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「生涯学習社会における学校教育の役割」 「家庭・学校・社会の連携と学習システム」 H23.1.20 政策研究大学院大学 今野雅裕 Ⅰ.生涯学習と学校教育 1.生涯学習の理念 ○生涯学習とは、生涯にわたって、各自の自発的意志に基づき、必要に応じて、自己に適した手段・ 方法を自らの責任において自由に選択し、行うべき学習。 (昭和 56 年中教審答申) 強いられて行う学習から、自発的・自主的・自律的、それだけに自己責任が強く意識される学習 としてイメージ。スポーツや文化的な活動、趣味、娯楽など極めて広範。学習活動そのものを総括 的にとらえたもの。 ○生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮 しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方。 国民一人一人の生涯学習を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的な理 念。(昭和 56 年中教審答申) 後、「生涯教育」は「生涯学習」に一元化。 社会は生涯学習を適切に振興するため、教育体系全体を見直し、総合的に整備するなど学習の支 援を行うことが必要であるとする理念。 ○臨教審では「生涯学習体系への移行」、生涯審では「生涯学習社会の構築」。 ○生涯学習振興の目標(生涯学習審議会平成 4 年答申) 「生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるよ うな生涯学習社会の構築」 ○「新教育基本法」(3条)生涯学習の理念 ◇「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたっ て、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすこと のできる社会の実現が図られなければならない。」 ◇社会政策として、学習機会の確保・学習成果の活用ができる社会的環境整備の必要 *中教審「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」(H20.2.19) 理念の整理 2.生涯学習の振興 (1)生涯学習振興行政 ◇生涯学習振興行政は、国民の生涯にわたる学習活動を援助・振興し、学習の成果を活用促進して いくために必要な諸条件を整備・確立していく行政である。 ◇学習活動にかかわる行政は、文部科学省・教育委員会所管のもの以外にも、福祉や労働など多様 な分野において実施されている。これらについては、それぞれ所管の行政部局において適切に処 理される必要があるが、学習者の立場に立った行政が推進される必要から、これらの行政機関間 に必要な連絡調整が要請されることとなる。 ◇国においては中央教育審議会生涯学習分科会(生涯学習関係府省庁幹事会)を通じてこうした機 能の一部が果たされる。地方においても生涯学習推進本部などが機能することが必要である。 ◇文部科学省の行政内容の類型化 (①生涯学習推進体制の整備 生涯学習審議会、推進本部、推進会議・・) ②普及・啓発、情報提供・相談 学ぶ意欲の喚起 学びピア ③多様な学習機会の提供 ④学習成果の評価・活用 職業資格、技能審査、単位認定、学位授与 1

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「生涯学習社会における学校教育の役割」

「家庭・学校・社会の連携と学習システム」

H23.1.20

政策研究大学院大学 今野雅裕

Ⅰ.生涯学習と学校教育

1.生涯学習の理念

○生涯学習とは、生涯にわたって、各自の自発的意志に基づき、必要に応じて、自己に適した手段・

方法を自らの責任において自由に選択し、行うべき学習。 (昭和56年中教審答申)

強いられて行う学習から、自発的・自主的・自律的、それだけに自己責任が強く意識される学習

としてイメージ。スポーツや文化的な活動、趣味、娯楽など極めて広範。学習活動そのものを総括

的にとらえたもの。

○生涯学習のために、自ら学習する意欲と能力を養い、社会の様々な教育機能を相互の関連性を考慮

しつつ総合的に整備・充実しようとするのが生涯教育の考え方。

国民一人一人の生涯学習を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的な理

念。(昭和56年中教審答申) 後、「生涯教育」は「生涯学習」に一元化。

社会は生涯学習を適切に振興するため、教育体系全体を見直し、総合的に整備するなど学習の支

援を行うことが必要であるとする理念。

○臨教審では「生涯学習体系への移行」、生涯審では「生涯学習社会の構築」。

○生涯学習振興の目標(生涯学習審議会平成4年答申)

「生涯のいつでも、自由に学習機会を選択して学ぶことができ、その成果が適切に評価されるよ

うな生涯学習社会の構築」

○「新教育基本法」(3条)生涯学習の理念

◇「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよう、その生涯にわたっ

て、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすこと

のできる社会の実現が図られなければならない。」

◇社会政策として、学習機会の確保・学習成果の活用ができる社会的環境整備の必要

*中教審「新しい時代を切り拓く生涯学習の振興方策について」(H20.2.19) 理念の整理

2.生涯学習の振興

(1)生涯学習振興行政

◇生涯学習振興行政は、国民の生涯にわたる学習活動を援助・振興し、学習の成果を活用促進して

いくために必要な諸条件を整備・確立していく行政である。

◇学習活動にかかわる行政は、文部科学省・教育委員会所管のもの以外にも、福祉や労働など多様

な分野において実施されている。これらについては、それぞれ所管の行政部局において適切に処

理される必要があるが、学習者の立場に立った行政が推進される必要から、これらの行政機関間

に必要な連絡調整が要請されることとなる。

◇国においては中央教育審議会生涯学習分科会(生涯学習関係府省庁幹事会)を通じてこうした機

能の一部が果たされる。地方においても生涯学習推進本部などが機能することが必要である。

◇文部科学省の行政内容の類型化

(①生涯学習推進体制の整備 生涯学習審議会、推進本部、推進会議・・)

②普及・啓発、情報提供・相談 学ぶ意欲の喚起 学びピア

③多様な学習機会の提供

④学習成果の評価・活用 職業資格、技能審査、単位認定、学位授与

1

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(2)生涯学習振興の視点

<学習機会提供に関して> 「いつでも、どこでも、誰でも」を実現

①個人の学習が生涯のどの時点でも、生涯にわたって継続していくことが可能となるよう、社会

全体で、人のライフステージの全体を見据えて、多様な学習機会が確保される配慮すること。

【時期・時間の制約からの自由】

◇ 生きる力の育成、リカレント教育、施設の弾力的な開館等

②学習における地域的制約をできるだけ緩和するよう、教育諸機関が機能連携して学習機会を用

意するように配慮すること。【場所の制約からの自由】

◇ ネットワークの形成、学社融合、学校外活動の単位認定等

③意欲と能力があれば、誰でも自主的・主体的な学習ができるように、教育を受ける資格をでき

るだけ弾力化すること。【形式的資格からの自由、選択性・自主性拡大】

◇ 入学資格の弾力化、編入学拡大、学位授与機構等

<学習成果の活用>

社会は、人々の生涯学習の成果を活かし、学習者の社会参加を促進する必要がある。

活用を促進するためのシステムづくり

◇職業資格・技能資格の拡充・弾力化等

生涯学習記録票、学習成果認証システム

(行政府に限らず、民間の団体等も役割を担うべきものと考えられる)

<学習と活用成果の連環>

学習成果を活用する活動、ボランティア活動などがそれ自体学習になっている

新たな学習の促進にもなる

Ⅱ.生涯学習理念に基づく学校教育改革 ; 生涯学習の理念に即した学校

【生涯のいつでも学べることを可能に】 1.生涯にわたる学習能力の養成 教育内容・方法の変革 =教育課程編成における自己教育力の育成の重視 ○昭和60 ー 61 ー 62(1985/86/87)臨時教育審議会答申

◇「生涯学習体系への移行」 ← 学歴偏重社会の弊害の打破

学校中心の教育体系からの脱却

◇提言方策

①生涯にわたる学習機会の整備の必要

②生涯学習のための機関としての学校の位置づけの必要

(基礎・基本の徹底、自己教育力の育成、教育の適時性への配慮、

個性や適性に応じた進路選択、正しい勤労観、職業観、職業生活に不可欠な基礎的

知識・技能、

大学への社会人入学、修業年限の弾力化など)

③生涯学習のための家庭・学校・社会の連携の必要

④生涯職業能力開発のための総合的推進 のほか、

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○平成元年(1987)学習指導要領;自ら学ぶ意欲、社会の変化に主体的に対応できる能力、基礎的・

基本的な内容、個性を生かす教育

昭和62年(1986)教育課程審議会答申

「学校教育は、生涯学習の基礎を培うものとして、自ら学ぶ意欲と社会の変化に主体的に対応

できる能力の育成を重視する必要がある。そのため、・・・思考力、判断力、表現力などの

能力の育成を学校教育の基本に据えなければならない。」

「生涯にわたる学習の基礎を培うという観点に立って、自ら学ぶ目標を定め、何をどのように

学ぶかという主体的な学習の仕方を身に付けさせるように配慮する必要がある。」

○平成3年(1991)指導要録改訂

「観点別学習状況」学ぶ意欲の育成(関心・意欲・態度)、思考力・判断力の育成に重点

○平成8年(1996)中教審答申 →平成10年(1998)学習指導要領改訂

「学校の目指す教育としては、・・・

生涯学習社会を見据えつつ、学校ですべての教育を完結するという考え方を採らずに、

自ら学び、自ら考える力などの[生きる力]という生涯学習の基礎的な資質の育成を重視する。」

◆「生きる力」の育成 ← 社会の様々な分野での急速な変化に自ら対応できる

知徳体のバランスのとれた力の育成

知育;自分で課題を発見し・自ら学び・考え・判断・行動・問題を解決する資質能力

*ネーミングの不適。

単なる理想論で、政策論になっていない。実施条件、環境、評価の視点なし。

◆学力低下論による批判 → 見直しへ

*「生きる力」教育、「総合的な学習の時間」

理念として間違っていない。実現するための方法論ができてない。誤った実践。

*戦後直後の新教育運動、大正デモクラシー期の新教育の経験が生かされない

*教育時間の削減は学校完全週2日制導入を可能にするための要件で、 理念そのものから導かれるものではない

○平成19年(2007)学校教育法の改正

第21条 義務教育の目標

第29条 小学校の目的 義務教育として行われる普通教育のうち基礎的なもの

第30条 小学校における教育は、前条に規定する目的を実現するために必要な程度に

おいて第21条各号に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。

2 前項の場合においては、生涯にわたり学習する基盤が培われるよう、基礎的な知識及び技

能を習得させるとともに、これらを活用して課題を解決するために必要な思考力、判断力、表

現力その他の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養うことに、特に意を用いなけ

ればならない。<中学校・高校において準用>

○平成19年(2007)中教審・教育課程部会まとめ

○平成20年(2008)学習指導要領の改訂

平成21年4月1日 小・中学校において移行措置(先行実施)開始

23年4月1日 小学校全面実施

24年4月1日 中学校全面実施

<授業時数の増加>

小; 国語、社会、算数、理科、体育の授業時数を6学年合わせて350時間程度増加

◇週当たりの授業時数 低学年で2コマ、中・高学年で1コマ増加

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◇外国語活動の時間 5-6年で年35時間(週1コマ)新設

◇総合的な学習の時間 年70時間(週2コマ。1コマ程度縮減)

中; 国語、社会、数学、理科、外国語、保健体育の授業時数を400時間程度増加

◇週当たりの授業時数を各学年で1コマ増加

◇教育課程の共通性を高めるため、選択教科の授業時数を縮減し、必修教科の授業時数

を増加

◇選択教科は標準授業時数の枠外で開設可

◇総合的な学習の時間は縮減し、1年50時間、2・3年70・70時間

<その他>

◇土曜日の活用

公立小・中(平成 18 年度)土曜日、自然体験などの集団宿泊活動や文化、スポーツなど

の体験的な学習の機会を提供している学校 ; 小13.6%、中10.4%

基礎学力向上や補充・発展的学習等のための学習機会提供;小2.5%、中5.6%

◇幼稚園・小学校、小学校・中学校の教育内容の連携

◇独自の教科の創設などは、総理大臣の認定による特区制度ではなく、文部科学大臣の指定に

より可能に

*「構造改革特区制度」

H14 構造改革特区法

社会実験 民間活力の導入→経済の活性化

特定地域での規制の緩和 成功すれば、全国化

総理大臣が地域を指定し、そこでの計画を認定 特区に限って特例実施

◇学習指導要領に依らない教育課程編成の特例→平成20年度から文部科学大臣認定に

小学校での教科としての英語教育

英語による授業「イマージョン教育」(群馬県太田市:国語・社会以外は英訳教科書・英語で)

小中一貫教育(品川区・奈良市:6-3制→4-3-2制。宮城県豊里町小中学校:→3-4-2制など)

不登校児対応の学校設置・教育課程編成(秋田県:インターネットでの通信教育による独習

で義務教育修了可能。岐阜県多治見市、可児市、福島県会津若松市、奈良県大和郡山市。)

幼稚園入園年齢の特例(保育園不足に対応して2歳から入園可。福井県私立幼稚園)

◇学校法人以外での学校設立(従来、私立学校は学校法人しか認められていない)

・株式会社による学校の設置 ・NPOによる学校の設立(不登校に限定)

○OECD・PISA調査と能力観 ◇世界各国によるフィンランド巡り ◇2006年調査の序文 PISA調査は、 「15歳の生徒が将来の生活で直面するであろう課題に対してどの程度の準備ができて

いるかを測定する」、 「学校を基本とするアプローチの範囲を超え、日常生活で直面する課題に対する知識の

活用までを評価とする幅広いアプローチを採用」、 「変化している世界にうまく適応するために必要な新しい知識と技能が、生涯を通じて継続的

に取得されるという生涯学習のダイナミックなモデルに基づいている」

◇「コンピテンシー」(能力) 単なる知識や技能だけではなく、技能や態度を含む様々な心理的・社会的なリソースを

活用して、特定の文脈の中で複雑な課題に対応することのできる力

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◇「キー・コンピテンシー」

①社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力(個人と社会との相互関係)

②多様な社会グループにおける人間関係形成能力(自己と他者との相互関係)

③自律的に行動する能力 (個人の自律性と主体性)

◇「リテラシー」; 読解リテラシー、数学的リテラシー、科学的リテラシー ・情報を入手し、管理し、統合し、創造し、判断する能力 ・まだなじみのない新しい状況に対し、知識と経験を適応する能力 「PISA型読解力」:自らの目標を達成、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に

参画するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力 *「生きる力」教育との共通性

2.多様な学習の選択・確保

◇入学資格の弾力化

専門学校、外国人学校などからの大学入学資格の拡大

短大・高専・専門学校卒業生への大学院入学資格の付与

◇編入学の拡大 短大・高専・専門学校からの大学編入

◇中教審「キャリア教育・職業教育特別部会」(平成22年5月第2次審議経過報告)

現行の大学・短期大学等とは別の学校として「職業実践的な教育に特化した枠組み」の整

備を検討する必要。

高校卒業者を対象に「職業との関連性を重視した実践的な教育を通じて、実践的・創造的

な職業人を育成するプログラム」、そのための「実験や実習など職業実践的な演習型授業の

割合を重視(例えば概ね4-5割程度)、関連企業等への一定期間にわたるインターンシップ

の義務付け」、「教育課程の編成過程における社会(関連分野の企業等)との連携・対話の

制度的確保」など。

(中等教育の多様化)

◇選択科目増大

◇総合学科

普通教育科目・職業教育科目など多数の授業科目を用意、生徒が選択、自分なりのカリキ

ュラムを編成。 平成22年4月 349校

◇単位制高校

決められた単位数を取れば卒業。学年に関係なく、ゆっくり勉強できる。

科目選択も自由に。 平成22年4月 928校

◇その他の新しいタイプの高校

複数のコースをもち、コースを超えて多様な科目選択ができる高校。

大規模な複合的カリキュラムをもつ高校

高校を隣接地に複数設置して、相互に授業選択させる など

◇特色ある学科

「くすり・バイオ科」(富山県)、「グリーンライフ科」、「産業デザイン科」、

「国際情報ビジネス科」、「マリン開発科」、「グリーンサイエンス科」、「環境建築科」、「総

合ビジネス科」・・・・

◇インターンシップの実施

職業系・総合系学科で7割、普通科でも2割

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◇大学/高専/専修学校での学修の単位認定

大学の公開講座を高校生が大学生と一緒に受講、高校での単位として認定

コンピュータ、英語など専修学校での学生の成果を高校の単位として認定

◇学校外での活動を単位認定 ボランティア活動、スポーツ大会での好成績、資格試験合格

(英検、TOEFL、TOEIC)

◇大学と高校の連携(平成22年4月)

連携協議会の設置 955校

大学の科目等履修生制度・公開講座の活用 870校

大学教員による高校での大学紹介・講義 2,809校

◇中等教育学校(平成22年4月48校)、専修学校(専門学校・高等専修学校)

*中高一貫教育(平成22年4月402校+23年度以降31校)

3.リカレント教育の推進 学校修了者等多様な学生の受入れ

*生涯学習審議会1992(平成4)答申

重要な現代的課題の一つとして位置づけ

OECD1973年報告での考えを拡大 正規学校教育以外の教育機関(社会教育)も

フルタイムばかりでなくパートタイムも

*生涯学習審議会1996(平成8)答申

高等教育機関は高度で体系的な継続的な学習の機関として生涯学習社会の実現に不可欠

な機関。若い年齢の学生だけでなく広範な年齢層にまたがる社会人のための学習機関と

して位置づけられるべき。

○大学等による社会人の積極的な受け入れ

社会人特別選抜の実施、専ら社会人を対象とするコース・専攻などの設置、

放送大学の拡充、昼夜開講制の制度化、夜間大学院・通信制大学院の制度化、

大学院修業年限の弾力化(1年制修士課程の制度化、長期在学制の推進)、

遠隔授業の制度化、科目等履修生制度の制度化、単位互換制度の拡充、学校外での学習

成果の単位認定の制度化、単位の累積加算による学位授与のシステム化、

公開講座、生涯学習教育研究センターの設置、大学施設開放など

インターネットによる授業・公開講座、

サイバー大学院(IT総合学部、世界遺産学部。すべての授業をインターネット活用、オンデ

ィマンドによるeラーニング方式で実施。24時間いつでも、パソコンとブロードバンド回線

だけで受講可)

ビジネスブレークスルー大学院大学(経営学研究科。ブロードバンド放送(ビデオオンディマ

ンド)またはCS衛星放送とインターネットで授業)

○教育訓練休暇制度の拡充の必要

*ギャップイヤー制度(大学入学前・在学中のほか、卒後、就職前に多様な社会体験活動を)

NPO「Learning for All」、 「Teach For America」(TFA)

【地域での学習拠点としての学校】

4.「地域に根ざした学校」(H8生涯学習審議会)「開かれた学校」(中教審答申)

◇地域に支えられる学校 地域教育力の活用、学校運営支援、PTA、・・・

◇地域社会に貢献する学校 学習講座、施設開放、余裕教室、・・・

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―生涯学習理念の浸透

◇子供の教育は子供の生活全体を通じて行われるべき。

子供は社会的な価値観・風潮に影響。学校週5日制、学力の向上、いじめ問題への対応な

ど、学校だけではよりよい教育はできない。

◇学校はすべての地域の人々の学習の場へ。

―学校の情報公開・説明責任対応への社会的な要請

◇学校の教育運営に関する結果責任

◇閉鎖的になりがちな学校の慣行・雰囲気の見直しの契機に。

(1)地域の協力・支援による学校

◇学校は、学校だけで教育・運営されなければならない訳ではない

地域には多くの学習資源(人・もの・情報など)があり、それを活用することによって教育の充

実が図れる

学校支援ボランティア、PTA、NPO、社会教育施設、学校支援地域本部

◎「学校支援地域本部事業」

<1>意義

学校支援地域本部とは、地域全体で学校教育を支援する組織

地域教育協議会・地域コーディネーター・学校支援ボランティアで構成の任意団体。

(ねらい)

学校教育の充実・多様化、教員の負担軽減

学習成果を生かす、地域の教育力の向上

(メリット)

◇組織的、安定的、継続的な支援活動が期待できる

学校支援を直接の目的として、そのための組織化をし、学校との調整の仕組みを持つ

PTAは毎年、会員・役員が替わる

◇多様な人々が参画・支援できる

個別の各団体は構成員がその目的に応じて独自に組織…PTAは親と教師

(課題になる点)

◆教員の理解の確保 地域による学校支援の必要性。現実のニーズ検討。

教員の「プロ意識」との両立

ベテランの先生方に必要ないとの反応が多い

やってみて初めて有用性が理解されることも多い(実技など)

◆本当に負担軽減になるか 学校/教員との具体的な活動内容の円滑な調整に工夫必要

・調整の時間の調整 時間がかかる。

・教員が何を必要としているか 実施すること自体が目的ではない

◆活動の成果がきちんとできるか

・目標をきちんと設定、成果が出ているかきちんと評価

学校側での実施に当たっての目標設定、評価・成果の確認の必要

<2>事業の概要

中学校区ごとに設置。1学校ごとの設置や複数校区をまたぐ市町村での設置も可

「学校支援地域本部事業」は学校教育に対する支援を行うのに対し、

「放課後子どもプラン」は学校外活動に対する支援

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<3>仕組み・役割

○地域教育協議会

(役割)どのような支援を行っていくかといった方針などの企画、立案

(構成員)学校や PTA、コーディネーターやボランティア代表をはじめ、公民館等の社会教育関係

者、自治会や商工会議所等地域の関係者など

◇既存の組織での代替も可

これまで地域には多くの、独自の学校支援の組織・団体・仕組み等があった。

既存の組織の活用が重要 予算事業への上手な適応国の予算終了後の予算確保の問題

◇期間内での対応検討が必要

自治体による予算化、ファンド設置、受け皿となるNPO等法人化、完全無償ボランティア化

○地域コーディネーター

(役割) 学校とボランティア、ボランティア間の連絡調整など

学校支援地域本部の実質的な運営を担う

①受け止める(双方のニーズを)、 ②知らせる(双方に情報・実際の様子を)、

③つなぐ(マッチング)、 ④育てる(学ぶ機会の提供) <とちぎ市民協働研究会>

◇東京都小平市小平第6小学校「コーディネーター部会」

「登録カード」作成 誰が、いつ、どんな活動ができるかを表にしている。人材バンク。

学校側にも校務分掌としてコーディネーター担当を配置

教育委員会がボランティア、コーディネーター同士の交流会年一回開催、情報交換・協議

コーディネーター活動経費 月上限5千円

(発案事業)

・プレ1年生への模擬授業(ルールとマナーを)。小1プロブレム対応。親には、コーディネ

ーター演出・出演の寸劇(「困ったお母さん」)。校長との心配事懇談。

・「避難生活体験」PTA、青少対などの各団体と地域ぐるみで。担架作り、暗闇体験、テント設

営、など防災訓練。

・学習支援 国語科(句会&茶会)、社会科(駅前開発に意見を出そう)

「六小美術館」地域の絵本作家の原画展。「お店番体験」

*単に、教師の手伝い・学校の依頼請負の段階ではなく、学校との連携の元で独自の企画

◇群馬県前橋市(春日、元総社、南橘、鎌倉の4中学校)

コーディネーター配置 学校規模の大きい南橘中には2名、他には1名

春日中:前橋工科大学と連携 大学生・院生が数学の授業で支援

生徒が大学で科学の講義を聴講。今後、音楽科で琴など伝統楽器の学習も

元総社中:「元中ふれあい農園」農業体験学習。トラクターの土起こしから収穫まで

JA、給食センターとの連携も。

南橘中:「職場体験学習」教員と協力して、施設店舗への協力依頼

鎌倉中:自治会・NPOとの共同で、生徒の河川清掃

◇栃木県宇都宮市「魅力ある学校つくり地域協議会」

清原南小 地域コーディネーター2名配置。職員室の中に教員と席を並べ、週3回。

4つの推進部;地域活動推進部、安全活動推進部、体験農園部、

教育活動推進部(読み聞かせボランティア、「街の先生」によるドリル採点、ミシン・手

縫い等の補助、英語活動への補助、学習・行事・環境整備等への支援活動)

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◇千葉県野田市

地域教育コーディネーターの推薦 学校と公民館に依頼

地域教育コーディネーターの養成 候補者25名を市が企画の年間8回の養成研修

中学校に各2名配置

余裕教室に「地域ルーム」 コーディネーターの活動拠点

学校と協力して「学校支援地域本部雄心」定期発行

「活動内容データベース」各学校からの人材情報を本部で共有。他の学校区でも活用可能に。

○学校支援ボランティア

実際に支援活動を行う地域住民

(支援活動の内容)学校のニーズに応じた様々な活動/いわゆる学校管理下の活動が対象

①学習支援活動;授業の補助や実験実習の補助等

(専門人材として)ゲストティーチャー、コンピュータ指導、芸術、スポーツ等

(サポーターとして)多様にあり得る

②部活動の指導

③校内の環境整備;図書の整理や読み聞かせ、グラウンドの整備や芝生の手入れ、花壇や

樹木の整備等

④子どもの安全確保;登下校時等における声かけ・見守り

⑤学校行事の運営支援

(課題点)

◆ボランティアの確保が難しい

◆学校でのボランティア活動のルールづくり 学校と共通の理解で

守秘義務、子どもを比較しない・叱らない、子どもの声を良く聞く、公平に接する

政治・宗教・思想的にも中立に・・・

◆教員からの認知の必要 「この人だれ?」の目で見られる。

コーディネーターが職員会議等での紹介を。子ども達へも。

◆活動の質の担保 研修・学習活動の必要

○愛媛県松山市立久米小学校「特色ある学校づくり推進委員会」

公民館と学校の連携「学社連携協力推進協議会」

・卒業記念「埴輪づくり」 総合的な学習の時間、図画工作科で埴輪作製、里山に永久保存、

ボランティアコーディネーターの調整・ゲストティーチャーの指導

・「里山わくわくキャンプ」4年生が1泊2日の宿泊体験

ボランティアカード「ゆいまーる」発行

←学校からの「お願いゆいまーる」カードでコーディネーターが調整

*杉並区和田中学校の例

◇単一学校内における地域のボランティアと学校とのインターフェース

学校の運営を補完し、学校を活性化

教員の仕事:授業・補習と部活(中学校)や放課後遊び(小学校)を中心とする生活指導

支援本部の提供するサービス

総合学習や土曜日の学習、図書室や校庭の緑の世話など、教員がやれば本務に支障が出るも

の + 本部主催の独自の事業

活動時間:主に放課後や土曜日、夏休みなど、通常の学校の授業時間帯以外の時間活動場所:

学校内

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本部役員:事務局(事務局長が学校と連絡調整。諸活動をサポートするメンバーを事務局の実

行委員が機動的に割り当て)

構成メンバー:PTAのOBやOG、学校の卒業生、学生(とくに教員になりたい教職課程の学生)、

社会人など多岐

教員側の対応:一割の教員をネットワーク型の教員として

事業:「土曜日寺子屋」年30回土曜日9-12時

「英語アドベンチャーコース」(土曜日に英語を3コマ積み増して3年生までに英検準2

級(高校2年級)を目指す)

「夜スペ」(進学塾と組んで平日の夜に英数国の受験勉強をするコース)

「図書室の運営」平日放課後

「学校の緑の維持管理」学校芝生化、芝生管理

「iキッズ計画」PCスキル向上、

「部活動支援」

* PTAの役割見直し、PTAによる反発 協働体制の確保の必要

中高年者などPTAにかかわらない一般の市民の方々を広く受け入れるのに、

必要な組織

実際上は、PTAの会員が地域支援本部の活動を担うことが多い

地域支援本部で活躍する人は、かつてPTAで活動した人が多い(PTAは人材の供給源)

結局、広い意味で、PTAは地域支援本部を支える存在になる(PTA60周年記念誌座談会)

(2)地域の人々の集い・学ぶ場、地域コミュニティをつくる場としての学校

○千葉県習志野市立秋津小学校「秋津コミュニティ」

秋津小学校の余裕教室(4教室・畑用敷地100㎡・陶芸窯)を拠点に、地域の人 々 が

様々な学習活動を行う。31サークルが登録。PTAの役員・OB/OG、地域団体の代表

などが集まり、施設の「自主・自律・自己管理」。午前9時から午後9時まで。年間利用回数

('98年)1,232回、延べ11,117人・月平均103回・926人クラブ活動への参加:4~6

年生。土曜日2時間。14のクラブで約50人。

学校お話会:全学年・全学級・毎学期1時間、文庫活動グループが実施。

校内音楽会:全学年・音楽として。音楽サークルと児童とが合同で実施。

「秋津小学校と地域の運動会'96」:秋津まちづくり会議、連合町会と共催して。「秋津オペレ

ッタ」公演。市民と子ども、教員が創り上げた。

地域の人々が子ども図書室や、本の検索用プログラムソフトを提供。

*「学校と地域の融合教育研究会」全国組織

○千代田区立昌平童夢館

区立小学校の統廃合計画の一環として、昌平小学校、昌平幼稚園、神田児童館、昌平まちか

ど図書館の複合施設が設置された。

屋上は開閉式ドームをもつ運動場、地下に温水プール・ジャグジーを設置。全館は冷暖房を

完備し、校舎にはシャンデリアのある多目的ホールなどもある。

こうした高機能の施設整備は、統廃合による学校新設ということとともに、学校施設につい

ての考え方の転換もある。地域の公共の施設を学校が共用させてもらっているとの考え方に

立つことによって、学校だけでなく、地域の人々みんなが使う施設だから、通常の学校より

高機能化、豪華化は当然となる。学校施設部分の開放も自然に行われる。

運動場、プールとも時間を決めて、市民と児童が共用。学校図書室もまちかど図書館と同じ

フロアで隣同士に有り、図書の貸しだしも連携。児童館と学校との連携も極めてスムーズに。

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○東京都立新宿山吹高校「生涯学習講座」

この学校(単位制の定時制・通信制課程)では、社会人の学習ニーズにこたえるた

め、ビジネス、共用、趣味、健康に関する「生涯学習講座」を開設。生涯学習担当教

頭はこの講座の企画・運営。社会人の他、生徒も受講することができ、その場合には、

講座の受講は授業科目の単位認定の対象とされる。

このほか、正規課程の授業を広く都民一般に公開するため、「一部科目履修(聴講)

の制度」を設けて、定員に余裕のある場合に受講を募集している。生涯学習担当教頭は、

この制度の運営を担当するほか、学校施設開放事業も担当。

○宮崎県五ヶ瀬町「学校がまちづくりの核に」

教職員が中心になり、地域の人々と委員会(学校づくり、町づくり、学校システム変更)

学校づくり委員会:過疎のまち、小学校4校、児童が移動。学年や教科に応じて、多様な規

模で充実した授業実施。

町づくり委員会: 公共図書館未整備のため、公共施設(郵便局・病院、役場など)に寄付

された図書を、図書館作業部会教職員が配本。

給食部会では高齢者等が予約によりランチルームで子どもと一緒に食事。

学校システム委員会: 学校予算は、学校が計画、財政当局・議会に説明、査定を受ける。

役場の一部機能を学校に。(住民票の交付など検討中)

地域通貨;支援地域事業本部事業で時間通貨を活用。掲示板を通じて、

学校で必要なボランティア活動に通貨を使い、逆に、パソコン教室実

施、体育館開放、家庭科教室利用などで通貨をもらう。学校がコーデ

ィネートの場に。

○京都市「知恵と行動の市民参加プロジェクト」

= 様々な教育課題に市民ぐるみで + 企画段階から市民参加の共同研究・実践。

◇市民ぐるみ道徳教育:「道徳教育振興市民会議」(河合隼雄座長)市民アンケート提言

「生き方探求チャレンジ事業」中2職場体験

「便きょう会」;「掃除に学ぶ会」との連携で学校便所を子ども、親、教師、地域ぐるみで

◇「21世紀の理科を考える市民会議」 「科学屋台ネットワーク」創設

◇食育の推進「日本料理に学ぶ食育カリキュラム推進委員会」(H18~)

NPO「日本料理アカデミー」(老舗料亭等)との連携による出前授業、カリキュラムづくり(H20)。

◇「スチューデント・シティ」(小学5年)・「ファイナンス・パーク」(中学1/2年)

ジュニア・アチーブメント(世界 大の経済教育団体)と連携し、民間と共同実施。H19.1

開設。統合元中学校校舎を活用し「生き方探究館」開設。銀行や商店、新聞社、区役所

等を企業の協賛やボランティアにより設置、街を再現、運営。

学校で事前学習10時間+施設内体験学習6時間、学校で事後学習2時間 など

◇「みやこ子ども土曜塾」(H16~) 8,000事業、17万人が参加。

PTA、NPO法人、ボランティア等幅広い協力を得て、様々な学びの場を創設。

「大人みんなが先生に」「まち全体を学びと育ちの場に」「情報誌GoGo土曜塾」

学校での「ふれあい土曜塾」

◇「歴史都市・京都から学ぶジュニア日本文化検定(ジュニア京都検定)」(H17~)

知識と共に体験を重視。市民参加のプロジェクト

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Ⅲ.家庭・学校・地域の連携

1.連携に関する法規定

(新教育基本法)

○学校・家庭・地域の連携(13条)

◇「学校、家庭及び地域住民その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自覚すると

ともに、相互の連携及び協力に努めるものとする。」

○家庭教育の充実(10条)

◇「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有する」(親の責任の重要性)主な内

容:基本的な生活習慣の確立、自立心の育成、心身の調和のとれた発達に集約明示その実施努力

を義務づけ。

◇国や地方公共団体に「家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提

供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずる」ことの努力義務。

(公的な支援の根拠規定の設置)

(学校教育法) 第31条 小学校においては、前条第一項の規定による目標の達成に資するよう、教育指導を行うに

当たり、児童の体験的な学習活動、特にボランティア活動など社会奉仕体験活動、自然体験活動

その他の体験活動の充実に努めるものとする。この場合において、社会教育関係団体その他の関

係団体及び関係機関との連携に十分配慮しなければならない。

第43条 小学校は、当該小学校に関する保護者及び地域住民その他の関係者の理解を深めるととも

に、これらの者との連携及び協力の推進に資するため、当該小学校の教育活動その他の学校運営

の状況に関する情報を積極的に提供するものとする

第24条 幼稚園においては、第22条に規定する目的を実現するための教育を行うほか、幼児期

の教育に関する各般の問題につき、保護者及び地域住民その他の関係者からの相談に応じ、

必要な情報の提供及び助言を行うなど、家庭及び地域における幼児期の教育の支援に努め

るものとする。 第137条 学校教育上支障のない限り、学校には、社会教育に関する施設を附置し、又は学校

の施設を社会教育その他公共のために、利用させることができる。 (社会教育法) 第3条(国及び地方公共団体の任務)

3 国及び地方公共団体は、第一項の任務を行うに当たつては、社会教育が学校教育及び家庭教

育との密接な関連性を有することにかんがみ、学校教育との連携の確保に努め、及び家庭教育の

向上に資することとなるよう必要な配慮をするとともに、学校、家庭及び地域住民その他の関係

者相互間の連携及び協力の促進に資することとなるよう努めるものとする。

第9条の3 社会教育主事は、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を与える。ただし、命

令及び監督をしてはならない。

2 社会教育主事は、学校が社会教育関係団体、地域住民その他の関係者の協力を得て教育活動

を行う場合には、その求めに応じて、必要な助言を行うことができる。

第32条の2 公民館は、当該公民館の事業に関する地域住民その他の関係者の理解を深めると

ともに、これらの者との連携及び協力の推進に資するため、当該公民館の運営の状況に関

する情報を積極的に提供するよう努めなければならない

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第44条 学校(国立学校又は公立学校をいう。以下この章において同じ。)の管理機関は、学校教育

上支障がないと認める限り、その管理する学校の施設を社会教育のために利用に供するように努

めなければならない。

第48条 文部科学大臣は国立学校に対し、地方公共団体の長は当該地方公共団体が設置する大学又

は当該地方公共団体が設立する公立大学法人が設置する大学若しくは高等専門学校に対し、地方

公共団体に設置されている教育委員会は当該地方公共団体が設置する大学以外の公立学校に対

し、その教育組織及び学校の施設の状況に応じ、文化講座、専門講座、夏期講座、社会学級講座

等学校施設の利用による社会教育のための講座の開設を求めることができる。

2 文化講座は、成人の一般的教養に関し、専門講座は、成人の専門的学術知識に関し、夏期講座は、

夏期休暇中、成人の一般的教養又は専門的学術知識に関し、それぞれ大学、高等専門学校又は高

等学校において開設する。

3 社会学級講座は、成人の一般的教養に関し、小学校又は中学校において開設する。

(博物館法) 第3条(博物館の事業)

1項 11 号.学校、図書館、研究所、公民館等の教育、学術又は文化に関する諸施設と協力し、そ

の活動を援助すること。

2 博物館は、その事業を行うに当つては、土地の事情を考慮し、国民の実生活の向上に資し、更

に学校教育を援助し得るようにも留意しなければならない。

第9条の2 博物館は、当該博物館の事業に関する地域住民その他の関係者の理解を深めるとともに、

これらの者との連携及び協力の推進に資するため、当該博物館の運営の状況に関する情報を積極

的に提供するよう努めなければならない。

(図書館法)

第3条(図書館奉仕) 図書館は、図書館奉仕のため、土地の事情及び一般公衆の希望に沿い、更に学

校教育を援助し、及び家庭教育の向上に資することとなるように留意し、おおむね次に掲げる事

項の実施に努めなければならない。

四 他の図書館、国立国会図書館、地方公共団体の議会に附置する図書室及び学校に附属する図

書館又は図書室と緊密に連絡し、協力し、図書館資料の相互貸借を行うこと。

九 学校、博物館、公民館、研究所等と緊密に連絡し、協力すること。

第7条の4 図書館は、当該図書館の図書館奉仕に関する地域住民その他の関係者の理解を深めると

ともに、これらの者との連携及び協力の推進に資するため、当該図書館の運営の状況に関する情

報を積極的に提供するよう努めなければならない。

2.子どもの状況(連携の背景) (1)基本的生活習慣の形成=学校生活・教育の基盤確保 ◇ベネッセ 第4回 学習基本調査報告書(小学5年・中学2年)2006.6-7

疲労感 「とてもそう感じる」+「少しそう感じる」

小学生 中学生

「あくびが出る」 81.3% 86.3%

「目が疲れやすい」 61.7% 71.8%

「だるい」 52.4% 76.6%

「いらいらする」 58.7% 65.5%

「あきっぽい」 59.0% 71.0%

*男女別では女子の方がどの項目でも数値が高い。

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(朝食摂取との関連)

◇「朝食摂取の頻度」が低い子どもほど、「身体のだるさや疲れやすさ」を感じる度合が高い。

◇「朝食摂取の頻度」が低いほど子どもほど、「イライラする」と感じる度合が高い。

(孤食との関連)

◇「朝食の共食状況」と「身体のだるさ・疲れやすさ」;孤食の方がそれを多く感じている

しばしば感じる 時々感じる 合計

家族そろって食べる 14.5% 20.6% 35.1%

一人で食べる 23.2 28.7 51.9%

◇「夕食の共食状況」と「身体のだるさ・疲れやすさ」;孤食の方がそれを多く感じている

以上、日本スポーツ振興センター(2007.11調査)「平成19年度児童生徒の食事

状況等調査報告書」から (小学5年・中学2年)

(2)学力と家庭・地域と関係

(朝食と学力)

◇(朝食と学力)朝食を毎日食べる子どもほど、正答率が高い。

*学力と朝食摂取とには強い相関関係がある。しかし、因果関係にあるわけではない。

平成21年度全国学力・学習状況調査 文部科学省H21.4実施 小6/中3

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○「朝ご飯をちゃんと食べてこない子供」(1週間に3日以下)は、 (首都圏・関西圏中学3年生)

「しっかり食べてきた子供」(4日以上)朝食に比べ、

【宿題をよくやるか】 24.4ポイントも低い

【自分から勉強するか】 9.5ポイントも低い

【午前中の授業態度】眠い 15.5ポイント高い

気が散って集中できない 26.3ポイント高い

勉強する気が起こらない 35.5ポイント高い

(朝ごはん実行委員会・食糧庁・JA全農 H12)

(家の人とのコミュニケーションと学力)

家の人と学校の出来事について話をしている子どもの方が、正答率が高い傾向。

*中学校でも同様の結果。 *文部科学省H21全国学力調査

(地域の学校参加と学力)

平均正答率が高い学校群の方が、低い学校群より、「PTAや地域の人が学校の諸活動に参加してくれ

る」と回答する割合が高い傾向が見られる。

A群:平均正答率が5ポイント以上全国平均を上回る学校、B群:下回る学校

*中学校でも同様の結果。 *文部科学省H21全国学力調査

(家庭の文化的環境と学力)

=苅谷剛彦東大教授らによる調査(2001年関西地区小中学校対象。「学力と階層」から

○子どもの学習意欲・学習行動・学力は「家庭の文化的環境」(家族がテレビでニュース番組を見る、

博物館や美術館に連れて行く、コンピュータがある、絵本を読んでくれる、手作りのお菓子を作

ってもらうなど)に、大きく依存する。

○家庭の文化的環境が高いほど、子ども達の学習意欲は高く、実際の家庭での学習時間も多く、成

績も高くなっている。

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◇学習意欲(中学生:とてもあてはまる+まああてはまる) 単位%

上位 中位 下位

出された宿題はきちんとやる 71.7 67.2 55.9

自分から進んで勉強する 42.9 32.1 24.5

勉強はおもしろい 41.6 29.1 24.1

◇学習行動(中学生)家庭での学習時間(単位分) 上位38.9 中位27.3 下位 20.7

◇テスト結果(中学校)2教科の合計の平均点 140 134 117

(保護者の普段の行動と子どもの学力) =御茶ノ水女子大学・耳塚寛明教授らによる「教育と格差

の発生・解消のメカニズムの調査研究」ベネッセ(調査2007-08)

○本を読む子どもほど、学力が高い。特に国語では顕著。

学力階層を4分類。Aが も高い層、Dは も低い層。「よくする」+「ときどきする」の比率。

○保護者の普段の行動は、子どもの学力に強い関係がある。

◇高学力層の保護者ほど、よく「本を読む」、「美術館等へ行く」、「新聞の政治経済欄を読む」子

どもほど、学力は高い。

◇逆に、低学力層の保護者ほど、「テレビのワイドショーやバラエティ番組を見る」「スポーツ新

聞や女性週刊誌を読む」「カラオケに行く」傾向にある。

*学校との関わりでは、高学力層の保護者のほうが「学校での行事(体育祭・学芸会など)に参

加」する傾向がある。

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(3)社会性・規範意識

◇誰から影響を受けたか。 日本青少年研究所1992年

母親からと答えた者 アメリカ 日本 ・ (誰からも受けない)

「正直な人間になる」 80.3% 38.6% (31.5)

「自分の責任を果たす」 75.5 32.3 (27.3)

「自分勝手なことをしない」 71.9 36.1 (26.3)

「損をしても正しいことをする」 68.0 24.3 (42.3)

(体験活動と道徳観) 小学校4年生・6年生、中学校2年生

○生活体験が豊富な子どもは道徳観・正義感が強い

《生活体験》「小さい子どもを背負ったり、遊んであげたこと」「ナイフや包丁で果物の皮をむい

たり、野菜を切ったこと」などと、

《道徳観・正義感》「友達が悪いことをしていたら、やめさせる」「バスや電車で体の不自由な人

やお年寄りに席をゆずること」などの行為の有無に強い相関関係。

○お手伝いをする子どもほど、道徳観・正義感が充実

《お手伝い》「食器をそろえたり、片付けたりすること」、「新聞や郵便物をとってくること」、

「ペットの世話とか植物の水やりをすること」、「お料理の手伝い」などと、

《道徳観・正義感》の度合い強い相関関係。

○自然体験が豊富な子どもほど、道徳観・正義感が充実

《自然体験》「チョウやトンボ、バッタなどの昆虫をつかまえたこと」、「太陽が昇るところや沈む

ところを見たこと」、「夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見たこと」「海や川で泳いだこと」など

《道徳観・正義感》の度合いに強い相関関係。

独立行政法人国立オリンピック記念青少年総合センター「『青少年の自然体験活動等に関する実

態調査』報告」(平成10年度・17年度)より

○子どもの頃の体験活動の豊富な人ほど、社会での規範意識・職業意識は高い

国立青少年教育振興機構「子どもの体験活動の実態に関する調査研究(中間報告)」

平成22年5月 20 代~60 代の成人 5,000 人を対象に

◇子どもの頃に「自然体験」や「友だちとの遊び」などの体験が豊富な人ほど,「もっと深

く学んでみたいことがある」といった物事に対する意欲や関心,「電車やバスに乗ったとき,

お年寄りや身体の不自由な人には席をゆずる」といった社会における規範意識,「社会や人

のためになる仕事をしたい」といった職業意識が高くなる傾向がみられた。

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(自然体験)・海や川で貝を採ったり、魚を釣ったりしたこと。 ・海や川で泳いだこと。

・太陽が昇るところや沈むところを見たこと。 など

(意欲・関心)・もっと深く学んでみたいことがある。 ・なんでも 後までやり遂げたい

・経験したことのないことには何でもチャレンジしてみたい。 など

(友だちとの遊び)・かくれんぼや缶けりをしたこと ・ままごとやヒーローごっこをした

こと ・すもうやおしくらまんじゅうをしたこと など

(規範意識)・叱るべき時はちゃんと叱れる親が良いと思う ・交通規則など社会のルールは

守るべきだと思う ・電車やバスに乗ったとき、お年寄りや身体の不自由な人に

は席をゆずろうと思う など

(地域活動)・近所の小さい子どもと遊んであげたこと ・近所の人に叱られたこと

・祭りに参加したこと ・地域の清掃に参加したこと など

(職業意識)・自分にはなりたい職業や、やってみたい仕事がある ・大人になったら仕事を

するべきだと思う ・できれば、社会や人のためになる仕事をしたいと思う など

(4)睡眠

◇小学生(10歳以上)の睡眠時間 (NHK国民生活時間調査)

1941(S16) 9時間32分

1990(H 2) 9時間 3分

2000(H12) 8時間43分

* 戦前(60年前)と比べると50分減少。この10年だけで20分減少。

2005(H17) 8時間40分 ⇒さらに、この5年では3分減少

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◇若者の睡眠時間の減少傾向は、日本に限らず、欧米にも共通。欧米に比べその傾向は極端

*日本の中学生は、各学年とも、各国と比べて、夜間の睡眠時間はかなり少なくなっている。 アメリカとは30分程度、ヨーロッパとは1時間30分以上も少なくなっている。

福田一彦・福島大学教授(「教育と睡眠問題」2003年)

●子どもの問題状況

学力低下が問題となっているが、生活習慣のなさ、健康状況の悪さ、社会性・倫理観等の欠如な

ど、多くの問題が噴出している。それらは別個にではなく、相互に影響しあい、総合的に現

れるようになっているのではないか。

3.PTA活動の推進

(1)意味・役割

●PTAの活動を通して、子どもたちをよりよく育てることができる

自分の子どもをよりよく育てる ← 親の権利・義務として

日本社会を担う子どもたちをよりよく育てる ← 大人・社会人の責任として

◇PTAは、子どものよりよい成長のため、子どもの育成に も深く関わる親と教師が集い、学び、

考え、行動する場

○学校教育を支え・充実させる働き(→PTAは社会教育団体というより学社融合団体)

◇親と教師による独自の組織。相互理解と協力

親は親の希望・願いを学校に伝え、学校はそれを受けて教育を計画・実施、親に理解を求

める。

親は学校を理解(批判も)・支援・協力する。さらに学校運営に参画を。

学校側からもPTAとの連携・支援について期待が高まっている。

閉鎖的になりがちな学校の慣行・雰囲気の見直しの契機にも

○家庭での子育て・教育を充実させる働き

◇社会環境の急激な変化の中で、子育ての環境・方法・意識などの学習・再構成が必要→ PTA

は家庭でのしつけ・教育についての学び・相互啓発の場となりうる

○学校と地域社会とをつなぐ架け橋の役割

◇保護者間、保護者と教師、保護者と地域の人々、学校・教師と地域の人々との間の絆・交流の

基盤となりうる

保護者の人的ネットワークの要(PTA以外には地域との絆ない人も)

(2)PTAの現状と課題

◇多くの保護者の参加による自主的・積極的な活動になっていない、役員選びに困難、一部保護者の

みの活動参加、負担のアンバランス、親に役割の認識が不十分

⇒ 自律的で面白い活動が増えてきている

◇活動成果への疑問、達成感のなさ、活動の広がり

学校からのチェックがある、単なる支援機関、形式的・形骸化した事業が多い

役員になると冠婚葬祭などが多い

⇒ 従来業務の積極的な見直し

◇組織的弱点(毎年度、会員や役員が入替わる。ノウハウが蓄積しない、事業実施に慣れた人いない)

⇒ 強み:多様な能力・経験を持った多くの人がいる。慣例にとらわれない活動が可能

蓄積の工夫:マニュアル、手引き、経験者の活用

◇教員の参加が確保されない

教員にとってのPTAの意味 再確認の必要 養成段階での教育を。

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PTAについての研修機会を。

学校運営上の位置づけを(校務分掌で連携担当を)。管理職以外にも担当者の配置を。

PTA 活動位置づけの変更;社会教育団体の一員<学校の重要な業務、職務遂行の一環としての

位置づけを

◇母親中心の組織・活動、父親の役割希薄

多くの女性役員・一人の男性会長。男女共同参画社会形成の試金石

(3)PTA役員の意識 (日本PTA H18.8調査)

数字は、各項目について、そう感じる度合い「特に大きい」・「ある程度大きい」の合計

◇一般会員がPTAの活動に参加できない主な理由

「勤務や家庭内の仕事が忙しいため」(81.3%)

「PTAの重要性についての理解が十分でないため」(69.0%)

◇PTA役員をしていることの良さは、どのようなことだと感じていますか

「子どもや学校のことが良く理解できるようになる」(94.1%)

「地域に親しい人が増え、交流のネットワークができる」(89.8%)

「教員と話す機会が増える」(89.4%)

「大切な活動としてのやりがいが感じられる」(78.1%)

「自分の成長が感じられる」(73.9%)

◇教員の参加を促進するためには、どんなことが必要か

「校務分掌においてPTA担当教員をきちんと定める」(72.0%)

「教員養成段階での学習」(66.7%)、「研修での学習」(62.8%)

◇一般会員の中に次のような傾向が見られるとの声がありますが、どう感じていますか>

「自分の子どものことしか念頭にないという保護者が多い」(76.7%)

「家庭で子どもに十分躾をしない保護者が多い」(75.1%)

「授業参観などで、私語や携帯電話など、態度が好ましくない保護者が多い」(52.4%)賛否半 々

「学校や教育委員会に対して身勝手な要求をする保護者が多い」(51.6%) 賛否半 々

(4)これからの活動の方向

A.活動内容の見直し

◇真にやりがいのある活動内容を

◇例年の定例行事・事業の継続実施 ⇒ 今、何が大切か、確認

学校の行事・事務の下請けではなく、

学校の単なる財政的支援(バザー等)ではなく

(手立て・方法)

①機関内での討議

②会員への事業アンケート

◇福岡市立H小学校父母教師会

毎年12月に会員意識調査を実施。結果を12月末に全会員に報告。

組織・活動全般に関し、「今後取り組みたい活動」、「要望」、「よい点」、「悪い点」、「改善点」

など。役員会として、その結果をもとに次年度の活動目標、計画指標を作成。

③ボランティア・リストの作成

◇神奈川県平塚市真土小学校PTA「真土地区人材バンクリスト」

構成団体:連合自治会、青少年指導員、子ども会育成会、小・中PTA、小・中学校長、民

生児童委員、青少年補導員、体育振興会、公民館長

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「真土地区特技指導者(人材バンク)登録」

公民館便り、自治会回覧、等を通して依頼・募集。

指導者調査票・承諾書を公民館へ提出。登録リストは公民館で管理。

④学習

(学校教育・家庭教育に関する新たな有用な情報の収集・提供)

=PTAであることにより、行政などから、有益な情報が集まる

子どもにとって、何が問題か、会員が学び・考える機会を

・子どもの対人関係能力や社会的適応能力の育成のためには適切な「愛着」形成が必要

・情動は5歳くらいまでにその原型が形成されると考えられるため、子どもの情動の健全な発達

には乳幼児教育が重要

・子どもの安定した自己形成には、特に保護者の役割が重要

―――情動の科学的解明と教育等への応用に関する検討会議報告(H17)

・内容や見方にかかわらず、長時間視聴児は言語発達が遅れる危険性が高まる。

―――日本小児科学会「こどもの生活環境改善委員会」報告(H16)

<新しい活動例>

(授業支援)

◇新潟県小千谷市立小千谷小学校PTA

月1回程度の保護者の学習参加日(保護者が子どもとともに授業に参加、教員の指導補助を行

う)や学級担任からの学習参加要請があったとき、教員のアシスタントとして、教材を創った

り、子どもたちと一緒に活動する。全学年、全教科において実施。

例;1年生国語(読み聞かせ、音読チェック)、2年生算数(九九をチェック)

5年生家庭科(ミシン縫いの指導)など

◇石川県野々市町立 野々市中学校PTA「総合的学習の時間での指導参加」

「総合的な学習の時間」の総合基礎Ⅱの6講座の内3講座でPTA会員が参加、教師とともに

授業(2年生・3年生)を実施。

「電話のかけ方」、「取材・インタビューの仕方」、「礼・挨拶の仕方」の3講座で、保護者各6

名、1学級18名、学年6学級で108名が参加。

生徒全員の対応相手になってやり、個別に注意やアドバイスを行う。その後、クラス全体に対

して、よい例・悪い例などを模範演技で示すなどまとめの指導をする。

(図書館運営支援)

◇愛知県西尾市立東部中学校PTA「図書館ボランティア」

本好きのPTAの母親(21名)が、月曜から土曜の午後1時から4時までの間(夏休み中も

30日間)、2ー3名のグループになって、PTA活動の一環として、図書の貸しだし・返却

事務、新着本や寄贈本の登録事務、図書の修理や整理などの活動を。

具体的な業務は、学校の生徒や地域の人々への図書の貸しだし、読書にふさわしい

図書館環境の整備(ペンキ塗り、楽しむコーナー作りなど)、アンケートの実施、本の寄贈の

呼びかけ、図書館ボランティア便りの発行、司書業務についての研修、学級活動の時間でのテ

ィームティーチングによるブックトークの実施となっている。

(講座実施)

◇新潟県西蒲原郡西川町立曽根小学校PTA

家庭教育学級で学んだ成果を、子ども達にも伝え、また自らも楽しみながら活動を展開すると

して、学校開放事業としての薫製づくり教室を実施。また、6年生図工では教員の要請に応え

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て、電気ノコ作業のアシスタントとして授業参加、文化祭では工芸教室を開催。さらにPTA

側から申し出て、読書週間に各学級朝15分の読み聞かせ教室を開催。学校も自由に使えるP

TAの部屋を用意してこれに対応。

◇愛知県東浦町立西部中学校PTA「PTAカルチャー講座」

PTA主催、学校との連携で、地域の人々の協力を得て、生徒に「PTAカルチャー講座」を

実施。必修教科とは別に、着付け、エアロビクス、おもしろ天文VTR、墨絵、写真技法入門

など20講座を開設運営。1講座は一般市民にも開放。

(楽しい活動)

◇京都市嵯峨小PTA「絵本の会」

絵本の好きな会員の間に、紙芝居などを製作して発表する同好会「絵本の会」が生まれ、P

TA会員のほかそのOB・OG、地域の人も参加して活発な活動が展開。

月2回の図書室での読み聞かせの会、1学期1回のブックトークの会、月1回の「絵本の会

だより」発行のほか、他の学校・幼稚園・保育園、福祉施設、地域行事の場などで講演・発

表活動を行う。演劇フェスティバルにも参加し賞を受けるなどしている。

B.コミュニケーションの改善

(学校と保護者) 学校の目標・方針・教育の現状と成果等に関しての情報の開示を直接PTA

に、学校評議会等を通して(会員がメンバーになっているなら)

学級・学年PTA、各委員会においてPとTで懇談、協議

○PTA便りの改善・活用

校長・教員の方針、学校の現状、親の意向など読むに値する内容

広島県福山市西小PTA「すずかけ」月1/2回発行、パソコンで作成、B4・6頁

○インターネットでのホームページ

◇宮城県仙台市立N小学校PTA「ホームページ運営」

公募により応募のあった5名に対して、研修を実施したうえで、「ホームページ作成委員会」

を特別委員会として設置。好評につき、一般委員会への移行も検討。メーリングリストに

より役員間の連絡が迅速・確実に。一般会員からの投稿もある。会員からの素早い連絡に

より、必要な対応が迅速に。(通学路の迷惑な宣伝標識の撤去)

○eメールの活用

◇熊本県西原村PTA連合会「PTAメール便」

村P連が、加盟各小中学校のメール登録料を負担し、PTAメール便を運用している。

学校行事、PTA行事、台風・災害での休校等の連絡、不審者情報、修学旅行・スポーツ

大会等の結果などが、登録者全員に迅速に配信される。個人情報の秘匿に配慮。

C.活動スタイルの改善

●“誰でも、できるときに、できるだけ”

◇機動的な組織編成を

各年により重点的な事業が異なる → 年ごとに必要な編成に

実行委員会組織による企画を、必要に応じたプロジェクト方式で

→イベント企画、広報、予算計画・執行などやりたい人が得意の分野を

年間の行事計画を立案する際、コンペ方式による会員のアイデアを募集

◇組織的活動のほか、各自の都合にあわせて行える活動形態を。

◇夜間や休日の活動も

◆PTAの意義も、本当には、活動を通じてしか理解されない側面がある。

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①柔軟な運営スタイル

◇横浜市汲沢(ぐみざわ)中学校PTA「ワン・デイ・ボランティア」

役員だけがやらなくても良い。可能なときに少しだけやりたい人もいる。

会員が各自の都合にあわせて行える活動形態を 年度当初に実行委員会便りで周知(清掃活動、体育大会、文化発表会など)、

希望者は事前登録(単発で参加)、気軽に参加、

便りで活動報告;ボランティア参加者の名前も掲載

◇埼玉県新座市T小学校PTA

(固定しない活動時間)

会議等は、午前と午後で交互に行うなどの工夫をする。年度当初に1年間の日程をあらか

じめ明らかにして、都合をつけやすくしてもいる。

(特別委員会)

特別委員会設置:「子どもと本を考える会」(PTA図書の貸出、読み聞かせ)、「文化活動委

員会」(学校との共催による鑑賞教室を企画)、「ぴかぴか隊」(トイレ清掃、学校緑化)。会員

は随時募集、入退会は自由。1 年生会員には、年度当初の全体会で活動実績をアピールする

ことで理解してもらっている。

②一人一役

◇川崎市南百合ヶ丘小学校PTA「全会員参加の『1人1役制』」

学年委員会・広報委員会・成人教育委員会・厚生委員会・校外委員会・役員選考委員会

のどこかに、全会員が所属し活動。毎年度はじめに、「登録カード」に希望委員会を第3

希望まで記入、所属を決定。学級ごとに代表を選び、学校全体のPTA活動の中心を担う

運営委員会を構成。

◇府中市立D小学校PTA「サポート制度」

PTAの活動を、時期や機関に応じて3つに分類。

3 ヶ月程度の期間(縁日、給食試食会など)、特定の1 日(運動会、お餅つきなど)、特定

の日の1時間程度(ラジオ体操、広報誌製本など)。

会員の参加希望を委員会で調整、「サポートさん」として各種仕事に就いてもらう。

●多くの人の参加を目指して

①OB・OG、地域の人々の参加、PTCA

◇静岡県沼津市原東小PTA「PTAサポーター」

子ども会からの推薦でPTA役員のOB・OG、地域のお年寄り、卒業生である高校生

などに広く「PTAサポーター」として活動を一緒に担ってもらう。

◇北海道千歳市立S小学校「PTCA」

在籍児童のいない地域住民の方にも正会員として加入してもらい、単なる協力者ではな

く、主体的な立場で活動を担ってもらう。

◇宮城県大崎市立F小学校父母教師会「協力委員」

PTA組織の一つである地区会では、地域の人々を協力委員として位置付け、参加して

もらうようにした。これにより、地域参加型の事業実施が円滑になった。

◇静岡県静岡市立N中学校PTA

PTA役員「OB会」を設置し、PTA行事に積極的に参加・協力してもらっている。転

勤された先生方にも声をかけて、初年度ながら31名の参加を得て、みんな楽しみながら、

クリーン作戦、近隣中学校バザー、学校祭などに参加した。

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②父親の参加

◇岩手県北上市黒沢尻小学校PTA・親父の会「うで組」

PTA会員12名 毎回の講座に3-5名が参加

毎月土曜日に講座 子どもと大人の手伝いを募集

定期講座;地域の老人クラブとの「世代間交流」・第1土曜日

「自分で作ろうホームページ」 学校パソコン室

その他の講座;岩手大留学生との交流会(私たちの遊びや歌を教えます)

◇三重県亀山市立東小学校PTA 一定比率を男性とする組織規則改正

役職者での男性比率は約2割になった

③教師の参加

◇福井市大東中学校PTA「大人のための授業」

年2回、夜間の教室を利用して、教師(数学、音楽など)と保護者(救急隊員・放射線技

師が保健体育)がそれぞれ1時間ずつの授業を受け持ち、教師、保護者、地域の人々がとも

に机を並べて聞くというもの。音楽の授業では混声コーラスを仕上げ、マスコミ取材のもと、

卒業式に歌うなど。

D.地域ぐるみ活動への参画

○他の機関・団体等との連携

社会教育機関などは学校のために何かしたいと思っているが、学校とのチャンネルがなく、対

応できていない。団体なども声がかかれば、喜んでというところもある。

PTAが学校と地域の架け橋になる。積極的に連携提案を。

◇長野県諏訪市 四賀小学校PTA「しがっ子クラブ」

市教委、四賀地区青少年育成会、四賀公民館などの協力で平成12年度から

スタッフ:PTA会員OBを中心に、現役員、保護者・教職員有志

クラブ卒業生がジュニアスタッフとして参加

クラブ員:四賀小在籍児童(募集)H14年度69人(全児童394人)

時期 毎月第2/第4土曜日午前中//各年度20数回

活動 留学生との交流会、公民館サークル発表会参加、上川探検(信州大学生講師)、

いかだ下り、神戸山探検、河川敷花壇づくり、竹とんぼ・凧・陶芸など工作、

ケーキ作り、そば打ち、ミニ運動会、ペタンク、書き初め

E.“PTA活動は親にとって当然の活動”との社会的な認識の確立へ

◇保護者が、教員が、企業や社会が、「PTAのために時間を割くこと、有給休暇を使うことな

どは、親として市民として当然のこと」との気運を高めること

◇ボランティア休暇制度の対象へ、PTA活動参加のための休暇制度を。

◇大人の働き方・働かせ方 「ライフ・ワーク・バランス」の社会的議論へ向けて

意見を積み上げていくことも

4.学社融合

(考え方)

○子どもの健全な育成という共通の願いや目標を持つ学校教育と社会教育とが、従来の連携を一

歩進めて、学習の場や学習内容の一部を共有しながら、一体となって活動を進めていこうとする

理念。(H8生涯学習審議会)

(形態)

○典型的には、学校教育活動でもあり、また、社会教育活動でもあると位置づけられる活動。例

えば、社会教育施設が、学校教育に即した事業を企画することで、学級・講座等の受講がそのま

ま社会科・理科・美術など授業の履修と認められるような場合。

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○学校教育(学校)や社会教育(地域社会)が、有機的な連携を進めることによって、新たな教

育上の効果を生み出そうとして、緊密な連携が図られる場合、学社融合と言いうる。

(実践事例)

◇東京都台東区立根岸小学校

3年生理科学習単元「私たちの体」14時間;うち2時間を国立科学博物館で学習。

事前打ち合わせ 学校・博物館で計8回

当日 オリエンテーション 教師により10分(学習内容の確認)

児童の自主学習の後、博物館員の指導(3カ所、各25分)

準備;学習シート、骨格標本、スタディールームの学習キット、全身模型

事後指導 見学直後;教師がまとめ、職員が質問への説明。後日、学校での指導

◇滋賀県立琵琶湖博物館「ミュージアムスクール」

「湖と人間」を考える総合的な環境学習を目指し、博物館での体験的活動を組み込んだ学習プ

ログラムを学校と連携して実施。小中高校でモデル事業を実施。高校では、学習博物館での

実習(5日間)が高校の正規単位に。

◇栃木県鹿沼市公民館

木工教室を4年生の図工の授業として学校で出前実施(プログラム・講師公民館が用意)。公民

館の地域巡り事業を、学校の要望に即して計画することで、学校の社会見学として位置づけた。

◇島根県海士町中央公民館「わくわく保育」

中央公民館の「母と子のわくわくタイム」と中学校技術・家庭科の保育の授業とを共同で実施。

実際に乳幼児に触れ、お母さん方から子育ての話が聞けるよう計画。

<事前学習>・保健婦より乳児と幼児の違いについて、離乳食、おやつの必要性

・「七夕・ミニ運動会」を企画・立案。・作りおやつを保健婦より指導。

<準備>・手作りの案内状を生徒が各家庭に配布。

<七夕・ミニ運動会>・おやつづくり班、運動会班に分かれて運営する。

・母親から子育ての話を聞いたり、子どもに触れ一緒に遊ぶ。

(どんな風に進めるか。)

①学校が、融合したい教育課題を明らかにする。

これからの学校教育を進める上で、困ることや大変だなと思うところがないか、

その中で、地域の人々から支援が受けられることがないか、見直す。

◆社会教育サイドから、学校に対して、どんな連携ができるか、融合プログラムの提示が必要。

②協働できる相手を探す。

だれと連携できるか、社会教育行政担当者や公民館等社会教育施設と相談する。

③協働組織を編成する。

担当教師と地域の有志で学校支援委員会を組織。代表を地域の有志から選ぶ。

④計画(年間、学習指導案)を学校支援委員会で作る。

初めの段階から一緒に計画を。決定に関わらなければ、やる気が高まらない。

⑤実践も一緒に。

⑥授業研究にも参画。事業評価も一緒に。

*融合事業が活発に行われていない公民館でのその背景 ①「連携・協議の場づくり」ができていないこと。

公民館・学校とも、それぞれ学社連携・学社融合の必要性は認識しているものの、話し合う

共通の場がないことによって、具体的な連携の形にならない。

②「学校・公民館とも相手についての情報」がないこと。

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日常の交流がないため、それぞれの課題、連携できることについて、相互の理解が不十分

●(学社融合の理念で見直してみると。)

△教員の社会教育(施設)における研修も学校教育での指導の充実に有効。

△管理職に社会教育担当経験は有益

△学校施設の複合化の推進。

△PTAは純然たる社会教育団体ではない。学社融合の団体ではないか。

△学社融合を推進するための教職員の配置。

◇山形県戸沢村中央公民館

中央公民館に「学社融合主事」という職名の職員を配置し、積極的に地域の人材バンクの

登録と地域の人材を活用した学習の取り組みを展開し、学校の授業等の学校支援ボランテ

ィアとして紹介、斡旋している。

◇仙台市「嘱託社会教育主事」配置

社会教育主事資格教職員に、青少年の地域活動や社会参加についての指導・援助や地域に

おける社会教育関係団体の育成など、社会教育行政の業務を委嘱する。

◇栃木県「社会教育主事有資格教員の全校配置計画」

公立学校教員に社会教育主事の資格を取らせて、県内の公立学校全校に計画的に配置する

こととしている。学校では、教職員の社会教育への理解を高め、児童生徒の社会教育活動

への参加奨励・援助を図ることができ、また、社会教育施設での集団宿泊研修、地域学習・

体験学習の企画・推進、学校開放講座の企画実践等が円滑に行われるようになる。社会教

育への支援についても、家庭教育学級の講師、青少年の地域活動での指導など、積極的な

対応が可能となる。

◇群馬県松井田町「生涯学習推進教員」

全小中学校に生涯学習推進教員を配置して、学校教育と社会教育の連携協力に関する業務

を行わせている。この推進教員が中心になって、地域住民、PTA会員を対象に、教員の

専門性を生かした「学社連携講座」(コーラス講座、おもしろ科学教室、親と子の料理教室、

星の観察会など)を開設。体験学習などへの地域人材の活用、社会教育施設の利用、文化

財の教材化、地域の教育力を学校教育に生かす活動も推進。

Ⅳ.地域による学校支援からチェックと参画へ

1.学校の選択と競争、評価の促進

(1)学校選択制

○学校ごとに通学区域を設定 児童生徒は、居住地により自動的に通学すべき学校が指定される。

学校ごとの児童生徒数により、学級数が決まり、学級数により教員配置数等が決まってくる。

○通学区の弾力化 指定変更は制度としてはあったが実際は困難だったが緩和傾向(いじめ等)

○学校選択制 弾力化と言うより自由化

多様な形態 ・どの学校でも自由に、・ブロック内で自由に(品川区など)、・隣接区で可、

・特定の地域・学校で可など

○H18.5現在 導入自治体 小学校14%(H16/9%) 検討中13% 3割弱

中学校14%(H16/6%) 15% 概ね3割

(メリット)学校に緊張感、競争意識、質の向上。特色ある学校づくり。むしろ地域から評価応援。

(デメリット)学校教育・経営が不安定化、学校間格差、地域住民と学校との結びつきが希薄化。

*日本PTA全国協議会調査(H20年度) 賛成56%、反対24%(反対が減る傾向)

*江東区:2009年度以降に見直し。前橋市:2010年度を 後に廃止

○選択制のもとでの放任では不可。改善向上のための具体的な方策が必要。学校提案による予算

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<品川区>

・学校改革の重要な手法として導入(これまで教育論ばかりで実際の改革進まず)

← 特色ある学校づくり予算 実効的計画性につき厳しいヒアリング

保護者・地域住民による評価=児童生徒数として明確化

→ やらざるを得ない仕組みの中で、教員の意識改革の進展

選択するためには、

(保護者の要請)学校のことが知る必要→学校公開制(いつでも、誰でも、どの学校でも見学可)

学力の状況把握が必要→ 学力定着度調査の実施

学校評価・情報公開の要請 → 学校評価制の導入

(教員から要請)中学生の成績は小学校の指導の影響大 → 小中一貫教育の実施

(2)教育バウチャー制度の導入検討

○導入提案(仕組み)

行政側からあらかじめ各家庭に「教育バウチャー」(一種の金券)が交付

保護者は、私立を含め学校を選択し、入学後、学校にバウチャーを提出

学校はバウチャーにより、学校の運営経費をまかなう

公立学校はこれまで教育委員会が一定の基準で予算措置。導入されれば、入学する学生から得

られるバウチャーで学校を運営しなければならなくなる。

(メリット)保護者は経済的負担を気にせず、自由な学校選択が可能になる

私学に子どもを通わせる親は授業料を二重に負担(税金で公立授業料+私学授業料)

学校間の競争が促進され、教育の質の向上に役立つ。

(デメリット)学校の運営に安定性を欠き、教育の質の低下や学校間の格差拡大などが心配される。

○アメリカ(一部の州/都市)、イギリス、オランダ、スウェーデン、チリなどで実施

これらの実績ついて評価はまちまち。必ず効果があるとは言い切れない状況か。

(3)学校評価制度

平成19年、学校教育法改正(幼から高、特別支援まで)

◇学校の教育活動その他の学校運営の状況について自己評価・その結果に公表の義務。

学校関係者評価の実施・結果公表の努力義務

結果報告の設置者への報告義務

◇学校運営の状況に関する情報を積極的に提供するものとする

◇実施状況(公立・H20年度間)

自己評価結果の報告;学校便り72% 直接説明39% HP28% 広く公表しない10%

学校関係者評価;小・実施85%、未実施15%、中・実施84%、未実施16%

毎年度定期に小82%・中80%。随時に実施小10%、中10%

外部アンケートの実施 小98%、中97%

◇アカウンタビリティ(説明責任<実施責任、結果責任)

評価による資源配分。公共サービスとしての効果・効率性。ステークホールダーの発言権

◇評価により 改善ができる(自己評価だけでは限界、学校関係者評価への努力義務)

社会的なアピールができる

P-D-S 、P-D-C-A:Plan-Do-Check(評価)-Action(改善)

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◇目標の明確化・具体化 評価は目標がどれだけ達成されたかを検証するもの

目標が明確でないと評価できない⇒教育ではしばしば抽象的・美辞麗句

評価においては目標設定が も重要 法令の条文等では不十分

学校・地域での実情に応じ、環境・条件の中で、優先順位を踏まえ

◇目標の達成度の検証

アウトプット(事業活動の結果。給食・指導等の実施状況)でなく、できるだけ

アウトカム(事業活動によってもたらされる社会的効果。子どもの満足度、理解度)で

評価指標 成果を客観的に評価できる コストのかからないように

定性的・記述的な評価も必要

2.学校の運営への地域参加

(1)学校評議員制度

学校運営についての校長の諮問機関(←保護者や地域の人々の意見)

教育委員会委嘱(校長の推薦)

学校の情報公開・アカウンタビリティ発言の場→学校の自己評価活動

地域の学校支援・参加への協議の場

現況(H18.8) 公立 幼稚園35.5%、小学校88.2%、中学校88.5%

(2)「学校運営協議会」(コミュニティ・スクール)

(設置)教育委員会が指定する学校に設置

(権限)①校長の策定する学校運営の基本的な方針を承認する権限

②教職員の任用に関して意見を述べる

(委員)学校の児童生徒の保護者、地域住民等から教育委員会が任命

(現状)H21.4 指定済み学校数478校 今後予定214校 合計692校

*イギリス「学校理事会」(School Council) すべての初等中等学校に設置

各学校の運営・教育の基本を審議・決定

理事会の構成;親の代表理事、学校教師・職員の代表理事、学校設置者である地方教育当局

(日本の教育委員会に当たる)の関係者、地域産業の代表者など理事の推薦による共同選出

理事、校長からなり、全体で15名前後。

親や教職員の代表理事はそれぞれに選挙・投票により選出

理事会の権限;学校の基本的な教育課程の方針決定、校長・教頭の採用、決定(一般教員は

校長が選出・理事会で承認)、予算の決定(予算総額は児童数に応じて地方教育当局から交付)。

●民主党の政策 「日本国教育基本法案」「地方教育行政の適正な運営の確保に関する法律案」

・教育委員会の廃止=首長による教育行政

・「学校理事会」(首長が任命する保護者、地域住民、学校関係者、教育専門家等が参加・構成)

設置校長の作成する学校運営の基本方針、教育課程編成、教員人事にかかる申し出について承

認権限