Upload
others
View
0
Download
0
Embed Size (px)
Citation preview
内容
反応を理解するための基礎知識
‒電子の動きとエネルギー図
‒ルイス構造と形式電荷
‒σ結合とπ結合
‒混成軌道
‒電気陰性度
‒酸と塩基
‒置換基の電子効果
反応の種類
‒塩基性と求核性
‒求核体の反応 ‒ 脂肪族化合物
‒ カルボニル化合物
‒ カルボン酸誘導体
‒求電子体の反応 ‒ 脂肪族化合物
‒ 芳香族化合物
1 参考文献 :有機化学の基礎, 2013, 東京化学同人.
有機化学の概念~電子が主役~
有機化学反応では、電子の授受によって反応が起こるので、すべての極性反応はルイスの酸塩基反応である。
反応の主役は電子であり、電子を豊富にもつルイス塩基と電子が不足したルイス酸の反応により、反応の進行方向が決まる。ルイスの酸塩基の考え方は有機化学において非常に重要である。
有機化学で大切なのは電子の気持ちになることである。
2
硝酸イオン (NO3-)のルイス構造
電子必要数 8 + 8×3 = 32
電子供給数 5 + 6×3 + 1 = 24
電子不足数 32-24 = 8
(共有電子数)
非共有電子数 24-8 = 16
硝酸のルイス構造 H+をO-につける
4
シグマ結合
• 2個の水素原子 (1s)オービタル間の相互作用によって生じる分子オービタルは、2個の核を結ぶ軸のまわりに軸対称 axial symmetryである。このように、1sと1s、1sと2p、および2pと2pなどが末端同士で相互作用してできる
2pと2pとのσオービタル
7
ブレンステッド酸とブレンステッド塩基
ブレンステッド酸 はプロトン供与体 proton donorであり、ブレンステッドはプロトン受容体 proton acceptorである。酸はプロトンを供与できる分子またはイオンで、塩基は酸と反応してプロトンを受け入れることのできる分子またはイオンである。
Base H X Base H X
δ+
+ + +
ルイス塩基 ルイス酸 ルイス酸 ルイス塩基
14
ルイス酸とルイス塩基
ルイス酸は電子受容体 electron acceptorであり、ルイス塩基は電子供与体 electron donorである。したがって、ルイスの酸塩基反応では電子が不足したルイス酸と、電子が豊富なルイス塩基との間で電子対の授受が行われる。
H3CH2C O B
F
F
F
H3CH2C
H3CH2C O B
F
F
F
H3CH2C
+
ルイス塩基
ルイス酸
すべてのイオン反応はルイスの酸-塩基反応である 15
化学平衡のエネルギー図と
反応の自由エネルギー変化
ΔG° : 標準自由エネルギー差standard free-energy difference
R : 気体定数gas constant 1.99×10-3 kcal mol-1K-1 または8.31×10-3 kJ mol-1K-1
T : 絶対温度absolute temperature, 25℃では298K
ln K : 自然対数=2.3・logK (K:平衡定数)
室温での概算値としてはΔG°=-1.4logK (kcal mol-1) またはΔG°=-5.7logK (kJmol-1)を用いる。
ΔG°=-26.2 kJ/mol
反応経路
[A]=1
[B]=40000
自由エネルギ|
A BK
強酸+強塩基
弱酸+弱塩基
ΔG°=-RT lnK
20
イオン化
pH
pKa
低 高
分子型と解離型が50%ずつ
酸 (共役酸) として存在 塩基 (共役塩基) として存在
例えば COOH COO-
pKa 4.0
NH3+ NH2
pKa 4.6
21
電気陰性度
電子を引きつける度合い。
周期表を右に行くほど核の有効核電荷が大きくなり、電子を引きつける力は強くなる。
周期表を上に行くほど原子の大きさは小さく、電子までの距離が小さくなり、より強く電子を引きつけるため電気陰性度は大きくなる。
フッ素は電気陰性度が最大となり、最も電気陰性な元素である。
電気陰性度 の差が大きいほど結合の極性は大きくなる。
H2.1
Li1.0
Be1.5
B2.0
C2.5
N3.0
O3.5
F4.0
Na0.9
Mg1.2
Al1.5
Si1.8
P2.1
S2.5
Cl3.0
電気陰性度大
小
小
K0.8
Ca1.0
Sc1.3
Ge1.8
As2.0
Se2.4
Br2.8
Rb0.8
Sr1.0
Y1.2
Sn1.8
Sb1.9
Te2.1
I2.5
22
原子の大きさと酸性度・塩基性度
同一族で周期表を縦に比較すると電気陰性度とは逆の結果となる。ここでは原子の大きさが効いてくる。同じ電荷の電子が広く分散するほうが安定であるので、I-の電子が最も安定、すなわち最も弱い塩基となる。
25
炭素の結合のヘテロリシス
金属と炭素の結合をもつ有機金属化合物は電気陽性の金属が正に荷電し、炭素は電子を収容して負電荷を帯びる
一般に酸素、窒素、およびハロゲンなどは電子を収容して負に荷電し、炭素は正荷電を帯びる
26
置換基の効果:電子効果
誘起効果: σ結合を経由する
電子求引性誘起効果
電子供与性誘起効果
共鳴効果:共役系を経由する
電子求引性共鳴効果
電子供与性共鳴効果
ニトロ基は電子求引性誘起効果をもつ
アルコキシ基は電子供与性誘起効果をもつ
ニトロ基は電子求引性共鳴効果をもつ
メトキシ基は電子供与性共鳴起効果をもつ
σ 結合-Group
p 軌道-Group
27
メチル基の電子効果
メチル基は誘起効果ではC-Hの分極により電子供与性となる。
共鳴効果ではC-Hのσ結合が隣接するpオービタルと、たまたま向きが一致し、平行となったときに相互作用して電子を送り込み、共役系のようになる。これを普通の共役ではないという意味で超共役と呼ぶ 。
メチル基は電子供与性 30
ルイス塩基と反応の種類
付加:求電子付加 置換:求電子置換
ルイス酸
π電子 不飽和化合物 芳香族化合物
置換:脱離-付加 置換:脱離-付加 (ベンザイン中間体)
α位カルボニル化合物 芳香族化合物
塩基、 次いで求核体が作用
求核置換 求核付加 求核置換 置換:付加-脱離 (マイゼンハイマー錯体)
飽和ルイス酸 カルボニル化合物 カルボン酸誘導体 芳香族化合物
求核体 (炭素原子を攻撃)
酸と塩基 脱離
ブレンステッド酸 飽和ルイス酸
塩基 (プロトンの引き抜き)
反応の種類 基質 ルイス塩基の働き
36
求核置換反応と脱離反応
求核置換反応
脱離反応
Base
L
R
R R
R H
R R R R E2
L
δ +
L
R
R R
R H
Nu
Nu
R R R R
H SN2
L δ +
Base H
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス酸
ルイス酸
37
求核性と塩基性
求核性
求核体は電子が豊富であり、電子欠損性の部位と反応
求核置換反応
(脂肪族化合物とカルボニル化合物)
求核付加反応
塩基性
多くの求核体は塩基性をもつ
同時に脱離反応も進行
求核置換反応
脱離反応
41
原子の大きさと求核性
同一族で周期表を縦に比較すると電気陰性度とは逆の結果となる。ここでは原子の大きさが効いてくる。同じ電荷の電子が広く分散するほうが安定であるので、I-の電子が最も安定、すなわち最も弱い塩基となる。
44
カルボニル基と求核試薬の反応
カルボニル化合物 (アルデヒド、ケトン)
良い脱離基がないために付加反応で止まる
→ 求核付加反応
カルボン酸誘導体 (ハロゲン化アシル、エステルなど)
良い脱離基をもつために、付加した後に脱離する
→ 求核置換反応
62
カルボニルの求核付加反応
H B Nu
B
C O H B C O H Nu-H
C OH Nu
B
C O C OH Nu C O Nu
酸触媒
ルイス塩基 ルイス塩基
ルイス塩基 ルイス塩基
ルイス酸 ルイス酸
ルイス酸 ルイス酸
塩基触媒
R
R
R
R
R
R
R
R
R
R
R
R
H
C OH Nu
R
R
H B
64
カルボン酸誘導体の求核置換反応
酸触媒
H B H
R C X
O
R C X
O
R C X
OH
Nu
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス酸
ルイス酸
65
H Nu H
R C Nu
O
ルイス塩基
B
R C X
OH
Nu
ルイス酸
X
R C Nu
O H
R C X
O
R C X
O
Nu
R C Nu
O
X
Nu ルイス塩基
ルイス酸
塩基条件
H B
H X
活性メチレンの酸性度
α位の水素は水酸化物イオンなどの塩基により、容易に引き抜かれるために酸性を示す。その酸性度は、
生成したエノラートの安定性を考える。エノラートの負電荷に電子を送り込む置換基をもつ方が負電荷を
集中して不安定化するので強塩基となる。
よって、酸性度はアセトアルデヒド>アセトン>酢酸エチルの順に弱酸となる。 67
カルボニルα位との求核置換反応
H OH2
E
R’ C
RH2C O H
OH2
R’ C
RHC O
H
R’ C
CH
O
R
H
塩基触媒
酸触媒
H OH2 E
R’ C
CH
O
R
H
OH2
E
R’ C
CH
O
R
H OH2
B BH
R’ C
CH
O
H
R
R’ C
CH
O
R
R’ C
CH
O
R
E
R’ C
CH
O
E
R
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス酸 ルイス酸
ルイス酸
ルイス酸 ルイス酸
ルイス酸
69
求電子付加反応と求電子置換反応
CH3 CH CH2
E+
CH3 CH CH2
E
H
E E E+
H+–Base Base
CH3 CH CH2
E
Nu Nu ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス塩基
ルイス酸
ルイス酸
ルイス酸 ルイス酸
求電子付加反応
求電子置換反応
71
ルイス塩基と反応の種類
付加:求電子付加 置換:求電子置換
ルイス酸
π電子 不飽和化合物 芳香族化合物
置換:脱離-付加 置換:脱離-付加 (ベンザイン中間体)
α位カルボニル化合物 芳香族化合物
塩基、 次いで求核体が作用
求核置換 求核付加 求核置換 置換:付加-脱離 (マイゼンハイマー錯体)
飽和ルイス酸 カルボニル化合物 カルボン酸誘導体 芳香族化合物
求核体 (炭素原子を攻撃)
酸と塩基 脱離
ブレンステッド酸 飽和ルイス酸
塩基 (プロトンの引き抜き)
反応の種類 基質 ルイス塩基の働き
72