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本田技研工業株式会社 1 SPORT HYBRID i-DCD( インテリジ、工ント・デュアル・クラッチ・ドライブ) 通称名 | 車両型式 FITHYBRID I DAA -GP5 1 概要(図 I-1) 出典資料 サービスマニュアル 60T5CDOO SPORT. HYBRID. i -DCD (インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)(以下, i -DCD という) システムは, LEB 型直列 4 気筒アトキンソン・サイクル・エンジンに,モータを内蔵した DCT( デュアル・ クラッチ・トランスミッション)とリチウム・イオン・バッテリを組み合わせた,パラレル型ハイブリッド・ システムである 。 i-DCD システムは,高電圧バッテリでモータを動かして走行する iEV 走行J ,エンジンを駆動モータでア シストして走行する「ハイブリッド走行J ,及びエンジンで直接駆動して走行する「エンジン走行」を状況に合 わせて選択して走行を行う 。 また,減速時には「回生J を行い高電圧バッテリに充電をする 。 これらの走行を, 条件に合わせて最適に切り替え,力強い走行と優れた燃費性能を高次元で実現している 。 i-DCD システムは,エンジンとモータを切り離すことができるため,高出力のモータにより EV 発進を可 能とすると共に, EV 走行領域の拡大が図られている 。 また,減速時のエネルギ回生効率も高めている 。 エンジン(アトキンソン・ サイクル) モータ内蔵 DCT リチウム・イオン・バッテリ内蔵 IPU 1-1 概要 i 丹、 υ 1li

本田技研工業株式会社 1 SPORT HYBRID i-DCD(イン …kiroku.bufsiz.jp/gijyu/H26/gat/H26-honda.pdf本田技研工業株式会社 1 SPORT・HYBRID・i-DCD(インテリジ、工ント・デュアル・クラッチ・ドライブ)

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本田技研工業株式会社

1 SPORT・HYBRID・i-DCD(インテリジ、工ント・デュアル・クラッチ・ドライブ)

通称名 | 車両型式

FIT HYBRID I DAA -GP5

1 概要(図 I-1)

出典資料

サービスマニュアル 60T5CDOO

SPORT . HYBRID . i -DCD (インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)(以下, i -DCDという)

システムは, LEB型直列4気筒アトキンソン・サイクル・エンジンに,モータを内蔵した DCT(デュアル・

クラッチ・トランスミッション)とリチウム・イオン・バッテリを組み合わせた,パラレル型ハイブリッド・

システムである。

i-DCDシステムは,高電圧バッテリでモータを動かして走行するiEV走行J,エンジンを駆動モータでア

シストして走行する「ハイブリッド走行J,及びエンジンで直接駆動して走行する「エンジン走行」を状況に合

わせて選択して走行を行う 。また,減速時には「回生Jを行い高電圧バッテリに充電をする。これらの走行を,

条件に合わせて最適に切り替え,力強い走行と優れた燃費性能を高次元で実現している。

i-DCDシステムは,エンジンとモータを切り離すことができるため,高出力のモータにより EV発進を可

能とすると共に, EV走行領域の拡大が図られている。また,減速時のエネルギ回生効率も高めている。

エンジン(アトキンソン・サイクル)

モータ内蔵DCT

リチウム・イオン・バッテリ内蔵IPU

図 1-1 概要

i丹、

υ

1li

-l..r.I温・

2 構造・機能

1 ) 全体配置(図 1-2)

i-DCDシステムは,デュアル・クラッチ・トランスミッション (DCT)に内蔵された交流同期式のモータ,

DC172.8Vの高電圧バッテリ,及びそれらの制御装置と補機類である IPU(インテリジェント・パワー・ユニッ

ト)(以下, IPUという)で構成されている。

モータは, トランスミッションのメイン・シャフトに取り付けられている。また IPUは荷室下部に搭載さ

れ,モータと IPUは パワー・ケーブルにより接続されている。

モータ

図 1-2 全体配置

2) システム・ブロック図(図 1-3)

DCT. ハイド口・スタティッククラッチアクチュエータギヤ・チェンジ・アクチュエータ

モータ

クラッチ/ギヤアクチュ工ータ制御

3~目交流

MID表示

POWER/CHARGE表示

モータ・口ータ位置

モータ'駆動/回生制御曹司帽ー,

• I ECU J4-ーピ3可ッテリ状態

I TCM--1 W 巴…Jj1 A A 1.:J.'='';II-,]3;''''',"",'''''''''''''- I

a ・ I I I : L-ALンスミ ッションーi L-Z34r叫男22ボ 11:

B 事 一一…晴世…・ "…・・・…ー バッテリ状態 j .:

ーーー -:CAN信号

I I Lーバッテリ電圧

1..両脚 ・・バッテリ ・セル状態・

12V供給

図1-3 システム・ブロック図

-138 -

3) 構成部品の構造・機能

(1) モータ(図 1-4, 5)

-I.ZI温・

モータは, DCTに内蔵されており,モータ・ステータはトランスミッション・ハウジングに,モータ・ロー

タはトランスミ ッションのメイン・シャフトに取り付けられている。また ロータ外側にはレゾルパ・プレー

ト,モータ・ロータ・ポジション・センサ,L.サイド・カバーが取り付けられており,L.サイド・カバー取

り付けボルトは軽量化のためアルミ・ボルトを使用している。

モータは,軽量かっ高効率な3相交流同期式で, EV走行及びエンジンをアシストするモータとしての機能と,

回生ブレーキなどの運動エネルギやエンジン出力を電気エネルギに変換するジ、ェネレータとしての機能を併

せもっている。

モータ主要諸元

図 1-4 モータ

モータの冷却は油冷式となっており,樹脂製のL.サイド・カバー内の油路を通ったトランスミ ッション・

フルードによりモータを直接冷却する構造となっている。

しサイド・カバー

図 1-5 L.サイド・カバー

-139 -

-UII週・

(2) インテリジェント・パワー・ユニット (IPU)(図 1-6)

IPUは,パワー・コントロール・ユニット(以下, PCUという),バッテリ・パック(高電圧バッテリ),ジヤ

ンクション・ボード,モータ /バッテリ ECU,及びIPU冷却ファンから構成されており,直流の高電圧回

路を IPU内に集中配置することにより安全性の向上を図っている。

IPUは,車両の低重心化及び荷室スペース確保のため荷室下部に搭載されており,小型化により荷室容量を

確保している。

図 1-6 IPU

(イ)高電圧バッテリ(図 1-7, 8)

高電圧バッテリは, Li -ion (リチウム・イオン)バッテ リを採用している。また,高電圧バッテリを集約し

てバッテリ・パックとしている。

バッテリ・パックは,直列に接続された4モジュール (1モジュールあたり 12セル,計48セル)で構成され

ており,総電圧は 172.8V,容量は5.0Ahである。また,バッテリの状態を監視するため,バッテリ・モジ、ユー

ルに内蔵されているサーミスタ・タイプの温度センサのほかに,各セルの電圧を監視するセル電圧センサが

取り付けられている。

IMAバッテリ主要諸元

型式

モジュール電圧

セル総数

総電圧

定格電圧

Li-ion(リチウム・イオン)バッテリ43.2(V)

48(12セル X4モジユール)172.8(V)

5.0(Ah)

セル電圧センサ

図1-7 高電圧バッテリ

-140 -

-E亙Z温・

〈回路図〉

バッテリ電流センサ

メイン・ヒユース.

モータ/バッテリECUより(コンタクタ駆動電源)

モータ/バッテリ ι ECUへ "¥.(バッテリ・パック電圧) 、

プリチャージ・コンタクタ

バッテリ温度センサ4

F九N

A

C

A

J

、ツ情

タへ同

utJ

Cセ

ヰ‘

F』「、

バッテリ温度センサ3

バッテリ温度センサ2

バッテリ温度センサ 1

モータ/バッテリ 仁ECUへ .J.(バッテリ・パック 1. 内部温度信号) l.

図 I-8 高電圧バッテリ回路図

-141 -

-E重盛温・

(口) ジヤンクション・ボード(図 1-9, 10)

バッテリ・パックに取り付けられたジヤンクション・ボードには,メイン・ヒューズ,コンタクタ,バッテ

リ電流センサなどが配置され高電圧回路の集中化を図っている。

(a) コンタクタ

バッテリ・パックの+極側にメイン・コンタクタとプリチャージ・コンタクタ 一極側にサブ・コンタクタ

を配置している。これらのコンタクタはモータ /バッテリ ECUによって制御され,高電圧回路の接続及び

遮断を行う 。

(b) バッテリ電流センサ

バッテリ電流センサは,高電圧バッテリの入出力電流を検出している。センサが検出した入出力電流は,高

電圧バッテリ残量(SOC)の算出に使用される。

ブリチャージ・

コンタクタ

図1-9 ジヤンクション・ボード構成

高電圧回路(ー)より

クハ竹一戸

サ一町

-巧

骨竜

+

i

一iJ

リンゴ

テセ竺

ツ荒一一一

パ電f.1t

ャチリ抗

プ抵

高電圧回路(+)ヘ

モータ ECUへ(コンタクタ駆動信号)

メイン・ヒユース。

プリチャージ・

コンタクタ

モータ ECUより

(コンタクタ駆動電源)

図1-10 ジヤンクション・ボード回路図

-142 -

-E重盛温・

V沖サービス・プラグ(図 1-11)

サービス・プラグは バッテリの高電圧回路及びコンタクタ制御回路上に設置されており ハイブリッド・

システムやその周辺部位の点検整備の際にサービス・プラグを取り外すことで,高電圧回路及びコンタクタ

制御回路が遮断され,安全に点検整備を行うことが可能となる。

【サービス・プラグの位置】

サービス・プラグ-カバー

バッテリ電流センサ

メイン・ヒューズ

モータ・バッテリECUより

(コンタクタ駆動電源)フ。リチャージ・コンタクタ

ιt℃

圧電

l

J

7

、、、,,

Hソ

タヘチ

一山川

モHhv

図 1-11 サービス・プラグ

(ニ.) PCU (図 1-12)

PCUはインバータ DC-DCコンバータ 及び相電流センサなど 各機能を集約して小型化を図っている。

図 1-12 PCU

- 143 -

-E亘rIaI・

(a) インバータ(図 Iー13)

インバータは,パワー・モジ、ュール,ゲート・ドライブ回路,コンデンサを内蔵し,また,放熱のためのヒー

ト・シンクを一体化し,小型軽量化を図っている。

パワー・モジュールは, 6個のIGBT(Insulated . Gate . Bipolar . Transistor)で構成されるブリッジ回路に

より,高電圧バッテリの172.8Vの直流電流とモータの3相交流電流の変換を行っている。モータ /バッテリ

ECUからの信号によりゲート・ドライブ回路がIGBTを制御し, 172.8Vの直流から 3相交流への変換(アシ

スト時)及び3相交流から直流への変換(充電時)が行われる。

インバータは作動により発熱するため, IPU冷却ファンにより発生する冷却風がヒート・シンクを通ること

により冷却される構造となっている。また,インバータ温度を監視するため温度センサが内蔵されている。

ゲート・ドライブ回路 温度センサ

インバータ

図1-13 インバータ

(b) DCーDCコンバータ

DC-DCコンパータは,ハイブリッド・システムにより供給される DC172.8VをDC12Vに変換し, 12Vバッ

テリや12V電装品に供給している。

PGM-FI. ECUは 消費される電流量に応じてDC12Vの供給電圧を制御している。モータ /バ ッテリ

ECUは,高電圧バッテリ残量(SOC)低下時などにDC-DCコンバータの作動を停止する。その後,それら

が正常状態になると作動を復帰する。

DC-DCコンパータは,内蔵されている温度センサからの温度情報をモータ /バッテリ ECUに送っており,

温度が異常上昇した場合や入力電圧や出力電圧の異常などを検知した場合にモータ /バッテリ ECUはDC-

DCコンパータの作動を停止し 充電警告灯が点灯する。また マルチ・インフォメーション・ディスプレ

イ(以下, MIDという)に警告が表示される。

DC-DCコンバータは作動により発熱するため, IPU冷却フ ァンにより発生する冷却風がヒート・シンクを

通ることにより冷却される構造となっている。

- 144 -

-E重盛温・

(ホ) IPU冷却ファン(図 1-14)

ハイブリッド・システムは,充放電を繰返すことにより,バッテリ・パックやDC-DCコンパータ,インバー

タが発熱する。この熱を放出し,バッテリ性能の確保とシステムの保護をするため,荷室後方にIPU冷却ファ

ンを搭載している。

IPU冷却ファンは,ファン・モータ制御回路と回転センサを内蔵しており,モータ /バッテリ ECUは,バッ

テリ温度及びDC-DCコンバータ,インバータの温度が適切になるようにIPU冷却ファンを制御している。

冷却風は,リヤ・シート右側から吸入され,バッテリ・パックから DC-DCコンパータ及びインバータのヒー

ト・シンクを通り 荷室へ排出される。

IPU冷却ファン

DC-DCコン/'¥ータ

図 1-14 冷却ファン

(ベモータ/バッテリ ECU

モータ /バッテリ ECUは,各センサ入力信号やPGM-FI.ECU, TCM(トランスミ ッション・コントロール・

モジュール),インバータなどからの信号に基づき,高電圧の監視及び制御,高電圧バッテ リ残量(SOC)の

算出や IPU冷却ファンの制御などを行っている。また, PCM -FI . ECUからのモータ・トルク要求及び

SOCに基づき,車両の状態に応じた最適なアシスト量及び発電量になるようにインバータを介してモータ

を制御している。

モータ/バッテリ ECUは,上書き可能な ROMを搭載しており, MVCI (Modular. Vehicle. Communication.

Interface)を使用することで最新のプログラムにアップデートすることが可能である。

- 145 -

-2.111温・

(3) パワー・ケーブル(図 Iー15)

IPUからモータまでのパワー・ケーブルは,外傷防止のため,糧色のアルミ・パイプで保護され,クランプ

で床下に固定されている。パイプの中には,モータ制御用の3相ケーブルと, 12Vバッテ リへDC12Vを供

給する DC-DCコンバータ・ケーブル,及びA/Cコンブレッサ用高電圧ケーブ、ルが通っている。

Jr/らむと232タケーブル)

パワー・ケーブルパワー・ケーブル

図 Iー15 パワー・ケーブル

(4) 警告灯関連(図 1-16)

ハイブリッド・システムの異常が検知された場合は コンビネーション・メータ内のパワー・システム警告

灯,充電警告灯の点灯及びMIDに内容を表示して運転者に異常を知らせる。

摺畠白パワー・システム

警告灯充電警告灯

表示例

図 1-16 警告灯

-146 -

-E重盛温・

(5) ハイブリッド関連表示(図 1-17)

ハイブリッド・システム関連の表示には,スピードメータ左にリチウム・イオン・バッテリからのアシスト

状態と回生によるチャージ状態を表示する「パワー/チャージ・メータ」と走行準備状態を表示するiREADY

表示J,EV走行を表示するiEV表示」が設けられている。

スピード・メータ右のMIDの選択画面には, iエネルギ・フロー・メータJが選択でき,走行中のエンジン,モー

タの作動状態やチャージ(回生)の状態,及び、高電圧バッテリの充電状態を表示する。

【エネルギ・フロー表示】

「エンジン走行」

MID

「ハイブリッド走行」

rEV走行J r回生」。|.十時I

READY表示 EV表示

4) ハイブリッド・システムの作動

( 1 ) 基本作動概要(図 1-18)

①発進

モータのみでのEV走行を行う 。

図 I-17 表示関連

自ー-~バッテリ残量を日量面圃 セグメン卜で表示

※高電圧バッテリの容量が少ない場合,高電圧バッテリ温度やエンジン水温が低い場合は EV発進を禁止

する。

②緩加速

クラッチの接続によりエンジンを始動し エンジンでの走行をモータがアシストする。

③中低速クルーズ

モータのみでのEV走行を行う 。

④加速

クラッチの接続によりエンジンを始動し,エンジンでの走行をモータがアシストする。

⑤高速クルーズ

エンジンのみでの走行を行う 。

走行状況に応じて余裕駆動力分のバッテリへの充電を行う 。

-147 -

-・⑥減速

モータにより減速エネルギを回生し,バッテリへの充電を行う 。

⑦停車

エンジン,モータが停止した状態で停車する。

※高電圧バッテリの容量が少ない場合は,エンジンは停止しない。

図 1-18 基本作動

(2) 走行パターン

i-MMDシステムは DCTにモータを内蔵することにより エンジン走行,モータ・アシスト走行,減速

時の回生に加えて 奇数段ギヤを使用した EV走行や,走行中において駆動軸と切り離した状態、でのエンジ

ンによる発電を可能としている。また, EV走行中にエンジンの始動が必要な場合は,奇数段クラッチを締

結しエンジンの始動を行う 。

(イ) EV走行

EV走行は奇数段ギヤ使用走行およびリバース走行にて可能となる。リバース EV走行では, 1速ギヤを使

用し,モータを逆回転させている。

-148 -

-E亘彊a・(a) EV走行代表例(モータ 1速駆動)(図 Iー19)

EV走行では,モータの回転はプラネタリ・ギヤ内の l速ギヤ,メイン・シャフトの3速ギヤ及びカウンタ・

シャフトを経由してファイナル・ギヤよりタイヤへ伝達される。なお, EV走行では,奇数段及び偶数段クラッ

チは切り離されており タイヤの回転はモータのみに伝達されるため モータの回転速度は車速と連動する。

インフ。ツ卜・シャフト

プラネタリ・ギヤ(1速ギヤ) 偶数段クラッチ(非締結)

タモ

.. / ...... /

¥ ‘/

ファイナル・ギヤ

図 1-19 EV走行(1速)

- 149 -

-~温・

(口) エンジン始動(図 Iー20)

エンジンの始動は,奇数段クラッチを締結することによりモータの回転がメイン・シャフトよりエンジンに

伝達される。これにより,エンジンがクランキングされ始動する。また, EV走行中のエンジン始動では,モー

タへの要求トルクがクランキング中に変動するため, トルク変動がタイヤに伝達しないようモータ駆動トル

ク及びクラッチ締結力を制御している。

セカンダリ・

シャフ卜

インフ。ツ卜・シャフト

図 1-20 エンジン始動

-150 -

⑧{

-mBI温・

川エンジン走行

エンジン走行では 偶数段クラッチまたは奇数段クラッチを締結してエンジン回転をカウンタ・シャフトに

伝達しエンジン走行を行う 。

(a) エンジン走行代表例(エンジン 2速駆動)(図 1-21)

偶数段のエンジン走行時は,偶数段側クラッチを締結することにより,エンジンの回転はインプット・シャ

フトからアイドル・ギヤ セカンダリ・シャフトの2速ギヤ及びカウンタ・シャフトを経由してファイナル・

ギヤよりタイヤへ伝達される。

インフ。ツ卜・シャフ卜

メイン・シャフ卜

ファイナル・ギヤ

インプット・シャフトより

図 1-21 エンジン走行(2速)

-Ei

Fhd

t,ょ

-~温・

(ニ) モータ・アシス卜走行

モータ・アシスト走行では,偶数段クラッチ又は奇数段クラッチを締結したエンジン駆動時に,モータの回

転を,奇数段ギヤを使用してカウンタ・シャフトに伝達しモータ・アシスト走行を行う 。

(a) モータ・アシス卜走行代表例(エンジン2速駆動+モータ 3速アシスト)(図 Iー22)

偶数段のモータ・アシスト走行時は,偶数段側クラッチを締結することにより エンジンの回転はインプッ

ト・シャフトからアイドル・ギヤ,セカンダリ・シャフトの2速ギヤ及びカウンタ・シャフトを経由してファ

イナル・ギヤよりタイヤへ伝達される。このとき,モータの回転はメイン・シャフト メイン・シャフトの

3側ギヤ及びカウンタ・シャフトを経由してファイナル・ギヤよりタイヤへと伝達される。これによりエン

ジン 2速駆動+モータ 3速アシスト状態となる。

インフ。ツト・シャフト

モータ

ヤ/ギ

速ダト

2

ンフ

カヤ

セシ

ギヤインフ。ツ 卜・

シャフ卜より

図 1-22 モータ・アシスト走行(3速)

つ山phU

14i

-l..rt}JI姐・

除) 減速回生走行

減速時は,エンジンを停止し奇数段及び偶数段のクラッチを切り離すことによりタイヤの回転をモータの

みに伝達し減速回生走行を行う 。

(削 減速回生走行代表例 (EV3速回生走行)(図 1-23)

減速時,タイヤの回転はファイナル・ギヤからカウンタ・シャフト,メイン・シャフトの3速ギヤ,及びメ

イン・シャフトを経由してモータへ伝達され,モータが回転することによりジ、ェネレータとなり発電(回生)

を行う 。このとき 両方のクラッチを切り離すことによりタイヤの回転はモータのみに伝達されるため,効

率良く発電(回生)を行う 。

インフ@ツ卜・シャフ卜

-~-----

図 1-23 減速回生走行(3速)

(削減速回生走行中の変速

5速ギヤでの減速回生走行中に変速が必要な場合,ギヤを一旦ニュートラルにした状態で, 3速ギヤへの変

速を行う 。ニュートラルでは回生ブレーキが使用できないため, PGM-FI'ECUは回生ブレーキから油圧

ブレーキへの切り替えを行う 。3速ギヤへの変速後,減速回生が再開される。

内くU

Fhd

Eよ

-E亙Z温・

(ヘ) エンジン2速駆動+ニュートラル発電(図 1-24)

2速ギヤ走行(偶数段クラッチ締結によるエンジン走行)と同時に,メイン・シャフトがニュートラルの状態

で奇数段クラッチを締結することでエンジンにてモータを駆動し発電を行う 。また,アイドリング時は,奇

数段クラッチのみ締結することでエンジンにてモータを駆動し発電を行う 。

インフ。ツ 卜・シャフ卜

モータ

ファイナル・ギヤ

インプット・シャフトより

図1-24 エンジン2速+ニュートラル発電

(3) モータにてエンジンを始動できない場合

PGM -FI. ECUは モータ /バッテリ ECUからの信号を元に SOCの低下時低温時又はシステムの故

障発生時など,モータでのエンジン始動ができない状況を判断し,スタータによるエンジン始動を行う 。

(4) Lレンジ及びSモードでの走行

Lレンジ及びSモードを選択した場合は, PGM -FI . ECUは駆動力が必要と判断し, EV走行を禁止し,

EV走行からエンジン+モータ・アシスト走行に切り替える。またSモード選択時は 通常時よりも目標駆

動力特性を引き上げることで 加速時のトルクを向上させている。

(5) 高電圧バッテリ出力制御

バッテリ出力制御ではバッテリの状態を監視し,バッテリの状態に合わせたアシスト量 充電量の制限値を

設定することにより,高電圧バッテリを安全かつ長寿命に使用できる領域で運転できる ように制御を行う 。

バッテリ出力制御では,高電圧バッテリの残量(SOC),温度,連続出力時間などで制御を行っている。

(6) 低車速走行時充電制御

(イ) 低車速走行中発電制御(SOC回復制御)

低車速走行中, SOCが低下してる状態では,急勾配登坂等の駆動力を確保できない可能性が出てくるため,

駆動力を要求されていない走行状態の際にエンジン 2速駆動+ニュートラル発電に切り替え,発電量を確保

して SOCを回復させる。

(7) 衝突遮断制御

SRSユニットが衝突信号(正突,側突,追突)を検知した場合,モータ /バッテリ ECUはSRSユニットから

A吐

「「υ

Ei

-fjLrtl・の信号により DTCをストアし,コンタクタを OFFすることにより高電圧回路の遮断を行う 。この時,

POWER . SYSTEM警告灯,充電警告灯及びSRS警告灯が点灯し, READY表示灯は消灯する。衝突遮断

制御は, HDS (Honda . Diagnostic . System)を使用してモータ /バッテリ ECUの衝突遮断履歴又はDTCを

クリアすることにより解除される。

3 点検・整備のポイン卜

1 ) 点検・整備時の注意事項

(1) PGM一円システムメンテナンス・モードの起動手順(図 Iー25)

点検や整備時及び車検の検査工程などでエンジンを始動させて各機構の点検,調整,確認を行う場合は,下

記手順にて強制的にエンジンを始動させることができる。

①POWERスイッチを OFFモードにする。

60秒以内に以下の操作を行う 。

②ブレーキ・ペダルを踏まずにPOWERスイッチを ONモードにする。

③Pポジションで,アクセル・ペダルを 2回全閉まで踏んだ後,足を離す。

④ブレーキ・ペダルを踏み,セレクト・レバーを Nポジションにし,アクセル・ペダルを2回全開まで踏んだ、後,

足を離す。

⑤ブレーキ・ペダルを踏み,セレクト・レバーを Pポジションにし,アクセル・ペダルを 2回全閉まで踏んだ後,

足を離す。

⑥ブレーキ・ペダルを踏み, POWERスイッチを押すと,

メンテナンス・モードが起動しエンジンが始動する。

マルチ・インフォメーション・ディスプレイにiMaintenance

ModeJが表示される。

※PO羽TERスイッチを OFFモードにすると,エンジン

が停止しメンテナンス・モードがキャンセルされる。

(2) 高電圧回路に関する作業前の確認

図 1-25 メンテナンス・モード

(イ) 高電圧回路の点検・整備上の注意

高電圧回路に関わる点検・整備を行うエンジニアには労働安全衛生法第59条並びに労働安全衛生規則第36

条により特別教育の受講が義務付けられている。

高電圧回路やその付近の点検及び整備作業を実施する前には,感電や火災等の事故を防ぐために必ず以下の

手順に従い点検を行うこと。また,高電圧回路の故障診断など電圧を遮断していない状態での作業やバッテ

リ・パ ック, PCU,ジヤンクション・ボード及びパワー・ケーブルに関わる作業を実施する際には, i高電

圧作業中,触るな」をステアリング及び作業場所に標示して安全を確保し必ず絶縁手袋を装着し絶縁工

具を使用すること。

(口) 衝突遮断履歴のクリア

モータ /バッテリ ECUは, SRSユニットから送信される衝突検知信号(CDS)を受信すると,モータ /バッ

テリ ECUに内蔵する不揮発性メモリに衝突遮断履歴を書 き込み,次回以降のシステム起動時に, IPU内の

メイン・コンタクタへの制御信号を遮断することにより高電圧回路への電源供給を禁止する。高電圧回路へ

の電源供給を再開するには,衝突遮断履歴をクリアする必要がある。

(a) 衝突遮断履歴のクリア手順

①POWERスイッチを ONモードにする。

Fhu

Fhu

tEi

-U]I温・

②運転席左側にあるデータリンク・カブラにHDSを接続する。

③HDSが車両及び電動パワー・トレイン/IMAシステムと通信することを確認する。通信しない場合は,デー

タリンク回路を点検する。

④HDSで電動パワー・トレイン/IMAシステムを選択する。

⑤インスペクション・メニュー内の衝突遮断履歴消去を HDSで実行する。

川サービス・プラグの取り外し/取り付け(図 1-26)

高電圧回路やその付近の点検及び整備作業を実施する前には,感電や火災等の事故を防ぐために必ず以下の

手順に従いサービス・プラグを取り外してから,高電圧端子電庄が下がっているのを確認してから作業を開

始する。

直E サービス・プラグの脱着及びマークの付いている部品に関する整備作業を実施する際は,必ず絶縁工具,絶

縁手袋を使用すること。また,取り外した後は絶縁テープで絶縁処理を行うこと。

①POWERスイッチを ONモードにする。

②運転席左側にあるデータリンク・カブラにHDSを接続する。

③HDSが車両及び電動パワー・トレイン/IMAシステムと通信することを確認する。通信しない場合は,デー

タリンク回路を点検する。

④DTCを確認し. DTCをストアしている場合はそのDTCコードを記録する。

⑤POWERスイッチを OFFモードにし,誤作動を防ぐためにスマート・キーを離れた場所へ置いておく 。

⑥ 12Vバッテリ(-)端子の接続を外す。

⑦カーゴ・フロア・ボードを取り外す。

③サービス・プラグ・リッドを取り外す。

⑨レバー・ロックを押しながらレバーを引き上げて,サービス・プラグを取り外す。

|アドバイス| 取り外したサービス・プラグは,作業中にほかのエンジニアが誤って接続することがないようにする

こと。

⑩サービス・プラグ・ベースを絶縁テープで絶縁する。

⑪サービス・プラグの取り付けは,サービス・プラグを差し込み, レバー・ロックを押した状態で, レバーを

ロック位置まで下げて サービス・プラグをロックする。

-156 -

-U)I温・

【サービス・プラグ・リッドの取り外し】 【サービス・プラグの取り外し】

1

【サービス・プラグの取り付け】【サービス・プラグ・ベースの絶縁】

ムサービス

‘一一一 プラグ・ベース

三一" ~

図 1-26 サービス・プラグの取り外し/取り付け

に) 高電圧バッテリ端子電圧の確認(図 1-27)

IPUカバーを取り外し,高電圧端子間の電圧を測定し,

端子電圧が30V以下であることを確認する。

(3) 故障診断の進め方

付) パワー・システム警告灯/充電警告灯が点灯した場合(図 Iー28)

①POWERスイッチを ONモードにし,パワー・システム

警告灯及び充電警告灯の点灯を確認する。

②パワー・システム及び充電警告灯が点灯している場合は,

DTC(ダイアグノスティック・トラブル・コード)を確

認し, DTC別故障診断表に より指示された故障診断を

行う 。また, DTCが表示されていない場合は,症状別

故障診断表により指示された故障診断を行う 。

③すべての故障診断が終了したのち,必要な修理作業を行

い,故障診断終了後の処置を行う 。

i「「U

11ム

図I一27 高電圧バッテリ端子電圧の確認

関畠白パワー・システム + 品 帥 止 何

警告灯 ん唱盲 ロ川

図 1-28 警告灯

-E墨彊温・

(口) 高電圧バッテリ関連の警告が表示された場合(図 1-29)

高電圧バッテリの温度が規定の範囲から外れた場合 以下の警告がコンビネーション・メータのMIDに表

示される。また, 警告が継続して表示される場合は, DTCを確認し, DTC別故障診断表により指示された

故障診断を行う 。また, DTCが表示されていない場合は,症状別故障診断表により指示された故障診断を

行う 。

i ハイmッド用バッテリー温度異常I| 温度が正常になるまで |

l一一一ため~

起動できません I

暖気が完了するまで I

図1-29 高電圧バッテリ警告表示例

一;…外信J田村低~抗~

起動できません .

更ベ ーい, ー

主f- ・・

~:t~め出力が制限されます

、-ミ

川 12V充電システムの警告が表示された場合(図 Iー30)

12V充電システムの異常が継続しシステムの電圧が低

下した場合,以下の警告がコンビネーション・メータの

MIDに表示される。警告が継続して表示される場合は,

DTCを確認し,DTC別故障診断表により指示された故

障診断を行う 。また, DTCが表示されていない場合は,

症状別故障診断表により指示された故障診断を行う 。

図1-30 12V充電システム警告表示例

(4) DTCの確認/クリア

(イ) HDS又は外部診断器を使用する場合

同) DTCの確認/クリア(図 1-31)

①運転席左側にあるデータ リンク・カブラに HDS又は外

部診断器を接続する。

②POWERスイッチを ONモードにする。

③HDS又は外部診断器でDTCの確認又はクリアを行う 。

-158 -

デ、ータリンク・カブラ

図1-31 DLCカブラ

(口) 外部診断器を使用しない場合

同) DTCの確認(図 1-32, 33)

-iIII温・

①運転席左側にあるデータリンク・カブラに DLCターミ

ナル・ボックスを接続する。

② DLCターミナル・ボックスのNo4端子 とNo9端子を短

絡させスイッチを押す。

③POWERスイッチを ONモードにする。

④シフト・ポジション・インジケータが点滅し始めたら点

滅回数による DTCの表示を確認する。なお,長い点滅

がDTCの10の位を示し,短い点滅が1の位を示す。

DLCピン・ボックス

図 1-32 DTCターミナル・ボックス

一箇所が異常の場合 複数の箇所が異常の場合

(b) DTCのクリア(図 1-34)

=点滅回数1を点検

=点滅回数3を点検

=点滅回数14を点検

図 1-33 DTCの表示例

①イグニション・スイッチを OFFにする。

=点滅回数1,3を点検

=点滅回数3,4を点検

=点滅回数1,14を点検

②エンジン・ルームのリレー・ボックスのNO.B7(15A)とNO.B8(l5A)を10秒以上外して DTCをクリアする。

リレー・ボックス

図 1-34 DTCのクリア

-159ー

-laJI温・

2) DTC一覧表

SAE' DTC ノてワー・ システム 充電警告灯(ノfワー・ システム 2連続検知手法 故障診断検知項目警告灯点滅回数)

警告灯点灯の有無 点灯の有無

P0602(91) モータ ECUプログラム未書き込み 。 。P0607 (256) モータ ECU内部回路異常(リレー制御回路) 。 ×

P062F (60) モー タECU内部回路異常(EEPROM) 。 ×

P0634 (424) ゲート・ドライブ・ボード高温異常(モータ) 。 。P06B1 (79)

高電圧バッテ リ電流センサ電源供給回路電圧低 。 。しE

POA27(46) メイン・コンタクタ /プリチャージ ・コ ンタク 。 。タ異常

POA3C(39) インバータ高温異常(モータ) 。 。POA3F(89)

モータ・ロータ・ポジション・センサ回路故障 。 。(モータ)

I POA5E (24) U相電流センサ回路電圧低い(モータ) 。 。POA5F (25) U相電流センサ電圧高い(モータ) 。 。POA61 (26) V相電流センサ電圧低い(モータ) 。 。POA62 (27) V相電流センサ電圧高い(モータ) 。 。POA64 (28) W相電流センサ電圧低い(モータ) 。 。POA65 (29) W相電流センサ電圧高い(モータ) 。 。POA 78 (32) インバータ内部回路異常(モータ) 。 。POA7E (72) 高電圧バッ テリ過熱異常 。 。POA7F(78) 。 高電圧バッテ リ容量劣化大 。 ×

POA94(48) DC-DCコンバータ出力電圧低下異常 × 。POA9C (67) 。 高電圧バッテ リ温度センサ1特性異常 。 ×

POA9D (49) 。 高電圧バッテ リ温度センサ1電圧低い 。 ×

POA9E (50) 。 高電圧バッテ リ温度センサ l電圧高い 。 ×

POAA3(128) サブ ・コ ンタクタ ON故障 。 。POAA6 (59) 高電圧回路絶縁異常 。 ×

POAA 7 (76) リーク ・セ ンサ内部回路異常 。 ×

POACO (65) 高電圧バッテ リ電流センサl特性異常 。 。POAC1 (115) 高電圧バッテ リ電流センサ1電圧低い 。 。POAC2 (114) 高電圧バッテ リ電流センサ1電圧高い 。 。POAC6 (68) 。 高電圧バッテ リ温度センサ2特性異常 。 ×

POAC7 (51) 。 高電圧バッテ リ温度センサ2回路電圧低い 。 ×

POAC8 (52) 。 高電圧バッテ リ温度センサ2回路電圧高い 。 ×

POACB (69) 。 高電圧バッテ リ温度センサ3特性異常 。 ×

POACC (53) 。 高電圧バッテ リ温度センサ3回路電圧低い 。 ×

POACD (54) 。 高電圧バッテ リ温度センサ3回路電圧高い 。 ×

POAE1 (62) プリチャージ・システム異常 。 。POAE9 (7l) 。 高電圧バッテ リ温度センサ4特性異常 。 ×

POAEA (121) 。 高電圧バッテ リ温度センサ4回路電圧低い 。 ×

POAEB (120) 。 高電圧バッテ リ温度センサ4回路電圧高い 。 ×

POAEE(109) 。 インバータ温度センサ特性異常(モータ) 。 ×

POAF3 (418) 。 ゲート・ドライブ・ボード温度センサ回路電圧 。 × 低い(モータ)

POBOF(113) 高電圧バッテ リ電流センサ2特性異常 。 。POB10(117) 高電圧バッテ リ電流センサ2電圧低い 。 。POB11 (116) 高電圧バッテ リ電流センサ2電圧高い 。 。

-160 -

-U]I温・

SAE. DTC パワー・システム 充電警告灯

(パワー ・システム 2連続検知手法 故障診断検知項目

警告灯点滅回数)警告灯点灯の有無 点灯の有無

POB3B (122) 高電圧バッテリ・セル電圧センサ内部故障 。 。POBE6 (86) U相電流センサ特性異常(モータ) 。 。POBEA (87) V相電流センサ特性異常(モータ) 。 。POBEE (88) W相電流センサ特性異常(モータ) 。 。POBFD (30) 相電流センサ値相関異常(モータ) 。 。POC4E (93)

モータ・ロータ・ポジション・センサ学習異常 。 。(モータ)

POD32 (417) DC-DCコンパータ高温異常 × 。PODA8 (12) インバータ高電圧回路電圧異常 。 。PODE6 (74) 。 高電圧バッテリ・セル電圧ぱらつき異常 。 ×

PODE7 (125) 高電圧バッテリ過電圧 。 。P1437 (41) インバータ回路短絡(モータ) 。 。P1440 (57) モータ ECUゲート・ライン断線(モータ) 。 。P1447 (77) 。 高電圧バッテリ容量劣化中 。 ×

P1448 (63) 。 IPUモジュール・ファン回路異常 。 ×

P1586 (23) 高電圧バッテリ電流センサ l特性異常 。 。P15A5 (85) インバータ過電流検知(モータ) 。 。P1634 (47)

モータ ECUシリアル通信異常(モータ・イン 。 。ノくータ受信異常)

P1673 (22) イグニション・ホールド・リレー機能異常 。 ×

P16C3(31) 。 DC-DCコンパータ温度センサ回路異常 。 ×

P16D6(421) EP-CAN通信異常(モータ ECU-TCM) 。 ×

P1D64 (143) 衝突検知信号異常 。 ×

P1D65 (144) 衝突検知信号受信によるシステム停止 。 。P1D67 (171) 電動コンプレッサ高電圧回路異常 。 ×

P1D75(416) DC-DCコンパータ電流センサ値相関異常 。 ×

P1DC5 (137) 高電圧バッテリ・セル電圧センサ・プログラム 。 。未書き込み

P1DC6 (138) 高電圧バッテリ・セル電圧センサ・プログラム・ 。 。ノくージョン不整合

P1DC7 (349) 。 高電圧バッテリ ・セル内部抵抗過大 。 ×

U0029 (107) 。 F-CAN通信異常(モータ ECU(BUS -OFF)) 。 ×

U0038 (98) EP-CAN通信異常(モータ ECUBUS -OFF) 。 。UOlOOU02) 。 F-CAN通信異常(モータ ECU-PGM-FI. 。 ×

ECU)

U0l51 (136) F-CAN通信異常(モータ ECU-SRSユニツ 。 × ト)

U0l55 (106) 。 F-CAN通信異常(バッテリ ECUーコンビネー 。 × ション・メータ)

U029A (119) EP-CAN A通信異常(バッテリ ECU-高電圧 。 。バッテリ ・セル電圧センサ)

U0311 (123) モータ ECUプログラム・パージョン不整合 。 。U0335 (139)

高電圧バッテリ・セル電圧センサ・プログラム・ 。 。ノくージョン不整合

U1204 (95) EP-CAN通信異常(モータ ECU-PGM -FI. 。 。ECU)

U1207 (207) 。 EP-CAN通信異常(バ ッテリ ECU-電動コン 。 × プレッサ)

-161 -

-fjLPt4・SAE. DTC

(パワー・システム 2連続検知手法 故障診断検知項目パワー・システム

警告灯点滅回数) 警告灯点灯の有無

U1220 (34) 。 バ ッテリ ECUシリアル通信異常(DC-DCコン 。パータ情報送信異常)

U1221 (35) 。 パッァリ ECUシリアル通信異常(DC-DCコン 。バータ受信異常)

.SAE.DTC:HDSに表示される DTCコードで. SAE(米国自動車技術会)規格に準じている。

.パワー ・システム警告灯点滅回数:SCSショート時のPOWER. SYSTEM警告灯点滅回数に該当する。

参考

間 i1.t~鞄申業'J!I畠冨V

ム高官庄作業中触るな!担当

コピ}をとり、折って作業中に車両のルーフに表示する。

-162 -

充電警告灯

点灯の有無

×

-IhtSj・

E アンチロック・ブレーキ・システム (ABS)

通称名 車両型式 エンジン型式 適用時期 出典資料

CBR400R EBL-NC47 NC47E 20l3.4~ サービスマニュアル 60MGZOO

1 概要(図n-1, 2)

従来の ABSは, CBSと組み合わせて使用していたため, ABSモジ、ユレータ内部に三つの経路(3チャンネル)

をもっている。今回 CBR400Rに採用された ABSは, CBSの機能をもたないことにより,モジュレータ内

部を 2チャンネルとしている。また,同時にモジュレータ内部構造の見直しゃモジ、ユレータ単体の小型化,

軽量化を図っている。

図II-1 概要

3チャンネル 2チャンネル

図II-2 3チャンネルABSと2チャンネルABSの比較

-163 -

ABSインジケータ

体積比:約50%

重量比:約50%

-,.,.:.・

2 構造・機能

1 ) 構成部品の配置(図1I-3, 4)

フロン卜・ホイール・スピード・センサ

リヤ・ホイール・スピード・センサ

図II-3 構成部品の配置

-164 -

;「/黄フ丘町ル 中窃 <4-1, 4-2)。

@ <2-1)

:1白

ヒ北九 仁28(4-3) 0

@ <2-3)

昌弘;iJ27i

-IltrTJ・

払 φや

tり

-

111ぃ噌

一F

箇絡短プ(切ら

図11-4 システム配線図

- 165 -

-E亙盛温・

2) 構成部品の構造・機能(図 II-5)

マスタ・シリンダとキャリパの聞に ABSモジュレータを設け モジュレータ内のソレノイド・バルブをコ

ントロール・ユニットからの電気信号により開閉し,ブレーキ液の通る通路を切り替えることで,キャリパ

の液圧をコントロールしている。このタイプは コントロール・ユニッ トとABSモジュレータが一体になっ

ており,一つのユニットで,前後輪のブレーキ・コントロールができるシンプルな構成となっている。

車輪速

センサ

リザーパ

ソレノイ ド./'¥}レフ、OUT

図n-5 ABSの構成

「前後の車輪速センサJi ABSモジュレータJi ABS警告灯」などで構成されており,各部品は次の機能を備

えている。

部品名 機 自伝

車輪速センサ フロント /リヤの車輪速を感知し 速度に応じたパルス信号を ECUへ出力する。

モータ&ポンプ ECUからの信号でリザーバのブレーキ液をマスタ・シリンダ側へ圧送する。

モ リザーパ プレーキ液を一時的にj留める。ン

コー OFFのときは開いていて, ECUからの信号がONのときマスタ・シリンダとキャリパ間レ ソレノイド・ノくルフゃIN

の通路を遮断する。

タソレノイド・バルブOUT

OFFのときは閉じていて, ECUからの信号がONのときキャリパとリザーパ間の通路を

開く 。

コントロール・ユニット-各センサ及びスイッチの入力信号を演算し,システムを制御する。

(ECU) -自己診断機能

-フェイルセーフ機能

ABS警告灯. ABSの異常をライダに認知させる。

-診断コードを表示させる。

-166 -

-laI温・

(1) 還流式ABSモジュレータ(図 II-6)

還流式ABSモジュレータは モジュレータ・ポンプで

ブレーキ液を循環させつつ,ソレノイド・バルブの開閉

によってブレーキ・キャリパの液圧をコントロールして

いる。

モジ、ユレータ内の液圧回路をブレーキ液が循環すること

から還流式と呼ばれている。

このモジュレータは コントロール・ユニットと ABS

モジュレータが一体になっている。一つのユニットで,

前後輪のブレーキ・コントロールができるシンプルな構

成が特徴である。

(2) 車輪速センサ(図 II-7)

車輪速センサは,ホイールの回転速度を検知するセンサ

で,ホイールと共に回転するパルサ・リングとセットで

使用される。回転速度の検出は,パルサ・リングの凹凸

(歯)が車輪速センサを通過すると 車輪速センサがパル

ス信号をコントロール・ユニットへ送る。このパルス信

号の周波数は,ホイールの回転速度に比例して高くなる

ため, コントロール・ユニットは,パルス信号の変化な

どからホイールの回転速度を演算している。

3) 還流式ABSの作動

(1) ABSシステムの作動

図II-6 還流式ABSモジュレータ

図II-7 車輪速センサ

ABSモジュレータの作動は, I減圧モードJI保持モードJI昇圧モードJの三つに分けられる。ABSが作動す

るとこれらの制御が行われ,ライダはブレーキ・レバーあるいはブレーキ・ペダルに小刻みな振動を感じる。

ここでの説明はフロント・ブレーキとリヤ・ブレーキは独立しているため,フロント・ブレーキを例に説明

する。

(イ)減圧モード(図 II-8)

車輪ロックを回避するため,マスタ・シ リンダからブレー

キ・キャリパへの液圧を遮断し,キャリパ側の液圧をリ

ザーバ室に流入させてブレーキ・キャリパに掛かる液圧

を下げるモードである。

- 167 -

図II-8 減圧モード

-II!S温・

(口)保持モード(図 II-9)

ブレーキ・キャリパの液圧を一定に保持するモードであ

る。マスタ・シリンダからの液圧とリザーバ室への流入

を共に遮断して,キャリパ側の液圧を一定に保持する。

川昇圧モード(図 II-10)

減圧モードによって車輪ロックが回避された後,再び制

動力を確保するため,ブレーキ・キャ リパの液圧を再び

高めるモードである。

(2) ソレノイド・バルブの作動(図 II-11, 12)

図II-9 保持モード

図II-10 昇圧モード

ブレーキ液圧の減圧,保持,昇圧はモジ、ユレータ内のソレノイド・バルブの開閉により制御している。

ソレノイド・バルブ、IN

OFF時:通路開

ON時:通路閉ヰ [t

ソレノイド・パルフ手OUT

一路閉〈:酔

ON時通路開ABSモジュレータ ABS警告灯

図II-11 ソレノイド・バルブの作動

-168 -

-U}JI温・

~ 油圧通路

ソレノイド・ノくルブIN ソレノイド ・バルブOUT

減圧モード 閉 開

保持モード 閉 閉

昇圧モード 開 閉

ソレノイド・バルブの作動

(3) 通常のブレー操作(ABS非作動時)(図n-13)

前輪が路面に対し滑りがなければ(前輪の回転と後輪の回転が同じであれば),

図II-12

コントロール・ユニ ットから

の電気信号がOFFとなり,

ブレーキ・レバーを操作するとマスタ・シリンダの液圧はソレノイド・バルブINを通り ,

これが通常のブレーキング状態で,ライダによるブレーキ操作で直接制動力をコントロー

この

直接キャ

ソレノイド・ノミルブOUTは閉じている。ソレノイド・バルブINは聞き,

ため,

リパへ送られる。

FR 1: RR信号 ~~ I 一一一一一一一静 叫旦 l

Eピ古-LL • :

ルしている。

キャリパ油圧

ソレノイド・バルブIN

ソレノイド・バルブOUT

通常のブレーキング(ABS非作動時)

-169 -

図II-13

-UII温・

ABS作動時(減圧モード)(図 II-14)

前輪が路面に対し滑りがあるときは,

(4)

ソレノイド・バルブOUTが開き,キャソレノイド・バルブINが閉じ,

ポンプが働き,この時,リパからリザーブ・ピストンへフルードが流れ前輪キャリパの液圧は減圧される。

フロント・ブレーキ・レバーに小刻みな振動を与えることでライダにABSが作動していることを知らせる。

. -a . . . ' . .

'~FR 1 .'・・・・・・・・・・・・.一 ・ー.一・J ・ ・-. ; . . T: , : • , E ・e・・・・・・・-ー,. ;. : r-、:• . . . . -. .

ソレノイド・バルブIN

ソレノイド・バルブOUT

ABS作動時(減圧モード)図 II-14

ABS作動時(油圧保持モード)(図 II-15)

前輪キャリパの液圧を下げた後,

(5)

その圧力を保持する。両方のソレノイド・バルブをどちらも閉じることで,

このときもポンプは作動している。

e

aF

• • • • 個

-av

e--

h

・・・・・・・・・・・

・1

• •

一…•

・・

この状態は前後輸の回転がほぼ同じになるまで継続する。

ソレノイド・バルブIN

ソレノイド・バルブOUT

ABS作動時(油圧保持モード)

-170 -

図II-15

-1'-'11・(6) ABS作動時(昇圧モード)(図 II-16)

前後輸の回転差がなくなり,前輪の滑りが治まったと ABSコントロール・ユニットが判断するとソレノイド・

バルブ(IN)が聞き,ソレノイド・バルブ(OUT)は閉じる。同時にレバー入力とポンプ入力でキャリパ液圧

を上げブレーキを効かせる。ABS作動中は,減圧→保持→昇圧が繰り返される。

‘. 、‘

• • • • • • -aF

a'

, ,

フルード電気信号|

通路

ソレノイド・バルブ、

IN

ソレノイド・バルブOUT

Off 開

Off 閉

図II-16 ABS作動時(昇圧モード)

3 点検・整備のポイント

1 ) 作業上の注意

. ABSコントロール・ユニットは落としたり,強い衝撃を与えると故障の原因となるため,取り扱いには十

分注意すること。また,電流が流れているときにカブラやコネクタの断,接続を行うと過電圧が発生し,ユ

ニット内回路を破損することがある。必ずメイン・スイッチを OFFにしてから作業すること。

. ABSコントロール・ユニットはモジュレータに統合されている。ABSモジュレータは分解しないこと 。

ABSモジュレータが不良の場合はAss'yにて交換すること。

. ABSコントロール・ユニットは車速がlOkm/hに達するまで初期診断を行い, ABS機能が正常であるか確

認する。初期診断の終了後, ABSコントロール・ユニットはメイン・スイッチがOFFになるまで, ABS機

能及び車両走行状態を常時監視している(常時診断)。

. ABSコントロール・ユニットが異常を検知すると ABS機能を停止して通常のブレーキ作動に切り替え,

ABS警告灯が点滅又は点灯する。テスト走行を行う際は充分に注意すること。

. ABS故障診断を行う際は,サービス・マニュアルの“ABS故障診断について"をよく読み,故障診断チャー

トに従ってシステムを点検,診断する。手順の各ステップを順序を追って行うこと。故障診断を行う前に

DTC(故障診断コード)及び推定異常箇所をメモすること。

-診断中は完全充電されたバッテリを使用する。充電器をバッテリに接続した状態で診断を行わないこと 0

・故障診断終了後はDTCを消去して初期診断を行い, ABS警告灯が正常に作動することを確認する。

. ABSの不良が原因ではない異常(ブレーキ・ディスクの鳴き,ブレーキ・パッドの偏摩耗等)は, ABS診断

機能によって検知されない。

-171 -

-・E薗昭島1・・

-ホイール・スピード・センサやパルサ・リングを交換した場合は,必ずエア・ギャップを点検すること。

2) 専用工具(図 ll-17,18)

図II-17 SCSカブラ (070PZ-ZY301 00)

3) ABS故障診断

(1) ABS初期診断機能の概要(図 II-19)

ABS初期診断機能は電気系統及びモジュレータの作動状態を診断する。異常がある場合,不具合系統及び

図II-18 テスト・プローブ(07ZAJ-RDJA110)

関連箇所はDTCで検出できる。

車両が走行するとフロン ト リヤ・ホイール・スピード・セ ンサで発生したパルス信号がABSコントロール・

ユニットに送られる。車速が約6km/hに達すると ABSコントロール・ユニットはポンプ・モータを作動させ,

作動状態を確認する。システムが正常であれば,車速が10km/hに達したとき, ABSコントロール・ユニッ

トはABS警告灯を消灯し 初期診断は終了する。

異常を検知した場合は ABS警告灯が点滅又は点灯し,ライダに異常を知らせる。自己診断は走行中も継続

しており,異常を検知すると ABS警告灯が点滅する。

ABS警告灯が点滅した場合 DTCによって異常の原因を特定する。

メイン・スイッチを ONにしたときに ABS警告灯が点灯しない,又は初期診断の終了後に ABS警告灯が点

灯状態の場合は,ABS警告灯回路の異常が考えられる。警告灯回路の故障診断を参照すること。

メイン・ ON

スイッチ OFF

エンジン回転 一一戸停止 /始動

車速 。 アど山以上

2と3 ::F--~ ~ _. ----------一ー・一一・・・… ー ー-一一「ーし一

ON ....., ABS警告灯 i

OFF---l し-10km/hにて初期診断終了

図ll-19 ABS初期診断機能の概要

4) 初期診断の手順(日常点検)

①エンジン・ストップ・スイッチが“0"の状態でメイン・スイッチを ONにする。

② ABS警告灯が点灯することを確認する。

③エンジンを始動する。

④車速約 10km/h以上で走行する。

⑤ ABS警告灯が消灯すればABSは正常で、ある。

つ臼門

i-EA

-E車屋温・

5) DTCの読み出し(図 II-20)

①フロント・シートを取り外す。

②メイン・スイッチを OFFにする。

サービス・チェック・カブラをダミー・カブラから取り

外し専用工具を使用してサービス・チェック・カブラ

端子を短絡させる。

専用工具:SCSカブラ (070PZ-ZY30100)

③エンジン・ストップ・スイッチが“0"の状態でメイン・

DTCの読み出し図II-20

スイッチを ONにする。

ABS警告灯は2秒間点灯(開始信号)した後に(つづいて

3.6秒間消灯), DTCの表示を開始する。

DTCはABS警告灯の点滅回数で表示される。

DTCが保存されていない場合,

DTC表示パターン(図 II-21,

. ABS警告灯は規定の点滅回数によって DTCを表示する。警告灯の点滅は長い点滅と短い点滅の2種類がある。

長い点滅はl.3秒間 短い点滅は0.3秒間持続する。例えば, 1回の長い点滅に続き 2回の短い点滅の場合,

DTCは1-2である(長い点滅1回=1+短い点滅2回=2)。

ABS警告灯は点灯状態となる。

22) 6)

. ABSコントロール・ユニ ットに複数のDTCが保存されている場合 ABS警告灯は小さい番号から大きい番

ABS警告灯がDTC1-2を表示した後に DTC2-3を表示した場合,号の順にDTCを表示する。例えば,

二つの異常が生じたことを意味する。

ター炉繰り返す

1.3秒

1.3秒→ケ寸←

~ :4-:

ON

OFF メイン・スイッチ

ON

OFF ABS警告灯

--i・雨 時一二 t; --i掛ーー噌ーー

0.4秒 3.6秒 0.5秒

¥一一一一『γーー一一J

小さい番号のDTC(例 :1-2)

DTC

開始信号

大きい番号のDTC(例:2-3)

DTC1 -2を表示した後に DTC2ー3を表示した場合図II-21

2秒 3.6秒

DTCが保持されていない場合

丹、U

ウi

41よ

図II-22

ON

OFF ABS警告灯

-・7) 保存された DTCの消去(図 II-23)

-保存された DTCはバッテリ(-)ケーブルの接続を外し

でも消去されない。

① SCSカプラをサービス・チェック・カブラに接続する。

②ブレーキ・レバーを握りながら,エンジン・ストップ・

スイッチが“0"の状態でメイン・スイッチを ONにする。

ABS警告灯が2秒間点灯し消灯する。

③ABS警告灯の消灯後,すぐにブレーキ・レバーを放す。

ABS警告灯が点灯する。

④ABS警告灯の点灯後,すぐにブレーキ・レバーを握る。

ABS警告灯が消灯する。

図II-23 保存された DTCの消去

⑤ ABS警告灯の消灯後,すぐにブレーキ・レバーを放す。DTCが消去されると, ABS警告灯は2回点滅し,

点灯する。

ABS警告灯が2回点滅しない場合は,自己診断メモリは消去されていない。この場合は再度上記の作業を

行う 。

⑥メイン・スイッチを OFFにし, SCSカブラをサービス・チェック・カブラから取り外す。

フロント・シートを取り付ける。

8) 回路点検

(1) ABSモジュレータ・カブラでの点検(図 II-24, 25)

① ABSモジュレータ・カバーを取り外す。

②メイン・スイッチを OFFにする。

カブラ外しの手)11買:

ロック・タブを押しながら,ロック・レバーを手前に引

き, レバーを解除する。

ロック・レバーが一杯まで引かれていることを確認し

ABSモジュレータ 18P(黒)カブラの接続を外す。

カブラ接続の手)11貢:

ロック・レバーがカブラのハーネス側に完全に接してい

る状態にする。

ロック・タブがカチッと音がするまで図の矢印部をまっ 図 E一24 ABSモジュレータ・カプラでの点検①

すぐに押し ABSモジュレータ 18P(黒)カブラを接続

する。

- 174 -

カブラが確実にロックされていることを確認する。

・カブラの接続を外す前に カブラ周りを清掃し異物を

取り除く 。

. ABSの故障は,カプラの緩みや腐食による接触不良が

原因である場合が多い。故障診断を進める前に接触不良

がないことを確認する。

. ABSモジュレータ 18P(黒)カブラ端子(ワイヤ・ハーネ

ス側;No.9, NO.18端子を除く)にて点検する際は,テ

ス ト・プローブを使用する。カブラ端子にテスト・プロー

ブを差し込み,テスト・プローブにデジタル・テスタの

プローブを接続する。

専用工具:

テスト・プローブ(07ZAJ-RDJAIIO)

9) 自己診断機能による故障診断

・下記のような状態にて ABS警告灯が点滅することがある。不良箇所を修正すること。

ータイヤ空気圧が不適正

-11 "11・

端子配列

(端子側)

図II-25 ABSモジュレータ・カブラでの点検②

ータイヤ・サイズが不適正

一ホイール, タイヤの変形

・下記のような状況下の走行でABS警告灯が点滅することがある。これは一過性の故障である。DTCを確実

に消去した後, 30km/h以上でテスト走行を行い, DTCを確認する。

走行状況の詳細を問診にて確認すること。

一極端な悪路を連続走行した

一長時間フロント・ホイールを浮かせて走行した(ウイリ走行)

-フロント又はリヤ・ホイールのいずれかのみを回転させた

一長時間ABSを作動させた

-ABSコントロール・ユニットが強力な電波障害(電磁妨害ノイズ)の影響を受けた

DTC 故障原因検知

症状/フェイルセーフ機能A B

ABS警告灯の異常. ABSモジ、ユレータの電圧入力回路 . ABS警告灯が常時点灯しない

-警告灯の関連回路

-コンビネーション・メータ. ABSモジュレータ . ABS警告灯が常時点灯状態

. ABS' MAINヒューズ(7.5A)

1 -1 フロント・ホイール ・スピード・センサ回路の異常(断線) 。。. ABSの作動停止-ホイール ・スピード・センサ又は関連回路

フロント・ホイール・スピード・センサの異常1 -2 -ホイール・スピード・センサ,パルサ・リング,又は関連回路 。. ABSの作動停止

-電磁妨害ノイズ

1 -3 リヤ・ホイール・スピード・センサ回路の異常 。。. ABSの作動停止-ホイール・スピード・センサ又は関連回路

リヤ・ホイール・スピード・センサの異常1 -4 -ホイール・スピード・センサ パルサ・リング,又は関連回路 。. ABSの作動停止

-電磁妨害ノイズ

「「υ

門/

11よ

-・巨週四~1・・

故障原因検知

症状/フェイルセーフ機能DTC A B

1 -5 フロント, リヤ・ホイール・スピード・センサ回路の異常(短絡) 。。. ABSの作動停止-ホイール・スピード・センサ又は関連回路

2 -1 フロント・パルサ・リング 。. ABSの作動停止-パルサ・リング又は関連回路

2 -3 リヤ・パルサ・リング 。. ABSの作動停止-パルサ・リング又は関連回路

3 -1

3-2 ソレノイド・バルブの異常(ABSモジ、ユレータ) 。。. ABSの作動停止

3 -3

3-4

4 -1 フロント・ホイールのロック 。. ABSの作動停止-走行状態

4-2 フロント・ホイールのロック(ウイリ走行) 。-走行状態

4-3 リヤ ・ホイールのロ ック 。. ABSの作動停止-走行状態

ポンプ ・モータのロ ック

5 -1 -ポンプ ・モータ (ABSモジュ レータ)又は関連回路 。。. ABSの作動停止

. ABS・M.ヒューズ(30A)

電源リレーの異常

5-4 -電算リレー (ABSモジュ レー タ)又は関連回路 。。. ABSの作動停止

. ABS・M.ヒューズ(30A)

電源回路低電圧

6 -1 -入力電圧(低すぎる) 。。. ABSの作動停止

. ABS. MAINヒューズ (7.5A)

6-2 電源回路高電圧 。。. ABSの作動停止-入力電圧(高すぎる)

7 -1 タイヤの異常 。. ABSの作動停止-タイヤ・サイ ズ

8 -1 ABSコントロール・ユニット 。。. ABSの作動停止. ABSコントロール・ユニットの異常(ABSモジュレータ)

(A) 初期診断

(B) 常時診断:急行中の診断

10) ABS警告灯回路の故障診断

(1) ABS警告灯が点灯しない(メイン・スイッチを ONしたとき)

-点検を始める前に,コンビネーション・メータの初期作動を点検すること

① 警告灯の作動点検

メイン・スイッチを OFFにする。

ABSモジ、ユレータ 18P(黒)カブラの接続を外す。

エンジン・ストップ・スイッチが 0"の状態でメイン・スイッチを ONにするo

ABS警告灯を確認する。

ABS警告灯は点灯するか?

YES -ABSモジュレータの不良

NO -ステップ②へ

-176 -

-U]I温・

② 警告灯信号回路の短絡点検(図 II-26)

メイン・スイッチを OFFにする。

ワイヤ・ハーネス側 ABSモジュレータ 18P(黒)

カブラ端子とアース問の導通を点検する。

専用工具:

テスト・プローブ(07ZAJ-RDJA110)

接続:13-アース

YES一種/青線の短絡

NO -コンビネーション・メータの不良

(2) ABS警告灯が点灯状態(走行中に警告灯が消灯しない)

① サービス・チェック回路の短絡点検(図 II-27)

メイン・スイッチを OFFにする。

ABSモジ、ユレータ 18P(黒)カブラの接続を外す。

ワイヤ・ハーネス側ABSモジュレータ 18P(黒)

カブラ端子とアース聞の導通を点検する。

専用工具:

テスト・プローブ(07ZAJ-RDJA110)

接続:14ーアース

導通はあるか?

YES-茶線の短絡

NO -ステップ②へ

② 警告灯信号回路の断線点検(図 II-28)

ワイヤ・ハーネス側ABSモジュレータ 18P(黒)

カブラ端子をジャンパ・ワイヤでアースに短絡する。

専用工具:

テスト・プローブ(07ZAJ-RDJAllO)

接続:13-アース

エンジン・ストップ・スイッチが“0"の状態でメイン・

スイッチを ONにする。

ABS警告灯を確認する。

消灯するか?

YES -ステップ③へ

NO -澄/青線の断線

・コンビネーション・メータの不良

(燈/青線が正常な場合)

Jウt

Ei

黒一¥¥¥

(ワイヤ・ハーネスの端子側)

図Eー26 警告灯信号回路の短絡点検

一フプカ黒nr no

タレユ

一¥A

(ワイヤ・ハーネスの端子側)

図II-27 サービス・チェック回路の短絡点検

ABSモジュレータ 18P(黒)カブラ

(ワイヤ ・ハーネスの端子側)

図II-28 警告灯信号回路の断線点検

-u.温・

③ モジュレータ・アース回路の断線点検(図n-29)

メイン・スイッチを OFFにする。

ワイヤ・ハーネス側 ABSモジ、ユレータ 18P(黒)

カブラ端子とアース間の導通を点検する。

接続:9-アース

導通はあるか?

YES-ステップ④へ

NO -緑/黄線の断線

④ ヒューズの点検(図n-30)

フロント・シートを取り外す。

爪2箇所を外し,ヒューズ・ボックス 2(右側)からヒュー

ズ・ボックス・カバーを取り外す。

ABS'MAINヒューズ(7.5A)が切れていないか点検する。

ヒューズカ宝切れているか?

YES-ステップ⑤へ

NO -ステップ⑥へ

⑤ 電源入力回路の短絡点検(図n-31)

ABS' MAINヒューズ(7.5A)を取り外し,ワイヤ・ハー

ネス側 ABSモジュレータ 18P(黒)カブラ端子とアース

聞の導通を点検する。

専用工具:

テスト・プローブ(07ZAJ-RDJAIIO)

接続:7-アース

導通はあるか?

YES-赤 /黒線の短絡

NO -一過性の故障。ABS'MAINヒューズ(7.5A)を

新品に交換し再点検する。

⑥ 電源入力回路の断線点検(図 Eー32)

ABS' MAINヒューズ(7.5A)を取り付ける。

エンジン・ストップ・スイッチが“0"の状態でメイン・

スイッチを ONにする。

ワイヤ・ノ¥ーネス側 ABSモジュレータ 18P(黒)カブラ

端子とアース間の電圧を測定する。

専用工具:

テスト・フ。ローブ(07ZAJ-RDJAIIO)

接続 :7(+)-アース(-)

バッテリ電圧があるか?

-178 -

一¥

(ワイヤ・ハーネスの端子側)

図E一29 モジュレータ・アース回路の断線点検

図II-30 ヒューズの点検

一¥

(ワイヤ・ハーネスの端子側)

図II-31 電源入力回路の短絡点検

一¥

(ワイヤ・ハーネスの端子側)

図II-32 電源入力回路の断線点検

YES -ABSモジュレータの不良

NO -赤/黒線の断線

11 ) ホイール・スピード・センサ

( 1 ) 工ア・ギャップ点検(図n-33)

-UJI温・

ジャッキなどで車イ本を支え, フロント・ホイールを浮か

せる。

センサとパルサ・リング間のクリアランス(エア・ギャッ

プ)を,ホイールをゆっくり回しながら,数か所で測定

する。

エア・ギャップは標準値の範囲でなくてはならない。

標準値:0.4-----1.2mm

クリアランス(エア・ギャップ)は調整できない。

標準範囲外の場合は,各部品の変形,緩み,又は損傷を

点検する。

図II-33 工ア・ギャップ点検

ホイール・スピード・センサの損傷を点検し,必要に応じて交換する。

パルサ・リングの変形/損傷を点検し必要に応じて交換する。

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