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第5回 医師主導治験に関するGCP基礎セミナー -医薬品編- 医薬品GCP省令ガイダンス -治験の準備及び管理に関する基準- 国立がん研究センター 研究支援センター 研究管理部 研究管理課 研究監査担当(柏) 桑木 多佳子 2016年2⽉27⽇(⼟) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性等の確保 に関する法律〔略称:医薬品医療機器等法⇒薬機法〕 (施行日:平成26年11月25日) 2 医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016 医師主導治験 2002年の薬事法改正、2003年のGCP省令改正で 医師主導の治験の実施が可能となった。 最終的な承認申請者は開発企業となるが、企業治験 と同様に、医師主導治験は医薬品の承認申請の際 に提出すべき資料のうち、臨床試験の試験成績に関 する資料の収集を目的とする試験」である。 医薬品医療機器等法、GCP等を遵守 被験者保護に関する規定の他、モニタリング、監査、 記録の保存、データの信頼性保証が必要 3 医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016 医薬品医療機器等法 第⼗六章 治験の取扱い 第⼋⼗条の⼆ 治験をしようとする者⼜は⾃ら治験を実施しようとする者は、 あらかじめ、厚⽣労働省令で定めるところにより、厚⽣労働⼤⾂に 治験の計画を届け出なければならない。 治験の依頼を受けた者⼜は⾃ら治験を実施しようとする者は、 厚⽣労働省令で定める基準に従って、治験を実施しなければなら ない。 基準とは??? 基準とは??? 4 医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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第5回医師主導治験に関するGCP基礎セミナー-医薬品編-

医薬品GCP省令ガイダンス-治験の準備及び管理に関する基準-

国立がん研究センター研究支援センター 研究管理部研究管理課 研究監査担当(柏)

桑木 多佳子

2016年2⽉27⽇(⼟) 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性等の確保に関する法律〔略称:医薬品医療機器等法⇒薬機法〕(施行日:平成26年11月25日)

2医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

医師主導治験• 2002年の薬事法改正、2003年のGCP省令改正で

医師主導の治験の実施が可能となった。

• 最終的な承認申請者は開発企業となるが、企業治験

と同様に、医師主導治験は「医薬品の承認申請の際

に提出すべき資料のうち、臨床試験の試験成績に関

する資料の収集を目的とする試験」である。

医薬品医療機器等法、GCP等を遵守被験者保護に関する規定の他、モニタリング、監査、

記録の保存、データの信頼性保証が必要

3医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

医薬品医療機器等法 第⼗六章治験の取扱い第⼋⼗条の⼆2 治験をしようとする者⼜は⾃ら治験を実施しようとする者は、あらかじめ、厚⽣労働省令で定めるところにより、厚⽣労働⼤⾂に治験の計画を届け出なければならない。4 治験の依頼を受けた者⼜は⾃ら治験を実施しようとする者は、厚⽣労働省令で定める基準に従って、治験を実施しなければならない。

基準とは???基準とは???

4医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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医薬品医療機器等法施⾏規則 第⼆章申請資料の信頼性の基準

第四⼗三条法第⼗四条第三項 後段に規定する資料は、医薬品の安全性に関する⾮臨床試験の実施の基準に関する省令及び医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令に定めるもののほか、次に掲げるところにより、収集され、かつ、作成されたものでなければならない。

GCP

5医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

医薬品医療機器等法施⾏規則 第⼆章申請資料の信頼性の基準(続き)⼀ 当該資料は、これを作成することを⽬的として⾏われた調査⼜は試験において得られた結果に基づき正確に作成されたものであること。⼆ 前号の調査⼜は試験において、申請に係る医薬品についてその申請に係る品質、有効性⼜は安全性を有することを疑わせる調査結果、試験成績等が得られた場合には、当該調査結果、試験成績等についても検討及び評価が⾏われ、その結果は当該資料に記載されていること。三 当該資料の根拠となった資料は、法第⼗四条第⼀項⼜は第九項の承認を与える⼜は与えない旨の処分の⽇まで保存されていること。ただし、資料の性質上その保存が著しく困難であると認められるものにあってはこの限りでない。

正確性

網羅性

保存性

6医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験の種類企業治験:製薬企業等がスポンサー(治験依頼者)となり、⾏う治験ICH-GCP1.53 Sponsor

治験の発案、運営及び(⼜は)資⾦に責任を負う個⼈、会社、研究機関⼜は団体

医師主導治験:医師(⾃ら治験を実施する者)が⾃ら企画し、実施する治験IIT : Investigator initiated trialICH-GCP1.54 Sponsor-Investigator

単独⼜は他者と共同で治験を発案、実施する者

製造販売後臨床試験:製造販売業者が依頼する試験

「医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する省令」及びGCPを遵守

7医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー27Feb2016

GCP省令の構成8

第⼀章 総則 (第1〜3条)第⼆章 治験の準備に関する基準 (第4〜15条)第⼀節 治験の依頼をしようとする者による治験の準備に関する基準第⼆節 ⾃ら治験を実施しようとする者による治験の準備に関する基準

第三章 治験の管理に関する基準 (第16〜26条)第⼀節 治験依頼者による治験の管理に関する基準第⼆節 ⾃ら治験を実施する者による治験の管理に関する基準

第四章 治験を⾏う基準第⼀節 治験審査委員会 (第27〜34条)第⼆節 実施医療機関 (第35〜41条)第三節 治験責任医師 (第42〜49条)第四節 被験者の同意 (第50〜55条)

第五章 再審査等の資料の基準 (第56条)

企業治験 医師主導治験 製造販売後臨床試験

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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本⽇説明するGCP省令ガイダンス

「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」のガイダンスについての⼀部改正等について(2013年(平成25年)4⽉4⽇ 薬⾷審査発0404第4号)

に基づき説明します。

なお、2016年1⽉22⽇付でGCP省令の⼀部が改正され、拡⼤治験(⼈道的⾒地から実施される治験)に関する記載が追加されました。

9医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第二節 自ら治験を実施しようとする者による治験の準備に関する基準

10医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の2 業務⼿順書等 その1「手順書」とは、治験に係る業務が恒常的に適正に実施されるよう標準的な⼿順を定めた⽂書である。(ガイダンス第1項2)

⼀般的には、標準業務⼿順書(Standard Operation Procedure:SOP)と呼ばれる。作成者は? ⾃ら治験を実施しようとする者治験の準備及び管理に必要なSOPの例:

◆治験薬概要書の作成 ◆治験実施計画書の作成◆治験薬の管理 ◆副作⽤情報等の収集◆モニタリング ◆監査◆被験者補償措置 ◆総括報告書の作成◆記録の保存◆効果安全性評価委員会の業務(設置する場合)◆治験調整委員会の業務(設置する場合)

11医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の2 業務⼿順書等 その2なぜSOPが必要なのか??⾃ら治験を実施する者は治験の実施並びにデータの作成、記録及び報告が本基準及び治験実施計画書を遵守して⾏われることを保証するために、⼿順書に基づく品質保証及び品質管理システムを履⾏し、保証する責任を有する。

(ガイダンス第1項4)

12医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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第15条の2 業務⼿順書等 その3

「SOP作成のためのSOP」を作成しておくと良いSOPの作成⼿順:制定だけでなく、改訂⼿順も含める版 管 理 の 規 定 :版番号の定義、規則関係者への教育研修(周知)

:制改訂時の関係者への周知の仕⽅、研修記録の残し⽅など

継続的に医師主導治験を実施することを考えると、医療機関として共通的なものを作成しておくと良い。テンプレートも有⽤。

13医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の2 業務⼿順書等 その4多施設共同治験の場合:

治験責任医師と治験調整医師が分担する場合はあらかじめ、業務の分担等を⼿順書等により両者が⾏う業務を明確にしておくことが必要

明確にされていない業務については、治験責任医師である者が⾏う

治験調整医師に分担された業務についても、治験責任医師が把握できるようにしておくこと。 (ガイダンス第1項3)

治験調整医師委嘱業務・プロトコールの解釈・SOPの承認・監査⼿順書及び計画書の承認etc

14医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の2 業務⼿順書等 その5自ら治験を実施する者は

治験に係る検体等の検査機関(実施医療機関の検査室等を含む。)において、検査が適切に実施されて治験に係るデータが信頼できることを保証するため、当該検査機関における精度管理等を保証する記録等を確認すること。なお、確認すべき検査の範囲や具体的な確認⽅法は、各検査データの当該治験における位置づけ(主要評価項⽬であるかどうか等)を考慮すること。 (ガイダンス第1項6)

関連通知等「治験における臨床検査等の精度管理に関する基本的考え⽅について」(平成25年7⽉1⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課)

15医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験における臨床検査等の精度管理に関する基本的考え⽅について(事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課 平成25年7⽉1⽇)

①適切な品質管理システムの導⼊や外部認定の取得等により、検査精度を対外的に確保できる体制を積極的に検討

参考

②主要評価項⽬等の検査は、第三者機関の認証を取得している検査機関での中央⼀括測定を⾏う

③中央⼀括測定に適さない項⽬(⾎球数、尿検査、⾎液ガス等)や被験者の安全性確保のための検査は、適切な精度管理の下、各医療機関で測定する

④国際共同治験、医師主導治験⼜は臨床研究を積極的に実施している医療機関では、ISO15189等の外部評価による認定を取得する

⑤測定機器の校正・保守点検記録の確認の必要性は、評価項⽬の重要度に応じて判断すべきである

⑥精度管理や校正・保守点検記録は、必要に応じて確認できるよう、治験の記録としても適切に管理できる体制が必要である

16医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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検査室認証機関及び精度管理CLIA(Clinical Laboratory Improvement Amendments)

⽶国臨床検査室改善法

CAP(College of American Pathologists)⽶国病理学会精度管理プログラム(CAPサーベイ)及び臨床検 査室認定プログラム(Laboratory Accreditation Program(LAP)

ISO15189 「臨床検査室-品質と適合能⼒に関する特定要求事項」

⽇本医師会 臨床検査精度管理調査

⽇本臨床衛⽣検査技師会 ⽇臨技精度保証施設認証制度

CAP accreditation:http://www.cap.org/apps/cap.portal?_nfpb=true&_pageLabel=accreditation

参考17医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の3 毒性試験等の実施 その1被験薬の品質、毒性及び薬理作⽤に関する試験その他治験を実施するために必要な試験を終了していなければならない。

当該被験薬の物理的化学的性質、性状等に関する「理化学試験等」

「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための⾮臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」(平成22年2⽉19⽇ 薬⾷審査発0219第4号)

「医薬品開発におけるヒト初回投与試験の安全性を確保するためのガイダンス」(平成24年4⽉2⽇ 薬⾷審査発0402第1号)

⾃ら治験を実施する者は、必要な資料⼜は情報の提供について、治験薬提供者と協議し、契約を締結するなど必要な措置を講じ、その実⾏を担保すること。

毒性、薬理作⽤、吸収、排泄等に関する動物試験等の「⾮臨床試験」や「臨床試験」

参考ガイダンス

18医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

妥当性を⽀持できる⼗分なデータ

第15条の3 毒性試験等の実施 その2

品 質 - 理化学試験安全性 - ⾮臨床試験有効性 - 先⾏する臨床試験

治験実施計画書作成 治験の⽬的 投与対象集団 投与経路 ⽤法・⽤量 投与期間 観察項⽬ 評価項⽬等

治験審査委員会倫理的/科学的妥当性が裏付けられていることの審議、確認を依頼

治験の実施時点の科学的⽔準に照らして適正か?

19医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

ICH ⾮臨床に関するガイドラインS1:がん原性試験S2:遺伝毒性試験S3:トキシコキネティクスと薬物動態S4:毒性試験S5:⽣殖発⽣毒性試験S6:バイオテクノロジー応⽤医薬品S7:安全性薬理試験S8:免疫毒性試験S9:抗悪性腫瘍薬の⾮臨床評価

S10:光安全性評価M3:臨床試験のための⾮臨床試験の実施時期

参考20医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

その他平成24年10月2日 薬食審査発第1002第5号、事務連絡「小児用医薬品のための幼弱動物を用いた非臨床安全性試験ガイドラインについて」「同質疑応答集(Q&A)について」

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第15条の4 治験実施計画書 その1

• 必要な毒性試験等(第15条の3)の結果に基づき作成する。• 治験実施計画書の内容を検討するために、治験薬概要書等の資料を、

あらかじめ⽤意する。

(第15条の4:ガイダンス第1項2) 作成及び改訂⽇並びに版番号、⼜は最新版の作成⽇及び版番号

3. 中央薬事審議会答申の10を適宜参照すること。

多施設共同治験の場合、施設特有な情報は分冊としてよく、当該実施医療機関に係るもののみの提出でよい。

5. 受託者(CRO、SMO)の名称、住所、当該委託業務の範囲

6. 治験薬提供者の名称、住所を明記

作成に際して (第15条の4:ガイダンス第1項1)

具体的事項は(第15条の4:ガイダンス第1項)

作成者は ⾃ら治験を実施しようとするもの

ヘッダーを利⽤しましょう

21医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の4 治験実施計画書 その2中央薬事審議会答申GCP(平成9年3⽉13⽇)2-24 治験実施計画書治験の⽬的、デザイン、⽅法、統計学的な考察及び組織について記述した⽂書(正式な⼿続きを踏んで改訂されたものを含む)。

中央薬事審議会答申(平成9年3⽉13⽇)

10 治験実施計画書10-1 治験実施体制 10-10 原資料等の直接閲覧10-2 背景情報 10-11 治験の品質管理及び品質保証10-3 治験の⽬的 10-12 倫理10-4 治験のデザイン 10-13 データの取扱い及び記録の保存10-5 被験者の選択、除外、中⽌基準 10-14 ⾦銭の⽀払い及び保険10-6 被験者に対する治療 10-15 公表に関する取り決め10-7 有効性の評価 10-16 治験期間10-8 安全性の評価 10-17 参考資料10-9 統計解析

22医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

参考 ICH-GCP5.4 治験のデザイン5.4.2

治験のデザイン、治験実施計画書の作成及び治験の実施に関しては、第6章「治験実施計画書の及びその改訂」、ICHの「治験総括報告書の構成及び内容に関するガイドライン」及び他の関連するICHガイドラインを参照すること。

23医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

被験者に対して治験薬の効果を有しないこと及び同意を得ることが困難な者(⼩児など)を対象とすることが予測される場合、以下のことを治験実施計画書に記載すること。①同意を得ることが困難と予想される者を対象にしなければならないことの説明②予測される被験者への不利益が必要最⼩限のものであることの説明

(第15条の4第2項)

薬物動態試験、臨床薬理試験など

(1) このような被験者でないと治験の⽬的が達成されない(2) 予⾒しうる危険性が低い(3) 福祉に対する悪影響が最⼩限、かつ低い(4) 代諾者の同意に基づいて被験者を治験に組み⼊れる旨を明⽰した上で治験審査委員

会に承認の申請がなされ、かかる被験者の参加を承認する旨が承認⽂書に記載されていること。

(第15条の4:ガイダンス第2項2(1)〜(4))

第15条の4 治験実施計画書 その3

24医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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本⼈及び代諾者から同意を得ることが困難と予測される者を対象にしている場合には、以下のことを治験実施計画書に記載すること。

①⽣命の危険を回避するため緊急に使⽤される医薬品として、製造販売承認申請を予定していること

②現在の治療法では⼗分な効果が期待できないこと③被験薬により⽣命の危機が回避できる可能性が⼗分あること④効果安全性評価委員会が設置されていること

⑤速やかに、被験者(⼜は代諾者となるべき者)に当該治験を説明し、継続 参加について同意を得ること及び被験者の⾝元が明らかでない場合は治験の対象から除かれること

(第15条の4:ガイダンス第3項3(1)〜(5))

必要に応じ、治験実施計画書の改訂しなければならない。品質、有効性及び安全性、その他治験を適正に行うために重要な情報を知ったときは…

重要

同意取得が困難な、緊急状況下における救命的な治験の場合

第15条の4 治験実施計画書 その4

25医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

ICH 臨床に関するガイドラインE4:新医薬品の承認に必要な⽤量反応関係の検討⽅法E5(R1):外国臨床データ受⼊れの際に考慮すべき⼈種・

⺠族的要因E7:⾼齢者に使⽤する医薬品の臨床評価E8:臨床試験の⼀般指針E9:臨床試験の統計的原則E10:臨床試験における対照群選定E11:⼩児の臨床試験E14:QT延⻑及び重篤な不整脈の臨床評価E15:ゲノム薬理学における⽤語集E16:バイオマーカー

ご参考

その他平成17年11月1日 薬食審査発第1101001号「抗悪性腫瘍薬の臨床評価方法に関するガイドライン」の改訂について

26医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験薬概要書の目的は? 治験分担医師やその他治験に関与する者が、治験実施計画書の主要項⽬(投与量、投与回数・間隔、投与⽅法及び被験者の安全性を監視するための⼿順等)の合理的根拠を理解し、かつそれを遵守するための情報を提供する。 (ガイダンス第1項1)

作成者は? ⾃ら治験をしようとする者が、⼿順書に従って作成すること。治験薬提供者からも情報を収集し、検討し、IBの作成に利⽤すること。(ガイダンス第1項2)

なお、必要な資料⼜は情報の提供について、治験薬提供者と協議し、契約を締結するなど必要な措置を講じ、その実⾏を担保すること。(ガイダンス第1項7)

治験薬提供者からIBの提供を受ける場合は? ⾃ら治験を実施しようとするものは、その内容を確認しなければならない。(ガイダンス第1項1)

新たな情報を得た場合? ⼿順書に従って改訂しなければならない。(ガイダンス第2項1)

第15条の5 治験薬概要書 その1Investigatorʼ Brochure (IB)

企業治験では少なくとも年1回の⾒直しと、必要に応じて改訂する旨の規定あり。IBは有害事象の予測性判断の基準となる。

27医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験薬概要書の内容は? 通常含まれているべき具体的事項については、中央薬事審議会答申の11を参照すること。

第15条の5 治験薬概要書 その2

11-3 治験薬概要書の内容(中央薬事審議会答申:平成9年3⽉13⽇)11-3-1 ⽬次11-3-2 要約11-3-3 序⽂ 化学名、薬理学上の分類、治験実施の根拠、予期される適応、評価

する上での留意すべき全般的事項、等々

11-3-4 物理的・化学的及び薬剤学的性質並びに製剤組成

原薬の化学式、構造式、その物理的・化学的性質及びその薬剤学的性質。治験薬の保存条件及び保存期間等の取扱い⽅法、等々。

11-3-5 薬理、毒性、薬物動態及び薬物代謝

薬理作⽤(治療効果の評価:ex.モデル動物での試験)毒性(単回、反復、特殊毒性、⽣殖・発⽣毒性)、薬物動態及び薬物代謝試験(薬物動態、代謝・排泄の要約、被験薬の薬理作⽤、毒性との関連性)

11-3-6 臨床試験成績 薬物動態及び薬物代謝、安全性及び有効性、市販後の使⽤経験

11-3-7 データの要約及び治験責任医師に対するガイダンス

本項は、治験責任医師、治験薬によって起こりうる副作⽤や治験に必要とされる特別な検査、観察項⽬及び注意事項を明確に理解できるようにすることが⽬的。

28医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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GCP省令「治験薬概要書実施計画書の内容」はICH-GCPと同じ内容7.1 序 概要書の編集には⼀般的には医師が参加すべきであるが、内容に関しては専⾨部⾨の

承認を得ていなければならない。 利⽤しうる情報の種類や範囲は、開発のステージによって変わるものと考えられる。 治験薬が市販され、その薬理学的性質が⼀般の医師に広く理解されている場合には、

広範な情報を掲載した概要書は必要無い場合もありうる。もし、基本的な製品情報冊⼦、製品の添付⽂書⼜は表⽰内容等が、治験責任医師等にとって重要な治験薬に関する最新、包括的で詳細な情報を含み、かつ規制当局が許容する場合には、それらをもって概要書に代えることができる。

市販薬について新たな使⽤法(新しい適応など)のための治験を実施する場合には、新たな使⽤法のための概要書を作成しなくてはならない。

概要書は少なくとも1年に1回⾒直し、治験依頼者の⼿順に従い必要に応じて改訂治験薬の開発に応じて、あるいは治験薬に関連する新たな情報が得られた場合には、より頻回に改訂することが適切。

新しい情報が⾮常に重要な場合には、概要書の改訂に先⽴ち、治験責任医師、IRB、⼜は規制当局に報告する。

参考 ICH-GCP 7. 治験薬概要書

29医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

7.1 序(続き) 治験責任医師が⾃ら治験依頼者を兼ねる場合には、その治験責任医師は概要書

を当該医薬品の製造販売会社から⼊⼿できるか否か確かめる必要がある。 またかかる治験責任医師は治験薬を提供する場合には、その治験責任医師が他の

治験関係者に対して必要な情報を提供しなければならない。 正式な概要書を作成できない場合には、治験依頼者兼治験責任医師は治験実施

計画書の背景情報の項を拡張し、本章に記す最⼩限の最新情報を盛り込むことによって概要書に代えることができる。

→ GCP省令:治験薬提供会社から提供を受けることが困難な場合は、規制当局に個別に相談

7.2 ⼀般的事項 表紙:治験依頼者名、治験薬を識別する記号等、概要書の発⾏⽇。

版番号、改訂前の版番号及び編集⽇を記載することが望ましい。 秘密保全に関する記述

参考 ICH-GCP 7. 治験薬概要書

30医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の6 説明⽂書の作成誰が作成する? ⾃ら治験を実施しようとする者が、説明⽂書を作成しなければならない。

なお、⾃ら治験を実施しようとする者は、必要な資料⼜は情報の提供について、治験薬提供者と協議し、契約を締結するなど必要な措置を講じ、その実⾏を担保すること。注)説明⽂書に記載すべき事項については、第51条第1項を

参照すること。

今までのところで、治験薬提供者と契約等の締結を要すること①毒性試験等の実施(第15条の3)②治験薬概要書の提供を受ける場合(第15条の5)③説明⽂書作成に当たり資料等の提供を受ける場合(第15条6)

31医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の7 実施医療機関の⻑への⽂書の事前提出等 その1

⾃ら治験を実施しようとする者は、あらかじめ*、次に掲げる⽂書を実施医療機関の⻑に提出し、治験の実施の承認を得なければならない。

*法第80条の2第2項の規定に基づき治験の計画を届け出る場合にあっては、届け出る前に 即ち、治験届

の前までに

(治験の取扱い)法第80条の2第2項 治験の依頼をしようとする者⼜は⾃ら治験を実施しようとする者は、

あらかじめ、厚⽣労働省令で定めるところにより、厚⽣労働⼤⾂に治験の計画を届け出なければならない。

第13条 治験の契約第32条 治験審査委員会の責務

提出資料を理解するには、こちらも参考に

32医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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医療機関の長

治験審査委員会

治験届

提出

審議依頼

承認

企業治験

医療機関の長

治験審査委員会

医療機関と契約

治験薬概要書、治験実施計画書等

提出

審議依頼

治験届

提出

承認

治験の実施

医師主導治験の特徴

治験の実施

治験薬概要書、治験実施計画書等

医師主導治験

33医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

1. 治験実施計画書

2. 治験薬概要書

3. 症例報告書の⾒本

4. 説明⽂書

5. モニタリングに関する⼿順書6. 監査に関する計画書及び

業務に関する⼿順書

治験実施計画書に、CRFに記載すべき事項が⼗分に読み取れる場合は、当該治験実施計画書をもってCRFの⾒本に関する事項を含むものと解してよい。

説明⽂書と同意⽂書は⼀体化した⽂書⼜は⼀式の⽂書として取り扱う。

モニター/監査担当者選定の⼿続き(要件を含む)、モニタリング/監査の具体的な⽅法、モニタリング報告書/監査報告書・監査証明書の取り扱い等

第15条の7 実施医療機関の⻑への⽂書の事前提出等 その2

34医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

7. 治験分担医師となるべき者の⽒名を記載した⽂書

8. 治験薬の管理に関する事項を記載した⽂書治験薬管理者が治験薬管理⼿順書に従って治験薬を適切に管理する旨を含むこと。

治験責任医師となるべきものの履歴書、IRBより求められた場合は治験分担医師の履歴書も提出

治験の実施の承認後遅滞なく、実施医療機関における治験薬の管理に関する⼿順書を作成し、実施医療機関に交付しなければならない。

第32条(IRBの責務) 第1項 ガイダンス 2(1)⑤参照

第26条の2(治験薬の管理)第6項

治験薬の受領、取扱い、保管、処⽅並びに未使⽤治験薬の被験者からの返却及び未使⽤治験薬の処分が適切かつ確実に⾏われるよう、治験薬の管理に関わる者が従うべき事項を規定すること。

同ガイダンス

第15条の7 実施医療機関の⻑への⽂書の事前提出等 その3

35医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

9. この省令の規定により⾃ら治験を実施する者及び実施医療機関に従事する者が⾏う通知に関する事項を記載した⽂書

治験責任医師→実施医療機関の⻑→IRB① 副作⽤情報等 第26条の6第2項、第40条第1項② ⾃ら治験を実施する者からの治験の中断、中⽌ 第26条の10第2項、第40条第2項③ 申請書に添付されないことを知ったとき 第26条の10第3項、第40条第2項④ 治験責任医師からの治験の治験の中断、中⽌ 第40条第3項実施医療機関の⻑→治験責任医師⑤ IRBの意⾒ 第32条第7項実施医療機関の⻑→IRB⑥ 治験責任医師からの治験の終了 第40条第4項治験実施責任医師→他の医師⑦ 被験者の治験参加の旨 第45条第2項治験責任医師→被験者

⑧ 有害事象に対する治療 第45条第4項

第15条の7 実施医療機関の⻑への⽂書の事前提出等 その4

36医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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10. 治験の費⽤の負担について説明した⽂書➫第32条(治験審査委員会の責務)第1項及び第2項ガイダンス11参照

〔必要に応じて、⾃ら医師が確保する治験費⽤に関する資料の提出を求め審査、確認〕

11. 被験者の健康被害の補償に関する事項を記載した⽂書➫例えば、院内の⼿順書、説明⽂書、付保証明書など

12. 実施医療機関が⾃ら治験を実施する者の求めに応じて第41条第2項各号に掲げる記録を閲覧に供する旨を記載した⽂書

第41条は、記録の保存、第2項各号とは、原資料、契約書、同意⽂書、治験薬管理に係る記録等のこと。

実施医療機関がモニターや監査担当者に原資料等の治験に関する記録を直接閲覧させるための規定が整備され、それに基づきSDVが⾏われること。

規制当局による適合性調査も同様である。

第15条の7 実施医療機関の⻑への⽂書の事前提出等 その5

37医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

13. 実施医療機関がこの省令⼜は治験実施計画書に違反することにより適正な治験に⽀障を及ぼしたと認める場合には、⾃ら治験を実施する者は治験を中⽌することができる旨を記載した⽂書➫ 医療機関の医師主導治験SOPなどに規定する

14. その他治験が適正かつ円滑に⾏われることを確保するために必要な事項を記載した⽂書➫ 第32条第1項及び第2項ガイダンス2(6) 参照

(企業との利益相反がある場合、利益相反に関する資料等)

本条各号に規定する⽂書は、必ずしも個別の作成を求めるものではなく、記載すべき内容が確認できる場合にあっては、複数の⽂書を⼀つにまとめることが可能である。

例えば、治験実施計画書等に含まれていれば、個別の⽂書の作成、そして提出は不要ということ。

要するに

第15条の7 実施医療機関の⻑への⽂書の事前提出等 その6

38医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の8 業務の委託⾃ら治験を実施しようとする者⼜は実施医療機関は、治験の実施の準備及び管理に係る全部⼜は⼀部を委託する場合には、⽂書により当該受託者との契約を締結しなければならない。

但し、治験の計画の届出及び規制当局への副作⽤等の報告については、当該業務を、開発業務受託機関に委託することはできない。

なお、⽂書の契約については、第12条第2項から第6項を準⽤することとされている。➫電磁的⽅法による締結が可能で、その場合の条件などの規定

39医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第15条の9 被験者に対する補償措置⾃ら治験を実施しようとする者は、あらかじめ、治験に係る被験者に⽣じた健康被害(受託者*の業務により⽣じたものを含む)の補償のために、保険その他の必要な措置を講じておかなければならない。• 補償措置として、保険への加⼊の措置、副作⽤等の治療に関

する医療体制の提供その他必要な措置を講ずること。なお、⾃ら治験を実施する者及び実施医療機関の⻑は、補償に関する⼿順書を定めておくこと。

• 必ずしも保険加⼊に基づく⾦額の⽀払に限られるものではなく、医療の提供及びその体制の提供という⼿段も考慮しうる。

*開発業務受託機関(CRO)及び治験施設⽀援機関(SMO)を指す。

第15条の7 実施医療機関の⻑への事前提出等11) 被験者の健康被害の補償に関する事項を記載した⽂書

参照

40医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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第二節 自ら治験を実施する者による治験の管理に関する基準

41医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の3 治験薬の品質の確保まず初めに・・・

⽴案時には治験薬の調達⽅法の検討が必要。

治験薬は「治験薬の品質の確保のために必要な構造設備を備え、かつ、適切な製造管理及び品質管理の⽅法が採られている製造所」、つまり治験薬GMP通知に適合する製造所で製造された治験薬を⽤いる必要がある。 (第26条の3ガイダンス)

★⾃ら実施する者は、治験薬を製造する製薬企業の協⼒を得て、当該製薬企業から直接治験薬の提供を受けることが望ましい。

(H17年10⽉25⽇事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課)

提供を受ける場合、治験薬の品質確保に関して、治験薬提供者との間で⽂書等により、明確な取り決めを⾏う (第26条の3ガイダンス)

42医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験薬GMP

<⽬的> 治験薬の品質を保証することで、不良な治験薬から被験者を保護 治験薬のロット内/間の均⼀性を保証することで、臨床試験の信頼性を確保 治験薬が開発候補として絞り込まれた段階においては、当該治験薬と市販後製品の

⼀貫性を、治験薬の製造⽅法及び試験⽅法が確⽴した段階においては、当該治験薬と市販後製品の同等性を保証することで、市販後製品の有効性及び安全性並びに臨床試験の適切性を確保

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治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準GMP=Good Manufacturing Practice

関連通知等「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)について」(平成20年7⽉9⽇薬⾷発第0709002厚⽣労働省医薬⾷品局⻑通知)「治験薬の製造管理、品質管理等に関する基準(治験薬GMP)に関するQ&Aについて」(平成21年7⽉2⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局監視指導・⿇薬対策課)「PIC/SのGMPガイドラインを活⽤する際の考え⽅について」及び「同⼀部改正について」

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の2 治験薬の管理治験薬の容器⼜は被包の記載

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記載する事項(第1項)1) 治験⽤である旨2) ⾃ら治験を実施する者の⽒名及び

職名並びに住所3) 化学名⼜は識別記号4) 製造番号⼜は製造記号5) 貯蔵⽅法、有効期間等を定める必要が

あるものについては、その内容

×記載してはいけない事項(第2項)1) 予定される販売名2) 予定される効能⼜は効果3) 予定される⽤法⼜は⽤量

• 記載は邦⽂で• 国際共同治験において英⽂で記載された共通の治験薬を使⽤する場合には、治

験実施計画書にその旨記載し、治験審査委員会の承認を得る• 多施設共同試験では治験実施計画書に⾃ら治験を実施する者⼜は治験調整医

師の⽒名及び職名並びに住所を記載し、治験審査委員会の承認を得る

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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GCP第26条の2 治験薬の管理盲検下の治験では、治験薬のコード化及び包装に際して、医療上の緊急時に当該治験薬がどの薬剤であるかを直ちに識別できるように、かつ盲検性が破られたことを検知できるようにしておく。(第3項)

封筒やスクラッチシートの利⽤ コールセンターの利⽤ IVRS (Interactive Voice Response System) IWRS(Interactive Web Response System)

⇒ 被験者の安全性確保のために被験者に治験薬が投与される前までに準備が必要

治験薬の輸送及び保存中の汚染や劣化を防⽌するための必要な措置を講じる。(第4項)

冷蔵、冷凍、暗所保存の治験薬の取り扱い(保存時の適切性)治験調整医師(委員会)が⼀括で治験薬提供会社から受領し、各医療機関に交付する場合、輸送には注意が必要(冷蔵・冷凍保存の治験薬、温度ロガーによる管理等)

45医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の2 治験薬の管理予定される使⽤期間中安定である治験薬を使⽤(第5項ガイダンス)

作成⼜は⼊⼿が必要な資料(第5項)

治験薬の製造年⽉⽇、製造⽅法、製造数量等の製造に関する記録及び治験薬の安定性等の品質に関する試験の記録記録内容が確認できる⽂書がある場合については、これらの記録に代えて当該⽂書を⼊⼿することで⾜るものとする (第5条ガイダンス)

治験薬を⼊⼿し、⼜は治験薬提供会社から提供を受けた場合には、その数量及び年⽉⽇の記録

治験薬の処分の記録(返却、未使⽤治験薬)※治験薬提供者から治験調整医師が⼊⼿し、保管、各治験責任医師に交付

する場合には、治験調整医師は交付・回収・廃棄の記録を作成。治験薬の管理に関する⼿順書の作成、治験実施医療機関への交付

(第6項)

(必要に応じ)治験薬の溶解⽅法その他の取り扱い⽅法を説明した⽂書の作成、治験分担医師・治験協⼒者、治験薬管理者への交付(第7項)

46医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の2 治験薬の管理厚⽣労働⼤⾂に治験計画届け出が受理されるまで、治験薬の提供を受けてはならない。

(第26条の2第7項 ガイダンス)

かつ、以下に該当する場合には、届出後30⽇を経過した後でなければ治験薬の提供を受けてはならない。(H15/5/15 医薬発第0515018号)

★以下に⽰す被験薬に係る治験計画届出のうち、当該薬物を初めて⼈に投与するもの⽇本薬局⽅に収められている医薬品及び既承認医薬品と

① 有効成分が異なる薬物(新有効性分薬物)② 有効成分が同⼀の薬物であって投与経路が異なるもの(新投与経路薬物)③ 有効成分の配合割合が異なる薬物(①及び②に⽰すもの、類似処⽅医療⽤配合剤として

製造⼜は輸⼊の承認の申請を⾏うことを予定しているもの並びに医療⽤以外の医薬品として製造⼜は輸⼊の承認の申請を⾏うことを予定しているものを除く。) (新医療⽤配合剤)

47医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の4 委嘱の⽂書の作成⾃ら治験を実施する者は、調整する業務を治験調整医師(第2条第16項)⼜は治験調整委員会(第2条第17項)に委嘱する場合には、以下を記載した⽂書を作成しなければならない。 その業務の範囲、⼿順 その他必要な事項を記載した⽂書

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業務の分担を⼿順書に定めておく等、両者が⾏う業務を明確にしておくこと。 明確にされていない業務は、⾃ら治験を実施する者のうち治験責任医師であ

る者が⾏うこと。 治験調整医師に分担された業務についても治験責任医師が把握できるように

しておくこと。(GCP第15条の2 ガイダンス)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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治験調整医師(治験調整委員会)とは?⼀の治験実施計画書に基づき複数の実施医療機関において治験を⾏う場合に、⾃ら治験を⾏う者により当該実施医療機関における当該治験実施計画書の解釈その他の治験の細⽬について調整する業務の委嘱を受け、当該調整業務を⾏う医師⼜は⻭科医師(複数の医師⼜は⻭科医師で構成される委員会)をいう

(GCP第2条第16項、第17項)治験調整医師の要件:

当該治験の分野において⼗分な経験を有し、多施設間の調整を適切に⾏いうる者

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実施医療機関間の調整に係わる業務 治験実施計画書の内容の細⽬についての多施設間の調整 治験中に⽣じたプロトコールの解釈上の疑義調整

治験の細⽬について調整する業務 治験計画の届け出 他の実施医療機関の責任医師への副作⽤情報の通知に関する業務 厚⽣労働⼤⾂への副作⽤等報告の業務

調整する業務とは?

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験調整医師/委員会に委託できる業務は?⾃ら治験を実施する(しよう)とする者として、治験責任医師だけでなく、「代表して治験計画届け出た治験調整医師」も含む。(H24年12⽉28⽇ GCP省令改正)

但し、以下に関しては各実施医療機関の治験責任医師が実施• 説明⽂書の作成(GCP第15条の6)

• 治験の実施の承認を得るための各実施医療機関の⻑への⽂書の事前提出 (GCP第15条の7)

• 治験調整医師⼜は治験調整委員会への調整業務の委嘱(GCP第26条の4)

(平成24年12⽉28⽇ 薬⾷発1228第1号 厚⽣労働省医薬⾷品局⻑通知)

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治験開始前に各々の責務を⽂書で定めておくことが重要!

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

業務⼿順書の作成(15条の2) 各種委員会の設置(委員の委嘱)(第19条) 治験薬提供者との契約の締結 治験薬概要書の⼊⼿もしくは作成/改訂(15条の5) 治験実施計画書及びCRF様式の作成/改訂(15条の4) 治験薬提供会社から副作⽤情報の収集・情報提供 治験薬の品質確保に関する業務 モニタリング・監査の実施(26条の7〜9) データマネジメント業務、統計解析業務の実施(15条の2)

総括報告書の作成(26条の11) 記録の保存(26条の12) 他の実施医療機関の治験責任医師への副作⽤情報の

通知(26条の6) 規制当局への治験計画の届け出 厚⽣労働⼤⾂への副作⽤報告業務(施⾏規則) 開発業務受託機関・臨床検査会社の選定・契約

(委託する場合) ・・・等(15条の8)

実施医療機関/責任医師

規制当局

当該治験の安全性情報提供

治験薬の提供(26条の3)治験薬に関する情報提供(品質・⾮臨床試験成績・臨床成績等)安全性情報提供(海外CIOMS, 措置報告等)

治験薬提供者・治験薬の製造・安全性情報収集・製造販売申請…等

治験計画届出 副作⽤報告

多施設間の調整

治験調整医師/治験調整委員会

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各種委員会 効果安全性評価委員会 中央画像判定委員会 等 審議依頼

審議結果

業務の委嘱(26条の4)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の5 効果安全性評価委員会の設置効果安全性評価委員会とは・・・、• 「治験の継続の適否⼜は治験実施計画書の変更について審議するため

の委員会」であり、治験の進⾏、安全性データ及び重要な有効性エンドポイントを適切な間隔で評価するものである。• ⾃ら治験を実施する者、治験責任医師等、治験調整医師、治験審査

委員会の委員、治験薬提供者及び実施医療機関の⻑は効果安全性評価委員会の委員になることはできない。

「効果安全性評価委員会」は、治験の進⾏、安全性データ及び重要な有効性エンドポイントを適当な間隔で評価し、治験依頼者に治験の継続、変更⼜は中⽌を提⾔することを⽬的として、治験依頼者が設置することができる委員会であり、「データモニタリング委員会」とも呼ばれる。有効性の検証を⽬的とした臨床試験等においては、治験依頼者、治験責任医師及び治験調整医師から独⽴した委員会として設置した場合には、とくに「独⽴データモニタリング委員会」とも呼ばれる。 (GCP第19条)

効果安全性評価委員会と協議の上、 審議に関する⼿順書を作成し、これに従って審議が必要。 審議に関する会合の記録を作成し、保存する。

52医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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効果安全性評価委員会を設置する場合には・・・「データモニタリング委員会のガイドライン」参考にDMC: Data Monitoring Committee[ガイドラインの⽬的]治験依頼者(⾃ら治験を実施する者も含む)により実施される医薬品⼜は医療機器(以下「医薬品等」という)の臨床試験(治験)における、DMCの必要性とその役割、設置と運営に関して現時点での⼀般的指針を⽰したもの。DMC:臨床試験の評価に必要とされる専⾨性を有する委員から構成、

治験実施中の中間的なデータについて中⽴的な評価を⾏う組織 通常は、治験依頼者及び治験責任医師から独⽴。 治験依頼者に対し、被験者の安全性の確保並びに治験実施の倫理的及び科学

的妥当性の確保のために適切な助⾔・勧告を⾏う。

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関連通知等 「データモニタリング委員会のガイドライン」(平成25年4⽉4⽇薬⾷発0404第1号 厚⽣労働省医薬⾷品局審管理査課⻑通知)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の6 副作⽤情報等

治験薬提供者との情報共有(必要な情報の収集・情報収集への協⼒)

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⾃ら治験を実施する者は、被験薬の品質、有効性及び安全性に関する事項その他治験を適正に⾏うために必要な情報を収集し、検討するとともに実施医療機関の⻑に対し、これを提供しなればならない。 (第1項)

法80条の2第6項に規定する事項を知った場合、直ちに・・・ 実施医療機関の⻑への報告 多施設共同治験の場合には各治験責任医師

に報告(第2項)

被験薬の品質、有効性及び安全性に関する事項その他の治験を適正に⾏うための重要な情報を知ったときは、必要に応じ、 治験実施計画書の改訂 治験薬概要書を改訂

(第3項、第15条の5第2項参照)

被験者が治験継続して意思に影響を与えるような情報の場合、 被験者に情報提供・意思の確認 必要がある場合、説明⽂書の改訂

(第54条第1及び2項参照)

⾃ら治験を実施する者は、治験の安全性を継続的に評価する責任を有します

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の6第2項 副作⽤情報等

「法第80条の2第6項に規定する事項」とは、施⾏規則第273条第1項に規定

(治験の取扱い)第⼋⼗条の⼆ 治験の依頼をしようとする者は、治験を依頼するに当たっては、厚⽣労働省令で定める基準に従ってこれを⾏わなければならない。6 治験の依頼をした者⼜は⾃ら治験を実施した者は、当該治験の対象とされる薬物⼜は機械器

具等について、当該薬物⼜は機械器具等の副作⽤によるものと疑われる疾病、障害⼜は死亡の発⽣、当該薬物⼜は機械器具等の使⽤によるものと疑われる感染症の発⽣その他の治験の対象とされる薬物⼜は機械器具等の有効性及び安全性に関する事項で厚⽣労働省令で定めるものを知つたときは、その旨を厚⽣労働省令で定めるところにより厚⽣労働⼤⾂に報告しなければならない。この場合において、厚⽣労働⼤⾂は、当該報告に係る情報の整理⼜は当該報告に関する調査を⾏うものとする。

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被験薬について法第80条の2第6項を知ったときは、直ちに実施医療機関の⻑(共同で治験を実施する場合には、他の実施医療機関の治験責任医師を含む)に通知しなければならない。(第2項)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

有害事象と副作⽤

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副作⽤

有害事象

有害事象:Adverse Event治験薬が投与された被験者に⽣じた、全ての好ましくない、⼜は意図しない疾病⼜は徴候(臨床検査値異常を含む)であり、因果関係の有無は問わない。

(GCP第2条ガイダンス10)

副作⽤:Adverse Drug Reaction投与量に係わらず投与された治験薬に対するあらゆる有害で意図しない反応医薬品に対する反応(臨床検査値異常を含む) で当該治験薬と有害事象との間の因果関係について、少なくとも合理的な可能性があり、因果関係を否定できない反応。

(GCP第2条ガイダンス15)

予測できない副作⽤:Unexpected Adverse Drug Reaction副作⽤のうち、治験薬概要書に記載されていないもの(IB記載されている以上に特定されている(限定的)⼜は重症である事象は予測できないものも該当)(製造販売後臨床試験では、添付⽂書に記載されていないもの)*予測できる時点は、治験薬概要書の作成⽇/改訂⽇(医療機関への通知⽂書はIBの別冊として保管することがSOPに規定されている場合には、その通知⽂書の作成⽇)

(ICH ガイドライン E2A、H20/10/1通知、H26/2/26Q&A、GCP第20、54条も参照)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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参考: ICHにおける副作⽤の重篤の定義との関連は?

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副作⽤等報告に関するQ&Aについての改訂について(平成26年2⽉26⽇ 事務連絡)Q&A 26より

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

施⾏規則第273条第1項(薬物に係る治験に関する副作⽤等の報告)第⼆百七⼗三条治験の依頼をした者⼜は⾃ら治験を実施した者は、被験薬について次の各号に掲げる事項を知つたときは、それぞれ当該各号に定める期間内にその旨を厚⽣労働⼤⾂に報告しなければならない。⼀ 次に掲げる症例等の発⽣のうち、当該被験薬⼜は外国で使⽤されている物

であって当該被験薬と成分が同⼀性を有すると認められるもの(以下この条において「当該被験薬等」という。)の副作⽤によるものと疑われるもの⼜はそれらの使⽤によるものと疑われる感染症によるものであり、かつ、そのような症例等の発⽣⼜は発⽣数、発⽣頻度、発⽣条件等の発⽣傾向が当該被験薬の治験薬概要書(当該被験薬の品質、有効性及び安全性に関する情報等を記載した⽂書をいう。以下この条において同じ。)から予測できないもの 七⽇イ 死亡

ロ 死亡につながるおそれのある症例

58医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

施⾏規則第273条第1項(続き)(薬物に係る治験に関する副作⽤等の報告)第⼆百七⼗三条⼆ 次に掲げる事項(前号に掲げるものを除く。) ⼗五⽇

イ 次に掲げる症例等の発⽣のうち、当該被験薬等の副作⽤によるものと疑われるもの⼜はそれらの使⽤によるものと疑われる感染症によるものであり、かつ、そのような症例等の発⽣⼜は発⽣数、発⽣頻度、発⽣条件等の発⽣傾向が当該被験薬の治験薬概要書から予測できないもの

(1) 治療のために病院又は診療所への入院又は入院期間の延長が必要とされる症例

(2) 障害

(3) 障害につながるおそれのある症例

(4) (1)から(3)まで並びに前号イ及びロに掲げる症例に準じて重篤である症例

(5) 後世代における先天性の疾病又は異常

ロ 前号イ⼜はロに掲げる症例等の発⽣のうち、当該被験薬等の副作⽤によるものと疑われるもの⼜はそれらの使⽤によるものと疑われる感染症によるもの

59医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

施⾏規則第273条第1項(続き)(薬物に係る治験に関する副作⽤等の報告)第⼆百七⼗三条⼆ 次に掲げる事項(前号に掲げるものを除く。) ⼗五⽇

ハ 外国で使⽤されている物であって被験薬と成分が同⼀性を有すると認められるものに係る製造、輸⼊⼜は販売の中⽌、回収、廃棄その他保健衛⽣上の危害の発⽣⼜は拡⼤を防⽌するための措置の実施

ニ 当該被験薬等の副作⽤若しくはそれらの使⽤による感染症によりがんその他の重⼤な疾病、障害若しくは死亡が発⽣するおそれがあること、当該被験薬等の副作⽤によるものと疑われる疾病等若しくはそれらの使⽤によるものと疑われる感染症の発⽣数、発⽣頻度、発⽣条件等の発⽣傾向が著しく変化したこと⼜は当該被験薬等が治験の対象となる疾患に対して効能若しくは効果を有しないことを⽰す研究報告

60医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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施⾏規則第273条第2項(薬物に係る治験に関する副作⽤等の報告)第⼆百七⼗三条

2 前項の規定にかかわらず、治験の依頼をした者⼜は⾃ら治験を実施した者は、当該治験が既に製造販売の承認を与えられている医薬品について法第⼗四条第九項 (法第⼗九条の⼆第五項 において準⽤する場合を含む。)の規定による承認事項の⼀部の変更(当該変更が第四⼗七条第四号に該当するものに限る。)の申請に係る申請書に添付しなければならない資料の収集を⽬的とするものである場合においては、前項第⼀号並びに第⼆号イ及びロに掲げる事項のうち、外国で使⽤されている物であって当該治験に係る被験薬と成分が同⼀性を有すると認められるものの副作⽤によるものと疑われるもの⼜はその使⽤によるものと疑われる感染症によるものについては、報告することを要しない。

61医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

施⾏規則第273条第3項(薬物に係る治験に関する副作⽤等の報告)第⼆百七⼗三条3 治験の依頼をした者⼜は⾃ら治験を実施した者は、第⼀項第⼀号並びに第⼆

号イ及びロに掲げる事項並びに同号イ(1)から(5)までに掲げる症例等の発⽣であって当該被験薬等の副作⽤によるものと疑われるもの⼜はそれらの使⽤によるものと疑われる感染症によるもの(同号に掲げるものを除く。)について、その発現症例⼀覧等を当該被験薬ごとに、当該被験薬について初めて治験の計画を届け出た⽇等から起算して⼀年ごとに、その期間の満了後⼆⽉以内に厚⽣労働⼤⾂に報告しなければならない。ただし、⾃ら治験を実施した者が既に製造販売の承認を与えられている医薬品に係る治験を⾏った場合⼜は既に当該被験薬について治験の依頼をした者が治験を⾏っている場合については、この限りでない。

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H24/12/28改正で発現症例の⼀覧表を1年ごとに報告することが義務づけ(関連通知:H24/12/28 薬⾷審査発1228第11号)

治験安全性最新報告概要 国内重篤副作⽤等症例の発現状況⼀覧 治験安全性最新報告(DSUR)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

施⾏規則第273条治験副作⽤症例報告の対象・報告期限

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予測性 重篤性 国内症例(国内治験) 外国症例(外国臨床試験、外国市販後⾃発報告等)

個別 定期 個別 定期

予測できない(未知) 死亡・死亡につながるおそれ 7⽇ 1年毎 7⽇ 1年毎その他重篤 15⽇ 1年毎 15⽇ 1年毎

予測できる(既知) 死亡・死亡につながるおそれ 15⽇ 1年毎 15⽇ 1年毎その他重篤 - 1年毎 - 1年毎

予測性 重篤性 国内症例(国内治験) 外国症例(外国臨床試験、外国市販後⾃発報告等)

個別 定期 個別 定期

予測できない(未知) 死亡・死亡につながるおそれ 7⽇ 1年毎 - 1年毎その他重篤 15⽇ 1年毎 - 1年毎

予測できる(既知) 死亡・死亡につながるおそれ 15⽇ 1年毎 - 1年毎その他重篤 - 1年毎 - 1年毎

海外措置報告 15⽇研究報告 15⽇

(1) 新有効成分、その他(2)以外の場合

(2) ⼀変治験(⽤法・⽤量⼜は効能・効果の追加、変更⼜は削除に係るものに限る)場合

(3) その他

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

副作⽤報告の届出者、報告起算⽇は?Q4多施設共同で⾏う医師主導治験において、治験調整医師が届出代表者として治験計画届書を届け出る場合、届出代表者が副作⽤報告等を⾏うことは差し⽀えないか。

A4差し⽀えない。代表として治験の計画を届け出る治験調整医師も⾃ら治験を実施しようとする者となるため、副作⽤報告等を⾏うことも可能である。ただし、報告起算⽇は、届出代表者が情報を⼊⼿した⽇ではなく、当該医療機関の治験責任医師等が情報を⼊⼿した⽇であることに留意すること。(2013年8⽉30⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課⻑「薬物に係る治験の計画の届出及び治験の実施とに関する質疑応答(Q&A)について」)

64医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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関連通知等 「治験安全性最新報告について」平成24年12⽉28⽇薬⾷審査発1228第1号 厚⽣労働省医薬⾷品局審管理査課⻑通知平成25年7⽉1⽇薬⾷審査発第0701第21号 厚⽣労働省医薬⾷品局審管理査課⻑通知

上記ガイドラインは、「ICH Topic E2F」が翻訳されたもの。DSUR : DEVELOPMENT SAFETY UPDATE REPORT

1有効成分1DSUR DSURデータロックポイント(開発国際誕⽣⽇)から60⽇以内に

規制当局へ報告<医師主導治験における年次報告>Q16医師主導治験においても試験期間が1年以上の場合(ただし、既に製造販売の承認を与えられている医薬品に係る治験を⾏った場合⼜は既に当該被験薬について治験依頼者が治験を⾏っている場合を除く。)には、年次報告を提出する必要があるが、年次報告の提出対象となる治験はどのようなものか。A16試験期間が1年以上であり、かつ平成26年7⽉1⽇以降が試験期間終了⽇となる医師主導治験が年次報告の提出対象となる。(2013年7⽉1⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課⻑「治験副作⽤等症例の定期報告に関する質疑応答集(Q&A)」)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

DSURの内容(ガイドライン2.7.2 ⽬次)表紙エグゼクティブサマリー⽬次1. 緒⾔2. 世界各国における販売承認状況3. 安全性上の理由で調査対象期間内に実施された措置について4. 安全性参照情報の変更5. 調査対象期間中に継続⼜は終了した臨床試験の状況6. 推定累積使⽤者数7. ラインリストとサマリーテーブルのデータ8. 調査対象期間中に臨床試験で⾒られた重⼤な知⾒9. ⾮介⼊試験からの安全性知⾒10. 他の臨床試験からの安全性情報11. 市販後の使⽤経験に基づく安全性情報12. ⾮臨床データ13. ⽂献14. 他のDSUR 15. 有効性の⽋如16. 特定の地域で必要となる情報17. データロックポイント後に⼊⼿した情報18. 安全性総合評価19. 重要なリスクの要約20. 結論DSUR添付資料

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試験情報

データ

評価・考察

含まれる情報は多岐にわたります

DSURの⽬的は『包括的な安全性情報を1年毎にUp Dateすること』⇒新たな安全性情報を提供する

⼿段ではない!

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

作成時に参考となる資料はあるか?

海外のICH website(http://www.ich.org/)でICH-E2F Expert Working Groupが作成したDSURの例⽰が⽰されています。

Model DSUR – Non-Commercial Sponsorhttp://www.ich.org/fileadmin/Public_Web_Site/ICH_Products/Guidelines/Efficacy/E2F/Examples_DSUR/E2F_Example_non-commercial_DSUR.pdf

67医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016 68

※「平成25年度GCP研修会」資料を引⽤(⼀部改変)

関連通知等 「⾃ら治験を実施した者による治験副作⽤等報告について」(平成25年5⽉15⽇薬⾷審査発0515第9号 厚⽣労働省医薬⾷品局審管理査課⻑通知)(平成25年7⽉ 1⽇薬⾷審査発0701第21号 厚⽣労働省医薬⾷品局審管理査課⻑通知)

※治験薬提供者等により報告されることが確認出来ること

※あらかじめ治験届出の備考欄に省略する旨を記載すること

⇒ 重複する報告は省略

PMDA / 厚⽣労働省

企業治験

副作⽤-①

医師主導治験

副作⽤-②

医 師

副作⽤-②

副作⽤-①

情 報 共 有

同⼀被験薬に係る治験

外国措置報告研究報告

⾃ら治験を実施する者が実施した治験において発⽣した副作⽤等については、規制当局へ報告する必要がある。

企 業

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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実施医療機関の⻑、各治験責任医師(多施設共同治験の場合)への通知今まで通りで、変更はありません !!!⾃ら治験を実施する者は被験薬について法80条の2第6項に規定する事項を知った時には直ちにその旨を実施医療機関の⻑に通知しなければならない

つまり・・・規制当局への治験副作⽤等報告 治験薬提供会社が、規制当局へ報告するのであれば、治験副作⽤等報告、外国措

置報告及び研究報告の重複報告の必要無。但し、その場合、適切に両者で情報共有すること。

治験届出時に備考欄に省略する旨、記載必要

但し、⾃ら治験を実施する者が実施した治験において発⽣した副作⽤等は、規制当局へ報告が必要。

関連通知等 「⾃ら治験を実施した者による治験副作⽤等報告について」(平成25年5⽉15⽇薬⾷審査発0515第9号 厚⽣労働省医薬⾷品局審管理査課⻑通知)(平成25年7⽉ 1⽇薬⾷審査発0701第21号 厚⽣労働省医薬⾷品局審管理査課⻑通知)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験 副作⽤報告(施⾏規則第273条/H25年7⽉ 1⽇薬⾷審査発0701第21号 )

医師主導治験の場合(新有効成分)

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★国内で治験薬提供者が当該治験薬の治験を実施していない場合

予測性 重篤性 国内症例(国内治験) 外国症例(外国臨床試験、外国市販後⾃発報告等)

個別 定期 個別 定期

予測できない(未知) 死亡・死亡につながるおそれ 7⽇ 1年毎 7⽇ 1年毎その他重篤 15⽇ 1年毎 15⽇ 1年毎

予測できる(既知) 死亡・死亡につながるおそれ 15⽇ 1年毎 15⽇ 1年毎その他重篤 - 1年毎 - 1年毎

海外措置報告 15⽇研究報告 15⽇

★国内で治験薬提供者が当該治験薬の治験を実施している場合

予測性 重篤性 国内症例(国内治験) 外国症例(外国臨床試験、外国市販後⾃発報告等)

個別 定期 個別 定期

予測できない(未知) 死亡・死亡につながるおそれ 7⽇ - - -その他重篤 15⽇ - - -

予測できる(既知) 死亡・死亡につながるおそれ 15⽇ - - -その他重篤 - - - -

海外措置報告 -研究報告 -

実施医療機関の⻑、各治験責任医師(多施設共同治験の場合)への通知今まで通りで、変更はありません !!!直ちにその旨を実施医療機関の⻑に通知

治験薬提供会社との情報共有は、重要

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

医療機関の⻑、責任医師への報告71

被験薬について法第80条の2第6項を知ったときは、直ちに実施医療機関の⻑(共同で治験を実施する場合には、他の実施医療機関の治験責任医師を含む)に通知しなければならない。(第2項)

医師主導治験 : GCP第26条の6第2項

2 治験依頼者は、被験薬について法第80条の2第6項に規定する事項を知ったときは、その発現症例⼀覧等を当該被験薬ごとに、当該被験薬について初めて治験の計画を届け出た⽇等から起算して1年ごとに、その期間の満了後3⽉以内に治験責任医師及び実施医療機関の⻑に通知しなければならない。

3 治験依頼者は、前項に規定する事項のうち当該被験薬の治験薬概要書から予測できないものを知ったときは、直ちにその旨を治験責任医師及び実施医療機関の⻑に通知しなければならない。

企業治験 : GCP第20条第2項、第3項

企業治験と医師主導治験では、条文の規定が異なります !!

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験中の副作⽤等報告 GCP第48条第2項

⾃ら治験を実施する者が治験を実施する場合にあっては、治験責任医師は、治験薬の副作⽤によると疑われる死亡その他の重篤な有害事象の発⽣を認めたときは、直ちに実施医療機関の⻑(⼀つの実施計画書に基づき共同で複数の実施医療機関において治験を実施する場合には他の実施医療機関の治験責任医師を含む。)に報告するとともに、治験薬提供者に通知しなければならない。

★重篤な有害事象の発⽣を認めたときは、治験薬との因果関係の有無に係わらず、すべての重篤な有害事象を報告するという趣旨である。

72医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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モニタリング、監査GCP第26条の7 モニタリングの実施GCP第26条の8 モニタ-の責務GCP第26条の9 監査

医師主導治験でも、品質管理・品質保証の⼀貫として、モニタリング、監査の実施が必要です。

73医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

品質管理、品質保証とは?⾃ら治験を実施する者は、治験の実施並びにデータの作成、記録及び報告が本基準及び治験実施計画書を遵守して⾏われることを保証するために、⼿順書に基づく品質保証及び品質管理システムを履⾏し、保持する責任を有する。 (GCP第15条の2第1項 ガイダンス)

Quality Assurance (QA:品質保証)治験の実施、データ作成、⽂書化(記録化)及び報告が、GCP及び適応される規制要件を確実に遵守するために設定された、計画的かつ体系的な全活動

Quality Control (QC:品質管理)治験関連の活動の品質に求められる要件を充⾜していることを検証するために、治験の品質保証システム(Quality Assurance System)の⼀環として⾏われる実務的な⼿技及び活動

74医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

モニター、監査担当者の要件・指名、⼿順 ⾃ら治験を実施する者が各要件に従い、指名。

▫ モニター、監査担当者の要件は、各⼿順書に記載。 (H15/6/12 局⻑通知)

⾃ら治験を実施する者は、実施医療機関に属する者をモニター⼜は監査担当者に指定する場合には、当該治験の実施(実施の準備及び管理を含む)に従事しない者を選任する。

▫ 監査担当者は、モニタリング業務に従事していないこと。

各治験実施医療機関の組織体制等を考慮し、モニター・監査担当者が独⽴、中⽴かつ公平にモニタリング⼜は監査を実施できる要件を確保すること 。この要件を確保できない場合には、当該医療機関以外の者をモニター⼜は監査担当者として指名すること。(H17/10/25審査管理課⻑事務連絡)

▫ モニタリング及び監査業務は実施医療機関外に委託することも可能。

75医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

第26条の7 モニタリング

<⽬的> (GCP第26条の7)

被験者の⼈権の保護、安全の保持及び福祉の向上が図られていること 最新のプロトコール及びGCP等の規制を遵守して実施されていること 報告された試験データ等が正確かつ完全で原資料等の試験関連記録に

照らして検証できること<実施⽅法> 試験の⽬的、デザイン、複雑さ、盲検性、規模及びエンドポイント等を考慮し、

モニタリングの適切な範囲、⽅法を決定。 (第26条の7第1項 ガイダンス5)

リスクに基づくアプローチを策定。(オンサイトモニタリング活動と中央モニタリング活動の組み合わせ) (第26条の7第3項)

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治験が適正に⾏われることを確保するため、指名されたモニターが治験の進捗状況を調査し、プロトコール及び標準業務⼿順書、GCP及び適⽤される規制要件に従って実施、記録及び報告されていることを保証する活動 (GCP第2条)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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GCP第26条の7 モニタリングの実施モニタ-は治験審査委員会で承認された⼿順書に従い、モニタリングを実施。▫ 実施医療機関、治験責任医師が治験を実施するのに求められる要件を満たし、治験期間中を

通して維持。▫ 治験薬の保存状況、交付・投与⽤量、その他管理の適切性▫ 治験責任医師の必要な⽂書の受領▫ 治験スタッフが治験について⼗分な情報を得ていること▫ 治験関連業務を適切なスタッフが実施していること▫ 治験実施計画書の遵守状況▫ 被験者からの同意取得状況▫ 適格な被験者の組み⼊れ▫ 正確かつ完全で、最新に⾄る原資料等の治験関連記録の作成・保存▫ GCPで要求される報告、通知及び提出の実施▫ SDVの実施による症例報告書の整合性▫ 症例報告書の記載(⼊⼒)ミス、記載(⼊⼒)漏れ/修正▫ 有害事象の適切な報告▫ 保存すべき⽂書⼜は記録の保存状況

77医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の8 モニタ-の責務モニタ-は、モニタリングを⾏った結果、GCPやプロトコー

ルからの逸脱を発⾒した場合には、治験責任医師にそのことを報告する。必要に応じて実施医療機関の⻑に伝えること。逸脱の再発防⽌のための適切な措置を講じること。

発⾒された逸脱、問題点の評価を⾏うことは重要!!当該逸脱が当該医療機関特有の事象か?治験実施計画書に起因する等、他施設でも起こりうるか?

モニターは、モニタリングを実地に実施したときは、その都度、モニタリング報告書を作成し、⾃ら治験を実施する者及び当該モニタリングに係る実施医療機関の⻑に提出する。

78医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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関連通知等 「リスクに基づくモニタリングに関する基本的な考え⽅について」(平成25年7⽉1⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審管理査課⻑通知)

治験の⽬的、デザイン、盲検性、被験者に対する危険性のレベル、規模及びエンドポイント、当該実施医療機関及び治験の実施に係わるその他の施設における実績等を考慮してモニタリングの適切な範囲及び⽅法を決定することとし、・・(第26条の7第1項 ガイダンス5)

当該実施医療機関及びその他の施設にモニタリングは実施医療機関で実施に⾏わなければならない。但し他の⽅法(中央モニタリング)により⼗分にモニタリングが出来る場合には、この限りではない(第26条の7第3項)

⼈的及び経済的資源に制約が多い医師主導治験では、適切かつ効率的なモニタリング⼿法の導⼊が、治験の円滑な実施につながることに期待

リスクに基づくモニタリング及びSDVを⾏うためには、• 試験のデザイン(治験実施計画書や症例報告書の様式など)を

簡単明瞭なものにすることが重要。• 治験の⽬的、試験デザイン、エンドポイント、試験対象集団並びに治

験責任医師及び医療機関等の経験や治験の実施体制等を考慮• 担当医師へのトレーニング 等

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

参考 海外では・・・

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FDAは2013年8⽉に、EMAは11⽉にFinal Documentを公表

そして、ICH E6(R2)ではQualityに関する内容が追加予定

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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Risk Based Monitoring(RBM)とは?<従来>

スポンサーによる重要な有効性試験のモニタリング

4〜8週間間隔で OnSite Monitoring

100% SDV (SourceData Verification)

<RBM:プロセス管理>

リスクの特定・分析・評価(試験デザインの複雑さ、被験薬の安全性、エンドポイント、試験ステージ、担当医師の経験、等)

リスクに応じた適切なモニタリングプラン(On Site Monitoringの頻度、範囲, 中央モニタリング等)

試験実施中• エラー・リスクの早期発⾒• 継続したリスク評価• 是正措置・予防措置(CAPA)策定 等

Plan-Do-Check-Act

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

監査

<⽬的> (GCP第26条の9ガイダンス第1項1)

治験の品質保証のために、通常のモニタリング⼜は治験の品質管理業務とは独⽴した⽴場で、プロトコール、標準業務⼿順書、GCP及び適⽤される規制要件の遵守状況を評価すること

モニタリングの実施状況も含めて確認

<実施⽅法> (GCP第26条の9ガイダンス第1項2~4)

試験の重要性、被験者数、試験の種類と複雑さ・被験者に対する危険性のレベル等のリスク要因等を考慮して監査計画を⽴案し、実施

監査の種類: 治験毎の監査、システム(プロセス)監査

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治験が本基準、プロトコール及び標準業務⼿順書に従って実施され、データが記録、解析され、正確に報告されているか否かを確定するため、治験依頼者等によって指名された監査担当者が、独⽴した⽴場において試験に係る業務及び⽂書を体系的に検証すること。

(GCP第2条)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の9 監査治験審査委員会で承認を受けた監査⼿順書・計画書に基づき、

監査を実施。監査結果に基づき、監査報告書を作成、⾃ら治験を実施する

者及び実施医療機関の⻑に提出。監査を⾏った治験については監査証明書を作成、 ⾃ら治験を

実施する者及び実施医療機関の⻑に提出。

注:監査報告書は・・監査機能の独⽴性と価値を保つために、規制当局は、通常の適合性調査では、閲覧を求めません。(但し、重⼤なGCP不遵守が認められた場合を除く)

83医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

監査は・・・監査の際には、以下を考慮して、医療機関を含む監査対象、対象とする医療機関数、各実施時期を決定する。当該治験の承認申請上の重要性被験者数治験の種類被験者に対する治験の危険性のレベル モニタリングで⾒出された問題点 ・・・等

監査で発⾒された問題点の評価を⾏うことは重要!!問題を分析し、是正措置をとると共に、問題の重要度に応じ再発防⽌のための対策を講じることが重要です。

84医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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原資料等の直接閲覧するための条件モニタリング、監査、治験審査委員会及び規制当局の調査時に、原資料等のすべての治験関連記録を直接閲覧に供することを、• 治験実施計画書⼜は他の合意⽂書に明記

(第15条の4第1項10、中薬審答申10-10)

• 各被験者が⽂書により同意(第51条第1項10)

することが必要。(第26条の7第1項ガイダンス、第26条の9第1項ガイダンス)

85医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

治験審査委員会に提出が必要な資料(医師主導治験特有)

モニタリングの⼿順書 (GCP第26条の7 5))

モニタリング報告書 (GCP第26条の8第2項)

監査計画書 (GCP第15条の7 6))

監査報告書 (GCP第26条の9第3項)

⾃ら治験を実施する者及び実施医療機関の⻑に提出。

⇒ 実施医療機関の⻑は、これら報告書を受け取ったとき、当該医療機関の治験実施の適切性に関して治験審査委員会に意⾒を聴かなくてはならない。

(GCP第31条第4項)

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申請後の適合性調査でも、この医師主導治験特有の⼿続きの不遵守による指摘事例が報告されています!

(平成27年度 GCP研修会より)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

実施医療機関では・・・企業治験においては、治験依頼者(モニター)が「依頼者と医療機関(責任医師)の情報交換の主役」としての役割をしています。しかし医師主導治験では、治験責任医師やその他スタッフが院内や治験調整事務局等への情報伝達を⾃ら主体的に⾏う必要があります。また企業治験では、モニターが様々なサポートをしていた多くの業務を、医師主導治験では治験責任医師、その他治験スタッフが⾏う必要があります。

例えば・・・• 院内における医師主導治験実施の協⼒依頼• 治験調整委員会事務局への連絡 IRB審議状況 治験計画届出に必要な情報提供 プロトコールやSOPの⼿順に従った

安全性情報の提供• IRB審議申請書類・審議資料の準備• SOPの管理、改定時の対応 ・・・等

チームとして取り組むことが重要!!効率よい業務随行を

87医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

GCP第26条の10 治験の中⽌等

• GCP基準や治験実施計画書に違反し、適正な治験に⽀障を及ぼしたと認める場合には、治験を中⽌する。

• 不遵守のため治験を中⽌した場合には、⾃ら治験を実施する者は規制当局に速やかに報告する。

重⼤⼜は継続した不遵守 (GCP第24条第1項 ガイダンス)

• ⾃ら治験を実施する者は、収集された当該治験成績を申請資料としないことを知り得た場合には、その旨及び理由を実施医療機関の⻑に⽂書により通知する。

88医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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GCP第26条の11 総括報告書総括報告書(CSR: Clinical Study/Trial Report)とは・・・• 治験が終了⼜は中⽌したときに作成する、個々の治験についての

臨床及び統計上の記述,提⽰及び分析内容を⼀つの報告書に統合した「統合された」詳細報告書• 製造販売業者は、医薬品製造販売承認申請時に申請資料とし

て規制当局に提出。

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関連通知等「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」(平成8年5⽉1⽇ 薬審第335号 厚⽣省薬務局審査課⻑通知)「治験の総括報告書の構成と内容に関するガイドライン」に関する質疑応答集(Q&A)について」(平成24年10⽉18⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

患者の内訳、プロトコールからの逸脱

総括報告書の構成(ICH-E3ガイドライン)

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治験実施計画書及び改訂版、症例記録⽤紙⾒本、同意説明⽂書⾒本、IRB⼀覧、PI他治験参加者の⼀覧、治験調整医師など医学責任者の署名、ロット毎の患者⼀覧表、統計⼿法に関する⽂書、患者データ⼀覧表etc

治療の遵守状況、有効性解析、統計・解析上の論点(共変量調整、脱落・⽋測値の取り扱い、中間解析及びデータモニタリング、多施設共同試験、多重⽐較、部分集団の検討etc)、個別データの作表、患者毎の表⽰、etc

治験薬が投与された症例数、期間及び⽤量、有害事象の表⽰・分析、患者毎の有害事象の⼀覧表、死亡、その他重篤な有害事象及び他の重要な有害事象、臨床検査値の評価、etc

治験を要約する簡潔な概要(CTDで独⽴した⽂書として利⽤)

1. 標題ページ2. 概要(シノプシス)3. ⽬次4. 略号及び⽤語の定義⼀覧5. 倫理6. 治験責任医師等及び治験管理組織7. 緒⾔8. 治験の⽬的9. 治験の計画10. 治験対象患者11. 有効性の評価12. 安全性の評価13. 考察と全般的結論14. 本⽂中に含めないが、引⽤する表、図及

びグラフ15. 引⽤⽂献の⼀覧表16. 付録

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

総括報告書作成時の留意点(1)• ICH-E3ガイドラインは指針であり、遵守すべきテンプ

レートではない。(H24年10⽉18⽇ 事務連絡 Q&A)

▫ M4Eガイドライン(CTD-臨床に関する⽂書の作成要領に関するガイドライン)で⽰された指針も合わせて考慮(シノプシス(概要)部分)

▫ Trial Master File(⽇本では必須⽂書)から⼊⼿できる資料も付録に含めること。

ICH-E3ガイドラインをよく理解し、統計解析、データマネジメントの部⾨等がどのような帳票が必要か、事前に理解をしておくことが重要。CSRでは、個別の症例に関しては、被験者識別コード/割り付け番号等を利⽤して記載する。(よって、被験者識別コードは患者さんの診療録番号は使⽤しない⽅が好ましい。プロトコールで被験者識別番号の振り⽅を決めておいた⽅が良い。)

91医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

総括報告書作成時の留意点(2)

• 最終的に申請資料として提出されるため、「申請資料の信頼性の基準」が適⽤。

• 治験総括報告書の作成は⾃ら治験を実施する者の責務、信頼性の担保は、監査等を通じて⾃ら担保すべき。

(2003年パブリックコメント回答)

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⼿順書に従って作成。多施設共同治験では、各治験実施医療機関の⾃ら治験

を実施する者が共同で作成することができる。監査証明書は付録に添付 (GCP第26条の11ガイダンス)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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GCP第26条の12 記録の保存等

「治験薬提供者が被験薬についての製造販売の承認を受ける⽇」⼜は「治験の中⽌若しくは終了の後3年を経過した⽇のいずれか遅い⽇」までの期間適切に保存しなければならない。

実施医療機関の⻑に保管を依頼することが可能当該⾃ら治験を実施する者が実施医療機関に所属しなくなった

場合、実施医療機関の⻑が当該記録の保存を担うこと可能。★どのような資料を保管する必要があるかは以下の事務連絡を参照

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関連通知等 「治験に係る⽂書⼜は記録について」(平成25年2⽉14⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課)

治験の実施に関しての「記録の保存」はGCP第41条に規定

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

施⾏規則第101条 資料の保存承認取得者(治験薬提供者)は、以下の期間、適切に保管する必要がある。(GCP第26条参照)

第百⼀条承認取得者は、次の各号に掲げる資料を、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、資料の性質上その保存が著しく困難であると認められるものにあっては、この限りでない。⼀ 法第⼗四条 の規定による承認の申請に際して提出した資料の根拠と

なった資料 承認を受けた⽇から五年間。ただし、法第⼗四条の四第⼀項 の規定による再審査を受けなければならない医薬品⼜は医療機器(承認を受けた⽇から再審査が終了するまでの期間が五年を超えるものに限る。)に係る資料にあつては、再審査が終了するまでの期間

94医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

ICH-GCP 記録に関する規定

ICH-GCP 5.5.11治験依頼者が保存すべき必須⽂書は、当該治験薬のICH地域における最終の製造(輸⼊)承認後最低2年間かつICH地域における製造(輸⼊)申請で審査中となっているものがなくなるまで、⼜は臨床開発の公式中⽌後最低2年間、保存するのものとする。ただし、これらの⽂書は、適⽤される規制要件⼜は治験依頼者によって必要とされる場合は、これよりも⻑期間保存するものとする。

95医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

記録の保管に関しては・・・承認取得者(治験薬提供者)によっては、ICH-GCPの要求事項を求める場合もある。

⾃ら治験を実施する者と承認取得者は契約を締結する等し、何時まで保管が必要かを確認すること。*保管が必要無くなった時期に、承認取得者より連絡を受ける

ようにしておくこと。実施医療機関及び審査を⾏ったIRBにおいて保存すべき記録について、その保管が必要がなくなった場合には、実施医療機関の⻑及びIRBの設置者に通知

96医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

Page 25: 医薬品GCP省令ガイダンス -治験の準備及び管理に …第5回 医師主導治験に関するGCP基礎セミナー-医薬品編-医薬品GCP省令ガイダンス-治験の準備及び管理に関する基準-国立がん研究センター

その他、記録の保存での留意事項 磁気媒体等に保存されたデータを適切に保存するためにセキュリティシステムの保持、

データのバックアップの実施等が必要。(第26条ガイダンス3) ⾃ら治験を実施する者は、データの処理に電⼦データ処理システム(遠隔操作電⼦

データシステムを含む。)を⽤いる場合には、次の事項を実施すること。(1)電⼦データ処理システムが、完全性、正確性、信頼性及び意図された性能についての⾃ら治験を実施す

る者の要件を満たしていることを保証し、⽂書化すること(すなわちバリデーションされること。)。(2)当該システムを使⽤するための⼿順書を整備すること。(3)当該システムが、⼊⼒済みのデータを消去することなしに修正が可能で、データ修正の記録をデータ⼊⼒者

及び修正者が識別されるログとして残せる(すなわち監査証跡、データ⼊⼒証跡、修正証跡が残る)ようにデザインされていることを保証すること。

(4)データのセキュリティ・システムを保持すること。(5)データのバックアップを適切に⾏うこと。(6)データの修正を⾏う権限を与えられた者の名簿を作成し、管理すること。(7)盲検化が⾏われている場合には、盲検性が保持されるようにすること。

★それ以外に・・以下の事務連絡も参考になるかも知れません。

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関連通知等 「治験関連⽂書における電磁的記録の活⽤に関する基本的考え⽅について」(平成25年7⽉1⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課)

Data ManagementシステムやEDC、ePRO、

IWRS等

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

最後に・・・医師主導治験が無事終了し、・・・製造販売業者(治験薬提供者)が同治験の結果を⽤いて製造販売申請をした際には、⾃ら治験を実施した者に対して承認申請資料の根拠となった資料を確認する適合性調査が実施されます。そして、専⾨協議等の審査を経て、承認、販売!

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関連通知等「⾃ら治験を実施する者により収集された資料に基づき承認申請が⾏われた新医薬品の承認申請資料適合性書⾯調査の留意事項について」(平成18年11⽉20⽇ 事務連絡 厚⽣労働省医薬⾷品局審査管理課)

医師主導治験に関するGCP基礎セミナー 27Feb2016

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Question ?

ご清聴ありがとうございました

医師主導治験実施に必要なGCP基礎セミナー 27Feb2016

何かご質問等ございましたら、ご連絡ください。

桑木 多佳子(くわき たかこ)

[email protected]