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1 『朝食でつくる! 元気 UP 習慣』推進の取り組み ~早寝早起き朝ごはん推進校事業に参加して~ 富津市立佐貫中学校 養護教諭 小宮寛子 1. 本校の概要 本校の学区は,富津市の北部に位置し,西側に 東京湾の海岸地域,東側に鹿野山の麓の農村地域 をもつ自然環境豊かな学区である。学区内には,旧 城下町の史跡や歴史遺産があり, 商店街にはその 面影が今も残っている。 地域は城下町を誇りに思い,伝統を守ろうとする気 風もみられ,保護者の教育への関心も高い。子ども たちは,明るいあいさつができ,礼儀正しく,素直で 何事にもまじめに取り組む姿があり,学校全体が落ち 着いている。 2. 主題設定の理由 (1)社会の状況から 子どもたちが健やかに成長していくためには,適切な運動,調和のとれた食事,十分な休養・ 睡眠が大切である。また,子どもがこうした生活習慣を身に付けていくためには家庭の果たすべき 役割は大きいところだが,最近の子どもたちを見ると,「よく体を動かし,よく食べ,よく眠る」という成 長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠な基本的生活習慣が大きく乱れている。こうした基本 的生活習慣の乱れが,学習意欲や体力,気力の低下の要因の一つとして指摘されている。 このため,文部科学省では,「早寝早起き朝ごはん」運動の励行など,幼児期からの基本的生活 習慣の確立を目指して「子どもの生活リズム向上プロジェクト」事業を平成 18 年にスタートさせた。 同時に,これを実際に国民運動として推進する母体として,「早寝早起き朝ごはん」全国協議会が 設立され,賛同する百を超える個人や団体(PTA,子ども会,青少年団体,スポーツ団体,文化関 係団体,読書・食育推進団体,経済界等)など,幅広い関係者により推進されている。 家庭における食事,睡眠などの乱れを個々の家庭や子どもの問題として見過ごすことなく,社会 全体の問題として,子供たちの基本的な生活習慣を確立させ,生活リズムの向上を図るための取り 組みを推進していくことが必要である。特に学校教育では,子どもたちへの直接的な指導に加え て,家庭・地域へ「早寝早起き朝ごはん」運動を推進していくことで,望ましい基本的生活習慣の育 成を図りたい。 本校校舎外観 4 月

『朝食でつくる! 元気 UP 習慣』推進の取り組み · 習慣を身につけることは,健康的な人生を送るためにも重要である。また,自立した生活習慣を形成

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『朝食でつくる! 元気 UP習慣』推進の取り組み

~早寝早起き朝ごはん推進校事業に参加して~

富津市立佐貫中学校 養護教諭 小宮寛子

1. 本校の概要

本校の学区は,富津市の北部に位置し,西側に

東京湾の海岸地域,東側に鹿野山の麓の農村地域

をもつ自然環境豊かな学区である。学区内には,旧

城下町の史跡や歴史遺産があり, 商店街にはその

面影が今も残っている。

地域は城下町を誇りに思い,伝統を守ろうとする気

風もみられ,保護者の教育への関心も高い。子ども

たちは,明るいあいさつができ,礼儀正しく,素直で

何事にもまじめに取り組む姿があり,学校全体が落ち

着いている。

2. 主題設定の理由

(1) 社会の状況から

子どもたちが健やかに成長していくためには,適切な運動,調和のとれた食事,十分な休養・

睡眠が大切である。また,子どもがこうした生活習慣を身に付けていくためには家庭の果たすべき

役割は大きいところだが,最近の子どもたちを見ると,「よく体を動かし,よく食べ,よく眠る」という成

長期の子どもにとって当たり前で必要不可欠な基本的生活習慣が大きく乱れている。こうした基本

的生活習慣の乱れが,学習意欲や体力,気力の低下の要因の一つとして指摘されている。

このため,文部科学省では,「早寝早起き朝ごはん」運動の励行など,幼児期からの基本的生活

習慣の確立を目指して「子どもの生活リズム向上プロジェクト」事業を平成 18年にスタートさせた。

同時に,これを実際に国民運動として推進する母体として,「早寝早起き朝ごはん」全国協議会が

設立され,賛同する百を超える個人や団体(PTA,子ども会,青少年団体,スポーツ団体,文化関

係団体,読書・食育推進団体,経済界等)など,幅広い関係者により推進されている。

家庭における食事,睡眠などの乱れを個々の家庭や子どもの問題として見過ごすことなく,社会

全体の問題として,子供たちの基本的な生活習慣を確立させ,生活リズムの向上を図るための取り

組みを推進していくことが必要である。特に学校教育では,子どもたちへの直接的な指導に加え

て,家庭・地域へ「早寝早起き朝ごはん」運動を推進していくことで,望ましい基本的生活習慣の育

成を図りたい。

本校校舎外観 4月

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(2) 学校教育目標から

富津市立佐貫中学校の学校教育目標は

「自立と共生 ~志高く,随所に主となれ~ 」

である。めざす生徒像として

1. よく考え,学ぶ意欲旺盛な生徒 【知】

2. 仲間を思いやる生徒 【徳】

3. 体力・気力・覇気のある生徒 【体】

の,3点を挙げている。

さらに,学校保健目標を

「主体的に健康づくりをする生徒の育成」

とし, 重点目標に

「朝食の習慣化をめざした保健指導及び生徒会活動(保体委員会)等,組織活動の充実」

を設定した。基本的生活習慣の確立を健康づくりの基本と捉え,特に午前中の活動エネルギーであ

る朝食の大切さを理解し,よりよい生活習慣をつくりあげようとする生徒の育成をめざしている。

これらの目標を達成するために,各教科・領域更に生徒会活動や外部との協働を通して,主体的

に考える場を多く設定した。よりよい朝食習慣への意欲が高まり,全校生徒を始め,家庭・地域への

普及・啓発の足がかりとしたいと考える。

(3) 生徒の実態から

富津市立佐貫中学校は1年 9人,2年 23人,3年 25人,全校生徒 57人(男子 25人 女子 32

人)の小規模校である。小規模であるからこそ,学年の枠を越えて全力で取り組み,全校生徒が明る

く和気藹々と学校生活をおくる姿がある。

朝食に関する調査では,「朝食を毎日食べている」という生徒が85.7%だった。この結果から,生

徒の多くは朝食習慣ができているように見えたが,朝食の内容は「主食(ごはん・パン)だけ」が30.

4%であり,朝食の量は「少し」「腹三分」の合計が53.6%と,内容や量に課題があることがわかった。

その要因として,部活動(朝練)や学習塾通い,深夜における携帯・スマホ使用等の影響による就寝

時間の乱れ等が考えられた。第 2次発育急進期にある中学生が,内容・量ともに十分な朝食を摂る

習慣を身につけることは,健康的な人生を送るためにも重要である。また,自立した生活習慣を形成

する中学生の時期に,朝食をバランスよく食べるというような健康的な生活習慣を身につけることが重

要であると考える。

今年度 ,早寝早起き朝ごはん推進校事業を活用し,「朝食」を切り口として専門家による指導や

家庭・地域へのアプローチを工夫することにより,生徒が自分自身の生活習慣の乱れに気づき,規則

正しい生活習慣に対する意識が高まるのではないかと考えた。さらに生徒会や学校保健委員会等

を中心とした「早寝早起き朝ごはん」運動の普及活動を推進することで,家庭・地域の協力のもと,

生涯にわたるよりよい生活習慣の確立と健康な心身を保つための自己管理能力を育成したいと考

え,本主題を設定した。

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3.『朝食でつくる! 元気 UP習慣』推進の実施体制

(1)構成メンバー

校 内 校長・教頭・研究主任・体育主任・各学年主任・養護教諭

校 外 学校医・学校歯科医・学校薬剤師・PTA代表・栄養教諭

(2)実施スケジュール

1学期 2学期 3学期

食育授業公開 (6/12)

健康教育講演会 (6/28)

朝食でつくる!

元気 UP強化月間

ポスター・広報紙

朝食標語・レシピ

コンテスト

睡眠チェック週間

(3)全体図

標語・レシピ作成 コンテスト レシピ集配布

1回目(集会発表) 2回目(学級 PR) 3回目(学級 PR)

1回目 2回目 3回目

生徒

(家庭・地域)

食育

授業公開

健康教育

講演会

朝食でつくる!

元気UP 強化月

朝食レシピ・

標語コンテスト

睡眠チェック

習慣

啓発ポスター・

広報紙

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4.実施内容

(1)食育授業公開

実施日 平成 29年 6月 12日(月)5校時

【1年】

指導者 在原京子栄養教諭

題材名 「成長期の体と食生活」

目 標 ○中学生に必要な栄養について理解する。

○自分自身の生活を振り返り,よりよい生活のために見直したいことがらを考える。

○心身の成長や健康の保持増進の上で,望ましい栄養や食事の摂り方を理解し,

自ら実践していこうとする気持ちをもつ。

生徒の反応(感想用紙より)

『今の時期は,たくさんの栄養素をとらなければいけないと思いました。これからは5大栄

養素をしっかりとりたいと思います。』(男子)

【2年】

指導者 土田雄貴教諭 田村加奈栄養教諭

題材名 「朝食の大切さ」

目標 ○朝食には,栄養補給だけでなく,大切な働きがあることを理解する。

○朝食を食べるために自分ができることを考え,実践しようとする意欲をもつ。

○朝食の役割を理解し,よりよい食習慣を形成しようとする意欲をもつ。

生徒の反応(感想用紙より)

『いつもの朝食は少なめなので,少しでも多く食べて授業に集中できるようにしたいと思い

ます。』(女子)

『朝食をきちんと食べないと,脳が働かず眠くなってしまうことが

わかったので,しっかり食べようと思いました。』(男子)

【3年】

指導者 山本理恵栄養教諭

題材名 「スポーツと栄養~朝食のバランスを見直そう~」

目 標 ○学校給食を見本に中学生に必要な栄養について理解する。

○自分自身の生活を振り返り,よりよい生活をつくりあげようとする意欲をもつ。

○心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事の摂り方を理解し,

自ら実践していく能力を身につける。

生徒の反応(感想用紙より)

『1日に必要なエネルギー量がわかりました。私はテニスをしているので,エネルギーがさら

に必要になると思うので,バランス良くとっていきたいです。』(女子)

3年 山本栄養教諭の指導

1年 在原栄養教諭の指導

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(2)健康教育講演会

実施日 平成 29年 6月 28日(水)5.6校時

講 師 医学博士 池谷医院院長 池谷敏郎医師

演 題 「かっこよく若々しく生きる為の秘訣は,早寝早起き朝ごはん!?」

-オープニング- 生徒会(保体委員会)の発表

参加者 全校生徒,佐貫小 5,6年児童,保護者,地域の方々

ねらい ○「早寝早起き朝ごはん」という基本的な生活習慣の維持・向上を図るとともに,朝

食の摂り方による身体への影響や重要性について理解を深める。

○保護者や地域の方々にも参加を呼びかけ,地域ぐるみで「早寝早起き朝ごはん」

運動を推進する気運を高める。

参加者の反応(感想用紙より)

『朝食を食べなければ太りやすくなったり,イライラしたり,記憶力が低下したりするなど影響

があるので,毎日朝食をしっかり食べようと思いました。』(1年女子)

『今日の講演会で改めて生活リズムは大切だと思いました。体内時計が「24時間 10分=

1日」とは想像もつきませんでした。光を浴びればリセットされるということなので,1日の生活

リズムをつくりあげていきたいです。食生活が変われば人生が変わる…驚きました。』

(2年女子)

『自分の睡眠時間は 5時間から 6時間なので,授業の5,6時間目に眠たくなってしまいま

す。睡眠を長くして集中力・記憶力を高めたいと思います。』(3年男子)

『子どもの生活,特に食生活について親の責任を痛感しました。なかなか理想的なメニュー

を考えて用意するのは難しいです。規則正しい生活リズムと内容,子どもも大人も大切だと

思いました。日々の中で自分のできることで健康に近づけたらと思いました。』(保護者女性)

『頭の良くなる睡眠法,お肌にいい,質の良い睡眠のとり方,食事の質…などなど,とても参

考になりました。頑張って生活にいかしていきたいと思います。家族にも話します。』

(保護者女性)

『何回もそうだ,そうだと頷き,楽しく聞かせていただきました。70歳を過ぎましたが,若々し

しく生き生きと生きる為には,朝ごはんをしっかり食べ,運動も取り入れたいと思います。』

(地域の方男性)

池谷敏郎氏による講演 生徒会(保体委員会)の発表

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(3)朝食でつくる! 元気 UP強化月間 ~生徒会(保体委員会)を主体とした活動~

実施期間 第 1回目(7月) 第 2回目(11月) 第 3回目(2月)

ね ら い 生徒会(保体委員会)を中心として主体的活動を推進し,全校生徒・家

庭・地域に向けてよりよい朝食習慣づくりを呼びかける。

○保体委員会だよりの発行

《内容》 朝食アンケートの結果と考察 佐貫中生の朝食の課題

○給食時の放送

《内容》 朝食の大切さ 早寝早起きの効果 熱中症の予防 食事のバランス

○朝食アンケートの実施

《内容》 ・朝ごはんを食べますか?

・食べない理由は何ですか?

・朝,食欲がありますか?

・朝ごはんは,どのくらいの量を食べますか?

・朝ごはんは,栄養バランスがよいですか?

・朝食の習慣について,心がけていることは何ですか?

○生徒によるステージ発表

(健康教育講演会のオープニングとして)

《内容》 劇:朝食欠食と熱中症の関係

調査報告:朝食アンケートの結果と考察

○保体委員による PR活動(各学級へ朝読書の時間に実施)

《内容》 劇:朝食の摂り方と授業への集中との関係

朝食レシピ集の配布

0.0

1.9

7.4

90.7

1.8

1.8

7.1

89.3 85.7

0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 100.0

食べない

週に1~3日

食べる

週に4~6日

食べる

毎日食べる

朝食を食べますか?

5月 7月 11月

9.3

42.5

35.2

13.0

16.1

39.3

35.7

8.9

30.4

17.8

41.1

10.7

0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0

おにぎりや

パンだけ

おにぎりやパン

だけのことが多い

まあまあ

バランスがよい

バランスが

良い

朝食のバランスはどうですか?

5月 7月 11月

調査対象 全校学年 55人 調査対象 全校学年 55人

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(4)ポスター掲示及び広報紙配布

配布時期 7月,11月,2月

ポスター掲示場所 学区内(駅,郵便局,薬局,飲食店,

コンビニエンスストア,商店)計 11カ所

広報紙配布先 全家庭・佐貫中学区

※地域の回覧板により配布

ね ら い 佐貫中学校で取り組んでいる『朝食でつくる!

元気 UP習慣』の内容を告知・広報し,活動へ

の理解と協力を得る。

(5)朝食標語・朝食レシピコンテスト

①朝食標語作成(国語科)

実施時期 7 月

対 象 全校生徒・保護者

ね ら い 朝食の大切さを意識した標語を考え,よりよい習慣づくりへの関心を高める。

保護者に対しては,生徒を通じて応募用紙を配布した。

②朝食レシピ作成(技術・家庭科)

実施時期 夏季休業課題

対 象 全校生徒

ね ら い 自分で考えた朝食を調理することを通して,生活の中で食事が果たす役割を

理解し,バランスのよい食習慣について考えさせる。

③朝食標語・朝食レシピコンテスト(学級活動)

実施時期 9月

対 象 全校生徒及び全職員

ね ら い ①②の応募作品全てを掲示し,互いの作品を見合う

ことで『朝食でつくる!元気

UP習慣』活動への理解を

を深める。

④朝食レシピ集の作成・配布

配布時期 11月

内 容 朝食標語入賞作品

全校生徒分の朝食レシピ

配布対象 全家庭,佐貫小 6年児童

啓発ポスター 11月

《最優秀標語》

朝食を

食べられなくて

超ショック

3年男子)

起きてみ

おにぎりパンを

食べてみ

3年男子)

笑顔と元気の源は

愛情たっぷり

朝ごはん

保護者女性) 最優秀朝食レシピ

Y

O

Y

O

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(6)睡眠チェック週間

実施時期 11月

対 象 全校生徒

ね ら い 睡眠を中心とした自分の生活習慣を振り返り,よりよい睡眠習慣をつくり上げようと

する意欲を高める。

○生活習慣チェックリストによる生活習慣の振り返り(保健体育科)

ね ら い 自分の生活習慣を振り返り,何か問題がないか,よりより生活習慣をつくり上げるた

めにはどのようなことをすればよいのか考える。

○睡眠チェックシートの記入(保体委員会)

実施方法 連続した 14日間,睡眠チェックシートに必要事項を記入する。

朝の会で記入。保体委員が全員分を集めて保健室へ提出。

ね ら い 保健体育科の授業の中で見つけた自分の生活習慣の問題を,具体的に改善する

ための指針とする。

自分の睡眠習慣の変容を自覚的に理解し,さらによりよいものにしようとする意欲を

持つ。

*使用資料「早寝早起き朝ごはんで輝く君の未来~睡眠リズムを整えよう!~」

平成 27年 6月文部科学省発行

生徒の変容

生活習慣チェックリスト 13項目に関して○(すでにできている)が 3つ以上増減した生徒の割合

■3つ以上増えた

□3つ以上減った

というグラフ

生徒の振り返り(朝食チェックシート自由記入欄より)

『最近は朝ごはんを食べないで登校することが多くなっていたけれど,朝ごはんを食べること

により部活で活発に動くことができた。』(1年女子)

『「睡眠チェック」をしたことで,早寝早起きを意識して睡眠時間をしっかりとることができた。』

(2年男子)

『寝る前にスマホを見ないように目標を立てたので,気持ちよく眠れた。』 (3年男子)

6

17

17

3

6

6

0% 20% 40% 60% 80% 100%

1年

2年

3年

睡眠チェック実施前と実施後の変容

向上した 変わらない

調査対象 全校学年 55人

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5.成果と今後の課題

(1)成果

本校のような小規模校では,予算的に通常は実施困難である講師を招いての講演会を「早寝早

起き朝ごはん推進校事業」に参画し,地域を巻き込んだ活動を実施することができた。本校の生徒

職員だけでなく,広く地域の方々にも参加を呼び掛けて行った池谷敏郎医学博士による健康教育

講演会では,地域の方から次のような感想が寄せられた。「池谷先生の講演を何が何でも聞かせて

いただきたくて参りました。食事・睡眠と病気の因果関係がとてもよく理解できました。」この講演会

の後に行った様々な活動が広く受け入れられるための素晴らしいスタートとなった。

生徒・保護者による「朝食標語・朝食レシピコンテスト」の実施は,生徒・保護者が朝食習慣につい

て理解を深め,主体的に考える良い機会となった。入賞標語・入賞レシピ,全校生徒のレシピ写真

を掲載した「朝食レシピ集」の配布によりそれぞれの家庭でさらに会話が深まり,朝食習慣の改善

のきっかけとなった。

生徒会(保体委員会)を中心とした地域への啓発活動は,『朝食で作る! 元気UP習慣』の活動

がさらに地域を巻き込んだ活動になる推進力となった。ポスター掲示の依頼に出向いた保体委員

が励ましの言葉をいただいたという報告があった。また広報誌を読んで毎日の朝食の大切さにつ

いて家族で会話する機会が増えたという保護者の方もいた。

(2)課題

今年度 5 月に「早寝早起き朝ごはん推進校事業」への参画が正式決定し,そこから具体的な計

画作り,日程調整,実践という形となり,内容も含め全職員による十分な検討をする余裕がなかった。

来年度,よりよい取り組みが行えるように,本年度中に実践の振り返りを行い,来年度の活動計画

を作成していく必要がある。

生活習慣はまさに「習慣」であり,家庭の中で当たり前のように行われていることを変化させること

は難しい。一過性のお祭りのような取り組みではなく,本年度の取り組みを通して得られたさまざま

な知識や理解を行動に結びつけ,さらにその行動を継続させるための手立てを考えていかなくて

はならない。

6.おわりに

授業,部活動,学校行事,テスト,各種大会,塾,習い事とさまざまなことに追われる中学生。忙しさ

の中で食べること,眠ることがないがしろになるのは大人と同じである。わずか一年にも満たない取り

組みで,そんな子どもたちの生活習慣が劇的に変化することはない。だが,それだからこそ「早寝早

起き朝ごはん」の大切さを繰り返し説いていかなければならない。健康に生きることは,幸福に生きる

ことにつながる。自らの手で健康な生活をつくり出し,維持する意欲と,能力を育んで行ってほしいと

切に願う。

佐貫地区の子どもたち,そして大人たちがよりよい未来を生きていくことを心から願い「早寝早起き

朝ごはん」の活動をさらに推し進めていきたい。