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温暖化による健康影響 -熱ストレスによるリスク と熱中症の増加- 小野 雅司(国立環境研究所) 2008.10.30

温暖化による健康影響 熱ストレスによるリスク と熱中症の …...小計* 734 1,205 1,248 795 1,567 1,773 1,425 2,494 *2000年~2007年データのある都市

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  • 温暖化による健康影響

    -熱ストレスによるリスクと熱中症の増加-

    小野 雅司(国立環境研究所)

    2008.10.30

  • 地球温暖化の要因及び健康分野への温暖化影響のメカニズム

    (IPCC・AR4より)

  • Ⅰ.熱ストレスによる死亡リスク

  • 2003年ヨーロッパの熱波における死亡リスク(パリ市内)

    死亡数(人、1999~2002年の平均)

    死亡数(人、2003年)

    平均気温(℃、1999~2002年の平均)

    平均気温(℃、2003年) (Vandentorren 2005より)

    死亡

    数(人

    日平

    均気

    温(℃

  • 7,000

    8,000

    9,000

    10,000

    11,000

    12,000

    13,000

    14,000

    T

    < 8

    8 <

    = T

    < 13

    13 <

    = T

    < 1

    8

    18 <

    = T

    < 2

    3

    23 <

    = T

    < 2

    8

    28 <

    = T

    < 3

    3

    33 <

    = T

    日最高気温 (℃)

    死亡

    率(日

    -1) ×

    100

    ,000

    ,000

    北海道

    東京

    福岡

    沖縄

    日最高気温別死亡率

    死亡率が最低となる気温

    →至適気温

  • 20

    25

    30

    35

    5 10 15 20 25Average temperature (°C)

    Opt

    imum

    tem

    pera

    ture

    (°C

    )

    Okinawa

    年平均気温(℃)

    至適

    気温

    (℃

    各地の平均気温と至適気温

    沖縄県

  • 20 25 30 35

    2025

    3035

    Tmax80

    OT

    日最高気温80パーセンタイル値と至適気温

    日最高気温80パーセンタイル(℃)

    至適

    気温

    (℃

    )台湾の3都市

  • 1990年代

    2090年代

    10-4 10-3 10-2 10-1 100(人/km2)

    気候変化した場合の熱ストレスによる超過死亡数の変化の予測

    現在の気候および100年後に全球平均気温が約3℃上昇した気候での、熱ストレスによる単位面積あたり超過死亡数の推計結果。

    熱ストレスによる死亡リスクは全国平均で現状に比べ約270%増加。

    ただし、推計にあたって、①適応(環境の変化に応じた影響軽減のための対策)が全く期待できないと仮定しており、その点でリスクを過大評価している、②人口は将来にわたり不変と仮定している。

  • 日最高気温(℃)

    兵庫県(1972~95年)

    死亡

    リスク

    温暖化により冬季の死亡は減少するのか?

    1.22

    1.11

    1

    0.90

  • 日最高気温(℃)

    兵庫県(1972~95年)

    死亡

    リスク

    冬季の高死亡は “寒冷ストレス<冬季”

    季節調整(季節ごとにリスクを計算し、統合)

    温暖化により冬季の死亡は減少するのか?

    温暖化が進んでも、

    冬季の死亡はそれほど減少しない?1.22

    1

    0.82

  • Ⅱ.救急搬送データからみる

    熱中症の現状

  • 性別熱中症死亡者数の年次推移(厚生労働省統計情報部資料)

    0

    100

    200

    300

    400

    500

    1972年 1977年 1982年 1987年 1992年 1997年 2002年 2007年

    死亡

    数(人

  • 表1 都市別・年次別熱中症患者数(救急搬送数:人)2000年 2001年 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年 2007年

    札幌市 29 68 95

    仙台市 66 18 54 54 37 115

    さいたま市 176 164 350

    千葉市* 59 74 104 56 114 115 178 164

    東京23区* 269 393 416 207 521 642 363 879

    都下市町村* 143 186 227 147 271 373 225 389

    横浜市* 92 212 190 131 221 253 226 398

    川崎市* 47 88 98 85 157 126 90 166

    新潟市 119

    静岡市 158

    浜松市 115

    名古屋市* 85 140 134 100 101 119 163 231

    京都市 199 252 211 407

    大阪市 184 126 201 172 240 339

    堺市・高石市 79 96 173

    神戸市 114 134 140 176 262

    広島市* 39 112 79 69 182 145 180 267

    北九州市 104 178 124 200 205

    福岡市 136 280 270

    合計 734 1,205 1,498 1,157 2,333 2,935 2,897 5,102

    小計* 734 1,205 1,248 795 1,567 1,773 1,425 2,494

    * 2000年~2007年データのある都市

  • 地区別・年次別患者数

    熱中症患者数(人)

    (右軸)

  • 2007年 2005年

    地区別・月別熱中症患者数

  • 日別・熱中患者発生数(東京23区)

  • 高齢者で高率

    小中高生が次いで高率

    男性で高率

    成壮年で大きな性差

  • 日最高気温別熱中症患者発生率

    (東京都23区)

  • 年令階級別・日最高気温別熱中症患者発生率

    (東京23区、2007年)

  • 年令階級別・日最高気温別熱中症患者発生率

    31~34℃の発生率の平均を1とした時の日最高気温別熱中症患者発生率

    日最高気温(℃)

    日最高気温(℃)

    熱中症発

    生率

    (人/

    100万

    人・日

    熱中症発

    生率

    (人/

    100万

    人・日

    0-6歳

    7-18歳

    19-64歳

    65歳以上

    0-6歳

    7-18歳

    19-64歳

    65歳以上

  • 発生場所別・日最高気温別熱中症患者発生率

    31~34℃の発生率の平均を1とした時の日最高気温別熱中症患者発生率

    日最高気温(℃)

    日最高気温(℃)

    熱中症発生率(人/100万人・日)

    熱中症発生率(人/100万人・日)

  • 熱ストレス死亡、熱中症の予防へ向けて

    熱中症に代表される熱ストレス影響は、高温に曝されることにより引き起こされるが、

    それに加えて、

    高齢者、小中高生の運動、成壮年の激しい作業など様々な要因によりリスクが高まる。

  • ハイリスク集団

    生物学的弱者

    高齢者、病弱者、(男性?)

    社会的弱者

    高齢者、小中高生、成壮年(労働者)

    その他(脆弱)

    高齢者・不十分な住環境・情報過疎

    小中高生・運動中の発症

    成壮年(労働者)・作業中の発症

    寒冷地・低いルームエアコン普及率

    対策の必要性

  • 0%

    20%

    40%

    60%

    80%

    <20

    20

    21

    22

    23

    24

    25

    26

    27

    28

    29

    30

    31

    32

    33

    34

    35

    >35℃

    屋外温度(℃:午後3時)

    冷房

    器具

    使用

    割合

    屋外温度別冷房使用割合

    (室内空気対策研究会資料)

  • 地域別ルームエアコン普及率(総務省統計局データより作成)

  • 謝辞

    今日の発表の前半(熱ストレスによる超過死亡)は筑波大学・本田靖教授のお仕事を中心に紹介させていただきました。