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117 公共工事の入札結果に関する分析(平成30年度) -国土交通省入札結果データの年度・工事規模別等から見た推移- 審議役 山口 浩史 1. 調査の概要 本研究は、「公共工事の入札結果に関する考察(平成29年度 その1)」(建築コスト研究年報第 17号)に引き続き、国土交通省のホームページに公表された同省の地方整備局等が発注した工 事の入札結果を分析したものである。分析は平成20~30年度に契約された工事を対象として行っ た。 2. 調査対象データの概要 国土交通省がホームページに公表している入札結果のデータは表1 に示すように、部局名、工 事名、入札日、契約日、工種区分、入札方式、総合評価の有無、入札業者名、予定価格、調査 基準価格、評価点(基礎点+加算点)、入札結果(金額・評価値)、見積金額、備考(落札)で、各 地方整備局等毎に契約月別のデータが公表されている。なお、疑義のあったデータのうち、評価 点(基礎点+加算点)欄で、本来、予算超過、辞退・不参加等の場合に空欄とすべきであるにもか かわらず、点数の記載があったデータ(例:予算超過、辞退・不参加等の場合)については一律点 数を削除し、その他の疑義データについては、発注者に確認を行い修正して分析を行った。 3.工事件数 1) 年度別の件数 年度別の工事件数を図1 に示す。工事件数 は平成20、21年度は12,600件を超えていたが、 平成22~24年度は10,000件台に減少した。平 成25年度は12,369件まで増加したが、その後 減少し、平成28年度には9,722件に再び上昇 し、平成30年度は7,973件と前年度に比べ662 件の減少となった。 2) 工事規模別の件数比率 工事規模別の件数の構成比率を図2 に示す。工事規模は工事の発注予定価格を基準として、 6.0億円以上、6.0億円未満3.0億円以上、3.0億円未満0.6億円以上、0.6億円未満、の4つのラン 図1 年度別の工事件数 表1 入札結果の公表データの例 ※入札業者名は仮称、項目の一部は省略金額 評価値 金額 評価値 東北地方整備局 青森河川国道事務所 造道地区維持補修工事 2018/3/12 2018/4/2 H30.4.1~H31.3.31 維持修繕工事 一般競争入札(拡大型) A 224,240,000 201,410,000 162.0 219,000,000 73.9726 落札 東北地方整備局 青森河川国道事務所 岩木川下流維持修繕工事 2018/3/2 2018/4/2 H30.4.1~H32.3.31 維持修繕工事 一般競争入札(拡大型) B 73,340,000 62,040,000 155.0 74,060,000 札幌開発建設部 岩見沢河川事務所 石狩川改修工事の内 北村遊水地北都地区整地外工事 2018/4/4 2018/4/9 一般土木 一般競争入札(拡大型) C 14,890,000 13,120,000 148.5 13,200,000 1125.0000 落札 札幌開発建設部 岩見沢河川事務所 石狩川改修工事の内 石狩川左岸掘削外工事 2018/4/11 2018/4/17 一般土木 一般競争入札(拡大型) D 17,920,000 15,820,000 149.8 16,000,000 936.2500 落札 札幌開発建設部 岩見沢河川事務所 石狩川改修工事の内 石狩川左岸掘削外工事 2018/4/11 2018/4/17 一般土木 一般競争入札(拡大型) 17,920,000 15,820,000 148.5 15,880,000 935.1385 調査基準価 (税抜き) 基礎点 加算点 入札結果 見積金額 (税抜き) 備考 1回目 2回目 工種区分 入札方式 総合 評価 有無 入札業 者名 予定価格 (税抜き) 部局名 工事名 入札年月日 契約年月日 工期

公共工事の入札結果に関する分析(平成30年度)...119 入札方式別の件数比率を図5に示す。各年度とも一般競争入札(WTO対象外)が最も多く、構

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117

公共工事の入札結果に関する分析(平成30年度)

-国土交通省入札結果データの年度・工事規模別等から見た推移-

審議役 山口 浩史

1. 調査の概要

本研究は、「公共工事の入札結果に関する考察(平成29年度 その1)」(建築コスト研究年報第

17号)に引き続き、国土交通省のホームページに公表された同省の地方整備局等が発注した工

事の入札結果を分析したものである。分析は平成20~30年度に契約された工事を対象として行っ

た。

2. 調査対象データの概要

国土交通省がホームページに公表している入札結果のデータは表1に示すように、部局名、工

事名、入札日、契約日、工種区分、入札方式、総合評価の有無、入札業者名、予定価格、調査

基準価格、評価点(基礎点+加算点)、入札結果(金額・評価値)、見積金額、備考(落札)で、各

地方整備局等毎に契約月別のデータが公表されている。なお、疑義のあったデータのうち、評価

点(基礎点+加算点)欄で、本来、予算超過、辞退・不参加等の場合に空欄とすべきであるにもか

かわらず、点数の記載があったデータ(例:予算超過、辞退・不参加等の場合)については一律点

数を削除し、その他の疑義データについては、発注者に確認を行い修正して分析を行った。

3.工事件数

1) 年度別の件数

年度別の工事件数を図1に示す。工事件数

は平成20、21年度は12,600件を超えていたが、

平成22~24年度は10,000件台に減少した。平

成25年度は12,369件まで増加したが、その後

減少し、平成28年度には9,722件に再び上昇

し、平成30年度は7,973件と前年度に比べ662

件の減少となった。

2) 工事規模別の件数比率

工事規模別の件数の構成比率を図2に示す。工事規模は工事の発注予定価格を基準として、

6.0億円以上、6.0億円未満3.0億円以上、3.0億円未満0.6億円以上、0.6億円未満、の4つのラン

図1 年度別の工事件数

表1 入札結果の公表データの例 (※入札業者名は仮称、項目の一部は省略)

金額 評価値 金額 評価値

東北地方整備局 青森河川国道事務所 造道地区維持補修工事 2018/3/12 2018/4/2 H30.4.1~H31.3.31 維持修繕工事 一般競争入札(拡大型) 有 A 224,240,000 201,410,000 162.0 219,000,000 73.9726 落札

東北地方整備局 青森河川国道事務所 岩木川下流維持修繕工事 2018/3/2 2018/4/2 H30.4.1~H32.3.31 維持修繕工事 一般競争入札(拡大型) 有 B 73,340,000 62,040,000 155.0 74,060,000

札幌開発建設部 岩見沢河川事務所 石狩川改修工事の内 北村遊水地北都地区整地外工事 2018/4/4 2018/4/9 一般土木 一般競争入札(拡大型) 有 C 14,890,000 13,120,000 148.5 13,200,000 1125.0000 落札

札幌開発建設部 岩見沢河川事務所 石狩川改修工事の内 石狩川左岸掘削外工事 2018/4/11 2018/4/17 一般土木 一般競争入札(拡大型) 有 D 17,920,000 15,820,000 149.8 16,000,000 936.2500 落札

札幌開発建設部 岩見沢河川事務所 石狩川改修工事の内 石狩川左岸掘削外工事 2018/4/11 2018/4/17 一般土木 一般競争入札(拡大型) 有 E 17,920,000 15,820,000 148.5 15,880,000 935.1385

調査基準価格

(税抜き)

基礎点+

加算点

入札結果見積金額(税抜き)

備考1回目 2回目工種区分 入札方式

総合評価の

有無

入札業者名

予定価格(税抜き)

部局名 工事名 入札年月日 契約年月日 工期

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クに区分している。(以下、「6億円~工事」「3~6億円工事」「0.6~3億円工事」「~0.6億円工事」

とする。)

工事規模別の件数の構成比では6億~工事は

1.4~3.0%の範囲にあり、平成30年度は2.3%

(181件)であった。3~6億円工事は2.9~6.8%の

範囲で、平成30年度は5.6%(444件)と前年度か

ら 0.7 % 減 少 し た 。 0.6 ~ 3 億 円 工 事 は 58.3 ~

67.3%の範囲で、工事件数の構成比は各年度で

最も高く、平成30年度は67.1%(5,352件)であっ

た。~0.6億円工事は23.8~36.5%の範囲で、平

成30年度は25.0%(1,996件)であった。

3) 工種別の件数比率

工種別の件数の構成比率を図3に示す。各年度

とも一般土木の割合が最も多く、42.6~47.0%を占

めている。平 成 30年 度 の一 般 土 木 の構 成 比 は

44.5%であった。

維持修繕は19.7~24.2%を占め、平成30年度は

23.4%であった。

図3から建築、電気、暖冷房の3工種について抜

粋した結果を図4に示す。なお、これらの工種は官

庁営繕関係の工事だけではなく、例えば、電気に

ついては道路、トンネルの照明などの工事も含ま

れている。

建築、電気、暖冷房の構成比の合計は平成20

年度の9.3%(1,172件)が平成30年度には6.3%

(501件)に減少している。

なお、平成30年度の官庁営繕関係の工事の件

数は188件であった。

4) 入札方式別の件数比率

図6 工種別の指名競争入札の件数構成比 図5 年度別・入札方式別の件数比率

図4 工種別(建築・電気・暖冷房)の件数比率

図3 年度別・工種別の件数比率

図2 年度別・工事規模別の件数比率

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入札方式別の件数比率を図5に示す。各年度とも一般競争入札(WTO対象外)が最も多く、構

成比率は概ね95%前後で、平成30年度は94.1%であった。

一般競争(WTO対象)の件数構成比は1.2~2.6%で、件数では平成25年度が296件(2.4%)と

最も多く、平成22年度が122件(1.2%)と最も少ない。平成30年度は158件(2.0%)であった。

工種別の指名競争入札の件数構成比を図6に示す。全体平均の件数構成比は平成20年度が

3.1%と最も多く、その他の年度は0.6~1.2%の範囲にあった。指名競争入札の件数構成比を建

築と一般土木で比較すると、建築工事の平均値は9.2%で、一般土木の平均値の0.7%に対して、

大幅に高い値となっていた。特に平成30年度は建築が10.7%に対して一般土木は0.6%と大きな

差があった。また、平成30年度の61件の指名競争入札工事のうち、官庁営繕関係の件数が21件

を占めていた。

5) 地域別の件数

地域別の工事件数は表2に示

すとおりで、1年度あたりの工事

件数の平均値は北海道が1,747

件/年(17.1%)で最も多く、九州

が1,399件/年(13.7%)と続き、

以下関東、東北、中部、近畿と

なっている。

6) 工事予定価格の合計

年度別の予定価格の合計と、落札価格の合

計に対する比率を図7示す。予定価格の合計は

平成25年度の23,203億円が最も多く、平成22

年度の13,235億円が最も少なく、年度ごとの差

が大きい。平成30年度は14,664億円で平均値

17,175億円を下回っている

落札価格の合計に対する比率は、平成22年

度の0.890から平成30年度の0.927まで増加の

傾向が続いている。

工事1件あたりの予定価格の平均値を図8に

示す。平成22年度の129.6百万円/件が最も小

さく、平成26年度は197.5百万円/件と最大とな

り、平成30年度は183.9百万円/件であった。

図8 工事1件あたりの予定価格

図7 予定価格合計と落札価格合計との比率

表2 地域別・年度別工事件数

北海道 東北 関東 北陸 中部 近畿 中国 四国 九州 官庁営繕 合計

H20 2,150 1,484 1,856 938 1,309 1,323 1,120 648 1,764 24 12,616

H21 2,134 1,592 1,674 1,043 1,432 1,200 1,073 628 1,858 30 12,664

H22 1,806 1,305 1,345 821 1,126 1,005 944 558 1,391 12 10,313

H23 1,619 1,444 1,467 850 1,240 1,084 912 549 1,340 19 10,524

H24 1,529 1,344 1,306 752 1,258 1,099 872 532 1,473 14 10,179

H25 2,115 1,479 1,552 1,094 1,463 1,362 979 661 1,650 14 12,369

H26 1,647 1,124 1,242 765 1,107 1,047 830 515 1,124 21 9,422

H27 1,427 966 1,100 638 997 802 737 463 1,122 12 8,264

H28 1,777 1,256 1,176 766 1,100 885 761 545 1,437 19 9,722

H29 1,583 1,080 1,063 682 988 834 741 525 1,127 12 8,635

H30 1,431 646 945 648 1,016 828 851 492 1,105 11 7,973

計 19,218 13,720 14,726 8,997 13,036 11,469 9,820 6,116 15,391 188 112,681

平均値 1,747 1,247 1,339 818 1,185 1,043 893 556 1,399 17 10,244

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7) 工事規模別の工事予定価格の合計額比率

工事規模別の工事予定価格の合計額の比率

を年度別に示したのが図9である。6億円~工事

は件数の構成比では1.4~3.0%の範囲である

が、予定価格の合計額では19.4~32.4%を占

め、平成30年度は28.9%であった。

また、0.6~3億円の工事は、工事件数、予定

価格合計額とも、各年度とも過半を占めている。

8) 年度別の調査基準価格率と落札率

調査基準価格の算出方式は表3に示すように

変化している。なお、本稿では調査基準価格を

予定価格で除した値を「調査基準価格率」とい

う。

調査基準価格の合計を予定価格の合計で除

した値および落札価格の合計を予定価格の合

計で除した値の年度別の変化を図10に示す。

調査基準価格率の平均値は調査基準価格

の算出方法の改定に合わせて増加し、平成30

年度は0.897であった。

平成22~30年度の調査基準価格率の平均

値と落札率の平均値の相関係数は0.935で高い

相関関係がある。

4.入札参加者数

本稿の入札参加者数に関する分析では、入札結果第1回目の欄に「辞退」「不参加」「無効」「指

名取消」と記載された者、および「入札(見積)金額に記載がない者」を除いている。

1) 年度別の入札参加者数

年度別の入札参加者数の合計と工事1件あ

たりの平均値を図11に示す。入札参加者数の

合計は平成20年度の64,031者から概ね減少の

傾向を示し、平成30年度は29,724者となった。

工事1件あたりの平均値は平成22年度の5.7者/

件が最も多く、平成25年度に向けて低下し、平

成27年度には5.3者/件まで増加したが、平成30

年度は3.7者/件で最も低くなった。

~H19 H20 H21 H23 H25 H28 H29

2/3~8.5/10

直接工事費 1.0 0.95 0.95 0.95 0.95 0.95 0.97

共通仮設費 1.0 0.90 0.90 0.90 0.90 0.90 0.90

現場管理費 0.2 0.60 0.70 0.80 0.80 0.90 0.90

一般管理費 0 0.30 0.30 0.30 0.55 0.55 0.55

乗数

年度

範囲(+予定価格) 予定価格の 7/10~9/10

計算式

×

上記合計額 ×(1+消費税率)

図9 工事規模別の予定価格合計額の比率

図11 年度別の入札参加者数

図10 年度別の調査基準価格率・落札率

表3 調査基準価格の算出式の変化

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2) 辞退・不参加・無効の者数

年度別の「辞退・不参加」と「無効・その他」の

者数とその構成比を図12に示す。

辞 退・不 参 加 の構 成 比 の平 均 値は11.2%

で、平成25年度の15.1%が最も高く、平成30年

度は10.3%であった。

無効・その他の構成比の平均値は13.0%で、

平成20年度(3.9%)から平成23年度(15.3%)ま

では大きく増加し、平成24年度以降は微増傾

向にあり、平成30年度は16.3%であった。

入札方式別の「辞退・不参加」と「無効・その他」

の構成比を図13に示す。辞退・不参加の構成比

は、一般競争入札(WTO対象・WTO対象外)では

平成29年度の6.1%から平成30年度の6.9%に若干

増 加 し た 。 指 名 競 争 入 札 で は 平 成 29 年 度 は

82.8%、平成30年度は81.7%と非常に高い構成比

となっている。

無効・その他の構成比は、一般競争入札(WTO

対象・WTO対象外)では平成29年度は16.2%、平

成30年度は17.1%を占めていた。指名競争入札では平成29年度は1.7%、平成30年度は1.5%で

構成比は低い。

3) 工事規模別の入札参加者数

工事規模別に工事1件あたりの入札参加者数

の平均値の年度別推移を図14に示す。

6~億円工事は平成22年度の14.1者/件が最

も多く、その後は減少傾向を示し、平成30年度は

8.9者/件となった。

3~6億円工事は平成22年度の9.5者/件が最

も多く、その後平成25・26年度には5.6者/件まで

減少し、平成27年度は6.8者/件に増加したが、

平成30年度は4.8者/件となった。

0.6~3億円工事は平成22年度の6.6者/件が最も多く、平成25年度には4.2者/件まで減少し、

平成27年度は6.0者/件に増加したが、平成30年度は4.0者/件で最も低い値となった。

~0.6億円工事は平成20年度の3.8者/件から平成26年度の2.4者/件まで減少し、平成27年度

は3.0者/件に増加したが、平成30年度は2.3者/件で最も低い値となった。

各年度とも工事規模が大きいほど入札参加者数が多い。また、平成22年度以降は入札参加者

数が減少傾向を示していると言える。

図14 規模・年度別の平均入札参加者数

図13 入札方式別の辞退等の者数の構成比

図12 年度別の辞退等の者数の構成比

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4) 工種別の入札参加者数

工事件数が多い13の工種の平均入札参加者

数を図15に示す。

全工事の平均値が4.7者/件であるのに対し、

鋼橋上部工事、PC工事、一般土木工事などの参

加者数は多く、電気設備工事、建築工事、暖冷

房衛生設備工事の参加者数はやや少ない。

5) 地域別の入札参加者数

地域別の平成20年度~平成30年度の工事1件

あたりの入札参加者数を図16に示す。

全国の平均値4.71者/件に対して、九州は1.13

者/件、中部は0.18者/件、北海道は0.08者/件、近

畿は0.06者/件多い。その他の地域は平均を下回

り、中国は0.72者/件、北陸は0.71者/件、四国は

0.43者/件少ない。

6) 入札方式別の入札参加者数

一般競争入札(WTO対象)、一般競争入札(W

TO対象外)および指名競争入札の入札方式別に

年度別の工事1件あたりの入札参加者数を図17に

示す。

一般競争入札(WTO対象)は平成22年度の参

加者数が15.1者/件と最も多く、その後は減少傾向

を示し、平成30年度は9.1者/件になった。一般競

争(WTO対象外)も平成22年度の参加者数が5.6

者/件と最も多く、その後平成25年度まで減少したものの平成26・27年度は前年度より増加したが、

平成30年度は3.7者/件となり最も低くなった。

3方式の参加者数を比較すると、各年度とも一般競争入札(WTO対象)が最も多く、指名競争

入札、一般競争入札(WTO対象外)の順になっている。

7) 一者入札の工事件数の割合

入札参加者が1者のみの工事の件数の割合を

工事規模・年度別に示したのが図18である。なお、

随意契約のデータは集計から除外している。

各規模とも平成22年度の値が最も小さく平成25

年度にかけて増加の傾向を示し、その後は減少の

傾向を示していたが、平成29・30年度は6億円~

工事以外は各規模とも前年度より増加した。

図16 地域別の平均入札参加者数

図18 規模・年度別の1者入札の比率(随契を除く)

図15 工種別の平均入札参加者数

図17 入札方式別・年度別の平均入札参加者数

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工事規模が小さくなるほど1者入札の割合が高くなる傾向を示している。

5 入札率の比較

本稿では入札参加者の入札金額を予定価格で除した値を「入札率」という。また、本稿では入

札率が3.0を超えるデータ42件は異常値として分析から除外している。

1) 年度別の入札率

入札率の各年度の平均値、中央値、標準偏

差を図19に、年度別の入札率の構成比を図20に

示す。

入札率の平均値は平成20~24年度にかけて

低下し、平成24~26年度は上昇し、平成27年度

には低下したが、平成28年度からは上昇した。

標準偏差は平成20年度から平成26年度まで

減少傾向にあり、その後は安定している。

また、図20に示すように、各年度の入札率の構

成比の最頻値は、平成30年度は入札率0.90(「0.895≦入札率<0.905」の範囲を示す(以下共通))

に24.8%、平成26年度は入札率0.89に17.3%、平成23年度は0.87に11.8%の入札が集中してい

る。なお、平成21・22・24・25・27・28・29年度の表示は省略している。(以下共通)

分散分析の結果、「入札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,529,878)

=241.9,p<0.05)。その後の多重比較の結果は表4に示すとおりである。

2) 工事規模別の入札率

入札率の平均値の年度別変化を工事規模別

に示したのが図21である。平成20、21年度は工

事規模が大きくなるほど入札率の平均値が小さく

なる傾向にあったが、3億円以上の工事は、入札

率の平均値が年々上昇し、過去4年間は~0.6億

円の工事を除きほとんど差がなくなってきた。

工事規模別の入札率の構成比は図22に示す 図21 年度別・工事規模別の入札率の平均値

図20 年度別の入札率の構成比

図19 年度別の入札率の平均値・中央値・標準偏差

表4 年度別の入札率の等質グループ

1 2 3 4 5

H24 47,505 0.930

H27 43,760 0.933

H23 57,239 0.933

H22 57,863 0.934

H25 49,295 0.939

H21 61,395 0.940

H28 43,496 0.941

H26 40,628 0.946

H29 35,028 0.946

H20 64,016 0.948

H30 29,654 0.948

有意確率 1.000 0.864 0.072 1.000 1.000

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

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124

とおりである。分散分析の結果、「入札率に工事規模間の差はない」という帰無仮説は棄却された

(F(3,529,878)=5679.0,p<0.05)。その後の多重比較(表5)では、各規模ごとに分類された。

以下では工事規模別に入札率の年度間の差について分析を行う。

① 6億円~工事

6億円~工事について年度別の入札率の構成比を示したのが図23である。構成比率の最頻値

は、平成20年度が0.85で10.9%、平成23年度が0.88で23.7%、平成26年度が0.89で28.8%、平成

30年度は0.90で39.6%であった。

分散分析の結果、「入札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,27,375)

=357.1, p<0.05)。その後の多重比較(表6)の結果では、入札率の平均値は概ね年度ごとに上昇

し,平成30年度が最も高いと言える。

② 3~6億円工事

3~6億円工事について年度別の入札率の構成比を示したのが図24である。構成比率の最頻

値は、平成20年度が0.85で9.4%、平成23年度が0.87で31.5%,平成26年度が0.89で36.6%、平

成30年度は0.90で44.5%であった。

図22 工事規模別の入札率の構成比

表5 工事規模別の入札率の等質グループ

1 2 3 4

6億円~ 25,762 0.905

3~6億円 32,864 0.909

0.6~3億円 344,674 0.936

~0.6億円 96,871 0.968

有意確率 1.000 1.000 1.000 1.000

工事規模 度数α= 0.05 のサブグループ

図23 6億円~工事の年度別の入札率の構成比

表6 6億円~工事の年度別入札率の等質グループ

1 2 3 4 5 6 7 8

H20 3,048 0.879

H21 2,830 0.885

H22 1,982 0.890

H24 2,537 0.897

H23 3,254 0.901

H25 3,072 0.909

H27 2,234 0.921

H26 2,513 0.926

H29 2,489 0.928

H28 1,803 0.930

H30 1,614 0.938

有意確率

1.000 1.000 1.000 0.251 1.000 1.000 0.079 1.000

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

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125

分散分析の結果、「入札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,34,995)

=233.6,p<0.05)。その後の多重比較(表7)の結果、平成20年度と平成25年度、平成23年度と平

成24年度、平成25年度と平成27年度、平成26年度と平成28年度、平成29年度と平成30年度には

有意差がなく、その他の年度の間には有意差があった。従って、入札率の平均値は平成20年度か

ら22年度にかけては低下し、平成22年度以後平成26年度までは概ね年度ごとに上昇し、平成27

年度はやや低下したが平成28年度以降上昇した。

③ 0.6~3億円工事

0.6~3億円工事について年度別の入札率の構成比を示したのが図25である。構成比率の最頻

値は、平成20年度が0.84と0.99で4.9%、平成23年度が0.86で13.0%,平成26年度が0.89で16.2%、

平成30年度は0.90で24.5%であった。

分散分析の結果、「入札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,366,075)

=280.5,p<.005)。その後の多重比較(表8)から平成26年度の入札率平均値は高いと言える。

④ ~0.6億円工事

~0.6億円工事について年度別の入札率の構成比を示したのが図26である。構成比率のピーク

は平成20年度を除き各年度共通で1.0近傍と0.88近傍の2カ所にみられ、他の工事規模とは異な

る特徴となっている。

分散分析の結果、「入札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,101,430)

=20.3,p<.005)。その後の多重比較の結果、平成20・30年度、平成21・22・25・27・28・29年度、平

図25 0.6~3億円工事の年度別の入札率の構成比

図24 3~6億円工事の年度別の入札率の構成比

表7 3~6億円工事の年度別入札率の等質グループ

表8 0.6~3億円工事の年度別入札率の等質グループ

1 2 3 4 5 6 7

H22 2,854 0.887

H21 3,884 0.893

H24 3,258 0.900

H23 3,146 0.901

H20 3,075 0.908

H25 4,666 0.911 0.911

H27 2,732 0.914

H26 3,635 0.923

H28 2,991 0.925

H29 2,623 0.931

H30 2,132 0.935

有意確率 1.000 1.000 0.995 0.308 0.620 0.996 0.212

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

1 2 3 4 5

H24 32,360 0.927

H22 39,412 0.928

H27 31,833 0.928 0.928

H23 39,088 0.930

H28 31,857 0.937

H21 40,830 0.939

H25 34,614 0.940

H29 24,422 0.944

H20 41,603 0.944

H30 21,399 0.945

H26 28,658 0.945

有意確率 0.258 0.088 1.000 1.000 0.606

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

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成21・22・26・27・28・29年度、平成21・22・26・28・29・30年度、平成23・24・25・27年度、平成23・

25・27・28年度の6群に分けられた。

3) 工種別の入札率

一般土木工事や建築工事など5工種の年度

別の入札率の平均値を図27に示す。5工種の

中で建築工事は平成21年度を除き最も入札率

の平均値が高く、平成22年度以降は1.0を超え

ている。維持修繕工事は0.96前後を推移し、一

般土木工事は0.93前後を概ね推移している。

各年度の入札率の平均値の最大値と最小

値の差は、建築工事が0.09であるのに対して、

一般土木は0.02.維持修繕工事は0.02、アスフ

ァルト舗装工事は0.04、鋼橋上部工事は0.03

で、建築工事の変動幅が最大であった。

4) 地域別の入札率

地域別の平成30年度の入札率の平均値、及び

平成20年度から30年度の入札率の平均値を図28

に示す。

平成30年度の全国の平均値は0.948で、中部、

東北、関東、中国では全国平均を上回り、その他

の地域は下回っている。

平成20年度から30年度の入札率の平均値を地

域別に比較すると、中部、東北が高く、北海道、九

州が低くなっていた。

平成20年度から平成30年度の各地域の入札率の構成比を図29に示す。中部、四国、東北、北

海道、北陸では入札率0.99の構成比が5%を超えており、分布形が明らかに“ふた山型”となって

いる。また、中国、関東にもわずかな兆候が見られる。

図28 地域別の入札率の平均値

図27 年度別・工種別の入札率の平均値

表9 ~0.6億円工事の年度別入札率の等質グループ

図26 ~0.6億円工事の年度別の入札率の構成比

1 2 3 4 5 6

H24 9,350 0.959

H23 11,751 0.960 0.960

H25 6,943 0.965 0.965 0.965

H27 6,961 0.966 0.966 0.966 0.966

H28 6,845 0.967 0.967 0.967 0.967

H21 13,851 0.967 0.967 0.967

H22 13,615 0.968 0.968 0.968

H29 5,494 0.971 0.971 0.971

H26 5,822 0.972 0.972

H30 4,509 0.973 0.973

H20 16,290 0.979

有意確率 0.171 0.109 0.104 0.108 0.091 0.204

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

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分散分析の結果、「入札率に地域間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(8,529,516)

=1369.3,p<.005)。その後の多重比較の結果は表10のとおりである。

5) 低入札者

入札者の入札価格が調査基準価格を下

回る入札を低入札とする。

年度別の入札参加者を低入札者と低入札

以外の者に区分し、併せて低入札者の比率

を示したのが図30である。低入札者の比率は

平成20年度には5.6%を占めていたが平成

24年度には0.6%まで減少し、その後は概ね

0.5%程度の割合で推移し、平成30年度は

0.5%であった。

6. 落札率の比較

1) 年度別の落札率

工事の落札金額を予定価格で除した値を落札

率という。落札率の各年度の平均値、中央値を図

31に、年度別の落札率の構成比を図32に示す。

落札率の平均値は平成22年度から平成26年度ま

で上昇し、平成27年度は一度低下するも再び上

昇し、平成30年度は0.932となった。

図32に示すように調査基準価格近傍への集中

の傾向が強くなっている。

分散分析の結果、「落札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,112,492)

=566.2,p<0.05)。その後の多重比較(表11)では、平成20・23年度、平成21・23年度、平成21・24

年度、平成29・30年度、その他の年度の9群に分けられた。

図29 平成20~30年度の地域別の入札率構成比

図31 年度別の落札率の平均値・中央値

表10 地域別入札率の等質グループ

図30 年度別低入札の者数・構成比

1 2 3 4 5 6

北海道 92,130 0.923

九州 89,923 0.926

中国 39,225 0.936

関東 64,536 0.939

近畿 54,696 0.940

北陸 36,017 0.940

四国 26,182 0.948

東北 63,111 0.959

中部 63,697 0.960

有意確率 1.000 1.000 1.000 0.800 1.000 0.906

局名 度数α= 0.05 のサブグループ

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2) 工事規模別の落札率

落札率の平均値の年度別の変化を工事規模

別に示したのが図33である。工事規模別の平均値

は各規模とも平成22年度が最も小さく、平成26年

度まで概ね上昇の傾向が見られたが、各工事規

模とも平成27年度は前年度を下回り、平成28年度

以降再び上昇した。

工事規模別の落札率の構成比は図34に示すと

おりである。

分散分析の結果、「落札率に工事規模別の差

はない」という帰無仮説は棄却された(F(3,112,492)=249.5,p<0.05)。その後の多重比較(表12)

では各規模別の異なる群に分けられた。

以下では工事規模別に落札率の年度間の差について分析を行う。

① 6億円~工事

6億円~工事について年度別の落札率の構成比を示したのが図35である。

構成比率の最頻値は、平成20年度が0.85で16.4%、平成23年度が0.88で31.7%、平成26年度

が0.89で40.9、平成30年度は0.90で56.9%であった。

分散分析の結果、「落札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,2,578)=

47.8,p<0.05)。その後の多重比較(表13)では、平成20・21・22年度、平成20・21・24年度、平成

21・23・24年度、平成25・26・27年度、平成26・27・29年度、平成26・28・29・30年度の6群に分けら

図34 工事規模別の落札率の構成比

図32 年度別の落札率の構成比

表11 年度別の落札率の等質グループ

図33 年度別・工事規模別の落札率

表12 工事規模別の落札率の等質グループ

1 2 3 4 5 6 7 8 9

H22 10,216 0.898

H20 12,616 0.901

H23 10,433 0.903 0.903

H21 12,664 0.904 0.904

H24 10,179 0.906

H27 8,264 0.915

H25 12,369 0.920

H28 9,722 0.923

H26 9,422 0.927

H29 8,635 0.931

H30 7,973 0.932

有意確率 1.000 0.913 0.569 0.354 1.000 1.000 1.000 1.000 0.845

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

1 2 3 4

6億円~ 2,579 0.896

3~6億円 5,564 0.902

0.6~3億円 71,275 0.913

~0.6億円 33,075 0.918

有意確率 1.000 1.000 1.000 1.000

工事規模 度数α= 0.05 のサブグループ

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129

れた。

② 3~6億円工事

3~6億円工事について年度別の落札率の構成比を示したのが図36である。

構成比率の最頻値は、平成20年度が0.85で15.8%、平成23年度が0.87で41.5%、平成26年度

が0.89で35.8%、平成30年度が0.90で45.5%であった。

分散分析の結果、「落札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,5,563)=

121.8,p<0.05)。その後の多重比較(表14)では、平成20・21・23年度、平成22年度、平成23・24

年度、平成25・27年度、平成26・28・29年度および平成29・30年度の6群に分けられた。

③ 0.6~3億円工事

0.6~3億円工事について年度別の落札率の構成比を示したのが図37である。

図37 0.6~3億円工事の年度別の落札率構成比

表15 0.6~3億円工事の年度別落札率の等質グループ

表14 3~6億円工事の年度別落札率の等質グループ

図36 3~6億円工事の年度別の落札率構成比

図35 6億円~工事の年度別の落札率構成比

表13 6億円~工事の年度別落札率の等質グループ

1 2 3 4 5 6

H22 141 0.875

H20 366 0.876 0.876

H21 257 0.881 0.881 0.881

H24 214 0.886 0.886

H23 249 0.888

H25 271 0.900

H27 204 0.905 0.905

H26 237 0.907 0.907 0.907

H29 260 0.914 0.914

H30 181 0.917

H28 199 0.917

有意確率 0.766 0.113 0.451 0.590 0.302 0.114

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

1 2 3 4 5 6

H22 300 0.871

H21 487 0.880

H20 438 0.880

H23 398 0.886 0.886

H24 465 0.891

H27 404 0.905

H25 832 0.907

H26 645 0.915

H28 604 0.915

H29 547 0.922 0.922

H30 444 0.924

有意確率 1.000 0.277 0.505 0.998 0.094 1.000

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

1 2 3 4 5 6 7

H22 6,010 0.895

H23 6,363 0.901

H20 7,549 0.902

H24 6,239 0.904 0.904

H21 7,847 0.906

H27 5,341 0.912

H25 8,320 0.920

H28 6,516 0.922

H26 6,152 0.926

H29 5,586 0.930

H30 5,352 0.930

有意確率 1.000 0.176 0.339 1.000 0.275 1.000 1.000

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

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130

構成比率の最頻値は、平成20年度が0.84で7.3%、平成23年度が0.86で18.5%、平成26年度

が0.89で17.9%、平成30年度が0.90で26.9%であった。

分散分析の結果、「落札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,71,274)

=446.2,p<0.05)。その後の多重比較(表15)では、平成20・23・24年度、平成21・24年度、平成

22年度、平成25・28年度、平成26年度、平成27年度および平成29・30年度の7群に分けられた。

④ ~0.6億円工事

~0.6億円工事について年度別の落札率の構成比を示したのが図38である。

構成比率の最頻値は、平成20年度が0.99で9.9%、平成23年度が0.99で8.1%、平成26年度が

0.99で11.6%、平成30年度が0.99で11.1%であった。他の工事規模に比べ予定価格近傍と調査

基準価格近傍の2カ所で比率が高い。

分散分析の結果、「落札率に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(F(10,33,074)

=131.1,p<0.05)。その後の多重比較(表16)では、平成20~23年度、平成24年度、平成25・27

年度、平成25・28年度、平成26・29年度および平成26・29・30年度の6群に分けられた。

3) 工種別の落札率

一般土木工事や建築工事など5工種につい

て年度別の落札率の平均値を図39に示す。建

築工事の落札率は平成20、21年度と低かった

が、平成23年度以降は維持修繕とほぼ同じ高

い水準で推移している。建築工事の落札率

は、入札率の上昇と同様に、平成21年度から

平成26年度にかけて6%上昇し、平成26年度

以降上げ下げを繰り返している。

その他の4工種は平成27年度に前年度より

低くなったが平成28、29年度は上昇し、平成30

年度はほぼ横ばいであった。また、各工種における最大値と最小値の差は、一般土木工事が3%、

維持修繕工事が3%。アスファルト舗装工事が4%、鋼橋上部工事が4%で建築工事の7%の変動

表16 ~0.6億円の年度別落札率の等質グループ

図38 ~0.6億円工事の年度別の落札率構成比

図39 工種・年度別の落札率の平均値

1 2 3 4 5 6

H22 3,765 0.904

H20 4,263 0.905

H21 4,073 0.906

H23 3,423 0.908

H24 3,261 0.914

H27 2,315 0.924

H25 2,946 0.928 0.928

H28 2,403 0.931 0.931

H26 2,388 0.936 0.936

H29 2,242 0.938

H30 1,996 0.941

有意確率 0.781 1.000 0.796 0.807 0.058 0.188

年度 度数α= 0.05 のサブグループ

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131

幅を下回っている。

4) 地域別の落札率

地域別の落札率の平成30年度の平均値、及び平成29年度の平均値との差を図40に示す。

全国の平均値は0.932で、中部、中国、北海道、東北、北陸では全国平均を上回り、その他の

地域は下回っている。

平成30年度と平成29年度の落札率の平均値を比較すると、北陸と九州を除き前年度を上回っ

ており、全国の平均では0.001前年度を上

回り、地域別では中国が0.011と最も大き

く、北海道が0.004と次いでいる。

平成20年度から平成30年度の各地域の

落札率の構成比を図41に、平成30年度の

各地域の落札率の構成比を図42に示す。

11か年の平均では分布系が”ふた山型”で

あったものが、平成30年度では各地域とも

調査基準価格近傍に集中する”ひと山”に

変化してきている。

5) 工事規模・地域別の落札率

平成30度の地域別の落札率について工事規模別に分析を行った。

① 6億円~工事

地域別の落札率の平均値を図43に、落札率

図41 平成20~30年度の地域別の落札率構成比

図43 6億円~工事の地域別の落札率平均値

図42 平成30年度の地域別の落札率構成比 図40 地域別の落札率平均値

図44 6億円~工事の地域別の落札率構成比

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132

の構成比を図44に示す。落札率の平均値は北海道が0.934で最も高く、北陸が0.907で最も低い。

全国の平均値は0.916で北海道、近畿、関東は全国平均より高く、その他の地域は全国平均より

低い。

② 3~6億円工事

地域別の落札率の平均値を図45に、落札率の構成比を図46に示す。落札率の平均値は関東

が0.937で最も高く、北陸が0.913で最も低い。全国の平均値は0.923で関東、中国、近畿は全国

平均より高く、その他の地域は全国平均より低い。

③ 0.6~3億円工事

地域別の落札率の平均値を図47に、落札率の構成比を図48に示す。落札率の平均値は東北

と北海道が0.939で最も高く、九州が0.915で最も低い。全国の平均値は0.930で東北、北海道、中

部、中国、北陸は全国平均より高く、その他の地域は全国平均より低い。

④ ~0.6億円工事

地域別の落札率の平均値を図49に、落札率の構成比を図50に示す。落札率の平均値は中部

が0.950で最も高く、九州が0.930で最も低い。全国の平均値は0.941で中部、中国、北陸、関東、

東北、四国は全国平均より高く、その他の地域は全国平均より低い。

図46 3~6億円工事の地域別の落札率構成比 図45 3~6億円工事の地域別の落札率平均値

図47 0.6~3億円工事の地域別の落札率平均値 図48 0.6~3億円工事の地域別の落札率構成比

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133

6) 低入札工事

低入札の者が落札者となる低入札工事

の件数と当該年における比率を図51に示

す。低入札の者数の減少に合わせて低入

札工事の件数、比率も減少し、平成24年度

以降は1%を下回り、平成30年度は0.44%

であった。

7. 換算評価点の比較

換算評価点とは、各工事における入札者の評価点の最高値を求め、その値の整数第一位以下

を切り上げた値を評価点の満点と想定し、「換算評価点=入札者の評価点÷評価点満点(想定

値)×100」 として算出した値である。

なお、調査基準価格以上の入札者には施工体制評価点の満点30点が与えられるが、調査基

準価格を下回る入札を行った者のデータは、同評価点が大幅に減点されている可能性が高いた

め、今回、分析の対象外としている。

1) 年度別の換算評価点

換算評価点の各年度の平均値、中央値を図52に、年度別の換算評価点の構成比を図53に示

す。換算評価点の平均値は平成26、27年度は低下の傾向が見られたが、平成28年度以降上昇し

た。クラスカル・ウォリス検定(以下「KW 検定」という)の結果では、「換算評価点に年度間の差はな

図52 年度別の換算評価点平均値・中央値 図 53 年度別の換算評価点の構成比

図51 低入札工事件数とその割合

図49 ~0.6億円工事の地域別の落札率平均値 図50 ~0.6億円工事の地域別の落札率構成比

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134

い」という帰無仮説は棄却された(χ2(10,N=426,930)=1,812.2,p<0.05)。

2) 工事規模別の換算評価点

換算評価点の平均値の年度別の変化を工事規模別に示したものが図54である。平成24年度ま

では工事規模が小さい工事ほど高い傾向が見られたが、平成25年度以降は0.6億円以上では大

きな差が見られなくなった。

工事規模別の換算評価点の構成比は図55に示すとおりである。KW 検定の結果、「換算評価点

に工事規模による差はない」という帰無仮説は棄却された(χ2(3,N= 426,930)=5,959.5,p<0.05)。

以下では工事規模別に換算評価点の年度間の差について分析を行う。

① 6億円~工事

6億円~工事について年度別の換算評価

点の平均値・中央値を示したのが図56、構成

比を示したのが図57である。

KW 検定の結果、「換算評価点に年度間の

差はない」という帰無仮説は棄却された(χ2

(10,N=24,861)=552.6,p<0.05)。

6億円~工事の換算評価点の平均値は平

成22~25年度は上昇したが、平成25年度以

表17 6億円~工事の年度別の等質グループ

図56 6億円~工事の年度別の換算評価点の平均値・中央値

図54 年度別・工事規模別の換算評価点平均値

図57 6億円~工事の年度別の換算評価点構成比

図55 工事規模別の換算評価点の構成比

1 2 3 4 5 6

H22 10,059.8

H21 11,423.4

H20 11,429.3

H24 11,997.4

H23 12,026.6

H29 13,062.4

H30 13,100.9 13,100.9

H27 13,109.3 13,109.3

H25 13,491.6 13,491.6 13,491.6

H26 13,569.0 13,569.0

H28 13,863.1

有意確率 0.774 0.779 0.118 0.070 0.076

年度サブセット

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135

降は概ね横ばいの傾向を示している。

② 3~6億円工事

3~6億円工事について年度別の換算評価

点の平均値・中央値を示したのが図58、構成

比を示したのが図59である。

KW 検定の結果、「換算評価点に年度間の

差はない」という帰無仮説は棄却された(χ2

(10,N=31,913)=527.9,p<0.05)。3~6億円

工事の換算評価点の平均値は平成22~24年

度は上昇したが、平成25年度以降は概ね横

ばいになった。

③ 0.6~3億円工事

0.6~3億円工事について年度別の換算評

価点の平均値・中央値を示したのが図60、構

成比を示したのが図61である。

KW 検定の結果、「換算評価点に年度間

の差はない」という帰無仮説は棄却された

(χ2(10,N=302,243)=1,721.6,p<0.05)。

図61 0.6~3億円工事の年度別の換算評価点構成比

表19 0.6~3億円工事の年度別の等質グループ

図60 0.6~3億円工事の年度別の換算評価点の平均値・中央値

図58 3~6億円工事の年度別の換算評価点の平均値・中央値

表18 3~6億円工事の年度別の等質グループ

図59 3~6億円工事の年度別の換算評価点構成比

1 2 3 4 5

H22 13,402.3

H21 14,600.6

H23 14,867.7

H20 150,601.0

H27 15,986.1

H28 16,502.3

H26 16,728.2 16,728.2

H25 16,807.1 16,807.1

H24 16,990.4 16,990.4

H29 17,031.7 17,031.7

H30 17,440.3

有意確率 0.191 0.181 0.064

年度サブセット

1 2 3 4 5 6 7

H27 140,023.6

H26 145,659.4

H20 146,319.9

H22 146,894.6

H28 147,218.2

H23 149,877.9

H29 154,469.1

H21 155,307.9

H24 157,102.3

H25 159,632.7

H30 164,398.3

有意確率 0.139 0.284

年度サブセット

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④ ~0.6億円工事

~0.6億円工事について年度別の換算評価点の平均値・中央値を示したのが図62、構成比を

示したのが図63である。

KW 検定の結果、「換算評価点に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(χ2

(10,N=67,913)=400.8,p<0.05)。

3) 工種別の換算評価点

一般土木、維持修繕、アスファルト舗装、

鋼橋上部、建築の5工種について換算評価

点の平均値を年度別に示したのが図64であ

る。

建築は平成23年度から平成26年度にか

けて上昇したが平成27年度は低下し、その

後は概ね横ばいである。一般土木は平成24

年度から平成27年度にかけて緩やかに低下

したが、平成28年度からやや上昇した。維持

修繕とアスファルト舗装は平成27年度まで概

ね変動が少なかったが平成28年度から上昇した。鋼橋上部は全体的に上昇傾向である。

平成20年度以降の工種別の換算評価点の平均値の変動幅は、一般土木が1.0点、維持修繕

工事が1.1点、アスファルト舗装が0.9点、鋼橋上部が2.4点、建築工事が3.0点で、建築工事の変

動が5工種では最も大きい。

4) 地域別の換算評価点

平成30年度および平成20年度から平成30年度までの地域別の換算評価点の平均値を示した

のが図65である。平成30年度の全国の平均値は94.4で、地域別では北陸の値が96.5と最も高く、

中国が93.5と最も低い。

地域別の構成比を図66に示す。近畿と四国では100の構成比が高い値を示しており、他地域と

の違いがある。

KW 検定の結果、「換算評価点に地域間の差はない」という帰無仮説は棄却された(χ2

図64 工種別・年度別の換算評価点平均値

図62 ~0.6億円工事の年度別の換算評価点の平均値・中央値 図63 ~0.6億円工事の年度別の換算評価点構成比

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(8,N=25,588)=943.1,p<0.05)。

5) 換算評価点1位が複数者の工事

の件数と構成比

換算評価点1位が複数者の工事の

件数と構成比を年度別に示したのが

図67で、平成20~30年度の構成比を

地域別に示したのが図68である。換

算評価点1位が複数者の工事の件数

の比率は平成25年度の4.4%が最も

少なく、平成27と30年度の6.6%が最

も多い。地域別では中国の2.9%が最

も少なく、北海道の7.5%が最も多い。

5者以上が1位は近畿が114件(1.08%)で、

件数、割合とも最も多い。

6) 落札者の換算評価点の年度別比較

落札者の年度別の換算評価点の平均値・中央値を示したのが図69、構成比を示したのが図70

である。

KW 検定の結果、「換算評価点に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却された(χ2

(10,N=106,780)=268.0,p<0.05)。

図68 換算評価点1位が複数者の工事の件数と構成比(地域別)

図67 換算評価点1位が複数者の工事の件数と構成比(年度別)

図65 地域別の換算評価点の平均値

図66 地域別の換算評価点構成比

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8. 入札率と調査基準価格率

本節および次節では入札率・落札率と調査基準価格率の差に着目し、年度別、工事規模別に

分析を行った。以下本文では入札率と調査基準価格率の差をδ1、落札率と調査基準価格率の

差をδ2と略している。なお、本稿では調査基準価格率が0.5を下回るデータ48件は異常値として

分析から除外している。

1) 工事規模と調査基準価格率

調査基準価格は表3に示すように、直接

工事費や共通費(共通仮設費・現場管理

費・一般管理費)に係数を乗じて算出して

いる。一般的に共通費を算出するときに用

いる、共通仮設費率、現場管理費率およ

び一般管理費率は工事規模が小さいもの

ほど率が高くなっている。そのため調査基

準価格率(=調査基準価格/予定価格)は

小規模な工事ほど小さくなる傾向になる。

また、算出方法の変更に合わせ年度ごとに

高くなっている(表3参照)。

入札結果データを用いて工事規模別・年度別に調査基準価格率の平均値を算出した結果を

図71に示す。年度ごとに高くなるとともに小

規模工事ほど小さくなっていることが確認

できる。平成20年度から平成30年度の間

に6億円~工事で0.065、~0.6億円工事で

0.095上昇している。

2) 入札率と調査基準価格率の差

工事規模・年度別にδ1の中央値を図72

に示す。年度とともにδ1の中央値は小さく

なる傾向を示す。また、工事規模が大きい図72 年度・規模別の入札率と調査基準価格率の差の中央値

図71 年度・規模別の調査基準価格率平均値

図70 落札者の年度別の換算評価点の構成比 図69 落札者の年度別の換算評価点の平均値・中央値

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139

ほど差の中央値は小さくなる傾向にあり、6億円~工事と3~6億円工事の間では平成22年度以降

ほとんど差はない。中央値が0.01以下ということは、入札参加者の過半数以上の者が調査基準価

格率+0.01以下の価格で入札を行っていることになる。従って、3億円~工事の入札参加者の多く

が高い精度で調査基準価格を推定していることが窺える。

3) 工事規模別の入札率と調査基準価格率の差

① 6億円~工事

6億円~工事のδ1について、構成比を図73に示す。0≦δ1<0.01の範囲の入札者数の割合は

平成20年度は13%であったが平成25年度にかけて増加し、平成25年度以降は50%前後を推移し

ている。入札参加者の多くが入札価格を決定する際に調査基準価格を目標にしていることが推定

される。

KW 検定の結果、「入札率と調査基準価格率の差に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却

された(χ2(10,N=27,279)=808.8,p<0.05)。多重比較の結果は表20のとおりである。

② 3~6億円工事

3~6億円工事のδ1について、構成比を図74に示す。0≦δ1<0.01の範囲の入札者数の割合

は平成20年度は8%であったが平成24年度にかけて増加し、平成24年度以降は約47%を占めて

いる。6億円~工事と同じように多くの者が入札価格を決定する際に調査基準価格を目標にしてい

ることが推定される。

KW 検定の結果、「入札率と調査基準価格の差に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却さ

図73 6億円~工事の年度別」の入札率と調査基準価格率の差の構成比

表21 3~6億円工事の年度別の等質グループ

図74 3~6億円工事の年度別の入札率と調査基準価格率の差の構成比

表20 6億円~工事の年度別の等質グループ

1 2 3 4 5 6

H29 11,478.0

H25 12,474.2

H27 12,713.2

H30 12,976.9 12,976.9

H28 13,119.3 13,119.3

H26 13,294.3

H24 13,311.2

H23 13,924.5

H21 14,589.1

H22 14,835.9

H20 16,516.9

有意確率 0.269 0.282 0.998

年度サブセット

1 2 3 4 5 6

H30 15,205.6

H29 15,355.3

H28 15,862.4

H27 15,921.4

H25 16,502.7

H24 16,809.1

H26 17,030.6

H22 17,505.9

H23 17,519.2

H21 19,559.1

H20 23,887.6

有意確率 0.544 0.941 0.137 0.740

年度サブセット

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れた(χ2(10,N=34,965)=1,834.8,p<0.05)。その後の多重比較の結果は表21のとおりで、δ1は

平成20年度から平成25年度まで小さくなり、その後は大きな変化が見られなかった。

③ 0.6~3億円工事

0.6~3億円工事のδ1について、構成比を図75に示す。0≦δ1<0.01の範囲の入札者数の割

合は平成20年度は5%であったが平成24年度

は23%まで増加し、その後平成26年度まで大

きな増減はなかったが、平成27年度以降は30%

前後で推移している。

KW 検定の結果、「入札率と調査基準価格

の差に年度間の差はない」という帰無仮説は棄

却 された(χ 2(10,N=365,519)=32,770.5,p<

0.05)。

④ ~0.6億円工事

~0.6億円工事のδ1について、構成比を図

76に示す。0≦δ1<0.01の範囲の入札者数の

割合は平成20年度は2%であったが平成28年

度は16%まで増加しているが他の規模に比較

すると大幅に少ない。

δ1が0.1以上の入札者の割合も他の工事規

模に比較すると大幅に高く、平成30年度に

おいても29%を占めている。

KW 検定の結果、「入札率と調査基準価格の差に年度間の差はない」という帰無仮説は棄却さ

れた(χ2(10,N=94,087)=10,192.0,p<0.05)。

9. 落札率と調査基準価格率

1) 落札率と調査基準価格率の差

工事規模・年度別にδ2の中央値を図77に

示す。工事規模が大きくなるほどδ2の中央値

は小さくなる。工事規模が大きな工事の落札

者ほど調査基準価格に近い価格で入札して

いる者が多くなると言える。

6億円~工事では平成21年度以降、3~6

億円工事では平成23年度以降、0.01以下と

なっている。0.6~3億円工事では平成22年度

以降は0.05以下になり、平成28年度は0.020

と最も小さな値となった。~0.6億円工事は平 図77 年度・規模別の落札率と調査基準価格率の差の中央値

図76 ~0.6億円工事の年度別の入札率と調査基準価格率の差の構成比

図75 0.6~3億円工事の年度別の入札率と調査基準価格率の差の構成比

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成30年度の値が0.052と最も小さな値となった。

2) 工事規模別の落札率と調査基準価格率の差

① 6億円~工事

6億円~工事のδ2について、構成比を図78に示す。0≦δ2<0.01の範囲の落札者数の割合は

平成20年度は26%であったが平成26年度にかけて増加し、平成26年度では約70%となり、その後

は減少し、平成29年度からは再び上昇し、平成30年度は73%となった。

KW 検定の結果、「落札率と調査基準価格の差には年度間の差はない」という帰無仮説は棄却

された(χ2(10,N=2,497)=244.2,p<0.05)。その後の多重比較の結果は表22のとおりで、δ2は平

成20年度から平成23年度にかけて小さくなり、その後は概ね一定になっていると言える。

② 3~6億円工事

3~6億円工事のδ2について、構成比を図79に示す。0≦δ2<0.01の範囲の落札者数の割合

は平成20年度は17%であったが平成23年度にかけて増加し、その後、50%前後を占めている。

KW 検定の結果、「落札率と調査基準価格の差には年度間の差はない」という帰無仮説は棄却

された(χ2(10,N=5,537)=275.5,p<0.05)。その後の多重比較の結果は表23のとおりで、δ2は平

成20年度から平成22年度にかけて小さくなった。

③ 0.6~3億円工事

図79 3~6億円工事の年度の落札率と調査基準価格率の差の構成比

図78 6億円~工事の年度の落札率と調査基準価格率の差の構成比

表23 3~6億円工事の年度別の等質グループ

表22 6億円~工事の年度別の等質グループ

1 2 3 4 5

H29 1,019.1

H30 1,028.5 1,028.5

H25 1,096.3 1,096.3

H24 1,119.0 1,119.0

H27 1,124.5 1,124.5

H26 1,193.5 1,148.9

H28 1,193.5 1,193.5

H23 1,221.3 1,221.3

H22 1,342.8 1,342.8

H21 1,456.9

H20 1,718.5

有意確率 0.114 0.086 0.114 0.106

年度サブセット

1 2 3 4 5

H30 2,466.7

H28 2,481.2

H29 2,546.0 2,546.0

H27 2,555.4 2,555.4 2,555.4

H23 2,556.9 2,556.9 2,556.9

H22 2,648.7 2,648.7 2,648.7

H24 2,709.8 2,709.8 2,709.8

H25 2,752.9 2,752.9

H26 2,807.4

H21 3,179.2

H20 3,797.3

有意確率 0.118 0.094 0.086

年度サブセット

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142

0.6~3億円工事のδ2について、構成比を図

80に示す。0≦δ2<0.01の範囲の落札者数の

割合は平成20年度は10%であったが平成23年

度以降は25~35%を占めている。

KW 検定の結果、「落札率と調査基準価格の

差には年度間の差はない」という帰無仮説は棄

却 さ れ た ( χ 2 ( 10,N=70,908 ) =5,568.4,p <

0.05)。

④ ~0.6億円工事

~0.6億円工事のδ2について、構成比を図

81に示す。0≦δ2<0.01の範囲の落札者数の

割合は平成20年度は3%であったが平成30年

度には17%まで増加している。規模別の4区分

では~0.6億円工事の中央値が最も大きい。

KW 検定、「落札率と調査基準価格の差には

年度間の差はない」という帰無仮説は棄却され

た(χ2(10,N=29,777)=2,507.2,p<0.05)。

10. 逆転落札

総合評価方式では技術評価点を入札

価格で除した評価値の最も高い者が落

札者となるため、当該入札の最低価格の

入札者以外の者が落札者となることがあ

る。そのような入札を逆転落札という。

逆転落札の年度別の件数と比率を図

82に示す。逆転落札の比率の平均値は

27.8%で、平成30年度は24.2%と平均値よ

り3.6%低い。

工事規模別の逆転落札の年度別の発

生比率を図83に示す。規模が大きい工

事ほど工事1件あたりの入札参加者数が

多いことや、技術評価の配点が高いこと

もあり逆転落札の比率が高くなる傾向が

ある。

逆転落札の割合の平均値は、6億円~

工事では62.9%で、平成21年度の75.4%が

最も高く、平成25年度の52.6%まで減少図83 工事規模 ・年度別の逆転落札件数の比率

図82 年度別の逆転落札工事件数・比率

図81 ~0.6億円工事の年度の落札率と調査基準価格率の差の構成比

図80 0.6~3億円工事の年度の落札率と調査基準価格率の差の構成比

Page 27: 公共工事の入札結果に関する分析(平成30年度)...119 入札方式別の件数比率を図5に示す。各年度とも一般競争入札(WTO対象外)が最も多く、構

143

し、以降60%前後で推移している。

3~6億円工事の平均値は49.2%で、平成

22年度の69.9%が最も高く、以降は減少傾向

が続いている。

0.6~3億円工事の平均値は31.3%で、平

成23年度の36.7%が最も高く、平成30年度の

26.7%が最も低い。

~0.6億円工事の平均値は13.5%で、平成

28年度の17.8%が最も高く、平成20年度の8.8%が最も低い。

地域別の逆転落札の比率を図84に示す。地域別では九州が34.3%と高く、四国、近畿、関東、

北陸は平均値より高く、その他の地域は平均値より低い。

11.入札不調

入札不調の件数のデータは「国土交通

省直轄工事等契約関係資料」の平成23年

度版から公表されている。本項は同資料の

データを分析したものである。

同資料の入札不調件数は、「再発注手

続きを行い、当該年度に契約締結した件

数の合計」で、入札不調件数(A)及びその

うちの予定価格超過による不調(「不落再

入札」という)の件数(B)が公表されている。

従って、(A)-(B)は入札公告等の発注

手続きを行ったものの入札手続きへの参加

者がないため不調となり、再公告を行って

契約に至った場合(「不調再入札」という

((A)-(B)))であると考え、不落再入札と

は集計を別にした。

図85に年度別の不調再入札・不落再入

札の工事件数の比率(以下「発生率」とい

う)を示す。

不調再入札の発生率は、平成23年度の

2.1%から平成25年度にかけて5.6%まで増加した。その後は減少に転じたが、平成30年度は3.4%ま

で再び上昇した。

不落再入札の発生率は、平成22年度以降1.0%程度で大きな増減はなく、平成30年度は0.7%

であった。

入札不調の発生を抑制することを目的にした対策(「公共事業の円滑な施工確保対策について」

平成26年1月)の効果ではないかと思われる。

図86 入札不調発生率(地域別)

図85 入札不調発生率(年度別)

図84 地域別の逆転落札件数の比率

Page 28: 公共工事の入札結果に関する分析(平成30年度)...119 入札方式別の件数比率を図5に示す。各年度とも一般競争入札(WTO対象外)が最も多く、構

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図86に地域別の不調再入札・不落再入札の発生率を示す。

不調再入札の発生率は中国が6.4%と高く、北海道が1.6%と低い。

不落再入札の発生率は、北海道、九州、中国はやや低く、関東、中部、近畿はやや高い。

図87に地域別・年度別の入札不調の発生率の推移を示す。

図88には工種別・年度別の入札不調の

発生率の推移を示す。全体的に平成24

年度から上昇が始まり、平成25、26年度を

ピークに下降に転じた。ただし、建築につ

いては平成28年度から緩やかではあるが

再び上昇に転じた。個別で見ると、建築は

平成26年度に35.5%の入札不調の発生

率で一般土木やアスファルト舗装の10倍

前後の発生率であり、3件に1件は入札不

調であったことになる。平成30年度におい

ても5件に1件は入札不調が発生してい

る。暖冷房についても高い不調発生率で

あり、平成25年度には22.0%となった。電気については、他の営繕系の工種に比べると高い入札不

調発生率となってないが、電気工事には道路照明やケーブル敷設工事なども相当数含まれるた

め、営繕系の電気が低い入札不調発生率であると一概には言えない。

図87 入札不調発生率(地域別・年度別)

図88 入札不調発生率(工種別・年度別)

2.0% 2.0%2.6%

3.8%

2.4%1.5%

0.7% 1.2% 1.6%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

北海道

2.0% 2.1%

4.7%

7.0%5.7%

2.9%

5.7%4.4%

2.7%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

東北

5.3%4.2%

5.3%

8.1%7.0%

5.9% 6.0%

8.9%

3.7%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

関東

2.9%2.2%

8.6%

7.1%

5.3%

1.9% 2.2% 2.1% 1.8%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

北陸

3.3%

1.9%3.2%

8.0%9.0%

4.4%3.8% 3.5%

2.4%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

中部

2.3%

4.2%

5.8%

8.1%6.8%

4.5%

0.3%

3.3%2.7%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

近畿

7.9%

4.9% 5.3%

6.9%

11.1%

7.2%

5.8%6.8%

8.4%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

中国

2.4% 2.0%

4.2%

7.1%

5.6% 5.7%

3.5%

6.1% 5.8%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

四国

2.6% 3.0% 3.2%

7.1%

3.2%1.9% 1.8% 1.4%

3.8%

0%

2%

4%

6%

8%

10%

12%

H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29 H30

九州