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2019年12月18日(水)岡三証券(株)
チーフ・エコノミスト愛宕 伸康
日本の財政破綻を見据えた今後の資産運用
(1)想定される財政破綻までのシナリオ
<第613回 外交研究会>
目 次
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
財政赤字拡大のポイントは社会保障制度改革の遅れと景気対策の大盤振る舞い
景気後退のトリガーを引くのは誰か?
・・・米国の景気後退はいつくるのか?バブルは繰り返されるのか?
・・・日本の景気後退はいつくるのか?消費増税の影響は?
シナリオに大きな影響を及ぼす金融の脆弱性
・・・エスカレートする日本の金融政策
・・・高まる邦銀の対外投資と市場の国際連動性
・・・脆弱化する金融機関
想定され得るシナリオ
2
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
社会保障制度改革の遅れと景気対策の大盤振る舞い
3
低成長と膨らむ公債残高 社会保障関係費による赤字が大半を占める
98年度や09年度も国債発行が大幅に拡大 経済対策の事業規模
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
1000
65 67 69 71 73 75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 17 19
特例公債残高
4条公債残高
普通国債残高
(兆円)
(年度末)
名目GDP
897兆円(政府案)
(出所)財務省
0
20
40
60
80
100
120
75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 17 19
特例公債発行額
4条公債発行額
(兆円)
(年度)
一般会計の税収
一般会計の歳出
歳出-税収
(出所)財務省
(121.3兆円)
年金
56.7
医療39.2
介護その他25.3
社会保障給付内訳
0
20
40
60
80
100
120
140
75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 17
社会保険料収入
社会保障給付費
(兆円)
この差額が国や地方
の税負担等でまかな
われている。
(年度)
保険料70.2
国庫負担33.1
地方税等負担13.8
18年度予算
資産収入等
(121.3兆円)
【一般会計】
社会保障関係費
33.0兆円
-10
-8
-6
-4
-2
0
2
4
6
8
10
0
20
40
60
80
100
75 77 79 81 83 85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 17
事業規模
実質GDP(右軸)
(兆円)
(年度)
アベノミクス
(注)2013年1月の「日本経済再生に向けた緊急経済対策」は13年度にカウント。
(資料)内閣府
(前年比、%)
-8
-6
-4
-2
0
2
4
54 57 60 63 66 69 72 75 78 81 84 87 90 93 96 99 02 05 08 11 14 17
(%)
(年)(出所)Refinitiv,NBER
(注)シャドーは景気後退期
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
78 79 81 83 85 86 88 90 92 93 95 97 99 00 02 04 06 07 09 11 13 14 16 18
景気後退期
景気先行指数
89年1月
00年4月
06年3月
ボトム(82年8月)
ボトム
(91年3月)
ボトム(01年10月) ボトム
(09年3月)
78年9月、10月
(2016年=100)
(出所)Refinitiv、NBER (年)
12ヶ月 92ヶ月 120ヶ月 73ヶ月124ヶ月
(~19年10月)
①
②
③
④
(注)シャドーは景気後退期
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
米国はミニリセッションから脱し、景気拡大を継続
4
長短金利(10年とFFレート)と景気後退 長短金利逆転は利下げにより足元解消
ニューヨーク連銀の景気後退確率 ミニリセッションから脱し、景気拡大を続ける
長期金利を短期金利が上回ると、その後(直近3回の平均15ヶ月)景気後退になっている
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
60 62 64 67 69 72 74 76 79 81 84 86 89 91 93 96 98 01 03 05 08 10 13 15 18 20
(%)
(年)(出所) Refinitiv
閾値29.7%
ピーク:8月37.9%直近11月
24.6%(9.3%)
(注)シャドーは景気後退期
-1
0
1
2
17 18 19
10年金利-FFレート
10年金利-3ヶ月物金利
(出所)Refinitiv (年)
(%)
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
繰り返すのか、95-96年の景気・相場展開
5
FF金利誘導目標とISM製造業(95-96年)FF金利誘導目標とNYダウ(95-96年)
FF金利誘導目標とNYダウ(最近) FF金利誘導目標とISM製造業(最近)
3,300
3,800
4,300
4,800
5,300
5,800
6,300
6,800
7,300
7,800
8,300
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
6.5
93 94 95 96 97 98
FF金利上限
ダウ工業株平均(右軸)
(出所)Refinitiv
(%)
(年)
①6.00%→5.75%(95年7月6日)
②5.75%→5.50%(95年12月19日)
③5.50%→5.25%
①②③
(ドル)
15,000
20,000
25,000
30,000
35,000
40,000
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
16 17 18 19 20 21
FF金利上限
ダウ工業株平均(右軸)
(出所)Refinitiv
(%)
(年)
FF金利目標レンジ
①2.00%-2.25%(19年8月1日)
②1.75%-2.00%(19年9月19日)
③1.50%-1.75%
①②
③
(ドル)
?
42
47
52
57
62
67
2.5
3
3.5
4
4.5
5
5.5
6
6.5
93 94 95 96 97 98
FF金利上限ISM製造業PMI(右軸)
(出所)Refinitiv
(%)
(年)
(ポイント)
①6.00%→5.75%(95年7月6日)
②5.75%→5.50%(95年12月19日)
③5.50%→5.25%
①②③
42
47
52
57
62
67
0
0.5
1
1.5
2
2.5
3
16 17 18 19 20 21
FF金利上限
(出所)Refinitiv
(%)
(年)
FF金利目標レンジ
①2.00%-2.25%(19年8月1日)
②1.75%-2.00%(19年9月19日)
③1.50%-1.75%
①
②
③
(ポイント)
?
1.4
1.6
1.8
2
2.2
2.4
2.6
2.8
3
3.2
3.4
2300
2400
2500
2600
2700
2800
2900
3000
3100
3200
18 19(出所)Refinitiv
(年)
(%)
10年金利(右軸)S&P500
46
48
50
52
54
56
40
45
50
55
60
65
11 12 13 14 15 16 17 18 19
英国 ユーロ圏 米国 日本 中国(右軸)
(年)(出所)Refinitiv、各種資料より岡三証券作成
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
次の景気後退はいつ?バブルのリスクは?
6
コナンドラム再来?しかし、景気は必ず循環する-次は22年?-
米国企業のレバレッジが徐々に拡大すると? 債務残高は第Ⅱ次世界大戦時を超える
リセッションを回避してもFRBの利上げは当面見送られ、インフレが停滞する下で長期金利の上昇は緩慢に
5.054.95
4.69
2
3
4
5
6
80 83 86 89 92 95 98 01 04 07 10 13 16 19 22
(倍)
(年)(注)シャドーは景気後退期
(出所)Refinitiv、岡三証券
4.45
(22Q1)
企業の財務レバレッジ=純債務/キャッシュフロー
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
日本も補正予算を組んで景気後退を回避
7
景気動向指数(一致指数、CI)と景気後退 「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」
日本経済の見通し-消費増税の伴う駆け込み・反動は小さい-
実質成長率見通し 2018年度 2019 2020 2021
弊社 0.7(実績) 0.9 0.8 0.5
日銀 0.7 0.9 1.1
ESPフォーキャスト 0.7 0.4 0.6
(出所)内閣府、日本銀行、日本経済研究センター、見通しは岡三証券
1.0 1.6
-2.4
0.0
2.1
-4.7
0.6 0.5
-1.6
-6-5-4-3-2-10123
96/4Q 97/1Q 2Q 13/4Q 14/1Q 2Q 19/2Q 3Q 4Q
実質国内家計最終消費支出
(出所)内閣府より岡三証券作成
(前期比、%)
見通し
-3.0
-2.0
-1.0
0.0
1.0
2.0
-3.0
-2.0
-1.0
0.0
1.0
2.0
┘ └ 1 4 ┘ └ 1 5 ┘ └ 1 6 ┘ └ 1 7 ┘ └ 1 8 ┘ └ 1 9 ┘ └ 2 0 ┘ └ 2 1 ┘
外需
公需
国内民需
実質GDP
(前期比、寄与度、%) (前期比、寄与度、%)
2 2 年1 3
見通し
(出所)内閣府、見通しは岡三証券
65
70
75
80
85
90
95
100
105
110
85 87 89 91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15 17 19
(2015年=100)
(年)(出所)内閣府、Refinitiv
(注)シャドーは景気後退期
3-4月 「悪化」
5-7月 「下げ止まり」
8-10月 「悪化」
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
物価安定目標は実現せず、金融政策はエスカレート
8
エスカレートする日本の金融政策 金融政策の変更と株価・為替
膨張する日銀のバランスシート
【2013年4月『量的質的金融緩和』】QQE
物価安定目標2%を2年程度を念頭に実現させる。
マネタリーベース・コントロール採用・・・年間約60~70兆円に相当するペースで増加させる(2012年末138兆円⇒2014年末270兆円)
長期国債の保有残高を、年間約50兆円に相当するペースで増加させる。
ETFとJ-REITの保有残高を、それぞれ年間約1兆円、年間約300
億円に相当するペースで増加させる。
【2014年10月『量的質的金融緩和』拡大】QQEⅡ
マネタリーベースを年間約80兆円に相当するペースで増加させる。
長期国債の保有残高を、年間約80兆円に相当するペースで増加させる。
ETFとJ-REITの保有残高を、それぞれ年間約3兆円、年間約900
億円に相当するペースで増加させる。
【2016年1月『マイナス金利付き量的・質的金融緩和』】
金融機関が日本銀行に預ける「日銀当座預金」の一部(20数兆円)に▲0.1%のマイナス金利を課す。
【2016年9月『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』】
総括検証・・・物価目標が達成できていない理由を説明
イールドカーブコントロールを導入。①短期金利操作目標・・・▲0.1%
②長期金利操作目標・・・10年金利ゼロ%程度
長期国債は保有残高の増加額年間約80兆円をめどとして、ETF
とJ-REITは保有残高がそれぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう、買入れを行なう。
<2013年3月末> -兆円
金地金 0.4 銀行券 83.4
現金 0.3 当座預金 58.1
国債 125.4 その他預金 0.2
CP等 1.2 政府預金 1.5
社債 2.9 引当金勘定 3.2
ETF 1.5 資本金 1億円
J-REIT 0.1 準備金 2.7
信託財産株式 1.4
貸付金 25.5
外国為替 5.0
合計 164.3 合計 164.3
(出所)日本銀行
資産 負債および純資産
<2018年3月末現在> -兆円
金地金 0.4 銀行券 104.0
現金 0.3 当座預金 378.2
国債 448.3 その他預金 21.4
CP等 2.1 政府預金 15.1
社債 3.2 引当金勘定 4.9
ETF 18.9 資本金 1億円
JREIT 0.5 準備金 3.2
信託財産株式 1.0
貸付金 46.4
外国為替 6.6
合計 528.5 合計 528.5
(出所)日本銀行
資産 負債および純資産
+323
+329
<19年10月20日現在>国債・・・482兆円当座預金・・・407兆円合計・・・572兆円
70
80
90
100
110
120
130
140
7000
9000
11000
13000
15000
17000
19000
21000
23000
25000
12 13 14 15 16 17 18 19
日経平均(左軸)
ドル円相場(右軸)
(円/ドル)
衆院解散宣言(2012/11/14)
インフレターゲット
導入(2013/1/22)
QQE
(2013/4/4)
QQEⅡ(2014/10/31)
マイナス金利政策
(2016/1/29)
(年)
(円)
(出所)Refinitiv
総括検証、YCC導入(2016/9/21)
長期金利変動幅拡大(2018/7/31)
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
“Search For Yield” で日本勢の対外証券投資が拡大
9
膨らむ邦銀のリスクテイク(日銀FSR19年10月号) 膨らむ対外証券投資
邦銀の対外エクスポージャーは今や世界一 日本市場での海外勢のプレゼンスも高まっている
0
1
2
3
4
5
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18
フランス ドイツ 英国
米国 日本
(兆ドル)
(年)(出所)Refinitiv
4.1兆ドル
(459兆円)
0
10
20
30
40
50
60
70
05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19(出所)Refinitiv、岡三証券
2008~13年度の平均
15.3兆円
2014年度以降の平均38.7兆円
(兆円)
(年)
居住者による対外証券投資の取得額
12.8
29.1
0
10
20
30
40
9798990001020304050607080910111213141516171819
日本国債
日本株
(%)
(年)(出所)日本銀行、日本証券取引所
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
金融機関の体力は着実に失われつつある
10
邦銀の業態別預貸利ざや 主要銀行の債券等関係損益
日銀FSR(19年4月号)のストレステスト 悪化する銀行株PBR(株価純資産倍率)
-1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18
(千億円)
(年度)(出所)金融庁
0
0.2
0.4
0.6
0.8
1
1.2
97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18
全国銀行
地方銀行
第二地方銀行
(%)
(出所)全国銀行協会(年度)
業態別預貸利ざや=
貸出金利回りー預金債券等利回りー経費率
0
0.5
1
1.5
2
2.5
1998年4月3日 2019年4月3日
(倍)
(出所)Refinitiv
平均 1.11最低 0.45
平均 0.37最低 0.15
I. 財政
II. 経済
米国経済
日本経済
III.金融
金融政策
副作用①
副作用②
IV.シナリオ
想定され得るシナリオ-超円高後の超円安-
11
米国景気後退・金融危機 財政政策⇒債務膨張
ドルの信認失墜日本へのリパトリ
Fed 金融緩和
日米金利差縮小
超円高/日本の株価暴落日本景気後退
異次元緩和強化景気対策発動
債務残高膨張/円の信認失墜 公的資金注入
金融機関破綻 金融危機
株価暴落/超円安/長期金利高騰
米国クレジット市場混乱*
(日本売り)
* CLO市場における邦銀の保有比率は15%に達する(日銀FSR19年10月号)
【具体的に何が起きるのか?】
国債格下げ
企業のドル資金調達難
貸し渋り、貸しはがし、貸倒の増加
輸入物価高騰・企業収益圧迫
企業倒産の増加、失業率の上昇
デット・デフレーション
12
(MEMO)
(注)当資料の他へのご利用はお控えください。