切り出すこと

ができる.

0 1024 2048 3072 4096 5120 61440

0.05

0.1

0.15

0.2

1024 1280 1536 1792 20480

0.002

0.004

0.006

0.008

0.01

Fig.15 Waveform of QAM signal of zero subcarrier (Using raised cosine of transfer characteristic)

最後にこの信号の周波数特性を自乗余弦特性で除算して

再生された QAM 信号とその歪を Fig.16 に示す.

0 341 682 1023 1365 1706 20480

0.5

1

1.5

2

0 341 682 1024 1365 1706 20480

1

2

3

4

5x 10

-3

Fig.16 Waveform and distortion of estimated QAM signal (Using raised cosine of transfer characteristic)

OFDM シンボル番号[m]

OFDM シンボル番号[m]

[V]

OFDM シンボル番号[m]

OFDM シンボル番号[m]

振幅

[V]

OFDM シンボル番号[m]

振幅

[V]

振幅

[V]

振幅

[V]

[V] 振幅

[V]

周波数

[MHz]

0 +9 +10 -10 -9 -0.015

)10( 6

[k] 0 512 667 5478 5633 6143

amq~

6 周期の QAM 多重信号

amq~

藤森洋平・湯田泰明・平松勝彦・本間光一

- 5-

7

-1.0801 -0.4629 0.4629 1.0801

-1.0801

-0.4629

0.4629

1.0801

Fig.21 Constellation of 64 QAM demodulator input signal

4. 評価結果 4.1 評価システムの構成

QAM 信号の多重伝送評価システムの構成を Fig.22 に示

す.受信信号から参照信号(rs)とバースト状の QAM 信号が

多重した RS スロット番号(#n)を求める方法は既に公表

しており既知とする.

CZ

Ds一次変調

二次変調

無線回線

mDs

jm remmh )()(

帯域制限

回線推定

IDFT

多重信号抽出

sD̂一次復調

msD̂波形整形

rv

rs

変調 無線回線

二次復調

復調

IP

modmds

16QAM OFDM

64QAM

OFDM 16QAM

64QAM)()())()(()(

mod mdsremmdsmrsmhrv

bmj

)(kH )(kH

)()( mod mdsret bmj

drv

送信側受信側

重畳伝送に伴う付加部分 OFDM伝送部分 共通部分

n#

位置検出

Fig.22 Block diagram of multiplex transmission system of the

OFDM signal and the QAM signal

4.2 シミュレーション評価条件

OFDM 伝送システムの主要諸元は既に Table 1 に,QAM伝送システムの主要諸元を Table2 に示す.これらの諸元を

条件にシミュレーションによる評価を実施する.

4.3 評価結果

OFDM 伝送システムのビット誤り特性を Fig.23 に,それ

に多重伝送する 64QAM 伝送システムのビット誤り特性を

Fig.24 に示す.それらの図には多重処理による伝送誤りの

低減処理を施した場合と何等誤り低減処理を施さなかった

場合について示している.これ等の図から,すでに述べた

バースト雑音除去法で QAM 信号を OFDM 信号に多重(混

入)しても OFDM 伝送のビット誤りを零に出来,また本文

で示した方法によって OFDM 信号が混入しても QAM 多重

伝送誤りを零にすることが可能であることが確認できる.

すなわち本方法によれば OFDM 伝送と QAM 伝送が同一周

波数でお互いに影響を与えず独立に伝送できる事が分かる.

Table 2 Simulation parameters of the QAM transmission system

設定項目 設定値

搬送波周波数 3.5[GHz]

変調方式 64QAM

データ信号 16[symbol], 振幅:1[V]参照信号 1[symbol],(1+j0)

無線回線特性振幅:レイリー分布( )位相:一様分布( )

シンボル間隔 65.2[ns]

受信帯域 ±10[MHz]

送信フレーム数 200[フレーム]

熱雑音 なし

20 1

-10 0 1010

-4

10-3

10-2

10-1

100

誤り率に対する改善無し提案方式

~~~~0

][1log20 10 dBab

BER

ビット誤り率特性

Fig.23 Bit error late of OFDM transmission system

-10 -5 0 5 1010

-2

10-1

100

誤り率に対する改善無し提案方式

~~~~0

][log20 10 dBvq

BER

ビット誤り率特性

Fig.24 Bit error late of QAM transmission system

])[(log20 10 dBVV

QAM

OFDM

])[(log20 10 dBVV

OFDM

QAM

6

この図からOFDM信号に重畳されたQAM信号はほぼ歪が

なく抽出できることが分かる. (2)波形整形部

シンボルレート 15.36[Msymb/s]の QAM 信号は無線区間

で 15.36[MHz]の帯域が有れば符号間干渉なしに伝送出来

る.しかしその信号は大きな過渡特性を有し標本化点のジ

ッタに伴いシンボル誤りが生じる.そこで与えられた周波

数帯域 20[MHz]を最大限に活用し過渡特性を抑圧すること

を考える.そこで遮断周波数は前 3.1 節で決定した

±7.68[MHz]とし受信帯域を 20[MHz]用いることを条件に,

ナイキストの第一基準を満たし符号間干渉を零にし,且つ

過渡特性を抑圧するロールオフ特性で波形整形を施す.こ

の特性に上記条件を満たす 33%ロールオフ特性を用いる.

この 33%ロールオフの周波数特性を赤線で,波形整形を施

さない±7.68[MHz]の方形波(0%ロールオフ)特性を青線で

Fig.17 に示す.

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

二乗余弦波(33%ロールオフ)

方形波(0%ロールオフ)

Fig.17 Transfer characteristics of 33% roll off

またこの 33%ロールオフ特性のインパルス応答を Fig.18に示す.

1010 1015 1020 1025 1030 1035 1040-0.2

-0.1

0

0.1

0.2

0.3

0.4

0.5

0.6

Fig.18 Impulse response (33% roll off)

Fig.18 は Fig.7 に比べてインパルス応答の収束性が高い

ことが分かる.次に方形波(0%ロールオフ)で帯域制限を

行った場合のアイパターンを Fig.19 の上図に,33%ロール

オフで帯域制限を行った場合のアイパターンを Fig.18 下図

に示す. Fig.19 を見て分かる様に 0%ロールオフ特性を用

いた場合に比べ 33%ロールオフ特性を用いた場合の方がア

イの開きが広く,サンプル点のジッタに伴うシンボルエラ

ーを低減できた事が分かる.

Fig.19 Eye pattern of using 0% roll off and 33% roll off characteristics

(3)QAM 復調部 ここでは無線回線歪の等化と 64QAM の復調を行う. 先ず,QAM 信号を 33%ロールオフ二乗余弦特性で帯域制

限した信号の参照信号シンボル信号を抽出し,その信号で

データの 16 シンボルを除算し無線回線の等化を行う.次に

その信号を実部と虚部に分離後それぞれ識別を行い

64QAM の復調を行う.この復調データを と記す.

jre

帯域制限(33%)(x2) QAM

信号の参照信号抜出

][68.7 MHz

amq~

の33%ロールオフ特性

無線回線歪の等化

amq~

QAM復調

msD̂

Fig.20 Block diagram of QAM demodulator

この様にして得られた無線回線の振幅が 1 の場合の

64QAM 復調器入力点のコンスタレーションを Fig.21 に示

す.この Fig21 から OFDM 伝送システムに 64QAM の多重

伝送が可能なことが確認できる.

16.4

18.5

OFDM シンボル番号[m]

OFDM シンボル番号[m]

OFDM シンボル番号[m]

振幅

[V]

振幅

[V]

振幅

[V]

振幅

[V]

周波数

[MHz] 0 +7.68 +10 -10 -7.68 -0.015

[k] 0 512 667 1382 1537 2047

1008 1013 1018 0 5 10 15

msD̂

同一周波数を用いた OFDM信号と QAM信号の多重伝送法

- 6-

7

-1.0801 -0.4629 0.4629 1.0801

-1.0801

-0.4629

0.4629

1.0801

Fig.21 Constellation of 64 QAM demodulator input signal

4. 評価結果 4.1 評価システムの構成

QAM 信号の多重伝送評価システムの構成を Fig.22 に示

す.受信信号から参照信号(rs)とバースト状の QAM 信号が

多重した RS スロット番号(#n)を求める方法は既に公表

しており既知とする.

CZ

Ds一次変調

二次変調

無線回線

mDs

jm remmh )()(

帯域制限

回線推定

IDFT

多重信号抽出

sD̂一次復調

msD̂波形整形

rv

rs

変調 無線回線

二次復調

復調

IP

modmds

16QAM OFDM

64QAM

OFDM 16QAM

64QAM)()())()(()(

mod mdsremmdsmrsmhrv

bmj

)(kH )(kH

)()( mod mdsret bmj

drv

送信側受信側

重畳伝送に伴う付加部分 OFDM伝送部分 共通部分

n#

位置検出

Fig.22 Block diagram of multiplex transmission system of the

OFDM signal and the QAM signal

4.2 シミュレーション評価条件

OFDM 伝送システムの主要諸元は既に Table 1 に,QAM伝送システムの主要諸元を Table2 に示す.これらの諸元を

条件にシミュレーションによる評価を実施する.

4.3 評価結果

OFDM 伝送システムのビット誤り特性を Fig.23 に,それ

に多重伝送する 64QAM 伝送システムのビット誤り特性を

Fig.24 に示す.それらの図には多重処理による伝送誤りの

低減処理を施した場合と何等誤り低減処理を施さなかった

場合について示している.これ等の図から,すでに述べた

バースト雑音除去法で QAM 信号を OFDM 信号に多重(混

入)しても OFDM 伝送のビット誤りを零に出来,また本文

で示した方法によって OFDM 信号が混入しても QAM 多重

伝送誤りを零にすることが可能であることが確認できる.

すなわち本方法によれば OFDM 伝送と QAM 伝送が同一周

波数でお互いに影響を与えず独立に伝送できる事が分かる.

Table 2 Simulation parameters of the QAM transmission system

設定項目 設定値

搬送波周波数 3.5[GHz]

変調方式 64QAM

データ信号 16[symbol], 振幅:1[V]参照信号 1[symbol],(1+j0)

無線回線特性振幅:レイリー分布( )位相:一様分布( )

シンボル間隔 65.2[ns]

受信帯域 ±10[MHz]

送信フレーム数 200[フレーム]

熱雑音 なし

20 1

-10 0 1010

-4

10-3

10-2

10-1

100

誤り率に対する改善無し提案方式

~~~~0

][1log20 10 dBab

BER

ビット誤り率特性

Fig.23 Bit error late of OFDM transmission system

-10 -5 0 5 1010

-2

10-1

100

誤り率に対する改善無し提案方式

~~~~0

][log20 10 dBvq

BER

ビット誤り率特性

Fig.24 Bit error late of QAM transmission system

])[(log20 10 dBVV

QAM

OFDM

])[(log20 10 dBVV

OFDM

QAM

藤森洋平・湯田泰明・平松勝彦・本間光一

- 7-

東海大学紀要 情報通信学部 Vol. xx, No. xx , 20xx, pp. xxx -xxx

― 1 ―

モバイル端末のための印刷・スキャン支援システム 河野 壮志*1, 斎藤 晃一*2, 清水 尚彦*1

Printing and Scanning Systems for Mobile Device

by

Takeshi KAWANO*1, Koichi SAITO*2 and Naohiko SHIMIZU*1

( received on March 25, 2014 & accepted on July 8, 2014 )

Abstract We have developed printing and scanning system for mobile devices using MFP (Multi-Function Printer) and Skype™. The System enables to send scanning data directly from the MFP to a mobile device, such as a smartphone using the transfer function of Skype, when out of the office and do not have access to a PC (Personal Computer). In addition, the system does not require a static IP address because of using Skype for communication. We implemented these functions of printing and scanning on MFP made by RICOH™ Company, Ltd. and a PC for Skype and confirmed that the system works well. Keywords: Mobile Device, Printer, Scanner, Printer System, Scanner System キーワード:モバイル端末 , プリンタ, スキャナ, 印刷支援システム, スキャン支援システム

1. はじめに 近年では , スマートフォンの普及に伴い , ビジネ

スでもスマートフォンが利用されてきている . キー

マンズネットでは , 企業でのスマートフォンの導

入・検討状況に関する調査を行った 1 ) . その結果 , 大企業では 29.6%がスマートフォンの企業内導入を

行っており , 平成 23年から平成 25年の 2年間で約 4倍も増加している . しかし , スマートフォンのビジネ

ス利用にはいくつか課題があげられる . ・印刷機能

IDCではスマートフォン , タブレット利用者を対

象に印刷 , スキャン , ドキュメント管理のニーズに

ついて調査を行った2) . モバイル端末から印刷して

いない , または印刷したくない人は 50%で , これは , 2015年までに 25%まで減少すると予想している . その他に , 印刷したいが印刷方法がわからないという

回答者も多かった . この結果から , ビジネスでモバ

イル端末を利用する人のうち , 手段があれば印刷し

たいと考えている人が多いことがわかる . これによ

り , プリンタはモバイル端末からも紙書類を出力す

る装置として必要なものであることが明らかである . しかし , モバイル端末から印刷を行う場合 , その端

末にプリンタ固有のプリンタドライバが入っている

必要がある . しかし , OS, CPUがそれぞれ異なる多種

多様なモバイル端末において , 端末ごとにドライバ

を用意するのは難しい . ・ファイル共有機能

経済産業省では , 紙文書を電子化することで業務

の短縮化を図れるので , 電子化を推進している 3 ) . これは紙文書によって成り立っている業務に関して , すべての文書・情報を電子データとして共有するこ

とで複数人と同じタイミングで利用できるためであ

る . オフィス外や外出中の人と , インターネットを

介して相手と共有を行うことが可能である . この時 , クラウドのストレージサービスやメールを用いてオ

フィス外や外出中の人とデータとして共有する方法

がある . しかし , メールでは枚数の多い紙書類を共

有することは難しい . アイ・コミュニケーションで

は , ビジネスメールの実態調査を行った4) . その結

果 , ビジネスにおいてメールで送信する添付ファイ

ルは2MBが約29% , 5MBが約18% , 1MBが約16%であ

った . これは一般企業が受信可能とする上限は , 5MBから10MBであることが多いためである . ・文字入力機能

その他の問題として , スマートフォンのような画

面の小さなモバイル端末では文字が入力しにくいこ

とがあげられる . 株式会社日本能率協会総合研究所

では , ソーシャルメディアの利用実態について調査

を行った5) . ソーシャルメディアユーザの利用機器

はノートPC, デスクトップPCが55%を超えているの

に対し , スマートフォンは19.1%である . 理由として , スマートフォンでは文字が入力しにくいという意見

がある . これらを解決するためには , 印刷したいファイル

をそのまま送信し , 外部でデータ変換などのプリン

タドライバが行う処理を行う必要がある . その他 ,

*1 情報通信学部組込みソフトウェア工学科 School of Information and Telecommunication Engineering,Department of Embedded Technology

*2 情報通信学部経営システム工学科 School of Information and Telecommunication Engineering,Department of Management Systems Engineering

論文

8

5.まとめ

第 4 世代携帯電話で用いる OFDM 伝送信号に 1[μs]幅程

度の如何なる振幅のバースト雑音が混入してもその回線推

定歪と伝送誤りを完全に除去できることは既に示した.そ

こで本稿ではバースト雑音の替わりにバースト状の QAM信号を多重伝送する方法を考案し,OFDM 伝送誤りを零の

まま下記の提案方法により 1.44[Mbps]の信号を誤り無しに

同一周波数帯で多重伝送できる事を示した.まず,システ

ム構成の容易性と相互干渉の低減等の観点から多重伝送す

る QAM 伝送の各シンボル信号と OFDM 伝送システムの標

本化信号が同期を取るものとし,且つ QAM 伝送に号間干

渉が生じないことを考慮して QAM 信号のシンボルレート

を 15.36[Mbps]伝送帯域を 15.36[MHz]とした.またデータ

伝送レート 1[Mbps] 以上を条件に QAM 変調多値数を決め

64QAM の多重伝送とした.室内での使用を仮定して QAM変調信号の無線伝搬路をレイリーフェージング環境と想定

した.受信部は QAM 多重信号抽出部・波形整形部・QAM復調部の 3 部分で構成した.QAM 多重信号抽出部では参

照信号とデータ信号から成る OFDM 信号と QAM 信号から

成る受信信号から QAM 多重信号を抽出する.これは受信

信号から OFDM の参照信号を除去し,さらに OFDM の零

サブキャリア信号を抽出することによって 6 周期の QAM信号を抽出し,最後にその 1 周期分を切り出すことで QAM信号成分を抽出する.しかしこの6周期の QAM 信号は

OFDM伝送の帯域制限によって過渡特性が生じて1周期幅

収まらず QAM 信号を正確に抽出できない.そこで切り出

しの前の信号の周波数特性に自乗余弦特性を乗じ過渡特性

を収束させて 1 周期を切り出し,その後に逆特性を乗じ歪

無く QAM 信号を抽出した.シンボルレート 15.36[Msymb/s]の QAM 信号は 15.36[MHz]帯域で符号間干渉なしに伝送出

来る.しかしその出力は大きな過渡特性を有し標本化点の

ジッタに伴いシンボル誤りが生じてしまう.そこで,遮断

周波数±7.68[MHz]を固定し受信帯域 20[MHz]を最大限に活

用することを考慮し帯域制限特性に 33%ロールオフ特性を

用いた.最後に送信信号に埋め込んだ1シンボル信号を用

いレイリーフェージングの等化を行い 64QAM 信号の復調

を行った.この提案法により第 4 世代携帯電話の OFDM 伝

送に伝送誤りを引き起こす事なしに 64QAM 信号を多重で

き,かつこの 64QAM 多重信号を用い室内で誤りのないデ

ータを伝送が可能となった.またシミュレーションを用い

て両伝送にデータ誤りが無くかつ 64QAM 多重伝送によっ

て 1.44[Mbps]の伝送速度でデータを多重伝送できる事が確

認できた.このように本提案法は第 4 世代携帯電話に用い

る OFDM 信号と QAM 信号が同一周波数で互いに干渉せず

独立に多重伝送が可能となり周波数の有効利用に生かせる

ことが分かった.

参考文献 1) 原田他,”Super 3G (LTE)の方式概要および実験結

果”,NTT 技術ジャーナル 2008.11 2) 山下他,”WSSUS モデルを用いた広帯域 OFDM システ

ムの無線伝送推定方法の検討”,東海大学紀要情報理工

学部,Vol.2 No.1 2009 3) 藤森他,” OFDM 伝送システムにおけるバースト雑音

による伝送特性劣化の改善について”,東海大学紀要情

報通信学部,Vol.6 No.2 2013 4) http://www.3gpp.org/ 5) 藤森他,” OFDM 無線伝送システムにおけるバースト

雑音による回線推定精度劣化の零サブキャリア信号を

用いた改善”,東海大学紀要情報通信学部,Vol.6 No.1 2013

同一周波数を用いた OFDM信号と QAM信号の多重伝送法

- 8-