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平成30622財務省国際局 資料2 関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会 配布資料 今後の国際経済・金融の課題

今後の国際経済・金融の課題...今後の国際経済・金融の課題 3 -国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の推進 -低所得国における債務持続性・透明性の確保

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平成30年6月22日

財務省国際局

資料2関税・外国為替等審議会 外国為替等分科会 配布資料

今後の国際経済・金融の課題

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今後の国際経済・金融の課題

3

- 国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の推進

- 低所得国における債務持続性・透明性の確保

- 金融技術革新の活用とアジア経済・金融市場の発展

- 投資と安全保障

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アルゼンチン議長下におけるG20財務大臣・中央銀行総裁会議の主なテーマ

4

1.世界経済

2.仕事の未来(横断的テーマ): IT技術をはじめとした昨今の技術革新に対応するため、機械に代替されない雇用・スキルの在り方や、教育

等の政策対応について議論。

3.インフラ投資(横断的テーマ): 世界的なインフラギャップが2035年に5.5兆ドルにのぼるとされ、この解消のために“Infrastructure as an asset 

class”を課題にかかげ、民間投資を促進。

: 質の高いインフラを含むロードマップを支持。

4.国際⾦融アーキテクチャ: グローバル金融セーフティネット、資本フロー、マクロプルーデンス政策。

: 低所得国における債務の脆弱性を懸念。債権者・債務者双方における、より高い透明性を要請。

5.⾦融セクター改⾰: 規制の実施と予期せざる効果の特定、対処、及び規制改革の目的達成を確保するための評価。

: 暗号資産の基礎となる技術を含む技術革新の可能性。暗号資産とマネロン・テロ資金対策。

6.国際課税: 「税源浸食と利益移転(BEPS)」パッケージの実施に引き続きコミット。

: 経済の電子化への対応。

7.テロ資⾦対策

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今後の国際経済・金融の課題

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- 国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の推進

- 低所得国における債務持続性・透明性の確保

- 金融技術革新の活用とアジア経済・金融市場の発展

- 投資と安全保障

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「質の高いインフラ投資の推進のためのG7伊勢志摩原則」について(2016年5月)

6PPP等を通じた効果的な資金動員

G7伊勢志摩サミットにおいて、以下の原則をG7諸国で採択。下記の原則に沿って、各国・国際開発金融機関(MDBs)がインフラ投資を行い、「Value for Money」及び「質」の要素を考慮した調達制度を導入することを慫慂するもの。

安定した運行、ライフサイクル・コストから見た経済性、安全性及び自然災害等に対する強じん性の確保

現地での雇用創出、人材育成及びノウハウ移転の確保

社会・環境への影響に対する配慮

国・地域レベルでの経済開発戦略との整合性の確保

原則3

原則2

原則1

原則5

原則4

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「G7伊勢志摩原則」以降の質の高いインフラ投資の取組推進

7

2016年7月に、世銀において、新たな調達枠組みを導入。入札に当たり、価格に加えて、 「G7伊勢志摩原則」においても言及のある「Value for Money」 や「質」などの要素(※)を評価することが可能に。※具体的には、ライフサイクル・コスト(含む運営管理費用)、安全性など

39. 我々は、社会・環境面での影響に対応し、経済・開発戦略と整合性をとり

つつ、ライフサイクル・コストから見た経済性、安全性、自然災害に対する強じん性、雇用創出、能力構築及び相互に合意した条件での技術とノウハウの移転の確保を目指す、質の高いインフラ投資の重要性を強調する。

G20杭州サミット(2016年9月4‐5日)コミュニケ(抜粋)

2016年9月の中国でのG20サミットでは、新興市場国も構成員であるG20の間で、社会・環境配慮、ライフサイクル・コストから見た経済性など「G7伊勢志摩原則」の主たる要素や、質の高いインフラ投資の重要性について認識を共有。

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質の高いインフラ投資の例

8▲ケニア・モンバサ港開発

(JICA, 2007年11月L/A調印)

▲英・都市間高速鉄道

(JBIC, 2012年7月L/A調印)

▲カンボジア・つばさ橋(JICA, 2010年6月G/A締結)

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質の高いインフラ投資による経済発展のための「自律的循環」の実現

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○ 「質の高いインフラ投資」が有する高次の意義 ‐‐‐インフラ整備にとどまらず、実施国の経済の「自律的循環」を強力に推し進める‐‐‐ を明確化するとともに、質の高いインフラ投資に係る原則をアップグレード

○ アップグレードに当たっては、ESG(環境・社会配慮とガバナンス)を前面に出すとともに、Responsible Financingやインフラの利用の開放性をハイライト

「原則」アップグレードのイメージ

「国際公共財」としての

質の高いインフラ投資

環境・社会配慮経済性

ガバナンス強じん性

( E・S )

・Responsible Financing

・開放性

( G )

民間資金動員とインフラ投資の一層の促進

民間投資促進産業誘致

経済の「自律的循環」

持続可能な借入

雇用創出

能力構築技術移転

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上流(プロジェクト組成)支援 下流(ファイナンス)支援

・一定の質の高さに係る基準を充たした

インフラ案件への資金供給の拡大

- JBIC新ファシリティ

「質高インフラ環境成長ファシリティ」

- JICAによる有償資金協力

- インフラ支援ファシリティ(GIF)

の下流支援への拡大

・東南アジア災害リスク保険ファシリティ

(SEADRIF)

・JICAによる技術協力

・MDBsに設置した日本信託基金による支援

・マルチの枠組みによる支援

- インフラ支援ファシリティ(GIF)

- 高度技術支援基金(HLTF)

- PPP組成支援ファシリティ

- アフリカ民間セクター向け支援基金(FAPA)

(注)※は未設立のもの。(その他稼働中のものへの追加支援も検討していく。)質高インフラ環境成長ファシリティは今般創設。GIFの下流支援への拡大は今後検討。SEADRIFは2019年に稼働を目指す。

〔 世界銀行 〕

〔 アジア開発銀行 〕

〔 米州開発銀行 〕

〔 アフリカ開発銀行 〕

データ整備、技術支援

・質に関するデータ整備 〔 MDBs等 〕

・技術支援(調達、公共事業計画、債務管理) 〔 IMF・MDBs 〕

○ 質の高いインフラ投資の包括的な支援ツールメニューを提示

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質高インフラ環境成長ファシリティ

11質 の ⾼ い イ ン フ ラ ・ プ ロ ジ ェ ク ト

外 為 特 会

J B I C

協調出融資

市 場原資調達

保 証 供 与

補完的な原資供給

国際開発⾦融機関(MDBs)

最⼤1/2

○ ESG(環境、社会、ガバナンス)投資という世界的潮流を踏まえ、地球環境保全目的に資するインフラ整

備を幅広く支援する新ファシリティをJBICに創設

○ 官民あわせた資金動員総額 「3年で約500億ドル」

○ 国際開発金融機関(MDBs)との協調融資など、国際社会と緊密に連携

質⾼インフラ環境成⻑ファシリティ [ QI-ESG ]邦銀等

協調融資

3年 約500億ドル

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今後の国際経済・金融の課題

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- 国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の推進

- 低所得国における債務持続性・透明性の確保

- 金融技術革新の活用とアジア経済・金融市場の発展

- 投資と安全保障

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低所得国における債務持続性・透明性: 問題の所在と対応の方向性

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低所得国においては、HIPC(Heavily Indebted Poor Countries)イニシアティブやMDRI(Multilateral Debt Relief Initiative)により債務救済を受けたにもかかわらず、足元で、多くの国がDebt Distress(債務破綻状態)やそれに近い状況に陥っている(次頁参照) 。このため、巨額な開発需要がある中で、十分な開発資金を得られない状況となっている。要因としては、

貸し手側: G7などの伝統的なドナー国の多くは多額の債務救済を行ったことで低

所得国における債権残高が大きく低下する一方、新興ドナー国や民間投資家による非譲許的かつ無責任な貸付が増えている。

借り手側: 十分な債務管理能力がないが故に債務を累積させている国も多い。

※ IMF/WBの債務持続性分析(DSA:Debt Sustainability Analysis)において債務破綻状態と判定された国チャド、グレナダ、モザンビーク、南スーダン、スーダン、ジンバブエ (2018年6月1日時点)

借り手側・貸し手側の双方において、債務持続性を認識し、債務透明性を向上させることが不可欠。借り手側において、財政・債務管理能力を高めることも喫緊の課題。

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低所得国における債務持続性・透明性: 問題の所在と対応の方向性

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低所得国におけるIMF/世銀による債務持続性分析(DSA)の格付け比率の推移

※ 債務持続性分析(DSA: Debt Sustainability Analysis)

DSAは、低所得国の債務破綻リスクを4つの区分(「Low」リスク、「Moderate」リスク、「High」リスク、「In debt distress」)で評価。

出典:IMF “Macroeconomic Developments and Prospects in Low‐Income Developing Countries – 2018”

低所得国における公的債務及び公的保証債務の推移(GDP比(%))

%

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低所得国における債務持続性・透明性: パリクラブ

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深刻な債務問題を抱えた国の債務再編を議論するほか、債務問題全般の情報共有・議論を行う国際会議としてパリクラブ(主要債権国会合)が存在。

そのメンバーは先進国が中心であり、中国をはじめ、新興ドナー国の多くはメンバーとはなっていない。

※1 パリクラブ正規メンバー国(22か国)日本、アメリカ、フランス、ドイツ、イギリス、イタリア、カナダ(以上G7)、ロシア、アイルランド、オーストラリア、

オーストリア、オランダ、スイス、スウェーデン、スペイン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、ベルギー、イスラエル、韓国、ブラジル

※2 中国は正規メンバーではなく、アドホック・メンバーとして、パリクラブの議論の一部に参加

※3 G20国でパリクラブに正規加盟していない国は、以下の8か国中国、メキシコ、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン、インド、インドネシア、サウジアラビア

パリクラブメンバー国ではなく、新興ドナー国が、低所得国の重要な債権国となってきているところ、中国をはじめ、新興ドナー国をパリクラブに参加させていくことが課題。

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低所得国における債務持続性・透明性: 足元の議論

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● G20財務大臣・中央銀行総裁会議コミュニケ(2018年3月19‐20日 於:亜ブエノスアイレス)

低所得国における債務水準の上昇はこれらの国々の債務脆弱性に関する懸念をもたらしている。我々は公共財政管理に関する能力開発、国内政策枠組みの強化、そして、情報共有の促進が、低所得国における新たな債務破綻を避ける助けとなりうることに合意する。我々は債権者と債務者の両サイドにおいてより高い透明性を求める。我々は、二国間の公的債務を再編するための主要な国際フォーラムとして、新興債権国のより幅広い参加に向けてパリクラブが進めている作業を支持することを再確認する。我々は、低所得国における債務の記録と報告に関するIMF及び世界銀行グループによる技術支援の必要に応じた提供を支持し、これら機関による債務の透明性に向けた取組に期待する。

(Issues for further action)We ask the IMF and WBG to develop a note on existing debt transparency initiatives and deliver this to usahead of our next meeting in July.We ask the IMF and WBG to prepare a document on strengthening technical assistance in debt recording andreporting and deliver this to us ahead of our next meeting in July.

● IMFCコミュニケ(2018年4月21日 於:ワシントンDC)債務持続可能性の確保: 多数の国々、特に低所得国において、債務脆弱性が増大している。我々は、IMFと世界銀行グループに対し、債務透明性と持続可能性の向上及び低所得国の債務脆弱性に対処するための多方向からの作業計画について協働することを求める。我々は、IMFに対し、財政枠組みの強化や債務

管理能力の改善のために加盟国と、持続可能な貸付慣行の促進やデータギャップの解消について債務者及び債権者と、それぞれ密接に協働することを求める。

○ 本年(2018年)に入り、G20財務大臣・中央銀行総裁会議やIMFCのコミュニケにおいて、

債務持続性や債務透明性の向上が要請されるとともに、新興ドナー国のパリクラブ参加に向けた作業が支持。

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公的輸出信用分野における新興国の国際ルールへの取り込み

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公的輸出信用(日本ではJBIC等が実施)に関し、主要なOECD諸国は、償還期間や金利等の供与条件を定めた国際ルールである「OECD輸出信用アレンジメント」に準拠。

他方、中国等の非OECD諸国は当該ルールに縛られずに公的輸出信用を供与。こうした国々を、公的輸出信用の国際ルールに取り込むことが課題。

中国等の非OECD諸国をも規律する公的輸出信用のグローバルなルール作りを目指し、2012年に輸出信用に関する国際作業部会(IWG※)を立ち上げ、現在、ルール作りの議論を行っているところ。※International Working Group on Export Credits

IWG参加国(17か国+EU)

アレンジメント参加国(8か国+EU)

日、米、加、豪、韓、EU、ニュージーランド、スイス、ノルウェー

アレンジメント非参加国(9か国)

中、印、露、伯、馬、尼、南ア、トルコ、イスラエル

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今後の国際経済・金融の課題

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- 国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の推進

- 低所得国における債務持続性・透明性の確保

- 金融技術革新の活用とアジア経済・金融市場の発展

- 投資と安全保障

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開かれた形でのアジア経済・金融市場の発展に向けた通貨政策の方向性

日本企業のアジア進出の拡大

開かれた形でのアジア経済・金融市場の発展

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○ 企業の多国籍化に伴い、基軸通貨である米ドルの利用は企業にとって合理的選択。米国経済・市場が揺るがない限り、この選択は継続すると考えられる。

○ 一方、アジア域内貿易・企業内取引の拡大を背景に、アジア現地通貨の需要は徐々に拡大傾向。ただし、各国のマクロ経済運営や通貨レジーム、マクロプルーデンス・資本流出入管理政策の自由化方針は慎重であり、現地通貨利用拡大は極めて緩やか。

○ また、競争力のある日本企業やアジア域内での展開が1か国に留まる日本の中小企業等には、日本円に対する需要が存在。

○ 中国の経済規模・貿易量の拡大に加え、現地通貨=人民元スワップも人民元利用に寄与し、貿易決済を中心に人民元の利用は拡大傾向。他方で、資本取引には利用されず。

○ 対外直接投資残高は急増。(2010年末:68兆円→2016年末:154兆円)

企業の通貨選択の現状

東京市場の活性化

○ 東京市場は世界で も早く開く主要市場。

○ 日本企業の外貨建て資金調達ニーズは増大。(外貨建て債券発行額2010年:2.4兆円→2017年:9.6兆円)

○ 家計の金融資産1,845兆円。日本の機関投資家の外貨建て投資需要も大きい。

背景 通貨政策の方向性

アジアにおけるセーフティネットの充実

○ チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)の機能強化・IMFとの連携強化

○ 域内サーベイランス強化(AMRO) ○ 二国間通貨スワップ(BSA)の拡充

金融円滑化・金融インフラ整備

東京金融市場の発展

○ 現地通貨建て債券市場の育成(ABMI・CGIF)

○ 保険市場の育成(SEADRIF)

○ 規制緩和を通じた現地通貨利用促進(LCSF)の拡大

○ ASEAN+3域内での決済インフラ整備(クロスボーダーDVPリンク)

○ 直接交換市場の拡大

○ 現地通貨の利用支援(日本国債・日本円のクロスボーダー担保活用)

○ 日中金融協力 ○ 日銀ネットの高度化

○ 金融技術革新の活用(クロスボーダー決済におけるフィンテックの活用等)

○ 多通貨決済の実現に向けた検討(香港市場の調査、人民元クリアリング銀行)

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開かれた形でのアジア経済・金融市場の発展に向けたデジタル技術に係る政策の方向性

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○ AI・ビッグデータ・分散型台帳技術(DLT: Distributed Ledger Technology)等のデジタル技術の発展は、世界経

済・金融セクターの在り方を大きく変える可能性。アジア地域では、デジタル技術を金融分野に応用する動きが顕著。

○ デジタル技術の活用により、クロスボーダー取引の効率化・迅速化等が期待される。一方で、アジア経済・金融市場の更なる発展に資する共通の政策・ルール作りが求められる。

デジタル技術の発展がもたらし得るベネフィット 政策の方向性

決済の電子化や貿易金融・KYC等の効率化

P2P融資等による金融包摂の進展 デジタル教育の整備・拡充

銀行以外からの金融業務への新規参入 金融市場の変化に即した業態横断型のルール

拠点を有さない経済活動主体の誕生健全な市場競争に向けた

税制・マネロン規制の国際協調

膨大な情報の集約・活用

官民双方での実験的取組

個人情報の適切な保護と活用

金融インフラ

ビッグデータ

金融包摂

金融の安定性

税制・マネロン規制

政策全般についての国際的な協調・共通理解の深化

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クロスボーダー決済の課題とフィンテックの活用

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○ クロスボーダー決済では、送金に要する時間や手数料等が課題として指摘されている。

○ スマートフォン、ビッグデータ分析、分散型台帳技術(DLT)などの新しい情報技術が発展する中、発

達した決済システムが存在する先進国と決済システムが未成熟な途上国それぞれの実情に応じて、これらを活用して決済を効率化しようという動き。

○ 官民様々なレベルでフィンテックの研究が進められている。

送金時間の短縮送金手数料の

低減・透明性向上決済システムの

効率化

クロスボーダー決済の課題

• Alipay、WeChatPay(中国)等の発展・拡大

• PayNow(星)とPromptPay(泰)の相互接続

• TIPSによる24時間/365日送金(ユーロシステム)

電子小口決済の活用

• UBS(スイス)等によるUtility Settlement Coin• Ripple(米)における分散型台帳技術の活用

• 星中銀・加中銀における共同プロジェクト

銀行間決済への分散型台帳技術

(DLT)の活用

(注)下線部はクロスボーダー決済における取組。

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G20におけるデジタル技術に関する議論の動向

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G20(3月:亜)で発表されたデジタル技術関連の研究会(2018年7月期限)

○ デジタル化を含む技術革新は、国境がなく、形を持たないという性質や、作業の自動化による効率性の向上により、世界経済全体へ波及する可能性。新たなビジネス手法や新たな産業、新しくより良い仕事、GDP成長や生活水準の向上といった経済的機会をもたらすことを期待。

○ それと同時に、技術革新は、労働市場の変化や適応能力の重要性の高まり、国内外での格差の拡大のリスク等をもたらす可能性。個人・ビジネス・政府それぞれが対応・変化していく必要。

○ 金融分野では、暗号資産等に用いられる技術革新が、金融システムの効率性と包摂性及びより広く経済を改善する可能性。

○ すべての人々が技術革新の恩恵を享受できるよう、国際協調を含む政策対応が必要。国際機関や各規制当局が、それぞれのマンデートに従って、暗号資産及びそのリスクの監視を続け、多国間での必要な対応について評価することが重要。

主体 内容

FSB・BIS・IOSCO・FATF 暗号資産に関する調査

金融包摂のためのグローバルパートナーシップ(GPFI)

デジタル化による金融包摂拡大に向けた各国への政策指針の策定

サステイナブルファイナンス研究部会(SFSG)

持続可能性を高める分野(含環境)へ資金を動員するためのデジタル技術の利用可能性の調査

G20財務大臣・中央銀行総裁会議(3月:亜)のコミュニケ(抜粋)

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今後の国際経済・金融の課題

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- 国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の推進

- 低所得国における債務持続性・透明性の確保

- 金融技術革新の活用とアジア経済・金融市場の発展

- 投資と安全保障

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外為法(外国為替及び外国貿易法)の概要

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外為法は、対外取引(海外との間の支払や各種取引)に関する基本法。

外為法制定(1949年)当初、外貨集中管理と国内産業再建のため対外取引は原則禁止であったが、その後段階的に自由化が進み、現在は、対外取引は原則として自由な枠組み。

経済制裁等、国際金融システムの濫用防止のための資産凍結等の措置を実施する法律としても機能。

安全保障目的、経済有事への対処における、対外取引の制御ツールとしての機能も有する。

外為法に基づいて徴求された報告データは、市場動向の把握や国際収支統計の作成にも利用される。

外為法の目的(外為法第一条)

この法律は、外国為替、外国貿易その他の対外取引が自由に行われることを基本とし、対外取引に対し必要 小限の管理又は調整を行うことにより、対外取引の正常な発展並びに我が国又は国際社会の平和及び安全の維持を期し、もつて国際収支の均衡及び通貨の安定を図るとともに我が国経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

○ 原則・・・対外取引が自由に行われることが基本

○ 例外・・・必要 小限の管理又は調整 → 対外取引に制限や報告義務がかかる場合がある

① 経済制裁:テロ、国際約束に違反した核兵器の開発、薬物犯罪などに関する資金の遮断、資産凍結

② 投資規制:防衛産業、原子力、水道、鉄道、農林水産業など、海外資本による買収に一定の制限

③ 経済有事:外国為替市場の急激な変動、急激な資本フローによるマクロ経済への悪影響が及ぶ場合

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外為法に基づく対内直接投資規制の概要

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• 外為法は、対外取引を原則自由とし、必要 小限の管理又は調整を行うことで、国際収支の均衡、通

貨の安定等を図ることを目的としている。

• 上記目的のもと、外国投資家に、一定の業種に対する対内直接投資について、事前届出する義務を

課している。

• 財務大臣及び事業所管大臣は、届出された対内直接投資について、①「国の安全」、②「公の秩序」、

③「公衆の安全」、④「我が国経済の円滑な運営」の観点から、必要がある場合には、投資の変更・中

止の勧告・命令を行うことができる。

1.投資前の規制(審査付事前届出と投資の変更中止命令)

2.投資後の規制(株式売却等命令による事後介入制度)(昨年導入)

• 無届出、虚偽届出等で行われた対内直接投資について、「国の安全」の観点から必要な場合には、財

務大臣及び事業所管大臣は、株式売却等の事後措置命令を行うことができる。(経済産業大臣)

※変更・中止の勧告・命令を行ったのは、2008年に、公の秩序の観点から行った、英国系投資ファンド(TCI:ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスター・ファンド)による電源開発㈱に対する株式取得の中止命令の1件のみ

【審査基準】 【届出対象業種】

①「国の安全」 武器、航空機、原子力、宇宙関連、軍事転用可能な汎用品の製造業、②「公の秩序」 電気・ガス、熱供給、通信事業、放送事業、水道、鉄道、旅客運送、③「公衆の安全」 生物学的製剤製造業、警備業

④「我が国経済の円滑な運営」農林水産、石油、皮革関連、航空運輸、海運

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外為法に基づく対内直接投資規制の審査フロー

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審 査

変更・中止の勧告

取引開始

【問題あり】

【問題なし】

変更・中止の命令

投資内容変更又は中止

【応諾する場合】

外国投資家

一定の業種に対する

対内直接投資は事前届出

外為審の

意見聴取

【応諾しない場合】

刑事罰

【命令違反】

【応諾内容に違反】

・無届出

・虚偽届出

・審査終了前の投資

・変更・中止命令違反

1.投資前の規制(審査付事前届出と投資の変更中止命令)

2.投資後の規制(株式売却等命令による事後介入制度)【昨年導入】

【国の安全を損なうおそれがあるもの】

株式売却等命令

【命令違反】 刑事罰

【対内直接投資の定義】

外国投資家による・上場会社株式の10%以上の取得・非上場株式の取得※ 等※外国投資家間の取引は除かれていたが、

国の安全を損なうおそれが大きいものについて、昨年規制対象に追加

外為審の

意見聴取

※変更・中止命令時に既に意見を聴いたものを除く

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外為法と米国対内直接投資規制の比較

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外為法規制の範囲 米国

①審査事由

・国の安全、公の秩序、公衆の安全・我が国経済の円滑な運営

(外為法自体は、対外取引を原則自由とし、必要小限の管理又は調整を行うことで、国際収支

の均衡、通貨の安定等を図ることを目的)

・国家安全保障

②審査主体 ・財務大臣及び事業所管大臣・CFIUS(外国投資規制委員会):財務省、司法省、国防総省、国務省等がメンバー

③規制方式・審査付事前届出制度

・事後介入方式(無届出等の投資について国の安全の観点から株式売却等命令)

・事後介入方式(投資引揚命令等)・事前届出は任意

④規制対象業種

・届出対象業種を指定例:武器、軍事転用可能な汎用品の製造業、

電気・ガス、水道、鉄道、石油 等 ・米国におけるビジネスをコントロールし得るあらゆる合併、買収、取得

⑤規制対象取引

・上場会社株式の10%以上の取得・非上場会社株式の取得 等

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米国の投資規制を巡る 近の動き

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○ CFIUSの投資審査において、慎重な審査の対象となった案件は、年々増加。

○ 近年、審査の結果として投資を禁止した事例も存在。

【事例】

・2016年5月、米半導体メーカーが保有する技術の軍事転用の懸念を理由に、買

収を禁止。

・2017年9月、別の米半導体メーカーの買収事案につき、知財移転の可能性や中

国政府が取引を支援していることを理由に、買収を禁止。

○ 現在、CFIUS投資規制の強化法案(FIRRMA)を、米議会で審議中。以下の規制

強化を盛り込む方向で議論。

①軍事施設等近隣の不動産取得等を規制対象取引に追加

②外国政府が関与する一部の投資について事前申請を義務化

23  25 35  40  45  48  51 

66 

0

20

40

60

80

2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年

慎重審査件数件数

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今後の国際経済・金融の課題

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- 国際公共財としての「質の高いインフラ投資」の推進

- 低所得国における債務持続性・透明性の確保

- 金融技術革新の活用とアジア経済・金融市場の発展

- 投資と安全保障