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日本放線菌学会誌 第26巻2号

日本放線菌学会誌けられたActinobacteria綱(Class)に包含され、15 目(Order)、43 科(Family)、203 属(Genus)で 構成されるところとなっている。

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Page 1: 日本放線菌学会誌けられたActinobacteria綱(Class)に包含され、15 目(Order)、43 科(Family)、203 属(Genus)で 構成されるところとなっている。

日本放線菌学会誌

会 報

第26巻2号

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— 目 次 —

Actinomycetologicaのオンライン化について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 巻頭言 限りなき放線菌の多様性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2

受賞論文掲載のおしらせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 2012年度大会プログラム ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 第52回日本放線菌学会学術講会 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11 大村智先生と別府輝彦先生の文化功労者顕彰を祝う ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17 2012年度日本放線菌学会参加記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18 The International Conference of Natural Product Biosynthesisに参加して・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20 2013年度(第 28回)日本放線菌学会大会のご案内 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 22 The Journal of AntibioticsのWeb閲覧開始のお知らせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 24 日本放線菌学会 25周年記念出版「放線菌と生きる」出版のお知らせ ・・・・・・・・・・・・・・ 25 「Digital Atlas of Actinomycetes」改定のお知らせ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26 日本放線菌学会賛助会員 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 著作権について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

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Actinomycetologica冊子体最終版の発刊にあたって 日本放線菌学会では、本誌 Actinomycetologicaをオフィシャルジャーナルとして位置づけ、1987年からこれまでに 26巻を冊子体として刊行して参りました。Actinomycetologicaは、放線菌の研究に特化した内容の原著論文や総説を掲載する他にない科学ジャーナルとしての側面と、日本放線菌学会に

関するさまざまな会報記事を掲載した会員のコミュニケーションの場としての側面を併せ持ったユニ

ークな雑誌として、多くの皆様に愛読されて参りました。 第1巻の発刊から現在までの 20年余の間に、本誌は厚紙表紙B5版から現在の光沢表紙A4版へとスタイルを変え、掲載論文についても特に原著論文の英文化が積極的に推し進められることで国際ジ

ャーナルとしての体裁が整えられました。また、インターネット配信の普及にともない、冊子体の発

行と同時に、科学技術振興機構が運営する情報発信・流通システム J-STAGEを通じた掲載論文の無料公開を行ってきました。このように、それぞれの時代に合わせて変革を重ねながら、本誌は日本放線

菌学会を母体とする研究活動の一端を担って参りました。 一方、ますます加速する情報発信形態の変化と、研究成果や業績の取り扱いに関する国際的な基準

を考慮した学術誌の維持が求められる時代の情勢を受け、昨年、本会はThe Journal of Antibioticsを新たな英文オフィシャルジャーナルとして定め、再出発を致しました。それに伴い、Actinomycetologicaは会報としての役割のみを担うことで刊行されて参りましたが、学会の財政上の問題を鑑み、今号を

もって冊子体を廃止する運びとなりました(本年度総会決議)。 この度の変更によって学会の体制やアクティビティに何ら変化はありませんが、冊子が郵送されな

くなることで会員間のつながりが希薄になるようなことがあってはなりません。むしろ、オンライン

のメリットを最大限に活かした情報発信とコミュニケーションの場を構築することで一層の活性化に

つなげることができるはずです。会員の皆様におかれましては、ぜひ、学会ホームページ

(http://www0.nih.go.jp/saj/index-j.html)をご参照頂きご支援を下さいますようお願い致します。また、今後の新しい連絡体制への速やかな移行にご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

平成24年11月

日本放線菌学会 会長 長田裕之

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巻頭言

限りなき放線菌の多様性

Bergey's Manual 2nd ed. vol. 5が刊行された。これによると放線菌はActinobacteria門 (Phylum)に設

けられたActinobacteria綱(Class)に包含され、15 目(Order)、43 科(Family)、203 属(Genus)で

構成されるところとなっている。

歴史を紐解けば Harzによって最初の放線菌 Actinomyces が記載されたのが 1877年である。以来、

放線菌の研究史は135年にもなるが、そのうち初めの約80年間に報告され1957年版のBergey’s Manual

に記載された属はMicrobacterium等の単細胞性菌群を含めても高々16属であった。これに対して、そ

の後の 55年間の間に 186属もが記載されている。特に記載数は 2000年以降に多く、なんと 98属にも

及んでいる。このことはもちろん 1944年のストレプトマイシンの発見が契機となり生理活性物質の生

産菌として広く放線菌が研究されるようになったこと、分子系統解析技術の導入により確実な同定が

行えるようになったこと、また放線菌の分離技術が進歩したことに起因している。さらに、未だに新

属の提案が絶えないということは、放線菌の生態的また産業上における重要性の高さを物語っている

とともに、この微生物群が形態や機能を含めた類をみない多様性を備えていることの表れではないだ

ろうか。以前、我々が開発した放線菌分離培地HV agarを初めて使用した際、土壌試料から平板上に

出現した極めて多様なコロニーとそれらの微小形態の美しさは忘れることができない。

いささか我田引水になるが、1987年に発表したHV agarに関する報文の年次別被引用文献数を ISI

Web of KnowledgeSMによって調べてみた。論文発表からすでに 25年が経過しているが、引用回数は最

近になっても経年的に増え続けており、2011 年だけでも 31 編の報文に引用された。新しい放線菌の

探索研究が今なお世界各地で行われていることが伺える。

ところで放線菌の形態的な多様性を伝える媒体として、日本放線菌学会のホームページに Digital

Atlas of Actinomycetesのサイトが公開されている。そこには放線菌の画像 130枚が掲載されており、

2002 年の公開時には国際的に大きな反響を呼んだ。しかし前述のようにここ 10 年来、多くの新属が

提案されているとともに、顕微鏡技術も写真の画質も格段の進歩をみせている。また、放線菌の分類

体系も変更されてきている。これらのことからDigital Atlasの改定が行われることとなった。現在、編

集委員会がつくられ最新の画像を鋭意収集しているところである。学術上の重要性に加えサイトの訪

問者を魅了すると思われる写真が数多く集まってきている。放線菌の魅力を世界へより広く発信する

ためにも、国内外の研究者から引き続き写真の投稿をお願いしたい。

日本放線菌学会

副会長 早川正幸

(山梨大学生命環境学部)

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受賞論文掲載のおしらせ

2011年度浜田賞受賞 高木 基樹博士 バイオ産業情報化コンソーシアム 「放線菌が生産する多様な二次代謝産物を用いた化合物ライブラリーの構築」 Construction of a natural product library containing secondary metabolites produced by actinomycetes Motoki Takagi and Kazuo Shin-ya The Journal of Antibiotics (2012) 65, 443–447 2012年度浜田賞受賞 髙野 英晃博士 日本大学生物資源科学部 「放線菌が示すストレス応答制御の分子機構に関する研究」 Regulatory mechanisms of light-inducible transcription in non-phototrophic bacteria

Hideaki Takano

Actinomycetologica (2012) 17, S3-S8

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2012年度(第27回)日本放線菌学会大会プログラム

9月6日(木) 9:00 開場、受付開始、ポスター展示開始 9:40 開会の辞 [ふるさとホール] 9:45 一般講演 口頭発表 [ふるさとホール] O-1 共生窒素固定細菌 Frankiaのゲノム構造の多様性 ○九町健一 1、笹川英夫 2、山中高史 3、内海俊樹 1 (1鹿児島大院・理工、2岡山大・農、3森林総合研究所) O-2 Rhodococcus erythropolisにおける抗菌物質生産と系統分類相関 ○北川 航 1, 2、田村具博 1, 2 (1産総研・生物プロ、2北大院・農学研究院) O-3 海洋堆積物からの Demequinaceae科放線菌の分離と分類学的研究 ○浜田盛之 1, 2、田村朋彦 1、山村英樹 2、早川正幸 2、鈴木健一朗 1 (1NITE・NBRC、2山梨大院・生命工学) O-4 海洋島である小笠原諸島に分布する放線菌の諸性状 ○春成円十朗 1、今田千秋 1、堀越和夫 2、鈴木 創 2、佐々木哲朗 2、寺原 猛 1、小林武志 1 (1海洋大院、2小笠原自然文化研究所) O-5 海洋由来 Nocardiopsisが生産する pyrone類の構造と生合成 ○金 英珠、小倉 弘、五十嵐康弘 (富山県大・工) 10:45 休憩 10:55 平成24年度 日本放線菌学会 総会 [ふるさとホール] 11:25 授賞式 [ふるさとホール] 学会賞 「放線菌の化学分類学的研究およびカルチャーコレクションの創設と充実」 鈴木 健一朗 博士 (独立行政法人製品評価技術基盤機構) 浜田賞「放線菌が示すストレス応答制御の分子機構に関する研究」 髙野 英晃 博士 (日本大学生物資源科学部応用生物科学科) 浜田賞「放線菌の潜在能力発現に関わる薬剤耐性変異の特性解析と抗生物質発掘への応用」 保坂 毅 博士 (信州大学農学部応用生命科学科) 11:45 受賞講演 [ふるさとホール] 浜田賞 髙野 英晃 博士 (日本大学生物資源科学部応用生物科学科) 浜田賞 保坂 毅 博士 (信州大学農学部応用生命科学科) 12:35 昼休み

13:45 一般講演 ショートプレゼンテーション (奇数番号) [ふるさとホール] 15:15 一般講演 ポスター示説 (奇数番号) [平成の間] 16:15 招待講演 [ふるさとホール] 「トマト̶萎凋病菌の相互作用と病原性分化の分子機構」 有江 力 博士 (東京農工大学大学院農学研究院) 「昆虫病原微生物を利用した害虫防除の現状と課題」 国見 裕久 博士 (東京農工大学大学院農学研究院) 17:45 休憩 18:00 懇親会 [平成の間] 9月7日(金) 9:00 開場 9:30 一般講演 口頭発表 [ふるさとホール]

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O-6 Streptomyces 属放線菌の潜在的な抗生物質生産能力を引き出す新規エリスロマイシン耐性変異の同定と特性解析

○今井 優 1、渡邉 健 2、綾木啓太 3、越智幸三 4、保坂 毅 3 (1信州大院・総合工、2信州大院・農、3信州大・農、4広工大・生命) O-7 Streptomyces coelicolor A3(2)の二次代謝制御因子 AfsRにおける被リン酸化部位の解析 ○辛 利弥、田中晶子、堀之内末治、大西康夫 (東大院農生科・応生工) O-8 末端呼吸系の破壊が引き起こす ATPの異常蓄積と分化の抑制 ○藤本正浩、高野英晃、上田賢志 (日大生資科・生命セ) O-9 放線菌 Streptomyces griseusの気中菌糸形成に関わるアセチル基転移酵素 ○勝俣直人、高野英晃、上田賢志 (日大生資科・生命セ) 10:20 一般講演 ショートプレゼンテーション (偶数番号) [ふるさとホール] 11:30 一般講演 ポスター示説 (偶数番号) [平成の間] 12:30 昼休み

13:30 受賞講演 [ふるさとホール] 学会賞 鈴木 健一朗 博士 (独立行政法人製品評価技術基盤機構) 14:00 一般講演 口頭発表 [ふるさとホール] O-10 リベロマイシン生合成における 3級水酸基のサクシニル化 ○高橋俊二、宮澤 岳、熊野匠人、大輪田恵利、高木 海、浦本昌和、清水 猛、長田裕之 (理研基幹研・ケミカルバイオロジー) O-11 Identification of small molecules inducing reveromycin production ○Suresh Panthee, Shunji Takahashi, Teruo Hayashi, Takeshi Shimizu, Makoto Muroi, Toshihiko

Nogawa, Yushi Futamura and Hiroyuki Osada (Chem. Biol. Dept., RIKEN ASI) O-12 D-サイクロセリン生合成に関わる O-ウレイド-L-セリン合成酵素の基質特異性に関する構造

生物学的研究 ○宇田成利, 的場康幸, 小田康祐, 野田正文, 熊谷孝則, 杉山政則 (広大院・医歯薬保健学研究科) O-13 D-サイクロセリン生合成に関わる L-セリン-O-アセチルトランスフェラーゼの基質特異性に

関する構造生物学的研究 ○小田康祐, 的場康幸, 熊谷孝則, 野田正文, 杉山政則 (広大院・医歯薬保健学研究院) 14:50 休憩 15:00 一般講演 口頭発表 [ふるさとホール] O-14 放線菌におけるマイコスポリン様アミノ酸生合成遺伝子群の解析 ○宮本聖子、小松 護、池田治生 (北里大・生命研) O-15 Labdan型ジテルペン合成酵素遺伝子の swappingによる機能解析 ○山田佑樹、西出崇人、宮野一大、池田治生 (北里大・生命研) O-16 Streptomyces sp. RI-18由来 benzastatin類の生合成酵素の解析 ○林 貴之 1、高木基樹 2、新家一男 3、大西康夫 1 (1東大院農生科・応生工、2JBIC、3AIST) O-17 Streptothricin(ST)生合成酵素群を利用した新規 ST類縁化合物の創製 ○丸山千登勢 1、豊田順也 1、片野 肇 1、加藤康夫 2、泉川美穂 3、高木基樹 3、新家一男 4、

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宇多川隆 1、濱野吉十 1 (1福井県大・生物資源、2富山県大工・生工研セ、3JBIC、4産総研) O-18 Streptomyces griseusにおけるストレプトマイシン分泌装置 StrVWの機能解析 七宮英晃、○毛利佳弘、大西康夫 (東大院・農生科・応生工) 16:00 表彰式 (ポスター賞) 閉会の辞

ポスター演題 P-01 クモからの Friedmanniella属、Microlunatus属の新種の分離とそれらの膜脂質成分の特徴 ○岩井貴美香、岩本 晋、松本佳子、片平律子、小野寺秀幸、鈴木 誠 (協和発酵キリン研究本部) P-02 Isolation of actinomycetes from deep-sea core samples Ulanova Dana (Kochi University, Science Research Center) P-03 植物の根から分離した新規放線菌の分類 ○河口洋子 1、松本厚子 2、大村 智 2、高橋洋子 1,2 (1北里大院・感染制御科学府、2北里大・生命研) P-04 野菜内生放線菌の分離と系統解析 ○松村直美、石原麻衣、徳山真治 (静大農) P-05 Lactacystin 生産菌 Streptomyces sp. OM-6519 および cyslabdan 生産菌 Streptomyces sp.

K04-0144 の分類研究 ○武 晃 1、松本厚子 2、大村 智 2、高橋洋子 1, 2 (1北里大院・感染制御科学府、2北里大・生命研) P-06 遺伝子タイピング法を用いた Actinoplanes属放線菌の分類学的研究 ○清水 彩 1、山村英樹 1、中川洋史 1、浜田盛之 2、乙黒美彩 2、田村朋彦 2、早川正幸 1 (1山梨大院・生命工学、2製品評価技術基盤機構・NBRC) P-07 放線菌におけるフラジェリン遺伝子の多様性と系統学的評価 ○上田真由 1、山村英樹 1、花輪圭太郎 1、清水 彩 1、中川洋史 1、浜田盛之 1, 2、乙黒美彩 2、 田村朋彦 2、早川正幸 1 (1山梨大院・生命工学、2製品評価技術基盤機構・NBRC) P-08 Streptomyces turgidiscabiesの植物毒素生産性と分類 ○岡庭奈保子 1、長潟麻穂 1、J. P. Y. Valkonen2、川出 洋 1、夏目雅裕 1 (1農工大院農、2ヘルシンキ大) P-09 放線菌由来細胞毒性物質 rakicidin Aの立体化学 ○的場翔平、奥 直也、宮永 賢、嶋崎良子、五十嵐康弘 (富山県立大・生工セ) P-10 放線菌 Streptomyces atroolivaceusから単離された新規抗菌物質 berninamycin Eの構造決定 ○二宮彰紀 1、小谷真也 1, 2 (1静大院・農、 2静大院・創造院) P-11 放線菌 Streptomyces sp. MK-30株からの新規抗酵母物質の単離と構造の決定 ○肥田木道生 1、村尾綾子 2、佐藤神奈 1、小川直人 2、小谷真也 1, 3 (1静大院・農、2静大・農、3静大院・創造院) P-12 新規サイクロスポリン類縁体 FR901459の Lentzea sp. No.7887株による微生物変換 ○笹村智司 1、小林幹央 1、村松秀行 2、高瀬茂弘 1、柴田 孝 1、橋本道真 2

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(1アステラス製薬、2アステラスリサーチテクノロジー) P-13 Streptomyces属放線菌の生産する新規浸潤阻害物質の構造と活性 ○于 林凱 1, M. E. Trujillo 2, 宮永 賢 3, 済木育夫 3,五十嵐康弘 1 (1富山県大工・生工研セ、2スペイン Salamanca大、3富山大・和漢研) P-14 新規ナフトキノン系化合物 JBIR-85 の単離、構造決定および生合成に関する研究 ○泉川美穂 1、本橋慶一郎 1、佐藤龍太朗 2、永井 文 3、大西康夫 2、高木基樹 1、新家一男 4 (1JBIC、2東大院・農生科、3次世代天然物化学技術研究組合、4産総研) P-15 海洋由来 Streptomyces属の生産するヒアルロニダーゼインヒビターの諸性状 ○春成円十朗 1、今田千秋 1、寺原 猛 1、小林武志 1、五十嵐康弘 2 (1海洋大院、2富山県大・生工セ) P-16 放線菌産生する Quorum sensing阻害物質のスクリーニングについて ○大岡和広、福本 敦、杉紗也子、島田かな子、山中智恵、石原 陵、安齊洋次郎、加藤文男 (東邦大薬) P-17 ゲノム情報に基づく Gordonia二次代謝物の解析 ○福田隆雄 1、小牧久幸 2、鈴木健一郎 2、五十嵐康弘 1 (1富山県大・生工、2NITE ・NBRC) P-18 Microbispora属タイ産内生放線菌二次代謝の温度変動と代謝物の構造解析 ○秋山浩文 1、奥 直也 1、Chantra Indanada2、Arinthip Thamchaipenet 2、五十嵐康弘 1 (1富山県大・生工セ、2タイ Kasetsart大・理) P-19 Chloroflexi門好熱性細菌 Thermosporothrix hazakensisにおける二次代謝物の解析 ○山本和樹、奥 直也、五十嵐康弘 (富山県大工・生工研セ) P-20 植物分離放線菌からのケミカルスクリーニングによる物質探索 ○奥山竜輝 1、中島琢自 2、松本厚子 3、大村 智 3、高橋洋子 1,3 (1北里大院・感染制御科学府、2北里大・感染制御研究機構、3北里大・生命研) P-21 放線菌由来生合成遺伝子クラスターの大規模かつ広域的なライブラリー構築 ○小曽根郁子 1、酒井紀子 2、鈴木真理 2、西田みち代 2、永井 文 2、白石和子 2、橋本絢子 1、 高木基樹 1、新家一男 3 (1JBIC、2次世代天然物化学技術研究組合、3産総研) P-22 新規広域スペクトラム抗生物質 Amycolamicinの作用機序解析 ○石崎仁將,橋爪秀樹,林 千草,五十嵐雅之,安達勇光,西村吉雄,野本明男 (微生物化学研究所) P-23 キャディーによるチロシナーゼへの銅輸送の分子機構 ○的場康幸, 坂東尚彦, 小田康祐, 野田正文, 東川史子, 熊谷孝則, 杉山政則 (広大院・医歯薬保健学研究科) P-24 光合成細菌由来 III型ポリケタイド合成酵素の in vitro反応生成物の構造解析 ○菅井佳宣、淡川孝義、勝山陽平、大西康夫 (東大院農生科・応生工) P-25 2-アルキルマロニル-CoA生合成経路の解析 ○宮澤 岳 1, 2、高橋俊二 2、高木 海 2、浦本昌和 2、長田裕之 1, 2 (1埼玉大院理工学、2理研基幹研・ケミカルバイオロジー) P-26 遺伝子組換え Micromonospora sp. TPMA0041による mycinosyl-izenamicinの生産 ○酒井彩美 1、三森 暁 1、會田香緒里 1、木下健司 2、安齊洋次郎 1、加藤文男 1 (1東邦大・薬、2武庫川女大・薬) P-27 Streptomyces rochei 変異株が生産する抗カビ化合物ペンタマイシンの単離および生合成クラ

スターの解析

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◯片岡憂祐 1、吉田竜平 1、曹 志生 1、石川 淳2、木梨陽康 1、荒川賢治 1 (1広島大院・先端研、2感染研) P-28 Benzoisochromanequinone 系抗生物質生合成に関わるフラビン依存型モノオキシゲナーゼの機

能解析 小瀧仁美 1、篠崎美樹 1、田口貴章 1、岡本 晋 1, 2、○市瀬浩志 1 (1武蔵野大・薬、2食総研) P-29 cytochrome P450タンパク RosC、RosDの in vitroによる Rosamicin生合成中間体変換試験 ○飯坂洋平、市河由美、武田萌加、東 徳子、安齊洋次郎、加藤文男 (東邦大薬) P-30 Streptomyces coelicolor actVA-ORF4破壊体からの actinorhodin単量体の単離 ○田口貴章 1、海老原貴之 1、古川敦史 1、岡本 晋 1, 2、市瀬浩志 1 (1武蔵野大・薬、2食総研) P-31 放線菌 Streptomyces rocheiの抗生物質生産を誘導するシグナル分子SRBの生合成機構に関する

研究 ○津田直人、謝 麗、河原弘幸、木梨陽康、荒川賢治 (広大院・先端研・分子生命) P-32 モリブドピロリン酸形成反応を利用した比色法によるアデニル化酵素活性測定法 ○濱野吉十、丸山千登勢、片野 肇 (福井県大・生物資源) P-33 抗結核薬 D-サイクロセリンの生合成に関与する DcsAタンパク質の機能解析 ○熊谷孝則, 高木紀紗, 的場康幸, 野田正文, 杉山政則 (広大院・医歯薬保健) P-34 バージニアマイシン M生合成における NRPS遺伝子 orf7の機能解析 ○Mario RovaniHENDRIYANTO、木谷 茂、Fitria NINGSIH、仁平卓也 (阪大、生物工学国際交流センター) P-35 Streptomyces lactacystinaeus OM-6519のリボソーム合成型新規チオペプチド lactazole Aの生合

成遺伝子の同定 ○林 昌平 1、池田治生2、大村 智2、奥 直也 1、五十嵐康弘 1、尾仲宏康 1 (1富山県大・生工研セ、2北里大・生命研) P-36 Streptomyces sp. TP-A0584由来ランチビオティック合成酵素によるランチオニン含有ペプチド

の生産 ○江畑一真、富宿賢一、浅野泰久、奥 直也、五十嵐康弘、尾仲宏康 (富山県大・生工研セ) P-37 アンチマイシン生合成経路の探索と新規アナログの生産 ○淡川孝義 1、張 驪駻 1,Yan Yan2, 伊藤卓也 3,浅川義範 3, Wen Liu2, 阿部郁朗 1 (1東京大院薬 2中国科学院上海有機化学研究所 3徳島文理大薬) P-38 放線菌が持つメナキノン新規生合成経路の解明と特異的阻害剤の探索

○池田駿介 1、池田安由美 1、佐藤康治 1、野池基義 1、瀬戸治男2、大利 徹 1 (1北大院・工、2東農大・応生科)

P-39 Functional analysis of afsR homologue regulatory gene in Streptomyces acidiscabies producing thax-tomin A

○Son, D.H., Kim, M.J., Park, J.Y., Choi, S.U., and Hwang, Y.I. (Dept. Food Sci. Biotechnol., Kyungnam Univ., Republic of Korea) P-40 Streptomyces coelicolor A3(2) の抗生物質高生産 rpsLK88E 変異株の定常期高翻訳活性を担う

因子群の包括的解析 ○岩川千紘 1、越智幸三2、保坂 毅 3 (1信州大院・農、2広工大・生命、3信州大・農)

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P-41 抗生物質高生産を引きおこす「リンコマイシン耐性変異」の同定と解析 王 国君 1、 田中幸徳2、保坂 毅 3、○越智幸三2 (1食総研、2広工大・生命、3信州大・農) P-42 リファンピシン耐性(rpoB)変異の導入による 各種放線菌の“休眠遺伝子”活性化と二次代謝

産物の分析 ○田中幸徳 1、廣瀬由鷹2、釘宮理恵2、笠原 堅2、越智幸三 1 (1広工大、2(株)ネオ・モルガン研究所) P-43 Biodegradation of chitin in soil by Streptomyces coelicolor A3(2) ○Nazari, B.1, Kobayashi, M.2 and Fujii, T.1 (1Div. Environ. Biofun., NIAES, 2Life Environ. Sci., Univ. Tsukuba) P-44 Rhodococcus jostii RHA1株における βケトアジピン酸経路の新規バイパス経路の解析 ○山梨智也 1、大石奈穂美 1、鳥居英人2、原 啓文2、鮒 信学 1 (1静岡県大院生活健康・食栄、2岡山理大院工・生体医工) P-45 Sinomonas atrocyaneaの一菌株によるヒアルロン酸の発酵分解 ○中村行雄 1、土崎尚史2 (1ジュジュ化粧品(株)、2日本微生物クリニック(株)) P-46 水耕栽培における P4-Ro-7株の植物の生育促進効果 ○佐々木晴信 1、林 幸和 1、芦沢春菜 1、浜田盛之2、田村朋彦2、山村英樹 1、早川正幸 1 (1山梨大学院・生命工学、2製品評価技術基盤機構・NBRC) P-47 Arthrobacter属放線菌由来新規イソニトリルヒドラターゼの部位特異的変異解析 ○橋本義輝、佐藤太祐、小林達彦 (筑波大院・生命環境) P-48 海洋環境からの放線菌の選択分離と生産するアルギン酸リアーゼ (A.L.) 生産菌の諸性状 ○阪田 圭、今田千秋、小林武志、寺原 猛 (東京海洋大・院) P-49 セルロース系バイオマスを原料とした抗生物質生産をめざした Streptomyces 属放線菌のセル

ロース分解酵素遺伝子群の解析 ○友常久実子 1、土田美帆 1、春日 和 1、小林正之 1、上松 仁2、池田治生 3、小嶋郁夫 1 (1秋田県大、2秋田工業高等専門学校、3北里大・北里生命研) P-50 トランスグルタミナーゼ遺伝子を指標にした新たな有用放線菌分離スキームの構築 ○西澤将史 1、伊達雅代 2、横山敬一 2、山村英樹 1、早川正幸 1 (1山梨大学院・生命工学、2味の素・イノベーション研究所) P-51 High expression of transglutaminase gene derived from Streptomyces platensis YK-2 in Streptomyces

strains ○Cheon, M.Y., Lee S.E., Kim, N.S., Choi, S.U., and Hwang, Y.I., (Dept. Food Sci. Biotechnol., Kyungnam Univ., Republic of Korea) P-52 線状プラスミドを利用した二次代謝産物生合成遺伝子クラスター導入法 ○小松 護 1、小曽根郁子2、新家一男 3、片岡正和 4、池田治生 1 (1北里大・北里生命研、2JBIC、3産総研、4信州大) P-53 放線菌におけるゲノム DNA形質転換法の有用性評価 ○岡本 晋 1、越智幸三2 (1食総研、2広工大・生命学部) P-54 遺伝子機能の解析に有用な新規放線菌用発現ベクターの開発 ○矢部正樹 1, 2、尾仲宏康 3、新井孝夫2、岡本 晋 1 (1食総研、2東京理科大・応生、3富山県大・生工) P-55 Rhodococcus属微生物での新規構成型高発現ベクターの構築 ○劉 瑞、橋本義輝、小林達彦 (筑波大学大学院 生命環境科学研究科)

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P-56 Analysis of the circularization of the linear chromosome of Streptomyces rochei ○Yosi Nindita, 1 Zhisheng Cao,v Yuh Shiwa, 2 Hirofumi Yoshikawa, 2 Kenji Arakawa1 and

Haruyasu Kinashi1 (1Dept. Mol. Biotechnol., Grad. Sch. AdSM, Hiroshima Univ., 2Dept. Biosci., Tokyo Univ. Agric.) P-57 放線菌 Kitasatospora setae KM-6054Tの液中胞子形成条件下で増加するタンパク質の転写量解

析 ○八木澤祥史 1, 三浦広美2, 加藤泰樹 1, 大村 智2, 高橋洋子 1,2 (1北里大院・感染制御科学府, 2北里大・生命研)

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報告 第 52 回日本放線菌学会学術講演会

主催:日本放線菌学会 日時:平成 24年 11月 16日(金)13:30~17:20 場所:学校法人 北里研究所 本館 2階大会議室 参加者:65名 プログラム 1.『二次代謝産物の生合成遺伝子に基づいた放

線菌のスクリーニング』 小牧 久幸(製品評価技術基盤機構 バイオテ

クノロジーセンター) 2.『ビフィズス菌のヒトミルクオリゴ糖代謝に

関わる酵素群の同定および利用』 北岡 本光(農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所) 3.『バイオ燃料として期待される微細藻

Botryococcus brauniiのトリテルペン系炭化水素の生合成・代謝』 岡田 茂(東京大学大学院 農学生命科学研究

科) 4.『‘微生物の宝庫’:土のミクロ構造と細菌』 服部 勉(アチック・ラボ、東北大学名誉教授)

二次代謝産物の生合成遺伝子に基づいた放

線菌のスクリーニング Screening of actinomycete strains based on bio-synthetic genes of secondary metabolites.

小牧 久幸 Hisayuki KOMAKI (製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジー

センター) [email protected]

抗生物質などの生理活性物質の探索におい

て放線菌は重要な役割を果たしてきた。

Streptomyces属は優れた探索源であるが、長年にわたって精力的にスクリーニングされ続けてき

た結果、近年では新規物質を探索しても、既知

化合物が繰り返し得られてしまうという課題に

直面することが多いので、新規物質を効率よく

見つけられるような技術開発が必要である。そ

こで、放線菌の代表的な二次代謝産物であるポ

リケタイドや非リボソームペプチドの生合成遺

伝子の解析を菌株のスクリーニングに取り入れ

ることによって新規化合物生産菌を特定できな

いかと考えて、研究に着手した。 Ⅰ型ポリケタイド合成酵素(PKS)遺伝子

の解析によって新規物質生産菌の選抜を試みた。

NBRC株の中から Streptomyces属を対象にして、PKS遺伝子のケトシンターゼ(KS)ドメインをコードする領域を PCRで増幅し、塩基配列を解析した。"S. bicolor" NBRC 12746T株から既知の

PKS とは配列の相同性の低い遺伝子を見つけ、この配列を系統解析したところポリエン系化合

物の生合成遺伝子に近縁であった。そこで、実

際に本菌株を培養し、生産物を解析した結果、

新規ポリエン系化合物 JBIR-13が得られた 1)。"S. viridochromogenes subsp. sulfomycini" NBRC 13830T株からは系統的にも新規性の高い KS 配列を見いだした。培養して生産物を解析したと

ころ新規スタワマイシン類縁体 JBIR-11 が得られた 2)。以上のように、新しい PKS遺伝子を有する菌株を選抜することで新規物質を取得でき

た。 二次代謝産物の探索源として菌株を評価する

場合、近年では PKS遺伝子だけでなく非リボソームペプチド合成酵素(NRPS)遺伝子も解析するのが一般的になっている 3,4)。また、大規模に

菌株をスクリーニングする場合、多菌株の解析

に対応できるような方法が必要である。PCR産

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物をクローニングしてからサンガー法で塩基配

列を解読する従来の手法は、手間やコスト面で

の負担が大きく、現実的ではない。そこで、ク

ローニングを介さずに 1回の稼働で 100万の配列が解読できる pyrosequencing を利用した。NBRC が保有する放線菌の中から約 600 株を対象に、PKS 遺伝子の KS ドメイン領域と NRPS遺伝子のアデニレーション(A)ドメイン領域を PCR で増幅し、pyrosequencing で一斉に塩基配列を解読した。得られた膨大なデータは

NBRC が提供する二次代謝産物生合成遺伝子データベース DoBISCUIT(Database of Biosynthesis clusters Curated and Integrated, www.bio.nite.go.jp/ngac /dobiscuit. html)5)で公開

していて、菌株ごとに KS及び Aドメイン配列の数や新規性などが確認できる。特にドメイン

配列の数が多い菌株は、モジュール数の多い生

合成遺伝子クラスターを有する可能性が高いの

で、分子量が大きく複雑な構造をした化合物の

生産が期待される。 生合成遺伝子に基づいたスクリーニングの課

題として、これまで発見された生理活性物質の

中で生合成遺伝子が同定されたものはほんの一

部に過ぎないことが挙げられる。そこで、

DoBISCUIT のデータを活用して遺伝子の新規性を判定した実例を紹介する。また今後の展開

として、全ゲノム解析によって二次代謝産物の

生合成遺伝子クラスターの情報をより一層充実

させていきたいと考えている。 参考文献 1) Komaki, H. et al.: Discovery of a pimaricin analog JBIR-13, from Streptomyces bicolor NBRC 12746 as predicted by sequence analysis of type-I polyketide synthase gene. Appl. Microbiol. Bio-technol., 83, 123-133 (2009) 2) Izumikawa, M. et al.: Stawamycin analog, JBIR-11 from Streptomyces viridochromogenes subsp. sulfomycini NBRC 13830. J. Antibiot., 61,

326-329 (2008) 3) Khan, S.T. et al.: Streptomyces associated with a marine sponge Haliclona sp.; biosynthetic genes for secondary metabolites and products. Environ. Mi-crobiol., 13, 391- 403 (2011) 4) Enkh-Amgalan, J. et al.: Diversity of nonriboso-mal peptide synthetase and polyketide synthase genes in the genus Actinoplanes found in Mongolia. J. Antibiot., 65, 103-108 (2012) 5) Ichikawa, N. et al.: DoBISCUIT: a database of secondary metabolites biosynthesis cluster. Nucl. Acids Res. (in press) 6) 小牧: 二次代謝産物の生合成遺伝子に基づいた放線菌のスクリーニング. バイオサイエンスとインダストリー 70, 351-355 (2012) ビフィズス菌のヒトミルクオリゴ糖代謝に

関わる酵素群の同定および利用 Identification and application of the bifidobacte-rial enzymes involving in the metabolism of hu-man milk oligosaccharides.

北岡 本光 Motomitsu KITAOKA (農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合

研究所) [email protected]

新生児腸管内は出生時には無菌状態であるが、

母乳栄養乳児においては出生後1週間程度でビフィズス菌(Bifidobacterium属細菌)主体の腸内細菌叢を形成する。このビフィズス菌主体の腸

内細菌叢形成は乳児の健康に重要であり、母乳

に含まれるビフィズス菌増殖因子の探索は古く

から行われていた。現在ではビフィズス菌が母

乳に含まれる三糖以上のオリゴ糖であるヒトミ

ルクオリゴ糖(HMOs)を資化することにより増殖を得ていると理解されている。 HMOsは複雑な混合物であり130種以上のオリゴ糖分子種が同定されている。それらの構造

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はコア構造糖鎖にフコース(Fuc) ,シアル酸(Neu5Ac)が付加した構造として記述できる。コア構造の還元末端はすべて乳糖であり、その

非還元末端Galの3位に二糖単位であるラクト-N-ビオースI(LNB, Galβ1,3GlcNAc)あるいはN-ア セ チ ル ラ ク ト サ ミ ン (LacNAc, Galβ1,4GlcNAc)が結合した構造を基本とする。前者をタイプI鎖、後者をタイプII鎖と呼び、HMOsではタイプI鎖が主成分である。ほ乳類乳の多くは三糖以上のミルクオリゴ糖を含むが、

タイプI鎖を含むものは少ない。これらが主成分である乳を分泌するのは霊長類・類人猿まで含

めてもヒトしか報告されていない。 我々は一部のビフィズス菌が菌体内にガラク

ト -N-ビオース (GNB, Galβ1,3GalNAc)およびLNBを選択的に代謝するGNB/LNB経路を持つことを見いだした。GNB/LNB経路はムチン糖タンパク質糖鎖に含まれるO結合型GNBや、ヒトミルクオリゴ糖非還元末端に存在するLNBを利用して優先的な腸内増殖を得るための経路と考

えられる。GNB/LNB経路は、GNB/LNB特異的ABCトランスポーター、GNB/LNBホスホリラーゼ(GLNBP)、N-アセチルヘキソサミン1-キナーゼ(NahK)、UDP-Glc-Hex1P ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT)およびUDP-Glc4-エピメラーゼ (GalE) よ り 構 成 さ れ る 。 さ ら に 、Bifidobacterium bifidumから、HMOsからLNBを切り出すための一連の加水分解酵素群である、

α1,3/4-フコシダーゼ、α1,2-フコシダーゼ、α-シアリダーゼ、ラクト-N-ビオシダーゼが同定された。これらの酵素はすべて膜結合ドメインを持

つ分泌酵素であり菌体表面で作用していると考

えられる。 GNB/LNB経路の発見により、LNBは母乳に含まれるビフィズス増殖因子と考えられるそこで、

安価に入手可能な砂糖とGlcNAcからGLNBPを利用してLNBを一段階で調整する方法を考案した。触媒量のUDP-Glcおよびリン酸の存在下の一段階酵素反応によりLNBを 85%の変換率に

て調製した。反応液の酵母処理後に晶析を行う

ことにより、実験室スケールで高純度LNBをkgスケールで一度に調製した。各ビフィズス菌種

のLNB資化性を調べたところ、乳児から単離されるビフィズス菌種のみLNB資化能を示した。 図.ビフィズス菌菌体内GNB/LNB経路

参考文献 1) Kitaoka M, Adv. Nutr., 3 (3) 422S-429S (2012). 2) 北岡本光, ミルクサイエンス, 61 (2), 115-124 (2012). 3) 片山高嶺,化学と生物, 50 (1), 2-5 (2012). 4) Fushinobu S, Biosci. Biotechnol. Biochem., 74 (12), 2374-2384 (2010). 5) 西本完、北岡本光 , 化学と生物 , 46 (8), 522-524 (2008). バ イ オ 燃 料 と し て 期 待 さ れ る 微 細 藻

Botryococcus brauniiのトリテルペン系炭化水素の生合成・代謝 Biosyntheses and metabolisms of triterpene hy-drocarbons produced by a green microalga Bot-ryococcus braunii that is promising as a source of biofuel.

岡田 茂 1、Joe Chappell2 Shigeru OKADA1, Joe CHAPPELL2

GlcNAcGal1P+ リン酸 + GalNAc

Glc1P

LnpA

LnpCUDP-Gal

UDP-GlcLnpD

エネルギー獲得系路へ

LNBGNB

GNB/LNBトランスポーター)

GlcNAc1PGalNAc1P

LnpB

UDP-GalNAc

UDP-GlcNAcLnpD LnpC

GlcNAc1P

ATP ADP

ATP ADPビフィズス菌

gltA gltC lnpA lnpB lnpC lnpDgltBA

B

GltA ABCトランスポーター基質結合タンパク:GNB/LNB結合タンパク(GL-­‐BP)GltB ABCトランスポーター構成タンパクGltC ABCトランスポーター構成タンパクLnpA GNB/LNBホスホリラーゼ(GLNBP) (EC2.4.1.211)LnpB N-­‐アセチルヘキソサミン1-­‐キナーゼ(NahK,  EC  2.7.1.162)LnpC UDP-­‐Glc-­‐Hex1P-­‐ウリジリルトランスフェラーゼ(GalT,  EC  2.7.7.12)

GlcNAc/GalNAc1P,  UDP-­‐GlcNAc/GalNAcにも作用LnpD UDP-­‐Glc/GlcNAc 4-­‐エピメラーゼ (GalE,  EC  5.1.3.2)

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(1東京大学大学院 農学生命科学研究科、 2Plant Biology Program, University of Kentucky)

[email protected]

Botryococcus brauniiは群体性の微細緑藻で、乾燥重量の数十パーセントにも及ぶ大量の液状

炭化水素を生産・蓄積するため、再生産可能な

バイオ燃料としての利用が期待されている。本

藻種は生産する炭化水素のタイプにより A、Bおよび L の三品種に分けられる。A 品種は

alkadieneおよび alkatrieneを、B品種はトリテルペ ン で あ る botryococcene 類 お よ び

methylsqualene 類を、L 品種は lycopadiene というテトラテルペンを生産する。生産する炭化水

素の質および量の点から、B 品種がバイオ燃料源としては最も有望と考えられている。今まで

のところ、本藻種におけるこれらの炭化水素の

生物学的存在意義は不明である。B 品種が生産するトリテルペン炭化水素の主成分は

botryococcene類であり、methylsqualene類は遊離炭化水素中の微量成分に過ぎない。その一方、

methylsqualene 類にはエポキシ化等の修飾を受けることで様々な誘導体が存在し、個々の細胞

をつなぎ止めているバイオポリマーの形成に関

与 し て い る 可 能 性 が あ る 。 す べ て の

botryococcene 類の前駆体である C30 botryococ-cene は、ファルネシル二リン酸(farnesyl py-rophosphate=FPP)を基質として、squalene の生合成と非常に良く似たメカニズムにより生成す

るものと考えられていた。そこでまず、本藻種

の B 品種から squalene 合成酵素(Botryococcus Squalene Synthase=BSS)の cDNAクローニングを行い、それを探索子として botryococcene合成酵素遺伝子の取得を試みた。その結果、BSS と相同性を示 squalene 合成酵素様タンパク質-1(Squalene Synthase-Like protein-1=SSL-1) をコードする cDNAクローンが得られた。そこでその機能の同定を試みたが、SSL-1 単体では FPPから C30 botryococceneも squaleneも生成しなか

った。ところが、大腸菌で生産した SSL-1を B. brauniiの藻体ホモジネートに加えると、ホモジネート内在性の C30 botryococcene 合成活性が飛躍的に上昇した。このことから、藻体中に存在

する未知の因子と SSL-1が協奏的に働くことで、C30 botryococcene が生成するものと予測されたが、その因子は暫く謎であった。近年、次世代

DNA シークエンサーが比較的容易に使用できるようになったことを受け、本藻種 B 品種のEST解析を行ったところ、BSSおよび SSL-1とは別に、更に 2つの squalene合成酵素様タンパク質(SSL-2および SSL-3)の存在が明らかになった。また、SSL-1 は単体で、FPP からプレスクアレン二リン酸(PSPP)を生成することも分かった。そこで SSL-1と SSL-2、あるいは SSL-1と SSL-3の組合せによる反応生成物を調べたところ、前者からは squalene が,後者では C30 botryococcene が生成していた。このことは、SSL-1 は FPP を PSPP に変換する酵素である一方、SSL-2および SSL-3は PSPPを直接の基質として、それぞれ squaleneおよび C30 botryococceneを生成する酵素であることを示している。した

がって、本藻種の B品種は他生物では見られない全く新しいシステムにより、トリテルペン類

を生産していることが明らかになった(下図)。

さらにこれらのトリテルペン類にメチル基を導

入する複数の酵素が、ステロール C-24メチル基転移酵素との相同性を基に同定された。これら

の知見は本藻種によるバイオ燃料生産メカニズ

ムを研究していく上での重要なツールとなるも

のと考えられる。

ファルネシル二リン酸 一次代謝用スクアレン?

(ステロール)

ボツリオコッセン (遊離炭化水素)

ビスファルネシルエーテル

プレスクアレン二リン酸 二次代謝用スクアレン? (細胞間マトリクス?)

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参考文献 1) S. Okada, T. P. Devarenne, J. Chappell (2000) Arch. Biochem. Biophys. 373: 307-317. 2) S. Okada, T. P. Devarenne, M. Murakami, H. Abe, J. Chappell (2004) Arch. Biochem. Biophys. 422: 110-118. 3) T. D. Niehaus, S. Okada, T. P. Devarenne, D. S. Watt, V. Sviripa, J. Chappell (2011) PNAS 108: 12260-12265. 4) T. D. Niehaus, S. Kinison, S. Okada, Y-S. Yeo, S. A. Bell, P. Cui, T. P. Devarenne, J. Chappell (2012) J. Biol. Chem. 287:8163-8173. ‘微生物の宝庫’:土のミクロ構造と細菌

The Microstructure of Soil Harboring Diverse Microbes.

服部 勉 Tsutomu HATTORI

(アチック・ラボ、東北大名誉教授)

[email protected]

かつて「土は微生物の宝庫」という言葉がよ

く登場した時代がある。そんな時代に研究をは

じめた筆者の脳裏には、土、微生物、宝庫(=

微生物多様性)の三つのコンセプトが、いろん

な姿で現れ、もつれ、その神秘性を嫌う反面、

そこに秘められたミクロ世界に魅かれ、研究推

進の原動力ともなってきた。今回の講演では、

この経験の一端を紹介し、土の微生物研究への

招待とさせて頂きたい。 筆者の研究期間は、結果的に三つのステップ

に分けられるように思われる。 (ステップ1)化学出身の筆者には、土や微生物の実験には戸惑うことが多かった。まず土を

水中に分散させることが、とても難しい。どれ

くらい分散させたらいいのか、判断に惑う。ま

た土の細菌は平板で培養するのだが、使用する

培地の種類、成分の内容で結果が大きく違い、

必要培養時間にも明確な根拠が見当たらない。

さらに同じサンプルでも何枚もの平板で並列的

に培養すると、平板毎に結果は大きく違う。厳

密な再現性を当然の前提とする化学出身者にと

って、これは厳しい試練である。思案の末、「微

生物の計数」という実験目的をゆるめ、実験を

通じて、「土中の多様な微生物の生活」を垣間見

て、更なる探求の手がかりを得る方向に軸足を

移すことにした。 (i) まず土の分散問題をとり上げた。土は微細な鉱物と有機物とが複合的に凝集した大小の‘団粒’(aggregate;土壌学ではこの言葉が好まれる)からなる。径1mm 程度以上の団粒(マクロ団粒)は水中で撹拌すると、比較的容易に崩壊、

分散する。それより小さいもの(ミクロ団

粒,micro-aggregate)の多くは難分散性である。また微生物が棲む大小の孔隙は、径10μm前後を境界にして、それ以下の毛管孔隙とそれ以上

の非毛管孔隙に分けられる。毛管孔隙は大部分、

ミクロ団粒内にある。 ところで初期の実験で、手振りで水中の土を

分散する際、強く振れば振るほど、分散してく

る微生物の数も増大するが、その増大には一定

の限度が認められた。この事実を生かして、ま

ず土中の分散しやすい微生物を洗い出し、つい

で残る微生物を音波処理によってできるだけ分

散させる、こうしてミクロ団粒の外部に棲む微

生物と内部に棲む微生物とを分画することを工

夫した(洗浄�音波法)。その後、この方法によ

って各種微生物の土構造内分布、およびこれら

の微生物が増殖したり死滅したりする場を解明

した。その結果、ミクロ団粒内部は多様な細菌

が安定して棲める場であることが明らかとなり、

「細菌の宝庫」はこのミクロ団粒内にあるので

はないかと推定するにいたった。 (ii) もう一方の課題、平板培養法の軸足移動は、土分散より数年遅れ、着手できた。最初の試み

は、面倒な議論のある培地組成問題の扱いで、

ベストな組成の追求ではなく、肉汁培地(NB)とその百倍希釈培地(DNB)を併用し、両者に

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よるカウント結果の比較・解析に目をむけた。

こうして高栄養細菌、低栄養細菌というコンセ

プトが浮かび、その下での微生態研究が始まっ

た。次に取り上げた問題は、コロニー形成に必

要な培養時間である。視点を逆転させ、培養時

間によって出現コロニー数がどのように増大す

るかを調べた。単菌細胞集団を接種した場合、

出現コロニー数の増大は一次反応曲線に沿って

進行すること、つまり接種細胞の分裂開始は確

率的であるらしいことを認めた。また複合細菌

群集のコロニー形成過程は、複数の一次反応曲

線が重なる複合曲線によって近似できた。土の

細菌群集を平板上で培養した場合も、コロニー

増大曲線は同様の複合曲線によってシミュレー

ションできた(コロニー形成曲線;CFC)。このCFCの背後には、増殖する土の細菌集団間の相互作用が秘められているように思われる。一方、

土の細菌には培養が1年以上経過した後、増殖

が開始されるような場合もありうると考えられ

る。 (ステップ2)現役期間も残り少なになった頃、「宝庫」の核心であるミクロ団粒とは一体どん

な凝集体か、を集中的に考える方向に舵を切っ

た。光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡でみるミク

ロ団粒表面は実に多彩で、塗り壁状のもの、鉱

物性光反射面を持つもの、針状、角状、または

腫瘍状などの突起物のあるもの等々がある。ど

の団粒表面にも様々な形をした大小多数の孔が

見られる。また、団粒の超薄切片の電子顕微鏡

写真には培養細菌では経験しないような異型と

もいえる細菌像が見られる。これらの形態の意

味づけは、後日試みることになる。 一方、各団粒を破砕し、内部の細菌を平板培

養すると、その土に特徴的な CFCに沿って細菌コロニーの形成が起こる。コロニーからの分離

菌の分子系統分類によって、高栄養菌、低栄養

菌とも、多様な細菌が含まれていることが認め

られた。ミクロ団粒内には、さらに多様な培養

困難な細菌の存在が想定され、メタゲノム的手

法による検討をも始めている。 (ステップ3)21世紀を迎えた頃、動画で観察する土の分散は実に複雑な過程からなり、そ

の微妙さに魅せられる。土分散によってミクロ

団粒や鉱物片とともに、シリカのナノ粒子が放

出され、奇妙な集団行動を展開する。これらの

ナノ粒子はどのようにして生成され、その集団

行動は何によって引き起こされているのか。さ

らにシリカナノ粒子を平板上で数十日以上培養

すると、細菌のミクロコロニーの形成も観察さ

れる。細菌はナノ粒子からの孵化を想像させる

ように現れ、分裂する。 以上の経験から、土に多様な細菌種が存在す

るという事実には、二つのサイクルの関与が想

像される。すなわち、一方は地表の堆積物が地

下深くで堆積岩となり、時にはさらに深部のマ

グマ層を経て火成岩となった後、再び地表に現

れ、風化、崩壊し土壌となる地質学的巨大サイ

クル、他方は土のミクロ団粒内鉱物細片のミク

ロサイトで生起している鉱物微細構造の劣化・

崩壊・再結晶という半ば循環的な微小サイクル

である。 参考文献 1)「大地の微生物世界」(岩波新書)服部勉、

岩波書店、1988. 2)The physical environment in soil microbiology: An attempt to extend principle of microbiology to soil microorganisms. T. Hattori and R. Hattori, Crit. Rev. Microbiol.4:423-461. 1976. 3)The Viable Count :Quantitative and Envi-ronmental Aspects. T.Hattori, Science Tech, Madi-son/Springer Verlag, Berlin. 1988. 4)Distinct growth strategies of soil bacteria as revealed by large-scale colony tracking. M. Ernebjerig and R. Kishony. Appl. Environ. Mi-crobiol. 78(5), 1345-1352. 2012.

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大村智先生と別府輝彦先生の文化功労者顕彰を祝う

すでに新聞などで広く報道されましたように、本学会の名誉会員であられる大村智先生と別府

輝彦先生が本年度の文化功労者に選ばれました。文化功労者は、我が国における文化の向上発達

に関し特に顕著な功績を挙げた個人が選ばれる、たいへん栄誉ある顕彰です。長年にわたり本学

会に対し、指導的なお立場で関わってこられたお二人の先生が、同時にこの度の栄誉に輝かれた

ことは、学会にとって、また学会員にとってこの上ない喜びとするところです。ここに、日本放

線菌学会を代表してお祝い申し上げます。 大村智先生は、数々の有用な微生物由来の生理活性物質を発見し人類の健康に貢献されたこと

に対して、別府輝彦先生は、微生物利用学の領域に分子生物学的知見と手法を導入し多様な研究

成果を上げられたことに対して、栄をお受けになりました。先生方は、去る11月5日に皇居・

宮殿に招かれ、田中真紀子文部科学大臣から顕彰を受けられた後、恒例の茶会において天皇・皇

后両陛下と和やかに歓談されたと伺っております。

大村智先生(左)別府輝彦先生(右)

日本放線菌学会では、この度の大村智先生と別府輝彦先生のご業績と栄誉を称えるとともに、

これを契機として益々その活動を積極的なものとして参りたいと考えます。 お二人の先生のますますのご健康とご活躍を祈念いたします。

平成24年11月 日本放線菌学会 会長 長田裕之

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報告 2012年度日本放線菌学会参加記

9月 6日、7日の両日、大会長である東京

農工大学の夏目雅裕先生主催のもと、2012年度(第 27 回)日本放線菌学会大会が東京都府中市の府中の森芸術劇場で開催された。

会場は緑豊かな府中の森公園に隣接し、アシ

ンメトリーな建物の外観やホールのいたる

ところで目の当りにするオブジェなどから

も芸術の空気を感じさせる会場であった。 本大会では(独)製品評価技術基盤機構の

鈴木健一朗博士が「放線菌の化学分類学的研

究およびカルチャーコレクションの創設と

充実」で学会賞を受賞された。化学分類学的

指標による分類の時代から遺伝学的手法の

発展に伴う多相分類学の時代への推移、そし

て分析化学の進展により化学分類がさらに

推進している現況について講演された。近年、

放線菌の分類、同定について携わり始めた私

としては歴史を学ぶ授業のように非常に楽

しく聞かせて頂いた。浜田賞は日本大学生物

資源科学部応用生物科学化の髙野英晃博士

が「放線菌が示すストレス応答制御の分子機

構に関する研究」で、信州大学農学部応用生

命科学化の保坂毅博士が「放線菌の潜在能力

発現に関わる薬剤耐性変異の特性解析と抗

生物質発掘への応用」でそれぞれ受賞された。

普段、放線菌スクリーニングソース作成に携

わっている私としては光応答や薬剤耐性変

異の話は非常に魅力的で、いつも行っている

操作の中にそれらのエッセンスを導入して

みたいと強く感じた。 また、授賞式にはサプライズゲストとし

て浜田賞の創設者である浜田雅博士がお見

えになられ、浜田賞を受賞された両博士に目

録を直接手渡された。その後、今大会に受賞

された先生方との記念撮影の終了と共に、会

場に来られた歴代の受賞者が一堂に壇上に

集まり浜田博士を囲んでの記念撮影となっ

た。浜田先生を囲んで記念写真に収まる諸先

生方は皆笑顔であり、日本放線菌学会が非常

に暖かい雰囲気に溢れている学会であるこ

とを表した光景を目の当たりにし非常に感

動を覚えた出来事であった。 今大会では 2 題の招待講演が行われた。1題は東京農工大の有江力先生が「トマト‐萎

凋病菌の相互作用と病原性分化の分子機構」

と題して講演された。病原菌の起源から進化

までをトマト萎凋病起因菌の Fusarium ox-ysporum を例に説明された。2 題目は東京農工大の国見裕久先生が「昆虫病原微生物を利

用した害虫防除の現状と課題」と題して講演

された。微生物農薬利用の歴史から利用の現

状と今後の課題について分かり易く説明さ

れた。 今年度は口頭発表で 18 題、ポスター発表で 57題の発表があった。18題の口頭発表者のうち、ポスドクおよび学生についてはポス

ターの掲示も求められた。これは、ポスター

発表者だけでなく、口頭発表者もポスター賞

の選考対象として参加して頂くためであっ

た。さらに今年度のポスター発表者にはショ

ートプレゼンテーションの時間が設けられ

た。各人持ち時間 2分の間に自分の研究内容を知って頂く、いわゆる自己紹介の場である。

私としては、他の研究者がどのようなアプロ

ーチで放線菌研究を進めているかが短時間

で勉強することができ、自分の研究とは異な

る分野の内容についても知る(知ったつもり

になる?)ことができる良い機会であった。

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ポスター発表では自分の興味がある研究内

容ばかりに目が行きがちであるが、今回は幅

広く様々な方とディスカッションできたの

ではないかと思う。今後も機会があれば是非

続けて欲しい企画だと感じた。今年度のポス

ター賞には佐々木晴信氏(山梨大院)の「水

耕栽培における P4-Ro-7 株の植物の生育促進効果」、友常久実子氏(秋田県大)の「セ

ルロース系バイオマスを原料とした抗生物

質生産を目指した Streptomyces属放線菌のセルロース分解酵素遺伝子群の解析」、松村直

美氏(静大農)の「野菜内生放線菌の分離と

系統解析」、岡庭奈保子氏(農工大院農)の

「Streptomyces turgidiscabiesの植物毒素生産性と分類」の 4題が選出された。当初の予定では 5 名の方にポスター賞を授与する予定であったが、投票の結果票が割れ、結果とし

て 4名が受賞対象となった(票を獲得した演題は 26題にのぼる)。受賞内容は生物学的調

節、有用物質生産などを指向した応用研究と、

微生物分離および分類といった基礎研究が

受賞対象となった。今後も各分野で研究の進

展が期待される内容だったと感じた。 放線菌という言葉一括りでこれだけ多く

の分野からの発表が聞ける年に1度のこの

機会は貴重な時間であり、今回も研究意欲を

非常に刺激された。学会で得た知識を基に新

たなコンセプトのスクリーニングソースを

作り出したいと強く感じた大会であった。 最後に、今回初めて実行委員として参加さ

せて頂きわずかながらお手伝いを通して勉

強をさせて頂いたことに感謝を申し上げる

と共に、学会を陰で支えてくださった夏目先

生のラボの皆様や、学会を盛り上げてくださ

った出展企業、参加者の皆様に感謝申し上げ

ます。 (公益財団法人 微生物化学研究会微生物

化学研究所 波多野 和樹)

(左上より会場前景、ポスター会場、ポスター賞受賞者、歴代受賞者の方々との記念撮影風景)

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報告

The International Conference of Natural Product Biosynthesisに参加して

日本とアメリカの研究者が一同に介して

議論を交わしながら(お酒も飲みながら)切

磋琢磨していく、という国際シンポジウムを

ご存じでしょうか?日米セミナー(US-Japan

Seminar)といわれる国際シンポジウムは

1976 年にハワイで初めて開催され、1994 年

(第 4 回)の富士山裾野での大会を含めて今

までに7回開催されていた。

第 8 回日米セミナーは ”The Interna-

tional Conference of Natural Product

Biosynthesis” というタイトルで、淡路島

の淡路夢舞台において6月17-22日の日程で

開催された。今回のシンポジウムは文部科学

省科学研究費補助金・新学術領域研究「生合

成マシナリー:生物活性物質構造多様性創出

システムの解明と制御(領域代表:北海道大

学・及川英秋先生)」主催であり、放線菌を

はじめとした微生物、カビ、植物といった分

野の生合成研究者が集まった。

学会は 17日の夕刻から、及川先生と David

Cane 先生の講演で開幕した。及川先生は放

線菌 Streptomyces lasaliensis の生産する

ポリエーテル化合物ラサロシドおよびカビ

代謝産物の生合成について、Cane 先生はポ

リケチド生合成の詳細な分子認識機構につ

いて、最新の成果をご講演してくださった。

その後 Welcome reception が始まり、学会仲

間および海外招待講演者との再会に喜びか

つ会話が大いに弾んだ。料理の質もよく、思

わず食べ過ぎてしまった。

演題数は口頭発表が計 51 題、ポスター発

表が計 35 題であった。そのうち口頭発表は

20 名の海外招待者を含んでおり、じっくり

と討論する時間も設けられていた。生合成分

野の放線菌学会員も口頭発表に選ばれてお

り、小生も日頃の研究成果を発表した。著名

な国内外の生合成研究者を目の前にして、い

つも以上に緊張してしまった。ポスターは全

日程で講演会場前のロビーに掲示されてお

り、発表時間以外でも至る所で活発な議論お

よび交流がなされていた。また、Selected

poster presentation として 4 演題(各 15

分間の口頭示説)が選ばれた。放線菌学会員

からは北里大学・宮本聖子博士が選ばれ、流

ちょうな英語で講演していたのは印象的だ

った。

20 日昼に集合写真撮影を行い、その後バ

スでエクスカーションに向かった。今回は姫

路城見学で、片道約 1 時間の道のりであった。

台風一過ということもあり、川の水かさはか

なり増していた。ご存知の方も多いと思うが、

現在姫路城は改修中であり、世界遺産の雄姿

は見れなかった。ということで大天守修理見

学施設「天空の白鷺」に入り、改修途中の姫

路城を見たのだが、これはこれで 45 年ぶり

ということなのでいい経験だったと思う。そ

して本シンポジウムは Craig Townsend 先生

と日本放線菌学会会長の長田裕之先生のご

講演で締めくくりとなった。Townsend 先生

は type-I PKS の反応機構について、そして

長田先生はリベロマイシンの生物活性と生

合成について、興味深い講演をしてくださっ

た。放線菌学会会員も数多く参加されており、

計画班の池田先生、大利先生、班友の葛山先

生といったそうそうたるメンバーと長時間

ご一緒できたことはいい経験になった。今回

の講演全体で改めて感じたことは、研究成果 を名刺代わりにして自分を認識してもらう、

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ということである。小生は比較的早い段階で

の講演だったため、多少なりとも初対面の先

生方への印象度は強かったかな、と思う。次

回の US-Japan セミナーに招待されるように

精進していきたいと思う。

荒川 賢治(広島大学 大学院先端物質科学研

究科)

集合写真(淡路夢舞台にて)

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2013年度(第28回)日本放線菌学会大会のご案内

会長 杉山 政則 (広島大学 大学院医歯薬保健学研究院)

2013 年度日本放線菌学会大会は, 広島市内の平和公園に隣接したホテル「メルパルク広島」

にて開催することになりました。皆様には奮ってご参加くださいますようお願い申し上げます。 詳しい情報は日本放線菌学会のホームページ (http://www0.nih.go.jp/saj/index-j.html) を通じて,

随時ご案内いたします。

概要

期日:平成 25年 9月 5日(木),6日(金) 会場:メルパルク広島 6F 平成の間 〒730-0011 広島県広島市中区基町 6-36

(JR 広島駅から同ホテルまで路面電車で約 15 分。一方, 広島空港からリムジンバスに乗車すると, 広島駅までの所要時間は約 45分。空港からバスセンター行きに乗った場合, 所要時間は約 60分。なお, 同ホテルはバスセンターに隣接しています。)

TEL:082-222-8501 http://www.mielparque.jp/hiroshima/ 講演申し込み, および, 要旨ならびに大会参加の事前申し込みの締切日:

平成 25年 6月 28日(金) 参加費(講演要旨集代を含む)

6月 28日まで 6月 29日~当日受付 会員: 6,000円 8,000円 学生会員: 3,000円 4,000円 非会員: 8,000円 10,000円

要旨集(2,000円)のみご希望の方は, 大会事務局までご連絡ください。 懇親会 日時:平成 25年 9月 5日(木)18:00~20:00 会場:メルパルク広島 6F 平成の間 会費:

6月 28日まで 6月 29日~当日受付 会員・非会員: 8,000円 10,000円 学生会員: 5,000円 7,000円

プログラム概要(予定および詳細は, 随時学会ホームページをご覧ください)

1. 一般講演(口頭発表とポスター発表) 2. 受賞講演 3. 特別講演

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参加および講演申し込み要領

● 参加および講演申し込み:専用メールアドレス ([email protected]) で, 平成 25年 3月 1日より受け付けます。

● 参加費・懇親会費の振り込み:平成 25年 6月 28日(金)までに, 下記の郵便振替でお願いいたします。郵便振替の振込用紙は 3月に発送予定の, 年会費・購読料納入の案内状に同封して送付いたします。

郵便局から 口座番号記号:01370-3-50551 口座名称(漢字):2013日本放線菌学会 口座名称(カナ):ニイマルイチサンニホンホウセンキンガッカイ 他行等から 銀行名:ゆうちょ銀行 店名:一三九(イチサンキユウ),店番:139 預金種目:当座, 口座番号:0050551 口座名称(カナ):ニイマルイチサンニホンホウセンキンガッカイ ● 講演申込および講演要旨の締切日:平成 25年 6月 28日(金) ● 講演要旨:下記の例(A4用紙1枚)を参考に, MS Wordで作成し, [email protected]までお送りください。

抗結核薬 D-サイクロセリンの生合成機構 ○熊谷孝則 1, 高木紀抄 2, 的場康幸 1, 杉山政則 1

(1広大院・医歯薬保健学研究院, 2広大院・医歯薬保健学研究科) 【目的】D-サイクロセリンは・・・・・ 【方法】・・・・・ 【結果および考察】・・・・・ 【文献】 【英文タイトル・著者名・所属】 Biosynthetic mechanism of anti-tubercular D-cycloserine Kumagai, T.1, Takagi, K.2, Matoba, Y.1 and Sugiyama, M.1 (1Inst. Biomed. & Health Sci., 2Grad. Sch. Biomed. & Health Sci., Hiroshima Univ.) ・ 所属は和文・英文とも省略形で記載してください。 ・ 英文タイトル等は英文プログラムに使用しますので, 次ページになってもかまい

ません。

● 発表形式の詳細等は, 学会ホームページや電子メールにてお知らせいたします。

お問合せ先(大会事務局) 〒734-8553 広島市南区霞 1-2-3

広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 遺伝子制御科学研究室

Tel: 082-257-5283 E-mail: [email protected]

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The Journal of Antibioticsの Web閲覧開始のお知らせ

日本放線菌学会

会長 長田裕之

これまで Actinomycetologicaなどでお知らせしてきましたように、日本放線菌学会会員は、会

員サービスとして、学会のホームページ経由で、本学会の Official Journalである The Journal of

Antibiotics(JA)のウェブサイトにアクセスし、全文閲覧が可能となりましたので、ご案内いた

します。なお、Web 閲覧は、年会費を滞納していない会員に限定した会員サービスですのでご

了承下さい。

下記の要領でパスワードを取得後、JAにアクセスすることができます。

①【パスワードの取得方法】 1)学会 HP(http://www0.nih.go.jp/saj/index-j.html)にアクセスし、JAのバナーをクリック 2)ページ下半分のフォームに、会員番号(154で始まる 10桁の会員番号 154xxxxxxx)、名(ローマ字)、姓(ローマ字)、パスワードを受け取るための電子メールアドレスを入力(会員番

号は学会からの封書の宛名欄に書いてあります) 3)入力した電子メールアドレスにパスワードが届く

②【JAへのアクセス方法】 1)学会 HP(http://www0.nih.go.jp/saj/index-j.html)にアクセスし、JAのバナーをクリック 2)会員番号とパスワードを入力 3)会員認証後、自動的に JAのトップページに移動する 4)Current Issueまたは、Archiveのなかから見たい論文を探し、タイトルや「Full Text」「PDF」のリンクをクリックし、全文を開く

【注意事項】 1)アクセスに必要な会員番号とパスワードは、本学会会員の特典として、JAの個人的な閲覧・利用を可能にするために学会事務局より発行・配布されるものです。会員以外の者に上記の

アクセス方法を教えること、会員番号とパスワードを第三者に譲渡すること、または複数の

利用者と共有すること、所属機関図書室等機関購読対象者に提供することは、出版元である

Nature Publishing Groupとの契約により固く禁じられております。会員番号とパスワードのお取り扱いにはなにとぞご注意くださいますようお願いいたします。

2)ご所属先のネットワークセキュリティ環境によっては、認証が行われない場合がございます。上記方法で論文閲覧ができない場合には、下記にお問い合わせ下さい。

ネイチャー・アジア・パシフィック The Journal of Antibiotics アクセスヘルプ 浅井 様 Tel : 03(6809)1890 E-mail : [email protected]

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日本放線菌学会 25周年記念 「放線菌と生きる」出版のお知らせ

Actinomycetologica Vol.21 No.2 (2007) から Vol.24 No.2 (2010) まで7回にわたり連載してきた「日本放線菌学会の歴史」を、内容を更に充実し一冊の本「放線菌と

生きる」として 2011年9月に刊行しました。戦後抗生物質の生産菌として一躍注目を浴びることとなった放線菌、

そしてその研究者らの勉強会に端を発した日本放線菌学

会は、現在では会員数約 400 名を擁する学術団体に成長し、日本は今や世界でも有数の数多くの放線菌研究者を

輩出する国となりました。第一部では、その戦後間もな

く情報も物資も乏しい時代の放線菌の勉強会の立ち上げ

から、放線菌育種談話会の発足と合流そして現在に至る

までの放線菌学会の活動が、記録と当事者らの記憶に基

づき綴られています。第二部では、放線菌研究の歴史が、

幕開けから現在に至るまで詳細に記されています。「もの

にならなかった抗生物質」の記述は、論文では知り得な

い抗生物質開発の現実を知らしめるなど、これからを担

う若い研究者にとっても有用な情報が盛り込まれていま

す。第三部には、これまで放線菌研究に携わってこられ

た諸先輩方から若き研究者まで幅広い方々の生の声を収

載しました。現在の放線菌研究の礎を築かれた先人らに

敬意を表すると同時に、多くの方々に放線菌研究そして

放線菌研究者の記録を是非ご一読ください。

目次: 第一部 放線菌学会の歩み Ⅰ 放線菌研究会誕生まで; Ⅱ 放線菌育種談話会の発足;Ⅲ 放線菌学会への昇格;

Ⅳ 第 7 回国際放線菌学会議;Ⅴ 放線菌育種談話会の合流; Ⅵ 学術集会; Ⅶ 学

会誌の変遷; Ⅷ 学会賞:各賞受賞者一覧; Ⅸ 出版物; Ⅹ 事務局

第二部 放線菌研究の歩み

Ⅰ 日本における放線菌研究の始まり; Ⅱ 抗生物質探索の幕開け; Ⅲ 希少放線菌

生産抗生物質の動向; Ⅳ ものにならなかった抗生物質; Ⅴ 放線菌の菌学的研究

の概観; Ⅵ Streptomyces coelicolor A3(2) の再同定とその意義; Ⅶ 希少放線菌の発見と再分類; Ⅷ カルチャーコレクションと放線菌; Ⅸ 日本における放線菌遺

伝学―抗生物質生産; Ⅹ 日本における放線菌遺伝学―重要事項と学会との関連

第三部 放線菌と生きる

学会員特別頒布価格 3,200円、著者特別頒布価格 3,000円(送料 500円) 購入希望の方は下記宛ご連絡ください。学会が在庫しておりますので、学会経由での購入にご協

力ください。 問い合わせ先:学会事務局 松本厚子

(E-mail: [email protected]

日本放線菌学会 編集 B5 判 264 頁+口絵4 頁 ISBN 978-4-86399-101-9 C3047 みみずく舎:発行/医学評論社:発売 定価 3,990円(本体3,800円+税5%)

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「Digital Atlas of Actinomycetes」改定のお知らせ

2002年本学会が作成し、学会 HPに公開している”Digital Atlas of Actinomycetes”(http:// www0.nih.go.jp/saj/DigitalAtlas/)を改定することになりました。会員のみなさん、ぜひ、

放線菌画像の自信作をこのサイトに投稿し

てください。放線菌の多様な形態のおもしろ

さや美しさを相互に楽しみ合っていきまし

ょう。 まず、下に示した放線菌の写真を見てくださ

い。放線菌は、言うまでもなく、バクテリア

に所属する一分類群、即ち原核生物です。バ

クテリアの形態と言えば、球状か棒状、ある

いは分岐のない糸状といった単純形態が一

般的です。なのに、どうして放線菌だけがこ

れほどまでに形態上の多様化を達成してき

たのでしょうか。このテーマを考えるだけで

も、放線菌に関わっていることを幸せに感じ

ます(Ref. 宮道:生物工学会誌, 90, 32, 2012)。古今東西、放線菌を扱ってきた人たちは、放

線菌の形態に魅せられ、たくさんの写真を残

してきました。 まず、”Digital Atlas of Actinomycetes”を公開するに至った経緯を紹介します。発端は

1997年、学会から「放線菌図鑑、朝倉書店、¥16,800(1997)」を出版したことです。専門誌にはたくさんの写真が掲載されています

が、不思議なことに、図鑑としてまとめられ

た書籍は世界的にも皆無でした。3年かけて10 カ国 120 人から放線菌画像を収集、そのうち 450 枚を選択し世界への情報発信の願いも込めて日本語と英語のバイリンガル編

集にしました。その後、2002年、「放線菌図鑑」の中から提供者の了解が得られた約 130枚の写真を選び、日本放線菌学会ホームペー

ジのサイトに ”Digital Atlas of Actinomycetes”として公開したのです。驚いたことに、ネッ

ト公開の国際的な反響は、「放線菌図鑑」の

比ではありませんでした。しかし、これらは、

もう、過去のことです。公開されている画像

の大部分は 15-20 年前に撮影されたもので、分類体系の変更に伴う学名の更新も必要で

す。現在のような、電子情報の時代、国際的

に見ても”Digital Atlas of Actinomycetes” の価値は、ますます高まっています。ぜひとも

このサイトの更新を進めましょう。会員のみ

なさんの積極的な放線菌画像の提供を期待

しています。なお、画像提供の詳細について

は学会ホームページをご覧いただくか、直接、

担当の田村朋彦さん( tamura-tomohiko@ nite.go.jp)、または宮道にお問い合わせください。 宮道慎二(NITE/NBRC 客員研究員)

放線菌の多様な形態(上 Streptomyces、下 non-Streptomyces) “Digital Atlas of Actinomycetes” より

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日本放線菌学会賛助会員

協和発酵キリン(株)研究本部 第一三共 RDノバーレ(株)創薬基盤研究部 サントリービジネスエキスパート(株)品質保証本部 日本マイクロバイオファーマ(株)生物資源研究所 北興化学工業(株)開発研究所 Meiji Seika ファルマ(株)足柄研究所 和光純薬工業(株)試薬開発部 富山化学工業(株)綜合研究所 微生物化学研究所 中外製薬(株)鎌倉研究所 アステラスリサーチテクノロジー(株)醗酵研究部 長瀬産業(株)研究開発センター アステラス ファーマ テック(株)富山技術センター

著作権について 本誌に掲載された論文、抄録、記事等の著作権は、日本放線菌学会に帰属します。これら著作

物の一部または全部をいかなる形式でもそのまま転載しようとするときは、学会事務局から転載

許可を得て下さい。

日本放線菌学会誌 第 26巻 2号 ACTINOMYCETOLOGICA 平成 24年 12月 25日発行 編集兼発行 日本放線菌学会 〒108-8641 東京都港区白金 5-9-1 北里大学 北里生命科学研究所内 TEL&FAX 03-5791-6133 E-mail [email protected] 印刷 小宮山印刷工業(株) 〒162-0808 東京都新宿区天神町 78 TEL 03-3260-5211 FAX 03-3268-3023 年間購読料 7,000円(会員無料)

http://www0.nih.go.jp/saj/index-j.html

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組織再編成のご案内 和研薬株式会社は、それぞれの専門性を高めて役割分担を明確化するため、平成 24年 3月 21日似て組織再編を実施することとなり、和研薬株式会社のメーカー部門とワケン電子株式会社を統合して、新たに社名を『ワケンビーテック株式会社』と変更致しました。より付加価値の高い製品及び、サービスのご提供を目指し、新たな体制の下で皆様方のご愛顧を賜りますよう専心努力して参る所存でございますので、今後ともなお一層のご厚誼ご支援賜りますようお願い申し上げます。 

http://www.wakenhd.co.jp

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