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583 ―  ― 地方都市における低栄養リスク高齢者集住地区の析出と 移動販売車事業の評価 フードデザート問題研究における買い物弱者支援事業の検討 間 信 中 耕 ** 駒木 伸比古 *** 田 真 **** 川 達 ***** Mapping Residential Areas of Elderly People at High Risk of Undernutrition: Analysis of Mobile Sales Wagons from the Viewpoint of Food Desert Issues Nobuyuki IWAMA , Koichi TANAKA ** , Nobuhiko KOMAKI *** , Masashi IKEDA **** and Tatsuto ASAKAWA ***** Received 18 November, 2015; Accepted 6 April, 2016Abstract The purposes of this study are to map residential areas of elderly people at high risk of undernutrition food desert areas, and to assess mobile sales wagons as a form of support for disadvantaged shoppers. The research methods are as follows: 1prepare a map that shows high-density areas of elderly people who suffer from poor nutrition; 2compare the locations of undernourished elderly people in relation to stations where mobile sales wagons stop; and, 3assess the efficiency of mobile sales wagon support by comparing these locations, and suggest improvements. The findings of this research are as follows. 1There are long distances between the locations of poor food access areas and high-density areas of undernourished elderly people. Local communities of people with limited access to shopping facilities are mainly located in suburban agricultural areas, whereas residential areas of undernourished elderly people are located in suburban agricultural areas and city centers. 2Wagon stations are mainly located in residential areas of relatively poor food access areas; there are no stations in city centers. 3The customer ratio of sales wagons tends to be higher in areas where many low-functioning independent elderly people live, and in areas where many economically poor seniors and those isolated from family members dwell. 地学雑誌 Journal of Geography Chigaku Zasshi125 4583606 2016 doi:10.5026/jgeography.125.583 茨城キリスト教大学文学部 ** 茨城大学人文学部 *** 愛知大学地域政策学部 **** 拓殖大学商学部 ***** 明治学院大学社会学部 College of Literature, Ibaraki Christian University, Hitachi, 319-1295, Japan ** College of Humanities, Ibaraki University, Mito, 310-8512, Japan *** Faculty of Regional Policy, Aichi University, Toyohashi, 441-8522, Japan **** Faculty of Commerce, Takushoku University, Tokyo, 112-8585, Japan ***** Faculty of Sociology and Social Work, Meiji Gakuin University, Tokyo, 108-8636, Japan

地方都市における低栄養リスク高齢者集住地区の析 … of Geography 2016...― ―583 地方都市における低栄養リスク高齢者集住地区の析出と

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583―  ―

地方都市における低栄養リスク高齢者集住地区の析出と移動販売車事業の評価

―フードデザート問題研究における買い物弱者支援事業の検討―

岩 間 信 之* 田 中 耕 市** 駒 木 伸 比 古***

池 田 真 志**** 浅 川 達 人*****

Mapping Residential Areas of Elderly People at High Risk of Undernutrition:

Analysis of Mobile Sales Wagons from the Viewpoint of Food Desert Issues

Nobuyuki IWAMA*, Koichi TANAKA**, Nobuhiko KOMAKI***,

Masashi IKEDA**** and Tatsuto ASAKAWA*****

[Received 18 November, 2015; Accepted 6 April, 2016]

Abstract  The purposes of this study are to map residential areas of elderly people at high risk of undernutrition (food desert areas), and to assess mobile sales wagons as a form of support for disadvantaged shoppers. The research methods are as follows: (1) prepare a map that shows high-density areas of elderly people who suffer from poor nutrition; (2) compare the locations of undernourished elderly people in relation to stations where mobile sales wagons stop; and, (3) assess the effi ciency of mobile sales wagon support by comparing these locations, and suggest improvements. The findings of this research are as follows. (1) There are long distances between the locations of poor food access areas and high-density areas of undernourished elderly people. Local communities of people with limited access to shopping facilities are mainly located in suburban agricultural areas, whereas residential areas of undernourished elderly people are located in suburban agricultural areas and city centers. (2) Wagon stations are mainly located in residential areas of relatively poor food access areas; there are no stations in city centers. (3) The customer ratio of sales wagons tends to be higher in areas where many low-functioning independent elderly people live, and in areas where many economically poor seniors and those isolated from family members dwell.

地学雑誌 Journal of Geography(Chigaku Zasshi) 125(4)583‒606 2016 doi:10.5026/jgeography.125.583

    * 茨城キリスト教大学文学部   ** 茨城大学人文学部  *** 愛知大学地域政策学部 **** 拓殖大学商学部***** 明治学院大学社会学部    * College of Literature, Ibaraki Christian University, Hitachi, 319-1295, Japan   ** College of Humanities, Ibaraki University, Mito, 310-8512, Japan  *** Faculty of Regional Policy, Aichi University, Toyohashi, 441-8522, Japan **** Faculty of Commerce, Takushoku University, Tokyo, 112-8585, Japan***** Faculty of Sociology and Social Work, Meiji Gakuin University, Tokyo, 108-8636, Japan

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584―  ―

Key words: residential areas of elderly people at high risk of undernutrition, mobile sales

wagons for disadvantaged shoppers, food deserts issues, local city

キーワード:低栄養リスク高齢者集住地区,移動販売車事業,フードデザート問題,地方都市

I.は じ め に

 本研究の目的は,買い物弱者支援移動販売車事業の意義と課題を,フードデザート(食の砂漠,Food Deserts:以下 FDsと略記)問題の視点から実証的に検証することにある。 FDsとは,特定の地域住民における生活環境の悪化と,それに起因する食生活の悪化を意味する(Whitehead, 1998)。イギリスでは,商業施設の郊外移転が顕在化した 1990年代から FDs

問題が注目されはじめた(Wrigley et al., 2003)。イギリスにおける FDsの最大の被害者は,低所得の外国人労働者である。自家用車をもたない彼らの多くは,日々の食材の購入を,価格が高いうえに野菜や果物といった生鮮品を扱っていない雑貨屋に依存せざるをえない。また,こうしたエリアでは,教育や雇用機会,公衆衛生,治安維持など,さまざまな社会サービスも欠落している。ファストフード店の進出も顕著である。FDsでは住民の食生活が悪化し,癌や心臓血管疾患などの健康被害が拡大している。食生活に関連したこうした疾病には,地域格差が存在する。そのため,FDsと疾患の発生には,何らかの関連があると推測される(Acheson, 1998)。 イギリスでは当初,FDsを誘発する主要因は,商店街の空洞化等などによる自宅から食料品店への近接性(食料品アクセス)の低下であると考えられていた。そのため,同国では1990年代以降,行政が中心となり,食料品アクセスが低下した買い物先空白地区の把握や,FDs問題対策としての当該地区でのスーパーマーケットや移動販売車の出店が進められた(Wrigley, 2002)。 一方,FDsの学術研究は,2000年代に本格化した。FDsにおけるスーパーマーケットの新規出店前・後における住民の食生活の変化を調査した一連の研究は,いずれの地区でも,住民の食生

活に顕著な改善はみられなかったと結論づけている(Wrigley et al., 2003; White et al., 2004;

Cummins et al., 2005)。また,大都市中心部や農・漁村,島嶼部の買い物先空白地区を調査した研究は,どの地区も,個人商店や雑貨店が品揃えを拡張させることで,健康的な食生活維持を維持させるのに十分な食品群を住民に提供していることを実証している(Dawson et al., 2008; Smith

et al., 2009; Cummins et al., 2010, など)。これらの研究結果は,少なくとも英国では,食料品アクセスの低下が住民の食生活を阻害する主要因ではないことを示唆している1)。現在では,明確な学術的証拠を欠いたまま食料品アクセスの改善事業を展開した政府に対し,批判もみられる。また,食料品アクセス以外の生活環境要因の検討も含めた,FDs問題研究の枠組みの再検討が求められている(Findlay and Sparks, 2006)。 イギリスと異なり,FDs問題と人口の高齢化が強く結び付く日本では,食料品アクセスの低下が FDsに及ぼす影響は大きいと考えられる。近年,日本では,日常の食料品入手に困難を感じている高齢者を意味する,いわゆる買い物弱者・買い物難民が注目されている(杉田, 2008; 岩間ほか, 2009; 経済産業省, 2010)。2013年には,農林水産省農林水産政策研究所が日本全国の人口分布と食料品店の位置関係を測定し,自宅から 500 m

以内に生鮮食料品店がなく,かつ自家用車を所有していない 65歳以上高齢者が,全国に約 382

万人存在すると指摘した(薬師寺・高橋, 2012)。また,高齢者の間では,食生活の悪化に伴う健康被害も拡大している(厚生労働省, 2013)。高齢者の健康被害には,地域格差が存在する。健康の地域差を生む要因として,商店街の空洞化などによる食料品アクセスの低下が注目されている。 買い物弱者・買い物難民は,FDs問題を食料品アクセスの視点から捉えたものと理解できる2)。

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現行の買い物弱者・買い物難民研究は,買い物先空白地区と FDsを同一に捉え,「買い物先空白地区に住む自家用車のない高齢者は,全員日常の食生活に困っている」という前提に立っている。しかし,後述の通り,買い物先空白地区と,本当に支援を必要としている高齢者の分布は,合致しないことも多い。住民の健康的な食生活を阻害する生活環境要因は多様である。日本における FDs

の最大の被害者は,家族や社会から孤立した高齢者である(岩間, 2013)。この点が,日本における FDs問題の特徴である。家族や地域コミュニティから孤立すると,買い物代行やお裾分け,会食などへの勧誘,食生活のアドバイスといった支援を受けにくくなる。社会からの孤立は高齢者の生きる気力を奪うだけでなく,自立的な生活を送るうえで必要な知的能動性の低下も招く(熊谷,

2011)。家族や地域コミュニティの繋がりが低下した地域では,買い物環境に恵まれていても,食生活は悪化する傾向にある。こうした地域は,FDsに該当する。一方,一見すると店がなく買い物が困難であると思われる地域でも,実際には自動車によるまとめ買いやお裾分け,近所に住む子どもや友人・知人からの支援などにより,食料の調達が円滑に行われているケースも多い。こうした地域は,FDsには含まれない。 高齢者の食生活は,食料品アクセスだけでなく,地域・家族との繋がりの影響も強く受ける3)。この点をふまえ,岩間ほか(2015a)は,現在の日本における FDsを,①社会的弱者(おもに高齢者)が集住し,②商店街の消失などに伴う買い物環境の悪化[空間的要因:食料品アクセスの低下]と,家族・地域コミュニティによる相互扶助体制の低下[社会的要因:ソーシャル・キャピタル(社会関係資本:以下 SCと略記)4)の低下]のいずれか,あるいは両方が生じたエリア,と定義している5)。

II.買い物支援事業の概要と研究課題

 食生活の悪化は,健康被害に直結する。高齢者における食を巡る生活環境の改善は,喫緊の課題である。買い物弱者に対する関心が集まった

2010年以降,全国でさまざまな支援事業が実施されている6)。現行の買い物弱者支援事業は,買い物先空白地区への食料品店の出店,移動販売車の巡回や宅配の実施,および高齢者の移送に分類される(経済産業省, 2010)。また,NPO団体等が進める高齢者の共食事業も,支援事業に含まれる(佐々木, 2010)7)。これらの事業は社会福祉の性格が強く,事業単体での採算性の確保は難しい。店舗の開設に比べて少ない初期投資で食料品アクセスを改善できる移動販売車は,買い物支援事業のなかでも注目度が高い。 しかし,移動販売車事業の大半は,利用者が少なく採算があわない状況にある。問題は,「具体的にどこで,誰が,どのような支援を求めているのか」という基本的な情報が欠落したまま,手探りで買い物弱者支援が進められている点にある。実際に,どこに支援を必要としている高齢者がいるのかわからず,困惑している事業者は多い 8)。効率的で持続的な事業モデルの再構築が求められている。 移動販売車事業に関する研究は,さまざまな学問分野で進められている。地理学の分野では,「個人・世帯が自動車により移動し,各戸訪問を中心として商品を販売する形態」である行商は研究蓄積があるものの(例えば, 中村, 2009),「地元スーパーや商店によって実施される福祉サービスの一環と位置づけられる」福祉型移動販売の研究は,はじまったばかりである(伊藤, 2015)。商業学や流通論の分野では,買い物弱者支援のさまざまな方法について整理がなされたうえで,その手法の一つとして移動販売が注目されている(高橋ほか, 2012)。多くの研究では,買い物弱者支援における移動販売の有用性に着目しながらも,その実態調査から採算を確保することの難しさが指摘されている(赤坂・加藤, 2012; 房安ほか, 2013; 李, 2013, 2015; 折笠, 2014)。移動販売事業を継続するためには,採算性の確保が重要である。この点に関して,菊池(2015)や李(2015)がフランチャイズ型の移動販売を事例に,その継続性について検討している9)。一方,移動販売の利用者に焦点をあてた研究としては,中山間地域

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における移動販売の利用者の利用実態と意識調査(小田坂・佐藤, 2002; 土屋・佐野, 2011; 浅井・熊谷, 2014, 2015)がなされており,購入品目,購入金額,利用理由,利用の意向などが検討されている。さらに,移動販売においては,商品を販売すること以外の機能についても研究がなされている。例えば,移動販売がもちうる機能として,高齢者の見守り機能(石飛・神山, 2015),コミュニケーション機能(土屋・佐野, 2011),地域福祉の役割(小田坂・佐藤, 2002)などが期待されている。 これらの研究は,移動販売車事業の経営手法や利用者の買い物行動に着目したものであり,支援の対象となる地域の実態や,住民の生活環境は考慮していない。なかでも,移動販売車の巡回エリアに関する議論が不足している。現行の移動販売車事業は,買い物先空白地区に集中している。しかし実際には,低栄養リスク高齢者 10)の集住地区と買い物先の空白地区は,しばしば乖離する11)。このことは,現行の支援事業が,本当に支援を必要としている高齢者に届いていない可能性を示唆する。移動販売車事業の効率性と持続性を検討するためには,まずは,移動販売車の巡回エリアと低栄養リスク高齢者の集住地区の比較から現行の事業を評価するとともに,同事業の潜在的な利用者の集住地区を明らかにする必要がある。

III.研究目的と研究対象地域

 1)研究目的および研究手順 こうした課題をふまえ,本研究では A市における低栄養リスク高齢者集住地区の把握と,それに基づく移動販売車事業の評価を行う。具体的には,①低栄養リスク高齢者集住地区を定量的に抽出するとともに,②当該地区の分布と移動販売車停留所 12)の位置,および各停留所の事業実績を比較・検討することで,移動販売車事業の評価と課題整理を行う。また,③移動販売車の利用度が高い地区の特徴を,地理的視点から分析する13)。研究対象は,ベッドタウンと農業地域が混在する東京近郊の地方都市 A市である。 なお,A市では,高齢者の食生活と生活環境

(居住地の食料品アクセスおよび SC)に,高い相関が確認された(岩間ほか, 2015b)。このことは,高齢者の食生活が生活環境の影響を強く受けており,低栄養リスク高齢者集住地区が FDsに該当することを示唆している。 具体的な分析手順は次の通りである。第 1に,GISを援用して食料品アクセスを計測し,買い物先空白地区を析出した。第 2に,アンケート調査を実施し,高齢者の生活環境に関する詳細な調査を行った。調査項目は,住民属性(性別,年齢,家族構成,自家用車利用の有無,自立度,経済状況,食生活の習慣など),買い物行動(買い物担当者,買い物頻度,移動手段,買い物先,宅配サービス利用の有無,配食サービス利用の有無,買い物における不便の有無),家族・社会との繋がり(日中一人か否か,友人知人との交流頻度,自治会や地域サークル[スポーツ,趣味,教養,ボランティア活動など]への参加頻度),および食品摂取の多様性調査である。また,分析を補足するために,インタビュー調査も実施した。第 3に,食品摂取の多様性得点低群の割合を町丁目単位で再集計し,低栄養リスク高齢者集住地区を抽出した。第 4に,A市における移動販売車事業の概要を整理するとともに,停留所の分布を地図化した。また,移動販売車の利用者数と供給高(販売額)を,停留所単位で分析した。第 5に,低栄養リスク高齢者の集住地区と移動販売車停留所の分布を比較し,双方の整合性を検討した。第6に,各停留所の利用度と,停留所が立地する町丁目の地理的条件(食料品アクセス,家族・地域住民との繋がり,住民の個人属性など)の関係を分析した。 食品摂取の多様性調査とは,医学や栄養学の分野で用いられる,高齢者の低栄養リスクを測定する調査法である(熊谷ほか, 2003)。具体的には,質問票を高齢者に渡し,10の食品群(肉類,魚介類,卵類,牛乳,大豆製品,緑黄色野菜,海藻類,果物,芋類,および油脂類)のそれぞれの摂取頻度を,①ほとんど毎日食べている,②2日に1回,③1週間に 1~ 2回,④ほとんど食べない,のいずれかで答えてもらう。①と回答した品目数

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が,食品摂取の多様性得点となる。多様性得点低群(多様性得点 1~ 3点)は,栄養素の摂取量,摂取習慣,および身体栄養指標がいずれも低くなる傾向が顕著であり,低栄養状態に陥る確率が高い。食品摂取の多様性調査は,高齢者の食生活と健康状態の関係を測定するうえで有効な指標である。 アンケート調査は,A市高齢福祉課および健康管理課の協力のもとで,著者グループが実施した。調査期間は 2014年 2~ 3月である。調査対象は,A市の全高齢者 16,428人からランダムに抽出した 5,500人である(アンケート票は世帯ごとに配布 14))。アンケート票は,著者グループと健康管理課が共同で作成した。アンケートの配布・収集は高齢福祉課が担当し,郵送法にて調査票を送付・回収した。回収した有効回答は 3,984

票,回収率は 72.4%であった。なお,個人情報保護の観点から,回収したアンケート票およびアンケートのデータベースは,高齢福祉課が管理した。筆者たちは,個人を特定できない形に加工されたデータベースを高齢福祉課から受け取り,町丁目単位で再集計したうえで,分析を実施した。A市は,72の町丁目から構成される。 一方,移動販売車事業については,移動販売車を運営する A市の生活協同組合から,各種資料の提供を受けた。データは,2015年 2月第 1週から 9月第 4週の 8か月間における,移動販売車事業全体の利用者数,供給高(販売額),品目別供給高,および各停留所における利用者数と供給高である。これらのデータは,すべて日単位で集計されている。また,2012年第 1四半期から2015年第 2四半期における,移動販売車利用者数の推移に関するデータも含まれる。これらは,週単位で集計されたものである。 2) 研究対象地域 A市は,東京から約 50 km圏に位置する東京近郊の地方都市である。人口は 81,684であり,65

歳以上高齢者人口は 16,428(男女比 1:1.1),65歳以上高齢化率は 20.2%である(平成 22年国勢調査)。高齢化率は全国平均よりやや低く,かつ人口も微増している。A市は東京のベッドタ

ウンとしての性格を有しており,市域西部には住宅団地が複数立地している。一方,市域東部は稲作を中心とした農業地域であり,農業就業者が多い。団地住民の多くは,1960~ 70年代に A市に転入したいわゆる新住民である。農業地域には,代々 A市に居住する旧住民が卓越する。 A市の商業中心地は,鉄道の A駅を中心とした,市域西部を南北に走る幹線道路沿線である(図 1)。当該地区には,11軒のスーパーをはじめ,多くの小売店が立地する。一方,市域東部には,コンビニエンスストアが数店点在するのみである。A市は,大型店の集積と個人店の減少が顕著である。1997年には,小売店舗数 547

店,総売場面積 78,202 m2であった。2012年には,店舗数は 346店に減少したが,総売場面積は 101,046 m2に増加している。なお,市内にはおもに A駅を中心として路線バスが 10系統ほど運行されている。しかし,運行範囲の大部分は市域西部にとどまっており,東部には路線バスはほとんど運行されていない。 図 1は,対象地域における,食料品販売店へのアクセシビリティを示す15)。本図におけるアクセシビリティとは,スーパーマーケットおよびコンビニエンスストア等の食料品販売店への道路距離であり,相対的アクセシビリティに相当する(田中, 2004)。本図から,市域東部の広範囲にわたって,買い物先空白地区が確認できる。

IV.住民の生活環境と低栄養リスク高齢者集住地区の把握

 1)住民属性 次に,アンケートの調査結果を概観する。表 1

はアンケート回答者の属性を示す。回答者の男女比は 47.4:52.6であり,年齢別では 70代がもっとも多かった。回答者の男女比および年齢構成比は,A市の高齢者全体の値と近似した。家族構成では,家族世帯(夫婦二人および子どもとの同居)がもっとも高く,86.9%に達した。一方,独居世帯は 11.9%であり,男女別では女性が 15.9%と高い値を示した。これは,女性は相対的に長命であり,配偶者を亡くして独居となるケースが多い

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表 1 住民属性.

Table 1 Individual attributes.

性別および年齢構成(n= 3,984)

家族構成(n= 3,984)

運転免許保有者 (n= 3,984)男性 女性 独居 家族と同居* その他

男女比 47.4 52.6 全体 11.9 86.9 1.1 全体 58.3

60代 31.4 29.4 男性 7.6 91.7 0.8 男性 78.6

70代 50.1 40.3 女性 15.9 82.6 1.5 女性 39.1

80代 16.5 23.7

90代以上 2.1 6.6

*夫婦二人世帯を含む.単位:%.

図 1 A市における食料品アクセスマップ.

Fig. 1 Food access map of city A.

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ためであると考えられる。運転免許の保有率は男性が高く,78.6%に達する。一方,女性の保有率は 39.1%にとどまる。 表 2は,高齢者の日常生活を示す。「経済的に苦しい」と答えた高齢者は,全体で 11.8%に達した。なかでも,女性の割合が 16.1%と高い。なお,「所得」と「要支援・要介護度」も分析したが,いずれも居住地ごとに有意な差は抽出されなかった。次に,「日中一人でいることが多い」と答えた高齢者は,31.6%に達した。男女別では,女性の割合が若干高かった。友人知人と会う頻度が少ない(年数回以下)高齢者は,37.3%に達した。なかでも男性において顕著であった。趣味のサークルにほぼ参加しない(年数回以下)高齢者は,全体で 67.9%,男性 69.1%,女性 66.9%であった 16)。図 2は,趣味のサークル参加率低群(年数回以下)高齢者の割合を,町丁目別に示す。この図から,趣味のサークルは一般的に都市部で盛んであり,農業地域では参加者が全体的に少ないことがうかがえる17)。ただし,中心市街地でも,参加者の少ない地区が散見される。同様の傾向は,スポーツ系サークルでも確認できる。なお,自治会活動の参加率については,例外もみられるものの,相対的に農業地域の方が高い。 2)買い物行動 次に,買い物行動を考察する(表 3)。各町丁目の代表点から最寄りの食料品スーパーまでの距離をみると,500 m圏内にスーパーが立地する

町丁目は全体の 13.9%,500~ 1,000 mは 41.7%であった。その一方で,最寄りのスーパーまで3,000 m以上離れている町丁目の割合も,12.5%に達した。買い物のおもな移動手段では「自動車」がもっとも高く,全体の 55.8%(自分で運転 33.5%,家族が運転 22.3%)を占めた。次いで,「徒歩」が 22.9%であった。男性は「自動車:自分で運転」,女性は「自動車:家族が運転」と「徒歩」の割合が高い。買い物頻度では,男女ともに「週 3~ 5回」がもっとも多く,40%を上回った。「毎日」という回答は 10%台にとどまった。生活協同組合をはじめとした宅配サービス利用者は,全体の 9.8%程度であった。A市には生活協同組合の店舗が立地するため,宅配サービス利用者は相対的に少ないと推測される。一方,移動販売車に関しては,利用している高齢者は男性15.6%,女性 10.3%であり,一定のニーズがあることがうかがえる。日々の食生活で栄養バランスを重視していると答えた高齢者は全体で 59.6%であり,内訳は男性 55.9%,女性 63.0%であった 18)。また,「買い物に困っている」という回答は,男性は 3.4%,女性では 7.1%であった。買い物の苦労を訴える高齢者は,相対的に少なかった。なお,買い物に不自由を感じている高齢者は,買い物先空白地区だけでなく,食料品アクセスに優れた都心部でも複数確認された。 3)多様性得点 表 4は,食品摂取の多様性得点を示す。低栄

表 2 高齢者の日常生活.

Table 2 Daily lives of the elderly.

経済的に苦しいと感じる高齢者

日中一人でいることが多い高齢者

友人知人と会う頻度が少ない(年数回以下)高齢者

趣味のサークルに参加していない(年数回以下)高齢者の割合*

(n= 2,195) (n= 2,195) (n= 3,984) (n= 3,984)

全体 11.8 全体 31.6 全体 37.3 全体 67.9

男性 7.1 男性 30.7 男性 43.7 男性 69.1

女性 16.1 女性 32.5 女性 31.5 女性 66.9

*各種の社会組織のなかで,趣味のサークルへの参加頻度が,高齢者の食生活(多様性得点)と最も高い相関を示した.単位:%.

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図 2 趣味のサークル参加率低群割合(町丁目別).

Fig. 2 Map of percentages of low-frequency participant residents in local hobby clubs per district.

表 3 高齢者の買い物行動.

Table 3 Shopping activities of the elderly.

最寄りのスーパーマーケットまでの町丁目別平均距離

(n= 72)

買い物先までの主な移動手段

(n= 3,601)

食料品の買い物頻度

(n= 3,656)

宅配サービス利用者

(n=3,983)

移動販売車利用者

(n=3,983)

栄養バランスを重視している高齢者(n=3,984)

買い物に困っていると感じる高齢者(n=3,984)

全体 男性 女性 全体 男性 女性

500 m以内 13.9 徒歩 22.9 21.6 24.0 毎日 18.4 19.4 17.4 全体 9.8 全体 12.8 全体 59.6 全体 5.4

500~ 1,000 m 41.7 自転車 13.9 13.4 14.3 週 3~ 5回 40.6 40.3 40.8 男性 8.3 男性 15.6 男性 55.9 男性 3.4

1,000~ 1,500 m 12.5 バス 2.4 1.6 3.2 週 1~ 2回 34.7 34.8 34.7 女性 11.1 女性 10.3 女性 63.0 女性 7.1

1,500~ 2,000 m 9.7 タクシー 0.5 0.5 0.5 月 1~ 3回 4.1 3.9 4.4

2,000~ 2,500 m 5.6 自動車・バイク (自分で運転)

33.5 45.1 22.7その他 2.2 1.7 2.8

2,500~ 3,000 m 4.2

3,000 m以上 12.5 自動車・バイク (家族が運転)

22.3 14.8 29.4

その他 4.6 3.0 6.0

単位:%.

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591―  ―

養のリスクが高い多様性得点低群(1~ 3点)の割合は,全体で 53.5%であった 19)。男性は女性と比べて,食生活の悪化がより顕著である。年齢別にみると,男性では 60代での低群割合が64.2%と高いものの,70代,80代では比率は低下し,90代で 71.7%へと再び増加する。一方,女性では 60代の食生活がもっともよく,70代,80代,90代に移るにつれて,低群の割合が高くなる。加齢による多様性の低下は,高齢者の自立度の低下と強く関係すると思われる。一方,60

代男性の多様性低群比が高いことは,食生活の習

慣に起因すると推測される20)。なお,表 3で「買い物に困っている」と答えた高齢者における多様性得点低群の割合は 67.8%であり,相対的に高い値を示した。 表 5は,多様性得点低群高齢者を町丁目別に示す。この表から,多様性得点低群高齢者の割合が 54.4%を上回る町丁目は(A~ C群),市域全体で 32か所(全体の 45.1%)存在することがわかる。これらの町丁目に居住する 65歳以上高齢者は,3,755人(全体の 45.0%)に達する。次に,食品摂取の多様性得点低群の分布をみると(図3),市街地中心部の一部および外縁部において,多様性得点低群の高齢者が集住していることが確認できる。外縁部の農業地域は,食料品アクセスが低下したエリアである。一方,市街地中心部の低群地区は食品スーパーに隣接しており,食料品アクセスは総じて高い。その一方で,図 2から,市街地中心部の低群地区では,サークル参加者が少ないことがわかる。このことは,市街地中心部では SCの低下に起因する FDsが生じている可能性を示唆する。

V.移動販売車事業の概要

 1)事業の概要 A市では,2012年 5月より地元の生活協同組合が移動販売車事業を展開している。この移動販売車事業は,地元の生活協同組合のほか,A市役所と社会福祉協議会,包括支援センター,地元

表 4 食品摂取の多様性得点低群割合.

Table 4 Proportion of low dietary diversity scores.

高群 低群(n= 1,823) (n= 2,098)

60代男性 35.8 64.2

70代男性 44.8 55.2

80代男性 41.1 58.9

90代男性 28.9 71.1

男性計 41.0 59.0

60代女性 55.0 45.0

70代女性 54.9 45.1

80代女性 43.0 57.0

90代女性 37.3 62.7

女性計 51.0 49.0

全体計 46.5 53.5

単位:%.

表 5 多様性得点低群割合別の町丁目数および 65歳以上人口.

Table 5  Number of districts per proportion of low dietary diversity scores and population aged 65 and over.

町丁目(多様性得点低群割合別)*1 町丁目数*2 全体に占める

割合(%) 65歳以上人口 全体に占める割合(%)

A群:66.1%以上 9 12.7 165 2.0

B群:60.2~ 66.1 12 16.9 2,114 25.3

C群:54.4~ 60.2 11 15.5 1,476 17.7

D群:48.6~ 54.4 17 23.9 1,827 21.9

E群:42.7~ 48.6 11 15.5 2,002 24.0

F群:42.7%未満 11 15.5 757 9.1

*1表中の区分は図 3と対応している.*2国勢調査でデータ非公共の町丁目を除く.

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NPO団体,および地域住民で構成される「買物支援・支えあいのまちづくり推進協議」が運営している。実際の営業は生協が担当し,市役所をはじめとした協議会組織が事業をサポートしている21)。停留所の設置は,同事業に賛同した行政区(自治会)に限定されている22)。2015年現在,A市には 63の行政区が存在し,24行政区に停留所が設けられている。各停留所は,地域の事情に精通した区長や民生委員によって管理されている。区長や民生委員は,移動販売車の到着時間にあわせて自宅に引きこもりがちな高齢者たちに声がけをしたり,移動販売車と連携して調理教室を開くなど,さまざまな形で同事業を支援している。生協も,地域住民を招いた交流会や事業報告

会を定期的に開催するなど,地域に根づいた事業づくりに積極的に取り組んでいる。 A市の中心部に立地する生協の小売店舗が,移動販売車の拠点である。使用するトラックは,冷蔵・冷凍食品に対応した 1.5トン車である。生鮮食料品を中心に 350~ 400品目をトラックに積み込み,店舗周辺の住宅団地や農業地域を,週に5日巡回する。営業時間は 10:30から 17:00である23)。トラックの運行時間や停留ポイントは詳細に決められている。停留所は合計 61か所であり,うち 47か所が A市内に設置されている(2015

年 9月現在)。1日の巡回先は平均 12.2か所であり,一つの停留所に最長で 30分ほど停車する。昼にはいったん店舗に戻り,商品を補充する。A

図 3 A市における食品摂取の多様性得点低群割合(町丁目別).

Fig. 3 Map of percentages of elderly people with low dietary diversity scores per district.

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市の保健センターと協力して,高齢者への食育と生鮮食品の販売を連動させる試みも進めている。しかし,移動販売車事業は健闘しているものの,いまだ十分な採算性は取れていない状況にあるという。なお,聞き取りによると,都市部では日々の食材を購入する高齢の主婦,農業地域では菓子などを購入する高齢女性が主要な利用者である。 2)移動販売車の利用実態 表 6は,移動販売車の利用実態を示す。当該期における 1日あたりの平均利用人数は 48.6人,1日あたりの供給高 24)は 6.0万円であった。また,利用者の 1人 1回あたりの供給高は,1,237.3円である。月別では,天候のよい 3~ 5月にかけて利用者が総じて多く,外出が難しくなる冬や夏,梅雨の時期には,利用者が少なくなる。 次に,表 7は,販売点数上位 10品目を示す。野菜が12.4%ともっとも高い割合を占めるものの,パンや菓子,乾麺,惣菜,弁当といった非生鮮食品の比重も高い。また,精肉と鮮魚は,上位品目には含まれていない。このことは,移動販売車利用者が,必ずしも健康的な食生活を志向して食材を購入しているわけではないことを示している。 3)移動販売車の巡回先 次に,販売ルートの地理的特徴を検討する。図

4は食料品アクセスと移動販売車停留所 25)の位置関係,図 5は停留所ごとの 1週あたり利用人数と供給高を示す。停留所は,人口が多くかつ相対的に食料品アクセスが悪い,市域西部の人口集中地区外縁に集中している。また,生協の店舗から 1~ 2 kmの範囲に停留所が多いこともうかがえる。一方,市域東部の買い物先空白地区では,停留所は総じて少ない。さらに,食料品アクセスに優れる市街地中心部でも,停留所はみられない。

表 6 移動販売車の利用実態(2015年 2~ 9月).

Table 6  Actual state of use of mobile sales wagons from February to September in 2015.

利用人数(人) 供給高(万円) 1人 1回あたり供給高(円)

2月 962 119 1,236

3月 994 120 1,204

4月* 1,248 151 1,211

5月 1,014 127 1,253

6月 934 119 1,276

7月* 1,185 150 1,262

8月 952 118 1,235

9月 973 119 1,227

合計 8,262 1,022 1,237

1日あたり 48.6 6.0

*4月と 7月のみ 5週の値であるため,利用者数は多くなっている.

表 7 品目別売上点数上位10品目とその割合.

Table 7  Top 10 sales products and the proportion.

カテゴリー* 点数 割合(%)

野菜 658 12.4

パン・生菓子 454 8.5

菓子 449 8.4

麺・水物・豆腐・納豆 441 8.3

果実 434 8.2

惣菜・米飯 292 5.5

飲料・デザート 283 5.3

惣菜魚 259 4.9

アイス・冷菓 240 4.5

牛乳 223 4.2

*品目のカテゴリーは,生協資料に準拠した.

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曜日別にみると,月曜日,水曜日,木曜日は西部を中心とした人口の多い市街地,火曜日および金曜日は中央から東部にかけての人口の少ない郊外地域を,それぞれ周回している。これらの結果から,移動販売は,食料品アクセスが相対的に低いエリアを周りながらも,巡回先の過半は人口の多い地区に集中していることがうかがえる。 利用人数や供給高は,食料品アクセスが相対的に低い人口集中地区縁辺部の停留所で,高い値を示す傾向にある。なかでも,住宅団地が卓越する市域の西側地域において,利用人数,供給高ともに高い。一方,市域西部の買い物先空白地区では,利用人数および供給高は低い傾向にある。

VI.低栄養リスク高齢者の分布と移動販売車事業の内容

 1)停留所の分布と町丁目の多様性得点 次に,停留所と低栄養リスク高齢者の集住地区の地理的関係を考察する(図 6)。この図から,停留所の分布は,低栄養リスク高齢者の集住域と重なる部分もあるものの,全体的には合致していないことがわかる。表 8は,停留所の立地位置と,町丁目別の多様性低得点低群割合との関係を示す。この表から,移動販売車の停留所は,全体的には多様性得点低群高齢者の割合が高い町丁目に立地しているものの,例外も多いことがうかがえる。停留所が一番多いのは,図 3における

図 4 移動販売車の停留所別利用人数および供給高.

Fig. 4 Number of mobile sales wagon users and sales per sales station.

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町丁目の B群(多様性得点低群高齢者の割合が60.2~ 66.1%)に分類される町丁目であり,16

か所(全体の 30.8%)であった。食生活の悪化が顕著な A群(低群割合 66.1%以上)に立地する停留所は,全体の 17.3%にとどまった。一方,高齢者の食生活が相対的に良好な E群(低群割合 42.7~ 48.6%)にも,11か所(全体の 21.2%)の停留所が設置されていた。曜日別にみると,移動販売車は火曜日と金曜日に,低群の割合が高い町丁目を多く巡回している。一方,月曜日や木曜日は,相対的に高齢者の食生活が良好な地域を中心にルートが設定されている。なお,停留所が設置された町丁目における低群割合の平均値は 56.5%,標準偏差は 10.9であった。A市全体

での低群割合の平均値は 55.3%であり,停留所が設置された町丁目の平均値と間に大差はみられない。 2)買い物利用度と停留所の地理的条件 続いて,各停留所における移動販売車の利用度に寄与する地理的要因を明らかにする。はじめに,移動販売車の利用度に関わると考えられる変数群を,主成分分析によっていくつかの主成分へと集約する。そして,それらの主成分を説明変数として,各停留所における移動販売車の利用度の説明を重回帰分析によって試みる。 分析には,停留所の周辺地区およびその住民の特性[生活環境(食料品アクセス,家族・地域との繋がり),個人(外出度,食生活,経済状態)]

図 5 移動販売車における停留所の分布(曜日別).

Fig. 5 Locations of mobile sales wagon stations per day of week.

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図 6 停留所と低栄養リスク高齢者集住地区の分布.

Fig. 6 Locations of mobile sales wagon stations and elderly people with low dietary diversity scores.

表 8 停留所の立地位置と町丁目別の多様性低得点低群割合の関係.

Table 8  Relationship between locations of sales stations and pro-portion of low dietary diversity scores.

停留所が位置する町丁目(多様性得点低群割合別)*

全体 月曜 火曜 水曜 木曜 金曜

停留所数 (%)(%)(%)(%)(%)(%)

A群:66.1%以上 9 17.3 0.0 25.0 33.3 7.7 18.2

B群:60.2~ 66.1 16 30.8 33.3 58.3 0.0 15.4 45.5

C群:54.4~ 60.2 5 9.6 16.7 0.0 33.3 7.7 0.0

D群:48.6~ 54.4 7 13.5 33.3 8.3 33.3 7.7 0.0

E群:42.7~ 48.6 11 21.2 0.0 8.3 0.0 53.8 27.3

F群:42.7%未満 4 7.7 16.7 0.0 0.0 7.7 9.1

*表中の分類は図 3と対応している.

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に関する一連の変数を用いた(表 9)。生活環境に関する変数群は,食料品アクセスの 3変数[店舗アクセシビリティ26),自分での自動車運転の有無,買い物に困っていると感じるか否か]と,家族・地域との繋がりに関する 7変数の,計 10変数から構成される。後者については,家族に関わる 3変数[独居か否か,日中よく一人であるか否か,世帯あたり人数]と,コミュニティに関わる 4変数[近所づきあいの程度 27),友人と会う頻度低群 28),趣味のグループへの参加低群 29),65歳以上高齢化率 30)]に分けられる。 一方,個人に関する変数群は,外出度に関する4変数[1週間に 1回外出しているか 31),一人で外出できるか 32),徒歩で 15分歩くか 33),外出を控えているか 34)],食生活に関する 3変数[多様性得点低群,食事を抜くか否か 35),自分で食事を用意できるか 36)),経済状態の 2変数[経済的に苦しい 37),低所得 38)]である。

 分析の結果,固有値 1.0以上を示す 6つの主成分が抽出された(表 10)。6つの主成分による累積寄与率は 77.6%である。第 1主成分は,「1週間に 1回は外出」や「自分で自動車運転」が正,「外出を控えている」が負の値を示していることから,外出傾向にあることがうかがえる。加えて,「食事を用意できる」が正,「多様低得点低群」は負に反応していることから,健康的生活を意味している。さらに,「店舗アクセシビリティ」が正である一方,「近所づきあい」や「世帯あたり人数」がきわめて低い負の値を示している。これらは,都市住宅的な世帯の特徴を示している。したがって,第 1主成分は,「都市的健康型」と名づけた。 第 2主成分は「独居」と正に,「自分で自動車運転」に負に,きわめて高い。ほかには,「外出を控えている」は正に,「友達と会う頻度低群」は負の値を示している。自動車を運転できずに外

表 9 分析に用いた変数.

Table 9 Variables.

大分類 中分類 小分類 変数

生活環境に関する変数

食料品アクセス店舗アクセシビリティ自分で自動車運転買い物に困っている

家族・地域との繋がり

家族独居日中よく一人世帯あたり人数

コミュニティ

近所づきあい友人と会う頻度低群趣味グループ参加低群高齢化率

個人に関する変数

外出度

1週間に 1回外出一人で外出できる徒歩 15分外出を控えている

食生活多様性得点低群食事を抜く食事を用意できる

経済状態経済的に苦しい低所得

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出せず,友人とも会わない閉じこもりがちな独居者の特性といえる。そこで「独居閉じこもり型」と解釈した。第 3主成分は,「食事を抜く」が正に,「徒歩 15分」と「一人で外出できる」が負に高い値を示す。徒歩によって一人で外出することは困難であり,食事を抜くことが多い生活スタイルと解釈できる。そのため,この主成分は「食生活悪・徒歩外出困難型」と命名した。第 4主成分は「低所得」と「日中よく一人」が正にきわめて高く,「経済状態苦しい」と「多様性得点低群」も正に相対的に高い。孤独であることが多く,経済状態も悪く,食の多様性も低下している住民の状況がうかがえる。そのため,当該成分は「孤独・生活苦型」と解釈した。第 5主成分は,「高齢化率」が負にきわめて高いために「高齢型」,第 6主成分は,「趣味グループ低群」と「友人と

会う頻度低群」が正にきわめて高いために「社交低型」と解釈した。 次に,この 6つの主成分得点を用いて,移動販売車の利用度を説明する重回帰分析を実施した。具体的には,移動販売車の買い物利用指数 39)を被説明変数,主成分分析で得られた複数の主成分得点を説明変数とした。これにより,利用度を規定している地理的条件を定量的に検討した。変数増減法を用いたステップワイズ重回帰分析の結果,第3主成分,第1主成分および第4主成分が,統計的に有意な説明変数として採用された(表11)40)。 標準化偏回帰係数の値から,移動販売車の利用度に対する説明度をみると,第 3主成分がもっとも正に大きく,次いで第 1主成分は負に,第 4

主成分が正に影響していることがわかる。この結

表 10 主成分分析の結果.

Table 10 Results of main component analysis.

変数 第 1主成分 第 2主成分 第 3主成分 第 4主成分 第 5主成分 第 6主成分

店舗アクセシビリティ 0.565* -0.010 -0.236 -0.132 -0.178 -0.093

自分で自動車運転 0.486 -0.795** 0.154 -0.013 0.177 -0.016

買い物に困っている 0.346 0.304 0.235 -0.395 -0.483 0.254

独居 0.136 0.904** 0.226 0.123 0.041 0.065

日中よく一人 -0.082 -0.050 0.172 0.766** -0.060 -0.085

世帯あたり人数 -0.794** -0.053 0.444 -0.109 0.056 -0.073

近所づきあい -0.753** 0.161 0.026 0.314 0.063 -0.325

友人と会う頻度低群 0.246 -0.479 0.014 -0.080 -0.183 0.674**

趣味グループ参加低群 -0.188 0.294 0.061 -0.006 0.206 0.814**

高齢化率 -0.002 -0.021 0.096 0.196 -0.880** -0.125

1週間に 1回外出 0.789** -0.110 0.007 -0.382 0.059 -0.065

一人で外出できる 0.429 -0.334 -0.625** -0.340 0.118 -0.059

徒歩 15分可能 0.271 -0.185 -0.797** -0.248 0.124 -0.084

外出を控えている -0.466 0.561* 0.346 -0.114 -0.460 0.007

多様性得点低群 -0.534* 0.257 0.274 0.435 -0.282 0.259

食事を抜く -0.059 -0.034 0.903** 0.117 -0.079 0.006

食事を用意できる 0.649** -0.273 -0.101 0.156 0.379 -0.102

経済的に苦しい -0.488 -0.171 0.115 0.539* 0.081 0.309

低所得 -0.085 0.395 0.240 0.722** -0.081 -0.065

固有値 6.408 2.376 1.908 1.572 1.361 1.124

寄与率(%) 33.7 12.5 10.1 8.3 7.1 5.9

累積寄与率(%) 33.7 46.2 56.3 64.6 71.7 77.6

表中の太字は因子負荷量の絶対値が 0.4~ 0.5,*は 0.5~ 0.6,**は 0.6 以上であることを示している.

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果から,移動販売車の利用度について,次の点を指摘できる。①徒歩での外出が困難で食生活が悪い高齢者が多い地区ほど,移動販売車の利用度が高い(第 3主成分)。②都市的生活を送る健康な高齢者が多い地区では,移動販売車の利用度が低い(第 1主成分)。③孤独や生活苦を抱える高齢者が多い地区では,移動販売車の利用度が高い(第 4主成分)。 以上の結果を解釈すると,徒歩で外出困難な高齢者や,孤独や生活苦を抱えるような FDs問題に陥りがちな社会的弱者の集住地区において移動販売車の利用度が高い一方で,都市的生活を送る健康な高齢者の居住地域では利用度が低いと整理される。つまり,徒歩で外出困難な高齢者や,孤独や生活苦を抱える高齢者の集住地区が,移動販売車事業をもっとも必要としているエリアであると判断できる。 これまで,都市部での一般的な移動販売車事業は,既存店舗へのアクセスが悪い地域を巡回することで,利用者の確保に努めてきた。第 1主成分が負の相関を示していることからも,それ自体は間違いではないことがうかがえる。しかし,上述の結果は,店舗へのアクセス以外にも,自立度の低下や家族・社会からの孤独といった要因が,移動販売車事業の利用度に影響を与えていることを示している。この点は,これまでの移動販売車事業が看過しがちであった,潜在的な需要であろう。逆にいえば,この分析結果は,買い物利便性の低下だけでなく,自立度の低下や家族・社会からの孤立のなかで低栄養リスクを抱える社会的弱

者の買い物も,移動販売車が支えている実情を表している。

VII.お わ り に

 本研究の目的は,買い物弱者支援の移動販売車事業の意義と課題を,FDs問題の視点から実証的に評価することにあった。具体的には,低栄養のリスクが高い高齢者の集住地区を特定するとともに,当該地区の分布と移動販売車の停留所の位置関係,および事業実績を検討することで,移動販売車事業の評価と課題を検討した。研究対象地域は,東京のベッドタウンと農業地域が混在する地方都市 A市である。 本研究から以下の知見が得られた。(1)A市の食料品店は都市部に集中しており,農業地域には買い物先空白地区が広がる。しかし,自動車利用が一般化しているため,買い物が不便と感じる人は少ない。(2)低栄養リスク高齢者は全体の53.4%に達する。低栄養リスク高齢者集住地区は,食料品アクセスが低い農業地域と,食料品アクセスに優れた市街地中心部の一部で確認される。(3)移動販売車の停留所の多くは,おもに食料品アクセスが相対的に低い人口集中地区外縁に設置されている。なかでも,ベッドタウンで卓越する。停留所の分布と低栄養リスク高齢者集住地区の分布には,一定の乖離がみられる。(4)外出が困難で食生活が悪い高齢者が多い地区,および孤独や生活苦を抱える高齢者が多い地区において,移動販売車の利用度が高い。一方,都市住宅で健康的生活を送る高齢者が多い地区では,移動

表 11 主成分分析の結果.

Table 11 Results of multiple regression analysis.

説明変数 偏回帰係数 標準化偏回帰係数

第 3主成分 食生活悪・徒歩外出困難型 0.851 0.554***

第 1主成分 都市的健康型 -0.508 -0.416***

第 4主成分 孤独・生活苦型 0.526 0.356**

定数項 1.724 ***

***0.1%水準で有意.**1%水準で有意.重相関係数:0.766,決定係数:0.586,自由度調整済み決定係数:0.571,モデル適合度:p= 0.000.

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販売車の利用度は低い。 A市における移動販売車事業は,食料品アクセスが低下した地区における高齢者の買い物環境改善に,大きく貢献している。また,徒歩での外出が困難な高齢者や,孤独や生活苦を抱えたいわゆる社会的弱者が多い地区でも,同事業が果たす役割はきわめて大きい。この点も高く評価できる。 一方で,いくつかの課題も確認された。第一は,停留所の設置位置である。現行の停留所は人口集中地区外縁のベッドタウンを中心に展開しており,低栄養リスク高齢者集住地区を完全にはカバーしていない。停留所が設置されてない地区にも,自立度の低下や家族・社会からの孤立,経済的困窮などの問題を抱えた,移動販売車の支援を真に必要する住民は多いと推測される。高齢者の食生活改善を念頭に置く場合,食生活が悪化した高齢者の所在を正確に把握したうえで,停留所を設置することが望まれる。 第二は,食育との連携である。今回の調査から,住民の多くが,自身の食生活は良好であると認識していることがわかった。しかし実際には,住民の過半数は,多様性得点低群に該当した。このことは,食生活に無自覚な住民が多いことを意味する。移動販売車の購入品目も,非生鮮食料品が高い割合を占めていた。高齢者の食生活を改善するには,食料品アクセスの向上だけでなく,食育と連携した生鮮食料品の購買促進が必要である。 移動販売車事業には,多くの制限や困難が伴う。ランニングコストを抑えるには,遠隔地や低人口密度地区での移動販売車の巡回を制限する必要がある。住民一人一人の利用度が高くても,商圏人口が少ない地区には停留所を設置し難い。地域住民の理解を得られない地区には,そもそも停留所を設置できない。こうした制限が,停留所の配置に空白エリアを生じさせる一因となっている。また,健康的な食生活への関心が希薄な高齢者の場合,移動販売車がどんなに生鮮食材を積んで巡回しても,住民の食生活改善に対する同事業の効果は大きく制限される。さらに,支援を必要とする高齢者の所在把握にも,大きな制限が存在

する。移動販売車の利用者は,短期間で入れ替わる。移動販売車の主要な利用客は,自分で調理できる程度の自立度を保ちながらも,遠方の店への移動が困難となった高齢者である。しかし,自炊が困難なほど自立度が低下すると,今度は移動販売車の支援対象から外れる。その一方で,歩行力の低下により新たに支援が必要となる高齢者は,絶えず増加する。移動販売車の事業者が,こうした支援対象者の所在を独力で把握し続けることは困難である。 遠隔地や低人口密度地区における買い物利便性の保持は不可欠である。しかし,当該地における移動販売車事業の採算性はきわめて悪い。こうした移動販売車事業に対しては,高齢者福祉の観点からの行政支援が必要であろう41)。また,高齢者の食育推進には,保健センターなどの行政の関連部署との連携が欠かせない。さらに,支援を必要とする高齢者の所在把握には,産官学が連携した支援が必要となる。市町村役場の担当部署は,業務の関係上,高齢者の生活環境に関する詳細な情報を保持している。しかし,これらの個人情報の閲覧は厳しく制限されている。また,データベースが未集計であることも多く,そのままでは支援事業に活用できない。データベースを個人が特定できない形に加工したうえで,さまざまな学問分野の研究者が共有すれば,要支援高齢者の所在やニーズ,将来的なシミュレーションなどの有益な情報を,高齢者支援事業者に提供することが可能となる。これにより,支援事業の効率性と持続性の向上が期待できる。 行政が特定の営利企業を支援することは難しい。立場上,営利企業が運営する移動販売車事業は支援できない,と判断する市町村も散見される。しかし,A市の事例を含め,多くの移動販売車事業者は,赤字部分の大半を自己負担しながら事業を継続している。これらの事業の現況を判断すれば,実質的には社会福祉としての側面が強いといえよう。少子高齢化が進むこれからの日本にとって,民間企業や地域住民の力を活かした高齢者支援の拡大は,必須の課題である。現在,高齢者支援事業の大半は,事業者の負担のうえに成り

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立っている。持続的な支援事業を展開するためには,産官学連携による支援体制づくりが求められる。 FDs問題に対する学際研究において,地理学への期待は大きい。近年,流通や福祉などの研究領域でも,FDs問題研究が進められている。しかし,FDs問題の背後には,生活環境の地区ごとの相異や社会的弱者層の分布の偏りなどの,複雑な地理的要因が介在する。こうした地理的要因を把握しなければ,FDs問題の実態把握や,支援事業の実施は難しい。地理学は,地域の地誌的・包括的な把握,およびそれらの地図化に長けた研究領域である。FDs問題の実態把握と地図化は FDs問題研究の要であり,地理学が取り組むべき課題である42)。地理学をはじめとした学際研究が進み,かつ産官学が連携することで,FDs

問題の解決に向けた持続的かつ効果的な支援事業が展開されることを期待したい。

謝 辞 本研究は,東京大学空間情報科学研究センターとの共同研究(研究番号 59:代表 田中耕市)の成果の一部である。

1)社会的弱者における食生活と食料品アクセスの関係性に関して,研究者の意見は二分される。イギリスの Leedsを調査した Wrigley et al.(2003)は,食料品アクセスの改善は住民全体の食生活の改善には繋がらなかったものの,食生活がもっとも悪い住民グループに対しては,一定の成果が認められたと述べている。一方,Newcastle(White et al., 2004)や Glasgow(Cummins et al., 2005),スコットランド各地(Dawson et al., 2008)などでの実証研究は,食生活と食料品アクセスの関係性を否定している。

2)英国の FDs問題におけるおもな被害者は,低所得の外国人労働者である。こうした人々は総じて若く,買い物における体力的な制限は少ない。体力が低下した高齢者を中心に被害が拡大する日本とは,FDs問題の実態が異なる点に留意する必要がある。

3)岩間ほか(2015a)は,マルチレベル分析を用いて,地方都市中心部における高齢者の食生活と生活環境(食料品アクセス,家族・地域との繋がり)の関係を,定量的に分析した。その結果,性別や自立度といった個人レベルの要因だけでなく,家族や地域住民との繋がりといった地域レベルの要因が,高齢者の食生活を強く規定していることが明らかとなった。一方,食料品アクセスが高齢者の食生活に与える影響

は,限定的であった。4)家族・地域との繋がりは,SCの一部と理解できる。SCとは,社会的ネットワーク(対人間のきずなや集団間のつながり),およびそこから発生する信頼と互酬性の規範意識を意味する(パットナム, 2006)。互いに信頼することができ,困った時に助け合う関係があり,そして普段から積極的な交流がある方が,住民の間での協力的な行動につながりやすい。SCは,社会的ネットワークとの繋がりを示す指標群から計測可能である(内閣府, 2003; 近藤, 2007; 埴淵ほか, 2010)。

5)SCは,社会的ネットワークを介して形成される相互扶助のきずなであり,地域や集団に蓄積される(鹿毛, 2002)。なかでも,近所づきあいや自治会活動といった,地域的な繋がりとして表出することが多い(浅川・玉野, 2010)。このため,SCは地域レベルの因子としての性格を有する(近藤, 2007)。SCには,地域的な偏りが存在する。このことは,SCが地理的な性質を有する因子であり,食料品アクセスと同様に,FDsを規定する高齢者の生活環境要因であることを意味する。

6)全国の買い物弱者支援事業は,岩間(2013),経済産業省(2014),農林水産省:食料品アクセス問題ポータルサイト,経済産業省:買い物弱者支援事業ポータルサイトなどにリストアップされている。

7)共食事業とは誰かとともに食事をすることであり,ここでは地域ボランティアなどが実施している会食事業が該当する。調理の段階から共に作業する事業も多い。共同での調理や共食は高齢者の孤立を防ぐだけでなく,自立度低下の抑制も期待される(熊谷, 2011)。

8)経済産業省が主催した買い物弱者支援に関するシンポジウムでは,参加事業者のうち 62.3%が,「買い物弱者は存在すると思うが,どこにいるかわからない」と回答している(経済産業省, 2015, p. 131)。

9)これらの研究では,フランチャイズ型の移動販売を事例に,その継続性について検討しており,店舗価格に 10円上乗せして販売する受益者負担を導入していること,フランチャイズ本部と地域スーパーと販売員(個人事業主)で役割やリスクを分担していること,などを指摘している。

10)日常的な食生活の悪化により,低栄養のリスクが高くなった高齢者のことを指す。

11)前述の岩間ほか(2015a)は,都市部では,食生活が悪化した高齢者は,買い物先空白地区ではなく,SCが低下した中心市街地に集住していることを明らかにしている。

12)移動販売車が短時間停車し,商品を販売する地点を指す。

13)FDs内でも,高齢者の健康的な食生活を阻害する要因は,地区ごとに異なる。食生活が悪化した高齢者の集住地域のなかでも,移動販売車事業のサービスが必要とされるエリアは限られる。

14)夫婦世帯の場合,2人で 1人分の回答となる。夫婦の生活環境や食生活は,おおむね同一である。このため,全高齢者数に対する実際のアンケート回答者の割合は,さらに高いものと推測される。

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15)「日本スーパー名鑑」および電話帳データ「テレポイント Pack!」から,食料品販売がされていると考えられる店舗を抽出した。

16)趣味のサークルとスポーツ系サークル,自治会・町内会活動の三者を比較した場合,もっとも参加率が高いのは,趣味のサークルであった。近年都市部では,自治会・町内会活動参加者は減少傾向にある(総務省, 2014)。趣味のサークル(生涯学習)は,都市部における住民同士の交流を促進させ,地域コミュニティを活性化させる好機として,期待されている(国土交通省, 2005)。

17)農業地域では,現役で農業に従事している高齢者が多く,趣味やスポーツのサークルへの参加は,近隣住民から「遊んでいる」とネガティブに捉えられがちである。そのため,当該地域の住民は,こうした活動への参加を躊躇する傾向にある。

18)「食事で重要視していることは何ですか(2つまで)」という設問に対し,「1.食べたいものを食べる,2.食べすぎない,3.食べやすさ,飲み込みやすさ,4.安さ(値段),5.栄養バランス,6.調理の簡単さ,7.特になし」という選択肢のなかで,栄養バランスを選択した高齢者の割合を指す。

19)この値は,他の市町村での調査結果と類似する。A市の値は,平均的な水準であると考えられる。

20)一般に,女性と比べて男性は食生活習慣が悪いこと,および年齢の高い世代の方が健康的な食生活を志向することが,広く知られている。

21)協議会は,移動販売車を後方から支援している。本研究は,A市における FDs問題の実態や高齢者のニーズを定量的に把握するものであり,移動販売車事業への貢献が期待される。こうした調査の実施にも,協議会は全面的に協力している。

22)「住民はみんな自動車を利用するし,お互いに助け合っているので,買い物弱者はいないはずだ」という主観的な認識から,停留所の設置を拒む行政区が多数みられる。こうした傾向は,農業地域で顕著である。しかし実際には,農業地域でも自動車を運転しない高齢者や,日中一人で過ごしている高齢者は多い。また,自治会組織が形骸した地域では,役員の仕事が増えることを嫌い,停留所の設置を拒否するケースも存在する。こうした行政区は,都市部に多い。

23)朝 10時に店舗が開店してから商品を積み込みはじめるため,トラックが出発するのは 10時 30分前後にならざるを得ない。

24)一般企業における売上高に相当するもの。25)複数曜日(週 2回)で販売が行われる停留所が 1か所存在するため,移動販売の停留所は,A市内に48か所存在することになる。なお,全停留所のうち32.6%は,個人宅前であった。

26)「店舗アクセシビリティ」は,下記の式(1)を用いて測定した。店舗規模を魅力度とする重力モデル型のポテンシャル・アクセシビリティである(田中, 2004)。店舗規模には売場面積を使用することが一般的であるが,各店舗の売場面積を正確に把握することはできないため,ゼンリン社のデジタル住宅地図である ZMapTownIIのポリゴン面積を代入した。

  

(1)

すなわち,Aiは停留所 iにおける店舗アクセシビリティ,Sjは店舗 jのポリゴン面積,dijは停留所 iから店舗 jまでの最短道路距離(km)である。

27)アンケート調査の「近所付き合いはどのようなものですか」の問いに対して,「近隣住民と何かにつけて相談したり,助け合う」と答えた高齢者の割合である。

28)アンケート調査の「友人・知人と会う頻度はどれくらいですか」の問いに対して,「年に数回」あるいは「会っていない」と答えた高齢者の割合である。

29)アンケート調査の「趣味グループへの参加頻度はどれくらいですか」の問いに対して,「年に数回」あるいは「参加していない」と答えた高齢者の割合である。

30)2010年国勢調査より算出した。31)アンケート調査の「週に 1回以上は外出していますか」の問いに対して,「はい」と答えた高齢者の割合である。

32)アンケート調査の「一人で自転車(バイク),自動車,公共交通機関のいずれかを用いて外出できますか」という問いに対して,「はい」と答えた高齢者の割合である。この問いは,高齢者が自立的な生活を送るための能力を測る指標の一つである。

33)アンケート調査の「15分続けて歩いていますか」という問いに対して,「はい」と答えた高齢者の割合である。

34)アンケート調査の「外出を控えていますか」の問いに対して,「はい」と答えた高齢者の割合である。

35)アンケート調査の「食事を抜くことがありますか」という問いに対して,「毎日ある」または「週に何度かある」と答えた高齢者の割合である。

36)アンケート調査の「自分で食事の用意をしていますか」という問いに,「できるし,している」または「できるけど,していない」と答えた高齢者の割合である。

37)アンケート調査の「現在の暮らしの状況を経済的にみてどう感じていますか」という問いに,「苦しい」と答えた高齢者の割合である。

38)公的介護保険制度における「所得段階」低群(第1~ 3段階)に該当する高齢者世帯の割合である。

39)「1週間あたりの移動販売車の延べ利用者数」を「商圏人口」で除した値とした。複数利用を排除した正確な人数は把握できないため,商圏人口に占める割合(利用度)ではない。しかし,移動販売車の利用者も毎回利用するわけではなく,むしろ延べ人数のほうが,その停留所周辺地域における依存度(利用度)が正確に反映されるといえる。移動販売の商圏は停留所から 300 mと設定した。商圏人口は,2010年国勢調査の 4次メッシュ人口と,住宅地図の住居ポリゴンから推計した。

40)変数を追加・削除する基準の p値は 0.05とした。41)例えば,鳥取県日野郡江府町のように,移動販売車事業者に高齢者の安否確認を委託し,補助金を提

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供する市町村が増えている。42)また,地理学においても,都市構造の変容やそこで生じる社会問題を包括的に捉えるうえで,FDs問題に関する学際研究の促進や産官学の情報共有はきわめて有意義である。

文 献

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パットナム,R.D. 著,柴内康文訳(2006): 孤独なボウリング―米国コミュニティの崩壊と再生.柏書房.[Putnam, R.D. (2006): Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community (Bowling Alone: Beikoku Community No Hokai To Saisei) translated by Sibauchi, Y., Kasiwa Shobo. (in Japa-nese). Putnam, R.D. (2001): Bowling Alone: The Collapse and Revival of American Community. Si-mon & Schuster.]佐々木 緑(2010): フードデザート問題解決への取組み―地域コミュニティによる高齢者支援.地理,55(8),43-52.[Sasaki, M. (2010): Measures to the

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* Title etc. translated by N.I