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1 公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 「在宅医療研究への助成」研究 「うつ、寝たきり、認知症高齢者に対する震災後の岩手県気仙地域 (陸前高田市・大船渡市)における巡回型心のデイケアの研究」 完了報告書 主任研究者 及川 忠人 東八幡平病院 院長 研究協力者 木川田 典彌 医療法人 勝久会 理事長 金野 千津 介護老人保健施設 気仙苑 センター長 藤原 瀬津雄 東八幡平病院 リハビリテーション科 内出 幸美 社会福祉法人 典人会 理事 熊谷 君子 社会福祉法人 典人会 所長 小山 孝宏 末崎町デイサービスセンター 所長 太田 千尋 社会福祉法人 典人会 精神保健福祉士 菊池 社会福祉法人 典人会 生活支援員 薮内 菜愛 神戸大学医学部保健学科 看護師 三浦 秀幸 弘前大学医学部保健学科 理学療法士 俊臣 旭神経内科リハビリテーション病院 院長 矢野 啓明 旭神経内科リハビリテーション病院 心理療法科 斯波 純子 旭神経内科リハビリテーション病院 心理療法科 所属機関所在地 028-7303 岩手県八幡平市柏台 2-8-2 提出年月日 2013 2 28

「うつ、寝たきり、認知症高齢者に対する震災後の岩手県気仙地域 (陸前高田市・大船渡 … · ーション病院の松戸市での介護予防の取り組み、千葉県心のケアチームでの関わり、サポートセ

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公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団

「在宅医療研究への助成」研究

「うつ、寝たきり、認知症高齢者に対する震災後の岩手県気仙地域

(陸前高田市・大船渡市)における巡回型心のデイケアの研究」

完了報告書

主任研究者 及川 忠人 東八幡平病院 院長

研究協力者 木川田 典彌 医療法人 勝久会 理事長

金野 千津 介護老人保健施設 気仙苑 センター長

藤原 瀬津雄 東八幡平病院 リハビリテーション科

内出 幸美 社会福祉法人 典人会 理事

熊谷 君子 社会福祉法人 典人会 所長

小山 孝宏 末崎町デイサービスセンター 所長

太田 千尋 社会福祉法人 典人会 精神保健福祉士

菊池 望 社会福祉法人 典人会 生活支援員

薮内 菜愛 神戸大学医学部保健学科 看護師

三浦 秀幸 弘前大学医学部保健学科 理学療法士

旭 俊臣 旭神経内科リハビリテーション病院 院長

矢野 啓明 旭神経内科リハビリテーション病院 心理療法科

斯波 純子 旭神経内科リハビリテーション病院 心理療法科

所属機関所在地

〒028-7303 岩手県八幡平市柏台 2-8-2

提出年月日

2013 年 2 月 28 日

2

目次

1 本研究の目的と概要

1-1 背景

1-2 目的

1-3 概要

2 研究(1) 大船渡市での活動:心のデイケア

2-1 目的

2-2 対象

2-3 方法

2-4 結果

2-5 考察

3 研究(2) 陸前高田市での活動:高田病院における研修会

3-1 目的

3-2 内容

4 総括と今後に向けて

5 引用・参考文献

6 資料

評価表

3

1 本研究の背景と概要

1-1 背景

阪神大震災

1995 年、兵庫県南部を中心とした大型地震によってもたらされた大規模な災害は、阪神・淡路

大震災と呼ばれた。多くの市民が被災し、避難所の仮設住宅に転居した。多くの被害があった中

で、災害時要援護者とされる障害者、傷病者、高齢者には特に被害が大きかったと考えられた。

認知症のある高齢者、うつ病に罹患した高齢者、寝たきりの高齢者は、仮設住宅への入居後、病

状が進行して、孤独死、自殺者が発生した。公表されている資料では、仮設住宅における孤独死

者数は 233 名(兵庫県警察本部,1999)、復興住宅における孤独死者数は 2011 年までに 717 名

(神戸新聞,2012)にのぼった。自殺者数に関しては、震災前年には 823 名、震災 2 年後には

987 名であったが、震災 3 年後の 1998 年に 1452 名と激増した(兵庫県ホームページより)。こ

のことから、被災した閉じこもり、うつ病、認知症、寝たきり高齢者への年単位の継続的な支援

が重要であると考えられた。

高齢者に対する巡回型デイケア(モバイルデイケア)と介護予防教室

近年、閉じこもり、うつ病、認知症、寝たきり高齢者に対してのデイケア(運動療法、作業療

法、神経心理療法のプログラム)が実施されるようになってきた。そのような取り組みの結果が

まとめられ、集団で週 1~2 回のデイケアを行ない、病状の改善と安定化が図られるとする研究が

発表されるようになった。

たとえば、平成 17 年全国老人保健施設協会の研究事業として実施された巡回型デイケア事業が

挙げられる。巡回型デイケアとは、「介護老人保健施設等で実施している通所リハビリテーション

を、リハビリテーションサービスが必要ではあるが施設への通所が困難な高齢者に対して、スタ

ッフや器材を現地に移動して実施するもの」と定義されている(全国老人保健施設協会,2006)。

巡回型デイケア事業では、長野県、熊本県の山間地、長崎県離島において 3 ヶ月間、週 1 回 2 時

間ずつ計 10 回、巡回型のデイケアが実施された。派遣されたスタッフは、医師、看護師をはじめ、

リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士)、介護福祉士等であり、地域の公民館や集会施設に

集まった 65 歳から 90 歳の高齢者に対して、リハビリ体操や作業療法レクリエーション活動など

を実施した。その結果、高齢者の運動機能(握力、片足立ち、身体の柔軟性)の改善や高齢者同

士の交流の増加、意欲の向上、閉じこもりの改善等の効果がみられたと報告されている(全国老

4

人保健施設協会,2006)。

また、平成 23 年度にも全国老人保健施設協会が巡回型通所リハビリテーション事業を実施した。

巡回型通所リハビリテーション事業では、岩手県陸前高田市、宮城県石巻市、福島県福島市の 3

ヵ所で、4 ヶ月間、週 1 回 2 時間ずつ計 16 回、軽体操やレクリエーション、介護保険の説明、栄

養指導、個別リハビリ等が実施された。結果、運動機能の維持・向上、心理面での良い影響がみ

られた。巡回型通所リハビリテーションは、独居高齢者や高齢者夫婦世帯において、閉じこもり

予防の効果が期待できる一方で、日常生活での効果は十分に検討することができなかった(全国

老人保健施設協会,2012)。

平成 19 年千葉県松戸市でも病院から地域の集会所へ専門スタッフを派遣して、週 1 回 2 時間

(8 ヶ月間)、定期的に介護予防教室を行なった。プログラム内容は、運動プログラムと認知プロ

グラムの 2 種類を用意し、運動プログラムでは理学療法士が行なう柔軟体操や筋力トレーニング

等、認知プログラムでは計算問題や記憶力と注意力に対する課題を実施した。その他、日常生活

でも運動や認知訓練が続けられるように、万歩計の配布と「日常活動記録用紙」の記録、そして、

認知プログラムなどを宿題とした。結果として、運動機能や意欲の向上及び認知機能の改善が得

られた(服部・旭,2008)。

東日本大震災

2011 年 3 月 11 日 14 時 46 分 18 秒、東北地方太平洋沖地震が起こった。宮城県牡鹿半島の東

南東沖 130km の海底を震源とする地震はマグニチュード 9.0 を記録し、日本における観測史上最

大の地震となった。地震に引き続き、巨大な津波が発生し、東北地方沿岸部を飲み込んだ。地震、

津波、余震により、甚大な被害をもたらした大規模災害は東日本大震災と名付けられた。

東日本大震災では、2013 年 2 月現在で死者・行方不明者は 18,578 人、避難者は 40 万人以上

と発表されている(警察庁,2013)。東北地方から関東地方まで各地で大きな被害に見舞われた

が、特に被害が大きかったのは、宮城県、岩手県、福島県であったと考えられている。死者・行

方不明者数は、それぞれ、宮城県 10,849 名、岩手県 5,842 名、福島県 1,817 名であった(警察庁,

2013)。

岩手県陸前高田市では震災当時の人口 23,197 名のうち、2012 年 8 月時点で死者・行方不明者

は 1,778 名であった(東海新報,2012)。また、大船渡市では当時の人口 40,579 名のうち、死者・

行方不明者 420 名であり、多くの尊い命が失われた(大船渡市役所,2013)。この度の東日本大

震災においても、災害時要援護者の被害は特に大きかったと考えられ、認知症のある高齢者、う

5

つ病に罹患した高齢者、寝たきりの高齢者にも多数の亡くなった方がいたといわれている。震災

後、上記のような高齢者は、たとえ命が助かったとしても病院への入院、老人福祉施設への入所、

避難所への入所、遠隔地への転居などを余儀なくされた。実際に現地で聞き取りをしたところ、

仮設住宅へ転入所した高齢者で、閉じこもり、うつ病、歩行障害、認知症の病状悪化を呈する者

が徐々に増えているようであった。

千葉県心のケアチーム

筆者らの所属する一般財団法人みちのく愛隣協会東八幡平病院と医療法人社団弥生会旭神経内

科リハビリテーション病院は、故あって千葉県心のケアチーム第 3 班として、2011 年 5 月に陸前

高田市に被災地支援を目的として派遣された。その活動を通して、継続的に陸前高田市、大船渡

市への支援を行なうようになった。

サポートセンター「おたすけ」

岩手県大船渡市では震災後、「総合相談、地域交流事業等を包括的に提供することを目的」に 4

ヶ所のサポートセンターが開設された。サポートセンターでは、「常時 2 名の生活支援専門員等を

配置し、被災者等の様々な困りごと・相談ごとの解決支援(総合相談)、地域の方への交流の場の

提供・イベント(地域交流事業)を実施」するとされている(大船渡市ホームページより)。サポ

ートセンターには、大船渡北地区サポートセンター「とみおか」、大船渡南地区サポートセンター

「鴎」、末崎地区サポートセンター「おたすけ」、三陸地区サポートセンター「さんそん」の 4 ヵ

所があり、社会福祉法人典人会が末崎地区サポートセンター「おたすけ」、医療法人勝久会が大船

渡南地区サポートセンター「鴎」を大船渡市からの委託を受けて開設した。

「心のデイケア」

阪神大震災から得られた知見、高齢者に対するデイケアの効果の報告、旭神経内科リハビリテ

ーション病院の松戸市での介護予防の取り組み、千葉県心のケアチームでの関わり、サポートセ

ンターの開設、以上のことから今回、東日本大震災で被災し、避難所の仮設住宅に入居した認知

症やうつ病のみられる高齢者に対して、デイケアを通じて、身心機能の維持・改善、居場所作り

を目的として事業を計画した。

本事業では、岩手県の東八幡平病院、医療法人勝久会、社会福祉法人典人会、千葉県の旭神経

内科リハビリテーション病院の 4 つの医療・福祉機関が協同で企画・運営を行ない、陸前高田市

6

及び大船渡市を対象として、被災地の集会所や公民館などへ専門スタッフを派遣し、閉じこもり、

うつ病、歩行障害、認知症の予防と改善を目的としてデイケアを行なうこととした。本事業で実

施するデイケアは、参加者の個別性に留意し、各人の生育暦や趣味を考慮したプログラムを組む

ことによって、より効果的に意欲を高め、活動量を向上させ、閉じこもりを予防するように計画

された。積極的に歩行機能、認知機能にはアプローチしないものの、意欲と活動性が高まる結果、

歩行機能や認知面の改善がもたらされると考えた。参加者の個別性に留意し、参加者の心を中心

にすえたデイケアにしようという意図から本事業におけるデイケアを「心のデイケア」と名づけ

た。

本事業では、社会福祉法人典人会と医療法人勝久会が事業に参加しており、「心のデイケア」は

末崎地区サポートセンター「おたすけ」の事業という位置づけで開催した。また、大船渡南地区

サポートセンター「鴎」の職員も「心のデイケア」に参加した。

認知症の診療・ケアに関する研修

陸前高田市の中核的病院である県立高田病院にて、認知症についての研修を行ない、被災地で

の認知症診療の底上げを図るために、神経内科医師である旭俊臣医師が全 5 回の研修会を開催し

た。

1-2 目的

本事業では、被災地での包括的な支援を目指した。具体的には、被災した高齢者や仮設住宅へ

転入所した高齢者を対象として、巡回型「心のデイケア」を行なうことにより、閉じこもり、う

つ病、歩行障害、認知症の病状悪化を予防することを目的とした。それとともに、病院職員に対

して、認知症に関する専門的な知識の研修を行ない、間接的な支援を行なうことを目的とした。

1-3 概要

本事業の日程を表 1 に記載した。平成 24 年 4 月に岩手県の東八幡平病院、医療法人勝久会、

社会福祉法人典人会、千葉県の旭神経内科リハビリテーション病院の 4 施設が協同で事業班を立

ち上げた。大船渡市では、講演会と説明会を実施しつつ、仮設住宅個別訪問を行ない、生活状況

や閉じこもりや認知症予防のニーズを聞いた。平成 24 年 7 月 26 日に第 1 回心のデイケアを開催

し、その後、週 1 回(8 月 16 日のお盆のときは休止)全 15 回を実施した。陸前高田市では、直

接的な活動は難しく、県立高田病院の職員に対して、「認知症の診療とケア」について研修を行な

7

うことで、間接的な支援を行なった。

表 2 は、会議日程である。会議は毎月 1 回行ない、4 施設からの代表者とボランティアの方、

サポートセンター職員が集まり、各自が持っている情報の交換、心のデイケアの企画・運営・進

捗管理を行なった。

表 3 は、仮設住宅入居者向けの説明会として開催した「心のケア講演会」のプログラムである。

新しく立ち上がるサポートセンターの紹介と、そこで行なわれるデイケアの紹介を行なった。表

4 は、仮設支援員、健康推進員向け説明会として開催した「心のデイケア説明会」のプログラム

である。「心のデイケア」に、仮設住宅の支援員にもボランティアとして参加頂いた。

大船渡市における「心のデイケア」は、平成 24 年 11 月 8 日を最終日とし、その後は、末崎地

区サポートセンター「おたすけ」の「おたすけの会」として継続している。

表 1 事業日程

日付 大船渡市 陸前高田市

平成 24 年 4 月 事業班の立ち上げ

平成 24 年 6 月 13 日 仮設住宅入居者向け説明会「心

のケア講演会」開催

平成 24 年 6 月 個別訪問

平成 24 年 7 月 19 日 仮設支援員、健康推進員向け説

明会「心のデイケア説明会」開

平成 24 年 7 月 研修会打ち合わせ

平成 24 年 7 月 26 日 心のデイケア開始

平成 24 年 8 月 中間報告書作成

平成 24 年 8 月 22 日 研修会開始

平成 24 年 11 月 8 日 心のデイケア終了

平成 24 年 12 月 19 日 研修会終了

平成 25 年 2 月 完了報告書作成

8

表 2 会議記録

日時 回数 テーマ

平成 24 年 4 月 18 日(水) 臨時 過去の取り組み

モバイルデイケアの説明

平成 24 年 5 月 23 日(水) 第 1 回 心のデイケア概要について

平成 24 年 6 月 12 日(火) 第 2 回 心のケア講演会準備

平成 24 年 7 月 9 日(月) 臨時 プログラムについて

平成 24 年 7 月 18 日(水) 第 3 回 7 月 19 日の仮設支援員、健康推進員向け説明会

平成 24 年 8 月 22 日(水) 第 4 回 進捗の確認と介入中期について

平成 24 年 9 月 19 日(水) 第 5 回 介入中期の振り返り、介入後期の方針について

平成 24 年 10 月 18 日(木) 第 6 回 介入後期の振り返り、今後の方向性について

平成 24 年 11 月 29 日(木) 第 7 回 心のデイケアの振り返り、評価の集計について

平成 24 年 12 月 19 日(水) 第 8 回 評価の集計の報告、心のデイケアの現在の状況について

平成 25 年 1 月 16 日(水) 第 9 回 心のデイケアの現在の状況について

平成 25 年 2 月 20 日(水) 第 10 回 事業報告書の報告

表 3 仮設住宅入居者向け説明会「心のケア講演会」

日時:平成 24 年 6 月 13 日

時間:10:00~12:10

対象:仮設住宅入居者

10:00~10:10 公民館長挨拶

10:10~10:20 サポートセンター説明

10:20~11:10 講演「認知症とうつ病の予防教室」

11:10~11:20 休憩

11:20~12:10 講演「脳の機能とリハビリテーション」

表 4 仮設支援員、健康推進員向け説明会「心のデイケア説明会」

日時:平成 24 年 7 月 19 日

9

時間:10:00~11:30

対象:近隣の仮設支援員、健康推進員

1. 開会

2. 挨拶

3. 出席者紹介&楽しい運動

4. 巡回型心のデイケアの概要と実施時の留意点

5. 末崎地区巡回型心のデイケア実施概要の説明

6. 実施に際しての同意書と事前協力について

7. 第 1 回心のデイケアについて

8. その他、質問等

9. 閉会

10

2 研究(1) 大船渡市での活動:心のデイケア

2-1 目的

研究(1)では、大船渡市を対象として、認知症、うつ病、歩行障害、閉じこもりを呈する高齢

者の状態悪化の予防と状態の改善を目的とした。そうすることで、介護家族の負担感も軽減する

と考えた。また、閉じこもり予防のためには、デイケアが居場所になることも重要である。した

がって、高齢者の居場所作りということも目的とした。最後に、参加者の個別性を重視し、手厚

い関わりを持つこと、すなわち、心のデイケアの効果を検討することも目的とした。表 5 に上述

した 4 つの目的をまとめた。

表 5 研究(1)心のデイケアの目的

1. 被災地における認知症、うつ病、歩行障害、閉じこもりを呈する高齢者の状態悪化の予防と状態の改

2. 被災地にて認知症、うつ病、歩行障害、閉じこもりを呈する高齢者を介護している家族の介護負担感

の軽減

3. 認知症、うつ病、歩行障害、閉じこもりを呈する高齢者の居場所作り

4. 心のデイケアの認知症、うつ病、歩行障害、閉じこもりに対する予防効果と改善効果の検討

2-2 対象

岩手県大船渡市の A 仮設住宅と近隣住人について、仮設住宅支援員や民生委員とともに認知症

の症状のみられる住民を 9 名選出した。そのうち、本研究に対する同意書にサインをした 7 名を

心のデイケアの対象とした。7 名の参加者の生活環境は、仮設住宅に入居した方 3 名、在宅の方 3

名、グループホームに入居している方 1 名であった。全員が独歩可能であり、基本的な ADL は

自立していた。また、参加者の家族に対しては、月 1 回の家族相談会を開催し、週 1 回の個別訪

問を行なった。活動内容を周知するために「心のデイケア新聞」(資料 6)を作成し、個別訪問の

際に配布した。加えて、介護日誌の作成を行なった。デイケアや家族会参加をして、本事業に関

わった介護者の続柄は、嫁 3 名、子 2 名、グループホームスタッフ 1 名であった。

全ての対象者と家族に研究内容を説明し、書面で同意を得た。

2-3 方法

2-3-1 研究期間

11

心のデイケアは、2012 年 7 月 26 日から 11 月 8 日まで、毎週木曜日の 10 時から 12 時に地域

の公民館で開催した。8 月 16 日のお盆の期間中はお休みとして、全 15 回を実施した。全 15 回を

介入初期、介入中期、介入後期の 3 つの期間に分け、それぞれの期間で目標を定めた。介入初期

は、第 1 回から第 5 回までの期間で、「自由に話せる空間作り」を目標とした。参加者とスタッフ

間で積極的にコミュニケーションを図り、関係作りを行なった。介入中期は、第 6 回から第 10

回の期間であった。そこでは、「心身の活動性の向上」を目標として、徐々に活動量が増加するよ

うにプログラムを構成した。介入後期は、第 11 回から第 15 回の期間であり、「自主活動への移行」

を目標として、在宅でのホームワークを増やしていった。しかし、記憶障害のある参加者にはホ

ームワークは特に難しく、途中で目標を変更した。新たな目標は、「心身の活動性の向上と維持、

家族の参加」として、参加者へのプログラムの強度は維持しつつ、家族の関与を呼びかけた。第

1回目に介入前の評価を行ない、第 15回に介入後の評価を行なった。表 6に心のデイケアの日程、

表 7 に介入時期ごとの活動目標と予定を記載した。

12

表 6 心のデイケアの日程

回数 日時 参加人数 (職員含) 調理 内容

介入初期(第 1 回~第 5 回)

第 1 回 2012 年 7 月 26 日(木) 16 名 きりせんしょ 測定会 調理

第 2 回 2012 年 8 月 2 日(木) 14 名 がんづき カメラの使い方 調理

第 3 回 2012 年 8 月 9 日(木) 15 名 認知レク

第 4 回 2012 年 8 月 23 日(木) 23 名 近所の散歩 家族相談

第 5 回 2012 年 8 月 30 日(木) 13 名 ホットケーキ 調理 振り返り

介入中期(第 6 回~第 10 回)

第 6 回 2012 年 9 月 6 日(木) 15 名 碁石海岸の散歩

第 7 回 2012 年 9 月 13 日(木) 11 名 反射板作り 敬老会参加

第 8 回 2012 年 9 月 20 日(木) 24 名 がんづき

調理 手話で合唱

民謡「アイヤ」で踊り 家族相談

第 9 回 2012 年 9 月 27 日(木) 17 名 反射板作り

散歩 民謡「アイヤ」で踊り

第 10 回 2012 年 10 月 4 日(木) 19 名 秋の大運動会

介入後期(第 11 回~第 15 回)

第 11 回 2012 年 10 月 11 日(木) 15 名 すり身汁 調理

第 12 回 2012 年 10 月 18 日(木) 21 名 すり身汁 調理

身体レク 家族相談

第 13 回 2012 年 10 月 25 日(木) 11 名 和紙工芸

第 14 回 2012 年 11 月 1 日(木) 19 名 メイク

写真撮影会 獅子踊り

第 15 回 2012 年 11 月 8 日(木) 19 名 かまもち

測定会 調理

振り返り 写真立てプレゼント

閉会

13

表 7 介入時期ごとの活動目標と予定

(1)介入初期(第 1 回~第 5 回)

介入前評価

目標:自由に話せる空間作り

内容:軽体操、散歩

調理(茶菓子作り、昼食作り)

談話会

日記作り、日記の練習

家族介護者相談会

(2)介入中期(第 6 回~第 10 回)

目標:心身の活動性の向上

内容:体操(音楽に合わせた踊り)、散歩

馴染みの作業活動

認知・心理的レクリエーション

談話会

日記

家族介護者相談

(3)介入後期(第 11 回~第 15 回)

目標:自主活動への移行→心身の活動性の向上と維持、家族の参加

内容:体操(音楽に合わせた踊り)、散歩

馴染みの作業活動

活動を日課に取り入れる

談話会

日記

家族介護者相談

介入後評価

14

2-3-2 心のデイケアのプログラムの構成

心のデイケアのプログラムは、開始のあいさつ、健康チェック、体操、デジタルカメラの使用

方法の確認、メインプログラム、写真鑑賞会、日記作成、終了のあいさつを基本的な構成とした。

健康チェックでは、血圧測定、体温測定を行なった。体操では、座位でできる体操や棒を使った

体操を理学療法士の指導のもとに行なった。デジタルカメラは、記憶障害の参加者のために記憶

の代償方法として取り入れた。メインプログラムは、参加者それぞれの得意なことや趣味を聴き

取り、聴き取りをした内容に見合うように調理、認知レクリエーション、散歩、工作等を行なっ

た。メインプログラム終了後は、デイケアの振り返りの時間として、デイケア中に撮影した写真

を参加者全員で鑑賞した。その後、デジタルカメラで撮影した写真の中でお気に入りのものを印

刷して、各自の日記に添付し、日記を記入した。メインプログラムの内容は表 6 に、介入時期ご

との活動目標と予定は表 7 に、プログラムの構成の詳細は表 8 に記述した。

表 8 プログラムの構成

時間 所要時間 内容

開始前 健康チェック

10:00 開始 あいさつ

10:00~10:10 10 分 リアリティ・オリエンテーション、プログラムの説明

10:10~10:20 10 分 歌と体操

10:20~10:30 10 分 デジタルカメラの使用方法の確認

10:30~11:10 40 分 メインプログラム(詳細は表 6 を参照)

11:10~11:30 20 分 写真鑑賞会

11:30~12:00 30 分 日記作成

12:00 終了 あいさつ

2-3-3 家族相談会

心のデイケアプログラムと同時に家族相談会も行なった。表 9 は家族相談会の実施日程である。

最初は、参加者の家族がほとんど参加していたが、仕事を始めたり、心のデイケア参加により、

参加者が落ち着いてきたことを受け、家族会への参加者は減っていた。心のデイケア終了後も 1

~2 名を対象にして継続して実施している。

15

表 9 家族相談会日程

日付 時間 参加者

2012 年 8 月 23 日(木) 10:30~12:00 5 名

2012 年 9 月 20 日(木) 10:30~12:10 4 名

2012 年 10 月 18 日(木) 11:00~12:00 1 名

2012 年 11 月 29 日(木) 12:00~12:30 1 名

2012 年 12 月 20 日(木) 12:00~13:00 1 名(キャンセル)

2013 年 1 月 17 日(木) 12:00~13:00 2 名(キャンセル)

2013 年 2 月 21 日(木) 12:30~13:00 1 名

2-3-3 プログラムの評価

本研究では、下記に挙げる 4 つの評価表と 6 つの身体評価を用いた。

<評価表>

(1)J-CPAT(Japan Care Planning Assessment Tool)

オーストラリアのハモンドケアグループ、認知症サービス開発センターで作成された認知症高

齢者の総合的機能評価尺度である。鐘ケ江ら(2008)によって日本語に翻訳され、2011 年に日本

語版として出版された。(1)コミュニケーション:4 項目、(2)身体機能:5 項目、(3)自立能

力:8 項目、(4)見当識・記憶:8 項目、(5)行動:10 項目、(6)社会的交流:10 項目、(7)精

神的観察:7 項目、(8)介護ニーズ:9 項目の全 61 項目から構成され、0~3 点の 4 件法で評価

を行なう。得点が高いほど、障害や介護上の問題が大きいことを示す。

(2)GDS(Geriatric Depression Scale)

オリジナル版は Yesavage ら(1983)によって作成された 30 項目の高齢者向けの抑うつ尺度で

ある。本研究で使用したのは、15 項目の短縮版であり、Sheikh & Yesavage(1986)によって作

成されたものである。日本語版は、2009 年に作成された(杉下・朝田,2009)。質問に対して、

「はい」か「いいえ」の 2 件法で回答し、得点範囲は 0~15 点である。6 点以上で抑うつが疑わ

れるとされる。

16

(3)CAS 標準意欲評価法(CAS:Clinical Assessment for Spontaneity)

加藤ら(2006)が作成した広義の「自発性の障害」を評価するための検査である。(1)面接に

よる意欲評価スケール、(2)質問紙法による意欲評価スケール、(3)日常生活行動の意欲評価ス

ケール、(4)自由時間の日常行動観察、(5)臨床的総合評価の 5 種類のスケールから構成されて

いる。本研究では、対象が高齢者であることと参加者は在宅(グループホームなどの施設入所)

から週に 2 時間だけデイケアに参加するため、面接による意欲評価スケールを使用した。面接に

よる意欲評価スケールは、15 項目について 0~5 点の 5 件法で評価を行なう。得点範囲は、0~60

点となる。

(4)日本語版 Zarit 介護負担尺度(ZBI:Zarit Caregiver Burden Interview)

オリジナルの ZBI は Zarit(1980)によって開発された 22 項目からなる介護負担感評価尺度で

ある。Zarit の定義によれば、介護負担は「親族を介護した結果、介護者が情緒的、身体的、社会

生活および経済状況に関して被った被害の程度」とされており、ZBI はこの定義に基づいて作成

された尺度である。日本語版は荒井(1998)によって作成された。

項目 1 から項目 21 には「なし=0」から「ほとんど常に=4」の 5 件法で回答を行なう。項目

22 は、包括的な介護負担を問う質問であり、全体として介護がどの程度負担かを、「まったく負

担ではない=0」から「非常に大きな負担である=4」の 5 件法で回答を行なう。22 項目の合計得

点を介護負担感の指標として用いることが可能であり、得点が高いほど介護負担の程度が高いこ

とを示す。

<身体的評価>

アプローチする領域

Timed Up & Go 複合動作能力、機能的移動能力、敏捷性

ファンクショナル・リーチ 動的バランス

片足立ち 足の筋力、静的バランス

10m 歩行 歩行能力、敏捷性

握力 筋力

(5)Timed Up & Go Test(TUG)

歩行能力や動的なバランス、敏捷性などを総合した複合動作能力・functional mobility(機能

17

的移動能力)を評価するために、Podsiadlo & Richardson(1991)によって考案された評価であ

る。評価方法は、肘掛付きの椅子に座り、立ち上がって 3m 先の印まで歩き、折り返して元の椅

子に座るまでの時間を測定する。本研究では、椅子の高さは 45cm であった。

(6)ファンクショナル・リーチ(FR)

動的なバランス能力を評価する検査である。測定方法は、立位の状態で片方の上肢を前方挙上

して指を伸ばし、指の先端の位置に付箋やチョークで印を付け、次に前方へできるだけ手を伸ば

し、伸ばした指の先端の位置に付箋などで印を付け、印の間の距離を測定することで評価を行な

う。

(7)開眼片足立ち

足の筋力と静的なバランス能力を評価する検査である。目を開けたまま、手を腰に当てて、片

方の足で立っていることができた時間を測定する。

(8)10m 歩行

歩行能力の評価として 10m 歩行を行なった。評価方法は、計測する 10m の前後に 3m ずつの

助走路を用意し、被検査者は直線 16m を歩行し、定常歩行となる 10m 間の所要時間を計測する。

(9)握力

握力計を使用し、握力を測定した。本研究では、酒井医療株式会社製のスメドレー握力計(50

㎏用、品番:TTM-YCⅡ)を使用した。

(10)活動量計

活動量計は、歩数の記録だけでなく、活動の強さや量を測定することで、1 日の様々な活動で

消費したカロリーを評価する電子機器である。本研究では、オムロンヘルスケア社製の活動量計

Active style Pro(型番:HJA-350IT)を使用した。この機種は 60 秒間隔でのデータを 150 日記

録できることに加え、管理ソフトを使用することにより歩行と日常生活活動の消費カロリー、Ex

量、活動強度 Mets で時間別、日別に整理する事が出来るものである。参加者 1 名につき、1 台を

貸与し、寝る時以外に腰に取り付けることとした。

第 1 回心のデイケア開催時に活動量計とその装着方法の説明を行なった。装着時間は起床時か

18

ら就寝時とし、付属のクリップでズボンのベルト部分に装着することとした。また装着忘れ、混

乱を防止する目的で朝に装着、夜に外すことを記載した日課表を配布した。データ収集について

はデイケア時に参加者から活動量計を回収し、個人ごとの 1 週間のデータを収取した。デイケア

終了時には再度参加者に活動量計を渡すこととした。

2-3-4 分析

心のデイケア(全 15 回)への参加回数が、2 回以下の方は分析から除外した。その結果、分析

対象は 6 名であった。統計解析には、SPSS 15.0J for Windows を用いた。

2-4 結果

2-4-1 対象者の特性

対象者の性別、平均年齢、心のデイケアへの平均参加回数は、表 9 に示した。対象者は、男性

が 1 名、女性が 5 名であった。全参加者の平均年齢は 83.2 歳、平均参加回数は 11.0 回であった。

表 9 対象者の性別、平均年齢、心のデイケアへの平均参加回数

男性(1 名) 女性(5 名) 合計(6 名)

平均年齢 83.0 歳 83.2 歳(±3.8) 83.2 歳(±3.4)

平均参加回数 9.0 回 11.4 回 11.0 回

2-4-2 介入前評価と介入後評価

表 10 は、GDS、CAS、ZBI、J-CPAT、TUG、FR、開眼片足立ち、10m 歩行、握力の 9 つの

指標に関して、介入前評価と介入後評価の平均値を比較したものである。介入前後の平均値の比

較を行なった。分析方法は、データが少数であったため、ノンパラメトリック検定であるウィル

コクソンの符号付順位和検定を使用した。

GDS の介入前後の平均値は、4.83 から 3.50 に減少した。CAS の介入前後の平均値は、6.17

から 1.67 に減少した。ZBI の介入前後の平均値は、21.17 から 15.17 に減少した。ZBI において、

有意差がみられた(p<0.1)。

J-CPAT には、8 つの下位尺度があるが、「行動」のみ、2.67 から 6.67 に得点が上昇した。有

意差のみられたものはなかった。

身体機能評価では、TUG は介入前後で 11.82 秒から 9.22 秒と有意に減少した(p<0.1)。FR

19

は、13.83cm から 20.17cm と有意に増加した(p<0.05)。開眼片足立ちは、左足で 14.28 秒か

ら 9.55 秒に減少し、右足でも 10.88 秒から 5.12 秒に減少した。10m 歩行は、介入前後で 7.27 秒

から 6.93 秒に減少した。握力は左手で、17.17kg から 15.00kg、右手で 17.25kg から 16.08kg と

なった。

以上のことから、多くの項目で改善がみられ、特に介護負担感、敏捷性、動的バランスに関し

ては有意に改善がみられていた。しかし、統計的に有意ではなかったものの、認知症の行動障害、

静的バランス、筋力に関する指標は悪化がみられた。

2-4-3 活動量計の結果

2-4-3-1 有効データ数

心のデイケア参加者 7 名の内、デイケアの期間 15 週中 12 週のデータが収集できたのは 3 名で

あった。データ収集できなかった 4 名の理由としては、途中で入院期間があった例 1 例、デイケ

ア不参加となった例 1 例、定期的な参加が得られなかった例 1 例、使用に混乱が見られた例 1 例

であった。使用に混乱がみられた例は記憶障害が顕著で、新たな課題に対する不安が強く、自宅

内での新たな課題遂行が困難であった。

2-4-3-2 活動量計を使用した事例紹介

<事例 1>

被災後、同居家族とともに仮設住宅生活となる。膝痛があり閉じこもり傾向がみられていた。

認知症、うつ症状は軽度であった。

<事例 2>

被災前は独居であったが、被災後にグループホームに入居した。うつ症状がみられ、物盗られ

等の被害妄想がみられていた。

<事例 3>

被災前は独居であったが、被災後に長女と同居するようになった。家事は長女が行なっていた。

日中は知り合いのところに訪問して過ごしていた。記憶障害みられていた。

2-4-3-3 歩行活動量データ(表 11)

20

12 週間、データが収集できた 3 名における 1 日の平均歩数は 4072.8 歩であり、消費カロリー

数は 68.5kcal であった。また Ex 量は 1.3Ex であった。

2-4-3-4 生活活動量データ(表 12)

12 週間、データ収集できた 3 名における 1 日の平均生活活動消費カロリー数は 368.6kcal であ

り、Ex 量は 0.8Ex であった。

2-4-3-5 消費カロリーからみた歩行と生活活動量の経過(図 1、2)

事例 1 と事例 3 においては 3 週目と 6 週目で歩行消費カロリーが増加していた。また 13 週を

通してみると事例 1 と事例 2 では週が進むにつれ消費カロリーが減少していた。生活活動量につ

いては 3 例とも週が進むにつれ消費カロリーが減少していた。

表 10 介入前評価と介入後評価(6 名)

開始時 評価 終了時

平均(SD) 平均(SD)

GDS 4.83 (3.06) 改善 3.50 (1.87)

CAS 6.17 (7.73) 改善 1.67 (1.63)

ZBI 21.17 (9.22) 有意に改善 15.17 (4.71) *

J-CPAT コミュニケーション 15.33 (13.28) 改善 9.67 (13.28)

身体的問題 23.17 (19.92) 改善 16.83 (11.87)

自立能力 13.83 (11.09) 改善 13.00 (11.28)

記憶・見当識 22.83 (12.19) 改善 17.83 (11.09)

行動 2.67 (5.20) 悪化 6.67 (5.50)

社会的交流 33.33 (7.92) 改善 29.67 (13.14)

精神的観察 12.83 (6.40) 改善 6.50 (7.18)

介護ニーズ 23.83 (17.34) 改善 14.17 (7.44)

Timed Up & Go 11.82 秒 (3.44) 有意に改善 9.22 秒 (1.54) *

ファンクショナル・リーチ(FR) 13.83cm (6.55) 有意に改善 20.17cm (5.98) **

21

片足立ち(左) 14.28 秒 (22.17) 悪化 9.55 秒 (7.63)

片足立ち(右) 10.88 秒 (7.86) 悪化 5.12 秒 (2.19)

10m 歩行 7.27 秒 (1.24) 改善 6.93 秒 (1.55)

握力(左) 17.17kg (3.06) 悪化 15.00kg (3.07)

握力(右) 17.25kg (2.42) 悪化 16.08kg (2.46)

*10%有意水準、**5%有意水準、***1%有意水準

表 11 歩行活動量

歩数 歩行消費カロリー 歩行 Ex

事例 1 3651.6 61.1 1.1

事例 2 1109.7 16.5 0.0

事例 3 7457.0 127.8 2.7

平均 4072.8 68.5 1.3

表 12 生活活動量

生活活動消費カロリー 生活活動 Ex

事例 1 443.9 0.7

事例 2 374.8 0.3

事例 3 287.0 1.5

平均 368.6 0.8

22

事例1

事例2

事例3

0

20

40

60

80

100

120

140

160

180

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

消費カロリー(K

cal

経過(週)

図 1 各参加者の歩行による消費カロリー

事例1,

事例2

事例3

0

100

200

300

400

500

600

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

消費カロリー(K

cal

経過(週)

図 2 各参加者の生活活動による消費カロリー

23

2-5 考察

2-5-1 心のデイケアの効果について

本事業である心のデイケアに参加することで、被災された高齢者の抑うつや意欲、その他精神

面での指標と身体面での指標がどのように変化するかを検討した。結果をみると、身体面の指標

で一部悪化を示したもの(片足立ち、握力)があったものの、総じて改善傾向がみられていた。

これは、本事業の目的が概ね達成することができたと考えられる。

悪化のみられた指標を詳しくみると、J-CPAT「行動」、片足立ち(左・右)、握力(左・右)

の 5 項目であった。J-CPAT「行動」の内容は、「そわそわして興奮することがある」「やかましく

て、他人の邪魔をする」等の行動障害について訊ねる内容である。これらは、得点上は悪化した

ようにみえるが、実際は活動性の向上に伴い、単に得点が上昇した可能性がある。

身体面で得点が悪化したのは、バランス能力と筋力の指標であった。片足立ち(左)では、改

善・維持 4 名、悪化 2 名であり、片足立ち(右)では、改善・維持 1 名、悪化 5 名であった。同

様に、握力(左)では、改善・維持 2 名、悪化 4 名、握力(右)では、改善・維持 1 名、悪化 5

名という結果であった。考えられる悪化の理由としては、今回の心のデイケアにおけるプログラ

ムでは、作業療法的なプログラムが多く、主に、活動の場を作ること、そのために社会的交流や

コミュニケーション、意欲に対してアプローチすることが念頭にあったためと考えられる。その

ため、筋力やバランス能力を強化するようなプログラムには重点が置かれていなかったといえる。

当初は、全体的な活動性の向上がみられれば、基礎体力の向上もみられると考えていた。毎回の

プログラムに筋力トレーニングやバランス訓練が入っているとそれらの指標も改善を示した可能

性は考えられる。

2-5-2 家族の介護負担感の軽減について

介護負担感の指標として、本事業では ZBI を参加者の家族に実施した。介入前の得点は、21.17

点であり、介入後は 15.17 点となった。ウィルコクソンの符号付順位和検定において、10%水準

で有意な得点の低下がみられた。心のデイケアとともに月 1 回 60 分から 90 分、家族相談会を開

催し、医師 2 名が家族からの相談を受けた。相談内容は、「日中テレビを見て、食べて寝るだけ。

どうしたらいいか」、「震災後に同居を開始して、母親の行動にいらいらしてしまう。特に非常識

な時間に近所の家に訪ねて行き、注意すると怒る」、「デイサービスに行きたがらない」、「母親は

子どもの頃の記憶に戻っている。認知症の人との関わり方が分からない」「他の人と関わって迷惑

をかけてしまう場合どうしたらよいか」などであった。それから、家族会が進むにつれ情報提供

24

を行なったり、心のデイケアを見学したり、あるいはデイサービスの紹介を受け、認知症のご本

人が通い始めたりすることで、家族から「あまり干渉しないほうがいいのかな」「気にしないで働

こうと思う」という発言が聞かれるようになった。ZBI の得点からみても、ご家族の発言内容か

らみても心のデイケアを中心とした本事業での取り組みは、高齢者を介護している家族の介護負

担感の軽減について一定の効果が得られたと考えられる。

2-5-3 高齢者の居場所作りについて

本事業では、医療や介護保険のサービスにつながっていない高齢者に対して、毎週 1 回程度丁

寧に個別訪問をし、関係を作っていくことで、心のデイケアに参加を促すことができた。心のデ

イケアに継続して参加できるようになると、デイサービスに通うことも容易になった。心のデイ

ケアは、週 1 回 2 時間という短い時間ではあるものの、自宅(や居室)を中心に活動性が低下し

ていた高齢者の居場所となりえたと考えられる。

また、プログラムでは、センター方式の書式を参考にしながら参加者個人の情報をできるだけ

集め、個人の成育歴や趣味、嗜好に合わせたプログラムを作成した。もちろん、1 回のプログラ

ムですべての参加者の好みに合わせた内容を提供できたわけではなかったが、できるだけの内容

を盛り込めるようにした。たとえば、元教員の方には、歌の歌詞を白板に書いて頂き、読み上げ

てもらった。あるいは、お洒落が好きな方には、メイク・ボランティアにも協力を頂き、お化粧

をして写真撮影も行なった。写真撮影前には、男性用のプログラムとして反射板を工作した。踊

りが得意な方には、民謡「アイヤ」の衣装を借りてきて、衣装を着てみんなで踊ったりもした。

最後に、ほとんどの参加者に記憶力の低下がみられていたので、デジタルカメラを利用して記

憶の補助とした。デジタルカメラなので、撮影した時にすぐに確認できること、パソコンと接続

することですぐに印刷できること、プロジェクターに映写して全員でその日行なったことの鑑賞

会ができること等、非常に有効にデジタルカメラを使用することができた。

以上のことから、閉じこもりがちな高齢者の居場所作りには、事前の訪問、丁寧な応対と個人

個人への配慮はもちろんのこと、細かい情報収集と手間がかかったとしても参加者が望む活動を

提供すること、また、記憶力の低下で気後れしてしまうことを防ぐためにデジタル機器を利用す

ることが効果的であったと考えられた。

2-5-4 心のデイケアへの継続的な参加とドロップアウトについて

今回、心のデイケアへの参加者は全 9 名であった。全 15 回実施した心のデイケアに 8 回以上

25

継続的に参加できたのは 6 名であった。継続的な参加が困難だった 3 名のうち、2 名は病気で入

院をしたことが理由であった。1 名は参加を嫌がり来なくなった方であった。

参加を拒否した方は、若年性アルツハイマー型認知症の男性 A で、一度心のデイケアに参加し

た後に「ここにはもう来たくない」、「自分は働きたいんだ」という意志表示をし、スタッフの個

別訪問に対しても拒否傾向にあったため、介護者との話し合いにより今後の方向性を検討した。

男性 A は、認知機能の低下により就業は困難であったが、元の職業を活かし、簡単な工作や清掃

活動は可能であるという情報を家族から得た。そこで、共同で研究を行なった施設内のデイサー

ビスに「スタッフ」という名目で参加することとなった。男性 A の「働きたい」という言葉の中

には、仕事を通して社会や家庭内で役割を持ちたいという気持ちがあったと考えられたため、実

際の収入とはならないが、介護者からスタッフがお金を預かり、それを男性 A に「給与」として

渡すことでモチベーションの維持を図り、奏功した。

これらのことから、認知症の方の支援として、本人から話を聞き、本人の状態をアセスメントす

るだけではなく、家族介護者と十分な話し合いを持つこと、そして、本人のできることに着目し、

それを伸ばすような方向性でスタッフと家族が協力していくことが重要であると考えられた。

2-5-5 活動量測定について

歩行の活動量を見ると事例1と事例3では活動量計を使用することが歩行への動機づけとなり、

一時的に活動量が増えることが確認された。デイケアでの活動時にデータのフィードバックを行

なうことで動機づけを行なうことができると考えられる。

生活活動量については、デイケア実施期間の終盤になるにつれ 3 例とも低下していた。これは、

心のデイケアの開始が夏からであったため、秋になり気温の低下とともに自宅内での活動性が低

下してきたものと考えられる。また、3 例とも 1 日の生活活動 Ex 量が少なく活動強度の少ない活

動が主体の生活となっていることがうかがわれる。認知機能の保持、改善には活動強度と活動量

を増やす事が有効とされる報告もあるなかで、今回の症例の間では歩行消費カロリーが大きい例

ほどEx量も大きくなっていることから散歩など歩行機会を増やしていく取り組みはEx量を増や

していく上で有効と考えられる。また季節にとらわれない日常生活場面での活動強度を考慮した

生活活動の定着を考えていくことも必要であると考えられた。

26

3 研究(2) 陸前高田市での活動:高田病院における研修会

3-1 目的

陸前高田市の中核的病院である県立高田病院にて、認知症についての研修を行ない、被災地で

の認知症、うつ、寝たきりのケアの向上と巡回型心のデイケアの開催をはかる。

3-2 内容

大船渡市では、2012 年 7 月から 11 月にかけて、東八幡平病院、旭神経内科リハビリテーショ

ン病院、典人会、勝久会で全 15 回の心のデイケアを開催し、15 回終了後は、典人会が継続して

行なっている。

陸前高田市では、心のデイケアの場所を確保できず、2012 年度中に開始することが困難となっ

た。そこで、県立高田病院周辺で心のデイケアを開始するために、高田病院の職員研修会を開始

した。

高田病院では、震災後にうつ、寝たきり、認知症の入院患者が増加し、看護・ケアの負担が増

加した。平成 24 年 8 月より、表 13 に掲げた研修会を 5 回行なった。研修会終了後もうつ、寝た

きり、認知症となった入院患者の看護・ケアについての事例検討会を行なった。このような研修

会と事例検討会を行なった結果、高田病院の看護・ケア職員にうつ、寝たきり、認知症患者に対

応する看護・ケア及び心のデイケアの理解が増大してきた。

今後、高田病院の周辺地域での巡回型心のデイケアを開催する計画を実行する予定である。

表 13 高田病院で開催した研修会

回数 日付 タイトル

第 1 回 8 月 22 日 認知症の診療

第 2 回 9 月 19 日 認知症リハビリテーション

第 3 回 10 月 19 日 当院回復期リハビリ病棟における認知症への対応、うつ病患者への対応

第 4 回 11 月 29 日 入院時 BPSD・せん妄の早期発見と対応及び外来での物忘れ、BPSD の早

期発見

第 5 回 12 月 19 日 廃用症候群における仮性認知症認知症患者のケア

27

4 総括と今後に向けて

本事業では、大船渡市での心のデイケア事業と陸前高田市での研修会を行なった。心のデイケ

ア事業では、デイケアに参加することで抑うつ症状が改善し、認知症の周辺症状や複合動作能力

の改善がみられ、介護ニーズの減少がみられた。また、継続的に参加すること、高齢者が集団内

で役割を持つこと、役割を持った上で、それが成功体験となるように支援すること、介護家族に

活動内容を伝え、サービス提供者と介護家族が協力しながら、個別支援を行なうことが重要であ

ると考えられた。事業の意義としては、被災地において複数の組織が協力して事業を立ち上げた

こと、新設されたサポートセンターの支援機能を発展させることができたこと、閉じこもりがち

だった参加者を介護保険サービスにつなげていけたこと、高齢者の居場所ができたことにより、

家族の介護負担の軽減につながったことなどが挙げられる。

陸前高田市での研修会では、地域で基幹となる病院に置いて、看護・ケアスタッフに認知症、

うつ病などの知識と共に BPSD への対応や認知症リハビリテーションについて、伝えることがで

きた。今後の取り組みに活かしていってもらいたい。

本事業の限界は、いくつか挙げられる。1 つは、対象者の評価を行なうに当たり、精神疾患や

骨関節疾患等の合併症、関節等の痛みや精神機能に影響する服薬状況などの考慮が十分でなかっ

たことである。被災地の仮設住宅を訪問して参加者に呼びかけるという方法であったため、最初

から十分な情報を得ることは困難であった。したがって、情報が得られた時点で、情報を追加し

ていったが、それで充分であったかどうかは検討の余地があった。

第 2 に、機材が十分に用意できなかったせいでもあるが、身体機能の評価である TUG の際に

対象者の体格差の考慮が不十分で、全参加者に対して同じ椅子を使用したことが挙げられる。身

長の異なる方に同じ高さの椅子を使用したことで、結果に影響を及ぼした可能性が考えられる。

今後の取り組みでは、対象者の合併症や服薬状況を当初からしっかりと把握し、運動機能評価

の際には、体格等の身体状態によって有利不利となる条件がないかを考えたうえで、調査および

測定することを徹底したい。

心のデイケア事業への参加者は、うつ、寝たきり、認知症で自宅に閉じこもりがちになり、心

のデイケア開催の呼びかけだけでは参加を表明しなかった。このような高齢者に対して、心のデ

イケアのスタッフが週 1~2 回の訪問をして、参加を促した。その結果、心のデイケアへの参加す

るようになった。参加者数は 1 回のみの参加者を含め全 9 名と少数であったが、心のデイケア終

28

了後にもほとんどの方が、介護保険サービスであるデイサービスに継続して参加するようになっ

た。そのことから、本事業には大きな意義があったと考えられる。

閉じこもりがちであったり、認知症などの問題を抱えていた参加者に興味の持てるプログラム

を準備し、実際に実施できたことで、デイケアの効果を高められたと考えられる。

週 1 回のデイケアがより効果的なものとなるように、活動量計を使用して、自宅での活動を増

やせるように工夫を行なった。参加者の活動量は、活動量計を身に着けた直後は増加し、その後

減少していった。このことは、スタッフによる声かけが足りなかったことと夏から秋にかけて活

動量が自然と減少していったことが要因と考えられる。しかし、活動量計を身に着けることで、

活動するモチベーションとなり、週 1 回のデイケアの効果を高めることにいくらかでも寄与した

と考えられる。

現地では、震災後 3 年目を迎えて、うつ、認知症、寝たきり高齢者が増加し始めており、今後、

本事業で取り組んだような、機材やスタッフを公民館などに出張して行なう巡回型デイケアを拡

充していくことが必要である。さらには、日本全国に目を向けても、高齢化が急速に進行して、

うつ、認知症、寝たきり高齢者が増加しているので、このような巡回型デイケアを開催する意義

は今後ますます重要になってくると予想される。本事業における巡回型心のデイケア実施がモデ

ルとなり、日本各地の過疎地区において、孤立しつつある閉じこもり、うつ病、認知症、寝たき

り高齢者に対する巡回型心のデイケアが実施されるようになることが望まれる。

29

5 引用・参考文献

1) Arai Y, Kudo K, Hosokawa T, Washio M, Miura H, Hisamichi S. : Reliability and validity

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使い方・活かし方」 2011.

15) 大船渡市役所ホームページ:「東日本大震災による被害状況等ついて」

http://www.city.ofunato.iwate.jp/www/contents/1303015440244/html/common/other/5115

0b50003.pdf

30

16) 大船渡市役所ホームページ:「高齢者等サポート拠点(サポートセンター)の設置について」

(定例記者会見資料),2012 年 6 月 14 日

http://www.city.ofunato.iwate.jp/www/contents/1324456477247/html/common/other/510b3

fbe142.pdf

17) Podsiadlo D, Richardson S: The timed “Up and Go”: a test of basic functional mobility for

frail elderly persons. The Journal of the American Geriatrics Society, 39(2): 142-148,

1991.

18) Sheikh JI, Yesavage JA: Geriatric Depression Scale (GDS): Recent evidence and

development of a shorter version. Clinical Gerontology : A Guide to Assessment and

Intervention. 165-173, NY: The Haworth Press, 1986.

19) 杉下守弘,朝田隆:高齢者用うつ尺度短縮版-日本版(Geriatric Depression Scale-Short

Version-Japanese, GDS-S-J)の作成について.認知神経科学,11(1): 87-90, 2009.

20) 東海新報,2012 年 8 月 12 日

21) 内出幸美,大久保祐次,市丸徳美,村川浩一(監修),鐘ケ江寿美子(編),リチャード・フ

レミング(編):目でわかる認知症ケアのトータルマネジメント 日本語版 CPAT.厚生科学

研究所,2011.

22) 矢冨直美:日本老人における老人用うつスケール(GDS)短縮版の因子構造と項目特性の検

討.老年社会科学,16(1): 29-36, 1994.

23) Yesavage JA, Brink TL, Rose TL, Lum O, Huang V, Adey MB, Leirer VO: Development

and validation of a geriatric depression screening scale: A preliminary report. Journal of

Psychiatric Research, 17: 37-49, 1983.

24) 全国老人保健施設協会:モバイルデイケア(巡回型通所リハビリテーション)の試行的事業

に係る調查報告書.平成 17 年度 老人保健事業推進費等国庫補助事業,2006.

25) 全国老人保健施設協会:巡回型通所リハビリテーション事業報告書.社会福祉振興助成事業,

2012.

26) Zarit SH, Reever KE, Bach-Peterson J. Relatives of the Impaired Elderly: Correlates of

Feelings of Burden. The Gerontologist, 20(6): 649-655, 1980.

31

6 資料

評価表

(1)J-CPAT(Japan Care Planning Assessment Tool)

※出版されているもののため省略致します。

「鐘ケ江寿美子,市丸徳美,千々岩 親幸,FLEMING Richard,小泉 俊三:日本語版 Care

Planning Assessment Tool の作成と信頼性・妥当性の検討.日本老年医学会雑誌,45(3): 323-329,

2008.」

「内出幸美,大久保祐次,市丸徳美,村川浩一(監修),鐘ケ江寿美子(編),リチャード・フレ

ミング(編):目でわかる認知症ケアのトータルマネジメント 日本語版 CPAT.厚生科学研究所,

2011.」

をご覧下さい。

32

(2)GDS(Geriatric Depression Scale)

Geriatric Depression Scale(簡易版) 氏 名: 様

検 査 日: 年 月 日 曜日

生年月日: 年 月 日( 歳)

次の質問を読み、この一週間のあなたの気持ちに最もよく当てはまるものを選んで下さい。

項 目 回 答 得点

1 自分の生活に満足していますか は い いいえ

2 これまでやってきた事や興味があった事の多くを、最近やめてし

まいましたか は い いいえ

3 自分の人生は空しいものと感じますか は い いいえ

4 退屈と感じることがありますか は い いいえ

5 ふだんは気分の良いほうですか は い いいえ

6 自分に何か悪いことが起こるかもしれないという不安があります

か は い いいえ

7 あなたはいつも幸せと感じていますか は い いいえ

8 自分が無力と感じることがよくありますか は い いいえ

9 外に出て新しい物事をするより、家の中にいるほうが好きですか は い いいえ

10 他の人に比べ記憶力がおちたと感じますか は い いいえ

11 いま生きていることは、素晴らしいことと思いますか は い いいえ

12 自分の現在の状態はまったく価値のないものと感じますか は い いいえ

13 自分は活力が満ち溢れていると感じますか は い いいえ

14 今の自分の状況は希望のないものと感じますか は い いいえ

15 他の人はあなたより恵まれた生活をしていると思いますか は い いいえ

6~10:軽度抑うつ 11~15:重度抑うつ 合計:

33

(3)CAS 標準意欲評価法(Clinical Assessment for Spontaneity)

※出版されているもののため省略致します。

「加藤元一郎:標準注意検査法(CAT)と標準意欲評価法(CAS)の開発とその経過.高次脳機

能研究,26(3):310-319,2006.」をご覧下さい。

34

(4)日本語版 Zarit 介護負担尺度

ZBI(Zarit Caregiver Burden Interview) 氏 名: 様(続柄: / 歳)・評価対象者: 様 検査日: / / 評価者: ※ 評価期間…ここ最近

ときどき

しばしば

ほぼ常に

1. 患者さんは必要以上の介護を求めてくるように思いますか? 0 1 2 3 4 p

2. 患者さんと一緒にいる時間が多すぎて、あなた自身の時間がないと思いま

すか? 0 1 2 3 4 r

3. 患者さんの介護と、他の家族や仕事のこととの間で、ストレスを感じます

か? 0 1 2 3 4 r

4. 患者さんの行動に困ってしまうと思いますか? 0 1 2 3 4 p

5. 患者さんと一緒にいるときに腹が立つことがありますか? 0 1 2 3 4 p

6. 患者さんがいるために、他の家族や友達との関係が悪くなっていると思い

ますか? 0 1 2 3 4 r

7. 患者さんが将来どうなるのか心配に思いますか? 0 1 2 3 4 8. 患者さんはあなたに依存していると思いますか? 0 1 2 3 4 p 9. 患者さんと一緒にいる時に緊張することがありますか? 0 1 2 3 4 p 10. 患者さんのせいで、あなたの健康状態が悪くなっていると思いますか? 0 1 2 3 4 11. 患者さんのせいで、十分なプライバシーが保てないと思いますか? 0 1 2 3 4 r

12. 患者さんの介護をしている為に、あなたの社会生活が損なわれているよう

に思いますか? 0 1 2 3 4 r

13. 患者さんのせいで、気楽に他の人に家に来てもらうことが出来ないと思い

ますか? 0 1 2 3 4 r

14. 患者さんは、あなたしか頼れる人がいないかのように介護してもらうこと

を望んでいるように思いますか? 0 1 2 3 4 p

15. 患者さんを介護するための十分なお金がないと思いますか? 0 1 2 3 4 16. これ以上介護し続けることは不可能であると思いますか? 0 1 2 3 4 p

17. 患者さんが病気になったせいで、あなたの人生が狂わされていると思いま

すか? 0 1 2 3 4 p

18. 誰か他の人に患者さんの介護をゆだねることが出来たらなぁ、と思います

か? 0 1 2 3 4 p

19. 患者さんのために何をしてあげればいいのか分からなくなることがありま

すか? 0 1 2 3 4 p

20. 患者さんのためにもっとしてあげなくてはいけない、と思いますか? 0 1 2 3 4 p 21. 患者さんの介護をもっと上手に出来たらなぁ、と思いますか? 0 1 2 3 4 p

22. 全体的に、患者さんの介護をどの程度重荷に思いますか? (0=なし・1=少し・2=中程度・3=かなり・4=非常に) 0 1 2 3 4

総合スコア ( 0-88 ) p : personal strain factor ( 0-48 )

r : role strain factor ( 0-24 )

35

(5)情報シート

記載日:2012 年 月 日

心のデイケア 情報シート <基本情報>

氏名 年齢 歳 性別 男 / 女

生年月日 年 月 日 緊急連絡先

住所

合併症 高血圧 ・ 糖尿病 ・ 腰の疾患 ・ 膝の疾患 ・ 脳血管障害 その他( )

<仮設住宅へ入所後の生活障害> ADL・IADL 状況 [食事] 買い物 自立 見守り 声かけ 介助( ) しない 調理 自立 見守り 声かけ 介助( ) しない 摂食 自立 見守り 声かけ 介助( ) 嚥下障害 有 無

[排泄] トイレ ポータブルトイレ / リハビリパンツ オムツ パット

自立 見守り 声かけ 介助( ) 失禁 有 無 尿便意 有 無

[移動] 歩行 杖 歩行器 車椅子

自立 見守り 声かけ 介助( ) 転倒 有 無

[更衣] 更衣動作 自立 見守り 声かけ 介助( ) 衣類の選択 自立 見守り 声かけ 介助( ) 更衣の順番 自立 見守り 声かけ 介助( )

[入浴] 自立 見守り 声かけ 介助( ) 特記事項

36

<介護上の問題点> 介護者の有無 有 無

介護負担感の評価 介入前 介入後

ZBI /88 点 /88 点

Personal Strain Factor /48 点 /48 点 Role Strain Factor /24 点 /24 点

<介入前後の評価> 孤立、閉じこもりの評価 介入前 介入後

CPAT「社会的交流」 /30 点( %) /30 点( %)

認知症評価 介入前 介入後

CPAT「記憶・見当識」 /24 点( %) /24 点( %)

抑うつ評価 介入前 介入後

GDS15 /15 点 /15 点

意欲の評価 介入前 介入後

CAS /60 点( %) /60 点( %)

身体機能評価 介入前 介入後

Timed Up & Go Test 秒 秒

ファンクショナル・リーチ Cm Cm

開眼片足立ち 秒 秒

落下棒テスト Cm Cm

握力 Kg Kg

※加えて、センター方式の様式「A-4 基本情報(私の支援マップシート)」「B-1 暮らしの情報

(私の家族シート)」「C-1-2 心身の情報(私の姿と気持ちシート)」を使用しました。

37

(6)心のデイケア新聞(例)

38

(7)個人評価表

心のデイケア個人評価表

年 月 日( )第 回

デイケア中の様子:0…悪い 1…あまりよくない 2…良い 3…とても良い

体調 表情 意欲 交流

本人が話したこと

対象者氏名

( ) 考察

体調 表情 意欲 交流

本人が話したこと

対象者氏名

( ) 考察

体調 表情 意欲 交流

本人が話したこと・

対象者氏名

( ) 考察

体調 表情 意欲 交流

本人が話したこと

対象者氏名

( ) 考察

体調 表情 意欲 交流

本人が話したこと

対象者氏名

( ) 考察

体調 表情 意欲 交流

本人が話したこと

対象者氏名

( ) 考察

39

<謝辞>

本事業にご協力を頂きました、心のデイケア参加者の皆様、またご家族の方々、地域に住む方々

に心から御礼申し上げます。そして、東八幡平病院、旭神経内科リハビリテーション病院、医療

法人勝久会、社会福祉法人典人会の 4 施設のスタッフが、協力して一つの事業を立ち上げ、ここ

にご報告することができたことに深謝致します。このような取り組みが、被災地において少しで

もお役に立つことができたならば幸いです。

本報告書は、「公益財団法人 在宅医療助成 勇美記念財団 在宅医療研究への助成」により作成

されました。