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A/H1N1 インフルエンザウイルス (写真提供:国立感染症研究所) 豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会 2009 A/H1N1

本県における新型インフルエンザ(A/H1N1) - …1 A/H1N1 インフルエンザウイルス (写真提供:国立感染症研究所) 豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会

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A/H1N1 インフルエンザウイルス

(写真提供:国立感染症研究所)

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会

2009(A/H1N1)

Page 2: 本県における新型インフルエンザ(A/H1N1) - …1 A/H1N1 インフルエンザウイルス (写真提供:国立感染症研究所) 豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会

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新型インフルエンザ総括報告書の作成にあたって

2009 年 4 月、メキシコ・アメリカなど北米で発生した新型インフルエンザ( A/H1N1)

は、その後、急速に世界中に伝播し、8 月以降わが国においても、各地で集団発生し

ました。

幸い想定していた「新型インフルエンザ」に比較して病原性は低く、現在に至って

も、確認された死亡者はわが国では 200 人程度であります。本市では、死亡者はでな

かったものの、感染力は強く、特に若年層を中心に多くの患者が発生し、学級閉鎖・

学校閉鎖等も多数行なわれました。

世界がグローバル化したなかで、人類が初めて体験した「パンデミック」。今回の

“騒動”とも言える一連の新型インフルエンザの経験は、いずれ報告書としてまとめ

たいと考えていましたが、WHO が約 1 年 2 ヶ月ぶりの平成 22 年 8 月 10 日「ポストパ

ンデミック宣言」を行なったことから、それを区切りとし、作業を開始しました。

本報告書は、豊橋市、豊橋市医師会及び豊橋市民病院を始めとする市内の医療機関

の献身的なご協力により実行した様々な対策等を、時系列に沿ってまとめてあります。

新型インフルエンザウイルスの病原性が不明だった初期から、多くの方が危険を顧み

ず様々な場所で使命感をもって真摯に活動されたことがお分かりいただけると思いま

す。

また、その中で見つかった課題等もまとめてありますので、今後の参考にしていた

だけたらと思います。

編纂に携わった関係者の皆さんには、業務多忙にも関わらず、報告書の作成に貴重

なお時間を割いていただきましたこと、心よりお礼申し上げます。

この報告書が、鳥インフルエンザを始め今後予想される新型感染症発生時の対応に

一助となることを祈念いたします。

平成22年11月

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会

委員長(豊橋市医師会長)山本 義樹

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目 次

第一章 行政編

~豊橋市の新型インフルエンザへの対応等について~

第一 新型インフルエンザ(A/H1N1)に関する経緯等・・・・・・・・・・・・・ 1

第二 新型インフルエンザ(A/H1N1)への本市の対応・・・・・・・・・・・・・ 8

第三 豊橋市におけるパンデミック H1N1 2009(新型インフルエンザ(A/H1N1))

流行時の患者搬送状況報告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 30

第二章 医療編

~豊橋市におけるパンデミック H1N1 2009 (新型インフルエンザ(A/H1N1))

流行に対する医療的検証~

第一 相談体制及び医療体制の確保等・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31

第二 7月 24 日以降の新型インフルエンザ(A/H1N1)対策と流行状況・・・・ 43

第三 新型インフルエンザ(A/H1N1)流行時の小中学校への対応・・・・・・・56

第四 新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンについて・・・・・・・・・・・61

第五 医療機関へのアンケート調査が示す新型インフルエンザ診療への認識

と変化・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 62

第三章 豊橋市医師会アンケート結果

第一 調査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 65

第二 調査の結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66

第四章 新型インフルエンザ(A/H1N1)流行で明らかになった課題・・・・・・・75

資料編・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・78

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第一章 行 政 編

~豊橋市の新型インフルエンザへの対応等について~

第一 新型インフルエンザ(A/H1N1)に関する経緯等

❑ 今回の新型インフルエンザ(A/H1N1)の発生等の経緯や国等の

対応について、平成21年4月23日からを以下のとおり第1期から第

5期に分け、記載する。

分 類 状 況 説 明 適用時期

第1期 新型インフルエンザ(A/H1N1)の発

生から国内発生まで

4月23日~

5月15日

第2期 国内発生から県内発生前まで 5月16日~

5月31日

第3期 県内・市内発生から入院勧告中止前まで 6月1日~

6月18日

第4期 入院勧告中止から全数把握中止前まで 6月19日~

7月23日

第5期 全数把握中止以後 7月24日~

1 第1期(4月23日~5月15日)

<新型インフルエンザ(A/H1N1)の発生から国内発生まで>

■ 4月23日(米国時間。日本時間24日):米国疾病対策センター(CDC)

は、豚由来のH1N1のA型インフルエンザウイルスの患者が7例報告された旨、

公表した。

■ 4月24日(金):国は都道府県に対して情報提供するとともに、4月25日

(土)及び26日(日)の休日における連絡体制の整備を要請した。

■ 4月25日(土):保健所生活衛生課に4月26日(日)から電話相談窓口を

設置することとし、その旨報道発表を行った。

■ 4月28日(火):世界保健機関(WHO)は、インフルエンザのパンデミッ

ク警戒レベルをそれまでのフェーズ3から4に引き上げた。

これを受け、国は「新型インフルエンザ対策本部」を設置し、「新型インフル

エンザ対策行動計画」に基づく新型インフルエンザの発生段階を、それまでの前

段階(未発生期)から第一段階(海外発生期)に引き上げた。

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発生段階 状 態

前段階(未発生期) 新型インフルエンザが発生していない状態

第一段階(海外発生期) 海外で新型インフルエンザが発生した状態

第二段階(国内発生早期) 国内で新型インフルエンザが発生した状態

第三段階 国内で、患者の接触歴が疫学調査で追えなくなった事

例が生じた状態

各都道府県の判断

感染拡大期 各都道府県において、入院措置等による感染拡大防止

効果が期待される状態

まん延期 各都道府県において、入院措置等による感染拡大防止

効果が十分に得られなくなった状態

回復期 各都道府県において、ピークを越えたと判断できる状

第四段階(小康期) 患者の発生が減少し、低い水準でとどまっている状態

保健所長を長とする「豊橋市新型インフルエンザ対策連絡会議(以下、「連絡

会議」という。)」を開催し、新型インフルエンザの発生に係る経緯、国・県の

対応状況、今後の本市の対応等について情報の共有を図った。【豊橋市新型イン

フルエンザ対策連絡会議設置要綱 資料編 79 ページ 資料 1 参照】

また、同日、保健所生活衛生課に発熱相談窓口(発熱相談センター)を設置し

休日においても対応した。

■ 4月29日(水):名古屋検疫所中部空港検疫所支所から、中部国際空港に到

着した米国からの航空便の乗客(市内在住者2人)について、初めての健康監視

の依頼があった。

■ 4月30日(木):WHOはインフルエンザのパンデミック警戒レベルをそれ

までのフェーズ4から5に引き上げた。

■ 5月1日(金):フェーズ5への引き上げを受け、市長を本部長とする「豊橋

市新型インフルエンザ対策本部会議」(以下、「本部会議」という。)を開催し、

現在の流行状況、国の対応状況について情報共有を図るとともに、発熱相談窓口

の周知徹底、発熱外来設置等国内発生に備えた今後の対応について協議した。【豊

橋市新型インフルエンザ対策本部設置要綱 資料編 81 ページ資料 2 参照】

発熱外来等医療体制の整備にあたり基礎資料を得るため、豊橋市医師会に緊急

調査を依頼した。【新型インフルエンザ発生時の医療体制に関する調査について

資料編 83 ページ 資料 3 参照】

豊橋市民病院では、南病棟(感染症病棟)に新型インフルエンザが疑われる発

熱患者専用の診察室(発熱外来)が設置された。

■ 5月2日(土):「豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会」(以下「医療

対策委員会」という。)を開催し、患者が発生した場合、段階的に市内に4か所

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に発熱外来を設置することなどが協議された。タミフルの不足、医療現場に余裕

がないことなども報告され、薬剤、迅速診断キット、防護服など医療資材の医療

機関への支援も求められた。この会議は、報道機関に公開して行われた。【豊橋

市新型インフルエンザ医療対策委員会設置要綱 資料編 84 ページ 資料 4 参

照】

■ 5月6日(水):5月2日(土)に開催された医療対策委員会において協議さ

れた発熱外来の設置についてより具体的に作業を進めるため、「豊橋市新型イン

フルエンザ医療対策委員会専門部会」(以下「専門部会」という。)を開催した。

■ 5月9日(土):米国デトロイト経由で成田国際空港に帰国した邦人3人(5

月10日(日)にさらに1人)から新型インフルエンザウイルスが検出された。

2 第2期(5月16日~5月31日)

<国内発生から県内発生前まで>

■ 5月16日(土)未明:国は新型インフルエンザへの感染の可能性が否定でき

ない患者(男子高校生)の報告が神戸市からあったと発表した。同日中には、当

該患者と同じ高校の生徒2人、計3人について国立感染症研究所の検査結果によ

り、新型インフルエンザの患者であることが確定した。

国が発生段階を第二段階(国内発生早期)に引き上げたことを受け、専門部会

を開催し、発熱外来の増設、運営等当面の医療体制等について協議した。

■ 5月18日(月):関係部局の課長等を構成員とする「豊橋市新型インフルエ

ンザ対策本部幹事会」(以下「幹事会」という。)を開催し、国内発生における

国、神戸市等の対応について情報共有を行うとともに、市内発生した場合の発生

段階に応じた各部局の役割について各課に確認を依頼した。

■ 5月22日(金):厚生労働省は、国内での感染拡大を受け、検疫所が実施し

てきた機内検疫についても同日午前をもって終了し、原則として空港内検疫に切

り替えた。

4月30日から5月22日までに計177人の健康監視を実施した。健康監視

者の中から発熱症状等を呈したものはいなかった。

■ 5月25日(月):本部会議が開催され、国が公表した新たな「基本的対処方

針」等の情報共有、市内発生した場合における市民に必要な行政サービスの継続

計画(業務継続計画)の策定が政策決定された。

3 第3期(6月1日~6月18日)

<県内・市内発生から入院勧告中止前まで>

■ 6月1日(月):愛知県内において、ハワイから帰国した丹羽郡在住の女性1

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人が新型インフルエンザに感染していることが確認され、さらに、米国(フロリ

ダ州オーランド市)から帰国した日進市在住の女性1人の感染も確認された。(愛

知県での感染者確認は、全国都道府県で14番目。)

■ 6月2日(火):県内の初発患者とハワイ同行していた蒲郡市在住の女性1人

の感染が確認され、愛知県内の感染者は3人となった。蒲郡市在住の患者は東三

河における第二種感染症指定医療機関である豊橋市民病院に入院措置され、豊橋

市民病院における新型インフルエンザ患者の初の入院となった。この入院の際、

豊川保健所の職員が患者搬送をおこなった。

県内での患者発生を受け、第3回目の本部会議を開催し、患者の発生状況につ

いて情報共有を行った。

保健所に、電話相談専用回線を6回線に増やして「新型インフルエンザコール

センター」(相談時間:午前9時~午後9時(時間外はオンコール体制、6月9

日以降の相談時間:午前9時~午後5時)を設置し、記者発表及びホームページ

への公表を行った。

■ 6月12日(金):WHOは、新型インフルエンザのパンデミック警戒レベル

をそれまでのフェーズ5から世界的大流行(パンデミック)を意味するフェーズ

6に引き上げるとともに、健康被害の深刻度に関する基準(3段階)を新設し、

今回の新型インフルエンザは「中度(モデレート)」であるとした。

■ 6月17日(土):県内の大学に通う市内在住の男性1人が新型インフルエン

ザに感染していることが本市において初めて確認された。市内初の患者発生を受

け、本部会議が開催された。

また、保健所大会議室において新型インフルエンザ患者の発生について記者会

見をおこない、市民に冷静な対応を呼びかけるとともに、患者の発生情報は、随

時ホームページで公開した。【報道機関発表資料 新型インフルエンザ患者の発

生について 資料編 86 ページ 資料 5 参照】

当該患者は、6月16日(金)新型インフルエンザの感染が疑われたため豊橋

市民病院の発熱外来を受診し、一旦自宅に帰宅していたが、午前9時豊橋市民病

院に感染症法に基づき入院措置された。患者は家族がサージカルマスクで飛沫感

染防護し自家用車で来院させた。

4 第4期(6月19日~7月23日)

<入院勧告中止から全数把握中止前まで>

■ 6月19日(金):国は「運用指針」を一部改定した。新たな「運用方針」で

は、軽症患者は入院せず自宅療養を行うこと等により、医療機関の負担を可能な

限り減らし、重症患者に対する適切な医療の提供を目指すことが必要とされた。

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また、患者の把握は集団発生の端緒等を把握することや、外来部門については、

原則として全ての一般医療機関においても患者の診療を行うとの方針が示された。

これを受け、同日から新型インフルエンザ患者に対する感染症法第19条第1項

に基づく入院勧告を行わないこととした。しかし、外来については、引き続き一般

医療機関の受診の前に発熱相談窓口(コールセンター)に連絡させ、新型インフル

エンザが疑われる者については豊橋市民病院の発熱外来の受診を勧奨した。

■ 6月21日(日):保健所において専門部会を開催し、今後の医療体制について

協議した。「運用指針」の改訂で、外来部門においては発熱外来以外の医療機関に

おいても患者の診察を行うよう新たな医療体制への移行を図ることが求められたこ

とから、医師会に所属する医療機関に緊急調査を行うこととした。同日依頼文書を

医師会に発出した。【新型インフルエンザ患者の医療体制に関する調査について

資料編 87 ページ 資料 6 参照】

■ 6月23日(火)~24日(水):国立病院機構豊橋医療センター及び豊橋市民

病院に対し、「運用指針」の改訂について説明し、医療体制への協力を依頼した。

■ 6月25日(木):国は事務連絡を発出し、「運用指針」の改正により、今後の

サーベイランス体制については、クラスターサーベイランス、ウイルスサーベイラ

ンス、インフルエンザ入院サーベイランス等を実施する体制に速やかに移行するこ

ととした(7月24日(金)から移行)。

また、国は積極的疫学調査についても、サーベイランス体制に移行した後は、積

極的疫学調査は集団発生時のみに限定する他、濃厚接触者への1日2回の健康観察

や外出自粛要請を行わないこととした。こうした変更後の疫学調査については、「新

型インフルエンザ(A/H1N1)積極的疫学調査実施要綱(平成21年7月版)」

として7月22日(水)に公表された。

■ 7月12日(日):市内で、5例目の患者(小学生)を確認した。同小学校では

7月9日(木)から当該患者を除きA型インフルエンザの患者3人が確認されてい

たため、同校は、7月14日(火)から7月17日(金)まで休業措置を講じた。

■ 7月13日(月):新型インフルエンザ対策本部会議が開催された。

■ 7月17日(金):市内の別の小学校で、12例目の患者が確認された。同校は、

17日(金)のみ一部の学級を休業とした。(以後夏休みとなった。)

■ 7月22日(水):「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

施行規則(以下「感染症法施行規則」という。)」の一部改正により、7月24日

(金)から新型インフルエンザ患者の全数把握が原則中止され、感染症法第12条

に基づく新型インフルエンザ患者に係る医師の届出は、施設等の集団発生に係るも

のに限定されることとされた。

■ 7月23日(木):20例目の患者が確認された。全数把握期間中に本市で確認

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された新型インフルエンザの患者数は、計20人であった。

5 第5期(7月24日~)

<全数把握中止以後>

■ 7月24日(金):感染症法施行規則の一部改正等を受け、同日新型インフルエ

ンザへの対策を変更し、その旨を報道発表するとともに、ホームページに公表した。

【報道機関発表資料 新型インフルエンザの取り扱いの変更について 資料編

88 ページ 資料 7 参照】

[変更内容]

① PCR検査は原則として集団発生の端緒となる事例を探知する場合に実施

② 発熱外来を廃止し、原則として全ての医療機関において新型インフルエン

ザの感染を疑う症状がある方の診療を実施

③ 発熱相談窓口(発熱相談センター)を廃止し、市民からの相談は新型イン

フルエンザ相談窓口で対応

■ 7月25日(土):豊橋市医師会は国立病院機構三重病院の庵原俊昭氏を講師

に迎え各医療機関を対象にインフルエンザ講習会を行った。行政は感染症法施行

規則の一部改正について説明会を豊橋市民病院において開催した。【発熱患者の

受診の流れ 資料編 89 ページ 資料 8 参照】

■ 8月2日(日):豊橋市医師会との共催により国立感染症研究所感染症情報セ

ンター所長の岡部信彦氏を講師に迎え、豊橋市新型インフルエンザ対策本部員及

び各課管理職、豊橋市医師会会員を対象として、「新型インフルエンザ講演会」

を開催した。【報道機関発表資料 新型インフルエンザ講演会の開催について

資料編 90 ページ 資料 9 参照】

■ 8月15日(土):沖縄県で国内初の新型インフルエンザ患者(50歳代男性)

の死亡が公表された。

■ 8月21日(金):第36週(8月31日(月)から9月6日(日)まで)の

報告数は一旦「0.92」に減少し、「1」を下回ったが、第37週から再び増

加した。

■ 9月9日(水):8月28日(金)に国から要請された重症患者への医療提供

体制の確保等について協議するため、午後3時30分から保健所において、専門

部会の医師等により対策会議を開催した。

■ 9月26日(土):第3回医療対策委員会を開催した。この会議では、流行拡

大期において多数の発生が想定される重症患者や小児患者への医療提供体制の確

保等について協議した。【豊橋市インフルエンザ重症患者搬送・受入ネットワー

ク情報事業実施要領 資料編 91 ページ 資料 10 参照】

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■ 9月28日(月):愛知県全域の第38週(9月20日(日)までの1週間)

の報告数が注意報の指標である「10」を2地域(保健所単位)で上回ったこと

から、県内に「インフルエンザ注意報」が発令された。

■ 10月1日(木):国は、「基本的対処方針」と「運用指針」を改定した。同

日、国は、ワクチン接種に関して、「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワク

チン接種の基本方針(以下、「基本方針」という。)」を定めた。

■ 10月8日(木):愛知県の感染症発生動向調査での第40週(10月4日(日)

までの1週間)の報告数が警報の指標である「30」を1地域(保健所単位)で

上回ったことから、県内に「インフルエンザ警報」が発令された。

■ 10月9日(金):国は、国産の新型インフルエンザワクチンを初出荷した。

■ 10月13日(火):国は、「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン

の接種に関する事業実施要綱(以下、「実施要綱」という。)」と「受託医療機

関等における新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種実施要領(以下、

「実施要領」という。)」を策定した。

■ 10月19日(月):本市の定点あたりの報告数が「10.92」となり、流

行状況が「注意報レベル」になった。

■ 10月22日(木):定点報告数が「10」を超えたことから、豊橋市インフ

ルエンザ重症患者搬送・受入ネットワーク情報事業実施要領に基づき、運用を開

始した。

■ 10月23日(金):豊橋市において、医療従事者に対しワクチン接種が開始

された。

■ 11月3日(月):本市の流行状況は「警報レベル」になった。

■ 11月30日(月):第48週(11月22日(月)から11月29日(日)

まで)に定点の報告数が「83.00」となり、今回の新型インフルエンザの流

行での最高値となった。

■ 12月18日(金):国立感染症研究所は、「流行のピークを過ぎつつあると

考えられる。」とした。

■ 12月21日(月):本市においても流行のピークを過ぎつつあると考えられ

た。警報レベルは7週間継続した。

■ 平成22年1月15日(金):優先接種対象者以外の者への接種が1月26日

(火)から開始された。

■ 2月5日(金):全ての都道府県で優先接種対象者以外の者への接種が可能と

なった。

■ 2月15日(月):本市における流行は終息に向かっていると考えられた。「注

意報レベル」は第53週を除くと16週継続した。

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第二 新型インフルエンザ(A/H1N1)への本市の対応

1 情報の収集、共有、提供等

(1)医師会等との情報共有等

■ 本市では、平成21年度から、国が策定した「新型インフルエンザ対策行動計

画」の中で発生時に設置することとされた発熱外来等の医療体制の確保について

協議するため、豊橋市医師会及び豊橋市民病院の医師並びに保健所の感染症担当

により連絡会議を開催した。この連絡会議では、豊橋市における外来患者数、入

院患者数、死亡者数の想定、これらの患者の受け入れに必要な発熱外来等の医療

体制の検証等を行った。また、後述する「豊橋市新型インフルエンザ医療対策委

員会」の立ち上げにあたり準備作業部会としての役割を持ったものであった。構

成員及び会議の開催状況は以下のとおりである。

【参考】

豊橋市新型インフルエンザ医療対策連絡会議

設 置:平成20年10月

構成員:鈴木敏弘医師(豊橋市医師会理事、あずまだこどもクリニック)

渡辺嘉郎医師(豊橋市医師会感染症対策委員会委員長、弥生病院)

山本景三医師(豊橋市民病院感染症管理センター)

墨岡成治(豊橋市保健所生活衛生課長)

杉元 央(豊橋市保健所生活衛生課主幹)

新型インフルエンザ医療対策連絡会議開催状況

開催月日 開催経緯

20 年 10 月 8 日(水) 新型インフルエンザ対策に係る情報提供

11 月 12 日(水) 豊橋市における被害想定と医療体制の確認

12 月 24 日(水) 医療対策委員会立ち上げ準備

21 年 1 月 14 日(水) 新型インフルエンザ対策総合訓練

2 月 4 日(水) 医師会アンケート調査の結果

2 月 16 日(月) 医療対策委員会開催準備

2 月 17 日(火) 医療対策委員会開催準備

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(2)「豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会」の開催

■ 平成21年2月25日(水)約5か月の準備期間を経て、「豊橋市新型インフ

ルエンザ医療対策委員会」を立ち上げた。この委員会は、豊橋市において新型イ

ンフルエンザが発生した際に適切な医療を提供する体制の確保を目的としたもの

である。この委員会には、実務機関として専門部会を設けた。構成員及び会議の

開催状況は以下のとおりである。

【参考】

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会

設 置:平成21年2月

委員長:豊橋市医師会会長

構成員:豊橋市歯科医師会会長、豊橋市薬剤師会会長、成田記念病院院長、

光生会病院院長、弥生病院院長、豊橋医療センター院長、豊橋市

民病院院長、豊橋市民病院看護局長、豊橋市福祉保健部長、豊橋

市保健所長、豊橋市消防長、専門部会長、専門部会副会長

新型インフルエンザ医療対策委員会開催状況

開催月日 開催経緯

2 月 25 日(水) 新型インフルエンザの発生に備えた医療体制に関する協議

5 月 2 日(土) 新型インフルエンザへの医療体制の整備(発熱外来設置等)

9 月 26 日(土) 重症患者・小児患者等への医療提供体制の確保に関する協議

新型インフルエンザ医療対策委員会専門部会開催状況

開催月日 開催経緯

2 月 25 日(水) 医療体制の構築に向けた基礎資料の整理

5 月 6 日(土) 発熱外来の設置と運営について

5 月 16 日(土) 国内の患者発生(神戸市)を受けた開催

8 月 28 日(金) 重症患者への医療提供体制の協議

(3)庁内における情報共有等

■ 庁内各部局へ新型インフルエンザ対策本部会議等からきめ細かい情報提供によ

り、各部署で事業継続計画が早急に作成されるなど、全庁的に健康危機管理に対

する意識が向上するとともに、体制整備を進めた。

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(4)「豊橋市新型インフルエンザ対策連絡会議」等の開催

■ 本市では、平成18年1月に保健所長を長とし、関係各課長等を構成員とする

「豊橋市新型インフルエンザ対策連絡会議」を設置し、情報の共有化等を図って

きた。構成員及び会議の開催状況は次のとおりである。

【参考】

豊橋市新型インフルエンザ対策連絡会議

設 置:平成18年1月

議 長:豊橋市保健所長

構成員:福祉保健部各課長、産業部農政課長、建設部道路維持課長、教育

部総務課長、学校教育課長、保健給食課長、都市計画部総合植物

公園管理事務所長、市民病院管理課長、感染症管理センター長、

消防本部消防救急課長

豊橋市新型インフルエンザ対策連絡会議開催状況

開催月日 開催経緯

4 月 28 日(火) WHOによるフェーズ4への引き上げを受け開催

(5)「豊橋市新型インフルエンザ対策本部会議」の開催

■ 平成21年4月28日(火)に世界保健機関(WHO)が新型インフルエンザ

の発生を確認し、新型インフルエンザのパンデミック警戒レベルをフェーズ3か

ら4に引き上げたことを受け、平成21年5月1日(金)に「豊橋市新型インフ

ルエンザ対策本部」を設置、同日「豊橋市新型インフルエンザ対策本部会議」開

催し、情報の共有化と各部局等の今後の対応について確認を行った。構成員及び

会議の開催状況は以下のとおりである。なお、「豊橋市新型インフルエンザ対策

連絡会議」は同日付けで廃止した。

■ 庁内の情報の共有化等を目的に「豊橋市新型インフルエンザ対策本部幹事会」

を開催した。

【参考】

豊橋市新型インフルエンザ対策本部

設 置:平成21年5月

本部長:市長

本部員:副市長、全部局長等

豊橋市新型インフルエンザ対策本部幹事会

設 置:平成21年5月

幹事長:保健所長

幹 事:全部局関係課室長

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- 11 -

対策本部会議開催状況

開催月日 開催経緯

5月1日(金) WHOによるフェーズ4への引き上げを受け開催

5月25日(月) 業務継続計画の策定

6月2日(火) 県内初の患者確認を受け開催

6月17日(水) 市内初の患者確認を受け開催

7月13日(月) 市内の小学校での集団発生を受け開催

幹事会開催状況

開催月日 開催内容

5月18日(火) 国内初の患者発生(神戸市)を受けて開催

(6)豊橋市民病院等との情報共有等

■ 急増するインフルエンザ患者、ワクチン接種への対応等について、国の通

知、県の方針等を随時提供し、情報の共有化を図った。

■ 10月17日(土)東三河南部及び北部医療圏の主要な入院医療機関なら

びに豊川保健所及び豊橋市保健所の担当者により、重症患者の受入体制等に

ついて情報共有を行なった。

(7)関係機関等との情報の共有化、提供等

■ 新型インフルエンザに関する厚生労働省、愛知県等からの通知、患者の発生状

況等については、(社)豊橋市医師会、豊橋市民病院(感染症指定医療機関)、

国立病院機構豊橋医療センター等二次救急を担う中核病院、(社)豊橋市歯科医

師会、(社)豊橋市薬剤師会、消防本部等庁内関係部局等に電子メールを用いて

送付し、情報の共有化を図った。

■ 一次医療を担う医療機関に対しては、厚生労働省の通知等の中で医師等から問

い合わせの多い事項を中心にQ&Aを作成して配布し、周知の徹底を図った。

■ 庁内各課には、行政情報システム(庁内LAN)の掲示板に常に最新の通知等

の情報を掲載し周知した。

■ 愛知県内にインフルエンザ注意報が発令された以降は、重症患者(救急搬送者)

の増加に備えて、各入院医療機関の空き病床数と空き人工呼吸器数を把握し、各

入院医療機関と消防救急部局との情報共有化を図るため、「新型インフルエンザ

重症患者搬送情報ネットワーク事業」をスタートさせた。

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(8)報道発表による情報提供

■ 全数把握が行われていた7月23日(木)までは、患者確認の都度、患者情報

等について報道発表を行った。6月17日(水)から7月23日(木)までに 14

報に上った。

■ 7月24日(金)以降は、医療機関等で10人以上の集団発生を把握した場合

や、重症化事例、死亡事例等を随時発表し、クラスターサーベイランスにより把

握した集団発生事例(医療機関等で10人以上の発生は随時)は、原則、毎週火

曜日に前週の状況を集計し、報道発表した。

■ 10月13日(火)からは、随時発表を新型インフルエンザ患者が死亡した場

合のみとし、医療機関等で10人以上の集団発生を把握した場合は、毎週火曜日

に前週の状況を集計し、報道発表した。

■ また、学校等での集団発生で学級閉鎖や学校閉鎖などの防疫措置を行った場合

は、例年の通り、「集団かぜの発生」として、随時発表を行った。例年、集団か

ぜは11月又は12月から報告されるが、今回は9月7日(月)に初めての集団

かぜの発生による学級閉鎖等が報告され、報道発表を行った。11月9日(月)

には、最多の33校が学級閉鎖等の防疫措置を行った。

(9)ホームページ等による情報提供

■ 豊橋市ホームページにインフルエンザ患者の発生状況を掲載するとともに、厚

生労働省、国立感染症研究所感染症情報センター、愛知県等がホームページで提

供する「新型インフルエンザ(インフルエンザA/H1N1)に関する情報」を

リンクするなど、発生状況や予防方法、症状など新型インフルエンザに関する

様々な情報を市民に提供するよう努めた。

■ 新型インフルエンザ啓発用ポスターを500枚作成し、豊橋市内の医療機関、

薬局、医薬品販売店、市有施設に掲示し注意を喚起した。

■ 新型インフルエンザ啓発用パンフレットを3,000部作成し、豊橋市内の医

療機関、薬局、医薬品販売店、市有施設に配置し、予防方法等の周知を図った。

また、新型インフルエンザ啓発チラシを130,000枚作成し、広報とよは

しとともに全戸配付し、予防方法等の周知の徹底を図った。

■ まちづくり出前講座、各種の衛生講習会(食品衛生に関する講習会等)を利用

するほか、利用可能な広報媒体の活用や新型インフルエンザ対策研修会を企画・

開催するなど新型インフルエンザに関する正しい知識の普及啓発に努めた。

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2 サーベイランス

平成21年7月24日(金)以降、患者の全数把握等は中止され、以下のサーベイ

ランス体制に移行した。これにより、感染の拡大状況の把握は、主に感染症法に基づ

く感染症発生動向調査(インフルエンザサーベイランス)によって行われることにな

った。サーベイランスの一覧を以下に示す。

【参考】 サーベイランス一覧

種類 目的 実施時期

1 インフルエンザ

サーベイランス

インフルエンザ定点医療機関でイ

ンフルエンザ患者数を把握(感染

症法に基づき、感染症発生動向調

査として実施)

通年

2 インフルエンザ様

疾患発生報告

学校でのインフルエンザの流行状

況把握のため、幼稚園、保育所、

小中高校の休校数等を把握

例年夏期に中止して

いる本サーベイラン

スを通年で実施

3 クラスター

サーベイランス

放置すれば重症化しやすい基礎疾

患を有する患者等に感染拡大の可

能性がある集団的な発生を継続的

に把握

原則として、新型イン

フルエンザを含むイ

ンフルエンザの感染

が終息するまで実施

4 インフルエンザ入

院サーベイランス

新型インフルエンザの入院患者数

及び臨床情報を把握

通年 ただし、インフ

ルエンザの感染が相

当程度拡大した時期

には随時見直し

5 ウイルス

サーベイランス

ウイルスの抗原性、ウイルス薬へ

の感受性等を調査 通年

サーベイランスの内容については、その後、クラスターサーベイランスの対象から

学校や保育所が除かれるなど、新型インフルエンザの発生状況に応じて随時変更が加

えられた。

(1)インフルエンザサーベイランス(感染症発生動向調査)

■ 感染症発生動向調査は、感染症法第14条に基づき実施されているものであり、

インフルエンザに関しては、愛知県が県内の195か所(市内の12か所を含

む。)の定点医療機関から、1週間のインフルエンザ患者数の報告を受け、県内

の発生状況等の集計・分析を行っている。

■ 愛知県の一定点医療機関当たりのインフルエンザ患者の報告数は、第33週

(8月16日(日)までの1週間)で流行入りの目安とされる「1」を超え、こ

の時点で、愛知県はインフルエンザ流行シーズンに入ったと考えられた。

本市の一定点医療機関当たりのインフルエンザ患者の報告数が「1」を超えた

のは、第34週であった。

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■ 第38週(9月20日(日)までの1週間)には、注意報の指標とされる「1

0」を愛知県の2地域(保健所単位)で上回ったことから、愛知県は9月28日

(月)に「インフルエンザ注意報」を発令し、報道発表を行った。本市も、市ホ

ームページに掲載するなど市民等への注意喚起を行った。

本市で報告数が「10」を超えたのは、第42週(21年10月18日(日)

までの 1 週間)で、第4週(22年2月14日(日)までの1週間)まで継続し

た。

■ 愛知県の第40週(10月4日(日)までの1週間)には、警報の指標とされ

る「30」を1地域(保健所単位)で上回ったことから、愛知県は10月8日(木)

に「インフルエンザ警報」を発令し、報道発表を行った。本市では、市ホームペ

ージ、広報とよはしに掲載するなど市民等への注意喚起を行った。

本市で報告数が「30」を超えたのは第44週(21年11月2日(日)まで

の1週間)で、第50週(21年12月13日(日)までの 1 週間)まで継続し

た。

■ 愛知県の第6週(平成22年2月14日(日)までの1週間)には、警報終息

基準値である「10」を全ての地域(保健所・政令市単位)で下回ったことから、

2月17日(水)をもってインフルエンザ警報を解除した。

■ 愛知県における感染症発生動向調査におけるピークは、第46週(平成21年

11月15日(日)までの1週間)の58.7、豊橋市におけるピークは、第4

8週(平成21年11月29日(日)までの1週間)の83.0であった。

平成11年(調査開始年)以降の愛知県、豊橋市での最高値

愛知県 平成17年第8週 64.1

豊橋市 平成17年第7週 86.0

■ 国全体の状況としては、国立感染症研究所が国内約5,000の医療機関から

情報を集約しているが、それによれば、国全体のピークは第48週(11月19

日(日)までに1週間)の39.63であった。

(2)インフルエンザ様疾患発生報告

■ 当報告は、例年、「集団かぜ」の把握として実施されているもので、学校等の

設置者からの保健所への学級閉鎖等に関する報告に基づき、随時学校名等につい

て報道発表を行っている。

■ 9月7日(月)に、大村小学校においてシーズン初の学級閉鎖措置が行われ、

以後、学級閉鎖等の措置は2月15日(月)まで実施された。学級閉鎖等を講じ

た学校数のピークは、11月9日(月)で33校あった。この学級閉鎖は、例年

と比較し、極めて早い時期のものであった。

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(3)クラスターサーベイランス

■ 感染症法施行規則の一部改正による全数把握の中止に伴い、7月24日(金)

より開始した。

■ 学校、社会福祉施設等を対象に1週間に2人以上の感染を疑う患者の発生をも

って、集団発生とし、当該施設が保健所に連絡するもので、当初は、全ての事例

において、保健所が検体を搬送し、県衛生研究所でPCR検査を実施し、新型イ

ンフルエンザの感染を確認した。

■ 8月25日(火)には、国が「新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る今

後のサーベイランス体制について」を改訂した。これにより、クラスターサーベ

イランスに関するPCR検査については、全事例で実施する必要はなく、都道府

県等の判断で実施することとされた。

■ 10月8日(木)に、国は「新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る今後

のサーベイランス体制について」の「改訂版」を発出した。これにより、クラス

ターサーベイランスの対象から学校が除かれるとともに、施設長等からの保健所

への報告基準が従来の感染を疑う者2人以上の発生から、10人以上の発生に変

更になった。

■ 12月14日(月)に、国は「新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る今

後のサーベイランス体制について」の「二訂版」を発出した。これにより、クラ

スターサーベイランスでの厚生労働省への報告対象施設から保育所が除かれた。

■ クラスターサーベイランスの集計結果については、毎週火曜日に前週(月曜日

から日曜日)分を報道発表した。なお、10月12日(月)までは、社会福祉施

設等における10人以上の集団発生については、随時報道発表を行った。

(4)インフルエンザ入院サーベイランス

■ 感染症法施行規則の一部改正による全数把握の中止に伴い、7月24日(金)

より開始した。

■ インフルエンザ入院サーベイランスは、すべての入院医療機関において、新型

インフルエンザを疑う入院を要する患者を診察した場合には、当該医療機関等か

ら保健所に対し連絡があるもので、当初は、全ての新型インフルエンザを疑う入

院患者について、その都度、保健所職員が愛知県衛生研究所に検体を搬送し、P

CR検査を実施した。

■ 12月14日(月)に、国から発出された「新型インフルエンザ(A/H1N

1)に係る今後のサーベイランス体制について(二訂版)」により、対象が新型

インフルエンザのみならず、インフルエンザ様症状を呈する者に拡大されるとと

もに、PCR検査は、死亡、脳症、人工呼吸器装着又は集中治療室入室の患者に

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限定されることとなった。

(5)ウイルスサーベイランス

■ 感染症法に基づき、従前より愛知県内の23か所(市内2か所)の病原体定点

医療機関が指定されており、この病原体定点医療機関でインフルエンザ患者から

採取された検体を保健所が搬送し、愛知県衛生研究所が抗原性、遺伝子型、薬剤

感受性等の検査を実施した。

■ 愛知県では抗インフルエンザウイルス薬であるオセルタミビル(商品名:タミ

フル)への耐性を示す新型インフルエンザウイルスが現在までのところ3例確認

され、12月11日(金)、12月18日(金)及び平成22年2月23日(火)

にそれぞれ報道発表された(別に、名古屋市が10月23日(金)にタミフル耐

性を2例確認した旨報道発表)が、本市では耐性ウイルスは検出されなかった。

3 検査体制

(1)全数把握サーベイランス(4月28日~7月23日)

■ 平成21年4月28日(火)に豚インフルエンザ(H1N1)を、感染症法に

規定する新型インフルエンザ等感染症として位置付けるとともに、4月29日

(水)には、新型インフルエンザに係る症例定義及び届出様式が定められた。(平

成21年4月29日付け健感発第0429001号厚生労働省健康局結核感染症

課長通知)

■ この通知では、医師から疑似症例の報告を受けた保健所は、医師と連携のもと

患者の検体を採取し、当該患者の病原体検査のため、地方衛生研究所へ送付し、

地方衛生研究所は、当該検体の検査結果において新型インフルエンザ(A/H1

N1)を疑わしいと判断した場合は、国立感染症研究所に検体を送付することと

されていた。

■ 5月1日(金)には、「新型インフルエンザ積極的疫学調査実施要綱(暫定版)」

及び「新型インフルエンザウイルス診断検査の方針と手引き(暫定版)」が厚生労

働省より示され、それぞれ役割分担が次のとおり示された。検査体制フロー図を

併せて示す。

<新型インフルエンザウイルス診断検査の方針と手引き(暫定版)抜粋>

① 医療機関・発熱外来の役割

・医療機関及び発熱外来等の機関(以下「医療機関等」という。)は、新型インフ

ルエンザの診断のための検体を採取する機関として、その症状等を認める患者を

診察し、国内における発生段階に応じて、新型インフルエンザ対策上必要となる

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検体を採取する。

・医療機関等で、別に定める新型インフルエンザの症例定義を満たす患者を診察し

た際は、『疑似症例』として速やかに「所轄保健所」に採取した検体を提出し、

同時に接触歴や臨床経過、検査データ等評価に必要な情報を提供する。

② 保健所の役割について

・『疑似症例』の報告を受けた保健所は、医療機関から検体を受け取り、検体を診

断検査する地方衛生研究所へ提出する。

・地方衛生研究所から提出した検体が『確定例』との報告を受けた際は、保健所は

直ちにその検体を採取した医療機関等に『確定例』の報告を行い、保健所に『確

定例』の正式な届出を行うように依頼する。

③ 地方衛生研究所・国立感染症研究所の役割

・地方衛生研究所(以下「地衛研」という。)及び国立感染症研究所(以下「感染

研」という。)は、新型インフルエンザウイルス(豚インフルエンザ H1N1 ウイル

スを含む)の検体からウイルス遺伝子の検出、ウイルスの分離を行う。

・地衛研は、その診断検査結果を「保健所」に報告する。新型インフルエンザウイ

ルス(豚インフルエンザ H1N1 ウイルスを含む)の『確定例』の検体は、感染研に

送付し、感染研は、その検体の再確認を行い、結果を地衛研に報告する。

■ 新型インフルエンザウイルスの検体輸送培地(保存液)は、愛知県衛生研究所

から供与されて、常に発熱外来(新型インフルエンザが疑われる患者はすべて発

熱外来にいて診療することとしていたため、他の医療機関には保管していない。)

に保管していた。検体は、医師が滅菌綿棒で鼻腔又は咽頭をぬぐって2本(愛知

県衛生研究所用と国立感染症研究所用)採取した。

検査体制 フロー図

医療機関あるいは発熱外来

豊橋市保健所

検体 綿棒・検体搬送用培地、結果

愛知県健康対策

愛知県衛生研究所

情報共有

綿棒・検体搬送用培地、

結果 情報共有

検体

国立感染症研究所

結果と検体 検査方法のプロトコール

厚生労働省

情報共有

疑似症例、

確定例報告

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■ 保健所職員は、医師から連絡を受け、随時発熱外来で検体を受け取り、クーラ

ーボックスに保存して愛知県衛生研究所まで搬送した。

■ 愛知県衛生研究所では、新型インフルエンザウイルスに特異的に反応するプラ

イマー、プローブを用いたRT-PCR法及びリアルタイムRT-PCR法によ

る検査が実施され、検体搬入後、概ね4~6時間後結果が判明し、電話で連絡を

うけた。結果の判明が休日、夜間になった場合は、保健所職員の携帯電話に連絡

が入るよう緊急連絡体制をとった。

■ 週別の検査実施件数は、第29週(7月19日(日)までの1週間)が最も多

く9件の検査を実施した。

■ また、PCR検査を実施した結果は、以下のとおりであり、402件のうち2

30件(57.2%)が新型インフルエンザ(A/H1N1)であった。

全数把握サーベイランスによるインフルエンザPCR検査件数(週別)

週 20 21 22 23 24 25

日 5/11~17 5/18~24 5/25~31 6/1~7 6/8~14 6/15~21

件数(本市) 0 1 0 0 0 1

件数(県※) 1 32 19 14 7 44

週 26 27 28 29 30 合計

日 6/22~28 6/29~7/5

7/6~12 7/13~19 7/20~23

件数(本市) 0 3 2 9 5 21

件数(県※) 46 52 67 74 46 402

※ 本市分を含む

インフルエンザウイルス検出数

検査結果 A陰性 AH1pdm AH1亜型 AH3亜型 B 合計

本市

件数 0 20 0 1 0 21

割合(%) 0 95.2 0 4.8 0 100

県※

件数 133 230 6 31 2 402

割合(%) 33.1 57.2 1.5 7.7 0.5 100

(2)入院患者の退院時陰性確認(4月28日~6月19日)

■ 新型インフルエンザ等感染症の患者については、感染症法に基づき感染症指定

医療機関等への入院勧告等を実施できることとしているが、勧告に基づき入院し

た患者についての退院の取扱いが平成21年5月27日に厚生労働省から以下の

通り示された。

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<退院に関する基準の考え方について(抜粋)>

新型インフルエンザについて、法第22条第1項に規定する「病原体を保有

していないことが確認されたとき」とは、症状が消失してから実施する24時

間以上の間隔を置いた連続2回のPCR検査法により、鼻腔ぬぐい液、鼻腔吸

引液又は咽頭ぬぐい液の検体から病原体の遺伝子が検出されないことが確認さ

れた場合であって、発症から7日間を経過しているときとする。

■ これに基づき、退院時の陰性確認のための検査についても、保健所職員が感染

症指定医療機関から検体を搬送し、愛知県衛生研究所においてPCR検査を実施

した。

本市で陰性確認検査を実施した入院患者は1人であった。この患者の場合、第

1回目のPCR検査で6月19日(金)に陰性と判明したが、この日をもって感

染症法に基づく入院措置が必要なくなったため、第2回目の陰性確認検査をする

ことなく退院した。

(3)全数把握サーベイランス終了後(7月24日~)

■ 7月24日(金)に感染症法施行規則の一部が改正され、個々の発生例すべて

把握するのではなく、学校等における集団発生を重点的に把握することとされた

ことから、新型インフルエンザを確定させるための遺伝子検査(PCR検査)に

ついては、集団発生の端緒となる事例を探知する場合(クラスターサーベイラン

ス)、重症化のおそれがあるなど医療上の必要性がある場合(入院サーベイランス)

に検査を実施することとした。

■ さらに、流行している新型インフルエンザウイルスの抗原性、抗インフルエン

ザウイルス薬への感受性等を調べ、病原性の変化の把握や診断・治療方針の見直

し等に役立てること、及びインフルエンザウイルスの型・亜型(A型、H1、H

3、新型H1、B型)を調べることにより、流行しているインフルエンザ全体に

おける新型インフルエンザ(A/H1N1)の割合を評価することを目的として、

病原体定点医療機関に受診したインフルエンザ患者の一部についてPCR検査を

実施することとされた。(ウイルスサーベイランス)

(4)クラスターサーベイランス(7月24日~)

■ 新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る今後のサーベイランス体制につい

て(平成21年7月24日付け厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務

局事務連絡)に基づき、保健所は、医師、学校の設置者、社会福祉施設等の施設

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長等からの連絡により、同一の集団(学校、学習塾、社会福祉施設、医療施設、

職場等)において、新型インフルエンザ (A/H1N1)の集団的な発生が疑われ

る事例を把握することとなった。

■ 集団的な発生が疑われる事例を受けた保健所は、愛知県衛生研究所にPCR検

査の実施を依頼し、把握した集団発生が新型インフルエンザ(A/H1N1)に

よるものかどうか把握することとした。

なお、8月25日(火)にサーベイランス体制が変更され、新型インフルエン

ザ(A/H1N1)の集団発生であることを確認するためのPCR検査は原則実

施する必要がなくなった。(新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る今後のサ

ーベイランス体制について [平成21年8月25日付け厚生労働省新型インフル

エンザ対策推進本部事務局事務連絡])

(5)入院サーベイランス(7月24日~)

■ 新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る今後のサーベイランス体制につい

て(平成21年7月24日付け厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務

局事務連絡)に基づき、新型インフルエンザ(A/H1N1)と診断された入院

患者の数及びその臨床情報を把握することにより、当該感染症による重症者の発

生動向や病原性の変化等について推察、把握することとなった。

■ 本市では、インフルエンザ様症状を呈する患者であって入院を要するものを確

認した場合(ただし、インフルエンザ迅速診断キットB型陽性である場合等、新

型インフルエンザ(A/H1N1)である場合を除く。)、医療機関から患者の検

体を入手し、愛知県衛生研究所においてPCR検査を実施することとした。

■ 12月21日(月)からサーベイランス体制が変更され、新型インフルエンザ

(A/H1N1)に限らず、インフルエンザ様症状を呈する全ての入院患者がサ

ーベイランスの対象となるとともに、PCR検査は、インフルエンザ様症状を呈

する入院患者のうち、死亡例又は重症化した患者(死亡、脳症、人工呼吸器装着、

又は集中治療室入室の患者)のみに行うこととなった。(新型インフルエンザ(A

/H1N1)に係る今後のサーベイランス体制について [平成21年12月14日

付け厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務局事務連絡 ])

週別の検査件数は、以下のとおりである。平成21年7月27日(月)から平

成22年1月14日(木)までに64件のPCR検査を愛知県衛生研究所におい

て実施した。

第46週(11月15日(日)までの1週間)が14件と最も多かった。

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入院サーベイランスによるインフルエンザPCR検査件数(週別)

週 21年31週 32 33 34 35

日 7/27~8/2 8/3~9 8/10~16 8/17~23 8/24~30

件数 2 0 0 4 0

週 36 37 38 39 40

日 8/31~9/6 9/7~13 9/14~20 9/21~27 9/28~10/4

件数 0 1 0 0 1

週 41 42 43 44 45

日 10/5~11 10/12~18 10/19~25 10/26~11/1 11/2~8

件数 1 2 2 0 5

週 46 47 48 49 50

日 11/9~15 11/16~22 11/23~29 11/30~12/6 12/7~13

件数 14 12 8 2 2

週 51 52 53 22年1週 2

日 12/14~20 12/21~27 12/28~1/3 1/4~10 1/11~17

件数 1 1 0 1 5

週 3 4 5 6 7

日 1/18~24 1/25~31 2/1~2/7 2/8~14 2/15~21

件数 0 0 0 0 0

合計

64

■ PCR検査を実施した結果は、以下のとおりである。64件のうち59件(9

2.2%)が新型インフルエンザであった。

インフルエンザウイルス検出数

検査結果 A陰性 AH1pdm AH1亜型 AH3亜型 合計

件数 5 59 0 0 64

割合(%) 7.8 92.2 0 0 100

4 検疫所との連携(健康監視)

■ 平成21年4月29日付け及び5月8日付けの厚生労働省通知に基づき、新型イ

ンフルエンザがまん延している国又は地域からの帰国者のうち、発熱など症状がな

い者については、検疫法に基づき、検疫所から10日間の健康監視が実施されるこ

ととなった。具体的には、健康監視対象者の氏名、住所等の情報が、検疫所から都

道府県や政令市に連絡される。

■ 保健所は、この検疫所からの連絡に基づき、健康監視対象者の方々に電話等によ

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り連絡をとり、10日間、朝夕の1日2回、体温を測定するとともに、発熱など体

調に異常が生じた場合には、直ちに、保健所へ連絡するよう依頼した。

なお、健康監視期間については、5月13日付けの厚生労働省通知により10日

間から7日間へと短縮された。

■ 4月29日(水)に中部国際空港検疫所支所から、健康監視の依頼があって以後、

健康監視が終了する6月19日(金)までに実人数177人の健康監視を実施した。

■ 5月22日(金)に新型インフルエンザ対策本部においてとりまとめられた「医

療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針」に基づ

き、健康監視の対象者は濃厚接触者のみに変更された(5月22日(金)午前をも

って検疫所の機内検疫が終了)。これにより健康監視の件数は大幅に減少すること

となった。

■ 6月19日(金)には、「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要

請等に関する運用指針(改定版)」が取りまとめられたことを受け、機内における

濃厚接触者の健康監視は終了した。これに伴い、保健所が濃厚接触者に対して行う

健康監視も終了した。

なお、本市においては、健康監視対象者からの患者発生はなかった。

5 ワクチン接種

(1)ワクチン接種事業経緯、スケジュール等

ア 接種開始(10月23日)まで

■ 平成21年9月8日(火)に新型インフルエンザ対策担当課長会議(厚生労

働省主催)が開催され、厚生労働省が検討中のワクチン接種実施方法について

説明を行った。

■ 10月1日(木)、厚生労働省は「新型インフルエンザワクチン(A/H1N

1)ワクチン接種の基本方針」(以下、「基本方針」という。)を策定、翌10

月2日(金)には再度、新型インフルエンザ対策担当課長会議を開催し、「新

型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの接種に関する事業実施要綱」(最

終案)等の説明を行った。

都道府県の事務は、①ワクチンの接種スケジュールの決定、②受託医療機関

へのワクチンの納入量の決定、③ワクチンの流通調整、④住民に対する相談事

業、市町村の事務は、④住民に対する相談事業の実施とされた。

■ 愛知県は、優先接種の区分(妊婦及び基礎疾患を有する者)ごとに、各医療

機関から希望数を調査し、国からの配分量を一定の割合で、各医療機関に割り

振って配布した。

ワクチンの接種を行う受託医療機関及び優先接種の対象となる「インフルエ

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ンザ患者の診療に直接従事する医療従事者(救急隊員を含む。)」数の把握に

おいては、医師会に所属する医療機関は医師会が、国立病院機構や医師会に所

属しない医療機関については保健所が希望数量を調査し、愛知県に報告した。

妊婦や基礎疾患を有する者については、ワクチンを医療機関に納入する卸売

販売業者が各医療機関から希望数の調査を行った。

■ 愛知県は、把握した優先接種の対象となる医療従事者数をもとに、10月1

9日(月)に愛知県医薬品卸協同組合を通じて各医療機関のワクチン配付計画

を卸売販売業者に示した。配付計画数量は、国から配付されたワクチン(約5.

2万回分)のほぼ全量であったが、優先接種対象となる医療従事者(約13.

6万人)の4割弱にとどまり、特に優先接種の対象となる医療従事者数が多い

医療機関(豊橋市民病院などの病院)では、2割程度のワクチンしか配付され

なかった。

■ 10月22日(木)には、厚生労働省が接種回数の方針変更を行い、当初は

全ての方が2回接種であったものが、「20代から50代の健康な医療従事者

は1回接種」、「13歳未満は2回接種」とされ、それ以外の者は今後の知見

等から判断することとされた。

■ 国は10月16日(金)から医療従事者等に対するワクチン接種を開始する

スケジュールを示していたが、愛知県における医療従事者に対するワクチン接

種は、10月23日(金)から接種体制の整った医療機関において開始された。

【参考】 新型インフルエンザワクチン接種事業の概要

①目的

・ 死亡者や重症者の発生をできる限り減らすこと。

・ 患者が集中発生することによる医療機関の混乱を極力防ぎ、必要な医療提

供体制を確保すること。

②事業実施主体等

・ 国は、事業実施の主体として、ワクチンの確保、接種の優先順位を設定す

る。また、接種を行う医療機関と委託契約を締結し、ワクチンの接種を実

施する。

・ 都道府県は、具体的な接種スケジュールを設定するとともに、ワクチンの

円滑な流通を確保する。

・ 市町村は、ワクチン接種を行う医療機関(受託医療機関)を確保するとと

もに、住民に対して接種時期等を周知する。また、ワクチン接種費用につ

いて、必要に応じて低所得者の負担軽減措置を講じる。

・ 受託医療機関は、優先順位に従ってワクチン接種を行う。

※ ワクチン接種事業は、法律(予防接種法)に基づくものではなく、国

の予算事業として実施する。

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③優先接種対象者

当面確保できるワクチン量に限りがあり、供給が順次行われることから、

優先順位を設けて接種を行う。

1. インフルエンザ患者の診療に直接従事する医療従事者

2. 妊婦、基礎疾患を有する者

3. 1歳~小学校低学年に相当する年齢の者

4. 1歳未満の小児の保護者、身体上の理由により接種を受けることができ

ない優先接種対象者の保護者等

5. 小学校高学年、中学生、高校生に相当する年齢の者、65歳以上の高齢

※ 優先接種対象者以外の者に対する接種については、平成22年1月1

5日に基本方針が改定され、接種可能となった。

④ワクチン確保

国は、国内産ワクチン 5,400 万回分程度、輸入ワクチン1億回分程度を購

入する。

⑤費用負担

国は、被接種者又は保護者から、実費相当額(原則、全国一律の額)を徴

収する。

1回目:3,600 円

2回目:2,550 円(1回目と異なる医療機関で接種の場合 3,600 円)

⑥健康被害の救済

予防接種法に基づく季節性インフルエンザの定期接種に準じた救済措置を

講じることができるよう立法措置を講じる。(「新型インフルエンザ予防接

種による健康被害の救済等に関する特別措置法」平成 21 年 12 月 4 日公布・

同日施行)

イ 妊婦等の接種開始(11月16日)まで

■ 医療従事者に次ぐ優先接種順位である「妊婦」及び「基礎疾患を有する者」

のうち、「基礎疾患を有する、入院している小児」に対する接種は、11月9

日(月)に、「妊婦」及び「基礎疾患を有する、1歳から小学3年生に相当す

る年齢の者」(以下、「基礎疾患を有する者(小児)と、妊婦と併せて「妊婦

等」という。)に対する接種は、厚生労働省の定めた標準的スケジュールに沿

って11月16日(月)に接種体制の整った医療機関から開始された。

■ 11月9日(月)に愛知県の第2回目の配付計画が示され、医療従事者用約

5.2万人分を合わせて約24万回分が配付されることとなったが、医療従事

者に対する接種を行う全ての受託医療機関において優先接種の対象となる医療

従事者数に届くワクチンは約6割にとどまった。

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ウ 優先接種対象者の保護者等の接種開始(12月24日)まで

■ 「基礎疾患を有する者のうち小学校4年生に相当する年齢以上の者」(以下、

「基礎疾患を有する者(成人等)」という。)及び「1歳から小学校3年生ま

でに相当する年齢の者」に対する接種は、12月7日(月)から開始された。

■ 「1歳未満の小児の保護者及び優先接種対象者のうち、身体上の理由により

予防接種が受けられない者の保護者等」(以下、「優先接種対象者の保護者等」

という。)及び「小学校4年生から6年生までに相当する年齢の者」に対する

接種は、12月24日(木)から開始された。

■ 優先接種対象者の保護者等及び小学校4年生から6年生までに相当する年齢

の者の接種に必要なワクチンについては、既に接種が始まっている優先接種対

象者(妊婦や基礎疾患を有する者等)の接種を優先した上で、なおワクチンの

在庫に余裕がある医療機関に限って接種を実施するものとされた(愛知県にお

いては接種開始日(12月24日(木))までに必要量の把握ができず、ワク

チン配付が行われなかった。)。

■ 春日井市、半田市、安城市、犬山市、江南市、丹羽郡では、主に小児を対象

とした集団接種が実施された。(12月に1回目、平成22年1月に2回目の

接種を実施)

本市では、集団接種の必要性について、専門部会等で、集団接種におけるワ

クチンの必要量と確保の方法、接種する場所や方法について協議した。ワクチ

ン接種が開始された当初は、接種を希望する者が医療機関での予約ができない

など混乱が見られたり、できるだけ早く小学生などの若年層に接種が必要とす

る医療機関の意見もでていたが、ワクチン接種が優先される小学生などの多く

がすでに感染を受け、医療機関の予約をキャンセルする状況が生じていたこと、

ワクチン供給量が増えて医療機関での接種が円滑に行われるようになってきた

ことなど集団接種を優先して実施すべき状況が認められなくなったため、集団

接種の実施を見送った。

■ 厚生労働省は平成21年12月15日(火)に基本方針を改定し、優先接種

対象者以外の者に対しての接種を進めていくとともに、12月16日(水)に

は接種回数変更(3回目)を行い、13歳未満は2回接種、13歳以上は原則

1回接種とした。

エ 65歳以上の者の接種開始(平成22年1月15日)まで

■ 「中学生・高校生に相当する年齢の者」への接種は平成22年1月8日(金)、

「65歳以上の者」への接種は1月15日(金)から開始された。(12月中

下旬から一部の医療機関でワクチンの在庫に余裕がみられるようになってきた

ため前倒しされた。)

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オ 優先接種対象者以外の者の接種開始

■ 健康成人への接種は、1月26日(火)から開始された。(輸入ワクチン承

認の見込みと国産ワクチンの接種に余裕が生じてきたため)

カ 輸入ワクチン

■ 厚生労働大臣は、1月20日(水)、海外2社(グラクソ・スミスクライン

社、ノバルティスファーマ社)の輸入ワクチン2品目について、薬事法の規定

による特例承認を行った。そして、2月12日(金)に国から販社へ輸入ワク

チンとして第1回の出荷が行われた。

■ 本市の医療機関には、輸入ワクチンの希望は無かったが、愛知県内では名古

屋市内の医療機関1施設に対してノバルティスファーマ社製ワクチン34回分

(2バイアル)が供給された。

(2)ワクチン接種の実績

受託医療機関は接種に関する厚生労働省との契約の中で、毎月のワクチン接種

実績を市町村及び都道府県を通じて報告を行うことになっている。この報告によ

れば、平成22年3月末までの市内の延べ接種者数は約46,000人である。

【参考】本市の新型インフルエンザワクチン接種者数(平成22年3月末まで)

区分 接種者数(人)

医療従事者 5,709

基礎疾患がある者 16,374

妊婦 2,277

1歳から小学生3年生 7,210

小学校4年生から6年生 760

1歳未満の小児の保護者及び優先接種対象者のうち身体上の理由

により予防接種が受けられない者の保護者等 1,014

中学生・高校生 1,438

65歳以上の者 7,907

優先接種対象以外(1歳未満の小児及び健康成人(19歳~64

歳)) 3,437

計 46,126

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(3)ワクチン接種費用負担軽減措置

今回のワクチン接種については、個人の重症化防止を主たる目的とすることか

ら、市町村が行う市町村民税非課税世帯の者を対象にした実費負担相当額の負担

軽減措置に要する費用に対して補助を行うこととされた。(国1/2、都道府県

1/4、市町村1/4)

(4)ワクチン接種に関する広報等

■ 愛知県ホームページに接種医療機関が公表されたので、本市ホームページに

接種医療機関をリンクさせて市民等への周知に努めた。

■ 保健所等には、妊婦等の優先接種者への接種開始スケジュールが国から発表

されると「どこで接種が受けられるのか。」、「いつから接種を受けられるの

か。」、「接種の予約をしようとしたがその医療機関では一度もワクチン接種

をしたことが無いとの理由で断られた。」、「何か所も電話したがどこも予約

できない。」など、苦情や相談が多数寄せられた。

「予約できない。」との苦情に対しては、ワクチン事業が国と医療機関の契

約に基づいて実施されているものであり、保健所では予約、在庫等の状況を把

握していないため、公表された医療機関に電話するよう回答した。

■ 接種スケジュールや接種回数については、たびたび国の方針が前倒しされた

り、見直されていたため、医師会を通じて各医療機関に周知した。

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6 学校等の対応

(1)臨時休業等の要請

■ 国から平成21年5月22日(金)に示された「基本的対処方針」及び厚生労

働省から同日付けで示された「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業

の要請等に関する運用指針」に基づき、学校、保育施設等に対して、臨時休業を

含め感染拡大防止の配慮を要請することとなった。

■ 7月24日(金)に感染症法施行規則の一部改正により、全数把握が中止され

た以降についても、自主休業の実施により学校、保育施設等に対する臨時休業等

の要請を行うことはなかった。学校等からの感染防止対策に関する相談に対して

は引き続き応じた。

(2)インフルエンザ様疾患発生報告

■ 「インフルエンザの防疫対策について」(昭和48年9月20日付け衛発第1

02号厚生省公衆衛生局長通知)及び「インフルエンザ施設別発生状況に係る調

査について」(平成21年5月22日付け健感発第0522003号厚生労働省健

康局結核感染症課長通知)に基づき、学校等におけるインフルエンザの流行状況を

把握するため、臨時休業(学級閉鎖、学年閉鎖、休校)の状況等の情報を収集し、

週に1度、愛知県に報告した。

■ また、市内の流行状況等を周知するため、臨時休業等の措置をとった学校名及

びその学校の状況(措置期間、患者・欠席者数 )等を原則当日中に記者発表し、同時

に豊橋市医師会等医療関係団体、感染症指定医療機関、対策本部幹事会構成課室

へ情報提供した。

■ 例年、夏期には本報告を中止しており、10月頃に厚生労働省から愛知県を通

じて当該報告を開始する旨の通知があるが、愛知県では通知される以前に発生が

あったため、県の通知により前倒しで報告が開始された。

インフルエンザ様疾患(集団かぜ)により、防疫措置をとった施設数

大学・その

他の学校 高等学校 中学校 小学校 幼稚園 保育園 総計

休校(園) 2 0 0 3 1 0 6

学年閉鎖 1 4 24 87 8 0 124

学級閉鎖 8 22 150 268 22 0 470

学部閉鎖 1 1

計 12 26 174 358 31 0 601

(平成21年9月7日から平成22年2月15日まで)

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7 予算措置

■ 平成21年度から4年計画で、新型インフルエンザの発生に備え積極的疫学調査

に従事する保健所職員、発熱外来で従事する医療スタッフ等が使用する予防薬(抗

インフルエンザウイルス薬)、感染防護具等の備蓄、リーフレットの作成等を進め

ることとしていたが、4月の新型インフルエンザ(A/H1N1)の発生を受け、

発熱外来等医療体制の整備等を至急進めるため、平成21年6月補正予算において、

抗インフルエンザウイルス薬の追加備蓄、発熱外来を設置に必要な備品、消耗品等

の経費を計上した。

■ また、平成21年12月補正予算では、新型インフルエンザワクチンの接種に関

して低所得者への費用軽減措置に対する補助経費を計上した。予算の内訳を以下に

示す。

【参考】 新型インフルエンザ対策関連予算の概要

時期 予算額 概 要

21

当初 7,500千円

・抗インフルエンザウイルス薬の備蓄

・疫学調査員等の感染防護具等の備蓄

・リーフレットの作成等その他

6月

補正 6,000千円

・抗インフルエンザウイルス薬の備蓄

・発熱外来等医療体制の整備

12月

補正 71,491千円

・新型インフルエンザワクチン接種助成事業

(優先接種対象者)

3月

補正 33,369千円

・新型インフルエンザワクチン接種助成事業

(健康成人)

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第三 豊橋市におけるパンデミック H1N1 2009(新型インフルエンザ(A/H1N1))

流行時の患者搬送状況報告

❑ 平成21年10月19日(月)から平成22年2月11日(木)までに60人の新

型インフルエンザ患者を医療機関に搬送した。

搬送に当たっては、新型インフルエンザに関する情報が市民に浸透していたため、

119番通報時における聞き取りがスムーズに行えた。また、通報段階で新型インフ

ルエンザ疑いの判断が容易であったため、救急隊の感染防御もできた。

半数近くの患者は、一度医療機関を受診した後、自宅療養をしていて容態が悪化し

たものである。この状況は、市民が発熱相談センターを利用した結果、医療機関を受

診するよう指示を受けていたことが影響していると推測される。

搬送患者60名のうち、痙攣を発症していた者は14名、意識朦朧等意識状態が悪

化していた者は8名であった。年齢別では、20歳未満の若年層が全体の約70%を

占めていた。

【参考】 新型インフルエンザ患者の救急搬送状況(週別及び年齢別)

週 日 搬 送

患者数

搬送患者の内訳(年齢別)

10 歳 未満

10~ 19 歳

20~ 29 歳

30~ 39 歳

40~ 49 歳

50~ 59 歳

60~ 69 歳

70 歳 以上

43 10/19~25 2 1 1

44 10/26~11/1 1 1

45 11/2~8 5 1 2 1 1

46 11/9~15 10 5 3 1 1

47 11/16~22 6 5 1

48 11/23~29 12 7 3 1 1

49 11/30~12/6 7 3 1 1 2

50 12/7~13 3 2 1

51 12/14~20 5 1 1 1 2

52 12/21~27 2 1 1

53 12/28~1/3 3 1 1 1

1 H22/1/4~10 0

2 1/11~17 2 2

3 1/18~24 0

4 1/25~31 1 1

5 2/1~2/7 0

6 2/8~14 1 1

合 計 60 28 12 7 3 0 1 2 7

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第二章 医 療 編

~豊橋市におけるパンデミック 2009

(新型インフルエンザ(A/H1N1))流行に対する医療的検証~

第一 相談体制及び医療体制の確保等

❑ 平成21年初めまで豊橋市は、国及び愛知県に準じて新型インフルエンザ対策は、

高病原性H5N1インフルエンザウイルス感染を想定し行動計画を策定し準備をおこ

なってきた。平成21年4月から始まったパンデミックH1N1 2009(新型イ

ンフルエンザ(A/H1N1))の流行は、パンデミック時の医療体制を新型インフ

ルエンザ(A/H1N1)に即した対策に立て直すことが必要であった。

新型インフルエンザ(A/H1N1)の実態が明らかになるにつれて、7月24日

より新型インフルエンザ患者の全数報告が廃止、及び発熱外来が中止され一般医療機

関での診療が開始となり、新型インフルエンザ(A/H1N1)は moderate な疾患と

された1)。定点あたり新型インフルエンザ患者が1.0以上を流行と定義すると、平

成21年第34週から平成22年第8週までの流行を経験した。今回の流行において

当市でおこなった医療対策の検証をおこない、問題点を見出して次のパンデミックに

備えたい。

1 豊橋市における医療環境

豊橋市は人口384,294人で県内3番目の人口、15歳未満は58,024人

(15%)、65歳以上73,979人(19%)占める中核市である。市内には3

次病院として豊橋市民病院、2次病院として市内に5病院(豊橋医療センター、成田

記念病院、光生会病院、弥生病院、ハートセンター)となっている【図1参照】。

豊橋市民病院を中心に、豊橋医療センターなどの2次病院と医師会会員(内科・小

児科)が交代で出務する1次医療機関としての休日夜間急病診療所(平日準夜帯、日

祝日昼間・準夜帯)で時間外診療をおこなっている。なお、小児救急に対応できるの

は豊橋市民病院、豊橋医療センター、休日夜間急病診療所の3ヶ所のみである。

当市が属する東三河南部医療圏においては、2次病院として豊川市民病院、蒲郡市

民病院、厚生連渥美病院があり、市内及び医療圏における病床数は【表1】に示すと

おりである。医療圏の人口は約77万人、そのうち15歳未満の小児人口はおよそ1

1万人、小児科入院施設は豊橋市内の2病院を含めて5病院である。

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【図1】豊橋市及び東三河南部医療圏の2次病院・3次病院と人口

【【表表11】】

東三河南部医療圏内の医療機関の病床数 ( )内は豊橋市内分

病院数 病床総数 一般 結核 感染症 療養 精神

38

(23)

7,892

(5,460)

3,345

(2,054)

42

(34)

10

(10)

2,874

(1,847)

1,621

(1,515)

2 平成21年4月までの新型インフルエンザ対策

平成20年4月、高病原性H5N1インフルエンザウイルス感染を念頭とした、国

の新型インフルエンザ行動計画及びガイドラインに基づいて、市内の医療体制維持を

目的として、医師会・行政の合同で新型インフルエンザ対策委員会を立ち上げ、豊橋

市の新型インフルエンザ対策とともに、市内医療機関の現状把握、及び発熱外来の設

置方法などの検討をおこなってきた。平成21年1月、市内医療機関に対して、パン

新城市(5万)

豊川市(18万)

蒲郡市(8万)

田原市(7万)

(湖西 4万)

総人口:約77万人

+(湖西4万人)

豊橋医療センター

豊橋市民病院

蒲郡市民病院

渥美病院

豊川市民病院

成田記念病院

豊橋市(38万)

弥生病院

光生会病院

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デミック時の医療体制整備を目的として「新型インフルエンザに関する調査」を実施

した。

平成21年2月、インフルエンザ行動計画の改定を機に、豊橋市新型インフルエン

ザ医療対策委員会(委員長山本義樹医師会長、構成委員:医師会長、歯科医師会長、

薬剤師会長、市民病院長、豊橋医療センター院長、成田記念病院院長、光生会病院院

長、弥生病院院長、保健所、消防、その他市行政機関)と豊橋市新型インフルエンザ

医療対策委員会専門部会を2月25日に立ち上げ、国立感染症研究所感染症情報セン

ターの大日康史主任研究官、森兼啓太主任研究官(現山形大学医学部准教授)の助言

をいただき、パンデミック時の被害想定を発病率30%、死亡率を2%程度とし総患

者数115,400人、1日当たりの入院患者数4,574人を想定した【表2参照】。

国のガイドラインに沿って、感染拡大期における医療体制の確保と拠点を設けた発

熱外来での診療方法を検討していくこととした。しかしながら、2月27日には当市

において鶉のH7亜型の発生ため行政が対応に忙殺され実質的な検討に入れなかった。

【表2】

発 病

率 死亡率 総患者数

1日当たり

の 最 大 有

症者数

1日当たり

の 最 大 発

症者数

1日当たり

の 最 大 入

院患者数

1日当たり

の 最 大 新

規 入 院 患

者数

総 死 亡 者

20% アジアインフ

ルエンザ並 77,584 4,630 660 371 51 282

20% スペインイン

フルエンザ並 77,584 4,701 660 1,865 254 1,513

25% アジアインフ

ルエンザ並 95,989 7,443 1,062 596 82 348

25% スペインイン

フルエンザ並 95,989 7,554 1,062 2,995 409 1,872

30% アジアインフ

ルエンザ並 115,406 11,382 1,626 910 125 419

30% スペインイン

フルエンザ並 115,406 11,545 1,626 4,574 627 2,251

2 保健所での発熱相談センター等相談体制

(1)相談体制

■ 新型インフルエンザの発生が疑われた平成21年4月26日(日)の時点で、

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保健所生活衛生課に「相談窓口」を開設(午前9時から午後5時まで)し、市民

等からの新型インフルエンザの相談に応じる体制を整えた。

■ 4月28日(火)には、WHOが新型インフルエンザの発生を確認し、パンデ

ミック警戒レベルをフェーズ4に引き上げたことから、保健所の「相談窓口」を

「発熱相談窓口」とし、保健所管理課及び保健予防課にも窓口を増設(専用回線

数を3本に増設)して市民等の発熱の相談等に応じるなど、体制を強化した。こ

の「発熱相談窓口」は、24時間体制(土日も開設。土日も含め、夜間はオンコ

ール体制)とした。

■ 市内に初めて新型インフルエンザ患者の発生が確認された6月17日(水)か

ら保健所大会議室に「コールセンター」を設置(専用回線数を6本に増設し、9

時から17時まで常時6人体制で対応)し、相談体制に万全を期した。コールセ

ンターは、新型インフルエンザ患者の全数把握が中止される7月23日(木)ま

で設置された(7月24日(金)以降は「新型インフルエンザ相談窓口」を開設)。

(2)相談件数、相談内容等

■ 相談件数は、国内初の患者が確認された5月16日(土)以降、急増し、5月

19日(火)、21日(木)には1日最大114件の相談が寄せられた。保健所

では、寄せられた相談のうち、感染が疑われる場合には、発熱外来への受診を勧

奨し、その数は、7月23日(木)までに87人に及んだ。

■ 7月31日(金)までの相談内容は、発熱等に関する健康相談が最も多く全体

の86.5%を占めた。次いで、発熱時にどのように対応すべきなのかなどの医

療体制に関する相談、新型インフルエンザの予防方法や治療に関する相談が続い

た。

(3)発熱相談への対応

■ 保健所の発熱相談窓口では、相談内容から、厚生労働省が定めた新型インフル

エンザの症例定義に従って、新型インフルエンザの疑いがあり発熱外来での受診

が必要と判断した場合には、深夜であっても、豊橋市民病院に設置された発熱外

来での受診を勧奨した。発熱外来での受診に際し、自家用車がない場合など受診

まで多くの者に接触する恐れのある場合は、保健所職員がN95マスク等(新型

インフルエンザの感染経路が飛沫感染を主体とするものであると判明した以後

はサージカルマスク等)で感染防護をしたうえで、運転席と患者席(後部座席)

をビニールシートで隔離した患者搬送用の公用車で、患者を発熱外来に搬送し、

診察後は必要に応じて自宅に搬送した。

■ 新型インフルエンザの感染の疑いがあるかどうか(発熱外来での受診が必要か

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どうか)の発熱相談窓口での判断は、厚生労働省の示した症例定義を参考にして、

患者の症状、接触者、渡航先等の情報から判断していたが、相談に対応する職員

ごとに判断に違いが生じないよう判断フロー図を作成し、すべての担当職員が同

様に判断できるようにした。判断ブロー図は、新型インフルエンザの性状が明ら

かになり、患者の発生地が増加(感染が拡大)するのと並行して、随時改訂した。

■ 国の方針では、7月24日(金)以降発熱外来を廃止し、原則全ての医療機関

で外来患者の診察を行うこととされた。本市では、発熱相談や発熱患者の診察が

可能な医療機関の問い合わせがあった場合は、あらかじめ豊橋市医師会の協力を

得て把握した「新型インフルエンザ受診可能医療機関」を紹介した。

■ 市内の全ての医療機関で新型インフルエンザ患者への対応が可能となったこ

とから、新型インフルエンザの感染を疑う相談があった場合は、事前に医療機関

へ連絡し医療機関の指示のもとマスクを着用して公共交通機関を利用せず受診

すること、新型インフルエンザとの診断を受けた場合には、発熱後7日間は外出

を自粛することなどを要請した【表3参照】。

※ 新型インフルエンザワクチンの接種が開始された10月以降は、ワクチン接

種に関して、どこの医療機関で接種可能か、いつから接種が可能なのかなどの

相談が急増した。

【表3】

新型インフルエンザに関する相談件数(平成21年7月末現在)

単位:人 ( )内構成比%

新型インフルエンザに関する相談件数

計 健康相談 医療体制 予防・治療 渡航 食品 その他

豊橋市 2,720 2,352 66 67 8 0 227

3 医療体制の確保(保健所・豊橋市民病院)

(1)発熱外来の設置等外来診療

■ 国が策定した「新型インフルエンザ対策行動計画」においては、第二段階(国

内発生早期)以後、発熱外来を設置し、発熱患者に対応することとされていたこ

とから、WHOがパンデミック警戒レベルをフェーズ4に引き上げた平成21年

4月28日(火)に、愛知県は、東三河医療圏の第2種感染症指定医療機関であ

る豊橋市民病院に対して発熱外来の設置準備を依頼した。保健所には、豊橋市民

病院に対し発熱外来の設置を依頼した旨の通知が県からあった。

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<発熱外来>

― 第二段階(国内発生早期)から第三段階の感染拡大期まで ―

新型インフルエンザの患者とそれ以外の疾患の患者とを振り分けること

で両者の接触を最小限にし、感染拡大の防止を図る。

― 第四段階のまん延期以降 ―

感染防止策を徹底した上、新型インフルエンザの患者の外来集中に対応

することに加え、軽症者と重症者の振り分け(トリアージ)の適正化によ

り入院治療の必要性を判断する。

■ 5月1日(金)に豊橋市民病院は南病棟2階(感染症病床)の感染症患者用病

室を新型インフルエンザが疑われる発熱患者用の診察室とし発熱外来を設置し

た。

【写真:豊橋市民病院南病棟2階(感染症病床)の風景】

■ 発熱外来を受診する患者は、南病棟前の駐車場から南病棟南側の玄関(通常使

用していない。)まで、保健所職員が感染防護具を着用して誘導し、玄関から2

階の診察室までは病棟の看護師が案内した。

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【写真:感染症病床での診察風景】

■ 発熱外来の診察のほとんどは、現豊橋市民病院感染症管理センター長の山本景

三医師と感染管理認定看護師の高橋一嘉看護師が担当し、深夜に診察を行う場合

もあった。

■ 診察でインフルエンザ迅速検査キットを用いインフルエンザA型陽性となっ

た場合は、当日、遅くとも翌日にはPCR検査を実施して、新型か季節性かの確

認を行った。PCR検査の実施に当たっては、愛知県衛生研究所とその都度調整

し、発熱外来で採取された検体を保健所職員が愛知県衛生研究所まで搬入した。

検査結果は搬入後4~6時間後には判明し、電話で連絡された。

■ 5月16日(土)に神戸市内でわが国初の患者が確認され、国が新型インフル

エンザの発生段階を第二段階(国内発生早期)に引き上げたことから、本市にお

いても、豊橋市民病院の車庫棟の中に3診体制で診察ができるように発熱外来を

増設し、患者の増加に備えた。

■ 今回の新型インフルエンザの病原性がスペインインフルエンザと同程度のも

のであると仮定した場合、豊橋市内に少なくとも5診体制で発熱外来を増やす必

要があると考えられていたため、平成21年6月補正予算で、発熱外来を設置す

る医療機関が使用する備品、個人感染防護具、抗インフルエンザウイルス薬の備

蓄等を行った。

しかし、発熱外来が廃止される7月23日(木)まで、豊橋市民病院以外に発

熱外来を設置することはなかった。また、豊橋市民病院の車庫棟に設置された発

熱外来を利用することもなかった。

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■ 本市では、発熱外来の設置医療機関名・所在地等を非公表とし、発熱外来の受

診は全て保健所の発熱相談窓口からの紹介とした。

■ 発熱外来を設置していない一般の医療機関では、7月23日までは、感染の疑

いのある患者の一般外来での受診を防ぐため、保健所と医師会が作成したポスタ

ー(新型インフルエンザの感染の疑いがある者は医療機関の受診の前に保健所に

連絡する旨を注意喚起したポスター)を玄関に張りだしたり、受け付け窓口で保

健所が作成した「判断フロー」を参考にして、疑いのある者については保健所に

連絡して発熱外来に受診させた。

■ 7月24日(金)には、感染症法施行規則の一部改正により、全数把握が中止

されたことを受け、本市においても、原則として全ての医療機関で発熱患者の診

療が行なわれることとなったが、保健所の新型インフルエンザ相談窓口(7月2

3日(木)までの発熱相談窓口)に発熱患者の診察可能な医療機関の問い合わせ

があった際には、事前に医師会の協力で把握した診察可能医療機関を紹介した。

■ ファクシミリ等による抗インフルエンザウイルス薬等の処方せんの送付及び

その応需(以下「ファクシミリ処方」という。)については、8月28日(金)

付け厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務連絡においてファクシミ

リ処方の留意点等が示されていたが、10月8日(木)に愛知県内にインフルエ

ンザ警報が発令され、患者数が急速に増加することが懸念されたため、10月1

5日(木)から当該事務連絡のファクシミリ処方の留意点等を適用することとし、

(社)豊橋市医師会、(社)豊橋市薬剤師会等関係機関に周知した。

■ 市内の患者数が急増した10~11月にかけて、小児の発熱患者の受診が豊

橋市民病院や夜間休日急病診療所に集中した。これらの医療機関では、発熱患

者の診察を来院から4~5時間かかったケースもあった。休日夜間急病診療所

では小児担当の医師を2診体制に増やすなど、医師会が患者や医療スタッフの

負担の軽減に配慮した。また、駐車場が不足したため、近隣の高等学校から駐

車場を借用し、市福祉保健部の職員が駐車場整理を行った。

(2)入院対応

■ 新型インフルエンザの入院患者については、まずは、東三河唯一の感染症指定

医療機関(第2種)である豊橋市民病院において対応し、そのキャパシティを超

えた場合等は一般病床を有する入院医療機関(主に二次救急医療機関)において

協力を依頼し対応することとしていた。

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【参考】<愛知県の第一種感染症指定医療機関>

配置基準 病 院 名( 所 在 地 ) 病床数

県内1か所 名古屋第二赤十字病院(名古屋市) 2

<愛知県の第二種感染症指定医療機関(感染症病床を有する医療機関に限る)>

二次医療圏名 病 院 名( 所 在 地 ) 病床数

名古屋 名古屋市立東部医療センター東市民病院 (名古屋市) 10

海部 愛知県厚生農業協同組合連合会海南病院 (弥富市) 6

尾張中部 ― ―

尾張東部 公立陶生病院 (瀬戸市) 6

尾張西部 愛知県立循環器呼吸器病センター (一宮市) 6

尾張北部 春日井市民病院 (春日井市) 6

知多半島 愛知県厚生農業協同組合連合会知多厚生

病院 (美浜町) 6

西三河北部 愛知県厚生農業協同組合連合会豊田厚生

病院 (豊田市) 6

西三河南部 愛知県がんセンター愛知病院 (岡崎市) 6

東三河北部 豊橋市民病院 (豊橋市) 10

東三河南部

計 62

■ 6月17日(水)に市内で初めて確認された新型インフルエンザ患者1名に対し、

感染症法第19条の規定に基づき保健所長が入院勧告し、豊橋市民病院に入院措置

された。この患者は、軽症であり1回目のウイルス検査で陰性が確認されていたが、

6月19日(金)に入院措置が中止されたため、この日に退院した。

【参考】 豊橋市民病院における感染症法第19条に基づく措置入院の状況

月日 6/2 6/3 6/4 6/5 6/6 6/7 6/8 6/9 6/10

本市の患者数 0 0 0 0 0 0 0 0 0

市外の患者数 1 0 0 0 0 0 0 0 0

入院患者数合計 1 0 0 0 0 0 0 0 0

月日 6/11 6/12 6/13 6/14 6/15 6/16 6/17 6/18 6/19

本市の患者数 0 0 0 0 0 0 1 0 0

市外の患者数 0 0 0 0 0 0 0 0 1※

入院患者数合計 0 0 0 0 0 0 1 0 1※

(市内1人、市外2人、合計3人 ※即日退院)

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■ 6月19日(金)の入院措置の中止後は、原則、全ての医療機関において入院

患者に対応した。

■ 8月中旬からは感染症発生動向調査における1定点医療機関あたりの平均患者

報告数が「1」を超え、患者数の急増が憂慮されたことから、国の8月28日(金)

付け事務連絡に基づき、県内の全病院を対象に新型インフルエンザ入院患者受入

れ病床数、人工呼吸器の保有台数、稼働率等の調査を行った。

(3)豊橋市民病院発熱外来の検証 ~ 感染症管理センター長 山本景三医師

豊橋市民病院では平成21年5月1日に発熱外来を実質的に開設した。米国から

帰国した成人がインフルエンザ様症状を認めていると豊橋市保健所から連絡が入り、

ひとまず感染症病床内の診察室を利用して診療を行った。その後診療は24時間態

勢で行い、成人患者は感染症管理センター医師が、また小児患者は小児科医師が交

代で担当した。看護師は感染管理認定看護師及び看護師長が対応した。当初患者数

は少なかったが、受診者が増加すれば公用車の車庫を改装して診察室とすることと

した。しかし結果的には使用することはなく、感染対策の面からも感染症病床内の

診察室の方が有利であった。5月16日に国内で初めての症例が神戸市で確認され

ると、その翌週月曜日の18日からの1週間で29人が受診した。新型インフルエ

ンザと診断された患者(RT-PCR法でA/H1新型陽性)は6月16日に第1

例を認めた。

診療にあたって感染予防策は、当初は標準予防策に加え接触・飛沫・空気予防策

をすべて適用した。具体的には手袋(二重)、ガウン、キャップ、ゴーグル、N9

5レスピレーターの個人防護具PPEを着用し、診察室の陰圧装置を稼働させた。

その後ウイルスの病原性が季節性ウイルスと同等であることが判明し、米国疾病管

理予防センターCDCや厚生労働省の感染対策の指針に従ってPPEを簡略化して

いった。

感染症法上の入院勧告は6月19日以降行われないこととなったが、この間に3

人の患者が感染症病床に入院となった。3人(市外2人)とも無症状もしくは軽症

であった。感染症病床は普段は閉鎖されているので、再稼働するにあたって勤務す

るスタッフの充当など大変な困難があった。

7月24日に新型インフルエンザ運用方針が改定され、一般の医療機関でも診療

することとなった。これに伴い発熱外来も廃止となったが、この間に93人の患者

が受診した。新型インフルエンザと診断された患者は18人、季節性インフルエン

ザが7人(A香港型4人、B型3人)であった【図2参照】。

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発熱外来受診者数

0

2

4

6

8

10

12

2009/5/1

2009/5/8

2009/5/15

2009/5/22

2009/5/29

2009/6/5

2009/6/12

2009/6/19

2009/6/26

2009/7/3

2009/7/10

2009/7/17

日付

人数

A/H1pdm A/H3 B Flu(-)

【図2】

4 患者等への対応

■ 保健所の発熱相談窓口への相談において、新型インフルエンザへの感染が疑われ

た場合は、発熱外来への受診を勧めるとともに、発熱外来やPCR検査を行う愛知

県衛生研究所等との調整を行い、必要に応じて、当該患者を発熱外来まで搬送した。

■ 保健所は発熱外来等医療機関にPCR検査用培地(VTM)を提供するとともに、

採取された検体を直ちに県衛生研究所へ搬入した。

保健所による感染を疑う患者の検体の愛知県衛生研究所への搬入は、全数把握が

中止される平成21年7月23日(木)まで続けられた。

■ 愛知県衛生研究所のPCR検査の結果、新型インフルエンザの感染が判明した場

合には、直ちに報道発表するとともに、患者に対しては保健所長が感染症法に基づ

き入院勧告を行った(入院勧告は6月18日(木)まで)。

■ 退院に当たっては国が示した「退院の基準」に基づき、再度愛知県衛生研究所で

PCR検査を行い、ウイルスが検出されないこと等を確認した。

■ また、保健所は患者やその家族などに対して感染症法第15条に基づき、国の示

した「新型インフルエンザ積極的疫学調査実施要綱」等により、症例調査、接触者

調査等の積極的疫学調査を実施した。

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【参考】

新型インフルエンザ積極的疫学調査実施要綱の概略

暫定版(5月1日) 6月25日付け事務連絡

調査対象事例 すべての確定患者確認事例 クラスター(集団発生)

調査事項

症例調査

症例基本情報・臨床情報調査、症例行動調査、感染源調査

※ただし、7月版では詳細な感染源調査は実施しない

接触者調査 以下の順に実施

接触者の定義、リスト作成、状況確認調査、

初回面接又は電話調査及び保健指導、追跡調査

疫学調査員の

感染防御

N95マスク、ゴーグル等、手

袋及びガウンを着用

サージカルマスク及び手袋

濃厚接触者

への対応

・最終暴露日から10日間の健

康観察の実施

・抗インフルエンザウイルス薬

の予防投与

・外出自粛の要請

・健康観察は実施しない

・発熱時等の保健所への連絡

を依頼

・重症化の危険性等がある場

合を除き抗インフルエン

ザウイルス薬の予防投与

は行わない

・感染拡大防止行動の重要性

を説明し協力を求める

※ なお、6月25日付け事務連絡での改正内容については7月22日(木)に「積

極的疫学調査実施要綱」の改定として、改めて厚生労働省から事務連絡されている。

■ 症例行動調査等を通じて特定した濃厚接触者については、現在の症状等を確認

するとともに、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与、接触後10日間(5月

13日(水)以降は7日間)の健康観察や外出自粛の要請等を行った。

全数把握が中止された7月24日(金)以降は、積極的疫学調査は集団発生時

のみ実施し、濃厚接触者に対しても、外出自粛の要請は行わず、感染拡大防止行

動の理解と協力を求めることとした。

■ 抗インフルエンザウイルス薬の予防投与については、入院勧告を行っていた6

月18日(木)までは、「運用指針」に基づき濃厚接触者を対象に、6月19日

(金)の「運用指針」の改定に伴い、濃厚接触者のうち基礎疾患を有する者等の

みを対象として実施することとされていたが、本市では予防投与の実施はなかっ

た。

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また、「運用指針」改定により、外来部門は一般医療機関での診療をおこなう

との指示がなされたが、この時点では1例のみであったため、現行どおり市民病

院発熱外来での対応を、新型インフルエンザ対策委員会専門部会の検討で決めた。

また、愛知県では新型インフルエンザ(A/H1N1)患者に対する入院勧告

は、この日を以て中止となった。診療体制の移行に伴う混乱を避けるため、市内

医療機関に対して、発熱患者の診療に参加する意志を6月30日に調査し、医療

機関数を把握した後に、一般医療機関での診療を7月24日から移行することと

した。診療体制移行後発熱患者は、原則としてかかりつけ医での受診を市民に周

知、また、かかりつけ医のない発熱患者に対しては、保健所が近隣の医療機関を

紹介するシステムとした。

【参考】

基礎疾患を有する者等とは?

新型インフルエンザに罹患することで重症化するリスクが高いと考えられる者

をいう。通常のインフルエンザの経験に加え、今回の新型インフルエンザについ

ての海外の知見により、以下の者が該当すると考えられる。

・妊婦 ・幼児 ・高齢者 ・慢性呼吸器疾患・慢性心疾患・代謝性疾患(糖

尿病等)・腎機能障害・免疫機能不全(ステロイド全身投与等)等を有しており

治療経過や管理の状況等を勘案して医師により重症化へのリスクが高いと判断

される者等

第二 7 月 24 日以降の新型インフルエンザ(A/H1N1)対策と流行状況

❑ 感染症法施行規則の一部改正により、7月24日より全数報告からクラスターサー

ベイランスへ移行することになった。このため、患者動向の情報はインフルエンザ定

点、及び豊橋市独自の小児科専門定点(市内小児科開業医18ヶ所からの15歳未満

の報告)からの報告のみとなり、また、この報告が週毎の集計であるため機動性に欠

けること及びクラスターを、個々の医療機関で迅速に把握するのは困難であることか

ら、医師会が中心となり、市内すべての医療機関からの全数報告を行うこととした。

医師会長名で各医療機関に周知をおこない【図3参照】、医療機関からの報告書は

簡単に記入できる様式にした【図4参照】。

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【図3】医師会長名による全数報告の依頼

新型インフルエンザ患者発生報告書

報告年月日 平成 年 月 日

医療機関名

患者住所 市 町

性 別 男 ・ 女

年 齢 歳 ・ ヶ月

患 者 の 属 す る

集団名

保育園 ・ 幼稚園 ・ 学校 ・ 社会福祉施設

医療施設 ・ 職場 ・ 部活 ・ 寮 ・ 塾等

施設名( )

患 者 の 属 す る

集団での発生 有 ・ 無

その他

豊橋市医師会事務局 宛(FAX 46-3656)

【図4】医療機関から医師会事務局への報告書

病 医 院 長 殿

豊橋市医師会長 山 本 義 樹

A型インフルエンザ患者報告のお願い

(新型インフルエンザのサーベイランス変更に伴う患者把握のため)

盛夏の候 益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。

また日頃は医師会活動にご協力頂き、感謝する次第です。

さて、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の一部を

改正する省令が7月24日より施行されました。この改正により新型インフルエンザ

のサーベイランスがクラスターサーベイランスに変更となり医師の届け出も変更に

なりました。即ち、同一集団または施設において1週間以内にインフルエンザ様症状

のある患者が複数名いた場合に保健所への届け出が必要となりました。

しかしながら、個々の医療機関においてインフルエンザ様症状を呈する患者が同一

集団・施設に発生していることを把握するのは難しい面があります。

つきましては、季節性のインフルエンザが流行する当分の間、A型インフルエンザ

と診断された場合は別紙報告書にてFAXでお送りして頂きたいと存じます。

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報告書は医療機関から医師会にFAXで送付、事務局で集計し、毎日午前・午後の

2回医師会メーリングで患者情報(性別・年齢・町名・属する集団の発生の有無・報

告医療機関名)を医療機関に伝えると同時に、保健所とも情報共有した【図5参照】。

この報告システムは8月25日に再度感染症法施行規則が改正され、クラスターサ

ーベイランスが中止されても第42週(定点当り10.9人)まで続け、その後はイ

ンフルエンザ定点での患者数を週毎に報告した。

【図5】A型インフルエンザ報告の流れ

1)全数報告:夏休み中の患者発生はクラブ活動、合宿などによる集団発生が目立

った。全数報告のシステムではインフルエンザ定点報告において把握できなかっ

た15歳から19歳の患者増加が第35週よりの増加傾向がわかる【図6参照】。

次に10歳から14歳の患者が増加しているのがわかる。この年齢層は内科医か

らの報告が多くを占めていた。

このように流行初期には、全数報告のシステムの方が一定以上の患者数になる

まではインフルエンザ定点報告より患者動向を把握しやすいこと、及び当日に情

報が得られることが長所に挙げられる。しかし、入力・集計に手間がかかること

が欠点であった。今回のシステムは医療機関からは高い評価を得た。今後も同様

な報告システムを構築していきたい。

医療機関

医師会

豊橋市保健所 休日夜間急病診療所

診断した患者毎情報

を医師会宛に FAX 送信

発生情報を

知らせる

医師会メーリングで

一日 2 回発生情報を知

らせる

医療機関からの情

報を FAX で送付

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【図6】豊橋市内インフルエンザ患者数変化(7/27から10/10)

2)小児科定点報告:この報告は、市内を国道・鉄道・河川により5区分(中部・東

北部・東南部・西部・南部)に分けて、感染症の動向をみている【図7参照】。

小児科定点では定点あたり1.0を越えるのは、第40週に入ってからであった。

これは10歳〜14歳の患者が、小児科より内科診療所に受診する傾向が強いた

め、反映されなかった可能性がある。流行は平成22年第8週まで続いた。流行

は東の部分からはじまり、全市的に拡大をみせた【図8参照】。また、第45週

から第49週の増加の中で、著しく増加した西部・南部地区は学校行事との関連

性を伺わせた。

a.全数報告

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b.インフルエンザ定点報告

【図7】

【図8】

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3)インフルエンザ定点報告:市内では第34週に定点当たり1.0を越え、第3

8週には愛知県内で定点あたり10を越え“インフルエンザ注意報”が出され

たが、豊橋市では1.5と低かった。第40週には愛知県で“インフルエンザ

警報”がだされた。この時点では2.8と低い。愛知県全体では第46週にピ

ークを迎えたが、豊橋市においては第42週に10.9、第44週には33.

1と増加、第48週に83とピークを迎え、愛知県全体と比較して2週ずれた

がピーク値は高かった【図9参照】。この増加は5歳〜9歳の感染者が第46

週から48週にかけて急激に増加したことに起因した【図10参照】。第50

週以降急速に低下し、平成22年第8週に1.6、第9週には1.0以下とな

り、およそ28週間の流行であった。感染者は5歳〜9歳が一番多く、次に1

0歳〜14歳、0〜4歳の順となり全国と同じ傾向であった。

【図9】

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【図10】

8月中旬からの沖縄での新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行、及び患者

集中による医療機関が混乱した情報を得て、対策を検討し実行した。以下に我々が

おこなった対応とその結果を記す。

4)救急外来への対応と結果:パンデミック時には、患者が市民病院・休日夜間急

病診療所に集中することが予測され、市民病院の3次機能を破綻させないために、

可能なかぎり休日夜間急病診療所で受け入れることを目的に、特に患者層は15

歳以下が多く占めるために、休日における小児科診療を2診体制で臨むことに関

して、9月初旬に医師会・小児科医会の了解をとり体制を整えた。後日、佐原市

長名で休日急病夜間診療所の体制確保の要請があり、増員も市の公認のもとにお

こなわれることになった。

発熱をきたしインフルエンザの診断を求めて直ぐに受診する患者が多くを占

める可能性を考え、診療所にはインフルエンザ迅速検査の有効利用のため、発熱

後12時間以降の陽性率が高いことを掲示した【図11参照】。

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【図11】

患者数が定点あたり5人となった10月17日より、休日夜間急病診療所での

日祝日での2診体制を開始、さらに11月21日より土日祝日の準夜帯も2診体

制に移行した。患者数が増加した場合診療拠点を増やすことを念頭に、小児科医

が足りないため、応援医師は小児科を標榜している内科開業医を充てることも考

慮した。休日夜間急病診療所の平成21年8月から平成22年1月までの小児

科・内科別患者数変化をみると、小児主体であることを示している【図12参

照】。土日祝日の休日夜間急病診療所の小児患者数を提示する【図13参照】。

小児科診療の増設のタイミングは、患者数からみると1週遅れた感がある。祝

日の10月10日より小児科患者数150人を越えるようになり、10月31日

には200人を越えた。11月7日には250人を越え、休日夜間急病診療所の

駐車場に入りきれなく、待機する車が国道259号の1車線を時習館高校の信号

まで占有する事態となった。診察までに3時間から4時間待ちの状態となったた

め、佐原市長の指示により、健康福祉部(当時)の部長及び健康課の課長以下課

員が出動し交通整理にあたった。ピーク時の11月22日23日は、診療までに

4~5時間待ちの状態で、駐車場を福岡小、保健所に確保し誘導をおこなう事態

となり、診療は内科医師も中学生の診療に応援をいただき、小児科3診体制の様

相で殺到する小児科患者に対応した。

診療所のスペースから診療体制は3診が限界であったが、幸いにも、成人患者

が増加しなかったため破綻を免れた。この時点でインフルエンザ迅速検査試薬の

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在庫がなくなり、一部豊橋市民病院より借りた。また抗インフルエンザ薬のタミ

フルドライシロップも無くなり、カプセルを外して対応せざるを得なくなった。

日曜休日及び土曜日の休日夜間急病診療所・豊橋市民病院・豊橋医療センタ

ーへの小児救急患者受診者の比較では、休日夜間急病診療所が市内の患者の6

6%を診療し、病院に患者が集中するのを防ぐ効果があった【図14参照】。1

0月から12月までの土日祝日の小児科受診者数7,045人、市外からの受

診者は306人で予想より少なかった。

【図12】休日夜間急病診療所の内科・小児科別患者数の推移

【図13】休日夜間急病診療所土・日の小児患者数の推移

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【図14】休日夜間急病診療所が患者の病院集中を防いだ?

10月16日、厚生労働省から新型インフルエンザ(A/H1N1)外来患

者の急速な増加に対する医療体制の確保の通知がなされたが、実際には夜間の

診療時間を延長してインフルエンザ患者を診療おこなった診療所は6%程度で

あった。このことは、流行期間が通常の季節性インフルエンザよりおよそ28

週間と長かったことが、診療時間にも影響した可能性も否定できない。

流行期、特に第45週から第52週の間は、発熱症状が出現して直ぐにイン

フルエンザ迅速検査を希望する患者が、休日夜間急病診療所に多く訪れ、迅速

検査キットの不足をきたした。そのため第49週よりは、原則として休日夜間

急病診療所・豊橋市民病院救急外来・豊橋医療センター救急外来では迅速検査

を施行せず、臨床症状で判断して新型インフルエンザ(A/H1N1)の治療

をおこなうことを申し合わせて市民に周知した。

4)入院への対応と結果:市内での実際入院を必要とする場合として、豊橋市新型

インフルエンザ(A/H1N1)重症患者搬送・受け入れネットワーク情報事

業を、市内の病院を対象に9月26日に立ち上げ、実施要領は図に示すとおり

とした。病床情報の共用と、重症者の円滑な入院を目的としたシステムとし開

始した。運用方法は各医療機関からの報告をまとめ【図15参照】、午後5時

時点の状況を集計し市休日夜間急病診療所が夜間の対応をおこなった。フロー

は以下のとおりである。

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【参考】休日夜間急病診療所の対応フロー

病床の問い合わせ

参加医療機関

参加医療機関

豊橋市消防本部

(消防救急課)FAX 56-0033

利用可能病床及び利用可能

呼吸器数を報告

(午後 5 時まで)

豊橋市休日夜間急病診療所

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豊橋市インフルエンザ重症患者搬送・受入ネットワーク情報

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会

(豊橋市消防本部 消防救急隊)

平成 年 月 日( : )現在の各医療機関における受入状況は下記のとおりです。

№ 医療機関名

小 児 成 人 備

利用可能な病床数 利用可能な人工呼吸器 利用可能な病床数 利用可能な人工呼吸器

豊橋市民病院

Tel・ fax

豊橋医療センター

Tel・ fax

3 成田記念病院

Tel・ fax

光生会病院

Tel・ fax

弥生病院

Tel・ fax

長屋病院

Tel・ fax

【図15】

今回は、幸いにもこのシステムを使用する機会がなかった。しかし、問題点

として小児受け入れ可能病院が、市民病院、豊橋医療センターの2病院のため、

小児をできるだけ市民病院に収容することを目的に、成人患者で安定した場合、

他の5病院に転送することにした。9月16日に名古屋大学小児科が中心とな

り、小児重症者の対応及び受け入れ体制が整った。しかし、重症でなく入院を

必要とする小児患者が増加した場合の病床の確保が問題と思われた。

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a.インフルエンザ患者救急搬送:平成21年8月から平成22年2月までで、

インフルエンザ患者搬送は61人(男性32人、女性29人)、年齢の中

央値は21.4歳であった。5歳未満10人、5歳〜9歳20人、10歳

〜14歳9人と15歳未満が63%を占めた。全体の豊橋市民病院への搬

送は44人。15歳未満でみれば、およそ90%が市民病院に搬送されて

いた。

b.新型インフルエンザ(A/H1N1)入院患者:平成21年8月から平成

22年2月の間、新型インフルエンザ(A/H1N1)が原因で入院した

患者は、予想より少なく52人。内訳は男性31人、女性21人であり男

性が多かった。また入院患者の70%は11月であった【図16参照】。

【図16】新型インフルエンザ入院患者

入院患者年齢の中央値は14.6歳、基礎疾患無しが28人であった。基礎

疾患では喘息及び慢性呼吸器疾患が半数を占めた。入院患者は15歳未満(5

歳未満13人、5〜9歳24人、10〜14歳5人)が80.7%を占めてい

たが、ほぼ全国と同じ傾向であった。また、新型インフルエンザ(A/H1N

1)が原因での死亡例はなかった。市民病院から県内の3次病院に転送した小

児患者はなかったが、市外からのインフルエンザ患者入院依頼で1件県外病院

を紹介した事例があった。小児入院病床が破綻せずにすんだのは、今回幸いに

も新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行時に他の疾患の流行がみられな

52名入院:男31,女21名 基礎疾患あり24名 平均年齢14.6歳入院原因:意識障害ー8,異常行動ー2,熱性痙攣ー5

肺炎26名(喘息6名、心疾患1名、肺ガン1名)

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かったこと、及び入院年齢層が季節性インフルエンザと異なり5〜9歳が多か

ったことが幸いした。

成人患者においても市民病院が満床になった場合、市内では7施設61床の

余裕しかない現況をみる【表4参照】と、今回の流行は高齢者の入院患者が少

なかったことが幸いした。

【表4】(豊橋市民病院が満床になった場合)新型インフルエンザ患者の受け入れ

病床数

【受け入れ可能な病院】 7施設 (豊橋市民病院を除く)

すべて患者が可能 36 床

呼吸管理の必要がない軽症または回復期の患者なら可能 25 床

合 計 61 床

第三 新型インフルエンザ(A/H1N1)流行時の小中学校への対応

❑ 7月9日にハワイから帰国した児童が発端者となり、A小学校で新型インフルエン

ザ(A/H1N1)患者が発生したが、7月12日から7月18日までの学校閉鎖によ

り感染の拡大はみられなかった。初期の時点の学校閉鎖は感染拡大には効果的と思われ

た。

新型インフルエンザ医療対策委員会の方針として、5日〜7日程度の閉鎖期間を希望

したが、8月27日愛知県教育委員会より感染防止対策として臨時休業の目安が示され、

学級閉鎖は生徒の約10%の罹患でおこなわれ、期間は概ね4日間とされたため、市教

育委員会と相談の上、この目安で臨むこととした。6月19日“医療の確保、検疫、学

校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針”の改定において、自宅療養期間

は発症した日の翌日から7日を経過するまで、または解熱した翌々日までとする規定か

ら、感染者は他者への感染を防ぐため、発症後7日間の欠席とすることを、新型インフ

ルエンザ医療対策委員会、及び教育委員会の方針とし、医療機関に通知した。

実際にこの通知に従って、発症後7日の欠席を指導した医療機関は27%にとどまり、

従来の季節性インフルエンザと同様に解熱後2日とした医療機関が50%を占めていた。

10月22日に県教育委員会より学級閉鎖基準の見直しの指示があり、岡崎市・豊田

市は、季節性インフルエンザと同じ20〜30%の欠席率としたが、豊橋市では現行ど

おりの欠席率10%で、学級閉鎖の基準を12月24日まで維持した。10月、市内校

長会において医師会より流行期の集会等自粛の理解を求めたが効果はなく、小学校のイ

ンフルエンザ患者数は第46週、48週の2峰性の増加をみた。いずれも学習発表会・

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学芸会を開催した後に患者数が増えていた【図17参照】。そのために11月22日、

急遽医師会より強く要請した結果、即日教育委員会は教育長名【図18参照】で、流行

期における学校行事の延期の指示をした。第49週以降急速に患者数は減少した。学年

学級閉鎖数は第46週がピークであった【図19参照】。

平成22年2月28日までで、小学生は36.2%、中学生33.4%の罹患率であ

った。学校行事の開催が11月に集中しなければ、小学校での急激な患者数増加を防げ

た可能性も否定できない。少なくとも、行事の開催後1から2週間の患者数が増加傾向

であれば、速やかに校医と相談の上、延期ないし中止を検討することも、今後の課題と

してあげられる。

学校・学年・学級閉鎖の基準は、流行初期において厳格におこなうのは意義があると

考えられるが、流行期においては、今回の基準変更の異なる他の都市と比較して、患者

増加の抑制効果はみとめられなかった【図20参照】。むしろ、集会など多くの児童が

集まる機会を減らすことが効果的と考える。

なお、今回の学年・学級閉鎖のインフルエンザ流行阻止に対する有効性について東北

大学医学部微生物学教授押谷仁先生に検討を依頼したところ、以下の回答をいただいた。

「【図21(9月から10月12日までの各学校と措置(青;学級閉鎖、緑;学校閉

鎖))】から措置時には学校で相当な数患者がでていることもわかる。さらに措置終了

後も殆どの学校で患者が発生しており完全に押さえ込まれていないことを示している。

インフルエンザ定点あたり1.0から5.0人程度の流行初期において神戸大阪のよう

な効果を目指すならもっと早くかつ徹底的に措置が必要であったと思われる。」(東北

大学医学部微生物分野教授押谷仁先生分析)

【図17】

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【図18】

21 豊教学 号 外

平成 21 年 11 月 25 日

豊橋市立小中学校長 様

豊橋市教育委員会

教育長 加 藤 正 俊

学校行事(学芸会、学習発表会等)の実施について(通知)

各学校においては、新型インフルエンザについて、日頃より適切な対応をしていた

だいているところですが、11 月 24 日の事務連絡でお伝えしたとおり、現在、医療機

関では異常な数の受診者の来院により、対応ができないという非常事態が生じていま

す。

医師会からの強い要請を受け、関係各課と相談した結果、児童・生徒への蔓延を防

ぐことが第一であることを確認し、下記のとおりの対応をすることにしました。各学

校においては、このことをふまえ、その他の学校行事等も見直し適切な対応ができる

ようお願いします。

1 11 月及び 12 月に行われる学校行事(学芸会、学習発表会等)は中止又は年明け

まで延期する。

学校行事の変更は、届け(様式 31-2)を提出する。

ただし、次の場合は提出不要とする。

*行事を中止にする場合

*行事の日を授業日にする場合

休業日を授業日に変更するときは、届け(様式 34-2)を提出する。

給食の実施は、5 日前の午前 11 時までに共同調理場へ連絡する。※土日を含む

2 小学校駅伝大会は、2 月 28 日(日)に延期する。

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【図19】学級閉鎖数の推移

【図20】流行期・他都市との比較

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【図21】9月から10月12日までの各学校と措置(青;学級閉鎖、緑;学校閉鎖)

行ラベル 9/14 9/15 9/16 9/17 9/18 9/19 9/20 9/21 9/22 9/23 9/24 9/25 9/26 9/27 9/28 9/29 9/30 10/1 10/2 10/3 10/4 10/5 10/6 10/7 10/8 10/9 10/10 10/11 10/12 10/13 (空白)

H01 1 2 1 4 1 4 1 1 2 1

H02 1 1 1 1 2 3 2 2 3 4 6 6 3 2 3

H03 1 1 1 1H04 1H06 1 1H08 1H09 1 1 1 1 2 2 1 3 3 2 3

H10 1 2 4 6 3 2 2

H11 2 1 1 1 1

H12 1H13 1 1 2 1 1 1 1 1 4 3 1 5 5

2年H14 1 5 2 1 8 2 3 1 1 1H15 1 1 1H16 3 2 2 1 1 1 1J01 1 1 2 2 1 1 1 2 1 1

J02 2J04 1 1 2 1 1J05 1 1 6 3 2

3年3組

J06 1J08 3 3J09 1 1 1 1 1 1 6 4J10 1J11 1 2 1 4 4 2 7 2 6 15 4 6 6 4 12 1 10

1年4組、3年1組J12 1 1 3 4 1 3 14 4 1

2年4組、3年3組

J13 1J14 1 2 1J15 1J16 1J19 1J22 2 1 1 1 2

J23 3 1 1 1

K03

N01 2 1 1 2 2 1 2 1N02 3N03N04 2P01 1

P03 2P04 1 1P05 1 1P06 2 2 3 1 2 1 1

P08 1 1

P09 1 1P10P11

P12 2 1 1 1 1

P13 2 4 6 6P14 1P15 1 1P16 1P17 1 1 9 6 3 1 3 2

4年4組P19 1 1 1 1P20 1P23P24P25P30 1P31 2 1 1 1 1 1 1P32 1 4P33 2 1 1 2 1 2P34P35 1 1 1 2P36P37 1 1 1

P40P46 1 1P47P50 1P51 1P52 1 1

6年ろ組

4年5組

5年6組

3年

1年1組

1年は組

2年2組

1年5組、3年2組・7組2年7組

3年1,2組

2年B組

2年

2年

1年4組1年

2年3組(定時制)

2年1組

2年A組1年F組

2年3組2年2組2年1組

2年5組、2年音楽

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【参考】豊橋市内小中学校インフルエンザ感染者数(平成22年1月7日時点)

小学校

学年 児童数 感染者数 感染率 %

1 年 3,748 1,233 32.9

2 年 3,857 1,342 34.8

3 年 3,854 1,436 37.3

4 年 3,945 1,532 38.8

5 年 3,978 1,527 38.4

6 年 3,923 1,359 34.6

合計 23,305 8.429 36.2

中学校

学年 児童数 感染者数 感染率 %

1 年 3,748 1,233 32.9

2 年 3,857 1,342 34.8

3 年 3,854 1,436 37.3

合計 3,945 1,532 38.8

第四 新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンについて

❑ 平成21年9月8日、新型インフルエンザ対策担当課長会議が開催され、ワクチン

接種体制について説明があり初めて明らかになった。この中で全国ワクチン接種料金

が統一され、接種費用の計算は問診料、注射実施料、ワクチン代(流通経費)、消費

税の合計とされ、現行の定期接種の接種料金の考え方とは異なるものであり、またワ

クチン代に流通経費を載せたため高額となった。

新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチン接種のために国との間に委託契約を

することにより、医療機関において接種おこなうことが可能となる一方、当初、ワク

チンの配給が全体量の20%のみであったため、国の決めた優先順位に従って接種を

遂行する義務を生じた。諸外国では9月の時点において、既に成人の投与は1回接種

で有効性を確認されていたが、国内においては9月17日よりの健康成人の臨床試験

がおこなわれ、ようやく10月22日になって健康成人への接種が1回になることが

決められた。

優先接種対象者はインフルエンザ患者の診療に直接従事する医療従事者が最優先と

なった。医師会での見通しでは、救急に従事する医師・看護師を想定していたが、イ

ンフルエンザ診療に参加しない医療機関を含めて、全ての医療機関の従事者が希望し、

保育園-5 歳児 43.5%、

4 歳児 37.4%、3 歳児

36.3%

幼稚園-5 歳児 33.6%、

4 歳児 37.8%、 3 歳児

25.8%

25.8%

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愛知県内で13.6万人に上った。この人数では1回のワクチン配分では賄えなかっ

た。次の新型インフルエンザワクチンの接種をおこなう場合、地方自治体と地区医師

会との協議の上で、直接インフルエンザ医療に参加する医療従事者に限定して接種順

位を決めていくべきであると考える。

医療従事者に次ぐ優先接種順位となる、基礎疾患を有する小児を初めとして、小児

に対しての接種を前倒しに実施することを10月22日、日本小児科学会から長妻厚

生労働大臣宛に要望書を提出し、それにより関東圏の都県では実施の前倒しがなされ

たが、愛知県では県医師会から要望書がだされたが、残念ながら実施されなかった。

1. 妊婦及び基礎疾患を有する者

2. 1歳から小学校低学年に相当する年齢の者

3. 1歳未満の小児の保護者、身体上の理由により受けることができない優先接種者

の保護者等

4. 小学校低学年、中学生、高校生に相当する年齢の者、65歳以上の高齢者

優先順位の順に、各医療機関において予約の受付をおこない、必要本数を県に報告

し予約する。接種開始までに卸業者を通じてワクチンを受け取るシステムとなったた

めに、予約本数の取りまとめに苦労した医療機関が多かった。接種開始が流行ピーク

を過ぎたあたりから開始されたために、予約者が罹患して接種しない、被接種者がで

きるだけ早く接種を済ませたいために、複数の医療機関に重複予約をおこなう、医療

機関によっては国との委託契約に罰則規定がないために、優先順位を守らないで接種

をおこなうところが複数みられたことなどで、ワクチンが余る事態となった。

このような結果は、県単位より市町村レベルで医師会と共同してワクチン接種をお

こない、違反医療機関に対してなんらかの処置を取れるように法律を整備していく必

要性を感じた。

新型インフルエンザワクチンの接種に関して、愛知県内の4地区では集団接種が行

われたが、豊橋では個別接種が望ましいとする観点から集団接種はおこなわれなかっ

た。しかし、急速に一定の集団に免疫をつけるためには、集団接種も考慮すべきもの

と考えるが、接種に出動する医師、看護師確保の問題があるために医師会会員の協力

が不可欠であると考える。

第五 医療機関へのアンケート調査が示す新型インフルエンザ診療への認識

の変化(※アンケートの詳細は第三章を参照ください)

❑ 1回目のアンケートは、平成21年1月に市内医療機関に対して医療体制の整備を

目的として、「新型インフルエンザ診療に関する調査」をおこなった。一般診療所で

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は、パンデミック時に何らかの形で診療を継続するのは72/167(43%)、休

診は32/167(19%)であった。新型インフルエンザ(A/H1N1)の性状

が、ある程度わかってきた平成21年5月30日の2回目の調査では、何らかの形で

の診療継続は153/197(72.5%)に増加した。

しかしながら、発熱者の診療に関しては1回目、2回目の調査において、決めてい

ない医療機関が半数を占めていた。発熱外来への参加については、出動したくない医

療機関がいずれの調査でも40%みられた。内科系では出動可能と解答した医療機関

は、1回目39/106(35%)、2回目54/114(47%)と増加した。こ

の結果から、発熱外来の設置は2箇所程度であれば可能だが、長期の設置は困難と考

えられた。

また、新型インフルエンザ(A/H1N1)関連の情報は、マスメディア・インタ

ーネット、及び講演会・学会からの情報が多く、国からの情報提供を挙げたものは少

なかった。この傾向は、2回目の調査でも変化なかった(豊橋医師会では平成18年

より新型インフルエンザに関連した講演会を毎年開催して会員への知識普及をおこな

っている)。

1回目、2回目のいずれの調査においても、個人防護具を備蓄しているのは2%程

度であり、殆どの施設は備蓄をおこなっていなかった。この結果は、パンデミック時

には、何らかの備品購入の補助を公的におこなうことも必要になるのではないかと思

う。

発熱患者の診療が一般医療機関に移行するのに先立って、診療医療機関数の調査を

6月30日実施した。結果は、内科・小児科は80/102(78%)となり、以前

の調査より増加した。この増加は、新型インフルエンザ(A/H1N1)の病原性が

あまり高くないことがないことが、広く周知されるようになってきたことが影響した

可能性がある。しかしながら、この時点においても、発熱患者を診療しない内科・小

児科医療機関が20%近くあったことは、いかに今後の新型インフルエンザに関する

情報を正確かつ迅速に誤解がないように、一般医療機関に周知徹底するかが課題とな

る。実際には平成21年9月以降の流行時には、内科系全ての診療所において発熱患

者を診療せざるを得なくなった。

平成22年6月に昨年の新型インフルエンザ(A/H1N1)の第1波における

診療体制を検討するために、3回目のアンケート調査をおこなった。既に関心が薄れ

てきたのか、前2回より回収率は低かった。結果は、すべての内科・小児科の医療機

関において、新型インフルエンザ(A/H1N1)診療に携わったことがわかった。

またパンデミック時における休日夜間急病診療所への応援については、72%(73

/101)が協力的な回答をしている。昨年のような初期の発熱外来設置については、

概ね妥当であったと回答した医療機関が56%(57/101)認めた。しかし、小

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児科に限ってみれば62%(10/16)が、より早い時点での発熱外来の中止を求

めていた。今後流行する新型インフルエンザの診療形態について、初期は新型インフ

ルエンザ外来を設置し、そこでの診療をおこない、その後速やかに一般医療機関での

診療に移行する方式を望む医療機関が61%に上った。

また、流行に先立ち、平成21年7月より新型インフルエンザ(A/H1N1)に

関して、庵原俊昭先生、岡部信彦先生、川名明彦先生を講師に招いて、医師会・行政

への知識普及のために3回の講演会を開催したことは、会員からかなり高い評価を受

けた。今回のパンデミック時に国・県から出された通知については、対応が遅い、明

確な指示がない、マスコミ報道が先行し情報が錯綜していたなど90%以上の医療機

関が不満を持っていた。

この結果から、今後新型インフルエンザ流行時における医療体制維持には、国から

の適切な指示及び速やかに正確な情報を、いかに医師会経由で一般診療機関に伝達す

るかが重要となってくる。市町村レベルで迅速に地域の医療に対応できるように、パ

ンデミック時の特例として法的な根拠を与えておくことも必要ではないかと考える。

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第三章 豊橋市医師会アンケート結果

❑ 豊橋市医師会会員に対する「新型インフルエンザ発生時における医療体制

に関する調査」および「インフルエンザ(A/H1N1)パンデミックにおける豊橋

市医療状況の調査」の総括

第一 調査の概要

豊橋保健所および豊橋市医師会感染対策員会により豊橋市における「新型インフルエ

ンザ対策行動計画」を策定する為に、医師会員にアンケート形式の調査を行った。

行動計画を策定する為の準備段階に入った矢先に、2009年4月下旬よりメキシコ

に端を発した新型インフルエンザ(A/H1N1)がパンデミックとなった。状況が刻々

と変化し、その時々での対策の検討が必要となり、結果的に頻繁に調査を行う事となっ

た。

第1回の調査は、平成21年1月に行われ、高病原性のトリインフルエンザのパンデ

ミックを想定した医療体制を構築する為の調査であった。

第2回の調査は、平成21年5月に行われた。新型インフルエンザ(A/H1N1)

が発生し、WHOがパンデミックフェーズを5に引き上げ各国に注意を喚起した時期で

あり、我が国においても5月16日神戸において国内における感染が判明した時期であ

った。豊橋市においても医療体制の早急な確立が求められた時期であった。

第3回の調査は、平成21年7月に行われた。この時期は、WHOが6月11日にパ

ンデミックフェーズを6に引き上げ、パンデミックが宣言され、我が国においても新型

インフルエンザ全数調査が進行し数百人の患者が報告された時期であった。豊橋市にお

いては、6月17日に豊橋市民病院に第1例の患者が入院していたが、市中においては

まだ感染者が未発生であった。一方、新型Influenza(A/H1N1)の病原

性が、当初想定していた高病原性トリインフルエンザに比べ、比較的弱い可能性が考え

られ、6月19日に厚生労働省が運用指針を変更し「原則として全ての医療機関におい

ても患者の診察を行う」との通知が出された時期であった。

第4回の調査は、平成22年6月に行われた。この時期は新型インフルエンザ(A/

H1N1)のパンデミックが一段落した時期であり、今回のパンデミックを振り返って

豊橋市における新型インフルエンザ(A/H1N1)の実態および反省点を明らかにす

る目的で行われた調査であった。

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第二 調査の結果

1)回収率

図1に各調査の回収率を示す。第1回調査から第3回調査までは高い回収率であり調

査の有効性が確保されるものと思われる。第4回調査の回収率が低いが、インフルエン

ザ診療に直接関与しなかった、精神科・眼科・皮膚科・産婦人科・整形外科からの回収

が低率であった事(それぞれ0.0%(0/9)、18.2%(2/11)、30.0%

(2/15)、38.5%(5/13)、57.1%(8/14))によると思われる。

インフルエンザ診療に直接関わった、小児科・内科・耳鼻科からの回収率は、それぞれ

88.9%(16/18)・83.3%(85/102)・80.0%(12/15)

であり、豊橋市における新型インフルエンザ(A/H1N1)の実態の調査としては有

効であろうと考えられる。

2)パンデミック時の自院での診療について

表1にパンデミック時の診療所での診療についての第1回調査と第2回調査の結果を

示す。

第1回の調査に比べ第2回調査では「全ての診療を休止する」が減少し、「可能な限

り診療を継続」が増加していた。

表1 パンデミック時の診療所での診療について

第1回調査 第2回調査

a.全ての診療を休止 32 (19%) 21 (11%)

b.可能な限り診療を継続 40 (24%) 92 (47%)

c.かかりつけ患者のみ診療を継続 32 (19%) 50 (25%)

d.かかりつけ患者の電話対応のみ 22 (13%) 11 (6%)

e.回答保留・その他 41 (25%) 23 (12%)

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診療を継続する診療所のみへの設問であるが、表2に発熱患者の診療についての結果

を示す。

表2 発熱患者の診療について

第1回調査 第2回調査

a.発熱者は受け付ける 5 (7%) 19 (13%)

b.発熱者は受け付けない 25 (35%) 49 (35%)

c.現段階では決めていない 41 (58%) 74 (52%)

第1回調査に比べ第2回調査では「発熱者を受け付ける」が増加しているが、「発熱

者を受け付けない」も比率は同じであるが施設数が増加している。一方、この時点では

まだ決めかねている施設が約半数を占めていた。

表3 全ての発熱患者の診療

全科 内科 小児科 耳鼻科 その他

a.診療する 50 (28%) 32(42%) 9(60%) 3(23%) 5(8%)

b.患者の少ない時は診療する 52 (29%) 27(35%) 4(27%) 6(46%) 14(21%)

c.診療しない 77 (43%) 18(23%) 2(13%) 4(31%) 47(71%)

表3に全ての発熱患者の診療についての第3回調査の結果を示す。第3回の調査にお

いては、厚生労働省の運用指針が変更になり「原則として全ての医療機関においても患

者の診察を行う」となっていた為、発熱患者の診療をするかどうかの設問とした。全体

では半数以上の診療所で「診療する」もしくは「患者が少ない時期のみ診療する」であ

り、発熱患者を受け入れる結果であった。

診療科別にみると、内科・小児科・耳鼻科においては、「診療する」もしくは「患者

が少ない時期のみ診療する」を合わせるとそれぞれ76.6%・86.6%・69.2%

と高率であるのに対し、それ以外の科においては29.9%と低率であった。インフル

エンザ診療患者の多い科において発熱患者を診療する率が高い結果であった。

第4回調査において実際の診療状況を見ると、126施設87%の医療施設において

インフルエンザ診療を行っており、インフルエンザ診療を行わなかった施設はわずかに

19施設13%のみであった。

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3)発熱外来

発熱外来に出動可能かどうかについて表4に示す。

表4 医師会が設置する発熱外来への出動の可否について

第1回調査 第2回調査

a.全面的に協力 10 (6%) 12 (6%)

b.部分的に出動可能 44 (27%) 61 (31%)

c.出動は困難 5 (3%) 9 (5%)

d.時間いよっては協力可能 3 (2%) 5 (3%)

e.発熱外来には出動したくない 69 (42%) 80 (41%)

f.その他 35 (21%) 30 (15%)

「全面協力可能」・「部分的に可能」・「時間によっては可能」を合わせると第1回

調査では35%に対し、第2回調査では40%とわずかに増加。一方、「出動は困難」・

「出動したくない」は、第1回調査で45%、第2回調査では46%であり比率は同じ

であるが施設は増加していた。

科別に見ると、内科・小児科・耳鼻科では、「全面協力可能」・「部分的に可能」・

「時間によっては可能」を合わせると第1回調査では40%、第2回調査では50%で

増加した。一方、それ以外の科では第1回調査では23%であり第2回調査では25%

と発熱外来への出動には消極的であった。インフルエンザを診療する科においては発熱

外来への理解が他より大きかったが、約半数の診療所に於いて発熱外来への参加が消極

的であった事を考えると発熱外来を運営する場合には医師会員のより多くの理解を必要

とすることが伺えた。

4)発熱患者への対応

表5に発熱患者への対応を示す。

表 5 発熱患者への対応

第3回調査 第4回調査

a.別室 4 (6%) 63 (48%)

b.パーティション 4 (6%) 10 (8%)

c.2m 以上離す 1 (2%) 18 (14%)

d.診療時間を分ける 6 (10%) 17 (13%)

e.自家用車内で待つ 38 (61%) 89 (67%)

f.その他 9 (15%) 9 (7%)

自家用車内で待つが両調査で最も多かった。第3回調査に比べ第4回調査では「別室

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で対処した」が大幅に増加しており、各診療所において新型インフルエンザ患者の診療

の為に部屋をうまく融通し対処した事が伺える。

5)新型インフルエンザ情報の入手について

表 6 新型インフルエンザの情報の入手について

第1回調査

a.マスメディア・インターネット 95 (27%)

b.専門誌・学会誌 47 (14%)

c.医師会・学会・講演会・研究会 108 (31%)

d.国・県・保健所などの公的機関 49 (14%)

e.医薬品メーカーなど関連業界 44 (13%)

f.その他 3 (1%)

表 7 有用であった情報サイト

第4回調査

a.厚生労働省のホームページ 40 (29%)

b.都道府県のホームページ 20 (15%)

c.国立感染症研究所のホームページ 26 (19%)

d.医師会からの情報 113 (83%)

e.WHO のホームページ 5 (4%)

f.CDC のホームページ 3 (2%)

g.学会の報告 6 (4%)

h.個人のブログ 6 (4%)

i.マスコミ報道 44 (32%)

j.その他 4 (3%)

第1回調査(表6)と第4回調査(表7)において、新型インフルエンザ情報の入手

について調査した。結果的に実際として最も有用であった情報サイトは「医師会からの

情報」であった。医師会が有用で確実な情報を発信する事の重要性が示されたものと思

われる。

表8に国や県からの通知について示す。第4回調査で解った事として、国や県からの

通知については、「マスコミ報道が先行して混乱した」が79施設56%であり最も多

かった。また、「対応が遅く対策に苦慮した」、「明確な指示がなく混乱した」が42

施設30%などの意見が多く見受けられた。今回の新型インフルエンザ(A/H1N1)

のパンデミックに第1線として動いた市中の一般医療機関への情報伝達に問題があった

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事が伺われる。

表 8 国や県からの通知について

第4回調査

a.問題なく適切であった 13 (9%)

b.マスコミ報道が先行し混乱 79 (56%)

c.対応が遅く対策に苦慮 43 (31%)

d.明確な指示がなく混乱 42 (30%)

e.その他 3 (2%)

豊橋市医師会が行った新型インフルエンザの発生数報告とその結果のメール配信につ

いての調査では、「ある程度参考にするので必要」が68施設50%であり、「その日

に結果が報告された事から必要」が44施設32%であり有用であった事が伺われた。

8)豊橋市に於ける新型インフルエンザ(A/H1N1)の実際の状況

パンデミックが一段落した時期の行った第4回調査に於いて今回の新型インフルエン

ザ(A/H1N1)の豊橋市に於ける状況が調査された。

インフルエンザ診療は、126施設87%で行われた。科別に見るとほとんどの内科・

小児科・耳鼻科に於いてインフルエンザ診療が行われ、インフルエンザ診療を行わなか

ったのはその他の科の一部のみであった。

1日の最大患者数を表9に示す。

表 9 発熱席などの1日最大患者数

全体 内科 小児科

a.5人未満 34 (26%) 12 (16%) 0 (0%)

b.5人から10人 30 (23%) 16 (21%) 3 (19%)

c.11人から20人 27 (20%) 19 (25%) 3 (19%)

d.21人から40人 24 (18%) 22 (29%) 2 (13%)

e.41人以上 17 (13%) 7 (9%) 8 (50%)

全体では最も多いのが「5人未満」でありそれほどの患者数の増加は見られなかった。

ただし、小児科・内科においては「41人以上」の施設が多く、特に小児科では半数が

この範疇であった。1日最大100人以上の医療施設が3施設あった。

シーズンを通しての新型インフルエンザ患者の数を表10に示す。

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表 10 昨シーズンのインフルエンザ患者数

全体 内科 小児科

a.50人未満 42 (32%) 15 (20%) 2 (13%)

b.51人から100人 22 (17%) 14 (18%) 1 (6%)

c.101人から200人 25 (19%) 19 (25%) 1 (6%)

d.201人から300人 17 (13%) 14 (18%) 3 (19%)

e.301人以上 24 (18%) 14 (18%) 9 (56%)

全体では「50人未満」が最も多く例年のインフルエンザと変わりない数である。一

方、内科・小児科においては「301人以上」の施設が20%弱認められ、特に小児科

においては1000人以上の医療機関が2施設認められた。

今回の新型インフルエンザパンデミックの特徴として小児において患者数が多かった

事を反映して、豊橋市に於いても小児科の負担が大きかった事が伺えた。

インフルエンザ診断迅速キットについて表11に示す。

表 11 迅速キットについて

第4回調査

a.十分足りた 96 (70%)

b.足りないため、患者を選んで使用 30 (22%)

c.使用しなかった 10 (7%)

d.その他 2 (1%)

当初足りなくなる事が予想されたが、実際にはほぼ充足されていた。足りなくなると

いう情報に踊らされてしまった感がある。

抗インフルエンザ薬について表12に示す。タミフルカプセルについてはほぼ不足な

かったようである。一方、タミフルドライシロップについては51施設55%半数以上

の施設で足りない状態であった。リレンザについては、ほぼ足りていたという結果であ

った。小児の患者が多かったせいもあり、タミフルドライシロップの不足が明らかとな

った。

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表 12 抗インフルエンザ薬について

足りた 足りない

a.タミフルカプセル 124 (95%) 6 (5%)

b.タミフルドライシロップ 41 (45%) 51 (55%)

c.リレンザ 100 (86%) 16 (14%)

9)今後の医療体制について

第4回調査に於いて今後の診療形態について調査した。(表13)

表 13 今後の診療について

第4回調査

a.はじめから一般医療機関で診察 12 (9%)

b.初期には発熱外来 81 (58%)

c.発熱外来のみ 10 (7%)

d.発熱外来と一般医療機関と両方 33 (24%)

e.その他 7 (5%)

初期の新型インフルエンザの病原性の不明な時期には発熱外来を設置すべきという意

見が多い。一方、「発熱外来と一般医療機関の両方で診療する」、「はじめから一般医

療機関で診療」と言う意見もあり、一般医療機関における新型インフレンザ診療への意

欲が伺われる。

休日夜間診療所があふれた場合(表14)については、「休日夜間診療所を増設し対

応する」が33%と最多であった。「既存の医療施設に医師会員が応援に行く」が30%、

「既存の医療施設に於いて対応する」が23%、「外来拠点を新設し医師会員が務める」

が13%という結果であり、新しく外来拠点を新設する事には抵抗があるようである。

表 14 休日夜間診療所が困難になった場合

第4回調査

a.既存の医療施設で対応する 22 (23%)

b.既存に医療施設に医師会員が応援 29 (30%)

c.外来拠点を新設し医師会員が主務 13 (13%)

d.休日夜間診療所を増設し対応 32 (33%)

e.その他 7 (7%)

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これらの意見をふまえて、今後の豊橋市の医療体制を整備していかなければならない。

9)新型インフルエンザワクチンについて

医療従事者用のワクチンについて表15に示す。

表 15 医療従事者用ワクチンについて

第4回調査

a.割当が少なく診療に支障 11 (8%)

b.少なかったが、診療には支障なし 45 (31%)

c.十分な割当があった 82 (57%)

d.その他 5 (3%)

診療所においては当初から十分な割当があったが、一部においては割当が少なく診療

に支障があったとの事で、割当の方法に問題があった様に思われた。

優先順位については表16に示す。

表 16 優先順位について

第4回調査

a.説明に時間がかかり、診療に支障 67 (49%)

b.患者からのクレームが多かった 46 (34%)

c.優先順位別の予約が困難であった 55 (40%)

d.予約がうまくとれ順調に出来た 23 (17%)

e.接種希望数を決めるのが困難 63 (46%)

f.容易に接種希望者数を把握出来た 9 (7%)

g.その他 11 (8%)

「説明に時間がかかり、診療に支障」、「接種希望数を決めるのが困難」、「優先順

位別の予約が困難であった」、「患者からのクレームが多かった」などの頻度が高く問

題多かった様に思われる。優先順位を国が決めた事で医療機関に余分な仕事をさせた様

に思われた。

ワクチンの配布や実施方法については表17に示す。

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表 17 ワクチンの配布や実施方法

第4回調査

a.医師会主導で行うべきであった 52 (37%)

b.重複予約に関して対策を 45 (32%)

c.優先順位を守らない医療機関への処置 19 (14%)

d.医療機関に負担のかからない様に 81 (58%)

e.国がワクチンを回収すべき 64 (46%)

f.その他 7 (5%)

「医療機関に負担がかからない様に」、「医師会主導で行うべきであった」、「重複

予約に関して対策を」、「優先順位を守らない医療機関への処置」などの頻度が高く、

配布や実施方法について問題があった事が伺われた。また、「国がワクチンを回収すべ

き」が46%あり、国が配布や実施方法を決めておきながら医療機関に責任を取らせる

様なやり方については大きな問題であろうと思われた。

第三 結語

豊橋市保健所および豊橋市医師会感染対策員会により豊橋医師会会員に対し今回の新

型インフルエンザ (A/H1N1)の発生前から経時的に4回のアンケート形式の調

査を行った。

医師会員の新型インフルエンザに対する考え方や対応の経時的な変化が伺えた。また、

今回のパンデミックによる医療機関への影響、国の対策への批判や今後の医療体制への

反省点などについてある程度の情報が得られたものと思われる。

これらの調査結果を参考として、新型インフルエンザに対する豊橋市独自の最適な“豊

橋モデル“の医療体制を確立していく必要があるものと思われた。

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第四章

新型インフルエンザ(A/H1N1)流行で明らかになった課題

第一 情報の収集及び正確かつ迅速な情報伝達等の課題

❑ 医療機関から~

平成21年4月26日の“ブタインフルエンザに対する対応について”の厚生

労働省健康局結核感染症課からの事務連絡からはじまり、平成22年2月末まで

に厚生労働省の各部署及び新型インフルエンザ対策本部から約150程度の通

知・事務連絡が出されたが、医療機関には明確に伝わったとは思われなかった。

さらに、このような通知の内容が医療機関に伝達される前に、新聞などのマスメ

ディアによる報道が先行し、かつその情報が必ずしも正確な情報でない場合もあ

り、各医療機関の認識に差が生じ混乱したことがあった。事務連絡・通知の発す

る部署を一元化し、速やかに地方自治体・地区医師会を通じて一般医療機関に情

報を提供されることが望まれる。

新型インフルエンザワクチン接種事業に対しても、市町村と地区医師会の協議

で接種順位、方法を決めることができるように、法律を決めておくべきであると

考える。

❑ 行政から~

医療関係団体に対して、国からの方針変更に関する通知等を早期に提供するよ

う努めたが、現場の医療機関医情報が伝わるまでに時間がかかることがあり、ま

た医療機関には複数ルート(医師会ルートほか)から情報が提供されたため、迅

速かつ正確な情報伝達方法が課題となった。

第二 医療体制の充実と患者対応等

❑ 医療機関から~

今回、小児の感染率30%台で、時間外診療を担う休日夜間急病診療所・豊橋

市民病院救急外来・医療センター救急外来において、新型インフルエンザ(A/

H1N1)患者の対応は限界に近かった。もし、感染率が少し高く、あるいは乳

幼児の感染率が高い場合、また重症者が増えれば医療体制が破綻する可能性があ

った。医療資源が限られている場合、医療圏を越えた外来・入院体制を整備する

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必要性を感じた。そのために自治体に裁量権を持たせて、地域の実情に合わせた

対応ができることが必要である。

❑ 行政から~

① PCR検査を独自で実施できなかったため、愛知県衛生研究所への検体搬送

のための人的負担や手数料負担が大きかった。

② 原則すべての医療機関において患者診療を行なうことになった以降、マスク

や使い捨て手袋などの個人感染防護具、抗インフルエンザウイルス薬、検査キ

ットの不足が生じた。

③ 入院勧告の対象となった患者すべてについて、今回は豊橋市民病院(感染症

指定医療機関)で対応することができたが、高病原性新型インフルエンザが発

生した場合には、豊橋市民病院(感染症指定医療機関)以外の医療機関で早期

から入院できる体制を想定しておく必要がある。

④ 同一医療圏内であるが県保健所が対応する患者等の情報が共有し難く、情報

が錯綜した事例があった。

⑤ 保健所に設置した発熱電話相談窓口に電話が殺到したため保健所全体で対応

したが、相談業務につける専門職員も限られ、応援職員(事務職員)との対応

力に差が生じた。

第三 市民への広報・啓蒙の課題

❑ 医療機関から~

不安を煽るのではなく、新型インフルエンザの正確な知識を普及させ、インフ

ルエンザ迅速診断への過度の信頼を取り除くことが必要。同時に、いかに発熱時

の医療機関への受診方法を周知して医療機関に集中することを防ぐかが課題と

考える。

❑ 行政から~

① 市広報、町内回覧などの情報提供手段は締め切り等の関係で、今回のように

次々に国から情報が来るような状況では最新情報との時間的ずれが生じてし

まう。

② 市ホームページの更新に十分な時間がとれず、重要な情報を理解しやすい文

章や図などを使用し、効果的な提供ができていたか疑問がのこっている。 ③

患者の報道発表において、個人情報と情報提供との観点から対応に苦慮する事

例があった。

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第四 学校・保育園・幼稚園との関りでの課題

❑ 医療機関から~

教職員に新型インフルエンザの正しい知識の普及を図る必要がある。教育委員

会との間で学級閉鎖の基準・閉鎖期間の検討することと、市町村のレベルで判断

できるようにする必要がある。医師会が学級・学年閉鎖に対して積極的に関与、

及び流行時における集会の制限の重要性を認識させることが望まれる。

今後、新型インフルエンザのパンデミックが発生した場合に、迅速な対応をと

ることが必要となる。そのために行政側と医師会が常に問題意識を共用すること、

及び医療事情が地域により異なるため国・県の指示を待つのではなく、市町村レ

ベルの判断で地域の実情にあった対策を取れるように、裁量権を持たせることが

必要であると思われる。

❑ 行政から~

① 保育所と幼稚園、学校(小・中・高・大)など国の所管が違うため、規制内

容の決定に時間を要した。

② 保育園を休業することについては、仕事を持つ親への影響も考慮する必要が

あり、休業時の保育支援のあり方に課題がある。

③ 集客イベント等の中止要請については強制力がないため、感染拡大防止のた

めの事業中止等を徹底できない。

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資 料 編

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資料1

豊橋市新型インフルエンザ対策連絡会議設置要綱

( 目 的 )

第1条 豊橋市の新型インフルエンザに係る防疫・その他の対策について、関係部局及

び関係機関が連携を図り、総合的、横断的にこれを推進するため、豊橋市新型インフ

ルエンザ対策連絡会議(以下、「連絡会議」という。)を設置する。

(所掌事務)

第2条 連絡会議の所掌事務は、次のとおりとする。

(1)新型インフルエンザの防疫対策に関すること。

(2)情報の収集と提供に関すること。

(3)その他、対策に必要な調整に関すること。

(構成)

第3条 議長は、保健所長をもって充てる。

2 連絡会議は、別表に掲げる者をもって構成する。

3 連絡会議には、議長が必要と認めた場合、構成員以外の者の出席を求めることがで

きる。

(会議)

第4条 連絡会議は保健所長が招集するものとする。

2 議長が出席できないときは、議長が予め指名した者がその職務を代行する。

(実務担当者会議)

第5条 所掌事務に関する問題を整理・検討するため、連絡会議に実務担当者会議(以

下、「担当者会議」という。)を置く。

2 会議長は、生活衛生課長をもって充てる。

3 担当者会議は別表に掲げる構成各課(かい)長が指名した者をもって構成する。

4 担当者会議は、会議長が招集するものとする。

5 担当者会議には、会議長が必要と認めた場合、構成員以外の者の出席を求めること

ができる。

6 会議長が出席できないときは、会議長が予め指名した者がその職務を代行する。

(庶務)

第6条 連絡会議に関する庶務は、福祉保健部保健所生活衛生課において処理する。

(その他)

第7条 この要綱に定めるものの他、必要な事項は、別に定める。

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附 則

この要領は、平成18年1月12日から施行する。

附 則

この要領は、平成18年4月1日から施行する。

附 則

この要領は、平成20年4月1日から施行する。

別表(第3条関係)

保健所長

福祉保健部 福祉保健課長、健康課長、介護医療課長、子育て支援課長、

保育課長、高齢福祉課長、障害福祉課長、総合老人ホーム所長、

保健所管理課長、生活衛生課長、保健予防課長

産業部 農政課長

建設部 道路維持課長

教育部 総務課長、学校教育課長、保健給食課長

都市計画部 総合動植物公園管理事務所長

市民病院 管理課長、感染症管理センター長

消防本部 消防救急課長

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資料 2

豊橋市新型インフルエンザ対策本部設置要綱

(目的)

第1条 豊橋市の新型インフルエンザに係る防疫・その他の対策について、関係部

局及び関係機関が連携を図り、総合的、横断的にこれを推進するため、豊橋市新

型インフルエンザ対策本部(以下、「対策本部」という。)を設置する。

(所掌事務)

第2条 対策本部の所掌事務は、次のとおりとする。

(1) 新型インフルエンザの防疫対策に関すること。

(2) 情報の収集・提供に関すること。

(3) その他、緊急対策に必要な調整に関すること。

(構成)

第3条 対策本部は、別表1に掲げる者をもって構成する。

2 本部長は、市長をもって充てる。

3 対策本部には、本部長が必要と認めた場合、構成員以外の者の出席を求めるこ

とができる。

(会議)

第4条 対策本部会議は、本部長が召集し、その議長を務めるものとする。

2 本部長が出席できないときは、本部長があらかじめ指名した者がその職務を代

行する。

(幹事会)

第5条 所掌事務に関する問題を整理・検討するため、対策本部に幹事会を置く。

2 幹事会は、別表2に掲げる者をもって構成する。

3 幹事会には幹事長を置き、幹事長に保健所長をもって充てる。

4 幹事会は、幹事長が召集し、座長を務めるものとする。

5 幹事会には、幹事長が必要と認めた場合、構成員以外の者の出席を求めること

ができる。

6 幹事長が出席できないときは、幹事長があらかじめ指名した者がその職務を代

行する。

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(部会)

第6条 対策本部には必要に応じて部会を置くことができる。

(庶務)

第7条 対策本部に関する庶務は、福祉保健部保健所生活衛生課において処理する。

(その他)

第8条 この要綱に定めるもののほか、必要な事項は、別に定める。

附 則

この要綱は、平成21年5月1日から施行する。

別表1(第3条関係)

市長

副市長

総務部長、財務部長、企画部長、文化市民部長、福祉保健部長、保健所長、

環境部長、産業部長、建設部長、都市計画部長、市民病院事務局長、

会計管理者、上下水道局長、消防長、教育長、教育部長、議会事務局長

別表2(第5条関係)

保健所長

行政課長、財政課長、広報広聴課長、市民課長、福祉保健課長、健康課長、

介護医療課長、子育て支援課長、保育課長、高齢福祉課長、障害福祉課長、

総合老人ホーム所長、保健所管理課長、生活衛生課長、保健予防課長、

環境政策課長、農政課長、土木管理課長、住宅課長、

総合動植物公園管理事務所長、市民病院管理課長、感染症管理センター長、

上下水道局総務課長、消防救急課長、教育部総務課長、学校教育課長、

保健給食課長、議会事務局庶務課長

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資料 3

21 豊保生第 8-35 号

平成21年5月1日

社団法人豊橋市医師会

会長 山本 義樹 様

豊橋市保健所長 藤岡 正信

( 公 印 省 略 )

新型インフルエンザ発生時の医療体制に関する調査について

本市の感染症対策の推進につきましては、日ごろからご協力をいただきお礼申し上げ

ます。

平成21年4月30日、世界保健機関(WHO)はパンデミック警戒レベルをフェー

ズ4から5に引き上げました。政府の示した「当面の政府対処方針」には、国内の患者

の発生に備え、発熱外来の設置等の準備を進めることとされています。

本市では、本年2月25日に「豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会」を立ち上

げ、医療体制の確保について協議を始めたところですが、今後、新型インフルエンザの

国内発生に備え、早急に医療体制の整備を図る必要があります。

つきましては、各医療機関における新型インフルエンザ発生時の対応等について把握

する必要がありますので、別添のとおり貴会員の皆様に調査を実施してくださいますよ

うお願いいたします。

担 当 生活衛生課 薬事衛生グループ

電 話 0532-51-3634

ファクシミリ 0532-38-0780

電子メール [email protected]

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資料 4

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会設置要綱

(設置)

第1条 新型インフルエンザ患者等に対する適切な医療体制を確保するため、豊橋市新型イン

フルエンザ医療対策委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

(所掌事務)

第2条 委員会は、次の各号に掲げる事項を協議する。

(1) 新型インフルエンザ患者等に対する医療体制に関すること

(2) その他必要な事項

(構成)

第3条 委員会に会長を置く。会長は委員の互選によって定める。

2 会長は、委員会を総括する。

3 委員会の構成は、別表1のとおりとする。

(委員会)

第4条 委員会は、必要に応じて会長が招集する。

2 委員会においては、会長が議長となる。

3 会長が出席できないときは、会長があらかじめ指名した者がその職務を代行する。

4 会長は、必要があると認めるときは、委員以外の者の出席を求めることができる。

(専門部会)

第5条 所掌事務について、調査、研究するため委員会に専門部会を設置する。

2 専門部会に、部会長(1名)及び副部会長(2名)を置く。部会長及び副部会長は、部会員の

互選によって定める。

3 部会の構成は、別表2のとおりとする。

4 専門部会は、部会長が招集し、部会の議長となる。

5 部会長が出席できないときは、議長があらかじめ指名した者がその職務を代行する。

6 部会長は、必要があると認めるときは、構成員以外の者の出席を求めることができる。

(顧問)

第6条 委員会に、顧問を置くことができる。

2 顧問は、委員会の求めに応じ、第2条に掲げる事項について助言を行う。

(庶務)

第7条 委員会の庶務は、豊橋市保健所生活衛生課において処理する。

(その他)

第8条 この要綱に定めるもののほか,委員会の運営に関し必要な事項は、別に定める。

附 則

この要綱は、平成21年2月5日から施行する。

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別表1(第3条関係)

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会

委員

社団法人豊橋市医師会会長

社団法人豊橋市歯科医師会会長

社団法人豊橋市薬剤師会会長

医療法人明陽会成田記念病院院長

医療法人光生会光生会病院院長

医療法人羔羊会弥生病院院長

独立行政法人国立病院機構豊橋医療センター院長

豊橋市民病院院長

豊橋市民病院看護局長

豊橋市福祉保健部長

豊橋市福祉保健部保健所長

豊橋市消防長

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会専門部会部会長

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会専門部会副部会長

別表2(第5条関係)

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会専門部会

部会員

社団法人豊橋市医師会理事(医師)

社団法人豊橋市医師会感染症委員会委員長(医師)

社団法人豊橋市歯科医師会歯科医師

社団法人豊橋市薬剤師会薬剤師

独立行政法人国立病院機構豊橋医療センター医師

独立行政法人国立病院機構豊橋医療センター感染管理認定看護師

豊橋市民病院感染症管理センター医師

豊橋市民病院感染管理認定看護師

豊橋市福祉保健部健康課長

豊橋市福祉保健部保健所管理課長

豊橋市福祉保健部保健所生活衛生課長

豊橋市福祉保健部保健所保健予防課長

豊橋市消防本部消防救急課長

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資料 5

報 道 機 関 発 表 資 料

提 出 日 平成21年 6月17日(水)

担 当 課 福祉保健部保健所生活衛生課

担 当 者 職 氏 名 生活衛生課 主幹 奥平 将

問 い 合 わ せ 先 生活衛生課 51-3634

件 名 新型インフルエンザ患者の発生について

本日、豊橋市において、新型インフルエンザ(インフルエンザA/H1N1)の患者

が発生しましたので、お知らせします。

1 患者の概要

年 齢 18歳(東海学園大学1年)

性 別 男性

症 状 発熱(37.8℃)、咽頭痛、咳

経 緯

6月13日 発症(頭痛、倦怠感)

6月14日 咽頭痛、咳、熱感

6月15日 午前 1 時頃に 37.8℃の発熱があり、体調が優れなか

ったため、午後、豊橋市の実家に自家用車で帰省。

午後 5 時頃に豊橋市内の一般医療機関を受診。イン

フルエンザ簡易検査の結果、A 型陽性であった。

6月16日 医療機関より発熱相談センターに連絡、発熱外来を

受診。愛知県衛生研究所で PCR 検査を実施。

PCR 検査結果 A 型(+)、ヒト H1(-)、ヒト H3(-)、新型 H1(+)

2 患者への対応

患者1名は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第 19 条の規

定に基づき、市内の感染症指定医療機関に入院を予定しています。現在、咳、咽頭痛

等の症状があるものの、発熱はなく、容体は安定しています。

3 濃厚接触者への対応

保健所では、今後、患者の家族など接触者の方の調査を実施し、濃厚接触者の方に

外出自粛、自宅待機、有症時の保健所への連絡等について要請を行います。

なお、いまのところ、患者の家族など接触者の方々の健康状態は良好です。

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資料 6

21豊保生第8-35号

平成21年6月21日

社団法人豊橋市医師会

会長 山本 義樹 様

豊橋市保健所長 藤岡 正信

( 公 印 省 略 )

新型インフルエンザ患者の医療体制に関する調査について(依頼)

本市の感染症対策の推進につきましては、日ごろから御協力をいただき厚くお礼申し

上げます。

新型インフルエンザについては、平成21年5月22日付け厚生労働省「医療の確保、

検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針(以下「指針」という。)」

に基づき対応してきましたが、今般、指針が6月19日付けで別添のとおり改定されま

した。

改定指針では、秋冬に向けて国内での患者数の大幅な増加が起こりうるという観点に

立って、重症患者については感染症指定医療機関以外の一般入院医療機関において入院

患者を受け入れ、外来部門においては発熱外来以外の医療機関においても患者の診察を

行うよう新たな医療体制への移行を図ることが求められています。

つきましては、本指針に基づく医療体制について本市の状況を早急に把握する必要が

ありますので、貴会員の皆様に調査を実施してくださいますようお願いいたします。

担 当 生活衛生課 薬事衛生グループ

電 話 0532-51-3634

ファクシミリ 0532-38-0780

電子メール [email protected]

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資料 7

報 道 機 関 発 表 資 料

提 出 日 平成21年7月24日(金)午前10時30分

担 当 課 福祉保健部保健所生活衛生課

担 当 者 職 氏 名 主幹 奥 平 将

問 い 合 わ せ 先 生活衛生課 51-3634

件 名 新型インフルエンザの取り扱いの変更について

新型インフルエンザの運用指針の改定及び省令の改正に基づき、7月24日

(金)から、発熱等の症状がありインフルエンザが疑われる方は、一般医療機関

への相談・受診が原則となります。今後、保健所への相談は必要ありません。ま

た、豊橋市民病院に、設置している「発熱外来」は廃止します。

なお、本改定に伴う変更内容は、下記のとおりです。

1 主な変更内容

項 目 変 更 前 変 更 後

相談窓口の

役割

・新型インフルエンザの疑い

のある患者に発熱外来の

受診を勧奨

・発熱患者を受け入れる医療機関が

わからない患者に医療機関を紹介

・インフルエンザに関する情報提供、

感染予防などの相談対応

相談窓口の

名称

・発熱相談窓口

・コールセンター ・新型インフルエンザ相談窓口

発熱患者の

受診

・疑いのある患者は、豊橋市

民病院の発熱外来を受診

・疑いのない患者は、一般医

療機関を受診

・豊橋市民病院の発熱外来を廃止

・全ての発熱患者は、かかりつけ医

など一般医療機関を受診

・患者は事前に医療機関に電話をし、

受診の時間帯や方法などの指示を

受ける

豊橋市民病

院の役割

・疑いのある患者の専用外来

(発熱外来)

・入院患者のための病床確保

・重症化した患者の救命

遺伝子検査

(PCR 検査)

・全ての疑いのある患者につ

いて実施

・学校、社会福祉施設などでの集団

発生時及び入院患者について実施

2 かかりつけ医療機関のない方及び受診先の分からない方の連絡先

(1) 保健所相談窓口 電話番号 0532-51-3634

(2) 豊橋市医師会 電話番号 0532-45-4911

※ 相談時間は、いずれも、平日の午前9時から午後5時までです。

3 休日・夜間の連絡先

休日夜間急病診療所 電話番号 0532-48-1110 ※ 受診前に必ず電話で連絡し

てください。

4 受診時の注意事項

医療機関を受診される方は、マスクを着用し、周囲への感染予防に努めてくだ

さい。

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発熱患者の受診の流れ ver.1 平成 21 年 7 月 24 日 豊 橋 市 保 健 所

かかりつけ医がいる

かかりつけ医に電話 保健所「新型インフ

ルエンザ相談窓口」

に電話 51-3634

かかりつけ医で発熱患者

の受入れが可能か判断

受入れ可能 受入れ不可能

患者に受入れ可能な医療機関を紹介

患者に受入れ可能な医療機関を紹介

かかりつけ医がいない

発熱患者の受入れ可能な一般医療機関で診療

急な発熱、咳、咽頭痛などインフルエンザ様症状のある方

入院の必要性を判断

入院が必要 入院は必要ない

患者に受入れ可能な入院医療機関を紹介

入院治療 自宅療養

夜間・休日

㈳豊橋市医

師会に電話

45-4911

休日夜間急病診療所

資料8

休日夜間急病

診療所に電話

48-1110

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報 道 機 関 発 表 資 料

提 出 日 平成21年7月28日(火)

担 当 課 福祉保健部保健所生活衛生課

担当者職氏名 主幹 奥 平 将

問い合わせ先 生活衛生課 51-3634

件 名 新型インフルエンザ講演会の開催について

秋以降に予想される新型インフルエンザ( A/H1N1)の世界的な大流行に対し、行政は

迅速かつ的確に対応することが求められています。つきましては、新型インフルエンザ

の現状と今後の対応について、社団法人豊橋市医師会と共催で下記のとおり講演会を開

催します。

1 日時 平成21年8月2日(日) 午後2時から

2 場所 市役所講堂(東館13階)

3 講演テーマ 「新型インフルエンザの現状と課題 ~流行期を迎えるにあたって~」

4 対象者 豊橋市新型インフルエンザ対策本部員及び各課管理職、豊橋市医師会会

資料9

【講師紹介】

岡部 信彦(おかべ のぶひこ)氏 国立感染症研究所感染症情報センター長

≪略歴≫

昭和 46 年 東京慈恵会医科大学卒業。同大小児科で研修後帝京大学助手、その後慈恵医大小児科助手。

昭和 53 年~ 55 年 米国テネシー州バンダービルト大学小児科感染症研究室研究員、帰国後、国立小児病院感染

科医員、神奈川県衛生看護専門学校付属病院小児科部長

平成 3 年~ 7 年 世界保健機関 (WHO)西太平洋地域事務局 (フィリピン・マニラ市 )伝染性疾患予防対策課課長

平成 7 年 慈恵医大小児科助教授 (現在、同客員教授 )

平成 9 年 国立感染症研究所感染症情報センター室長

平成 12 年 現職(同上感染症情報センター長)

厚生労働省厚生科学審議会 委員/厚生労働省新型インフルエンザ専門家委員会 委員長

内閣府新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会 委員/厚生労働省予防接種被害認定審査会分科会 会

長/厚生労働省予防接種問題検討委員会 副委員長/農林水産省家禽疾病(鳥インフルエンザ等)小委員会 委

員/内閣府食品安全委員会 委員

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豊橋市インフルエンザ重症患者搬送・受入ネットワーク情報事業実施要領

豊橋市新型インフルエンザ医療対策委員会

第1 趣旨及び目的

インフルエンザの感染により重症化した場合には、専門性の高い集中治療が必

要となるため、夜間休日における人工呼吸器を配備した医療機関の受入可能情報

を共有し、重症患者に対して適切な医療を提供することを目的とする。

第2 参加医療機関

豊橋市民病院、(独)国立病院機構豊橋医療センター、(医)明陽会 成田記

念病院、(医)光生会病院、(医)羔羊会 弥生病院、(医)善恵会 長屋病

第3 実施体制

① 参加医療機関

参加医療機関は、別紙様式(豊橋市インフルエンザ重症患者搬送・受入ネッ

トワーク情報)により、毎日又は変更のあった日の受入可能情報を、午後 5

時までに、消防救急課あてFAXする。

② 消防救急課

消防救急課は、①により収集した情報を集約し、午後6時までに休日夜間急

病診療所に情報を還元する。

第4 実施時期

感染症発生動向調査におけるインフルエンザの流行が注意報レベル (一定点

医療機関当たりの報告数が10以上)となった週、又は豊橋市新型インフルエン

ザ医療対策委員長が必要と認めた日に実施する。

第5 実施体制の見直し

状況に応じて、随時、見直しを行うものとする。

附 則

この要領は、平成21年9月26日から実施する。

資料 10

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別紙様式

豊橋市インフルエンザ重症患者搬送・受入ネットワーク情報

豊橋市消防本部消防救急課 御中

平成 年 月 日( : )現在の受入状況は下記のとおりです。

№ 医療機関名

小 児 成 人 備

利用可能な

病 床 数

利用可能な

人工呼吸器数

利用可能な

病 床 数

利用可能な

人工呼吸器数

豊橋市民病院

TEL 33-6111

FAX 33-6177

豊橋医療センター

TEL 62-0301

FAX 62-3352

成田記念病院

TEL 31-2167

FAX 32-7212

光生会病院

TEL 61-3166

FAX 63-5407

弥生病院

TEL 48-2211

FAX 46-9328

長屋病院

TEL 52-3763

FAX 53-4800

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編 集 委 員

【豊橋市医師会】

鈴木 敏弘(理事)

渡辺 嘉郎(感染症対策委員会委員長)

【豊橋市民病院】

山本 景三(感染症管理センター長)

【豊橋市保健所】

藤岡 正信(健康部長兼保健所長)

奥平 将 (健康政策課 課長)

山本 嘉和(前健康政策課 主幹)

後藤 弘樹(健康政策課 主任)

墨岡 成治(生活衛生課 課長)

河合 浩二(生活衛生課 主査)