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「日立の環境社会貢献活動とまちづくりの可能性について」
小泉 亨 氏
株式会社日立製作所 情報・通信システム社 環境推進本部本部長
日立グループはさまざまな事業分野を抱える会社で、未来都市づくりやスマートシティといった分野
で、いろいろなプロジェクトに参加させていただいています。その中で、今回の研究会には情報・通信
システム社という ITを事業分野とする部隊が参加することになりました。本日は、横浜国大の先生方と
こういうお話をするきっかけになった日立 ITエコ実験村の紹介と、ここで私どもが何をやっていこうと
しているかご説明いたします。
1. 日立の取り組みと「GeoAction100」
まず、日立グループとしての環境の分野への取り組みをご紹介します。日立は環境ビジョンを設定し、地球
温暖化の防止、資源の循環的な利用、生態系の保全という 3本柱をつくりました(図 1)。これを軸として、2025
年までに 1億トンの CO2を抑制していくという環境ビジョンに向かって活動をしています。
私ども情報通信システム社は、これを支えていくために、ITによる地球環境貢献プランとして GeoAction 100
を策定し、約3年間取り組んできました。これは、環境ビジョンと対応して、三つの柱からできています。一つは、
いろいろな IT機器の CO2の見える化、排出量をお客さまに見えるようにすることの取り組み、二つ目は、IT機
器の製品を回収して、リサイクルのルートの中に取り込んでいくという取り組みです。三つ目に、生態系の保
全として、IT エコ実験村という村をつくって活動していこうと考えました。この IT エコ実験村が、今回研究会に
参加するきっかけとなりました。この中がどうなっているかをまず紹介させていただきます。
図 1 「GeoAction100」の概要
2. ITエコ実験村の取り組み
私どもは、生態系や生物多様性に対して、IT がどのように役に立つのかを実験していく場所として村をつくり
ました(図2)。神奈川県の秦野市にあり、約7000m2の場所です。谷戸地形、里地里山の地形の中に休耕田を
お借りして、一つは休耕田を復活させる活動に取り組んでいます。また、いろいろな IT 機器を持ち込んで、IT
機器が生態系の保全活動にどういう役割が果たせるかという実験を実施しています。カメラやモニタリングシ
ステム、あるいは GISソリューションなどの IT機器を使って活動しています。
図 2 「IT実験村」での生態系保全活動
実際の運営体制は、図 3のとおりです。日立 ITエコ実験村は、秦野市から「生き物の里」として指定をいただ
いて活動を行っています。地元の地権者の方、秦野の市役所の方、それから、私ども日立製作所を含めた協
議会が管理・運営に携わり、近隣の大学や小学校、幼稚園などがいろいろな形で活動に参加してくださってい
ます。また、千村ネイチャー倶楽部というボランティア団体が工作体験や自然体験といったものに積極的に取
り組んでいます。それに合わせて、いろいろな IT機器を導入して、データを収集し、蓄えています。
図 3 「ITエコ実験村」の運営体制
実際にそこで動いている IT の状況を図示しました(図 4)。フィールドの中に、センサーやカメラなどを持ち込
んで、データを取っています。あるものは無線で、あるものは有線で、ゲートウェイを通してインターネットを介
し、クラウドサーバーに蓄積しています。このデータは、横浜国大や東海大学、あるいは秦野市の方々が、イ
ンターネットを介してダイレクトに見ることができます。リアルタイムのデータを使って、この中で起こっている植
生の変化や、動物の生態などへの対応がとれるようなデータを提供しています。
図 4 環境情報見える化システム
3. ITエコ実験村で考えるまちづくり
私どもが ITエコ実験村を通してどういうことをやっていこうとしているかを絵に描いてみました(図 5)。基本的
には、生態系の保全活動の一環ですが、真ん中に情報基盤が置いてあります。まず、環境保全のためのいろ
いろなデータを、この中に取り込んでいきます。このデータを見ながら、保全の活動を行います。そして、出て
きた結果を見える化したものを、また情報基盤の中に取り込みます。それを利用して皆さんとのいろいろな活
動のモチベーション向上につなげ、ぐるぐると ITエコ実験村の中で活動を回していこうと考えています。この中
で計画を立案し、市民参加型のネットワークでいろいろなデータを提供していただくといったことなどをすべて
取り込んでいくということです。このループが回っていく中で、実験村と他の地域との連携や横浜市などの都
市部との連携を拡大していこうとしています。効率良く保全活動を行って、多くの人に地域に目を向けて楽しん
でもらう、地域と連携して再生していくということを達成していこうと考えています。
図 5 「ITエコ実験村」で考える環境づくり、まちづくり
ここでは、実際に 2012 年度にどういうことをやっていくかを示しています(図表 6)。一つ一つのイベントの中
で、生態系保全の活動に合わせて生態系を評価し、地域イノベーションにつなげていこうという活動をしてい
ます。例えば、自然観察会などを通して、そのデータを東海大、神奈川大、横浜国大の皆さんに活用していた
だいて進めていこうということで、この 1年間の活動計画を作っています。
図 6 「ITエコ実験村」の環境保全活動(2012年度)
以上のような活動をこれからどう発展させて、地域イノベーションにつなげていくかということを、この図にま
とめてみました(図表 7)。今、IT エコ実験村の中でさまざまなデータが収集されています。こうした考え方を大
きく展開して、クラウドシステムを使った IT のプラットフォームの中に、自治体が持っているいろいろな情報(エ
ネルギー、医療、介護等)を蓄えます。それに対して、横浜国大や神奈川大や東海大が蓄えておられる生物
学などの知財を使って検証し、その結果を自治体が環境保全計画や環境適応化計画に活用していくという流
れを ITのプラットフォームを中心にしてつくり上げていきたい。今の時点では IT エコ実験村という小さなエリア
での活動になっていますが、これを大きく広げていくという形で、本研究会に参加しておられるほかの方々と議
論していければと考えています。
図 7 「ITエコ実験村」と地域イノベーション案
この村で使っている技術を幾つかこの機会に紹介させていただきます。最近、AR(拡張現実)という
技術がよくいわれています。例えば、図 8 は林の様子をカメラで捉えたものです。そこにある木がイチ
ョウであるとか、スギであるといった情報がデータベースの中に取り込まれていて、初めてその場所に
来られた方が iPhone などを使って目の前の自然を撮影したときに、その情報が自動的に供給されます。
このような AR技術を使って、皆さんの生態系の活動を補助していくことができます。
図 8 観察記録登録などへの AR技術(拡張実現)応用
また、GeoMation Farm といって、GIS のデータと地上の植生の分布データを一緒に管理するというシステム
があります(図 9)。これは、植生の時系列的な変化、温度などのデータと突き合わせた上で、あるエリアでの
植物の生育状態を見通すという技術です。
図 9
このような技術がいろいろあるので、それも含めて IT エコ実験村の中で実証して、今回の研究会の中で、横
浜の都市づくりに拡張していきたいと考えています。ITエコ実験村をイノベーションのツールとして使っていくた
め、研究会の中でもいろいろなアイデアを出していただき、われわれと一緒に実証の場としていただければと
思っています。以上です。ありがとうございました。