44
1 我が国の養殖業と成長産業化に向けた論点整理 (令和元年 10 28 日版) ~養殖業成長産業化総合戦略の策定に向けた議論~ (抜粋) 養殖業成長産業化推進協議会 201910281330資料2 目次 総合戦略の策定に向けた議論の進め方 P3 養殖水産物需要の現状・課題 P6 養殖業の現状・課題 P19 養殖を巡る新たな動き P34 (注)「我が国の養殖業と成長産業化に向けた論点整理」は統計、資料、有識者へのヒアリングをもとに令和元年10 28日現在にとりまとめた資料です。 水産庁 監修

我が国の養殖業と成長産業化に向けた論点整理 (令和元年10 … · 2020-04-01 · 1992 1998 2004 2010 2016 2018 世帯構造の変化 単独世帯 夫婦のみの

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我が国の養殖業と成長産業化に向けた論点整理(令和元年10月28日版)

~養殖業成長産業化総合戦略の策定に向けた議論~(抜粋)

養殖業成長産業化推進協議会2019年10月28日 13:30~

資料2

目次Ⅰ 総合戦略の策定に向けた議論の進め方 P3Ⅱ 養殖水産物需要の現状・課題 P6Ⅲ 養殖業の現状・課題 P19Ⅳ 養殖を巡る新たな動き P34(注)「我が国の養殖業と成長産業化に向けた論点整理」は統計、資料、有識者へのヒアリングをもとに令和元年10月28日現在にとりまとめた資料です。

水産庁 監修

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資料の構成2

構成 頁

Ⅳ我が国の養殖業を巡る新たな動き

1 SDGs 持続的開発目標 35

2 農林水産物及び食品の輸出促進に向けた法律 36

3 改正食品衛生法 37

4 認証制度の概要 38

5 品質管理の状況 39

6 改正漁業法 40

7 在留資格「特定技能」による新たな外国人材の受入れ

8 働き方改革の取組み 41

9 養殖研究・技術① 42

10 養殖研究・技術②

11 水産用医薬品の現状 43

12 養殖経営の見える化 44

(注)赤字で記載したシート名は今後の議論を踏まえ作成。

構成 頁

Ⅰ総合戦略の策定に向けた議論の進め方

1 給餌養殖と無給餌養殖の生産量の推移 4

2 給餌養殖と無給餌養殖別の主要な課題 5

Ⅱ 養殖水産物 需要・市場

1 需要の現状

(1)我が国の水産物需要の見通し 7

(2)世界の水産物需要の見通し 8

(3)我が国の食生活及び販売形態 9

(4)輸入増加のサケ・マス類と我が国水産物消費

10

(5)我が国における養殖魚の評価 11

(6)認証(エコラベル)に対する消費者の認識

12

2 市場・取引の現状

(1)我が国養殖生産物の流通の特徴 13

(2)国内における我が国魚類養殖生産物の用途

14

(3)海外における日本産水産物の用途 15

(4)ブリ類の輸出の状況 16

(5)日本産ブリとノルウェー産タイセイヨウサケの違い

17

3 まとめと課題 18

Ⅲ我が国の養殖業の状況

1 養殖業の特徴

(1)海面魚類養殖生産量の推移 20

(2)海面魚類養殖の種類及び割合 21

2 生産・経営の現状

(1)海面魚類養殖の生産性① 22

(2)海面魚類養殖の生産性② 23

(3)海面魚類養殖の生産性③ 24

(4)海面利用の状況 25

(5)労働力を巡る状況 26

(6)経営体の収支の状況 27

(7)経営体の資金繰り① 28

(8)経営体の資金繰り② 29

(9)バリュー・チェーンの垂直統合の状況

30

(10)再編・系列化の状況 31

(11)魚粉・配合飼料の状況と国産魚粉の位置づけ

32

3 まとめと課題 33

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3

Ⅰ総合戦略の策定に向けた議論の進め方

1 給餌養殖と無給餌養殖の生産量の推移

2 給餌養殖と無給餌養殖別の主要な課題

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Ⅰ我が国養殖業の概況 1 給餌養殖と無給餌養殖の生産量の推移4

出典:農林水産省「海面漁業生産統計調査」及び「漁業産出額」

◆ 我が国養殖業は海面養殖業を中心に営まれており、その中でも生産金額において海面養殖全体の約50%は魚類養殖業が占める。

〇ポイント

641

510

243

0

100

200

300

400

500

600

700

19

60

19

63

19

66

19

69

19

72

19

75

19

78

19

81

19

84

19

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19

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19

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19

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19

99

20

02

20

05

20

08

20

11

20

14

産出額

(10億円)海面養殖業産出額(1960-2016)

海面魚類小計 海面貝類小計

海藻類小計 海面養殖業その他

海面養殖業計

1.33

1.00

0.25

0.00

0.20

0.40

0.60

0.80

1.00

1.20

1.40

1.60

19

56

19

60

19

64

19

68

19

72

19

76

19

80

19

84

19

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19

92

19

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20

00

20

04

20

08

20

12

20

16

生産量

(100万トン) 海面養殖業生産量(1956-2018)

海面魚類小計 海面貝類小計海藻類小計 海面養殖業その他海面養殖業計

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Ⅰ我が国養殖業の概況 2 給餌養殖と無給餌養殖別の主要な課題5

◆ 魚類養殖業と貝類・藻類養殖業では抱える課題が異なり、施策のアプローチも違う。

〇ポイント

養殖業成長産業化総合戦略では、課題が多様な魚類養殖業を先に議論し、次に貝類・藻類養殖業を議論し、総合戦略を策定。

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Ⅱ 養殖水産物 需要・市場

1 需要の現状

2 市場・取引の現状

3 課題

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 1 需要の現状(1)我が国の水産物需要の見通し7

出典:農林水産省「食料需給表」 出典:国連「人口情報ネットワーク」

日本の人口推移と今後の予測値国内水産物需要量経年

〇ポイント

◆ 我が国は大量の水産物を消費する国として、大規模な市場が存在し、日本の養殖業にとっても重要な市場であるが、水産物輸入量が増加し、自給率は減少。

◆ 人口も減少局面に突入し、我が国の水産物消費規模は縮小していくものと予測。

94

117124

128 127

0

20

40

60

80

100

120

140

19

60

19

70

19

80

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20

00

20

10

人口(百万人)

125

119

10697

88

7970

63

20

20

20

30

20

40

20

50

20

60

20

70

20

80

20

90

予測値

0~14歳 15~64 65歳以上 総数

(リクエスト)水産物市場規模を現すデータ・図を挿入出来ませんでしょうか?

0

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40

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80

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1,000

1,200

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76

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80

19

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19

88

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92

19

96

20

00

20

04

20

08

20

12

20

16…

自給率(%)

量(万トン)

国内生産量 輸入量 食用魚介類

国内消費仕向量

自給率

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7.4

8.6

9.510.2

10.711.1 11.2

2015 2030 2045 2060 2075 2090 2100

予測値

0

2

4

6

8

10

12

1955 1970 1985 2000 2015

人口(十億人)

2.5

4.9

アフリカ アジア ヨーロッパ

南アメリカ 北アメリカ オセアニア

Ⅱ養殖水産物需要・市場 1 需要の現状(2)世界の水産物需要の見通し8

出典:国連「人口情報ネットワーク」 、FAO「Fishstat (Food Balance Sheets) 」

世界の人口推移と予測

※各地域の人口×2013年の各地域の一人あたりの水産物消費量=水産物消費量予測

〇ポイント

◆ 世界の人口は今後も増加傾向で、水産物の需要も増加すると予想。◆ 漁船漁業による生産が頭打ちとなっているため、養殖業への期待は大。

34

71

142

0

50

100

150

200

250

百万トン

153

195 199 198

予測値

アフリカ アジア ヨーロッパ南アメリカ 北アメリカ オセアニアその他

世界の水産物消費量の推移と予測

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 1 需要の現状(3)我が国の食生活及び販売形態9

〇ポイント

◆ 世帯構造の変化や食生活の変化により、消費者はスーパー等の量販店の利便性を重視。◆ 小売店からスーパー等の量販店による販売形態に変化したことにより、定質・定量・定価格・定時を行い

やすい商品へ。

出典:公財)食の安全・安心財団「HPデータベース」、厚生労働省「国民生活基礎調査」、経済産業省「商業統計」、総務省「全国消費実態調査」

28.4

33.4

35.4

38.1

39.841.5 41.2 41.7

44.6 44.3 44.0 43.944.9

45.644.1 43.5 43.3 43.5

25

30

35

40

45

50 %食の外部化率の推移

食の外部化率

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1986

1992

1998

2004

2010

2016

2018

世帯構造の変化

単独世帯 夫婦のみの

世帯

親と未婚の

子のみの世帯

三世代世帯 その他の

世帯

核家族割合

24,811 20,569

17,618 13,849

7,520

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

1994 1997 2002 2007 2014

全国の鮮魚小売り業の食料品専門店数の変化

0%

20%

40%

60%

80%

100%

1994 1999 2004 2009 2014

消費者の魚介類購入先の変化

スーパー 一般小売店 生協・購買 百貨店 通信販売 その他

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 1 需要の現状(4)輸入増加のサケ・マス類と我が国水産物消費10

〇ポイント

◆ 輸入サケ・マス類は、チリ・ノルウェーからの輸入量が著しく増加。塩鮭などの消費から、刺身などの生食用のサーモンの輸入が増加。

◆ 我が国の水産物の消費量は、多くの品目で軒並み減少傾向。消費量が維持・増加しているのは、マグロ・サケ・ブリのごく一部。

0

200

400

600

800

1,000

1,200

マグロ アジ カレイ サケ タイ ブリ 塩サケ

生鮮 加工

消費量(

g)

水産物消費量の変化

1989年 2017年

1989年比較213%

1989年比較113%

大幅に減少

0

50

100

150

200

250

300

19

89

19

91

19

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95

19

97

19

99

20

01

20

03

20

05

20

07

20

09

20

11

20

13

20

15

20

17

千 サケ・マス輸入量(トン)

チリ ノルウェー ロシア

アメリカ合衆国 カナダ その他

出典:農林水産省統計「農林水産物輸出入統計」、総務省統計「家計調査」

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 1 需要の現状(5)我が国における養殖魚の評価11

出典:農林水産省「海面漁業・養殖生産統計」、東京都中央卸売市場「統計データ」

〇ポイント

◆ 数十年前と比較すると、全般的に消費者の養殖魚に対する評価は向上。◆ 価格は2013年以降、天然魚より養殖魚(ブリ)の方が高値で取引=消費者の養殖魚への評価向上が価

格に反映。

項目 十数年前 近年(%)

価格 安い 安い(60.7)普通(34.9)高い(4.4)

味 脂っぽく、イワシ臭い 美味しい(13.8)普通(76.9)まずい(9.3)

鮮度 ー 高い(20.8)普通(75.6)低い(3.6)

安全性 薬への不安 安心(17.6)普通(59.9)不安(22.5)

その他高密度飼育で環境にも悪いイメージ

近年の柑橘系養殖魚への好感、酸化の防止

0

500

1,000

1,500

0

50

100

150

200

20

02

20

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11

20

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13

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14

20

15

20

16

20

17

単価(円

/㎏)

収獲量(千トン)

養殖収穫量 天然収穫量

養殖単価(ハマチ) 天然単価(ブリ)

天然より養殖が高値

出典:平成25年水産白書、一般財団法人東京水産振興会「水産振興」第603号より作成

〇 消費者の養殖魚に対する評価(天然魚との比較)

養殖魚 天然魚

時間 管理可 管理困難

数量 概ね一定 増減

価格 概ね一定 変動

品質味

概ね安定時期・漁法・処理による差が発生

養殖魚は供給時/供給量/価格/品質/味が一定であるため、量販店・外食等で扱いやすい。養殖魚の特性が特に若年層と若年層の親世代を中心に評価傾向。

〇 養殖魚と天然魚の出荷量比較〇 バイヤーの養殖魚・天然魚対する評価

出典:株式会社水土舎による事業者・研究者へのヒアリング結果をもとに整理

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 1 需要の現状(6)認証(エコラベル)に対する消費者の認識12

〇ポイント

◆ 消費者はエコラベルへの認識はまだ不十分であるが、環境保全に対する貢献などに意識が高く、今後の消費市場では重要な因子。

◆ 消費者は食品の安全性も重要視していることから、バリューチェーン全体をマネジメントすることが重要。

出典:MSC年次報告書2017年度、日本水産学会誌「水産エコラベル製品に対する消費者の潜在的需要の推定」(2010年)

0 20 40 60 80 100

購入意思

認識

信頼

〇 MSCに対する意識調査結果(世界・22ヶ国)

◆ MSCの主張を信頼している(69%)

◆ 「海のエコラベル」を認識している(41%)

◆ 消費者は海を守るために持続可能な水産物を購入すべきだと考えている(72%)

〇 水産エコラベル製品に対するアンケート結果(日本・東京)

0 20 40 60 80 100

4

3

2

1 1. エコラベル商品を購入することで、環境保全に貢献できる(69%)

2. エコラベル製品に対して価格プレミアムがある(48%)

3. エコラベル商品の購入に賛同(52%)

4. エコラベルよりも食品の安全性を示すラベルの方が魅力的(54%)

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0

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600

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1,000

1,200

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0

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1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

20

15

.9

20

15

.11

20

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.1

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16

.3

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16

.5

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.7

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16

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16

.11

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17

.1

20

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.3

20

17

.5

20

17

.7

20

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.9

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.11

20

18

.1

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18

.3

20

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.5

20

18

.7

20

18

.9

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18

.11

20

19

.1

20

19

.3

円/kgトン ブリ入荷量(kg) 価格(円/kg)

Ⅱ養殖水産物需要・市場 2 市場・取引の現状(1)我が国の養殖生産物の流通の特徴13

◆ 魚類養殖業は漁業と比べ生産量のコントロールが可能、卸売市場の集荷・分荷機能を活用した販売の必要性は相対的に低く市場外流通が主流。

◆ 生産に近い産地商社が川下(量販・外食)のニーズや直近の需要を捉えられるが、①規模の異なる養殖業者が各地で生産し、②競合品目の存在から将来需要と生産にギャップが発生し、③生産すれば売れる時代から少子高齢化の時代になると、需給バランスが崩れやすい。

◆ 輸出は産地の取引業者が担っている例が多い。

生産者

産地問屋

(漁連・商社)

消費地市場

(卸売業者)

量販・外食

国内消費者

仲卸売業者

〇ポイント

養殖ブリ・マダイの国内市場価格と入荷量の推移

0

200

400

600

800

1,000

1,200

1,400

0

500

1,000

1,500

2,000

2015

.9

2015

.11

2016

.1

2016

.3

2016

.5

2016

.7

2016

.9

2016

.11

2017

.1

2017

.3

2017

.5

2017

.7

2017

.9

2017

.11

2018

.1

2018

.3

2018

.5

2018

.7

2018

.9

2018

.11

2019

.1

2019

.3

円/kgトン マダイ入荷量(kg) 価格(円/kg)

出典:株式会社水土舎による事業者・研究者へのヒアリング結果をもとに整理

産地市場

(漁協等)

取引業者

外食等

国外消費者

取引業者

養殖生産物の流通経路(イメージ)

国外向けは、産地の取引業者が担っていることが多い。

出典:東京都中央卸売市場「統計データ」

需要情報(品質・数量)が生産者に伝わりやすい

(国内)

(需要情報)

(国外)

(需要情報)

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 2 市場・取引の現状(2)国内における我が国魚類養殖生産物の仕向・用途14

◆ 魚類養殖生産物の国内の末端仕向先は、量販店や外食チェーン等マス・マーケットが主対象。◆ 刺身等の生食を中心に様々な用途で利用。消費先での一般的な客単価は3000円前後が主流。

魚種 出荷形態 主要用途 消費先

ブリ活魚、ラウンド、フィレ、切り身

刺身、煮物、焼物

回転寿司店、居酒屋、和食店、レストラン、量販店

マダイ活魚、ラウンド、フィレ

刺身、煮物、焼物

回転寿司店、居酒屋、和食店、レストラン、量販店

クロマグロ

セミドレス、ラウンド、ロイン

刺身回転寿司店、居酒屋、和食店、レストラン、量販店

マハタ、クエ

ラウンド、切り身

刺身、鍋 居酒屋、和食店

ギンザケ

ラウンド、フィレ、切り身

刺身、焼物、加工

加工、量販店、和食店

マアジ 活魚刺身(活造り)

居酒屋、和食店

サバ 活魚、ラウンド 刺身、煮物回転寿司店、居酒屋、レストラン、和食店

〇ポイント

出典:株式会社水土舎による事業者・研究者へのヒアリング結果をもとに整理、厚生労働省「平成23及び25年度生活衛生関係営業経営実態調査」

〇 養殖魚種別の出荷形態・用途・消費地

0 1000 2000 3000 4000

食堂・

レストラン

専門店

(和食系)

寿司店

客単価平均(円/人)

寿司店の平均客単価の構成割合(%)

1000円未満 1000-2999円 3000-4999円

5000-6999円 7000円以上 不詳

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 2 市場・取引の現状(3)海外における日本水産物消費15

出典:水産物・水産加工品輸出拡大協議会「水産物・水産加工品の輸出拡大に向けた海外マーケット調査報告書」平成29年度資料・平成27年度資料、地域漁業研究 第51巻,第3号,2011「韓国における日本産養殖マダイの価値」、みなと新聞、財務省「貿易統計」より作成

〇ポイント

◆ ブリ類(統計及び集計データ上ブリ、カンパチ、ヒラマサなどを含むもの)及びマダイは、各国で「高品質」、「味がいい」などプラスのイメージが多く、マイナスイメージとしては、「高価格」、「不安定供給」など。

◆ 価格は輸出価格及び小売店価格に輸出先国、商品形態によって大きく異なる。◆ 利用方法は主に高級日本食店及び小売店での生食利用(刺身)。マス・マーケットの獲得に至っていない。

輸出先国

魚種

価格

利用方法

日本産養殖魚のイメージ

輸出価格FOB(円/kg)

小売店等価格(円/kg)

プラス マイナス

アメリカ(ロサンゼルス、サンフランシスコなどの西海岸が中心)

ブリ類

フィレ:1750(2018年データ)

柵:2230カマ:3470(2018年データ)

小売店での販売和食店(刺身商材)

高品質、旬、安全性、健康的

高価格、持続可能でない、不安定供給マダ

イー 切身:4930

(2018年データ)小売店での販売

韓国マダイ

活魚:1040鮮魚:740(2018年データ)

卸売価格:1162~1452(2010年データ)

和食店(刺身商材)健康的、味がいい

放射能の影響

中国マダイ

860(2018年データ)

卸売価格:1310(2018年データ)

和食店(刺身商材) ー ー

イギリス

ブリ類

ー ー 和食店(寿司ネタ)健康的、味がいい、高品質

高価格、不安定供給

タイブリ類

1409(2015年データ)

ー和食店(刺身商材)寿司バー(寿司ネタ)

高品質、味がいい、健康的

高価格

マレーシア

ブリ類

ー 柵:850(2015年データ)

和食店高品質、味がいい

高価格

〇 輸出先国での価格及びイメージ

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000ブリ類輸出量(トン)

アメリカ合衆国 中華人民共和国 台湾 その他

0

2,000

4,000

6,000

20

07

20

08

20

09

20

10

20

11

20

12

20

13

20

14

20

15

20

16

20

17

20

18

マダイ輸出量(トン)

韓国 ギニア リベリア アルゼンチン 中国

出典:財務省「貿易統計」、農林水産省「農林水産物輸出入統計」

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 2 市場・取引の現状(4)ブリ類の輸出動向16

〇ポイント

◆ 輸出は当初は冷蔵フィレが主であったが、徐々に冷凍フィレの割合が増加し、現在ではその80%以上。(ハイエンド向けからミドルエンド向け主体になったものと推測)

◆ 国別の輸出量は圧倒的にアメリカが多く、そのシェアは80%以上。しかし、日本食での供給には限界が感じられ、また、新たなマーケットの開拓には、各国料理への適応も不可欠。

出典:財務省「貿易統計」

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

ブリ類輸出量(トン)

アメリカ 中国 台湾 その他 計

1,639 1,379 1,366 1,209 1,397 1,200 1,236 1,371 1,335 1,404 1,530

867 2,131 2,774 3,875 4,049

5,267 5,081 6,569 6,695

7,586 7,469

2,506 3,510

4,140 5,084

5,446 6,467 6,316

7,940 8,030 8,990 8,999

0

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018

ブリ類冷凍・冷蔵フィレ―の輸出量(トン)

冷蔵フィレ 冷凍フィレ 計

アメリカ輸出の現状と背景• 日本食文化の浸透により、養殖ブリの食材としての利用が増えたこと。• アメリカ市場では「CO処理」を施すことが許可されていること。• コンテナ輸送による比較的安価な輸出ルートが存在したこと。• 当初は、ハイエンド向けの冷蔵フィレであったが、冷凍技術の発達により長期保管が可能になったこと。

アメリカの東西海岸部では、すでに飽和状態となってきているため、中央部の畜肉市場へ新たな食材として食べ方を提案し、マーケットを開拓する必要がある。

出典:緑書房「月刊養殖ビジネス2019年10月号」

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 2 市場・取引の現状(5)日本産ブリとノルウェー産タイセイヨウサケの違い17

出典:平成25年水産白書、一般財団法人東京水産振興会「水産振興第」603号・第597号、FAO「Fishstat (Food Balance Sheets) 」より作成

〇ポイント

◆ 生産面では、日本のブリと比較すると生産コスト等すべての面でタイセイヨウサケが優位。◆ 我が国の養殖業は国内向けの産業で比較的規模の小さな業者が多く生産に特化し、流通販売は一般に別

の業者が担っているが、ノルウェーは初めから海外輸出が目的の産業であるため、生産拠点、物流、生産管理体制、マーケティングの展開が一体。

項目 日本 ノルウェー

魚種 ブリ タイセイヨウサケ

増肉係数 2.8 1.2

養殖期間 24ヶ月以上 14ヶ月以上

生産コスト(円/kg) 696 356

生産規模(万t)(2017年の年間生産量)

9.8 123.6

種苗導入 主に天然種苗を毎年3~4月に池入れ 人工種苗で周年池入れ

養殖ビジネスに関するシステムの違い

主に水平的な分業(システム分業)

垂直統合(インテグレーション)高度に寡占化(5社で世界の養殖サーモンの78%を生産)

需要 内需向け 外需向け

マーケティング産地にある個別の民間企業、漁協等の努力

国主導の産業戦略

戦術・技術各県、各産地、各企業で戦術や技術開発

国として一貫した方針で効率的に技術開発

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Ⅱ養殖水産物需要・市場 3 まとめと課題18

⇒ 巨視的にみて、国内市場は縮小傾向で推移することが予想される。一方、海外市場は拡大の可能性が高い。

⇒ 国内の水産物市場において、消費者の水産物購入先は量販店等が主体。チェーン化された量販店等の水産物の取扱特性に応じ、定質・定量・定価格・定時の取引形態を実現する品目が需要拡大した。

⇒ 養殖魚はマーケットイン型生産に向き、消費者の養殖魚に対する評価も向上しているため、量販店等の実需者側からも重要な位置づけ。

⇒ 一方、輸入サーモンとの競合は顕在化。需給の時期的ギャップや価格変動等の課題を解消することが需要維持や失われた市場(輸入サーモン市場)の奪還に必要。

⇒ 我が国養殖水産物輸出は徐々に市場拡大してきているが、用途が限定されており、需要を大きく増やしていくためには新たな視点(和食のプロモーションだけでなく、素材活用の現地化 等)やキーとなる技術(褐変防止技術 等)といった輸出品目の特性に応じた課題解決が必要で、そのための支援が不可欠。

⇒ 現状のブリの販売価格は海外のサーモン市場より高いため、コスト削減による価格の低減や市場の開拓が必要。

⇒ 国内市場では消費者価格が固定的な状況であり、生産原価の削減努力が求められる状況。輸出市場でも価格競争力の向上が必要。これらはバリューチェーン全体でコスト削減(生産段階での資金調達の円滑化・多様化等も含む)をしていく取組が求められる。

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19

Ⅲ 我が国の養殖業の状況

1 養殖業の特徴

2 生産・経営の現状

3 課題

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 1 養殖業の特徴(1)海面魚類養殖生産の推移

0

1,000

2,000

3,000

4,000

5,000

6,000

7,000

8,000

9,000

19

50

19

55

19

60

19

65

19

70

19

75

19

80

19

85

19

90

19

95

20

00

20

05

20

10

20

15

千トン

タイセイヨウサケ サバヒーMarine fishes nei Freshwater fishes neiヨーロピアンシーバス ヨーロッパヘダイハタ類 ギンザケニジマス Large yellow croakerその他

7,780

1,602(20%)

2,357(30%)

世界の海面養殖生産量(魚類)

20

出典:FAO「Fishstat」、農林水産省統計「海面漁業生産統計調査」

〇ポイント

◆ 国内の海面養殖生産量(魚類)は、主な養殖品目であるブリ類、マダイ、クロマグロ、ギンザケを中心に、1990年頃をピークに漸減傾向。

◆ 一方、世界の海面養殖生産量(魚類)は、増加の一途を辿っており、魚種別の生産量の50%をタイセイヨウサケとサバヒーが占めている。

世界の漁業・養殖業生産量の推移と養殖が占める割合

18

139

60

18

0

50

100

150

200

250

300

19

56

19

60

19

64

19

68

19

72

19

76

19

80

19

84

19

88

19

92

19

96

20

00

20

04

20

08

20

12

20

16

千トン 国内海面養殖生産量(魚類)

ギンザケ ブリ類 マダイ(タイ類)

クロマグロ その他

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日本:25万t/9品目ブリ類

マダイ

クロマグロ

ギンザケ

シマアジ

トラフグ

その他

ヒラメ

マアジ

北欧(12国):172万t/14品目 北米(2国):16万t/6品目

南米(14国):85万t/7品目オーストラリア:7万t/5品目

Ⅲ我が国の養殖業の状況 1 養殖業の特徴(2)海面魚類養殖の種類及び割合21

◆ 我が国の魚類養殖は、南北に長く亜熱帯気候から亜寒帯気候に位置するため、ブリ類、マダイのほかに、多様な魚種を生産。

◆ 海外の養殖が盛んな北欧・豪州・北米・南米ではサーモン養殖に特化して発展。

〇ポイント

出典:FAO「Fishstat」2017年データ、水産庁調べ

Atlantic salmon タイセイヨウサケ

Rainbow trout ニジマス

Coho(=Silver) salmon ギンザケ

Salmonids nei サケ科

Southern bluefin tuna ミナミマグロ

Finfishes nei

Barramundi(=Giant seaperch) バラマンディ

Marine fishes nei

Arctic char サケ科

Atlantic halibut カレイ目

Red drum ニベ科

Atlantic cod タイセイヨウタラ

European whitefish サケ科

Longfin yellowtail ヒレナガカンパチ

Senegalese sole カレイ目

Cobia スギ

European eel ヨーロッパウナギ

Sea trout サケ科

Flatfishes nei

Tilapias nei ティラピア

Turbot カレイ目

日本以外の国の凡例

※:北欧12国(チャンネル諸島、デンマーク、エストニア、フェロー諸島、フィンランド、アイスランド、アイルランド、ラトビア、リトアニア、ノルウェー、スウェーデン、イギリス)

〇我が国の養殖対象の海面魚類(29道県で少なくとも海面では44品目が生産されている)

ギンザケ、ニジマス、サクラマス、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、マアジ、シマアジ、マルアジ、マダイ、ヘダイ、フエフキダイ、ハマフエフキ、ヒラメ、トラフグ、カワハギ、ウマヅラハギ、クロマグロ、マサバ、ゴマサバ、スズキ、タイリクスズキ、イサキ、マハタ、ヤイトハタ、クエ、スジアラ、イシダイ、イシガキダイ、ニザダイ、コショウダイ、クロダイ、メバル、クロソイ、カサゴ、スギ、メジナ、ホッケ、アイナメ、オオニベ、

キス、シロギス、ヒラスズキ、スマ

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(1)海面魚類養殖の生産性①

442 290 233

8,907 6,369

5,023 5,315

3,333 2,840

4,750

4,658

4,204 3,835

2,653 1,799

408 673

13,657

11,027 12,606 12,804

8,432

6,901

-

2,000

4,000

6,000

8,000

10,000

12,000

14,000

16,000

1988 1993 1998 2003 2008 2013

従事者数

(人)海面魚類養殖業従事者数

ギンザケ養殖 ブリ類養殖 マダイ養殖

ヒラメ養殖 マグロ類養殖 その他魚類養殖

海面魚類養殖

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

1988 1993 1998 2003 2008 2013

一人あたりの生産額(百万円)

ブリ マダイ 魚類養殖全体

0.0

10.0

20.0

30.0

40.0

50.0

60.0

70.0

1988 1993 1998 2003 2008 2013

一人あたりの生産量(

t)

ブリ マダイ 魚類養殖全体

22

◆ 経営体数及び養殖従事者が減少したことにより、一人当たりの生産性(生産量及び額)は上昇傾向。◆ 規模拡大・協業化の方向。一方で、付加価値の高い希少化した魚の生産や新魚種への転換の動き。

〇ポイント

出典:農林水産省「漁業センサス」

従事者一人あたりの生産量の推移 従事者一人あたりの生産額の推移

高知 海援鯛生育及び出荷条件・完全無投薬・生育履歴を公開・血液検査

養殖マハタ・2年で1.3kg・マダイと混養可・三重県のプライドフィッシュ

出典:株式会社水土舎によるヒアリング結果

写真:土佐鯛工房HP及びJF全漁連プライドフィッシュHPより

付加価値向上例

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(1)海面魚類養殖の生産性②

0.00

10.00

20.00

30.00

40.00

1973年 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 2008年 2013年 2018年

生産性指標2(百万円/人)

0.00

50.00

100.00

150.00

200.00

1973年 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 2008年 2013年 2018年

生産性指標1(百万円/経営体)

23

◆ 1998年比の直近値は産出額で8%減、養殖業者数で63%減、労働者数で49%減。生産性指標1(一経営体当たりの産出額)で116%増、生産性指標2(一人当たりの産出額)で82%増。

◆ 経営体及び労働者数が大幅に減少する中で我が国養殖業の産出額は大きく減少していない。これを牽引したのは、経営体単位・労働者単位の生産性向上と推測。特に2008年以降は向上傾向を示す。

〇ポイント

産出額(百万円) =

生産性指標1(百万円/経営体) × 養殖業者数(経営体)

生産性指標2(百万円/人) × 労働者数(人)

〇魚類養殖業の産出額、養殖業者数、労働者数及び生産性の推移

出典:農林水産省「漁業センサス」

(評価法1)

(評価法2)

1973年 1978年 1983年 1988年 1993年 1998年 2003年 2008年 2013年 2018年対1998年増減(%)

産出額(百万円)

45,235 142,850 191,183 233,903 258,903 258,801 213,597 208,641 214,868 N/A -8

養殖業者数(経営体)

2,841 3,473 4,373 3,786 3,148 3,519 2,822 2,191 1,612 1,392 -63

労働者数(人) N/A N/A N/A 13,657 11,027 12,606 12,804 8,432 6,901 N/A -49

生産性指標1(百万円/経営体)

15.92 41.13 43.72 61.78 82.24 73.54 75.69 95.23 133.29 N/A 116

生産性指標2(百万円/人)

N/A N/A! N/A 17.13 23.48 20.53 16.68 24.74 31.14 N/A! 82

生産性評価方法

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(1)海面魚類養殖の生産性③24

◆ マダイ養殖を例にとって検証した結果、生産規模(養殖施設面積)に比例して生産性が向上する傾向を確認◆ 東海地方と四国地方で養殖経営体の規模格差が大きい。地域の諸条件によって規模拡大の進展にも差。

〇ポイント

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

0 500 1000 1500 2000 2500

生産性(円

/h)

養殖施設面積(㎡)

養殖施設面積と生産性※の関係(2011-2017年)

東海

四国

年東海 四国

施設面積(㎡) 生産性(円/h) 施設面積(㎡) 生産性(円/h)

2011 631 9,429 1,511 18,734

2012 631 10,561 1,572 21,599

2013 631 11,244 1,674 21,639

2014 743 10,875 1,698 21,937

2015 743 11,657 1,674 22,161

2016 743 13,260 1,894 24,369

2017 743 14,281 1,919 25,660

※ 生産性指標3(円/h)=漁労収入(円)÷延べ労働時間(h)

生産性評価方法

規模に比例して

生産性が向上

年 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002

全国 0.78 0.75 0.79 0.77 0.84 0.86 0.96 0.93 0.93 0.96 0.94

静岡 0.39 0.40 0.39 0.45 0.45 0.54 0.55 0.64 0.70 0.68 0.55

三重 0.32 0.31 0.34 0.33 0.35 0.37 0.39 0.42 0.43 0.45 0.44

東海 0.32 0.32 0.34 0.34 0.36 0.39 0.41 0.44 0.46 0.48 0.45

徳島 0.14 0.40 0.20 0.27 0.25 0.25 0.33 0.33 0.33 0.33 0.36

香川 0.34 0.38 0.37 0.45 0.47 0.40 0.52 0.49 0.60 0.74 0.71

愛媛 1.28 1.33 0.04 1.20 1.42 1.45 1.52 1.59 1.50 1.49 1.42

高知 0.33 0.41 0.52 0.44 0.52 0.69 0.67 0.62 0.66 0.70 0.64

四国 0.80 0.88 0.23 0.88 1.04 1.10 1.15 1.18 1.18 1.21 1.15

〇養殖施設面積と生産性の関係

⚫ 養殖施設面積と生産性の関係を比較する上で全国的に1経営体当たりの施設面積を比較。

⚫ 全国平均より施設規模の大きい愛媛県を含む四国地域と、小さい東海地域で労働時間当たりの生産性を比較した。

出典:農林水産省「海面漁業生産統計」

表:1経営体当たりの養殖施設面積(単位;km2)

出典:農林水産省漁業経営調査報告(個人経営体調査-海面養殖業部門別)

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(4)海面利用の状況25

〇ポイント

◆ 日本の養殖業において現在の技術水準と投資の面から、直ちに漁場拡大による生産量の大幅な増大には限界。◆ 今後は①限られた漁場規模・生産規模の中で、効率よく生産性を高める視点、②技術開発が進められている

沖合養殖や完全陸上養殖も視野に入れた幅広い可能性の検討が重要。

海面利用の分類 新たな養殖方法 企業 魚種 備考

適 限られた漁場で効率よく生産性を高める視点

一部適・一部不適

大規模沖合養殖ニッスイ尾鷲物産日鉄エンジニアリング

ブリ(尾鷲)ギンザケ(境港)

通常の生簀よりも10倍以上の体積で飼育可能。これまでに養殖が行えなかった波浪・潮流の海域でも飼育可能。

新規静穏域の開拓日本サーモンファーム

(株) ニジマス 防波堤による静穏域で新たな養殖適地の創出

不適閉鎖循環式陸上養殖システム

株式会社FRDジャパン

ニジマス 天候や海域の変化に左右されない、安定した生産体制を構築。外部との接触がないため、病気の発生を抑制。養殖個体の逃避などが起こらないため、自然環境への影響は無。

ソウルオブジャパン株式会社

アトランティックサーモン

出典:株式会社水土舎による事業者・研究者へのヒアリング結果をもとに整理平成30年度「浜と企業の連携円滑化事業のうち沿岸漁場の利用状況調査事業報告書」より引用

〇 適正分類の体型と利用度低下・未利用の原因の所在にかかる概念図及び利用度低下等の要因

〇 新たな漁場利用及び陸上養殖の事例

「適」

「一部適・一部不適」

「不適」

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(5)労働力を巡る状況26

〇ポイント

◆ 我が国において魚類養殖生産の適地は西日本に多く、生産地と大規模消費地には物理的な距離。◆ 特に養殖の主要地である漁村地域における人口減少は、都市部以上に進行が顕著で、養殖業やそれに係

わる産業の人手不足が顕在化。◆ 労働力は減っているため、生産性の向上や生産量を増やすためには省力化は必須。

出典:農林水産省「海面漁業生産統計」及び総務省「人口推計」を元に作成

0

200

400

600

800

19

60

19

63

19

66

19

69

19

72

19

75

19

78

19

81

19

84

19

87

19

90

19

93

19

96

19

99

20

02

20

05

20

08

20

11

20

14

20

17

千 漁業就業者(人)

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(6)経営体の収支の状況27

ブリ類養殖業 マダイ養殖業(千円)(千円)

資料: 農林水産省漁業経営調査報告(個人経営体調査-海面養殖業部門別)

57%

64% 64%67% 69%

59%

68% 67%60%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

0

20,000

40,000

60,000

80,000

100,000

120,000

140,000

160,000

180,000

H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

その他(減価償却費、

漁船・漁具費等)

油費

雇用労賃

種苗代

えさ代

漁労支出に占めるえさ

代の割合

68%

58% 60%66%

81%

71% 74% 72% 71%

0%

10%

20%

30%

40%

50%

60%

70%

80%

90%

0

10,000

20,000

30,000

40,000

50,000

60,000

70,000

H21 H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29

2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

◆ 魚類養殖業は支出に占める生産資材代(特にエサ代)の割合が6~7割を占め、漁労収支がほぼ均衡(または漁労所得がわずかに計上)する状態。収入増加又はコスト削減が実現出来ない限り、この状態が継続。

◆ 漁労所得が小さいため、事業改善に必要な投資を自己資金で実施することは困難な状況。

〇ポイント

62.2 59.2 58.7 52.3 57.6 68.0 63.5 67.0 68.0 79.5 88.3 109.2

4.6 4.9 (6.5) (5.4) (1.7) 1.2 2.7 5.0 (0.1) 3.6

(6.4)6.0

(57.6) (54.3)(65.2) (57.7) (59.3)

(66.8) (60.8) (62.0) (68.1) (75.9)(94.7)

(103.2)(120)

(70)

(20)

30

80

2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

金額(100万円) 給餌養殖業収支まとめ

漁労収入 うちえさ代 うち種苗代 その他支出 漁労所得 漁労支出

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(7)経営体の資金繰り①28

〇ポイント

◆ 養殖業は生産着手から販売終了まで1年を超える場合が多く、販売終了までに次の生産に必要な生産資材の購入資金を投入し続けなければならない業態。

◆ 極端な魚価暴落や赤潮等の天然災害による経営悪化が存在し、国は漁業共済、減収時の収入安定対策及び養殖餌高騰時の価格補填等の国の支援を通じ経営リスク低減を実施。

1年目 2年目 3年目 4年目

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

1月

2月

3月

4月

5月

6月

第1期間池入れ

飼育

出荷開始

出荷終了

第2期間池入れ

飼育

出荷開始

出荷終了

種苗購入

エサ購入代金回収

〇一般的なブリ養殖の販売までのサイクル(イメージ)

種苗購入 エサ購入 代金回収

2期間の種苗代と1期間+の餌代が発生 事業着手1年3ヶ月後に資金回収 自然被害・価格暴落 ⇒ 資金回収困難 ⇒キャッシュフローが不十分な場合、継続困難

養殖経営リスクリスク低減に関する国の支援制度

名称 概要

自然災害(赤潮・台風等)

漁業共済制度(漁業災害補償法)

⚫ 養殖中の養殖生物が死亡、流失等により受けた損害を補償⚫ 供用中の養殖施設や漁具の損壊、流失等により受けた損害を補償等

魚価暴落による減収漁業収入安定対策(積立ぷらす・共済掛金追加補助)

⚫ 収入減少時に国と漁業者が拠出した積立金により補填(積立ぷらす)⚫ 漁業災害補償法に基づく共済掛金補助に追加の掛金補助(共済掛金追加補助)

養殖配合飼料の高騰 漁業経営セーフティネット構築事業⚫ 配合飼料価格が一定の基準を超えて上昇した時に養殖業者に対し価格差を補塡。補塡は養殖業者と国が1対1の割合で負担

養殖生餌の供給不安 養殖用生餌安定供給支援 ⚫ 養殖生餌の供給安定化を図る取組に要する経費の一部を支援

養殖経営リスクとリスク低減に関する国の支援制度

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(8)経営体の資金繰り②29

養殖生産餌(種苗)

産地加工

消費地販売

(小売・外食)

最終消費魚餌 魚 魚

取引価格190円/kg

(参考)他の価格160円/kg

取引価格850円/kg〈内訳〉餌代 530円その他 320円

(注)増肉係数 2.8

取引価格1,960円/kg<内訳>産地価格 1300円その他 660円

(注)製品歩留り 0.65

取引価格390円/100g

<内訳>産地価格 260円その他 130円

(注)販売歩留り0.75

〇バリュー・チェーン取引のイメージ(ぶり養殖の事例)

産地商社が魚類養殖業者と行う生産資材や養殖生産物にかかる売買時に関する商習慣。養殖業者は、産地商社から餌等を買うとともに、商社に生産物の販売も委託し、産地商社は養殖物販売代金から餌代を徴収。餌代の決済時期を養殖物販売時に延長することから金利相当分や販売リスク回避相当分が価格に上乗せされている。

年利 12.5%金利相当

商社金融

①生産資材の供給

養殖

経営体産地商社

②販売依頼

③販売

(餌代の例 イメージ) 他の価格 3,200円/20kg袋上乗せ価格 3,800円/20kg袋

資料:IRC「オーラルヒストリー愛媛の産業を語る」、関係者への取材

(※)関係者への取材に基づくイメージ価格

他の価格 上乗せ価格 利息相当額 返済期間 年利換算

¥3,200 ¥3,800 ¥600 1.5 12.50%

〇ポイント

◆ 極端な魚価の暴落や赤潮等天然災害による減収から一旦経営が躓くと生産縮小スパイラルの危険。購買ルートをもたない養殖業者は産地商社と直接契約しやく、生産縮小スパイラル局面では、商社金融により生産活動が継続。

◆ 金融機関の魚類養殖業に対する与信は高くなく、旺盛な資金需要に応えることが難しい実情。

養殖業者の市場アクセス向上が必要

養殖経営体の融資環境

(1)地域金融機関は事業性評価の実施促進する方向(金融庁・金融行政方針)。(2)事業性評価が活発されるが、養殖業において活用は進んでいない。

9.7

8.0

9.1

4.8

28.1

28.7

23.4

22.6

29.1

36.0

全くあてはまらない。 ほとんどあてはまらない。 どちらともいえない。

ややあてはまる。 あてはまる。

設問:漁業者に対する審査ノウハウの有無

設問:漁業者が保有する動産など代替担保評価ノウハウの有無

出典:漁業金融円滑化調査検討事業(水土舎)による地銀、信用組合及び系統金融に対するアンケート調査結果

2つの課題を繋げる評価軸が必要 養殖業者のキャッシュフロー改善に繋がる金融環境が必要

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(9)バリュー・チェーンの垂直統合の状況

卸売 ① ② ③ ④ ① ② ③ ① ② ① ①

養殖生産 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ① ① ①

資材購買 ① ② ③ ④ ① ② ③ ① ② ① ① ② ③

資材製造 ① ② ③ ④ ① ② ③ ④ ① ② ① ① ② ③ ④

30

〇ポイント

事例

インテグレーション事例1

生産者協業化生産者による協業化

インテグレーション事例2

産地事業者型統合飼料販売企業や漁協による協業化

インテグレーション事例3

生産者型企業既存生産者の規模拡大

インテグレーション事例4

1社垂直統合1社による垂直統合

インテグレーション事例5

流通型企業流通・販売業の企業参入

説明

⚫ 養殖業者間による協業化(事業統合はない)。事業範囲は養殖のみ。

⚫ 産地事業者が資材・商品販売に加え、養殖経営体を傘下におき垂直統合を実現。

⚫ 生産を本業とする1企業の規模拡大。事業範囲は養殖のみ。

⚫ 全てのバリューチェーンを1社で行う垂直統合。

⚫ 流通を本業とする1企業の養殖(資材含む場合有り)から卸売販売まで垂直統合。

⚫ 産地商社主導による事業者間の小規模の垂直統合。

便宜的に、漁協系統による垂直統合も本類型に含んだ

⚫ 産地商社と協調・対等による事業間連携の垂直統合。

⚫ 自社主導により他部門と事業者間連携の垂直統合。

⚫ マーケットに対する影響力が小さい。

⚫ マーケットに対する影響力がある。

⚫ マーケットに対する影響力がある。

⚫ マーケットに対する影響力がある。

⚫ マーケットに対する影響力がある。

⚫ 資材品質の共通化が進みにくい。

⚫ 資材品質の共通は養殖業者次第のため、定質・定量の生産を実現するためには傘下生産者に対する指導力が必要。

⚫ 定質・定量の生産・販売を指向し、資材品質の共通化を実現。

⚫ 定質・定量の生産・販売、資材品質の共通化を実現。

⚫ 定質・定量の生産・販売を指向し、資材品質の共通化を実現。

◆ バリューチェーンの垂直統合が流通を本業とする企業、生産を本業とする企業、飼料供給を本業とする企業により進展しているが、その連携度合いは様々。

◆ 商品力のある定質・定量の生産には生産者の取組だけでなく生産・流通が一体となった取組が必要。

バリューチェーン(資材・生産・販売)の統合状況事例

出典: 株式会社水土舎による事業者・研究者へのヒアリング結果をもとに整理

協業化範囲 協業化範囲

1社の事業範囲

資材品質の共通化

1社の事業範囲

資材品質の共通化

資材品質の共通化

1社の事業範囲

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(10)再編・系列化の状況31

〇ポイント

◆ 日本の養殖業は、マス・マーケットに向けた生産のための再編・系列化が進行。◆ 一方で、地域の漁場条件や養殖業の導入・展開過程、地域社会との関わり等の諸条件の違いにより、再編

の規模には差。

流通型企業ブリ(東海)

1社垂直統合マダイ(九州)ブリ(九州)ブリ(九州)カンパチ(九州)マグロ(九州・四国)

産地事業者統合ブリ(九州)ブリ・マダイ(四国)ギンザケ(東北)カンパチ(四国)グ

ループ全体の生産規模

1経営体の生産規模

大規模中規模小規模

中産地事業者統合マダイ(東海)

生産者間協業化マダイ(四国)

流通型企業:ニジマス(東北)

生産者間協業化マグロ(九州)

生産者型企業マダイ(四国)

生産者間協業化ブリ(九州)

漁協協業化ニジマス(東北)

出典: 株式会社水土舎による事業者・研究者へのヒアリング結果をもとに整理

グループ規模・個別経営体の生産規模別配置の概念図

インテグレーション事例の種類インテグレーション事例1(生産者協業化)インテグレーション事例2(産地事業者統合)インテグレーション事例3(生産者型企業)インテグレーション事例4(1社垂直統合)インテグレーション事例5(流通型企業)

1社垂直統合ギンザケ(山陰)

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 2 生産・経営の現状(11)魚粉・配合飼料の状況と国産魚粉の位置づけ32

〇ポイント

◆ 国産養殖用配合飼料原料の輸入魚粉依存度は54%。◆ 国産魚粉生産は過去約106万トン(1984年)を記録するも、マイワシの漁獲減少と伴に減少。近年、マイワシ資源

が増加するが、現時点ではマイワシ水揚げや魚粉製造の拡大は限定的。資源・漁獲増だけで輸入依存解消は困難。

うち輸出量298万トン

資源・漁獲増だけで短期的解決は困難

総生産量492万トン

世界の魚粉生産・流通(年間)

国産魚粉18万トン

輸入魚粉17万トン

肥料畜産飼料用 等

9万トン

養殖飼料用26万トン

国産配合飼料61万トン

輸入配合飼料 2万トン

生餌78万トン

魚粉換算で約16万トン配合飼料換算で約37万トン

国内魚類(給餌)養殖業者

約1600経営体

日本向け17万トン

国内の魚粉生産・流通(年間) 国内の養殖用餌の生産・流通(年間)

うち 魚粉 26万トン

14万トン

12万トン

9万トン

国産魚粉原料の内訳・加工残滓 69万トン・ラウンド 14万トン

約54%は輸入魚粉

釧路●

広尾●

八戸●

石巻●

マイワシ漁7~9月

●主要魚粉生産地

マイワシ資源評価

2003年低位・減少⇒2018年中位・増加

〇国内外の魚粉・配合飼料動向

〇マイワシ資源・漁獲の動向と魚粉製造

〈マイワシ利用の現状〉⚫ 漁獲は7月から9月のスポット原料。⚫ 魚粉生産拡大にはマイワシ以外の原料供給の安

定・拡大が不可欠。試算によると、輸入魚粉依存度を国内漁獲により、これを10%縮減するには2.6万トンの魚粉が必要。

⚫ マイワシで実現するには、約13万トン程度の漁獲の増大が必要だが、ミール製造の主要地の釧路水揚は最盛期の1/9の10万トン弱まで低下。直ちに漁獲拡大には繋がりにくい。

マイワシ資源の国産魚粉化の見通し

マイワシ漁獲量と魚粉生産の推移

※財務省貿易統計、 (一財)日本水産油脂協会調べ、全国漁業協同組合連合会調べのH28~H30データの平均値、又は(公社)日本フィッシュ・ミール協会への取材を踏まえた推定値を記載した。

うち その他 35万トン(穀類・油脂類等)

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Ⅲ我が国の養殖業の状況 3 まとめと課題33

⇒ 我が国魚類養殖の主品目はブリ類、マダイ、クロマグロ、ギンザケ等であるが、この他に30を超える品目の生産が強み。

⇒ 魚類養殖業経営体は、全体の傾向として規模拡大が進展し、それに伴って生産性の向上も図られてきた。一方で、規模拡大の進展度合いには地域差があることも確認される。

⇒ 養殖業による漁場利用は、活用余地のある漁場は限定的で、技術開発や投資等、幅広い可能性の検討が必要。顕在化する担い手問題にも省力化等の推進が必要。

⇒ 全体的に魚類養殖業経営は生産資材(特に餌代)がコストの過半を占め、収益性が低く、事業改善や生産性向上に必要な資金を自己資金で確保することは困難な現状にある。

⇒ 今後、事業改善や生産性の向上のためには、一層の経営効率化とともに外部資金の獲得が必要となる。そのためには、調達先の多様化とともに、事業性の評価が必要。

⇒ 魚類養殖業経営体の中には、生産性の向上した大きな経営体・グループも存在し、これらの経営体・グループでは垂直統合化が進展。こうした経営体では外部資金調達の多様化もみられる。

⇒ コストの過半を占める餌代には、マイワシ漁獲量の回復が期待されるが影響は限定的。マーケット・イン型養殖業の更なる発展に向けた新たな取組が必要。

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34

Ⅳ我が国の養殖業を巡る新たな動き

1 SDGs(持続可能な開発目標)2 農林水産物及び食品の輸出促進に向けた法律案3 改正食品衛生法4 認証(エコラベル)制度の概要5 品質管理の状況6 改正漁業法7 在留資格「特定技能」による新たな外国人材の受入れ8 働き方改革の取組み9 養殖研究・技術①10 養殖研究・技術②11 水産用医薬品の現状12 養殖経営の見える化

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Ⅳ我が国の養殖業を巡る新たな動き 1 SDGs 持続可能な開発目標35

〇ポイント

◆ SDGsの策定後、国内外の企業が持続可能な開発を実現するため自社の取組にSDGs目標を導入する動き。◆ 養殖業成長産業化を実現していくうえで不可欠な目標。

水産以外の企業がSDGSへの貢献の観点から参入。

持続可能な開発目標(SDGs)による養殖業・地域の活性化

⚫ SDGsの策定後、国内外の企業が持続可能な開発を実現するため自社の取組にSDGs目標を導入する動き。

⚫ 海外では養殖企業が自社戦略に採用。⚫ 国内ではSDGsへ貢献するため、水産業以外の企業が自社の強

みを活かした参入の動き。

外国サーモン養殖企業が自社戦略にSDGSの考えを採用

SDGsは養殖業成長産業化を実現する上で不可欠な目標

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Ⅳ我が国の養殖業を巡る新たな動き 2 農林水産物及び食品の輸出促進に向けた法律案36

〇ポイント

◆ 農林水産物及び食品の輸出拡大に向け、輸出国先との規制等に対応するため政府が一体となって取り組む体制整備するため、新たな法律の制定に向けて取り組んでいる。

⚫ 農林水産物及び食品の輸出拡大に向け、これまで日本食のプロモーション等の取組を実施。⚫ 更なる輸出拡大のためには、輸出先国による食品安全等の規制等に対応するため、輸出先国との協議、輸出を円滑化するた

めの加工施設の認定、輸出のための取組を行う事業者の支援について、政府が一体となって取り組むための体制整備が必要。

⚫ 農林水産省に、農林水産大臣を本部長とし、総務大臣、外務大臣、財務大臣、厚労大臣、経産大臣、国交大臣等を本部員とする「農林水産物・食品輸出本部」を設置。

⚫ 本部は、輸出促進に関する基本方針を定め、実行計画(工程表)の作成・進捗管理を行うとともに、関係省庁の事務の調整を行うことにより、政府一体となった輸出の促進を図る。

⚫ これまで法律上の根拠規定のなかった ①輸出証明書の発行、②生産区域の指定、③加工施設の認定について、主務大臣(※)及び都道府県知事等ができる旨を規定。

(※)主務大臣は、農林水産大臣、厚生労働大臣又は財務大臣。

⚫ 民間の登録認定機関による加工施設の認定も可能とする。

⚫ 輸出事業者が作成し認定を受けた輸出事業計画について、食品等流通合理化法及びHACCP支援法(※)に基づく認定計画等とみなして、日本政策金融公庫による融資、債務保証等の支援措置の対象とする。

(※)食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律(平成3年法律第59号)及び食品の製造過程の管理の高度化に関する臨時措置法(平成10年法律第59号)

⚫ 令和2年4月1日から施行。⚫ 農林水産省設置法を改正し、本部の所掌事務を追加。⚫ Ⅱの輸出証明書発行の規定と重複する食品衛生法の規定を削除

Ⅰ 農林水産物・食品輸出本部の設置

Ⅱ 国等が講ずる輸出を円滑化するための措置

Ⅲ 輸出のための取組を行う事業者に対する支援措置

Ⅳ その他

1.背景

2.法律案の概要

農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律案の概要

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Ⅳ我が国養殖業を巡る新たな動き 3 改正食品衛生法37

〇ポイント

◆ 改正食品衛生法により、食品事業者に対しHACCPに沿った衛生管理の制度化や水産食品製造・加工業が食品衛生法に基づく営業許可の対象。

◆ 養殖業は直接規制の対象とならないが、水産食品事業者の衛生管理が強化されることにより、食の安全に係る一層の取組が必要。

⚫ 我が国の食をとりまく環境変化や国際化等に対応し、食品の安全を確保するため、広域的な食中毒事案への対策強化、事業者による衛生管理の向上、食品による健康被害情報等の把握や対応を的確に行うとともに、国際整合的な食品用器具等の衛生規制の整備、実態等に応じた営業許可・届出制度や食品リコール情報の報告制度の創設等の措置を講ずる。

⚫ 原則として、すべての食品等事業者に、一般衛生管理に加え、HACCPに沿った衛生管理の実施を求める。ただし、規模や業種等を考慮した一定の営業者については、取り扱う食品の特性等に応じた衛生管理とする。

(HACCP)事業者が食中毒菌汚染等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品出荷までの全工程の中で、危害要因を除去低減させるために特に重要な工程を管理し、安全性を確保する衛生管理手法。先進国を中心に義務化が進められている。

⚫ 実態に応じた営業許可業種への見直しや、現行の営業許可業種(政令で定める34業種)以外の事業者の届出制の創設を行う。⚫ 水産食品製造・加工業等が新たに営業許可の対象となった。

HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化

営業許可制度の見直し、営業届出制度の創設

1.趣旨

2.改正の概要(関連部分)

食品衛生法等の一部を改正する法律(平成30年6月13日公布)の概要

水産食品事業者の衛生管理が強化

改正食品衛生法の対象外であるが養殖業者の食の安全に係る一層の取組が求められる。

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Ⅳ我が国養殖業を巡る新たな動き 4 認証(エコラベル)制度の概要38

MELはFAOの水産エコラベルガイドラインに則した認証の体制・基準となっていることをGSSIから承認を受けることで、国際的な信頼性を獲得。※日本の漁業認証のMELと養殖認証のAELの両者は今後、統合することで基本合意(2018年3月)。流通加工段階(CoC)認証もMELが実施。

略称 名称 漁業種類 国 発足年

MEL マリン・エコラベル・ジャパン 漁業/養殖業※ 日本 2007

AEL Aquaculture Eco-Label 養殖業 日本 2014

MSC Marine Stewardship Council 漁業 イギリス 1997

ASC Aquaculture Stewardship Council 養殖業 オランダ 2010

SFP Sustainable Fisheries Partnership 漁業 アメリカ 2006

IRF Iceland Responsible Fisheries 漁業 アイスランド 2016

など世界には140以上の様々な水産エコラベルが存在

GSSI:国際規格であるFAOの「責任ある漁業のための行動規範」及び「水産エコラベルガイドライン」を具体化したGSSIの基準に適合しているかを確認し、認証する機関。

〇ポイント

◆ 水産エコラベル認証は、「持続可能性」という観点から多くの国で重要視。また、欧米諸国では消費者ニーズが強い。

◆ MELはGSSIからの認証(国際的な認証として認定)に向けて取組中。MEL認証の国内外の認知度向上により、国際的にも認められる認証へ。海外への輸出に向けた基盤が確立。

〇 様々な水産エコラベル

出典:水産庁資料より引用

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Ⅳ我が国養殖業を巡る新たな動き 5 品質管理の状況39

認証の種類 特徴 対象

FSSC22000ISO 22000の内容を包含し、さらにISO/TS 22002-1(またはISO/TS 22002-4)およびFSSC独自の追加要求事項が加わった国際規格(GFSI承認規格)

腐敗しやすい動物性製品・植物性製品・動物性および植物性の混合製品、常温保存品、化学製品、包装資材の製品に関わる製造業

ISO22000HACCPの内容を全て含み、さらにマネジメントシステムの要素が加味された国際規格。バリューチェーン全体を対象としており、幅広い適用範囲を意図する内容。

フードチェーンに関与する全ての組織(食品製造業およびそのサービス供給者を含む)

HACCP食品の安全性を確保するために開発された食品の衛生管理の方式

原料の入荷から製造・出荷までのすべての工程

ISO9001一貫した製品・サービスを提供し、顧客満足を向上させるためのマネジメントシステム

業種・業態を問わず、あらゆる組織

ISO9001(品質マネイジメントシステム)

HACCP(食品安全管理のガイドライン)

PRP(前提条件プログラム)O-PRP(オペレーション前提条件プログラム)

ISO/TS22002-1 または ISO/TS22002-4FSSC22000追加要求事項

FSSC22000

ISO22000

ISO9001-HACCP

〇ポイント

◆ 食の安全性を確保・証明することは、国内外の消費者に対して重要。◆ EU・米国は輸入食品に対してもHACCPを義務化。◆ 将来的には輸出を行う上でバリューチェーン全体を包含する国際規格の認証取得が必須になる可能性。

〇 様々な認証の関係図

〇 認証の種類と特徴

出典:一般財団法人日本品質保証機構HPより引用

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Ⅳ我が国の養殖業を巡る新たな動き 6 改正漁業法40

〇ポイント

◆ 平成30年12月に漁業法を改正。適切な資源管理と水産業の成長産業化を両立させるため、免許制度等の漁業生産に関する基本的制度を一体的に見直す

⚫ 我が国の沿岸水域が様々な漁業によって重複的に利用されている中で、資源管理を適切に行い、漁場の円滑な利用を確保するために漁業権制度が果たしている機能は極めて重要。

⚫ 漁業者の減少、高齢化が進む中で、地域差はあるが、利用されない漁場も出てきており、どうやって浜を存続させていくかが課題。このため、漁場を適切かつ有効に活用している既存の漁業権者の漁場利用を確保しながら、利用されなくなった漁場については、協業化や地域内外からの新規参入を含め、水面の総合利用を図る。

⚫ 都道府県知事は、海面を総合的に利用するため、海区漁場計画を定める⚫ 都道府県知事は漁場計画の作成に際し水域を利用する漁業者等の意見を聴かなければならない⚫ 新区画の設定に際しても、漁業調整その他公益に支障を及ぼさないように設定することが義務付けられるため、都道府県知

事は周辺で操業する他の漁業への影響を考慮することが不可欠

1.背景

2.概要

改正漁業法の概要 ~養殖・沿岸漁業(漁業権制度の見直し)~

「適切かつ有効」とは、過剰な漁獲を避けて漁業を行いつつ、将来にわたり持続的に漁業生産力を高めるように活用すること。具体的な判断の基準等は技術的助言として国が提示。

漁業権種類 現行 今後

区画漁業権(養殖)漁業者

免許の優先順位を法定漁業者又は漁協(管理)

既存の漁業権者が水域を適切かつ有効に活用している場合は、その者に優先して

免許

特定区画漁業権(漁業者間の調整が必要な養殖業)

漁協(管理)・漁業者

免許の優先順位を法定

免許の現行と今後

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Ⅳ我が国養殖業を巡る新たな動き 8 働き方改革の取組み41

〇ポイント

◆ 愛媛県愛南町でマダイ養殖業を営む安高水産株式会社は作業効率化を図るため現場スタッフの情報共有と作業軽減のため機械化を推進。またバックオフィスの人数を確保。

◆ 養殖作業・人員配置の見直し・改善を重ね、周年出荷と社員の休暇確保を両立。

安高水産の働き方改革の取組事例

【安高水産の事業概要】養殖地域 愛媛県愛南町養殖品目 マダイ(1.5~1.6kg主体)生産規模 170万~180万尾・2900トン従業員 35名(うちバックオフィス8名)出荷頻度 周年

【作業効率化への情報共有と機械化】⚫ 現場スタッフを稚魚チーム、成魚チーム、出荷チームに編成。チーム

長と執行部との定期ミーティングを実施し生産スケジュールや役割分担を随時見直す他、チーム長に裁量を与え状況に応じた業務の効率化。

⚫ 作業効率化に繋がるワクチン摂取専用筏、給餌機、自動活〆機、自動選別機等をメーカーと共同開発し導入し、現場作業を軽減。

⚫ 現場作業の軽減を進め、週休2日制の導入と有休取得を促進。

養殖作業・人員の見直し・改善を重ね周年出荷と社員の休暇確保を両立

安高水産設計のセンサー付バネ秤で自動選別

出荷先毎に重量を計測済みの出荷箱。箱別にサイズ分け

生簀毎に種苗・池入れ時期・給餌履歴を把握。複数ロットを組合わせて様々なサイズの需要に周年で対応

箱詰め後は十分水を切ってから1箱ずつ重量計測

安高水産の水揚風景~徹底した出荷管理~

出典:月刊アクアネット 2019年8月号及び現地調査

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Ⅳ我が国養殖業を巡る新たな動き 9 養殖研究・技術①42

〇ポイント

◆ 様々な魚種で陸上養殖は近年増加傾向にあり、次の段階として大規模プラントや閉鎖循環式陸上養殖の計画が推進。自動給餌システムが開発され、IT技術との組み合わせで餌料効率が上昇。

◆ 沖合養殖プラントが建設され実証試験から本格稼働へ。◆ 種苗の技術が向上しており、耐病や高成長などの育種も進んでいる。また、餌料においても魚粉由来で

はない飼料の開発が進んでいる。

沖合養殖+自動給餌システム(日鉄エンジニアリング(株))

鳥取県境港市沖合 ギンザケ(弓ヶ浜水産)三重県尾鷲市沖合 大型浮沈式生簀(尾鷲物産)

自動給餌システム(IT及びIoT化)

AIを活用した給餌量と給餌タイミングの最適化を図る

次の段階へ

人工種苗マダイ・ハタ類・トラフグ・ヒラメ・カンパチなどは確立ブリ類・クロマグロでは発展

途上

完全陸上養殖お嬢サバ(JR西日本)

トラフグ((株)夢創造)など

閉鎖循環式陸上養殖サバ・サーモンなど

次の段階へ

出典:緑書房「種苗生産と育種2014年版)」「養殖飼料と低魚粉2016年版」、日本経済新聞、みなと新聞、新日鉄住金エンジニアリングHPより作成

新魚種=ハタ類など育種=ブリ類・サーモン・マダイなど

飼料技術代替タンパクの多様化

魚油代替=藻類(研究段階)

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Ⅳ我が国養殖業を巡る新たな動き 11 水産用医薬品の現状43

資料:株式会社水土舎による事業者・研究者へのヒアリング結果をもとに整理

〇ポイント

◆ 主要な輸出国であるEUやアメリカの生産物に対しての薬の使用は、相手国において現状では認可されているものを使用。現在も抗菌剤の使用認可に向け各国と交渉中。

◆ 輸出を考える上で、VICH以外の国別の薬の規制に対して知見が不足しているため、情報の収集が不可欠。

項目 国内海外

EU アメリカ 東南アジア

魚種について 多様 殆どがサーモン 多様

抗菌剤使用量・残留を

規制全てにおいて厳しい

基準で規制国内の使用基準優占 薬についてほとんど

知見がないワクチン 残留に関する規制なし

現在の動き

• 「動物用医薬品の承認審査資料の調和に関する国際協力(VICH)」が、1996年に国際獣疫事務局(OIE)傘下で日米EU の三極の規制当局及び企業代表をメンバーとして組織され、動物用医薬品の承認申請資料の共通利用を通じて開発費の削減や承認審査の迅速化することで、臨床現場への安価かつ迅速な動物用医薬品の供給を図っている。

• 水産庁加工流通課が現在日本で使用頻度の高い抗菌剤について、アメリカでの使用認可に向けて交渉中。

• 6月に閣議決定された規制改革実施計画において、「魚病対策の迅速化」に取り組むこととなり、養殖業の現場における水産用医薬品の使用基準に対する要望や獣医師による診療状況等の実態調査を実施した。また、獣医師、製薬会社、水産試験場、大学等研究機関、養殖業者等により構成される「魚病対策促進協議会」を設立した。

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Ⅳ我が国養殖業を巡る新たな動き 12 養殖経営の見える化44

〇ポイント

◆ 養殖業者・金融機関の双方の理解促進に繋がる新たな融資手法の開発が求められ、令和元年度中に「養殖業の事業性評価ガイドライン(仮称)」を策定予定。

◆ 養殖経営の見える化が進むことに地方金融機関等関係者からの期待の声が大きい。

⚫ 国が進める養殖業成長産業化を実現するため、養殖業者・金融機関の双方が新たな融資手法の開発が求められている。

⚫ 金融機関が養殖業の生産・経営や取引実態を理解し、養殖業者は金融機関等に対し十分な説明を行うことを通じ、養殖業において金融機能が適切に発揮されるための環境整備を図る一環として、「養殖業の事業性評価ガイドライン」(仮称)を令和元年度中を目処に策定予定。

養殖業の事業性評価ガイドライン(仮称)の構成イメージ

1.ガイドライン趣旨2.養殖業に対する事業性評価の基本的留意点(1) 経営特徴(2) 金融事情(3) 食の安全・環境対応(4) リスクとその回避策(5) 養殖業・市場の将来性 等3.事業性評価の項目と評価手法4.養殖業ビジネス評価書等

魚類養殖業に事業性評価を導入

養殖業ビジネス評価書のアウトプット一例(イメージ)

(参考)事業性評価 金融庁平成26事務年度金融モニタリング基本方針(抜粋)

Ⅱ 重点施策2 事業性評価に基づく融資等『(略)金融機関は、財務データや担保・補償に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し(「事業性評価」)、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していくことが求められる。また、中小企業に対しては、引き続き、きめ細かく対応し、円滑な資金供給等に努めることが求められる。』

地域金融機関向け紙面に取り上げられた他、養殖産地の地域金融機関から問合せがある等期待の声が大きい

ニッキン 2019/8/30付け 一面

養殖経営の見える化