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2010Ver1.0 医療安全管理研修 医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ 医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ エラ 対策の発想手順 エラ 対策の発想手順 エラ対策の発想手順 エラ対策の発想手順 (1) やめる (2) をさせない り込まれない (2) をさせない、つり込まれない (3) エラーを検出する (4) 備える 自治医科大学医学部 (4) 備える メディカルシミュレーションセンター センター長 医療安全学教授 河野龍太郎 KAWANO Ryutaro 2010 (C) 1 医療安全学教授 河野龍太郎

医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ - JichiKAWANO Ryutaro 2010 (C) 1 対策の発想手順の必要性 これまでのヒューマンエラー対策

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  • 2010Ver1.0医療安全管理研修

    医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ

    エラ 対策の発想手順エラ 対策の発想手順エラー対策の発想手順エラー対策の発想手順(1) やめる

    (2) ラ をさせない り込まれない(2) エラーをさせない、つり込まれない

    (3) エラーを検出する

    (4) 備える

    自治医科大学医学部

    (4) 備える

    メディカルシミュレーションセンター

    センター長医療安全学教授 河野龍太郎

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 1

    医療安全学教授 河野龍太郎

  • 対策の発想手順の必要性対策の発想手順の必要性

    これまでのヒューマンエラー対策これまでのヒューマンエラー対策経験に基づく思いつきの対策が多かった

    ある有効な対策が考えられたにもかかわらず、その発想に至らなかった可能性

    ここでは可能な限り抜けのない対策を発想できるよここでは可能な限り抜けのない対策を発想できるように、発想手順と具体的対策例を紹介

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • ヒューマンエラー対策の発想手順

    1 エラ 誘発要因の積み木モデル

    ヒュ マンエラ 対策の発想手順

    1.エラー誘発要因の積み木モデル

    2.エラーの発生防止とエラーの拡大防止

    3.戦略的エラー対策の考え方

    4.戦術的エラー対策の発想手順4.戦術的 ラ 対策の発想手順

    5.エラー対策発想手順マトリックス

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • ヒューマンエラー対策の発想手順

    1 エラ 誘発要因の積み木モデル

    ヒュ マンエラ 対策の発想手順

    1.エラー誘発要因の積み木モデル

    2.エラーの発生防止とエラーの拡大防止

    3.戦略的エラー対策の考え方

    4.戦術的エラー対策の発想手順4.戦術的 ラ 対策の発想手順

    5.エラー対策発想手順マトリックス

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 安全はない!

    • 安全な医療

    • 安全な飛行

    • 安全な操業

    • 安全な運転安全な運転

    • そんなものは存在しないそんなものは存在しない。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 5

  • 安全は存在しない。

    • 安全は存在しない。

    • リスクのみ存在する

    安全 = 受け入れることのできない安全

    S f

    受け入れる とのできないリスクがないこと

    freedom fromSafety = freedom from unacceptable risk

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 6

  • リスクの積み木リスクの積み木

    手順がない

    類似

    手順がない

    分かり難い表示

    類似

    分かり難い表示

    忙しい 忙しい

    エラーを誘発する条件が多くなればなるほど不安定となり、

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 7

    ラ を誘発する条件が多くなればなるほど不安定となり、リスクが次第に高くなる。

  • Safety War (安全戦争)Safety War (安全戦争)

    • J. Reasonは、著書「組織事故」の中で、安全への、著書 組織事故」 中 、安取り組みは、「最後の勝利なき長期のゲリラ戦である」(p.161)とたとえている。あ 」 p 。

    • 最後の勝利なき長期のゲリラ戦である• 最後の勝利なき長期のゲリラ戦である

    – 決して勝たない

    – 決して終わらない

    – 敵の発見が困難(潜伏している)

    – 手を抜くとやられる

    – リターンマッチはない

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 8

    – リターンマッチはない

  • 「可能な限りリスクのレベルを下げる」努力しかない「可能な限りリスクのレベルを下げる」努力しかない

    記憶に頼る

    受け入れることの

    手順がない できないリスク

    分かり難い

    類似

    類似手順がない

    忙しい

    表示

    忙しい

    分かり難い表示

    類似受け入れることのできるリスク

    「努力」が実るとは限らない!

    忙しい

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 9

    「努力」が実るとは限らない!

  • ヒューマンエラー対策の発想手順

    1 エラ 誘発要因の積み木モデル

    ヒュ マンエラ 対策の発想手順

    1.エラー誘発要因の積み木モデル

    2.エラーの発生防止とエラーの拡大防止

    3.戦術的エラー対策の考え方

    4.戦術的エラー対策の発想手順4.戦術的 ラ 対策の発想手順

    5.エラー対策発想手順マトリックス

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • これまでの研究これまでの研究

    フールプルーフの研究エラープルーフの研究

    作業環境を改善してエラーを防止

    危険予知訓練 人間側に働きかける指差呼称 エラー防止対策

    一つにまとめたエラー対策の考え方

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • エラーによる事故対策の基本

    事 故ヒューマン 事 故マンエラー

    2.エラー拡大防止1.エラー発生防止MitigationPrevention

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 12

  • 航空における事故件数の推移非常 低 事故率

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    航空における事故件数の推移非常に低い事故率

  • 1.エラー発生防止(Prevention)

    航空機事数 事故率

    航空機事故件数

    フライト数 事故率= ×

    エラー発生件数

    作業数

    各作業でエラーをする確= ×

    生件数率

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 14

  • エラー発生件数を少なくしたい

    エラー発作業数

    各作業でエラ をする確エラ 発

    生件数作業数 ラーをする確

    率= ×

    (1) 作業数を減らす

    (2)各作業でのエラー発生確率を低減する

    方法が考えられる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 15

    の方法が考えられる。

  • エラーによる事故防止の基本エラ による事故防止の基本

    事 故ヒューマンエラーラ

    2.エラー拡大防止Mitigation

    1.エラー発生防止Prevention Mitigation

    (1) 作業数を減らす (2) 各作業でのエ

    Prevention

    (1) 作業数を減らす (2) 各作業でのエラー発生確率を低減する

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 16

    減する

  • 2 エラ 拡大防止(Mitigation)2.エラー拡大防止(Mitigation)

    • ヒューマンエラーを「ゼロ」にすることは不可能か、ヒュ マンエラ を「ゼロ」にすることは不可能か、極めて困難である

    →ヒューマンエラー発生を前提として→ヒューマンエラー発生を前提として、

    事 故ヒューマン 事 故エラー

    (3) 多重のエラー検出策を設ける

    (4) 被害を最小とするために備える

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 17

    検出策を設ける するために備える

  • エラーによる事故防止の基本エラ による事故防止の基本

    事 故ヒューマンエラーラ

    1.エラー発生防止Prevention

    2.エラー拡大防止Mitigation

    (1) 作業数を減 (2)各作業でのエ

    Prevention

    (3)多重のエラ (4)被害を最小と

    Mitigation

    (1) 作業数を減らす

    (2)各作業でのエラー発生確率を低減する

    (3)多重のエラー検出策を設ける

    (4)被害を最小とするために備える

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 18

  • エラ 防止の戦略 4STEP/Mエラー防止の戦略:4STEP/M(Strategic approach To Error Prevention & Mitigation by 4Ms)

    STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    被害を作業数を低減

    多重の各作業での

    ヒューマン最小とするために

    を低減 エラー検出策を設け

    でのエラー発生確率

    エラー

    事故

    備えるるを低減

    Minimum encounter

    Minimum probability

    Multiple detection

    Minimum Damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 19

    g

  • ヒューマンエラー対策の発想手順

    1 エラ 誘発要因の積み木モデル

    ヒュ マンエラ 対策の発想手順

    1.エラー誘発要因の積み木モデル

    2.エラーの発生防止とエラーの拡大防止

    3.戦略的エラー対策の考え方

    4.戦術的エラー対策の発想手順4.戦術的 ラ 対策の発想手順

    5.エラー対策発想手順マトリックス

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • STEPⅠ:エラーや危険を伴う作業数を減らす

    STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    被害を作業数を低減

    多重の各作業での

    ヒューマン最小とするために

    を低減 エラー検出策を設け

    でのエラー発生確率

    エラー

    事故

    備えるるを低減

    Minimum encounter

    Minimum probability

    Multiple detection

    Minimum Damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 21

    g

  • 作業がエラ を引き起こす

    エラ を誘発するような作業がエラ を発生

    作業がエラーを引き起こす

    エラーを誘発するような作業がエラーを発生

    この作業がなければエラーはない

    ヒューマンラエラー

    注射という行為が、薬剤の取り間違いや量の間違い 注入の速さ

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    違いや量の間違い、注入の速さの間違いなどを引き起こす

  • 「やめる」ことを考えてみる

    注射時のエラ を無くすためには 注射行為そのも

    「やめる」ことを考えてみる

    注射時のエラーを無くすためには、注射行為そのものを無くすことができないか、を考えてみる。

    点滴をしない 手術点滴をしない、手術をしない、ということも同様の発想

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    も同様の発想

  • エラーや危険を伴う作業数を減らすエラ や危険を伴う作業数を減らす

    それでは医療にならない

    発想手順として、「エラー発生可能性のある作業をしなくてもよいように性のある作業をしなくてもよいようにするにはどうすればよいか」ということも検討に値する

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    とも検討に値する

  • 危険の存在が被害を発生危険の存在が被害を発生

    もともと危険が存在する場合にのみエラーもともと危険が存在する場合にのみエラの結果として被害が発生

    「危険の排除」

    ・重大な影響を及ぼすような強い薬を使わない

    ・一回のエラーがもたらす潜在的な危険の程度を下げる→何回かに分けて投与する

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    作業数 各作業 被害を最小とするた

    作業数を低減

    多重のエラー検出策

    各作業でのエラー発

    ヒューマンエラー

    事故するめに備える

    を設ける

    生確率を低減

    事故

    作業工程数を減らす・作業工程数を減らす・危険の程度を減らす

    「やめる(なくす)」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 26

  • STEPⅡ:各作業でのエラー発生確率を低減

    STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    被害を作業数を低減

    多重の各作業での

    ヒューマン最小とするために

    を低減 エラー検出策を設け

    でのエラー発生確率

    エラー

    事故

    備えるるを低減

    Minimum encounter

    Minimum probability

    Multiple detection

    Minimum Damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 27

    g

  • 人間行動は人間の特性と環境で決まる

    • 心理学者レヴィン(Lewin)の行動の法則

    B=f(P, E)

    環境要因エラー発生確率

    人的要因 (a)エラーを誘発しにくい環境にする

    (b)作業者のエラー耐性を高める

    くい環境にする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    (b)作業者のエラ 耐性を高める

  • (a-1)エラーを誘発しにくい環境にする(a 1)エラ を誘発しにくい環境にする

    エラーを引き起こしにくい環境

    ・期待される行動を促す環境

    ・期待されない行動を阻止する環境

    フールプルーフ技術

    「 きな ようにする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    「できないようにする」

  • (a-2)エラーを誘発しにくい環境にする(a 2)エラ を誘発しにくい環境にする

    作業には負担(effort)が生じる

    ・記憶や判断といった認知的負担を軽減環境環境

    知覚、認知、識別、判断、記憶、注意

    の負担軽減負 軽減

    「わかりやすくする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    「わかりやすくする」

  • (a-3)エラーを誘発しにくい環境にする(a 3)エラ を誘発しにくい環境にする

    作業には負担(effort)が生じる

    ・持つ、運ぶといった身体的負担を軽減環境環境

    力の大きさ、握り、バランス、調整など

    の負担軽減負 軽減

    「やりやすくする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    「やりやすくする」

  • STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    作業数 各作業 被害を最小とするた

    作業数を低減

    多重のエラー検出策

    各作業でのエラー発

    ヒューマンエラー

    事故するめに備える

    を設ける

    生確率を低減

    事故

    プ 技術 認知的負担軽減 身体的負担軽減フールプルーフ技術 認知的負担軽減 身体的負担軽減

    「できないようにする」

    「わかりやすくする」

    「やりやすくする」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 32

    する」

  • 人間行動は人間の特性と環境で決まる

    • 心理学者レヴィン(Lewin)の行動の法則

    B=f(P, E)

    環境要因エラー発生確率

    人的要因 (a)エラーを誘発しにくい環境にする

    (b)作業者のエラー耐性を高める

    くい環境にする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    (b)作業者のエラ 耐性を高める

  • (b-1)作業者のエラー耐性を高める(b 1)作業者のエラ 耐性を高める

    エラーを引き起こしやすい環境

    作業者自身が 耐性を高・作業者自身がエラー耐性を高める

    正しく知覚「知覚能力を持たせる」

    危険を認知

    安全な判断

    「認知予測させる」

    「安全優先の判断をさせる」安全な判断

    実践能力

    「安全優先の判断をさせる」

    「能力をもたせる」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    作業数 各作業 被害を最小とするた

    作業数を低減

    多重のエラー検出策

    各作業でのエラー発

    ヒューマンエラー

    事故するめに備える

    を設ける

    生確率を低減

    事故

    正しく知覚 危険を認知 安全な判断 実践能力正しく知覚 危険を認知 安全な判断 実践能力

    「知覚能力を持たせる」

    「認知予測させる」

    「安全優先の判断をさせる」

    「能力をもたせる」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 35

  • STEP Ⅲ :多重のエラー検出策を設ける

    STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    被害を作業数を低減

    多重の各作業での

    ヒューマン最小とするために

    を低減 エラー検出策を設け

    でのエラー発生確率

    エラー

    事故

    備えるるを低減

    Minimum encounter

    Minimum probability

    Multiple detection

    Minimum Damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 36

    g

  • エラーを検出するエラ を検出する

    ヒューマンエラーをゼロにすることは極めて困難

    多重のエラーの発見方法

    「自分自身で発見」分 身 発見」

    「自分以外のもので発見」

    正しいものに修正

    で発見」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    正しいものに修正

  • STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    作業数 各作業 被害を最小とするた

    作業数を低減

    多重のエラー検出策

    各作業でのエラー発

    ヒューマンエラー

    事故するめに備える

    を設ける

    生確率を低減

    事故

    自分 そ 他自分 その他

    「自分自身で発見」

    「自分以外のもので発見」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 38

  • STEP Ⅳ :被害を最小とするために備える

    STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    被害を作業数を低減

    多重の各作業での

    ヒューマン最小とするために

    を低減 エラー検出策を設け

    でのエラー発生確率

    エラー

    事故

    備えるるを低減

    Minimum encounter

    Minimum probability

    Multiple detection

    Minimum Damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 39

    g

  • どんなにやっても抜けるどんなにやっても抜ける

    エラー対策に完全はない

    どんなに努力しても、エラーは発生し、検出できない可能性がある

    被害を最小にする被害を最小にする

    「KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    「備える」

  • STEPⅠ STEPⅡ STEP Ⅲ STEP Ⅳ

    作業数 各作業 被害を最小とするた

    作業数を低減

    多重のエラー検出策

    各作業でのエラー発

    ヒューマンエラー

    事故するめに備える

    を設ける

    生確率を低減

    事故

    被害を最小被害を最小に

    「備える」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 41

  • 表1 ヒューマンエラー低減の考え方の階層性(4STEP/M )

    拡大防止システム

    (STEP Ⅰ)

    2. エラー拡大防止Mitigation

    (STEPⅡ) (STEP Ⅲ) (STEP Ⅳ)

    1. エラー発生防止Prevention

    システム安全のプロセス

    エラーや危険を伴う作業遭遇数を減らす

    エラー発生可能のあ

    各作業においてエラーをする確率を低減する

    多重のエラー検出策を設ける

    エラ に

    エラーに備える

    Minimum encounter Minimum probability Multiple detectionMinimum damage

    戦略的エラー対策の4M

    ブレーク ラ 発生可能のある作業や危険を伴う作業に遭遇しないよ

    うにする

    エラーを誘発しない環境にする

    エラーを誘発されないようにする

    エラーに気づく

    エラー発生を検出する仕組みにする

    物理的

    エラー発生に備える

    正しい自己

    ブレ クダウン

    ブレークダウン 物理的

    制約負担軽減

    (d)認知的負

    (e)身体的負

    (g)エラ

    (i)タスク遂

    実行判断

    (h)安全優先

    知覚検出 影響緩和

    (f)基準感覚

    (k)検出

    (l)影響緩和

    (c)物理的

    (a)作業の

    排除

    (b)危険の

    認知(予測)

    自己検出

    (j)エラ 発戦術的エ

    ダウン

    認知的負担軽減

    身体的負担軽減

    エラー予測

    タスク遂行能力の

    保持

    安全優先の判断

    基準感覚知覚能力の保持

    検出 影響緩和物理的制約

    作業の排除

    危険の排除

    (1)

    やめる

    (2)

    きな よう

    (3)

    わかり す

    (4)

    り すく

    (10)

    自分 外 検出す

    (11)

    備える

    (6)

    予測

    (7)

    安全優先の判

    (9)

    自分 気づ

    (8)

    能力を持

    エラー発見

    戦術的エラー対策の原理

    エラー対策の発想

    (5)

    知覚

    P-mSHELLのL-self以外の要素 L-self以外の要素L-self

    やめる(なくす)

    できないようにする

    わかりやすくする

    やりやすくする

    自分以外で検出する

    備える予測させる

    安全優先の判断をさせる

    自分で気づかせる

    能力を持たせる

    策の発想手順

    P-mSHELL

    知覚させる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 42

  • ヒューマンエラー対策の発想手順

    1 エラ 誘発要因の積み木モデル

    ヒュ マンエラ 対策の発想手順

    1.エラー誘発要因の積み木モデル

    2.エラーの発生防止とエラーの拡大防止

    3.戦略的エラー対策の考え方

    4.戦術的エラー対策の発想手順4.戦術的 ラ 対策の発想手順

    5.エラー対策発想手順マトリックス

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • エラー防止対策の発想手順エラー防止対策の発想手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 44

    encounter probability detection damage

  • エラー防止対策の発想手順エラー防止対策の発想手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 45

    encounter probability detection damage

  • 1. やめる(なくす)

    全体の作業を見直して止める

    • ヒューマンエラーを誘発する可能性のある作業を止める止める。

    – ある特定の作業においてエラーが頻発するようであれば、全体の作業工程を見直し、思い切って止める

    • 看護師による薬を詰める作業においてエラーが頻発するならば、看護師による薬詰ラ 頻発するな 、看護師 る薬詰め作業を止める

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 46

  • 1. やめる(なくす)

    与薬行為そのものが危険行為?

    • 薬を与えるからエラーをしてしまう

    • 文献をよく読んで、本当にその薬は必要かどうかを検討

    • 薬を投与する危険性と、与えない危険性のバランスをよく考えて薬を決定ン をよく考え 薬を決定

    • 取り扱いの簡単な方法を選択

    ヒュ マンエラ 発生の可能性も薬選択の条件• ヒューマンエラー発生の可能性も薬選択の条件として考慮

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 47

  • 医療行為を止めると人々の寿命が延びる?医療行為を止めると人々の寿命が延びる

    1976年、コロンビアの首都ボゴタで、医師たちが52日間のストを行い 救急医療以外はい さいの治療を行わなか たところ 期行い、救急医療以外はいっさいの治療を行わなかったところ、期間中、死亡率が35%低下したという。コロンビアの国営葬儀協会は「事実は事実である」とコメントした。は「事実は事実である」とコメントした。

    1976年 ロサンゼルスで医者らがストライキを行った この時は1976年、ロサンゼルスで医者らがストライキを行った。この時は、死亡率が18%低下した。17の主要病院を調査してみると、スト期間中、手術の件数が60%減少していた。

    1973年にはイスラエルで医師のストが決行され、診察する患者の数を1日あたり6万5000人だったところを7000人に減らした。ストは1ヶ月続いた。エルサレム埋葬協会によると、医師のストの期間中 人々の死亡率が半減したという

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    間中、人々の死亡率が半減したという。

    http://wkp.fresheye.com/wikipedia/%e5%8c%bb%e7%99%82

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C) 49

  • 1. やめる(なくす)

    裏にノリがついているので そのまま裏にノリがついているので、そのままシリンジに貼り付けることができる。

    すり

    くすり注

    くす

    転記をやめる転記をやめる

    アンプルについているラベル(裏にノリがついている)をそのままシリンジに貼り付ける。転記をしないので書き写すエ

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 50

    ままシリンジに貼り付ける。転記をしないので書き写すラーが防止できる。

  • プレフィルドシリンジ

    1. やめる(なくす)

    プレフィルドシリンジ

    現行 プレフ ルドシリンジ業 が減

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 51

    現行 プレフィルドシリンジ

    テルモ㈱提供

    作業工程が減る

  • ラベル付きアンプル

    裏にノリがついているので、ジそのままシリンジに貼り付け

    ることができる。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 1. やめる(なくす)

    危険な薬を使うのをやめる

    • 強い薬を使うから危ない

    – 最初から、薄めた薬を使う

    – 薄める作業を止める ×薄める作業を める– 分けて投与する ×

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 53

  • エラー防止対策の発想手順エラー防止対策の発想手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 54

    encounter probability detection damage

  • 2. できないようにする

    物理的制約

    • ある決められた方向にしか入らないように「形」や「大きさ」等を変えて機械的に制約すること大きさ」等を変えて機械的に制約すること

    具体例具体例

    –順番を間違うとピンが外れないい

    –ブレーキを踏まないとギアが入らない入らない

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 55

  • 2. できないようにする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 56

  • 2. できないようにする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 57物理的に誤接続を防止

  • 誤接続誘発デバイス(輸液ライン←栄養ライン)

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 58

  • エラー防止対策の思考手順エラー防止対策の思考手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 59

    encounter probability detection damage

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)通常は使用しないスイッチにカバーをつける

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C) 操作の順番を表示する

  • 3. わかりやすくする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 62

  • 3. わかりやすくする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 63

    色による識別はリスクが高い必ず「G」で!

  • 色を分けて照合させる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    アイコンを使って直感的に分かりやすくする

  • (a) ドアの構造が分かるので左にスライド (b) ドアを開くには “押す”(a) ドアの構造が分かるので左にスライドさせることが即座に理解できる

    (b) ドアを開くには、 押す 、“引く”、“右にスライドさせる”の3通りが考えられる。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    構造が分かると、見ただけで操作が分かる

  • 認知的負担軽減

    3. わかりやすくする

    認知的負担軽減(識別の負担軽減)

    • 間違いやすいものをそばに置かない

    – 形状の似た薬品は隣り合わせに置かない

    – 同姓同名の患者は同じ部屋に入れない同姓同名 患者は同じ部屋 入れな

    – 類似姓名の患者は同じ部屋に入れない

    山本 勲Yamamoto Isao

    江田 恵美子Eda EmikoYamamoto Isao

    山本 久夫

    Eda Emiko

    伊田 美恵子

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 67

    Yamamoto Hisao Ida Mieko

  • CO 吸入後 患者2人死亡CO2吸入後、患者2人死亡

    平成 年○月 日 ○○県●●市 公立• 平成20年○月×日、○○県●●市、公立××総合病院で、患者2人が死亡した。

    • ×日午前3時50分ころ、麻酔医と看護師二人が、危篤状態になった末期の大腸がんの患者(70歳)をストレッチャーで約20m先の手術台に運ぶ際、酸素ボンベが空になっているのに気づいた。看護師の一人が誤って二酸化炭素のボンベを持ち出し、吸入器につないだ。

    • 午後6時ころ救急搬送された患者にもつないだ。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 68

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C) 69

  • 3. わかりやすくする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 70業者と協議し、ボンベに表記されている業者名を変更:長崎労災病院

  • エラー防止対策の発想手順エラー防止対策の発想手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 71

    encounter probability detection damage

  • 4. やりやすくする

    筋力作業の負担軽減

    握り部分を持ちやすいようにゴムグリッいようにゴムグリップをつけ、疲れを軽減軽減

    注意の範囲や量は注意の範囲や量は限られている

    注意の分散を防ぐ

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 72

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    整理整頓された作業環境(自治医科大学附属病院提供)

  • エラー防止対策の発想手順エラー防止対策の発想手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 74

    encounter probability detection damage

  • 5. 知覚能力を持たせる

    基準以上の感覚知覚能力の維持

    (1) ベストな身体状態の維持

    – 深酒、睡眠不足などの回避→自己管理

    – 休息をとる(とらせる)休息を る( ら る)

    • 点検作業など○○分で休息をとる(とらせる)

    (2) 自分の感覚感度の理解(2) 自分の感覚感度の理解

    – 加齢による感覚器官の劣化を理解

    自分の反応時間 記憶力 順応力の低下• 自分の反応時間、記憶力、順応力の低下を理解

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 75

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    加齢による感覚の劣化に対応する(小山市民病院提供)

  • エラー防止対策の発想手順エラー防止対策の発想手順

    1.やめ

    2.でき

    3.分り

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    りやすく

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    くする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 77

    encounter probability detection damage

  • 6. 認知・予測させる

    6.エラー発生予測能力

    「○○する時は、注意してやりなさい」が有効に機能するためには能するためには、

    – その状況に置かれた時、エラー発生予測ができないと、

    – どこに

    – どのように

    気をつけていいのかが分からない気をつけていいのかが分からない。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 78

  • 危険予知トレーニング6. 認知・予測させる

    間違い探しトレーニング

    みんなでイラストを見ながら潜在的な問題点を指摘する。経験の共有化や実際の現場での注意しなければならない点

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 79

    験の共有化や実際の現場での注意しなければならない点をみんなで学習する。

  • 日常業務の写真を見せ、危険箇所を予測させる(自治医科大学附属病院提供)

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 6. 認知・予測させる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 81武蔵野赤十字病院提供

  • TBM(作業前のミーティング)

    6. 認知・予測させる

    TBM(作業前のミーティング)

    • 職場で、作業にかかる前に 「安全」を中心とした短時間 (5~15分)の打ち合せ

    • 現場作業の小集団活動として全員参加を原則に実施

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 82

  • 今日は人工呼吸器の患者さんがいます。みんなでチ ク項目を確

    6. 認知・予測させる

    みんなでチェック項目を確認しましょう。

    勤務交代直後に手順の確認や注意すべき点などの安全に

    竹田綜合病院提供

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 83

    勤務交代直後に手順の確認や注意すべき点などの安全に関する短い話し合い(3分から5分くらい)を行なう。

  • インスリン 1mLは何単6. 認知・予測させる

    インスリン は何単位?

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 84

  • グリセリン浣腸実施時の6. 認知・予測させる

    グリセリン浣腸実施時の注意事項は?

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 85

  • ワン・ショットでやると危6. 認知・予測させる

    ワン ショットでやると危ない注射薬は何?

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 86

  • エラー対策の思考手順エラー対策の思考手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 87

    encounter probability detection damage

  • 7. 安全を優先させる

    安全優先の態度

    (1) 職業的正直(Professional Honesty)の実践

    – 安全のために「分らないことを分らない」と勇気を持って言う態度

    (2) 安全優先の価値観を持つ

    分からないことはやるな!聞け!

    分からないことは答えるな!

    分からないことはやるな!聞け!

    分からないことは答えるな!

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 88

    分からないことは答えるな!分からないことは答えるな!

  • 7. 安全を優先させる

    重要なことは管理職自ら参加すること!

    • 安全に関心のある会社かそうでないかはその組織の最高責任者が講演会に顔を出すかどうかで分かる(ある安全の専門家)。

    • 関心のない会社は、担当者だけが出席する。

    • 言い訳は 「工場長は 実は重要な会議があ言い訳は、「工場長は、実は重要な会議がありまして、、、」

    • これは、仕事の優先順位が安全について高くないことを行動で示しているないことを行動で示している。

    言葉ではなく 行動で示すこと言葉ではなく、行動で示すこと

    人は行動を見て判断する

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 89

    人は行動を見て判断する

  • 7. 安全を優先させる

    患者からのクレーム

    患者A:なんであの若い看護師は人の名前を何回も聞くのか 度聞いたらわかるだろも聞くのか!一度聞いたらわかるだろ!

    患者B:今度来たあの看護師は薬を持ってくる度に人の名前を聞く。あいつはバカか!人 名前を聞く。あ は

    病院全体で決められたことはみんなで守れ!病院全体で決められたことはみんなで守れ!

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 7. 安全を優先させる

    安全マニュアルは・・・ない?

    (1) 標準運転操作手順書(SOP)(Standard Operation Procedure)(S Op )

    (2) 緊急時運転操作手順書(EOP)(Emergency Operation Procedure )

    標準手順書を守れば安全が保証される

    ( g y p )

    標準手順書からの逸脱は極めて危険!標準手順書からの逸脱は極めて危険!

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    標準手順書からの逸脱は極めて危険!標準手順書からの逸脱は極めて危険!

  • 抗炎症剤と間違え筋弛緩剤を投与抗炎症剤と間違え筋弛緩剤を投与

    看護師Cが薬液を手にし、看護師Bが看護過程支援システムを見ながら、

    看護師B :「生食100mL1 瓶とサクシン100mg5mL2A div」

    アンプルに筋弛緩薬と記載されていたため、

    看護師BとC:「筋弛緩薬ってこんな使い方するんですね。」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 92注)この事例は、人間特性を説明するために作成した仮想事例です。

  • Two-Challenge-RuleTwo Challenge Rule-納得できるまで食い下がれ-

    研修医が内服薬を点滴投与するように指示を出した。

    看護師 内服薬を点滴投与するという指示はこれまで受けたこ看護師:内服薬を点滴投与するという指示はこれまで受けたことはありません。

    研修医:そのようにしろ、と指導医に言われた。研修医:そのようにしろ、と指導医に言われた。

    看護師:内服薬を点滴投与するということは、ミルクを血管に入れることと同じですよ。

    研修医は、看護師は指示の通りにやればいいんだ、という態度を見せたを見せた。

    看護師は納得できなかったために指導医に問い合わせた。すると、内服薬ではない別の薬を点滴投与するように研修医に言っ

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 93

    と、内服薬ではない別の薬を点滴投与するように研修医に言ったことが分かった。

  • Two-Challenge-RuleTwo Challenge Rule-納得できるまで食い下がれ-

    患者が検査のために看護補助員につれられてやってきた。造影剤を入れて撮影することという指示が書かれていた。

    患者にはルートが確保されていて、そこから造影剤を入れるのかな、と思った。しかし、これまでの経験からそのようなルートから入れたことはなか たら入れたことはなかった。

    そこで、病棟に問い合わせた。すると、病棟看護師が、「そのルートでお願いします」という返事が返ってきた しかし これまル トでお願いします」という返事が返ってきた。しかし、これまでのやり方と異なるので、忙しい状況だったが、検査室看護師は納得できなかったので直接主治医に連絡して、このルートでいいのかを問い合わせた。すると、主治医は、「それをやると副作用がある可能性がある」と答えた。危うく患者に害を及ぼすところだ た

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 94

    危うく患者に害を及ぼすところだった。

  • エラー対策の思考手順エラー対策の思考手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 95

    encounter probability detection damage

  • システムが目的を達成するための条件

    8. できる能力を持たせる

    システムが目的を達成するための条件

    2つの条件を満足しなければ2つの条件を満足しなければならない

    機械の品質保証– 機械の品質保証

    • 機械が設計された通りのパフォーマン通りのパフォ マンスが発揮できること

    – 人間の品質保証人間の品質保証

    • 機械を扱うのに必要な知識や技術要な知識や技術、心身状態

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 96

  • 8. できる能力を持たせる

    人間の能力に関する品質保証

    • 管理の重要性

    ( )タ ク遂行に必要な身体的機能チ ク(1)タスク遂行に必要な身体的機能チェック

    • 知覚能力のチェック

    (2)タスク遂行に必要な技能のチェック

    • パイロット:定期的な試験

    • 原子力発電所運転責任者:定期的な試験

    • 再訓練コース再訓練コ ス

    • ファミリー訓練

    など

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 97

    など、

  • 「シリンジポンプを一度でも使ったことの「シリンジポンプを 度でも使ったことのある人?」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 「シリンジポンプの操作マニュアルを読みまし「シリンジポンプの操作マニュアルを読みましたか?」

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 化学物質を体内に強制的に入れる機械

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    制的に入れる機械

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 問題問題

    クランプの機能を2つ答え

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    えよ。

  • クランプは何のため?クランプは何のため?

    直径直径

    クランプは 直径を検出しているクランプは、直径を検出している

    直径から外筒のプラスティックの厚さ×2を減じると、

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 103

    内径が分かる

  • 直径が分かると直径が分かると、

    シリンジのサイズが分かる

    直径直径

    サイズが分かるとサイズが分かると、

    1時間に動かすピストンの距離(高さ)が分かる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 104

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    シリンジポンプの動作原理の教育研修(自治医科大学附属病院提供)

  • ・シリンジポンプの原理をよく理解することがシリンジポンプの原理をよく理解することが事故を防止する。

    K H 教育から K Wh 教育・Know How教育から、Know Why教育へ

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 106

  • シリンジポンプの事故がなぜ多いか?シリンジポンプの事故がなぜ多いか?

    管理をしていないから

    1. ポンプの品質保証ポン の品質保証

    • メンテナンス基準

    メンテナンス実施者の能力管理• メンテナンス実施者の能力管理

    2. 使用者の品質管理

    – 教育制度

    – 技能のチェック

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    技能 ック

  • 8. できる能力を持たせる

    人の能力の基準を明確にして評価

    • 各病院においても、

    – たとえば、新人看護師が配属された時には、ある一定のレベルにあることを評価して実業務につくシステムが必要

    – 看護師の定着率は他の産業に比較すると低看護師 定着率は他 産業 比較する 低い

    – そこで働く人の能力の基準を明確にし それをそこで働く人の能力の基準を明確にし、それを評価し、保障しなければならない

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 108

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    シミュレータを使った緊急時蘇生訓練(自治医科大学附属病院提供)

  • 8. できる能力を持たせる

    読売新聞 2003年11月27日

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 110

    11月27日

  • エラー対策の思考手順エラー対策の思考手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 111

    encounter probability detection damage

  • 9. 自分で気づかせる

    自分のエラーに気づかせる

    (1)リチェック

    – 上からチェック、下からチェックらチ ック、下 らチ ック

    – ダブルチェック、トリプルチェック

    (2)指差呼称(2)指差呼称

    (3)セルフモニタリング

    くせをつける– くせをつける

    – エラー防止のABC

    A i Ob i 積極観察• Active Observation 積極観察

    • Basic Procedure 基本手順

    確認し 確認

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 112

    • Confirm and Confirm 確認して確認

  • 9. 自分で気づかせる

    確認すべきも を指 指し示し 声に出し 確認する 夜勤時確認すべきものを指で指し示し、声に出して確認する。夜勤時は患者の安眠を確保するために必ずしも発話する必要はない。指差呼称を実施しているということが他の人から見ても分るよ

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 113

    指差呼称を実施しているということが他の人から見ても分るようにすることが重要である。

  • 9. 自分で気づかせる

    指差呼称指差呼称

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 114

  • 9. 自分で気づかせる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 115指差呼称

  • 指差呼称 効果

    9. 自分で気づかせる

    指差呼称の効果

    %前 並んだ プ

    3.0

    ■押し

    ■時間

    目の前に並んだ5つのランプの点灯に対して、手元の5つの反応キーを押す課題

    2.0

    誤り

    遅れ200回づつ、10名に実施

    1 01.「指差呼称」、「指差」、「呼称」は、いずれも 何もしないよりミスが少な 1.0いずれも、何もしないよりミスが少ない。

    何も

    しない

    「指差」

    だけ

    「呼称」

    だけ

    「指差・呼

    2.「指差呼称」は「指差」よりもミスが少ない。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 116

    しない だけ だけ称」す

    る(鉄道総合技術研究所での実験)

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    指差呼称はエラー低減に有効である(自治医科大学附属病院提供)

  • 必ずコショウを入れよ!

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 118118

  • 45事故39 38

    %

    40事故

    幸運

    事前発見・訂正

    39 38

    30

    20

    1211

    10

    11

    0

    薬剤師に 看護師に医師の 薬剤師による調剤

    看護師による与薬

    複写医師の指示

    与薬プロセス

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 119

    与薬プロセス山内、山内著「医療事故」、朝日新聞社、2000、p.105のデータから作成

  • 63件

    8件 12.7%が薬剤師により発見され

    40

    45より発見され

    30 87.3%が看護師

    20

    55件 により発見された

    1048%発見

    0

    発見

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 120発見割合の内訳

  • 投薬プロセスにおける事故/エラー対策案投薬プロセスにおける事故/エラ 対策案

    • 医師

    – かなりの部分が看護師、薬剤師により発見さかなりの部分が看護師、薬剤師により発見されているという事実を利用する

    – 「人間は完全ではない」という前提「人間は完全ではない」という前提

    • 薬剤師による調剤

    看護師 され う事実を– 看護師により発見されているという事実を利用する

    • 看護師による与薬

    – エラー発見は自分でやるしかないという事実

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 121

    ラ 発見は自分でやるしかないという事実を受け入れ、対策を考える

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    ルートは手で触れながらチェックする(自治医科大学附属病院提供)

  • エラー対策の思考手順エラー対策の思考手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 123

    encounter probability detection damage

  • 10. 検出する

    チェックリストを使うことにより、操作や点検項目の脱落を防止することが期待できる。また、記憶に頼らないために認知

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 124

    する 期待 きる。ま 、記憶 頼らな 認知的負担が軽減される。

  • 10. 検出する

    「After Syringe Pump Set」 Check Listシリンジポンプ最終確認チェックリスト

    1.患者の名前 ( )チェック

    2 ル ト 空気無し ル トチ ク2.ルート 空気無し、ルートチェック

    3.コネクション 漏れ無し、流れチェック

    シ ジ ク ク 押 子固定 ク4.シリンジ クランク、押し子固定チェック

    5.薬剤 ( )チェック

    6.モード 流量モードセット

    7.流量 2.0ml/hセット

    シンリンジポンプチェック終了1分もかからない

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 125

    1分もかからない

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    チェックリストを用いて抜けがないかをチェックする

    (カレスサッポロ北光記念病院提供)

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)シリンジの押し子が正しくセットされないと動作しない

  • 10. 検出する

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 128武蔵野赤十字病院

  • 10. 検出する

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 129武蔵野赤十字病院

  • 10. 検出する

    フィルムが部屋ごとに管理されている。保管場所が間違うと背表紙のマークが他のものとズレているので間違って格納された を直ちに発見する とが きる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 130

    れたのを直ちに発見することができる。

  • 10. 検出する

    Maintenance Resource Management

    • 日本航空が2001年から実施

    全整備関係者5 500人対象• 全整備関係者5,500人対象

    • ヒューマンファクター関連の知識やチームパフォーマンスに関する知識を 講義やゲ ムなどを取り入れて行な てに関する知識を、講義やゲームなどを取り入れて行なっている。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 131

  • 10. 検出する

    ダブルチェック:人間だから確認する

    「君という人を信じないのではない。君が人だか君 う人を信じな のではな 。君 人だら信じないのだ。」

    松下泰士:「読む力」を磨こう、pp 4-5、船舶と安全、2005 5 海上自松下泰士:「読む力」を磨こう、pp.4 5、船舶と安全、2005.5.海上自衛隊横須賀海上訓練指導隊

    「あなたという人間」を信じないのではない。「あなたが人間」だから確認させて欲しい。「あなたという人間」を信じないのではない。「あなたが人間」だから確認させて欲しい。たが人間」だから確認させて欲しい。たが人間」だから確認させて欲しい。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 132

  • 10. 検出する

    患者の識別は多重にする

    ID失敗

    • 病棟で識別

    • 診療部門で識別診療部門で識別

    • 検査部門で識別

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 133

  • Finger Check List10. 検出する

    指に意味を持たせ、チェックリストとする。

    指の名称とリンクさせてチェックポイントを記憶する。

    Ri ht

    Right Client

    Right Route

    Right Drug

    Right Right Dose

    Time

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 134

  • Finger Check List

    10. 検出する

    指に意味を持たせ、チェックリストとする。

    指の名称とリンクさせてチェックポイントを記憶する。

    人指し指中に入れるルート

    薬指

    親は時間にう小児は量が大事

    るさい大事

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 135

  • エラー防止対策の思考手順エラー防止対策の思考手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 136

    encounter probability detection damage

  • 備える

    (1)物理的エネルギー緩和

    • 転落を予想しての安全帯

    • 衝突を予想してのシートベルトとエアバッグ

    • ぶつける事を予想してのラバークッションぶ ける事を予想してのラ クッション

    • 落とすことを予想しての安全ネット

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 137

  • 11. 備える

    (1)物理的エネルギー緩和

    • ベッドから落ちることを予想して、ベッドを低くする

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 138

  • 11. 備える

    (2)代替手段の準備

    • Aが失敗した時のために、Bの手段を用意しておくく

    – 通信手段が失敗した時、緊急呼び出し周波数を事前に決めておく

    – 連絡が失敗した時のために、時間と場所の指連絡 失敗した時 た 、時間 場所 指定を次の手段として決めておく

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 139

  • 11. 備える

    バッテリーバックアップ

    • 主電源が切れたときに、バッテリーがしばらくの間 機能を維持する間、機能を維持する

    – 輸液ポンプ標準装備• 標準装備

    – シリンジポンプ標準装備• 標準装備

    – 人工呼吸器

    オプ• オプション

    • 数分以内に対応処置をなければ、重篤な状況となる 能性がある

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 140

    状況となる可能性がある

  • 11. 備える

    (3)救助体制の整備

    • 失敗を予想しての救急救助体制

    – 急変患者の対応が主治医の専門能力を超えたと考えられた時、応援体制を整えておく

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 141

  • 11. 備える

    (4)保険

    • 金銭的損失に備える

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 142

  • 11. 備える

    (5)組織的対応

    • 社会的信用を失わないために、事故が起こった時にやるべき とを事前に決めておく時にやるべきことを事前に決めておく

    • リスクマネージメント

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 143

  • 記者会見 心得 箇条

    11. 備える

    記者会見の心得、10箇条

    第1条:ウソは禁物

    第2条:言えないことは「言えない」という

    第3条:知ったかぶりは禁物

    第4条:ミスリード的相槌をつつしむ

    第5条:逃げない・待たせない

    第6条:締め切り時間への配慮

    第7条:オフレコの活用

    第8条:資料は先手を打って配布する第 条 資料は先手を打 て配布する

    第9条:素直な陳謝

    第10条:解禁条件つき発表方式

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 144

    第10条:解禁条件つき発表方式

    佐々著「危機管理」1997より

  • KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    緊急連絡先を携行

    (自治医科大学附属病院提供)

  • 表1 ヒューマンエラー低減の考え方の階層性(4STEP/M )

    拡大防止システム

    (STEP Ⅰ)

    2. エラー拡大防止Mitigation

    (STEPⅡ) (STEP Ⅲ) (STEP Ⅳ)

    1. エラー発生防止Prevention

    システム安全のプロセス

    エラーや危険を伴う作業遭遇数を減らす

    エラー発生可能のあ

    各作業においてエラーをする確率を低減する

    多重のエラー検出策を設ける

    エラ に

    エラーに備える

    Minimum encounter Minimum probability Multiple detectionMinimum damage

    戦略的エラー対策の4M

    ブレーク ラ 発生可能のある作業や危険を伴う作業に遭遇しないよ

    うにする

    エラーを誘発しない環境にする

    エラーを誘発されないようにする

    エラーに気づく

    エラー発生を検出する仕組みにする

    物理的

    エラー発生に備える

    正しい自己

    ブレ クダウン

    ブレークダウン 物理的

    制約負担軽減

    (d)認知的負

    (e)身体的負

    (g)エラ

    (i)タスク遂

    実行判断

    (h)安全優先

    知覚検出 影響緩和

    (f)基準感覚

    (k)検出

    (l)影響緩和

    (c)物理的

    (a)作業の

    排除

    (b)危険の

    認知(予測)

    自己検出

    (j)エラ 発戦術的エ

    ダウン

    認知的負担軽減

    身体的負担軽減

    エラー予測

    タスク遂行能力の

    保持

    安全優先の判断

    基準感覚知覚能力の保持

    検出 影響緩和物理的制約

    作業の排除

    危険の排除

    (1)

    やめる

    (2)

    きな よう

    (3)

    わかり す

    (4)

    り すく

    (10)

    を検出する

    (11)

    備える

    (6)

    予測

    (7)

    安全優先の判

    (9)

    自分 気づ

    (8)

    能力を持

    エラー発見

    戦術的エラー対策の原理

    エラー対策の発想

    (5)

    知覚

    P-mSHELLのL-self以外の要素 L-self以外の要素L-self

    やめる(なくす)

    できないようにする

    わかりやすくする

    やりやすくする

    エラーを検出する エラーに備える予測させる

    安全優先の判断をさせる

    自分で気づかせる

    能力を持たせる

    策の発想手順

    P-mSHELL

    知覚させる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 146

  • エラー防止対策の思考手順エラー防止対策の思考手順

    1.やめ

    2.でき

    3.わか

    4.やり

    10.検

    11.備

    6.認知

    7.安全

    9.自分

    5.知覚

    8.できめ

    る(なく

    きないよ

    かりやす

    りやすく

    出する

    える

    知・予測さ

    全を優先

    分で気づエラー 事故

    覚能力を

    きる能力をく

    す)

    うにする

    すくする

    くする

    させる

    先させる

    づかせる

    発生事故発生

    を持たせる

    を持たせるる る る

    (1)Minimum encounter

    (2)Minimum probability

    (3)Multiple detection

    (4)Minimum damage

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 147

    encounter probability detection damage

  • 1 エラーや危険を伴う作

    表2 エラー対策4STEP/Mとエラー対策発想手順および事例

    4STEP/M エラー対策発想手順 具体的エラー対策例

    ・与薬を止める(医師は文献をよく読んで、その薬は本当に必要かどうかを検討すること)

    ・調合作業を止める(ダブルパックの使用)

    KAWANO Ryutaro 2004 (C)

    1.エラ や危険を伴う作業遭遇数を減らす

    当に必要かどうかを検討すること)・転記を止める(オーダリングシステムの導入、電子カ

    ルテ、カーボン紙の利用)

    ・つながらないようにする(手術室のガスの接続口、経腸栄養ラインの関連製品を輸液ラインとは物理的に接続が不可能にする)

    Minimum encounter

    ・危険な薬剤を病棟に置かない・選択組み合わせをやめる(ユニットドースシステム)・工程の省略(プレフィルドシリンジ)

    ・そろわないとできない(身長と体重を入力しないとオーダー確認されないというソフトウェアの仕組み)

    (2) できないようにする

    (1) やめる(なくす)

    2.各作業においてエラ をする確率を

    ・順番を書いておく(操作の順番がスイッチに貼り付けてあると操作が簡単になる)

    ・色分けしておく・手がかりをたくさんつける(薬箱のパッケージ)

    ・アイコン ・大きく書く・具体的な注意事項を必要な箇所に貼り付けておく・アフォーダンス(見ただけで分かるようにする)・音色を変える(警報の音色を変える)

    ・すべらないようにする(筋力作業の負担軽減にゴムのグリップつける)

    ・運ぶための道具(キャスターつきのワゴンやバスケットなど)

    楽な姿勢 きるようにする(取 手を ける)(4) やりやすくする

    (3) わかりやすくする

    ラーをする確率を低減する

    Minimum probability

    ・整理整頓(作業がやりやすくなるばかりでなく、異常の発見が容易になる)

    ・楽な姿勢でできるようにする(取っ手をつける)・両手を使えるようにする

    ・睡眠不足や二日酔いを避ける・適切な休息をとる(とらせる)・加齢による自分の能力の劣化をきちんと把握しておく

    ・人的チェックリストI’m safeの利用(Illness(病気)、Medication(服薬)、 Stress(ストレス)、Alcohol(飲酒)、Fatigue(疲労)および Emotion(感情)をチェックする)

    潜在的危険性 知覚訓練( (危険予知 ヒ マンエラ パタ ンの理解

    (5) 知覚させる

    (4) やりやすくする

    ・潜在的危険性の知覚訓練(KYT(危険予知トレーニング)やTBM(ツールボックスミーティング)など)

    ・ヒヤリハット事例の共有化

    ・ヒューマンエラーパターンの理解・ヒューマンファクター工学の知識獲得(人間行動の理解や

    ヒューマンマシンインタフェースの知識)

    ・職業的正直(Professional Honesty)・作業の中断をしない・決められた手順を省略しない

    基準を 確 す

    ・記憶の脆弱性を理解する(チェックリスト、を利用する、メモをとる、変換表)

    (・管理職自ら安全の重要性を行動で示す)

    個人への対

    (7) 安全優先の判断をさせる

    (6) 予測させる

    ・判断基準を明確にする

    ・基準以上の身体的機能を持つ・タスク遂行に必要な専門技能を維持する(基準を満た

    すものだけが業務に就くことができるような制度)

    ・リチェック(チェックを反対側からやる、時間を置いて ・エラー防止のABC(積極的観察Active ObservationのA、基本手順B i P d のB 多重の確認C fi

    対策

    (8) 能力を持たせる

    ・定期的な教育(シリンジポンプ、輸液ポンプ、人工呼吸器)

    3.多重のエラー検出策を設ける

    Multiple detection

    やる)・チェックのための指差呼称・使い方を習慣化する(つまむ、にぎるなど)

    基本手順Basic ProcedureのB、多重の確認Confirmafter ConfirmationのC)を暗記しておいて実行する

    ・視覚的に照合させる・正しい組み立てが出来ていない場合は幾何学模様が

    不自然になる表示・チームによるリカバリー

    ・ダブルチェック・チェックリスト・機械による検出する仕組みを組み込む・管理によって多重の異なったチェック体制を組む

    (10) エラーを検出する

    (9) 自分で気づかせる

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 148

    4.備える

    Minimum damage

    ・物理的な危険を小さくする(安全ネット、安全帯、ラバークッション)

    ・代わりの手段を準備しておく・失敗を予想しての救急救助体制・保険に入る

    ・社会的信用を失わないために、事故が起ったときにやるべきことを事前に組織としての対応を決めておく

    (11) 被害に備える

  • ヒューマンエラー対策の発想手順

    1 エラ 誘発要因の積み木モデル

    ヒュ マンエラ 対策の発想手順

    1.エラー誘発要因の積み木モデル

    2.エラーの発生防止とエラーの拡大防止

    3.戦略的エラー対策の考え方

    4.戦術的エラー対策の発想手順4.戦術的 ラ 対策の発想手順

    5.エラー対策発想手順マトリックス

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • P-mSHELLモデルと11段階のエラー対策発想手順

    エラー対策の発想手順

    やめる

    出来ない

    分りや

    やりや

    エラーを

    予測

    安全

    自分

    備える

    知覚

    能力

    人間の能力を変える

    P-mSHELLモデル

    (なくす)

    いようにする

    やすくする

    すくする

    を検出する

    測させる

    を優先させ

    分で気づかせ

    る覚させる

    力を持たせ

    m(マネージメント)風土、組織を変える

    S(ソフトウ ア)

    P mSHELLモデル )るるる るせ

    るせる

    S(ソフトウェア)手順書、手順、表示を変える

    H(ハードウェア)機械や設備を変える機械や設備を変える

    E(環境)作業環境を変える

    L-L(周りの人)人による支援体制を整える

    P(患者)患者に協力してもらう

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

    順番に対策を考えていくとモレが少なくなる

  • P-mSHELLモデルと11段階の発想手順P-mSHELLモデルと11段階の発想手順

    1 タスクそのものを“なくす やめる”ことを考える1.タスクそのものを なくす、やめる ことを考える。

    自動化する、タスクを別なところに配分するなど

    2 “できないようにする”ことを考える2. できないようにする ことを考える。

    ハードウェア、ソフトウェアによる表示を見やすくする

    複雑な手順を簡単にするなど複雑な手順を簡単にするなど

    3.以下、順番にマトリックスごとに考えてみる。

    ただし、これは分類が目的ではない。

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 自由な発想→具体的対策自由な発想→具体的対策

    ・自由な発想によりエラー対策を出して 現実の制・自由な発想によりエラー対策を出して、現実の制約条件を考え、実際に採用する対策を決定

    常に科学的視点に基づくこと・常に科学的視点に基づくこと

    →データに基づいて実施

    →情報や学問的知見

    ・対策は理にかなっていない限りうまくいかない。対策は理にかなっていない限りうまくいかない。

    →人の心の機能をも考慮した対策

    KAWANO Ryutaro 2010 (C)

  • 2010Ver1.0医療安全管理研修

    医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ医療安全へのヒューマンファクターズアプローチ

    エラ 対策の発想手順エラ 対策の発想手順エラー対策の発想手順エラー対策の発想手順(1) やめる

    (2) ラ をさせない り込まれない(2) エラーをさせない、つり込まれない

    (3) エラーを検出する

    (4) 備える

    自治医科大学医学部

    (4) 備える

    メディカルシミュレーションセンター

    センター長医療安全学教授 河野龍太郎

    KAWANO Ryutaro 2010 (C) 153

    医療安全学教授 河野龍太郎