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庄原市林業振興計画 庄原市 計画期間:平成25年4月1日~平成35年3月31日 策定:平成25年3月

庄原市林業振興計画 - city.shobara.hiroshima.jp本市の総面積は124,660ha(広島県面積の15%)で、近畿以西では最大となる市域面積 を有しており、その約84%にあたる104,863haを森林が占め(県内森林の約17%)、戦後

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庄原市林業振興計画

庄原市

計画期間:平成25年4月1日~平成35年3月31日

策定:平成25年3月

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はじめに

かつて、本市では、よく手入れされた美しい田園、里山風景に

囲まれて、人々は、心豊かな生活を営んでおりました。

しかし、基幹産業である農林業の衰退などにより、人口は減少

を続け、地域社会の絆のみならず、かけがえのない手入れの行き

届いた里山の景観なども失われてきています。

そして、本市の森林の中には、間伐などの手入れがなされてい

ない箇所も見受けられ、荒廃した森林は、公益的機能を発揮できず、台風の被害を受けた

り大雨などによって土砂災害を起こしやすくなることが懸念されます。

一方で、戦後、植栽された人工林が徐々に伐期を迎える中、資源としての活用を図って

いくことが求められていることから、間伐材など地域の未利用資源の利用による、新産業

の創出や林業振興、循環型社会構築と美しい里山の再生に向けた、取り組みを進めて参り

ました。

こうした経緯を踏まえ、今回、森林が有する多面的機能の維持を図りつつ、林業を本市

の重要な産業の一つとして推進するための指針として「庄原市林業振興計画」を策定する

ことといたしました。

明治から大正初期にかけて、その生涯を農村の救済と農業振興に捧げ”農聖”と称えら

れる石川理紀之助は、「樹木は祖先より借りて子孫に返すものとしれ」と、言葉を残して

おります。

先人の汗と努力により創り・守られた地域資源を活かし、林業・木材産業の振興を図り、

それらの資源や営みを、次代を担う子どもたちに受け渡して行くことが今を生きる私たち

の使命であると考えており、「次世代につながる『使える』森林(もり)づくり」を基本理

念とする本計画にもとづいて、市民や林業事業体、NPO法人等各種団体と協議を行いな

がら、ともに連携して林業振興に取り組んで参ります。

後に、本計画策定にあたり、アンケート調査や聞き取り調査にご協力いただいた市民

の皆様や林業事業体の皆様をはじめ、貴重なご意見、ご提案をいただきました庄原市森林

整備推進協議会委員の皆様に心から厚くお礼申し上げます。

平成 25 年 3 月

庄原市長

滝 口 季 彦

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目 次

第1章 基本的事項 ............................................................. 1

1. 策定の背景 ................................................................. 1

2. 庄原市林業振興計画の目的 ................................................... 2

3. 計画の期間 ................................................................. 2

4. 関連計画との整合 ........................................................... 2

5. 国の動向及び関係法律 ....................................................... 5

第2章 本市の現状と課題 ....................................................... 7

1. 森林の状況 ................................................................. 7

2. 林業・木材産業の概況 ...................................................... 15

3. 森林所有者、事業者及び一般市民の意見 ...................................... 17

4. 市が実施している事業 ...................................................... 29

第3章 今後の動向 ............................................................ 32

1. 本市の森林資源の推移 ...................................................... 32

2. 林業・木材産業を取り巻く動向 .............................................. 33

第4章 課題の整理 ............................................................ 42

1. 強み・弱み、取り巻く好機・脅威 ............................................ 42

2. 林業・木材産業における課題のまとめ ........................................ 43

第5章 基本理念 .............................................................. 44

第6章 基本方針と施策 ........................................................ 46

基本方針1:次世代につながる森林も り

づくり ........................................ 47

基本方針2:森林も り

の基盤づくり .................................................. 53

基本方針3:森林も り

の資源を活かす仕組みづくり .................................... 57

基本方針4:里山を活かす仕組みづくり .......................................... 61

基本方針5:森林も り

の資源を活かす体制・連携づくり ................................ 65

第7章 計画の推進に向けて .................................................... 67

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第1章 基本的事項

1. 策定の背景

本市は広島県の北東部に位置し、東は岡山県新見市、西は三次市、南は府中市及び

神石高原町、北は島根県・鳥取県へ隣接しています。地勢は標高150~200mの盆地を

はじめ、全般に穏やかな起伏上の台地を形成していますが、北部の県境周辺部は1,000

m級の山々に囲まれ、急峻で狭あいな地形となっています。

本市の総面積は124,660ha(広島県面積の15%)で、近畿以西では 大となる市域面積

を有しており、その約84%にあたる104,863haを森林が占め(県内森林の約17%)、戦後

を中心に植林されたスギ・ヒノキの人工林については、木材として利用可能な材積が

年々増加しています。

市ではこれまで、森林資源を有効利用するために、木質バイオマス活用プロジェク

トの一環として、ペレット工場の建設や公共施設へのペレットボイラー導入のほか、

公共施設整備の際の地元産材活用などを進めてきました。

また、市内に4つある森林組合は、育林や間伐の実施、切り出した原木の加工工場

への直接持込み、森林施業プランナーの活用による団地化の推進など、時代の流れに

応じた取り組みをそれぞれ進めています。

その他、民間林業事業体による素材生産のほか、民間団体による皆伐後の再造林支

援や特用林産物としてのシイタケ栽培などが行われています。

しかしながら、森林の適正な管理と活用を行うにあたり、行政、森林組合、民間林

業事業体及び個人林家がそれぞれ単独で活動するだけでは限界があります。また、木

質バイオマス関連事業の計画はあるものの、林業振興を目的とした具体的な計画がな

いのが実情です。

また、為替相場の影響による木材価格の低迷、今後、住宅着工数の減少が見込まれ

るなど、林業業界を取り巻く状況は必ずしも明るいものではありません。

こうした厳しい状況にあっても、農林業は本市の基幹産業であり、これからも基幹

産業として維持、成長を図る必要があることから、市内関係者が一体となって林業・

木材産業をとりまく諸問題を解決し、振興に向けた方向性を示す計画として、庄原市

林業振興計画を策定します。

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2. 庄原市林業振興計画の目的

この計画は、本市の森林が有する多面的機能の維持を図りつつ、森林資源の有効活

用を目的とし、その方向性を示すものとします。

3. 計画の期間

平成25年度から平成34年度末までの10年間とし、中間年の平成29年度に見直しを行

うこととします。

4. 関連計画との整合

この計画は、庄原市長期総合計画(平成18年度)を上位計画とし、庄原市森林整備計

画(平成22年度)、2020広島県農林水産業チャレンジプラン・庄原市地域プロジェクト

(平成23年度)及びその他関連計画と整合を図り策定します。

■ 振興計画と上位計画等との位置づけ

庄原市長期総合計画 (平成18年度)

「げんきとやすらぎのさとやま文化都市」を将来像とする市の総合計画です。そ

の中では、農林業を市の基幹産業に位置付けるとともに、その衰退を深刻な問題と

して捉え、林業振興の方向付けを行っています。

また、本市の「強み」である農村・農林業資源を 大限に活用しようとする「“み

どりの環”経済戦略ビジョン」を、重点戦略プロジェクトとして位置付けています。

なお、長期総合計画の実現に向けた具体的な事業を実施計画として策定し、将来

像に向かった取り組みを進めています。

庄原市長期総合計画「”げんき”と”やすらぎ”のさとやま文化都市」

・ 2020広島県農林水産業チャレンジプラン庄原市地域プロジェクト

庄原市林業振興計画

庄原市森林整備計画 ・みどりの環経済戦略ビジョン

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(1) 庄原市長期総合計画 (抜粋)

基本計画 第2章 さとやま資源の活用で地域が輝くまち

1.農林水産業の振興

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(2) 庄原市森林整備計画(平成22年度)

森林法の規定に基づき、地域森林計画(江の川上流)と整合を図り策定しています。

森林法の改正に伴い平成24年4月に一部、見直しを行い、現在の森林整備計画は、

森林整備の方向、伐採・造林・保育の基準を含めた市内民有林の森林整備について

の指針であるとともに、森林所有者等が策定する森林経営計画の認定基準ともなっ

ています。

(3) 「みどりの環」経済戦略ビジョン(平成17年度)

本市の『強み・強い分野』である農村・農林業資源を背骨に農林業と第二、第三

次産業が一体になった域内経済循環を作り出し、市民所得を向上させ、安定かつ安

心の暮らしを実現しようとするものです。

この中で、林業関係の施策として「木質バイオマス活用プロジェクト」を設定し、

地域資源を 大限に活用した事業展開に取り組んでいます。

(4) 2020広島県農林水産業チャレンジプラン (平成22年度)

広島県農林水産業の基本指針であり、10年後(2020年度)のあるべき姿を設定した

上で、5年後(平成27年度)を目標年度とする計画となっています。

広島県林業のめざす姿を「県産材の安定供給と利用拡大による持続的な林業の確

立」とし、県全体で素材生産量を平成21年度の6.9万㎥から30万㎥(平成27年)及び40

万㎥(平成32年度)をめざすという高い目標を掲げています。

なお、プランの実現に向けては、県内地域ごとにプロジェクトが設定されていま

す。

<庄原市地域プロジェクト>

庄原市地域プロジェクトにおいては、平成27年度までの5年間で、4森林組合の

合計の木材生産量を平成22年度の約3倍・4.6万㎥、平成32年には5.4万㎥をめざす

内容となっています。

■庄原市地域プロジェクト 指標と目標値(抜粋)

※目標値の木材生産量は単年度,その他は累計 庄原市地域プロジェクト計画書

指 標 現状値

(H22)

目 標 値

H23 H24 H25 H26 H27

木材生産量(スギ・ヒノキ) (㎥) 15,266 18,728 32,790 34,920 40,195 45,820

森林施業プランナー数(人) 2 4 6 9 11 14

低コスト林業団地面積(ha) 19,470 20,397 20,997 21,197 21,497 21,797

長期施業受委託面積(ha) 14,013 14,545 15,185 15,445 15,785 16,125

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5. 国の動向及び関係法律

(1) 林業の再生に向けた取り組み(森林・林業再生プラン)

これまで、人工林管理がなかなか効果的・効率的に進まなかったことを踏まえ、

国は「森林・林業再生プラン」に基づき、制度の見直し、森林組合改革など、大幅

に方針を変更して関係施策に取り組んでいます。

特に、森林法改正により創設された「森林経営計画」は、森林所有者等が計画を

作成し、市町村が認定する方式とするなど、森林・林業分野における市町村の役割

がより重要なものとなっています。

また、地域の森林・林業の牽引者となる人材を日本型フォレスター(指導者・技術

者)として育成し、地域の実情を踏まえた森林・林業の再生を進めていくこととして

います。

(森林・林業再生プラン)

今後10年間を目途に、路網の整備、森林施業の集約化及び必要な人材育成を軸として、

効率的かつ安定的な林業経営の基盤づくりを進めるとともに、木材の安定供給と利用に必

要な体制を構築し、我が国の森林・林業を早急に再生していくための指針として林野庁が

平成21年12月に公表したもの。

具体的な施策を「森林・林業の再生に向けた改革の姿」(平成22年11月公表)として取り

まとめ、これを踏まえた森林法の一部改正(平成23年4月公布)を行うとともに、新しい「森

林・林業基本計画」が閣議決定(平成23年7月)されている。

■森林・林業再生プランの概要

林野庁資料 http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/saisei/index.html

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(2) 公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律(平成22年10月1日施行)

公共建築物等における木材利用の促進に関する法律においては、これまで木材の

利用が少なかった公共建築物への木材利用の方向性が示されています。

本市においても、庄原中学校をはじめ道の駅や保育所等の新築に際し、地元産材

を積極的に活用するなど、木材利用を促進する取り組みを進めています。また、同

法の規定に基づき、平成24年度、市における木材利用の方針として、庄原市公共建

築物等木材利用促進方針を作成しました。

■ 公共建築物等における木材利用の促進スキーム

林野庁HP

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第2章 本市の現状と課題

1. 森林の状況

(1) 概要

本市面積の約84%にあたる104,863haを森林が占めており、地域住民の生活に密着

した里山から、スギ・ヒノキなどの人工林帯、大径木の広葉樹などが林立する天然

林帯まで、多様な構成になっています。

これら森林のうち、民有林面積は98,000haで、スギ・ヒノキを主体とした人工林

面積が43,575ha、人工林率は44%と県平均(31%)より高くなっています。

また、林地の傾斜は35度未満が大半であり、伐採の作業体系は路網を中心とした

ものになっています。

これらの人工林資源を利用・管理するに当たり、小規模な森林所有者が多いこと、

森林管理に必要な路網の整備が進んでいないことなどが課題となっています。

なお、小規模所有者が多いものの、不在地主の割合は全国平均(24%)より低く、

他の地域に比較して境界確定や団地化を推進しやすい状況にあるといえます。

■庄原市の森林の概要

項目 数値 備考

市域面積 124,660ha -

森林面積 104,863ha 市域面積の84%

民有林面積 98,000ha 森林面積の93%。民有林のうち個人所有が

92%

人工林面積(民有林) 43,575ha 民有林面積のうち44%、ヒノキが主要樹種

素材生産量 68,146㎥ -

齢級構成(人工林) 10齢級を頂点のピラ

ミッド

46~50年生の人工林の割合が も高い

標高 400~800mに分布 北部は1,000m級の急峻な地形

傾斜 20~30°が も多い -

林道密度 3.4m/ha 県平均 4.7m/ha

林内道路密度 13.9m/ha 県平均 15.6m/ha

不在地主の森林所有

面積割合

18% -

■【参考】他自治体との比較

庄原市

真庭市

(岡山県)

郡上市

(岐阜県)

十津川村

(奈良県)

豊田市

(愛知県)

自治体面積 124,660ha 78,854ha 103,709ha 67,235ha 91,847ha

森林面積 104,863ha

(84%)

65,271ha

(83%)

92,463ha

(90%)

64,546ha(

96%)

62,662ha

(68%)

人工林面積

(民有林)

43,575ha

(44%)

27,204ha

(60%)

49,458ha

(55%)

32,246ha

(51%)

35,161ha

(56%)

年間素材生産量 68,146㎥ 113,000㎥ 70,000㎥ 13,000㎥ 33,390㎥

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公有林 5,461 5%

民有林面積98,000 89%

国有林面積6,729 6%

天然林 51,924 53%

人工林 43,575 44%

その他 2,501 3%

マツ 1,408 1%

天然林 51,924 55% ヒノキ 28,374 30%

スギ 12,59313%

ザツ 1,200 1%

市内居住82%

不在地主・県外8%

不在地主・県内10%

森林面積 104,86384%

その他 19,79716%

総面積:124,660ha

■市域に占める森林面積 ■所有者別森林面積

■民有林における人工林、天然林の割合 ■民有林における人工林の樹種割合

■森林所有者の所在地状況

78,157ha

民有林のうち、

公有林、公団造

林等を除く

8

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(2) 人工林

市内では、年間約6.8万㎥の素材生産が行われていますが、その多くは皆伐により

実施されています。皆伐は、森林管理及び素材生産の手法の一つであり、皆伐後の

再造林を行うことで、森林資源の更新を図り、持続可能な森林資源の活用を図るこ

とができます。そのため皆伐後の確実な植林の実施が課題となっています。

森林整備計画では、市の人工林の多くを「水源涵養機能維持増進森林」に指定し

ており、その伐期齢の下限を、スギで45年、ヒノキで50年に定めています。

本市のスギ・ヒノキの人工林は、55年生以下の林分が36,962haで全体の90%を占

めており、適齢期における主伐及び間伐が求められています

一方、56年生以上の林分も4,000ha余りあることから、木材の有効活用と適切な更

新も必要となっています。

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■人工林の齢級ごとの資源構成(面積 ha)

庄原市森林整備計画

■ 人工林の齢級ごとの資源構成(蓄積 ㎥)

庄原市森林整備計画

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林

1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~30 31~35 36~40 41~45 46~50 51~55 56~60 61~65 66~70 71~75 76~80 81~85 86~90 91~95 96~100

スギ

ヒノキ

マツ

クヌギ

-

500,000

1,000,000

1,500,000

2,000,000

2,500,000

3,000,000

人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林 人工林

1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~30 31~35 36~40 41~45 46~50 51~55 56~60 61~65 66~70 71~75 76~80 81~85 86~90 91~95 96~100

マツ

ヒノキ

スギ

年生

年生

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■ 標高別面積

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

18,000

20,000

400 600 800 1000 1200

~ ~ ~ ~ ~ ~

0 400 600 800 1000 1200

標高(m)

面積

(ha)

クヌギ 面積

アカマツ 面積

ヒノキ 面積

スギ 面積

庄原市森林整備計画

■ 傾斜別面積

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

15 20 25 30 35 40 45

~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~

0 15 20 25 30 35 40 45

傾斜(度)

面積

(ha)

クヌギ 面積

アカマツ 面積

ヒノキ 面積

スギ 面積

庄原市森林整備計画

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(3) 天然林・広葉樹林

市内の民有林のうち、56%が天然林であり、そのうち56年生以上の箇所が半数以

上を占めており、かつて薪炭用として育てられたものが、その後利用されずに放置

されたものが多くを占めています。

高野地域の広葉樹林においては、ミズナラを中心にナラ枯れ被害が確認されてお

り、防除事業を進めています。また、庄原、西城地域には、アカマツ林が分布して

いますが、マツ枯れ被害が発生しており、その被害対策は市だけでなく、民間でも

行われています。

市の特用林産物の一つであるシイタケの栽培用原木として、クヌギ・コナラ等広

葉樹の育成が進められています。現在、市内で使用する原木は、概ね市内で確保で

きていますが、全国的には東日本を中心に福島原子力発電所の事故に伴う放射能の

影響で原木が不足している状態が続いています。

そのほか、市内全域で竹林も拡大しているため、ひろしまの森づくり事業を活用

し防止対策を行っています。

■ナラ枯れ・シイタケ原木(林野庁・森林総合研究所HPより)

ナラ枯れ被害木 シイタケ原木

【全国のきのこ原木の需給状況】

林野庁では、放射性物質の影響により安全なきのこ原木が不足している状況にあるた

め、きのこ生産者が、きのこ生産を継続できるよう、きのこ原木の需給状況の把握及び関

係者への情報提供、きのこ原木の供給希望者と供給可能者とのマッチングを推進、地域の

実行体制の整備などを推進してきた。

これらの取り組みの一環として、きのこ原木の全国的な需給状況の調査結果をとりまと

めている。

供給希望量(A) 供給可能量(B) 不足量(A-B)

286 万本

30,000㎥

97 万本

12,000㎥

189 万本

18,000㎥ ※平成24年9月末時点 (林野庁ホームページを基に作成)

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13

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

10000

天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林 天然林

1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~30 31~35 36~40 41~45 46~50 51~55 56~60 61~65 66~70 71~75 76~80 81~85 86~90 91~95 96~100

その他広

ブナ

クリ

クヌギ

アベマキ

その他針

マツ

■天然林の齢級ごとの資源構成(面積 ha)

(4) 平成22年7月の庄原市ゲリラ豪雨災害について

本市は、平成22年7月に、本州付近に停滞した梅雨前線の影響により局地的な豪雨

に見舞われ、川北町篠堂地区等が甚大な被害を被りました。被害のあった地域では、

生活基盤が破壊されると同時に、森林も大きな被害を受け、復旧工事は現在も続け

られています。

市内では、過去にも土砂災害が発生した経緯があり、間伐等の森林整備の促進に

より、土砂災害の防止や水源の涵(かん)養などの機能の高度発揮ができる森林づく

りが課題となっています。

■平成22年7月豪雨による被害状況 広島県HPより

豪雨災害による崩壊地 被害状況

(ha)

庄原市森林整備計画 年生

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(5) その他、本市の森林に関する事項

西城町、東城町及び比和町に属する比婆道後帝釈国定公園は、中国山地のほぼ中

央に位置する船通、道後、比婆、吾妻などの山々に、その南の帝釈峡を加えた公園

です。

これら公園内の山々はおおむね緩やかな高原状をなし、隆起準平原の特徴を現し

ています。それを被っていた森林は砂鉄の精錬のため、永年にわたって伐採されて

きたもので、山頂部の多くは草原で放牧等に利用されていましたが、近年、放牧が

行われなくなり、草原が潅木に覆われつつあります。一方、古くからの自然林が残

っている比婆山のブナの純林等は貴重です。

また、本市を流れる主要河川は、西城川・比和川・神之瀬川・田総川などの「江

の川水系」と成羽川・帝釈川などの「高梁川水系」に分岐し、日本海、瀬戸内海に

注いでいます。

その他、神之瀬峡県立自然公園や県自然環境保全地域・緑地環境保全地域のほか、

市内各地には樹木を中心とした遺跡や神社仏閣等が点在しています。

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3~5ha31%

5~10ha29%

10~20ha22%

20~30ha7%

30~50ha6%

50~100ha3%

100~500ha2%

~3ha0%

2. 林業・木材産業の概況

2010年世界農林業センサスによれば、保有林1ha以上の市内林家数は約4,600戸とな

っています。

また、保有林3ha以上で、2010年を計画期間に含む森林施業計画を作成、または立

木買いにより素材生産した林業経営体は約1,300ありますが、そのうちの6割が10ha未

満の経営体となっています。

就業状況は、国勢調査(平成22年)によれば、第1次産業の林業へ従事するものが220

人、第2次産業の木材.木材製品製造業に従事するものは55人という状況です。

■保有山林面積規模別林家数

面積(ha) 林家数 面積(ha) 林家数

1~ 5 2,823 30~ 50 124

5~10 824 50~100 62

10~20 549 100以上 27

20~30 190 総 数 4,599

平成22年農林業センサス

■規模別林業経営体数

■規模別林業経営体数

庄原市森林整備計画

※林業経営体とは、森林の所有、借入などにより森林施業を行う権原を有する世帯、会社などで、

下記のいずれかに該当するものをいう。

・ 保有山林の面積が3ha以上で過去5年間に育林若しくは伐採を行っている。

・ 委託を受けて造林・保育を行っている。

・ 委託を受けて200㎥以上の素材生産を行っている。

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■ 人口の推移 (単位:人)

総人口 平成2年 平成7年 平成12年 平成17年 平成22年

50,624 48,539 45,678 43,149 40,244

年少人口

8,247 7,088 5,768 4,870 4,339

(16.3%) (14.6%) (12.6%) (11.3%) (10.8%)

生産年齢人口

30,033 27,496 24,680 22,647 20,689

(59.3%) (56.6%) (54.0%) (52.5%) (51.4%)

高齢者人口

12,332 13,955 15,230 15,600 15,154

(24.4%) (28.8%) (33.3%) (36.2%) (37.7%)

平成2年~平成22年:国勢調査

■ 産業部門別就業者数等 (単位:人)

総 数

平成7年 平成12年 平成17年 平成22年

26,469 24,092 22,075 19,242

(100%) (100%) (100%) (100%)

第1次産業

6,224 5,344 5,011 3,698

(23.5%) (22.2%) (22.7%) (19.2%)

農 業

5,986 5,078 4,903 3,474

(22.6%) (21.1%) (22.2%) (18.1%)

林 業

229 224 105 220

(0.9%) (0.9%) (0.5%) (1.1%)

漁 業

9 42 3 4

(0.0%) (0.2%) (0.0%) (0.0%)

第2次産業 7,919 6,571 5,090 4,151

木材.木材製品製造業

147 59 110 55

(0.6%) (0.2%) (0.5%) (0.3%)

第3次産業 12,318 12,166 11,910 10,918

平成7年~平成22年:国勢調査/第2次産業の木材.木材製品製造業は工業統計調査による

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3. 森林所有者、事業者及び一般市民の意見

森林所有者や林業・木材産業に関わる事業者、一般市民に対して、アンケート・聞

取り調査を行い、以下、分野ごとに現状や課題を整理します。

対象者と調査の目的

調査対象者 目的 コメント

1.林業・

木材関連

業者調査

①現状の営業状況の把握

②本市の森林・林業の課題

③木材(原木、製材品)取扱量・流通状況

④将来展望

⑤施策の要望(市への要望)

⑥市産材について

①と④により、将来の市内業者の

状況がどうなるのかを推察する。

③により、木材の流通フローを、

⑥により市産材の活用の展望を

探る。

2.森林所

有者調査

①所有面積、自己作業の状況

②森林への期待

③施策の要望

④伐採性向(伐採計画、伐採の動機)

⑤皆伐跡地の再造林が行われるか

⑥県市施策への意見(団地化施策等)

⑤により皆伐跡地の更新が適切

に行われるかどうかの展望を探

る。

⑥により、何が施策のボトルネッ

クになっているか、改善策を探る

ための調査とする。

3.一般市

民調査

①森林所有の有無

②森林の利用状況

③森林への関心・期待

④施策の要望

③市が実施する施策の中で森

林・林業関係の施策に対しての優

先度合いを探る。

アンケート調査の母数となる情報源について

聞き取り分野 母数 活用する情報源 発送数 回収数 割合

1 森林所有者 4,599

森林組合が管理する森林簿か

らランダム抽出

332名 160名 48.2%

2 森林組合 4組合 (ヒアリング調査を実施) - - -

3 民間林業事業体 42社 (ヒアリング調査を実施) - - -

4 製材所 10社 広島県木材組合連合会の「木

材業者登録名簿」(平成21年8

月)から抽出

10社 4社 40.0%

5 チップ工場 3社 (ヒアリング調査を実施) - - -

6 木工所 5社 関係者から聞き取り 5社 2社 40.0%

7 工務店

(設計、施工)

62社 1.工務店:「広島県建設業者

登録名簿」の中から市内所在

の建築一式工事及び大工工事

の許可事業体で抽出

2.設計事務所:「測量・建設

コンサルタント等業務入札参

加資格者名簿」の中から市内

在住の建築関係建設コンサル

タント(建築一般)で抽出

62社 32社 51.6%

8 一般市民 40,244

市内31の自治振興区に所属す

る自治会・班等の代表者

435名 266名 61.1%

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無回答・その他1%

境界が大体分かっている38%

境界が明確に分かっている37%

場所は分かるが、境界は分か

らない

21%

場所も分からない3%

(1) 森林所有者の意見

自分の所有する森林の面積や境界について、約7割の所有者が、分かっている、ま

たは大体分かっていると回答し、また、他人の山と一体的に管理されることについて

も7割以上が、適正に管理されるのであれば問題ないと回答しています。

また、本市の林業施策として、山林境界の確認・調整への支援や、山林への路網の

開設を望む声も多くあります。

団地化促進の体制を整え、所有者に対して、境界の明確化、路網の計画的配置、間

伐の効率的な推進等のメリットを訴えることにより、団地化及びその後の施業の集約

化が加速度的に進む可能性があります。

間伐作業については、多くの人が森林組合等の事業体や個人で行っていますが、約

4分の1は、何もしていない実態があり、また将来の更新については半分以上の人が

植林をしたいと考えています。

その他、林業や木材産業に関する情報が、個々の森林所有者に伝わっていない実態

があります。

■所有山林の境界の把握状況(n=160)

「境界が大体分かっている」では、境界が確定しているとは言えない。「分かっているつもり」が分かっていない場合も多い。これらも含めて境界が明確になれば、団地化が進み、森林管理が大幅に進む可能性が高まる。

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無回答・その他 7%マツを植林したい

2%

スギを植林したい 3%

分からない 7%

考えたことはない 12%

ヒノキを植林したい 13%

スギまたはヒノキを植林したい 17%

広葉樹を植林したい 18%

特に植林せずに生えてくる植物でよい 21%

作業経費や原木売上が

正確に個人別に管理さ

れるのであれば問題な

45%

他人と一緒に管理され

ても特に問題ない

28%

どのような条件であって

も嫌だ

5%

自分の森林に道が付か

なければ問題ない

3%

無回答・その他

19%

■所有山林が団地化などにより他人の山林と一緒に管理されることについて(n=160複数回答)

■所有山林の間伐作業の実施者(n=160複数回答)

■所有山林で、将来更新の際に植えたい樹種(n=160複数回答)

3

17

44

45

72

無回答・その他

森林組合以外にお願いしている

自分(家族等)で作業している

なにもしていない

森林組合にお願いして作業している

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(2) 森林組合の意見

森林組合は、森林組合法に基づく森林所有者の協同組織で、「森林所有者の経済的社

会的地位の向上」、「森林生産力の増進」、「森林の保続培養」を目的としており、地域

の森林所有者の組合であると同時に、森林管理作業の実際の担い手になります。

森林組合は、これまで造林地の保育や切捨てを中心とした間伐の実施で、本市の森

林を作り上げてきました。これからは、成熟期を迎えつつある森林資源を団地化し、

搬出を中心とした間伐へ事業の中心がシフトしていくものと考えられます。

特に、森林施業プランナーを中心とした団地化の促進には、団地化作業そのものに

かかる労力をコストとして計算し、その対価を森林組合が得られる仕組みづくりが必

要です。

また、民間事業体が持つ技術力の習得・活用や、伐採から造林までの一体となった

山作りの実施など、両者が一体となって山作りを推進していく必要があり、これまで

以上に民間素材生産業者との連携が必要になります。

■森林組合ヒアリング概要

【皆伐について】

林産だけをやる森林組合というのは、存在意義があるのか。皆伐・再造林して

資源を将来にわたり循環させるべきである。

ハーベスタやプロセッサの使える径級のうちに切って、更新するほうがよい。

成長量が低下した木を皆伐・更新することで、CO2ストックを増やすこともでき

る。

【再造林について】

林業振興計画には再造林の話は入れないといけない。

再造林は県が試験した結論としては大苗の植栽が も良いようだ。

下刈回数を減らせられるかが重要。

【庄原市林業振興計画について】

市は、森づくりについてしっかりした構想を作るべきである。

市の少ない財源の中でやらねばならないことは承知しているが、林業振興計画

の中では、予算のことは気にせず、必要なことを整理すべきである。

若い人の定着につながるような施策に予算を割くべきである。

市の施策は、国や県の施策を拡充する、支援する取り組みが理想である。具体

的には、切捨て間伐や再造林への支援が欲しい。

【製材所の新設の検討について】

市としては、製材所の新設を検討しているようだが、製造した製品をどうする

のかの出口を考えておかねばならない。

新しく設立する製材所は、広島県北部国産材加工協同組合(三次市)とライバル

になることになり、市内の森林組合は協同組合の組合員・理事であり、望まし

いことではない。

【森林組合での製材品の販売について】

広島県北部国産材加工協同組合(三次市)から仕入れてきた製材品を森林組合で

販売しているが、 近は売り上げが良くない。

市内のホームセンターで製材品を買う人も増えた。

そもそも、市内での製材品の需要が減っている。

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【その他】

近、「森林組合はプランナー業に専念し、現場作業は民間業者に委託」、とい

う動きがある。しかし、現状では施業プラン作りだけで収益を出せる仕組みに

はなっておらず、施業と合せて収益を出している状況である。

今後、必要なのは人材育成である。核となる人物をまず育て、そして周囲はそ

の職員を目標とし切磋琢磨させる。

組合員は6,000人程度いるが、 近、「脱退させてくれ」、「森林を土地ごと買っ

てくれ」、といった問い合わせがある。

庄原市は地籍調査が遅れている。

里山における広葉樹の活用も必要ではないか。庄原市北部ではナラ枯れがある。

枯れる前に伐採して活用する方がよい。

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(3) 民間林業事業体、民間企業の意見

① 素材生産業者

現在、市内には42社が登録されています。全体の年間素材生産量は約6.8万㎥(平

成22年実績)です。事業体数は減少傾向にあるものの、素材生産量は国や県の搬出間

伐推進の政策と相まって、近年は増加傾向にあります.

本市が、林業・木材産業の振興や更なる木質バイオマスの利活用を行う際には、

素材生産ができる態勢を整えておくことが必要です。

そのためには、森林簿の数値からみて豊富に賦存している森林資源について、そ

の形質がどうかとか、トラックの入れる道からの地利はどうかなどを調査し、どの

程度利用可能な木材として賦存しているかという情報把握が必要です。

そのため、森林の団地化を進めようとしている森林組合と十分な連携をとり、情

報交換を進めていくことが求められています。

また、聞取り調査によれば、林業労働者の高齢化や人材不足が懸念され、人材の

確保や育成が必要となっています。

■民間事業体ヒアリング概要

森林所有者は、所有森林への関心が低い。

山は緊急時の出費を賄うために伐採して換金するという考えが根強い。

庄原市の森林資源は、統計データとしては豊富ということになっているが、

素材生産現場として考えると、伐採できる箇所はそれほど豊富なわけでは

ない。

林業の担い手が必要である。林業に携わることで生活できるような収入を

得られ、事業体としては職員の雇用を続けていけるような環境をつくり、

I・Uターン者を育成する必要がある。

東城地区で実施している植栽への支援は、現在2件の実施を予定している。

どちらの事例も森林所有者に後継者がいるところである。

② 製材工場

市内の製材所は小規模なものが多く、アンケート調査への回答があった4社の原

木消費量の合計は年間1,350㎥でした。規模の小さい製材工場の経営は、年々、厳し

さを増しているところですが、市が進めている公共建築物への市産材の活用等によ

り、それに携わる工場については、一時的な活況となっています。

乾燥機等の施設はなく、乾燥が必要な場合は、三次市にある広島県北部国産材加

工協同組合等、市外の業者に依頼しているのが現状です。

また、後継者が不在で、事業の継続性に不安を抱える工場が多くあり、市産材を

はじめ地域材を活用する仕組みが求められています。

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特に考えていない。 0%

今の経営者のうちは経営するが、その後は継続しない。 25%

今後も事業を引き継いで積極的に経営したい。 0%

継続したいと思っているが、将来についてはわからない。 75%

■市内製材所の事業規模

原木消費量

A社 900㎥/年

B社 400㎥/年

C社 50㎥/年

D社 不明

合計 1,350㎥/年

■ 市内の製材工場事業承継の意向 (n=4)

■製材工場へのアンケート・ヒアリング概要

在来工法による住宅等の建築が減り、地元工務店の仕事が減少しているため、

製材及び製材品の売上が伸び悩んでいる。

本年は市が公共施設の建築で地元材の活用及び地元製材を推進していただき、

地元材の製材が増大した。

市内産の原木活用を増大したいので、森林組合がコーディネートをして、製材

品販売までのシステムを作る支援をして欲しい。

県産材の証明が必要な場合が増えている。今後、こうした流れが定着すると良

い。

③ チップ工場

市内には現在3つのチップ工場が稼動しており、その中には、全国的にも有力な

事業者もあります。

年間チップ総生産量は約45,000BDT(平成22年実績)で、生産したチップは、主に鳥

取県、島根県及び山口県の大手製紙会社等に販売しているほか、バークは近隣の肥

料会社、ダストは市内のペレット製造会社等に販売しています。

現在、製紙業界は、日本国内での紙需要の低迷や中国産パルプ拡大等の影響によ

り、国内生産は縮小傾向にあります。

今後、製紙以外の新たな需要先を確保することも重要となってきます。

※BDT 絶乾重量 トン (水分を含まない重量)

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■チップ工場ヒアリング概要

今の枠組みを変える必要がある

今は、悪循環になっている。(入口、出口どちらかを手当てしてもだめである。

両方から変える必要がある)

木材が安いから山(丸太)が買えない。

山主に金が入らないから、山を伐採した跡地が造林されない。

森林の経営を受託するとなるとその実態を把握する必要があるが、森林簿等の

情報がみせてもらえない。

将来展望については、製紙オンリーから別方向への展開も含め、検討はしてい

る。

④ 木材流通

原木市場は、本市にはないものの近隣市町に点在しています。

取扱量は、近年の木材資源の充実、搬出間伐の増加等の影響で増加傾向の市場も

ありますが、将来的には住宅着工需要の減少が予想されており、見通しは不透明な

状況です。

また、平成24年度は、為替や需要低迷等の影響で材価の暴落、低質材が市場で飽

和状態になるなどの状況もありました。

■近隣の原木市場ヒアリング概要

木材価格は円高の影響をもろに受けている。また、需要と供給の関係なので住

宅着工等需要の動向も大きい。

平成24年2月の欧州ホワイトウッド製材品との競合や住宅着工戸数の伸び悩み

等に伴い原木市場でも値崩れがあった。

将来を展望したときに、住宅着工戸数の減少を心配している。

現在は、大径材の良質材が全国的に少ないから比較的大径材の価格が良いが、

このまま森林資源の状況が推移し、全国どこにも大径材があるようになると、

そのときの価格はどうなるかわからない。50年生以上の適当な林齢で、皆伐し

更新していくことも必要ではないか。その場合に再造林への対応が必要になっ

てくる。

現在の取引では合法材かどうかはあまり意識していないが、今後、発電用の木

材の需要が出てくれば、その証明が重要になってくる。

庄原市には、公団造林、公社造林、市有林、財産区有林等大規模にまとまった

森林が多くある。これらを今後どう搬出していくかということも含めた全体計

画を考えてもらいたい。

木の生育が良く、車道近く(あるいは車道がつけやすい山)で経営的に循環利用

できる山と、道路が開設できない山や生育の悪い山とを分類して、循環利用可

能な山のみ木材利用中心に経営し、再造林をしていくような考えが必要と思う。

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⑤ 木工所

市内に木工所は5社ありますが、回答のあった2社は、ともに家具を製造してい

ます。そのうち1社は、ヒノキの間伐材を利用した家具を全国に出荷していますが、

過去、市内産の間伐材の製材を依頼した際、製材所から断られた経緯もあり、現在

は、他県の製品を購入しているとのことです。

家具に使用される木材の消費量は、それほど多くはありませんが、一般の 終消

費者の目に留まる可能性も高く、市産材が入手しやすい環境が必要となっています。

■木工所アンケートでの市産材利用に関するコメント

庄原市産材を使おうとしたが、出来ないと断られた。前向きに取り組んでくれ

る業者が島根県と高知県にあったので、そこから購入している。

ヒノキの間伐材を利用して製品を全国に出荷している。1~2件問い合わせた

が、当時、加工していただける工場がなかった。他県より5~6㎥(製品)購入

している。

⑥ 工務店

市内の工務店は、木造軸組工法を採用している店が全体の8割を占め、そのうち

の6割以上の工務店が人工乾燥材を使用している状況です。

市産材の活用では、意識的に使用したケースが3割ありますが、多くは顧客の要

望に基づくもので、積極的に市産材を活用するには至っていない状況も見受けられ

ます。また、市産材を使用していない工務店の6割は、市産材を使おうとしたもの

の、価格面や取引先が扱っていないなどの理由で使用を断念した経緯がありました。

市産材や地域材の利用拡大への課題やその解決策を検討する必要があります。

■市産材(製材品)の利活用状況 (n=32 重複回答)

7

3

10

13

21

22

その他・無回答

ログハウス

鉄筋コンクリート

鉄骨

木造 軸組み(真壁工法)

木造 軸組み(大壁工法)

17 社は、真壁工法と大壁工法を行

っており、8割が木造軸組工法

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26

無回答・その他9%

人工乾燥(15~20%)

63%

グリーン材(含水率は問わ

ない)6%

天然乾燥(20~30%)

22%

使っていない41%

使っている34%

分からない16%

無回答・その他9%

使おうとしたことはない

31%

無回答・その他8%

使おうとしたことがある

61%

■利用製材品の乾燥状況 (n=32)

■市産材(製材品)の利活用状況 (n=32)

■市産材を使用していない者のうち、使用しよう

としたことがあるか (n=13)

■市産材を使用していない者で、

使おうとしたが使えなかった理由 (n=13)

■工務店アンケートでの市産材利用に関するコメント

国産材(市内産にこだわらない)を使って木造軸組工法で家を建ててもらう事

が大切である。

市内だけでなく中国地方とか言うような大きな視野が大切だと思う。

木材の価格の体系を考えてもらうのが大事ではないかと思う。(山林→伐採→

市場→製材→業者または市場→業者)。

市内材を使用したいが、価格面でどうしても割高になるので、今まで使うこと

がほとんどない。

1

2

4

5

納品期間が長かった

他の製材品より材料としての性能・質が悪かった

取引先が市内産製材品を取り扱っていなかった

他の製材品より価格が高かった

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27

6

11

12

12

14

23

67

79

87

植樹祭・育樹祭

森林内でのレクリエーション

植物や野生動物などの自然観察会

森林浴等の保健休養

登山、ハイキング以外の観光

登山、ハイキングなど

特に目的はない、近所に森林があるから

山菜及びキノコ狩り

下草刈りや保育間伐等の森林作業やボランティア活動

強くそう思う52%

そう思う39%

そう思わない4%

分からない3%

無回答・その他2%

(4) 市民意識の状況

市民の7割以上が、日常生活や余暇活動の中で森林に訪れているとともに、市民の

9割以上が、本市にとって森林は重要だと思っており、市民にとって森林は身近で大

切な存在であることがうかがえます。

したがって、身近な森林を守り育てていくための間伐等の森林施業を推進していく

とともに、市民意識を高める市民団体やNPO等の活動に対し、支援することも重要

となります。

また、森林資源を活かした林業・木材産業を地場産業として伸ばしていくべきとい

う意見も8割以上あります。一方で、自身が木材製品を購入する際は、価格や品質が

優先で、次に国産材かどうかを気にする人は多いものの、市産材を求めて購入する人

は少数です。

■最近の森林への訪問状況(n=266)

訪れた 198 人 74%

訪れてない 65 人 24%

無回答・その他 3 人 1%

合計 266 人 100%

■森林を訪れた理由(n=198複数回答)

■市にとって森林の重要性についての考え(n=266)

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28

17

20

21

21

24

25

27

44

55

57

63

102

108

165

0 20 40 60 80 100 120 140 160 180

森林とのふれあいの場の提供

森林ボランティア団体等の育成、支援

木材利用促進のためのPR活動

森林・林業に関する学校教育の充実

木造公共施設の整備

製材工場などの木材産業への支援

森林の役割や森づくり活動の普及啓発

森林所有者への指導、助言

未利用木材のバイオマス利用(FIT等)

木材の安定的な供給

森林を整備する担い手の育成

森林を守り育てている山村住民に対しての支援

土砂崩れなどの災害を防ぐ治山施設の整備

間伐の実施等荒廃した森林や里山の整備

無回答・その他2%

分からない6%

そう思わない8%

強くそう思う39%

そう思う45%

■行政に期待する森林・林業行政施策 (n=266 複数回答) ※回答数が少なかった項目は省略

■林業・木材加工業を市の地場産業として伸ばすべきかの意向 (n=266)

■住宅建築において木材(製材品)選択で重視する点 (n=266複数回答)

※回答数が少なかった項目は省略

25

31

33

36

37

50

93

95

118

123

0 20 40 60 80 100 120 140

広島県産材であること

国による認証マーク(JAS等)

性能表示(強度)があること

特に重視していない

無垢材であること

庄原市産材であること

加工精度、乾燥など製材品としての品質

原木自体の品質(目のつまり具合等)

国産材であること

価格

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29

4. 市が実施している事業

(1) 林業振興事業

市では、森林の育成及び林業経営の振興、森林の持つ多面的な機能の維持・発揮

を図るため、間伐及び路網整備などにより人工林の整備を推進するとともに、森林

病害虫被害対策、特用林産物の奨励などに取り組んできました。

しかしながら、これまでの森林境界の明確化や施業の集約化、保育や間伐、路網

整備等などの林業施策は、国や県の補助事業を活用したものが中心で、広大な面積

を有する本市では、今後さらに加速して事業に取り組んでいく必要があります。

特に、森林境界の明確化などについては、市独自の新たな施策を検討するなど、

森林資源の有効活用を図り、山元へ利益が還元できる基盤整備を進める必要があり

ます。

【平成23年度事業実績】

事業名 概 要

地域木材住宅建築普及事業 8件(新築8件)

森林病害虫防除委託事業 松くい虫伐倒駆除 305㎥

カシノナガキクイムシ防除 50本

しいたけ産地育成事業 品評会・施設補助等

森林整備地域活動支援事業 施業集約化の促進 137.76ha

作業路網の改良活動 2,084.86ha

分収造林事業 間伐 9.44ha

枝打ち 1.4ha

森林整備加速化・林業再生事業

間伐 235.78ha

境界明確化 456.00ha

林内路網整備 25,140m

ひろしまの森づくり事業 人工林対策 314.19ha

里山林対策 28.82ha

■ 森林病害虫防除委託事業

松くい虫被害木(焼却)

カシノナガキクイムシ

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30

■ 森林整備加速化・林業再生事業

間伐 林内路網整備

(2) 木質バイオマス活用プロジェクト

豊富に賦存する木質バイオマスを資源として有効活用することにより、エネルギ

ーの地産地消や循環型社会を構築し、あわせて林業振興や地域活性化を図ることを

目的として木質ペレット利用促進事業に取り組んできました。

特に、高齢化や林業の衰退等により森に手入れが入らなくなったことで、森林の

荒廃が進むなか、豊富な森林資源を木質ペレットの原料として活用することにより、

新産業の創出や森林整備の促進、里山の再生を目指し、第3セクター運営による庄

原森のペレット工場(平成21年度)を整備しました。

将来的には、1,000tの木質ペレット製造を目標として、着実な事業の推進と安定

経営に取り組んでいく必要があります。

また、平成20年度からペレットストーブ、平成21年度からペレットボイラー(温水

器)、さらに、平成23年度から薪ストーブの購入に対し補助を行い、平成23年度まで

の実績で、市内の個人、法人の方が34台のペレットストーブを購入されています。

公共施設においても、小中学校や自治振興センターなどへ、ペレットストーブ85

台、ペレットボイラーを市庁舎など7施設(平成24年12月31日現在)へ導入し、木

質ペレットの需要拡大を図った結果、間伐材等の林地残材約370t(平成23年度)を収

集・有効利用することができ、山元への利益還元につながっています。

今後も引き続き、木質ペレットのさらなる普及についてPRを行い、需要を喚起

していく必要があります。

木質バイオマス利活用プラント整備事業については、現在、事業が中断となって

いますが、整備した施設の有効活用を図るため、引き続き事業継続に取り組む必要

があります。

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31

【平成23年度実績】

事業名 概 要

ペレット原料収集事業 委託料(木材収集)

木質ペレット利用促進事業 ペレットストーブ等購入補助、ばい煙検査

業務など

■ ペレット製造施設

工場全景 移動式チッパー

ペレット成形機 製造されたペレット

■ ペレットボイラー設置施設

庄原市役所 温泉施設

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32

第3章 今後の動向

1. 本市の森林資源の推移

現状、市内の人工林は31~55年生が7割以上を占めています。これらが10年後にな

ると、間伐中心の作業から、主伐期に移行することになります。

特にスギはその大半が、庄原市森林整備計画の定める伐期齢の下限を超えることと

なり、適切な更新を計画的に実施していくことが必要となります。

■庄原市の森林資源構成・10年後のイメージ

庄原市森林整備計画 ※庄原市森林整備計画において、市の人工林の多くを「水源涵養機能維持増進森林」に指定して

いるが、その場合の伐期齢の下限を、スギで45年生、ヒノキで50年生に定めている。

■庄原市の10年後に主伐期を迎えるスギ・ヒノキの面積

現在 10年後 10年後主伐期を迎えている森林

スギ 88% 97% 12,000 ha

ヒノキ 13% 39% 11,000 ha

庄原市森林整備計画

0

1000

2000

3000

4000

5000

6000

7000

8000

9000

10000

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

人工

天然

竹林

未立

木地

更新

困難

1~5 6~10 11~15 16~20 21~25 26~30 31~35 36~40 41~45 46~50 51~55 56~60 61~65 66~70 71~75 76~80 81~85 86~90 91~95 96~100 (空白)

スギ

その他広葉樹

ヒノキ

マツ

人工林の10年後の林齢別面積予測

(ha)

年生

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33

2. 林業・木材産業を取り巻く動向

(1) 為替相場の動向

近の外国為替相場、特に欧州の金融不安に伴う円対ユーロの下落に伴い、日本の

木材市況にも大きな影響を与えています。

このようなグローバルな情勢は、行政や林業業界の努力だけではコントロールしよ

うがありませんが、経済や林産物需給の動向も見極めながら、林業経営を行うことが

重要です。

・ ユーロが暴落して久しい状況である。

・ 円高ユーロ安が進むことで、日本国内へのヨーロッパからの輸入が増加する。そ

れにより、外国産材の競争力が高まる結果となる。

・ ベイマツも安い材が日本に入ってきている。日本の住宅マーケットが国産材にこ

だわらない状況である。

■円ドルレート、円ユーロレートの推移

財務総合政策研究所HP

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34

(2) 国内の木材需要の動向

わが国の製材品出荷量(国産材)の約8割を建築用材が占めており、住宅建築の需要動

向は木材供給に大きな影響を与えています。

住宅着工戸数については昭和48年の190万戸を 高として、近年は100万から110万戸

程度で推移していましたが、平成22年は約81万戸、平成23年は83万戸となっています。

木造率については、昭和40年代前半は75%を超えていましたが、その後、減少を続け

昭和61年に41%まで落ち込みました。近年は45%前後で推移している状況にありました

が、平成21年には着工数減少の中で木造住宅の減少幅が小さかったことから55%に上昇

し、平成22年は57%、平成23年は56%となるなど、近年、木造率は上昇傾向にあります。

住宅着工戸数は、震災の復興需要や消費税増税前の駆け込み需要である程度増加が見

込まれるものの、その後は再び低調で推移するとの予測もあり、将来に渡り木材需要の

大半を占める木造住宅着工の大幅な増加を見込むのは難しいと考えられます。

■用途別製材品出荷量・割合

農林水産省「平成23年木材統計」を基に作成

■新設住宅着工戸数と木造率等の推移

林野庁「平成24年版森林・林業白書」

単位:千㎥

9,434 2,632 7,434 1,616 2,687 3,131 436 1,224 80 260 100% 28% 79% 17% 28% 33% 5% 13% 1% 3%割 合 (%)

全  国・

都道府県

全 国

人工乾燥材 小計計 その他

板類

建築用材土木建設用  材

木箱仕組板・こん包 用 材ひき割類 ひき角類

家 具 ・建具用材

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35

0

5000

10000

15000

20000

25000

30000

S35 S40 S45 S50 S55 S60 H2 H7 H12 H17 H22

(工場数)

300kw以上

150.0~300.0KW

75.0~150.0KW

37.5~75.0KW

22.5~37.5KW

7.5~22.5KW未満

(3) 国内の木材加工に関する動向

① 製材の状況

平成23年の製材工場数は6,242工場、生産量が1.6千万㎥で、昭和43年の25,130工場を

ピークに毎年300~500工場ずつ減少してきています。この傾向は近年においても変わり

ません。

大壁工法の一般化、柱、梁、土台への集成材使用の拡大、欧州集成材との競合、製材

品価格の低迷など国内の製材業をめぐる環境は極めて厳しい事態に直面しています。

大型の外材専門工場が国産材利用を進めるなど、国産材工場の大型化が進む傾向にあ

り、今後、国産材製材工場は並材を大量に扱う大規模製材工場と地場密着型の小規模注

文挽き製材工場に分化していくものとみられています。

どちらの方向性にしても、製材工場は少数精鋭の工場が生き残る状況になっています。

■規模別の製材工場数の推移

Kw=製材用動力の出力数

林野庁「木材統計、木材需給報告書」を基に作成

※製材工場出力数と原木の年間消費量の関係の目安は、

75kw未満が2千㎥未満、75~300kwが2千~1万㎥、300kw以上が1万㎥以上

■規模別の工場当たりの年間木材消費量(kw→㎥/年換算)

規模 工場数 消費量 (千㎥)

1工場あたりの 消費量(㎥)

7.5~22.5kw未満 757 148 196

22.5~37.5kw未満 1,286 433 337

37.5~75.0kw未満 2,015 1,220 605

75.0~150.0kw未満 1,124 1,835 1,633

150.0~300.0kw未満 619 2,502 4,042

300kw以上 441 10,012 22,703

計 6,242 16,150 2,587

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36

290 293 296 290281 280 281

270258

268 263 259

234225

199187 182

0

50

100

150

200

250

300

350

H6 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

(

33

413

36

30

3

26

0

34

42

64

36

60

20

0

10

20

30

40

50

60

70

80

90

100

管柱 横架材 土台 床下地用合板

使用割合

輸入材(集成材等)

輸入材(製材(又は合板))

国産材(集成材等)

国産材(製材(又は合板))

(%)

② 集成材加工の状況

全国の集成材工場数は平成8年の296工場をピークに、国内の集成材企業の集約化

が進み、平成22年には182工場となっています。

近年、住宅メーカーの多くは、プレカット材の普及を背景に、無垢材よりも狂いが少

なくクレームにつながりにくい集成材を好む傾向があります。木造軸組工法における柱

材の集成材の割合は年々増加傾向にあり、6割以上に達しているとの報告もあります。

なお、無垢材においても人工乾燥技術の向上により、品質が安定してきたことか

ら、乾燥材の割合が伸びてきています。また、中国地方の集成材工場は県内や近隣

に集中しており、競争が激しくなっている状況です。

■集成材工場数の推移

(財)日本住宅・木材技術センター「木材需要と木材工業の現況(平成22年版)」を基に作成

■各部材別の集成材等の使用割合

(社)日本木造住宅産協会(2010)

木造軸組住宅における国産材利用の

実態調査報告書を基に作成

■中国地方の集成材工場数(平成22年12月末現在)

鳥取 島根 岡山 広島 山口 中国地方 全国

0 1 4 5 1 11 182

(財)日本住宅・木材技術センター「木材需要と木材工業の現況(平成22年版)」を基に作成

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37

③ プレカット加工の状況

在来軸組工法におけるプレカット材の使用割合(プレカット率)は87%に達してお

り、プレカット工場を通じた木材流通がほとんどのシェアを占めている状況です。

また、ここ数年、プレカット機器の更新期に入っており、それと合わせて巨大な新

鋭プレカット工場が出現し、競争がより激化していることから、新規に需要先を広

げていくことは困難な状況にあります。

■ 工場数とプレカット率の推移

589

874 881 888 867 877 858 869 871 871837 847 848 830

795 768

11%

37%41%

45%48%

52%55%

58%62%

76%79% 81%

84% 84%87%86%

0

100

200

300

400

500

600

700

800

900

1000

H3 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

(工場数)

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

100%

工場数 プレカット率(在来軸組工法)

(財)日本住宅・木材技術センター「木材需要と木材工業の現況(平成22年版)」を基に作成

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38

④ 合板の状況

これまで合板の主原料として外材(主にロシアカラマツ)が扱われてきましたが、

外材の調達難と構造用合板の需要拡大を背景に、スギが積極的に活用され始めるな

ど、国産材へのシフトが急激に進んでいます。

そして、国産材利用の増加を狙った設備投資が、国の支援も手伝って加速し、合

板生産能力を押し上げた反面、用途の限定化と生産能力の余力発生という状況も生

み出しています。

結果、合板供給の過剰感を生み出し、針葉樹合板の安値販売を助長する懸念も出

ています。今後、複合フローリングに代表される特殊合板生産の拡大等、木造住宅

の構造用面材に依存しない、新たな用途の開拓が求められています。

■ 普通合板の用途別製造量(全国、外材含む)

1,251 1,190 1,340

1,8272,133 2,239 2,380 2,300

2,0411,800

2,136

1,967

1,581 1,395

1,1971,016

973934

773

545

487

509

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

(千㎥)構造用合板 型枠・その他

(財)日本住宅・木材技術センター「木材需要と木材工業の現況(平成22年版)」を基に作成

■ 合板用素材入荷量の国産材・外材比率

60 98224 307

514

833

1,126

1,619

2,1031,972

2,476

78 8455 53

32

30

18

13

347

145263

4469 44454553

48433773

40393595

1849

1128

1321

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

(千㎥)国産材・針葉樹 国産材・広葉樹 外材

(財)日本住宅・木材技術センター「木材需要と木材工業の現況(平成22年版)」を基に作成

Page 43: 庄原市林業振興計画 - city.shobara.hiroshima.jp本市の総面積は124,660ha(広島県面積の15%)で、近畿以西では最大となる市域面積 を有しており、その約84%にあたる104,863haを森林が占め(県内森林の約17%)、戦後

39

⑤ 木材チップの状況

平成22年の木材チップ工場数は前年より85工場減少して、1,578工場となっていま

す。このうち、製材工場・合単板工場との兼営が1,226工場(84工場減)、木材チップ

専門工場が352工場(1工場減)となっています。

平成22年の木材チップ生産量は、5,406千トン(絶乾重量)となっています。原材料

となる原木素材の数量は前年と比較してあまり変わりませんが、量的には少ないも

のの、林地残材が前年比23%増の133千トンとなっています。

現在、製紙用原料のうち国内産チップが占める割合は7割程度ですが、近年、国

内の紙需要低下とともに、為替動向や中国、ブラジル等におけるパルプ生産能力の

拡大の影響を受け、国内産チップ、特に針葉樹チップの需要が減少傾向にあり、原

木の余剰感が出ています。

今後は、現在各地で検討されている木質バイオマス発電等、新たな需要を見つけ

出す必要性が急速に高まっていく可能性があります。

■ 木材チップ工場数の推移

(財)日本住宅・木材技術センター「木材需要と木材工業の現況(平成22年版)」を基に作成

■ 木材チップの供給量

(財)日本住宅・木材技術センター「木材需要と木材工業の現況(平成22年版)」を基に作成

22962094 1958

1833 1742 1669 1603 1491 1375 1310 1226

361

344369

368364

371 368366

369 353352

0

500

1000

1500

2000

2500

3000

H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22

(

専門工場

兼業工場

601 590 589 580 513 541

1,411 1,378 1,434

1,0481,212

1,472

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

H17 H18 H19 H20 H21 H22

輸入量

国内チップ生産

(万トン)

(年)

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40

⑥ 木質バイオマスの状況

平成24年10月末現在で、全国で未利用木質バイオマス発電施設として認定されて

いるものは、福島県のグリーン発電会津(認定出力:5,700kw)と岩国市のミツウロコ

岩国発電所(認定出力:10,000kw)です。

現在、全国各地にて施設設置の検討がなされているところですが、事業の導入検

討に際しては、送電線網との位置関係や水の確保など、その導入には多くのハード

ルをクリアする必要があります。

■再生可能エネルギーの固定価格買取制度(Feed-in Tariff、FIT) (各種資料より作成)

平成24年7月より開始された固定価格買取制度は、再生可能エネルギー源(太

陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)を用いて発電された電気を、電気事

業者が国が定める固定価格で一定期間買い取る、という制度である。

木質バイオマス発電分については、間伐材等の未利用木質バイオマス分で32

円/kwh(税抜き)で買い取られることとなっている。

■未利用間伐材を利用した木質バイオマス発電施設設置の条件 (各種資料より作成)

○発電所は採算性を考え、森林資源が豊富な中山間地域に建設し、地産地消型の中小

規模発電(5000キロワット級)を基本としている

<発電所立地の条件>

近くに送電線が通っている

日量1000トン程度の工業用水が確保できる

原料の林地残材を半径100キロメートル以内から年間約6万トン確保できる

■木質バイオマス発電に必要な木材量の概算(5000kw級)

発電効率

15%(3,000kw級) 26%(5,000kw級)

木材の

含水率

35% 9万t程度 5万t程度

40% 10万t程度 6万t程度

資源エネルギー庁資料より作成

注1:年間稼働日数350日とした場合の推計値

注2:含水率35%、40%については、木質チップで一般的に考えられる水準

注3:発電効率15%については出力3000kW級の設備で、発電効率26%については出力5,000kW級の設備

で一般的と考えられる水準

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(4) 政策に関する動向

平成24年7月からの、再生可能エネルギーの固定価格買取制度の開始により、低

質材や端材の需要は増加する可能性があります。ただ、住宅用の柱や梁桁等、製材

品の消費が増えなければ、根本的な国産材の需要拡大になりません。

また、これまで年間55万haの間伐を実行してきた京都議定書に基づく森林吸収目

標達成のための森林整備事業は平成24年度で終わります。経年で見れば林野庁の当

初予算は右肩下がりが続き、補正予算でつないできた状況です。

平成25年度予算の特徴は、日本経済の再生に向けた平成24年度補正予算と一体的

なものとして、「15ヶ月予算」として編成されています。

林野庁予算概算決定では、地域の所得・雇用創出や森林・林業再生基盤づくり、

森林・山村の多面的機能発揮対策等を新設した予算拡充で、対前年度比111%となっ

ています。

そのため、本市においては活用可能な支援策は積極的に利用しつつ、政策の動向

を注視し、補助金獲得を主眼とした事業実施を避け、市としての方向性を持ち、取

り組みを進める必要があります。

■平成25年度林野庁概算要求の概要

林野庁ホームページより

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第4章 課題の整理

前章までの現状と課題を踏まえ、本市の森林・林業の強み・弱みと、林業・木材産業

を取り巻く環境を整理・分析することにより、本市の林業・木材産業の課題を整理しま

す。

1. 強み・弱み、取り巻く好機・脅威

○県内でも有数の豊富で良質な森林資源がある。⇒シカ害やスギノアカネトラカミキリの害が少ない。

○各森林組合それぞれに行動力がある。○市内に有力な素材生産業者がいる。○公共施設へのペレットボイラー導入が積極的

に進められており、今後ペレットの安定的な需要が見込まれる。

○公共建築物等への市産材の活用が進められており、ノウハウの蓄積が進んでいる。

○市民の森林に対する関心が比較的高い。

強み 好機

内部環境

●森林資源を活かす基盤が整備されていない。⇒境界確定が遅れている。⇒団地化が進んでいない。⇒路網密度が低い。

●成熟期を迎 える森林資源の活用の目処が立っていない。

●生産された木材のほとんどは市外へ持ち出され、市内で活かしきれていない。

●大型の製材工場が市内になく、公共建築物で市内産材を活用する際、県外の集成材工場等での加工が必要である。

●林業振興について各主体が個別に取り組んでおり、一体となった取り組みになっていない。

●森林所有者の高齢化と林業に対する意欲低下が進んでいる。

●国産材の製材品・原木は国際的な市場や為替動向に左右される。

●国産材の主要用途である住宅部材の将来的な需給の見通しが不透明である。

●国の予算は右肩下がりの状況であり、補助金頼みの事業には将来的な不安がある。

弱み 脅威

好影響

外部環境

悪影響

○国として木材自給率50%以上を目指している。○県として高い目標を掲げて林業振興に取り組

んでいる。○庄原市は、林業を基幹産業の一つとしてとら

えている。○県内及び近隣に大型製材工場等があり、木材

の安定的な引き取り手がいる。

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2. 林業・木材産業における課題のまとめ

1 次世代につながる森林とするための、森林の適正な管理・資源循環

・主伐の際、的確な更新がなされる仕組みづくりが求められている。

・持続可能な資源活用や林業経営のほか、水源涵養や土砂災害防止のためにも、適

切な森林の管理が行われるよう環境を整備する必要がある。

・環境に配慮した伐採や更新のルール作りが課題となっている。

2 豊富な森林資源が活用できる基盤づくり。

・森林の境界の明確化が遅れている。

・効率的に作業ができる集約化・団地化が進んでいない。

・作業効率を高めるための林業機械導入や路網などの整備が課題となっている。

・山林売買希望も含め、森林情報を整理する必要がある。

・市有林や分収林の適切な管理を行う必要がある。

3 円滑な流通や市産材の活用など、資源を活かす仕組みづくり。

・数量をまとめたり、価格競争力を持った販売ができる体制(流通拠点)の構築が課題

となっている。

・伐採可能な立木の形質、搬出条件などの情報や、需要の動向及び市況の情報を的

確に把握し、求められる時期に求める者に原木が提供できる仕組みを整える必要

がある。

・木質ペレット等、木質バイオマスの利活用が求められている。

・市産材の利用拡大やブランド化、木材の有効活用を図る製材施設・乾燥施設の整

備について検討する必要がある。

・公共建築物等の木造化・木質化を進める必要がある。

4 地域に密着した林業活動の支援など、身近な里山を生かす仕組みづくり。

・里山整備に向けた活動へ地域や市民の参加を促す必要がある。

・情報提供や技術研修会など、自伐林家向けの支援が少ない。

・特用林産物(シイタケ)への継続支援が必要である。

5 森林資源の管理と活用を行うための体制づくりや連携強化。

・行政や森林組合及び民間事業体の連携の強化を図り、林業の現状と課題を協議す

るとともに、具体的施策への展開を検討する場が求められている。

・人材育成の支援や、林業分野への新規就労者の雇用促進が課題となっている。

・市民への啓発や情報提供に努める必要がある。

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第5章 基本理念

森林が有する多面的機能の維持を図りつつ、本市の森林資源の有効活用を図り、所有

者、生産者及び消費者に利益が還元できる林業振興に向け、現状と課題、強み・弱み、

市民・関係者の意見、方向性などを踏まえ、本市の林業・木材産業振興における基本理

念を次のとおり設定します。

基本理念

次世代につながる、『使える』森林も り

づくり

近年、林業・木材産業を取り巻く環境は、為替相場の影響等による国産原木価格の低迷や、

住宅着工件数の減少が予測されるなど、厳しい状況が続いています。

こうした中にあっても、森林資源は、木質バイオマス発電の燃料をはじめ、新たな需要を

生む無限の可能性を秘めていることから、時代の要請に応じて、安定的かつ確実にこれら

の資源を供給できる「山づくり」や「生産体制の構築」が求められています。

本市には、豊富な森林資源がある一方で、効果的・効率的に木質資源を供給する体制やシ

ステムが確立されていないことも事実であり、この計画において、現状と課題、課題要因

を明らかにするとともに施策の方針を示し、市、森林組合、関係団体、林家及び森林所有

者などの林業関係者が、理念を共有しながら取り組みを進めていかなければなりません。

理念として掲げた「次世代につながる、『使える』森林も り

づくり」には、子や孫をはじめ、

未来に生きる次の世代に「ふるさと庄原」の美しい自然・森林景観を継承するとともに、

林業が地域活力や域内経済循環の基底となる産業として成立することへの願いや期待、市

民の思いを込めています。

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■林業・木材産業の将来イメージ(循環型の森林利用イメージ)

間伐の実施に合せて、将来の主伐に活用できる作業道等を整備

確実な更新の実施

中間土場等による、原木流通コスト軽減

地域の薪炭林・の利用、更新

○森林資源の地域での活用・庄原市産材を活用した公共建築物等の整備・一般木造住宅の推進・木質ペレット等バイオマスとしての活用 等

ガイドラインに沿った、適切な皆伐の実施

大規模製材工場、バイオマス発電施設等

への原木の直送

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46

第6章 基本方針と施策

基本理念を踏まえた目的の実現に向け、次のとおり基本方針及び施策を設定します。

■基本方針と施策

次世代につながる

次世代につながる

『『使使えるえる』』森林森林づくり

づくり 地域や市民の参加による里山づくり

重点 地域林業への支援(1)小規模林家(自伐林家等)への支援(2)特用林産物(シイタケ)への支援

基本方針4

里山を活かす

仕組みづくり

森林資源の利活用に向けた素材生産の基盤づくり

重点 路網整備と境界の明確化(1)施業地の集約化・団地化(2)機械化への支援(3)森林情報の集積管理(4)市の所有林、分収林の管理

基本方針2

森林の基盤づくりも り

災害に強い森林、水や空気を育む森林づくり

重点 再造林による森林資源の循環活用(1)適切な森林の管理と整備(2)皆伐作業ガイドラインの作成(3)森林整備計画の見直し

基本方針1

次世代につながる

森林づくりも り

関係機関・事業体による体制・連携づくり

重点 行政と事業体等との連携促進(1)人材育成と新規就労者の雇用促進(2)市民への情報提供

基本方針5

森林の資源を活かす

体制・連携づくり

川上・山元に利益が還元できる仕組みづくり

重点 原木の広域流通の促進(1)木質バイオマスの利活用(2)市産材の利用促進(3)木造化・木質化の推進(4)製材施設等の整備の検討

基本方針3

森林の資源を活かす

仕組みづくり

も り

も り

も り も り

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基本方針1:次世代につながる森林も り

づくり

~災害に強い森林も り

、水や空気を育む森林も り

づくり~

本市は、平成22年7月に発生したゲリラ豪雨による山地崩壊を経験し、森林の機能

について改めて教訓を得ました。

アンケートの結果からも、温暖化や土砂災害の防止、保水・貯水など、森林や木々、

自然が有する機能について、市民の期待や関心が高まりを見せています。

市内には自然公園に指定されるなど、四季折々に彩りを変える豊かな森林・自然環

境がある一方で、手入れ不足の人工林や薪炭林があることも否定できず、荒廃が進ん

だ森林は、病害虫の発生や雪害・風水害等の原因のひとつともなっています。

また、市内の各地では、木材を生産するための皆伐を始めとする伐採が行われてい

ますが、伐採や掘削された森林の機能を回復させるためには長期間を必要とします。

こうした課題を林業関係者が共有し、伐採後の更新(植栽、天然更新等)を確実に行

い、森林の循環利用につなげていく必要があります。

森林の適切管理に向け、秩序ある森林施業、地域内外における木材利用の促進施策

等の総合的な実施に取り組みます。

■森林に対して期待する役割 (複数回答)

森林に求める役割として、「水源を

蓄える」、「山崩れや洪水などの災害

を防止する」を求める声が高い。

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重点施策 再造林による森林資源の循環活用

人工林資源が成熟期へ向かう一方で、人工林伐採跡地に再造林がされない「再造林

放棄地」が増加しています。また、再造林が難しいことを理由に皆伐を控える林家も

多く、原木の安定供給への懸念材料となっています。

こうした状況は、持続可能な資源活用や林業経営のみならず、生物・水土の保全機

能や災害発生の面でも不安要因となっており、伐採跡地の再造林を促進する「再造林

による森林資源の循環活用」を重点施策のひとつに設定します。

再造林ガイドラインの作成

皆伐後の再造林及び適切な更新を図るため、再造林ガイドラインを作成し、再造

林の必要性及び支援制度、造林を放置した場合の危険性等について、森林所有者、

素材生産業者等の啓発に取り組みます。

独自の再造林支援

皆伐後の再造林が進まず、造林放棄地の増加が懸念される状況を踏まえ、国・県

の再造林補助金に市の独自補助金の上乗せを検討し、再造林の促進に取り組みます。

現 状

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30

ヒノキ

スギ

50 年後の資源イメージ

○伐採対象森林

は十分

○植林業務拡大

○育林業務拡大

林齢構成が平準

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

4,500

5,000

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20

ヒノキ

スギ

ス ギ:3,000ha

ヒノキ:1,800ha

20年後の伐採

対象森林

面 積

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低コスト再造林の研究

マルチキャビティコンテナ苗や大苗を用いた低密度植栽や、伐採から地ごしらえ

までの一体的な作業(機械での地ごしらえ)など、低コストの再造林の先進事例や伐

採事業者と植林事業者の連携について調査研究を行います。

■庄原市内の皆伐の様子、未植栽地

参 考

■再造林を促進する取り組み事例

事例 内容

東城町森林再生協議会

(庄原市)

市内の東城町森林組合、㈱山崎木材、㈱宮田木材、松永林業

の4者は、平成24年4月に「東城町森林再生協議会」を設立し、

独自の再造林支援事業を実施しています、

スギ、ヒノキの人工林で伐採(皆伐)を行った場合、山主(森林

所有者)に再造林費として1ha当たり10万円を上限に助成する

内容です。

高知県大豊町 皆伐跡地の再造林経費を補助する町独自の事業で、国、県の

補助に上乗せして補助率を 大100%にする内容です。

高知県 植栽費用に加えて、シカネット張りも含めて、上限95%を補

助しています。

皆伐作業の様子 皆伐跡地

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50

18

3

5

6

7

8

10

10

13

28

55

0 10 20 30 40 50 60

無回答・その他

超長伐期(80年生以上)で皆伐して、植栽はしない

超長伐期(80年生以上)で皆伐して、植栽する

将来的に土地ごと売却したい

標準伐期(50~60年生)で皆伐して、植栽はしない

長伐期(60~80年生)で皆伐して、植栽はしない

標準伐期(50~60年生)で皆伐して、植栽する

将来的には広葉樹を育てたい

長伐期(60~80年生)で皆伐して、植栽する

現状維持で木を大きくしていきたい(皆伐は考えていない)

間伐等をしながら、木を大きくしていきたい(皆伐は考えていない)

(1) 適切な森林の管理と整備

本市の森林は、人工林、天然林ともに46~55年生の割合が高くなっていますが、

高齢級の森林は成長量が落ち、二酸化炭素の吸収量も下がる側面があります。

また、水源涵養や土砂災害防止等の公益的機能の面からも、秩序ある森林施業に

努め、若齢林から高齢林まで、適切な齢級構成が維持できる施策に取り組みます。

加えて、今後、標準伐期に達する人工林区域の拡大が見込まれることから、間伐

適齢林区域の団地化促進に併せ、「主伐・植林・育林・間伐」の作業循環を想定した

作業道の整備を進めます。

天然林についても、燃料利用やきのこの栽培等の利用促進及び適切な伐採、更新

を図ります。

■循環型の森林施業イメージ

■皆伐施業に対する意識(n=160)

森林所有者の多くは間伐を望んでいる。資源の循環利用の必要性を理解してもらう取り組みも必要。

主 伐

循環型の森林施業 植 林

育 林

搬出間伐

公益的機能の維持

公益的機能の発揮

公益的機能の発揮 公益的機能の発揮

若齢から高齢級まで、バランスの取れた資源の配

置を目指す

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51

参 考

■森林法における再造林義務規定(抜粋)

第10条の9

4 市町村の長は、前条第一項の規定に違反して届出書の提出をしないで立木を伐採した

者が引き続き伐採をしたならば次の各号のいずれかに該当すると認められる場合又は

その者が伐採後の造林をしておらず、かつ、引き続き伐採後の造林をしないとしたなら

ば次の各号のいずれかに該当すると認められる場合において、伐採の中止をすること又

は伐採後の造林をすることが当該各号に規定する事態の発生を防止するために必要か

つ適当であると認めるときは、その者に対し、伐採の中止を命じ、又は当該伐採跡地に

つき、期間、方法及び樹種を定めて伐採後の造林をすべき旨を命ずることができる。

(1) 当該伐採跡地の周辺の地域における土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生さ

せるおそれがあること。

(2) 伐採前の森林が有していた水害の防止の機能に依存する地域における水害を発

生させるおそれがあること。

(3) 伐採前の森林が有していた水源の涵養の機能に依存する地域における水の確保

に著しい支障を及ぼすおそれがあること。

(4) 当該伐採跡地の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがあること。

(2) 皆伐作業ガイドラインの作成

皆伐作業において山肌の崩落や崩壊が発生した事例等を踏まえ、皆伐作業のガイ

ドラインを作成します。

■森林施業に関するルール・ガイドラインの必要性について(n=160 複数回答)

森林所有者の多くは何かしらの伐採に関するルールやガイドラインの必要性を感じている。

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52

■庄原市森林整備計画における皆伐施業の位置づけ

Ⅱ 森林整備の方法に関する事項

第1 森林の立木竹の伐採に関する事項

(1) 人工林

ア 皆伐)

皆伐については、主伐のうち択伐以外のものとする。皆伐を実施するにあたっては、気

候・地形・土壌等の自然的条件及び森林の有する多面的機能の確保の必要性を踏まえ、適

切な伐採区域の形状、1箇所あたりの伐採面積の規模及び伐採区域のモザイク的配置に配

慮し、適確な更新を図る。

1箇所あたりの伐採面積は20haを超えないこととし、必要に応じ保残帯を設けるものと

する。また、林地の保全、雪崩、落石等の防止、風害等の各種被害の防止、風致の維持等

を図るため、渓流周辺や尾根筋等に必要に応じ保護樹帯を設置するものとする。

人工林の主伐は樹種ごとの生産目標に対応する径級に達した時期に行うものとするが、

主伐の時期は第3表を目安として定める。

庄原市森林整備計画

参 考

■伐採に関するガイドラインの事例

【ひむか維森の会】

平成 19 年3月にNPO法人化された特定非営利活動法人「ひむか維森の会」は、宮崎県

の素材生産業者 23 社で構成されており、県産材の普及促進等に取り組む中で環境保全に寄

与していくこととしている。

県内では、素材生産に伴う造林未済地の発生など不適切な施業も一部にみられる中、同

会では、原木増産と環境を両立するための積極的な対応として、環境に配慮した施業に関

する基準となる「伐採搬出ガイドライン」の作成作業を進めている。

また、「ひむかの旗」を現場に掲げるなど、環境に配慮した取り組みを行っていることを

積極的に普及している。

(3) 森林整備計画の見直し

庄原市森林整備計画で定めている公益的機能別施業森林の区域(ゾーニング)につい

て、より地域実情を反映するため、各地域の意見を踏まえ、随時、必要な見直しを行い

ます。

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53

64

29

38

38

85

114

135

143

154

262

275

0 50 100 150 200 250 300

無回答・その他

雑木や草地でなければ何でもよい

分からない

生物多様性の高い森林

特に思いはない

水を作る森林

災害に強く土砂崩れしない森林

売上は低くても手のかからないスギ・ヒノキ林

コナラ・クヌギ等の有用広葉樹林

売上が高くなるスギ・ヒノキ林

道が付いて寄り付きやすい森林

基本方針2:森林も り

の基盤づくり

~森林資源の利活用に向けた素材生産の基盤き ば ん

づくり~

適切な齢級構成を維持し、次世代につながる森林も り

づくりを実現するためには、主伐

(更新伐)・植林(再造林)・育林(保育)・間伐という作業循環を確実に実施することが

重要です。

さらに、適切な森林施業を確実に実施することで、将来にわたり良質な原木を生産

し、庄原市産材の評価を高めます。

そのための基盤づくりとして、「路網整備や境界の明確化、森林の団地化・集約化、

機械化」などに取り組みます。

■木材産業の土台から事業への構築の流れ

■所有山林に対して抱く理想イメージ(n=160 複数回答)

※理想イメージの順位 第1位~3位について1位を3点、2位を2点、3位を1点として重み付けを行った。

間伐遅れの市内の人工林

所有森林の境界明確化

森林の団地化・集約化

路網整備・機械化

原木生産量の増加

市内での木材利用拡大

木材の地産地消の推進

木材産業の土台から事業への構築の流れ

森林利活用のための基盤整備

基盤を活用した生産活動

安定かつ計画的な生産計画に基づいた事業の発展

森林所有者の多くが望む「道

が付いて寄り付きやすい森

林」、「売上が高くなるスギ・

ヒノキ林」をめざすために

も、効率的な生産体制の構築

は必要である。

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54

35

1

1

10

10

22

59

70

0 10 20 30 40 50 60 70 80

無回答・その他

道が付くと森林面積が減るのでいやだ

どのような条件であってもいやだ

道が付くと森林が壊れやすくなるのでいやだ

他人の森林管理のために自分の森林を通行されるのはいやだ

狭い道(キャタピラ式の機械が通れる程度)なら問題ない

大型トラックが通れる道が付くと便利になるのでよい

軽トラック車が通れる道が付くと便利になるのでよい

■所有山林に路網が開設されることについてどう考えるか(n=160 複数回答)

重点施策 路網整備と境界の明確化

路網は、主伐・植林・育林・間伐などの施業を効率的に行うためのネットワークで

あり、また、山林の境界や所有者を明確にすることは、団地の形成や適正な施業実施

の基本的事項であることから、森林の土地の境界に詳しい人が存在するうちに境界を

明確化することが重要であり、「路網整備と境界の明確化」を重点施策のひとつに設定

します。

① 路網の整備

路網整備は、森林所有者からの要望も高く、積極的な支援が求められますが、ト

ラックが通行できる林道や林業専用道、幅員の狭い機械専用道などの種類があり、

作業システム、地質や地形、使用目的や頻度、所有者の要望等を踏まえた必要・適

切な路網となるよう、市と森林組合等の情報共有や協議・調整に基づき実施します。

■平成34年度末の目標値 開設総延長 320Km

(現状:年平均 約26,000mの路網を整備)

所有森林に路網が開設され

ることについては、好意的な

意見が多い。ただし、路網の

タイプについては希望が分

かれる。

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無回答・その他 1%

境界が大体分かっている 38%

境界が明確に分かっている 37%

場所は分かるが、境界は分からない 21%

場所も分からない 3%

② 境界明確化への支援

境界の把握に関するアンケート結果では、「大体分かっている・38%」「明確に分

かっている・37%」となっていますが、「大体分かっている」は境界の確定には含ま

れないため、おおむね3分の2の森林について境界が未確定という状況にあります。

境界確認への支援要望のみならず、路網整備を進めるうえでも境界の明確化は必

要な事項であることから、その支援強化に取り組みます。

■平成34年度末の目標値 総面積 4,200ha

(現状:年平均 約345haの境界を明確化)

■所有山林の境界の把握状況(n=160)

再掲

■森林利活用や森林管理に有効な施策(n=271 複数回答)

●現地関係者と調整の上、境界のおおよその位置を確認

●簡易な測量手法により、境界に座標値を与える(GPSを活用)

●森林組合等が管理する森林の図面に、座標値により境界の位置を示し、森林境界

の現況図を作成

山林境界の確認へのニーズは高い。

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(1) 施業地の集約化・団地化(森林経営計画の策定)

施業地の集約化・団地化は、効率的な作業の基盤となる取り組みであり、森林経

営計画の策定を含めて、積極的に支援します。

(2) 機械化への支援

高性能林業機械の導入は、作業の低コスト化の面で必要な事業であり、その支援

に取り組みます。

(3) 森林情報の集積管理

団地化の促進や森林管理・資源活用を図るため、森林組合と連携して、山林売買

希望等の情報を含め関係情報の一元的な収集、集積及び管理の仕組みを検討します。

(4) 市の所有林、分収林の管理

市有林は、次世代につながる循環利用のモデル森林となるよう適正な管理に努め

ます。

また、分収林については、原則、主伐後の再契約は行わないこととし、現地の状

況及び土地所有者との協議に応じて、契約期間の延長又は契約期間内での主伐を判

断します。

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基本方針3:森林も り

の資源を活かす仕組みづくり

~川上・山元(森林所有者)に利益り え き

が還元できる仕組みづくり~

本市で産出された木材の多くは、県西部や岡山県に所在する大規模製材工場で利用

され、それらの工場で生産された製品の大部分は、大阪や東京等の大都市圏で消費さ

れているのが現状です。

こうした状況も踏まえ、市内での消費(地産地消)のみならず、本市の原木がより多

く、価格競争力を有して流通する仕組みを構築し、森林所有者への利益還元に取り組

む必要があります。

また、市内で地元産材を利用することは、その消費量にかかわらず、市民がふるさ

との森林や地元木材に関心・親しみを持つことにつながり、林業振興を進めるうえで

大きな意義があると捉えています。

市では、地元産材の活用・消費に向け、直接的な行政施策として、ペレット製造工

場の整備と運営、公共施設へのペレットストーブの導入、公共建築物等の木造化・木

質化などに積極的に取り組んできました。

森林資源には無限の可能性があり、今後は、民間主導・行政支援による製材工場や

乾燥施設の整備、木質バイオマスを用いた熱供給事業や木粉を原材料とする製品の開

発など、新たな事業・産業興しの具体化が求められています。

■庄原市周辺の主要な木材関連工場

100km50km

院庄林業

銘建工業

宮迫木材

大林林産

オロチ

日新

松江エヌエル

中国木材郷原工場

県森連三次木材共販所

広島林産中市市場

県森連新見木材共販所

真庭木材市場

山下木材

中本造林

中国木材大朝工場

津山綜合木材市場

湖北ベニヤ

徳永製材所

MCMエネルギーサービス

ミツウロコ岩国バイオマス発電所

中国木材(予定)

中国木材呉工場

中国電力三隅発電所

庄原市島根合板

県森連江の川木材共販所

県森連津山木材共販所

県森連勝山木材共販所

福山中央木材市場

製材工場

木材市場

合板工場等

バイオマス発電所

田村木材工業

米子木材市場生山支店

県森連三原久井木材共販所

※庄原市からおおよそ 100km圏の主だった市場、国産材工場等を示している。

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重点施策 原木の広域流通の促進

現在、市内の4森林組合で約1.5万㎥の木材(スギ・ヒノキ)を生産していますが、広

島県農林水産業2020チャレンジプラン庄原市地域プロジェクトの目標値(平成27年4.6

万㎥)に向け、原木生産の増加に取り組んでいます。

生産量の増加は、価格交渉力のある販売への展開が見込まれるとともに、岡山県、

鳥取県及び島根県との県境に位置するという地理的特徴を活かした製材工場等への直

送販売、さらには所有者への利益還元に結びつくことから、地産他消を意図した「原

木の広域流通の促進」を重点施策のひとつに設定します。

① 原木の一体管理

市内の多様な原木を効率的に流通させるため、原木の集積、仕分け、検寸などを

一体的に管理・実施し、市場ニーズに適した原木の供給と、流通によるコスト軽減

を図るため、原木の集積場(中間土場)の設置など、流通への支援策も検討します。

② 原木情報の一元管理

原木の流通を円滑に進めるため、市内森林の形質別立木情報、立木売買情報、原

木需要情報等の一元管理について検討し、求められる時期に必要な量と形質の原木

が供給できる体制づくりに取り組む必要があります。このための仕組みづくりにつ

いて協議を進めます。

■ 原木を必要とされるマーケットに広域に販売するイメージ図

森林 : 立木在庫(多様な形質の立木)

A森林組合 B森林組合 C森林組合 D森林組合

E民間業者

F民間業者

中間土場

原木流通業者(市場、商社)

製材工場 合板工場 製材工場 木工所 バイオマス発電

広域流通拠点【立木在庫情報、立木売買情報、原木需要情報把握】

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■ 原木収集拠点となる中間土場のイメージ

出典:住友林業フォレストサービス(株)

(1) 木質バイオマスの利活用

木質バイオマスの利活用に関し、マテリアル(素材)利用や、サーマル(熱的)利用

について幅広く情報収集し、適当な事業内容や事業規模を検討します。

現在、市の公共施設では、ペレットボイラーやペレットストーブの設置を推進し

ていますが、未設置施設や新設施設への導入及びペレットの消費拡大に努め、ペレ

ット工場の稼働率向上、ペレットの安定供給及びコストの低減等に取り組みます。

また、平成24年7月に開始された「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」に

より、未利用間伐材の利用拡大に注目が集まっており、本市及び周辺地域における

発電施設等の検討状況の把握など情報収集に努めます。

(2) 市産材の利用促進

地域木材による住宅建築の奨励や、森林組合の製材品の販売促進など、地元産材

の利用拡大に向け、検討・協議の場を設けます。

(3) 木造化・木質化の推進

庄原市公共建築物等木材利用促進方針(平成24年)に基づき、公共建築物等におけ

る木造化・木質化の推進に取り組みます。

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■庄原市産材を活用した公共施設

(庄原中学校) (庄原保育所)

(高野保育所) (道の駅たかの)

(4) 製材施設等の整備の検討

木材の有効活用や木材関連事業の集積による採算性の向上を図るうえで、製材施

設の整備は有効な施策です。

設備投資にかかるコストや需要の確保など解決すべき課題も多いため、製材施設

や乾燥施設等の整備については、地域やマーケットの事情を踏まえ、事業体や関係

者との協議の中で総合的に検討します。

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基本方針4:里山を活かす仕組みづくり

~地域や市民の参加による里山さとやま

づくり~

本市には4,000戸以上の林家が存在しますが、近年は木材価格の下落等も影響し、林

業活動への意欲低下が顕著となっています。また、高齢化などにより山に入りたくて

も入れない状況となりつつあり、手入れが行き届かない山林の区域拡大が問題となっ

ています。ただ、一部には、意欲のある森林所有者やNPO、関係者があることも事

実であり、多様な地域活動を市が支援することで、これら諸活動の拡大・活性化が期

待されます。

具体的支援として、森林・林業に関する情報提供や技術研修の開催、間伐材等の搬

出支援、松やナラ枯れ対策、作業道の整備や侵入竹林の整備などが想定されます。

また、市内の全域で取り組まれているシイタケ栽培は、栽培用のクヌギを確保する

ために原木林整備が行われており、こうした実情も考慮し、シイタケ栽培への支援を

継続します。

重点施策 地域林業への支援

現在、活動が縮小しつつある自伐林家や地域での林業活動を支援し、山に入る機会

の提供と森林・林業への興味・関心を促すことで、市民参加による里山づくり、森林

整備の加速化を図るため「地域林業への支援」を重点施策のひとつに設定します。

① 森林整備活動への支援

広葉樹林等が森林の半数以上を占める本市にとって、山菜やきのこ狩りなどは、

昔から市民生活に密接した営みです。これらの活動が今後も行えるように、松枯れ

やナラ枯れ対策、作業道の整理、侵入竹林対策など、多様な森林整備に関する地域

活動への支援に取り組みます。

② 木の駅プロジェクトの検討

木の駅プロジェクトは、住民が間伐材や林地残材を集荷場所である「木の駅」に

運び込み、地域通貨等を得るシステムで、集められた木材はチップ工場などが買取

り、地域通貨は地域内の経済循環を生む効果が見込まれます。

先例もありますが、組織の設置や運営など、実施に向けては課題も多いことから、

情報収集及び調査・研究に努め、本市に適した木材搬出支援策の検討を行います。

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住民業者

実行組織 チップ業者住民

業者

住民

業者

行政

地域商店

地域

商店

地域

商店

現金支払

地域通貨等で買い物

運営支援

販売先・運営経費等の確保

地域通貨

地域通貨を回収し、金額分の現金を支払う

地域通貨等を支払

地域通貨

地域通貨 地域通貨

■地域で取り組む木の駅プロジェクトのスキーム

(イメージ図)

参 考

■自伐林家等への支援につながる施策例

■協議会、インタビューから得られたコメント

所有者の多くは、山への興味がほとんどないという状況であり、山に入らず、

山が荒れるという流れがある。そのため、集落ごとに作業道の草刈り等の作業

をする機会をつくる必要があるのではないか。それが、所有者が山に興味を持

つきっかけになり、作業等を通じて、実際に山の現場に行くことに繫がって欲

しい。こうした活動は、「地域協働」という市全体の方針とも合致する。

【「木の駅プロジェクト」による副業型自伐林業】

岐阜県恵那市(えなし)の「笠周(りっしゅう)地域

木の駅実行委員会」では、平成21(2009)年から、地

元住民が軽トラック等で間伐材を搬出して、「モリ券

(地域通貨)」に換える「木の駅プロジェクト」を実

施しています。

同プロジェクトでは、地域に集荷場所となる「木

の駅」を設置し、これまで木材の出荷経験がない住

民でも、気軽に間伐材を搬出することが可能となっ

ています。

地元住民は間伐材を運び込むことで6,000円/トン相当の「モリ券」を得ることができ、

「木の駅」に集められた間伐材はチップ工場や市内の温泉施設などに運ばれて利用されて

いるほか、同プロジェクトにより、山への関心の向上や地域内の結びつきの強化に繫がっ

ています。

「木の駅プロジェクト」は、鳥取県智頭町(ちづちょう)、愛知県豊田市(とよたし)、岐

阜県大垣市(おおがきし)、高知県嶺北(れいほく)地方にも広がりをみせています。

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(1) 小規模林家(自伐林家等)への支援

現在、一般の森林所有者への主な情報提供は、市の広報や森林組合の会報が主な

ものとなっています。

また、森林組合や民間事業体との関係が薄い森林所有者や自伐林家にあっては、

森林管理の意識低下が見られ、加えて山での作業経験が乏しい世代に代替わりして

おり、こうした傾向は、今後、さらに加速することが見込まれます。

今後、森林所有者の意欲向上と自力での森林整備を促進するため、森林・林業、

市場に関する情報提供や、間伐材等の搬出支援などに取り組みます。

■今後の森林管理作業の実施者の想定(n=160)

無回答・その他

3%

森林組合に依頼する

49%

民間事業者にお願いす

6%

自分(家族等)で作業し

ていく

15%

現時点ではわからない

27%

(2) 特用林産物(シイタケ)への支援

しいたけ生産協議会が実施する品評会やコンクールをはじめ、原木しいたけの生

産基盤の整備などを対象に、その支援に取り組みます。

森林所有者の 15%は自分(家族等)で作業していく意思がある。

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■最近、森林を訪れた際の活動内容(n=266 複数回答)

30

6

11

12

12

14

23

67

79

87

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100

無回答・その他

植樹祭・育樹祭

森林内でのレクリエーション

植物や野生動物などの自然観察会

森林浴等の保健休養

登山、ハイキング以外の観光

登山、ハイキングなど

特に目的はない、近所に森林があるから

山菜及びキノコ狩り

下草刈りや保育間伐等の森林作業やボランティア活動

■最近森林を訪れていないと回答した人で、今後、森林で行ってみたい活動(n=94 複数回答)

24

2

3

5

6

8

9

9

10

24

0 5 10 15 20 25 30

無回答・その他

森林内でのレクリエーション

植樹祭・育樹祭

登山、ハイキング以外の観光

その他(具体的に)

森林浴等の保健休養

登山、ハイキングなど

植物や野生動物などの自然観察会

下草刈りや保育間伐等の森林作業やボランティア活動

山菜及びキノコ狩り

森林に入る目的として、「山菜及びキノコ狩り」のニーズが高い。

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基本方針5:森林も り

の資源を活かす体制・連携づくり

~関係機関・事業体による体制・連携れんけい

づくり~

林業業界は、元来、同じ地域の事業者であっても、独自の情報収集や技術習得を行

いながら事業を営む傾向があり、こうした閉鎖的な部分があったことは否定できませ

ん。

しかし、業界全体が厳しく、一体的な林業振興に取り組む必要がある今、定期的な

協議の場の設定をはじめ、課題の共有化や情報交換などの連携が強く求められていま

す。

さらには、林業従事者の知識や技術の向上、新規就労者の確保策なども要請されて

おり、地域が一丸・一体となって森林資源を活かす体制づくりに取り組みます。

重点施策 行政と事業体等との連携促進

林業振興計画の理念を具現化し、様々な林業に関する施策を円滑に実行していくと

ともに、行政を含め林業関係者が横断的に協議、情報交換するなかで課題解決を図る

ため「行政と事業体等との連携促進」を重点施策のひとつに設定します。

① 行政と事業体による連携組織の設置

本市の林業施策を効果的に進めるため、市と林業事業体(森林組合及び素材生産業

者等)及び木材関連事業体による連携組織を設置し、情報の共有や研修会の実施をは

じめ、定期的な協議、情報交換を行います。

② 具体的施策の検討

情報交換や議論により、林業振興に係る現状と課題を整理するとともに、課題要

因の分析と解決(改善)策を検討しながら、具体的施策の企画・提案・実施への展開

を導きます。

③ イメージアップへの取り組み

森林認証制度等の研究をはじめ、森づくりや林業を通じて、市のイメージアップ

に取り組みます。

(1) 人材育成と新規就労者の雇用促進

森林組合・民間事業体などに属する関係者の人材育成を支援するとともに、林業

分野への新規就労者の雇用促進に取り組みます。

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① 人材育成・新規就労者確保への支援

林業労働者の平均年齢は、依然、高い状況が続いており、特に小規模事業主にあ

っては後継者が不足する中で廃業も懸念されています。

また、技術職を求人しても応募がない現状にあり、後継者・若手の育成が急務と

なっていることから、林業、木材産業に携わる人材の育成、新規就労者の確保を対

象とした支援策を検討します。

② 行政職員の育成

平成24年度に森林経営計画制度(新しい補助金のスキーム)がスタートし、これま

での施業計画に続き認定権限が市に委ねられています。また、伐採や伐採後の造林

の届出など民有林の指導業務についても、市の対応が求められる場面が多くなって

います。

このため、林業事業体との連携や林業振興について、適切に指導や支援ができる

職員の育成に努めます。

(2) 市民への情報提供

本計画の内容や伐採に関する届出の徹底、森林・林業の重要性など、林業施策や

活動・事業について、広報紙や小中学校が実施する環境教育活動をはじめ、多様な

機会を利用して積極的に情報提供します。

■下流域との連携と合わせた地域材の活用例

【下流域との連携と地域材の活用】

長野県根羽村(ねばむら)は、平成3(1991)年度に

下流域にある愛知県安城市(あんじょうし)と「矢作

川(やはぎがわ)水源の森協定」を締結し、連携して

森林整備を進めるとともに、矢作川流域住民との交

流や小中学生の森林環境教育、流域内企業との「森

林(もり)の里親契約」等に積極的に取り組んでいま

す。また、地域の森林組合が、森林整備、伐採から

製材加工、地域材を使用した産地直送型の住宅販売

まで取り組む「トータル林業システム」を構築し、

地域における収入の確保や若者の定住に貢献して

います。

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第7章 計画の推進に向けて

1 実施計画の策定

この計画の具体的実施を進めるため、事業名、予算額、事業年度等を記載した実

施計画を策定します。

2 計画実現に向けたロードマップ

適切な森林の管理と整備森林整備計画の見直し

基本方針1次世代につながる

森林づくり

基本方針2森林の基盤づくり

基本方針3森林の資源を

活かす仕組みづくり

地域林業への支援小規模林家への支援

特用林産物への支援基本方針4里山を活かす仕組みづくり

人材育成・新規就労者の雇用促進

基本方針5森林の資源を

活かす体制・連携づくり

H25 H29 H34

木の駅プロジェクトの検討

製材所等の設置の検討

振 興 計 画 の 進 捗 管 理

協議組織立上げ

森林情報の集積協議

伐採ガイドライン作成

再造林ガイドライン作成

森林情報の集積・管理

原木の広域流通の促進中間土場・流通コスト低減の検討

市産材の利用促進

森林整備推進協議会

行政・森林組合・民間事業体との連携

市民への情報提供

木質バイオマスの利活用 木造化・木質化の推進

再造林による森林資源の循環利用

路網整備 境界の明確化施業地の集約化・団地化

機械化への支援・森林情報の集積管理

市有林・市分収造林の管理方針策定

Page 72: 庄原市林業振興計画 - city.shobara.hiroshima.jp本市の総面積は124,660ha(広島県面積の15%)で、近畿以西では最大となる市域面積 を有しており、その約84%にあたる104,863haを森林が占め(県内森林の約17%)、戦後

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3 計画の進行管理

庄原市森林整備推進協議会において、計画の進捗状況や課題の把握を行いながら、

計画の着実な推進のため、PDCAサイクルに基づく進行管理システムにより、計

画の推進と継続的な改善を図ります。

また、社会情勢をはじめ、本市を取り巻く状況に急激な変化などが生じた場合に

は、必要に応じて計画の見直しを行います。

■ PDCA のイメージ

Action

Plan

Check

Do

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【資料1】策定の体制と経過

策定体制

本計画の策定にあたり、市民、森林所有者ならびに林業関係者へアンケート調査を

実施するとともに、4森林組合、民間事業者、林家、NPO法人等からなる「庄原市

森林整備推進協議会」にて検討を行い策定しました。

■ 庄原市森林整備推進協議会委員

№ 所 属 役 職 氏 名

1 庄原市 市長 滝 口 季 彦

2 備北森林組合 組合長 藤 原 澄 人

3 西城町森林組合 組合長 髙 橋 卓 三

4 東城町森林組合 組合長 表 良 則

5 甲奴郡森林組合 組合長 山 口 哲 司

6 庄原比婆木材協会 会長 笠 原 英 樹

7 森林所有者 (庄原地域) 安 廣 彰 人

8 森林所有者 (西城地域) 竹 内 隆 文

9 森林所有者 (東城地域) 梅 田 隆 侑

10 森林所有者 (口和地域) 小笠原 良 致

11 森林所有者 (高野地域) 繁 田 直 子

12 森林所有者 (比和地域) 松 木 俊 一

13 森林所有者 (総領地域) 妹 尾 實

14 庄原農業協同組合 組合長 片 島 一 平

15 庄原市原木しいたけ生産協議会 会長 谷 口 隆 明

16 指導林家 前 田 正 人

17 指導林家 天 野 忠 昭

18 NPO法人 森のバイオマス研究会 会長 八 谷 恭 介

広島県 農林水産局

林業課 林業技術指導担当

普及専門員 山 本 紀 文

事業推進員 大 口 和 寿

策定経過

平成24年7月18日 第1回森林整備推進協議会

平成24年8月~9月 市民、事業体等アンケート調査実施

平成24年11月29日 第2回森林整備推進協議会

平成25年2月19日 政策企画会議

平成25年3月14日 パブリックコメント実施(3月25日まで)

平成25年3月18日 第3回森林整備推進協議会

平成25年3月19日 政策企画会議