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「出羽燦々」の酒米分析結果と気象条件等との相関関係につ いて 誌名 誌名 山形県工業技術センター報告 ISSN ISSN 0286813X 著者 著者 工藤, 晋平 松田, 義弘 石垣, 浩佳 安食, 雄介 村岡, 義之 小関, 敏彦 巻/号 巻/号 39号 掲載ページ 掲載ページ p. 53-58 発行年月 発行年月 2008年1月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

「出羽燦々」の酒米分析結果と気象条件等との相関関係につ …「出羽燦々」の酒米分析結果と気象条件等との相関関係につ いて 誌名

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「出羽燦々」の酒米分析結果と気象条件等との相関関係について

誌名誌名 山形県工業技術センター報告

ISSNISSN 0286813X

著者著者

工藤, 晋平松田, 義弘石垣, 浩佳安食, 雄介村岡, 義之小関, 敏彦

巻/号巻/号 39号

掲載ページ掲載ページ p. 53-58

発行年月発行年月 2008年1月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

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「出羽燦々」の酒米分析結果と気象条件等との相関関係について

工藤晋平松田義弘石垣浩佳安食雄介村岡義之小関敏彦

Studies of Analysis Result of Rice and Correlation

with Weather Conditions of the "Dewasansan" Rice Cultivar

Shinpei KUDO Yoshihiro MATSUTA Hiroyoshi ISHIGAKI

Yuusuke AJIKI Yoshiyuki MURAOKA Toshihiko KOSEKI

1 緒 Eコ

本県では,昭和 50年代後半から県産米を使

った地酒造りの機運が高まり ,県オリジナノレ酒

米の開発について多方面から協議が行われた。

その後,昭和 60年から農業関係機関を中心と

して新しい酒造好適米の開発に取り組み,平成

7年に酒造好適米「出羽燦々」が誕生した。

当センターでは,平成 4年から「出羽燦々」を

用いた試験醸造を開始して今年で 15年目とな

り, r出羽燦々」の特徴である, rやわらかく,

巾のある」酒質の実現に向け,研究を重ねてき

た。その結果「出羽燦々」を使用した製品も順

次開発され,平成 7年度には純米吟醸酒

rDEWA33Jが,平成 13年度には純米大吟醸

酒「山形讃香」が誕生している。

また,県内の酒造技術者で構成している山形

県研醸会では「出羽燦々」の醸造特性,栽培特

性の把握等をテーマに研究活動を行っている。

これまで当センターで、行っている酒米分析,

もろみ温度管理と酒質評価との関係,研醸会の

研究班による麹の力価分析,貯蔵方法と火入れ

時期の検討,市販酒の評価等の研究により, r出羽燦々」の酒造適性を明らかにするとともにデ

ータの蓄積を計り,改良点を見いだし応用して

きた。4年前からは収穫前の閏場の視察などを

行い,実際の稲の生育状況の確認やデータ収集

を行っている。また, r出羽燦々」は山形県内と

いう限定された地域での栽培となっているため,

定点地観測を行うことで,酒米分析結果と闘場

の気象条件,施肥量等との関連を調べ,その土

地に適した栽培条件の解明を目指している。

本発表では,これまでの「出羽燦々」の原料米

分析,定点地観測を基に,酒米の特性,気象状況

等の相関について考察したので報告する。

2 実験方法

2.1 原料米分析

原料米分析は酒造用原料米全国統一分析法に

より行った。この分析法は数回の変更が加えら

れており,試料の精米歩合は平成 6年度から

70%に変更され,また,現在の分析方法は平成

8年度に一部改変された。なお,表中の 20分

吸水率は水 (150C)に 20分間浸潰した時の吸

水率(初期吸水率)を示し, 120分吸水率も同

様である。消化性は原料米の酵素作用の受けや

すさを示しており, Brix. (糖度)は原料米デン

プンの消化性, F-N (遊離アミノ酸)は原料米

タンパク質の消化性を表している。

2.2 定点地観測

平成 10年から県内 4カ所の栽培地で定点観

測を行い,気象や土壌条件,施肥量によって,

「出羽燦々」の品質にどのような影響が現れる

かを調べた。観測地点は,気象条件の異なる 4

地点を選抜し,気象データは気象庁のアメダス

データを使用し,栽培条件等については耕作者

にデータを記録していただき,酒米分析値等と

の相関について解析を行った。選抜した4地点

とその特徴は表 1の通りである。

表 1 定点観測地点と特徴

地区名 地形 気;皿自 降水量日照 頻度が時間 高い災害

酒田沿岸の 気温が高〈、

やや多い 多い 台風平野都 日較差が小さい

金山北部の

気温が低い 多い 少ない 冷害山岡部

大江内陸の

日較差が大きい やや少なし 平均的山間部

米沢肉陸の

夏の気温が高い やや少なし 平均的高温

盆地 障害

3 実験結果

3.1 気象条件

定点地観測を行った平成 10年から平成 18年

-53-

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工藤松田 石垣安食村田小関 f出羽燦々」の酒米分析結果と気象条件等との相関関係について

表 2 出羽燦々」酒米分析結果の経年変化

サン 干粒重 精歩合米 真~ι精P4ロ』米 無精効米 砕米率 水白分米 脱水率吸蒸水米率

消4; 1宝;半JEtタクン ウカムリ

年度 20分 120分 8rix F-N プル数 (g)

(%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (%) (ml) (%) (ppm)

9 8 24.7 69.7 72.9 3.28 4.96 13.3 29目2 31.8 35.2 9.5 0.73 4.28 352 10 8 25.6 69.5 71.8 2.24 6.73 13.5 25.1 31.2 34.4 9.9 0.84 6.06 402 11 14 25.6 69.9 72.9 3.08 5.04 14.2 30.5 31.1 35.0 9.9 0.77 5.06 4321 12 13 26.7 70.1 71.9 1.71 7.89 13.3 28.0 28.6 31.6 8.6 0.73 4.57 3871 13 24 26.0 70.0 72.2 2.14 9.32 13.4 27.7 30.5 35.0 10.4 0.79 4.61 377 14 26 26.5 70.1 72.4 2.24 6.14 13.4 29.1 30.2 34.8 9.7 0.76 4.95 488 15 22 24.4 70.3 71.6 1.28 5.39 13.5 26.6 29.9 32.6 9.6 0.70 5.13 369 16 23 25.9 70.3 71.8 1.53 3.16 13.5 28.5 30.5 33.6 9.8 0.69 4.66 356 17 22 25.1 70.2 71.8 1.55 5.33 13.4 28.7 30.2 33.9 9.1 0.69 5.02 319 18 23 23.9 70.2 73.6 3.40 5.20 13.3 29.1 30.7 35.3 10.4 0.70 4.70 338

表3 酒米分析結果の相関

調整後 真精米 無効精米 20分¥¥ 千粒重 歩合 歩合砕米率

吸水率

調整後千粒重 --旬、、-- 一** **** 真精米歩合 0.19 ----、 **** **** *本**無効精米歩合 -0.11 0.93 h・“‘句、ーー- *ホ*本 **** 砕米率 0.36 0.21 0.26

------20分吸水率 -0.03 0.34 0.35 0.09

------120分吸水率 -0.15 0.19 0.22 一0.09蒸米吸水率 -0.26 0.02 0.00 一0.23消化性 brix 0.02 0.41 0.44 0.31 F-N 0.13 0.19 0.21 0.26 組タンパク質 一0.09 一0.04 一0.02 一0.03カリウム 0.19 一0.18 0.18 0.11

にかけての特徴的な気象条件としては,平成 10

年と 15年に冷害,平成 12年には猛暑,そして

平成 16年は圧内地方に台風による塩害の被害

がもたらされている。また,平成 17年, 18年

は梅雨が長く続き 7月下旬の気温が例年より

非常に低い年になっており,さらに平成 18年は,

低温が 8月上旬まで続いた。

3.2 r出羽燦々」の分析

平成 6年から出羽燦々」の酒米分析を行

っているが,本研究では,サンプル数が増加し

た平成9年からのデータを使用した。表2にそ

の酒米分析結果を示す。冷害年の平成 9年, 15

年では,千粒重がやや少なくなる傾向だ、ったが,

そのほかの分析項目は例年並みであり,耐冷性

が強いことが実証された。しかし,平成 18年

は冷害で、はなかったが,千粒重が非常に少なく

なっている。その原因として 7月下旬から 8月

上旬の低温,梅雨明けの遅延が重なったことな

どが推測される。このことから米の生育特性と

して,出穂、期の気温は千粒重に大きな影響を及

ぼしているように考えられる。

次に,平成9年からの酒米分析結果を基にし

た各分析項目問の相関関係、を示す(表 3)。その

結果,千粒重,砕米率, 20分吸水率,蒸米吸水

率,消化性,粗タンパク質量について高い相関

0.13 0.12 0.00

ー0.25-0.32 -0.18

120分 蒸米 消化性 消化性 組タン カリ吸水率 吸水率 brix F-N パク質 ウム

一** 一**本* 本 *** **ホ **** **キ ** **** **本* **本* 一**

一*本*本 本*刻ド* **** 本 ー**** 一本*本本 ー**、、~、、- **** **** ** ー****

0.36 ---、 一**** ー**** ** 0.25 -0.24

------*ホホ* 一*本**

0.16 -0.21 0.51 ---、 **** 0.01 -0.08 -0.01 0.36 -、 *本一0.21 0.17 0.29 ー0.06 0.14 ---晶........", 4 ・4 -"' .........,

が得られた。これらのことから「出羽燦々Jは,

砕米率が高くなると Brix値, F-N量が高く,

蒸米吸水率が高いと逆に Brix値, F-N量が低

くなり, 20分吸水率が高いと F-N量,組タン

パク質含有量は少なくなること等がうかがえた。

3.3 定点地観測

平成 10年から平成 18年までの 9年間の定京

地観測データの相関について調べた (表 4)。地

区毎のデータについては,相闘が確認できた項

目を表5に示す。

4地点全体の相関を見てみると収量について

は数多くの項目で相闘が確認できた。特に最低

気温,出穂後積算温度では危険率 0.5%の相関

が確認された。酒米成分では最高気温と千粒

重 ・120分吸水率,出穂後積算日照時間と蒸米

吸水率,出穂、後日較差と 20分吸水率にそれぞ

れ危険率 5%で相闘が確認できた。

全ての地区ではなく 2,3地点で確認できた

ことでは,積算日照時間と 20分吸水について

は3地点で正の相闘が確認できた。また,大江,

金山地区では最高,最低気温と千粒重に正の相

関がみられた。このことは,気温が高く推移し

た年は米の生育が順調に進むということより,

気温の低く冷害の年は生育不十分になることを

示しており ,これは星川の報告1)と一致してい

-54-

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山形県工業技術センタ一報告 NO.39(2007)

表4 県内 4地点全体と酒米成分の相関

全体の気象相関 最高気温 最低気温 積算温度 積算日照l積出算穂日後照 積出算穂温後度 出日穂較後差

収量(10a当り) 本本 ヨド*本* ホ** *** **** ** 調整後干粒重 ホ*真精米歩合無効精米歩合 2ド砕米率 ー*20分吸水率 * * 2ドホ120分吸水率 -,ド* -,ド蒸米吸水率 一* 一*ヨド消化性(8rix)

消化性(F-N) ー*組蛋白(%/DRY)カリ(PPM/DRY)

危R定率材料;0.5% 林 *;1% **;5% *;10%

表 5 各地区での酒米成分の相関

酒田地区 最低気温 積算温度 積算日照

収量(10a当り) * 真精米歩合 * 20分吸水率 * 120分吸水率 一*蒸米吸水率 *ホ消化性(8rix) ー*本国生生(F-N) **

金山地区 最高気温 最低気温 積算日照

収量(10a当り) 刻ド 本* 本*調整後千粒重 刻ド 本本 本真精米歩合 一*無効精米水率歩合 ー本*蒸米吸 一本本 一本

る。しかし米沢地区では最高気温や最低気温

と相関のある積算温度が,千粒重に対して負の

相関が見られた。これらのことから,それぞれ

の気象条件は,米の生育に関して長期間影響を

及ぼすものではなく,ある一定の時期に影響を

及ぼすのではないかと思われる。

3.4 月旬の気象データとの相関解析

定点地観測の結果から,次に各気象データを

月旬毎に細かくまとめ,具体的にどの時期に影

響があるのかを調べた。酒米成分には様々な項

目があるが,清酒製造において注目されている

のは,米の大きさを示す千粒重,洗米時の吸水

時間の目安となる 20分吸水率,米の溶けやす

さなどを示す消化性,酒質に影響を及ぼすアミ

ノ酸量を左右するタンパク質含有量などである。

それらの清酒製造で重要な項目の月旬毎の相関

結果を表6.7.8に示す。全ての地区で 7月中旬,

下旬の最高気温と千粒重に正の相闘が確認でき

た。酒田,大江地区では同時期に千粒重と日照

時間に正の相闘が,降水量には負の相闘が確認

できた。このことから県内全体で,梅雨明けが

8月までずれ込むような年は千粒重が小さくな

大江地区 最高気温 最低気温 積算日照|出穂急 出稼後日較差

収量(10a当り) * 調整後千粒重 本 * 真精米歩合 本車無効精米歩合 ** 20分吸水率 本本車 *本20分吸水率 **本 ** 蒸米吸水率 一本* 一刻ド消化性(F-N) 一* 一本

米沢地区 積算温度 積算日照I積出算穂日後堕 出穂後調整後干粒重 糾 日較差無効精米歩合20分吸水率 本蒸米吸水率 本カリ(PPM/DRY 一* ー**

耳吾長島重 .....................nI;Ql .........1Ql 本**・~"'

ることが推測される。出羽燦々の出穂時期が 8

月上旬であることから 7月下旬は穂ばらみ期

にあたる。この時期に籾殻の大きさが決定する

ため,この時期の低温が千粒重に大きな影響が

あると言 う荒井らの研究結果2) とも一致する。

米の初期吸水率を表す 20分吸水率でも 8月上

旬,中旬の日照時間と正の相関が確認できた。

この時期は米の登熟時期で,ここで米の匹乳部

分にデンプンが蓄積される。これらのことから

米のデンプン構造や心自の大きさなどが,吸水

の早さに影響を与えていると考えられる。

地区毎に見ると,酒田地区では, 8月下旬の

最低気温と消化'性(Brix)に負の相闘が確認、で、き

た。最低気温は夜温を示しており ,最低気温と

消化性(Br立)に負の相関があるとい うことは,

夜温の高い日が続くと消化性が低くなる,つま

り米が溶けにくくなると言うことを示している。

さらに, 8月上旬の最高気温とタンパク質含有

量については正の相闘が確認できた。このこと

から,タンパク質含有量の増加の原因として日

中の高温障害なども関与していると推測される。

金山地区では8月中旬の降水量, 9月上旬の

-55-

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小関 ー「出羽燦々」の酒米分析結果と気象条件等との相関関係について村岡安食石垣松田工藤

各地区の千粒重と気象状況との月旬毎の相関

酒田最低気温金山量低気温大江最低気温米沢最低気温旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

葉官官官室2盆翠盟

0.8083

実主冒苦言皇盆盟盟

0.8474

0.7458 -0.7485

葉烹膏京宣皇盆担圏

実主曹京軍皇釜盟盟

-0.6545

0.8944

歪百冒寝室主主盟盟

0.7304 0.8447

室古膏京軍宣盆盤盟

着函膏京宣宣盆塑盟

-0.8581

0.6427

0.8063 酒盲冒官室盆隼鍾盟

願期一4444

章一一一時一一富市一一一耕一一

表6

酒国最高気温金山最高気温大江最高気温米沢最高気温旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

0.6661 0.8173 0.6895 0.7845

0.7691 0.8057 0.8585 0.7696

酒国積算温度金山積算温度大江積算温度米沢積算温度旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

0.7081 0.6583

0.8481 0.8700 0.7340 0.7284

06370 酒田日照時間金山日照時聞大江日照時間米沢日照時間

旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

0.7348 0.8459

皇内一帯一一一一璽44444

嘉一一一一一一一一 0.6400 -0.8206

0.6374

各地区の 20分吸水率と気象状況との月旬毎の相関

酒田最低気温金山最低気温大江最低気温米沢最低気温旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関0.6426 0.7365 0.6016

葉有冒軍軍E盆塑盟

。.6066

実主官官室皇釜盤盟

京烹曹京宣皇隻血盟

0.7429

実吉宮京宣宣盆血盟

-0.7705 -0.7360

均鶴市一一一一一一一一宮内一畳一一一一宮一4444

表 7

酒田最高気温金山最高気温文江最高気温米沢最高気温旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

0.6165

0.6651 0.7087

歪古吉宮室盟主盤盟

0.5996

0.6545

0.6803

0.7420

室百冨京宣皇釜血盟

0.7557 0.7756 0.7786

減阻止畳一一一一喜一一一耕一喜一一一一一一一一

0.7382

若盲官官室皇盆翠盟

0.7141

06135 酒田積算温度金山積算温度大江積算温度米沢積算温度

旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

0.7589

0.7595

0.7813

藩面曹京宣宣盆盤盟

0.7157

0.6568

06687

酒田日照時間金山日照時間大江日照時間米沢日照時間旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関-0.8197 -0.6444 -0.7870

0.7078

0.6315

各地区のタンパク質含有量と気象状況との月旬毎の相関

酒田最低気温金山最低気温大江費量低気温米沢最低気温旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

0.7902

京烹膏京宣2盆血盟

室百官京宣盆釜盤盟

-0.7984

実主欝京宣主盆鍾盟

0.7488 実主百官室宣盆盤盟

葉賀冒宮室宣釜血盟

室古冒苦言宣釜盤盟

着百百宮室主盆盟盟

0.8772

-0.7961

着面窓京E2盆盤盟

-0.7312

喜一一一一一一一昔一4444…す444

耕一一

表8

酒田最高気温金山最高気温大江最高気温米沢最高気温旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

0.8375

0.6656

酒因積算温度金山積算温度大江積算温度米沢積算温度旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関 旬毎相関

0.7327

08726 大江日照時間米沢日照時間

旬毎相関 旬毎相関

0.7510

-56-

0.6635

0.7608

URHUHHu

nu--unonHMU

2日屋

U園川川崎司HV晶

宜野圃nU区iu

=nnRnaH且a件

Fj1

2

E量守,

E笹4

i

審査一一一一一宮内一4444

捕時一44444

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山形県工業妓術センタ一報告 NO.39(2007)

最高気温と砕米率に危険率 0.5%の正の相関,9

月上旬の最低気温とタンパク質含有量に危険率

1%の正の相関, 8月上旬の降水量とカリウムに

危険率 0.5%の正の相関が確認できた。さらに消

化性(F-N)では, 8月上旬の気温,日照時間で強

い正の相関,降水量で強い負の相関が確認でき

た。

大江地区では 8月下旬の降水量と蒸米吸水率,

9月中旬の最低気温と消化性(F-N)に危険率

0.5%の正の相闘が確認できた。また 8月中旬

の日照時間と消化性(Brix), 9月上旬の降水量

とタンパク質含有量,カリウムに危険率 5%の

正の相関が確認できた。

米沢地区では, 8月下旬の最低気温と 120分

吸水率に危険率 0.5%の正の相関, 6月中旬の最

高気温と消化性(F-N)に危険率 1%の負の相聞が

確認できた。消化性については登熟期の匹乳形

成時に最も影響を受けるのではなし、かと考えら

れるため,この相関については今後さらなる観

察が必要と思われる。

このように県内全体と地区毎に見られる相関

は必ずしも一致するとは限らないことがわかっ

た。県内全体で確認できた相関は出羽燦々」

の品質特性を示していると思われる。一方,地

区毎に確認できた相関については,その気象条

件は様々で時期にもばらつきがある。これは表

1に見られるように,冷害の受けやすい地区,

高温障害の受けやすい地区等,地域の地形・気

象状況が様々あることが原因の一つになってい

るのではないかと推測される。また,気温など

の条件から田植え時期なども各地区で若干異な

る。そのため同じ気象項目,酒米項目で相関の

現れる時期が半旬ほどずれるものも見受けられ

た。

3.5 予測値計算式の作成

これまでのデータをもとにして、気象条件か

ら千粒重やタンパク質等の清酒製造において重

要な酒米成分の予測式の作成を検討した。これ

まで確認された地区毎の相関結果から,千粒重

と7月中旬 ・下旬の各気温(最高,最低,積算

温度)に,いずれの地区でも正の相闘が確認で

きた。20分吸水率では, 8月上旬から中旬にか

けて各気温に 3地区で正の相闘が確認できた。

消化性,タンパク質含有量では 2地区で 9月上

旬の日照時間などに正の相闘が確認できた。い

ずれの項目でも相関関係は確認できたが,精度

の高い予測式の作成には相関係数が高いことが

必要不可欠である。そこで,全ての地区で相闘

が確認された千粒重で相関係数が最も高くなる

のではないかと考え,予測式の作成を試みた。

谷藤の報告3)をもとに各気温のデータを使用

し,千粒重の予測式の作成を行った。数式は 1

次式に設定し,過去 9年間のデータを使用して

回帰分析を行った。

最初に県全体の千粒重と各気温について 7

月中旬,下旬,中 ・下旬の 3項目でそれぞれ相

関係数を求めた(表 9)。最高気温は各時期との

表9 千粒重と各気温項目での相関係数

相関係数7月中・下旬

O. 79

0.44

0.64

7月中旬 I7月下旬

一一一一一相関係数が高く,中でも 7月中 ・下旬の最高気

温との相関係数が 0.79と一番大きいことがわ

かった。そこで 7月中 ・下旬の最高気温を用

いて千粒重の予測式の作成を行うことにした。

回帰分析により 1次式の係数は 0.43となり,こ

の係数を使用し各地区の定数項を算出した結果

を表 10に示す。

表 10 千粒重の県統一算出数式

数式:Y=aX+ b 統一係数 0.43

Y:千極重 |定数項(酒田) 13.37 X 7月中・下旬最高気温|定数項(金山) 14.35 a 係数 |定数項(大江) 14.02 b .定数項 |定数項(米沢) 13.47

この係数と定数項を用い,過去 9年間の各地

区の予測値を求め,実測値と比較したところ表

11のようになった。残差平方和の数値を見ると,

実測値と予測値の差はわずかであり,数式の精

度が高いことがうかがえる。

次により精度の高い計算式の作成を行うため

に,それぞれの地区の気象状況の違いを考慮し,

地区毎に係数と定数項を求め,千粒重の予測式

の作成を行った(表 12)。各地区の係数は県の

統一係数 (0.43)に対して約 0.1程度のばらつ

きがあり,地区の気象状況の違いが現れる結果

になった。相関係数では酒田,米沢で全体の相

関係数とほぼ同じだったが,金山,大江ではそ

れぞれ 0.9以上と高いことがわかった。また,

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工藤松田 石塩安食村岡 小関 「出羽燦々」の酒米分析結果と気象条件等との相関関係について

表 11 各地区の県統一数式での千粒重予測値

酒田地区

年度調整後 7月中・下旬 予測値 残差

千粒重(g)最高気温 (OC) (g) (g)

H10 24. 90 28. 73 25. 65 一O.75 H11 25.45 29.85 26.13 -0. 68 H12 26. 70 29.28 25.89 0.81 H13 25.50 29.51 25.99 一0.49H14 26.80 29.50 25.98 O. 82 H15 24. 30 24.89 24.01 0.29 H17 25.09 26.95 24.89 0.20 H18 24. 20 25.82 24.41 -0.21

平均値 25.37 28.07 25.37 0.00 残差平方和=2.76

大江地区

年度調整後 7月中・下旬 予測値 残差

千粒重 (g) 最高気温 (OC) (g) (g)

H10 26.00 27. 75 25.87 0.13 H11 26. 11 29. 75 26. 73 一0.62H12 27.90 30.06 26.86 1. 04 H13 26.60 30.32 26.98 -0.38 H14 27.30 29. 96 26.82 0.48 H15 24.00 24.22 24.37 -0. 37 H16 26.59 28. 99 26.41 0.18 H17 25.37 27.05 25.58 一0.20H18 24. 79 25.81 25.05 -0.26

平均値 ZO.UI Ztl. Zl ZO.UI 0.00 残差平方和=2.05

表 12各地区の千粒重算出数式の係数と定数項

地区名 相関係数 a 係数 b:定数項

j酉田 O. 77 O. 39 14.38

金山 O. 96 0.46 13.55

大江 O. 92 0.52 11.43

米沢 O. 79 0.29 17.46

表 13 数式の違いによる残差平方和の差

地区名統一数式の 地区毎数式の

差残差平方和 残差平方和

酒田 2.76 2.72 -0.04

金山 0.58 0.55 ー0.03

大江 2.05 1.81 -0.24

米沢 1.68 1.22 -0.46

先に作成した地区毎の予測式から予想値を算出

した結果,すべての地区で、残差平方和の値が小

さくなり,予測値と実測値の差が小さくなった

(表 13)。これは,地区毎の係数で算出すると

より予測値の精度が高くなることを示している。

これらのことより,今後も定点地観測を続ける

ことにより,地区毎に適応した精度の高い予測

式が確立することができると思われる。

4 まとめ

「出羽燦々」は耐冷性に強く,タンパク質含

金山地区

年度調整後 7月中・下旬 予測値 残差

千粒重(g)最高気温 CC) (g) (g)

H10 26.00 27.15 25.95 0.05 H11 27.01 29.45 26.93 0.07 H12 27.30 29.19 26.82 0.48 H14 26.30 28.57 26.55 -0.25 H15 24. 70 23.98 24.59 O. 11 H16 25.55 27.17 25.96 -0.41 H17 25.66 26.04 25.47 0.19 H18 24.56 24. 48 24. 81 -0.24

平均値 25.88 27.00 25.88 0.00 安差平方和一O.58

米沢地区

年度調整後 7月中・下旬 予測値 残差

千粒重(g) 最高気温 (OC) (g) (g)

H10 25.30 28.31 25.57 -0.27 H12 27.10 30.87 26.66 0.44 H13 26.00 30.25 26.40 -0.40 H14 26.40 30.86 26.66 -0.26 H17 25.04 28.19 25.52 -0.48 H18 25.20 25.15 24.22 O. 98

平均値 25.84 Ztl.!l4 ZO.tl4 U.UU れ差平方和一1.68

量の少ない優れた酒造好適米である。醸造適性

も良好で「山田錦J等の優良軟質米と同等の酒

米分析結果が得られ,また醸造試験においても

良好な酒質を得ることができた。酒米成分結果

の解析でも酒米分析項目聞に数多くの相関関係

がみられ,さらに酒米分析項と気象条件などの

外的要因との相関も確認できた。 しかし,既知

のデータ 4),5)との矛盾点も若干見られ,さらな

るデータ集積,解析が必要となっている。今後

データを増やすことにより,気象条件が与える

影響等が徐々に明らかになり,精度の高い予測

式が作成できると思われる。

文 献

1 )星川|清親:新編食用作物, 1994,養賢堂

2)荒井邦夫,河野恭広水稲の穂の発育に関

する研究J1978.日作紀 47.

3)谷藤雄二 :r農業試験研究における多変量デ

ータの解析J,2005

4)小関卓也,奥田将生,米原由希,八回一隆,

岩田博,荒巻功,橋爪克己:醸協, 99(8),

591-596(2004)

5)米原由希,小関卓也,奥田将生,荒巻功,

橋爪克己:醸協, 100 (9), 650-657 (2005)

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