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地球温暖化が作物生産に与える影響について地球温暖化が作物生産に与える影響について
地球温暖化地球温暖化⇒⇒農業生産への影響評価農業生産への影響評価評価の過程で重要な視点・問題点評価の過程で重要な視点・問題点
筑波大学生命環境科学研究科筑波大学生命環境科学研究科 林林 陽生陽生[email protected]@atm.geo.tsukuba.ac.jp
資 料 No.2
☆多様なトレードオフ効果の考慮気温上昇の影響が好適な作物と好適でない作物がある。⇒リンゴとミカン
☆複合的な効果の考慮水稲害虫の世代交代数が増すが,水田に水稲がなければ被害はない。⇒田植え時期と害虫の発生の同期
☆危険(負の影響)の分散温暖化時でも冷害が発生する。耐暑性や耐乾性につよい品種を広域で栽培すると,冷夏で被害が拡大。⇒韓国では1980年の冷害で多収性品種が壊滅
今後重要になる温暖化影響評価の視点
現在
6℃以下適温域14℃以上
6℃以下適温域14℃以上
2060年代
リンゴ栽培に適した年平均気温(6℃~14℃)の地帯の移動りんご栽培に適した年平均気温6℃~14℃地域は徐々に北上し、2040年代には東北南部の平野部が、2060年代には東北中部の平野部が14℃以上となる。
果樹研究所(杉浦ら)
対照 17℃
17℃ 22℃
21℃ 27℃
図1 前期に温度処理したリンゴ. 図2 後期に温度処理したリンゴ.
6℃以下
適温域
14℃以上
適地
より高温の地域
より低温の地域
適地
より高温の地域
より低温の地域
現在
ウンシュウウミカン栽培に適した年平均気温(15℃~18℃)の地帯の移動現在の主産地は左図のように西南暖地の沿岸部だが、2040年代には関東及び北陸の平野部全域が15℃以上となり、2060年代には南東北の沿岸部まで広がる。一方、このころには現在の栽培適地がほぼ18℃以上の「より高温の地域」になる。
果樹研究所(杉浦ら)
2060年代
CCSR 2060年代
現在
危険地帯:北海道,関東,近畿など
危険地帯:東北,北陸,関東,近畿など
6月1日頃における世代数の境界地域が危険地域(成虫が存在するため)
(田植え直後にヒメトビウンカ成虫が飛来して感染)
0 世代
1 世代
2 世代
3 世代
4 世代
5 世代以上
イネ縞葉枯病
(山村:農業環境技術研究所, 2001)
現在から2060年代への変化(林ほか、2001)
-40 -30 -20 -10 0 +10 +20 +30 +40 -200 -150 -100 -50 0 +50 +100 +150 +200
最適出穂日の変化(日) 潜在的収量の変化(kg/10a)
早まる
遅れる
減少増大
Fig. 1 Changes of paddy rice yield (unhulled)
2
3
4
5
6
7
8
1961
1964
1967
1970
1973
1976
1979
1982
1985
1988
1991
1994
1997
2000
2003
Year
Yield (t/ha)
JapanS.KoreaTaiwanC.China
←19
80
←19
93
2003→
South Korea
0
1
2
3
4
5
6
71960
1962
1964
1966
1968
1970
1972
1974
1976
1978
1980
1982
1984
1986
1988
1990
1992
1994
Year
Paddy Rice Production (million ton)
Total Production
Tongil v.
75 88 100 113 125 138
50
45
40
35
30
25
20
0 250 500 750 1000 1250
Changsha
Guangzhou
NanchangChengdu
Beijing
Shenyang
Harbin
Hefei
75 88 100 113 125 138
50
45
40
35
30
25
20
0 250 500 750 1000 1250
Changsha
Guangzhou
NanchangChengdu
Beijing
Shenyang
Harbin
75 88 100 113 125 138
50
45
40
35
30
25
20
0 250 500 750 1000 1250
Changsha
Guangzhou
NanchangChengdu
Beijing
Shenyang
Harbin
Changsha
Guangzhou
NanchangChengdu
Beijing
Shenyang
Harbin
Hefei
図1 コメ栽培地域の分布と解析対象地点カラースケールは栽培面積率、○は解析対象地点を示す。
図1 コメ栽培地域の分布と解析対象地点カラースケールは栽培面積の指標、○は解析対象地点を示す。
中国において農村実行生産体制の改革が始まった1980年代以降、全国の水稲栽培面積は減少傾向にある。 1980年~2002年の23年間で、555.4万hm2の減少(-16.5%)となっている。地域別にみると、特に南方稲区で減少(743.2万hm2、-23.4%の減少)する一方、北方稲区では増大(1999年には最大で395.2万hm2、92.5%の増加)となっている。(「黒龍江省のコメ市場と生産に関する問題」矯 江、許顕濵 編、
2004より)
1.中国の水稲栽培面積は減少しているが、北方稲区では顕著に増加している。
中国の稲作で何が起こっているか?
水稲収量と気温偏差の変化
y = 0.0106x - 21.113
R2 = 0.4127
y = 2.8429x - 5179.6
R2 = 0.8995
0
100
200
300
400
500
600
1883
1888
1893
1898
1903
1908
1913
1918
1923
1928
1933
1938
1943
1948
1953
1958
1963
1968
1973
1978
1983
1988
1993
1998
2003
年
収量(kg/10a)
-1.5
-1
-0.5
0
0.5
1
1.5
年平均気温の偏差(℃)
気温の上昇
大気中の二酸化炭素濃度の上昇
人間活動化石エネルギーを消費
特に夜間の気温が上昇する相対的に呼吸が増加エネルギーを消費するため生育量が抑制される
生育が促進する短い期間で成長可能
光合成の効率が向上し生育が促進する
害虫の増加耕地の荒廃雑草の繁茂
栽培可能な期間が拡大栽培可能な地域が北上同時に高標高地域へ
??
複合的な効果高温による生育障害が起こり易くなる肥料の効果が減少する
原因
負の効果
正の効果
正の効果
負の効果
温暖化の影響は負の効果
降水量の変動
地域により異なる効果
気温と潜在的収量の関係
林ほか,2002
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
1.4
1.6
10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 22.0 24.0 26.0 28.0 30.0
出穂後40日間の平均気温 (℃)
Y/Sr (g/MJ)
北海道日本海側
北海道太平洋側
東北日本海側
東北太平洋側
北陸
甲信
関東
東海・近畿
中国
四国
九州
早期作
Y/Sr = 1.279-0.01916(21.91-T)2
北海道・東北
北陸・関東・近畿・東海
早期作地帯
温暖化→
収量
/日射量
21.9 ℃
中国・四国・九州
(林ほか, 2001)
ハイブリッド米
0
5
1 0
1 5
2 0
2 5
3 0
石狩
上川
下北
中部
最上
下越北
加賀
南信
北部
平坦北部
神奈川
西部
伊賀
県北
東部
北部
東予
北九州・
東南部
県南
広域沿海
薩摩半島
八重山
移植時気温(℃)
1 0 0 0
1 2 0 0
1 4 0 0
1 6 0 0
1 8 0 0
2 0 0 0
2 2 0 0
2 4 0 0
石狩
上川
下北
中部
最上
下越北
加賀
南信
北部
平坦北部
神奈川
西部
伊賀
県北
東部
北部
東予
北九州・豊前
東南部
県南
広域沿海
薩摩半島
八重山
作 柄表示地帯
積算温度(℃)
北 海道 東北甲信越 関東以西 早 期
(石郷岡・林,2002)
・移植時期の気温は北(の品種)ほど低い
・生育に必要な積算温度は、北ほど短期間で達成する
・温暖化に伴う気温上昇は、北ほど移植日を早めることが可能になる