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2015 年度卒業研究 古代朝鮮史に記録された天文現象 その検証 G12G014 江藤 大輔 生物地球学部 生物地球学科 岡山理科大学

古代朝鮮史に記録された天文現象 と その検証kato/f5_file/2015_Eto_final.pdf · 2015 年度卒業研究 古代朝鮮史に記録された天文現象 と その検証

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2015 年度卒業研究

古代朝鮮史に記録された天文現象

その検証

G12G014

江藤 大輔

生物地球学部 生物地球学科

岡山理科大学

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目 次

1.はじめに

1.1 研究の歴史

1.2 惑星の運行論について

1.2.1 ステラナビゲータ

1.2.2 NASA/JPL 天体暦 DE406 とは

NASA/JPL 天体暦インストール方法

1.2.3 摂動とは

2.三国史記

2.1 三国史記の内容

2.2 暦について

2.3 日付の変換方法

2.4 天文記事

3.主な天文現象とその記録の検証

3.1 具体例①

3.2 具体例②

3.3 具体例③

3.4 具体例④

3.5 具体例⑤

4.結果・考察

4.1 検証結果

4.2 惑星運行論の検証

4.3 三国史記の信頼性

5.まとめ

6.参考文献

付録

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1.はじめに

1.1 研究の歴史

何年何月何日に日食が起こる。天体運行論やコンピューター

技術が発展している現在、そのような予測が簡単に正確にわか

るようになってきている。このことは突発的に可能になったわ

けではなく、世界のいくつかの地域に天文観測記録が残ってい

たため、そこから統計的に推測することや、万有引力の基づく天

体運行論と比較することによって可能になってきたものである。

日本や中国や朝鮮にあっては、古くから宮廷の天文官が天変の

発生を記録していた。中国には天文記録専門の「天文志」または

「五行志」というものがあり、完全とも言える記録がなされてい

る。日本にかぎっては「日本書紀」の中に天文記録が所々に挿入

されているが、「天文志」といった専門的なものはない。

これらについては、東洋の古天文学を中心に研究した斉藤

(1982)によって、検証がなされている。斉藤は主に日本と中国

の古記録を中心に扱い、天体運行論を考慮した上で詳細な推測

を行った。朝鮮の記録についても研究したが、日本や中国の記録

ほど詳細に探求することはなかった。斉藤は自身の手計算によ

り天体の位置を計算し、それを古記録とてらし合わせている。今

から30年ほど前になされた研究であり、コンピューター技術は

現代ほど発達していないので、そうせざるを得なかたのである。

もっとも、後期にはコンピューターによる計算を大幅にとり入

れるようになった。

それに比べ今日では、コンピューターに数字を打ち込めば自

動で計算してくれる。コンピューターでの計算はごく最近の天

体の位置を計算するならば、ほぼ完全なデータを算出する。しか

し、それは過去300年間のものに限られ、それ以前は誤差が生

じてくる可能性が大きい。理由は軌道計算が発達し始めたのが

約300年前に相当し、その時、データも正確なものが得られ始

めたからである。従って、それ以前のことを正確に調べようとす

る際は、歴史上の記録を引用し、現代の運行論と照らし合わせて

真偽を確かめる必要がある。

日本や中国は斉藤によって正確に研究されているので、ここ

では朝鮮における記録により、その真偽を検討し、また現代の天

体運行論の検証を試みることにした。

1.2 惑星の運行論について

1.2.1 ステラナビゲータ

現代の天体運行論を検証するにあたって、今回の研究ではコ

ンピューター・ソフトウェアのアストロアーツ社が出している

ステラナビゲータのバージョン9.2を使用した。このソフトは過

去、現在、未来の星空でくり広げられるさまざまな天文現象や宇

宙旅行をシミュレーションするもので、夕焼けや薄明、月明かり、

地上光までもリアルに再現できる。今回は主に惑星、日食、星座

に関する地球から観測される現象のシミュレーションをおこな

ったが、惑星や惑星間にも視点を変えることができるので、天体

現象を調べるには優れものである。

このソフトウェアの精度としては「内部で計算される月・惑星

の位置は、紀元前 3000 年から西暦 3000 年までの範囲について

は摂動を考慮した計算で求められている。この範囲内では、地球

から見た月・各惑星の位置は NASA/JPL の天体暦 DE406 と比

較して位置座標の誤差が恒星は0.1秒角の精度、月・惑星は1秒

角の精度に収まっている。上記以外の日時範囲ではこれよりも

精度を落とした計算を行っているが、歴史上記録が残っている

時代に起きた日食等の天文現象を正確に再現できる程度には十

分な計算精度を持っている。しかし有史時代を超える数万年ス

ケールの過去や未来の惑星位置については未検証である。」との

ことである。

1.2.2 NASA/JPLの天体暦 DE406とは

上記で NASA/JPL の天体暦 DE406 がステラナビゲータで参

考にされているとのことだが、これは米国航空宇宙局(NASA)

のジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory:JPL)が開発し、

一般に公開している太陽系天体の基本暦のことである。現在、最

も優れた天体暦として定評があり、国際地球回転観測事業

(International Earth Rotation Service:IERS)の標準天体暦となって

おり、その最新版は、DE405/LE405 である。

ステラナビゲータでの天体運行論とはどのようなものかを調

べようとする際、この暦をはずすことはできないので、実際に使

用してみることとした。JPLの天体暦と、その他、理科年表など

のデータ(2000 年前後)と照らし合わせ、この精度を確認した

いと考えたからである。この暦はインターネット上に作成方法

が掲載されており、使用するファイルをインストールすること

により確認できるが、問題点が見られた。これからインストール

方法とともにそれらを紹介する。

ⅰ.JPLの天体暦をインストールする際の準備

ここでインストールするファイルはプログラム言語で書かれ

ているため、これを解釈するための別のソフトウェアをインス

トールする必要がある。プログラム言語とはコンピューターが

解釈する言語であり、私たちが普段使っているものとは異な

る。私たちが普段使用する言語をコンピューターに直接打って

もコンピューターはそのままでは解釈できないため、それを機

械語に翻訳するツールを準備しなければならない。その作業を

コンパイルと呼び、ソフトウェアをコンパイラと呼ぶ。代表的

なものにgfortranやC言語、Javaなどがある。今回はその中で

gfortranをもちいた。インターネットで検索すると、岡山理科

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大学のあらき先生が図1のようなページで詳しくインストール

方法を説明されていたので、こちらを参考にしながらインスト

ールをおこなった。

ⅱ.JPLの天体暦の作成手順

gfortranのインストールをおこなった後、本題の JPLの天体

暦の作成に入る。作成方法を説明した下記表1のようなURL

のページがあったので以下引用し、その概略を説明する。

図1 あらき先生のホームページ

表1.http://www2.nctoyama.ac.jp/~mkawai/almanac/jplephem/jpldoc.htmlによる解説

1.ファイルのダウンロード

下記のURLに必要なデータのディレクトリが存在するのでそれらをコンピューターに保存する。

ディレクトリ: ftp://ssd.jpl.nasa.gov/pub/eph/planets/

README: ダウンロード説明書

usrguide: インストール説明書

testeph.f: JPL暦ソースファイル

asc2eph.f: 暦データ変換プログラム

ascSYYYY.XXX: アスキー形式暦データ

header.XXX: アスキー形式暦ヘッダデータ

testpo.XXX: 検証用データ

上記においてXXXは、JPL暦の種類を示す番号であり、200,403,405,406のいずれかである。最新版がDE405という

ことなので今回はXXX=405としてダウンロードする。以下、XXX=405として、JPL暦DE405のインストール方法

について説明する。

2.インストール

(1) コマンドプロンプトを立ち上げ保存先のディレクトリを確認し分割された暦を結合して infile.405を作成する。今回は2000年

前後のデータを用いるので、下記のように打ち込み、1900年から2080年のものを結合する。

copy header.405+ascp1900.405+・・・・・+ascp2080.405 infile.405

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(2)エディタ(Tera Pad)を用いて、asc2eph.fを次のように修正する。

☆パラメタNRECLを4にセットする。

(36行目'PARAMETER ( NRECL = 1 )' をコメント アウトする)

(3)修正したファイルを asc2eph2.fなどと名前をつけ保存し、コマンドプロンプト上にてgfortranを用いてコンパイル・リンクす

る。

(4)a.exeというアプリケーションが作成されるのでそれを用いて、アスキー形式の暦 infile.405をオブジェクト形式に変換する。

a.exe < infile.405

上記のコマンドを実行することによりオブジェクト形式のファイル jplephが自動的に作成される。

・補足

プログラム asc2eph.fの変数T1に開始日、T2に終了日をそれぞれ

ユリウス日でセットした場合、プログラム asc2ephは、infile.405

からT1~T2までの暦データを切り出してオブジェクト形式の

暦ファイル jplephを作成する。

(5)エディタ(Tera Pad)を用いて、testeph.fを次のように修正する。

☆パラメタNRECL,KSIZEを次のようにセットする。

NRECL=4 , KSIZE=2036

(DE405,DE403はKSIZE=2036、DE200はKSIZE=1652、DE406はKSIZE=1456)

ここで、NRECLは、CPUに依存しており(CPUによってはうまく作動しない場合がある)、KSIZEは暦に依存している。

☆NAMFILにオブジェクト形式 JPL暦ファイル名をセットする。(NAMFIL='jpleph')

☆861行目のコメントアウトをはずす。

CALL FSIZER2(NRECL,KSIZE,NRFILE,NAMFIL)

(6)修正したファイルに testeph2.f等の名前をつけて保存し、コマンドプロンプト上にてgfortranを用いてコンパイル・リンクす

る。その後再び a.exeのアプリケーションが作成されるのでそれと testpo.405を用いて暦が正常にインストールされたかどうか確

認する。

a.exe < testpo.405

この結果、jpl value, user value, differenceが表示される。

differenceの欄が0 になっていれば、暦は正常にインストールされている。

*testephというプログラムについて

testephとはもともとの天体暦から事例を用いてメインルーティンを読み込んだり補間したりして計算された JPLの天体暦をテ

ストするものである。また、ユーザに最終的な関心のあるサブルーティンも含んでいる。一度正常に作動しサブルーティンとイ

ンストールのプロセスをユーザが引き出すことができれば完璧である。

スタンダードインプット経由で testephのために”testpo.XXX”を供給しなければならない。“testpo.XXX”はDEXXXの天体暦のた

めのテストケースを含む特別な形式のファイルである。

コラム1-3の”EOT”によって下された初期識別テキストの後に数量に従っているテストファイルが含まれている。

JPL天体暦番号

カレンダーの日付

ジュリアン天体暦の日付

ターゲットナンバー(1-火星、2-金星、3-地球、4-火星、5-木星、6-土星、7-天王星、8-海王星、9-冥王星、10-

月、11-太陽、12-太陽系の重心、13-地球と月の間の重心、14-章動(太陽や月の引力により地球の自転軸は歳差運動を

するが、この引力の大きさは絶えず変化するため、自転軸が微小な揺れを周期的に起こすという現象。大きいものの周期は

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18.6年となる。)、15-秤動(天体の自転または公転において,天体が平均の位置のまわりに周期的にふらつく現象)

センターナンバー(ターゲットナンバーのような同じコード)

座標番号(1-x,2-y,…6-zdot)

座標[au,au/day]

それぞれのテストケースインプットのための testeph

-DEXXXに含まれるデータから対応した状態を計算する

-2組を比較する

-もしいくつかの状態要素の間の差が10の―13乗より大きかったらエラーメッセージが書く

-状態と差の情報は100回テスト処理されたものである

このプログラムはスタンダードフォートラン―77によって書かれたものである。

しかしながら、コンパイラに依存するものは2つある。それは両方ともダイレクト・アクセスファイルを開いたり読み込んだり

する必要がある。それらはサブルーティンFSIZERi(i=1,3)で対処される。(このサブルーティンは3つのバージョンがある)

1)OPENの文のRECLのパラメーターは記録ごとの単位数字である。いくつかのコンパイラでは、それはバイト単位で与えら

れていて、中には単精度で与えられている。もしRECLのバイトが与えられていたら testephのサブルーティンFSIZERの中の、

NRECLのパラメーターを4に設定する必要があり、もしRECLに言葉が与えられていたらNRECLを1に設定する必要があ

る。(疑いがある場合UNIXで4が使われていてPCとVAXで1が使われている)

2)またOPENの文で、RECLの正確な値をこのプログラムが知っている必要がある。(単精度でのNRECLの番号)これがもう

ひとつの JPLの天体暦から変わってから、RECLが何とか決定されてOPENの文が与えられなければならない。コンパイラの上

に依存した3つの方法がある。私たちはサブルーティンFSIZERの3つのバージョンに含めた、それぞれの方法は

a) ファイルを開く前に記録から自動的に長さを見つけるには INQUIREの文を使う。この作業はVAXのためで、UNIXのため

ではない。

b) RECLの任意の値でファイルを開き、初めの記録を読み込み、情報を使いその上でRECLの正確な値を決定し記録する。そ

の後それを正確な値でファイルを閉じて再び開く。これはRECLの初期の値に限りUNIXコンパイラのための動作のように見え

て正確な値に満たさないが、初めのファイルから必要な情報を得るには十分に大きい。(ほかのコンパイラにおいては、唯一

RECLの正確な値でファイルを開くことができてからはこれは動作しない。)

c) RECLの値でつなぐ。この番号はDE200のためのNRECL*1652、DE405のためのNRECL*2036、そしてDE406のための

NRECL*1456

3.JPL暦の実行

testeph.fは、JPL計算値とユーザ計算値を比較してプログラムが正常に動作しているかどうかを確かめるためのものであり、

時刻,惑星番号,座標原点を指定して惑星の位置と速度を表示させるためには、testeph.f のメインプログラムを修正する必要が

ある。

一例として、キーボードから時刻,惑星番号,座標原点を入力して、その惑星の位置と速度を表示するように testeph.fを修正

し、jplde405.fを作成した。入力パラメータと出力は次の通りである。

(1)入力パラメータ

ET: 時刻( 太陽系力学時のユリウス日)

NTARG: 惑星番号( 1:水星、2: 金星、3: 地球、4: 火星、~ 、10: 月)

NCTR: 座標原点 NCTR=3の場合は地球重心を原点とする座標系でNTARGで指定した惑星の

位置と速度を出力する)

(2)出力

惑星の位置と速度。位置の単位は天文単位[AU]、速度の単位は[AU/DAY]

jplde405.fをコンパイルした後、実行すると次のようになる。

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☆jplde405実行例

JPL TEST-EPHEMERIS program. Last modified July 1997.

Julian ephemeris date ? 2451544.5

Planet number

[1:Mercury,2:Venus,3:Earth,4:Mars,5:Jupiter,6:Saturn,

7:Uranus,8:Neptune,9:Pluto,10:Moon,11:Sun] ? 6

Center number

[12:solar-system barycenter, 3:Earth center] ? 12

Name:Saturn Date [julian Day]: 2451544.500

Position(x,y,z) [AU]:

6.4014180589088 6.1702492583163 2.2730300448508

Velocity(Vx,Vy,Vz) [AU/Day]:

-0.0042857437755 0.0035227715779 0.0016393353061

< 補足>

JPL暦の時刻は太陽系力学時(solar system Barycentric Dynamical Time;TDB)であり、座標系はDE200についてはJ2000.0

赤道面座標系、それ以外は国際天球座標系 (The International Celestial Reference System;ICRS) である。

ⅲ.作成途中で生じる問題点と対策

上記の(6)での暦が正常にインストールされているかを確認

する作業において、すべてのウィンドウズ・マシンでこのプログ

ラムが実行できるわけではないことがわかった。具体的には今

回用いているプログラム言語はwindows 7の32bit以前用に作ら

れたものであり、windows 7 64bit版やwindows 8、windows 10な

どではコマンドを実行した際

Backtrace for this error:

#0 ffffffffffffffff…

などのように表示され、作動しない。今回、使用した PC は

windows 10 で、この上では作動しなかったので、VMware

workstationという現在のOSの上に仮想のOSを構築することが

できるソフトウェアを用いてwindows 7 64bit 版をインストール

した。windows 7であれば可能であるかもしれないという試みで

やってみたのだが、windows 10 の場合とおなじエラーが発生し

た。そこで、研究室にある他の PC で 32bit 版のOS を使用して

いるもので行ったところ、うまく作動した。従って、ビットレー

トは32でwindows 7以前のOSでなければならないという結論

になった。

1.2.3 摂動とは

摂動とは一般的に、ある物体に働く力の作用のうち,主要な力

に対して,付加的な小さな力の作用をいう。代表例としては太陽

の引力による惑星の楕円軌道にずれを生じさせる他の惑星の引

力などである。

仮に、太陽と周囲を公転する惑星が1個しかなければ、その運

動は永遠に続くはずである。しかし現実の太陽系には多くの惑

星・小惑星・彗星があり、互いに引力を及ぼしあっており、中で

も最も大きく影響するのは木星と言われている。火星は木星に

近づいたり遠ざかったりする間に木星の引力の影響を受ける。

特に火星が木星に近づくときは木星に向かって加速し、逆に遠

ざかるときは減速する。木星の質量は太陽の1000分の1以

下、距離も火星-太陽の距離の3倍あるので火星に及ぼす木星

の引力は太陽の1万分の1以下になる。この小さな影響が長期

間に及べばその影響はおおきくなる。

また、木星が火星に対して摂動を及ぼすわけだが、火星も木星

に同じく摂動を及ぼす。同じようにその他の惑星も火星に摂動

を及ぼし、火星も他の惑星に摂動を及ぼす。このように多くの天

体がお互いに引力を及ぼしあっている状態を多体問題とよび、

それを厳密に解く方法はいまだに知られていない。よって、惑星

の長期間の運動を調べるために多体問題を解かねばならないが、

近似的な計算でしかできないのである。

コンピュータを使った計算では初期値(いろいろな惑星の軌

道要素)を与えて、一定の時間(例えば1日)を区切り、A星に

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対するB星、C星の引力を計算しA星の1日後の位置を求める。

これをB、C星に対してもおこない、1日後の位置を出発点とし

て更に1日後の位置を求めるといった数値積分をおこなう。そ

こでは当然、時間間隔を短く取ればよい精度が得られ、遠い惑星

や小さい惑星の引力を考慮すればより正確になるが、その分計

算量は増大してくことになる。

そして、軌道要素はある時点での惑星の運動を楕円だと仮定

したときの形で、実際には少しずつずれていくため、軌道要素は

少しずつ変化することになる。それは、数十年程度の変化なら一

次関数、もしくは二次関数に近似することができ、要素の変化を

組み入れることも可能となっている。

しかし、実際には一定的な変化が永遠に続くわけでもなく、数

百年以上の長い期間では軌道要素はある一定の範囲以上の変化

はせず、波打つように振動していることがコンピュータシミュ

レーションによりわかってきている。そして、それぞれの離心率

の値も現在は増加傾向にあるが、やがて減少傾向に変化してい

くと思われる。いつ減少に変化するかはどれだけ多くの惑星の

影響を加味して、どれくらいの時間間隔で計算するかによって

結果が変わってくる。従って、より多くの惑星とより短い時間間

隔、より長期間にわたる計算をすることになるため、計算能力の

高いコンピュータを長時間使えることが必要となる。

現在のデータを元にして、天体が過去にどこにいたかを推測

し、彗星の軌道について彗星の運動を太陽と木星の引力を考慮

して過去にさかのぼることにより計算できた事例がある。その

ようにすると太陽系の惑星や彗星の軌道を何億年も過去や未来

にわたってしることができるのかと思わされる。しかし残念な

がらそれは不可能で、その原因は現在の観測技術にあり、天体の

位置は8桁くらいの精度で求めるのがやっとの状態となってい

る。信用できるのは8桁目まであるため、1年の観測で得られた

結果から10年後の位置を予想すれば最後の1桁の観測誤差が

10倍となり7桁しか信用できないことになる。つまり、数千年

スケールになれば信頼できるのは4~5桁になり、いくつかの

惑星の正確な位置観測はせいぜい100年で、摂動による軌道

変化も10万年のスケールでしか正確に知り得ないことになる。

現在の最新の測定技術は観測精度が10桁までとなっており、

正確さを誇るGPS衛星は約20000km上空から約2セン

チメートルの誤差があると言われている。これがちょうど10

の10乗になるわけだが、そのような精度で観測できることは

珍しい。実際、実用上では数十センチメートルの観測誤差があり、

カーナビでは2メートル(8桁)が限界となっている。これらの

原因としては、大気のゆらぎによる電波の屈折などで、残念なが

ら惑星観測はさらに一桁精度が悪い現状となっている。

先ほど彗星の運動を計算できた事例があると述べたが、そう

いったことはまれで、すべての彗星においては不可能である。今

回ステラナビゲータにより、シミュレーションを試みたわけだ

が、彗星の観測などは次の回帰を正確に知ることができないた

め実施できなかった。それには彗星独自の以下の5つの理由が

あげられる。

①突然現れて数ヶ月で太陽の周りをまわって遠ざかっていく

ため観測期間が短い

②ガスで包まれていて中心核がはっきり見えない

③ジェットのようにガスを放出して中心核が不規則に運動す

るため

④質量が小さいため他の天体の影響を受けやすい

⑤太陽から遠ざかったとき小惑星などに接近しても観測でき

ない

このように惑星以上に過去や未来の位置の予測が困難なため、

未知なものとなっている。

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2.三国史記

2.1 三国史記の内容

三国史記とは朝鮮半島の三国時代の歴史書物で、三国時代と

は高句麗、百済、新羅が朝鮮半島を統一していた時代のことであ

る。

図2 三国史記時代の朝鮮半島の勢力区分

時代的には紀元前 1 世紀から紀元後 7 世紀までとなる。全部

で50巻から構成されていて、1~28巻は三国それぞれの国

で起きたできごとをまとめた本紀、29~31巻は年表、32巻

~40巻は祭祀や服装、地理や職務などをまとめた雑志、41~

50巻には列伝がまとめられている。

今回、検証に用いたのは東洋文庫から出版されている全4巻

の井上秀雄訳注のもの(井上 1986)である。これは1巻~2巻

に本紀、3巻に年表と雑志、4巻に列伝がまとめられている。年

表と雑志には天文に関する記録は一切見られなかったため、本

紀が記載されている1巻~2巻の記録を用いた。

2.2 暦について

記録を見ていくとまず目につくのは、日付が庚甲の日や丁卯

の日といった見覚えのない数え方になっていることである。中

国の暦が使用され、これは干支(かんし、えと)というもので十

干と十二支を組み合わせた60を周期とする数詞である。十干

とは甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸の順番でくり返さ

れる10個の要素で、十二支は子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・

申・酉・戌・亥の順番でくり返される12個の要素である。組み

合わせる際、左側に十干、右側に十二支を合わせる。西暦の暦を

使っている我々の感覚からすると、1日から31日まで行って

月が変わるとまた1日から始まるように、月ごとに日付がリセ

ットされるが、干支は月が変わっても、前日の日付の次の日付で

カウントされ月の変わり目に関係なく、60周期でまわってい

く。

この時代、朝鮮半島ではこういった中国の暦とその国におい

ての王様の年号が使われていたわけだが、これは同時代の西暦

とは大きく異なる。西暦はひと月の長さが30日から31日に

対して、中国の暦は29日から30日と1日ほど少ない太陰太

陽暦であった。太陰太陽暦では、通常、1年間の日数が太陽暦よ

り足りないが、その代わり、ある年はある月の後に閏何月といっ

た閏の月を入れ、1年を13ヶ月にして季節とのずれを調整する

といった方法をとっていた。そのため西暦の日付と中国の日付

を比べると一か月以上の差がみられる。

2.3 日付の変換方法

今回ステラナビゲータで検証を行うわけだが、日付は西暦で

しか打ち込むことができないため、中国の暦を西暦に変換する

必要がある。インターネットにより暦の対応を調べるわけだが、

ほとんどのページがごく最近の日付にのみ対応しているもので

1000年以上以前の対照表はなかなか見つからなかった。

そういった中にひとつだけ、図 3 の hosi.org という世界中の

様々な暦を西暦(ユリウス暦・グレゴリオ暦)に変換するページ

を発見できた。これは左側の欄でわかっている国の時代を選び、

上部の日付記入欄にその国の日付を入力することによって、対

応する西暦や世界各国の日付を算出する仕組みとなっている。

驚くべきことに、紀元前までの暦日を求めることができる。

今回は朝鮮における昔の暦となるので、左の欄から東アジア

→過去→朝鮮の順番に選択した。高句麗、新羅、百済においてそ

の日付を入力行ったわけだが、最後に「更新する」のボタンを押

して初めて変わった。ここで各暦が出るが、このとき入力した日

付が年号と年だけであれば、1年分のグレゴリオ暦の対応カレン

ダー、月までを入力すればその月のグレゴリオ暦の対応カレン

ダーが表示され、日まで入力すれば各国の日付の一覧表がでる。

三国史記の記録上に日にちまでの記録があれば、そのときのユ

リウス暦を記録すればいいわけだが、月までであれば対応する

グレゴリオ暦を 1 か月分記録し、それを再びユリウス暦に変換

をして記録を行う。従って、そのような記録に関しては、ステラ

ナビゲータ上でその月の間の日を1日ずつ調べる必要があった。

2.4 天文記事

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そのようにして作成した同定表が付録の表である。ここには

当時の朝鮮の日付とその時の天文記事と現象、それに対応する

グレゴリオ暦とユリウス暦を示している。天文記事の抽出・日付

調べの後の現象の種類別の記録数は表2、3のようになり、意外

に多岐にわたることがわかった。いずれも日食に関する記事が

多くその次に惑星に関するものが多い。ここで惑星と示したも

のは惑星同士や惑星と太陽や月が重なったり、近づいたりした

ものを示し、その他には星と星の重なりや太陽や月の気象現象

による見え方の違いなどが含まれる。様々な種類の天文現象が

あるが、今回はステラナビゲータ上で検証不能であった流星や

落星、妖光、また月や太陽に関する記事は取り扱わず、日食や惑

星に関するものについて行った。ここからは実際に検証を行っ

た具体例を見ていく。

図3 hosi.orgのページ

表2 三国史記1巻における天文記事の種類と記録数

記事の種類 惑星 日食 彗星 流星 落星 妖光・妖星 輝星 その他 合計

記録数 27 30 19 24 8 1 8 9 126

割合(%) 21 24 15 19 6 1 6 7 99

表3 三国史記2巻における天文記事の種類と記録数

記事の種類 惑星 日食 彗星 流星 落星 妖光・妖星 輝星 その他 合計

記録数 12 37 19 6 0 0 0 4 78

割合(%) 15 47 24 8 0 0 0 5 99

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3.主な天文現象とその記録の検証

これから紹介する具体例①・②・⑤は記録とシミュレーションが一致したもの、具体例③・④は一致しなかったものとなる。

3.1 具体例①

逸聖尼師今(いつせいにしきん)10年、夏6月、乙丑の日、蛍惑が鎮星を犯した。(ユリウス暦では143/7/23)

乙丑の日はhosi.orgのサイトによると、当時の朝鮮の暦で24日を示し、蛍惑は火星、鎮星は土星を示す。「犯す」というのは(斉藤

1982)によると、天体同士が異常に接近した際に0.7°以下の接近のことであり、それ以上は「合」と呼ぶ。これを実際にステラナビゲ

ータ上でシミュレートしたものが次の図4である。

この図はステラナビゲータ画面上で実物大ものであり、土星と火星がほぼ重なっているように見える。このままの大きさではどの

程度惑星同士が近づいているかわからないので、拡大してみる。月と火星・土星を同じ視野範囲(2.1°)で拡大した図が次の図5, 6で

ある。この2つの図はステラナビゲータ上での画像をスクリーンショットし、そのままの大きさで張り付けたものである。月の大き

さと火星・土星間の距離を比較するため、それぞれの大きさを黄色い矢印で示した。このときの月の視直径は、ステラナビゲータによ

ると31分角で、おおよそ0.5°となっている。図6と比較すると、月とほぼ同じ、もしくはそれ以下の距離と見て取れるので、火星

と土星の距離は0.5°以下であることがわかる。よって、0.7°以下の接近が「犯す」ということなので、この事例は正しいといえる。

図4 ステラナビゲータ上での事例①

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図5 具体例①の月の拡大図(視野範囲2.1°、実寸大)

図6 具体例①の火星・土星の拡大図(視野範囲2.1、実寸大°)

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3.2 具体例②

武寧王(ぶねいおう)16年、春3月、戊辰(ぼしん)の日、朔(ついたち)日食があった(ユリウス暦では516/4/18)

この事例は具体例①よりもわかりやすかったものである。こちらは同様に記録とシミュレーションが一致するもので、はっきりと

その様子を見ることができた。その図が次の図7である。

記録の中でも一番多い日食の記事だが、その中でもこれはきれいな金環日食が確認できた事例である。約70個日食の記録がある

が、ほとんどの記録はこのようにステラナビゲータで確認することができた。これは記録の信頼度ならびにステラナビゲータの精度

の良さをものがたっている良い事例と言える。

図7 事例②のシミュレーション

3.3 具体例③

文武王(ぶんぶおう)19年、6月、太白が月と重なった。(ユリウス暦では679/7/13~679/8/11)

この事例については詳しい日付までが記録されていないので、同じ月に当てはまる日についてすべてシミュレーションを行った。

すると、当該の日付から少し外れた679/7/11に最も近づくことが確認できた。その時の図が図8である。これ以外にはこれに近い日

付で近づくことは観測されなかったので、おそらくこのときの様子が記録されたものと思われる。この図は同じく拡大していないが、

重なっていないことがわかる。その下の図8では、事例①と同じように拡大(視野範囲6.3°)したものに矢印を加え比較してみたが、

月約4個半分離れていることがわかった。

よって、この事例は日付が若干ずれている上に、月と金星が重ならなかったため、完全に一致しなかった事例といえる。また、日付

が異なったのは、記録の間違いによるものか、hosi.orgのズレによるものか(考えにくいが)、は少々曖昧だが、重なったということ

に関しては嘘を記述するということは考えにくい。ここでは若干ステラナビゲータでの誤差を疑った。

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図8 ステラナビゲータ上での事例②

図9 事例③の拡大図

3.4 具体例④

聖徳王(せいとくおう)14年、秋9月、太白(金星)が庶子星(北極星)をおおった。(ユリウス暦では715/10/2~715/10/31)

この事例については、惑星軌道を理解していたら明らかにあり得ないと気づくものである。そもそも金星や他の惑星軌道は南の空

に傾いた軌道のため、北の空の中心である北極星に重なることは絶対にあり得ない。これは、おそらく、当時の観測者がほかの星座の

星と北極星を見間違えたためと思われる。北極星はこぐま座に属しこぐま座はひしゃく型をしている。ステラナビゲータでシミュレ

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ートするとちょうどこの時期に南の空において、似たようなひしゃく型の星座が 2 つ存在した。金星がさそり座に重なり、そのすぐ

横に南斗六星が存在した。それらの図が下の図10・図11である。

図10より金星はさそり座と重なり、同時に木星も南斗六星と重なっていることがうかがえる。この記事が何のミスによるものなの

かは正確に特定することはできないが、考えられるのはこれらの見間違いと、書き間違えである。これらの朝鮮の記事はほとんどが

中国から引用したものであり、その時の純粋な書き間違えから意図的な書き換えまで、考えられる。意図的な書き換えは、例えば南斗

六星を知らない朝鮮の人が「北斗七星のことを言っているのだろう」と勝手に書き換えたりするようなことで、中国の記録を朝鮮の

解釈で変えてしまうようなことである。いずれにせよ、この時代の内容では何が正しいとは言い難いので、この件においてはステラ

ナビゲータを信用することとした。

図10 金星と南斗六星とさそり座

図11 こぐま座と北極星

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3.5 具体例⑤

哀荘王(あいそうおう)10年、春正月、月が畢宿(ひつしゅく)をよぎった。(ユリウス暦では809/1/20~809/2/17)

こちらの事例は月が星座をよぎったというものである。畢宿とは二十八宿のひとつで、二十八宿とは天球における天の赤道を28個

のエリアに不均等分割したものである。中国にて天文学や占星術において使われてきたものであり、朝鮮もこれを引用した。日本で

は江戸時代に広まったとされ、暦などにて用いられていた。

畢宿は現代の牡牛座の顔の部分の七星にあたり、下の図12、13がそれにあたる。ここに実際に月がよぎった図が図14である。見

ると、おうし座のちょうど右目のところに月がきていることがわかる。こちらが観測されたのはユリウス暦において 809/1/28 の 20

時にあたり上記の日付の期間に該当するので正しいといえる。

図12 おうし座の顔(絵あり) 図13 おうし座の顔(絵なし)

図14 月とおうし座

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4.結果・考察

4.1検証結果

全体の検証結果としては表 4 のようになった。ここでの 108 という事例はステラナビゲータでシミュレーションできる範囲のもの

である。実際には、表2、3の合計からわかるように、204個もの記録があったが、残りの96件の記録はシミュレーション不能であっ

た。その内訳は、妖光・妖星、流星、落星、彗星、輝星、その他で、基本的にはこれらの記録はもともとの真偽も危うく、また何につ

いて書いているのかの検討もできないようなものであったので、今回は排除した。

従って、惑星に関する記事と日食に関する記事について検証を行ったことになるが、それぞれの検証結果は次の表5、6のようにな

った。

表4 記録の内訳

一致した記録 一致しなかった記録 合計 一致率

記録数 71 37 108 65.7%

表5 日食記事の内訳

一致した記録 一致しなかった記録 合計 一致率

記録数 48 19 67 71.6%

表6 惑星記事の内訳

一致した記録 一致しなかった記録 合計 一致率

記録数 20 19 39 51.2%

4.2 惑星運行論の検証

表3より、一致率が約7割であるので、現代の惑星運行計算はほぼ正しいといえる。そして、その内訳の表4、5から読み取れるの

は日食に関しては強いが、それよりも細かくなる惑星の現象に関しては、少し弱くなるのかもしれないということである。一致しな

かった記録19に関してはまったく一致しないというものはひとつもなく、あと少しで重なりそうなものなどがすべてであった。よっ

て、このことについては恐らくステラナビゲータ上での誤差である可能性がとれるかもしれない。

一方で日食に関しては表 3 と同様約 7 割という結果が得られていることから、非常に良い精度でシミュレーションができているこ

とがわかる。3.4でも述べたようにこれらの朝鮮の記録はほとんどが中国から引用されたものであることから、おそらく合わなかった

事例に関しては中国と朝鮮の経緯度の違いによるものもあるのではないかと考えられる。ステラナビゲータ上では場所を朝鮮半島の

中心に設定し観測を行った結果が表 3、4、5 の通りである。ここから読み取れるのは中国から直接引用して記録したもので本当に朝

鮮の人が見たのかどうかということは定かではない可能性があるということである。

4.3 三国史記の信頼性

ステラナビゲータでの観測記録表の付録をみていただくとわかると思うが、三国史記(井上 1986)の 2 巻の方には注があり、漢

書や晋書などの多くの中国の文献から用いられている。確認していてわかったことは、中国から朝鮮に流用する際いくつか内容が変

化している可能性があることである。特に日付の間違いがよく見られ、内容も星座名を勘違いして書き間違えたりしているとも思わ

れる。また、中国から引用された記録は一致したが、朝鮮独自の記録はほとんど間違っていたという傾向も見られた。このことから、

三国史記の信頼性としてはほぼ中国の記録の信頼性に依存しており、朝鮮独自のものは信頼性が薄いと考えられる。

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5.まとめ

今回の検証の目的であった現代の惑星運行計算の真偽の確認については、結果約7割の精度であり、問題なく正しいという結論で

ある。合わなかった残りの3割については、中国からの引用時のずれ、日付の書き間違え等々の記録上のミスが大きくステラナビゲ

ータ上での誤差とは考えにくい面が大きかった。従って現代の惑星運行計算の精度は素晴らしく、現代の技術の進歩に驚かされたも

のとなった。また今回彗星や流星などについて取り扱わなかったが、それらの軌道を計算しシミュレーションすることを可能にする

ことが今後の天体の軌道を分析する上における課題ではないかとも思った次第である。

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参考文献

hosi.org

http://hosi-org.herokuapp.com/

畢宿

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%95%A2%E5%AE%BF

畢宿とは

http://www.weblio.jp/content/%E7%95%A2%E5%AE%BF

静月宮 月天的天文考

http://www001.upp.so-net.ne.jp/vertis/msg_rpt.htm

吾妻鏡入門第三巻

http://adumakagami.web.fc2.com/aduma32-05.htm

二十八宿:南方朱雀

http://www.asahi-net.or.jp/~nr8c-ab/ktchn2800s.htm

翼宿とは

http://www.weblio.jp/content/%E7%BF%BC%E5%AE%BF

軫宿とは

http://www.weblio.jp/content/%E8%BB%AB%E5%AE%BF

南極星とは

https://kotobank.jp/word/%E5%8D%97%E6%A5%B5%E6%98%9F-590431

心星とは

https://kotobank.jp/word/%E5%BF%83%E6%98%9F-82561

南斗六星

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%96%97%E5%85%AD%E6%98%9F

三国史記

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%9B%BD%E5%8F%B2%E8%A8%98

三国時代

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E5%9B%BD%E6%99%82%E4%BB%A3_(%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E5%8D%8A%E5%B3%B6)

朝鮮の歴史

http://www.vivonet.co.jp/rekisi/d02_korea/korea.html

高句麗

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E5%8F%A5%E9%BA%97

干支

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%B2%E6%94%AF

十干

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E5%B9%B2

十二支

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E4%BA%8C%E6%94%AF

JPL Ephemerides Install Manual

http://www2.nc-toyama.ac.jp/~mkawai/almanac/jplephem/jpldoc.html

ステラナビゲータver.9:よくある質問と回答:「天体などの表示」

http://www.astroarts.co.jp/products/stlnav9/support/show-j.shtml

JPL天体暦

http://navsystem.j-navigation.org/workshopreport/report/r2002s/navmaterial/nauticalalmanac/computerna/cgi/jpl/jpl.html

64bit の Windows10 上でフリーの fortran コンパイラを導入して、簡単なプログラムを作成する - あらきけいすけの雑記帳

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http://d.hatena.ne.jp/arakik10/20120214/1329167074

摂動とは

https://kotobank.jp/word/%E6%91%82%E5%8B%95-87386

南斗六星のあるいて座

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%96%97%E5%85%AD%E6%98%9F#/media/File:Sagittarius_constellation_map.png

Scorpius

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%95%E3%81%9D%E3%82%8A%E5%BA%A7#/media/File:Scorpius_constellation_map.svg

北極星

http://www.ammanu.edu.jo/wiki1/ja/articles/%E5%8C%97/%E6%A5%B5/%E6%98%9F/%E5%8C%97%E6%A5%B5%E6%98%9F.html

こぐま座ベータ星

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%93%E3%81%90%E3%81%BE%E5%BA%A7%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%BF%E6%98%9F

二十八宿

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%8C%E5%8D%81%E5%85%AB%E5%AE%BF

軌道要素

http://www.geocities.jp/planetnekonta2/hanasi/youso/youso.html

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東洋文庫372 三国史記1 新羅本紀12巻 記事一覧表

No p    年号 西暦年現象 記事

1 4 0)始祖前紀4年 BC54 日食   夏4月、辛丑の日

2 4 1)始祖前紀9年 BC49 ほうき星   春3月 王良(カシオペヤの星)のそばにほうき星

3 5 2)始祖前紀14年 BC44 ほうき星   夏4月 参(からすき星)のそばにほうき星

4 5 3)始祖前紀24年 BC34 日食   夏6月、壬申の日の晦

5 5 4)始祖前紀30年  BC28 日食   夏4月、己亥の日の晦

6 5 5)始祖前紀32年    BC26 日食   秋8月、乙卯の日の晦

7 7 6)始祖前紀43年     BC15 日食   春2月、乙酉の日の晦

8 7 7)始祖前紀54年     BC4 ほうき星   春2月、己酉に河鼓(かこ、ひこ星にある3星のひとつ)

  の近くでほうき星

9 7 8)始祖前紀56年     BC2 日食   春正月、辛丑の日の朔

10 7 9)始祖前紀59年     2 日食   秋9月、戊申の日の晦

11 10 11)南解次次雄3年   6 日食   冬10月、丙辰の日の朔

12 10 12)南解次次雄13年   16 日食   秋7月、戊子の日にあたる晦

13 11 13)南解次次雄20年   23 金星   秋、太白が太微(しし座の西端)に入った

14 14 14)儒理尼師今31年    54 ほうき星   春2月、(天帝の住む)紫微宮(の近くで)光った

15 17 15)脱解尼師今3年    59 ほうき星   6月、天船(天の川)で光った

16 19 16)脱解尼師今23年  79 ほうき星   春2月、東方に現れた。

      北方にも現れ、20日たって消滅した

17 21 17)婆裟尼師今6年     85 ほうき星   夏4月、(天帝の住む)紫微宮に入った

18 23 18)婆裟尼師今25年   104 流れ星   春正月、雨のようにおちてきたが、地上には達せず

19 26 19)祇摩尼師今9年   120 落星   春2月、大きな星が月城の西方に落ちた。

  その音は雷のようだった

20 26 20)祇摩尼師今13年   124 日食   秋9月、庚申の日にあたる晦

21 27 21)祇摩尼師今16年   127 日食   秋7月、甲イヌの日にあたる晦

22 27 22)祇摩尼師今17年  128 ほうき星   秋8月、天をよぎった

23 29 23)逸聖尼師今8年   141 日食   秋9月、辛亥の日にあたる晦

24 29 24)逸聖尼師今10年   143 火星と土星   夏6月、乙丑の日、蛍惑が鎮星を犯した

25 30 25)逸聖尼師今16年  149 ほうき星   秋8月、天市の星座の中で光った

26 30 26)逸聖尼師今20年   153 ほうき星   東方に現れた

  また、東北東に現れた

27 40 27)阿達羅尼師今13年 166 日食   春正月、辛亥の日にあたる朔

28 42 28)伐休尼師今3年   186 日食   夏5月、壬申の日にあたる朔

29 43 伐休尼師今8年 191 ほうき星   蚩尤期が角と亢のそばに現れた

30 43 29)伐休尼師今10年   193 日食   春正月、甲寅の日にあたる朔

31 43 30)伐休尼師今11年   194 日食   夏6月、乙巳の日にあたる晦

32 45 31)奈解尼師今5年    200 金星   秋7月、太白が昼間から見えた

33 45 32)奈解尼師今5年   200 日食   9月、庚午の日にあたる朔

34 45 33)奈解尼師今6年   201 日食   3月、丁卯の日にあたる朔

35 45 34)奈解尼師今10年 205 金星   秋7月、太白が月の中にはいった

36 51 35)てん解尼師今10年 256 日食   冬10月晦

37 52 36)てん解尼師今14年  260 輝く星   秋7月、東方で光り輝く星があり、25日たって消滅した

38 72 37)奈こつ尼師今45年  400 輝く星   秋8月、星が東方で光り輝いた

39 80 38)慈悲麻立干10年  467 流れ星   秋9月、天が赤くなり、大きな星が北から東南方へ流れた

40 82 39)慈悲麻立干21年   478 妖光   春2月、ある夜、ねり絹のような赤い光が

  地上から天上につづいていた

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41 84 40)しょう知麻立干6年  484 土星   3月、土星が月を犯した

42 114 41)真平王8年      586 流れ星   夏5月、流星が雨のように多く落ちてきた

43 123 42)真平王53年    631 土星   秋7月、土星が月を犯した

44 145 43)真徳王元年   647 ほうき星と落星  8月、ほうき星が南方に現れ、

     また多くの星が北方へ流れ落ちた

45 165 44)太宗武烈王8年   661 落星   5月(末)、突然大きな星が賊の軍営に落ちた

46 187 45)文武王8年   668 ほうき星   ほうき星が天船(天の川)のそばにでた

47 197 46)文武王10年   670 土星   12月、土星が月と重なった    

48 228 47)文武王12年   672 ほうき星   9月、ほうき星が七度も北方に出た

49 230 48)文武王13年     673 落星   春正月、大星が皇龍寺と月城との中間におちた

50 234 49)文武王16年   676 ほうき星   秋7月、ほうき星が北河と積水の間に出た。

  長さが6、7歩ばかりもあった。

51 235 50)文武王19年   679 火星   夏4月、けい惑(火星)が羽林(天軍を掌る将星)

  のまわりにでた

52 236 51)文武王19年     679 金星   6月、太白(金星)が月と重なった

53 236 52)文武王19年    679 流れ星   6月、参大星(からすき星)をよぎった

54 236 53)文武王19年     679 金星   秋8月、太白(金星)が月と重なった

55 238 54)文武王21年    681 流れ星   夏5月、参大星(からすき星)をよぎった

56 238 55)文武王21年    681 流れ星   6月、天狗(声を出す流星)が西南方に落ちた

57 253 56)神文王2年     682 金星   5月、太白(金星)が月と重なった

58 254 57)神文王3年      683 ほうき星   冬10月、ほうき星が五車(天庫、獄、天倉、司空、卿星)

  の星のなかにあらわれた

59 254 58)神文王4年   684 流れ星   冬10月、日暮れから明け方まで、星が縦横に流れた

60 260 59)孝行王8年    699 輝く星   春2月、星が東の空に輝いた  

61 261 60)孝行王9年  700 木星   6月、歳星が月と重なった

62 261 61)孝行王10年     701 ほうき星   春2月、ほうき星が月と重なった

63 264 62)聖徳王5年     706 流れ星   3月、多くの星が西の空に流れた

64 264 63)聖徳王7年      708 土星(木星?)   夏4月、鎮星(木星?)が月と重なった

  *)井上本 による。 鎮星なら土星だ

65 265 64)聖徳王9年      710 流れ星   春正月、天狗(声を出す流星)が、三郎寺の北に落ちた

66 267 65)聖徳王14年   715 金星   秋9月、太白が庶子星(北極星、北極五星の第三星)

  をおおった

67 267 66)聖徳王14年    715 流れ星   冬10月、紫微星(北斗星の北の星で、天帝がいるという星。

  のち、紫微は大宮・王都・禁城も意味となる)をよぎった。

68 267 67)聖徳王14年     715 流れ星   12月、天倉(星宿の名で、一つは婁ん宿の南にあって

  穀物を蔵すという。他は胃宿という)から太微

  (しし座の西端付近の十星。紫微垣星で、

  天子の宮廷・五星の座などをいう)に入った

69 267 68)聖徳王15年    716 流れ星   春正月、月をよぎり、月が光をなくした

70 269 69)聖徳王17年   718 流れ星   冬10月、昂(スバル座)からケイ(木+圭)

  (28宿の一つ。仙女座と双魚座にまたがる。

   文章・武庫などを司る)に入り、多くの小流星もこれに続いた

71 269 70)聖徳王17年     718 流れ星   冬10月、天狗(声をだす流星)が東北方におちた

72 278 71)聖徳王34年 735 火星   春正月、ケイ惑(金星?)が月をよぎった

      *)注がおかしい

73 289 72)孝成王元年   737 流れ星   秋9月、太微に流れ込んだ

74 290 73)孝成王2年   738 太陽(虹)   夏4月、白色の虹が太陽をつらぬいた

75 291 74)孝成王4年     740 土星   夏5月、鎮星が軒エン(車+猿)大星

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  (北斗七星の北にある星座)をよぎった

76 292 75)孝成王6年     742 流れ星   夏5月、参大星をよぎった

77 294 76)景徳王3年     744 妖星   冬、妖星が大空にあらわれて、その大きさは五斗入りの器

    ほどもあった。十日で消滅した

78 295 77)景徳王7年   748流れ星(落星?)

  春正月、天狗が地におちた

79 301 78)景徳王18年     759 ほうき星   3月、ほうき星があらわれ、秋になってようやく消えた

80 301 79)景徳王19年  760 太陽(虹)   春正月、朔、虹が太陽をつらぬき、太陽のみみかざりであった

81 301 80)景徳王19年    760 ほうき星   夏4月、ほうき星がでた

82 302 81)景徳王23年     764 輝く星   3月、星が東南方で輝き、龍が楊山の麓にあらわれ、

  にわかに飛び去った

83 302 82)景徳王23年   764 流れ星   冬12月11日、大小無数の流星があり、

  みていた者も数えることができなかった

84 303 83)景徳王24年    765 流れ星   6月、流星が心<星>(火星)をよぎった

85 303 84)恵恭王2年    766 太陽   春正月、ふたつの太陽が並んで出た

86 304 85)恵恭王3年   767 落星   秋7月、三星が王宮の庭におち、互いにぶつかりあった。

       その光は火のようにほとばしり散った

87 304 86)恵恭王4年     768 ほうき星   春、東北方にあらわれた

88 304 87)恵恭王6年     770 ほうき星   5月11日、ほうき星が五車星の北に出て、

  6月12日になって消滅した

89 320 88)元聖王3年   787 金星   夏5月、金星が昼に現れた

90 320 89)元聖王3年    787 日食   8月、辛巳にあたる朔

91 321 90)元聖王5年    789 日食   春正月、甲辰にあたる朔

92 323 91)元聖王6年     790 金星・水星   夏4月、太白・辰星(水星)が東井星に集まった

93 324 92)元聖王8年      792 日食   冬11月壬子の日にあたる朔

94 328 93)哀荘王2年   801 日食   夏5月、壬イヌの日にあたる朔、

  日食の日にあたっていながら、日食がなかった

95 328 94)哀荘王2年    801 火星   秋9月、ケイ惑月と重なり、

96 328 95)哀荘王2年   801 流れ星   秋9月、<流>星が雨のように<落ちた>

97 331 96)哀荘王9年     808 日食   秋7月、辛巳の日にあたる朔

98 331 97)哀荘王10年   809月とおうし座の顔の7星

  春正月、月が畢宿をよぎった

99 333 98)憲徳王2年    810 流れ星   秋7月、流星が紫微星をよぎった

100 333 99)憲徳王2年    810 流れ星   冬10月、流星が王良星をよぎった

101 334 100)憲徳王7年    815 日食   秋8月、己亥の日にあたる朔

102 335 101)憲徳王7年  815 輝く星   秋8月、大星が翼宿と軫宿(しんしゅく)との間にでた。

    西にむいて飛び、その光の長さは六尺ばかりで、

    巾は二寸ばかりであった。

103 335 102)憲徳王9年   818 日食   夏6月、キ(発に似た)丑の日にあたる朔

104 339 103)憲徳王14年    822 月   夏4月13日、月の色が血のようであった

105 339 104)憲徳王14年   822 太陽(日食?)   秋7月12日、太陽に黒いかさが南北にかかった

106 340 105)憲徳王15年  823 流れ星   夏4月12日、流星が天市<垣>(三垣の一つで織女星、

  帝座星などを含む東北方の星垣。)

  におこり、帝座星(北斗七星の北にある紫微星で、

  天市垣の中にある。)

をよぎって、天市垣の東北の織女星・王良星を過ぎて、

閣道(紫微星のあとにある六星)まできて、三つに分かれた。

その音は鼓(ホントハ、鼓のへん+皮)を打つようであったが、

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ここで消滅した。

107 342 106)興徳王2年     827 金星   秋8月、太白が昼間にあらわれた

108 345 107)興徳王11年 836 日食   春正月、辛丑の日にあたる朔

109 345 108)興徳王11年    836 輝く星   夏6月、星が東方で光り輝いた

110 345 109)興徳王11年 836 金星   秋7月、太白が月をよぎった

111 360 110)文聖王6年     844 日食   春2月、甲寅の日にあたる朔 

112 360 111)文聖王6年     844 金星・土星   春2月、金星が土星をよぎった

113 361 112)文聖王7年 845 太陽   12月朔、三つの太陽が並んで出た

114 363 113)文聖王12年    850 土星   春正月、土星と月がかさなった

115 363 114)文聖王17年  855 土星   冬12月、土星と月がかさなった

116 371 115)景文王7年     867 客星・金星   12月、客星(水星?)が太白(金星)をよぎった

117 373 116)景文王15年    875 輝く星   春2月、星が東方で光り輝き、20日たって消滅した

118 375 117)憲康王6年    880 金星   春2月、太白(金星)が月をよぎった

119 377 118)憲康王11年    885 金星   冬10月、壬子の日、太白(金星)が昼現れた

120 381 119)真聖王2年   888 日食   3月、戊イヌ(戊に似た)の日にあたる朔

121 381 120)真聖王4年     890 太陽   春正月、日にカサが五重にもかかった

122 391 121)孝恭王9年     905 落星   春2月、星が雨のように落ちてきた

123 392 122)孝恭王12年    908 輝く星   春2月、星が東方で光り輝いた

124 393 123)孝恭王15年   911 日食   春正月、丙イヌ(戊に似た)の日にあたる朔

125 394 124)神徳王6年    917 金星   春正月、太白が月をよぎった

126 404 125)敬順王8年    934 老人星   秋9月、老人星(南極星)が現れた

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東洋文庫372 三国史記1 新羅本紀12巻 暦対応表

No p    年号・日付 ユリウス暦 グレゴリオ暦

1 4 0)始祖前紀4年 夏4月 辛丑の日 BC54/5/9 BC54/5/7

2 4 1)始祖前紀9年 春3月  BC49/4/14-BC49/5/12 BC49/4/12-BC49/5/10

3 5 2)始祖前紀14年 夏4月 BC44/5/18-BC44/6/16 BC44/5/16-BC44/6/14

4 5 3)始祖前紀24年 夏6月 壬甲の日の晦 BC34/8/23 BC34/8/21

5 5 4)始祖前紀30年 夏4月 己亥の日の晦 BC28/6/19 BC28/6/17

6 5 5)始祖前紀32年 秋8月 乙卯の日の晦   BC26/10/23 BC26/10/21

7 7 6)始祖前紀43年 春2月 乙酉の日の晦   BC15/3/29 BC15/3/27

8 7 7)始祖前紀54年 春2月 己酉     BC4/4/24 BC4/4/22

9 7 8)始祖前紀56年 春正月 辛丑の日の朔     BC2/2/5 BC/2/3

10 7 9)始祖前紀59年 秋9月 戊甲の日の晦    AD2/11/23 AD2/11/21

11 10 11)南解次次雄3年 冬10月 丙辰の日の朔  AD6/11/10 AD6/11/8

12 10 12)南解次次雄13年 秋7月 戊子の日の晦  AD16/9/20 AD16/9/18

13 11 13)南解次次雄20年 秋   23/8/6-23/11/1 23/8/4-23/10/30

14 14 14)儒理尼師今31年 春2月    54/2/27-54/3/27 54/2/25-54/3/25

15 17 15)脱解尼師今3年 6月    59/6/30-59/7/28 59/6/28-59/7/26

16 19 16)脱解尼師今23年 春2月 79/3/22-79/4/20 79/3/20-79/4/18

17 21 17)婆裟尼師今6年 夏4月     AD85/5/13-AD85/6/10 AD85/5/11-AD85/6/8

18 23 18)婆裟尼師今25年 春正月   104/2/14-104/3/13 104/2/13-104/3/12

19 26 19)祇摩尼師今9年 春2月  120/3/17-120/4/15 120/3/16-120/4/14

20 26 20)祇摩尼師今13年 秋9月 庚申の日の晦  124/10/25 124/10/24

21 27 21)祇摩尼師今16年 秋7月 甲戌の日の晦  127/8/25 127/8/24

22 27 22)祇摩尼師今17年 秋8月   128/9/12-128/10/11 128/9/11-128/10/10

23 29 23)逸聖尼師今8年 秋9月 辛亥の日の晦  141/11/16 141/11/15

24 29 24)逸聖尼師今10年 夏6月 乙丑の日   143/7/23 143/7/22

25 30 25)逸聖尼師今16年 秋8月  149/9/20-149/10/19 149/9/19-149/10/18

26 30 26)逸聖尼師今20年    153/11/4-153/12/3 153/11/3-153/12/2

27 40 27)阿達羅尼師今13年春正月辛亥の日の朔 166/2/18 166/2/17

28 42 28)伐休尼師今3年夏5月壬甲の日にあたる朔 186/7/4 186/7/3

29 43 伐休尼師今8年 191/10/6-191/11/4 191/10/5-191/11/3

30 43 29)伐休尼師今10年 春正月 甲寅の日の朔  193/2/19 193/2/18

31 43 30)伐休尼師今11年 夏6月 乙巳の日の晦  194/8/4 194/8/3

32 45 31)奈解尼師今5年 秋7月    200/7/29-200/8/27 200/7/29-200/8/27

33 45 32)奈解尼師今5年 9月 庚午の日の朔  200/9/26 200/9/26

34 45 33)奈解尼師今6年 3月 丁卯の日の朔   201/4/21 201/4/21

35 45 34)奈解尼師今10年 秋7月  205/8/3-205/9/1 205/8/3-205/9/1

36 51 35)てん解尼師今10年 冬10月 晦 256/12/4 256/12/4

37 52 36)てん解尼師今14年 秋7月  260/7/26-260/8/24 260/7/26-260/8/24

38 72 37)奈こつ尼師今45年 秋8月  400/9/5-400/10/3 400/9/6-400/10/4

39 80 38)慈悲麻立干10年 秋9月  467/10/14-467/11/12 467/10/15-467/11/13

40 82 39)慈悲麻立干21年 春2月   478/3/20-478/4/18 478/3/21-478/4/19

41 84 40)しょう知麻立干6年 3月  484/4/11-484/5/10 484/4/12-484/5/11

42 114 41)真平王8年 夏5月     586/5/24-586/6/21 586/5/26-586/6/23

43 123 42)真平王53年 秋7月   631/8/3-631/9/1 631/8/6-631/9/4

44 145 43)真徳王元年 8月  647/9/5-647/10/3 647/9/8-647/10/6

45 165 44)太宗武烈王8年 5月(末)  661/6/3-661/7/2 661/6/6-661/7/5

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46 187 45)文武王8年 夏4月  668/5/17-668/6/14 668/5/20-668/6/17

47 197 46)文武王10年 12月  671/1/17-671/2/14 671/1/20-671/2/17

48 228 47)文武王12年 9月  672/9/27-672/10/25 672/9/30-672/10/28

49 230 48)文武王13年 春正月    673/1/24-673/2/21 673/1/27-673/2/24

50 234 49)文武王16年 秋7月  676/8/15-676/9/12 676/8/18-676/9/15

51 235 50)文武王19年 夏4月  679/5/15-679/6/13 679/5/18-679/6/16

52 236 51)文武王19年 6月     679/7/13-679/8/11 679/7/16-679/8/14

53 236 52)文武王19年 6月   679/7/13-679/8/11 679/7/16-679/8/14

54 236 53)文武王19年 秋8月    679/9/11-679/10/9 679/9/14-679/10/12

55 238 54)文武王21年 夏5月   681/5/23-681/6/20 681/5/26-681/6/23

56 238 55)文武王21年 6月   681/6/21-681/7/20 681/6/24-681/7/23

57 253 56)神文王2年 5月    682/6/11-682/7/9 682/6/14-682/7/12

58 254 57)神文王3年 冬10月     683/10/25-683/11/23 683/10/28-683/11/26

59 254 58)神文王4年 冬10月  684/11/13-684/12/11 684/11/16-684/12/14

60 260 59)孝行王8年 春2月   699/3/7-699/4/5 699/3/10-699/4/8

61 261 60)孝行王9年 6月 700/6/21-700/7/20 700/6/25-700/7/24

62 261 61)孝行王10年 春2月     701/3/14-701/4/12 701/3/18-701/4/16

63 264 62)聖徳王5年 3月    706/4/17-706/5/16 706/4/21-706/5/20

64 264 63)聖徳王7年 夏4月    708/4/25-708/5/23 708/4/29-708/5/27

65 265 64)聖徳王9年 春正月      710/2/4-710/3/4 710/2/8-710/3/8

66 267 65)聖徳王14年 秋9月  715/10/2-715/10/31 715/10/6-715/11/4

67 267 66)聖徳王14年 冬10月   715/11/1-715/11/30 715/11/5-715/12/4

68 267 67)聖徳王14年 12月     715/12/31-716/1/28 716/1/4-716/2/1

69 267 68)聖徳王15年 春正月   716/1/29-716/2/27 716/2/2-716/3/2

70 269 69)聖徳王17年 冬10月   718/10/28-718/11/26 718/11/1-718/11/30

71 269 70)聖徳王17年 冬10月    718/10/28-718/11/26 718/11/1-718/11/30

72 278 71)聖徳王34年 春正月 735/1/29-735/2/26 735/2/2-735/3/2

73 289 72)孝成王元年 秋9月  737/9/29-737/10/27 737/10/3-737/10/31

74 290 73)孝成王2年 夏4月  738/4/24-738/5/22 738/4/28-738/5/26

75 291 74)孝成王4年 夏5月    740/5/30-740/6/28 740/6/3-740/7/2

76 292 75)孝成王6年 夏5月   742/6/8-742/7/6 742/6/12-742/7/10

77 294 76)景徳王3年 冬    744/11/9-745/2/5 744/11/13-745/2/9

78 295 77)景徳王7年 春正月  748/2/4-748/3/3 748/2/8-748/3/7

79 301 78)景徳王18年 3月     759/4/2-759/5/1 759/4/6-759/5/5

80 301 79)景徳王19年 春正月 朔 760/1/23-760/2/21 760/1/27-760/2/25

81 301 80)景徳王19年 夏4月   760/4/20-760/5/19 760/4/24-760/5/23

82 302 81)景徳王23年 3月    746/4/6-746/5/5 764/4/10-764/5/9

83 302 82)景徳王23年 冬12月11日  765/1/7 765/1/11

84 303 83)景徳王24年 6月   765/6/23-765/7/22 765/6/27-765/7/26

85 303 84)恵恭王2年 春正月   766/2/14-766/3/15 766/2/18-766/3/19

86 304 85)恵恭王3年 秋7月  767/7/30-767/8/28 767/8/3-767/9/1

87 304 86)恵恭王4年 春    768/1/24-768/4/21 768/1/28-768/4/25

88 304 87)恵恭王6年 5月11日 6月12日    770/6/9(5/11) 770/7/9(6/12) 770/6/13(5/11) 770/7/13(6/12)

89 320 88)元聖王3年 夏5月  787/5/22-787/6/19 787/5/26-787/6/23

90 320 89)元聖王3年 8月   787/9/16 787/9/20

91 321 90)元聖王5年 春正月   789/1/31 789/2/4

92 323 91)元聖王6年 夏4月    790/4/19-790/5/18 790/4/23-790/5/22

93 324 92)元聖王8年 冬11月壬子の日にあたる晦    792/11/19 792/11/23

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94 328 93)哀荘王2年 夏5月 壬戌の日にあたる晦  801/6/15 801/6/19

95 328 94)哀荘王2年 秋9月   801/10/11-801/11/9 801/10/15-801/11/13

96 328 95)哀荘王2年 秋9月  801/10/11-801/11/9 801/10/15-801/11/13

97 331 96)哀荘王9年 秋7月 辛巳の日にあたる朔   808/7/27 808/7/31

98 331 97)哀荘王10年 春正月   809/1/20-809/2/27 809/1/24-809/2/21

99 333 98)憲徳王2年 秋7月   810/8/4-810/9/2 810/8/8-810/9/6

100 333 99)憲徳王2年 冬10月   810/11/1-810/11/30 810/11/5-810/12/4

101 334 100)憲徳王7年 秋8月 己亥の日にあたる朔  815/9/7 815/9/11

102 335 101)憲徳王7年 秋8月 815/9/7-815/10/6 815/9/11-815/10/10

103 335 102)憲徳王9年 夏6月 癸丑の日にあたる朔 818/7/7 818/7/11

104 339 103)憲徳王14年 夏4月13日    822/5/7 822/5/11

105 339 104)憲徳王14年 秋7月12日  822/8/2 822/8/6

106 340 105)憲徳王15年 夏4月12日 823/5/25 823/5/29

107 342 106)興徳王2年 秋8月     827/8/26-827/9/24 827/8/30-827/9/28

108 345 107)興徳王11年春正月辛丑の日にあたる朔 836/1/22 836/1/26

109 345 108)興徳王11年 夏6月   836/7/17-836/8/15 836/7/21-836/8/19

110 345 109)興徳王11年 秋7月 836/8/16-836/9/14 836/8/20-836/9/18

111 360 110)文聖王6年 春2月    844/2/22 844/2/26

112 360 111)文聖王6年 春2月     844/2/22-844/3/22 844/2/26-844/3/26

113 361 112)文聖王7年 12月朔 846/1/2 846/1/6

114 363 113)文聖王12年 春正月    850/2/16-850/3/17 850/2/20-850/3/21

115 363 114)文聖王17年 冬12月 856/1/12-856/2/9 856/1/16-856/2/13

116 371 115)景文王7年 12月    867/12/30-868/1/28 868/1/3-868/2/1

117 373 116)景文王15年 春2月    875/3/12-875/4/9 875/3/16-875/4/13

118 375 117)憲康王6年 春2月   880/3/15-880/4/12 880/3/19-880/4/16

119 377 118)憲康王11年 冬10月 壬子の日   885/11/11 885/11/15

120 381 119)真聖王2年 3月 戌戊の日にあたる朔  888/4/15 888/4/19

121 381 120)真聖王4年 春正月    890/1/25-890/2/22 890/1/29-890/2/26

122 391 121)孝恭王9年 春2月    905/3/9-905/4/7 905/3/14-905/4/12

123 392 122)孝恭王12年 春2月   908/3/5-908/4/3 908/3/10-908/4/8

124 393 123)孝恭王15年 春正月 丙戊の日の朔  911/2/2 911/2/7

125 394 124)神徳王6年  春正月  917/1/26-917/2/23 917/1/31-917/2/28

126 404 125)敬順王8年 秋9月   934/10/11-934/11/9 934/10/16-934/11/14

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東洋文庫425 三国史記2 高句麗本紀10巻 百済本紀6巻 暦対応表

No p 年号・日付 ユリウス暦 グレゴリオ暦

KK-1 14 瑠璃明王13年春正月 BC7/1/31-BC7/3/1 BC7/1/29-BC72/2/27

KK-2 42 閔中王3年秋7月 46/8/21-46/9/19 46/8/19-46/9/17

KK-3 53 大祖大王62年春3月 114/4/23-114/5/21 114/4/22-114/5/20

KK-4 53 大祖大王64年春3月 116/3/31-116/4/29 116/3/30-116/4/28

KK-5 55 大祖大王72年秋9月庚申の日 晦 124/10/25 124/10/24

KK-6 64 次大王4年夏4月丁卯の日 晦 149/6/23 149/6/22

KK-7 65 次大王4年5月 149/6/24-149/6/22 149/6/23-149/7/21

KK-8 65 次大王8年12月 晦 154/1/2-154/1/31 154/1/1-154/1/30

KK-9 65 次大王13年春2月 158/3/18-158/4/15 158/3/17-158/4/14

KK-10 65 次大王13年夏5月甲戌の日 晦 158/7/13 158/7/12

KK-11 65 次大王20年春正月 晦 165/1/30-165/2/28 165/1/29-165/2/27

KK-12 74 新大王14年冬10月丙子の日 晦 178/11/27 178/11/26

KK-13 75 故国川王4年春3月甲寅の日 3月に甲寅の日がない

KK-14 75 故国川王4年秋7月 182/8/17-182/9/15 182/8/16-182/9/14

KK-15 75 故国川王8年夏4月乙卯の日 186/5/28 186/5/27

KK-16 75 故国川王8年夏5月壬辰の日 晦 186/7/4 186/7/3

KK-17 87 山上王21年冬10月 217/11/17-217/12/15 217/11/17-217/12/15

KK-18 87 山上王23年春2月壬子の日 晦 219/4/2 219/4/2

KK-19 104 西川王4年秋7月丁酉の日 朔 273/8/1 273/8/1

KK-20 108 烽上王8年秋9月 299/10/12-299/11/19 299/10/12-299/11/9

KK-21 112 美川王元年12月 300/12/28-301/1/25 300/12/29-301/1/26

KK-22 113 美川王16年秋8月 315/9/15-315/10/14 315/9/16-315/10/15

KK-23 122 故国原王6年春3月 336/3/29-336/4/26 336/3/30-336/4/27

KK-24 126 小獣林王13年秋9月 383/10/13-383/11/10 383/10/14-383/11/11

KK-25 163 陽原王10年12月 晦 555/2/6 555/2/8

KK-26 164 陽原王11年11月 555/11/30-555/12/28 555/12/2-555/12/30

KK-27 166 平原王23年春2月 晦 581/3/20 581/3/22

KK-28 200 栄留王23年秋9月 640/9/21-640/10/20 640/9/24-640/10/23

KK-29 212 宝蔵王2年秋9月15日 643/11/1 643/11/4

百済本紀6巻

KD-1 276 始祖6年秋7月辛未の日 晦 BC13/8/31 BC13/8/29

KD-2 286 多婁王46年夏5月戊午の日 晦 AD73/7/23 AD73/7/21

KD-3 287 己婁王9年夏4月乙巳 4月に乙巳の日がない

KD-4 287 己婁王11年秋8月乙未の日 晦 AD87/10/15 AD87/10/13

KD-5 287 己婁王16年夏6月戊戌の日 晦 AD92/7/23 AD92/7/21

KD-6 289 蓋婁王10年秋8月庚子 137/9/27 137/9/26

KD-7 289 蓋婁王38年春正月丙申の日 晦 165/2/28 165/2/27

KD-8 290 肖古王5年春3月丙寅の日 晦 170/5/3 170/5/2

KD-9 291 肖古王24年夏4月丙午の日 晦 189/5/3 189/5/2

KD-10 292 肖古王39年冬10月 204/11/10-204/12/9 204/11/10-204/12/9

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KD-11 292 肖古王40年秋7月 205/8/3-205/9/1 205/8/3-205/9/1

KD-12 292 肖古王47年夏6月庚寅の日 晦 212/8/14 212/8/14

KD-13 302 仇首王8年6月戊辰の日 晦 221/8/5 221/8/5

KD-14 302 仇首王9年11月庚申の日 晦 223/1/19 223/1/19

KD-15 303 仇首王11年冬10月 224/10/30-224/11/28 224/10/30-224/11/28

KD-16 305 古尓王16年春正月甲午 249/2/5 249/2/5

KD-17 307 古尓王36年秋9月 269/10/13-269/11/10 269/10/13-269/11/10

KD-18 309 汾西王5年夏4月 302/5/14-302/6/11 302/5/15-302/6/12

KD-19 310 比流王5年春正月丙子の日 朔 308/2/8 308/2/9

KD-20 310 比流王13年春 316/2/10-316/5/7 316/2/11-316/5/8

KD-21 311 比流王18年秋7月 321/8/10-321/9/7 321/8/11-321/9/8

KD-22 311 比流王32年冬10月乙未の日 朔 335/11/2 335/11/3

KD-23 312 比流王33年春正月辛巳 336/2/16 336/2/17

KD-24 313 近肖古王23年春3月丁巳の日 朔 368/4/4 368/4/5

KD-25 324 辰斯王6年秋7月 390/7/28-390/8/26 390/7/29-390/8/27

KD-26 324 辰斯王8年夏5月丁卯の日 朔 392/6/7 392/6/8

KD-27 326 阿莘王3年秋7月 394/8/13-394/9/11 394/8/14-394/9/12

KD-28 326 阿莘王4年春2月 395/3/8-395/4/5 395/3/9-395/4/6

KD-29 327 阿莘王9年春2月 400/3/12-400/4/9 400/3/13-400/4/10

KD-30 327 阿莘王9年夏6月庚辰の日 朔 400/7/8 400/7/9

KD-31 330 腆支王11年夏5月甲申の日 415/6/24 415/6/25

KD-32 330 腆支王13年春正月甲戌の日 朔 417/2/3 417/2/4

KD-33 330 腆支王15年春正月戊戌 419/2/17 419/2/18

KD-34 330 腆支王15年冬11月丁亥の日 朔 419/12/3 419/12/4

KD-35 332 ひ有王14年夏4月戊午の日 朔 440/5/17 440/5/18

KD-36 332 ひ有王28年 454/2/14-455/2/2 454/2/15-455/2/3

KD-37 333 蓋卥王14年冬10月葵酉の日 朔 468/11/1 468/11/2

KD-38 357 三斤王2年3月己酉の日 朔 478/4/19 478/4/20

KD-39 360 東城王17年夏5月甲戌の日 朔 494/6/19 494/6/20

KD-40 366 武寧王16年春3月戊辰の日 朔 516/4/18 516/4/20

KD-41 368 聖王10年秋7月甲辰 532/8/28 532/8/30

KD-42 368 聖王12年夏4月丁卯 534/5/13 534/5/15

KD-43 369 聖王25年春正月己亥の日 朔 547/2/6 547/2/8

KD-44 377 威徳王6年夏5月丙辰の日 朔 559/5/22 559/5/24

KD-45 378 威徳王19年秋9月庚子の日 朔 572/9/23 572/9/25

KD-46 378 威徳王26年冬10月 579/11/5-579/12/3 579/11/7-579/12/5

KD-47 379 威徳王39年秋7月壬申の日 晦 592/9/10 592/9/12

KD-48 379 威徳王41年冬11月癸未 595/1/9 595/1/11

KD-49 389 武王41年春正月 640/1/29-640/2/26 640/2/1-640/2/29

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東洋文庫425 三国史記2 高句麗本紀10巻 百済本紀6巻 記事一覧表 

No p 年号 西暦年種類 記事

KK-1 14 瑠璃明王13年春正月 BC7 惑星 熒惑が心星(なかご)の近くにあらわれた

KK-2 42 閔中王3年秋7月 46 彗星 星はいが南の空に20日間あらわれて消えた

KK-3 53 大祖大王62年春3月 114 日食

KK-4 53 大祖大王64年春3月 116 日食

KK-5 55 大祖大王72年秋9月庚申の日 124 日食 晦に日食があった

KK-6 64 次大王4年夏4月丁卯の日 149 日食 晦に日食があった

KK-7 65 次大王4年5月 149 惑星 五星が当方に集まった。朴者が王の怒りを・・・

KK-8 65 次大王8年12月 153 星 晦日に、日ごろ見なれない星が月をよぎった

KK-9 65 次大王13年春2月 158 彗星 ほうき星が北斗に出た

KK-10 65 次大王13年夏5月甲戌の日 158 日食 晦に日食があった

KK-11 65 次大王20年春正月 165 日食 晦に日食があった

KK-12 74 新大王14年冬10月丙子の日 178 日食 晦に日食があった

KK-13 75 故国川王4年春3月甲寅の日 182 夜、赤い雲気が大微を貫いた

KK-14 75 故国川王4年秋7月 182 彗星 ほうき星が大微に出た

KK-15 75 故国川王8年夏4月乙卯の日 186 惑星 熒惑が心星のまわりにでた

KK-16 75 故国川王8年夏5月壬辰の日 186 日食 晦に日食があった

KK-17 87 山上王21年冬10月 217 彗星 星はいが北東方にでた

KK-18 87 山上王23年春2月壬子の日 219 日食 晦に日食があった

KK-19 104 西川王4年秋7月丁酉の日 273 日食 朔に日食があった

KK-20 108 烽上王8年秋9月 299 客星 客星が月をよぎった

KK-21 112 美川王元年12月 300 彗星 ほうき星が東方に

KK-22 113 美川王16年秋8月 315 彗星 ほうき星が東北方に

KK-23 122 故国原王6年春3月 336 大きな星が西北方に流れた

KK-24 126 小獣林王13年秋9月 383 彗星 ほうき星が西北方にでた

KK-25 163 陽原王10年12月晦 554 日食 晦に日食があり、氷がはらなかった

KK-26 164 陽原王11年11月 555 惑星 太白が昼に見えた

KK-27 166 平原王23年春2月晦 581 流星 流星が雨のようにおちた

KK-28 200 栄留王23年秋9月 640 日の光がなくなり、3日たってまた明るくなった

KK-29 212 宝蔵王2年秋9月15日 643 夜明けに月が見えなくなり、多くの星が西方に流れていった

百済本紀6巻

KD-1 276 始祖6年秋7月辛未の日 BC13 日食 晦に日食があった

KD-2 286 多婁王46年夏5月戊午の日 73 日食 晦に日食があった

KD-3 287 己婁王9年夏4月乙巳 85 客星 客星、紫微(北斗星の北の星)と重なった

KD-4 287 己婁王11年秋8月乙未の日 87 日食 晦に日食があった

KD-5 287 己婁王16年夏6月戊戌の日 92 日食 晦に日食があった

KD-6 289 蓋婁王10年秋8月庚子 137 惑星 熒惑が南斗をよぎった

KD-7 289 蓋婁王38年春正月丙申の日 165 日食 晦に日食があった

KD-8 290 肖古王5年春3月丙寅の日 170 日食 晦に日食があった

KD-9 291 肖古王24年夏4月丙午の日 189 日食 晦に日食があった

KD-10 292 肖古王39年冬10月 204 彗星 はい星が東井(井宿)にあらわれた

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KD-11 292 肖古王40年秋7月 205 惑星 太白が月をよぎった

KD-12 292 肖古王47年夏6月庚寅の日 212 日食 晦に日食があった

KD-13 302 仇首王8年6月戊辰の日 221 日食 晦に日食があった

KD-14 302 仇首王9年11月庚申の日 222 日食 晦に日食があった

KD-15 303 仇首王11年冬10月 224 惑星 太白が昼にあらわれた

KD-16 305 古尓王16年春正月甲午 249 惑星 太白が月をよぎった

KD-17 307 古尓王36年秋9月 269 彗星 はい星が紫宮(天帝のいる星群)にあらわれた

KD-18 309 汾西王5年夏4月 302 彗星 ほうき星が昼にあらわれた

KD-19 310 比流王5年春正月丙子の日 308 日食 朔、日食があった

KD-20 310 比流王13年春 316 流星 大星が西方に流れおちた

KD-21 311 比流王18年秋7月 321 惑星 太白が昼にあらわれた

KD-22 311 比流王32年冬10月乙未の日 335 日食 朔、日食があった

KD-23 312 比流王33年春正月辛巳 336 彗星 ほうき星が奎宿にあらわれた

KD-24 313 近肖古王23年春3月丁巳の日 368 日食 朔、日食があった

KD-25 324 辰斯王6年秋7月 390 彗星 星はいが北河(ふたご座の3星)にでた

KD-26 324 辰斯王8年夏5月丁卯の日 392 日食 朔、日食があった

KD-27 326 阿莘王3年秋7月 394 惑星 太白が昼にあらわれた

KD-28 326 阿莘王4年春2月 395 彗星 星はいが西北方にあらわれ、20日して消滅した

KD-29 327 阿莘王9年春2月 400 彗星 星はいが奎宿や婁宿(おひつじ座)にあらわれた

KD-30 327 阿莘王9年夏6月庚辰の日 400 日食 朔、日食があった

KD-31 330 腆支王11年夏5月甲申の日 415 彗星 彗星があらわれた

KD-32 330 腆支王13年春正月甲戌の日 417 日食 朔、日食があった

KD-33 330 腆支王15年春正月戊戌 419 彗星 星はいが大微にあらわれた

KD-34 330 腆支王15年冬11月丁亥の日 419 日食 朔、日食があった

KD-35 332 ひ有王14年夏4月戊午の日 440 日食 朔、日食があった

KD-36 332 ひ有王28年 454 流星 星が雨のようにおち、星はいが西北にあらわれたが、

その長さは2丈ばかりであった。

KD-37 333 蓋卥王14年冬10月葵酉の日 468 日食 朔、日食があった

KD-38 357 三斤王2年3月己酉の日 478 日食 朔、日食があった

KD-39 360 東城王17年夏5月甲戌の日 495 日食 朔、日食があった

KD-40 366 武寧王16年春3月戊辰の日 516 日食 朔、日食があった

KD-41 368 聖王10年秋7月甲辰 532 流星 流星が雨のようにおちた

KD-42 368 聖王12年夏4月丁卯 533 惑星 熒惑が南斗をよぎった

KD-43 369 聖王25年春正月己亥の日 547 日食 朔、日食があった

KD-44 377 威徳王6年夏5月丙辰の日 559 日食 朔、日食があった

KD-45 378 威徳王19年秋9月庚子の日 572 日食 朔、日食があった

KD-46 378 威徳王26年冬10月 579 彗星 長星が天をわたった。20日たって消滅した

KD-47 379 威徳王39年秋7月壬申の日 592 日食 晦、日食があった

KD-48 379 威徳王41年冬11月癸未 594 彗星 星はいが角宿・亢宿にでた

KD-49 389 武王41年春正月 640 彗星 星はいが西北方にあらわれた

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東洋文庫372 三国史記1 新羅本紀12巻 ステラナビゲータでの観測記録表(日食)

No p    年号 記事 ユリウス暦 ステラナビゲータでの観測記録 一致/不一致

1 4 始祖前紀4年   夏4月、辛丑の日 BC54/5/9 BC54/5/9 14:37-16:50 ○

4 5 始祖前紀24年   夏6月、壬申の日の晦 BC34/8/23 × ×

5 5 始祖前紀30年    夏4月、己亥の日の晦 BC28/6/19 BC28/6/19 10:25-13:00 ○

6 5 始祖前紀32年      秋8月、乙卯の日の晦 BC26/10/23 BC26/10/23 15:33-17:40 ○

7 7 始祖前紀43年       春2月、乙酉の日の晦 BC15/3/29 BC15/3/29 8:53-11:53 ○

9 7 始祖前紀56年        春正月、辛丑の日の朔 BC2/2/5 BC2/2/5 8:51-11:25 ○

10 7 始祖前紀59年       秋9月、戊申の日の晦 AD2/11/23 AD2/11/23 8:59-11:37 ○

11 10 11)南解次次雄3年     冬10月、丙辰の日の朔 AD6/11/10 AD6/9/11 16:34-19時ごろ(地平線に隠れる) ×

12 10 12)南解次次雄13年      秋7月、戊子の日にあたる晦 AD16/9/20 AD16/8/21 10:38-13:23 ×

20 26 20)祇摩尼師今13年      秋9月、庚申の日にあたる晦 124/10/25 124/10/25 8:35-11:09 ○

21 27 21)祇摩尼師今16年      秋7月、甲イヌの日にあたる晦 127/8/25 127/8/25 17:17-19:10 ○

23 29 23)逸聖尼師今8年     秋9月、辛亥の日にあたる晦 141/11/16 起こりそうなところで地平線に隠れる ×

27 40 27)阿達羅尼師今13年    春正月、辛亥の日にあたる朔 166/2/18 166/2/18 7:17(日食した状態で日の出)-8:52 ○

28 42 28)伐休尼師今3年     夏5月、壬申の日にあたる朔 186/7/4 太陽と月が横にぴったり並ぶが重ならず ×

29 43 29)伐休尼師今10年      春正月、甲寅の日にあたる朔 193/2/19 193/2/19 17:21-18:20(日の入) ○

30 43 30)伐休尼師今11年      夏6月、乙巳の日にあたる晦 194/8/4 194/8/4 5:42-7:36 ○

32 45 32)奈解尼師今5年     9月、庚午の日にあたる朔 200/9/26 200/9/26 6:22(日食した状態で日の出)-8:16 ○

33 45 33)奈解尼師今6年      3月、丁卯の日にあたる朔 201/4/21 201/3/22 7:27-8:20 ×

35 51 35)てん解尼師今10年    冬10月晦 256/12/4 × ×

89 320 89)元聖王3年      8月、辛巳にあたる朔 787/9/16 787/9/16 17:54-18:36 ○

90 321 90)元聖王5年      春正月、甲辰にあたる朔 789/1/31 789/1/31 10:37-14:05 ○

92 324 92)元聖王8年        冬11月壬子の日にあたる朔 792/11/19 792/11/19 9:28-11:37 ○

93 328 93)哀荘王2年    夏5月、壬イヌの日にあたる朔、日食の日にあたっていながら、日食がなかった

801/6/15801/6/15 8:30-10:43で日食あり。梅雨などの悪天候によるものか?

×

96 331 96)哀荘王9年       秋7月、辛巳の日にあたる朔 808/7/27 808/7/27 9:40-11:20 ○

100 334 100)憲徳王7年      秋8月、己亥の日にあたる朔 815/9/7 815/9/7 9:58-12:27 ○

102 335 102)憲徳王9年     夏6月、キ(発に似た)丑の日にあたる朔 818/7/7 818/7/7 16:13-18:25 ○

107 345 107)興徳王11年   春正月、辛丑の日にあたる朔 836/1/22 太陽と月が横にぴったり並ぶが重ならず ×

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110 360 110)文聖王6年       春2月、甲寅の日にあたる朔  844/2/22 844/2/22 11:00-13:00 ○

119 381 119)真聖王2年     3月、戊イヌ(戊に似た)の日にあたる朔 888/4/15 888/4/15 11:37-14:52 ○

123 393 123)孝恭王15年     春正月、丙イヌ(戊に似た)の日にあたる朔 911/2/2 911/2/2 13:00-14:12 ○

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東洋文庫425 三国史記2 高句麗本紀10巻 百済本紀6巻 ステラナビゲータでの観測記録(日食)

高句麗本紀10巻

No p 年号 記事 注 ユリウス暦 ステラナビゲータでの観測記録 一致/不一致

KK-3 53 大祖大王62年春3月 後漢書にもあり 114/4/23-114/5/21 114/11/15 14:43-17:25 ×

KK-4 53 大祖大王64年春3月 後漢書にもあり 116/3/31-116/4/29 116/4/1 6:19(日の出)-7:05 ○

KK-5 55 大祖大王72年秋9月庚申の日 晦に日食があった 後漢書にもあり 124/10/25 124/10/25 8:40-11:05 ○

KK-6 64 次大王4年夏4月丁卯の日 晦に日食があった 149/6/23 149/6/23 6:50-8:35 ○

KK-10 65 次大王13年夏5月甲戌の日 晦に日食があった 後漢書にもあり 158/7/13 158/7/13 17:45-19:35 ○

KK-11 65 次大王20年春正月 晦に日食があった 後漢書にもあり 165/1/30-165/2/28 165/2/28 17:20-18:25(日の入り) ○

KK-12 74 新大王14年冬10月丙子の日 晦に日食があった 後漢書にもあり 178/11/27 178/11/27 10:45-12:05 ○

KK-16 75 故国川王8年夏5月壬辰の日 晦に日食があった 後漢書にもあり 186/7/4 近づくが日食せず。 ×

KK-18 87 山上王23年春2月壬子の日 晦に日食があった 後漢書にもあり 219/4/2 219/4/2 17:10-18:50 ○

KK-19 104 西川王4年秋7月丁酉の日 朔に日食があった 晋書にもあり 273/8/1 273/5/4 15:40-17:45 ×

KK-25 163 陽原王10年12月晦晦に日食があり、氷がはらなかった

他に記録なし。高句麗独自か

555/2/6 × ×

百済本紀6巻

KD-1 276 始祖6年秋7月辛未の日 晦に日食があった 漢書にあり BC13/8/31 BC13/8/31 6:55-8:25 ○

KD-2 286 多婁王46年夏5月戊午の日 晦に日食があった 後漢書にあり AD73/7/23 AD73/7/23 18:35-19:50(日の入り) ○

KD-4 287 己婁王11年秋8月乙未の日 晦に日食があった 後漢書にあり AD87/10/15 87/10/15 17:15-18:00(日の入り) ○

KD-5 287 己婁王16年夏6月戊戌の日 晦に日食があった 後漢書にあり AD92/7/23 92/7/23 11:05-13:35 ○

KD-7 289 蓋婁王38年春正月丙申の日 晦に日食があった 後漢書にあり 165/2/28 165/2/28 17:20-18:25(日の入り) ○

KD-8 290 肖古王5年春3月丙寅の日 晦に日食があった 後漢書にあり 170/5/3 ×(5/4の日の出時近いが重ならず) ×

KD-9 291 肖古王24年夏4月丙午の日 晦に日食があった 後漢書にあり 189/5/3 189/5/3 14:10-17:05 ○

KD-12 292 肖古王47年夏6月庚寅の日 晦に日食があった 後漢書にあり 212/8/14 212/8/14 15:40-17:45 ○

KD-13 302 仇首王8年6月戊辰の日 晦に日食があった 三国志にあり 221/8/5 221/8/5 14:50-16:35 ○

KD-14 302 仇首王9年11月庚申の日 晦に日食があった 三国志にあり 223/1/19 223/1/19 15:30-17:45 ○

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KD-19 310 比流王5年春正月丙子の日 朔、日食があった晋書にもあり。日が違うが

308/2/8 308/11/30 日の出時日食 ×

KD-22 311 比流王32年冬10月乙未の日 朔、日食があった 晋書にあり 335/11/2 × ×

KD-24 313 近肖古王23年春3月丁巳の日 朔、日食があった 晋書にあり 368/4/4 368/4/4 6:15-8:20  (7:15 金環日食) ○

KD-26 324 辰斯王8年夏5月丁卯の日 朔、日食があった 晋書にあり 392/6/7 392/6/7 15:00-17:05 ○

KD-30 327 阿莘王9年夏6月庚辰の日 朔、日食があった 晋書にあり 400/7/8 400/7/8 11:00-13:40 ○

KD-32 330 腆支王13年春正月甲戌の日 朔、日食があった 晋書にあり 417/2/3 417/2/3 7:35(日の出)-9:00 ○

KD-34 330 腆支王15年冬11月丁亥の日 朔、日食があった 晋書にあり 419/12/3 419/12/3 10:00-11:25 ○

KD-35 332 ひ有王14年夏4月戊午の日 朔、日食があった 宋書にあり 440/5/17 440/5/17 12:35-14:35 ○

KD-37 333 蓋卥王14年冬10月葵酉の日 朔、日食があった 宋書にあり 468/11/1 468/11/1 7:10-8:50 ○

KD-38 357 三斤王2年3月己酉の日 朔、日食があった 独自か 478/4/19重ならず 10/12の6:45ごろ隣合わせになるが重ならず

×

KD-39 360 東城王17年夏5月甲戌の日 朔、日食があった魏書にあり、1年違う

494/6/19 494/6/19 8:40-11:10    (9:49 皆既日食) ○

KD-40 366 武寧王16年春3月戊辰の日 朔、日食があった 梁書にあり 516/4/18 516/4/18 7:10-9:35     (8:20 金環日食) ○

KD-43 369 聖王25年春正月己亥の日 朔、日食があった 魏書にあり 547/2/6 547/2/6 17:10-18:10(日の入り) ○

KD-44 377 威徳王6年夏5月丙辰の日 朔、日食があった 陳書にあり 559/5/22 × ×

KD-45 378 威徳王19年秋9月庚子の日 朔、日食があった 陳書にあり 572/9/23 572/9/23 11:15-14:10 ○

KD-47 379 威徳王39年秋7月壬申の日 晦、日食があった 隋書にあり 592/9/10 × ×

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東洋文庫372 三国史記1 新羅本紀12巻 ステラナビゲータでの観測記録表(惑星・星座)

No p    年号 現象 記事 ユリウス暦 ステラナビゲータでの観測記録 一致/不一致

13 11 13)南解次次雄20年   金星  秋、太白が太微(しし座の西端)に入った。北方にも現れ、20日たって消滅した

23/8/6-23/11/1 10/6の4:00ごろしし座の足(西端)と金星が重なる ○

24 29 24)逸聖尼師今10年   火星と土星  夏6月、乙丑の日、蛍惑が鎮星を犯した

143/7/2323日深夜、24日深夜に近くなるが重ならず(月1個分の差)

×

31 45 31)奈解尼師今5年    金星   秋7月、太白が昼間から見えた 200/7/29-200/8/27 期間中昼間ずっと見えている ○

34 45 34)奈解尼師今10年 金星   秋7月、太白が月の中にはいった 205/8/3-205/9/1 9/4に近くなるが重ならず(月3個分の差) ×

40 84 40)しょう知麻立干6年  土星   3月、土星が月を犯した 484/4/11-484/5/10 4/16に木星ならば近づいた(月1個分の差) ×

4/28に平行に並んだが重ならず(月10個分以上の差)

42 123 42)真平王53年    土星   秋7月、土星が月を犯した 631/8/3-631/9/1 重ならず、近づかず ×

46 197 46)文武王10年   土星   12月、土星が月と重なった     670/1/17-670/2/141/28に近くなるが重ならず(月5個分以上の差)、むしろ木星の方が近い(月1個分の差)

×

50 235 50)文武王19年   火星  夏4月、蛍惑(火星)が羽林(天軍を掌る将星)のまわりにでた

679/5/15-679/6/135/31~6月中旬、3~4時に魚座・水瓶座・くじら座の間に火星が見られた

51 236 51)文武王19年     金星   6月、太白(金星)が月と重なった 679/7/13-679/8/11 7/11の4:00-8:00に近くなるが重ならず(月3個分の差) ×

53 236 53)文武王19年     金星   秋8月、太白(金星)が月と重なった 679/9/11-679/10/9 9/9に近くなるが重ならず(月5個分の差) ×

56 253 56)神文王2年     金星   5月、太白(金星)が月と重なった 682/6/11-682/7/9 6/8の7:00-11:00に近くなるが重ならず(月4個分の差) ×

60 261 60)孝行王9年  木星   6月、歳星が月と重なった 700/6/21-700/7/20 6/26の23時ごろ近くなるが重ならず(月6個分の差) ×

63 264 63)聖徳王7年      土星(木星?)  夏4月、鎮星(木星?)が月と重なった(鎮星=土星)

708/4/25-708/5/23 4/28の20:03-20:45に土星が月と重なる ○

65 267 65)聖徳王14年   金星  秋9月、太白が庶子星(北極星、北極五星の第三星)をおおった

715/10/2-715/10/31 金星の軌道自体が北極星と重ならない ×

71 278 71)聖徳王34年 火星   春正月、蛍惑(火星)が月をよぎった 735/1/29-735/2/26 2/14の7:00-8:00に月と火星が重なった ○

74 291 74)孝成王4年     土星  夏5月、鎮星が軒轅大星(ケンエンタイセイ)(しし座のα星)(北斗七星の北にある星座)をよぎった。

740/5/30-740/6/28あまり近くはなくよぎったとは言いづらい、この年の間では位置関係はほとんど変化していない

×

88 320 88)元聖王3年   金星   夏5月、金星が昼に現れた 787/5/22-787/6/19 期間中昼間ずっと見えている ○

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91 323 91)元聖王6年     金星・水星  夏4月、太白・辰星(水星)が東井星(ふたご座の足の部分)に集まった

790/4/19-790/5/185/20-5/25の夜にふたご座の足の部分で水星と金星がみられる

94 328 94)哀荘王2年    火星   秋9月、蛍惑月と重なり、 801/10/11-801/11/9 10/17の22時ごろに近くなるが重ならず(月8個分の差) ×

97 331 97)哀荘王10年  月とおうし座の顔の7星

  春正月、月が畢宿(おうし座の顔の部分の七星)をよぎった

809/1/20-809/2/27 1/28の20時ごろ、おうし座の顔の辺りを通過 ○

106 342 106)興徳王2年     金星   秋8月、太白が昼間にあらわれた 827/8/26-827/9/24 期間中昼間ずっと見えている ○

109 345 109)興徳王11年 金星   秋7月、太白が月をよぎった 836/8/16-836/9/148/17の昼間に太陽10個分(水星であれば太陽5個分)ほど、9/16の昼間に太陽8個分ほどの距離まで月に近づく。

111 360 111)文聖王6年     金星・土星   春2月、金星が土星をよぎった 844/2/22-844/3/22 2/27に平行に並ぶ(太陽2個半ほどの差) ○

113 363 113)文聖王12年    土星   春正月、土星と月がかさなった 850/2/16-850/3/17 2/19に近くなるが重ならず(月3個半ほどの差) ×

114 363 114)文聖王17年  土星   冬12月、土星と月がかさなった 856/1/12-856/2/9 1/23の5:30ごろに近くなるが重ならず(月4個分の差) ×

115 371 115)景文王7年     客星・金星  12月、客星(水星?)が太白(金星)をよぎった

867/12/30-868/1/28客星(水星)ではなく土星が金星をよぎる(太陽2個分の距離)

×

117 375 117)憲康王6年    金星   春2月、太白(金星)が月をよぎった 880/3/15-880/4/123/18に太陽8個分ほど近づく(2/17に月1個分の距離まで近づいていた)

×

118 377 118)憲康王11年    金星  冬10月、壬子の日、太白(金星)が昼現れた

885/11/11 昼間ずっと見えている ○

124 394 124)神徳王6年    金星   春正月、太白が月をよぎった 917/1/26-917/2/23 1/29の14時ごろ月1個分ほどの距離まで月に近づく ○

125 404 125)敬順王8年    老人星  秋9月、老人星(南極星)(カノープス、りゅうこつ座)が現れた

934/10/11-934/11/9 11/8-12/8の間、地平線ぎりぎりのところで見られた ○

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東洋文庫425 三国史記2 高句麗本紀10巻 百済本紀6巻 ステラナビゲータでの観測記録表(惑星・星座)

高句麗本紀10巻

No p 年号 現象 記事 注 ユリウス暦 ステラナビゲータでの観測記録 一致/不一致

KK-1 14 瑠璃明王13年春正月 惑星熒惑が心星(なかご)の近くにあらわれた

漢書にもあり BC7/1/31-BC7/3/1近くにあるのは北極星ではなく乙女座α星 スピカ

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KK-7 65 次大王4年5月 惑星五星(木星・火星・金星・水星・土星)が当方に集まった。

後漢書にもあり 149/6/24-149/6/22 6/1の朝ごろ、南から東にかけて五星が見える。 ○

KK-8 65 次大王8年12月 星晦日に、日ごろ見なれない星が月をよぎった

154/1/2-154/1/31 おそらく金星のこと。太陽と月に接近した。 ○

KK-15 75故国川王8年夏4月乙卯の日

惑星 熒惑が心星のまわりにでた 後漢書にもあり 186/5/28夜、北極星ではなく、さそり座の近くにでる。北斗七星とさそり座の見間違いか。

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KK-26 164 陽原王11年11月 惑星 太白が昼に見えた他に記録なし。高句麗独自か

555/11/30-555/12/28 期間中見られた ○

百済本紀6巻

KD-6 289 蓋婁王10年秋8月庚子 惑星 熒惑が南斗(南斗六星)をよぎった 後漢書にあり 137/9/27137/9/27 19:30ごろ南斗六星の北に火星が見られる。

KD-11 292 肖古王40年秋7月 惑星 太白が月をよぎった 205/8/3-205/9/1 8/5に近くなり、9/4に最も接近する(昼間) ○

KD-15 303 仇首王11年冬10月 惑星 太白が昼にあらわれた 三国志にあり 224/10/30-224/11/28 期間中見られた ○

KD-16 305 古尓王16年春正月甲午惑星 太白が月をよぎった 249/2/5 月の近くに惑星なし 金星は遠い ×

KD-21 311 比流王18年秋7月 惑星 太白が昼にあらわれた 321/8/10-321/9/7 期間中見られた ○

KD-27 326 阿莘王3年秋7月 惑星 太白が昼にあらわれた 百済独自か 394/8/13-394/9/11 期間中見られた ○

KD-42 368 聖王12年夏4月丁卯 惑星 熒惑が南斗をよぎった 梁書にあり 534/5/13近い (4月の終わり~7月の終わりで見られ、7/13に南斗六星の真ん中に入る。