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SI-CAT 気候変動適応技術社会実装プログラム 応募機関分類 モデル自治体等 応募機関 高知工科大学 1 高知工科大学 社会マネジメントシステム研究センター・地域連携機構 那須 清吾・吉村 耕平 環境理工学群 柴田 清孝・中根 英昭・古沢 浩

応募機関分類 モデル自治体等³‡料7...SI-CAT 気候変動適応技術社会実装プログラム 応募機関分類 モデル自治体等 応募機関 高知工科大学

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SI-CAT気候変動適応技術社会実装プログラム応募機関分類

モデル自治体等

応募機関

高知工科大学

1

高知工科大学社会マネジメントシステム研究センター・地域連携機構那須 清吾・吉村 耕平

環境理工学群柴田 清孝・中根 英昭・古沢 浩

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トピック

• 研究プロジェクトの概要• 対象自治体と抱える課題• 気候変動と自治体における適応策としての防災政策• 自治体の防災政策立案のスキームはどうあるべきか

• 気候変動予測データを活用した地域の特性に応じた影響評価

• 影響評価モデルの改良• 自治体ごとの防災政策立案への取り組み

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防災政策を構築するために気候変動予測や影響評価は何が出来るか

目的:気候変動による洪水規模の拡大に加えて、最大規模の洪水への対応も迫られる自治体への気候変動適応策としての防災政策の立案支援

影響評価モデルの開発と、それを活用した気候変動影響評価

• 高知平野の鏡川ならびに吉野川水系での最大規模降雨や気候変動予測モデルなどを活用した、備えるべき洪水規模の推定や、渇水などの流況やダムの運用分析。

• 高知市ならびに徳島県石井町(吉野川下流域)における内水氾濫や高潮複合災害(高知平野)も含めた氾濫シミュレーションの高度化・高解像度化と、地域防災政策に資する情報提供のあり方の分析。

3

• 氾濫シミュレーションと連携する洪水の経済影響評価モデルの構築。

• 河川の流出現象の物理的・水文学的特徴を再現する機械学習を用いた水位予測モデルの構築と、汎用化による地域の河川の防災政策の高度化。

• 森林成長シミュレーションを活用した適応策としての森林管理の分析。

高知市および徳島県石井町における、行政との防災政策対話の実現と防災政策立案体制の確立・運営。

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本グループの研究5カ年計画

年次計画

平成27年度(11月~3月) 平成28年度 平成29年度 平成30年度 平成31年度

高知工科大学

①気候変動適応策の地方展開課題の整理②基礎水文モデルの構築③産業連関モデルの基礎構造提案④影響評価モデル適応性確認(自然・経済)

①GCMのDSの課題整理・研究②洪水・干ばつシミュレーションの実施③影響評価シミュレーションの実施と精度確認(自然・経済)

①GCMのDSの先行的活用②洪水・渇水シミュレーションの精度向上検討と改良③影響評価シミュレーション精度向上・改良検討(自然・経済)

①高解像度DSの導入と精度確認②洪水・渇水シミュレーションの精度向上検討と改良③影響評価シミュレーション精度向上・改良検討(自然・経済)

①高解像度DSによる影響予測②洪水・渇水シミュレーションの精度向上検討と改良③影響評価シミュレーション精度向上・改良検討(自然・経済)

(石井町)政策ニーズ確認 (地域の課題の構造分析、気候変動影響および適応策効果の分析と政策立案支援)

住民による防災団体         ●   ●    ●   ●    ● のリーダーとの会議

(四国水問題研究会)流域自体のニーズを把握し,国・県などと議論

研究会 ●    ●   ●      (四国中央市)

政策ニーズ確認 (地域の課題の構造分析、気候変動影響および適応策効果の分析と政策立案支援)

(高知県)(高知市) 課題把握/ニーズ確認 (地域の課題の構造分析、気候変動影響および適応策効果の分析と政策立案支援)

  

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自治体を対象とした防災政策立案の枠組み

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防災部局関係部局

座談会:自治会防災士自主防災組織

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気候変動適応策としての防災政策と自治体の対応

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近年の防災政策の動向とその背景について

東日本大震災や、鬼怒川での洪水を背景に平成27年に水防法の改正: ”想定し得る最大規模の洪水・内水・高潮への対策”

平成29年には福祉施設や病院、学校も避難計画が義務化

しかし、自治体にとっては、国が指定する最大規模の洪水のへの対応が喫緊の課題。しかし、気候変動による降雨や洪水規模・頻度の悪化も懸念されるが、それらの最新の研究成果を活用するのは途上である。

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従来の計画手法について1.河川整備基本方針では、河川ごとに対応すべき確率年を設定。その河川の社会的重要度に応じて数十年~200年2.その流域での水文統計に従って確率雨量を計算

3.過去の降雨の波形・分布をピックアップして、その確率雨量になるまで引き延ばすして、4.流出モデルで流量を計算して、高水流量を設定する

5.ダムなどによる洪水制御の役割を勘案し、河道に流す流量の配分を決定する

6.実際にはそれを達成するのは困難であり、戦後最大の洪水などを目標に、これから30年程度の具体的な整備内容を決定する(河川整備計画)

→その河川に偶然にも来なかった降雨のデータは反映出来ず、気候変動も考慮していない

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地方自治体の課題と対応

①国が設計外力を設定しない限り、河川管理者は気候変動に対応する検討結果を市町村に提示しない。

仮に設定されても、想定最大に対応する市町村長の責任は重大であり、想定を超えても市民を守る義務がある。

②提示方法としてハザードマップは危険地域を提示する意味はある。しかし、域内全域が浸水する状況が示されても、防災対策や避難誘導に生かせない。

③高知県高知市、徳島県石井町では、外力規模を段階的に大きくしたシミュレーションで、高解像度の動的氾濫解析を示すことで、これらの課題に対応している。

連続的に外力規模を大きくして動的に提示することで、防災の考え方の転換点を探り、想定を超える状況にも対応を試みる。

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津波における防災の考え方津波における防災の考え方

• 数十年から百数十年に一度といった比較的発生頻度の高いL1津波はハードによって,人命・財産まで含めて守る

• 発生頻度は低いものの甚大な被害をもたらす最大クラスのL2津波では,生命を守ることを最優先に,ハードによって被害軽減し,その上でハザードマップや避難誘導などといったソフト対策で住民の生命を守る

河川防災に展開させるには

• 従来の河川計画やハザードマップ作成では“L1“クラスのみを対象としていたがが,今後は”L2”クラスへの対応が必要

• レベルごとにどの程度の外力が発生し,それによってどのような被害が発生するか,ハード・ソフト対策によってどこまで軽減出来るのか,という分析が求められる

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気候変動による災害リスク増大とハード・ソフト・自助共助の関係性

• 各種の対策が進展する一方で災害リスクは増大し,「ゴールが逃げる」という状況

• ハード整備については時代を経るごとに整備が進んでいくが,財政的な制約などで限界がある

• 近年は事前のハザードマップや土地利用規制,洪水発生時の避難誘導などの行政主導のソフト対策が推進されてきたが一定の想定に基づいており,それよりも大きな災害や想定外の発生パターンではリスクが残る

• 従来より市民の自助共助は不可欠であるが,気候変動によってその役割は重要性を増している

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従来の想定を上回る洪水には

• ダムや堤防、下水道や排水機場などのハード対策にはコスト・合意形成・用地・時間などで制約があり、現在事業中・計画中のプロジェクトの完成時の能力以上の対応は難しい

• 予測情報を使ったダムの柔軟な運用や、流域治水などの既存のハードを使った対策なども考えられるが・・・

• ハザードマップなどのソフト対策でも、L1クラスの出水に対してのものであり、L2クラスの新ハザードマップでは対応が難しい

• 最終結果としての最大外力によるハザードマップを見せることに限らず、洪水規模が増大することによって被害エリア・被害規模がどのように拡大するかを可視化するか、そして最悪の被害はどうなるのか、という論点が重要

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自治体は防災政策をどう立案するのか

国は防災政策(ハード対策→ハード対策とソフト対策)のための想定すべき被害規模を設定する

気候変動により災害リスクは拡大・変容している。自治体は、定められた規模の災害に対して、市民を守るべき責務を負う。

→水防法改正などで守るべき責務は拡大する。自治体は市民を守るために防災政策を立案する。→その防災政策が実際に機能するためには?

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自治体は防災政策をどう立案するのか国・自治体の位置付けと気候変動

■国が与える防災政策の前提条件・基本方針(L1→気候変動によって拡大)・河川整備計画(制約がありL1未満→気候変動によって不十分に)・L2としての想定最大外力の設定

・地域の災害特性の把握(高頻度~L1→L2も考慮、気候変動による変容)・洪水浸水想定図(L1→L2) 自治体の責務

・浸水想定→ハザードマップ→防災政策

・想定最大規模洪水であっても市民の生命を守る義務を負う・福祉施設や学校などの災害弱者対応

・小河川や内水氾濫、高頻度洪水へのハードソフト対策

↓従来の防災政策では対応不可な状況に

↓新たな防災政策立案手法の提案

↑・河川整備計画の当面のハード整備水準

ハード整備のための情報

ソフト対策のための情報

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自治体は防災政策をどう立案するのか自治体の責務と防災政策の展開 自治体の責務・浸水想定→ハザードマップ→防災政策

・想定最大規模洪水であっても市民の生命を守る義務を負う・福祉施設や学校などの災害弱者対応

・小河川や内水氾濫、高頻度洪水へのハードソフト対策

↓従来の防災政策では対応不可な状況に

↓新たな防災政策立案手法の提案

↑・河川整備計画の当面のハード整備

自治体の防災政策・浸水想定とハザードマップ・避難所と避難誘導

ただし現状では静的情報のみ↓

動的ハザードマップの作成・洪水現象想定の変化を反映

↑・高頻度洪水へのハードソフト対策

大学、研究者の役割

気候変動とそれにともなう災害現象の変化の分析

地域住民・自治体との対話による防災政策立案の支援

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国が与える防災政策の条件(新河川法以降)

河川整備基本方針での洪水規模の設定(L1)• 守るべき洪水の発生確率年を、河川や流域の社会的・経済的

状況から設定(数十年から200年に一度)• 過去の水文データから雨量を設定し、洪水規模を算出→実際には最終的な目標であり、その規模での河川整備はほとんど達成されていない点で津波対策におけるL1とは大きく異なる。 河川整備計画の目標流量の設定(L1未満)と河川整備• 予算や事業の実現性などの制約を考慮し、流域の自治体や市

民からの合理形成を図りながら、今後30年程度の間に対応すべき洪水規模と整備メニューを設定する。

• より短い発生確率年や、戦後最大・既往最大など河川整備基本方針のL1よりは規模は小さく、より高頻度で発生しうる洪水規模。

災害特性の把握(高頻度で発生する水害~L1)• 流域の気象や地形、社会的条件を考慮し、その流域に特徴的

な水害特性を把握する 河川管理者はL1規模水害の洪水浸水想定図を公開する。

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国が与える防災政策の条件(気候変動の影響を受けて)

河川整備基本方針での洪水規模の設定(L1)• 過去の水文データから雨量を設定し、洪水規模を算出→そのままであれば治水安全度は低下する• L1規模に近い水害や超過水害が各地で多発 河川整備計画のレベルでも、河川整備のメニューが完遂されて

ない状況でありながら、さらに治水安全度は低下 気候変動により洪水規模やその特性は変化 想定最大外力の設定(L2)• ハード整備による完全な防御は困難であるが、どのような状況

でも市民の生命を守るために、ソフト対策の基準として最大規模洪水を推定する必要がある。

• 過去の地域最大降雨か1000年に一度の降雨を利用→洪水浸水想定図はL1からL2規模のものを追加• ただし、気候変動の影響は考慮されていない

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気候変動下での自治体の責務と防災政策

自治体は河川管理者の作成する洪水浸水想定に応じて、避難所情報などを記載したハザードマップを作成する。

市民に近いハード対策としての小河川の整備や内水対策などを進める。

避難所の指定や避難誘導などのソフトの組みあわせや水防活動なども合わせて検討を行う。

→気候変動によって何が起こるのか? L2洪水浸水想定図の公開により、最悪規模の水害においても市民の命を守ることを求められるようになった。

L1規模に限らず、河川整備計画に基づく現状の河川の堤防などでも対応しきれない洪水の発生が懸念され、またその発生頻度やその様相が変化する。

洪水の災害特性が大きく変化する。

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気候変動下での自治体の責務と防災政策

→気候変動によって何が起こるのか? L2洪水浸水想定図の公開により、最悪規模の水害においても市民の命を守ることを求められるようになった。

L2洪水はハードでの対策は避難をする時間を稼ぐなどの効果を発揮するが、被害防止は困難である。

そのためL2洪水に応じたソフト対策を迫られているが、その困難さは自治体によって大きく異なる。

大河川がなかったり、L2洪水で浸水する低地が限られ、高台まで市街地が広がる自治体では、これまでの延長線上の防災政策で対応可能である。

しかし、低平地に広がる自治体では、市街地全てが危険となり避難所が限られることになり、これまでの防災政策の延長線上では困難に。

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気候変動下での自治体の責務と防災政策

避難所整備(高頻度水害~L1~L2)• 地震などと合わせて学校や公共施設などから避難所を選択し

開設の準備を行う。• L1規模の水害で安全な地区が明確な場合には、指定されてい

る避難所の中で安全な地区の施設が選ばれるが、収容人数などは不足する場合がある。

• L2規模に対しては、避難所の確保はその実現可能性や困難さについては流域や自治体ごとに大きく異なる。

避難誘導(高頻度水害~L1~L2)• L1~L2での動的データを活用した避難誘導が必要となる。• 自治体の各部局は災害弱者などへの対応や、支援施設の避難

計画作成も求められる。• 地域内で安全が確保出来ない場合には台風予測などが利用出

来れば広域避難なども検討せざるを得ない。

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出入力から見た自治体の防災政策立案スキーム

○入力値:水害などの気象災害となる外力河川管理者から提供される浸水予測(L1とL2)国や県が指定する確率降水量や最大降水量過去の浸水実績地域の災害特性○入力値:自治体が守る市民に関するデータや条件人口分布災害弱者病院や福祉施設の立地避難所や避難所に利用可能な強固な建物

○出力1:平時での計画避難所の設定市の避難計画の策定市の救助計画の策定公共施設や庁舎の被害軽減化○出力2:発災直前~発災中の対応動的な洪水流を考慮した避難誘導洪水到達時間と日没時間を考慮した避難指示動的データによる現状推定・被害拡大予測○出力3:発災後救難計画内水排除施設などの復旧インフラなどの復旧中長期的な復興

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気候変動下での自治体の責務と防災政策

従来の浸水想定図やハザードマップでは、静的なデータであり最大浸水深のみがわかるため、浸水する可能性がある場所と(対象河川の洪水では)安全な場所が分かる。

氾濫時の動的データを活用することでより具体的な対策が検討できるようになる。

近年は「浸水ナビ」などで改善が進んでいるが、大学や研究者として、動的データや浸水時間を推定する情報を提供することが可能である。

河川管理者から各氾濫パターンの最大浸水深スナップショット・動画全想定の最大浸水深

氾濫シミュレーションデータ

首長の避難誘導のタイミング

水害対策マニュアルの作成

高齢者・災害弱者への早いアラート

避難所などへの避難の支援

現象の理解よる避難誘導のトリガー

地域単位での避難誘導自主防災組織・小学校区→PTA(親と子)

動的情報による理解

水位・降雨などの災害規模の拡大(計画→想定最大)による被害の変化

越水後に水が引く時間下流側地区の水位上昇街路の流れや流速

本学提供データ各氾濫パターンの最大浸水深スナップショット動画

地区ごとの災害の現象と特性の把握

発災時におけるデータ活用

情報がない中での現状推定

氾濫被害拡大の予測

最悪事態での危険・安全地区

★1

★2

★3

★4 ★5

★6

★7

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河川管理者から各氾濫パターンの最大浸水深スナップショット・動画全想定の最大浸水深

氾濫シミュレーションデータ

首長の避難誘導のタイミング

水害対策マニュアルの作成

高齢者・災害弱者への早いアラート

避難所などへの避難の支援

現象の理解よる避難誘導のトリガー

地域単位での避難誘導自主防災組織・小学校区→PTA(親と子)

動的情報による理解

水位・降雨などの災害規模の拡大(計画→想定最大)による被害の変化

越水後に水が引く時間下流側地区の水位上昇街路の流れや流速

本学提供データ各氾濫パターンの最大浸水深スナップショット動画

地区ごとの災害の現象と特性の把握

発災時におけるデータ活用

情報がない中での現状推定

氾濫被害拡大の予測

最悪事態での危険・安全地区

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動的解析データの提供による防災政策立案とその効果

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河川管理者から各氾濫パターンの最大浸水深スナップショット・動画全想定の最大浸水深

氾濫シミュレーションデータ

動的情報による理解

本学提供データ各氾濫パターンの最大浸水深スナップショット動画

最悪事態での危険・安全地区

★1

浸水想定図やハザードマップでの静的データでは、最大浸水深を重ねたものであり、絶対に安全な場所は分かるが、洪水流の動きは分からない。

各破堤点ごとに、時間ごとのスナップショットや洪水流の動きのデータなどを可視化し、そこから情報を読み取ることで効果的な避難誘導が可能になる。

降雨が増大することでどう被害が広がるか、という情報も得られる。

現在は一級河川を中心に浸水ナビなどで改善が進んでいるが、どのような情報に整理するか、という知見も重要になる。

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• 既計算の解析データから洪水流の動きを把握し、破堤点ごとの避難計画や避難所設置を立案する。

• 発災時には、気象予測データや日没時刻などに加えて、各地区の洪水到達時間を考慮した避難勧告などの意志決定を支援する。

• 破堤の段階で今後の被害の推移を予測したり、浸水情報から発災場所・規模を推定することも可能になる。

首長の避難誘導のタイミング

水害対策マニュアルの作成

現象の理解よる避難誘導のトリガー

水位・降雨などの災害規模の拡大(計画→想定最大)による被害の変化

越水後に水が引く時間下流側地区の水位上昇街路の流れや流速

地区ごとの災害の現象と特性の把握

発災時におけるデータ活用

情報がない中での現状推定

氾濫被害拡大の予測

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意志決定に用いる情報(従来)公式情報 現場からの情報 研究・過去の経験

発災前 ■庁内・災害弱者の所在・避難所設定・ハザードマップ(計画規模)■国・広域組織・洪水浸水想定区域図(計画規模)

・出水に脆弱な地域や施設

・過去の浸水記録・類似災害の事例→河川改修により外水氾濫のリスク大幅軽減

現在の状況 ■庁内・リアルタイムの水位や雨量・下水道ポンプや樋門の運転状況■国・広域組織・発生している現象への気象警報など

・堤防などの状況・内水浸水情報

・類似災害の事例

確度の高い予測

■国・広域組織・台風進路・ダム放流情報

・越水時の水防活動や破堤の進行

・過去の浸水実績

不確定性の高い予測

・過去の詳細な被害記録

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意志決定に用いる情報(現状)公式情報 現場からの情報 研究・過去の経験

発災前 ■庁内・災害弱者の所在・避難所設定(計画規模)・ハザードマップ(計画規模・PMF)■国・広域組織・洪水浸水想定区域図(計画規模・PMF)

・出水に脆弱な地域や施設

・過去の浸水記録・類似災害の事例→過去の台風被害の被災

地区に、さらに大きな浸水被害が

現在の状況 ■庁内・リアルタイムの水位雨量(鏡川,小河川)・下水道ポンプや樋門の運転状況■国・広域組織・発生している現象への気象警報など

・堤防などの状況・内水浸水情報

・類似災害の事例

確度の高い予測

■国・広域組織・台風進路・指定河川洪水予報(鏡川は対象外)・ダム放流情報

・ナウキャストや短時間予測雨量(台風・前線)

・越水時の水防活動や破堤の進行

・過去の浸水実績

不確定性の高い予測

★比較的長期での降雨予測(台風) ・過去の詳細な被害記録

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意志決定に用いる情報(今後)公式情報 現場からの情報 研究・過去の経験

発災前 ■庁内・災害弱者の所在・避難所設定(計画規模・PMF)・ハザードマップ(計画規模・PMF)■国・広域組織・洪水浸水想定区域図(計画規模・PMF)

・出水に脆弱な地域や施設

・過去の浸水記録・類似災害の事例→過去の台風被害の被災

地区に、さらに大きな浸水被害が

現在の状況 ■庁内・リアルタイムの水位雨量(鏡川,小河川)・下水道ポンプや樋門の運転状況■国・広域組織・発生している現象への気象警報など

・堤防などの状況・内水浸水情報

・類似災害の事例

確度の高い予測

■国・広域組織・台風進路・指定河川洪水予報(鏡川は対象外)・ダム放流情報

・越水時の水防活動や破堤の進行★氾濫流の挙動

★ダムや短時間予測雨量による水位予測・過去の浸水実績

不確定性の高い予測

★比較的長期での降雨予測(台風)!線状降水帯の発生可能性予測

★未破堤の段階での浸水予測データ・過去の詳細な被害記録

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避難指示などの判断

防災部局や首長に入る情報とは

• 現状で利用出来るのは、気象庁の公式の予測やダム放流情報などの確度や“正統性“の高いデータ。

• 現状では降雨短時間予測などが利用可能となっているが、水位推定などは途上。比較的高い精度で予測出来るのは台風の場合に限られる。

• 河川管理者によるタイムラインに加えて、災害特性に応じた自治体独自のタイムラインが必要。

• 地域によってはその判断の困難さは大きくことなる。高知平野の鏡川の場合、降雨から3時間程度で水位が上昇するため避難可能時間がほぼない。また、降雨予測についても線状降水帯については現状では気象学的に確度の高い予測は困難である。

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地域の特性に応じた気候変動予測データを活用した影響評価

自治体との防災協議の中で気候変動予測データの活用についても検討しているが、洪水規模が大きくなる、などの定性的な情報に留まらず、具体的な規模や災害の特性が変わるといった情報が求められる。

地域の気象特性・災害特性や河川流域の社会的状況に応じた活用方法を検討し、以下の分析を行った。

• d4PDFによる水需給分析・ダム運用分析

• d4PDFと5kmRCMを活用した洪水規模変化

• 5kmRCMで高知平野の洪水と高潮の複合災害の特性は再現出来るのか、将来どうなるか

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気候変動予測モデルのダウンスケーリングと防災政策• 防災政策を考えるには、各種の手法でダンスケーリングして、流域スケール・自治体スケール、さらには市民の自助共助を可能にするために、道路や建物単位まで細かい解析が必要になる。

• より詳細なモデルとなると、現象の有無や頻度だけではなく、雨量であれば堤防を越える洪水を起こすのか、といった絶対値での評価が必要となってくる。

1000km----100km----10km----1km----100m----10m

河川モデル

RCM

GCM

氾濫モデル

国家規模での影響評価と適応策

流域スケールでの影響評価と適応策

洪水被害予測

市民レベルでの危機回避

空間スケール

予測モデルと

影響評価モデル

適応策と

防災政策

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d4PDFのグリッド吉野川に対しては支流域まで区分出来るが、■鏡川流域に対しては大きいグリッド

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四国における水問題の難しさ

太平洋から流れ込んだ雲が四国山地にぶつかり雨を降らせ、四国南部は多雨地帯で北部は少雨と降雨特性が大きく異なる

→他地域と違い、最悪クラスの災害の発生を経験している。

西日本豪雨や北海道の豪雨の事例は「今まで台風が来なかったところに台風が来るようになった」「少雨な地域に他の多雨地域から同規模の降雨が来た」という位置付けである。→同じ中国・四国でも、H30豪雨の

ように雨の少ない瀬戸内側で発生した災害とは違う要素がある

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早明浦ダムの特異性

建設後すぐに計画高水流入量4,700㎥/sをはるかに上回る7,240㎥/sの流入量を記録。(1975年台風5号)

大規模な洪水と渇水に備えているが、大渇水で貯水位が大きく低下したところで大規模な出水が発生し、という事例も。

(2005年は4~6月の記録的渇水から、9月に台風14号が襲来し史上二位の流入量を記録して、枯渇した利水容量から洪水調節容量まで使い切った)

→長期間を通しての降雨データの活用が必要

34

気候変動によって洪水規模は大きくなり、もし無降雨日数も増大するとするなら、治水面・利水面の両面で、多目的ダムとしての重要性は増大する。同時に、どう運用していくか、という難題が突きつけられている。

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早明浦ダム再開発事業

早明浦ダムでは、放流設備を増設する再開発事業が進められている。

・利水容量から洪水制御容量への振り替えを行う

・洪水が予想された時点でダムの水を放流することで洪水調節容量をより確保する予備放流を導入

将来の降雨パターンの変化で利水安全度がどう変化するか、洪水が予想が可能なパターンなのか、といった知見は今後のダム管理にも活用出来る。

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降雨日数・強雨日数の再現性と変化

徳島と四国山地中央の早明浦ダム付近のグリッドで、観測値とd4pdfの現在再現と将来予測での降雨日数、強雨日数を比較。

四国山地のような降雨の集中するエリアでは若干過小、徳島では過大な傾向がある。

というより、d4PDFでは四国全域でほぼ同じような傾向であり、島内の差異が反映されていないというべきか。

強雨は増大し、降雨日数は減少する傾向にある。そのため、洪水と渇水の両面でのリスクの増大が懸念される。

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“4-6月少雨”からの大洪水は再現されるのか

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早明浦ダム流入量4000m3/s以上のイベントで、4-6月雨量との相関を分析した。

GCMごとに傾向は異なるが、洪水流量に対してそれまでの降雨量のばらつきは大きくなっており、ダムの運用などは困難さが高まるが、改修工事による洪水調節容量の増大は価値があると考えられる。

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800

早明浦ダム流入量

(m3/

s)

4-6月雨量(mm)

CC

GF

MI

MR

HA

HPB

4-6月少雨

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d4PDFによる鏡川での洪水規模の変化

累積頻度で比較すると、洪水の頻度・規模ともに悪化することが予測される

38

0

50

100

150

200

250

300

350

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

頻度(

60年

×15試行

)

宗安寺流量(×100トン/毎秒)

HPB CC GF HA MI MR

洪水頻度で見ると、同規模の洪水は2倍程度の回数になる

同じ発生確率なら洪水規模は2倍程度になる?

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高知平野における5km RCM と d4PDFでの洪水流量の変化

• 現在再現同士で比較すると、観測データ最大に対してd4PDFは過小評価だが、5kmRCMでは最悪クラスの洪水が再現されてしまっている。

• 太平洋に向けて開かれている南側の斜面に雨が強く出過ぎることが原因か?

0 1000 2000 3000 4000 5000

river plan

past maximum

past maximum raifall in whole basin

probable maximum flood in future

SDS past (1/100)

SDS future (1/100)

d4PDF past

d4PDF 4K

5kmRCM past

5kmRCM 2K

5kmRCM 4K

Kagami river(m3/s)

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吉野川中流域の池田ダムにおける5km RCM と d4PDFでの洪水流量の変化

• 池田ダム規模になると、洪水の発生要因は一定以上の規模で降雨は広がる台風であり、d4PDFでも5kmRCMでもどちらも良好な再現性が出ている。

• 雨が強く出過ぎる南斜面の影響はあるが、流域全体では平均されて5kmRCMで突出した強い洪水にはならない

0 5000 10000 15000 20000 25000 30000 35000 40000

river plan

maximum in 30years

SDS past (1/150)

SDS future (1/150)

d4PDF past

d4PDF 4K

5kmRCM past

5kmRCM 2K

5kmRCM 4K

Ikeda dam inflow(m3/s)

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5km RCM を活用した複合災害解析

• 高潮を発生させた台風による洪水の規模は中規模に限られており、統計や経験則上も確認されており、施設整備の前提条件となっている。

• 経験的に同時発生しない2種類の災害現象がRCMで再現されるのか?

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5km RCM を活用した複合災害解析

• 特異な高潮を発生させた土佐湾台風(T7010)は浦戸湾西70kmを通過しており、降雨継続時間は短い。

• 大規模な洪水を発生させたT7505やT7617は市内から離れた地域を通過しており、四国山地に長時間水蒸気を送り込み長時間の降雨に繋がった。

T7617

土佐湾台風 T7010

T7505

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5km RCM を活用した複合災害解析

• 洪水流量700m3/s以上のイベントで高潮経験式を利用して高潮偏差を推定し、その関係性を分析する。

• 高潮は、気圧差による吸い上げ+風の吹き寄せ+波浪効果+Wave setup(海岸で波が砕波)+天文潮の積み重ねだが、陸地から海に風が向くと打ち消しあい、大きく偏差が小さくなる。 Wave setup

風効果波浪効果

気圧効果

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5kmRCMと高潮経験式によるリスク評価

• 現在気候では高潮と大規模な出水が同時発生しないことが再現されている。

• 将来では洪水・高潮の中規模同士での同時発生が起こりうることが示唆される。

0

20

40

60

80

100

120

140

700 1200 1700 2200 2700 3200 3700 4200 4700 5200

土佐湾高潮偏差

(cm

)

高知平野河川 鏡川流量(m3/s)

4度昇温2度昇温現在気候

高潮

河川洪水

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5kmRCMと高潮経験式によるリスク評価

• 大規模な出水が発生する場合と高潮が発生する場合の現象が異なることが再現されている。

• 風が強くなることに加えて、高知周辺で980hpa前後の中堅クラスの台風の直撃で、いままでは起こりにくかった中堅クラスの洪水が発生する傾向が現れる。

• 同じような動きをする台風で、降雨強度が増加していたり、進行速度が遅くなり降雨継続時間が延びている可能性がある。

• 気候変動による水蒸気の増大で20%~40%降雨強度が高まるとされるが、現象としてそれだけで説明出来るのか、台風の軌道や特性が変わったのかという点を検証。

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防災政策に繋がる影響評価モデルの開発

気候変動予測データや観測データ、予測データを入力し、地域への災害の影響を分析する影響評価モデルについても改良を行った。

• 地形性降雨のある中小河川における最大規模洪水の合理的な推定。

• 改良された氾濫モデルによる既存インフラによる超過洪水時の被害軽減策の分析。

• 氾濫モデルの簡易高解像度化や、防災政策立案に貢献できるアウトプットの模索。

• 機械学習による河川洪水予測モデル

• 洪水被害や復旧・復興活動の経済的影響の分析

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想定最大外力と洪水流量

ある地域において発生した最大の降雨は、その地域の他の河川の流域にも来るかも知れない、という発想

ある面積、ある降雨継続時間あたりで最大の雨量を算出し、その値は法令にも記載されている

あるいは最大規模洪水として1000年に一度というものも

しかし、この値は気候変動を考慮していない点で、今後はより拡大する可能性がある。

自治体としては、大きな時間とリソースを投入してハザードマップや避難計画を策定しても、データが更新されればやり直しになる、という点で困惑してる。

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高知平野の鏡川での最大規模洪水

• 河川長は30km、集水域のスケールは10km程度で、雨域の移動は現れにくい。

• 山地は平野部に比べて1.5倍~2倍の降雨が発生する。• 河川計画でも山地に降雨が集中することが前提だが、最大規模洪水でもそれが前提であるべきか?

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流域内既往最大降雨

• 高知豪雨は、都市部や山間部のピンポイントで発生した局地的な強雨とは違って、ある程度の広さのエリアにおいて発生した強雨である。

• もしこの降雨が鏡川流域をカバーするように発生していた場合には,という想定はより現実的。

9/24-26総雨量-200mm200mm-400mm400mm-600mm600mm-800mm800mm-1000mm

0

20

40

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100

120

140

1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23

9月24日 9月25日

mm

/h

高知 後免 繁藤 鏡ダム

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• 山地に降雨が集中した降雨波形を引き延ばすと一部地点は過大になり、最大雨量を流域均一に与える手法のほうが妥当→降雨波形に時間差がない中小河川では流域均一手法が妥当

0

1000

2000

3000

4000

5000

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7000

1975y 1976y 2000y 2002y 2004ya 2004yb 2005y 2006y 2007y 2010y 2014ya 2014yb 2014yc

宗安寺地点での流量

(m3/

s)

引き延ばし前

(a):24時間での引き延ばし (b):時間160mmでのキャップ

(c):最小引き延ばし (c)+(b):最小引き延ばし率+キャップ

(d):短時間での逸脱を許容 (d)+(b):短時間での逸脱を許容+キャップ

流域均一での最大流量 基本高水のピーク流量

国交省が提案する手法

柿ノ又や鏡ダムといった降雨が集中した地点では、2時間や3時間でPMPを逸脱

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最大規模降雨は気候変動によってどうなるのか• 自治体にとってはL2洪水への対応を行う中で、「気候変動によってL2がどうなるか」というのも見直しを強いられる可能性があり、懸念材料となっている。

• ある温度・圧力で例えば空気中に水蒸気が最大どれくらい含まれるのかを推定するクラウジウス・クラペイロンの式がある。

• 1℃温度があがると飽和水蒸気量は7%増えることが算出されるが、九州・四国ではさらに強くなるという研究もある。

• 100年に一回といったより極端な降雨では、12%程度とより強くなる傾向がある。

日本における1時間降水量の極値と地上観測気温の関係http://hydro.iis.u-tokyo.ac.jp/~seto/labonly/Utsumi_2011_Suiko.pdf

九州四国エリア

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最大規模降雨は気候変動によってどうなるのか

• 四国南部の最大雨量は、高知豪雨のレーダーアメダス雨量に基づいているが、地上観測点雨量と比べると過大評価の傾向がある。

• 偶然ではあるが、2℃昇温で24%、4℃昇温で48%増えるという結果に近い。

• 現状のL2洪水への対応で包摂出来るのでは、という情報を提供した。

100

110

120

130

140

150

160

0

200

400

600

800

1000

1200

1400

1h 2h 3h 6h 12h 24h

想定最大降雨

/実降雨

(%)

総雨量

(mm

)

想定最大外力 高知豪雨高知 高知豪雨繁藤 高知豪雨高知 高知豪雨繁藤

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防災政策立案に貢献する氾濫モデルの改良

• 被害予測やハザードマップ、避難誘導には氾濫モデルによる解析が必要となる。

• 現状の計画規模から最悪規模の水害に対して、段階的に洪水規模が悪化する場合に、どのように被害規模・様相が変化するかを自治体に情報提供することで、より具体的に最悪の水害で市民の命を守る方法を検討出来るようにする。

• 改良1:高潮との複合災害や最大規模水害で既存のゲートやポンプ場で被害軽減が可能かを検証する

→市南部の河川堤防と防潮堤で囲まれた地区を分析

• 改良2:道路や建物単位でリスク評価が可能になるように氾濫モデルを高解像度化する

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既存インフラによる被害軽減効果• 最大平均浸水深で比較• ポンプ単体では軽減効果は小さい

• 樋門による排水が効果的である

• 湾内海水面の上昇で、堤内地の浸水は1m程度悪化する

• 浦戸湾の堤防が損壊した場合には浸水は軽減される

0

1

2

3

4

5

6

7

計画高水級

ダムなし

計画高水級

ダムあり

3000

トン級

ダムなし

3000

トン級

ダムあり

想定最大流

量ダムなし

想定最大流

量ダムあり

最大

平均

浸水

深(

m)

樋門なしポンプなし 樋門なしポンプあり

樋門ありポンプなし 樋門ありポンプあり

湾側破堤

0

1

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3

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5

6

7

計画高水級

ダムなし

計画高水級

ダムあり

3000

トン級

ダムなし

3000

トン級

ダムあり

想定最大流

量ダムなし

想定最大流

量ダムあり

最大

平均

浸水

深(

m)

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樋門とポンプ場の最適な操作

• 堤内地の水位が高く樋門からの排水が進んでいる間はポンプの効果は弱く、また破堤点からその分の流入が増えるため、稼働させるメリットは低い。

• 樋門からの排水が弱まってきた段階でポンプを稼働させると、停電時であれば自家発の燃料が節約出来る

0

0.5

1

1.5

2

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3

3.5

4

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1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26

Aver

age

dept

h(m

)

樋門なしポンプなし

樋門なしポンプあり

樋門ありポンプなし

樋門ありポンプあり

湾側破堤

ポンプが有効

計画レベル+ダム

樋門が有効

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外水氾濫モデルのダウンスケーリング50mメッシュ氾濫解析の結果に対して、10mメッシュ標高データでダウスケーリングを行う研究があり、10mメッシュ解析に対して良好な再現性が得られている(格子内の地盤高特性を考慮した簡便な氾濫解析法に関する研究)10mメッシュの標高データから50mメッシュの標高データを生成し再計算。その結果に対して、水面の高さや溜まっている水の量が変わらないという前提で、10mメッシュの各グリッドに水位を配分する。流速はダウンスケーリングが出来ない→流速は実際に10mメッシュなどで計算

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高解像度氾濫解析

• 建物グリッドを考慮した“実“高解像度氾濫解析

• 建物の影響が大きいため、洪水流が流れにくくなり、広がりは弱くなっている。

• 道路に洪水流が集中していることは分かる。

• 50mメッシュでは最大流速7m/s程度だが、10mメッシュでは10m/s程度となった。

0m---------10m/s

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高解像度氾濫解析で分析した洪水への建造物の影響

• 建物の影響については、ピロティ構造の建物であれば水はそのまま抜けるため障害物の効果はない。1階から高層階まで開口部のない建物では洪水流を止める壁となる。構造によって挙動が大きく異なる。

• 川沿いの建物では、堅牢建物で分類される建物の多くが後者の構造に近く、洪水流を押しとどめる可能性がある。

• 避難する場合には、避難ルートである幹線道路への洪水の集中が懸念される。特に南北方向で河川に近接する道路は危険。

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流速などを考慮した避難誘導の支援

• 破堤時に避難する場合には、破堤地点から遠ざかる必要があるため、正確な情報が必要。

• また避難ルートとして南北方向の道路が危険となるため、東西方向でかつ洪水流の影響の少ない道路が重要となる。

• 垂直避難をする際にも、洪水が集中する道路に近接する建物は危険性が高いことが分かる。

• 何時間後に洪水流が到達するか、といった情報も重要になってくる。

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機械学習による水位観測モデルを活用した潜在的な氾濫リスクの分析構築に手間がかかる流出モデルはため、雨量と水位の関係性に基づく機械学習による水位観測モデルを開発し、高知県内河川に適用した

自治体や市民が自ら予測モデルを構築することも今後は可能になることが期待される。

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洪水による経済影響評価

治水経済調査マニュアルに表記されている間接被害額の1つ,「営業停止損失」を加え,ハイブリッド産業連関表において,1つの企業(産業)が経済にどのような影響を与えるのかについて調査した

今回は「鉱業・採石業・砂利採取業」に分類される産業が営業停止した際における損失を計算した

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洪水による経済影響評価

• 建設産業は通常の建設活動を一部停止し(切り出し)、同額の復興活動に割り当てる。しかし、同額ではあるがその活動で使用される経営資源は異なる。例えば初年度の復興活動の中心は瓦礫撤去であり、労働と運搬の資源が専ら使われ、同額で行われる建設産業で消費される資材の利用は小さいなど、金銭的には同額でも物理的に使用する経営資源量は異なる。

• 上記モデルはそのプロセスをモデル化した金銭的地域経済と物理的復興経済の連関関係を表現することで、復興活動による各産業の産出量の変化を金額および物理量で計算できる。また、物理量で復興活動を表現することで、経営資源の価格変化の影響も計算できる。

復興活動

現在の建設産業の活動を復興の為に切り取る

活動の切り取り分+(プラス:供給) -(マイナス:切り出し)

地域経済活動

同量の活動を復興の為に利用

-(マイナス:消費)活動の切り出し

+(プラス:復興需要に利用)最終需要(+)v

最終需要(-)

産出量

(+)v

産出量

(-)

(金額で表現)

(物理量で表現)(物理量で表現)

(金額で表現)産業連関分析により

変化を確認

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防災政策立案手法に基づく自治体ごとの防災立案支援

高知市ならびに徳島県石井町で、冒頭のような防災政策の立案手法を基本に防災部局と協議を行った。

前提となる国の政策の前提条件や、流域・地域によって異なる災害特性を整理する。

気候変動予測モデルを活用し洪水規模が拡大することなどを理解する。

従来の防災政策の効果や限界を見定める。

氾濫解析の結果から動的ハザードマップともいえるような可視化されたデータを提供し、地区ごとの災害特性を分析する。

避難誘導や避難所の設定などを、研究者・自治体・地域住民で考えていく。

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高知市特有の災害リスク

• 市街地が丘陵・山地や、河川堤防・防潮堤に囲まれており、一気に浸水被害が悪化する恐れがある

• 市街地の河川の源流に地形性降雨により降雨が集中する。

• 線状降水帯により河川水位が上昇するが、その発生は直前まで予測が困難である。

• 台風が直撃した場合には高潮との複合災害により河口部で浸水被害が発生する可能性がある。

• 海沿いや感潮域の周辺では津波避難ビルなどは指定が進んでいるが、緊急待避施設であり本格的な避難所には転用が困難であり、さらに市西部では不足。

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浦戸湾

ダム運用

樋門・水門管理

局地的な豪雨

溢水・破堤

長期間の湛水下水道

ポンプ場停止

内水氾濫

護岸の破壊

高潮

ポンプ場からの排水他河川からの堰上げ高潮・満潮による堰上げ

河道水位

想定を上回る豪雨

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新洪水想定にどう対応するか他地域の治水計画と異なる点としては、高知は70年に一度の計画規模≒既往最大クラスの洪水を体験している(昭和51年台風17号)

その際には各所で越水をして被害を発生させた(右下)

それに対して河川堤防などがその洪水をほぼ対処出来る規模で整備されており、同規模の大雨では同じ洪水被害にはならず、大きく被害は軽減される

そのため旧HM(左下)では鏡川の浸水想定は限られている

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新洪水想定にどう対応するか高知市の課題を分析する全国で共通する動き

・新水防法の背景

・これまでの河川計画と想定最大降雨の意味

・想定最大外力の設定手法

高知市でのリスク評価

・高知市にとっては高知豪雨の値を使っている

→実際に最大規模降雨に近い降雨現象が発生しており、再度類似した降雨が発生することが予想され、大規模な洪水に繋がる可能性が他の地域に対して大きい点

・どこで破堤するかは分からないが、上流で破堤して長時間越水すれば下流側に大きく被害が広がる上に、防潮堤の内側に湛水して水位が上がる。

制度的(全国共通)学術的・気象学的(全国共通)高知特有(市民にとって想像しやすい)高知特有(市民にとって想像しにくい)

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新洪水想定にどう対応するか高知市の課題を分析する他地域の治水計画と異なる点

他地域では何年に一度の降雨に対応するという計画は作るが、実際に整備される洪水規模は戦後最大や計画規模より低いレベル

しかし高知は70年に一度の計画規模≒既往最大クラスの洪水の体験(昭和51年台風17号)している。

鏡川が高知平野に出てきて、各所で越水、被害多発

その後、河川堤防を整備することにより、

同規模の洪水では同じ被害にはならず、大きく被害は軽減される

旧HM・・・鏡川の浸水想定は限られている

新HM・・・昭和51年台風17号の被害の拡大版となってしまう

制度的(全国共通)学術的・気象学的(全国共通)高知特有(市民にとって想像しやすい)高知特有(市民にとって想像しにくい)

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浸水発生時間を活用した分析

動画データや浸水発生時間の分布データを活用することで以下のような分析や防災政策立案が可能になる。

• ある地区において、降雨→破堤→浸水でかかる時間を把握しておき、避難に必要な時間を下回る場合や、日没が迫る場合には避難勧告を早めに出す。

• 特に河川が山地から出てきた地区や、湾沿いの地区では時間が短い。

• 逆に北岸では長い時間をかけて別地区にまで浸水が広がる。

• 避難に必要な時間から逆算して、降雨の可能性でアラート、降雨の時点でアラート、越水可能性の時点でアラート、という区分分けを行うことが可能に。

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河川管理者から各氾濫パターンの最大浸水深スナップショット・動画全想定の最大浸水深

氾濫シミュレーションデータ

首長の避難誘導のタイミング

水害対策マニュアルの作成

高齢者・災害弱者への早いアラート

避難所などへの避難の支援

現象の理解よる避難誘導のトリガー

地域単位での避難誘導自主防災組織・小学校区→PTA(親と子)

動的情報による理解

水位・降雨などの災害規模の拡大(計画→想定最大)による被害の変化

越水後に水が引く時間下流側地区の水位上昇街路の流れや流速

本学提供データ各氾濫パターンの最大浸水深スナップショット動画

地区ごとの災害の現象と特性の把握

発災時におけるデータ活用

情報がない中での現状推定

氾濫被害拡大の予測

最悪事態での危険・安全地区

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動的解析データの提供による防災政策立案とその効果

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低平地・河川堤防により長時間湛水

破堤点より下流なら越水中だけ浸水

破堤点より下流なら越水中だけ浸水

危険域

中心部の微高地を避けて江ノ口川沿いに回り込む

■津波避難ビル■緊急指定避難場所■大規模災害時のみ開設を想定している指定避難所■指定避難所■福祉避難所

氾濫解析データを活用したリスク分析

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洪水到達時間から見た破堤点・地区ごとの災害特性

流速が大きく、短時間で下流側まで浸水する

また○の地区のように、浸水が長期化すると思わぬ地区に浸水被害が広がっていくことが分かる津波避難ビルなどはなく、避難所は不足

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中心部付近の場合には、江ノ口川と同時に高知城東側の中心部からの流入が同時に発生する。市街地東部では、流入が継続する場合には4時間程度で浸水が発生する。

洪水到達時間から見た破堤点・地区ごとの災害特性

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市街地南部では越水・破堤から避難する時間はほとんどないまた、幹線道路沿いには津波避難ビルが多数指定されているが、それ以外では少ない

洪水到達時間から見た破堤点・地区ごとの災害特性

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新洪水想定にどう対応するか河川管理者である高知県からはL2規模洪水での浸水想定図が公開されており、高知市も防災部局がハザードマップは作成している。

しかし、市街地ほぼ全域が水没する、という結果であり、より具体的な洪水流の挙動や、地区ごとの被災時の様相などを分析する必要がある。

市の防災部局と協議の中で、独自の氾濫解析の結果を、防災政策の立案に貢献する形に加工して提供。

公式の新HMの説明会は進められているが、より詳細な地区ごとの説明会などで活用する予定。

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石井町の治水面での課題

徳島県石井町での取り組み

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石井町の治水面での課題

吉野川下流部にあり、徳島市のベッドタウンとして発展

• 町内は低平地が大半で、内水氾濫に悩まされる

• 樋門や排水機場などが整備されているが、未だに被害が発生している

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石井町の治水面での課題

外水氾濫は近年では発生していない。

150年に一度の計画規模(左)でも浸水3mまでの浸水が予測されている

想定最大規模洪水(右)では町内全域5m以上の浸水が予想され、安全な避難所も設定出来ず対策が立てられない

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現状での課題

• 近年の水害の増大で関心が高まり、住民や自主防災組織からの問い合わせが相次いでいる

• 都市圏ではビルに、丘陵地があればそこに避難が出来るが、それもないので対応に苦慮

• 町内唯一のショッピングセンターは窪地にあり、周辺道路が冠水する。

• 自動車での広域避難では渋滞のリスク、山間部への避難は土砂災害のリスクがある

• 台風が南方海上にいる時に広域避難を開始すれば、という提案もあるが困難

• 内水が先に発生して避難ルートが途絶する

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石井町の水害リスクについて台風通過での“時間差”とは• 台風は数時間のうちに吉野川の上流から下流まで移動し、上流の台風によって発生した降雨時は約半日程度かかって吉野川を流れ下るため、降雨ピークや内水氾濫の発生と吉野川本川水位ピークとで半日程度時間差がある。

• また石井町の東部を流れる鮎喰川も剣山を水源に持ち洪水リスクが高い。山地で雨が降ってからおよそ4時間で水位が上昇する。

• 町内で複数の河川があり、洪水発生での上流を台風が通過してから、時間差があり水位が上昇するということが水害対策のキーとなる。

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雨量

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水位

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藍畑雨量 西条大橋水位

平成16年の台風23号の石井町内の雨量と、吉野川本川の水位

台風上流

剣山

下流

内水氾濫

吉野川本川の洪水

鮎喰川の洪水

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庁内幹部レクチャー

• 防災部局や土木部局に限らず、福祉部局や教育部局など全ての部局が災害対応する責務を負うことになっている。

• 職員は住民として頻発する内水氾濫に悩まされているが、低頻度の外水氾濫については意識をすることが少ない。

• そのため、石井町の災害特性や防災政策の近年に変化について管理職を対象にレクチャーを行った。

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庁内幹部レクチャー

• 質疑では「職員として」「住民として」の2つの視点で行われた。

• これまで雨が弱かった地域に強い降雨が発生した西日本豪雨や台風19号などについてや、四国の多雨地帯とは災害特性が違う点を説明をした。

• 70年代に頻繁に被災していたことの記憶がある一方で、近年は被害があまり出ないという感覚が大きい。

• 現在のハード整備の改善で降雨がより強くなっても被害が発生しにくいため、一般論としての気候変動による洪水リスクの増加と、体感的な災害リスクとは繋がりにくい。

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庁内幹部レクチャー

• 過去の台風では、内水氾濫が解消した段階で町内を移動していたが、吉野川の水位がピークに達している状態であることは意識されていなかったため、内水・小河川・吉野川の洪水の時間差について理解が深まった。

• 福祉部局などを中心に、災害弱者対策として浸水想定図や動的データを中心に具体的な防災政策に繋げる動きとなった。

• 新ハザードマップや広域避難、現状の平屋の公民館などの避難所以外での避難所確保なども庁内全体の課題として共有された。

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今後の予定として

• SI-CATは今年度で終了するが、これまでの研究成果を生かして、自治体との連携を継続する。

• 高知市では新HMに基づく防災政策や各地区ごとでの住民説明会が今後行われるため、自主防災組織などを交えた防災協議の中で、避難所の見直しや避難誘導、発災後の救援など防災政策立案を支援していく。

• 石井町についても、新HMを検討中であり、その作成についてや、避難所見直し、地区ごとのタイムラインなどについて自主防災組織を交えながら検討を行う。