厚生労働大臣賞はナダヨシ、経済産業大臣賞は佐藤医科器械製作所が受賞　職業訓練法人アマダスクールは3月9日、アマダ・246ホール（神奈川県伊勢原市）で「第31回優秀板金製品技能フェア」の表彰式を開催した。　厚生労働大臣賞は㈱ナダヨシ（福岡県）の「保育園用デザインシンク」、経済産業大臣賞は㈱佐藤医科器械製作所（滋賀県）の「ねじりパイプ」がそれぞれ受賞した。　神奈川県知事賞は㈱インスメタル（千葉県）の「重なる！ いのしし鏡餅」、中央職業能力開発協会会長賞は㈱荏原精密（神奈川県）の「灯篭」、日刊工業新聞社賞は光陽電機㈱（三重県）の「フランシス水車（水力タービン）」、日本塑性加工学会会長賞は㈱西野精器製作所（茨城県）の「Metal TOP」、海外最優秀作品賞はAvalon Technology And Services Private Limited

（インド）の「タージマハル」が受賞した。

募集4分野から「グランプリ」を選出　募集分野は「単体品の部」「組立品の部」「溶接品の部」「造形品の部」「学生作品の部」の5分野。応募総数は263点で、このうち海外からの応募が104点と約40%を占めた。　「単体品の部」「組立品の部」「溶接品の部」「造形品

の部」の4分野は、今回から分野別の「グランプリ」を各1点、表彰することになった。「学生作品の部」は従来どおり金賞・銀賞・銅賞の表彰となっている。　グランプリに選ばれたのは、「単体品の部」がAarti Steel Enterprise（インド）の「スパイラル」、「組立品の部」が㈱田名部製作所（福岡県）の「SAKURA TUBE」、「溶接品の部」がPLANCHISTERIA INDUSTRIAL PEÑARANDA, S.L.（スペイン）の「漏斗」、「造形品の部」が谷口鈑金㈲（広島県）の「火除けの油蝉」となった。「学生作品の部」の金賞には、三重県立津高等技術学校（三重県）の「モノレールから見える街」が選ばれた。

海外からの応募作品が総数の40%を占める「第31回優秀板金製品技能フェア」

厚生労働大臣賞を受賞した㈱ナダヨシ（福岡県）の「保育園用デザインシンク」

経済産業大臣賞を受賞した㈱佐藤医科器械製作所（滋賀県）の

「ねじりパイプ」

「第31回優秀板金製品技能フェア」の表彰式会場

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神奈川県知事賞を受賞した㈱インスメタル（千葉県）の「重なる！ いのしし鏡餅」

中央職業能力開発協会会長賞を受賞した㈱荏原精密（神奈川県）の「灯篭」

　また、審査委員会特別賞には、ナサ工業㈱（福岡県）の「御神輿」、㈱伸原工業所（岩手県）の「N0001 蒸気機関車」、細見鉄工㈱（兵庫県）の「ハンドシュレッダー」が選ばれた。　田中電工㈱（大阪府）の「Main Case」、山口金属曲板工業㈱（山口県）の「廻り階段」、㈱山崎製作所（静岡県）の「KANZASHI 花と四季 4種」、CIOR SOCIEDADE LDA（ポルトガル）の「野生動物」、FACTORY PIPE LLC（米国）の「排気システム（ハーフカットモデル）」、FUJI IMPULSE VIETNAM Co.,LTD.（ベトナム）の「希望」にはアマダ賞が贈られた。

「“意外性が高い作品”に注目が集まる」　主催者挨拶で、職業訓練法人アマダスクール・末岡愼弘理事長は「今回は過去最多だった昨年に迫る出展数となった。新たな海外からの出展国の増加もあり、作品の質自体も非常に向上しているのが印象的だった。最新の加工機械やソフトウエアを活用しながら、熟練者の高度な板金加工技術に知恵と工夫を重ね、とくに“意外性が高い作品”――『どうやって加工したのだろう』と思わせる作品が高い評価を得ていた」。　「今後、日本の少子高齢化がますます進んで、加工設備の自動化やAI化がさらに進むと考えられる。板金加工の世界でも“シンギュラリティ”――AIがヒトを超える日がいずれ訪れるのか、予想はできない。しかしいずれにしても、高度な技術・技能を持つエキスパート人材がこれら最新のデジタル技術を駆使し、創意工夫を重ねることによって新たなモノづくりへと発展していくことに期待したい」と述べた。　来賓挨拶で、厚生労働省人材開発統括官付能力評価担当・毛利正参事官は「日本の産業が強い競争力を発揮

し、地域社会の発展に結びついていくためには、これまで蓄積された優れた技能が、モノづくり立国・日本の将来を担う世代にしっかりと継承されていくことが必要。当省としても次代を担う若者の技能獲得・技能尊重の機運の醸成を後押しすることが重要と考えている」と述べた。　経済産業省製造産業局素形材産業室・秋元祥代室長補佐は、岡本繁樹室長のメッセージを代読して「今回の受賞作品の中には、産業界への展開が期待できる作品も多くある。受賞者のみなさんには、日本の製造業の牽引役として、今後ともさらなる技術・技能の発展、競争力強化に向けた取り組みに期待したい」と述べた。

「3次元データを活用した高精度な製品が目立つ」　審査委員会・安田克彦副委員長（安田技術士事務所

（高付加価値溶接研究所）所長）は総評と講評で次のように語った。　「海外からの作品が総数の40%を占め、高い評価を受ける作品も多数見られるようになった。海外作品としては、中国・イタリア・インド・米国などから出展があった。今大会ではとくにインドの優秀な作品が目立った。海外で当フェアの意義が評価されていることは非常に喜ばしい。その一方で、国内のみなさまにはさらなる進歩・発展をお願いしたい」。　「今回の特徴として、たとえば3Dスキャナーや3次元CADのように、3次元化された情報をうまく使って、ブランク加工や複雑な曲げ加工を精度良く行い、そうした部品を組立・接合することで、より精度の高い製品がつくり上げられていた。本フェアが目標とするところは、技能の研鑽や加工技術の進化はもちろんだが、今後はヒトとソフト・機械とが融合して、新しい製品づくりや新分野への挑戦、変化する社会環境へ適応するモノづくりへと進化していくことを期待した

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い」と述べた。　また、「完成品を提示されただけでは、その良さや加工上の難しさがなかなか見えてこない場合がある。できれば製作過程の製品を展示してもらえると、見学者にとっても大きなヒントとなり、当フェアの意義を高めることになると思う」と応募作品の見せ方について要望した。

技術力・独創性が際立つ上位7賞　安田副委員長は、厚生労働大臣賞を受賞した「保育園用デザインシンク」（ナダヨシ）について「厚生労働省では“幼児教育”あるいは“安全”を主要なテーマに挙げており、テーマにも沿っていることから本賞の受賞となった。“安全”の面では角のRをこれまでのものより大きく取るとともに、曲げ深さを深くすることで、手が入る危険性をなくしている。“幼児教育”の面では、従来の平面で平坦な形状から、遊園地のプールを思わせる円錐状のカタチで、しかもテーパーを持たせている。こうした加工を行うにはいろいろな難しい問題が発生したと思う。そうした問題をこれまで培ってきた技術・技能を駆使して、仕上がりの良い形状につくりあげている」と評した。　経済産業大臣賞を受賞した「ねじりパイプ」（佐藤医科器械製作所）については、「まず、ベンディングの連続曲げでジャバラ状の製品をつくり、それをロール曲げすることで筒状の製品に仕上げている。突起を持つ材料を、突起部を変形させることなく横方向に曲げること自体が難しい。それをクリアし、しかも両端面部がぴったり一致している。こうした螺旋状の蛇腹は、従来の平行な蛇腹と比べて、中を通る流体の流れが向上することが予想され、いろいろな面で使い道が出てくるのではないか」と評した。　神奈川県知事賞を受賞した「重なる！ いのしし鏡餅」

（インスメタル）については、「今回のフェアでは積層板金による組立品が高い評価を受けた。これはその中のひとつ。モデルを粘土で作り、3Dスキャナーで3次元データとして取り込んでいる。そのデータを利用して、各板の形状を決定し、レーザ切断して積層している。板厚0.5㎜のステンレス鋼板を使い、表面に現れる文様も非常になめらか。従来の積層の簡易金型から、さらに高精度な金型に移行していく可能性を秘めている」と評した。　中央職業能力開発協会会長賞を受賞した「灯篭」（荏原精密）については「日本古来の木組みの製品を、金属の細かい部材を組み合わせることで非常に重厚な製品に仕上げている。一部に真鍮板を曲げた部材を使用することで、色彩の変化を与えるとともに、スプリングバックで製品全体の剛性をさらに高める効果も考えられている」と評した。　日刊工業新聞社賞を受賞した「フランシス水車（水力タービン）」（光陽電機）については「歪みを少なくするため、レーザ溶接によって組み上げている。レーザ溶接を行う端面の密着精度が極めて良好でなければ溶接途中で穴があくが、各部分が良好にレーザ溶接されており、部品ごとの精度の高さがうかがえる。くわえて、内部を通る流体の流量を変化させるために羽根を回転させる機構になっているが、この羽根も曲げ・レーザ加工とも非常に精度良くつくられている」と評した。　日本塑性加工学会会長賞を受賞した「Metal TOP」

（西野精器製作所）については、「コマは従来、綿密に計算された設計図に基づいて機械加工などでつくられてきたが、この作品は板金加工で挑戦した。コマ本体と軸の中心軸がぴったり一致し、形状も非常に精度良く仕上げたことで、なめらかな回転が得られる。ブランク・曲げ・組立の加工精度が際立っている」と評した。

日刊工業新聞社賞を受賞した光陽電機㈱（三重県）の「フランシス水車（水力タービン）」

日本塑性加工学会会長賞を受賞した㈱西野精器製作所（茨城県）の「Metal TOP」

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