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医療リアルワールドデータの利活用
平成30年度(2018年度)創薬技術調査報告書紹介
公益財団法人 ヒューマンサイエンス振興財団
髙柳輝夫
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ヒューマンサイエンス振興財団(HS財団)について
設立:1986年4月、厚生省(当時)の支援のもとに医薬品、化学品、食品、
医用材料、繊維等の企業の参加により財団法人(厚生省所管)設立
2013年4月公益財団法人へ移行(内閣府所管)
目的:医薬品、医療・福祉機器、保健衛生等に関連する先端的・基盤的科学技術の
振興をはかり、人類の健康と福祉に寄与すること
実施事業:
・創薬に関連する調査事業
・希少疾患等の医薬品開発における課題や開発技術、再生医療に関する
情報提供事業
・技術移転事業(厚生労働大臣認定TLО)
・動物実験実施施設認証事業2
平成30年度日本医療研究開発機構研究費(創薬基盤推進研究事業)
研究開発課題名:革新的な治療薬の創出に向けた創薬ニーズ等調査研究
創薬技術調査報告書(Part2)平成31年3月
公益財団法人 ヒューマンサイエンス振興財団
医療リアルワールドデータの利活用安全性調査、臨床研究、製造販売承認申請にいかに利活用するか
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本報告書作成の経緯ならびに趣旨
医療ニーズ調査・創薬技術調査・国外調査実施による創薬をめぐる網羅的かつ最新の情報の継続的発信
平成30年度;調査研究5年計画の2年目創薬技術調査創薬への医療ビッグデータやAI等ICT技術利活用新規創薬モダリティ技術およびその基盤技術の最新動向患者レポジトリ整備等の産学連携新規創薬・医療技術に関連するガイドライン等
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創薬技術調査;国内技術WGおよび規制動向WG
創薬への医療ビッグデータやAI等ICT技術利活用新規創薬モダリティ技術およびその基盤技術の最新動向患者レポジトリ整備等の産学連携新規創薬・医療技術に関連するガイドライン等
規制動向WG
医療ビッグデータリアルワールドデータ をモバイルヘルスデータ
医薬品の臨床開発や製造販売承認申請にどう活かしていくか5
創薬技術調査;国内技術WGおよび規制動向WG
創薬への医療ビッグデータやAI等ICT技術利活用新規創薬モダリティ技術およびその基盤技術の最新動向患者レポジトリ整備等の産学連携新規創薬・医療技術に関連するガイドライン等
関連する内容
MID-NETクリニカルイノベーションネットワーク(CIN) に関して次世代医療基盤法等
調査活動を展開し、成果を報告書としてまとめた6
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本調査にご協力いただいた学識経験者
官 6名学 2名民 3名他 1名
平成30年度規制動向ワーキンググループメンバー
メンバー13名(リーダー1名・サブリーダー2名)事務局 2名
12名
医療リアルワールドデータの利活用安全性調査、臨床研究、製造販売承認申請にいかに利活用するか
第1章 はじめに1-1 調査の背景1-2 RWD利活用に関連する行政の施策1-3 関連用語の説明
第2章 RWDの利活用2-1 RWDの種類2-2 RWDの利活用2-3 モバイルヘルス機器から得られるRWDの利活用
第3章 関連法3-1 個人情報保護法3-2 次世代医療基盤法
第4章 考察および提言8
☆ 本報告書の内容は調査協力者の公式見解ではなくオーソライズされたものではありません
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調査の背景-1
ICT[情報通信技術]AI [人工知能]
電子化データ ビッグデータ時代
大きなパラダイムシフトSociety5.0(2016年第五期科学技術計画)第四次産業革命(2016年世界経済フォーラムダボス会議)
カルテ・レセプト(保険給付明細書)・検査報告書・画像データ 等 電子化
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調査の背景-2
データベース化された医療分野情報
構築した医療機関自身が医学研究に利活用
医療現場から得られる情報[医療リアルワールドデータRWD]
医薬品医療機器等の臨床開発に利活用
日本再興戦略(2015年改定)クリニカルイノベーションネットワーク構想;
RWD整備・RWD積極的利活用
RWD利活用に関連する行政の施策
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国の主な取り組み
日本再興戦略
未来投資戦略(成長戦略)
経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)
健康医療戦略
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RWD利活用に関連する行政の施策
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厚生労働省の取り組み
MID-NET(Medical Information Database Network)
クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)
医薬品産業強化総合戦略
医療技術実用化総合促進事業
データヘルス改革
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厚生労働省医薬品産業強化総合戦略
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医療ワールドデータ[RWD]とは
実臨床の環境において収集された安全性・有効性
評価に活用できる各種電子的データを指す
<厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会>
医薬品医療機器等の安全性・有効性の評価に
活用するという目的意識をもって使われる
治験データなど介入研究(無作為化比較試験)
のために一定の条件下で収集されたデータとは
区別される 18
カテゴリー 内容 例診療録レセプト等DB 医療機関毎の日常診療下
での医療行為、結果、保険支払い等の情報が記録されたデータベース
NDB(レセプト情報・特定健診等情報DB)介護保険総合DBDPC(診断群包括分類) DBMID-NET民間DB(RWD社、JMDC社、MDV社、CCT社)院外調剤薬局の調剤レセプトDB
疾患レジストリDB(患者レジストリ)(疾患登録システム)
疾患毎の登録患者に関するDB、疾患コホート研究のために集積されたデータベース
SCRUM-Japan 筋ジストロフィーRemudy脳神経外科外来入院患者JND筋委縮性側索硬化症JaCALS全国がん登録DB指定難病患者DB小児慢性特定疾病児童等DB
モバイルヘルス機器から得られるリアルタイムデータ
モバイルヘルス機器(センサー)+モバイル端末機器から送られる日常リアルタイムの情報が記録されたデータベース
耳鼻咽喉科情報(聴力/ふらつき/眼球振動)心循環系情報(血圧/脈拍/心音/心電図)代謝系情報(血糖/HbA1c)行動情報(運動力、歩行距離、睡眠時間)
医療リアルワールドデータの種類
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希少疾患等では病態の発症・進行そのものの解明が進んでいない場合が多く
その経過を詳細に記録した、いわゆるナチュラルヒストリーは、疾患レジストリが
提供する有用な情報
医薬品開発におけるRWDの活用治験の効率化(低コスト化・迅速化)
1.未承認薬のコントロール群にRWDを利用する
2.既承認薬の適応拡大のためにRWDを利用する
3.Pragmatic Clinical Trial (実際的臨床試験)を
製造販売承認申請パッケージに用いる
4.製造販売承認申請資料の補助資料としてRWD
からの分析結果を利用する20
医療現場から得られる[医療リアルワールドデータRWD]を医薬品医療機器等の臨床開発に利活用する
日本再興戦略[2015年改定]の「クリニカルイノベーションネットワーク構想」の中にもRWDを整備するとともに、医薬品医療機器等の開発企業を含む産官学がRWDを効率的な臨床治験、市販後調査、臨床研究に積極的に利活用すべき、と明確に謳われている
RWDを医薬品医療機器等の開発に利活用しようとする背景には、臨床試験の主流となっているランダム化比較試験(Randomized Control Test:RCT)の問題点に関する議論がある。
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医療現場から得られる[医療リアルワールドデータRWD]を医薬品医療機器等の臨床開発に利活用する
RWDを医薬品医療機器等の開発に利活用しようとする背景には、臨床試験の主流となっているランダム化比較試験(Randomized Control Test:
RCT)の問題点に関する議論がある。
RCTは患者を投与群と対照群に割り振ったうえで、通常の診療行為とは完全に独立した様々な条件を付加した実験的環境で介入研究を行う。
RCTで発生するコストは高くなる傾向にあり、開発企業の負担増となっている。また、投与群と対照群に割り振ることの、各群の患者数、バイアス、倫理等の問題が議論されている。さらにRCTでは高齢者や肝機能・腎機能低下例など患者数が少ないサブグループが対象になりにくい傾向があることや、疾患によってはRCTの実験的環境が実臨床を適切に反映しているかどうかという問題も議論されている。
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1) 国は、RWDを希少疾病から患者が多い疾患まで、対照群として利活用できる産学官での指針及び仕組み作りを
2)国は、MID-NETを含むRWDの充実により市販後調査への活用、さらに薬効評価への利活用が進むようにロードマップを明示し、そのための課題解決策の推進を
3)国は、モバイルヘルスデータを医薬品医療機器等の開発に活用できる環境・指針作りを
平成30年度HS財団創薬技術調査班・規制動向WGからの考察・提言
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治験対照群
市販後調査MID-NET
モバイルヘルス機器
治験にRWDを利活用することの大きなメリットに「前向き介入研究」
の準備、実施に伴う膨大なコストを削減できることがあげられる。
また、潜在的な可能性として、非常に多くの患者数をカバーしうること、
実臨床の有効性のみならず、安全性、服薬のしやすさ、薬物相互作用の
実際、及び医療経済効果等、薬を使ってみて初めて分かる情報を含む
様々な医療情報を検討できる、ことがある。この特徴を活かし、例えば
既に広く使われている単剤ないし複数の既存薬に対する優位性あるいは
非劣性を示すための治験など、膨大な被験者数が必要な治験にRWDを
積極的に利活用することも検討すべきである。
平成30年度HS財団創薬技術調査班・規制動向WGからの考察・提言
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MID-NET[Medical Information Database Network]はRWDの活用により、現在の副作用報告制度の限界を補い、薬剤疫学的手法により医薬品等の安全対策を推進することを目的に構築された我が国を代表するRWDデータベース。改正GPSP省令に基づく高い信頼性が保証されている。日本人患者集団を対象としており日本人の医療エビデンス構築のため重要なデータベースとしても大きな可能性を秘めている。2018年から本格運用が始まっており、既に市販後安全性調査での有効活用が始まっている。
平成30年度HS財団創薬技術調査班・規制動向WGからの考察・提言
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治験の対照群にRWDを用いることは、患者数の少ない
希少疾患あるいは有病率の高い疾患でも遺伝要因や環境
要因を同じくする特定患者集団の治験に必要な選択肢。
従来のRCTの方法に従って一定のn数の対照群を設定
することは、患者数が少ない場合には困難であり、かつ
既存の有効な治療法がない場合には倫理的にも問題になる。
平成30年度HS財団創薬技術調査班・規制動向WGからの考察・提言
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1) 国は、RWDを希少疾病から患者が多い疾患まで、対照群として利活用できる産学官での指針及び仕組み作りを
2)国は、MID-NETを含むRWDの充実により市販後調査への活用、さらに薬効評価への利活用が進むようにロードマップを明示し、そのための課題解決策の推進を
3)国は、モバイルヘルスデータを医薬品医療機器等の開発に活用できる環境・指針作りを
平成30年度HS財団創薬技術調査班・規制動向WGからの考察・提言
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30
http://www.jhsf.or.jp/
ご清聴ありがとうございました